(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032899
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】卵加工装置および方法
(51)【国際特許分類】
A47J 43/04 20060101AFI20220217BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20220217BHJP
【FI】
A47J43/04
A23L15/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020147142
(22)【出願日】2020-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】502099234
【氏名又は名称】藤沼 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 豊彦
【テーマコード(参考)】
4B042
4B053
【Fターム(参考)】
4B042AC09
4B042AD29
4B042AE10
4B042AG07
4B042AH09
4B042AP06
4B042AP30
4B042AT05
4B053AA03
4B053CA18
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】卵4の卵殻外表面の少なくとも一部と流体密に接する接触部12を有し、接触した一部を含む卵殻外表面の部分と共に閉じた流体密の空間Sを構成する空間構成部1,2,21と、当該空間Sの内圧を変化させる圧力可変手段21とを有する。
【効果】閉じた流体密の空間を構成する茹で卵の卵殻外表面に小孔を形成すれば、その空間の内圧を変化させることによって外殻内の圧力が変化し、外殻と卵白の間を少なくとも部分的に剥離させることができ、卵の殻が剥きやすくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵(4)の卵殻外表面の少なくとも一部と流体密に接することができる接触部(12)を有し、接触した前記一部を含む前記卵殻外表面の部分と共に閉じた流体密の空間(S)を構成する空間構成部(1,2,21)と、前記空間(S)の内圧を変化させる圧力可変手段(21)と、を包含する卵加工装置。
【請求項2】
前記圧力可変手段(21)は流体ポンプである、請求項1に記載の卵加工装置。
【請求項3】
前記流体ポンプは、前記空間構成部の少なくとも一部をなす第1の部材(2)と、前記第1の部材(2)と流体密に係合し、かつ前記第1の部材(2)と相対的に移動可能であり、かつ前記空間(S)の少なくとも一部を構成する第2の部材(3)を包含する、請求項2に記載の卵加工装置。
【請求項4】
前記圧力可変手段は変形して内部容積が変化する変形部材(21)を含み、前記変形部材(21)は、前記空間構成部(1,2,21)の少なくとも一部を構成する、請求項1に記載の卵加工装置。
【請求項5】
前記変形部材(21)は、マニュアルで変形される、請求項4に記載の卵加工装置。
【請求項6】
前記圧力可変手段は、前記空間構成部(1,2,21)と相対的に移動可能、かつ前記変形部材(21)の少なくとも一部と係合する係合部(3)を包含し、前記係合部(3)は、前記移動によって前記変形部材(21)を変形させる、請求項4に記載の卵加工装置。
【請求項7】
卵の卵殻外表面に小孔を形成し、前記卵殻外表面の前記小孔を含む領域の少なくとも一部と流体密に接して前記領域と共に閉じた流体密の空間を構成し、前記空間の内圧を変化させることによって外殻内の圧力を変化させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵、例えば鶏卵、特に茹で卵の卵殻を剥がしやすくする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茹で卵は、固化した卵白と卵殻が密着し、卵殻を剥がすときに固化した卵白もしくは卵全体を崩してしまうことがある。茹で方の工夫などが紹介されているが決定的ではなく、またジャーの中に水と茹で卵を入れ、蓋をして振ることによって卵殻を剥離させる器具(非特許文献1)や、中央に穴の開いた台と、その台に被せる蛇腹からなり、穴の上に頂部を砕いた卵を載置して蛇腹を被せ、蛇腹を圧縮させて内部の空気圧を上昇させ、その空気圧で穴から中身を押し出す器具(非特許文献2)も市販されている。前者は、卵に物理的な衝撃を加えるため、振り方が強い場合や柔らかい半熟卵の場合には卵自体が崩れやすい。後者は、器具が大型であり、また空気圧で押し出すために柔らかい半熟卵の場合には卵自体が崩れやすい。また、いずれの器具も外殻付きのまま茹で卵を提供するには適切でない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】https://www.amazon.co.jp/dp/B07T5RYTVM/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_r61kFbB3JQA0V
【非特許文献2】https://www.amazon.co.jp/dp/B07SJRFTP8/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_011kFbXJFT14J
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の欠点を少なくとも部分的に解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例えば、卵の卵殻外表面の少なくとも一部と流体密に接する接触部を有し、接触した一部を含む卵殻外表面の部分と共に閉じた流体密の空間を構成する空間構成部と、当該空間の内圧を変化させる圧力可変手段とを有する卵加工装置を提供する。閉じた流体密の空間を構成する茹で卵の卵殻外表面に小孔を形成すれば、その空間の内圧を変化させることによって外殻内の圧力が変化し、外殻と卵白の間を少なくとも部分的に剥離させ、卵の殻が剥きやすくなる。圧力可変手段は、閉じた流体密の空間に流体(例えば空気)を送るポンプとすることができる。ポンプは、管等によって流体密の空間と接続される別体の構造としてもよいが、空間構成部の少なくとも一部をなす第1の部材と、その第1の部材と流体密に係合し、かつそれと相対的に移動可能な、空間構成部の少なくとも一部をなす第2の部材によって構成することもできる。また、変形して内部容積が変化する流体密の変形部材を備え、それにより流体密の空間を少なくとも部分的に構成することも可能である。その場合においては、変形部材をマニュアルで変形すること、または空間構成部と相対的に移動可能であり、かつ変形部材の少なくとも一部と係合する係合部を備え、係合部の移動によって変形部材を変形させることができる。この装置または方法によって剥きやすく加工された茹で卵を外殻付きのまま提供してもよく、またこの装置自体が小型化可能であるため、装置自体を卵スタンドして使用し、食べる人に操作させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】本発明の第2の実施態様の一部の平面図である。
【
図3】本発明の第3の実施態様の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に、本発明の第1の実施態様の装置の中心軸を通る断面図を示す。この装置は、卵受け1と外筒2と内筒3とを包含し、中心軸に関して実質的に回転対称形であり、入れ子に組み立てられた外筒2と内筒3の内側に蛇腹21が収容される。装置は、内筒3の底部33を下にしてテーブル面等の上に自立し、底部33には、蛇腹21を下から支える支持体34が備わる。支持体34は、底部33から連続する面の少なくとも一部を構成する部材であるが、底部33から上方にオフセットされた面の少なくとも一部を構成する部材とすること、またはまったく省略してしまうこともできる。省略した場合には、例えばテーブル面等またはユーザの掌がその役割を担うことになる。卵受け1は上部が開口11により開口しており、内側に卵4を適当な余裕を持って保持するべく、一般的な鶏卵の外形に倣うくびれ形状に形成される。卵受け1は外筒2と一体成形されるか、または実質的に流体密に結合される。外筒2には、孔22が設けられており、この孔22を介して蛇腹21が卵受け1の内側と流体密に結合される。
図1では、蛇腹21の上端が外筒2の上面の内側に結合される形で図示されているが、蛇腹21を1つの部品として扱う場合には、例えば蛇腹21の上端を細首状にして孔22に嵌め込む形が適切かも知れない。いずれにしても蛇腹21の内部と卵受け1の内部とが流体密に直接もしくは間接的に結合されるので、開口11(必ずしも卵受け1の縁であることを意味しない)を閉じた場合には、卵受け1内部と蛇腹21内部(および場合により外筒2の一部)によって実質的に流体密の空間Sが形成され、当該空間は蛇腹21の圧縮により内圧が上昇する。卵4の卵殻外表面の一部を用いてこの空間Sを形成するために卵受け1のくびれ形状部分の内壁にリング12が備えられる。卵受け1の内表面に設けられたフランジ10は、リング12の安定化に寄与するが、当該内表面にリング12が嵌まり込む溝を形成してそれに代えてもよい。リング12は、シリコン等の弾性体であり、卵4が押し付けられると卵4の卵殻外表面の一部と流体密に接することができる。つまり、自立しているこの装置の卵受け1に卵4を入れて卵4を押し下げることにより卵4の卵殻外表面の一部がリング12と流体密に接して空間Sが形成され、かつその押し下げによって蛇腹21が圧縮されて空間Sの内圧が上昇する。卵4の押し下げを解放すると、卵4の卵殻外表面の一部とリング12の間に隙間が生まれる。この隙間の形成を促進するために、リング12には突起13が備えられる。突起13は、押し下げがない状態、例えば卵4の自重程度の圧力では卵4の卵殻外表面の一部とリング12の間に隙間を作るが、押し下げがあると撓んで卵4の卵殻外表面の一部とリング12の間の流体密の接触を妨げない。リング12の円周周囲に少なくとも1つあればよいが、バランスを考えると等間隔に複数個、例えば4つ備えることが好ましい。
【0008】
圧縮された蛇腹21の復元を助けるために内筒3に関して外筒2およびそれと結合された蛇腹21を押し上げる圧縮コイルばね23が外筒2と内筒3の間に備えられる。ばね23の上端は外筒2の上面の内側に、その下端は、内筒3の外周面に装着されるストッパ31の上面に当接する。ストッパ31は、外筒2の下縁と干渉する大きさを有し、内筒3とストッパ31は、内筒3の外周面に形成されたねじ山32とストッパ31内周面に形成されたねじ溝(図示せず)を介して螺合するので内筒3に対する外筒2の相対的な移動量を調整できる。また、蛇腹21内には、内側の上面と下面を結ぶ紐21’が備えられ、ばね23による蛇腹21の不必要な伸びが防止される。したがって、ストッパ31を下げれば移動量が大きくなって蛇腹21の圧縮量が増加し、ストッパ31を上げれば圧縮量が減少する。空間Sが完全に閉じていれば、それにより内圧が増減し、逃げる部位があればそれを通る流体の量が増減する。
【0009】
この装置は、茹で卵を剥きやすく加工する。茹で卵を作る際は、通常、膨張による割れを防ぐために卵の気室側の卵殻に孔を開けてから茹でるので孔があるが、孔が開いてないか、または新たに穴を設ける方が好ましいとするときには、適切な部位(気室側とは限らない)に孔もしくは割れを設ける。好ましくはこのとき卵殻膜に適当な破れを作るとよいが必須ではない。そのようにして作られた卵4を
図1の装置の開口11から孔もしくは割れのある部位、例えば気室側を下にして入れてリング12の上に載置する。その状態で卵4を押し下げるとリング12が卵4の卵殻外表面の一部と流体密に接し、さらに押し下げることによって蛇腹21が圧縮されて空間Sの内圧が上昇し、それにより空間S内の空気が孔22を通って矢印Cの方向に移動し、卵殻に開けられた孔から卵殻内(および場合によっては卵殻膜内)に入って矢印Dのように卵殻(および場合によっては卵殻膜)の内側を流れ、それが卵4の卵殻(および場合によっては卵殻膜)と固化した卵白の間を少なくとも部分的に剥離させる。剥離が不充分であると判断されるときは、卵4を持ち上げるようにして押し下げを解放すれば、リング12と卵4の卵殻外表面の間に隙間ができ、ばね23の復元力によって復帰する蛇腹21の負圧によって矢印A、Bのように空気が吸引されるので、再び卵4を押し下げて卵殻内(および場合によっては卵殻膜内)に空気を送り込むことができる。一度に送り込まれる空気の量はストッパ31の高さを変更することによって調整できる。
【0010】
卵4の卵殻(および場合によっては卵殻膜)と固化した卵白の間が少なくとも部分的に剥離されれば、卵殻を壊して中身を取り出すことが容易になる。目視できる卵4の部分、例えば気室側と反対側の卵殻の部分を少し壊しておけば、卵殻内の圧力の変化によってその部分が動くので空気が内部を流れたことがわかり、剥離が充分であるか否かの判断が容易になるだけでなく、空気の流れを促進する効果も得られる。卵殻の孔の部分(および好ましければ「少し壊し」た部分)の卵殻膜に適当な破れがあると卵殻膜と卵白の間の剥離がより促進されるが、それらがなくても効果は得られ、例えばこの装置を使用する過程で意図せずして破れが作られることもある。
【0011】
図1に示し、上で説明した構造は一例に過ぎない。
図2は、円周に沿って等間隔に8つのスリット13’が設けられたリング12を示しており、これを
図1の突起13付きのリング12に代えて用いて、卵4の押し下げ時にスリット13’両側の部材が撓んでスリットを閉じるようにすれば、上記同様の効果が得られる。また、
図3に示すように、リング12の上方の卵受け1内表面に、円周に沿って例えば等間隔に4箇所、柔らかい隆起14を備え、押し下げがないときには隆起14によって卵4を支え、押し下げがあるとそれが潰れてリング12と卵4の卵殻外表面の一部が流体密に接するようにしても上記同様の効果が得られる。要するにこれらの突起13や隆起14、あるいは
図2のスリットは、空間Sへの空気の流入を促進するためのものであり、押し下げ解放時にそれが得られるのであれば特に設けなくてもよく、空間Sへの空気の流入を促進することが目的であれば、例えば流入弁を蛇腹21の底部または外筒2の上面または卵受け1の側面等に備えることもできる。それとは別に、例えば卵受け1の内面の一部もしくは全部、または卵受け1全体がリング12(および突起13および/または隆起14)の機能を兼ねる構造のシリコン等の弾性体とすることもできる。審美的な意味においては、くびれ形状の卵受け1が好ましいが、例えば孔22にリング12を装着するか、または卵4の卵殻外表面の一部と流体密に接する加工を行えば外筒2もしくは蛇腹21が卵受け1の機能を兼ねることができる。
【0012】
図1の蛇腹21を取り除き、内筒3の内側に収まる大きさのばね23を底部33の内面と外筒2の上面の内側との間に備え、外筒2と内筒3の間のばね23のあった隙間に流体密を確保しつつそれらの相対的な移動を可能にする例えばOリングを備えれば、外筒2と内筒3によってポンプ構造が得られ、上記同様の効果がもたらされる。逆に蛇腹21を自立可能な構造とし、蛇腹21と卵受け1を直結して外筒2および内筒3を実質的に省略することもできる。その場合には、必要に応じて蛇腹21内にばね23を収めることができる。蛇腹21は、筒3内のように横方向の膨張が制限される領域内での伸縮に適しているが、必ずしもこの形状である必要はなく、単純な袋または風船状の空気溜めであってもよい。特に外筒2および内筒3を実質的に省略する構造では、袋または風船状の空気溜めを手で絞ることも考えられる。さらにその空気溜めと卵受け1の内部空間とを管により接続して適当な台の上に卵受け1と並べる構造、その空気溜めを小型の押し下げポンプに代える構造も考えられる。
【0013】
外筒2および内筒3が円筒形である必要もなく、多角形柱または何らかの図形やキャラクタを模した形状としてもよい。
図1の外筒2と内筒3の役割を入れ替え、卵受け1と結合する部材(
図1の外筒2)を内側部材とし、底部33をなす部材(
図1の内筒3)を外側部材とすることも当然のことながら可能である。特にその場合には、外側部材に設けた孔に内側部材を嵌め込む構造が考えられ、外側部材を多様な形状にすることが容易になる。この場合においても支持体34を省略することは可能であり、テーブル面等がその役割を担うことが容易に予測できる。
【0014】
実施態様では流体を空気として説明したが、それに代えて水を用いる変形も可能であり、例えば
図1の装置に水を入れるか、装置自体を少なくとも部分的に水中に入れて使用すれば構造を変えることなく水を使用することができる。料理等によってはその方が好ましいことがあるかも知れない。そのほか、当業者であれば、この開示から各部材の結合方法や固定方法、あるいは各部材の配置や全体的な構成等の多様な変形を思いつくであろうが、特許請求の範囲内に示された本発明の保護範囲もしくはそれの予測する範囲内においてそれらは均等であるとする。
【符号の説明】
【0015】
1 卵受け、2 外筒、3 内筒、4 卵、11 開口、12 リング、13 突起、13’ スリット、14 隆起、21 蛇腹、21’ 紐、22 孔、23 ばね、31 ストッパ、32 ねじ山、33 底部、34 支持体