(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033119
(43)【公開日】2022-02-28
(54)【発明の名称】接着体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/16 20060101AFI20220218BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220218BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
B32B27/16
B32B27/00 C
C09J201/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193354
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2017064730の分割
【原出願日】2017-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】595015890
【氏名又は名称】株式会社朝日FR研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 延由
(72)【発明者】
【氏名】赤池 尚思
(72)【発明者】
【氏名】三原 将
(57)【要約】
【課題】接着し難い樹脂製やゴム製の固体の接着基材表面を処理して異種で固体の被接着基材と接着して簡易に一体化しており汎用性の高い接着体を提供する。
【解決手段】接着体は、フッ素樹脂、フッ素ゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合ゴム、イソプレンゴム、及び天然ゴムから選ばれる何れかで形成された接着基材の表面の活性基を介してグラフト共重合された分子接着剤の分子と、高分子樹脂、天然ゴム、合成ゴム、架橋ゴム、金属、ガラス、及びセラミックスから選ばれる何れかで形成された被接着基材の表面に有する官能性基とによる共有結合によって、前記接着基材と前記被接着基材とが、接着して一体化している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂、フッ素ゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合ゴム、イソプレンゴム、及び天然ゴムから選ばれる何れかで形成され分子接着剤が付された固形の接着基材の電子線照射処理表面又はγ線照射処理表面の活性基を介してグラフト共重合された前記分子接着剤の分子と、高分子樹脂、天然ゴム、合成ゴム、架橋ゴム、金属、ガラス、及びセラミックスから選ばれる何れかで形成された固形の被接着基材の表面に有する官能性基とによる共有結合によって、前記接着基材と前記被接着基材とが、接着して一体化していることを特徴とする接着体。
【請求項2】
前記活性基が、前記接着基材の表面に有し及び/又は生じている遊離基であることを特徴とする請求項1に記載の接着体。
【請求項3】
前記活性基を、前記電子線照射処理表面、及び前記γ線照射処理表面から選ばれる何れかの前記接着基材の表面に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の接着体。
【請求項4】
前記官能性基が、前記被接着基材の表面に有し及び/又は生じている不飽和基、ヒドロシリル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アジド基、及びアミノ基から選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の接着体。
【請求項5】
前記官能性基を、前記被接着基材のコロナ処理表面、紫外線処理表面、エキシマ処理表面、イトロ処理表面、及び分子接着剤処理表面から選ばれる少なくとも何れかに有することを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の接着体。
【請求項6】
前記接着基材が、フッ化ビニリデン重合体、四フッ化エチレン-プロピレン共重合体、及び四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体から選ばれる何れかである前記フッ素樹脂又は前記フッ素ゴムで形成されたフッ素含有接着基材であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の接着体。
【請求項7】
前記分子接着剤が、シラノール化合物、アルミネート化合物、チタネート化合物、トリアジン環含有化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミン化合物から選ばれる何れかであることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の接着体。
【請求項8】
前記接着基材が、可撓性のフィルム状、非可撓性の板状、又は固形の立体状であり、被接着基材が、可撓性のフィルム状、非可撓性の板状、又は固形の立体状であることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の接着体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着し難い樹脂製やゴム製の接着基材表面を処理して異種の被接着基材と接着して一体化している接着体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂やフッ素ゴムで形成されたフッ素含有高分子材料、シリコーン樹脂やシリコーンゴムで形成されたシリコーン材料、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体のようなゴムで形成された接着基材と、高分子樹脂、天然ゴム、合成ゴム、架橋ゴム、金属、ガラス、又はセラミックスのような異種の材料で形成された被接着基材とは、物理化学的性質が大きく異なったり何れも粘着性や接着性を有しなかったりするため、単に接触させただけでは、接着や粘着ができない。流動性の硬化性接着剤を使用して接着した場合でも、その接着力は分子間力によるため非常に弱い。さらに、基材の材料が異なれば適切な接着剤も変わるため、最適な接着剤の選定は、試行錯誤により行わなければならず、大変な手間がかかっていた。
【0003】
中でも、フッ素含有高分子材料で形成された固体基材は、それが有する非常に低い誘電率、低い表面張力、優れた化学安定性、低い溶媒吸収性・水分吸収性、及び優れた熱安定性のために、耐薬品性や耐熱性が求められる箇所でのパッキン等として、単独で汎用されているが、非常に低い表面張力のために、他の部材との接着・複合化・一体化が極めて困難である。
【0004】
表面を活性化して接着、印刷、塗装を容易にした固体基材の表面改質方法として、特許文献1に、シラン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含み沸点が10~100℃である改質剤化合物を含む燃料ガスの火炎を、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等のゴム類である固体物質の表面に対して、全面または部分的に吹き付け処理することが、開示されている。しかし、単なる接着、印刷、塗装では表面の分子間力に依存しているに過ぎず、固体基材と他の基材との十分な接着強度を示せないばかりか、固体基材の表面を火炎処理で劣化させたり精密加工ができなかったりするという問題がある。
【0005】
そこで、加硫接着による複合化が主に行われている。例えば、特許文献2に、フッ素ゴムとトリアジンチオールの第4級アンモニウム塩誘導体とからなる加硫性ゴム組成物と、フッ素ゴム以外の加硫性ゴム組成物とを加硫接着したゴム積層体が開示されている。しかし、耐熱性が低い部材とは接着できないこと、寸法ばらつきが大きいこと、表面の微細構造を侵食してしまうという欠点がある。
【0006】
また、特許文献3に、フッ素樹脂にシリコーン樹脂が接着された樹脂複合体を製造する方法であって、フッ素樹脂のシリコーン樹脂との接着面に表面処理を施し、この接着面に上記シリコーン樹脂として、反応性ラジカルを発生する化合物又は過酸化物を添加した付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物又は縮合反応硬化型シリコーン樹脂組成物を積層して架橋接着する樹脂複合体の製造方法が、開示されている。しかし、組成物を積層して架橋するものであるから、固体同士を接着するものではなく、汎用性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-35921号公報
【特許文献2】特開平05-320453号公報
【特許文献3】特開2005-66914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、接着し難い樹脂製やゴム製の固体の接着基材表面を処理して異種で固体の被接着基材と接着して簡易に一体化しており汎用性の高い接着体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る接着体は、フッ素樹脂、フッ素ゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合ゴム、イソプレンゴム及び天然ゴムから選ばれる何れかで形成された接着基材の表面の活性基を介してグラフト共重合された分子接着剤の分子と、高分子樹脂、天然ゴム、合成ゴム、架橋ゴム、金属、ガラス、及びセラミックスから選ばれる何れかで形成された固形の被接着基材の表面に有する官能性基とによる共有結合によって、前記接着基材と前記被接着基材とが、接着して一体化していることを特徴とするものである。
具体的には、本発明は、フッ素樹脂、フッ素ゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合ゴム、イソプレンゴム、及び天然ゴムから選ばれる何れかで形成され分子接着剤が付された固形の接着基材の電子線照射処理表面又はγ線照射処理表面の活性基を介してグラフト共重合された前記分子接着剤の分子と、高分子樹脂、天然ゴム、合成ゴム、架橋ゴム、金属、ガラス、及びセラミックスから選ばれる何れかで形成された固形の被接着基材の表面に有する官能性基とによる共有結合によって、前記接着基材と前記被接着基材とが、接着して一体化していることを特徴とする接着体である。
【0010】
この接着体は、前記活性基が、前記接着基材の表面に有し及び/又は生じている遊離基であるというものであってもよい。
【0011】
この接着体は、前記活性基を、前記電子線照射処理表面、及び前記γ線照射処理表面から選ばれる何れかの前記接着基材の表面に有するものであってもよい。
【0012】
この接着体は、前記官能性基が、前記被接着基材の表面に有し及び/又は生じている不飽和基、ヒドロシリル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アジド基、及びアミノ基から選ばれる少なくとも何れかとするというものであってもよい。
【0013】
この接着体は、前記官能性基を、前記被接着基材のコロナ処理表面、紫外線処理表面、エキシマ処理表面、イトロ処理表面、及び分子接着剤処理表面から選ばれる少なくとも何れかに有するものであってもよい。
【0014】
この接着体は、前記接着基材が、例えば、フッ化ビニリデン重合体、四フッ化エチレン-プロピレン共重合体、及び四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体から選ばれる何れかである前記フッ素樹脂又は前記フッ素ゴムで形成されたフッ素含有接着基材とするというものである。
【0015】
この接着体は、前記分子接着剤が、例えば、シラノール化合物、アルミネート化合物、チタネート化合物、トリアジン環含有化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミン化合物から選ばれる何れかとするというものである。
【0016】
この接着体は、前記接着基材が、可撓性のフィルム状、非可撓性の板状、又は固形の立体状であり、被接着基材が、可撓性のフィルム状、非可撓性の板状、又は固形の立体状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の接着体は、フッ素樹脂、フッ素ゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合ゴム、イソプレンゴム、及び天然ゴムから選ばれる何れかで形成された接着基材と、高分子樹脂、天然ゴム、合成ゴム、架橋ゴム、金属、ガラス、及びセラミックスから選ばれる何れかで被接着基材とを、グラフト共重合された分子接着剤の分子を介した共有結合である分子接着により、接着している。それによって、硬化性接着剤を用いなくとも、これら接着基材と、同種又は異種の被接着基材とが、夫々の素材や物性等に依らず、また表面の凹凸の程度に依らず、直接的な共有結合によって強固に架橋して接着されたものである。
【0018】
この接着体は、共有結合により、流動性の硬化性接着剤の分子間力による接着よりも、遥かに強く確りと、両基材を接着している。
【0019】
この接着体は、接着基材が接着し難い樹脂又はゴム製、とりわけ表面張力が小さなフッ素樹脂及びフッ素ゴムのようなフッ素含有高分子材料、又はシリコーン樹脂、シリコーンゴムのようなシリコーン製高分子材料であっても、若しくは架橋接着し難いエチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム、イソブチレン-イソプレン共重合ゴム、イソプレンゴム、天然ゴム等であっても、被接着基材と、分子接着剤の分子を介した共有結合によって強固に架橋した接着が可能である。
【0020】
この接着体は、予め形成された接着基材及び被接着基材が、接着基材の表面の活性基と被接着基材の表面に有する官能性基との間で、分子接着剤の分子を介した共有結合によって接着している。
【0021】
接着体は、共有結合である化学結合により、接着基材と、同種若しくは異種の天然ゴム、合成ゴム、樹脂、金属、半金属、合金、ガラス、及びセラミックスから選ばれる被接着基材とを共有結合によって強固に接着しているから、撓みや過酷な温度変化によっても剥離を生じない。また、接着体は、流動性の硬化性接着剤に依らずに、接着基材と被接着基材との間で、直接結合を介するだけで接着しているので、その接着面でそれらの混合物がはみ出たりそれの硬化物層で剥離したりする恐れがない。しかも接着基材と被接着基材とが、平面であっても凹凸を有する複雑な立体形状であっても、表面の微細構造を侵食することなく、均等かつ強固に接着されている。
【0022】
そのため接着体は、接着界面が直接的な共有結合だけで接着したものであるから、接着界面での熱劣化が小さく耐熱性に優れ、とりわけ表面張力が小さなフッ素樹脂及びフッ素ゴムのようなフッ素含有高分子材料であってさえ、引張られても剥がれたり裂けたりしない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の接着体の好ましい実施の一形態は、フッ素ゴム製の接着基材の表面の活性基を介してグラフト共重合された分子接着剤の分子と、金属製の被接着基材の表面に有する官能性基とによる共有結合によって、接着基材と被接着基材とが、接着して一体化しているというものである。
【0025】
接着基材と被接着基材とは、予め形成されたもので、例えば可撓性のフィルム状である。
【0026】
この接着体は、分子接着剤が含有された組成物で接着基材に塗布、塗工、噴霧、又は浸漬し電子線処理した接着基材の表面に、又は接着基材に電子線処理してから分子接着剤が含有された組成物で塗布、塗工、噴霧、又は浸漬した接着基材の表面に、被接着基材の接着すべき面が接触されることで、フッ素ゴム製の接着基材の表面の活性基にグラフト共重合された分子接着剤の分子と金属製の被接着基材の表面に有する官能性基との共有結合によって、接着基材と被接着基材とが、接着して一体化している。
【0027】
分子接着剤が含有された組成物で接着基材に塗布、塗工、噴霧、又は浸漬し電子線処理した接着基材の表面に、被接着基材を接触させ、接着基材と被接着基材とが、接着して一体化していることが好ましい。接着基材の表面に分子接着剤が付されてから電子線処理すると、電子線処理によって生じた不安定な活性基が直ぐに分子接着剤の分子と反応しグラフト共重合するから、反応効率や生産効率が高い。
【0028】
接着基材のフッ素ゴムは化学的に極めて安定であるから、その接着基材の表面は、通常コロナ放電やエキシマ処理を施してもエネルギーが足りず活性化できない。しかし、フッ素ゴムに電子線処理を施すと、表面が酸化されて水酸基を生じたり、フッ素-炭素結合が開裂しフッ化水素が脱離したりフッ素ラジカルが脱離し遊離基を生じたりするような推定反応機構により、接着基材の表面に、活性基を生じる。この活性基に分子接着剤の分子が反応して共有結合する。接着基材に化学的に結合している分子接着剤の分子は、被接着基材の表面に有する官能性基と反応して共有結合する。これによって、接着基材と被接着基材とが、分子接着剤の分子を介して、共有結合し、接着されることとなる。このような接着基材への分子接着剤の分子の化学結合は、グラフト共重合となるのであるから、接着基材の各活性基の一つの基に対して結合した分子接着剤の一分子が、被接着基材の官能性基の一つの基に反応して、共有結合によって、接着基材と被接着基材とが、接着して一体化する。
【0029】
接着体は、分子接着剤の分子が、あたかも櫛のように接着基材の表面に生成し、分子接着剤の一分子で一共有結合を形成しつつ分子接着剤の多数の分子で単分子膜層を形成して、接着基材と被接着基材とが、接着して一体化したものである。
【0030】
グラフト共重合させるのに、電子線処理を施す例で説明したが、接着基材の表面を活性化し分子接着剤の分子を結合し易くするものであれば、γ線処理であってもよく、これらの何れかの複数の処理を施してもよい。
【0031】
そのようなグラフト共重合した接着基材の表面が、グラフト共重合の前及び/又は後で、コロナ処理、紫外線処理、エキシマ処理、及び/又はイトロ処理されていてもよい。
【0032】
被接着基材の官能性基は、被接着基材の表面にコロナ処理、紫外線処理、エキシマ処理、又はイトロ処理を施すことによって新たに生じ又は増幅したものであってもよく、被接着基材の原料成分に由来し表面に元々露出しているものであってもよい。
【0033】
接着基材がフッ素ゴム製で、被接着基材が金属製である例を示したが、接着基材が、フッ化ビニリデン重合体、四フッ化エチレン-プロピレン共重合体、及び四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体のようなフッ素樹脂又はフッ素ゴム;モノオルガノシロキシ単位であるT単位、前記シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を含み、それらの単位を有しているMQ樹脂/ゴム、MDQ樹脂/ゴム、MTQ樹脂/ゴム、MDTQ樹脂/ゴム、TD樹脂/ゴム、TQ樹脂/ゴム、及びTDQ樹脂/ゴムで例示されもので、例えばポリジメチルシリコーン、ポリジフェニルシリコーン、その変成シリコーンのようなシリコーン樹脂製やシリコーンゴム製、より具体的には、Pt触媒存在下で合成したビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万~90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万~20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万~10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万~5万)、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万~10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万~1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有ポリシロキサンと、H末端ポリシロキサン(分子量:0.05万~10万)、メチルHシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルHシロキサン、ポリエチルHシロキサン、H末端ポリフェニル(ジメチルHシロキシ)シロキサン、メチルHシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルHシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーのようなH基含有ポリシロキサンを含有する組成物の硬化物製;エチレン-プロピレン-ジエンゴム製:エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム(EPDM)製;イソブチレン-イソプレン共重合ゴム製;イソプレンゴム製;天然ゴム製;のようなものを挙げることができる。このエチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム(EPDM)製は、架橋剤のみ配合されたものが効果的である。
【0034】
被接着基材が、天然ゴム、合成ゴム、架橋ゴム、高分子樹脂、金属、ガラス、及びセラミックスから選ばれる何れかであってもよい。
【0035】
被接着基材の素材の天然ゴム、合成ゴム、架橋ゴム、高分子樹脂として、
付加架橋型シリコーン;ビニルメチルシリコーン(VMQ)、メチルフェニルシリコーン(PVMQ)、フルオロメチルシリコーン(FVMQ)、及びジメチルシリコーン(MQ)のようなシリコーン、パーオキサイド架橋型シリコーン、縮合架橋型シリコーン、紫外線架橋型シリコーン、電子線架橋型シリコーンゴムで例示されるシリコーン、これらのシリコーンとオレフィンとの共ブレンド物のようなシリコーン系高分子樹脂;
ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、s‐ポリスチレン、-ブタジエン-スチレン共重合体;ポリアミド;ポリメタクリアクリロニトリルル酸メチル;ポリフェニレンスルフィド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート;ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、およびシリコーン(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、二酢酸セルロース、表面ケン化酢酸ビニル樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、i-ポリプロピレン、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、ABS樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリシアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・プロピレン共重合体、1,4‐トランスポリブタジエン、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・フォルマリン樹脂、レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グリプタル樹脂、変性グリプタル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリジメチルフェニレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイドまたはポリジメチルフェニレンオキサイドとトリアリルイソシアヌルブレンド物、(ポリフェニレンオキサイドまたはポリジメチルフェニレンオキサイド、トリアリルイソシアヌル、パーオキサイド)ブレンド物、ポリキシレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、液晶樹脂、ケブラー繊維、炭素繊維、天然ゴム、ブタジエンゴム、1,4-シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、イソブチレン-イソプレンゴム、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、水素添加スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、水素添加アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレンオキサイド-エピクロロヒドリン共重合体ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、塩素化アクリルゴム、臭素化アクリルゴム、フッ化ビニリデン系やテトラフルオロエチレン-プロピレン系やテトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテル系のようなフッ素ゴム、エピクロルヒドリンとその共重合ゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンなどの単独重合体ゴム及びこれらの二元及び三元共重合体ゴム、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、エチレンアクリルゴム、エポキシゴム、ウレタンゴム;
が挙げられる。
【0036】
被接着基材の素材の金属・合金として、金属分類上は通常の金属、機能性金属、アモロファス金属、繊維強化金属ブロック、形状記憶合金、超弾性合金などからなり、金属形状分類上は板、シート、フィルム、角棒、丸棒、球、半球、繊維、網、網線布、フィルム、シート及びこれらの複雑回路形状、打抜き及び切削加工成形品を含み、周期律表上はベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、ネオジムの何れかであり、合金組成上は鉄合金(鋼(スチール)、炭素鋼、鋳鉄)、銅合金(りん青銅、黄銅、キュプロニッケル、ベリリウム銅、チタン銅)、アルミニウム合金(銅、マンガン、珪素、マグネシウム、亜鉛、ニッケル合金など)、マグネシウム合金(Mg/Zn合金、Mg/Ca合金など)、亜鉛合金、錫及び錫合金、ニッケル合金、金合金、銀合金、白金合金、パラジウム合金、鉛合金、チタン合金(α型、β型及びα+β型合金)、カドミウム、ジルコニウム合金、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金、マンガン合金、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、オースチナイト系ステンレス、析出強化型ステンレス、ニッケル-チタン合金、鉄-マンガン-チタン合金、超弾性合金(ニッケル-チタン合金)などの材料が、挙げられる。
【0037】
被接着基材の素材の半金属として、シリコン板が挙げられる。
【0038】
被接着基材の素材のガラスとして、石英、硼珪酸ガラス、無アルカリガラスが挙げられる。
【0039】
被接着基材の素材のセラミックスとして、陶磁器、ガラス、セメント、石膏及びほうろうなど高温で固めたものであり、組成上は元素系(ダイヤモンド、C)、酸化物系(アルミナ、Al2O3)、ジルコニア系、水酸化物系(ハイドロキシアパタイト)、炭化物系(炭化ケイ素、SiC)、炭酸塩系、窒化物系(窒化ケイ素)(7ハロゲン化物系(蛍石)、リン酸塩系(アパタイト)も含み、具体的にはチタン酸バリウム、Bi2Sr2Ca2Cu3O10、高温超伝導セラミックス、窒化ホウ素、フェライト、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ステアタイト(MgOSiO2)、YBa2Cu3O7-δ、高温超伝導セラミックス、酸化亜鉛、チッ化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、チッ化ケイ素(Si3N4)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、サイアロン(Si3N4・Al2O3)、マシナブルセラミックス、ジルコン(ZrO2・SiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、フェライト(M2O・Fe2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)などが挙げられ、Mg,Ti,Be,Ca,Li,Al,Mn,Zn,Cr,Ga,Fe,Cd,In,Ta,Co,Ni,Sn,Sb,Bi,Pb,Cu,及びAgなど金属材料の焼結体、これらの金属材料の二元合金の酸化物の焼結体、三元合金の酸化物の焼結体、多元合金の酸化物の焼結体であってもよく、ブロック、板、シート、フィルム、角棒、丸棒、球、半球、繊維、網などの形状や、繊維強化セラミックス及び炭素繊維強化炭素などの複合材料も含む。
【0040】
接着基材と被接着基材との双方が可撓性のフィルム状である例を示したが、接着基材が、可撓性のフィルム状、非可撓性の板状、又は固形で三次元構造の立体状であり、被接着基材が、可撓性のフィルム状、非可撓性の板状、又は固形で三次元構造の立体状であってもよい。
【0041】
分子接着剤として、シラノール化合物、アルミネート化合物、チタネート化合物、トリアジン環含有化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミン化合物などが挙げられる。
【0042】
シラノール化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0043】
アルミネート化合物としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0044】
チタネート化合物としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2-2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートなどが挙げられる。
【0045】
トリアジン環含有化合物としては、トリエトキシシリルプロピルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(TES)、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基含有化合物;トリエトキシシリルプロピルアミノ基のようなトリアルコキシシリルアルキルアミノ基とメルカプト基又はアジド基とを有するトリアジン化合物、下記化学式(I)
【化1】
(式(I)中、Wは、スペーサ基、例えば置換基を有していてもよいアルキレン基、アミノアルキレン基であってもよく、直接結合であってもよい。Yは、水酸基又は加水分解や脱離により水酸基を生成する反応性官能基、例えばトリアルコキシアルキル基である。-Zは、-N
3又は-NR
1R
2である(但し、R
1,R
2は同一又は異なりH又はアルキル基、-R
3Si(R
4)
m(OR
5)
3-m[R
3,R
4はアルキル基、R
5はH又はアルキル基、mは0~2]。なお、アルキレン基、アルコキシ、アルキル基は、置換基を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の炭化水素基である。)で表わされるトリアジン化合物、例えば2,6-ジアジド-4-{3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ}-1,3,5-トリアジン;
などが挙げられる。
【0046】
チオール化合物としては、6-アルコキシシリルプロピルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム、6-ビス(3-アルコキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノナトリウム、6-N-シクロヘキシル-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、2,4-ビス(2-アミノエチルアミノ)-6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジヒドラジノ-6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン、6-アルコキシシリルプロピルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、5-(ビシクロヘプチニル)トリエトキシシラン、(3-シクロペンタジダイエンプロピル)トリエトキシシランなどが挙げられる。
【0047】
エポキシ化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
アミノ化合物としては、6-アルコキシシリルプロピルアミン、6-N-シクロヘキシル-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピルアミン)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、m-アミノフェニルトリエトキシシラン、11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、(3-シクロペンタジダイエンプロピル)トリエトキシシランなどが挙げられる。
【0049】
接着基材の接着側表面上に施す電子線処理として、例えばスキャン方式、エリアビーム方式など、どの方式で処理しても良く、加速電圧は300~5MeVにて総吸収線量20~300kGyの条件にて行われる。
【0050】
接着基材の接着側表面上に施すγ線処理として、たとえばコバルト線源やイリジウム線源、セシウム線源などを用いても良く、線源強度1T~200PBqにて総吸収線量20~300kGyの条件にて行われる。
【0051】
接着基材の接着側表面上、又は被接着基材の接着側表面上に施すコロナ放電処理としては、例えば大気圧コロナ表面改質装置(信光電気計測株式会社製、製品名:コロナマスター)を用いて、例えば、電源:AC100V、出力電圧:0~20kV、発振周波数:0~40kHzで0.1~60秒、温度0~60℃の条件で行われる。このようなコロナ放電処理は、水、アルコール類、アセトン類、エステル類等で濡れている状態で、行われてもよい。
【0052】
接着基材の接着側表面上、又は被接着基材の接着側表面上に施す大気圧プラズマ処理としては、例えば、大気圧プラズマ発生装置(パナソニック株式会社製、製品名:Aiplasma)を用いて、例えば、プラズマ処理速度10~100mm/s、電源:200又は220V AC(30A)、圧縮エア:0.5MPa(1NL/min)、10kHz/300W~5GHz、電力:100W~400W、照射時間:0.1~60秒の条件で行われる。
【0053】
接着基材の接着側表面上、又は被接着基材の接着側表面上に施す紫外線照射処理(UV照射によりオゾンを生成させるような一般的なUV処理やエキシマUV処理)としては、エキシマランプ光源(浜松ホトニクス株式会社製、製品名:L11751-01)を用いて、例えば、積算光量:50~1500mJ/cm2で行われる。
【0054】
本発明に係る接着体の製造方法は、上述した固形の接着基材の表面に、分子接着剤を付し、電子線処理、及びγ線処理から選ばれる少なくとも何れかを施して、その表面に有し及び/又は生じた活性基に前記分子接着剤をグラフト共重合させる処理を1回又は複数回行うグラフト共重合工程と、上述した固形の被接着基材の表面に官能性基を有し及び/又はコロナ処理、紫外線処理、エキシマ処理、イトロ処理、及び分子接着剤処理から選ばれる少なくとも何れかで生じさせる工程と、グラフト共重合させた接着基材の表面に、被接着基材の接着すべき表面を接触させる接触工程と、接着基材と被接着基材とを、静置、荷重、加熱、及び減圧から選ばれる少なくとも何れかの条件下で、接着基材の表面にグラフト共重合された分子接着剤の分子と、被接着基材の表面に有する官能性基とによる共有結合によって、接着基材と被接着基材とを、接着させて一体化させる接着工程とを有している。
具体的には、以下のような手順で行われる。先ず、接着基材の表面に、電子線処理、及び/又はγ線処理の処理を施す手順と、その表面に有し及び/又は生じた活性基に分子接着剤をグラフト共重合させる手順とを、行う(グラフト共重合工程)。この工程は、処理を施す手順、グラフト共重合させる手順とを、複数回行ってもよい。
【0055】
次いで、グラフト共重合させた接着基材の表面に、被接着基材の接着すべき表面を接触させる(接触工程)。
【0056】
その後、接着基材と被接着基材とを、静置、10~200kgfの荷重、10~100℃の加熱、及び/又は50torr以下、より具体的には50~10torrの減圧条件、又は10torr未満、より具体的には、10torr未満~1×10-3torr、好ましくは10torr未満~1×10-2torrの条件下で、接着基材の表面にグラフト共重合された分子接着剤の分子と、被接着基材の表面に有する官能性基とによる共有結合を形成させ、それによって、接着基材と被接着基材とを、接着させて一体化させる(接着工程)。
この接触工程の前に、グラフト共重合させた接着基材の表面、及び/又は被接着基材の表面に、コロナ処理、紫外線処理、エキシマ処理、及びイトロ処理の何れかの処理を施してもよい。
【実施例0057】
以下、本発明を適用する接着体のサンプルを作製した実施例1~2と、本発明を適用外の接着体のサンプルを作製した比較例1~2について、比較評価を行った。
【0058】
本発明を適用する実施例の接着体の接着サンプルと、本発明を適用外の比較例の接着体の接着サンプルとを、以下のようにして作製し、その物性について評価した。
【0059】
(接着材料の作製)
接着材料としてミラブルタイプの加硫剤内部添加フッ素ゴム(FKM):SFM-70A(スリーエムジャパン株式会社製)とミラブルタイプのエチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM):EPT4045M(三井化学株式会社製)を用いた。
加硫剤内部添加FKMをオープンロールにて熱入れし、これを金型に入れ、170℃で10分間加圧プレスし、接着材料として1mm×150mm×150mmのシート状のFKM成形体を作製した。
EPDM100部に、有機過酸化物架橋剤:パークミルD-40(日油株式会社製、パークミルは登録商標)を11部配合し、オープンロールにて混合し、これを金型に入れ、170℃で10分間加圧プレスし、接着材料として1mm×150mm×150mmのシート状のEPDM成形体を作製した。
【0060】
(接着材料の処理)
大気圧コロナ放電処理機(信光電気計装株式会社製)で、ギャップ長:1.0mm、出力電圧:10kV(表面電圧)、移動速度:4.2m/分、移動回数:3回の条件で、コロナ放電処理を行った。その後、分子接着剤処理として複数ビニル基含有アルコキシシロキサンとビニル基含有アルコキシシロキサンを各0.1wt%希釈したエタノール溶液を塗布し、加熱オーブンにて温度:30℃、時間:10分間加熱した。電子線照射機2MeV、総照射線量20から200kGyで電子線を照射し、グラフトさせた。
その後大気圧コロナ放電処理機(信光電気計装株式会社製)で、ギャップ長:1.0mm、出力電圧:10kV(表面電圧)、移動速度:4.2m/分、移動回数:3回の条件で、コロナ放電処理を行った。その後、分子接着剤処理として複数ビニル基含有アルコキシシロキサンとビニル基含有アルコキシシロキサンを各0.1wt%希釈したエタノール溶液を塗布し、加熱オーブンにて温度:80℃、時間:10分間加熱した。その後、処理表面に同様の条件で大気圧コロナ放電処理を行い、接着材料とした。
【0061】
(被接着基材の処理)
被接着材料としてSUS430:793423(株式会社ニラコ製)を用いた。
30×60mmに切断したSUSを、アルカリ洗浄、アルコール洗浄を行った。その後大気圧コロナ放電処理機(信光電気計装株式会社製)で、ギャップ長:1.0mm、出力電圧:10kV(表面電圧)、移動速度:4.2m/分、移動回数:3回の条件で、コロナ放電処理を行った。その後、分子接着剤処理として複数ビニル基含有アルコキシシロキサンとビニル基含有アルコキシシロキサンを各0.1wt%希釈したエタノール溶液を塗布し、加熱オーブンにて温度:80℃、時間:10分間加熱した。その後、処理表面に同様の条件で大気圧コロナ放電処理機処理を行い、被接着材料とした。
【0062】
(実施例1~2)
上記の処理を行った接着材料と被接着材料の処理表面同士を空気が入らないように貼り合わせた後、加圧加熱プレスにて温度:80℃、時間:15分間、圧力:8.3kgf/cm2にて接着体を作製した。
【0063】
(比較例1)
接着材料の成形体の各々と表面処理を行っていない被接着材料の表面同士を空気が入らないように貼り合わせた後、加圧加熱プレスにて温度:80℃、時間:15分間、圧力:8.3kgf/cm2にて接着体を作製した。
【0064】
(比較例2)
接着材料の成形体の各々を大気圧コロナ放電処理機(信光電気計装株式会社製)で、ギャップ長:1.0mm、出力電圧:10kV(表面電圧)、移動速度:4.2m/分、移動回数:3回の条件で、コロナ放電処理を行った。その後、分子接着剤処理として複数ビニル基含有アルコキシシロキサンとビニル基含有アルコキシシロキサンを各0.1wt%希釈したエタノール溶液を塗布し、加熱オーブンにて温度:80℃、時間:10分間加熱した。その後、処理表面に同様の条件で大気圧コロナ放電処理を行った。その後、表面処理を行った接着材料と被接着材料の処理表面同士を空気が入らないように貼り合わせた後、加圧加熱プレスにて温度:80℃、時間:15分間、圧力:8.3kgf/cm2にて接着体を作製した。
【0065】
作製した接着体をフォースゲージ:ZP-200N(株式会社イマダ社製)にて速度:50mm/秒にて90度剥試験を行い、それぞれ引剥強度を測定し、引剥面での状態を観察した。引剥試験は初期サンプルと沸騰した水に1時間浸漬したサンプルにて実施した。その結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
注)実施例1,比較例1:FKM成形体、実施例2,比較例2:EPDM成形体
【0067】
表1から明らかな通り、比較例1~2では接着しなかった。それに対し、実施例1、2の何れも接着材料であるFKM、EPDMが破壊されたため、強固に接着していることが分かった。さらに、煮沸、アルコール浸漬でもはく離はしていないことから、接着材料と被接着材料が強固に接着していることが分かった。
本発明の接着体は、高い接着強度を有するため、剥離してはならない工業製品や日用品、例えばホース、パッキン、オイルシールや金属との接着物、ダイヤフラム、ガスケット、大型ゴムロール、複写機用ゴムロール、コンベアベルト、補強ベルト、医療用ゴム製品、電気・電子部品用製品、建築用製品、コンピューター製品、自動車製品、バス・トラック製品、飛行機製品など、多くの分野の製品として有用である。