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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033033
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20220217BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20220217BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
A01G31/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131341
(22)【出願日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2020136012
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501486741
【氏名又は名称】株式会社森久エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】森 一生
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AA03
2B022DA03
2B022DA05
2B314MA38
2B314NC24
2B314NC38
2B314PB02
2B314PD59
(57)【要約】
【課題】照度ムラの発生を抑制する照明機器を備えた植物栽培装置を提供する。
【解決手段】植物栽培装置1は、照明機器10を備えた植物栽培装置であって、照明機器は、LED光源13と、LED光源が実装されるLED基板12と、LED光源と前記LED基板とを覆う笠14と、を備え、笠はLED光源を通る縦断面において、LED光源の位置を焦点とする二次曲線を包含する曲面状の反射面15を有し、LED光源は、照射方向を笠の反射面に向けて配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明機器を備えた植物栽培装置であって、
前記照明機器は、
LED光源と、
前記LED光源が実装されるLED基板と、
前記LED光源と前記LED基板とを覆う笠と、を備え、
前記笠は、前記LED光源を通る縦断面において、前記LED光源の位置を焦点とする二次曲線を包含する曲面状の反射面を有し、
前記LED光源は、照射方向を前記笠の反射面に向けて配置されることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記LED基板は細長に形成されており、
前記LED光源は複数個、前記LED基板に沿って直線状に並べて配置され、
前記笠は、複数の前記LED光源が並ぶ方向に沿って延びていることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記複数のLED光源は、前記LED基板に2列に配置されており、
前記笠の前記反射面は、第一領域と第二領域とを有し、前記第一領域と前記第二領域とは、前記反射面の中心線に対して線対称となる位置に配置され、
第一列に配置された前記複数のLED光源は、照射方向を前記第一領域に向けて配置され、第二列に配置された前記複数のLED光源は、照射方向を前記第二領域に向けて配置されることを特徴する請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記複数のLED光源は、前記LED基板に3列に配置されており、
前記笠の前記反射面は、第一領域、第二領域及び第三領域を有し、前記第一領域と前記第二領域とは、前記反射面の中心線に対して線対称となる位置に配置され、前記第三領域は、前記第一領域と前記第二領域との間に位置しており、
第一列に配置された前記複数のLED光源は、照射方向を前記第一領域に向けて配置され、第二列にある前記複数のLED光源は、照射方向を前記第二領域に向けて配置され、第三列にある前記複数のLED光源は、照射方向を前記第三領域に向けて配置されることを特徴する請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記複数のLED光源は、前記LED基板に1列に配置されており、
前記LED基板は、前記縦断面において前記LED光源の照射方向が鉛直方向から所定角度傾斜するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記LED光源が実装される前記LED基板は、前記縦断面に対して垂直で前記LED基板を通る軸線を中心に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記LED基板を囲い、前記LED基板と共に前記軸線を中心に回転する筐体を備えることを特徴とする請求項6に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
空調機器を備え、
該空調機器は、前記LED基板の下方に配置された空調ダクトを有し、
該空調ダクトにおいて、前記反射面に向けて空気が吹出す吹出口が、前記笠の前記反射面側に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物工場で使用される植物栽培装置に係り、特に、LED光源を用いた照明機器を備える植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場等の施設を用いた栽培では、照明機器を用いた植物栽培装置が利用されている。植物栽培装置は、例えば蛍光管等の人工光だけで植物を育成する装置、若しくは、日中の日照不足を人工光により補うか意識的に日照時間を延ばすことにより植物の育成を制御する装置である。従来の植物栽培装置に取り付けられた照明機器の多くでは蛍光管が使用され、蛍光管の上部に笠を被せて植物栽培装置の棚や柱に取り付けられていた(例えば、特許文献1参照)。また、近年では、照明機器の光源として蛍光管からLED光源へ移行している。
【0003】
蛍光管は全方位に光を放射することから、従来の植物栽培装置では、蛍光管の上方に笠を配置し放射された光を下方に向けて反射することにより栽培する植物に対して光を当てていた。一方、LED光源を照明として利用する場合、LED光源は放射する光に指向性があることから、図7(a)に示す植物栽培装置101aのように、LED光源113aを、その放射方向が栽培水槽130の植物133aに向くように配置している。
【0004】
しかしながら、LED光源113aは、所定の照射角(指向角とも呼ばれる)で一定の範囲のみに光を当てる構造となっている。そのため、LED光源113aの照射角Raが約60度である場合、図7(a)に示すように栽培水槽130のパネル面付近では照度にムラが発生していた。すなわち、隣り合うLED光源113aからの照射範囲が重なる部分と重ならない部分があり、照度が高い部分と低い部分とができる。そのため、高さが低い苗木(植物133a)の場合、当たる光にムラが発生しその成長に差が出るという課題があった。
【0005】
この課題を解消するため、図7(b)に示す植物栽培装置101bのように、照射角Rbが約120度であるLED光源113bを用いると、栽培水槽130のパネル付近では照度ムラが抑制される。しかしながら、LED光源113bの付近で照度ムラが発生し、高さが高い収穫期の植物133bでは、その上の部分において受ける光にムラが発生して成長に差がでるという課題があった。
【0006】
このような課題を解決するものとして、二つの対策案が考えられる。一つ目の対策案は、LED光源113bの数を増やして、照度ムラを無くすことである。二つ目の対策案は、LED光源113を設置する位置をさらに高くして、収穫期における植物133bの最上部でも照度ムラが生じないように調整することである。
【0007】
一つ目の対策案では、LED光源113bの数量が増えることにより、消費電力が増大すると共に、発熱量も増加する。それに伴い、発生した熱量を除去するための空調負荷も大きくなる。植物を栽培する植物工場においては、照明設備及び空調設備の両方にかかわる使用電力が増加することから、一つ目の対策案では、植物の栽培コストが上昇するという課題があった。
【0008】
二つ目の対策案では、LED光源113bの数を一定にしたままで設置する高さを高くすることで、照度ムラを容易に平準化できるという利点はある。しかしながら、LED光源113bを設置する高さを高くすることにより、照度が下がるため、植物の生育が遅くなったり品質が下がったりするという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-182998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、照度ムラの発生が抑制される照明機器を備えた植物栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、本発明の植物栽培装置によれば、照明機器を備えた植物栽培装置であって、前記照明機器は、LED光源と、前記LED光源が実装されるLED基板と、前記LED光源と前記LED基板とを覆う笠と、を備え、前記笠は、前記LED光源を通る縦断面において、前記LED光源の位置を焦点とする二次曲線を包含する曲面状の反射面を有し、前記LED光源は、照射方向を前記笠の反射面に向けて配置されることにより解決される。
【0012】
上記のように構成された本発明の植物栽培装置では、LED光源の光が、笠の二次曲線を包含する曲面状の反射面に向けて放射される。LED光源は直接植物に対して向けられていない。そのため、笠の反射面から植物に向けて、光が平行光線として放射される。植物を栽培する空間(以下、植物育成空間と呼ぶ場合がある)において照度ムラの発生が抑制され、苗の時期から植物の収穫期まで成長にムラがなくなり、効率的な照明をすることが可能になる。
【0013】
また、上記の栽培装置において好適な構成を述べると、前記LED基板は細長に形成されており、前記LED光源は複数個、前記LED基板に沿って直線状に並べて配置され、前記笠は、複数の前記LED光源が並ぶ方向に沿って延びているとよい。
LED光源を直線状に並べて配置することで、細長く形成された栽培水槽対して光を照射することができ効率的な照明をすることが可能になる。
【0014】
また、上記の植物栽培装置に関して好適な構成を述べると、前記複数のLED光源は、前記LED基板に2列に配置されており、前記笠の前記反射面は、第一領域と第二領域とを有し、前記第一領域と前記第二領域とは、前記反射面の中心線に対して線対称となる位置に配置され、第一列に配置された前記複数のLED光源は、照射方向を前記第一領域に向けて配置され、第二列に配置された前記複数のLED光源は、照射方向を前記第二領域に向けて配置されるとよい。
【0015】
また、上記の植物栽培装置に関して好適な構成を述べると、前記複数のLED光源は、前記LED基板に三列に配置されており、前記笠の前記反射面は、第一領域、第二領域及び第三領域を有し、前記第一領域と前記第二領域とは、前記反射面の中心線に対して線対称となる位置に配置され、前記第三領域は、前記第一領域と前記第二領域との間に位置しており、第一列に配置された前記複数のLED光源は、照射方向を前記第一領域に向けて配置され、第二列にある前記複数のLED光源は、照射方向を前記第二領域に向けて配置され、第三列にある前記複数のLED光源は、照射方向を前記第三領域に向けて配置されるとよい。
【0016】
LED光源は、所定の照射角で照射することから、笠の反射面全体に照射するためには、複数のLED光源を用いるとよい。例えば約90度の照射角を有するLED光源をLED基板に配置し、それぞれが反射面の別々の領域に向くよう配置することで、1列にLED光源を配置した場合と比較してより幅の広い平行光線を植物に向けて放射することが可能となる。
また、例えば約60度の照射角を有するLED光源を用いる場合、LED基板にLED光源を3列に配置し、それぞれが反射面の別々の領域に向くよう配置することで、より照度の高い平行光線を植物に向けて放射することが可能となる。
【0017】
また、上記の植物栽培装置に関して好適な構成を述べると、前記複数のLED光源は、前記LED基板に1列に配置されており、前記LED基板は、前記縦断面において前記LED光源の照射方向が鉛直方向から所定角度傾斜するように配置されるとよい。
複数のLED光源がLED基板に1列に配置されている場合、LED光源の照射方向を上方向に向けて配置すると、照射される光の最も明るい部分が笠の天井面によりまっすぐに反射され、そのままLED基板に帰るため影ができる。照射方向を鉛直方向から所定角度傾斜するようにLED基板を配置することで、最も明るい部分の光の反射光がLED基板を避けて植物に届くようになる。
【0018】
また、上記の植物栽培装置に関して好適な構成を述べると、前記LED光源が実装される前記LED基板は、前記縦断面に対して垂直で前記LED基板を通る軸線を中心に回転可能に取り付けられるとよい。
また、上記の植物栽培装置に関して好適な構成を述べると、前記LED基板を囲い、前記LED基板と共に前記軸線を中心に回転する筐体を備えるとよい。
笠によって反射された光は、LED基板に遮られて影ができる場合がある。影の部分には床面等からの反射光等による散乱光により光が届くものの、部分的に光強度が異なる照度ムラとなって残る場合がある。LED基板とそれを囲う筐体を回転させ、笠の反射面から反射される光を調整することにより、例えばLED基板の下側に生じる照度ムラを緩和したり、影となる部分を移動させたりすることができる。すなわち成長度合いによって異なる植物の位置や高さに合わせて適切な照度となるよう光の位置を調整することができる。
【0019】
また、上記の植物栽培装置に関して好適な構成を述べると、空調機器を備え、該空調機器は、前記LED基板の下方に配置された空調ダクトを有し、該空調ダクトにおいて、前記反射面に向けて空気が吹出す吹出口が、前記笠の前記反射面側に形成されているとよい。
反射面側に形成され反射面に向けて空気が吹き出す吹出口を有すことで、多例えば空調機器から送風された冷気が反射板を利用して攪拌されるようになる。直接植物に冷気が当たらないため、植物の成長を阻害することが抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の植物栽培装置によれば、照度ムラの発生が抑制される照明機器を備えた植物栽培装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の植物栽培装置の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿った植物栽培装置の断面図である。
図3】照明機器を示す断面図であり、図2の部分Aを拡大して示す部分拡大図である。
図4】照明機器の別例を示す断面図である。
図5】植物栽培装置の別例を示す断面図である。
図6】植物栽培装置の別例を示す断面図である。
図7】LED光源を用いた従来の照明機器を備える植物栽培装置の説明図であり、(a)はLED光源の照射角が約60度である場合、(b)は照射角が約120度である場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る植物栽培装置1について、図1図6を用いてその構成を説明する。以下の実施形態において同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付して示し、理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
【0023】
また、本実施形態では、図1に示すように、植物栽培装置1において、照明機器10及び栽培水槽30が延びる方向(矢印X方向)を植物栽培装置1の縦方向とし、矢印X方向に対して横方向に延びる矢印Y方向を幅方向とする。また、矢印X方向及び矢印Y方向に対して垂直な方向を高さ方向とし、矢印Z方向を上方(上側)、その反対方向を下方(下側)とする。
【0024】
<<植物栽培装置>>
本実施形態の植物栽培装置1は、植物工場において水耕により植物33を栽培するための装置であり、栽培水槽30と、栽培水槽30に敷設された照明機器10と、空調機器20とから構成されている。栽培水槽30内には、栽培パネル32が浮遊しており、植物33の成長に合わせてパネルごと交換するようになっている。照明機器10は、栽培水槽30を浮遊する栽培パネル32及び植物33を照明するように付設されている。
【0025】
栽培水槽30は縦方向(図1の矢印X方向)に延びる細長い水槽で、栽培水槽30内には、水耕養液31が満たされている。栽培パネル32は、交換可能な複数枚のパネルで構成されていて、浮遊移動が可能となっている。
各栽培パネル32は、複数の苗が一定の間隔(株間ピッチ)で植えられると共に、成長した植物33を支持する部材である。植物工場では、植物33の種類又は成長に合わせて様々な株間ピッチで形成された栽培パネル32が準備されている。栽培パネル32は水耕養液31に浮遊するように例えば発泡性の材料を用いて作製されるが、中空樹脂、木材等から作製されてもよい。
なお、栽培パネル32の表面は高い光反射率を有し、照明機器10からの光を反射する反射板としても機能しており、植物に対して下方から光を当てている。
【0026】
<<照明機器>>
次に照明機器10について説明する。植物工場においては、天候不順による植物33の育成のばらつきを抑制するために、人工光を有する照明機器10を用いて植物33が栽培されている。近年では、人工光として蛍光管の代わりにLED光源13が利用されるようになってきた。照明機器10は複数の照明ユニット11から構成され、本実施形態の照明機器10では、4つの照明ユニット11が平行に並べて配置されている。照明ユニット11の数は一例であり、栽培水槽30の幅にあわせて1つでも、5個以上に設定されてもよい。また、4つの照明ユニット11は、支持部材36により一体的に取り付け、取り外しが可能になっている。また、照明機器10の側部には側壁34が設けられており、照明機器10からの光が外に漏れないようになっている。側壁34には、図1及び図2に示すように、栽培水槽30との境界部分において、数mm~数cmの隙間34aが形成されている。この隙間34aから植物育成空間の冷気を逃がすことが可能となっており、それにより植物育成空間内の温度ムラを抑制することができる。
【0027】
各照明ユニット11は、直線状に並べて配置された複数のLED光源13と、複数のLED光源13が実装された細長のLED基板12とを有する。また、各照明ユニット11は、複数のLED光源13及びLED基板12を覆い、複数のLED光源13が並ぶ方向(縦方向、矢印X方向)に沿って延びる形状を有する笠14を有する。
【0028】
笠14は、LED光源13を含む縦断面、より具体的には複数のLED光源13が直線状に並ぶ方向(縦方向、矢印X方向)に対して垂直な断面において二次曲線を包含する曲面状の反射面15を有している。LED光源13は、笠14の反射面15の二次曲線の焦点に位置するよう配置されている。そのため、図2で二点鎖線の矢印で示すようにLED光源13から照射される光は、反射面15で反射して、平行光線として植物33に向けて反射される。光が平行光線として植物33に照射されることから、隣にある照明ユニット11から照射される光と重なる範囲が少なくなる。そのため、高さが低い苗の時期から、収穫期の植物33のように高さが高くなるような位置でも照度ムラが抑制され、植物33の成長のムラも抑制されるようになる。なお、笠14は、金属製又は高い光反射率を有する樹脂により作製される。
【0029】
笠14の反射面15として、笠14の内面に高反射材を張り付けて、光のロスを減らす構造としてもよい。また、LED光源13が搭載されるLED基板12の表面に、高反射材を張り付けて、反射面15により反射された光線を再度反射することで、光のロスを減らしてもよい。高反射材として、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、コバルトなどがある。また、高反射材は、高反射樹脂を積層した高反射樹脂積層板であってもよい。高反射樹脂として例えば酸化チタン等の白色顔料を含む樹脂が挙げられる。また、笠14だけでなく、側壁34の内面にも高反射材を張り付けてもよい。
【0030】
照明機器10の各照明ユニット11において直線状に配置されるLED光源13について、図3を用いてより詳細に説明する。通常、LED光源13は、蛍光灯や電球等と比べ、光が放射される照射角が狭く、通常その照射角は30度から90度の範囲で設計されていて、LED光源13の正面(中央部分)が明るくなり、外側に広がるに従って暗くなる。そして、照射角が小さいほど、正面と外側の照度の差が大きい。また、以下では、LED光源13の照射角Rの中心を通る方向を照射方向と呼ぶこととする。
【0031】
笠14の反射面15を用いて平行光線を放射する場合、広い照射角を有するLED光源13を利用することが望ましいが、広い照射角を有するLED光源13は一般的なものではなく特注になるためコストアップにつながる。そこで、本実施形態では、LED基板12にLED光源13を複数列で配置し、それぞれの列のLED光源13が放射する面で笠14の反射面15を分け、それにより1列で配置された場合と比較してより広い幅の平行光線を提供できるようにしている。
【0032】
具体的には、図3に示すように、2列に並んだ複数のLED光源13をLED基板12に配置している。LED光源13は、その照射角R1が約90度であるものを使用する。反射面15を中心線Cにより第一領域15aと、第二領域15bとに分割する。反射面15の第一領域15aと、第二領域15bとは、中心線Cに対して線対称となる位置に配置される。2列に並んだ複数のLED光源13のうち、第一列に配置された複数のLED光源13aは、その照射方向が反射面15の第一領域15aに向けて配置されている。一方、第二列に配置された複数のLED光源13bは、その照射方向が反射面15の第二領域15bに向けて配置されている。換言すれば、LED光源13a及びLED光源13bは、照射する範囲が互いに重ならないよう、中心線Cに対して傾斜して配置される。このように、複数のLED光源13を配置することで、笠14の反射面15を利用して広い範囲に光を放射させることができ、幅の広い平行光線を植物33に対して放射させることができる。
【0033】
照明機器10の各照明ユニット11は、図4に示す照明ユニット11Aのように、3列に並んだ複数のLED光源13AをLED基板12に配置してもよい。この場合、LED光源13Aとして、照射角R2が約60度のものを使用する。反射面15を三つの領域(第一領域15Aa、第二領域15Ab、第三領域15Ac)に分割し、第一領域15Aa及び第二領域15Abを、反射面15の中心線Cに対して互いに線対称となる位置に配置する。第三領域15Acについては、図4に示すように、第一領域15Aaと第二領域15Abとの間に位置するよう配置する。
【0034】
3列に並んだ複数のLED光源13Aのうち、第一列に配置された複数のLED光源13Aaは、その照射方向が反射面15の第一領域15Aaに向けて配置されている。一方、第二列に配置された複数のLED光源13Abは、その照射方向が反射面15の第二領域15bに向けて配置されている。第一列と第二列のLED光源13Aa、13Abとの間にある第三列のLED光源13Acは、その照射方向が、LED光源13cの上方向にある第三領域15Acに向けて配置されている。LED光源13Aa~13Acは照射する範囲が互いに重ならないよう配置される。このように、複数のLED光源13を配置することにより、照射角R2が約60度のLED光源13Aを用いた場合でも、笠14の反射面15全域に光を照射させることができ、笠14の幅で平行光線を植物に対して照射させることができる。また、LED基板12に配置するLED光源13の列数を増やすことにより明るい光を植物に対して照射することが可能になる。
【0035】
なお、本実施形態では反射面15を用いて間接的に照明しており、直接植物に対してLED光源13を向けていない。図7(a)、図7(b)に示すように、LED光源113を直接向けた場合、栽培パネル132からの高さによって、照度にムラが発生するため、植物が配置された場所によって成長に差が出てくる場合があるからである。本実施形態の照明機器10では、笠14の反射面15により平行光線を植物に照射することにより、栽培パネル32からの高さによって照度にムラが発生することを抑制している。
【0036】
なお、反射面15からの平行光のうち、LED基板12及び後述する空調機器20の空調ダクト21の直上に向かった光は、まっすぐに反射されLED基板12に帰ってくる。そのため、空調ダクト21の下側に影が生じる場合がある。LED基板12等の器具の直下以外の栽培パネル32に反射された光が、再度笠14の反射面15に向かい、再度反射されることからやがて散乱光となる。散乱光は空調ダクト21の下側に生じた影の部分にも届くが、光強度が部分的に異なる照度ムラとなって残る場合がある。
この照度ムラを解消するために、栽培する植物の種類や成長段階により変化する植物の位置や高さに合わせて、LED光源13の照射方向を調整できるとよい。
【0037】
図5に示す植物栽培装置1Aの照明機器10Aでは、LED基板12Aが、LED基板12Aの長手方向に延びる軸線16、換言すれば縦断面に対して垂直でLED基板12Aを通る軸線16を中心として回転可能に設けられている。LED基板12Aは、時計回りの方向又は反時計回りの方向に回転させることが可能である。
【0038】
LED基板12Aを、軸線16を中心に任意の回転角度θで回転させることにより、LED光源13の照射方向を変更することができる。植物の位置や高さに応じて、LED光源13の照射方向を変更することにより、例えばLED光源13の光が側壁34等からも反射されるようになり、栽培面の照度ムラを緩和したり影となる部分を移動させたりすることできる。
【0039】
なお、植物栽培装置1Aの照明機器10Aのように複数の照明ユニット11Aがある場合、それぞれのLED基板12Aの回転角度θを同じにする必要はなく、例えば図5に示すように、適切な照度とするために、照明ユニット11Aごとに回転角度θを変更してもよい。図5では、左側に位置する照明ユニット11Aでは、反時計回りにLED基板12Aを回転させ、右側に位置する照明ユニット11Aでは、時計回りにLED基板12Aを回転させている。
【0040】
このように、LED基板12を回転させ、笠14の反射面15から反射される光を調整することにより、栽培する植物の種類や成長より植物の位置や高さが変わった場合でも、適切に植物に対して、照度ムラが抑えられた光を当てることができる。
なお、図5に示す植物栽培装置1Aの照明機器10Aでは、各照明ユニット11AにおいてLED基板12Aのみが回転するように設けられているが、これは一例であり、LED基板12Aは、空調ダクト21と共に回転してもよい。空調ダクト21は、LED基板12Aを囲う筐体でもある。空調ダクト21は、その空気通路22がLED基板12の下方に設けられており、LED基板12Aの側部に設けられ吹出口23から、笠14の反射面15に向けて空気を噴出するように構成されている(図3図4も参照)。
空調ダクト21を、LED基板12Aと共に回転させることにより、吹出口23から噴出される空気の吹出方向を変更することができる。
【0041】
図3及び図4に示す実施例では、複数列に並んだLED光源13を用いていたが、LED光源13の数が増加するとそれだけ消費電力及び設置コストが大きくなり、また発熱量も大きくなる。そのため、照射角Rの大きいLED光源13Cを1列に縦方向に並べて照明ユニット11を構築してもよい。ただし、LED光源13Cを1列に並べ照射方向を直上に向けて配置すると、照射方向の光が笠14の反射面15の天井面によりまっすぐに反射される。その反射光がLED基板12に帰ってきて、LED基板12や後述する空調機器20の空調ダクト21によって遮られて影となる。影となる部分には散乱光があたるものの照度にムラが発生する。そのため、照射方向に放射される光がLED基板12を避けることが望ましい。
【0042】
図6を用いて植物栽培装置1の別例について説明する。図6に示す植物栽培装置1Bでは、LED光源13Bが一列に並べられたLED基板12Bが使用されている。LED光源13Bは、その照射角R3が約140度である。
【0043】
植物栽培装置1Bでは、縦断面においてLED光源13Bの照射方向(矢印Eで示す)が、鉛直方向(中心線C)から所定の傾斜角度β(所定角度)だけ傾くように、LED基板12Bが設置されている。これにより、LED光源13Bから照射される光の内、最も明るい部分が、矢印Fで示すように反射面15により下方に反射されるようになり、LED基板12Bを避けるようになる。LED光源13Bの照射角R3が約140度である場合は、傾斜角度βを20度前後とするのがよい。栽培する植物や成長の度合いに合わせて栽培面の照度が均一になるよう傾斜角度βを10~30度で調整してもよい。
【0044】
この場合の笠14Bの形状について説明する。LED光源13Bの照射角R3が約140度であることから、一つのLED光源13Bから光が照射されない部分(図6の部分G)が生じる。この照射されない部分Gについて、図3及び図4に示す笠14のように放物面で形成すると反射される光が少ないため、下方の栽培面において照度ムラになる可能性がある。そのため、部分Gについては高さ方向(Z方向)に延びる壁面が設けられている。高さ方向に延びる壁面の内側に高反射材とりつけLED光源13Bからの光を反射させてもよい。そして、隣接する照明ユニット11Bを用いて下方に照射するようにしている。このように、LED光源13Bから照射される明るい部分の光がLED基板12B及び空調ダクト21により遮られなくなるため、光を効率よく照射することができ、照度ムラを解消することができる。
【0045】
<<空調機器>>
次に、本実施形態の植物栽培装置1が備える空調機器20について、図2から図4を用いて説明する。植物工場では、内部の温度・湿度が管理されており、それを調整するための空調機器20が設けられている。工場内部全体の温度を調整すると、空調費が高額になることから、植物の育成環境内のみを空調することが望ましい。
【0046】
図2に示す植物栽培装置1の空調機器20では、空調ダクト21が送風機(図示しない)から延びていて、照明機器10のLED基板12に沿って延びるよう配置されている。空調ダクト21は、LED基板12の下方に配置されていて、LED光源13から照射される光を直接遮ることはない。
【0047】
空調ダクト21は、図3及び図4に示すように、LED基板12の下部及び側部において隙間をあけて覆うよう設けられ、その隙間が空気通路22となっている。そして、空気の吹出口23は、笠14の反射面15側に位置し、送風機から送られてきた空気が反射面15に向けて吹き出すよう形成されている。そして、吹き出した空気は、図3及び図4に示す一点鎖線の矢印Dに示すように、笠14の反射面15にあたることにより攪拌され、下方にある植物育成空間に移動する。
【0048】
空調ダクト21の下方に吹出口23を形成した場合、成長した植物に対して直接冷気が当たる場合がある。長時間、同じ葉面や茎の部分に冷気を当てると、吐出温度が低いため、直接冷気が当たった部分を傷めることがある。また、収穫間際の充分に草丈が大きくなった植物においては、隣接する植物同士の距離が密となることから、直接植物体に向けて冷気を吐出すると、植物体の近傍で乱流となり、冷気が当たらない箇所が至る所で生じる。その結果、温度ムラが生じる場合があり、植物の成長にバラつきが出る可能性がある。そのため、空調ダクト21の下方に吹出口を設け、直接冷気を植物体に当てることは望ましくない。
本実施形態の空調機器20では、吹出口が植物に直接向けられていないため、冷気が直接植物に当たることが抑制される。また、吹出口23から吹き出した空気が、反射面15にあたり、攪拌されて下方にある植物育成空間に移動することから、植物体の近傍で乱流となることがない。また、植物育成空間の空気を、栽培水槽30と側壁34との間の隙間34aから逃がすことができる。そのため空気が満遍なく行き渡るようになり、温度ムラが抑制される。
【0049】
また、空調ダクト21を通る空気は、LED基板12の周囲を通ることから、LED基板12を冷却することにも利用することができる。すなわち、空調ダクト21の内部にLED基板12が配置されることにより、LED基板12への冷却効果が高くなり、LED光源13及びLED基板12の寿命を延ばす効果がある。
なお、この空調機器20は、図5及び図6に示す植物栽培装置1A、1Bにもそのまま適用することができる。
【0050】
なお、照度ムラを緩和する対策として空調ダクト21の外側表面に高反射材を張り付けてもよい。空調ダクト21の表面に高反射材を張り付けることで、栽培パネル32の表面からの光の反射と併せることにより、光の反射効率を高めることができる。
【0051】
なお、照明機器10の幅方向(Y方向)の断面おいて、LED光源13から放射された光は平行光線になるものの、照明機器10の長手方向(X方向)では、LED光源13から放射された光は散乱光となる。そのため、天面により反射された光は、平面形状の栽培パネル32の表面に到達した段階で、植物に吸収される光以外は、栽培パネル32の表面から乱反射される。それにより、笠14の反射面15と、側壁34と、栽培パネル32とに囲まれた植物育成空間内では、ある程度反射光が均一化されるため、空調ダクト21により影になる部分に生じる照度ムラを緩和させることができる。
【0052】
以上、図を用いて本発明の実施形態である植物栽培装置1について説明した。ただし、上記実施形態は、本発明の理解を容易に理解するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。例えば、植物栽培装置1は、水耕により栽培される植物に対して光を照射する装置を例に説明したが、植物栽培装置1は、地面の土壌により栽培される植物に対して利用されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1、1A、1B、101a、101b 植物栽培装置
10、10A 照明機器
11、11A、11B 照明ユニット
12、12B LED基板
13、13A、113a、113b LED光源
13a、13Aa 第一列にあるLED光源
13b、13Ab 第二列にあるLED光源
13Ac 第三列にあるLED光源
14 笠
15 反射面
15a、15Aa 第一領域
15b、15Ab 第二領域
15Ac 第三領域
16 軸線
20 空調機器
21 空調ダクト(筐体)
22 空気通路
23 吹出口
30、130 栽培水槽
31 水耕養液
32 栽培パネル
33、133a、133b 植物
34 側壁
34a 隙間
36 支持部材
C 中心線
R1、R2、R3、Ra、Rb 照射角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7