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  • 特開-築造物形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032978
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】築造物形成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20220217BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20220217BHJP
   E02D 3/00 20060101ALI20220217BHJP
   E02B 3/10 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
E02D3/12 102
C09K17/06 P
E02D3/00 101
E02B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119862
(22)【出願日】2021-07-20
(62)【分割の表示】P 2020135796の分割
【原出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】515085945
【氏名又は名称】株式会社エスエスティー協会
(71)【出願人】
【識別番号】520396500
【氏名又は名称】飯田 哲夫
(71)【出願人】
【識別番号】520395787
【氏名又は名称】菊地 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【弁理士】
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】飯田 哲夫
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
2D118
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB05
2D040CA03
2D040CA10
2D043CA01
2D118BA01
2D118BA20
2D118CA07
2D118FA01
4H026CA02
4H026CC02
(57)【要約】
【課題】築造物に必要とされる強度を達成しながら、環境への懸念が少なく、残置時の撤去の必要性が少ない築造物を形成する築造物形成方法を提供する。
【解決手段】築造物形成方法は、水を含有する土と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合材料を用意することと、混合材料を成形することと、混合材料を固化することとを含む。混合材料を固化することが、混合材料内の水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、混合材料内の水を減らすことと、反応の熱による水の蒸発により混合材料内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む混合材料の粒子間の結合を強くすることとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含有する土と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合材料を用意することと、
前記混合材料を成形することと、
前記混合材料を固化することと、
を含む、築造物形成方法。
【請求項2】
前記混合材料を固化することが、前記混合材料内の水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、前記混合材料内の水を減らすことと、前記反応の熱による水の蒸発により前記混合材料内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む前記混合材料の粒子間の結合を強くすることとを含む、
請求項1に記載の築造物形成方法。
【請求項3】
前記混合材料を固化することにより形成される築造物が、地盤に直接接するように形成され、
前記混合材料に含まれる土が、前記築造物の形成される地盤から採取されたものである、
請求項1または請求項2に記載の築造物形成方法。
【請求項4】
前記混合材料を成形することと、前記混合材料を固化することとが繰り返し実行されることにより、前記混合材料が層状に積み重ねられて段階的に築造物が形成される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の築造物形成方法。
【請求項5】
前記混合材料を固化することにより、地盤を高くする築造物と地盤の強度を強くする築造物との少なくとも一方が形成される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の築造物形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、築造物形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川の堤防や、地盤の高さを上げる土盛り部分や、地盤改良のために地中に埋設された地盤改良構造物といった築造物が地盤の上または中に築造される。築造物は目的に応じて必要な強度まで固くする必要がある。従来、例えば特許文献1に開示されているように、地盤に形成された穴にセメント系固化材を含む材料を投入して固めることにより非常に固い築造物を形成する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-211382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セメント系固化材を使用して築造物を形成すると、築造物から六価クロムが地中に流出することによる環境への影響が懸念される。また、例えば築造物が不要となった場合、環境への配慮、次の工事のしやすさといった観点から、セメント系固化材を使用して形成した築造物は撤去する必要がある。撤去には多大なコストと労力が必要とされる。そこで、環境への影響の懸念が少なく、撤去の必要性の少ない築造物が求められる。
【0005】
本発明の目的のうちの1つは、築造物に必要とされる強度を達成しながら、環境への懸念が少なく、残置時の撤去の必要性が少ない築造物を形成する築造物形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の築造物形成方法は、水を含有する土と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合材料を用意することと、混合材料を成形することと、混合材料を固化することと、を含む、築造物形成方法である。
【0007】
第1の態様によれば、築造物に必要とされる強度を達成しながら、環境への懸念が少なく、残置時の撤去の必要性が少ない築造物を形成することができる。セメント系固化材を含めずに、粉体粘土と生石灰とを含む混合材料を使用して築造物を形成するので、築造物に必要とされる強度を達成した場合でも、セメント系固化材を含む場合に比べると築造物が固くなりすぎない。そのため、不要になった後に築造物を残置しても、後の地盤利用に影響を与えにくいので、撤去の必要性が少なくなる。
【0008】
第2の態様の築造物形成方法は、混合材料を固化することが、混合材料内の水と生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、混合材料内の水を減らすことと、反応の熱による水の蒸発により混合材料内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む混合材料の粒子間の結合を強くすることとを含む、第1の態様に記載の築造物形成方法である。
【0009】
第2の態様によれば、混合材料内の水と生石灰との反応により、粉体粘土を含む混合材料の粒子間の結合を強くすることができるので、必要とされる強度をもつ強固な築造物を形成することができる。反応により生じた消石灰は、築造物の隙間を埋めて築造物を強固にする役割を果たす。従来は、築造物の材料に粘土を含めると築造物が弱くなるおそれがあるという理由から粘土の使用が避けられるが、本態様によれば、水を吸収可能な状態の粉体粘土を使用し、さらに生石灰と水との反応により粉体粘土に吸収された水を急速に抜いて、従来とは逆に、必要とされる強度をもつ強固な築造物を作成することができる。
【0010】
第3の態様の築造物形成方法は、混合材料を固化することにより形成される築造物が、地盤に直接接するように形成され、混合材料に含まれる土が、築造物の形成される地盤から採取されたものである、第1の態様または第2の態様に記載の築造物形成方法である。
【0011】
第3の態様によれば、築造物の形成される地盤から採取された土が使用されるので、築造物を残置しても、後の地盤利用に影響を与えにくく、撤去の必要性を少なくできる。
【0012】
第4の態様の築造物形成方法は、混合材料を成形することと、混合材料を固化することとが繰り返し実行されることにより、混合材料が層状に積み重ねられて段階的に築造物が形成される、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに記載の築造物形成方法である。
【0013】
第4の態様によれば、混合材料が層状に積み重ねられて段階的に築造物が形成されるので、築造物の中まで十分に固くしながら、比較的大きな築造物を形成することができる。
【0014】
第5の態様の築造物形成方法は、混合材料を固化することにより、地盤を高くする築造物と地盤の強度を強くする築造物との少なくとも一方が形成される、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに記載の築造物形成方法である。
【0015】
第5の態様によれば、地盤を高くする築造物と地盤の強度を強くする築造物との少なくとも一方の形成において、築造物に必要とされる強度を達成しながら、環境への懸念が少なく、残置時の撤去の必要性が少ない築造物を形成することができる。
【0016】
本発明によれば、築造物に必要とされる強度を達成しながら、環境への懸念が少なく、残置時の撤去の必要性が少ない築造物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の築造物形成方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(築造物形成方法)
図1のフロー図を参照して一実施形態の築造物形成方法について説明する。築造物として、例えば、河川の堤防として利用される固い築造物、地盤を高くする固い土盛り部分(例えば、建築物を建てるための土台)、地盤の強度を強くするために地中に埋設された地盤改良構造物、穴を埋める部材が挙げられるが、これらに限定されない。本実施形態では、築造物は地表から上方に向かって形成されるもの、地表から地中に向かって形成されるものを例示する。
【0019】
まず、ステップS11において、水分を含む土と、実質的に水分を含まない粉体粘土と、粉体状の生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合材料を用意する。
【0020】
一例において、土の含水率は、粉体粘土および生石灰に水を提供することができる程度であって、過剰に柔らかくならない程度である。粉体粘土および生石灰に水を提供するため、土の含水率は、約80%以上であることが好ましく、一例において約90%~約80%、約85%~約80%、または約80%である。一例において、充填前に形成された混合材料には、土に含まれる水分以外に外部から水が添加されない。土は、築造物が築造される地盤から採取された現地土を含んでよい。
【0021】
一例において、土を除いた混合材料の粒径は0mmより大きく2mm以下である。一例において、粉体粘土の粒径は好ましくは5μm以下、3.9μm未満、または2μm以下であるがこれらに限定されない。粉体粘土および生石灰は外部から水を吸収可能な程度に十分に乾燥している。一例において、混合材料は、粒径が均一ではない砂を含んでもよい。砂は主として粉体粘土より粒径が大きい。
【0022】
次に、ステップS12において、混合材料を成形する。成形の際には、混合材料中の水分や気泡が排出するように、例えば「こて」のような部材により塗りつけるようにして、混合材料を締め固めて、混合材料を高密度に圧縮することが望ましい。一例において、パワーショベル等の機械又は工具により力を加えることにより外形を整えながら、混合材料を締め固めてもよい。
【0023】
一例において、河川の堤防となる築造物を形成する場合、または、地盤の高さを高くする築造物を形成する場合、パワーショベル等の機械又は工具により力を加えることにより外形を整えながら、混合材料の高さを徐々に上げていく。一例において、地盤を強化するための円筒状の築造物を形成する場合、回転するオーガーで締め固めながら穴内に混合材料を充填する。
【0024】
次に、ステップS13において、混合材料を固化させる。混合材料中の生石灰が混合材料の土中の水分と反応して消石灰になる。生石灰が消石灰になる過程で熱が発生する(一例において発火する)ので、混合材料が非常に高温となる。発生した熱により、混合材料中の粘土が他の材料とともに焼き固められたような状態となり、混合材料の材料が相互に強固に結びつく。このようにして混合材料が固化して、必要とされる強度をもつ強固な築造物となる。例えば地盤改良のために地中に形成される柱状の築造物の場合、地盤よりある程度大きいN値(強度)が必要とされる。例えば地盤の穴の埋め戻しのための築造物の場合、穴の周辺の地盤のN値であって穴のいずれかの深さにおけるN値と等しいN値が必要とされる。
【0025】
一旦、粉体粘土が水分を吸収して流動性をもった粘土となるので、混合材料の材料間の隙間が高密度に粘土で埋められる。そのため発熱により固まったときに空隙が非常に少ない築造物が形成される。発生した消石灰は築造物の空隙を埋める。混合材料に粒径が均一ではない砂が混ぜられている場合、混合材料を構成する材料間の隙間を小さくすることができる。さらに、混合材料に粉体粘土が含まれているので、混合材料を構成する材料間の隙間をさらに小さくすることができる。
【0026】
混合材料に現地土を混合した場合、築造物が現地土に近い組成となり、環境に影響を与えにくくすることができる。セメント系固化材を含まないので六価クロムの溶出を防ぎ、環境に優しい築造物を形成することができる。地盤の穴に混合材料を充填して築造物を形成する場合は消石灰が地盤を安定化することができる。
【0027】
一例において、ステップS12において混合材料を成形することと、ステップS13において混合材料を固化させることとが繰り返し実行されてよい。例えば、まず、ある高さまで築造物の一部を形成し、次に、形成された部分の上に重ねてさらに築造物の一部を形成してよい。すなわち、層状に段階的に築造物を形成してもよい。
【0028】
一例において、環境に悪影響を与えにくいという利点を考えると、本実施形態の築造物形成方法は地盤に直接接するように形成され、混合材料に含まれる土が築造物の形成される地盤から採取されたものであることが望ましい。築造物の形成される地盤とは築造物の直下の地盤、または直下の地盤と同じ地質の築造物の周辺地盤を含む。
【0029】
(まとめ)
本実施形態によれば、築造物に必要とされる強度を達成しながら、環境への懸念が少なく、残置時の撤去の必要性が少ない築造物を形成することができる。セメント系固化材を含めずに、粉体粘土と生石灰とを含む混合材料を使用して築造物を形成するので、築造物に必要とされる強度を達成した場合でも、セメント系固化材を含む場合に比べると築造物が固くなりすぎない。そのため、不要になった後に築造物を残置しても、後の地盤利用に影響を与えにくいので、撤去の必要性が少なくなる。
【0030】
本実施形態によれば、混合材料内の水と生石灰との反応により、粉体粘土を含む混合材料の粒子間の結合を強くすることができるので、必要とされる強度をもつ強固な築造物を形成することができる。反応により生じた消石灰は、築造物の隙間を埋めて築造物を強固にする役割を果たす。従来は、築造物の材料に粘土を含めると築造物が弱くなるおそれがあるという理由から粘土の使用が避けられるが、本態様によれば、水を吸収可能な状態の粉体粘土を使用し、さらに生石灰と水との反応により粉体粘土に吸収された水を急速に抜いて、従来とは逆に、必要とされる強度をもつ強固な築造物を作成することができる。
【0031】
本実施形態によれば、築造物の形成される地盤から採取された土が使用された場合、築造物を残置しても、後の地盤利用に影響を与えにくく、撤去の必要性を少なくできる。
【0032】
本実施形態によれば、混合材料が層状に積み重ねられて段階的に築造物が形成された場合、築造物の中まで十分に固くしながら、比較的大きな築造物を形成することができる。
【0033】
地盤を高くする築造物と地盤の強度を強くする築造物との少なくとも一方の形成において、築造物に必要とされる強度を達成しながら、環境への懸念が少なく、残置時の撤去の必要性が少ない築造物を形成することができる。
図1