(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033056
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】食器自動洗浄システム、食器自動洗浄方法、食器自動洗浄プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
A47L 15/46 20060101AFI20220217BHJP
A47L 15/24 20060101ALI20220217BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220217BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
A47L15/46 Z
A47L15/24
G06T7/00 350C
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132041
(22)【出願日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2020137155
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519020616
【氏名又は名称】TechMagic株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白木 裕士
(72)【発明者】
【氏名】パン ジュイ
【テーマコード(参考)】
3B082
3C707
5L096
【Fターム(参考)】
3B082AA03
3B082AA08
3B082DA00
3B082DB00
3C707AS01
3C707BS12
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET03
3C707KS03
3C707KS07
3C707KS09
3C707KT03
3C707KT05
3C707LW12
5L096BA05
5L096BA18
5L096CA05
5L096DA02
5L096HA11
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】ロボットアームによって食器の種類に応じた各種部分を把持することによって食器を取り上げると共に食器を洗浄用ラックに収容することができる食器自動洗浄システム、食器自動洗浄方法、食器自動洗浄プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態に係る食器自動洗浄システムは、ハンドを有するロボットアームと、食器をロボットアームにより取り上げられる位置に配置する食器配置部と、前記ロボットアームによって取り上げた食器を収容する食器収容部と、食器の画像情報を取得し、取得された食器の画像情報に基づいて、前記ハンドにより把持する食器のハンド把持部分を認識する食器情報取得部と、前記ハンドによって前記食器のハンド把持部分を把持して前記食器配置部から食器を取り上げると共に、取り上げた食器を前記食器収容部に収容するように前記ロボットアームを制御する食器搬送制御部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドを有するロボットアームと、
食器をロボットアームにより取り上げられる位置に配置する食器配置部と、
前記ロボットアームによって取り上げた食器を収容する食器収容部と、
食器の画像情報を取得し、取得された食器の画像情報に基づいて、前記ハンドにより把持する食器のハンド把持部分を認識する食器情報取得部と、
前記ハンドによって前記食器のハンド把持部分を把持して前記食器配置部から食器を取り上げると共に、取り上げた食器を前記食器収容部に収容するように前記ロボットアームを制御する食器搬送制御部と、
を備えることを特徴とする食器自動洗浄システム。
【請求項2】
前記食器情報取得部が、食器の2次元及び/又は3次元形状の情報を取得可能であり、
取得された食器の2次元及び/又は3次元形状の情報を用いて食器の前記ハンド把持部分を算出することを特徴とする請求項1に記載の食器自動洗浄システム。
【請求項3】
前記食器情報取得部では、機械学習により食器の形状認識を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の食器自動洗浄システム。
【請求項4】
前記機械学習では、深層学習によって訓練済みのモデルを用いて食器の2次元形状の情報から食器の配置、形状、大きさ、色又は種類の少なくとも1つが認識されて第1出力として出力され、
前記第1出力及び食器の3次元形状の情報から少なくとも食器の前記把持部分を第2出力として算出することを特徴とする請求項3に記載の食器自動洗浄システム。
【請求項5】
前記食器配置部が、食器が載置された複数のトレーを受け入れる受入用トレー配置部と、
前記ロボットアームによって食器が取り上げられる位置であり、前記受入用トレー配置部から1つのトレーが移送される食器取上用トレー配置部と、を有し、
前記食器情報取得部が、前記食器取上用トレー配置部に配置されたトレー上の食器の画像情報を取得し、当該画像情報に基づいて前記食器のハンド把持部分を算出することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の食器自動洗浄システム。
【請求項6】
前記食器情報取得部が、前記食器収容部の画像情報を取得し、当該画像情報に基づいて前記食器収容部の空スペースを算出することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の食器自動洗浄システム。
【請求項7】
ロボットアームに設けられたハンドにより取り上げられる位置に食器を配置する食器配置ステップと、
食器の画像情報を取得し、取得された食器の画像情報に基づいて、前記ハンドにより把持する食器のハンド把持部分を認識する食器情報取得ステップと、
前記ロボットアームによって取り上げた食器を収容する食器収容ステップと、
を備え、
前記食器収容ステップにおいて、前記食器情報取得ステップにおいて認識された食器のハンド把持部分の情報を用いて、前記ハンドによって前記食器のハンド把持部分を把持して前記食器配置部から食器を取り上げると共に、取り上げた食器を前記食器収容部に収容するように前記ロボットアームが制御されることを特徴とする食器自動洗浄方法。
【請求項8】
請求項7に記載の食器自動洗浄方法における各ステップをコンピュータにより実行可能なことを特徴とする食器自動洗浄プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器等を自動的に洗浄する食器自動洗浄システム、食器自動洗浄方法、食器自動洗浄プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食店における従業員不足等の背景から、飲食店における業務やサービスの工程を自動化したいという要請がある。食器の洗浄についても、自動化の要請があり、従来、特許文献1のような技術が提案されている。
【0003】
上記特許文献1には、食器の開口が下向きになる状態で洗浄し、洗浄後の食器をカメラにより撮影し、撮影された画像に基づいて、登録された3種類の食器の中から食器の種類をパターンマッチングにより判断し、食器の重心位置をロボットアームの吸着パッドにより取り上げて、食器をピックアップする食器洗浄システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の食器洗浄システムでは、食器の取り上げに吸着パッドが必須であり、ロボットアームのハンドによる食器の取り上げができなかった。また、画像認識は、食器の開口が下向きになる状態でパターンマッチングによるものなので、認識可能な食器の種類及び姿勢が限定されていた。
【0006】
本発明の目的は、食器を把持する位置を画像認識により把握し、ロボットアームのハンドによって自動的に食器を取り上げることができる食器自動洗浄システム、食器自動洗浄方法及び食器自動洗浄プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成できる。すなわち、本発明の第1の態様の食器自動洗浄システムは、
ハンドを有するロボットアームと、
食器をロボットアームにより取り上げられる位置に配置する食器配置部と、
前記ロボットアームによって取り上げた食器を収容する食器収容部と、
食器の画像情報を取得し、取得された食器の画像情報に基づいて、前記ハンドにより把持する食器のハンド把持部分を認識する食器情報取得部と、
前記ハンドによって前記食器のハンド把持部分を把持して前記食器配置部から食器を取り上げると共に、取り上げた食器を前記食器収容部に収容するように前記ロボットアームを制御する食器搬送制御部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食器を把持する位置を画像認識により把握し、ロボットアームのハンドによって自動的に食器を取り上げることができる食器自動洗浄システム、食器自動洗浄方法及び食器自動洗浄プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システムの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システムの概略ブロック図である。
【
図3B】ハンドにステレオカメラを固定した状態のハンドの説明図である。
【
図5】AIによる画像認識の出力結果の説明図である。
【
図6】洗浄用ラックへの食器の収容位置を算出する処理についての説明図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る食器自動洗浄システムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る食器自動洗浄システム、食器自動洗浄システム、食器自動洗浄方法、食器自動洗浄プログラム、及び記憶媒体を説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための食器自動洗浄システムを例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0011】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システムについて、
図1~
図6を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システム100の斜視図である。
図2は、本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システム100の概略ブロック図である。
図3Aは、ロボットアーム100のハンド112の説明図である。
図3Bは、ハンド112にステレオカメラ160を固定した状態のハンド112の説明図である。
図4は、食器180のハンド把持部分180aの説明図である。
図5は、AIによる画像認識の出力結果の説明図である。
図6は、洗浄用ラック142への食器180の収容位置を算出する処理についての説明図である。
【0013】
本実施形態の食器自動洗浄システム100は、アーム111の先端にハンド112を有するロボットアーム110と、使用済みの食器180が載置されたトレー182が配置されるトレー配置部120と、ロボットアーム110がトレー配置部120に配置されたトレー182から取り上げた食器180を予洗いする予洗い部130と、ロボットアーム110によって取り上げた食器180を洗浄のために収容する洗浄用ラック142が配置されるラック配置部140と、洗浄用ラック142に収容された食器180を洗浄する食器洗浄部150と、トレー配置部120に配置されたトレー182上の食器180の画像情報を取得する食器情報入力部160と、食器自動洗浄システム100全体の動作を制御する制御装置170と、を備える。
なお、食器180としては、例えば、洋食器、和食器、形状等の種類を問わず、例えば食品を盛るための皿、ボール、碗、丼、鉢等、飲料を入れるカップ、コップ、グラス、茶碗、酒器等、食物を取り扱う箸、フォーク、ナイフ、スプーン、マドラー、レンゲ等、調理用具ないしキッチン用品である鍋、フライパン、まな板、包丁、ナイフ、ボール、カップ、コンテナ、フライ返し、へら、杓子等、食事に用いられる道具や器具の全てを含む。
【0014】
ロボットアーム110は、特に限定されるものではないが、例えば6軸の多関節型のロボットアームが用いられ、アーム111の先端にハンド112を有する。なお、ロボットアーム110は6軸の多関節型のロボットアームに限定されるものではなく、アームの可動範囲において食器180を取り回すことができるものであれば、いかなる形式のロボットアーム110であってもよい。このロボットアーム110は、ロボットアーム110の動作を制御するロボット制御部110aを有し、このロボット制御部110aが制御装置170の食器搬送制御部171に接続されている。
【0015】
ハンド112は、一対の把持片113を有し、この一対の把持片113によって食器180の一部が把持される。一対の把持片113は、一方の把持片113の先端部が外側に向けて屈曲され、他方の把持片113の先端部が内側に向けて屈曲されている。一対の把持片113は、食器180を把持する側の面となる把持面113aがR状に屈曲された屈曲部分から先端に向けて平面形状になっている。なお、ハンド112は、先端部の内側に耐水性、耐油性のあるシリコン材等の滑り止めを貼りつけて食器180を安定して把持することができるようになっている。このハンド112は、一対の把持片113が互いに近づけられると、互いの先端部の把持側の把持面113aが平行に向かい合うようになっており、一対の把持片113の先端部で食器180の開口縁部周辺を平行に対峙された平面形状の把持面113aの間に把持することができる。
【0016】
また、ハンド112は、ハンド112の向きを鉛直下方に向けた場合、一対の把持片113の先端部が横方向を向いた状態になるため、食器洗浄部150の回転ノズルから噴射される水が当たりやすい食器180の姿勢、すなわち、開口端縁面を下方に傾けた姿勢、あるいは下方に伏せた姿勢で食器180を配置し易くすることができる。
【0017】
上述の
図3A、
図3Bに示したハンド112により、箸、カトラリー類を把持する際に、ハンド112による把持が不安定となることがある。このため、箸、カトラリー類を把持する際には例えば二股ハンド部やエアーグリッパー等で把持する構成とするとよい。また、複数種類のハンド112を用意しておき、把持する対象に合わせてハンドを使い分けるような構成とすることもできる。
【0018】
トレー配置部120は、使用済みの食器180が載置された複数のトレー182が受け入れられる受入用トレー配置部121と、受入用トレー配置部121から1つのトレー182がロボットアーム110によって食器180が取り上げられる位置に移送配置される食器取上用トレー配置部122と、を有する。
【0019】
受入用トレー配置部121は、複数のトレー182を1列に並べて配置可能であると共に、トレー182の並び方向前方に向けてトレーを移動することができるトレー載置台121aを有する。このトレー載置台121aは、トレー182の並び方向前方側に向けて下り傾斜状に傾斜されているため、トレー182が前方に向けて自重により移動されるようになっている。また、この傾斜構造の代わりに又はこれに加えて、駆動機構やばね機構等を用いてトレー182を移動させるようにしてもよい。
【0020】
なお、トレー載置台121aの前方端には最前位置のトレー182が突き当てられるガイド部材123が配置されている。このガイド部材123は、ロボットアーム110によって食器取上用トレー配置部122に、引き入れることができるようにトレー載置台121aと食器取上用トレー配置部122との間でスライド移動可能に設けられている。
ガイド部材123に突き当てられた最前位置の1つのトレー182が、ロボットアーム110によってスライド移動されるガイド部材123に押され、ガイド部材123と共に移動されることによって、食器取上用トレー配置部122に配置されるようになっている。
【0021】
食器取上用トレー配置部122は、制御装置170に接続された昇降駆動部122bによって駆動される不図示の昇降機構によって昇降駆動されるトレー載置テーブル122aを有する。この食器取上用トレー配置部122は、トレー載置テーブル122aにトレー182を複数重ねて載置することができる。食器取上用トレー配置部122は、受入用トレー配置部121から移送されたトレー182からロボットアーム110によって全ての使用済みの食器180が洗浄用ラック142に移動されると、新たに最上位置に1つのトレー182を受け入れできるようにトレー載置テーブル122aが下降されるようになっている。
このような、食器取上用トレー配置部122は、受入用トレー配置部121で受け入れられた複数のトレー182を重ね配置することができ、使用済みのトレー182としてまとめて回収することができるようになっている。
【0022】
予洗い部130は、流し台130aを有し、流し台130aには水が溜められている。ロボットアーム110により取り上げた食器180を、この水の中に配置されたブラシ(不図示)に押し当てながらロボットアーム110によって動かすことによって、食器180が予洗いされる。水の中に配置されたブラシは、固定式でも駆動式(例えば回転駆動等)でもよい。なお、流し台130aに溜められる水は、温水であってもよい。
【0023】
ラック配置部140は、最上位置の洗浄用ラック142にロボットアーム110によって食器180を収容することができるように複数の洗浄用ラック142を上下方向にストックすると共に、食器180の収容が完了された最上位置の洗浄用ラック142が食器洗浄部150に移動された場合、下方に配置された洗浄用ラック142を最上位置に上昇させることができるようになっている。このラック配置部140は、ストックされた複数の洗浄用ラック142を制御装置170に接続された昇降駆動部141aによって昇降移動させる昇降機構141を有し、この昇降機構141によって下方にストックされた洗浄用ラック142を最上位置に順次供給する。なお、ラック配置部140から食器洗浄部150への洗浄用ラック142の移動は、ラック送出機構143によって行われる。このラック送出機構143は、制御装置170に接続された駆動部143aによって駆動される。
【0024】
食器洗浄部150は、例えば、回転ノズルから噴射される水、さらには自動注入される洗剤を用いることにより洗浄用ラック142に収容された食器180に付着した汚れを落とした後、食器180を乾燥するものである。この食器洗浄部150は、洗浄から乾燥までの食器180の洗浄に関する一連の動作を制御する食洗制御部150aを有しており、この食洗制御部150aに制御装置170が接続されている。食器洗浄部150によって食器180の洗浄が完了されると、洗浄用ラック142が食器洗浄部150から送り出され、例えば不図示のロボットアームによって洗浄用ラック142から各食器180が取り出され、洗浄済みの食器180として不図示の収容容器に収容される。
【0025】
食器情報取得部172は、食器情報入力部160として画像入力装置、特に限定されるものではないが、例えば2次元画像情報及び/又は3次元点群による食器180のカラーの3次元画像情報を取得することができるステレオカメラ等を備えている。本実施形態では、食器情報入力部(以下、「ステレオカメラ」ともいう。)160としては、カラーカメラを用いる例を説明するが、本実施形態はカラーカメラに限定されるものではなく、モノクロカメラを用いてもよい。本実施形態では、ステレオカメラ160が、ハンド112に固定されている。ステレオカメラ160は、ロボットアーム110を動かすことによってステレオカメラ160の光軸を任意の方向に向けて画像情報を取得することができる。すなわち、ロボットアームを動かすことで様々な角度から撮影が可能であり、またその撮影位置・角度はロボット側から正確に情報を得ることができる。このため、ステレオカメラ160は、ハンド112がトレー配置部120に配置されたトレー182、あるいは、ラック配置部140に配置された洗浄用ラック142に向けられることによって、トレー182上の食器180及びラック配置部140に配置された洗浄用ラック142の収容部の2次元情報及び/又は3次元画像情報を取得する。
【0026】
本実施形態では食器情報入力部160としてステレオカメラを用いることを例示したが、本実施形態においてはステレオカメラだけに限定されるものではなく、他の様々な形式のカメラや画像取得手段を含む。また、本実施形態では、カメラを1台設けた例を説明するが、本願はこれに限定されるものではなく、複数のカメラを用いるようにすることもできる。例えば、ハンドに設けた移動カメラと、別の固定カメラとを用いることもできる。複数のカメラを用いると、複数に重なった食器180を認識しやすくなる。
【0027】
なお、食器180の3次元点群を得る方法として上述のステレオカメラ方式の他に、1)レーザー光やLED等のパターンを照射して、その模様の映り方を撮影し、3次元点群を取る方法(Structured Light方式)、2)レーザー光やLED等の光を照射し、反射して帰ってくるまでの時間を計測する方式(Time of Flight方式)、及び、3)画像の焦点が合う位置を探索して奥行情報を知る方式(合焦方式)等も用いることができる。
【0028】
制御装置170は、例えばマイクロコンピュータにより実現することができるし、あるいは、例えばパーソナルコンピュータあるいはタブレット端末等で実現することもできる。制御装置170は、上述したように食器自動洗浄システム100の各部に接続され、使用済みの食器180が載置されたトレー182が受入用トレー配置部121に受け入れられてから食器洗浄部150によって洗浄完了されるまでの食器自動洗浄システム100による食器洗浄処理の一連の処理を制御する。この制御装置170は、食器搬送制御部171及び食器情報取得部172を有する。制御装置170は、例えば、ソフトフェアとして制御装置170の不図示の記憶媒体としての記憶部にインストールされる。なお、食器情報取得部172は、制御装置170の一部であると共に、ステレオカメラ等の食器情報入力部160を包含する。
【0029】
食器情報取得部172は、ステレオカメラ160によって取得された食器180の2次元画像情報及び/又は3次元点群による食器180の3次元画像情報に基づいて、食器取上用トレー配置部122に配置されたトレー182上の食器180をロボットアーム110によって取り上げるためにハンド112が把持する食器180のハンド把持部分180aを算出する。食器搬送制御部171は、食器情報取得部172で算出されたハンド把持部分180aを把持してトレー配置部120から食器180を取り上げると共に、取り上げた食器180を洗浄用ラック142に収容するようにロボットアーム110のロボット制御部110aに制御指令を送信する。なお、2次元画像情報は、例えば食器180の配置、形状、大きさ、及び色等を含む情報である。また、3次元画像情報は、例えば食器180の形状、縁部の高さ、色等を含む情報である。
【0030】
食器情報取得部172は、ステレオカメラ160によって取得された2次元画像情報あるいは3次元画像情報から食器180の配置、形状、大きさ、色、及び縁部の高さを認識し、食器180を把持するハンド把持部分を算出する。このハンド把持部分180aは、
図4に示されるように、例えば、食器180の開口端周辺の領域であり、かつ、ロボットアーム110の姿勢が食器180を取り上げやすくなるように考慮された領域である。
図4のトレー配置部120の正面図において、各食器180の上方の領域がハンド把持部分180aとして、算出されている。ロボットアーム110の姿勢が食器180を取り上げやすくなるように考慮されるため、立体形状の近い食器180に対しては、ハンド把持部分180aが同じ向きになる傾向となる。
【0031】
食器情報取得部172は、一般的な食器180の画像情報(円形の皿、四角皿、丼、丸い小鉢等)によって学習されている。このため、従来の固定されたモデルデータを用いた画像認識では難しかった、様々な形状、大きさ、色、及び縁部の高さの食器180の認識が可能である。すなわち、食器情報取得部172は、食器180の2次元画像情報及び/又は3次元画像情報を登録していない状態(モデルレス)でも、機械学習を用いて食器180の配置、形状、大きさ、色、及び縁部の高さを推定することができ、この推定に基づいてハンド把持部分を算出することによって、ロボットアーム110を用いて食器180を取り上げることが可能である。食器搬送制御部171は食器情報取得部172からの情報を用いて、ロボット制御部110aにロボットアームを制御するための制御指令を送信する。
【0032】
なお、ロボットアーム110は、姿勢が制限されるため、アーム先端のハンド112を最短距離で移動させることができない場合がある。現在の食器180を取り上げる動作に続けて次の食器180を滑らかに取り上げることができるように、ロボットアーム110のアーム先端の軌道の補正量、トレー182上のどの食器180を取り上げ対象に選出するかを最適化するような学習も可能である。例えば学習済みのAIを用いれば、食器自動洗浄システム100の導入初期から、ロボットアーム110が熟練者のような滑らかな動きで迅速に食器180を取り上げることが可能になる。例えば、ロボットアーム110の取り上げ時の軌道に補正量を入れ、取り上げが上手くいく方向に強化学習、あるいは、DNN(ディープニューラルネットワーク)による教師あり学習等により、その補正量の最適化を行うことは効果的であり、ロボットアーム110の高速化にも寄与する。特に限定されるものではないが、本実施形態では食器の画像認識に深層学習を用いた例を説明する。
【0033】
ロボットアーム110により食器180を取り上げるためのロボットアーム110の姿勢は無数に存在するが、姿勢を適切に選ばないと、ロボットアーム110が可動限界に近すぎて停止してしまう。そこで、ロボットアーム110の動きやすさの指標である可操作度と、可動限界までの近さを用いて、いくつかの姿勢の候補のうち、ロボットアーム110が動きやすい姿勢を選んで食器180を取り上げる。
【0034】
また、食器情報取得部172は、ステレオカメラ160によって取得された洗浄用ラック142の収容部内の画像情報に基づいて洗浄用ラック142の空スペースを算出し、洗浄用ラック142に収容するためにロボットアーム110によって取り上げた食器180の情報と、洗浄用ラック142の空スペースの情報とから洗浄用ラック142への食器180の収容位置を算出する。食器情報取得部172は、洗浄用ラック142の上部から視た空きスペースを例えば四角形状のパターンP1、P2(
図6参照)で認識する。洗浄用ラック142のサイズは既知であるため、食器180を画像認識により検出した場合、食器180の大きさについては、ラックの大きさとの比率を用いて算出することが可能である。このように洗浄用ラック142のサイズと収容された食器180の大きさが把握できるため、空きスペースとして、パターンP1、P2を算出することができる。洗浄用ラック142の空きスペースとなる1以上のパターンP1、P2の中から後述のルールベースに従い、ロボットアーム110によって取り上げた食器180が収まるパターンP1、P2が選択される。食器搬送制御部171は、このように選択されたパターンP1、P2の位置に食器180を配置するようにロボットアーム110によって食器180を収容するように、ロボット制御部110aへ制御指令を送信する。
【0035】
食器情報取得部172は、ロボットアーム110が現在取り上げている食器180の2次元画像情報及び/又は3次元画像情報から食器180の形状を認識する。認識された食器180の形状と1以上の空きスペースのパターンP1、P2に対する適合度を評価し、適合度の高いパターンP1、P2の位置に食器180を配置するようにロボットアーム110が制御される。適合度には、例えば両者の形状が近いかどうかの度合い、パターンP1、P2の大きさが食器180よりも大きいかどうかの判定等が含まれ、例えば、食器180の形状とパターンP1、P2の形状とが近い程、適合度が高いものとして評価される。
【0036】
洗浄用ラック142内全体は画像認識されており、すでに収容された食器180が画像認識され、空きスペースも把握されている。この空いたスペースに合理的に食器180を詰めるためには、今ロボットアームで把持している食器180の種類だけでなく、次の食器180、また次の食器180等、後続のトレーに載せられている食器180の情報を用いるとよい。また洗浄用ラック142に各種の食器180を詰めるときには、「ガラスのコップの直後に丼を重ねてはいけない」(丼に当たってガラスのコップが割れないように)、「同じ種類の皿はなるべく種類ごとに揃えて入れると容積効率がよい」、又は、「食器洗浄部150内部で食器180へ洗浄水が当たり易い」等のルールがある。洗浄用ラック142に食器180を詰める様々なルールと、このルールに基づいてく洗浄用ラック142へ食器180を収容した実例のデータと、後続の食器情報等を用いて、機械学習、例えば深層学習によりAIを訓練する。この訓練されたAIを用いることにより、空きスペースに対するパターンP1、P2の設定方法、後続の食器種類に基づくパターンP1、P2に対する食器180の割り当て方法等をより適正化することができる。
【0037】
訓練済みのAIを用いて洗浄用ラック142に食器180を詰める制御は、次の仕様に従っている。
(1)洗浄用ラック142内の食器物体認識により、洗浄用ラック142内の位置・サイズの判別を含む空き空間領域把握を行うことにより、1以上の空きスペースのパターンP1、P2を演算する。
(2)認識された食器180の形状と1以上の空きスペースのパターンP1、P2との適合度を評価し、適合度の高いパターンP1、P2の中からルールベースに基づいて食器180を配置する位置を決定する。
(3)把持中の食器180の大きさ・高さ・形状情報に基づいて、パターンP1、P2に合致するように、プレース時の姿勢制御を行う。
(4)食器180のプレースルールはピック側の食器順序の制約があるためそのルールベースに従う。
【0038】
次に、食器洗浄処理における食器自動洗浄システム100の一連の動作について説明する。先ず、ロボットアーム110が使用済みの食器180が載置された1つのトレー182を受入用トレー配置部121から食器取上用トレー配置部122に引き入れる。なお、ロボットアーム110がガイド部材123を食器取上用トレー配置部122側に引き入れることによって、ガイド部材123に突き当てられた最前位置の1つのトレー182がガイド部材123と共に移動される。これによって使用済みの食器180が載置された1つのトレー182が食器取上用トレー配置部122に配置される。
【0039】
1つのトレー182が受入用トレー配置部121から食器取上用トレー配置部122に移動され、ロボットアーム110によってガイド部材123が受入用トレー配置部121側に戻されると、受入用トレー配置部121にある残りのトレー182が前方にシフト移動され、最前位置のトレー182がガイド部材123に突き当てられて位置決め停止すると共に、後続のトレー182についても互いのトレー182同士が当接されて停止する。
【0040】
食器取上用トレー配置部122にトレー182が配置されると、ロボットアーム110が食器180を把持するためハンド112をトレー182に向けると共に、ステレオカメラ160によってトレー182上の食器180の画像情報が取得される。ステレオカメラ160は2次元画像及び3次元画像の両方を取得可能である。ステレオカメラ160によって取得される食器180の画像情報としては、食器180の2次元画像情報及び/又は3次元画像情報であり、トレー182に複数の食器180が載置されている場合、複数の食器180の2次元画像情報及び/又は3次元画像情報が取得される。ステレオカメラ160によって取得された食器180の画像情報は、制御装置170に送信され、食器情報取得部172における画像認識によってハンド112が把持する食器180のハンド把持部分180aが算出される。食器搬送制御部171は、算出されたハンド把持部分180aの位置及び姿勢から、ハンド112が食器180を把持するための位置(三次元座標)及び姿勢が決定し、この決定したハンド112の位置及び姿勢に基づいて、ロボット制御部110aに対してロボットアーム110の制御指令を送信する。ロボット制御部110aは食器搬送制御部171からの制御指令に基づき、ロボットアーム110を制御し、ハンド112により食器180を把持し、また、食器180を搬送する制御を行う。
【0041】
その後、食器搬送制御部171は、算出されたハンド把持部分180aをハンド112によって把持し、食器180を取り上げた後、取り上げた食器180を予洗い部130にて予洗いするようにロボットアーム110を制御するための制御指令をロボット制御部に送信する。これによって、ロボットアーム110は取り上げた食器180を予洗い部130にて予洗いするように制御され、食器洗浄部150による洗浄の前に食器180に付着した汚れの一部が除去される。予洗い部130の流し台130aには水が溜められている。ロボットアーム110は取り上げた食器180を流し台130aの水に浸した状態で、食器をブラシに押し当てるように適宜の方向に揺動させることにより予洗いを行う。
【0042】
その後、食器搬送制御部171の制御指令に応じたロボット制御部110aによる制御によって、ロボットアーム110が、予洗いした食器180をラック配置部140に配置された洗浄用ラック142に収容する。ここでロボットアーム110は、食器情報取得部172によって算出された洗浄用ラック142の収容位置に食器180を収容する。ロボットアーム110によって取り上げられた食器180の収容位置は、例えば上述の訓練済みAIを用いて洗浄用ラック142中の1以上の空きスペースのパターンP1、P2の中から決定される。食器搬送制御部171は、洗浄用ラック142に食器180を収容する空きスペースが無いと判断した場合、食器搬送制御部171の制御指令に応じて、ラック送出機構143の駆動部143aが洗浄用ラック142を食器洗浄部150に送り出すと共に、昇降駆動部141aが最上位置の一段下方位置に配置されている洗浄用ラック142を最上位置に上昇移動させる制御を実行する。
【0043】
食器情報取得部172における画像認識によって、食器取上用トレー配置部122に配置されたトレー182に食器180が存在しないと判断されると、食器搬送制御部171の制御指令に応じて、トレー182は昇降駆動部122bによって下方のトレーストック位置まで運ばれて、他の使用済みのトレー180と重ね合わせた状態でストックされる。その後、トレー載置台121aの最前位置のトレー182が、食器搬送制御部171からの制御指令に応じてガイド部材123に押されて、食器取上用トレー配置部122に搬送される。これにより、新たに食器取上用トレー配置部122に搬送されたトレー182について、食器180の画像認識が行われ、認識された食器180をロボットアーム110により取り上げて、食器を洗浄用ラック142に搬送する制御が行われる。
【0044】
洗浄用ラック142がラック送出機構143によってラック配置部140から食器洗浄部150に送られると、食器搬送制御部171の制御指令に応じて洗浄制御部150aの制御により、洗浄用ラック142内に収容された食器180が洗浄される。食器洗浄部150によって洗浄された食器180は、例えば、不図示のロボットアームによって洗浄用ラック142から取り出され、洗浄済みの食器180として不図示の収納コンテナ等に収納される。ロボットアームによって洗浄用ラック142から食器180を取り出す制御のために、後述と同様な画像認識を採用することができる。空になった洗浄用ラック142は、不図示の搬送機構によって回収され、ラック配置部140に自動でセットされる。
【0045】
[画像認識について]
本実施形態の画像認識では、2次元情報及び3次元情報の両方を用いる。2次元画像情報により、食器の配置・形状・大きさ・色等を識別し、3次元画像情報により食器180の形状・縁部高さ・色等を識別している。例えば深層学習による訓練済みAIに、2次元画像情報を入力することにより、第1出力として食器180の形状・色・種類・大きさ・配置等の情報を得る。第1出力で得られる情報としては、食器180の種類と配置を大まかに判別できる程度でもかまわない。深層学習による訓練済みAIに2次元画像情報を入力するとき、バウンディングボックスを適切に設定して、必ず食器180が占めるエリアが完全に含まれるようにする。そして、第1出力に加えて、3次元画像情報を用いた演算を行うことにより、食器180の形状・把持位置・縁部高さ・色等をより精緻に算出して、第2出力を得る。第2出力を用いて、例えばロボットアーム110により食器180を取り上げる制御を行う。また、本実施形態は2次元情報による機械学習に限定されるものでは無く、3次元画像情報も用いた機械学習や、2次元情報及び3次元情報の両方を用いた機械学習による食器180の画像認識も可能である。
【0046】
2次元画像情報は、大まかな食器180の種類・位置・サイズの特定に利用され、3次元画像情報は、2次元情報で得られた情報を参照した上で、食器180の形状・把持位置をより精緻に特定するために利用される。特に、3次元画像情報は、食器180の把持位置の高さと傾き情報を得て、ロボットアーム110のハンド112の角度を決定するために利用される。
【0047】
[AIの訓練について]
AIとしては、特に限定されるものでは無いが、ここでは深層学習を例に挙げ、ネットワークとして、例えばYOLOv3を用いた場合について説明する。食器情報取得部172は、深層学習による訓練済みAIが組み込まれており、2次元画像情報を入力することにより、第1出力として食器180の形状・色・種類・大きさ・配置等の情報を得る。特に限定されるものではないが、本実施形態では、本部サーバ101において、データベース102の情報、及び、各食器自動洗浄システム100、100a~100nから収集された情報に基づいてAIの深層学習を行うことを例示する。食器情報取得部172は、情報ネットワーク103を介して、本部サーバ101、データベース102、他の食器自動洗浄システム100a~100nが接続されている。本部サーバ101において訓練された訓練済みAIモデルは、各食器自動洗浄システム100、100a~100nの食器情報取得部172に送信され、各食器自動洗浄システム100、100a~100nにおける画像認識に使用される。なお、第1出力に基づき第2出力を得るための3次元画像情報の演算プログラムやパラメータについても、本部サーバ101から各食器自動洗浄システム100、100a~100nの食器情報取得部172に送信するようにしてもよい。また、ここでは本部サーバ101でAIの訓練を行う例を説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば食器情報取得部172においてステレオカメラ160から入力された画像情報や情報ネットワーク103を介して入手したデータベース102の情報、他の食器自動洗浄システムからの情報等に基づき個別にAIの深層学習を行うようにすることも可能である。また、第2出力を得るための3次元画像情報の演算プログラムを各食器自動洗浄システム100、100a~100n側で設定することも可能である。
【0048】
まずは、データセットの生成について説明する。
(1)画像の準備
(1-1)食器180の11種の写真を異なる角度から5枚ずつ撮る。
(1-2)トレー182の3種の写真を1枚ずつ撮る。
(1-3)適用場所の辺の画像を5枚撮る。
(1-4)上記1-1と1-2のバックグラウンドを抜き透明化する。
【0049】
撮影された食器180の写真に対する学習データの生成は、次の手順でソフトウェアにより自動的に行われている。
・個々の食器180やトレー182の写真を撮影し、食器の写真の背景を透明化して、下記(2)~(4)の手順の処理を行う。
・食器180およびトレー182などの複数の写真をソフトウェアで合成して擬似的にトレー182を生成し、また、学習用のラベルもソフトウェアで自動的に生成する。
・生成された画像・ラベルデータを元に機械学習を行う。
【0050】
OpenCVにより以下の処理を行う。
(2)画像数を増やすための画像処理
(2-1)トレー用
・明るさ調整:γ=0.7-1.5
・回転:±10°
・ノイズ:ガウシアン、ポワゾン、ごま塩ノイズ
(2-2)食器用
・明るさ調整:γ=0.7-1.5
・回転:±180°
・アフィン変換
・ノイズ:ガウシアン、ポワゾン、ごま塩ノイズ
【0051】
(3)食器180を置く際の条件
(3-1)置いてある食器180と一部重なる又は一定の距離を開けて配置する。
(3-2)トレーが回転する前に置ける場所の縁を超えないこと。
(3-3)食器180が回転する前にトレーの縁を超えないこと。
(3-4)リトライ回数が所定回数を超えないこと。
【0052】
(4)画像の合成
(4-1)ランダムに一枚の応用場所の辺の画像を取って背景とする。
(4-2)ランダムに一つトレーの画像を取り、上記(2)のように画像数を増やす画像処理をかけてランダムにトレーの置ける範囲内に置く。
(4-3)ランダムに背景が透明化した食器180の画像を取り、上記(2)のように画像数を増やす画像処理をかけてトレーのランダムな位置に置く。
(4-4)合成枚数:35,000
(4-5)合成画像の大きさ:カメラの解像度に合わせて決定する。
【0053】
次にAIの訓練について説明する。
(1)フレームワークは次のとおりとする。
a) Darknet:物体検出等の画像認識を行う。
b) CUDA 10.2:GPUを利用することにより訓練と推論の演算速度を向上する。
(2)ネットワークはYOLOv3-106層を用いた。
(3)パラメーターは次のように設定した。
a)Number of classes: 12 (食器10、箸1、トレー1)
b)Epochs: 50,000
c)Batch_size: 8
d)Channels: 3
e)Learning_rate: 0.001
f)Anchors: 教師なし学習のAgglomerative Clusteringにより決定する。
g)学習する際に画像毎の水増しパラメータ
・Angle: 180
・Exposure: 1.5
・Hue: 0.1
【0054】
なお、以上の設定は本実施形態の一例であり、本実施形態は上記の設定に限定されるものではない。
【0055】
[AIの出力結果について]
AIによる画像認識の出力結果を
図5に示す。本実施形態のAIにより食器180の形状・色・種類・大きさ・配置等の情報が正確に認識されている。
図5では、食器180が四角囲みにより認識され、その食器180の種類に応じて適切なラベルが表示されている。また、本実施形態のAIは、皿、丼、小鉢、コップ等の器だけでなく、箸、フォーク、スプーンナイフ、カトラリー類も認識することができる。さらには、その他・ゴミ等の不定形物の推定も可能である。例えば、紙屑が認識された場合には、アームによって除去される。
【0056】
AIによる画像認識の処理スピードは、25-34 fps程度であり、信頼度スコア92%が得られた。正解率は10種類の食器180については略100%である。
【0057】
[洗浄ラックからの食器180の取り上げについて]
ロボットアーム110が洗浄用ラック142から食器180を取り上げる場合、洗浄用ラック142上には底面が見える状態で食器180が配置されている。上述のとおり、ロボットアーム110のハンド112により食器180を把持して取り上げることが可能であるが、これ以外の食器180の取り上げ方法、例えば食器180の糸底をロボットアーム(ハンド112を有するロボットアーム110と区別するため、以下、符号「110A」とする。)に設けた吸着パッドにより取り上げる方法について説明する。この場合、食器180の糸底を深層学習により認識することにより、ロボット制御部110Aaは食器180の形状を把握し、ロボットアーム110Aにより確実に食器180を取り上げることができる。上述の画像認識ではステレオカメラ160からの3次元画像情報を用いた画像認識について説明したが、ここでは、2次元カメラによって取得された食器180の2次元画像情報のみを用いてロボットアーム110Aによって食器180を取り上げる方法を説明する。
【0058】
食器情報取得部172に設けられた2次元画像を処理する画像処理部に食器180の種類、食器180の外形に加え、外形内の特徴領域である食器180の糸底をマルチタスク学習・認識させることで、糸底領域のマスク画像についても、きれいに丸みを描けるようにしておく。
【0059】
このためには、画像処理部に予め、食器180の画像と、食器180の領域と、ラベルとからなるデータを複数与えておき、さらに、特徴領域の形状として既知の形状を与えておく。食器180の例では、食器180の画像と、食器180の領域(輪郭)と、食器180の種類(ラベル)とを複数組与えて、畳み込みニューラルネットワークを用いてたAIの深層学習を行う。さらに、一般的な糸底の糸底形状を、既知の形状(円、正方形、長方形など)と対比させることにより、次の方法により、その位置と姿勢を演算することができる。食器180の糸底の傾きに応じて、二次元画像上では見かけ上、円などの形状が細長く歪んで見える。この関係を利用し、既知の形状、例えば円形が二次元カメラに写した時に二次元画像上でどのように見えるかを演算により解くことで、二次元カメラからみて食器180がどの方向に位置し、どの方広に傾いているかを推定することが可能である。
【0060】
ここで、画像処理部に予め与えられるのは、いわゆるモデルデータではない。画像処理部は、一般的な食器180の画像情報によって学習されているため、モデルデータではない様々な種類、色、大きさの食器180の認識が可能である。
【0061】
一般的に画像処理により出力された食器180の位置は、カメラの光軸方向(奥行方向)に精度が悪く、また、食器180のモデルデータによって予め物体の寸法が既知でないと奥行方向の距離を推定できない。本実施形態の、画像処理部はモデルレスであるため、二次元カメラから物体までの距離を正確に演算することは困難である。そこで、画像処理部を用いてモデルレスで食器180の位置及び姿勢を推定して当該食器180を取り上げる方法について、以下に説明する。
【0062】
ロボットアーム110Aを物体に近付ける軌道を、画像取得装置、例えば二次元カメラの光軸方向に沿うように、カメラ座標系原点と物体とを結ぶ直線に沿ってロボットアーム110Aを動かすようにする。ここでは、ロボットアーム110Aの先端に設けた吸着バットの吸着面で食器180の糸底を吸着して取り上げる例を説明する。二次元カメラの光軸方向に沿ってロボットアーム110Aが食器180にアプローチするピックアップ軌道として、カメラ座標系原点と食器180を結ぶ直線に沿ってロボットアーム110Aを動かす。
【0063】
直線軌道をロボットアーム110Aの吸着面の姿勢を維持したまま、移動する場合、位置姿勢によってはロボットアーム110Aの軸が回りきってしまったり、特異姿勢を経由してしまったりすることで計画した軌跡に沿ってロボットアーム110Aを制御することが不可能となることを避ける必要がある。このために、食器180の姿勢と位置に応じた取り上げ目標終点姿勢までの経由点において可操作性を一定値以上確保できることと、ロボットアーム110A各軸の回転量が少ないような、食器法線周りの振り角と吸着パッドの使い分けを行う。すなわち、ロボットアーム110Aには、向きが異なる(例えば90度向きが異なる)2つの吸着パッドが設けることができる。
【0064】
吸着パッドを真空引きしている真空経路内に設けられた吸着センサが反応したら取り上げ成功としてロボットアーム110Aによって食器180を取り上げ、続いて、食器180を所定の収納コンテナ等に収納する。奥行きの距離が不定である場合でも、食器180を取り上げることができるように、食器180の載置面の高さまはロボットアーム110Aの吸着パッドを食器180の糸底に近づけていく。もしも食器180の載置面の高さまでロボットアーム110Aの吸着パッドが到達したら取り上げ失敗と判断し、ロボットアーム110Aを待機位置まで引き上げる。なお、食器180が載置されている載置面の高さは予めロボット制御部110aが把握しているパラメータである。これにより、画像処理部は、二次元画像を用い、モデル画像を登録していない状態(モデルレス)でも、食器180を位置及び姿勢を推定して、当該食器180を取り上げることができる。
【0065】
この画像認識装置を食器洗浄部150により洗浄された食器180の洗浄用ラック142からの取り上げに適用すれば、食器洗浄部150により洗浄された食器180を、食器洗浄部150から、あるいは、食器洗浄部150に投入された洗浄用ラック142から食器180の糸底の中心に対し、ロボットアーム110Aに設けた吸引パッドを接触させ、食器180を取り上げ、食器180の種類ごとに食器180を収容コンテナに収容することが可能である。
【0066】
本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システム100では、食器情報取得部172がステレオカメラ160によって取得された食器180の画像情報に基づいて、トレー配置部120に配置されたトレー182上の食器180をロボットアーム110によって取り上げるためにハンド112が把持する食器180のハンド把持部分180aを算出する。食器搬送制御部171は、食器180の画像情報に基づいて、ハンド把持部分180aを把持してトレー配置部120から食器180を取り上げると共に、取り上げた食器180を洗浄用ラック142に収容するようにロボットアーム110を制御する。このため、本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システム100では、ロボットアーム110によって食器180の底面以外の部分を把持することによって食器180を取り上げることができると共に、ロボットアーム110によって取り上げた食器180を洗浄用ラック142に自動で収容することができる。
【0067】
また、本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システム100では、ステレオカメラ160が、3次元点群による食器180の3次元形状の情報を取得可能であるため、この3次元形状の情報を利用して、食器情報取得部172が食器180の縁部の高さの情報を考慮したハンド把持部分180aを算出することが可能である。食器搬送制御部171からの制御指令により、ロボット制御部110aはロボットアーム110を制御し、食器180の縁部を把持して食器180を取り上げることができる。
【0068】
また、本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システム100では、トレー配置部120が、使用済みの食器180が載置された複数のトレー182が受け入れられる受入用トレー配置部121と、受入用トレー配置部121からロボットアーム110によって食器180が取り上げられる位置に1つのトレー182が移送配置される食器取上用トレー配置部122と、を有し、ステレオカメラ160が、食器取上用トレー配置部122に配置されたトレー182上の食器180の画像情報を取得し、食器情報取得部172が、食器取上用トレー配置部122に配置されたトレー182上の食器180の画像情報に基づいて、ハンド把持部分180aを算出するため、ロボットアーム110によって取り上げる食器180が載置された1つのトレー182をステレオカメラ160による撮像領域内に確実に収めることができる。
【0069】
また、本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄システム100では、ステレオカメラ160が、ラック配置部140に配置された洗浄用ラック142の収容部内の画像情報を取得し、食器情報取得部172が、ステレオカメラ160によって取得された洗浄用ラック142の収容部内の画像情報に基づいて、上述の訓練済みAIを用いて洗浄用ラック142内の食器180を画像認識し、上述の第1出力を得る。食器180の大きさについては、ラックの大きさとの比率を用いて第1出力からの比例演算により算出することにより、洗浄用ラック142の空スペースP1、P2を算出する。算出された空スペースP1、P2の情報と、ロボットアーム110によって取り上げた食器180の情報(トレー182上で撮影された画像から前述の画像認識により、第1出力及び第2出力の情報が得られている。)とから洗浄用ラック142への食器180の収容位置を算出し、算出された食器180の収容位置にロボットアーム110によって食器180を収容するため、洗浄用ラック142に収容効率よく食器180を収容することができる。
【0070】
本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄方法では、使用済みの食器180が載置されたトレー182をトレー配置部120に配置するトレー配置工程と、ロボットアーム110によって取り上げた食器180を洗浄のために収容する洗浄用ラック142を配置するラック配置工程と、トレー配置部120に配置されたトレー182上の食器180の画像情報を取得する食器情報取得工程と、食器情報取得工程によって取得された食器180の画像情報に基づいて、トレー配置部120に配置されたトレー182上の食器180をロボットアーム110によって取り上げるためにハンド112が把持する食器180のハンド把持部分180aを算出するハンド把持部分算出工程と、ロボットアーム110によってハンド把持部分180aを把持してトレー配置部120から食器180を取り上げると共に、取り上げた食器180を洗浄用ラック142に収容する食器搬送工程と、を含むため、ロボットアーム110によって食器180の底面以外の部分を把持することによって食器180を取り上げることができると共に、ロボットアーム110によって取り上げた食器180を洗浄用ラック142に自動で収容することができる。
【0071】
本発明の実施形態1に係る食器自動洗浄プログラムでは、上記の食器自動洗浄方法における各工程をコンピュータ部により実行可能にしているため、ロボットアーム110によって食器180の底面以外の部分を把持することによって食器180を取り上げることができると共に、ロボットアーム110によって取り上げた食器180を洗浄用ラック142に自動で収容する制御プログラムをコンピュータ部により実行させることができる。
【0072】
本発明の実施形態1に係る記憶媒体では、上記の食器自動洗浄プログラムが記憶されているため、当該記憶媒体に記憶された食器自動洗浄プログラムをコンピュータ部により実行させることができる。
【0073】
[実施形態2]
本発明の実施形態2に係る食器自動洗浄システム200について
図7を用いて説明する。
図7は、本発明の実施形態2に係る食器自動洗浄システム200の全体構成を示すブロック図である。
【0074】
この実施形態2に係る食器自動洗浄システム200は、ステレオカメラ260を複数設けている点で、実施形態1の食器自動洗浄システム100と異なる。
なお、上述した実施形態1の食器自動洗浄システム100と同一構成部分について対応する200番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。また、
図7に示されていない部分については、実施形態1と同一の符号を付す。
【0075】
食器自動洗浄システム200は、食器取上用トレー配置部222に配置されたトレー182に載置された使用済みの食器180の2次元画像情報あるいは3次元画像情報を取得するステレオカメラ260が天井に固定されている。食器自動洗浄システム200は、ロボットアーム210のハンド212に設けられたステレオカメラ260が食器取上用トレー配置部222に配置されたトレー182を向いておらず、食器180の画像情報を取得できない場合であっても、天井に固定されたステレオカメラ260によって食器180の画像情報を取得することができる。
【0076】
このため、ハンド112に固定されたステレオカメラ260がロボットアーム210の動きに伴って食器取上用トレー配置部222に配置されたトレー182とは異なる方向に向けられている場合であっても、天井に固定されたステレオカメラ260によって食器取上用トレー配置部222に配置されたトレー182上の食器180の画像情報を継続的に取得することができる。従って、本発明の実施形態2に係る食器自動洗浄システム200は、実施形態1に係る食器自動洗浄システム100と同様の効果を奏すると共に、食器搬送制御部271によるハンド把持部分180aの算出速度をロボットアーム210の動きによらずに継続的に実行することができ、結果的に、ロボットアーム210をより高速化することが可能になる。
【0077】
また、ステレオカメラ260としては、受入用トレー配置部221に配置されたトレー182上の食器180の画像情報を取得するものをさらに設けてもよい。このステレオカメラ260によって取得された食器180の画像情報を取得することによって、食器取上用トレー配置部222に配置されるトレー182上の食器180の画像情報を予め取得することが可能となり、食器搬送制御部271によるハンド把持部分180aの算出速度を上げることができる。また、より収容効率を高めて洗浄用ラック142に食器180を収容するため、食器取上用トレー配置部222に配置されるトレー182上の食器180の画像情報だけでなく、次に食器取上用トレー配置部222に配置されるトレー182上の食器180の画像情報も合わせて、食器搬送制御部271によって洗浄用ラック142への食器180の収容位置を算出するようにしてもよい。
【0078】
カメラで撮影された画像には、レンズと被写体との距離、倍率、カメラの角度等に応じた画像の歪みが発生することがある。複数のカメラによってそれぞれ算出された食器位置の平均値を用いることにより、この画像の歪みを補償することができる。
【0079】
なお、本発明の実施形態1,2に係る食器自動洗浄システム100,200では、ロボットアーム110,210が食器180を取り上げる場合、ハンド112,212によって食器180を把持するものを例示したが、ハンドに設けた吸着部によって食器180を吸着して取り上げるようにしてもよい。
【0080】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の技術思想を具体化するための食器自動洗浄システムを例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、その他の実施形態のものにも等しく適用し得るものであり、また、これらの実施形態の一部を省略、追加、変更することや、各実施形態の態様を組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
100,200 ・・・食器自動洗浄システム
101,201 ・・・本部サーバ
102,202 ・・・データベース
103,203 ・・・情報ネットワーク
110,210 ・・・ロボットアーム
110a,210a ・・・ロボット制御部
111 ・・・アーム
112 ・・・ハンド
113 ・・・把持片
113a ・・・把持面
120,220 ・・・トレー配置部
121,221 ・・・受入用トレー配置部
121a ・・・トレー載置台
122,222 ・・・食器取上用トレー配置部
122a ・・・トレー載置テーブル
122b,222b ・・・昇降駆動部
123,223 ・・・ガイド部材
130,230 ・・・予洗い部
130a ・・・流し台
140,240 ・・・ラック配置部
141 ・・・昇降機構
141a,241a ・・・昇降駆動部
142 ・・・洗浄用ラック
143 ・・・ラック送出機構
143a ・・・駆動部
150,250 ・・・食器洗浄部
150a,250a ・・・食洗制御部
160,260 ・・・ステレオカメラ(食器情報取得部)
170,270 ・・・制御装置
171,271 ・・・食器搬送制御部
172,272 ・・・食器情報取得部
180 ・・・食器
180a ・・・ハンド把持部分
182 ・・・トレー