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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033006
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ほうじ茶飲料の風味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20220217BHJP
   A23F 3/30 20060101ALI20220217BHJP
   A23C 23/00 20060101ALN20220217BHJP
【FI】
A23F3/16
A23F3/30
A23C23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129995
(22)【出願日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2020136003
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】谷 三郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 厳海
【テーマコード(参考)】
4B001
4B027
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC15
4B001AC20
4B001AC43
4B001AC46
4B001EC01
4B001EC08
4B027FB01
4B027FB11
4B027FB13
4B027FC01
4B027FC02
4B027FE02
4B027FE06
4B027FK01
4B027FK02
4B027FK04
4B027FK06
4B027FK08
4B027FK09
4B027FK18
4B027FK20
4B027FP85
(57)【要約】
【課題】ほうじ茶飲料の風味を改善する方法、当該方法により風味が改善されたほうじ茶飲料、及び当該方法によりほうじ茶飲料を製造する方法の提供。
【解決手段】可溶性ほうじ茶固形分とリナロールオキシドとフルフリルアルコール又はフェニルエタノールとを含有し、リナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上であり、フルフリルアルコールの含有量が0.003ppm以上であることを特徴とする、ほうじ茶飲料、及び、ほうじ茶飲料に、リナロールオキシド、及び、フルフリルアルコール又はフェニルエタノールを添加して、飲料中のリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上、かつフルフリルアルコール又はフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になるように調整することを特徴とする、ほうじ茶飲料の風味改善方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性ほうじ茶固形分と、リナロールオキシドと、フルフリルアルコール又はフェニルエタノールと、を含有し、
リナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上であり、
フルフリルアルコール又はフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上であることを特徴とする、ほうじ茶飲料。
【請求項2】
リナロールオキシドの含有量が0.003ppmであり、
フルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上である、請求項1に記載のほうじ茶飲料。
【請求項3】
飲料中のフルフリルアルコールの含有量に対する、飲料中のリナロールオキシドの含有量の比が0.003~50.0である、請求項2に記載のほうじ茶飲料。
【請求項4】
リナロールオキシドの含有量が、0.003~5.00ppmであり、
フルフリルアルコールの含有量が、0.006~20.00ppmである、請求項2又は3に記載のほうじ茶飲料。
【請求項5】
飲料中のフェニルエタノールの含有量に対する、飲料中のリナロールオキシドの含有量の比が0.020~20.3である、請求項1に記載のほうじ茶飲料。
【請求項6】
リナロールオキシドの含有量が、0.002~0.060ppmであり、
フェニルエタノールの含有量が、0.003~0.140ppmである、請求項1又は5に記載のほうじ茶飲料。
【請求項7】
2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量が0.005ppm以上である、又は2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量が0.01ppm以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のほうじ茶飲料。
【請求項8】
さらに、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、及び甘味料からなる群より選択される1種以上を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のほうじ茶飲料。
【請求項9】
ほうじ茶飲料に、リナロールオキシドと、フルフリルアルコール又はフェニルエタノールと、を添加して、
飲料中のリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上、かつフルフリルアルコール又はフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になるように調整することを特徴とする、ほうじ茶飲料の風味改善方法。
【請求項10】
ほうじ茶飲料に、リナロールオキシド及びフェニルエタノールを添加して、
飲料中のリナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上、かつフェニルエタノールの含有量が0.006ppm以上になるように調整する、請求項9のほうじ茶飲料の風味改善方法。
【請求項11】
さらに、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン又は3-ジエチル-5-メチルピラジンを添加して、
飲料中の2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量が0.005ppm以上、又は2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量が0.01ppm以上になるように調整する、請求項9又は10に記載のほうじ茶飲料の風味改善方法。
【請求項12】
前記ほうじ茶飲料が、さらに、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、及び甘味料からなる群より選択される1種以上を含有する、請求項9~11のいずれか一項に記載のほうじ茶飲料の風味改善方法。
【請求項13】
液体と混合して、ほうじ茶飲料を調製するためのインスタントほうじ茶飲料用組成物であって、
可溶性ほうじ茶固形分と、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上になる量のリナロールオキシドと、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上になる量のフルフリルアルコールと、
を含有することを特徴とする、インスタントほうじ茶飲料用組成物。
【請求項14】
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物中の、フルフリルアルコールの含有量に対するリナロールオキシドの含有量の比が、0.003~50.0である、請求項13に記載のインスタントほうじ茶飲料用組成物。
【請求項15】
液体と混合して、ほうじ茶飲料を調製するためのインスタントほうじ茶飲料用組成物であって、
可溶性ほうじ茶固形分と、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上になる量のリナロールオキシドと、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になる量のフェニルエタノールと、
を含有することを特徴とする、インスタントほうじ茶飲料用組成物。
【請求項16】
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物中の、フェニルエタノールの含有量に対するリナロールオキシドの含有量の比が、0.020~20.3である、請求項15に記載のインスタントほうじ茶飲料用組成物。
【請求項17】
さらに、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料における2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量が0.005ppm以上になる量の2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、又は、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料における2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量が0.01ppm以上になる量の2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを含有する、請求項13~16のいずれか一項に記載のインスタントほうじ茶飲料用組成物。
【請求項18】
さらに、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、及び甘味料からなる群より選択される1種以上を含有する、請求項13~17のいずれか一項に記載のインスタントほうじ茶飲料用組成物。
【請求項19】
液体と混合して、ほうじ茶飲料を調製するためのインスタントほうじ茶飲料用組成物の製造方法であって、
原料として、可溶性ほうじ茶固形分と、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上になる量のリナロールオキシドと、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上になる量のフルフリルアルコールと、
を用いることを特徴とする、インスタントほうじ茶飲料用組成物の製造方法。
【請求項20】
液体と混合して、ほうじ茶飲料を調製するためのインスタントほうじ茶飲料用組成物の製造方法であって、
原料として、可溶性ほうじ茶固形分と、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上になる量のリナロールオキシドと、
前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になる量のフェニルエタノールと、
を用いることを特徴とする、インスタントほうじ茶飲料用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほうじ茶飲料の風味を改善する方法、当該方法により風味が改善されたほうじ茶飲料、及び当該方法によりほうじ茶飲料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほうじ茶とは、焙煎した茶葉から抽出した茶飲料である。ほうじ茶は、焙煎により、香ばしい焙煎香りがする上に、苦味成分のタンニンやカテキン等が分解される結果、渋味や苦味が抑えられており、飲み易い。近年では、ほうじ茶をミルクで割ったミルク入りほうじ茶飲料(ほうじ茶オレ)の市場が拡大している。
【0003】
ほうじ茶飲料の風味を改善する方法としては、例えば、焙煎香の原因香気成分を付与する方法が挙げられる。香りは飲料の嗜好性において重要な役割を果たしており、焙煎香が増強されることにより、ほうじ茶飲料の嗜好性が向上する。例えば、焙煎工程においては、茶葉に含まれるアミノ酸と糖のメイラード反応が生じるが、この反応により生じる2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2メチルピラジン等のピラジンが、焙煎香の原因香気成分である。これらのピラジン系香気成分を添加することにより、ほうじ茶飲料の嗜好性を向上させることができる(特許文献1)。また、より香ばしい焙煎感が得られるピロール類縁体も知られている(特許文献2)。
【0004】
また、一般的な緑茶よりも少ないとはいえ、ほうじ茶にもカフェインは含まれており、脱カフェイン処理により低減されたデカフェほうじ茶も知られている。しかし、脱カフェイン処理により、カフェインと共にその他の成分も除外されてしまうため、ほうじ茶感が損なわれてしまうことがある。脱カフェイン処理により失われるほうじ茶感は、4-エチルフェノール、p-クレゾールのいずれか一方、又はその両方を、それぞれ所定の濃度で含有させることで向上させられる(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4777869号公報
【特許文献2】特許第6592044号公報
【特許文献3】特許第6638111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ほうじ茶飲料の風味を改善する方法、当該方法により風味が改善されたほうじ茶飲料、及び当該方法によりほうじ茶飲料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、リナロールオキシドとフルフリルアルコールをそれぞれ所定の含有量となるように調整することによって、ほうじ茶飲料の風味が改善されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
[1]本発明の第一の態様に係るほうじ茶飲料は、可溶性ほうじ茶固形分と、リナロールオキシドと、フルフリルアルコール又はフェニルエタノールとを含有し、リナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上であり、フルフリルアルコール又はフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上であることを特徴とする。
[2]前記[1]のほうじ茶飲料においては、リナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上、フルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上であることが好ましい。
[3]前記[2]のほうじ茶飲料においては、飲料中のフルフリルアルコールの含有量に対する、飲料中のリナロールオキシドの含有量の比が0.003~50.0であることが好ましい。
[4]前記[2]又は[3]のほうじ茶飲料においては、リナロールオキシドの含有量が、0.003~5.00ppmであり、フルフリルアルコールの含有量が、0.006~20.00ppmであることが好ましい。
[5]前記[1]のほうじ茶飲料においては、飲料中のフェニルエタノールの含有量に対する、飲料中のリナロールオキシドの含有量の比が0.020~20.3であることが好ましい。
[6]前記[1]又は[5]のほうじ茶飲料においては、リナロールオキシドの含有量が、0.002~0.060ppmであり、フェニルエタノールの含有量が、0.003~0.140ppmであることが好ましい。
[7]前記[1]~[6]のいずれかのほうじ茶飲料においては、2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量が0.005ppm以上である、又は2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量が0.01ppm以上であることが好ましい。
[8]前記[1]~[7]のいずれかのほうじ茶飲料においては、さらに、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、及び甘味料からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましい。
[9]本発明の第二の態様に係るほうじ茶飲料の風味改善方法は、ほうじ茶飲料に、リナロールオキシドと、フルフリルアルコール又はフェニルエタノールと、を添加して、飲料中のリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上、かつフルフリルアルコール又はフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になるように調整することを特徴とする。
[10]前記[9]のほうじ茶飲料の風味改善方法においては、ほうじ茶飲料に、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールを添加して、飲料中のリナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上、かつフルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上になるように調整することが好ましい。
[11]前記[9]~[10]のいずれかのほうじ茶飲料の風味改善方法は、さらに、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン又は3-ジエチル-5-メチルピラジンを添加して、飲料中の2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量が0.005ppm以上、又は2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量が0.01ppm以上になるように調整することが好ましい。
[12]前記[9]~[11]のいずれかのほうじ茶飲料の風味改善方法においては、前記ほうじ茶飲料が、さらに、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、及び甘味料からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましい。
[13]本発明の第三の態様に係るインスタントほうじ茶飲料用組成物は、液体と混合して、ほうじ茶飲料を調製するためのインスタントほうじ茶飲料用組成物であって、可溶性ほうじ茶固形分と、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上になる量のリナロールオキシドと、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上になる量のフルフリルアルコールと、を含有することを特徴とする。
[14]前記[13]のインスタントほうじ茶飲料用組成物は、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物中の、フルフリルアルコールの含有量に対するリナロールオキシドの含有量の比が、0.003~50.0であることが好ましい。
[15]本発明の第四の態様に係るインスタントほうじ茶飲料用組成物は、液体と混合して、ほうじ茶飲料を調製するためのインスタントほうじ茶飲料用組成物であって、可溶性ほうじ茶固形分と、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上になる量のリナロールオキシドと、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になる量のフェニルエタノールと、を含有することを特徴とする。
[16]前記[15]のインスタントほうじ茶飲料用組成物は、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物中の、フェニルエタノールの含有量に対するリナロールオキシドの含有量の比が、0.020~20.3であることが好ましい。
[17]前記[13]~[16]のいずれかのインスタントほうじ茶飲料用組成物は、さらに、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料における2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量が0.005ppm以上になる量の2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、又は、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料における2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量が0.01ppm以上になる量の2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを含有することが好ましい。
[18]前記[13]~[17]のいずれかのインスタントほうじ茶飲料用組成物は、さらに、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、及び甘味料からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましい。
[19]本発明の第五の態様に係るインスタントほうじ茶飲料用組成物の製造方法は、液体と混合して、ほうじ茶飲料を調製するためのインスタントほうじ茶飲料用組成物の製造方法であって、原料として、可溶性ほうじ茶固形分と、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上になる量のリナロールオキシドと、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上になる量のフルフリルアルコールと、を用いることを特徴とする。
[20]本発明の第六の態様に係るインスタントほうじ茶飲料用組成物の製造方法は、液体と混合して、ほうじ茶飲料を調製するためのインスタントほうじ茶飲料用組成物の製造方法であって、原料として、可溶性ほうじ茶固形分と、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上になる量のリナロールオキシドと、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になる量のフェニルエタノールと、を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第二の態様に係るほうじ茶飲料の風味改善方法、及びこれを利用した本発明の第一の態様に係るほうじ茶飲料によって、風味の改善されたほうじ茶飲料が得られる。
また、本発明の第三の態様及び第四の態様に係るインスタントほうじ茶飲料用組成物を水等の液体に混合するだけで、ほうじ茶本来の風味が増強されたほうじ茶飲料を、簡便に調製することができる。
また、本発明の第五の態様及び第六の態様に係るインスタントほうじ茶飲料用組成物の製造方法によって、前記インスタントほうじ茶飲料用組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明及び本願明細書において、「インスタントほうじ茶飲料用組成物」(「ほうじ茶飲料用組成物」と略記することもある。)とは、水や牛乳等の液体に溶解、希釈、又は分散させることによって、ほうじ茶飲料を調製し得る組成物を意味する。ほうじ茶飲料用組成物は、粉末や顆粒等の固形物であってもよく、液体であってもよいが、より安定的に長期保存が可能であり、焙煎香を始めとするほうじ茶の香りがより強いほうじ茶飲料を製造し得るため、固形物であることが好ましい。
【0011】
本発明及び本願明細書において、「粉末」とは粉粒体(異なる大きさの分布をもつ多くの固体粒子からなり,個々の粒子間に,何らかの相互作用が働いているもの)を意味する。また、「顆粒」は粉末から造粒された粒子(顆粒状造粒物)の集合体である。粉末には、顆粒も含まれる。
【0012】
本発明及び本願明細書において、特に記載のない限り、「ppm」は「質量ppm」を意味する。
【0013】
<ほうじ茶飲料>
本発明に係るほうじ茶飲料は、可溶性ほうじ茶固形分とリナロールオキシドとフルフリルアルコール又はフェニルエタノールとを含有し、リナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上であり、フルフリルアルコール又はフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上であることを特徴とする。ほうじ茶飲料中のリナロールオキシドとフルフリルアルコール又はフェニルエタノールとの含有量を前記範囲に増加させることにより、濃厚感(ボディ感)や香りが強化され、ほうじ茶本来の風味を増強させることができる。
【0014】
リナロールオキシドは、紅茶や烏龍茶に主に含まれている華やかな、軽い香りである。フルフリルアルコールは、土っぽい香りであり、焦げ感や茶の苦みが感じられる香りである。フェニルエタノールは、薔薇様の香りである。フルフリルアルコールとフェニルエタノールは、いずれも芳香環に短いヒドロキシアルキル基が導入された香気成分である。これらはいずれもほうじ茶らしい香りの原因香気成分ではなく、それぞれを単独でその含有量を増強させたとしても、ほうじ茶らしい風味を増強させることはできない。リナロールオキシドとフルフリルアルコールを特定の範囲に増強させることにより、又は、リナロールオキシドとフェニルエタノールを特定の範囲に増強させることにより、はじめてほうじ茶本来の風味を増強させることができる。
【0015】
本発明に係るほうじ茶飲料のリナロールオキシドの含有量は、0.002ppm以上であれば特に限定されるものではない。リナロールオキシド自身の香味が、ほうじ茶として異味になり難いことから、本発明に係るほうじ茶飲料のリナロールオキシドの含有量は、3.00ppm以下であることが好ましく、2.00ppm以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明に係るほうじ茶飲料が、リナロールオキシドとフルフリルアルコールを含有する場合、より十分なほうじ茶風味改善効果が得られることから、本発明に係るほうじ茶飲料のリナロールオキシドの含有量は、0.003ppm以上であることが好ましく、0.00347ppm以上であることがより好ましく、0.005ppm以上であることがさらに好ましく、0.00695ppm以上であることがよりさらに好ましい。また、本発明に係るほうじ茶飲料のリナロールオキシドの含有量は、5.00ppm以下であることが好ましく、2.5ppm以下であることがより好ましい。例えば、0.003ppm~5.00ppmであることが好ましく、0.005ppm~3.00ppmであることがより好ましい。なかでも、0.025ppm以上であることがより好ましく、0.04ppm以上であることがさらに好ましく、0.04~1.20ppmであることが特に好ましい。
【0017】
本発明に係るほうじ茶飲料が、リナロールオキシドとフェニルエタノールを含有する場合、より十分なほうじ茶風味改善効果が得られることから、本発明に係るほうじ茶飲料のリナロールオキシドの含有量は、0.002~0.060ppmであることが好ましく、0.003~0.050ppmであることがより好ましく、0.005~0.042ppmであることがさらに好ましい。
【0018】
本発明に係るほうじ茶飲料のフルフリルアルコールの含有量は、0.003ppm以上が好ましく、0.006ppm以上であれば特に限定されるものではない。より十分なほうじ茶風味改善効果が得られることから、本発明に係るほうじ茶飲料のフルフリルアルコールの含有量は、0.01ppm以上であることが好ましく、0.02ppm以上であることがより好ましく、0.128ppm以上であることがさらに好ましい。フルフリルアルコール自身の香味が、ほうじ茶として異味になり難いことから、本発明に係るほうじ茶飲料のフルフリルアルコールの含有量は、20.00ppm以下であることが好ましく、10.00ppm以下であることがより好ましく、8.00ppm以下であることがさらに好ましく、6.00ppm以下であることがよりさらに好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料のフルフリルアルコールの含有量は、例えば、0.006ppm~20.00ppmであることが好ましく、0.006~8.00ppmであることがより好ましい。
【0019】
より十分なほうじ茶風味改善効果が得られることから、本発明に係るほうじ茶飲料の飲料中のフルフリルアルコールの含有量に対する飲料中のリナロールオキシドの含有量の比([飲料中のリナロールオキシドの含有量]/[飲料中のフルフリルアルコールの含有量])(以下、「L/F比」ということがある。)は、0.003~50.0であることが好ましく、0.003~0.4であることがより好ましく、0.01~0.4であることがさらに好ましく、0.1~0.4であることがよりさらに好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料としては、特に、L/F比が0.003~50.0であり、リナロールオキシド0.00695ppm以上、かつフルフリルアルコール0.022ppm以上であるほうじ茶飲料が好ましく、L/F比が0.003~50.0であり、リナロールオキシド0.04ppm以上、かつフルフリルアルコール0.12ppm以上であるほうじ茶飲料も好ましい。
【0020】
本発明に係るほうじ茶飲料のフェニルエタノールの含有量は、0.003ppm以上であれば特に限定されるものではない。より十分なほうじ茶風味改善効果が得られることから、本発明に係るほうじ茶飲料のフェニルエタノールの含有量は、0.003~0.140ppmであることが好ましく、0.003~0.120ppmであることがより好ましく、0.006~0.100ppmであることがさらに好ましい。フェニルエタノール自身の香味が、ほうじ茶として異味になり難いことから、本発明に係るほうじ茶飲料のフェニルエタノールの含有量は、0.50ppm以下であることが好ましく、0.30ppm以下であることがより好ましい。
【0021】
より十分なほうじ茶風味改善効果が得られることから、本発明に係るほうじ茶飲料の飲料中のフェニルエタノールの含有量に対する飲料中のリナロールオキシドの含有量の比([飲料中のリナロールオキシドの含有量]/[飲料中のフェニルエタノールの含有量])(以下、「L/P比」ということがある。)は、0.020~20.3であることが好ましく、0.030~15.0であることがより好ましく、0.070~1.0であることがさらに好ましく、0.070~0.700であることがよりさらに好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料としては、特に、L/P比が0.020~20.3であり、リナロールオキシド0.002ppm以上、かつフェニルエタノール0.003ppm以上であるほうじ茶飲料が好ましく、L/P比が0.030~15.0であり、リナロールオキシド0.002ppm以上、かつフェニルエタノール0.003~0.0140ppmであるほうじ茶飲料がより好ましく、L/P比が0.070~1.0であり、リナロールオキシド0.002~0.050ppm、かつフェニルエタノール0.006~0.100ppmであるほうじ茶飲料がさらに好ましい。
【0022】
本発明に係るほうじ茶飲料は、焙煎香の原因香気成分であるピラジン系香気成分を、充分量含有することが好ましい。ピラジン系香気成分としては、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン(ナッツ様の香り)、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン(スモーキー、焦げ様の香り)、2メチルピラジン等が挙げられる。本発明に係るほうじ茶飲料に含まれるピラジン系香気成分は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0023】
本発明に係るほうじ茶飲料が2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを含有する場合、よりほうじ茶らしい焙煎香を強められることから、2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量は、0.005ppm以上であることが好ましく、0.005~0.09ppmであることがより好ましく、0.005~0.05ppmであることがさらに好ましく、0.005~0.04ppmであることがよりさらに好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料が2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを含有する場合、よりほうじ茶らしい焙煎香を強められることから、2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量は、0.01ppm以上であることが好ましく、0.01~0.05ppmであることがより好ましく、0.01~0.02ppmであることがさらに好ましく、0.01~0.013ppmであることがよりさらに好ましい。
【0024】
本発明に係るほうじ茶飲料は、可溶性ほうじ茶固形分、リナロールオキシド、フルフリルアルコール、及びフェニルエタノール以外に、例えば、乳、クリーミングパウダー(クリームの代用として、コーヒー等の嗜好性飲料に添加される粉末)、植物性ミルク等のミルク風味を付与する原料(以下、ミルク原料ということがある)を含有することができる。ほうじ茶飲料にこれらを配合することにより、ミルク感をも有するほうじ茶飲料が得られる。これらのミルク原料は、1種類のみを含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有させてもよい。
【0025】
乳としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、牛乳、低脂肪乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、乳糖、生クリーム、バター等が挙げられる。なお、全粉乳及び脱脂粉乳は、それぞれ、牛乳(全脂乳)又は脱脂乳を、スプレードライ等により水分を除去して乾燥し粉末化したものである。
【0026】
クリーミングパウダーは、例えば、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、水添パーム油、パーム核油、水添パーム核油、大豆油、コーン油、綿実油、ナタネ油、こめ油、サフラワー油(ベニバナ油)、ひまわり油、中鎖脂肪酸トリグリセライド、乳脂、牛脂、豚脂等の食用油脂;シヨ糖、グルコース、澱粉加水分解物等の糖質;カゼインナトリウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、脱脂粉乳、乳化剤等のその他の原料等を、望まれる品質特性に応じて選択し、これらの原料を水中で混合し、次いで乳化機等で水中油型乳化液(O/Wエマルション)とした後、水分を除去することによって製造することができる。水分を除去する方法としては、噴霧乾燥、噴霧凍結、凍結乾燥、凍結粉砕、押し出し造粒法等、任意の方法を選択して行うことができる。得られたクリーミングパウダーは、必要に応じて、分級、造粒及び粉砕等を行ってもよい。
【0027】
植物性ミルクとしては、豆類のミルクやナッツのミルクが挙げられる。豆類のミルクとしては、豆乳、ピーナッツミルク等が挙げられる。ナッツのミルクとしては、アーモンドミルク、クルミ(ウォールナッツ)ミルク、ピスタチオミルク、ヘーゼルナッツミルク、カシューナッツミルク、ピーカンナッツミルク等が挙げられる。これらの乳や植物性ミルクは、常法により製造することができる。
【0028】
本発明に係るほうじ茶飲料は、可溶性ほうじ茶固形分、リナロールオキシド、フルフリルアルコール、及びフェニルエタノール以外に、甘味料を含有することができる。甘味料は、1種類のみを含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有させてもよい。甘味料としては、ショ糖、オリゴ糖、ブドウ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、還元水あめ等の糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、アドバンテーム、サッカリン等の高甘味度甘味料、ステビア等が挙げられる。ショ糖としては、グラニュー糖であってもよく、ショ糖型液糖であってもよい。
【0029】
リナロールオキシドとフルフリルアルコールの併用によるほうじ茶の風味改善効果、又はリナロールオキシドとフェニルエタノールの併用によるほうじ茶の風味改善効果は、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク等の存在下でも発揮される。また、ミルク入りほうじ茶飲料では、嗜好性を高めるため、甘味料を含有させる場合が多い。そこで、本発明に係るほうじ茶飲料としては、可溶性ほうじ茶固形分とリナロールオキシドとフルフリルアルコール又はフェニルエタノールとに加えて、さらに、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、及び甘味料からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましく、乳、クリーミングパウダー、及び植物性ミルクからなる群より選択される1種以上と甘味料とを含有することがより好ましい。
【0030】
本発明に係るほうじ茶飲料は、可溶性ほうじ茶固形分、リナロールオキシド、フルフリルアルコール、フェニルエタノール、ピラジン系香気成分、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、及び甘味料以外にも、ほうじ茶飲料に一般的に含まれている成分を含有していてもよい。当該成分としては、香料(ただし、リナロールオキシド、フルフリルアルコール、フェニルエタノール、ピラジン系香気成分を除く)、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、乳化剤等が挙げられる。
【0031】
香料としては、ほうじ茶香料、ミルク香料等が挙げられる。
【0032】
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン等が挙げられる。
【0033】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸。グルコン酸等の有機酸や、リン酸等の無機酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、二酸化炭素等が挙げられる。
【0034】
増粘剤としては、デキストリン等の澱粉分解物、麦芽糖、トレハロース等の糖類、難消化性デキストリン、ペクチン、グアーガム、カラギーナン等の食物繊維、カゼイン等のタンパク質等が挙げられる。
【0035】
乳化剤としては、例えば、モノグリセライド、ジグリセライド、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリンエステル等のグリセリン脂肪酸エステル系乳化剤;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル系乳化剤;プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールオレエート等のプロピレングリコール脂肪酸エステル系乳化剤;ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等のシュガーエステル系乳化剤;レシチン、レシチン酵素分解物等のレシチン系乳化剤等が挙げられる。
【0036】
本発明に係るほうじ茶飲料は、例えば、焙煎された茶葉から熱水で抽出されたほうじ茶エキスに、リナロールオキシド等を添加して製造することができる。茶葉の焙煎や焙煎された茶葉からの熱水抽出は、常法により行うことができる。本発明に係るほうじ茶飲料は、インスタントほうじ茶飲料用組成物を水又は牛乳で溶解させた後、リナロールオキシド等を添加することによっても製造できる。焙煎された茶葉から淹れられたほうじ茶飲料や、インスタントほうじ茶飲料用組成物から調製されたほうじ茶飲料に、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールを所定の含有量となるように添加して、飲料中のリナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上、かつフルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上になるように調整することにより、ほうじ茶風味が改善される。また、焙煎された茶葉から淹れられたほうじ茶飲料や、インスタントほうじ茶飲料用組成物から調製されたほうじ茶飲料に、リナロールオキシド及びフェニルエタノールを所定の含有量となるように添加して、飲料中のリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上、かつフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になるように調整することによっても、ほうじ茶風味が改善される。
【0037】
焙煎された茶葉には、少量ではあるが、リナロールオキシドとフルフリルアルコールとフェニルエタノールが含まれている。本発明に係るほうじ茶飲料は、例えば、常法により製造されたほうじ茶飲料に、リナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上、フルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上となるように、リナロールオキシド及び/又はフルフリルアルコールを添加することにより製造できる。本発明に係るほうじ茶飲料は、例えば、常法により製造されたほうじ茶飲料に、リナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上、フェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上となるように、リナロールオキシド及び/又はフェニルエタノールを添加することによっても製造できる。
【0038】
添加されるリナロールオキシドは、合成品や精製品であることが好ましく、不純物の含有量が少ないものがより好ましい。市販品をそのまま用いてもよい。また、リナロールオキシドを含有する香料組成物を、ほうじ茶飲料に添加してもよい。当該香料組成物に含有されているその他の香気成分は、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールによるほうじ茶の風味改善効果を損なわない限り、特に限定されるものではない。
【0039】
添加されるフルフリルアルコールは、合成品や精製品であることが好ましく、不純物の含有量が少ないものがより好ましい。市販品をそのまま用いてもよい。また、フルフリルアルコールを含有する香料組成物を、ほうじ茶飲料に添加してもよい。当該香料組成物に含有されているその他の香気成分は、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールによるほうじ茶の風味改善効果を損なわない限り、特に限定されるものではない。
【0040】
添加されるフェニルエタノールは、合成品や精製品であることが好ましく、不純物の含有量が少ないものがより好ましい。市販品をそのまま用いてもよい。また、フェニルエタノールを含有する香料組成物を、ほうじ茶飲料に添加してもよい。当該香料組成物に含有されているその他の香気成分は、リナロールオキシド及びフェニルエタノールによるほうじ茶の風味改善効果を損なわない限り、特に限定されるものではない。
【0041】
飲料中のリナロールオキシドとフルフリルアルコールとフェニルエタノールの含有量は、飲料に含有させた原料の配合量から算出することができる。また、飲料中のリナロールオキシド、フルフリルチオール、及びフェニルエタノールの含有量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC/MS法)により測定することができる。
【0042】
焙煎された茶葉には、ピラジン系香気成分が含まれている。本発明に係るほうじ茶飲料のうち、2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量が0.005ppm以上であるほうじ茶飲料や2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量が0.01ppm以上であるほうじ茶飲料は、例えば、常法により製造されたほうじ茶飲料に、リナロールオキシドとフルフリルアルコール又はフェニルエタノールとに加えて、さらにピラジン系香気成分を所望の含有量となるように添加することにより製造できる。
【0043】
添加されるピラジン系香気成分は、合成品や精製品であることが好ましく、不純物の含有量が少ないものがより好ましい。市販品をそのまま用いてもよい。また、ピラジン系香気成分を含有する香料組成物を、ほうじ茶飲料に添加してもよい。当該香料組成物に含有されているその他の香気成分は、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールによるほうじ茶の風味改善効果や、リナロールオキシド及びフェニルエタノールによるほうじ茶の風味改善効果を損なわない限り、特に限定されるものではない。
【0044】
飲料中の2-エチル-3,5-ジメチルピラジンや2,3-ジエチル-5-メチルピラジン等のピラジン系香気成分の含有量は、飲料に含有させた原料の配合量から算出することができる。また、飲料中の2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量や2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量は、GC/MS法により測定することができる。
【0045】
<ほうじ茶飲料用組成物>
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物は、液体と混合して、ほうじ茶飲料を調製するためのインスタントほうじ茶飲料用組成物であって、可溶性ほうじ茶固形分と、リナロールオキシドと、フルフリルアルコール又はフェニルエタノールとを含有する。当該ほうじ茶飲料用組成物を、水や牛乳等の液体と混合することにより、リナロールオキシドの含有量が0.003ppm以上であり、かつフルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上であるほうじ茶飲料や、リナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上であり、かつフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上であるほうじ茶飲料が製造できる。本発明に係るほうじ茶飲料用組成物を混合する液体は、60℃以上の高温であってもよく、室温程度であってもよく、10℃以下の低温であってもよい。
【0046】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物は、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上、好ましくは0.003ppm以上になる量のリナロールオキシドを含有する。原料として含有させるリナロールオキシドは、前記のほうじ茶飲料において添加されるリナロールオキシドと同様のものを用いることができる。
【0047】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物は、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフルフリルアルコールの含有量が0.006ppm以上になる量のフルフリルアルコールを含有する。原料として含有させるフルフリルアルコールは、前記のほうじ茶飲料において添加されるフルフリルアルコールと同様のものを用いることができる。
【0048】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物は、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になる量のフェニルエタノールを含有する。原料として含有させるフェニルエタノールは、前記のほうじ茶飲料において添加されるフェニルエタノールと同様のものを用いることができる。
【0049】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物が0.006ppm以上のフルフリルアルコールを含有している場合、当該ほうじ茶飲料用組成物のリナロールオキシドの含有量としては、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量は、0.003ppm以上になる量であることが好ましく、0.005ppm以上になる量であることがより好ましく、0.00695ppm以上になる量であることがさらに好ましい。なかでも、0.025ppm以上になる量であることがより好ましく、0.04ppm以上になる量であることがさらに好ましく、0.04~1.20ppmになる量であることが特に好ましい。
【0050】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物が0.003ppm以上のフェニルエタノールを含有している場合、当該ほうじ茶飲料用組成物のリナロールオキシドの含有量としては、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量は、0.002~0.060ppmになる量であることが好ましく、0.003~0.100ppmになる量であることがより好ましく、0.003~0.060ppmになる量であることがさらに好ましく、0.003~0.050ppmになる量であることがよりさらに好ましく、0.005~0.050ppmになる量であることが特に好ましい。
【0051】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物のリナロールオキシドの含有量としては、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が3.00ppm以下になる量であることが好ましく、2.00ppm以下になる量であることがより好ましい。
【0052】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物のフルフリルアルコールの含有量としては、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフルフリルアルコールの含有量が0.01ppm以上になる量であることが好ましく、0.02ppm以上になる量であることがより好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料用組成物のフルフリルアルコールの含有量としては、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフルフリルアルコールの含有量が8.00ppm以下になる量であることが好ましく、6.00ppm以下になる量であることがより好ましい。
【0053】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物としては、ほうじ茶飲料用組成物中の、フルフリルアルコールの含有量に対するリナロールオキシドの含有量の比(L/F比)が、0.003~50.0であることが好ましく、0.003~0.4であることがより好ましく、0.01~0.4であることがさらに好ましく、0.1~0.4であることがよりさらに好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料用組成物としては、特に、L/F比が0.003~50.0であり、かつ当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.00695ppm以上となる量のリナロールオキシドと、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフルフリルアルコールの含有量が0.022ppm以上となる量のフルフリルアルコールとを含有するものが好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料用組成物としては、L/F比が0.003~50.0であり、かつ当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.04ppm以上となる量のリナロールオキシドと、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフルフリルアルコールの含有量が0.12ppm以上となる量のフルフリルアルコールとを含有するものも好ましい。
【0054】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物のフェニルエタノールの含有量としては、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上になる量であることが好ましく、0.003~0.140ppmになる量であることがより好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料用組成物のフェニルエタノールの含有量としては、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフェニルエタノールの含有量が1.00ppm以下になる量であることが好ましく、0.50ppm以下になる量であることがより好ましい。
【0055】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物としては、ほうじ茶飲料用組成物中の、フェニルエタノールの含有量に対するリナロールオキシドの含有量の比(L/P比)が、0.020~20.3であることが好ましく、0.030~15.0であることがより好ましく、0.070~1.0であることがさらに好ましく、0.070~0.700であることがよりさらに好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料用組成物としては、特に、L/P比が0.020~20.3であり、かつ当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.002ppm以上となる量のリナロールオキシドと、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフェニルエタノールの含有量が0.003ppm以上となる量のフェニルエタノールとを含有するものが好ましい。本発明に係るほうじ茶飲料用組成物としては、L/P比が0.030~15.0であり、かつ当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるリナロールオキシドの含有量が0.002~0.060ppmとなる量のリナロールオキシドと、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料におけるフェニルエタノールの含有量が0.003~0.0140ppmとなる量のフェニルエタノールとを含有するものも好ましい。
【0056】
原料として用いられる可溶性ほうじ茶固形分は、焙煎した茶葉から抽出された可溶性の固形分であり、粉末であってもよく、水溶液であってもよい。保存安定性が良好であるため、本発明に係るほうじ茶飲料用組成物の製造においては、粉末の可溶性ほうじ茶固形分を原料とすることが好ましい。
【0057】
粉末又は水溶系である可溶性ほうじ茶固形分は、常法により製造することができ、また、市販されているものを用いてもよい。例えば、粉末状の可溶性ほうじ茶固形分は、焙煎された茶葉から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。焙煎された茶葉は、一般的にほうじ茶飲料に使用されている茶葉を常法により焙煎されたものを用いることができる。得られた抽出物の乾燥方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。抽出物は、予めデキストリン等の澱粉分解物と混合し、得られた混合物を乾燥してもよい。得られた抽出物の乾燥方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。また、茶葉からの抽出物は、乾燥前に、必要に応じて濃縮してもよい。当該濃縮方法としては、熱濃縮方法、冷凍濃縮方法、逆浸透膜や限外濾過膜等を用いた膜濃縮方法等の汎用されている濃縮方法により行うことができる。
【0058】
焙煎された茶葉を微粉砕したものを、粉末状の可溶性ほうじ茶固形分として用いることもできる。焙煎された茶葉は、一般的にほうじ茶飲料に使用されている茶葉を常法により焙煎されたものを用いることができる。
【0059】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物としては、十分量のピラジン系香気成分を含有していることが好ましい。原料として含有させる2-エチル-3,5-ジメチルピラジンや2,3-ジエチル-5-メチルピラジン等のピラジン系香気成分は、前記のほうじ茶飲料において添加されるピラジン系香気成分と同様のものを用いることができる。本発明に係るほうじ茶飲料用組成物に含まれるピラジン系香気成分は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0060】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物が2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを含有する場合、当該ほうじ茶飲料用組成物の2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量は、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料における2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの含有量が0.005ppm以上になる量であることが好ましく、0.005~0.09ppmになる量であることがより好ましく、0.005~0.05ppmになる量であることがさらに好ましく、0.005~0.04ppmになる量であることがよりさらに好ましい。
【0061】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物が2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを含有する場合、当該ほうじ茶飲料用組成物の2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量は、当該ほうじ茶飲料用組成物を液体と混合して得られたほうじ茶飲料における2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量が0.01ppm以上になる量であることが好ましく、0.01~0.05ppmになる量であることがより好ましく、0.01~0.02ppmになる量であることがさらに好ましく、0.01~0.013ppmになる量であることがよりさらに好ましい。
【0062】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物は、可溶性ほうじ茶固形分の濃縮液又は粉末を、その他の原料と混合することによって製造される。混合の順番は特に限定されるものではなく、全ての原料を同時に混合してもよく、順次混合させてもよい。
【0063】
全ての原料が粉末の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、粉末のほうじ茶飲料用組成物が製造される。一方で、全ての原料が液状の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、液状のほうじ茶飲料用組成物が製造される。
【0064】
粉末原料と液状の原料を用いる場合、粉末の原料を全て予め混合し、得られた混合粉末に、液状の原料の混合液を噴霧して乾燥させることによって、粉末のほうじ茶飲料用組成物が製造される。また、液状の原料の混合液に、粉末の原料を溶解又は分散させることによって、液状のほうじ茶飲料用組成物が製造される。
【0065】
ほうじ茶飲料用組成物に添加される可溶性ほうじ茶固形分、リナロールオキシド、フルフリルアルコール、フェニルエタノール、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、及び2,3-ジエチル-5-メチルピラジン以外のその他の原料としては、乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、甘味料、香料(ただし、リナロールオキシド、フルフリルアルコール、フェニルエタノール、ピラジン系香気成分を除く)、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、乳化剤、賦形剤、結合剤、流動性改良剤(固結防止剤)等が挙げられる。乳、クリーミングパウダー、植物性ミルク、甘味料、香料、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、及び乳化剤としては、ほうじ茶飲料の原料として列挙されたものと同様のものを用いることができる。また、必要に応じて、茶類やハーブ、コーヒー等を抽出することなく微粉砕したものを混ぜてもよい。
【0066】
賦形剤や結合剤としては、デキストリン等の澱粉分解物、麦芽糖、トレハロース等の糖類、難消化性デキストリン等の食物繊維、カゼイン等のタンパク質等が挙げられる。なお、賦形剤や結合剤は、造粒時の担体としても用いられる。
【0067】
流動性改良剤としては、微粒酸化ケイ素、第三リン酸カルシウム等の加工用製剤が用いられてもよい。
【0068】
本発明に係るほうじ茶飲料用組成物は、飲用1杯分を小パウチなどに個包装したり、使用時に容器から振り出したりスプーンで取り出したりして使用するように瓶などの容器に数杯分をまとめて包装して商品として供給することもできる。
【0069】
個包装タイプとは、スティック状アルミパウチ、ワンポーションカップなどにコーヒー飲料1杯分の中身を充填包装するものであり、容器を開けて指で押し出すなどの方法で中身を取り出すことができる。個包装タイプは、1杯分が密閉包装されているので取り扱いも簡単で、衛生的であるという利点を有する。
【実施例0070】
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、特に記載がない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0071】
<ほうじ茶パウダー又はほうじ茶飲料中の香気成分の測定>
ほうじ茶パウダー又はほうじ茶飲料中の2-エチル-3,5-ジメチルピラジン及び2,3-ジエチル-5-メチルピラジン等のピラジン系香気成分、リナロールオキシド、フルフリルアルコール、及びフェニルエタノールは、GC/MSを用いて分析して、その濃度を測定した。GC/MSの分析条件は下記の通りである。
【0072】
GC/MS条件
GC部:7890A(Agilent Technologies社製)
MS部:5975C(Agilent Technologies社製)
カラム:InertCap WAX-HT(0.25μm×0.25mm×60m)
試料注入:DHS(ダイナミックヘッドスペース)法
サンプル温度:80℃
圧力:292kPa
セプタムパージ流量:3mL/分
試料導入:スプリットレスモード
カラム流量:3.415mL/分
カラム線速:46.493cm/秒
カラムオーブン温度:35℃(5分間保持)→250℃(5℃/分、10分間保持)
【0073】
[参考例1]
ストレート(ミルク風味と甘味なし)のほうじ茶飲料に対してピラジン系香気成分を添加し、風味に対する影響を調べた。ピラジン系香気成分としては、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン又は2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを用いた。
【0074】
<ストレートほうじ茶飲料>
ほうじ茶パウダー0.75gを量り取り、ピラジン系香気成分を、飲料中の濃度が表1又は2に記載の濃度となるように添加し、130mLのお湯を注ぐことにより、ストレートほうじ茶飲料を調製した。ほうじ茶パウダーとして、ほうじ茶エキスとデキストリンの混合物を噴霧乾燥させたパウダー(ほうじ茶エキスパウダー)と、焙煎した茶葉を微粉砕したパウダー(ほうじ茶微粉砕パウダー)の2種類を用いた。
【0075】
<官能評価>
各試験飲料のほうじ茶感を、トレーニングされた専門パネル6名により、10段階評価(10:最も感じる、・・・1:全く感じない)で評価した。ほうじ茶感は、香ばしさ、苦み、後半の味の厚み等を総合評価した。異臭や異風味を感じた場合は、ほうじ茶感は弱い又は感じないと評価した。具体的な評価基準は以下の通りである。全専門パネルの評価スコアの平均値を、各サンプルの評価スコアとした。
【0076】
1~3点:ほうじ茶の香ばしい香りやトップの甘い香り、苦渋味やざらつきなどの濃度感が弱く、ほうじ茶感が弱い。
4点:香ばしい香りやトップの甘い香りが向上し、明らかにほうじ茶と判断がつく。
5~6点:香ばしい香りや甘い香りに加えて、苦みやざらつきなど濃度感が向上し、ほうじ茶本来の風味が強化された。
7~10点:ざらつきなどの濃度感が向上し、後半のボディ感がさらに強化され、ほうじ茶本来の風味が強化された。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
ほうじ茶エキスパウダーを用いて製造したほうじ茶飲料の評価結果を表1に、ほうじ茶微粉砕パウダーを用いて製造したほうじ茶飲料の評価結果を表2に、それぞれ示す。ほうじ茶エキスパウダーのみからなるほうじ茶飲料よりも、ほうじ茶微粉砕パウダーのみからなるほうじ茶飲料のほうが、ほうじ茶感が強く、2-エチル-3,5-ジメチルピラジンと2,3-ジエチル-5-メチルピラジンの含有量も多かった。これは、焙煎茶葉からの抽出工程で、ピラジン系香気成分等が失われてしまうためと推察された。ほうじ茶エキスパウダーを用いて製造したほうじ茶飲料とほうじ茶微粉砕パウダーを用いて製造したほうじ茶飲料のいずれにおいても、2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの添加量を多くするとほうじ茶感が改善され、特に香ばしさが改善されるが、2-エチル-3,5-ジメチルピラジンの添加量が多くなりすぎると、異味となり、ほうじ茶感は低下した。2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを添加した場合も同様の傾向が確認された。
【0080】
より詳細には、ほうじ茶エキスパウダーを用いて製造したほうじ茶飲料に2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを添加した場合には、飲料中の濃度が0.009ppm~0.022ppmでほうじ茶感が向上したが、飲料中の濃度が0.043ppmでは、香り浮きが強くなり、風味に違和感があった。また、香ばしい香りと呈味にギャップが生じており、人工的な風味と感じられた(表1)。同様に、ほうじ茶微粉砕パウダーを用いて製造したほうじ茶飲料に2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを添加した場合には、飲料中の濃度が0.014ppm~0.036ppmでほうじ茶感が向上したが、飲料中の濃度が0.07ppmでは、ミドルのボディ感は向上したが、やや香り浮きしており、人工的な風味であった(表2)。
【0081】
ほうじ茶エキスパウダーを用いて製造したほうじ茶飲料に2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを添加した場合には、飲料中の濃度が0.01ppm~0.03ppmでほうじ茶感が向上したが、飲料中の濃度が0.05ppmでは、香り浮きが強くなり、風味に違和感があり、人工的な風味と感じられた(表1)。同様に、ほうじ茶微粉砕パウダーを用いて製造したほうじ茶飲料に2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを添加した場合には、飲料中の濃度が0.003ppm~0.006ppmでほうじ茶感が向上したが、飲料中の濃度が0.015ppmでは、香りが強く、人工的な風味と感じられた(表2)。
【0082】
[参考例2]
ミルク入りほうじ茶飲料に対してピラジン系香気成分を添加し、風味に対する影響を調べた。ピラジン系香気成分としては、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン又は2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを用いた。
【0083】
<ミルク入りほうじ茶飲料>
表3に記載の組成の粉末状のベースミックス10gを量り取り、ピラジン系香気成分を、飲料中の濃度が表4に記載の濃度となるように添加し、180mLのお湯を注ぐことにより、ミルク入りほうじ茶飲料を調製した。ほうじ茶パウダーとして、参考例1で用いたほうじ茶エキスパウダーとほうじ茶微粉砕パウダーを用いた。
【0084】
【表3】
【0085】
<官能評価>
各試験飲料のほうじ茶感を、参考例1と同様にして評価した。評価結果を表4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを添加したミルク入りほうじ茶飲料と2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを添加したミルク入りほうじ茶飲料のいずれにおいても、添加量を多くするとほうじ茶感が改善され、特に香ばしさが改善されるが、添加量が多くなりすぎると、異味となり、ほうじ茶感は低下した。
【0088】
より詳細には、ミルク入りほうじ茶飲料に2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを添加した場合には、飲料中の濃度が0.005ppm~0.04ppmでほうじ茶感が向上したが、飲料中の濃度が0.09ppmでは、香り浮きが強くなり、風味に違和感があった。また、香ばしい香りと呈味にギャップが生じており、人工的な風味と感じられた(表4)。同様に、ミルク入りほうじ茶飲料に2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを添加した場合には、飲料中の濃度が0.01ppm~0.013ppmでほうじ茶感が向上したが、飲料中の濃度が0.05ppmでは、香り浮きが強くなり、風味に違和感があった。また、香りは強いが水っぽさを感じ、人工的な風味と感じられた(表4)。飲料中の濃度が0.1ppm以上になるように2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを添加した場合には、更に香ばしい香りが強化されたが、エグミ、水っぽさを感じた(表4)。
【0089】
[実施例1]
ストレートのほうじ茶飲料に対してリナロールオキシド及びフルフリルアルコールを添加し、風味に対する影響を調べた。
【0090】
<ストレートほうじ茶飲料>
ほうじ茶パウダー0.75gを量り取り、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールを、飲料中の濃度が表5又は6に記載の濃度となるように添加し、130mLのお湯を注ぐことにより、ストレートほうじ茶飲料を調製した。表中、リナロールオキシドの最低濃度の欄は、リナロールオキシド無添加の飲料であり、フルフリルアルコールの最低濃度の欄は、フルフリルアルコール無添加の飲料である。すなわち、表中の左上のセルは、リナロールオキシドとフルフリルアルコールのいずれも無添加の飲料である。ほうじ茶パウダーとして、参考例1で用いたほうじ茶エキスパウダーとほうじ茶微粉砕パウダーの2種類を用いた。
【0091】
<官能評価>
各試験飲料のほうじ茶感を、参考例1と同様にして評価した。リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの両方が無添加のほうじ茶飲料(表中の左上のセル)の官能評価よりも、スコアが1点以上高くなっている試験区では、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの添加により、ほうじ茶感が向上した、と評価した。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
ほうじ茶エキスパウダーを用いて製造したほうじ茶飲料の評価結果を表5に、ほうじ茶微粉砕パウダーを用いて製造したほうじ茶飲料の評価結果を表6に、それぞれ示す。ほうじ茶エキスパウダーからなるほうじ茶飲料とほうじ茶微粉砕パウダーからなるほうじ茶飲料のいずれにおいても、リナロールオキシドとフルフリルアルコールは、いずれも単体ではほうじ茶感の増強は確認されなかったが、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの両方を添加することにより、ほうじ茶感が向上していた。特に、飲料中の濃度が、リナロールオキシドが0.0054ppm以上、フルフリルアルコールが0.006ppm以上の場合に、無添加のほうじ茶飲料よりも官能評価スコアが2点以上高くなり、ほうじ茶感が顕著に向上したことが確認された。
【0095】
より詳細には、ほうじ茶エキスパウダーを用いて製造したほうじ茶飲料では、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの両方を添加することにより、ざらつきや濃度感(後半のボディ感)、後半の香りが強化され、ほうじ茶本来の風味が増強された。ほうじ茶微粉砕パウダーを用いて製造したほうじ茶飲料では、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの両方を添加することにより、濃度感(後半のボディ感)やトップの香りが強化され、ほうじ茶本来の風味が増強された。
【0096】
[実施例2]
ミルク入りほうじ茶飲料に対してリナロールオキシド及びフルフリルアルコールを添加し、風味に対する影響を調べた。
【0097】
<ミルク入りほうじ茶飲料>
表3に記載の組成の粉末状のベースミックス10gを量り取り、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールを、飲料中の濃度が表7及び8に記載の濃度となるように添加し、180mLのお湯を注ぐことにより、ミルク入りほうじ茶飲料を調製した。表中、リナロールオキシドの最低濃度の欄は、リナロールオキシド無添加の飲料であり、フルフリルアルコールの最低濃度の欄は、フルフリルアルコール無添加の飲料である。すなわち、表中の左上のセルは、リナロールオキシドとフルフリルアルコールのいずれも無添加の飲料である。
【0098】
<官能評価>
各試験飲料のほうじ茶感を、参考例1と同様にして評価した。リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの両方が無添加のほうじ茶飲料(表中の左上のセル)の官能評価よりも、スコアが1点以上高くなっている試験区では、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの添加により、ほうじ茶感が向上した、と評価した。
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】
【0101】
評価結果を表7及び8に示す。実施例1のストレートほうじ茶飲料と同様に、ミルク入りほうじ茶飲料においても、リナロールオキシドとフルフリルアルコールをそれぞれ単体で添加した場合には、ほうじ茶感の増強は確認されなかったが、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの両方を添加することにより、ほうじ茶感が向上していた。より詳細には、リナロールオキシド濃度が0.00347ppm以上、フルフリルアルコール濃度が0.006ppm以上であるミルク入りほうじ茶飲料において、ほうじ茶本来の風味が増強されていた。リナロールオキシド濃度が0.00695ppm以上、フルフリルアルコール濃度が0.022ppm以上となるように両者を添加することにより、ほうじ茶感がさらに増強されていた。なかでも、L/F比が0.003~50.0の範囲であるミルク入りほうじ茶飲料では、ざらつきや濃度感が向上し、ほうじ茶本来の風味が増強されており、特に、L/F比が0.003~0.4の範囲であるミルク入りほうじ茶飲料では、ざらつきや濃度感の向上に加え、トップの香り立ちが向上し、更にほうじ茶本来の風味が増強されていた。
【0102】
[実施例3]
ほうじ茶パウダー量の異なるミルク入りほうじ茶飲料に対して、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールを添加し、風味に対する影響を調べた。
【0103】
<ミルク入りほうじ茶飲料>
表9に記載の組成の粉末状のベースミックス12.79gを量り取り、ほうじ茶パウダーを0.84g又は1.68g添加し、さらにリナロールオキシド及びフルフリルアルコールを、飲料中の濃度が表9~12に記載の濃度となるように添加し、180mLのお湯を注ぐことにより、ミルク入りほうじ茶飲料を調製した。表中、リナロールオキシドの最低濃度の欄は、リナロールオキシド無添加の飲料であり、フルフリルアルコールの最低濃度の欄は、フルフリルアルコール無添加の飲料である。すなわち、表中の左上のセルは、リナロールオキシドとフルフリルアルコールのいずれも無添加の飲料である。ほうじ茶パウダーとして、参考例1で用いたほうじ茶エキスパウダーとほうじ茶微粉砕パウダーの2種類をそれぞれ用いた。
【0104】
【表9】
【0105】
<官能評価>
各試験飲料のほうじ茶感を、参考例1と同様にして評価した。リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの両方が無添加のほうじ茶飲料(表中の左上のセル)の官能評価よりも、スコアが1点以上高くなっている試験区では、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの添加により、ほうじ茶感が向上した、と評価した。評価結果を表10~13に示す。
【0106】
【表10】
【0107】
【表11】
【0108】
【表12】
【0109】
【表13】
【0110】
ほうじ茶エキスパウダーとほうじ茶微粉砕パウダーのいずれを用いた場合においても、ほうじ茶パウダーの含有量にかかわらず、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの両方を添加することにより、ほうじ茶感が向上していた。ほうじ茶エキスパウダーを用いて製造されたミルク入りほうじ茶飲料では、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの添加により、特に、後半の厚み(ボディ感)とざらつきが向上した。ほうじ茶微粉砕パウダーを用いて製造されたミルク入りほうじ茶飲料では、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの添加により、特に、トップの香りと後半の厚み(ボディ感)が向上した。
【0111】
[実施例4]
甘味のないミルク入りほうじ茶飲料に対して、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールを添加し、風味に対する影響を調べた。
【0112】
<ミルク入りほうじ茶飲料>
表14に記載の組成の粉末状のベースミックス4.79gを量り取り、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールを、飲料中の濃度が表15に記載の濃度となるように添加し、180mLのお湯を注ぐことにより、ミルク入りほうじ茶飲料を調製した。表中、リナロールオキシドの最低濃度の欄は、リナロールオキシド無添加の飲料であり、フルフリルアルコールの最低濃度の欄は、フルフリルアルコール無添加の飲料である。すなわち、表中の左上のセルは、リナロールオキシドとフルフリルアルコールのいずれも無添加飲料である。ほうじ茶パウダーとして、参考例1で用いたほうじ茶エキスパウダーとほうじ茶微粉砕パウダーの2種類を用いた。
【0113】
【表14】
【0114】
<官能評価>
各試験飲料のほうじ茶感を、参考例1と同様にして評価した。リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの両方が無添加のほうじ茶飲料(表中の左上のセル)の官能評価よりも、スコアが1点以上高くなっている試験区では、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの添加により、ほうじ茶感が向上した、と評価した。評価結果を表15に示す。
【0115】
【表15】
【0116】
実施例2の甘味有りのミルク入りほうじ茶飲料と同様に、甘味無しのミルク入りほうじ茶飲料においても、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの両方を添加することにより、ほうじ茶感が向上していた。
【0117】
[実施例5]
ミルク入りほうじ茶飲料に対して、リナロールオキシドとフルフリルアルコールに加えてピラジン系香気成分を添加し、風味に対する影響を調べた。
【0118】
<ミルク入りほうじ茶飲料>
2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料は、表3に記載の組成の粉末状のベースミックス10gを量り取り、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールを飲料中の濃度が表16に記載の濃度となるように添加し、さらに2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを飲料中の濃度が0.04ppm又は0.14ppmとなるように添加して、180mLのお湯を注ぐことにより調製した。
【0119】
2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料は、表3に記載の組成の粉末状のベースミックス10gを量り取り、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールを飲料中の濃度が表17に記載の濃度となるように添加し、さらに2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを飲料中の濃度が0.013ppm又は0.1ppmとなるように添加して、180mLのお湯を注ぐことにより調製した。
【0120】
表中、リナロールオキシドの最低濃度の欄は、リナロールオキシド無添加の飲料であり、フルフリルアルコールの最低濃度の欄は、フルフリルアルコール無添加の飲料である。すなわち、表中の左上のセルは、リナロールオキシドとフルフリルアルコールのいずれも無添加の飲料である。
【0121】
<官能評価>
各試験飲料のほうじ茶感を、参考例1と同様にして評価した。リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの両方が無添加のほうじ茶飲料(表中の左上のセル)の官能評価よりも、スコアが1点以上高くなっている試験区では、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの添加により、ほうじ茶感が向上した、と評価した。
【0122】
【表16】
【0123】
【表17】
【0124】
2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料の評価結果を表16に、2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料の評価結果を表17に、それぞれ示す。表16中、上段の「評価A」は、0.04ppmの2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料の評価結果であり、中段の「評価B」は、0.14ppmの2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料の評価結果である。表17中、上段の「評価A」は、0.013ppmの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料の評価結果であり、中段の「評価B」は、0.1ppmの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料の評価結果である。
【0125】
2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料と2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを配合したミルク入りほうじ茶飲料のいずれにおいても、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの両方を添加することにより、ほうじ茶感が向上していた。特に、0.14ppmの2-エチル-3,5-ジメチルピラジンを単独でミルク入りほうじ茶飲料に配合した場合には、ピラジン香が強すぎてほうじ茶感が損なわれてしまっていたが(参考例2)、これにリナロールオキシドとフルフリルアルコールを添加すると、ほうじ茶感が向上した。同様に、0.1ppmの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンを単独でミルク入りほうじ茶飲料に配合した場合には、ピラジン香が強すぎてほうじ茶感が損なわれてしまっていたが(参考例2)、これにリナロールオキシドとフルフリルアルコールを添加すると、ほうじ茶感が向上した。これらは、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの併用によりざらつきや濃度感が向上することで、ピラジン香と呈味のギャップが解消されたためと推察された。
【0126】
[実施例6]
様々なミルク原料を用いたミルク入りほうじ茶飲料に対して、リナロールオキシドとフルフリルアルコールを添加し、風味に対する影響を調べた。
【0127】
<ミルク原料>
ミルク原料として、脱脂粉乳、6種類のクリーミングパウダー(CP1~CP6)、牛乳、低脂肪乳、及び調整豆乳を用いた。6種類のクリーミングパウダーのうち、CP1~CP3は、水あめと植物油脂を主原料としたクリーミングパウダーであり、CP4が市販品「マリーム」(味の素AGF社製)、CP5が市販品「マリーム低脂肪」(味の素AGF社製)、CP6が乳製品と乳糖を主原料としたクリーミングパウダーである。
【0128】
<ミルク入りほうじ茶飲料>
粉末状のミルク原料を配合したミルク入りほうじ茶飲料は、表18に記載の組成の粉末状のベースミックス7.63gを量り取り、リナロールオキシドを飲料中の濃度が0.278ppmとなるように、フルフリルアルコールを飲料中の濃度が1.11ppmとなるように、それぞれ添加し、さらにミルク原料を3.6g添加し、180mLのお湯を注ぐことにより調製した。ほうじ茶パウダーとして、参考例1で用いたほうじ茶エキスパウダーとほうじ茶微粉砕パウダーを用いた。対照として、ミルク原料を添加しない以外は同様にして、ほうじ茶飲料を調製した。
【0129】
液体状のミルク原料を配合したミルク入りほうじ茶飲料は、表19に記載の組成の粉末状のベースミックス7.63gを量り取り、リナロールオキシドを飲料中の濃度が0.278ppmとなるように、フルフリルアルコールを飲料中の濃度が1.11ppmとなるように、それぞれ添加し、180mLの温めたミルク原料を注ぐことにより調製した。
【0130】
コントロールとして、リナロールオキシドとフルフリルアルコールを添加しない以外は同様にしてミルク入りほうじ茶飲料を調製した。
【0131】
【表18】
【0132】
<官能評価>
各試験飲料のほうじ茶感を、参考例1と同様にして評価した。リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの両方が無添加のほうじ茶飲料(コントロール)の官能評価よりも、スコアが1点以上高くなっている試験区では、リナロールオキシド及びフルフリルアルコールの添加により、ほうじ茶感が向上した、と評価した。
【0133】
【表19】
【0134】
評価結果を表19に示す。表中、ミルク原料の欄の「-」は、ミルク原料を添加していないほうじ茶飲料を意味する。いずれのミルク原料を用いた場合でも、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの両方を添加することにより、ほうじ茶感が向上していた。これらの結果から、リナロールオキシドとフルフリルアルコールの併用によるほうじ茶感向上効果は、ミルク原料の種類にかかわらず得られることが確認された。
【0135】
[実施例7]
ミルク入りほうじ茶飲料に対してリナロールオキシド及びフェニルエタノールを添加し、風味に対する影響を調べた。
【0136】
<ミルク入りほうじ茶飲料>
表3に記載の組成の粉末状のベースミックス10gを量り取り、リナロールオキシド及びフェニルエタノールを、飲料中の濃度が表20に記載の濃度となるように添加し、180mLのお湯を注ぐことにより、ミルク入りほうじ茶飲料を調製した。表中、リナロールオキシドの最低濃度の欄は、リナロールオキシド無添加の飲料であり、フェニルエタノールの最低濃度の欄は、フェニルエタノール無添加の飲料である。すなわち、表中の左上のセルは、リナロールオキシドとフェニルエタノールのいずれも無添加の飲料である。
【0137】
<官能評価>
各試験飲料のほうじ茶感を、参考例1と同様にして評価した。リナロールオキシド及びフェニルエタノールの両方が無添加のほうじ茶飲料(表中の左上のセル)の官能評価よりも、スコアが1点以上高くなっている試験区では、リナロールオキシド及びフェニルエタノールの添加により、ほうじ茶感が向上した、と評価した。
【0138】
【表20】
【0139】
評価結果を表20に示す。ミルク入りほうじ茶飲料に、リナロールオキシドとフェニルエタノールをそれぞれ単体で添加した場合には、ほうじ茶感の増強は確認されなかった。特にフェニルエタノールを単体で添加した場合には、お屠蘇や日本酒のような甘い香りが強くなり、ほうじ茶感は低下した。これに対して、リナロールオキシドとフェニルエタノールの両方を添加することにより、ほうじ茶感が向上していた。より詳細には、リナロールオキシド濃度が0.0026ppm以上、フェニルエタノール濃度が0.003~0.133ppm、L/P比が0.020~20.3の範囲であるミルク入りほうじ茶飲料において、ほうじ茶本来の風味が増強されていた。なかでも、リナロールオキシド濃度が0.0026~0.042ppm、フェニルエタノール濃度が0.006~0.100ppmとなるように両者を添加することにより、ほうじ茶感が特に増強されていた。
【0140】
[比較例1]
ミルク入りほうじ茶飲料に対してリナロール及びフルフリルアルコールを添加し、風味に対する影響を調べた。
具体的には、リナロールオキシドに代えてリナロールを、フェニルエタノールに代えてフルフリルアルコールを用い、飲料中のそれぞれの濃度が表21に記載の濃度となるように添加した以外は、実施例7と同様にして、ミルク入りほうじ茶飲料を調製し、評価した。評価結果を、フルフリルアルコールに対するリナロールの比率(Li/F)と共に表21に示す。
【0141】
【表21】
【0142】
リナロールは、リナロールオキシドと同様に花様の香りをしている。しかしながら、リナロールとフルフリルアルコールの組み合わせでは、ほうじ茶感向上効果は確認されなかった。
【0143】
[比較例2]
ミルク入りほうじ茶飲料に対してリナロールオキシド及び3-フェニル-1-プロパノールを添加し、風味に対する影響を調べた。
具体的には、フェニルエタノールに代えて3-フェニル-1-プロパノールを用い、リナロールオキシド及び3-フェニル-1-プロパノールを飲料中のそれぞれの濃度が表22に記載の濃度となるように添加した以外は、実施例7と同様にして、ミルク入りほうじ茶飲料を調製し、評価した。評価結果を、3-フェニル-1-プロパノールに対するリナロールオキシドの比率(Li/Fp)と共に表22に示す。
【0144】
【表22】
【0145】
3-フェニル-1-プロパノールは、フェニルエタノールと構造類似の化合物であり、フェニルエタノールと同様に花様の香りをしている。しかしながら、リナロールオキシドと3-フェニル-1-プロパノールの組み合わせでは、ほうじ茶感向上効果は確認されなかった。