(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032995
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】マイクロホンスイッチングを有する聴覚装置及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20220217BHJP
H04R 25/02 20060101ALI20220217BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H04R25/00 M
H04R25/02 B
H04R25/00 D
H04R3/00 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021127607
(22)【出願日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】PA202070531
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, 2750 Ballerup, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー ビー. ボルト
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック グラン
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220BA01
5D220BA11
5D220BC05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された空間知覚及び安定性を有する聴覚装置及び方法を提供する。
【解決手段】聴覚装置2、2Aは、第1ハウジング4と、第2ハウジング6と、ワイヤ8と、第1ハウジング内に配置される、一次第1マイクロホン10と、一次第2マイクロホン12と、を含む一次セットのマイクロホンと、第2ハウジングに配置される二次マイクロホン14と、一次ミキサ入力33A及び二次ミキサ入力33Bに基づいてミキサ出力18を提供するためのミキシングモジュール16、16Aと、ミキシングモジュールを制御するように構成されたミキシング制御部44と、ミキサ出力を処理し、電気出力信号26を提供するためのプロセッサ24と、を備える。ミキシングモジュールは、音響イベントの存在を決定するように構成され、音響イベントが存在するという判定に従い、ある期間、二次ミキサ入力の量を増大させ、前記期間の後に、二次ミキサ入力の量を減少させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴覚装置であって、
ユーザの耳介の後ろに装着される耳の後ろの(behind-the-ear)ハウジングとして構成される第1ハウジングと、
前記ユーザの外耳道内又は外耳道に装着されるイヤピースハウジングとして構成された第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを接続するワイヤと、
前記第1ハウジング内に配置される一次セットのマイクロホンであって、一次第1マイクロホン入力信号を提供するための一次第1マイクロホンと、一次第2マイクロホン入力信号を提供するための一次第2マイクロホンとを含む、マイクロホンの一次セットと、
二次マイクロホン入力信号を供給するために前記第2ハウジング内に配置された二次マイクロホンと、
一次ミキサ入力及び二次ミキサ入力に基づいてミキサ出力を提供するためのミキシングモジュールであって、前記一次ミキサ入力は、前記一次第1マイクロホン入力信号及び前記一次第2マイクロホン入力信号に基づいており、前記二次リミキサ入力は、前記二次マイクロホン入力信号に基づいている、ミキシングモジュールと、
前記ミキシングモジュールを制御するように構成されたミキシング制御部と、
前記ミキサ出力を処理し、前記ミキサ出力に基づいて電気出力信号を提供するためのプロセッサと、
前記電気出力信号を音声出力信号に変換するレシーバと、
を備え、
前記ミキシング制御部は、音響イベントの存在を判定し、音響イベントが存在するという判定に従い、ある期間、前記ミキサ出力の二次ミキサ入力の量を増大し、前記期間後に、前記ミキサ出力の前記二次ミキサ入力の量を減少させる、定時間後に減らすように構成されている、聴覚装置。
【請求項2】
前記期間は、5msから15msまでの範囲である、請求項1に記載の聴覚装置。
【請求項3】
音響イベントの存在を判定することは、前記一次第1マイクロホン入力信号、前記一次第2マイクロホン入力信号、及び前記二次マイクロホン入力信号のうちの1つ又は複数に基づく、請求項1又は2に記載の聴覚装置。
【請求項4】
前記ミキシング制御部は、前記聴覚装置の1又は複数の動作パラメータに基づいて前記期間を決定するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項5】
前記ミキサ出力における前記二次ミキサ入力の量をある期間増大させることは、前記ミキサ出力における前記二次ミキサ入力の量を増大させ、スイッチング基準が満たされているかどうかを判定することを含み、
前記期間後に前記ミキサ出力における前記二次ミキサ入力の量を減少させることは、前記スイッチング基準が満たされているという判定に従って、前記ミキサ出力における前記二次ミキサ入力の量を減少させることを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項6】
前記ミキサ出力における前記第2ミキサ入力の量をある期間増大させることは、前記ミキサ出力の少なくとも1つの成分については、前記ミキサ出力を前記第二次ミキサ入力のみに基づくことを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項7】
前記ミキサ出力における前記二次ミキサ入力の量をある期間増大させることは、前記二次ミキサ入力の成分に適用される二次係数を増大させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項8】
前記時間期間の後に前記ミキサ出力における前記二次ミキサ入力の量を減少させることは、スイッチング期間中に前記二次ミキサ入力の成分に適用される二次係数を徐々に減少させることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項9】
前記期間の後に前記ミキサ出力における前記二次ミキサ入力の量を減少させることは、前記二次ミキサ入力の成分に適用される二次係数に切り替えることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項10】
前記ミキサ出力における前記二次ミキサ入力の量をある期間増大させることは、前記聴覚装置の1つ以上の動作パラメータに基づいて二次係数を決定し、前記ミキサ出力を提供するために、前記二次ミキサ入力に前記二次係数を適用することを含む、請求項1~9のいずれかに記載の聴覚装置。
【請求項11】
ユーザの耳介の後ろに装着される耳の後ろのハウジングとして構成された第1ハウジングと、ユーザの外耳道内又は外耳道に装着されるイヤピースハウジングとして構成された第2ハウジングと、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを接続するワイヤと、前記第1ハウジング内に配置され、一次第1マイクロホン及び一次第2マイクロホンを含むマイクロホンの一次セットと、第2ハウジング内に配置される二次マイクロホンと、ミキシングモジュールと、ミキシング制御部と、プロセッサと、レシーバと、を備える聴覚装置を動作させる方法であって、
前記一次第1マイクロホンによる一次第1マイクロホン入力信号を取得することと、
前記一次第2マイクロホンによる一次第2マイクロホン入力信号を取得することと、
前記二次マイクロホンによる二次マイクロホン入力信号を取得することと、
前記一次第1マイクロホン入力信号と前記一次第2マイクロホン入力信号に基づいて一次ミキサ入力を提供することと、
前記二次マイクロホン入力信号に基づいて二次ミキサ入力を提供することと、
前記一次ミキサ入力と前記二次ミキサ入力に基づいてミキサ出力を提供することと、
電気出力信号を供給するために前記ミキサ出力を処理することと、
前記電気出力信号を音声出力信号に変換することと、
を備え、
前記一次ミキサ入力と前記二次ミキサ入力とに基づいてミキサ出力を提供するステップは、
音響イベントの存在を判定することと、
音響イベントの存在の判定に従い、ある期間前記ミキサ出力における前記二次ミキサ入力を増大することと、
前記期間の後に前記ミキサ出力の二次ミキサ入力を減少させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、聴覚装置と、聴覚装置を動作させる方法を含む関連する方法と、に関する。特に、耳内の(in-ear)マイクロホンと1つ以上の耳の後ろの(behind-the-ear)マイクロホンとの両方を有する聴覚装置及び関連する方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
聴覚装置の設計者にとって、空間知覚及び空間キューを知覚する能力は、聴覚装置ユーザの発話を理解する能力において重要な役割を果たし、複雑な聴覚環境にとって重要である。他方、補聴器におけるフィードバック及び不安定性は、特に、例えば、MaRie(Microphone and Receiver in ear)聴覚装置において、マイクロホン及びレシーバが、互いに近接して配置される場合、聴覚装置設計者及びエンジニアに対する課題を依然として呈示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、改善された空間知覚及び安定性を有する聴覚装置及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
聴覚装置が開示される、聴覚装置は、ユーザの耳介の後ろに装着される耳の後の(behind-the-ear)ハウジングとして構成される第1ハウジングと、ユーザの外耳道内又は外耳道に装着されるイヤピースハウジングとして構成される第2ハウジングと、第1ハウジングと第2ハウジングとを接続するワイヤと、第1ハウジング内に配置される一次セットのマイクロホンを備え、一次セットのマイクロホンは、一次第1マイクロホン入力信号を供給するための一次第1マイクロホン及び一次第2マイクロホン入力信号を提供するための一次第2マイクロホンを含む一次セットのマイクロホンと、二次マイクロホン入力信号を提供するための第2ハウジング内に配置される二次マイクロホンと、一次ミキサ入力及び二次ミキサ入力に基づくミキサ出力を提供するためのミキシングモジュールであって、一次ミキサ入力は、任意選択で、一次第1マイクロホン入力信号及び/又は一次第2マイクロホン入力信号に基づいており、二次ミキサ入力は、二次マイクロホン入力信号に基づいている、ミキシングモジュールと、ミキシングモジュールを制御するように構成されたミキシング制御部と、ミキサ出力を処理し、ミキサ出力に基づく電気出力信号を提供するプロセッサと、電気出力信号を音声出力信号に変換するレシーバと、を備える。ミキシング制御部は、音響イベントなどのスイッチイベントの存在を判定し、音響イベントが存在するという判定に従って、ある期間ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させるなど、ミキシングモジュールを制御し、及び/又はその期間の後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させるように構成されてもよい。
【0005】
さらに、聴覚装置を動作させる方法が開示される。聴覚装置は、ユーザの耳介の後ろに装着される耳の後ろのハウジングとして構成された第1ハウジングと、ユーザの外耳道内又は外耳道に装着されるイヤピースハウジングとして構成された第2ハウジングと、第1ハウジングと第2ハウジングとを接続するワイヤと、第1ハウジング内に配置される一次セットのマイクロホンであって、一次第1マイクロホン及び一次第2マイクロホンを含む一次セットのマイクロホンと、第2ハウジング内に配置される二次マイクロホンと、ミキシングモジュールと、ミキシング制御部と、プロセッサと、レシーバと、を備える。この方法は、例えば一次第1マイクロホンで一次第1マイクロホン入力信号を取得することと、例えば、一次第2マイクロホンで一次第2マイクロホン入力信号を取得することと、例えば、二次マイクロホンで二次マイクロホン入力信号を取得することと、一次第1マイクロホン入力信号及び/又は一次第2マイクロホン入力信号に基づく一次ミキサ入力を提供することと、二次マイクロホン入力信号に基づく二次ミキサ入力を提供するステップと、一次ミキサ入力及び/又は二次ミキサ入力に基づくミキサ出力を提供するステップと、電気出力信号を提供するためにミキサ出力を処理するステップと、電気出力信号を音声出力信号に変換するステップとを含む。この方法では、一次ミキサ入力及び二次ミキサ入力に基づくミキサ出力を提供することは、音響イベントなどのスイッチイベントの存在を判定すること、音響イベントの存在を判定することに従い、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量をある期間にわたって増大させること、及び/又はその期間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることなどの、ミキシングモジュールを制御することを含む。
【0006】
増大した安定性を有する聴覚装置内の改善された空間知覚が提供されることは、聴覚装置の重要な利点である。したがって、聴覚装置におけるフィードバックのリスクは低減され、一方、空間キューはより高度に保存され、これにより、改善された聴覚装置が提供される。
【0007】
さらに、本開示は、発話理解度を改善し、聴覚装置におけるフィードバック又は他の不安定性を減少させることによって、改善されたユーザ体験を提供する。
【0008】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、添付の図面を参照した以下の例示的な実施形態の詳細な説明によって、当業者に容易に明らかになるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】本開示による例示的な方法のフロー図を示す。
【
図5】本開示による例示的な方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
様々な例示的な実施形態及び詳細が、関連する場合に図面を参照して以下に記載される。図面は、一定の縮尺で描かれていることもあれば、描かれていない場合もあり、同様の構造又は機能の要素は、図面全体にわたって同様の参照番号によって表記されることに留意されたい。また、図面は、実施形態の説明を容易にすることのみを意図していることにも留意されたい。それらは、本発明の網羅的な説明として、又は本発明の範囲に対する限定として意図されていない。さらに、図示された実施形態は、図示された態様又は利点のすべてを有する必要はない。特定の実施形態に関連して説明される態様又は利点は、必ずしもその実施形態に限定されず、そのように図示されていなくても、又はそのように明示的に説明されていなくても、任意の他の実施形態で実施することができる。
【0011】
聴覚装置が開示される。聴覚装置は、ユーザの耳に装着されるように構成されてもよく、ヒアラブル又は補聴器であってもよく、プロセッサは、ユーザの聴力損失を補償するように構成される。
【0012】
聴覚装置は、MaRIE(Microphone-and-Receiver-in ear)型であってもよい。聴覚装置は、BTE型とMaRIE型とを組み合わせた聴覚装置であってもよい。聴覚装置は、バイノーラル聴覚システムの一部であってもよい。したがって、聴覚装置はバイノーラル聴覚装置であってもよい。
【0013】
聴覚装置は、ユーザの耳介の後ろに装着される耳の後ろのハウジングとして構成された第1ハウジングと、ユーザの外耳道内及び/又は外耳道に装着されるイヤピースハウジングとして構成された第2ハウジングとを備える。
【0014】
聴覚装置は、第1ハウジングと第2ハウジングとを接続するワイヤを備える。ワイヤは、第1ハウジングの電気部品を第2ハウジングの電気部品に電気的に接続するための複数の導線、例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、又は8つ以上の導線を含む。
【0015】
聴覚装置は、第1ハウジング内に配置される一次セットのマイクロホンを含み、一次セットのマイクロホンは、x_1_1とも表記される一次第1マイクロホン入力信号を提供するための一次第1マイクロホンと、x_1_2とも表記される一次第2マイクロホン入力信号を提供するための一次第2マイクロホンとを含む。一次第1マイクロホンは、前方BTE((behind-the-ear)(マイクロホンと表記され、一次第2マイクロホンは、後方BTE((behind-the-ear)マイクロホンと表記されてもよい。マイクロホンの一次セットは、やはりx_1_3で示される一次第3マイクロホン入力信号を提供するための一次第3マイクロホンを含むことがある。
【0016】
聴覚装置は、同様に、x_2又はx_2_1とも表記される二次マイクロホン入力信号を提供するために第2ハウジング内に配置される、二次第1マイクロホンともでも表記される二次マイクロホンを備える。二次マイクロホンは、耳内マイクロホンと表記されることがある。聴覚装置は、第2ハウジング内に配置される複数の二次マイクロホンを備えることができる。外耳道マイクロホンとも表記される二次第2マイクロホンは、例えば、閉塞効果を低減するために、開示同内部の音を受信するために第2ハウジング内に配置されてもよい。
【0017】
聴覚装置は、一次ミキサ入力及び二次ミキサ入力に基づくミキサ出力を提供するためのミキサモジュールを含む。一次ミキサ入力は、一次第1マイクロホン入力信号及び/又は一次第2マイクロホン入力信号に任意選択的に基づき、二次ミキサ入力は、1つ又は複数の二次マイクロホン入力信号に基づいている。
【0018】
聴覚装置は、ミキシングモジュールを制御するように構成されたミキシング制御部を備える。ミキシング制御部は、任意選択で、音響イベントの存在などのスイッチイベントの存在を判定し、音響イベントなどのスイッチイベントが存在するという判定に従い、ある期間、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させる、及び/又は前記期間の後、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させるなど、ミキシングモジュールを制御するように構成される。言い換えれば、ミキシング制御部は、任意選択で、スイッチイベント/音響イベントの存在を検出又は判定するスイッチ/音響イベント検出器を備える。
【0019】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法において、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量をある期間増大させることは、二次ミキサ入力の1つ又は複数の成分に適用される1つ又は複数の二次係数を増大させることを含む。
【0020】
ミキシング制御部は、任意選択で、音響イベントなどのスイッチイベントが存在するという判定に従って、ある期間、ミキサ出力における一次ミキサ入力の量を減少させる、及び/又は前記期間の後、ミキサ出力における一次ミキサ入力の量を増大させるなど、ミキシングモジュールを制御するように構成される。
【0021】
ミキシング制御部は、任意選択で、音響イベントなどのスイッチイベントが存在するという判定に従って、ミキシングモジュールを制御して、前記期間、ミキサ出力における一次ミキサ入力の量を減少させるように構成される。ミキシング制御部は、任意選択で、前記期間後にミキサ出力における一次ミキサ入力の量を増大させるように構成される。一次ミキサ入力と二次ミキサ入力に適用される総ゲインは、前記期間中と前記期間後で同じになる場合がある。言い換えれば、ユーザは、音響イベントが検出されたときに、音量の瞬間的な変化を経験しない。
【0022】
一つ以上の例示的な聴覚装置/方法では、前記期間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることは、二次ミキサ入力の1つ又は複数の成分に適用される1つ又は複数の二次係数を減少させることを含む。
【0023】
ミキシング制御部は、音響イベントなどのスイッチイベントの存在を判定するように構成される。音響イベントは、話し始める人物であってもよく、又は、例えば、低レベルからの、音圧又はレベルの一般的な増加であってもよい。
【0024】
スイッチイベントは、指向性キュー又は空間キューの知覚が高い関連性を有する状況を呈示するイベントであってもよい。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、人が突然又は突然頭部を回転させると、スイッチイベントを構成することができる。したがって、1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、聴覚装置は、加速度計などの運動センサを備えることができ、ミキシング制御部は、運動センサからのセンサ出力に基づいてスイッチイベントの存在を判定するように構成される。例えば、センサ出力が頭部の動きを示す場合などセンサ出力及び/又はセンサ出力の変化が閾値よりも大きい場合、スイッチイベントの存在が判定され得る。
【0025】
ミキシング制御部は、音響イベントなどのスイッチイベントが存在するという判定に従って、ミキシングモジュールを制御するように構成される。例えば、ミキシング制御部は、音響イベントのようなスイッチイベントが存在するとの判定に従い、ある期間、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させるように、及び/又は、前記期間の後、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させるように構成されてもよい。
【0026】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、前記期間は、1msから25msまでの範囲、例えば、2msから20msまでの範囲、例えば、5msから15msまでの範囲である。前記期間は、例えば、フィッティング中に設定される、固定された期間であってもよい。前記期間は、例えば、聴覚装置の動作中に、例えば、聴覚装置及び/又はマイクロホン入力信号の1つ又は複数の動作パラメータに基づいて決定されるなど、適応的であってもよい。ミキシング制御部は、例えば、聴覚装置及び/又はマイクロホン入力信号の1つ又は複数の動作パラメータに基づいて、前記期間を決定するように構成されてもよい。
【0027】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、音響イベントなどのスイッチイベントの存在の判定は、一次第1マイクロホン入力信号、一次第2マイクロホン入力信号、及び二次マイクロホン入力信号のうちの1つ又は複数に基づく。例えば、一次第1マイクロホン入力信号、一次第2マイクロホン入力信号、二次マイクロホン入力信号、又はこれらの組み合わせなどの入力信号が閾値を満たす場合、例えば、入力のレベル又は入力のレベルの増加が閾値より大きい場合、音響イベントの存在が検出され得る。
【0028】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、二次マイクロホン入力信号などのマイクロホン入力信号のレベル(例えば、振幅又は電力)が、閾値、例えば、50%などの相対閾値、又は3dBなどの絶対閾値を超えて増加する場合、音響イベントの存在が検出される。1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、二次マイクロホン入力信号などのマイクロホン入力信号中のレベル(例えば、振幅又は電力)が閾値を超える場合、例えば、レベルが60dBより大きい場合、音響イベントの存在が検出される。
【0029】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、スイッチイベントの存在の判定は、プログラム識別子、閉ループゲインなどのゲイン、及び/又はフィードバックパラメータのうちの1つ又は複数など、聴覚装置の1つ又は複数の動作パラメータに基づく。
【0030】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、プログラム変更は、スイッチイベントを構成することができる。言い換えれば、スイッチイベントの存在を判定することは、聴覚装置プログラムの変化を判定することを含んでもよい。
【0031】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ミキシング制御部は、例えば、聴覚装置の1又は複数の動作パラメータに基づいて、前記期間を決定するように構成される。言い換えれば、前記期間は適応的であってもよい。したがって、ミキシング制御部は、例えば、プログラム識別子、閉ループゲインなどのゲイン、及び/又は聴覚装置のフィードバックパラメータのうちの1つ又は複数に基づいて、前記期間を適応的に決定することができる。それによって、ITEマイクロホンの改善された、例えば、より長い使用が、ITEマイクロホンが使用される(改善された方向性知覚を有する)前記期間を最大化することによって提供され、同時に、聴覚装置における不安定性の問題のリスクを低減するか、又は実質的に回避する。
【0032】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ある期間にわたってミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させることは、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させることのほか、スイッチング基準が満たされるかどうかを判定することを含むことができる。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法において、前記期間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることは、スイッチング基準が満たされているという判断に従って、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることを含む。スイッチング基準は、閉ループゲインなどの1つ又は複数のゲイン、及び/又は聴覚装置のフィードバックパラメータに基づくことができる。言い換えると、聴覚装置は、不安定性が存在するか切迫しているかをミキシング制御部が判断するまで、ミキサ出力において増大した量の二次ミキサ入力を使用することができる。例えば、フィードバックのリスクを示すフィードバックパラメータが閾値に達した場合、スイッチング基準が充足され得る。
【0033】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ある期間にわたってミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させることは、少なくともミキサ出力の成分については、ミキサ出力を二次ミキサ入力のみに基づくことを含む。言い換えれば、一次ミキサ入力に適用される一次ゲイン/係数は、前記期間中にゼロに設定されてもよい。
【0034】
ミキシング制御部は、音響イベントのようなスイッチイベントが存在するという判定に従って、ミキサ出力における一次ミキサ入力の量をある期間減少させ、及び/又は前記期間後のミキサ出力における一次ミキサ入力の量を増大するように構成することができる。
【0035】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法において、ミキサ出力における一次ミキサ入力の量をある期間だけ減少させることは、一次ミキサ入力の1つ又は複数の成分に適用される1つ又は複数の一次係数を減少させることを含む。
【0036】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法において、前記期間の後にミキサ出力における一次ミキサ入力の量を増大させることは、一次ミキサ入力の1つ又は複数の成分に適用される一つ又は複数の一次を増大させることを含む。
【0037】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法において、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量をある期間増大させることは、二次ミキサ入力の1つ又は複数の成分に適用され1つ又は複数の二次係数を増大させることを含む。
【0038】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、前記期間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることは、スイッチング期間中に二次ミキサ入力の成分に適用される二次係数を徐々に減らすことを含む。これにより、ITEマイクロホンとBTEマイクロホンをスムーズに切り替えることができる。
【0039】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、前記期間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることは、二次ミキサ入力の成分に適用される二次係数に切り替えることを含む。
【0040】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、前記時間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることは、二次ミキサ入力の1つ又は複数の成分に適用される1つ又は複数の二次係数を減少させることを含む。
【0041】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ある期間にわたってミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させることは、例えば、プログラム識別子、閉ループゲインなどのゲインに基づくなどの、1つ又は複数の聴覚装置の動作パラメータ、及び/又は聴覚装置のフィードバックパラメータに基づいて、1つ又は複数の二次係数を決定することと、ミキサ出力を提供するために二次ミキサ入力に二次係数を適用することと、を備える。言い換えれば、ミキシングモジュールにおいて適用される二次係数は、適応的であってもよい。
【0042】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、聴覚装置は、一次ミキサ入力を提供するため、一次第1マイクロホン入力信号及び一次第2マイクロホン入力信号を前処理するために一次第1マイクロホン及び一次第2マイクロホンのそれぞれに接続された一次プリプロセッサを備える。一次プリプロセッサは、一次プリプロセッサの加算器において、(任意選択でフィルタリング/前処理された)一次第1マイクロホン入力信号及び(任意選択でフィルタリング/前処理された)二次第2マイクロホン入力信号を加算する前に、一次第1マイクロホン入力信号及び/又は一次第2マイクロホン入力信号をフィルタリングするための第1フィルタ及び/又は第2フィルタを備えることができる。一次プリプロセッサの第1フィルタは、耳介復元フィルタ、すなわち、一次第1マイクロホン入力信号の耳介復元を実行するように構成されたフィルタであってもよい。一次プリプロセッサの第2フィルタは、耳介復元フィルタ、すなわち、一次第2マイクロホン入力信号の耳介復元を実行するように構成されたフィルタであってもよい。
【0043】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、聴覚装置は、二次ミキサ入力を提供するため、二次マイクロホン入力信号を前処理するために二次マイクロホンに接続された二次プリプロセッサを備える。
【0044】
聴覚装置は、ミキサ出力を処理するためのプロセッサを備える。プロセッサは、ミキサ出力(プロセッサ入力として供給される)に基づく電気出力信号をプロセッサに供給する。プロセッサは、ユーザの聴力損失の聴力補償のために構成されてもよい。プロセッサは、マルチチャネルプロセッサであってもよい。言い換えれば、プロセッサ入力は、各チャネル又は(周波数)成分が並列に処理されるマルチチャネル入力であってもよい。プロセッサは、フィードバック補償及び/又はフィードバックキャンセルのために構成され得る。
【0045】
聴覚装置は、電気出力信号を音声出力信号に変換するレシーバを備える。
【0046】
ミキシングモジュールは、ミキサ出力を提供するために、一次ミキサ入力と二次ミキサ入力をミキシングするように構成される。1つ又は複数の例示的な聴覚装置において、ミキシングモジュールは、ミキサ出力の第1成分を提供するために、一次ミキサ入力の一次第1成分と二次ミキサ入力の二次第1成分とをミキシングするように構成されている。
【0047】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ある期間にわたってミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させることは、二次ミキサ入力の二次第1成分及び/又は二次第2成分などの1つ又は複数の二次成分を増大させることを含む。
【0048】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、前記期間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることは、二次ミキサ入力の二次第1成分及び/又は二次第2成分などの1つ又は複数の二次成分を減少させることを含む。
【0049】
一次ミキサ入力の一次第1成分及び二次ミキサ入力の二次第1成分は、広帯域成分であってもよい。
【0050】
一次ミキサ入力の一次第1成分と二次ミキサ入力の二次第1成分は、第1周波数帯域又は第1周波数ビンの成分であってもよい。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、第1周波数帯域/第1周波数ビンの中心周波数は、1kHz未満、さらには400Hz未満である。第1周波数帯域/第1周波数ビンの中心周波数は、400Hzから2kHzまでの範囲内とすることができる。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、第1周波数帯域/周波数ビンの中心周波数は、2kHzよりも大きい、又は3kHzよりもさらに大きいなど、1kHzよりも大きい。
【0051】
聴覚装置では、ミキサ出力を提供するために一次ミキサ入力と二次ミキサ入力とをミキシングすることは、一次ミキシングフィルタ又は一次ゲイン/係数を一次ミキサ入力に適用することを含むことがある。一次ミキシングフィルタは、時間領域フィルタ又は周波数領域フィルタであってもよい。言い換えれば、ミキシングモジュールは、一次ミキサ入力を受信し、処理するための一次フィルタ及び/又は一次ゲインユニットを備えることができる。
【0052】
聴覚装置では、ミキサ出力を提供するために一次ミキサ入力と二次ミキサ入力とをミキシングすることは、二次ミキシングフィルタ又は二次ゲイン/係数を二次ミキサ入力に適用することを含むことがある。二次ミキシングフィルタは、時間領域フィルタ又は周波数領域フィルタであってもよい。言い換えれば、ミキシングモジュールは、二次ミキサ入力を受信し処理するための二次フィルタ及び/又は二次ゲインユニットを備えることができる。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ある期間にわたってミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させることは、二次ミキサ入力に適用される1つ又は複数の二次ゲイン/係数を増大させることを含む。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることは、二次ミキサ入力に適用される1つ又は複数の二次ゲイン/係数を減少させること、たとえばゼロに設定することを含む。
【0053】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ある期間にわたってミキサ出力における一次ミキサ入力の量を減少させることは、一次ミキサ入力に適用される1つ又は複数の一次ゲイン/係数を減少させることを含む。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ミキサ出力における一次ミキサ入力の量を増大させることは、一次ミキサ入力に適用される1つ又は複数の一次ゲイン/係数を増大させること、たとえば1又は0.5より大きい値に設定することを含む。
【0054】
聴覚装置において、一次ミキサ入力と二次ミキサ入力とをミキシングするためには、一次ミキシングフィルタ/一次ゲインユニットからの出力と、二次ミキシングフィルタ/二次ゲインユニットからの出力とを加算することを含むことがある。言い換えれば、ミキシングモジュールは、ミキサ出力として加算器出力を提供するために、一次ミキシングフィルタ/一次ゲインユニット(1つ又は複数)及び二次ミキシングフィルタ/二次ゲインユニット(1つ又は複数)に接続された加算器(単一チャネル又はマルチチャネル)を備えることができる。
【0055】
ミキシングモジュールは、複数の成分/チャネルのミキシングを実行するように構成されたマルチチャネルミキシングモジュールであってもよい。1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、ミキシングモジュールは、ミキサ出力の第2成分を提供するために、一次ミキサ入力の一次第2成分と二次ミキサ入力の二次第2成分とをミキシングするように構成されてもよい。ミキシングモジュールは、任意選択で、ミキサ出力の第2成分を提供するために、一次ミキサ入力の一次第2成分と二次ミキサ入力の二次第2成分とをミキシングするように構成される。一次ミキサ入力の一次第2成分及び二次ミキサ入力の二次第2成分は、例えば第1周波数帯/周波数ビンとは異なる第2周波数帯又は第2周波数ビンの成分であってもよい。
【0056】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置及び/又は方法では、一次ミキサ入力のx_p_1とも表記される一次第1成分と、二次ミキサ入力の二次第1成分x_s_1とをミキシングすることは、ミキサ出力の第1成分を提供するために、一次第1成分及び二次第1成分に第1線形結合を適用することを含む。言い換えれば、ミキサ出力の第1成分y_1は、以下のように与えられ得る:
【0057】
y_1=a_1*x_p_1+b_1*x_s_1、
ただし、a_1は一次係数、b_1は二次係数である。LC_1とも表記される第1線形結合は、一次係数a_1及び二次係数b_1によって定義され得る。
【0058】
第1線形結合の一次係数a_1は、0より大きくてもよい。第1線形結合の二次係数b_1は、0より大きくてもよい。1つ又は複数の例示的な聴覚装置及び/又は方法では、一次係数a_1は、0と1との間の範囲内であり得る。1つ又は複数の例示的な聴覚装置及び/又は方法では、二次係数b_1は、0と1との間の範囲内であり得る。1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、一次係数a_1は、0.1と0.9との間の範囲にあり得る、及び/又は二次係数b_1は、0.1と0.9との間の範囲にあり得る。二次係数b_1は、0.5未満であり得る。
【0059】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、線形結合の一次係数と二次係数の和は1である。したがって、a_1とb_1の和は1であり得る。
【0060】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、ミキシングモジュールは、ミキサ出力の第2成分(y_2とも表記される)を提供するために、一次ミキサ入力の一次第2成分(x_p_2とも表記される)と、二次ミキサ入力の二次第2成分(x_s_2とも表記される)とをミキシングするように構成される。
【0061】
一次ミキサ入力の一次第2成分及び二次ミキサ入力の二次第2成分は、第2周波数帯又は第2周波数ビンの成分であってもよい。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、第2周波数帯/周波数ビンの中心周波数は、1kHz未満、さらには400Hz未満である。第2周波数帯/周波数ビンの中心周波数は、400Hzから2kHzまでの範囲内であり得る。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、第2周波数帯域/周波数ビンの中心周波数は、2kHzよりも大きい、又は3kHzよりもさらに大きいなど、1kHzよりも大きい。第2周波数帯/周波数ビンは、第1周波数帯/周波数ビンとは異なることがある。
【0062】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、一次ミキサ入力の一次第2成分と二次ミキサ入力の二次第2成分とをミキシングすることは、ミキサ出力の第2成分を提供するために、一次第2成分と二次第2成分とに第2線形結合を適用することを含む。言い換えれば、ミキサ出力の第2成分y_2は、以下のように与えられ得る:
【0063】
y_2=a_2*x_p_2+b_2*x_s_2、
ただし、a_2は一次係数、b_2は二次係数である。LC_2とも表記される第2線形結合は、一次係数a_2及び二次係数b_2によって定義され得る。第2線形結合は、第1線形結合とは異なっていてもよい。フィードバック及び不安定性は一般に周波数に依存するので、一次ミキサ入力と二次ミキサ入力の、例えば異なる周波数帯などにおける異なる成分についての異なる線形組み合わせ又は異なるミキシング、聴覚装置ユーザに対する空間知覚をさらに最適化し得る。従って、本開示は、フィードバックが低い周波数帯域における二次マイクロホン(高係数)の使用を増加させることを可能にし、これは、空間知覚の向上につながる可能性がある。更に、低い二次係数を、厳しいフィードバック課題を有する周波数帯域で使用することができる。a_2とb_2の合計は1であり得る。
【0064】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、一次係数a_2は、0.1と0.9との間の範囲にあり得、及び/又は二次係数b_2は、0.1と0.9との間の範囲にあり得る。二次係数b_2は、0.5未満であり得る。二次係数b_2は、二次係数b_1とは異なっていてもよい。
【0065】
より例示的な聴覚装置では、二次係数b_1は、0.55から0.95までの範囲などの0.5よりも大きく、かつ/又は二次係数b_2は、0.05から0.45までの範囲などの0.5未満である。
【0066】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置及び/又は方法では、ある期間の間、二次ミキサ入力の量を増大させることは、第1線形結合の二次係数b_1を、例えば、0.9未満の値から1に増大させること、及び/又は、第2線形結合の二次係数b_2を、例えば、0.9未満の値から1に増大させることを含むことがある。ある期間にわたる二次ミキサ入力の量を増大させることは、b_1及び/又はb_2などの1つ又は複数の二次係数を、1などの0.5より大きい値、又は0.6から1までの範囲に設定することを含むことがある。
【0067】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置及び/又は方法では、ある期間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることは、第1線形結合の二次係数b_1を、例えば、1の値から0.9未満に、及び/又は第2線形結合の二次係数b_2を、例えば1の値から0.9未満に減少させることを含むことがある。前記期間の後の二次ミキサ入力の量を減少させることは、b_1及び/又はb_2などの1つ又は複数の二次係数を、0などの0.5未満の値、又は0から0.4までの範囲に設定することを含むことがある。
【0068】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ある期間にわたってミキサ出力における一次ミキサ入力の量を減少させることは、第1線形結合の一次係数a_1及び/又は第2線形結合の一次係数a_2を減少させることを含むことがある。ある期間にわたる一次ミキサ入力の量を減少させることは、a_1及び/又はa_2などの1つ又は複数の一次係数を、0などの0.5未満の値、又は0から0.4までの範囲に設定することを含むことがある。
【0069】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、前記期間後にミキサ出力における一次ミキサ入力の量を増大させることは、第1線形結合の一次係数a_1を増大させること、及び/又は第2線形結合の一次係数a_2を増大させることを含むことがある。前記期間後に一次ミキサ入力の量を増大させることは、a_1及び/又はa_2などの1つ又は複数の一次係数を、1などの0.5より大きい値、又は0.6から1までの範囲に設定することを含むことがある。
【0070】
1又は複数の例示的な聴覚装置では、ミキシングモジュールは、ミキサ出力の第3成分(y_3とも表記される)を提供するために、二次ミキサ入力の第3成分(x_p_3とも示される)と、二次ミキサ入力の第3成分(x_s_3とも表記される)とをミキシングするように構成される。
【0071】
一次ミキサ入力の一次第3成分及び二次ミキサ入力の二次第3成分は、第3周波数帯域又は第3周波数ビンの成分であり得る。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、第3周波数帯域/周波数ビンの中心周波数は、1kHz未満であり、さらには400Hz未満である。第3の周波数帯/周波数ビンの中心周波数は、400Hzから2kHzまでの範囲内とすることができる。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、第3周波数帯域/周波数ビンの中心周波数は、2kHzよりも大きい、又は3kHzよりもさらに大きいなど、1kHzよりも大きい。第3周波数帯域/周波数ビンは、第1周波数帯域/周波数ビンとは異なっていてもよく、及び/又は第2周波数帯域/周波数ビンとは異なっていてもよい。
【0072】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、一次ミキサ入力の一次第3成分と二次ミキサ入力の二次第3成分とをミキシングすることは、ミキサ出力の第3成分を提供するために、一次第3成分と二次第3成分とに第3線形結合を適用することを含む。言い換えれば、ミキサ出力の第3の成分y_3は、以下のように与えられる:
【0073】
y_3 =a_3*x_p_3+b_3*x_s_3、
ただし、a_3は一次係数、b_3は二次係数である。LC_3とも表記される第3線形結合は、一次係数a_3及び二次係数b_3によって定義され得る。第3線形結合は、第1線形結合と異なっていてもよい。
【0074】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、一次係数a_3は、0.1と0.9との間の範囲であり得、及び/又は二次係数b_3は、0.1と0.9との間の範囲であり得る。二次係数b_3は、0.5より大きくてもよい。二次係数b_3は、二次係数b_1と異なってもよく、及び/又は二次係数b_2と異なってもよい。a_3とb_3の合計は1であり得る。
【0075】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置及び/又は方法では、ある期間にわたって二次ミキサ入力の量を増大させることは、第3線形結合の二次係数b_3を、例えば、0.9未満の値から1に増大させることを含むことがある。ある期間の間、二次ミキサ入力の量を増大させることは、二次係数b_3を、1のような0.5より大きい値、又は0.6から1までの範囲に設定することを含むことがある。
【0076】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置及び/又は方法では、前記期間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることは、第3線形結合の二次係数b_3を、例えば1の値から0.9未満に減少させることを含むことがある。前記期間の後の二次ミキサ入力の量を減少させるために、二次係数b_3を、0又は0から0.4までの範囲のような0.5未満の値に設定することを含むことがある。
【0077】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、ある期間にわたってミキサ出力における一次ミキサ入力の量を減少させることは、第3線形結合の一次係数a_3を減少させることを含むことがある。ある期間、一次ミキサ入力の量を減少させることは、一次係数a_3を、0のような0.5未満の値、又は0から0.4までの範囲に設定することを含むことがある。
【0078】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、前記期間後にミキサ出力における一次ミキサ入力の量を増大させることは、第3線形結合の一次係数a_3を増大させることを含むことがある。前記期間の後に一次ミキサ入力の量を増大させることは、一次係数a_3を0.5より大きい値、例えば1又は0.6から1までの範囲に設定することを含むことがある。
【0079】
さらに、本開示の重要な利点は、線形結合/ミキシングフィルタが、聴覚装置の動作中に個別に設定され、特定の聴覚装置のユーザ環境に合わせて構成され得ることである。これにより、改善された聴覚装置の動作/聴取体験が提供される。特に、改善された指向性を有する聴覚装置が提供される。
【0080】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、ミキシングモジュールは、例えば、線形結合LC_i=(a_i、b_i)の適用によって、ミキサ出力の成分y_iを提供するために、一次ミキサ入力の一次成分x_p_iと、二次ミキサ入力の二次成分x_s_iとをミキシングするように構成され、iは、それぞれのミキサ入力、ミキサ出力、及び一次係数及び二次係数によって定義される線形結合のi番目の成分のインデックスである。すなわち、ミキサ出力成分y_i、i=1~N(Nは成分/周波数帯域の個数)は、以下のように与えられ得る:
【0081】
y_i = a_i * x_p_i + b_i * x_i
周波数帯域/成分の個数iは、5よりも大きくてもよく、例えば15よりも大きくてもよい。a_iとb_iの和は、i=1からNの全てなど、1つ又は複数について1であり得る。
【0082】
1つ又は複数の例示的聴覚装置/方法において、a_iおよびb_iは相補的である。すなわち、i= 1、2、…、Nの少なくとも1つ又は複数、例えば全てに対して、a_i+b_i=1である。
【0083】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、例えばi=1、2、及び3についての、1つ又は複数、例えばすべての一次係数a_iは、前記期間中に0であり得、及び/又は期間後に0.1より大きいなど0超であり得る。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、例えばi=1、2、及び3についての、1つ又は複数の、例えばすべての一次係数a_iは、スイッチイベント/音響イベントの検出前に、例えば0.1より大きいなど0超であり得る。
【0084】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、例えば、i=1、2、及び3についての1つ又は複数、例えば全ての二次係数b_iが、少なくとも前記期間中は1であり得、及び/又は前記期間後は0.9未満など1未満であり得る。1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、例えばi=1、2、及び3についての、二1つ又は複数、例えば全ての次係数b_iが、スイッチイベント/音響イベントの検出前に、0.9未満など1未満であり得る。
【0085】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法において、例えば、i=1、2、及び3についての、1つ又は複数、例えば全ての一次係数a-iは、前記期間中に0.1から0.9までの範囲又は0.1未満、及び/又は前記期間後に0.1から0.9までの範囲又は0.1超であり得る。例えば、一次係数a_iは、例えばi=1、2、及び3について、前記期間中は0.1未満であり、前記期間後は0.1超であり得る(及び0.9未満であってもよい)。
【0086】
1つ又は複数の例示的な聴覚装置/方法では、例えばi=1、2、及び3についての、1つ又は複数、例えばすべての二次係数b_iが、前記期間中に0.1から0.9までの範囲内、又は0.9超であり得、及び/又は前記期間後に0.1から0.9までの範囲内、又は0.9未満であり得る。例えば、i=1、2、及び3についての二次係数b_iは、前記期間中は0.9超であり得、前記期間後は0.9未満であり得る(及び0.1より大きくてもよい)。
【0087】
聴覚装置に関連して説明した特徴は、この方法にも適用可能であり、その逆も同様であることに留意されたい。
【0088】
図1は、例示的な聴覚装置を示す。聴覚装置2、2Aは、ユーザの耳介の後ろに装着される耳の後ろのハウジングとして構成された第1ハウジング4と、ユーザの外耳道内又は外耳道に装着されるイヤピースハウジングとして構成された第2ハウジング6と、第1ハウジング4と第2ハウジング6とを接続するワイヤ8とを備える。聴覚装置2、2Aは、第1ハウジング4内に配置された一次セットのマイクロホン10、12を含み、一次セットのマイクロホンは、一次第1マイクロホン入力信号10Aを提供するための一次第1マイクロホン10と、一次第2マイクロホン入力信号12Aを提供するための一次第2マイクロホン12とを含む。聴覚装置2、2Aは、二次マイクロホン入力信号14Aを提供するために、第2ハウジング6内に配置された二次マイクロホン14を備える。
【0089】
聴覚装置2、2Aは、一次ミキサ入力20及び二次ミキサ入力22に基づいてミキサ出力18を設けるためのミキシングモジュール16を備え、一次ミキサ入力20は、一次第1マイクロホン入力信号10A及び/又は一次第2マイクロホン入力信号12Aに任意に基づいており、二次ミキサ入力22は、二次マイクロホン入力信号14Aに基づいている。
【0090】
聴覚装置2、2Aは、ミキサ出力18を処理し、ミキサ出力18に基づいて電気出力信号26を供給するプロセッサ24と、電気出力信号26を音声出力信号に変換するレシーバ28とを備える。
【0091】
聴覚装置2では、ミキシングモジュール16は、広帯域一次ミキサ入力20及び広帯域二次ミキサ入力22をそれぞれ時間領域でフィルタリングするための一次ミキシングフィルタ30及び二次ミキシングフィルタ32を備える。フィルタリングされた一次ミキサ入力33A及びフィルタリングされた二次ミキサ入力33Bは、ミキサ出力18を形成するためにミキシングモジュール16の加算器34に供給される。したがって、ミキシングモジュール16は、ミキサ出力18の広帯域第1成分を提供するために、一次ミキサ入力20の広帯域一次第1成分と二次ミキサ入力22の二次第1成分とをミキシングするように構成される。
【0092】
聴覚装置2Aにおいて、ミキシングモジュール16Aは、第1線形結合のそれぞれのゲイン又は係数を、時間領域において、それぞれ広帯域一次ミキサ入力20及び広帯域二次ミキサ入力22に適用するための一次ゲインユニット30A及び二次ゲインユニット32Aを含む。ゲインユニット30A及び32Aからの出力は、ミキサ出力18を形成するために、ミキシングモジュール16の加算器34に供給される。ミキシングモジュール16Aは、ミキサ出力18としての広帯域第1成分を提供するために、一次ミキサ入力20としての広帯域一次第1成分及び二次ミキサ入力22としての広域二次第1成分に第1線形結合を適用することにより、ミキサ出力18の広域第1成分を得るため、一次ミキサ入力20の広域一次第1成分と二次ミキサ入力22の二次第1成分とをミキシングするように構成され得る。言い換えれば、一次ゲインユニット30Aは、一次ゲインとして一次係数a_1を一次ミキサ入力20に適用し、二次ゲインユニット32Aは、二次ゲインとして二次係数b_1を二次ミキサ入力22に適用する。一次係数は、0.1から0.9までの範囲であり得、及び/又は二次係数は、0.1から0.9までの範囲であり得る。
【0093】
聴覚装置2、2Aは、一次第1マイクロホン入力信号10A及び/又は一次第2マイクロホン入力信号12Aに基づいて一次ミキサ入力20を形成するための一次プリプロセッサ36を備えることがある。一次プリプロセッサ36では、第1フィルタ36Aが、一次第1マイクロホン入力信号10Aをフィルタリングしてもよいし、第2フィルタ36Bが、一次第2マイクロホン入力信号12Aをフィルタリングしてもよい。(フィルタリングされていてもよい)一次第1マイクロホン入力信号10A及び(フィルタリングされていてもよい)一次第2マイクロホン入力信号12Aは、一次ミキサ入力20を、(フィルタリングされていてもよい)一次第1マイクロホン入力信号10A及び(フィルタリングされていてもよい)一次第2マイクロホン入力信号12Aの和として形成するために、加算器36Cに供給される。第1フィルタ36A及び第2フィルタ36Bは、耳介復元フィルタであってもよい。
【0094】
聴覚装置2及び/又は聴覚装置2Aは、二次マイクロホン入力信号14Aに基づいて二次ミキサ入力22を形成するための二次プリプロセッサ38を備えることができる。二次マイクロホン入力信号14Aは、二次ミキサ入力としてそれぞれのミキシングモジュール16、16Aに供給されることがある。二次プリプロセッサ38において、フィルタ及び/又は遅延36Aは、二次ミキサ入力22を提供するために、例えば、二次ミキサ入力22が一次ミキサ入力20に整合するように、二次マイクロホン入力信号14Aを選択的にフィルタリング及び/又は遅延させる。
【0095】
聴覚装置2及び/又は聴覚装置2Aは、例えばスイッチ検出器45を備えたスイッチ又は音響イベントの存在を判定し、音響イベントが存在するとの判定に従って、例えば、二次ミキシングフィルタ32のフィルタ伝達関数の振幅を増大させるか又は二次ゲインユニット32Aのゲイン/係数を増大させることによって、ある期間、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させ、前記期間の後、例えば、二次ミキシングフィルタ32のフィルタ伝達関数の振幅を減少させるか又は二次ゲインユニット32Aのゲイン/係数を減少させることによって、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させるように構成されたミキシング制御部44を備える。言い換えれば、ミキシング制御部は、例えば、ミキシングモジュール内のフィルタ係数又はゲインを制御するために、ミキシングモジュール16、16Aを制御するための制御パラメータを有する制御信号52を送信する。期間は、適応的であってもよく、及び/又は2msから20msまでの範囲、例えば5msから15msまでの範囲であり得る。
【0096】
ミキシング制御部44は、例えば、破線の導線46によって示されるように、プロセッサ24から、及び/又は、それぞれの破線の導線48、50によって示されるように、電気出力信号26及び二次マイクロホン入力信号14Aのうちの1つ又は両方から、聴覚装置の1つ又は複数の動作パラメータに基づいて、制御パラメータを決定するように構成され得る。1つ又は複数の例示的な聴覚装置では、一次第1マイクロホン入力信号10A及び/又は一次第2マイクロホン入力信号12A(又はそのフィルタリングされたバージョン)は、一次第1マイクロホン入力信号10A及び/又は一次第2マイクロホン入力信号12Aに基づいてスイッチイベント/音響イベントの存在を判定するために、ミキシング制御部44に供給される。一次ミキサ入力20及び/又は二次ミキサ入力22は、これらの入力20、22の一方又は両方に基づいて、スイッチイベント/音響イベントの存在を任意に判定するために、ミキシング制御部44に供給されてもよい。
【0097】
従って、ミキシング制御部44は、一次第1マイクロホン入力信号10A、一次第2マイクロホン入力信号12A、及び二次マイクロホン入力信号14Aのうちの1又は複数に基づいて、音響イベントの存在を判定するように構成されてもよい。
【0098】
ミキシング制御部44は、例えば、ミキシングフィルタ30、32又はゲインユニット30A、32Aのフィルタ係数又は係数をそれぞれ制御信号52で設定することによって、ミキシングモジュール16、16Aを制御する。
【0099】
ミキシング制御部44は、導線46を介してプロセッサ24から任意に受信される聴覚装置のプログラム識別子、ゲイン、フィードバックパラメータなどの1つ又は複数の動作パラメータに基づいて期間を決定するように構成することができる。
【0100】
ミキシング制御部44は、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させ、スイッチング基準が満たされているかどうかを判定するように、すなわち、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量をある期間増大させることが、任意に、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させるとともにスイッチング基準が満たされているかどうかを判定することを含むように、構成され得る。ミキシング制御部44において評価されるスイッチング基準は、閉ループゲインなどの1つ又は複数のゲイン、及び/又は聴覚装置のフィードバックパラメータに基づくことができる。言い換えると、聴覚装置は、不安定性が存在するか切迫しているかをミキシング制御部が判断するまで、ミキサ出力における二次ミキサ入力の増大した量を使用することができる。例えば、フィードバックのリスクを示すフィードバックパラメータが閾値に達した場合、スイッチング基準を満たし得る。閉ループゲインが閾値に達した場合、スイッチング基準が満たし得る。前記期間後にミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減らすことは、任意に、スイッチング基準が満たしていることの判定に従い、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させることを含み得る。換言すれば、ミキシング制御部44は、スイッチング基準が満たされていると判断するミキシング制御部44に従って、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させるように構成され得る。
【0101】
図2にマルチバンドミキシングモジュールを備えた聴覚装置を示す。聴覚装置2Bは、マイクロホン入力信号10A及び12Aに基づく一次ミキサ入力の一次第1成分20A及び一次第2成分20Bを含む一次ミキサ入力のN個の成分を含むマルチバンド一次ミキサ入力を提供するための一次フィルタバンク40を備える。聴覚装置2Bは、マイクロホン入力信号14Aに基づく二次ミキサ入力の二次第1成分22A及び二次第2成分22Bを含む二次ミキサ入力のN個の成分(Nは5以上又は15以上であってもよい)を含むマルチバンド二次ミキサ入力を提供するための二次フィルタバンク42を備える。
【0102】
ミキシングモジュール16Bは、ミキサ出力の第1成分18Aを提供するために、一次係数a_1及び二次係数b_1によって定義される第1線形結合をそれぞれの成分20A、22Aに適用することによって、一次第1成分20A及び二次第1成分22Aをミキシングするように構成された第1線形結合器17Aを備える。ミキシングモジュール16Bは、ミキサ出力の第2成分18Bを提供するために、一次係数a_2及び二次係数b_2によって定義される第2線形結合をそれぞれの成分20B、22Bに適用することによって、一次第2成分20B及び二次第2成分22Bをミキシングするように構成された第2線形結合器17Bを備える。ミキシングモジュール16Bは、ミキサ出力のN個の成分を提供するために、それぞれのN個の一次成分及び二次成分をミキシングするように構成された第N線形結合器17Cを含むN個の線形結合器を含むことができる。第2線形結合は、第1線形結合とは異なる。
【0103】
聴覚装置2Bは、例えば、ミキシングモジュール16Bにおいてミキシングスキームを適用するように構成された、
図1に関連して説明したようなミキシング制御部44を備えていてもよい。
【0104】
ミキシング制御部44は、例えば、スイッチイベント/音響イベントの判定に従って、制御信号52を有する線形結合器17A、17B、…、17Cの線形結合/係数を設定することによって、ミキシングモジュール16Bを制御する。換言すれば、ミキシング制御部44は、制御信号52を有する線形結合器17A、17B、…、17Cの線形結合/係数を設定することによって、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を任意に増大及び/又は減少させる。
【0105】
図3は、マルチバンド一次プリプロセッサ37及びマルチバンドミキシングモジュール16Bを有する聴覚装置を示す。聴覚装置2Cは、マルチバンドプリプロセッサ37に供給されるN個の成分を含むマルチバンド一次第1マイクロホン入力信号を供給するための一次第1フィルタバンク40Aを備える。聴覚装置2Cは、マルチバンドプリプロセッサ37に供給されるN個の成分を含むマルチバンド一次第2マイクロホン入力信号を供給するための一次第2フィルタバンク40Bを備える。プリプロセッサ37の第1フィルタ36A、第2フィルタ36B、及び加算器36Cは、マルチバンド一次ミキサ入力を提供するためのマルチバンド実装である。それによって、マルチバンド耳介復元及びマルチバンドミキシングが提供され、それは、減少したハウリング及び/又はフィードバックを用いて方向性キュー又は空間キューを改善することによって、ユーザ体験を向上させ得る。
【0106】
図4は、聴覚装置を動作させる例示的な方法のフロー図であり、聴覚装置は、ユーザの耳介の後ろに装着される耳の後ろのハウジングとして構成される第1ハウジングと、ユーザの外耳道内又は外耳道に装着されるように構成されるイヤピースハウジングとして構成される第2ハウジングと、第1ハウジングと第2ハウジングとを接続するワイヤと、第1ハウジング内に配置され、一次第1マイクロホン及び一次第2マイクロホンを含む一次セットのマイクロホンと、第2ハウジング内に配置される二次マイクロホンと、ミキシングモジュールと、ミキシング制御部と、プロセッサと、レシーバとを備え、方法100は、一次第1マイクロホンで一次第1マイクロホン入力信号を取得すること102と、電気出力信号をえるため、ミキサ出力を処理すること104と、一次第2マイクロホンで一次第2マイクロホン入力信号を取得すること104と、二次マイクロホンで二次マイクロホン入力信号を取得すること106と、一次第1マイクロホン入力信号及び/又は一次第2マイクロホン入力信号に基づいて一次ミキサ入力を提供すること108と、二次ミキサ入力を提供すること110と一次ミキサ入力及び二次ミキサ入力に基づいてミキサ出力を提供するステップ112と、電気出力信号を提供するためにミキサ出力を処理すること114と、電気出力信号を音声出力信号に変換すること116と、を備える。方法100では、一次ミキサ入力及び二次ミキサ入力に基づいてミキサ出力を提供すること112は、音響イベントの存在を判定に従い、音響イベント又はスイッチイベントの存在を判定すること112と、音響イベントある期間にわたってミキサ出力のうちの二次ミキサ入力の量を増大させること112Bと、前記期間後にミキサ出力のうちの二次ミキサ入力の量を減少させること112Cとを含む。ある期間、ミキサ出力のうちの二次ミキサ入力の量を増大させること112Bは、任意選択的に、ある期間、ミキサ出力のうちの一次ミキサ入力の量を減少させることを含んでいてもよい。前記期間後に、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させること112Cは、任意選択的に、前記期間後に、ミキサ出力における一次ミキサ入力の量を増大させることを含む。
【0107】
図5は、補聴器を動作させる例示的な方法100Aのフロー図である。方法100Aは、一次ミキサ入力と二次ミキサ入力に基づいてミキサ出力を供給するミキサを提供すること113を含み、音響イベントの存在の判定に従い、二次ミキサ入力の量を増大させること112Bを含んでいる。方法100Aでは、ある期間、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させること112Bは、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させること112Eと、スイッチング基準が満たされるかどうかを判定すること112Dを含み、前記期間後に、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させること112Cは、スイッチング基準が満たされるという判定に従いミキサ出力における二次ミキサ入力の量を減少させること112Cを含んでいる。
【0108】
図6は、4秒間のスピーチ(残響室の3人の会話者)の例を示す。赤線54は、スピーチにおける音響イベントの瞬間を示し、すなわち、ミキシング制御部は、赤線によって示される瞬間における音響イベントの存在を決定し、例えば、ミキサ出力における二次ミキサ入力のみを使用するように切り替えることによって、又はミキシングモジュールにおける二次ミキサ入力に適用される1つ以上の係数/ゲインを増大させることによって、ある期間の間、ミキサ出力における二次ミキサ入力の量を増大させる。
【0109】
「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」、「一次」、「二次」及び「三次」等の用語の利用は、いかなる特定の順番も意味するものではないが、個々の要素を識別する。「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」、「一次」、「二次」及び「三次」等の用語の利用は、いかなる順番または重要性をも示すものではなく、「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」、「一次」、「二次」及び「三次」等の用語は、1つの要素を別の要素と区別するのに用いられる。なお、「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」、「一次」、「二次」及び「三次」等の用語は、本明細書やその他において、ラベル付けの目的でのみ使用されており、特定の空間的又は時間的な順序を示すことを意図していない。
【0110】
さらに、第1の要素のラベル付けは、第2の要素の存在を意味せず、その逆も同様である。
【0111】
図1~
図6は、実線で示されるいくつかのモジュール又は動作と、破線で示されるいくつかのモジュール又は動作とを備えることが理解されるであろう。実線に含まれるモジュール又は動作は、最も広い例示的な実施形態に含まれるモジュール又は動作である。破線に含まれるモジュール又は動作は、実線の例示的な実施形態のモジュール又は動作に加えて採用されてもよい、さらなるモジュール又は動作に含まれてもよいし、又はその一部であってもよい、例示的な実施形態である。これらの動作は、提示された順序で実行される必要はないことを理解されたい。さらに、動作のすべてが実行される必要はないことを理解されたい。例示的な動作は、任意の順番で及び任意の組合せで実行され得る。
【0112】
「備える、含む(comprising)」という語は、列挙されたもの以外の他の要素又はステップの存在を必ずしも除外しないことに留意されたい。
【0113】
要素に先行する用語「a」または「an」は、そのような要素が複数存在することを排除するものではないことに留意されたい。
【0114】
さらに、任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定せず、例示的な実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアの両方によって少なくとも部分的に実装されてもよく、いくつかの「手段」、「ユニット」または「装置」は、ハードウェアの同じアイテムによって表されてもよいことに留意されたい。
【0115】
本明細書で説明される様々な例示的な方法、装置、及びシステムは、方法ステップのプロセスの一般的なコンテキストで説明され、方法ステップのプロセスは、一態様では、ネットワーク化された環境内のコンピュータによって実行される、プログラムコードなどのコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータ可読媒体として具現化されるコンピュータプログラム製品によって実装され得る。コンピュータ可読媒体は、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、コンパクトディスク、ディジタル多用途ディスクなどを含むが、これらに限定されない、取り外し可能および非取り外し可能な記憶装置を含むことがある。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行したり、特定の抽象データ型を実装したりする、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含むことがある。コンピュータ実行可能命令、関連するデータ構造、およびプログラムモジュールは、本明細書に開示する方法のステップを実行するためのプログラムコードの例を表す。そのような実行可能命令または関連するデータ構造の特定のシーケンスは、そのようなステップまたはプロセスで説明される機能を実装するための対応する動作の例を表す。
【0116】
特徴が示され、説明されたが、それらは、特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図しておらず、特許請求の範囲に記載された発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正が行われ得ることが当業者には明らかになることが理解されるであろう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきである。特許請求の範囲に記載された発明は、全ての代替物、修正物、および均等物を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0117】
2、2A、2B、2C 聴覚装置
4 第1ハウジング
6 第2ハウジング
8 ワイヤ
10 一次第1マイクロホン
10A 一次第1マイクロホン入力信号
12 一次第2マイクロホン
12A 一次第2マイクロホン入力信号
14 二次マイクロホン
14A 二次マイクロホン入力信号
16、16A、16B ミキシングモジュール
17A 第1線形結合器
17B 第2線形結合器
17C 第N線形結合器
18 ミキサ出力
18A ミキサ出力の第1成分
18B ミキサ出力の第2成分
20 一次ミキサ入力
20A 一次ミキサ入力の一次第1ミキサ成分
20B 一次ミキサ入力の一次第2ミキサ成分
22 二次ミキサ入力
22A 二次ミキサ入力の二次第1成分
22B 二次ミキサ入力の二次第2成分
24 プロセッサ
26 電気出力信号
28 レシーバ
30 一次ミキシングフィルタ
30A 一次ゲインユニット
32 二次ミキシングフィルタ
32A 二次ゲインユニット
33A フィルタリングされた一次ミキサ入力
33B フィルタリングされた二次ミキサ入力
34 加算器
36、37 一次プリプロセッサ
36A 第1フィルタ
36B 第2フィルタ
36C 加算器
38 二次プリプロセッサ
40 一次フィルタバンク
40A 一次第1フィルタバンク
40B 一次第2フィルタバンク
42 二次フィルタバンク
44 ミキシング制御部
46 導線
48 導線
50 導線
52 制御信号
54 音響イベント
100、100A 聴覚装置の動作方法
102 一次第1マイクロホン入力信号の取得
104 一次第2マイクロホン入力信号の取得
106 二次マイクロホン入力信号の取得
108 一次ミキサ入力の提供
110 二次ミキサ入力の提供
112,113 ミキサ出力の提供
112A 音響イベントの存在の判定
112B 音響イベントの存在の判定に応じた二次ミキサ入力の増大
112C 期間後のミキサ出力における二次ミキサ入力の減少
112D スイッチング基準が満たされるかどうかの判定
112E 二次ミキサ入力量の増大
114 電気出力信号を供給するためのミキサ出力の処理
116 電気出力信号の音声出力信号への変換
【外国語明細書】