(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033138
(43)【公開日】2022-02-28
(54)【発明の名称】洗浄装置、及び、洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20220218BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
B08B3/02 A
B08B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196134
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2019219362の分割
【原出願日】2019-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】592145268
【氏名又は名称】JR東日本コンサルタンツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】槇 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 勇
(72)【発明者】
【氏名】小池 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】繁野 晃
(57)【要約】
【課題】吐出口や配管の詰まりを抑制することが可能な洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄装置100は、洗浄液を被洗浄物に向けて吐出する吐出口11と、原水から陽イオンを除去することにより陽イオン除去水を生成する陽イオン除去部60と、陽イオン除去水と、カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤と、を混合して得られる洗浄液を吐出口11に供給する洗浄液供給部20と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を被洗浄物に向けて吐出する吐出口と、
原水から陽イオンを除去することにより陽イオン除去水を生成する陽イオン除去部と、
前記陽イオン除去水と、カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤と、を混合して得られる洗浄液を前記吐出口に供給する洗浄液供給部と、
を備える洗浄装置であって、
前記被洗浄物である車両の車輪を検出する磁気センサと、
前記磁気センサによる検出結果に基づき、当該洗浄装置による洗浄が可能な洗浄可能領域に前記車両が到来したことと、当該洗浄可能領域の外に前記車両が移動したこととを判定する判定部と、
を備え、
前記洗浄液供給部は、前記洗浄可能領域の外に前記車両が移動した場合に、一連の洗浄期間の後期での動作モードである終了モードに移行し、
前記終了モードにおいては、前記洗浄液供給部は、前記吐出口に向けた前記洗浄液の供給を停止させ、前記陽イオン除去水を前記吐出口に供給し、
前記洗浄液と前記陽イオン除去水とは互いに共通の前記吐出口に供給される洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄液供給部は、前記終了モードに移行するよりも前の段階では、前記陽イオン除去部に対して、規定の処理許容量を超える前記原水を通水させ、前記終了モードにおいては、前記処理許容量以下の前記原水を通水させる請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄液供給部は、
前記陽イオン除去水と前記薬剤に加えて前記原水を含む前記洗浄液を前記吐出口に供給可能に構成されており、且つ、
前記洗浄液における前記陽イオン除去水と前記原水との混合比率を調節する混合比調節機構を有する請求項1から2のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄液供給部は、
前記薬剤を含む薬液を貯留する薬液タンクと、
前記薬液と前記陽イオン除去水とを混合して得られる前記洗浄液における前記薬液の濃度を調節する濃度調節機構と、
を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記濃度調節機構は、前記陽イオン除去水の供給量を調節する陽イオン除去水量調節機構と、前記薬液の供給量を調節する薬液量調節機構と、を有する請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄液を泡化する泡生成部を備え、前記泡生成部により泡化された前記洗浄液を前記吐出口から吐出する請求項1から5のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置、及び、洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の汚れには、金属由来の汚れ(鉄粉等)が含まれるため、一般的な洗車機を用いて鉄道車両の車体表面を洗浄しても、十分に汚れを除去することは困難である。このため、人手をかけて鉄道車両の洗浄が行われている。より詳細には、原水と薬液とを混合して得られる洗浄液を車体表面に吐出し、ブラシを用いた手作業で車体表面の洗浄が行われる。
【0003】
なお、特許文献1には、車体表面の汚れを洗浄するに際し、噴射ノズル内で気泡洗浄液を生成し、この気泡洗浄液を噴射する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者等の検討によれば、洗浄液を吐出する吐出口や、洗浄液が通過する配管に、スケール(析出物)が付着し、それらの詰まりが発生することがある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、吐出口や配管の詰まりを抑制することが可能な洗浄装置、及び、洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、洗浄液を被洗浄物に向けて吐出する吐出口と、
原水から陽イオンを除去することにより陽イオン除去水を生成する陽イオン除去部と、
前記陽イオン除去水と、カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤と、を混合して得られる洗浄液を前記吐出口に供給する洗浄液供給部と、
を備える洗浄装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、吐出口から洗浄液を被洗浄物に向けて吐出し、前記被洗浄物を洗浄する洗浄方法であって、
原水が陽イオン除去部を通過することにより生成された陽イオン除去水と、カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤と、を含む前記洗浄液を前記吐出口に供給して当該吐出口から吐出させる工程を有する洗浄方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吐出口や配管の詰まりを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る洗浄装置の模式図である。
【
図2】第2実施形態に係る洗浄装置の模式図である。
【
図3】第2実施形態における吐出ユニット及び磁気センサの模式図である。
【
図4】第3実施形態に係る洗浄装置の模式図である。
【
図5】第3実施形態の変形例1に係る洗浄装置の模式図である。
【
図6】第3実施形態の変形例2に係る洗浄装置の模式図である。
【
図7】実施例1に係る洗浄装置の吐出口11の周辺の写真を示す図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、比較例1に係る洗浄装置を示す図であり、このうち
図8(a)は吐出口11の周辺の写真を示しており、
図8(b)は配管の内部の写真を示している。
【
図9】
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)は、実施例2、比較例2及び参考例1におけるステンレス鋼板の写真を示す図であり、このうち
図9(a)は実施例2と対応しており、
図9(b)は比較例2と対応しており、
図9(c)は参考例1と対応している。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は、比較例2及び参考例2の吐出口の周辺の写真を示す図である。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、実施例3、4における吐出口の周辺の写真を示す図であり、このうち
図11(a)は実施例3と対応しており、
図11(b)は実施例4と対応している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0012】
〔第1実施形態〕
先ず、
図1を用いて第1実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る洗浄装置100は、洗浄液を被洗浄物に向けて吐出する吐出口11と、原水から陽イオンを除去することにより陽イオン除去水を生成する陽イオン除去部60と、前記陽イオン除去水と、カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤と、を混合して得られる洗浄液を吐出口11に供給する洗浄液供給部20と、を備える。
【0013】
原水としては、地下水や水道水などを用いることができる。
本実施形態の場合、陽イオン除去部60は、陽イオン除去水として軟水を生成する軟水器である。軟水器は、例えば、陽イオン交換樹脂を備えており、原水に含まれているカルシウムイオンを陽イオン交換樹脂によってナトリウムイオンに置き換えることにより、原水から軟水を生成する。
ただし、本発明において、陽イオン除去部60はこの例に限らない。例えば、陽イオン除去部60は、RO膜(逆浸透膜)を有する機器であってもよく、この場合、陽イオン除去水は、RO水となる。また、陽イオン除去部60は、陽イオン除去水として蒸留水を生成するものであってもよい。
【0014】
カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤としては、例えば、シュウ酸又はリン酸を含む薬剤を用いることができる。シュウ酸がカルシウムと結合すると、シュウ酸カルシウムが析出(スケール化)し、吐出口11や配管の内部に付着する。同様に、リン酸がカルシウムと結合すると、リン酸カルシウムが析出し、吐出口11や配管の内部に付着する。
【0015】
本実施形態によれば、陽イオン除去部60によって陽イオンが除去された陽イオン除去水と、カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤と、を混合して得られる洗浄液が吐出口11に供給されるので、配管の内部及び吐出口11において、原水に含まれているカルシウムと薬剤に含まれている上述の成分とが互いに結合しスケール化してしまうことを抑制できる。よって、スケールによる吐出口11や配管の詰まりを抑制することができる。
しかも、本発明者等の検討によれば、陽イオン除去水と薬剤とを混合して得られる洗浄液は、薬剤に含まれるシュウ酸又はリン酸と原水に含まれるカルシウムとが結合して生成されたスケールを除去する働きも有する。よって、洗浄液によって、吐出口11や配管の内部に形成されたスケールを除去できるとともに、被洗浄物に形成されたスケールも除去することができる。
【0016】
また、本実施形態に係る洗浄方法は、吐出口11から洗浄液を被洗浄物に向けて吐出し、被洗浄物を洗浄する洗浄方法であって、原水が陽イオン除去部60を通過することにより生成された陽イオン除去水と、カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤と、を含む洗浄液を吐出口11に供給して当該吐出口11から吐出させる工程を有する。この洗浄方法は、例えば、本実施形態に係る洗浄装置100を用いて行うことができる。
【0017】
被洗浄物は、一例として、列車である。列車は、例えば、複数の車両(鉄道車両)が直列に互いに連結されることによって構成されている。各車両は、複数の車輪と、車輪によって支えられている車体と、を備えている。
ただし、被洗浄物は、鉄道車両以外の車両(自動車等)であってもよいし、その他のものであってもよい。
【0018】
図1に示すように、洗浄装置100は、例えば、原水を陽イオン除去部60に供給する原水供給管26と、原水が陽イオン除去部60に通水されることにより生成された陽イオン除去水を水タンク35に供給する陽イオン除去水供給管27と、を有する。本実施形態の場合、水タンク35に貯留された陽イオン除去水に薬剤を混合することによって、洗浄液が得られる。
薬剤は、手作業によって水タンク35に投入されてもよいし、薬液を貯留する薬液タンク(不図示)から薬液ポンプ(不図示)によって水タンク35に供給されてもよい。
洗浄装置100は、更に、水タンク35から吐出口11に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給管28と、水タンク35から吐出口11に向けて洗浄液を圧送する液体ポンプ32と、を有する。液体ポンプ32は、洗浄液供給管28に設けられている。
洗浄装置100は、更に、吐出ユニット10を有する。吐出ユニット10は、例えば複数のノズル部(不図示)を有しており、各ノズル部が吐出口11を有する。洗浄液供給管28は、吐出ユニット10の各ノズル部に接続されている。
【0019】
液体ポンプ32によって洗浄液供給管28を介して水タンク35から供給される洗浄液が、各ノズル部の吐出口11から吐出されるようになっている。洗浄液を列車などの被洗浄物に向けて吐出することによって、被洗浄物の洗浄を行うことができる。
【0020】
なお、本実施形態の場合は、陽イオン除去部60が水タンク35よりも上流側に配置されているが、陽イオン除去部60は水タンク35よりも下流側に配置されていてもよい。より詳細には、原水供給管26を通って水タンク35に貯留された原水が、陽イオン除去部60に供給されるようになっていてもよい。
【0021】
〔第2実施形態〕
次に、
図2及び
図3を用いて第2実施形態について説明する。なお、
図3においては、洗浄の際に列車が走行するレール73と、列車の検出に用いられる磁気センサ91(例えば第1磁気センサ92及び第2磁気センサ93)と、洗浄装置の吐出ユニット10と、を模式的に図示しているとともに、洗浄装置における吐出ユニット10以外の構成については不図示としている。
【0022】
本実施形態における洗浄液供給部20は、薬剤を含む薬液を貯留する薬液タンク31と、薬液と陽イオン除去水とを混合して得られる洗浄液における薬液の濃度を調節する濃度調節機構46と、を有する。
濃度調節機構46によって、洗浄液における薬液の濃度を調節することによって、汚れの度合いが大きい列車の洗浄には薬液の濃度が相対的に高い洗浄液を使用し、汚れの度合いが小さい列車の洗浄には薬液の濃度が相対的に低い洗浄液を使用するなど、状況に応じて使用する薬液の濃度を変更することができる。よって、最適な薬液濃度の洗浄液を用いて車体を洗浄することができるとともに、使用する薬液の量を節約することができる。
【0023】
本実施形態の場合、洗浄液供給部20は、薬液タンク31から吐出口11に向けて薬液を圧送する薬液ポンプ38と、薬液ポンプ38により圧送される薬液を洗浄液供給管28に供給する薬液供給管25と、を有する。薬液ポンプ38は、薬液供給管25に設けられている。薬液供給管25において薬液ポンプ38よりも下流側の部分には、逆止弁51が設けられており、薬液ポンプ38により圧送される薬液が薬液タンク31側に逆流してしまうことが抑制されている。
本実施形態の場合、陽イオン除去水供給管27は、陽イオン除去部60から水タンク35に陽イオン除去水を供給する第1陽イオン除去水供給管27aと、水タンク35から洗浄液供給管28に向けて陽イオン除去水を供給する第2陽イオン除去水供給管27bと、を含む。
洗浄液供給部20は、第2陽イオン除去水供給管27bに設けられている水ポンプ39を備えている。水ポンプ39は、水タンク35から洗浄液供給管28に向けて陽イオン除去水を圧送する。
第2陽イオン除去水供給管27bと薬液供給管25とは洗浄液供給管28に合流している。
薬液供給管25を通して供給される薬液と第2陽イオン除去水供給管27bを通して供給される陽イオン除去水(軟水)とが洗浄液供給管28において合流し混合されることにより、洗浄液が得られる。
【0024】
濃度調節機構46は、例えば、陽イオン除去水の供給量を調節する陽イオン除去水量調節機構47と、薬液の供給量を調節する薬液量調節機構48と、を有する。
陽イオン除去水量調節機構47は、例えば、単位時間あたりに第2陽イオン除去水供給管27bを通過する陽イオン除去水の量を調節する。
薬液量調節機構48は、単位時間あたりに薬液供給管25を通過する薬液の量を調節する。
例えば、陽イオン除去水量調節機構47と薬液量調節機構48とのうち陽イオン除去水量調節機構47による調節を選択的に行うことによって、陽イオン除去水の供給量は常時一定に維持させ、陽イオン除去水に対する薬液の混合量を調節し、洗浄液における薬液の濃度を調節することができる。
或いは、陽イオン除去水量調節機構47と薬液量調節機構48とのうち薬液量調節機構48による調節を選択的に行うことによって、薬液の供給量は常時一定に維持させ、薬液に対する陽イオン除去水の混合量を調節し、洗浄液における薬液の濃度を調節することができる。
更に、陽イオン除去水量調節機構47と薬液量調節機構48との双方による調節を行うことによって、洗浄液における薬液の濃度を調節してもよい。
【0025】
陽イオン除去水量調節機構47は、例えば、流量調節弁及び流量計を有するバルブであり、第2陽イオン除去水供給管27bにおいて水ポンプ39よりも下流側の部分に設けられている。
薬液量調節機構48は、例えば、上述の薬液ポンプ38によって構成されている。薬液ポンプ38としては、一例として、Ring Pump(登録商標)を用いることができる。Ring Pumpは、薬液を圧送している状態と、薬液の圧送を停止している状態と、を短い時間間隔で切り替えるように構成されている。薬液ポンプ38により薬液を圧送する時間の割合を調節することによって、薬液の供給量を調節することができる。
【0026】
また、洗浄液供給部20は、洗浄液を吐出口11に供給する状態と、薬剤を含まない陽イオン除去水を吐出口11に供給する状態と、を切り替える切替機構42を有する。
切替機構42による切り替えを行うことによって、洗浄液により被洗浄物の洗浄を行う状態と、薬剤を含まない陽イオン除去水によって配管や吐出口11を洗い流す状態と、の切り替えを行うことができる。
本実施形態の場合、切替機構42は、例えば、薬液ポンプ38により構成されている。薬液ポンプ38の動作を停止させることによって、吐出口11に向けた薬液の供給を停止させて、薬剤を含まない陽イオン除去水を吐出口11に供給する状態に切り替えることができる。
【0027】
より詳細には、洗浄液供給部20は、一連の洗浄期間における前期において洗浄液を吐出口11に供給し、洗浄期間における後期において陽イオン除去水を吐出口11に供給する制御動作を行う制御部44を有している。
これにより、一連の洗浄期間における前期において通水されていた洗浄液が、洗浄期間における後期においては陽イオン除去水によって洗い流されるため、吐出口や配管の内部におけるスケールの生成を抑制することができる。
より詳細には、制御部44は、薬液量調節機構48(薬液ポンプ38)と接続されており、薬液ポンプ38(切替機構42)の稼働を停止させることによって、薬剤を含まない陽イオン除去水を吐出口11に供給させる。
【0028】
また、本実施形態の場合、吐出ユニット10は、洗浄液と混合されて洗浄液を泡化する泡生成用気体を送出するエアコンプレッサー33と、エアコンプレッサー33により送出される泡生成用気体を洗浄液供給管28に供給する泡生成用気体供給管22と、を更に有する。
ここで、洗浄液供給管28において、泡生成用気体供給管22との合流点よりも下流側の部分を、泡供給管23と称する。
泡供給管23の一部分は、洗浄液を泡化する発泡配管24となっている。泡供給管23において、発泡配管24よりも下流側の部分には、洗浄液から異物を除去するストレーナー55が設けられている。
発泡配管24には、当該発泡配管24の内向きに突出している複数の鋲状体(不図示)が設けられている。各鋲状体の基端部は発泡配管24の外周面と内周面とを貫通しており、各鋲状体は発泡配管24の径方向に延在している。これら鋲状体は、発泡配管24の軸方向に沿って螺旋状に配列されている。洗浄液は、発泡配管24の内部において複数の鋲状体により攪拌され泡生成用気体と混合されることよって泡化する(泡状となる)。
なお、泡生成用気体供給管22には、逆止弁52が設けられており、泡生成用気体がエアコンプレッサー33側に逆流してしまうことが抑制されている。
【0029】
このように、本実施形態に係る洗浄装置100は、洗浄液を泡化する泡生成部(エアコンプレッサー33、逆止弁52及び発泡配管24により構成されている)を備え、泡生成部により泡化された洗浄液を吐出口11から吐出する。
本実施形態の場合、吐出口11から吐出される洗浄液が泡状となっているので、被洗浄物(車体表面)に付着した洗浄液がより長く同じ部位に留まるようにでき、洗浄性がより良好となる。
【0030】
ここで、洗浄装置100による列車の洗浄は、例えば、列車がレール73を低速で走行している状態で、列車の側面に向けて洗浄液を吐出することによって行うことができる。
なお、
図3においては、レール73の片側に配置されている吐出ユニット10のみを図示しているが、浄装置による洗浄が可能な洗浄可能領域94において、レール73の両側にそれぞれ吐出ユニット10を配置することにより、列車の左右両面を並行して洗浄することができる。
【0031】
図2、
図3に示すように、洗浄装置100(
図2)は、被洗浄物である車両の車輪を検出する磁気センサ91(
図3)と、磁気センサ91による検出結果に基づき、当該洗浄装置100による洗浄が可能な洗浄可能領域94(
図3)に車両が到来したことと、当該洗浄可能領域94の外に車両が移動したこととを判定する判定部95(
図2)と、を備える。
洗浄液供給部20は、洗浄可能領域94の外に車両が移動した場合に、一連の洗浄期間の後期での動作モードである終了モードに移行する。
車両が洗浄可能領域94に到来した場合に洗浄液を吐出口11から車両に向けて吐出させることによって、車両の洗浄を好適に行うことができる。そして、洗浄可能領域94の外に車両が移動した場合に終了モードに移行させるので、一連の洗浄期間において、列車の全体を良好に洗浄した後、終了モードへの移行をスムーズに行うことができる。
終了モードでは、例えば、洗浄液の吐出を終了させてもよいし、洗浄液の種類を変更してもよいし、洗浄以外の液体(例えば、薬剤を含有しない陽イオン除去水など)の吐出を開始しても良い。
【0032】
一例として、終了モードにおいては、洗浄液供給部20は、例えば、吐出口11に向けた洗浄液の供給を停止させ、陽イオン除去水を吐出口11に供給する。
これにより、終了モードにおいて、吐出口や配管の内部における洗浄液が陽イオン除去水によって洗い流されるため、吐出口や配管の内部におけるスケールの生成を抑制することができる。
換言すると、本実施形態に係る洗浄方法では、例えば、一連の洗浄期間における前期において、洗浄液を吐出口11に供給して当該吐出口11から吐出させ、洗浄期間における後期において、薬剤を含まない陽イオン除去水を吐出口11に供給して当該吐出口11から吐出させる。
【0033】
なお、洗浄液供給部20は、終了モードに移行するよりも前の段階では、陽イオン除去部60に対して規定の処理許容量を超える原水を通水させ、終了モードにおいては、処理許容量以下の原水を通水させてもよい。換言すると、洗浄液供給部20は、終了モードに移行するよりも前の段階では、陽イオンの除去量が相対的に少ない水を吐出口11に供給し、終了モードにおいては、陽イオンが十分に除去された陽イオン除去水(軟水)を吐出口11に供給するようになっていてもよい。これにより、洗浄作業において使用する陽イオン除去水(軟水)の量を節約しつつ、スケールによる吐出口11や配管の詰まりを抑制することができる。
【0034】
より詳細には、洗浄装置は、磁気センサ91として、例えば、第1磁気センサ92と、第2磁気センサ93と、を有する。第1磁気センサ92及び第2磁気センサ93は、レール73の近傍に配置されているとともに、レール73の長手方向において互いに離間して配置されている。第2磁気センサ93は、第1磁気センサ92よりも列車の進行方向前側(
図3の矢印Aで示す方向)に配置されている。吐出ユニット10は、レール73の長手方向において、第1磁気センサ92と第2磁気センサ93との間の位置に配置されており、洗浄可能領域94も、レール73の長手方向において、第1磁気センサ92と第2磁気センサ93との間に配置されている。
制御部44は、判定部95を含んでおり、判定部95の判定結果に基づいて、水ポンプ39、エアコンプレッサー33及び薬液ポンプ38等の動作制御を行う。
【0035】
例えば、第1磁気センサ92が先頭の車両の最前列の車輪を検出することによって、判定部95は、洗浄可能領域94に車両(先頭の車両)が到来したと判定し、制御部44は吐出口11からの洗浄液の吐出を開始させる。そして、第2磁気センサ93が車輪を検知した後、所定の第1待機時間(例えば10秒)を経過しても次の車輪を検知しなかった場合(すなわち、第2磁気センサ93が最後尾の車両の最後列の車輪が通過したことを検知した場合)、判定部95は、洗浄可能領域94の外に車両(最後尾の車両)が移動したと判定し、制御部44は洗浄液供給部を終了モードに移行させる。
【0036】
図3に示すように、レール73の長手方向において、吐出口11と第1磁気センサ92との離間距離を距離L1とし、吐出口11と第2磁気センサ93との離間距離を距離L2とする(
図3参照)。また、車体の長手方向において、先頭の車両の最前列の車輪の中心から当該車両の車体の前端までの距離を距離a(不図示)とし、最後尾の車両の最後列の車輪の中心から当該車両の車体の後端までの距離を距離b(不図示)とする。更に、車体の長手方向において、車輪どうしの離間距離を距離c(不図示)とする。
距離L1は、距離aよりも長いことが好ましい。これにより、第1磁気センサ92により先頭の車両の最前列の車輪を検出した時点では、先頭の車両の車体の前端が吐出口11の位置に達していないようにできるため、第1磁気センサ92により先頭の車両の最前列の車輪を検出したときに洗浄液の吐出を開始することによって、車両の全体(前端部分から)を洗浄することができる。
【0037】
また、磁気センサ91を用いた列車の検出の手法は、上述の例に限らない。例えば、最後尾の車両の最後列の車輪が通過したことについても、第1磁気センサ92によって検出し、その後、当該車輪が到来したことを第2磁気センサ93によって検出したタイミングで、洗浄液供給部を終了モードに移行させてもよい。
この場合、距離L2は、距離bよりも長いことが好ましい。これにより、第2磁気センサ93により最後尾の車両の最後列の車輪の到来を検出したタイミングで、洗浄液供給部を終了モードに移行させても、車両の全体(後端部分まで)を洗浄することができる。
また、この場合、第1磁気センサ92による「最後尾の車両の最後列の車輪の通過の検出」は、例えば、第1磁気センサ92が車輪を検知した後、列車が距離cを移動するのに要する時間が経過しても次の車輪を検知しなかったこと、によりなされる。
この場合、距離L1と距離L2との合計値は、距離cよりも長いことが好ましい。これにより、第1磁気センサ92と第2磁気センサ93との間には、前後に離間する2つ以上の車輪が存在するようにできる。よって、第1磁気センサ92により、最後尾の車両の最後列の車輪の通過が検出された後、第2磁気センサ93が次に検出した車輪が、最後尾の車両の最後列の車輪となるようにできる。
【0038】
〔第3実施形態〕
次に、
図4を用いて第3実施形態について説明する。
本実施形態に係る洗浄装置100は、以下に説明する点で、上記の第2実施形態に係る洗浄装置100と相違しており、その他の点では、上記の第2実施形態に係る洗浄装置100と同様に構成されている。
【0039】
本実施形態の場合、
図4に示すように、洗浄液供給部20は、例えば、洗浄液を吐出口11に供給する状態と、陽イオン除去部60を通過しない経路を通る原水と薬剤とを含む第2洗浄液を吐出口11に供給する状態と、を切り替える切替機構41を有する。
これにより、洗浄の工程において、洗浄液のみを用いる場合と比較して、陽イオン除去水の使用量を節約することができる。したがって、洗浄液のみを使用している場合と比較して、陽イオン除去部60をメンテナンスする頻度を少なくすることができる。
上述のように、陽イオン除去部60(軟水器)は、陽イオン交換樹脂によって通過する水の中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどをナトリウムイオンに置き換えて軟水を生成する。しかし、上述の成分を吸着し続けると陽イオン交換樹脂の機能が低下するため、イオン交換樹脂に塩水を注ぎ、ナトリウムイオンとカルシウム・マグネシウムイオンを交換させるメンテナンスが必要となる。本実施形態によれば、1回の洗浄に使用する軟水の量を節約することができるので、軟水器のメンテナンスの頻度を減らすことができる。
【0040】
本実施形態の場合、洗浄液供給部20は、例えば、陽イオン除去水を貯留する陽イオン除去水タンク36と、原水を貯留する原水タンク37と、陽イオン除去水タンク36の軟水又は原水タンク37の原水を吐出口11に圧送する水ポンプ39と、薬剤を含む薬液を貯留する薬液タンク31と、薬液タンク31の薬液を吐出口11に圧送する薬液ポンプ38と、を有し、切替機構41は、水ポンプ39に供給される水を陽イオン除去水タンク36の陽イオン除去水又は原水タンクの原水に切り替える。
陽イオン除去水が水ポンプ39に供給され、水ポンプ39によって陽イオン除去水が圧送される状態のときには、陽イオン除去水と薬液とが混合することによって洗浄液が得られ、該洗浄液を吐出口11に向けて供給することができる。
一方、原水が水ポンプ39に供給され、水ポンプ39によって原水が圧送される状態のときには、原水と薬液とが混合することによって第2洗浄液が得られ、該第2洗浄液を吐出口11に向けて供給することができる。
本実施形態によれば、原水タンク37と陽イオン除去水タンク36とを別個に備えているため、洗浄液を吐出口11に供給する状態と、第2洗浄液を吐出口11に供給する状態と、の切り替えを速やかに行うことができる。
【0041】
本実施形態の場合、原水供給管26は、原水を原水タンク37に供給する第1原水供給管26aと、原水を陽イオン除去部60に供給する第2原水供給管26bと、原水タンク37から後述の水供給管21に向けて供給する第3原水供給管26cと、を含む。
また、陽イオン除去水供給管27は、陽イオン除去部60から陽イオン除去水タンク36に陽イオン除去水を供給する第1陽イオン除去水供給管27aと、陽イオン除去水タンク36から後述の水供給管21に向けて陽イオン除去水を供給する第2陽イオン除去水供給管27bと、を含む。
第3原水供給管26cの下流端と第2陽イオン除去水供給管27bとは合流しており、その合流点には、水供給管21が接続されている。
水供給管21は、原水タンク37から第3原水供給管26cを介して供給された原水、又は、陽イオン除去水タンク36から第2陽イオン除去水供給管27bを介して供給された陽イオン除去水を、洗浄液供給管28に向けて供給する。
本実施形態の場合、水ポンプ39は、水供給管21に設けられており、原水又は陽イオン除去水を洗浄液供給管28に向けて(ひいては吐出口11に向けて)圧送する。
薬液供給管25を通して供給される薬液と水供給管21を通して供給される陽イオン除去水又は原水とが洗浄液供給管28に合流することにより、洗浄液又は第2洗浄液が得られる。
【0042】
また、本実施形態の場合、洗浄液供給部20は、陽イオン除去水と薬剤に加えて原水を含む洗浄液を吐出口11に供給可能に構成されており、且つ、洗浄液における陽イオン除去水と原水との混合比率を調節する混合比調節機構45を有する。
混合比調節機構45によって、洗浄液における陽イオン除去水と原水との混合比率を調節することによって、例えば、陽イオン除去水の使用量を節約する状態と、スケール化の抑制効果がある陽イオン除去水を多めに使用する状態と、の切り替えが可能である。
【0043】
混合比調節機構45は、一例として、ゲートバルブであり、切替機構41としての機能も担う。混合比調節機構45は、例えば、第3原水供給管26cに設けられている第1混合比調節機構45a(第1ゲートバルブ)と、第2陽イオン除去水供給管27bに設けられている第2混合比調節機構45b(第2ゲートバルブ)と、を含む。
第1混合比調節機構45aによって、単位時間あたりに第3原水供給管26cを通過する原水の量を調節することができる。また、第2混合比調節機構45bによって、単位時間あたりに第2陽イオン除去水供給管27bを通過する陽イオン除去水の量を調節することができる。
また、原水が第3原水供給管26cを通過することを第1混合比調節機構45aによって規制するか、又は、陽イオン除去水が第2陽イオン除去水供給管27bを通過することを第2混合比調節機構45bによって規制することによって、洗浄液を吐出口11に供給する状態と、陽イオン除去部60を通過しない経路を通る原水と薬剤とを含む第2洗浄液を吐出口11に供給する状態と、の切り替えを行うことができる。
【0044】
なお、切替機構41は、ゲートバルブに限定されず、例えば、第1原水供給管26aと第2陽イオン除去水供給管27bとの合流部、すなわち水供給管21の上流端に設けられている三方弁であってもよい。
【0045】
ここで、洗浄液供給部20は、例えば、一連の洗浄期間における前期において第2洗浄液を吐出口11に供給し、洗浄期間における後期において洗浄液を吐出口11に供給する制御動作を行う制御部44を有している。
制御部44によってこのような制御動作を行うことにより、洗浄期間における後期において、第2洗浄液が洗浄液により洗い流されるようにできる。よって、吐出口や配管の内部におけるスケールの生成を抑制することができる。しかも、一連の洗浄期間における前記においては、原水を含む第2洗浄液を用いるので、使用する陽イオン除去水の量を節約しつつ、スケールによる配管や吐出口11の詰まりを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の場合、薬液ポンプ38(切替機構42)により薬液を供給する状態と供給しない状態との切り替えを行うことによって、薬剤を含まない陽イオン除去水を吐出口11に供給する状態も実現することができる。
すなわち、洗浄液供給部20は、洗浄液を吐出口11に供給する状態と、陽イオン除去部60を通過しない経路を通る原水と薬剤とを含む第2洗浄液を吐出口11に供給する状態と、薬剤を含まない陽イオン除去水を吐出口11に供給する状態と、を切り替える切替機構(切替機構41、42)を有している。
これにより、洗浄作業において状況に応じて使用する陽イオン除去水の量を節約したり、陽イオン除去水のみを吐出口11に供給したりすることができる。
【0047】
一例として、制御部44は、一連の洗浄期間における前期において第2洗浄液を吐出口11に供給し、洗浄期間における中期において洗浄液を吐出口11に供給し、洗浄期間における後期において陽イオン除去水を吐出口11に供給する制御動作を行う。
これにより、配管の内部や吐出口11の第2洗浄液を洗浄液によって洗い流し、更には、配管の内部や吐出口11の洗浄液を陽イオン除去水によって洗い流すことができる。よって、使用する陽イオン除去水の量を節約しつつ、スケールによる配管や吐出口の詰まりをより確実に抑制することができる。
【0048】
なお、制御部44は、例えば、一連の洗浄期間において、洗浄液を吐出口11に供給する状態と、第2洗浄液を吐出口11に供給する状態と、を交互に切り替えるように構成されていてもよい。より詳細には、制御部44は、一連の洗浄期間の前期において、洗浄液を吐出口11に供給する状態と、第2洗浄液を吐出口11に供給する状態と、を交互に切り替える動作を繰り返し、洗浄期間における後期において陽イオン除去水を吐出口11に供給するように構成されていてもよい。これにより、吐出口11及び配管の内部にスケールが生成されてしまうことを更に確実に抑制することができる。
【0049】
<第3実施形態の変形例1>
次に、
図5を用いて第3実施形態の変形例に係る洗浄装置100について説明する。
本変形例に係る洗浄装置100は、以下に説明する点で、上記の第3実施形態に係る洗浄装置100と相違しており、その他の点では、上記の第3実施形態に係る洗浄装置100と同様に構成されている。
【0050】
本変形例の場合、
図5に示すように、陽イオン除去水タンク36及び原水タンク37(いずれも
図4)を備えていない代わりに、陽イオン除去水又は原水を貯留する水タンク35を備えている。
水タンク35には、原水が陽イオン除去部60を通過することにより生成された陽イオン除去水、又は、陽イオン除去部60を通さずに直に供給された原水が貯留される。
原水供給管26は、原水を後述する第1水供給管21aに供給する第1原水供給管26aと、原水を陽イオン除去部60に供給する第2原水供給管26bと、を含む。
また、水供給管21は、原水又は陽イオン除去水を水タンク35に供給する第1水供給管21aと、水タンク35から洗浄液供給管28に向けて水(原水又は陽イオン除去水)を供給する第2水供給管21bと、を含む。
第1原水供給管26aの下流端と陽イオン除去水供給管27の下流端は、第1水供給管21aに合流している。
本変形例の場合、第1原水供給管26aと第2原水供給管26bとは、それらの上流端において互いに分岐している。それらの上流端には、原水を第1原水供給管26aを介して水タンク35に供給する状態と、原水を第2原水供給管26bを介して陽イオン除去部60に供給する状態と、の切り替えを行う切替機構41(例えば三方弁など)が設けられている。
切替機構41による切り替えを行うことによって、水タンク35に貯留される水を、原水又は陽イオン除去水に切り替えることができる。
【0051】
このように、本変形例の場合、洗浄液供給部20は、陽イオン除去水又は原水を貯留する水タンク35と、水タンク35の陽イオン除去水又は原水を吐出口11に圧送する水ポンプ39と、薬剤を含む薬液を貯留する薬液タンク31と、薬液タンク31の薬液を吐出口11に圧送する薬液ポンプ38と、を有し、切替機構41は、水タンク35に供給される水を陽イオン除去水又は原水に切り替える。
水ポンプ39により圧送される陽イオン除去水と薬液ポンプ38により圧送される薬液とが混合することによって洗浄液が得られ、水ポンプ39により圧送される原水と薬液ポンプ38により圧送される薬液とが混合することによって第2洗浄液が得られる。
本変形例の場合も、水タンク35に供給される水を陽イオン除去水又は原水に切り替えることができるので、洗浄液を吐出口11に供給する状態と、第2洗浄液を吐出口11に供給する状態と、に切り替えることができる。よって、洗浄作業において使用する陽イオン除去水の量を節約しつつ、スケールによる吐出口11や配管の詰まりを抑制することができる。
なお、水タンク35に原水が残っている状態で、切替機構41によって、水タンク35に貯留される水を陽イオン除去水に切り替えた場合、水タンク35に貯留されている水のうち原水の割合が徐々に低減する一方で、陽イオン除去水の割合が徐々に増大し、同様に、吐出口11に向かう水における原水と陽イオン除去水との混合比率も徐々に変化する。逆に、水タンク35に陽イオン除去水が残っている状態で、切替機構41によって、水タンク35に貯留される水を原水に切り替えた場合、水タンク35に貯留されている水のうち原水の割合が徐々に増大する一方で、陽イオン除去水の割合が徐々に低減し、同様に、吐出口11に向かう水における原水と陽イオン除去水との混合比率も徐々に変化する。吐出口11から吐出される洗浄液等が陽イオン除去水を含有していることによって、吐出口11や配管の詰まりを抑制することができる。
【0052】
<第3実施形態の変形例2>
次に、
図6を用いて第3実施形態の変形例2について説明する。
本変形例に係る洗浄装置100は、以下に説明する点で、上記の第3実施形態に係る洗浄装置100と相違しており、その他の点では、上記の第3実施形態に係る洗浄装置100と同様に構成されている。
【0053】
本変形例の場合、
図6に示すように、洗浄装置100は、陽イオン除去水及び原水を貯留するタンク(陽イオン除去水タンク36及び原水タンク37)を有していない。
より詳細には、洗浄装置100は、原水を陽イオン除去部60に供給する原水供給管26と、陽イオン除去部60から陽イオン除去水を洗浄液供給管28に供給する陽イオン除去水供給管27と、洗浄液を吐出口11に供給する洗浄液供給管28と、を有する。更に、洗浄装置は、薬剤を含む薬液を貯留する薬液タンク31と、薬液タンク31から吐出口11に向けて薬液を圧送する薬液ポンプ38と、薬液を吐出口11に供給する薬液供給管25と、を有する。
薬液供給管25を通して供給される薬液と陽イオン除去水供給管27を通して供給される陽イオン除去水とが洗浄液供給管28に合流することにより、洗浄液が得られる。
【0054】
本変形例の場合、洗浄装置100は、原水や陽イオン除去水を貯留するタンクを備えていないため、洗浄装置100を省スペース化することができる。
【0055】
更に、本変形例に係る洗浄装置100は、陽イオン除去部60よりも上流側に配置されている流量調節機構49を有する。
流量調節機構49は、原水供給管26に設けられており、陽イオン除去部60に供給される原水の量を調節する。流量調節機構49は、一例として、バルブ(流量調節弁)である。
【0056】
洗浄装置100において、流量調節機構49が陽イオン除去部60(本実施形態の場合、軟水器)に対して規定の処理許容量を超える原水を通水させる場合、軟水器を通過した原水は、カルシウムの除去が不十分となるため、必ずしも軟水とは限らない。一方、流量調節機構49が処理許容量以下の原水を通水させる場合、軟水器を通過した原水は良好にカルシウムが除去されて軟水となる。
【0057】
本変形例の場合も、洗浄液供給部20は、例えば、終了モードに移行するよりも前の段階では、陽イオン除去部60に対して規定の処理許容量を超える原水を通水させ、終了モードにおいては、処理許容量以下の原水を通水させる。換言すると、洗浄液供給部20は、終了モードに移行するよりも前の段階では、陽イオンの除去量が相対的に少ない水を用いて得られた洗浄水を吐出口11に供給し、終了モードにおいては、陽イオンが十分に除去された軟水を用いて得られた洗浄液を吐出口11に供給する。これにより、洗浄作業において、使用する陽イオン除去水(軟水)の量を節約しつつ、スケールによる吐出口11や配管の詰まりを抑制することができる。
【0058】
以上、図面を参照して実施形態及びその変形例を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0059】
例えば、上述においては、洗浄期間における後期において、薬剤を含まない陽イオン除去水を吐出口11に供給して当該吐出口11から吐出させる例を説明したが、本発明はこの例に限らず、洗浄期間における後期において、薬剤を含まない原水を吐出口11に供給して当該吐出口11から吐出させてもよい。
【0060】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)洗浄液を被洗浄物に向けて吐出する吐出口と、
原水から陽イオンを除去することにより陽イオン除去水を生成する陽イオン除去部と、
前記陽イオン除去水と、カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤と、を混合して得られる洗浄液を前記吐出口に供給する洗浄液供給部と、
を備える洗浄装置。
(2)前記洗浄液供給部は、
前記洗浄液を前記吐出口に供給する状態と、
前記陽イオン除去部を通過しない経路を通る前記原水と前記薬剤とを含む第2洗浄液を前記吐出口に供給する状態と、
を切り替える切替機構を有する(1)に記載の洗浄装置。
(3)前記洗浄液供給部は、一連の洗浄期間における前期において前記第2洗浄液を前記吐出口に供給し、前記洗浄期間における後期において前記洗浄液を前記吐出口に供給する制御動作を行う制御部を有する(2)に記載の洗浄装置。
(4)前記洗浄液供給部は、
前記陽イオン除去水を貯留する陽イオン除去水タンクと、
前記原水を貯留する原水タンクと、
前記陽イオン除去水タンクの前記陽イオン除去水又は前記原水タンクの原水を前記吐出口に圧送する水ポンプと、
前記薬剤を含む薬液を貯留する薬液タンクと、
前記薬液タンクの前記薬液を前記吐出口に圧送する薬液ポンプと、
を有し、
前記切替機構は、前記水ポンプに供給される水を前記陽イオン除去水タンクの前記陽イオン除去水又は前記原水タンクの前記原水に切り替える(2)又は(3)に記載の洗浄装置。
(5)前記洗浄液供給部は、
前記陽イオン除去水又は前記原水を貯留する水タンクと、
前記水タンクの前記陽イオン除去水又は前記原水を前記吐出口に圧送する水ポンプと、
前記薬剤を含む薬液を貯留する薬液タンクと、
前記薬液タンクの前記薬液を前記吐出口に圧送する薬液ポンプと、
を有し、
前記切替機構は、前記水タンクに供給される水を前記陽イオン除去水又は前記原水に切り替える(2)又は(3)に記載の洗浄装置。
(6)前記洗浄液供給部は、
前記洗浄液を前記吐出口に供給する状態と、
前記薬剤を含まない前記陽イオン除去水を前記吐出口に供給する状態と、
を切り替える切替機構を有する(1)又は(2)に記載の洗浄装置。
(7)前記洗浄液供給部は、一連の洗浄期間における前期において前記洗浄液を前記吐出口に供給し、前記洗浄期間における後期において前記陽イオン除去水を前記吐出口に供給する制御動作を行う制御部を有する(6)に記載の洗浄装置。
(8)前記洗浄液供給部は、
前記洗浄液を前記吐出口に供給する状態と、
前記陽イオン除去部を通過しない経路を通る前記原水と前記薬剤とを含む第2洗浄液を前記吐出口に供給する状態と、
前記薬剤を含まない前記陽イオン除去水を前記吐出口に供給する状態と、
を切り替える切替機構を有する(1)に記載の洗浄装置。
(9)前記洗浄液供給部は、一連の洗浄期間における前期において前記第2洗浄液を前記吐出口に供給し、前記洗浄期間における中期において前記洗浄液を前記吐出口に供給し、前記洗浄期間における後期において前記陽イオン除去水を前記吐出口に供給する制御動作を行う制御部を有する(8)に記載の洗浄装置。
(10)前記洗浄液供給部は、
前記陽イオン除去水と前記薬剤に加えて前記原水を含む前記洗浄液を前記吐出口に供給可能に構成されており、且つ、
前記洗浄液における前記陽イオン除去水と前記原水との混合比率を調節する混合比調節機構を有する(1)から(9)のいずれか一項に記載の洗浄装置。
(11)前記洗浄液供給部は、
前記薬剤を含む薬液を貯留する薬液タンクと、
前記薬液と前記陽イオン除去水とを混合して得られる前記洗浄液における前記薬液の濃度を調節する濃度調節機構と、
を有する(1)から(10)のいずれか一項に記載の洗浄装置。
(12)前記濃度調節機構は、前記陽イオン除去水の供給量を調節する陽イオン除去水量調節機構と、前記薬液の供給量を調節する薬液量調節機構と、を有する(11)に記載の洗浄装置。
(13)前記被洗浄物である車両の車輪を検出する磁気センサと、
前記磁気センサによる検出結果に基づき、当該洗浄装置による洗浄が可能な洗浄可能領域に前記車両が到来したことと、当該洗浄可能領域の外に前記車両が移動したこととを判定する判定部と、
を備え、
前記洗浄液供給部は、前記洗浄可能領域の外に前記車両が移動した場合に、一連の洗浄期間の後期での動作モードである終了モードに移行する(1)に記載の洗浄装置。
(14)前記終了モードにおいては、前記洗浄液供給部は、前記吐出口に向けた前記洗浄液の供給を停止させ、前記陽イオン除去水を前記吐出口に供給する(13)に記載の洗浄装置。
(15)前記洗浄液供給部は、前記終了モードに移行するよりも前の段階では、前記陽イオン除去部に対して、規定の処理許容量を超える前記原水を通水させ、前記終了モードにおいては、前記処理許容量以下の前記原水を通水させる(13)又は(14)に記載の洗浄装置。
(16)前記洗浄液を泡化する泡生成部を備え、前記泡生成部により泡化された前記洗浄液を前記吐出口から吐出する(1)から(15)のいずれか一項に記載の洗浄装置。
(17)吐出口から洗浄液を被洗浄物に向けて吐出し、前記車体を洗浄する洗浄方法であって、
原水が陽イオン除去部を通過することにより生成された陽イオン除去水と、カルシウムと結合してスケール化する成分を含有する薬剤と、を含む前記洗浄液を前記吐出口に供給して当該吐出口から吐出させる工程を有する洗浄方法。
(18)一連の洗浄期間における前期において、前記洗浄液を前記吐出口に供給して当該吐出口から吐出させ、
前記洗浄期間における後期において、前記薬剤を含まない前記陽イオン除去水を前記吐出口に供給して当該吐出口から吐出させる(17)に記載の洗浄方法。
【実施例0061】
以下、
図7から
図11(b)を用いて実施例及び比較例を説明する。
【0062】
まず、
図7から
図8(b)を用いて実施例1及び比較例1を説明する。
実施例1及び比較例1では、それぞれ以下に説明する洗浄装置を用いて3ヶ月間列車を、その吐出口や配管内の状態(スケールの有無)を評価した。
【0063】
実施例2及び比較例2では、それぞれ以下に説明する洗浄装置を用いて、同等の頻度で被洗浄物(車体)の洗浄作業を3ヶ月間行った後の吐出口の状態を評価した。
実施例1では、第1実施形態で説明した構造の洗浄装置を用いた。薬剤としては、シュウ酸を含有するものを用いた。
比較例1では、第1実施形態で説明した構造の洗浄装置と比べて、陽イオン除去部を有しておらず、原水と、シュウ酸を含有する薬剤と、を混合して得られる洗浄液を吐出口に供給する点で相違している洗浄装置を用いた。
【0064】
図7は、実施例1を行った後の洗浄装置の吐出口の周辺(ノズル部の先端)の写真を示す図である。また、
図8(a)及び
図8(b)は、比較例1を行った後の洗浄装置を示す図であり、このうち
図8(a)は吐出口の周辺の写真を示しており、
図8(b)は配管の内部の写真を示している。
【0065】
図7に示すように、実施例1では、吐出口の周辺(ノズル部の先端)において、スケール(シュウ酸カルシウム)の発生は確認されなかった。
一方、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、比較例1では、吐出口の周辺及び配管72の内部において、白いスケール(シュウ酸カルシウム)の発生が確認された。
これらの結果から、実施形態で説明した構造の洗浄装置は、吐出口や配管の内部におけるスケールの発生を抑制できることが分かる。
【0066】
次に、
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)を用いて実施例2、比較例2及び参考例1を説明する。
図9(a)(実施例2)、
図9(b)(比較例2)及び
図9(c)(参考例1)は、それぞれ以下に説明する試験を行った後のステンレス鋼板の写真を示す図である。なお、
図9(a)から
図9(c)は、マスキングテープが剥がされた後のステンレス鋼板の状態を示している。また、
図9(a)から
図9(c)において、後述するウエスによる擦り洗いを行った領域を破線の四角で囲んでいる。
【0067】
実施例2及び比較例2では、互いに異なる洗浄液を用いて以下に説明する試験を行った。
先ず、ステンレス鋼板における左側部分をマスキングテープで覆い、ステンレス鋼板に洗浄液を吐出する。次に、ステンレス鋼板を1分間放置した後に、薬剤を含まない水でステンレス鋼板74に付着した洗浄液を洗い流す。そして、ステンレス鋼板を乾燥させる。これらの一連の作業を5回繰り返した後の、ステンレス鋼板の状態を評価した。
なお、実施例2及び比較例2においては、ステンレス鋼板に対して擦り洗いを行い、洗浄液のすすぎ残しが無い状態でステンレス鋼板を乾燥させた。一方、比較例3においては、擦り洗いは行わずに洗浄液のすすぎ残しがある状態でステンレス鋼板を乾燥させた。
実施例2及び参考例1では、原水が軟水器を通過することにより生成された軟水と、シュウ酸を含む薬剤と、を混合して得られる洗浄液を用いた。
比較例2では、軟水器を通過していない原水(地下水)と、シュウ酸を含む薬剤と、を混合して得られる洗浄液を用いた。
なお、列車の車体は、一般的にステンレス鋼によって構成されている。
【0068】
図9(b)に示すように、比較例2では、ステンレス鋼板の表面において、マスキングテープで覆われていた左側と比較して、その他の部分には全体的に白いスケール(シュウ酸カルシウム)が発生していることが確認された。また、ステンレス鋼板における一部の領域に対してウエスによる擦り洗いを行ったが、スケールを除去できなかった。
一方、
図9(a)に示すように、実施例2では、比較例2とは異なり、ステンレス鋼板の表面において、比較例2のような白いスケール(シュウ酸カルシウム)の発生は確認されなかった。
これらの結果から、軟水とシュウ酸(リン酸)を含む薬剤とを混合させて得られる洗浄液を用いることによって、列車の車体の表面にスケールが生成されることも抑制できると考えられる。
【0069】
また、
図9(c)に示すように、参考例1では、ステンレス鋼板の表面において、マスキングテープで覆われていた左側と比較して、その他の部分には残留した洗浄液によるものと思われる白いスケールの発生が全体的に確認されたとともに、残留した洗浄液によるものと思われる白い斑点状のスケールの発生が部分的に確認された。また、ステンレス鋼板における一部の領域に対してウエスによる擦り洗いを行ったが、スケール(ただし、斑点状のスケールは除く)の除去はできなかった。これらのスケールは、洗浄剤に含まれる洗浄成分が固化(スケール化)したものと推測される。
これらの結果から、車体の表面におけるスケールの生成を抑制する為には、車体の表面(ステンレス鋼板)に洗浄液を吐出した後に、陽イオン除去水(軟水)又は原水による十分なすすぎ洗いを行うことが好ましいといえる。
【0070】
次に、
図10(a)から
図11(b)を用いて比較例2、参考例2、実施例3及び実施例4を説明する。
図10(a)(比較例2)は、白いスケール(シュウ酸カルシウム)が発生している状態の吐出口の写真を示す図である。より詳細には、
図10(a)の状態は、原水(例えば、地下水)と1%希釈のシュウ酸とを混合させることによって得られた洗浄液を、未使用状態の吐出ノズルの先端に1.1L/分で計90分吐出した後の状態であり、吐出口の周辺には白いスケール(シュウ酸カルシウム)が発生している。
図10(b)(参考例2)では、
図10(a)の状態の吐出口に1.1L/分で90分間吐出した後の吐出口の状態を示す。
図11(a)(実施例3)では、
図10(a)と同様の状態の吐出口に泡状の洗浄液を1.1L/分で90分間吐出した後の吐出口の状態を示す。なお、実施例3における洗浄液は、軟水と、1%希釈のシュウ酸と、を含んでいる。
図11(b)(実施例4)では、実施例3を行った後に、続けて同じ洗浄液を1.1L/分で120分間、すなわち合計210分間吐出したあとの吐出口の状態を示す。
【0071】
図10(b)に示すように、参考例2では、吐出口の周辺に発生していた白いスケールが、当初(
図10(a))と比べて除去されている。この結果から、軟水によってある程度スケールを除去できることが分かった。
図11(a)に示すように、実施例3では、吐出口の周辺に発生していた白いスケールが、当初(
図10(a)と同様の状態)と比べて除去されている。更に、
図11(b)に示すように、実施例4では、実施例3において残留していたスケール80が、一部分を除いて概ね全体的に除去されたことが確認された。これらの結果から、軟水とシュウ酸を含む薬剤とを混合して得られる洗浄液によって、スケール(シュウ酸カルシウム)を除去できることが分かる。