IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファーストスクリーニングの特許一覧

<>
  • 特開-電気化学センサユニット 図1
  • 特開-電気化学センサユニット 図2
  • 特開-電気化学センサユニット 図3
  • 特開-電気化学センサユニット 図4
  • 特開-電気化学センサユニット 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032982
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】電気化学センサユニット
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/28 20060101AFI20220217BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
G01N27/28 M
G01N27/28 321F
G01N27/416 336J
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122219
(22)【出願日】2021-07-27
(62)【分割の表示】P 2021005829の分割
【原出願日】2020-08-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】318004947
【氏名又は名称】株式会社ファーストスクリーニング
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】浅井 開
(72)【発明者】
【氏名】金澤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】益子 淳
(57)【要約】
【課題】被験試料中の特定成分の濃度を安定して正確に検出することができる電気化学センサユニットを提供する。
【解決手段】被検液中に含まれる特定成分と反応する第1センサ電極を内包する第1内部セルと、第1内部セルの少なくとも一部を囲い、外部から被検液を取り入れて第1内部セル内へ供給するよう構成された第1外部セルと、を備える第1保液構造を有し、第1内部セルは、取り入れた被検液を、定常的な流れのある状態としつつ、第1センサ電極へ接触させるように構成されている電気化学センサユニット。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検液中に含まれる特定成分と反応する第1センサ電極を内包する第1内部セルと、
前記第1内部セルの少なくとも一部を囲い、外部から被検液を取り入れて前記第1内部セル内へ供給するよう構成された第1外部セルと、を備える第1保液構造を有し、
前記第1内部セルは、取り入れた被検液を、定常的な流れのある状態としつつ、前記第1センサ電極へ接触させるように構成されている電気化学センサユニット。
【請求項2】
前記第1内部セルは、前記第1外部セル内に滞留している被検液を取り入れることが可能な第1流入口と、前記第1内部セル内から被検液を排出することが可能な第1排液口と、を有し、
前記第1排液口のコンダクタンスが、前記第1流入口のコンダクタンスよりも小さくなるように構成されている請求項1に記載の電気化学センサユニット。
【請求項3】
前記第1内部セルの内部形状が、前記第1内部セル内へ被検液を取り入れる際に毛細管現象が発現するような形状となっている請求項1または2に記載の電気化学センサユニット。
【請求項4】
前記第1内部セルの内部形状が、前記第1内部セル内へ取り入れた被検液を表面張力により定常的な流れのある状態とするような形状となっている請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項5】
前記第1外部セルは、外部から被検液を取り入れることが可能な第1採液口を有し、
前記第1採液口に向けて被検液をかけ流し、前記第1外部セルの内部へ被検液を取り入れている期間中において、前記第1内部セル内に取り入れた被検液を定常的な流れのある状態とすることが可能なように構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項6】
前記第1外部セルは、被検液を排出することが可能な第1排液口を有し、
前記第1排液口から被検液を排出している期間中において、前記第1内部セル内に取り入れた被検液を定常的な流れのある状態とすることが可能なように構成されている請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項7】
前記第1外部セルは、被検液を取り入れることが可能な第1採液口と、被検液を排出することが可能な第1排液口と、を有し、
前記第1排液口のコンダクタンスが、前記第1採液口のコンダクタンスよりも小さくなるように構成されている請求項1~6のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項8】
前記第1内部セルの少なくとも一部を囲む被検液の第1液浴を、前記第1外部セルの内部に発現させることが可能なように構成されている請求項7に記載の電気化学センサユニット。
【請求項9】
被検液を定常的な流れのある状態として濃度測定を開始するタイミングにおいて、前記第1液浴を前記第1外部セルの内部に発現させることが可能なように構成されている請求項8に記載の電気化学センサユニット。
【請求項10】
被検液を定常的な流れのある状態としながら行う濃度測定を終了するタイミングにおいて、前記第1液浴を前記第1外部セルの内部に消滅させずに維持することが可能なように構成されている請求項8または9に記載の電気化学センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体液などの被検液中に含まれる特定成分の濃度を測定する電気化学センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体液などの被検液を接触させたセンサ電極に対して電圧掃引操作等を行って所定の反応を進行させ、液中に含まれる特定成分の濃度を測定する電気化学センサユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-012056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、被検液中に含まれる特定成分の濃度を安定して正確に測定することができる電気化学センサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
被検液中に含まれる特定成分と反応するよう構成されたセンサ電極と、
被検液を、静止状態としつつ、センサ電極へ接触させるように構成された保液構造と、
を備える電気化学センサユニットが提供される。
【0006】
本開示の他の態様によれば、
被検液中に含まれる特定成分と反応するよう構成されたセンサ電極と、
被検液を、定常的な流れのある状態としつつ、センサ電極へ接触させるように構成された保液構造と、を備える電気化学センサユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、被検液中に含まれる特定成分の濃度を安定して正確に測定することができる電気化学センサユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一態様における測定系1の構成を示す模式図である。
図2】本開示の一態様における保液構造20sの概略構造を示す断面図である。
図3】本開示の他の態様における保液構造20fの概略構造を示す断面図である。
図4】本開示の実施例におけるセンサユニット100の斜視図である。
図5】(a)は本開示の実施例におけるセンサユニット100の平面断面図であり、(b)は本開示の実施例におけるセンサユニット100の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<発明者が得た知見>
電気化学反応を用いて被検液(液状の被験試料)中に含まれる特定物質の濃度を測定する際、被検液を静止状態としつつセンサ電極に接触させて測定する方がよい場合と、被検液を定常的な流れのある状態(安定なフロー状態)としつつセンサ電極に接触させて測定する方がよい場合と、の2通りがある。
【0010】
前者の場合とは、例えば、被検液中における尿素、尿酸、アスコルビン酸の濃度を測定する場合が挙げられる。これらの物質は、被検液中における拡散のみによって、充分な感度をもって濃度測定を行うことができる傾向がある。ここで、センサ電極に接触させる被検液に動き(流れ)があると、センサ電極に供給される物質の量がこの液の動きによって変化し、その結果、濃度の測定結果が不安定となる(精度が安定しない)場合がある。そのため、これらの物質の濃度測定を行う際には、被検液を静止状態としつつセンサ電極に接触させて測定することが好ましい。これより、測定の安定性や精度を高めることが可能となる。また、センサ電極の表面に、酵素含有膜やイオン交換膜などの表面装飾膜が設けられている場合にも、同様の傾向が得られる。すなわち、被検液を静止状態としつつセンサ電極に対して接触させてその状態を維持することにより、測定の安定性、精度を高めることが可能となる傾向がある。
【0011】
後者の場合とは、例えば、被検液中におけるクレアチニンなどの物質の濃度を測定する場合が挙げられる。クレアチニンなどの物質は、被検液中における拡散のみによっては、測定の感度が不足する傾向がある。そこで、センサ電極に対して、被検液を流れのある状態(フロー状態)で接触させ、センサ電極の表面へ供給する特定物質の量をこの液の流れに応じて増やすことで、測定の感度を増幅させることが可能となる。ただし、その際における被検液の流れは、センサ電極に対して略一定の流路、流速をもって安定して流れ続ける状態、いわゆる、定常的な流れのある状態(安定したフロー状態)とすることが好ましい。フロー状態が不安定であると、センサ電極に供給される特定成分の量が、フロー状態の変動によって変化してしまい、その結果、濃度測定の結果が不安定となる(精度が安定しなくなる)ためである。なお、クレアチニンは、センサ電極の表面に形成されている酸化層(CuO層)をエッチングし、下地である銅層(Cu層)を露出させるよう作用する。そして、このCu層の露出によって、濃度検出が可能となり、また、感度が向上することになる。クレアチニンを含む被検液をフロー状態としつつセンサ電極に対して接触させると、センサ電極へのクレアチニンの供給量が増えることで、酸化層のエッチングが効率的に進行し、結果として、クレアチニンの濃度測定を、より速やかに開始し、また、より感度よく行うことが可能となるという副次的な効果が得られるようになる。
【0012】
本開示は、上述の知見に鑑みなされたものであり、被検液中に含まれる特定物質の濃度を測定する際、センサ電極に接触させる被検液を速やかに静止状態とし、或いは、速やかに安定的なフロー状態とし、これらのうち少なくともいずれかにより、濃度測定の安定性、正確性を高めることが可能な技術を開示するものである。
【0013】
<システム構成>
図1に示す測定系(システム)1は、一例として、電気化学センサユニット(センサユニット)100と、測定器200と、判定支援装置300と、を備えている、測定系1は、被験液中に含まれる種々の成分(特定物質、被験物質)の濃度等を測定し、その結果に基づいて、被験者の健康状態を示唆する判定結果データ等を出力することが可能なように構成されている。
【0014】
被検液としては、尿、唾液、痰、鼻水、涙、汗、血液などの各種体液が挙げられる。被検液が尿である場合、特定物質としては、尿素、アンモニア、クレアチニン、尿酸、アミノ酸、アスコルビン酸、リン、シュウ酸、亜硝酸塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、タンパク質、尿糖、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、サイトカイン、コルチゾール、赤血球、白血球、血小板などが挙げられる。
【0015】
センサユニット100は、電気化学反応を生じさせるためのセンサ電極10を1つ以上備えている。センサ電極10は、例えば、参照電極、作用電極、対向電極といった複数の電極を含みうる。センサ電極10を構成するこれらの電極は、測定対象とする特定成分に応じて、形状、材料などが適宜決定される。作用電極等の特定の電極の表面には、特定成分のみを透過させる機能膜や、特定成分のみと反応する機能膜として、酵素含有膜、イオン交換膜などの所定の表面装飾膜が設けられる場合がある。
【0016】
センサユニット100は、センサ電極10に接触させる被検液を保持する保液構造20を備えている。保液構造20には、被検液を静止状態としつつセンサ電極10に接触させる構造(保液構造20s)や、被検液をフロー状態としつつセンサ電極10に接触させる構造(保液構造20f)がある。これらの具体的態様については後述する。
【0017】
測定器200は、センサユニット100を装着可能に構成され、図示しない導体配線を介してセンサ電極10に電気的に接続されている。被験液を保液構造20により保持しつつセンサ電極10に接触させ、測定器200からセンサ電極10に対して所定の電圧掃引走査等を行うことにより、被検液中に含まれる特定成分を電気分解等させ、その際に生じる反応の大きさから、特定成分の濃度等を測定することが可能なように構成されている。測定器200は、上述の測定によって得られた特定成分の濃度を示すデータを、無線通信手段や有線通信手段等を通じて、判定支援装置300に対して送信することが可能なように構成されている。
【0018】
判定支援装置300は、CPU、RAM、ストレージ、出力機能、および、通信機能などを備えたコンピュータ(スマートフォン、タブレット、PC等)として構成されている。判定支援装置300は、所定のタイミングで受信した濃度データに基づいて、被験者の健康状態を示唆する判定結果データ等を、被験者や、他の情報処理装置へと出力することが可能なように構成されている。
【0019】
なお、図1に示すセンサユニット100は、上述したように測定器200とは着脱可能に構成されており、また、電圧掃引操作等の複雑な機能を有しておらず、非常に簡素な構成となっている。センサユニット100は、低コストで実現され、使い捨てでの使用が可能である。これにより、被験者は、被験者の健康状態を示唆する判定結果データ等を、例えば、毎日、或いは、一日に数回といった高い頻度で、取得することが可能となっている。
【0020】
<保液構造の一態様:静止セル>
以下に、被検液を、静止状態としつつ、センサ電極へ接触させるように構成された保液構造20sの構成例について、図2を用いて説明する。
【0021】
保液構造20sは、センサ電極10sを内包する内部セル(内槽)25sと、内部セル25sの少なくとも一部を囲む外部セル(外槽)21sと、の二重構造(二重セル構造、二重槽構造)を有している。なお、本明細書において、「外部セルが内部セルの少なくとも一部を囲む」とは、外部セルが内部セルの全体を囲む場合(全体を内包する場合)、および、外部セルが内部セルの一部を囲む場合のうち、少なくともいずれかの場合を意味している。また、ここでいう「外部セルが内部セルの一部を囲む」とは、外部セルが内部セルの一部を内包する場合、および、外部セルが内部セルを内包していないものの、外部セルと内部セルとが隔壁1枚を隔てて隣接している場合のうち、少なくともいずれかの場合を意味している。本態様では、外部セル21sが内部セル25sの全体を内包(収容)している場合を示している。
【0022】
(外部セル21s)
外部セル21sは、内部セル25sの少なくとも一部(ここでは全体)を内包する中空容器として構成されている。外部セル21sの内部空間、すなわち、内部セル25sと外部セル21sとの間隙には、外部から被検液を取り入れて保持することが可能な保液空間28sが構成されている。
【0023】
外部セル21sの一端側には、外部から被検液を取り入れることが可能な採液口22sが設けられている。また、外部セル21sの他端側、例えば、内包する内部セル25sを挟んで採液口22sと対向する側には、保液空間24s内から被検液を排出することが可能な排液口23sが設けられている。
【0024】
採液口22sのコンダクタンス、すなわち、採液時の被検液のコンダクタンスは、採液口22sの形状、大きさなどによって調整することができる。また、排液口23sのコンダクタンス、すなわち、排液時の被検液のコンダクタンスは、排液口23sの形状、大きさなどによって調整することができる。本態様においては、これらがそれぞれ調整されることで、排液時の被検液のコンダクタンスが、採液時の被検液のコンダクタンスよりも小さくなるように構成されている。
【0025】
なお、本明細書において、コンダクタンスとは、流体の流れやすさ(例えば、採液のしやすさ、排液のしやすさ)を意味している。そして、被検液のコンダクタンスが大きいとは、被検液の流動抵抗(流入抵抗、排出抵抗)が小さいこと、すなわち、被検液を流しやすいこと(採液しやすいこと、排液しやすいこと)を意味している。また、被検液のコンダクタンスが小さいとは、被検液の流動抵抗(流入抵抗、排出抵抗)が大きいこと、被検液を流しにくいこと(採液しにくいこと、排液しにくいこと)を意味している。
【0026】
以下、この点について詳しく説明する。なお、以下の説明では、保液構造20sを備えるセンサユニット100が、図1に模式的に示すように、所定の姿勢(使用時姿勢)で保持されていることを前提としている。ここで「使用時姿勢」とは、被検液の採液や濃度測定を行う際における、センサユニット100がとるべき望ましい姿勢のことである。センサユニット100が使用時姿勢で保持されている間は、採液口22sが鉛直上方寄りを向き、排液口23sが鉛直下方寄りを向き、かつ、これらの中心を結ぶ線Lと鉛直方向とのなす角Rが、例えば、60°の範囲内、好ましくは45°の範囲内となっているものとする。
【0027】
採液時における被検液のコンダクタンスは、センサユニット100を上述の使用時姿勢で保持しつつ、保液構造20sの上方から採液口22sに向けて被検液をかけ流した際に、保液空間24s内へ被検液を取り込むことができるような大きさに設定されている。かけ流しの方向から見た採液口22sの形状は、採液時の被検液のコンダクタンスを低下させにくい形状、例えば、正方形や円形などの非扁平な形状とすることが好ましい。
【0028】
排液時における被検液のコンダクタンスは、センサユニット100を上述の使用時姿勢で保持しつつ、保液構造20sへ向けた被検液のかけ流しを継続した際に、排液口23sを介した被検液の排出が可能であるとともに、排液口23sを介して排出される被検液の流量(排液流量)が、採液口22sを介して取り込まれる被検液の流量(採液流量)よりも小さくなるような大きさに設定されている。排出方向から見た排液口23sの形状は、正方形や円形などとしてもよいが、排液時の被検液のコンダクタンスを低下させやすい形状、例えば、長方形や長円などの扁平な形状(スリット形状)とすることもできる。
【0029】
上述の構成によれば、センサユニット100を使用時姿勢で保持しつつ、保液構造20sへ向けた被検液のかけ流しを継続することにより、保液空間24s内に、被検液を一時的に滞留させることが可能となる。そして、かけ流し時間の経過とともに、保液空間24s内に滞留させた被検液の液面を徐々に上昇させ(滞留させた被検液の量を徐々に増加させ)、内部セル25sの少なくとも一部を、被検液中に浸漬させることが可能となる。すなわち、外部セル21s内に、内部セル25sの少なくとも一部、好ましくは全体(ここでは全体)を囲む被検液の液浴を発現させることが可能となる。
【0030】
この液浴は、上述のかけ流しを開始してから所定時間が経過することで発現する。そして、かけ流しが終了した後も、所定の期間中は液浴が維持される。そして、かけ流しを終了した状態で、保液構造20sを使用時姿勢でさらに長い間保持し続けると、保液空間24s内からほぼすべての被検液が排出され、液浴は完全に消滅することとなる。
【0031】
本明細書では、液浴が発現する期間を期間S1とも称する。期間S1の開始タイミング(液浴が発現するタイミング)や終了タイミング(液浴が消滅するタイミング)は、保液空間24sの容積や、採液時および排液時の被検液のコンダクタンス等を調整することによって、幅広く制御することが可能である。そして例えば、期間S1の開始タイミングを、後述する期間S2(被検液を静止状態としつつ、センサ電極10sへ接触させ、濃度測定を行う期間)の開始タイミングよりも、先のタイミングとすることができる。すなわち、濃度測定の開始時点において、液浴を予め発現させておくことができる。また、期間S1の終了タイミングを、後述する期間S2の終了タイミングよりも後のタイミングとすることもできる。すなわち、少なくとも濃度測定の開始から終了の時点にかけて、液浴を消滅させずに維持することができる。
【0032】
(内部セル25s)
内部セル25sは、センサ電極10sを内包する中空セルとして構成されている。内部セル25sの内部には、保液空間28s内に滞留した被検液を取り入れて保持することが可能な保液空間28sが構成されている。
【0033】
内部セル25sの一端側には、保液空間24s内に滞留している被検液を取り入れることが可能な流入口26sが設けられている。
【0034】
流入口26sは、採液口22sと対向しない位置であって、例えば、内部セル25sの側壁のうち下方側等に設けるのが好ましい。このように構成することで、採液口22sに向けてかけ流しされた被検液が、流入口26sを介して保液空間28s内へ直接流入することを抑制することが可能となる。すなわち、採液口22sに向けてかけ流された被検液を、保液空間24s内にいったん滞留させてその流速を低下させ、その後、この減速された被検液を、流入口26sを介して保液空間28s内へ取り入れることにより、保液空間28s内への被検液の流入をソフトに行うことが可能となる。その結果、被検液のかけ流しの実行期間中において、内部セル25s内における被検液の撹拌状態や乱流状態の発生を抑制することができ、内部セル25s内において、被検液を、速やかに、実質的に流れのない状態、すなわち、静止状態とすることが可能となる。
【0035】
内部セル25sの他端側には、保液空間24sをバイパスして保液空間28sと外部セル21s外の空間とを連通させる排気口27sが設けられている。排気口27sは、流入口26sを介して保液空間28s内へ被検液を取り入れる際に、保液空間28s内に残留している雰囲気を、外部セル21sの外部へ逃がすベントラインとして作用する。このように構成することで、被検液を保液空間28s内へ取り込む際、保液空間28s内の残留雰囲気を外部へ逃がし、保液空間28s内への被検液の取り込みを促し、保液空間28s内の全体を、被検液によって充填することが、容易かつ確実に行えるようになる。なお、排気口27sは、センサユニット100を上述した使用時姿勢で保持した際に、排気口27sが鉛直上方側に位置するような場所に設けるのが好ましい。これにより、保液空間28s内からの雰囲気の排出を促し、保液空間28s内の全体を被検液によって充填させるという上述の作用が、より確実に得られるようになる。
【0036】
なお、排気口27sのコンダクタンスは、流入口26sのコンダクタンスよりも小さくなるように構成することが好ましい。さらには、排気口27sは、保液空間28s内の残留雰囲気の流通は許容するものの、被検液の流通は許容しないような構成とすることが好ましい。このように構成することで、保液空間28s内を被検液によって充填した後、保液空間28s内の被検液が排気口27sを介して外部セル21sの外部へ流出しようとする動きを抑制することが可能となる。また、保液空間28s内を被検液によって充填した後、流入口26sを介して保液空間28s内に被検液が流入しようとする動きを抑制することも可能となる。これらの結果、保液空間28s内において、被検液を、実質的に流れのない状態、すなわち、静止状態とすることが、速やか、かつ、確実に行えるようになる。なお、排気口27sの大きさ、形状を、その内部において被検液の表面張力が大きく作用するような大きさ、形状とする(流路を狭くしたり、湾曲させたり、長くしたりする)ことにより、排気口27s内において、気体の流通を許容しつつ、被検液の流通のみを選択的に抑制することが可能となる。なお、排気口27sに、気体のみを通過させ、液体の通過を阻害するような機能膜(気液分離膜、気泡分離膜)を設けるようにしてもよい。
【0037】
上述の構成によれば、センサユニット100を使用時姿勢で保持しつつ、被検液のかけ流しを行うことで、保液空間28s内へ被検液を流入させ、かつ、被検液を静止状態(実質的に流れのない状態)としつつ、センサ電極10sへ接触させることが可能となる。そして、静止状態の被検液をセンサ電極10sへ接触させた状態で、センサ電極10sに対して電圧掃引操作等を行うこと、すなわち、被検液中に含まれる特定成分の濃度測定を静止状態で行うことが可能となる。このように構成された内部セル25sを、本明細書では、静止セルとも称する。
【0038】
ここで、内部セル25sの内部形状を、毛細管現象が発現することで内部セル25s内への被検液の取り入れが促されるとともに、内部セル25s内へ取り入れた被検液の表面張力が作用することで内部セル25s内において被検液が静止しやすくなる形状としてもよい。例えば、内部セル25s内の内部形状を、扁平な形状とすることによって、内部セル25s内への毛細管現象を利用した被検液の取り入れ作用が効果的に得られ、また、内部セル25s内へ取り入れた被検液の表面張力を利用した停止作用が効果的に得られるようになる。
【0039】
なお、この静止状態は、上述のかけ流しを開始してから所定時間が経過することで発現する。そして、かけ流しが終了した後も、所定の期間中は静止状態が維持される。そして、かけ流しを終了した状態で、保液構造20sを使用時姿勢でさらに長い間保持し続けると、保液空間28s内の被検液は保液空間24s内へと逆流し(静止状態が解除され)、排液口23sを介して排出されることになる。ただし、内部セル25s内の内部形状を上述のように扁平とした場合等には、内部セル25s内に、被検液の一部がわずかに残留する場合もある。
【0040】
本明細書では、被検液を静止状態としつつ、センサ電極10sへ接触させ、濃度測定を行う期間を、期間S2とも称する。上述したように、期間S1の開始、終了タイミングは、それぞれ、幅広く調整することが可能である。そのため、期間S2の開始タイミング(濃度測定の開始タイミング)において、液浴を予め発現させておくことができる。また、期間S2の終了タイミング(濃度測定の終了タイミング)において、液浴を消滅させずに維持することができる。
【0041】
(本態様により得られる効果)
本態様によれば、以下に示す1つ、または、複数の効果が得られる。
【0042】
(a)保液空間28s内に取り入れた被検液を静止状態としつつ、センサ電極10sへ接触させることが可能となる。そして、この静止状態で、被検液中に含まれる特定成分の濃度測定を行うことが可能となる。その結果、尿素、尿酸、アスコルビン酸などの物質、すなわち、被検液中における拡散のみによって、充分な感度をもって濃度測定を行うことができる物質の濃度を測定する際に、濃度測定の安定性、精度等を高めることが可能となる。また、センサ電極10sの表面に酵素含有膜やイオン交換膜などの表面装飾膜が設けられている場合において、濃度測定の安定性、精度等を高めることが可能となる。
【0043】
(b)採液口22へ向けた被検液のかけ流しの実行中であっても、すなわち、保液空間24s内において被検液の撹拌状態や乱流状態が発生している状態であっても、保液空間28s内に取り入れた被検液を速やかに静止させることが可能となる。これにより、被検液を静止状態とすることが望ましい上述の濃度測定を、速やかに開始することが可能となる。
【0044】
(c)排液口23sから被検液を排出している最中であっても、すなわち、保液空間24s内において被検液の流れが発生している状態であっても、保液空間28s内に取り入れた被検液を静止状態のまま維持することが可能となる。これにより、被検液を静止状態とすることが望ましい上述の濃度測定を、安定して継続することが可能となる。
【0045】
(d)内部セル25sの少なくとも一部を囲む被検液の液浴を発現させ、内部セル25s内に取り込まれた被検液の温度低下を抑制することが可能となる。結果として、測定結果が温度に大きく影響を受けるような測定を行う場合等においても、測定の安定性や精度を高めることが可能となる。
【0046】
(e)保液空間24sの容積や、採液時、排液時における被検液の各コンダクタンス等を調整することにより、液浴が発現するタイミングや液浴が消滅するタイミングを、幅広く制御することが可能である。これにより、被検液を静止状態として濃度測定を開始するタイミングにおいて、液浴を確実に発現させておくことが可能となる。また、被検液を静止状態としながら行う濃度測定を終了するタイミングにおいて、液浴を消滅させずに維持することが可能となる。これらの結果、上述した効果が、確実に得られるようになる。
【0047】
(f)かけ流しを終了した状態で、センサユニット100を使用時姿勢で保持し続けることにより、保液空間24s、28s内から、ほぼすべての被検液を排出することが可能となる。その結果、使用済みのセンサユニット100を、容易に廃棄することが可能となる。
【0048】
<保液構造の他の態様:フローセル>
以下に、被検液を、定常的な動きのある状態としつつ、センサ電極へ接触させるように構成された保液構造20fの構成例について、図3を用いて説明する。
【0049】
保液構造20fは、センサ電極10fを内包する内部セル(内槽)25fと、内部セル25fの少なくとも一部を囲む外部セル(外槽)21fと、の二重構造(二重セル構造、二重槽構造)を有している。なお、上述したように、本明細書において、「外部セルが内部セルの少なくとも一部を囲む」とは、外部セルが内部セルの全体を囲む場合(全体を内包する場合)、および、外部セルが内部セルの一部を囲む場合のうち、少なくともいずれかの場合を意味している。また、ここでいう「外部セルが内部セルの一部を囲む」とは、外部セルが内部セルの一部を内包する場合、および、外部セルが内部セルを内包していないものの、外部セルと内部セルとが隔壁1枚を隔てて隣接している場合のうち、少なくともいずれかの場合を意味している。本態様では、外部セル21fが内部セル25fの一部を内包(収容)している場合を示している。
【0050】
(外部セル21f)
外部セル21fは、内部セル25fの少なくとも一部(ここでは一部)を内包する中空容器として構成されている。外部セル21fの内部空間、すなわち、内部セル25fと外部セル21fとの間隙には、外部から被検液を取り入れて保持することが可能な保液空間28fが構成されている。
【0051】
外部セル21fの一端側には、外部から被検液を取り入れることが可能な採液口22fが設けられている。また、外部セル21fの他端側、例えば、内包する内部セル25fを挟んで採液口22fと対向する側には、保液空間24f内から被検液を排出することが可能な排液口23fが設けられている。なお、本態様では、後述するように、内部セル25fの一端に流入口26fが開設されており、排液口23fによる保液空間24fからの被検液の排出は、流入口26f、および、内部セル25f内の保液空間28fを順次介して行われるよう構成されている。排液口23fは、保液空間24fから被検液を排出する排出口としてだけでなく、保液空間28fから被検液を排出する排液口として機能するとも考えることができる。なお、これらをそれぞれ個別に設けるようにしてもよい。
【0052】
採液口22fのコンダクタンス、すなわち、採液時の被検液のコンダクタンスは、採液口22fの形状、大きさなどによって調整することができる。また、排液口23fのコンダクタンス、すなわち、排液時の被検液のコンダクタンスは、排液口23fの形状、大きさ、流入口26fの形状、大きさ、保液空間28fの形状、大きさなどによって調整することができる。本態様においては、これらがそれぞれ調整されることで、排液時の被検液のコンダクタンスが、採液時の被検液のコンダクタンスよりも小さくなるように構成されている。
【0053】
なお、上述したように、本明細書において、コンダクタンスとは、流体の流れやすさ(例えば、採液のしやすさ、排液のしやすさ)を意味している。そして、被検液のコンダクタンスが大きいとは、被検液の流動抵抗(流入抵抗、排出抵抗)が小さいこと、すなわち、被検液を流しやすいこと(採液しやすいこと、排液しやすいこと)を意味している。また、被検液のコンダクタンスが小さいとは、被検液の流動抵抗(流入抵抗、排出抵抗)が大きいこと、被検液を流しにくいこと(採液しにくいこと、排液しにくいこと)を意味している。
【0054】
以下、この点について詳しく説明する。なお、以下の説明では、保液構造20fを備えるセンサユニット100が、図1に模式的に示すように、所定の姿勢(使用時姿勢)で保持されていることを前提としている。ここで「使用時姿勢」とは、被検液の採液や濃度測定を行う際における、センサユニット100がとるべき望ましい姿勢のことである。センサユニット100が使用時姿勢で保持されている間は、採液口22fが鉛直上方寄りを向き、排液口23fが鉛直下方寄りを向き、かつ、これらの中心を結ぶ線Lと鉛直方向とのなす角Rが、例えば、60°の範囲内、好ましくは45°の範囲内となっているものとする。
【0055】
採液時における被検液のコンダクタンスは、センサユニット100を上述の使用時姿勢で保持しつつ、保液構造20fの上方から採液口22fに向けて被検液をかけ流した際に、保液空間24f内へ被検液を取り込むことができるような大きさに設定されている。かけ流しの方向から見た採液口22fの形状は、採液時の被検液のコンダクタンスを低下させにくい形状、例えば、正方形や円形などの非扁平な形状とすることが好ましい。
【0056】
排液時における被検液のコンダクタンスは、センサユニット100を上述の使用時姿勢で保持しつつ、保液構造20fへ向けた被検液のかけ流しを継続した際に、流入口26f、保液空間28f、排液口23fを介した被検液の排出が可能であるとともに、排液口23fを介して排出される被検液の流量(排液流量)が、採液口22fを介して取り込まれる被検液の流量(採液流量)よりも小さくなるような大きさに設定されている。なお、排液口23fのコンダクタンスは、流入口26fや保液空間28fの各コンダクタンスよりも小さくなっている。排出方向からみた排液口23fの形状は、正方形や円形などとしてもよいが、排液時の被検液のコンダクタンスを低下させやすい形状、例えば、長方形や長円などの扁平な形状(スリット形状)とすることもできる。
【0057】
上述の構成によれば、センサユニット100を使用時姿勢で保持しつつ、保液構造20sへ向けた被検液のかけ流しを継続することにより、保液空間24f、28f内に、被検液を一時的に滞留させることが可能となる。そして、かけ流し時間の経過とともに、保液空間28f内を被検液で満たし、また、保液空間24f内に滞留させた被検液の液面を徐々に上昇させ(滞留させた被検液の量を徐々に増加させ)、内部セル25fの少なくとも一部を、被検液中に浸漬させることが可能となる。すなわち、外部セル21f内に、内部セル25fの少なくとも一部、好ましくは全体(ここでは一部)を囲む被検液の液浴を発現させることが可能となる。
【0058】
この液浴は、上述のかけ流しを開始してから所定時間が経過することで発現する。そして、かけ流しが終了した後も、所定の期間中は液浴が維持される。そして、かけ流しを終了した状態で、センサユニット100を使用時姿勢でさらに長い間保持し続けると、保液空間24f内からほぼすべての被検液が排出され、液浴は完全に消滅することとなる。
【0059】
本明細書では、液浴が発現する期間を期間F1とも称する。期間F1の開始タイミング(液浴が発現するタイミング)や終了タイミング(液浴が消滅するタイミング)は、保液空間24fの容積や、採液時および排液時の被検液のコンダクタンス等を調整することによって、幅広く制御することが可能である。そして例えば、期間F1の開始タイミングを、後述する期間F2(被検液を安定したフロー状態としつつ、センサ電極10fへ接触させ、濃度測定を行う期間)の開始タイミングよりも、先のタイミングとすることができる。すなわち、濃度測定の開始時点において、液浴を予め発現させておくことができる。また、期間F1の終了タイミングを、後述する期間F2の終了タイミングよりも後のタイミングとすることもできる。すなわち、少なくとも濃度測定の開始から終了の時点にかけて、液浴を消滅させずに維持することができる。
【0060】
(内部セル25f)
内部セル25fは、センサ電極10fを内包する中空セルとして構成されている。内部セル25fの内部には、保液空間28s内に滞留した被検液を取り入れて保持することが可能な保液空間28fが構成されている。
【0061】
内部セル25fの一端側には、保液空間24f内に滞留している被検液を取り入れることが可能な流入口26fが設けられている。
【0062】
流入口26fは、採液口22fと対向しない位置であって、例えば、内部セル25fの側壁のうち下方側等に設けるのが好ましい。このように構成することで、採液口22fに向けてかけ流しされた被検液が、流入口26fを介して保液空間28f内へ直接流入することを抑制することが可能となる。すなわち、採液口22fに向けてかけ流された被検液を、保液空間24f内にいったん滞留させてその流速を低下させ、その後、この減速された被検液を、流入口26fを介して保液空間28f内へ取り入れることにより、保液空間28f内への被検液の流入をソフトに行うことが可能となる。その結果、被検液のかけ流しの実行期間中において、内部セル25f内における被検液の撹拌状態や乱流状態の発生を抑制することができ、内部セル25f内において、被検液を、速やかに、略一定の流速で安定して流れ続ける状態、すなわち、安定したフロー状態とすることが可能となる。
【0063】
内部セル25sの他端側には、上述の排液口23fが設けられている。排液口23fの排液時におけるコンダクタンスは、流入口26fの流入時におけるコンダクタンスよりも小さくなるように構成されている。この構成によれば、センサユニット100を使用時姿勢で保持しつつ、保液構造20sへ向けた被検液のかけ流しを継続することにより、保液空間28f内に、被検液を一時的に滞留させることが可能となる。そして、かけ流し時間の経過とともに、保液空間28f内を被検液で満たすことができる。保液空間28f内が被検液で満たされた後は、流入口26fからの被検液の流入、および、排液口23fからの被検液の排出がそれぞれ継続する限りは、内部セル25f内において、被検液を、流入口26fから排液口23fへと向かって略一定の流速で安定して流れる状態、安定したフロー状態とすることが可能となる。このフロー状態は、保液空間24f内からの被検液の排出が完了し、流入口26fを介した保液空間28f内への被検液の流れ込みが終了するまで、維持されることとなる。
【0064】
上述の構成によれば、センサユニット100を使用時姿勢で保持しつつ、被検液のかけ流しを行うことで、保液空間28f内へ被検液を流入させ、かつ、被検液を安定なフロー状態(一定の流路、流速を有する状態)としつつ、センサ電極10fへ接触させることが可能となる。そして、安定なフロー状態にある被検液をセンサ電極10fへ接触させた状態で、センサ電極10fに対して電圧掃引操作等を行うこと、すなわち、被検液中に含まれる特定成分の濃度測定を安定なフロー状態で行うことが可能となる。このように構成された内部セル25fを、本明細書では、フローセル、或いは、流路セルとも称する。
【0065】
ここで、内部セル25fの内部形状を、毛細管現象が発現することで内部セル25f内への被検液の取り入れが促されるとともに、内部セル25f内へ取り入れた被検液の表面張力が作用することで内部セル25f内において被検液が安定なフロー状態へと状態遷移しやすくなる形状としてもよい。例えば、内部セル25f内の内部形状を、扁平な形状とすることによって、内部セル25f内への毛細管現象を利用した被検液の取り入れ作用が効果的に得られ、また、内部セル25f内へ取り入れた被検液の表面張力を利用した安定なフロー状態への状態遷移が効果的に行われるようになる。
【0066】
なお、この安定なフロー状態は、上述のかけ流しを開始してから所定時間が経過することで発現する。そして、かけ流しが終了した後も、所定の期間中は安定なフロー状態が維持される。そして、かけ流しを終了した状態で、保液構造20fを使用時姿勢でさらに長い間保持し続けると、保液空間24f内の被検液が排出されることで安定なフロー状態は消滅する。その後、保液空間28f内の被検液は、ほぼすべてが排液口23fを介して排出されることになる。ただし、内部セル25f内の内部形状を上述のように扁平とした場合等には、内部セル25f内に、被検液の一部がわずかに残留する場合もある。
【0067】
本明細書では、被検液を安定なフロー状態としつつ、センサ電極10fへ接触させ、濃度測定を行う期間を、期間F2とも称する。上述したように、期間F1の開始、終了タイミングは、それぞれ、幅広く調整することが可能である。そのため、期間F2の開始タイミング(濃度測定の開始タイミング)において、液浴を予め発現させておくことができる。また、期間F1の終了タイミング(濃度測定の終了タイミング)において、液浴を消滅させずに維持することができる。
【0068】
(本態様により得られる効果)
本態様によれば、以下に示す1つ、または、複数の効果が得られる。
【0069】
(a)保液空間28f内に取り入れた被検液を安定なフロー状態としつつ、センサ電極10fへ接触させることが可能となる。そして、この安定なフロー状態で、被検液中に含まれる特定成分の濃度測定を行うことが可能となる。その結果、クレアチニンなどの物質、すなわち、被検液中における拡散のみによって、充分な感度をもって濃度測定を行うことが難しい物質の濃度を測定する際に、測定の感度を増幅させ、また、測定の安定性、精度等を高めることが可能となる。また、センサ電極へのクレアチニンの供給量を増やすことで、センサ電極の表面に形成された酸化層のエッチングを効率的に進行させ、クレアチニンの濃度測定を、より速やかに開始し、また、より感度よく行うことが可能となる。
【0070】
(b)被検液のかけ流しの実行中であっても、すなわち、保液空間24f内において被検液の撹拌状態や乱流状態が発生している状態であっても、保液空間28f内に取り入れた被検液を速やかに安定なフロー状態とすることが可能となる。これにより、被検液を安定なフロー状態とすることが望ましい上述の濃度測定を、速やかに開始することが可能となる。
【0071】
(c)内部セル25fの少なくとも一部を囲む被検液の液浴を発現させ、内部セル25f内に取り込まれた被検液の温度低下を抑制することが可能となる。結果として、測定結果が温度に大きく影響を受けるような測定を行う場合等においても、測定の安定性や精度を高めることが可能となる。
【0072】
(d)保液空間24fの容積や、採液時、排液時における被検液の各コンダクタンス等を調整することにより、液浴が発現するタイミングや液浴が消滅するタイミングを、幅広く制御することが可能である。これにより、被検液を安定したフロー状態として濃度測定を開始するタイミングにおいて、液浴を確実に発現させておくことが可能となる。また、被検液を安定したフロー状態としながら行う濃度測定の終了タイミングにおいて、液浴を消滅させずに維持することが可能となる。これらの結果、上述した効果が、確実に得られるようになる。
【0073】
(e)かけ流しを終了した状態で、センサユニット100を使用時姿勢で保持し続けることにより、保液空間24f、28f内からほぼすべての被検液を排出することが可能となる。その結果、使用済みのセンサユニット100を、容易に廃棄することが可能となる。
【実施例0074】
以下、本開示の実施例について、図4図5(a)、図5(b)を用いて説明する。図4は、実施例におけるセンサユニットの斜視図である。図5(a)は、センサユニット100の横断面透視図であり、図4において一点鎖線で示される平面Aを厚み方向表側から見たセンサユニット100の透視図である。図5(b)は、センサユニット100の横断面図であり、図4において二点鎖線で示される平面Bを側面左側から見たセンサユニット100の側面図である。なお、後述する具体的構成(各種寸法、形状、材料等)については、以下に例示する態様に限定されるものではなく、本実施例は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0075】
センサユニット100は、FRPなどの耐水性、絶縁性を有する材料からなる長尺状の基板110と、この基板の一端部側(先端側)の一主面上に設けられた(気密に接合、接着された)センサ電極10s、10fと、センサ電極10s、10fを覆うように基板110の一主面側に配置される保液容器120と、を備えている。基板110と保液容器120とにより、上述の各種態様に記載した保液構造20s、20fが構成されている。被験者が、長尺状の基板110の測定器側(手元側)をつまみ持ち(把持し)、基板110の手元側(測定器側)から先端側の保液容器に向けて被検液(尿など)を流しかけることで、保液構造20s、20fに被検液が静止状態、或いは、安定なフロー状態で保持されることとなり、センサ電極10s、10fに、被検液が、静止状態、或いは、安定なフロー状態にて接触することが可能なように構成されている。
【0076】
保液容器120は、プラスティック等の耐水性、絶縁性を有する材料からなり、横断面視が矩形の中空筒状であって、基板110の長手方向に沿うような長尺形状に構成されている。保液容器120の内部空間が、外部セル21の内部に相当する保液空間となる。
【0077】
保液容器120の端部のうち、被検液が流しかけられる側(測定器側、手元側)には、被検液を取り入れることが可能な開口である採液口22が開設されている。保液容器120の端部のうち、被検液が流しかけられる側とは反対側(先端側)には、内部に流し込まれた被検液を所定の流速で排出することが可能な開口である排液口23が開設されている。
【0078】
採液口22および排液口23は、それぞれ、被検液の表面張力によって被検液の流入や排出を妨げることないような構造(内径や取り入れ長等)となっている。ただし、保液容器120に向かって被検液を流しかけた際に、外部セル21内に所定の量の被検液を保持することができるよう、排液口23のコンダクタンスは、採液口22のコンダクタンスよりも小さくなっている。なお、本実施例では、この排液口23は、外部セル21の排液口としてだけでなく、後述する内部セル25fの排液口としても機能するように構成されている。
【0079】
図4の幅方向における採液口22の内径、および、厚み方向における採液口22の内径は、それぞれ、例えば5~15mm程度とすることができる。また、図4の幅方向における排液口23の内径は、例えば2~4mm程度、厚み方向における排液口23の内径は0.3~1mm程度、長手方向における排液口23の奥行きは2~6mm程度とすることができる。なお、外部セル21の内部に相当する保液空間の、図4の長手方向における長さは、例えば、20~50mm程度とすることができる。
【0080】
保液容器120の外側面のうち、基板110と当接する側の面(接合面、接着面)には、その長手方向に沿って、2つの凹部(測定器側から順番に凹部120s、凹部120f)が形成されている。これらのうち、凹部120sと基板110とにより囲われる空間が、上述の内部セル25s(静止セル)の内部に相当する保液空間となる。また、これらのうち、凹部120fと基板110とにより囲われる空間が、上述の内部セル25f(フローセル)の内部に相当する保液空間となる。なお、基板110の主面のうち、凹部120s,120fを覆う面には、それぞれ、センサ電極(測定器側から順番にセンサ電極10s,10f)が設けられている。このようにして、センサ電極10s,10fは、それぞれ、内部セル25s,25fに内包された状態となっている。なお、センサ電極10s、10fには、測定器側から基板110の主面上に延在された導体配線(図示せず)がそれぞれ接続されており、図示しない測定器から、導体配線を介して、所定の電圧掃引操作等を行うことが可能なように構成されている。
【0081】
以上述べたように、本実施例では、外部セル21と内部セル25sとが一枚の隔壁(容器120の側壁)を隔てて隣接した態様となっており、外部セル21が、内部セル25sの少なくとも一部を取り囲んだ状態となっている。また、外部セル21と内部セル25sとが一枚の隔壁(容器120の側壁)を隔てて隣接した態様となっており、外部セル21が内部セル25fの少なくとも一部を取り囲んだ状態となっている。
【0082】
内部セル25sを構成する保液容器120の側壁(凹部120sが形成された側壁)の一部には、被検液を外部セル21内から内部セル25s内へと取り込むための流入口26sが開設されている。流入口26sは、内部セル25s内への被検液の流入を妨げることないような構造(内径や取り入れ長等)となっている。流入口26sの形状は、基板110の幅方向に沿って開設されたスリット形状となっている。図4の幅方向における流入口26sの内径は、例えば3~5mm程度、長手方向における流入口26sの内径は、例えば1~3mm程度、厚み方向における流入口26sの奥行きは、例えば0.5~4mm程度とすることができる。なお、内部セル25s内への被検液の流入をソフトに行うため、流入口26sは、凹部120sのうち、採液口22からできるだけ離れた位置(本実施例では先端側の位置)に設けられている。
【0083】
内部セル25sを構成する基板110の一部(センサ電極10sの周辺部)には、内部セル25s内に被検液を取り入れる際に内部セル25s内の雰囲気を排出する(ベントする)よう機能する排気口27sが開設されている。排気口27sは、雰囲気の流通は許容するもの、被検液の流通を抑制するような構造(内径や取り入れ長等)となっている。具体的には、排気口27s内では、被検液の表面張力が大きく作用することにより、内部セル25s内からの被検液の排出が抑制されるように構成されている。内部セル25s内からの雰囲気の排出をスムーズに行うため、排気口27sは、内部セル25s内に被検液を流入させる際に鉛直上方寄りとなる位置(測定器側の位置)に設けられている。
【0084】
内部セル25sの内部形状は、内部セル25s内への毛細管現象を利用した被検液の取り入れ作用が効果的に得られ、また、内部セル25s内へ取り入れた被検液の表面張力を利用した停止作用が効果的に得られるような、いわゆる扁平な形状となっている。図4の厚み方向における内部セル25fの大きさは、例えば0.5~2.0mm程度、幅方向における内部セル25fの大きさは、例えば4~8mm程度、長手方向における内部セル25fの大きさは、例えば8~20mm程度とすることができる。
【0085】
内部セル25fを構成する保液容器120の側壁(凹部120fが形成された側壁)の一部には、被検液を外部セル21内から内部セル25f内へと取り込むための流入口26fが開設されている。流入口26fは、被検液の表面張力によって内部セル25f内への被検液の流入を妨げることないような構造(内径や取り入れ長等)となっている。流入口26fの形状は、例えば、基板110の幅方向に沿って開設されたスリット形状となっている。なお、流入口26fは、凹部120fのうち、上述の採液口寄りの位置(本実施例では手元側の位置)に設けられている。本実施例では、内部セル25fを、内部セル25sに比べて、先端側、すなわち、採液口22から離れた側に位置していることから、流入口26fをこのような位置に設けた場合であっても、内部セル25f内への被検液の流入をソフトに行うことが可能となる。
【0086】
内部セル25fを構成する保液容器120の側壁(凹部120fが形成された側壁)の一部(下端部)には、被検液を内部セル25fから排出する排液口23が設けられている。この排液口23は、上述したように、保液容器120内、すなわち、外部セル21内に流入し被検液を排出する排液口としても機能する。排液口23は、被検液の表面張力によって被検液の排出を妨げることないような構造(内径や取り入れ長等)となっている。なお、外部セル21内に所定の量の被検液を保持することができるよう、採液口22のコンダクタンス>排液口23のコンダクタンスとしている点は上述したとおりであるが、本実施例では、内部セル25f内を被検液で満たすことができるよう、流入口26のコンダクタンス>排液口23のコンダクタンスとしている。図4の幅方向における流入口26fの内径は、例えば3~5mm程度、長手方向における流入口26fの内径は、例えば1~3mm程度、厚み方向における流入口26fの奥行きは、例えば0.5~4mm程度とすることができる。
【0087】
内部セル25fの内部形状は、内部セル25f内への毛細管現象を利用した被検液の取り入れ作用が効果的に得られ、また、内部セル25f内へ取り入れた被検液の表面張力を利用した安定なフロー状態への状態遷移作用が効果的に得られるような、いわゆる扁平な形状となっている。図4の厚み方向における内部セル25fの大きさは、例えば0.5~2.0mm程度、幅方向における内部セル25fの大きさは、例えば4~8mm程度、長手方向における内部セル25fの大きさは、例えば8~20mm程度とすることができる。
【0088】
センサユニット100を以上のように構成することにより、センサユニット100に、上述した複数の態様における保液構造20s,20fを実現することができる。これにより、上述した種々の効果が得られるようになる。
【0089】
<他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0090】
例えば、実施例として、被検液を静止状態としつつセンサ電極10sへ接触させる内部セル25s、および、被検液を安定なフロー状態としつつセンサ電極10fへ接触させる内部セル25fを、それぞれ1つずつ備える場合について説明したが、本開示はこのような態様に限定されない。すなわち、これらのうちいずれかを1つのみ備える場合であっても、また、これらを任意の組み合わせで3つ以上備える場合であっても、上述の各種効果が同様に得られる。
【0091】
また例えば、実施例として、内部セル25s,25fを基板110の長手方向に沿って直列に設け、またこの際、内部セル25sを採液口22側に設け、内部セル25fを排液口23側に設ける場合について説明したが、本開示はこのような態様に限定されない。すなわち、内部セル25s,25fを基板110の長手方向に沿って直列に設け、この際、内部セル25fを採液口22側に設け、内部セル25dを排液口23側に設けるようにしてもよい。また、内部セル25s,25fを基板110の幅方向に沿って並列に設けるようにしてもよい。また、内部セル25s,25fを基板110の表裏面にそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0092】
測定系1として、センサユニット100が測定器200に対して着脱可能に構成されている例について説明したが、これらを一体のものとして構成するようにしてもよい。また、判定支援装置300を測定器200とは別体に設ける例について説明したが、これらを一体のものとして構成するようにしてもよい。
【0093】
<本開示の好ましい態様:静止セル関連>
以下、静止セルに関し、本開示の好ましい態様について付記する。
【0094】
(付記1)
被検液中に含まれる特定成分と反応するよう構成されたセンサ電極と、
被検液を、静止状態としつつ、センサ電極へ接触させるように構成された保液構造と、
を備える電気化学センサユニット。
【0095】
(付記2)
好ましくは、
前記保液構造は、
前記センサ電極を内包する内部セルと、
前記内部セルの少なくとも一部を囲い、外部から被検液を取り入れて前記内部セル内へ供給するよう構成された外部セルと、を備え、
前内部セルは、取り入れた被検液を、静止状態としつつ、センサ電極へ接触させるように構成されている。
【0096】
(付記3)
また好ましくは、
前記内部セルは、前記外部セル内に滞留している被検液を取り入れることが可能な流入口と、前記外部セル内をバイパスして前記内部セル内と前記外部セルの外側とを連通させる排気口と、を有し、
前記排気口のコンダクタンスが、前記流入口のコンダクタンスよりも小さくなるように構成されている。
【0097】
(付記4)
また好ましくは、
前記排気口は、前記内部セル内の残留雰囲気の流通を許容し、被検液の流通は許容しないように構成されている。
【0098】
(付記5)
また好ましくは、
前記内部セルの内部形状が、前記内部セル内へ被検液を取り入れる際に毛細管現象が発現するような形状となっている。
【0099】
(付記6)
また好ましくは、
前記内部セルの内部形状が、前記内部セル内へ取り入れた被検液が表面張力より静止するような形状となっている。
【0100】
(付記7)
また好ましくは、
前記外部セルは、被検液を取り入れることが可能な採液口を有し、
前記採液口に向けて被検液をかけ流し、前記外部セルの内部へ被検液を取り入れている期間中(前記外部セル内において被検液の撹拌状態や乱流状態が発生している状態)において、前記内部セル内に取り入れた被検液を静止状態とすることが可能なように構成されている。
【0101】
(付記8)
また好ましくは、
前記外部セルは、被検液を排出することが可能な排液口を有し、
前記排液口から被検液を排出している期間中(前記外部セル内において排液動作に伴う被検液の流れが発生している状態)において、前記内部セル内に取り入れた被検液を静止状態とすることが可能なように構成されている。
【0102】
(付記9)
また好ましくは、
前記外部セルは、被検液を取り入れることが可能な採液口と、被検液を排出することが可能な排液口と、を有し、
前記排液口のコンダクタンスが、前記採液口のコンダクタンスよりも小さくなるように構成されている。
【0103】
(付記10)
また好ましくは、
前記内部セルの少なくとも一部を囲む被検液の液浴を、前記外部セルの内部に発現させることが可能なように構成されている。
【0104】
(付記11)
また好ましくは、
被検液を静止状態として濃度測定を開始するタイミングにおいて、前記液浴を前記外部セルの内部に発現させることが可能なように構成されている。
【0105】
(付記12)
また好ましくは、
被検液を静止状態としながら行う濃度測定を終了するタイミングにおいて、前記液浴を前記外部セルの内部に消滅させずに維持することが可能なように構成されている。
【0106】
<本開示の好ましい態様:フローセル関連>
以下、フローセルに関し、本開示の好ましい態様について付記する。
【0107】
(付記1)
被検液中に含まれる特定成分と反応するよう構成されたセンサ電極と、
外部から取り入れた被検液を、定常的な流れのある状態としつつ、センサ電極へ接触させるように構成された保液構造と、を備える電気化学センサユニット。
【0108】
(付記2)
好ましくは、
前記保液構造は、
前記センサ電極を内包する内部セルと、
前記内部セルの少なくとも一部を囲い、外部から被検液を取り入れて前記内部セル内へ供給するよう構成された外部セルと、を備え、
前内部セルは、取り入れた被験試料を、定常的な流れのある状態としつつ、センサ電極へ接触させるように構成されている。
【0109】
(付記3)
また好ましくは、
前記内部セルは、前記外部セル内に滞留している被検液を取り入れることが可能な流入口と、前記内部セル内から被検液を排出することが可能な排液口と、を有し、
前記内部セルの排液口のコンダクタンスが、前記流入口のコンダクタンスよりも小さくなるように構成されている。
【0110】
(付記4)
また好ましくは、
前記内部セルの内部形状が、前記内部セル内へ被検液を取り入れる際に毛細管現象が発現するような形状となっている。
【0111】
(付記5)
また好ましくは、
前記内部セルの内部形状が、前記内部セル内へ取り入れた被検液が表面張力より定常的な流れのある状態とするような形状となっている。
【0112】
(付記6)
また好ましくは、
前記外部セルは、外部から被検液を取り入れることが可能な採液口を有し、
前記採液口に向けて被検液をかけ流し、前記外部セルの内部へ被検液を取り入れている期間中において、前記内部セル内に取り入れた被検液を定常的な流れのある状態とすることが可能なように構成されている。
【0113】
(付記7)
また好ましくは、
前記外部セルは、被検液を排出することが可能な排液口を有し、
前記排液口から被検液を排出している期間中(前記外部セル内において排液動作に伴う被検液の流れが発生している状態)において、前記内部セル内に取り入れた被検液を定常的な流れのある状態とすることが可能なように構成されている。
【0114】
(付記8)
また好ましくは、
前記外部セルは、被検液を取り入れることが可能な採液口と、被検液を排出することが可能な排液口と、を有し、
前記排液口のコンダクタンスが、前記採液口のコンダクタンスよりも小さくなるように構成されている。
【0115】
(付記9)
また好ましくは、
前記内部セルの少なくとも一部を囲む被検液の液浴を、前記外部セルの内部に発現させることが可能なように構成されている。
【0116】
(付記10)
また好ましくは、
被検液を定常的な流れのある状態として濃度測定を開始するタイミングにおいて、前記液浴を前記外部セルの内部に発現させることが可能なように構成されている。
【0117】
(付記11)
また好ましくは、
被検液を定常的な流れのある状態としながら行う濃度測定を終了するタイミングにおいて、前記液浴を前記外部セルの内部に消滅させずに維持することが可能なように構成されている。
【符号の説明】
【0118】
10、10s、10f センサ電極
20、20s、20f 保液構造
21、21s、21f 外部セル
25s、25f 内部セル
100 電気化学センサユニット
図1
図2
図3
図4
図5