(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032898
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】車両の急加速防止装置
(51)【国際特許分類】
B60K 28/10 20060101AFI20220217BHJP
B60K 26/02 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B60K28/10 Z
B60K26/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020147141
(22)【出願日】2020-08-12
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】520334616
【氏名又は名称】光延 誠
(72)【発明者】
【氏名】光延 誠
【テーマコード(参考)】
3D037
【Fターム(参考)】
3D037EA03
3D037EB02
3D037EB03
3D037EC01
3D037FA24
3D037FB00
(57)【要約】
【課題】アクセルペダルをブレーキペダルと誤認し、アクセルペダルを急激に踏み込んで発生する、いわゆるアクセルペダルの踏み間違いによる暴走事故をいかに防止するか、高齢化が進む車社会の大きな課題となっている。
【解決手段】アクセルペダル31の下部に、制御弁22を装着した伸縮可能なケース1を設置し、通常のアクセル操作による踏力で押された場合は、制御弁22が閉じないように保持する弾性材23を装着し、ケース1が内在する空気の流出により収縮する構造にしている。アクセルペダル31が急激な強い踏力で踏まれると、ケース1内の急上昇した内圧を印加された制御弁22が、弾性材23を圧縮し制御弁22が閉じてケース1の収縮を停止するため、アクセルペダルが踏み込めなくなる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダル下に配置され、伸縮可能に形成したケースに、前記ケースの伸縮方向に伸縮するコイルばねを内設させ、前記ケース内の空気を流出入させる制御弁ユニットと、前記ケース上部に設けられた開口穴を封止するキャップと、前記制御弁ユニットと前記キャップが前記ケースから脱落しないように保持するためのカバーを装着させ、前記カバーには本発明装置をアクセルペダルに取付けるためのペダル取付け板を、前記ケースには本発明装置を車両に取付けるための本体取付け板を組付け、さらに前記本体取付け板には車両フロア面に取付けるためのフロア取付け板を回動可能なように組付けたことを特徴とする車両の急加速防止装置。
【請求項2】
「請求項1」における前記制御弁ユニットは、前記ケース内の空気の流出入を制御する機能を有し、外部通気口を形成した制御弁ケースに、前記外部通気口を塞ぐように配置された制御弁と、前記制御弁が前記外部通気口に密着しないように支持する弾性材と、内部通気口を設けた制御弁カバーを装着させ、前記制御弁カバーの内部通気口を前記ケースの装着穴に密封状態で装着させ、前記ケース内の空気が前記制御弁ユニットを介して流出入することで、アクセルペダルの操作に応じて前記ケースを伸縮可能にしたことを特徴とする車両の急加速防止装置。
【請求項3】
前記ケースが急激に圧迫されると、前記ケースから所定以上の圧力が前記制御弁カバーの内部通気口を通じて前記制御弁に印加され、前記制御弁に形成されている制御弁支持部が前記制御弁を支えていた弾性材を押しつぶし、前記制御弁が前記制御弁ケースの外部通気口を塞ぎ、前記ケース内の空気の流出を遮断することにより前記ケースの収縮を制止させることを特徴とする車両の急加速防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダルの踏み間違いによる急加速を防止する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アクセルペダルの踏み間違いによる事故を防止する装置で実用化されているものは、車両や人、建造物や障害物などをセンサーやカメラで検知し、危険と判断した状況でアクセルペダルを踏まれた場合、自動的にブレーキをかけるように電子的に制御するものであるが、それらの装置を搭載した車両を新たに購入する必要があり、社会に広く普及するには相当な時間を要する状況である。
【0003】
そのような状況の中、既存の車両に装着できる急加速や踏み間違いの防止を目的とした装置もあるが、構造が複雑かつ高価なもので、アクセルペダルの交換や専用ペダルの追加装着を要したりするものであり、専門的な知識や作業も必要なため普及を妨げる要因にもなっている。
【0004】
また、粘度のある液体を封入したアクセルペダルの踏み込みを防止する装置では、液体の粘性により、通常の運転でのアクセルペダルの操作性を阻害する(ペダルの踏力を増加させる)ものになっており、手動操作で踏み込み防止機能を解除するようにしている。加えて、液体を利用するために、装置が重くなり構造が複雑になるという欠点がある。
【0005】
さらに、アクセルペダルの踏み込み状態を検知し、アクセルペダルの踏み込み位置や踏力などに応じて加速しないように制御するものもあるが、アクセルペダルの状態を検知するまでは加速し続けてしまう。また、それらは近年の主流である電子制御式のエンジン出力調整機構に採用できるもので、年式の古い車両に用いられているワイヤー式(機械式)のエンジン出力調整機構への採用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-115302公報
【特許文献2】特許第4740394号公報
【特許文献3】特許第6528185号公報
【特許文献4】特許第5473102号公報
【特許文献5】実用新案登録第3224952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のような従来技術によると、車外の検知対象物が検知可能範囲を超える距離にある場合や、天候(雨天や濃霧)、走行速度などによっては対象物を正常に検知出来ず、装置が作動しなかったり誤作動を起こしたりすることがあり、そのほとんどが動作保障に制限や条件が付加されている。
【0008】
上記のように対象物が検知されない状況やパニック状態に陥った状況で、アクセルペダルをブレーキと間違えて急ブレーキをかけるように踏んでしまうと、車両が急加速し、場合によっては制御不能に陥ってしまう。
【0009】
また、従来技術はそれらの装置を搭載した車両を新たに購入するか、既存の車両に複雑で高価な装置を取付ける必要があるため、なかなか普及しないといった課題がある。
【0010】
そのような状況の中、既存の車両に装着できる急加速や踏み間違いの防止を目的とした装置もあるが、構造が複雑かつ高価なもので、アクセルペダルの交換や専用ペダルの追加装着を要したりするものであり、専門的な知識や作業も必要なため普及を妨げる要因にもなっている。
【0011】
また、粘性のある液体を封入したアクセルペダルの踏み込みを防止する装置では、液体の粘性により、通常の運転でのアクセルペダルの操作性を阻害する(ペダルの踏力を増加させる)ものになっており、手動操作で踏み込み防止機能を解除するようにしている。加えて、液体を利用するために装置が重くなり、構造が複雑になるという欠点もある。
【0012】
さらに、アクセルペダルの踏み込み位置や踏力を検知し、それらに応じて加速しないように制御するものもあるが、設定されたアクセルペダルの状態を検知するまで加速し続けてしまう。また、それらは近年の主流である電子制御式のエンジン出力調整機構に採用できるもので、年式の古い車両に用いられているワイヤー接続による機械式のエンジン出力調整機構への採用は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために成されたもので、アクセルペダル下に配置され、伸縮可能に形成したケースに、前記ケースの伸縮方向に伸縮するコイルばねを内設させ、前記ケース内の空気を流出入させる制御弁ユニットと、前記ケース上部に設けられた開口穴を封止するキャップと、前記制御弁ユニットと前記キャップが前記ケースから脱落しないように保持するためのカバーを装着させ、前記カバーには本発明装置をアクセルペダルに取付けるためのペダル取付け板を、前記ケースには本発明装置を車両に取付けるための本体取付け板を組付け、さらに前記本体取付け板には車両フロア面に取付けるためのフロア取付け板を回動可能なように組付ける。
前記制御弁ユニットは前記ケース内の空気の流出入を制御する機能を有し、外部通気口を形成した制御弁ケースに、前記外部通気口を塞ぐように配置された制御弁と、前記制御弁が前記外部通気口に密着しないように支持する弾性材と、内部通気口を設けた制御弁カバーを装着させ、前記制御弁カバーの内部通気口を前記ケースの装着穴に密封状態で装着させ、前記ケース内の空気が前記制御弁ユニットを介して流出入することで、アクセルペダルの操作に応じて前記ケースの伸縮を可能にしている。
前記ケースが急激に圧迫されると、前記ケースから所定以上の圧力が前記制御弁カバーの内部通気口を通じて前記制御弁に印加され、前記制御弁に形成されている制御弁支持部が前記制御弁を支えていた弾性材を押しつぶし、前記制御弁が前記制御弁ケースの外部通気口を塞ぎ、前記ケース内の空気の流出を遮断することにより前記ケースの収縮を制止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、緊急時のブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違いや、ブレーキペダルとアクセルペダルの同時踏み込みなどが発生しても、アクセルペダルが踏み込めなくなり、車両の急加速や暴走事故を新旧多種多様の車両で防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る一実施形態の装置全体の構成を示す正面図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態の装置全体の構成を示す側面図である。
【
図3】本発明に係る一実施形態の装置全体の構成を示す上面図である。
【
図4】本発明に係る一実施形態の装置全体の構成を示す下面図である。
【
図7】本発明に係る一実施形態の装置が伸縮する状態を示す
図5と同位置の断面図である。
【
図8】本発明に係る一実施形態の制御弁が閉じた状態を示す
図6と同位置の断面図である。
【
図9】本発明に係る一実施形態の装置の装着状態を示す上面図である。
【
図10】本発明に係る一実施形態の装置の装着状態を示す正面図である。
【
図11】本発明に係る一実施形態の装置の装着状態を示す側面図である。
【
図12】本発明に係る一実施形態の装置の
図9とは異なる装着状態の一例を示す上面図である。
【
図13】本発明に係る一実施形態の装置の
図11とは異なる装着状態の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ただし、実施形態として記載または図面に示されている構成部品の相対的配置等は、本発明の範囲をこれらに限定するものではなく、単なる説明例に過ぎない。また、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【実施例0017】
図1から
図5に示すように一定量の空気を収容する伸縮性を持たせたケース1に、ケース1の穴を封止するキャップ2と、空気の流出入を制御するための制御弁ユニット3とカバー4を取付け、カバー4にはペダル取付け板5を、ケース1には本体取付け板6をそれぞれ締結ネジ7と締結ナット8で締結している。さらに、本体取付け板6にはフロア取付け板10をフロア取付け板締結ネジ11とフロア取付け板締結座金12とフロア取付け板締結ナット13で回動可能に連結している。また、ケース1にはコイルばね9をケース1の伸縮方向に伸縮するように内設させ、コイルばね9の反発力によってケース1を常に元の状態に戻すような構造にしている。
【0018】
ケース1は例えばじゃばら状の形状を成し、ペダルの踏力による圧縮方向の力がケース1に印加された場合、ケース1内の空気が流出することで容易に圧縮変形するものである。
【0019】
図5、
図6に示すように、制御弁ユニット3の制御弁ケース21は外部通気口21aを形成しており、制御弁22と弾性材23が組付けられている。制御弁22は、制御弁封止部22aと制御弁支点部22bと制御弁支持部22cを形成しており、制御弁支点部22bが制御弁ケース21と制御弁カバー24の制御弁保持部24bにより回動可能なように保持され、かつ制御弁支持部22bと弾性材23により、制御弁封止部22aが制御弁ケース21に密着しない状態で保持されている。制御弁カバー24は内部通気口24aを形成しており、制御弁ケース21に密封状態で結合され、内部通気口24aがケース1を貫通するように密封状態で装着されている。
【0020】
制御弁22にかかる圧力が平常運転時のペダルの踏み方で発生する所定の範囲内であれば、弾性材23は制御弁支持部22cで圧縮されないような反発力に調整されているため、制御弁支持部22cが弾性材23を押し潰すことがない。この状態であれば、制御弁ケース21と制御弁封し部22aとに隙間が空いた状態、すなわち制御弁22が開いた状態で保持され、その隙間からケース1内の空気の流出入が可能であり、
図7に示すように、ケース1は矢印の方向に伸縮を繰り返すことができるため、アクセルペダル31の操作を妨げることは無い。
【0021】
一方、急ブレーキをかけるような急激で強い踏み方によって生じる所定以上の圧力が
図8で示すように制御弁22にかかると、制御弁支持部22bの弾性材23を押す力が弾性材23の反発力よりも強くなり、制御弁支持部22bが弾性材23を押し潰すため、制御弁封止部22aが制御弁ケース21に密着し、制御弁22が閉じた状態になる。これにより、ケース1内の空気の流出が瞬時に遮断され、ケース1が収縮できなくなるため、アクセルペダル31は踏み込めなくなる。
【0022】
アクセルペダルの踏み込みが解除されると、制御弁22にかかっていた圧力が所定の範囲まで弱まり、弾性材23の反発力により制御弁支持部22bが押し戻され、制御弁封し部22aが制御弁ケース21に密着していない状態、すなわち制御弁22が開いた状態に戻り、ケース1へ空気が流入し、ケース1は内設させているコイルばね9により元の状態に戻る。コイルばね9はケース1を元の状態に戻すためだけの必要最低限の反発力にしており、アクセルペダルの操作を妨げるものではない。
【0023】
弾性材23は、例えば一般的に多く用いられている発泡ウレタン材やコイルばね等で形成し、使用する素材に応じて厚みや形状を調整し、最適な反発力になるよう調整が可能である。
【0024】
図9、
図10、
図11に示すように、前記ペダル取付け板5をアクセルペダル31に沿わせるように曲げて固定し、フロア取付け板10をフロア32の形状に合うように変形させ、フロア32の素材に応じた固定具材、例えばマジックテープや両面テープ等で固定し、本発明装置が運転中に外れることの無いような取付け構造にしている。
【0025】
さらに、
図12と
図13に示すように、ペダル取付け板5は締結ネジ7を緩めれば角度調整が可能であり、フロア取付け板10も回動可能に本体取付け板6に締結されているため、車種ごとに異なるアクセルペダル31やフロア32の配置や形状にも適応できるものである。
本発明装置をアクセルペダルとフロアとの間に取り付けることで、急ブレーキをかけるような強い踏力がアクセルペダルに加わった時にのみ、アクセルペダルを踏み込めなくさせ、踏み間違いによる急加速や暴走を防止することができるもので、本発明装置が実用化されれば、新旧多種多様な車両に装着でき、アクセルペダルの踏み間違いによる暴走事故の防止に貢献できる。