(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033013
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】同調アンテナを有するeLORAN受信機、および関連方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/08 20060101AFI20220217BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20220217BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20220217BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20220217BHJP
G01C 21/20 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H01Q7/08
H01Q7/00 100
H01Q21/24
H01Q1/24 C
G01C21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021130568
(22)【出願日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】16/990,151
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520120075
【氏名又は名称】イーグル・テクノロジー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・イー・パルシェ
【テーマコード(参考)】
2F129
5J021
5J047
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129AA11
2F129AA14
2F129BB03
2F129BB09
2F129HH31
5J021AA02
5J021AA10
5J021AB04
5J021CA05
5J021CA06
5J021GA07
5J021HA08
5J021HA09
5J021HA10
5J047AB01
5J047AB11
5J047AB13
5J047FC00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】増強長距離ナビゲーション(eLORAN)受信機及びを提供する。
【解決手段】eLORAN受信機は、アンテナ116と、アンテナ116に結合されたeLORAN受信機回路と、を含む。アンテナ116は、強磁性コア120及び強磁性コア120に結合された磁界信号巻線121a~121dを含む。eLORAN受信機は、強磁性コア120を取り囲む同調巻線123a,123b及び同調巻線123a,123bに結合された同調回路を含むアンテナ同調装置を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増強長距離ナビゲーション(eLORAN)受信機であって、
アンテナ、および前記アンテナに結合されたeLORAN受信機回路であって、
前記アンテナが、強磁性コアおよび前記強磁性コアに結合された磁界信号巻線を含む、アンテナ、および前記アンテナに結合されたeLORAN受信機回路と、
アンテナ同調装置であって、
前記強磁性コアを取り囲む少なくとも1つの同調巻線、および
前記少なくとも1つの同調巻線に結合された同調回路、を含む、アンテナ同調装置と、を備える、eLORAN受信機。
【請求項2】
前記少なくとも1つの同調巻線が、複数の同調巻線を含む、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項3】
前記同調回路が、抵抗器と、前記抵抗器に直列に結合されたコンデンサと、を含む、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項4】
前記アンテナが、前記強磁性コアの両反対側に一対の静電パッチ要素を含む、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項5】
前記強磁性コアが、強磁性中間部分、および前記強磁性中間部分から外側に向かって延在する複数の強磁性アームを含む、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項6】
前記複数の強磁性アームが、整列対で配列されている、請求項5に記載のeLORAN受信機。
【請求項7】
前記複数の強磁性アームが、十字形を画定する、請求項5に記載のeLORAN受信機。
【請求項8】
増強長距離ナビゲーション(eLORAN)受信機回路に結合されるアンテナを作製する方法であって、前記方法が、
磁界信号巻線を強磁性コアに結合させることと、
アンテナ同調装置を前記強磁性コアに結合させることと、を含み、前記アンテナ同調装置が、
前記強磁性コアを取り囲む少なくとも1つの同調巻線と、
前記少なくとも1つの同調巻線に結合された同調回路と、を含む、方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの同調巻線が、複数の同調巻線を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記同調回路が、抵抗器、および前記抵抗器に直列に結合されたコンデンサを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システムの分野に関し、具体的には、無線周波数アンテナおよび関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、超低周波(VLF)、低周波(LF)、中周波(MF)の範囲の無線周波数(RF)通信では、そのような信号を送信するために、比較的大きな地上アンテナタワーが使用される。そのようなアンテナ構成は、その台座で地面に接続されている高さ数百フィートのタワーを含み得、安定のため、多数の張り綱でタワーを地面に接続している。
【0003】
大規模タワーベースのアンテナが使用される別の例は、長距離ナビゲーション(LORAN)システムなどのナビゲーションシステム用低周波送信局である。LORANは第二次世界大戦中にアメリカとイギリスで開発された。LORAN-C、および後の増強LOng-RAnge Navigation(eLORAN)の実装を含むその後の実装では、精度と有用性の増強が提供された。より具体的には、eLORANは、90~110kHzの周波数帯域割り当てで動作する低周波数無線ナビゲーションシステムである。低周波eLORAN送信は、地表を進む一種の表面波である地上波によって伝搬し得る。電離層反射または上空波は、eLORAN波伝搬のもう1つの重要なメカニズムである。典型的な低周波アンテナでは、タワー自体がモノポールアンテナとして使用される。動作波長の結果として600フィート以上になり得るタワーの高さのために、多数の上部ワイヤがタワーの頂部に接続されて共振コンデンサを形成する。これらのワイヤは、トップローディングエレメント(TLE)として知られ、中実錐体に近似し得る。米国で使用されている一般的なタワーは、高さ625フィートで、24個のトップローディングエレメント、および110kHz近くでの自然共鳴を有した。ベース負荷コイルを使用して、100kHzで共鳴を強制した。
【0004】
eLORANは、100kHzなどの低周波数で動作し、送信アンテナの物理的サイズを大きくし得る。しかし、eLORANでは、アンテナの電気的サイズは波長に比べて小さい。物理学的特性により、電気的に小型のアンテナの固定同調帯域幅が制限されることがある。1つの理論としては、参考文献「Physical limitations of omnidirectional antennas」、Chu,L.J.(December 1948)、Journal of Applied Physics 19:1163-1175に記載されているようなChu Limitが挙げられ、それは、本明細書で参考文献と称する。Chuの帯域幅限界式は、Q=1/kr3とすることができ、ここで、Qは、帯域幅に関する無次元数であり、kは、波数=2π/λであり、rは、アンテナを囲む球形解析容積のメートル単位の半径である。3dBアンテナ帯域幅は、200/Qに等しい。アンテナ放射帯域幅は、それにより、送信および受信される高速立ち上がり時間を有する鋭いeLORANパルスを可能にするため、eLORANにとってかなり重要な問題である。より鋭いパルスにより、より多くの送信局を可能にし、より高速の立ち上がり時間により、地上波を上空波とより良く区別する。また、例えば、50マイクロ秒以下の60%立ち上がり時間は、eLORANパルスが、受信した地上波を、受信した上空波と識別するために、優先される。
【0005】
送信アンテナには高い放射効率が必要であるが、eLORAN受信アンテナには高いアンテナ効率は必要ではない。これは、自然発生的「大気ノイズ」が、eLORANが使用する低周波数で豊富であるからである。大気ノイズはスペクトル割り当てにおいて非常に重要なものであるため、国際電気通信連合によって、報告書“Radio Noise”,Recommendation ITU-R P.372-8,FIG.2“Fa Versus Frequency”としてカタログ化されている。この報告書の曲線Bおよび曲線Aは、100kHzの周波数において、大気ノイズが、人工的な干渉のない静寂な自然状態では、アンテナ熱ノイズを上回る77dBであり、人工的なノイズが、高い人工的なノイズ状態、すなわち、言わば著しく「静電的な」状態では、アンテナ熱ノイズを上回る140dBであることを示している。受信機ノイズ数値(トランジスタ熱ノイズ)の寄与が約10dBであると仮定し、電気的に小型のアンテナの指向性が1.8dBを超え得ないことを認識すると、静かな状態での自然ノイズを解決するために必要な受信アンテナ増幅率は、等方性に関して、-77+10+1.8=-65dBiまたはデシベルである。したがって、eLORAN周波数では、小さい非効率なアンテナでも、受信に事足りる。
【0006】
eLORAN送信を受信するアンテナは、電界タイプと磁界タイプとに分類される。電界アンテナは、むち形またはパッチ形であり得、これに対して、磁界タイプは、ループ形、円形、または巻線形であり得る。電界タイプは、電流の発散に基づいており、ダイポールおよびモノポールに関連する。磁界タイプは、電流の渦巻きに基づき、したがって、ループおよびハーフループに関連する。電界および磁界の両方のアンテナタイプが、遠距離場電波に応答して、有用な受信を提供する。さらに、電界および磁界の両方のアンテナタイプが、遠距離場電波中に存在する電界および磁界の両方に応答する。
【0007】
2つの受信アンテナタイプの間には多くのトレードが存在する。電界アンテナタイプと磁界アンテナタイプの近接場応答間には、重要な違いがある。電界タイプは、強力な放射状電界反応性近接場応答を有する。それとは異なり、磁界タイプは、強力な放射状磁界反応性近接場応答を有する。電界アンテナは、磁界アンテナタイプよりも多くの人工的な電磁干渉(EMI)を捕捉し得る。高電圧電力線などの人間の付属品により、かなりの電荷分離および強い電界EMIをもたらし、電界タイプの受信アンテナは、それらに応答することになる。しかしながら、電界アンテナタイプは、小型化および感度にとって有用であり、長さ24インチのホイップは、大気ノイズレベルに対して受信するのに十分敏感であり得る。磁界受信アンテナでは、局在EMIの除去、電荷蓄積によるP静電気またはノイズの除去、および到来方向情報が改善され得る。磁界アンテナの欠点には、フェライトロッドが使用され得るため、コストの増加が含まれ得る。
【0008】
グローバルポジショニングシステム(GPS)などの衛星ベースのナビゲーションシステムの台頭に伴い、eLORANなどの地上ベースのナビゲーションシステムの開発やそれへの投資は、最近までほとんどなかった。特に低周波eLORAN信号は、比較的高周波数のGPS信号と比較して、電波妨害やなりすましの影響を受けにくいため、衛星ナビゲーションシステムのバックアップとして、このようなシステムへの新たな関心が高まっている。自由空間において、電波は、方位角および仰角の両方に拡散されて、1/r2に従って距離とともに減衰し、ここで、rは、メートル単位の範囲である。よって、自由空間波は、距離が倍増すると、4分の1までより弱くなる。eLORAN信号の地上波伝搬は、仰角平面波の拡散をほとんど伴わず、方位角の拡散のみを伴って生じる。よって、eLORAN地上波は、ほぼ1/rの減衰率で弱くなり得る。この事実は、地上送信局での実用的な高出力とともに、受信するeLORAN信号がGPS信号に対して非常に強いものであり得ることを意味する。
【発明の概要】
【0009】
一般に、eLORAN受信機は、アンテナ、およびそのアンテナに結合されたeLORAN受信機回路を含む。アンテナは、強磁性コア、およびその強磁性コアに結合された磁界信号巻線を含む。eLORAN受信機はまた、アンテナ同調装置も含む。アンテナ同調装置は、強磁性コアを取り囲む少なくとも1つの同調巻線と、少なくとも1つの同調巻線に結合された同調回路と、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの同調巻線は、複数の同調巻線を含む。同調回路は、抵抗器と、抵抗器に直列に結合されたコンデンサと、を含み得る。アンテナは、強磁性コアの反対側に一対の静電パッチ要素を含み得る。
【0011】
より具体的には、強磁性コアは、強磁性中間部分、およびその強磁性中間部分から外側に向かって延在する複数の強磁性アームを含み得る。複数の強磁性アームは、整列対に配置され得る。複数の強磁性アームは、十字形を画定し得る。アンテナは、強磁性コアを取り囲み、eLORAN受信機回路から較正信号を受信するように構成された補正巻線を含み得る。例えば、強磁性コアは、フェライト、粉末鉄、電気製鋼、およびナノ結晶鉄のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0012】
別の態様は、eLORAN受信機回路に結合されるアンテナに関する。アンテナは、強磁性コアと、その強磁性コアに結合された磁界信号巻線と、アンテナ同調装置と、を含む。アンテナ同調装置は、強磁性コアを取り囲む少なくとも1つの同調巻線と、少なくとも1つの同調巻線に結合された同調回路と、を含む。
【0013】
さらに別の態様が、eLORAN受信機回路に結合されるアンテナを作製する方法に関する。方法は、磁界信号巻線を強磁性コアに結合させることを含む。方法は、アンテナ同調装置を強磁性コアに結合させることをさらに含む。アンテナ同調装置は、強磁性コアを取り囲む少なくとも1つの同調巻線と、少なくとも1つの同調巻線に結合された同調回路と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示によるeLORAN通信システムの概略図である。
【
図2】
図1のeLORAN通信システムのeLORAN受信機である。
【
図3】本開示によるeLORAN受信機の概略図である。
【
図4】巻線および回路のない、
図3のeLORAN受信機用アンテナの例示的な実施形態の概略斜視図である。
【
図5】
図4の同調回路およびアンテナの概略図である。
【
図6】
図4のアンテナの例示的な実施形態の上面図である。
【
図7】
図3のeLORAN受信機の増幅器の回路図である。
【
図9】
図3のeLORAN受信機の増幅器出力のための平衡不平衡変成器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、本開示のいくつかの実施形態が示されている添付の図面を参照して、本開示を以下により十分に説明する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書で説明される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全な形で、また本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように提供されている。全体を通して、同じ番号は同じ要素を指し、100番台の参照番号は、代替の実施形態における同様の要素を示すために使用される。
【0016】
したがって、特定の用途では、eLORANアンテナシステムのさらなる開発が望ましくなり得る。上記のように、eLORANシステムの動作周波数と、陸上車両および船舶の典型的な配置とを考えると、eLORANアンテナの設計には、固有の設計問題が存在し得る。特に、eLORANアンテナのモバイルアプリケーションを想定すると、アンテナは、小型にサイズ設計され、耐久性があり、十分な帯域幅を有することが望ましい場合がある。eLORAN受信アンテナが人間の複雑な環境で機能し、正確なナビゲーションおよび時間を提供することは重要である。
【0017】
まず
図1~
図2を参照して、ここで、本開示によるeLORAN通信システム10を説明する。eLORAN通信システム10は、例示的に、eLORANブロードキャスト信号を送信するように構成されたeLORANブロードキャスト局11を含む。
【0018】
eLORAN通信システム10の一部ではないが、複数のGPS衛星13a~13cが示されている。複数のGPS衛星13a~13cからのGPS信号の低電力性および高周波数性のために、それぞれのGPS信号は、自然および人工的な干渉(例えば、電離層、なりすまし、電波妨害)を受けやすく、山岳地帯では、使用不能である場合があることを理解されたい。このため、本明細書で詳述するように、eLORAN通信システム10を提供することが役立つ。多くのシステムは、GPSサトナブ情報およびeLORAN地上ナブ情報の両方を協調的に使用することになる。
【0019】
eLORAN通信システム10は、例示的に、複数の車両14a~14cを含む。例示された実施形態では、複数の車両14a~14cは、例示的に、船舶14a、陸上車両14b、および航空車両14cを含む。複数の車両14a~14cの各々は、例示的に、eLORANブロードキャスト信号を受信および処理するように構成されたeLORAN受信機15a~15cを含む。
【0020】
各eLORAN受信機15a~15cは、例示的に、アンテナ16、およびそのアンテナに結合されたeLORAN受信機回路17を含む。eLORAN受信機15a~15cは、例示的に、eLORAN受信機回路17に結合され、かつeLORANブロードキャスト信号に基づいて、位置/場所データを判定するように構成されたプロセッサ18を含む。理解されるように、eLORAN受信機15a~15cは、複数の内部受信機を含み得、複数の受信アンテナのRF出力を受信および処理する。
【0021】
当業者には理解されるように、アンテナ16は、二重磁界および電界アンテナシステムである。アンテナ16は、Eチャネル、Hxチャネル、およびHyチャネルとして指示された3つのアンテナチャネルを提供する。電界アンテナは、近接電界に対して強い応答性を有し、磁界アンテナは、近接磁界に対して強い応答性を有する。また、典型的な磁界アンテナは閉電気回路ループであり、電界アンテナは開回路ホイップである。
【0022】
例示されたモバイルアプリケーションで採用されるeLORANアンテナのサイズが小さいことに起因して、これらのeLORANアンテナの瞬時利得帯域幅または受信帯域幅を増大させるという設計上の課題がある。また、典型的なモバイルアプリケーションでは、eLORANアンテナを金属面または非金属面上に搭載することなどの、eLORANアンテナ環境における変化に起因する同調ドリフトがあり得る。金属面への近接により、磁界タイプのアンテナの半径方向の磁気近接場を遮蔽し得、それによって、アンテナループのインダクタンスを低減し、ひいてはアンテナ共振周波数を上昇させ得る。電界タイプのアンテナは、金属面上において、ダイポールではなく、モノポールになり得る。eLORANによって使用される低周波数は、すべてのeLORANアンテナがかなり遠くまで及ぶ反応性近接場に到達していることを意味する。
【0023】
ここで、
図3~
図5を参照すると、本開示によるeLORAN受信機115が、以降に説明される。このeLORAN受信機115は、上記の問題に対するアプローチを提供することができ、また、
図1~
図2のeLORAN受信機15a~15cで使用することもできる。3つの別個のアンテナチャネルE、Hx、およびHyは、受信機115が干渉内の信号を取り出し、到来角度の判定を行い、波動インピーダンスから伝搬遅延を判定し、近くの構造体からの再放射効果を軽減することを可能にし得る。
【0024】
eLORAN受信機115は、アンテナ116、および伝送線路ケーブル布線、プリント配線パターンなどによってアンテナに結合されたeLORAN受信機回路117を備える。アンテナ116は、強磁性コア120、および強磁性コアに結合された複数の磁界信号巻線121a~121bを含む。いくつかの実施形態では(
図4)、強磁性コア120は、直交する強磁性コアを含み得る。特に、複数の磁界信号巻線121a~121bは各々、強磁性コア120の周りに巻かれており、例示的に、H
x磁界信号およびH
y磁界信号を生成する。例えば、強磁性コア120は、フェライト、粉末鉄、電気製鋼、およびナノ結晶鉄のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0025】
eLORAN受信機115はまた、アンテナ116に結合された複数のアンテナ同調装置122a~122bも含む。複数のアンテナ同調装置122a~122bの各々は、強磁性コア120を取り囲む(すなわち、コアの周りに巻かれる)同調巻線123a~123b、および同調巻線にそれぞれ結合された同調回路124a~124bを含む。各同調回路124a~124bは、抵抗器125a~125b、および抵抗器に直列に結合されたコンデンサ126a~126bを含む。理解されるように、抵抗器125a~125bおよびコンデンサ126a~126bは、複数の同調巻線123a~123bのうちのそれぞれの1つと共振し、システムの帯域幅を広げる。いくつかの実施形態では、抵抗器125a~125bおよびコンデンサ126a~126bは、それぞれ、調整可能な抵抗および静電容量を有して、リアルタイムで同調調整を可能にする。
【0026】
複数の同調巻線123a~123bは各々、複数の磁界信号巻線121a~121bの巻数を上回る巻数を有し得る。例えば、複数の磁界信号巻線121a~121bは、9巻数を有し得、複数の同調巻線123a~123bは各々、同一の80巻数を有し得る。
【0027】
分かりやすく例示するために、2つのアンテナ同調装置122a~122bのみが示されているが、いくつかの実施形態は、3つ以上のアンテナ同調装置を含み得ることを理解されたい。他の実施形態では、単一のアンテナ同調装置のみが、使用され得る。
【0028】
恐らく、
図4から最もよくわかるように、アンテナ116は、強磁性コア120の反対側にあり、かつ電界信号を提供するように構成された一対の静電パッチ要素127a~127bを含む。この電界信号機能に加えて、一対の静電パッチ要素127a~127bは、複数の磁界信号巻線121a~121bの静電シールドとして動作する。追加的に、静電パッチ要素127a~127bは、HxアンテナおよびHyアンテナの磁気近接場を遮蔽して、異なる動作環境でHxアンテナおよびHyアンテナの同調を安定化させ、それ以外では、Hx、Hyアンテナの双極子モーメントによって引き起こされ得る近接場EMI結合を低減する。例えば、アンテナ116が自動車の金属製屋根の上に設置された場合、金属製屋根は、静電パッチ要素127a~127bが磁界信号巻線121a~121bに対して金属のように遮蔽または「シールド」された動作環境を提供するため、Hxアンテナ、Hyアンテナの同調を決して変化させない。静電パッチ要素127a~127bがないならば、自動車の屋根は、複数の磁界信号巻線121a~121bのインダクタンスおよび同調の程度を変化させることになる。HxアンテナおよびHyアンテナは、複数の静電パッチ要素127a~127bの存在に対して、事前調整される。複数の静電パッチ要素127a~127bは、HxおよびHyアンテナに対する閉電気回路を含まず、HxおよびHyアンテナによる信号受信を抑制しない。
【0029】
特に、アンテナ116は、強磁性コア120を保持する中間回路配線板128a、外面(すなわち、中間回路配線板から離れる方向に面する表面)上にそれぞれの静電パッチ要素127aを保持する第1の外側回路配線板128b、および外面(すなわち、中間回路配線板から離れる方向に面する表面)上にそれぞれの静電パッチ要素127bを保持する第2の外側回路配線板128cを含む。また、アンテナ116は、中間回路配線板128aと、第1および第2の外側回路配線板128b~128cとの間に結合された複数の垂直支持部129a~129cを含む。複数の垂直支持部129a~129cの各々は、誘電体材料を含み得る。
【0030】
中間回路配線板128a、ならびに第1および第2の外側回路配線板128b~128cは各々、平面回路配線板である。また、例示されているように、中間回路配線板128a、ならびに第1および第2の外側回路配線板128b~128cは、積み重ねられた配置で配置されている。中間回路配線板128aは、誘電体ベース層、およびその誘電体ベース層上に保持された関連回路を含む。第1および第2の外側回路配線板128b~128cはまた各々、誘電体ベース層(例えば、繊維ガラス)、およびその誘電体ベース層上の導電性パッチ層(例えば、銅、アルミニウム)も含む。
【0031】
より具体的には、恐らく、
図6で最もよく分かるように、強磁性コア120は、強磁性中間部分130、およびその強磁性中間部分から外側に向かって延在する複数の強磁性アーム131a~131dを含む。複数の強磁性アーム131a~131dは、例示的に、整列対で配置され、十字形またはX形(すなわち、非直交対)を画定する。これにより、強磁性アームがX形ではなく正方形に配置された場合に生じるような閉磁気回路効果を回避する。いくつかの実施形態では、強磁性コア120は、一体化した単一部品を含むが、他の実施形態では、強磁性コアは、
図6に例示されているように、強磁性セグメントを含み得る。例示された実施形態は、360°の方位角の受信可能範囲、および到来角度情報を提供し得る。
【0032】
いくつかの実施形態では(図示せず)、強磁性コア120は、単一の矩形バーの形状を含み得る。この実施形態では、静電パッチ要素127a~127bの対は、矩形バーの反対側の遠位端部の周りに巻き付けられた導電性材料(例えば、銅、アルミニウム)の薄いシートと置き換え得る。
【0033】
アンテナ116は、例示的に、強磁性コア120を取り囲み、かつeLORAN受信機回路117から較正信号を受信するように構成された補正巻線132を含む。アンテナ116は、例示的に、結合レベルを調整するための補正巻線132に結合された第1および第2の抵抗器134a~134bを含み、そのレベルは、較正注入信号が大振幅で受信機から送られ得るため、「緩い結合」または低い結合のレベルであってもよい。第1および第2の抵抗器134a~134bは、レベル調整抵抗器である(すなわち、所望の電圧降下を提供する)。補正巻線132は、較正信号を注入するように構成される。eLORAN受信機回路117は、複数の磁界信号巻線121a~121bからの出力に基づいて、振幅および位相の較正信号を含む較正信号を生成するように構成される。特に、較正信号は、複数の磁界信号巻線121a~121bに印加された掃引信号から生成される。
【0034】
eLORAN受信機115は、例示的に、複数の増幅器133a~133cを含む。複数の増幅器133a~133cは、静電パッチ要素127a~127bの対、磁界信号巻線121a~121b、およびeLORAN受信機回路117の間に、それぞれ結合されている。また、
図4には示されていないが、アンテナ116は、一対の静電パッチ要素127a~127bと、増幅器133aとの間にそれぞれ結合された複数の給電線を含む。アンテナ116はまた、複数の同調巻線123a~123bと、増幅器133b~133cとの間にそれぞれ結合された複数の給電線も含む。いくつかの実施形態では、複数の増幅器133a~133cは、中間回路配線板128aによって保持され、その中間回路配線板は、モバイルアプリケーションに役立つ小型パッケージを提供する。
【0035】
ここで、
図7を参照すると、複数の増幅器133b~133c(磁界)の例示的な増幅器133の実施形態が示されている。この増幅器133は、例示的に、第1の抵抗器141、第1の抵抗器に並列に結合された第1のコンデンサ142、第1の抵抗器に並列に結合された第2のコンデンサ143、および第1の抵抗器に並列に結合された第3のコンデンサ144を含む。増幅器133はまた、第3のコンデンサ144に直列に結合された第4のコンデンサ145、第4のコンデンサから下流に結合された第2の抵抗器146、第2の抵抗器に結合された第3の抵抗器147、および第2の抵抗器と第3の抵抗器との間に結合された第4の抵抗器150も含む。
【0036】
増幅器133は、例示的に、反転入力、第4の抵抗器150に結合された非反転入力、および出力を有する増幅器回路154を含む。増幅器133は、第5の抵抗器151、および増幅器回路154の反転入力と基準電圧(例えば、接地電位)との間に結合された第5のコンデンサ152を含む。増幅器133は、増幅器回路154の出力と反転入力との間に結合された第6の抵抗器153を含む。第6の抵抗器153および第5の抵抗器151は、協働して増幅器回路154の利得レベルを調整する。デシベル単位の利得=10LOG(1+R153/R151)であり、ここで、R153は、第6の抵抗器153を提供するフィードバックのオーム単位の抵抗器であり、R151は、第6の抵抗器153を提供する接地のオーム単位の抵抗器である。試作品においては、10~20dBの利得値で事足りる。増幅に必要なエネルギーが少なめであるようにアンテナから受信したエネルギーが適度であると、増幅器133は、最も重要なこととしてインピーダンス整合機能の機能を果たす。
【0037】
増幅器133は、例示的に、第6のコンデンサ155、および増幅器回路154の出力に直列に結合された第7のコンデンサ156を含む。増幅器133は、第7のコンデンサ156に結合された出力変成器/平衡不平衡変成器157、および出力変成器/平衡不平衡変成器157に結合された第8のコンデンサ160を含む。
【0038】
電界アンテナの機能を果たす増幅器133aは、2つの能動増幅器素子を有する差動増幅器を構築し得る。理解され得るように、差動増幅器が、共通モード信号、および接地上に乗っているなどのノイズを拒絶する。
【0039】
ここで、追加的に
図8を参照すると、略
図900が、例示された2つのアンテナ同調装置122a~122b(すなわち、二重同調磁界アンテナ回路)を有するアンテナ116の測定された電圧定在波比率(VSWR)対周波数応答を示している。また、アンテナ116は、並列共振モードで動作することができる。都合のよいことに、アンテナ116は、通過帯域リップルピーク902を有する広帯域チェビシェフ周波数応答を提供する。アンテナ116の帯域幅は、
図8中の通過帯域リップル902のレベルをトレードすることができ、例えば、この場合では、80パーセントの3dB利得帯域幅を提供する。
図8の略
図900では、6対1のVSWR周波数は、破線904によって示されているように、アンテナ利得応答では、3dBダウン周波数に対応する。他の通過帯域形状は、アンテナ116によって提供され得、例えば、巻線位置および結合の調整によってバターワース通過帯域形状が提供される。背景として、典型的なアプローチでは、アンテナは、単一のVSWRの凹み、および単一の利得ピークを有する二次周波数応答を提供し得る。
【0040】
各別個に共振する同調巻線123a~123bは、別の周波数帯域を追加し、制御された振幅リップルを有する拡張された帯域幅の単一受信帯域を提供する。例示したように、周波数応答には、通過帯域内に2つの凹みが含まれ、これは、1つの凹み、およびより狭い帯域幅を有する典型的なアプローチとは対照的である。
【0041】
アンテナ116によって提供される3つの異なる受信チャネル、すなわち、電界アンテナ、Hx磁界アンテナ、およびHy磁界アンテナには、いくつかの利点がある。2つの磁界アンテナのタイプは、互いに切り離され、その配向は、直交し、別個の正弦波状および余弦波状の放射パターンを方位角に作成する。各放射パターンからの振幅および位相情報は、eLORAN信号の到来角度を示し、その到来角度は、任意の近くの構造体からの再放射効果を検出して除去処理することは、有益であり得る。また、到来の方向を知ることにより、eLORAN信号経路補正信号を処理して、必要とされる方位角での伝搬遅延を変更処理することができる。電界アンテナと磁界アンテナとの間の振幅および位相の違いにより、例えば、1つのcosθパターン、および1つのsinθパターンを合成することができるため、到来角度の曖昧さを排除することができる。航空機のプラットフォーム上では、磁界アンテナは、電界タイプのアンテナが降水空電、航空機帯電、および雷雨への近接に起因して動作不能であるとき、動作可能であり得る。したがって、いくつかのアンテナで構成されたアンテナ116は、非常に多くのシステム上の利点を提供する。
【0042】
さらに別の態様が、アンテナ116をeLORAN受信機回路117に結合させる方法に関する。方法は、磁界信号巻線121a~121bを強磁性コア120に結合させることと、アンテナ同調装置122a~122bを強磁性コアに結合させることと、を含む。アンテナ同調装置122a~122bは、強磁性コア120を取り囲む少なくとも1つの同調巻線123a~123b、および少なくとも1つの同調巻線に結合された同調回路124a~124bを含む。
【0043】
ここで、
図9を参照すると、アンテナ116を付随し得る平衡不平衡変成器200が、以降に説明される。平衡不平衡変成器200は、伝導される共通モード電磁干渉電流の、アンテナ116回路への伝達を防止することができる。このような干渉電流は、例えば、車両の交流発電機、デジタル電子機器、またはeLORAN受信機とともに接地を共有するスイッチング電源に起因する、アンテナ116と関連eLORAN受信機との間のRFケーブル布線に乗り得る。平衡不平衡変成器200は、
図7の出力変成器/平衡不平衡変成器157としての機能を果たし得る。
【0044】
平衡不平衡変成器200は、例示的に、フェライトまたは粉体鉄などの磁気コア210を含む。例示された例では、磁気コア210は、環状であり、この磁気コアは、一次巻線220を二次巻線230に結合するための磁気回路を有効に提供する。一次巻線220は、端子222、224、および中央タップ端子226を提供する。二次巻線230は、端子232、234、および中央タップ端子236を提供する。平衡不平衡変成器200は、例示的に、I字形に加工されたシート状金属製プレートなどの、I字形に加工された金属製シールド240を含み、これは、一次巻線220と二次巻線230との間に存在する。接地接続242は、金属製シールド240と、アンテナ前置増幅器内のPWB接地層などの局所的な接地との間に導電性接点を提供する。金属製シールド240は、一次巻線220と二次巻線230との間の容量性結合を低減し、そして次に、それ以外では、平衡不平衡変成器200の巻線間で伝達され得る共通モードノイズ電流の結合を低減する。
【0045】
通信システムに関する他の特徴は、以下の同時係属出願、すなわち、「ELORAN RECEIVER WITH FERROMAGNETIC BODY AND RELATED ANTENNAS AND METHODS」代理人整理番号GCSD-2971(62529)と題する整理番号第16/013,106号、「TOWER BASED ANTENNA INCLUDING MULTIPLE SETS OF ELONGATE ANTENNA ELEMENTS AND RELATED METHODS」代理人整理番号GCSD-2979(62519)と題する整理番号第15/980,857号、および「ELORAN RECEIVER AND ANTENNA WITH FERROMAGNETIC BODY AND WINDINGS AND RELATED METHODS」代理人整理番号GCSD-3017(62539)と題する整理番号第16/419,568号に開示されており、これらは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0046】
本開示の多くの修正および他の実施形態は、当業者であれば、前述の説明および関連する図面に提示された教示を利用して想到し得るものである。したがって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、修正および実施形態は、特許請求の範囲内に含まれるということが意図されることが理解される。
【外国語明細書】