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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033182
(43)【公開日】2022-02-28
(54)【発明の名称】大容量電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20220218BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220218BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220218BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20220218BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220218BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20220218BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M4/48
H01M4/36 E
H01M4/1395
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205121
(22)【出願日】2021-12-17
(62)【分割の表示】P 2018204042の分割
【原出願日】2015-04-25
(31)【優先権主張番号】61/984,118
(32)【優先日】2014-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/094,709
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515015241
【氏名又は名称】サウス ダコタ ボード オブ リージェンツ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ハイピン
(72)【発明者】
【氏名】サルム,デイヴィット アール.
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,グレゴリー リー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ルイドン
(57)【要約】
【課題】ナノチューブを、金属酸化物及び/若しくは金属粒子並びに/又はシリコン及び/若しくはシリコン酸化物を有する非凝集性の、好ましくは均質かつ均一な集積物に効率的かつ効果的に分散させ、それにより高性能エネルギー貯蔵システムのための一貫した電気伝導率特性及び/又は改善されたキャパシタンスを持つ材料を提供する。
【解決手段】電極は、カーボンナノ粒子並びに金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び/又は半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種を含む。界面活性剤は、カーボンナノ粒子と、金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子とを付着させ、電極組成物を形成する。バインダーは、電極組成物を結合させ、電極組成物がフィルム又は膜に形成され得るようにする。電極は、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カーボンナノ粒子、
(b)金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種、
(c)前記カーボンナノ粒子を前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種に付着させ、電極組成物を形成するための界面活性剤、及び
(d)前記電極組成物をフィルム又は膜に形成するためのバインダー、
を含む電極であって、
約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、電極。
【請求項2】
前記カーボンナノ粒子が、グラファイトナノ粒子、グラフェンナノ粒子、カーボンナノチューブ及び炭素繊維からなる群から選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記界面活性剤が、スルフェート基、スルホネート基、ピリジニウム基及びアンモニウム基のうちの1種を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及びベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)のうち少なくとも1種を含む、請求項3に記載の電極。
【請求項5】
前記電極がアノードである、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記電極がカソードである、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、下記の酸化物: Al2O3、CuO、MgO、SiO2、GeO2、B2O3、TeO2、V2O5、BiO2、Sb2O5、TiO2、ZnO、FeO、Fe2O3、Fe3O4、CrO3、NiO、Ni2O3、CoO、Co2O3、及びCo3O4のうち少なくとも1種を含み、前記電極が、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも600mAh/g活物質の比容量を有する、請求項5に記載の電極。
【請求項8】
前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、Fe2O3である、請求項5に記載の電極。
【請求項9】
前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、下記の酸化物: LiFePO4、LiCoO2、LiMn2O4、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNiO2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiMn3/2Ni1/2O4、LiFe1/2Mn1/2PO4、及びLi4Ti5O12のうち少なくとも1種を含む、請求項6に記載の電極。
【請求項10】
前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、下記:ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、コバルト、バナジウム、マンガン、ニオブ、鉄、ニッケル、銅、ホウ素、シリコン、チタン、ゲルマニウム、テルル、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、上述の金属及び半金属の酸化物、並びに前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種の合金のうち少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、シリコンである、請求項5に記載の電極。
【請求項12】
前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、ナノ粒子の形態である、請求項1に記載の電極。
【請求項13】
前記界面活性剤が正味負電荷を有し、前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種のpHpzcよりも高いpH値を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項14】
前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)からなる群から選択される、請求項13に記載の電極。
【請求項15】
前記界面活性剤が正味正電荷を有し、前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種のpHpzcよりも低いpH値を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項16】
前記界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド(BdhaCl)、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、アンプロリウムヒドロクロリド(AH)、及びベンゼトニウムクロリド(BC)からなる群から選択される、請求項15に記載の電極。
【請求項17】
前記カーボンナノ粒子並びに前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、非凝集性である、請求項1に記載の電極。
【請求項18】
前記カーボンナノ粒子並びに前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、均質に分散する、請求項17に記載の電極。
【請求項19】
前記バインダーが、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアルギネート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフルオレン、ポリウレタン、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ポリエチレンイミン、ポリ(1,3-ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル-co-アクリルアミド)、ポリスチレンブタジエンゴム、及びポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-9-フルオレノン-co-メチル安息香酸エステル)(PFM)のうち少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項20】
前記バインダーが、ポリアクリル酸(PAA)を含む、請求項19に記載の電極。
【請求項21】
(e)前記電極組成物が適用される金属集電体
を更に含む、請求項1に記載の電極。
【請求項22】
(e)前記電極組成物が適用される非金属導電性基材
を更に含む、請求項1に記載の電極。
【請求項23】
アノード、カソード、及びこれらの間に挟入された電解質を含む電池であって、前記アノードが、
(a)カーボンナノ粒子、
(b)金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種、
(c)前記カーボンナノ粒子を前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種に付着させ、アノード組成物を形成するための界面活性剤、及び
(d)前記アノード組成物をフィルム又は膜に形成するためのバインダー、
を含み、
前記アノードが、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、電池。
【請求項24】
前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及びベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)のうち少なくとも1種を含む、請求項23に記載の電池。
【請求項25】
前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、Fe2O3である、請求項23に記載の電池。
【請求項26】
前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、シリコンである、請求項23に記載の電池。
【請求項27】
アノードとカソードとを隔離するセパレーターを更に含む、請求項23に記載の電池。
【請求項28】
(a)界面活性剤、カーボンナノ粒子、並びに金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種を混合して、電極組成物を形成し、
(b)前記電極組成物とバインダーとを混合し、
(c)前記電極組成物を集電体上に層として適用するか、前記電極組成物を自立型フィルム又は膜として形成する
プロセスにより調製される電極であって、
約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、電極。
【請求項29】
ステップ(a)、(b)、及び(c)が逐次的に実行される、請求項28に記載の電極。
【請求項30】
界面活性剤、カーボンナノ粒子、並びに金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種を混合して、電極組成物を形成すること、
前記電極組成物とバインダーとを混合して、電極組成物をフィルム又は膜に形成すること、
を含む、電極を調製する方法であって、
これにより、前記電極が、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年4月25日に出願された米国特許仮出願番号第61/984,118号、及び2014年12月19日に出願された米国特許仮出願番号第62/094,709号に関連し、これらの出願の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、電気化学組成物及びこれらの組成物の調製方法に関する。組成物は、カーボンナノ材料と、金属酸化物、金属、半金属、及び/又は半金属酸化物粒子との、非凝集性の、好ましくは均質な集積物であり、高性能電極として使用される。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は現在、その高いエネルギー密度、比較的高いセル電圧、及び低い重量体積比のため、最も普及している充電式電池となっている。しかし、リチウムイオン電池の電圧、電荷容量、電池寿命、及び再充電性は、過去10年にわたり比較的小さな幅で向上してきた。
【0004】
新しい電池技術を開発することの1つの問題は、好適な電極組成物の選択である。Fe2 O3、Mn2O3及びCo2O3、グラファイト並びにシリコン(Si)などの電気化学的に活性な金属酸化物は、その高い理論容量のため、リチウムイオン電池用アノード材料としての使用を目的として研究されてきた。シリコン及び多くの金属酸化物は、典型的に、最初のサイクルにおける不可逆容量損失が大きく、サイクル中に急速な容量減退を示す。1サイクルとは、1回の充電及び1回の放電を指す。既存の市販アノードは、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、約300~400mAh/gの比容量を持つことが多く、不可逆的損失が生じることが多い。従って、複数の充電/放電サイクルにわたり約0.1C以上の充電/放電レートでサイクルさせる場合に約400mAh/gを超える比容量を達成することは困難であった。
【0005】
更に、通常、サイクリングプロセス中に比容積の大きな変化が生じ、電極の粉砕及び急速な容量劣化が生じることがある。更に、シリコンの膨張及び収縮は、電極の構造及び特性に影響することがある。
【0006】
ナノ材料、特にナノチューブの電池への応用は、大幅な機能向上をもたらし得ると考えられてきた。ナノ粒子は、サブミクロン(通常1000nm未満)の炭素材料及び/又はナノスケール(通常100nm未満)の炭素材料を含み得る。ナノ粒子は、好ましくは500nm未満、より好ましくは100nm、場合により約1nm以下である、少なくとも1つの寸法を有する。ナノ粒子には、例えば、ナノスフェア、ナノロッド、ナノカップ、ナノワイヤ、ナノクラスター、ナノファイバー、ナノレイヤー、ナノチューブ、ナノ結晶、ナノビーズ、ナノベルト及びナノディスクが含まれる。
【0007】
ナノチューブは、炭素系ナノ粒子などのナノ粒子によって形成された円筒形の構造体である。ナノチューブには、単層ナノチューブ(「SWNT」)、二層ナノチューブ(「DWNT」)を含む多層ナノチューブ(「MWNT」)、又はこれらの組合せがある。ナノチューブが炭素系である場合、上記の略語は「C-」によって修飾され、例えばC-SWNT及びC-MWNTとなる。
【0008】
単層カーボンナノチューブの構造は、単一のグラフェンシートが丸まり、継ぎ目のない円筒になり、末端が開放されているか、フラーレンの半球又は五角形などのより複雑な構造体によりキャップされているものと説明することができる。多層カーボンナノチューブは、2本以上のナノチューブが木の幹の輪のように同軸上で入れ子になり、層間の距離が通常約0.34nmとなっているものである。
【0009】
ナノ材料は、ディスプレイ及び太陽電池、電磁界干渉シールド、並びにセンサー用の透明電極を含む、幅広い工業用途を持つ。ナノ粒子、特に炭素、金属等の導電性ナノ粒子は、長年にわたり半導体及び電子機器の分野において公知であり、使用されてきた。このような粒子及びプロセスの例は、米国特許第7,078,276号、米国特許第7,033,416号、米国特許第6,878,184号、米国特許第6,833,019号、米国特許第6,585,796号、米国特許第6,572,673号、及び米国特許第6,372,077号に記載されている。これらの用途において整列したナノ粒子(ordered nanoparticles)を有することの利点も十分に証明されている(例えば米国特許第7,790,560号参照)。
【0010】
種々の材料のナノ粒子が、それらの種々の熱及び電気伝導率の特性に基づいて、様々な用途のために選択されてきた。多くの場合に使用されるナノ粒子としては、主に炭素原子で構成されるナノ粒子が挙げられ、カーボンナノ粒子、即ち、磁気感応性でない、ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ(C-SWNT及びC-MWNTを含む)、カーボンナノチューブ繊維(カーボンナノチューブ紡績糸)、炭素繊維、及びこれらの組合せが含まれる。カーボンナノ粒子には、構造的欠陥及び変種、チューブ配置、化学修飾及び官能基化、表面処理、並びにカプセル化を伴う粒子がある。
【0011】
特に、カーボンナノチューブは、電気及び熱伝導率と組み合わされる化学的安定性のため、非常に有望である。カーボンナノチューブは細長い円筒形の高分子であり、従って高い縦横比(粒子の直径に対する長さの比率)を有する。
【0012】
ナノ粒子、特にナノチューブは、各種組成物の強度、弾性、靭性、電気伝導率及び熱伝導率を強化することができる。ある種の用途では、材料中でのカーボンナノチューブの使用が望ましいが、実現は困難である。例えば、ナノチューブは、分散を損なう凝集体(バンドル又はアグロメレートとも呼ばれる)を形成しやすい。不均一な分散により、引張強度、弾性、靭性、電気伝導率、及び熱伝導率の低下及び変動を含む、様々な問題が生じ得る。一般に、単層カーボンナノチューブ及び/又は多層カーボンナノチューブを組み込んだ大部分の材料の調製は、機械的混合、溶融混練、溶媒混合、現場重合、及びこれらの組合せなどの方法を用いてポリマー中にナノチューブを十分に分散させることを目指してきた。単層及び多層カーボンナノチューブの均質な水性分散剤を開発する試みでは、国際(PCT)公開第02/016257号に記載されている系のように、ナノチューブと反応して水溶液系におけるナノチューブ溶解度をもたらす特定の水溶性ポリマーが使用されてきた。しかし、これらの試みでは、複数の要因のため所望の分散を得ることはできていない。ナノ粒子、特に多層、二層及び単層カーボンナノチューブは、凝集体を形成しやすく、これにより不均一な分散がもたらされる。更に、ナノ粒子、特にナノチューブは、混合及び強力な又は長時間の超音波処理などの既存の物理的分散方法の多くによって損傷を受ける、比較的壊れやすい構造を有することが多い。加えて、多くのナノ粒子の幾何学的形状及び分子内力は、より不均一な分散の傾向を強めると考えられている。
【0013】
以前の試みは、ナノ粒子及び金属酸化物を流体中に分散させるために行われた(例えば、米国特許出願公開第US2008/0302998号を参照されたい)。しかし、これらの試みは、望ましい電気伝導率及び固体電極の形成のためのカーボンナノ材料並びに金属酸化物及び/又は金属粒子を適切に分散させる取組みは行わなかった。同様に、米国特許第8,652,386号は、ナノ流体中の金属酸化物を用いることによる、ナノグリース及びナノ潤滑剤などのナノ流体中のカーボンナノチューブの磁気整列について記載しているが、先行技術において、電極などの有用な材料中でのカーボンナノ材料と金属酸化物並びに/又は金属及び/若しくは半金属粒子との均一分散並びに集積に成功した例は報告されていない。集積とは、イオン吸収粒子が一体的に混合され、イオン吸収粒子がカーボンナノ粒子に付着することを指す。
【0014】
米国特許出願公開第US2013/0224603号は、メソ多孔質(mesa-porous)グラフェンカソードを含む電極、並びに導電性フィラー及び/又は樹脂バインダーと混合されたリチウムの挿入及び脱離のための活物質を含むアノードを記載している。しかし、開示された方法は、単純な成分混合を行う従来的方法によるアノード構築を含む、いくつかの制限を持ち、活物質の均一分散又は活物質の導電性フィラーへの強固な付着を実現するための方法を含んでいない。
【0015】
同様に、米国特許第8,580,432号は、ナノグラフェンプレートと混合され保護マトリックス材料に組み込まれたサブミクロン粒子、ロッド、ワイヤ、繊維又はチューブの形態でのリチウムイオン導電性材料を含む、リチウムイオン電池電極用途向け組成物を記載している。しかし、上記特許は、マトリックス材料中での成分の均一分散又はサブミクロン添加剤及びナノグラフェンプレートの均質分布を確保する方法を開示していない。
【0016】
カーボンナノ粒子を分散させる試みでは、Niコーティングナノチューブを含む磁気感応性基により官能化されたナノチューブが使用されてきた。しかし、一度官能化されるとナノチューブの共役構造が壊れて表面特性の変化が生じるという事実により、官能化ナノチューブでは、電気伝導率、強度及びその他の機械的特性が部分的に低下することが判明し、このアプローチは失敗した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、ナノチューブを、金属酸化物及び/若しくは金属粒子並びに/又はシリコン及び/若しくはシリコン酸化物を有する非凝集性の、好ましくは均質かつ均一な集積物に効率的かつ効果的に分散させ、それにより高性能エネルギー貯蔵システムのための一貫した電気伝導率特性及び/又は改善されたキャパシタンスを持つ材料を提供するという重要な技術的課題が残されている。
【0018】
電極の一体性及び機能性がイオン吸収成分の体積変換の影響を受けない形で、高性能電極向けのナノチューブ及びグラフェンなどの電気導電性カーボンナノ粒子の本質的に均質かつ均一な集積を実現するための、新しい方法が必要とされている。このような方法により、エネルギー貯蔵システムの容量、性能、及び寿命が大幅に向上する可能性がある。以下に説明する実施形態の1つでは、電極として使用するために、カーボンナノ粒子が、金属、金属酸化物、シリコン及び/又はシリコン酸化物のうち少なくとも1種と集積される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の電極は、カーボンナノ粒子;金属、金属酸化物、半金属、及び/又は半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種;カーボンナノ粒子を金属、金属酸化物、半金属、及び/又は半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種に付着させ電極組成物を形成するための界面活性剤;並びに電極組成物をフィルムに形成するためのバインダーを含む。電極は、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるときに少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実質的な凝集なしで分散し、カーボンナノ繊維に付着した酸化鉄(Fe2O3)ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。使用された界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであった。
図2】実質的な凝集なしで分散し、カーボンナノ繊維に付着したシリコン(Si)ナノ粒子のSEM画像を示す。使用された界面活性剤はセチルトリメチルアンモニウムブロミドであった。
図3】実質的な凝集なしで分散し、単層カーボンナノチューブ(C-SWNT)に付着したシリコン(Si)ナノ粒子のSEM画像を示す。使用された界面活性剤はセチルトリメチルアンモニウムブロミドであった。
図4】実質的な凝集なしで分散し、単層カーボンナノチューブ(C-SWNT)に付着したシリコン(Si)ナノ粒子のSEM画像を示す。使用された界面活性剤はベンゼトニウムクロリドであった。
図5】実質的な凝集なしで分散し、グラフェンに付着した酸化鉄(Fe2O3)ナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)画像を示す。使用された界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであった。
図6】実質的な凝集なしで分散し、グラフェンに付着したシリコン(Si)ナノ粒子のTEM画像を示す。使用された界面活性剤はベンゼトニウムクロリドであった。
図7】アノード及び/又はカソードが本明細書に記載の電極組成物を有する薄膜リチウムイオン電池の断面図である。
図8】界面活性剤が調合物に含まれず、活物質としてグラフェンナノ粒子と混合されたFe2O3ナノ粒子を含有する電極について、放電サイクル(活物質の単位質量当たり)から複数の(充電/放電)サイクルにわたり測定された比容量を示すグラフである。
図9】材料調製においてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム界面活性剤が使用され、活物質としてグラフェンナノ粒子と混合されたFe2O3ナノ粒子を含有するアノード材料について、放電サイクル(活物質の単位質量当たり)から94回の(充電/放電)サイクルにわたり測定された比容量を示すグラフである。
図10】材料調製においてベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド界面活性剤が使用され、活物質としてカーボンナノチューブと混合されたシリコンナノ粒子を含有するアノード材料について、放電サイクル(活物質の単位質量当たり)から23回の(充電/放電)サイクルにわたり測定された比容量を示すグラフである。
図11】電気化学電池セル用電極を形成する例示的方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の電極組成物は、エネルギー貯蔵システムにおける大容量及び高性能を有する。本明細書にて開示する電極組成物は、非凝集性の、好ましくは均質かつ均一な分散において、金属酸化物、金属粒子、半金属粒子及び/又は半金属酸化物に付着したカーボンナノ粒子又はナノチューブを含む。
【0022】
記載された範囲は、その範囲内に包含された全ての整数及び少数を同定することを意味している。
【0023】
電極組成物
非凝集性の、好ましくは均質に分散した、カーボンナノチューブなどのカーボンナノ材料、並びに金属酸化物、金属、半金属、及び/又は半金属酸化物粒子は、電極に使用されるその他の材料に対して様々な利点をもたらす。ナノ粒子の非凝集分散は、イオン又は電子の流れを改善し、より精密な整列構造(more ordered structure)をもたらし、種々の機械的及び電気的特性を強化すると考えられている。これにより材料全体の構造特性が改善され、従って、限定されないが、電気伝導率、熱伝導率、増加した引張係数(硬さ)、曲げ弾性率、引張強度、曲げ強度、弾性、及び靭性を含む、物理的特性が改善され得る。更に、分散及び集積は、ナノ粒子間の凝集を防止するか、少なくとも低減し、付着した成分の物理的性質を強化する。
【0024】
本発明の電極組成物の成分は、その安定性、溶解度、熱物理的特性、電気的特性、機械的特性、サイズ的特性、及びゼータ電位(例えば、表面電荷)特性に基づいて選択することができる。
【0025】
特定のpH値は、ナノ粒子の分散を促進し、カーボンナノ粒子を金属酸化物及び/又は金属粒子並びにこれらの組合せに付着させることができる。一実施形態において、界面活性剤が正味負電荷を持つ場合、ナノ粒子流体のpHは約5より大きくなる。別の実施形態において、界面活性剤が正味正電荷を持つ場合、溶媒中のナノ粒子/ホスト材料混合物のpHは約10より小さくなる。
【0026】
カーボンナノ粒子
本発明の電極組成物には、カーボンナノ粒子が含まれる。カーボンナノ粒子は、しばしば金属材料の電気伝導率を超える、高い電気伝導率を持つ。カーボンナノ粒子は、サブミクロンナノ繊維を含むナノ粒子を包含する。カーボンナノ粒子の多くの形態は、本発明の組成物における使用に適しており、活性炭ナノ粒子、多孔質カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト、グラフェン、ナノ繊維、及びこれらの組合せを含む。
【0027】
カーボンナノチューブ(CNT)は、しばしば金属物質の熱伝達率及び熱導電率を超える、高い熱伝達率及び高い熱導電率を持つ。例えば、C-SWNTは、理想的条件下で2000~6000W/m-Kという高い熱伝導率値を示す。C-SWNT、C-MWNT、中空カーボンナノ繊維、及びこれらの組合せを含む、CNTの多くの形態が、本発明の組成物において使用され得る。
【0028】
多くのナノチューブ、特にCNTでは、基本的構造要素は、グラファイトに見られるものと同じ六角形である。六方格子に対するチューブの軸の方向に基づいて、ナノチューブは、アームチェア、ジグザグ、及びキラル(螺旋状としても知られる)という3つの異なる構成をとり得る。アームチェア構成では、チューブの軸は、六方格子の6つの炭素-炭素結合の2つに対して垂直になっている。ジグザグ構成では、チューブの軸は、六方格子の6つの炭素-炭素結合の2つに対して平行になっている。これらの構成はいずれもアキラルである。キラル構成では、チューブの軸は、六方格子の6つの炭素-炭素結合のうち1つに対して90度又は180度以外の角度を形成する。これらの構成のナノチューブは、多くの場合、異なる物理的及び化学的特性を示す。例えば、アームチェアナノチューブは通常、金属様であるが、ジグザグナノチューブは、ナノチューブの直径に依存して金属様又は半導性となり得る。3つの異なる構成は全て、チューブ軸に沿う方向では非常に良好な熱導体となり、「バリスティック伝導」として知られる特性を示すが、チューブ軸に対して横向きの方向では良好な絶縁体となると期待されている。
【0029】
一般的な六角形構造に加えて、ナノチューブ分子の円筒は、五角形、七角形、及び八角形などの他のサイズの環を包むこともできる。通常の六角形のいくつかを五角形及び/又は七角形などの他の環構造に置き換えると、円筒に対して屈曲、ねじれ、又は直径の変化を生じさせることができ、従って、Y形、T形、及びX形分岐などのいくつかの興味深い構造、並びに異なる化学的活性を得ることができる。これらの種々の構造的変種及び構成は、SWNTとMWNT両方に見出すことができる。
【0030】
本発明の電極組成物に使用されるナノチューブは、アームチェア、ジグザグ、キラル、又はこれらの組合せによる構成を持ち得る。ナノチューブはまた、五角形、七角形、八角形、又はこれらの組合せなどの、六角形以外の構造要素を含むことができる。
【0031】
MWNT分子の別の構造的変種は、複数のナノチューブを配置したものである。代表的なC-MWNTは、例えば、重なったグラフェンシートを丸め、各層が中心軸に対して平行になった同心円筒状にしたものである。ただし、グラファイト底面とチューブ軸との間に角度が形成されるように、チューブを配置することもできる。そのようなMWNTは、炭素系かどうかに関わらず、積層円錐形、山形、竹形、アイスクリームコーン形、又はパイルコーン形構造として知られている。積層円錐形MWNTは、直径約100μmに達することがある。これらの構造的変種に関わらず、多くのタイプのMWNTは、本発明の組成物における使用に適している。
【0032】
使用されるナノチューブは、囲い込まれた管状構造内部に他の元素及び/又は分子を内包することもできる。上記の元素としては、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ta、Au、Th、La、Ce、Pr、Nb、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Mo、Pd、Sn、及びWが挙げられる。上記の分子としては、コバルトとS、Br、Ph、Pt、Y、Cu、B、及びMgの合金などの上記元素の合金、並びにTiC及びMoCなどの炭化物などの化合物が挙げられる。ナノチューブのコア構造にこれらの元素、合金及び化合物が存在する場合、熱及び/又は電気伝導率などの種々の特性が強化され得る。
【0033】
ナノチューブは種々の販売元から市販されている。所望の構造及び特性を有するナノチューブを製造するための十分な情報を掲載した多くの刊行物が入手可能となっている。一般的な技法は、アーク放電、レーザーアブレーション、化学蒸着、及び燃焼合成である。化学蒸着は、低コストで大量のナノチューブを生産できる点で非常に有望である。化学蒸着は通常、600°C超の温度にて、アセチレン、エチレン又はエタノールなどの炭素含有ガスをコバルト、ニッケル、又はイオンなどの金属触媒粒子と反応させることにより行われる。
【0034】
具体的なナノチューブの選択は多数の因子によって変わる。因子としては、電気及び熱伝導率、質量、引張強度などの所望の物理的特性、費用効果、溶解度、並びに分散及び沈降性質が挙げられる。本発明の材料のいくつかの実施形態において、選択されたナノチューブは、CNTを含み、それらから成り、又はそれらから本質的に成る。その他の実施形態又は同一の実施形態において、ナノチューブは、SWNTを含み、それらから成り、又はそれらから本質的に成る。その他の実施形態において、ナノチューブは、多層ナノチューブ(MWNT)を含み、それらから成り、又はそれらから本質的に成る。更に他の実施形態において、ナノチューブは、化学的に官能化されたCNTを含み、それらから成り、又はそれらから本質的に成る。
【0035】
その他の実施形態において、カーボンナノ粒子は、単層、二層又は多層グラフェンである。更に他の実施形態において、カーボンナノ粒子は、単層、二層又は多層グラフェン酸化物又はその他の官能化グラフェンであり得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約5重量%~95重量%のカーボンナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約10重量%~75重量%のカーボンナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約15重量%~50重量%のカーボンナノ粒子を含む。
【0037】
金属酸化物粒子
本発明の電極組成物は、金属酸化物粒子を更に含むことができる。特定の実施形態において、金属酸化物粒子はナノ粒子である。金属酸化物粒子は、1つ以上の金属酸化物を含むナノスケール粒子である。好適な金属酸化物としては、限定されないが、Al2O3、CuO、MgO、V2O5、BiO2、Sb2O5、TiO2、ZnO、Fe2O3、Fe3O4、CrO3、NiO、Ni2O3、CoO、Co2O3、及びCo3O4が挙げられる。更に、指示のない限り、ナノ粒子の化学式は、可能な結晶質形態、及び/又は、該当する場合、非晶質形態のいずれかを表す。例えば、化学式Al2O3は、α-、β-、若しくはγ-酸化アルミニウム、又はこれらの組合せを表すことができる。
【0038】
本発明の組成物のいくつかの実施形態において、金属酸化物粒子は、例えば6~10、7~10、8~10、及び9~10のpHゼロ電荷点(pHpzc)を有する。代表的な金属酸化物である、MgO、CuO、Al2O3、Fe2O3及びFe3O4は、約6~約10のpHpzcを有する。シリコンは約4~約5のpHpzcを有する。「pHpzc」とは、金属酸化物粒子、金属粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子を含む流体のpH値であって、金属酸化物粒子、金属粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子が中性表面電荷を示すときの値を意味する。
【0039】
本発明の組成物のいくつかの実施形態において、金属酸化物は組成物の約5重量%~95重量%となる。いくつかの実施形態において、金属酸化物は組成物の約10重量%~90重量%となる。いくつかの実施形態において、金属酸化物は組成物の約15重量%~85重量%となる。
【0040】
金属粒子
本発明の電極組成物は、金属粒子を更に含み得る。いくつかの実施形態において、金属粒子はナノ粒子であり得る。好適な金属粒子としては、限定されないが、ランタニド(例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム)、コバルト、バナジウム、マンガン、ニオビウム、鉄、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、スズ、その他の希土類金属、例えばスカンジウム及びイットリウムなど、並びに上述の金属及び/又は金属酸化物の組合せ及び合金が挙げられる。本発明の材料のいくつかの実施形態では、金属粒子として、限定されないが、NdFeB、Fe及びNiが挙げられる。
【0041】
本発明の電極組成物のいくつかの実施形態において、金属粒子は組成物の約5重量%~95重量%となる。いくつかの実施形態において、金属酸化物は組成物の約10重量%~90重量%となる。いくつかの実施形態において、金属酸化物は組成物の約15重量%~85重量%となる。
【0042】
半金属粒子
本発明の電極組成物は、半金属粒子を更に含み得る。いくつかの実施形態において、半金属粒子はナノ粒子であり得る。好適な半金属粒子としては、限定されないが、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、テルル、並びに上述の半金属の酸化物、組合せ、及び合金が挙げられる。好適な半金属酸化物としては、限定されないが、SiO2、GeO2、B2O3、及びTeO2、並びに/又は、該当する場合、非晶質形態が挙げられる。更に、指示のない限り、ナノ粒子の化学式は、可能な結晶質形態のいずれかを表す。例えば、化学式B2O3は、α-若しくはβ-ボロンオキシド、又はこれらの組合せを表すことができる。
【0043】
本発明の電極組成物のいくつかの実施形態において、半金属粒子は組成物の約5重量%~95重量%となる。いくつかの実施形態において、金属酸化物は組成物の約10重量%~90重量%となる。いくつかの実施形態において、金属酸化物は組成物の約15重量%~85重量%となる。
【0044】
界面活性剤
界面活性剤は、湿潤剤、分散剤、乳化剤、洗浄剤、及び発泡剤を含む、表面活性を有する分子又は分子グループである。本発明の材料を調製する際に、材料中でのナノ粒子の均一分散を促進するため、及び/又はそのような分散の安定化を強化するため、種々の界面活性剤が、分散剤として使用され得る。典型的に、使用される界面活性剤は、親油性非極性炭化水素基及び極性官能性親水基を含有する。極性官能基は、カルボキシレート、エステル、アミン、アミド、イミド、ヒドロキシル、エーテル、ニトリル、ホスフェート、スルフェート、又はスルホネートであり得る。界面活性剤は単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。従って、界面活性剤の組合せとしては、界面活性剤分子の集合体の頭部に正味正電荷又は負電荷が存在する限りにおいて、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性、両性、及び両性イオン性界面活性剤が挙げられる。多くの場合、本発明の電極組成物を調製する際に、負又は正に荷電した単一の界面活性剤が用いられる。
【0045】
従って、本発明の電極組成物の調製に用いられる界面活性剤は、アニオン性であってもよく、限定されないが、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルファオレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、及びアルキルエステルスルホネートなどのスルホネート;アルキルスルフェート、アルキルアルコキシスルフェート、及びアルキルアルコキシル化スルフェートなどのスルフェート;モノアルキルホスフェート及びジアルキルホスフェートなどのホスフェート;ホスホネート;脂肪酸、アルキルアルコキシカルボキシレート、サルコシネート、イセチオネート、及びタウレートなどのカルボキシレートを含む。カルボキシレートの具体例は、オレイン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、オレオイルメチルタウリンナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、トリデセスカルボン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン、及びココイルサルコシン塩である。スルフェートの具体例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウム、トリデシル硫酸ナトリウム、ココイル硫酸ナトリウム、及びラウリルモノグリセリド硫酸ナトリウム(lauric monoglyceride sodium sulfate)が挙げられる。
【0046】
好適なスルホネート界面活性剤としては、限定されないが、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、モノアルキル及びジアルキルスルホスクシネート、並びにモノアルキル及びジアルキルスルホスクシナメートが挙げられる。各アルキル基は独立して約2~20個の炭素を含み、各アルキル基につき最大約8単位、好ましくは最大約6単位、平均して例えば2、3、又は4単位のエチレンオキシドにより、エトキシル化することもできる。アルキルスルホネート及びアリールスルホネートの実例は、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(STBS)及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)である。
【0047】
スルホスクシネートの実例としては、限定されないが、ジメチコンコポリオールスルホスクシネート、ジアミルスルホスクシネート、ジカプリルスルホスクシネート(dicapryl sulfosuccinate)、ジシクロヘキシルスルホスクシネート、ジヘプチルスルホスクシネート(diheptyl sulfosuccinate)、ジヘキシルスルホスクシネート、ジイソブチルスルホスクシネート、ジオクチルスルホスクシネート、C12~15パレススルホスクシネート、セテアリルスルホスクシネート、ココポリグルコーススルホスクシネート、ココイルブチルグルセス(gluceth)-10スルホスクシネート、デセス-5スルホスクシネート、デセス-6スルホスクシネート、ジヒドロキシエチルスルホスクシニルウンデシレネート(dihydroxyethyl sulfosuccinylundecylenate)、水素添加綿実グリセリドスルホスクシネート(hydrogenated cottonseed glyceride sulfosuccinate)、イソデシルスルホスクシネート、イソステアリルスルホスクシネート、ラネス-5スルホスクシネート、ラウレススルホスクシネート、ラネス-12スルホスクシネート、ラネス-6スルホスクシネート、ラネス-9スルホスクシネート、ラウリルスルホスクシネート、ノノキシノール-10スルホスクシネート、オレス-3スルホスクシネート、オレイルスルホスクシネート、PEG-10ラウリルシトレートスルホスクシネート、シトセレス(sitosereth)-14スルホスクシネート、ステアリルスルホスクシネート、タロー、トリデシルスルホスクシネート、ジトリデシルスルホスクシネート、ビスグリコールリシノスルホスクシネート(bisglycol ricinosulfosuccinate)、ジ(1,3-ジメチルブチル)スルホスクシネート、及びシリコーンコポリオールスルホスクシネートが挙げられる。
【0048】
スルホスクシナメートの実例としては、限定されないが、ラウラミド(lauramido)-MEAスルホスクシネート、オレアミド(oleamido)PEG-2スルホスクシネート、コカミド(cocamido)MIPA-スルホスクシネート、コカミドPEG-3スルホスクシネート、イソステラミド(isostearamido)MEA-スルホスクシネート、イソステラミドMIPA-スルホスクシネート、ラウラミドMEA-スルホスクシネート、ラウラミドPEG-2スルホスクシネート、ラウラミドPEG-5スルホスクシネート、ミリスタミド(myristamido)MEA-スルホスクシネート、オレアミドMEA-スルホスクシネート、オレアミドPIPA-スルホスクシネート、オレアミドPEG-2スルホスクシネート、パルミタミド(palmitamido)PEG-2スルホスクシネート、パルミトレアミド(palmitoleamido)PEG-2スルホスクシネート、PEG-4コカミドMIPA-スルホスクシネート、リシノールアミド(ricinoleamido)MEA-スルホスクシネート、ステラミド(stearamido)MEA-スルホスクシネート、ステアリルスルホスクシナメート、トールアミド(tallamido)MEA-スルホスクシネート、タロースルホスクシナメート、タローアミドMEA-スルホスクシネート、ウンデシレンアミド(undecylenamido)MEA-スルホスクシネート、ウンデシレンアミドPEG-2スルホスクシネート、小麦胚芽アミド(wheat germamido) MEA-スルホスクシネート、及び小麦胚芽アミドPEG-2スルホスクシネートが挙げられる。
【0049】
市販のスルホネートの例としては、AEROSOL(登録商標)OT-S、AEROSOL(登録商標)OT-MSO、AEROSOL(登録商標)TR70%(Cytec Inc.、West Paterson、N.J.)、NaSul CA-HT3(King Industries、Norwalk、Conn.)、及びC500(Crompton Co.、West Hill、Ontario、Canada)がある。AEROSOL(登録商標)OT-Sは、石油蒸留物中のジオクチルスルホコハク酸ナトリウムである。AEROSOL(登録商標)OT-MSOも、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを含有する。AEROSOL(登録商標)TR70%は、エタノールと水との混合物中のビストリデシルスルホコハク酸ナトリウムである。NaSul CA-HT3は、ジノニルナフタレンスルホン酸/カルボン酸カルシウム複合体である。C500は油溶性スルホン酸カルシウムである。
【0050】
アルキル又はアルキル基とは、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、環状アルキル基(又はシクロアルキル若しくは脂環若しくは炭素環基)(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等)、分岐鎖アルキル基(例えば、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル等)、並びにアルキル置換アルキル基(例えば、アルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基)を含む、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を指す。
【0051】
アルキルは、非置換アルキル基及び置換アルキル基を含み得る。置換アルキルとは、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素に結合した1つ以上の水素を置き換える置換基を有するアルキル基を指す。そのような置換基としては、アルケニル、アルキニル、ハロゲノ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート(phosphinato)、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド(sulfonamido)、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、複素環式、アルキルアリール又は芳香族(ヘテロ芳香族を含む)基を挙げることができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、置換アルキルは複素環基を含むことがある。複素環基は、環中の炭素原子の1つ以上が炭素以外の元素、例えば窒素、硫黄又は酸素になっている炭素環基に類似した閉環構造を含む。複素環基は飽和又は不飽和であり得る。代表的な複素環基としては、アジリジン、エチレンオキシド(エポキシド、オキシラン)、チイラン(エピスルフィド)、ジオキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ジオキセタン、ジチエタン、ジチエト、アゾリジン、ピロリジン、ピロリン、オキソラン、ジヒドロフラン及びフランが挙げられる。
【0053】
アニオン性界面活性剤の場合、対イオンは、典型的にナトリウムであるが、代替的にカリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アミン(一級、二級、三級又は四級(quandary))又はその他の有機塩基であってもよい。代表的なアミンとしては、イソプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。上記カチオンの混合物を用いることもできる。
【0054】
本発明の材料の調製において使用される界面活性剤はカチオン性であり得る。そのようなカチオン性界面活性剤としては、限定されないが、ピリジニウム含有化合物、及び一級、二級、三級又は四級有機アミンが挙げられる。カチオン性界面活性剤の場合、対イオンは、例えばクロリド、ブロミド、メトスルフェート、エトスルフェート、ラクテート、サッカリネート(saccharinate)、アセテート及びホスフェートであり得る。カチオン性アミンの例としては、ポリエトキシレート化オレイル/ステアリルアミン、エトキシル化タローアミン、ココアルキルアミン、オレイルアミン及びタローアルキルアミン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
単一の長鎖アルキル基を有する四級アミンの例は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド(BdhaCl)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアミニウムブロミド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、オレイルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムメトスルフェート(ココトリモニウムメトスルフェートとしても知られる)、セチルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムジハイドロジェンホスフェート(cetyl-dimethyl hydroxyethyl ammonium dihydrogen phosphate)、バッスアミドプロピルコニウムクロリド(bassuamidopropylkonium chloride)、ココトリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、小麦胚芽アミドプロパルコニウムクロリド(wheat germ-amidopropalkonium chloride)、ステアリルオクチルジモニウムメトスルフェート(stearyl octyidimonium methosulfate)、イソステアルアミノプロパル(isostearaminopropal)-コニウムクロリド、ジヒドロキシプロピルPEG-5リノレアンモニウム(linoleammonium)クロリド、PEG-2ステアルモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、タロートリモニウムクロリド(tallow trimonium chloride)、及びベヘナミドプロピルエチルジモニウムエトスルフェートである。
【0056】
2つの長鎖アルキル基を有する四級アミンの例は、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、ジステアリルジモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、ステアリルオクチルジモニウムメトスルフェート(stearyl octyldimonium methosulfate)、ジヒドロ添加パルモイルエチル(palmoylethyl)ヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、ジオレオイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、及びヒドロキシプロピルビスステアリルジモニウムクロリドである。
【0057】
イミダゾリン誘導体の四級アンモニウム化合物としては、例えば、イソステアリルベンジルイミドニウム(benzylimidonium)クロリド、ココイルベンジルヒドロキシエチルイミダゾリニウムクロリド、ココイルヒドロキシエチルイミダゾリニウムPG-クロリドホスフェート、及びステアリルヒドロキシエチルイミドニウム(hydroxyethylimidonium)クロリドが挙げられる。その他の複素環四級アンモニウム化合物、例えば、ドデシルピリジニウムクロリド、アンプロリウムヒドロクロリド(AH)、及びベンゼトニウムヒドロクロリド(BH)も使用することができる。
【0058】
本発明の材料の調製において使用される界面活性剤は、非イオン性であり得、限定されないが、ポリアルキレンオキシドカルボン酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、エトキシル化脂肪アルコール、ポロキサマー、アルカノールアミド、アルコキシル化アルカノールアミド、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、及びアルキルポリサッカリドを含む。ポリアルキレンオキシドカルボン酸エステルは、それぞれ約8~20個の炭素を持つ1つ又は2つのカルボン酸エステル部分、及び約5~200個のアルキレンオキシド単位を含有するポリアルキレンオキシド部分を有する。エトキシル化脂肪アルコールは、約5~150個のエチレンオキシド単位を含むエチレンオキシド部分、及び約6~30個の炭素を持つ脂肪アルコール部分を含有する。脂肪アルコール部分は、環状、直鎖状、又は分枝状であり得、飽和又は不飽和であり得る。エトキシル化脂肪アルコールの例としては、オレスアルコール、ステアレスアルコール、ラウリルアルコール及びイソセチルアルコールのエチレングリコールエーテルが挙げられる。ポロキサマーは、約15~約100モルのエチレンオキシドを有するエチレンオキシド及びプロピレンオキシドブロックコポリマーである。アルキルポリサッカリド(「APS」)界面活性剤(例えば、アルキルポリグリコシド)は、約6~約30個の炭素を有する疎水性基、及び親水性基としてのポリサッカリド(例えば、ポリグリコシド)を含有する。市販の非イオン性界面活性剤の例は、FOA-5 (Octel Starreon LLC.、Littleton、Colo.)である。
【0059】
好適な非イオン性界面活性剤の具体例としては、コカミドジエタノールアミド (「DEA」)、コカミドモノエタノールアミド(「MEA」)、コカミドモノイソプロパノールアミド(「MIPA」)、PEG-5コカミドMEA、ラウラミドDEA、及びラウラミドMEAなどのアルカノールアミド;ラウラミンオキシド、ココアミンオキシド、ココアミドプロピルアミンオキシド、及びラウラミドプロピルアミンオキシドなどのアルキルアミンオキシド;ソルビタンラウレート、ソルビタンジステアレート、ラウリン酸、イソステアリン酸及びPEG-150ジステアレートなどの脂肪酸又は脂肪酸エステル;ラウリルアルコールなどの脂肪アルコール又はエトキシル化脂肪アルコール、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、及びココグルコシドなどのアルキルポリグルコシドが挙げられる。
【0060】
本発明の材料の調製において使用される界面活性剤は、同一分子内に形式正電荷と形式負電荷の両方を持ち、両性イオン性であり得る。正電荷基は四級アンモニウム、ホスホニウム、又はスルホニウムであり得るのに対して、負電荷基はカルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート又はホスホネートであり得る。他のクラスの界面活性剤と同様に、疎水部分は、約8~18個の炭素原子を持つ1つ以上の長鎖、直鎖、環状、又は分枝状脂肪鎖を含有し得る。両性イオン性界面活性剤の具体例としては、ココジメチル(cocodimethyl)カルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルα-カルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルγ-カルボキシプロピルベタイン、及びラウリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)αカルボキシ-エチル(alphacarboxy-ethyl)ベタイン、アミドプロピルベタインなどのアルキルベタイン;並びにココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチル(stearyidimethyl)スルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)スルホプロピルベタイン、及びアルキルアミドプロピルヒドロキシ(alkylamidopropylhydroxy)スルタインなどのアルキルスルタインが挙げられる。
【0061】
本発明の材料の調製において使用される界面活性剤は、両性であり得る。好適な両性界面活性剤としては、アルキルアンホ(ampho)カルボキシグリシネート及びアルキルアンホカルボキシプロピオネート、アルキルアンホジプロピオネート、アルキルアンホジアセテート、アルキルアンホグリシネート、及びアルキルアンホプロピオネート、並びにアルキルイミノ(imino)プロピオネート、アルキルイミノジプロピオネート、及びアルキルアンホプロピルスルホネートのアンモニウム又は置換アンモニウム塩が挙げられる。具体例は、ココアンホアセテート、ココアンホプロピオネート、ココアンホジアセテート、ラウロアンホアセテート、ラウロアンホジアセテート、ラウロアンホジプロピオネート、ラウロアンホジアセテート、ココアンホプロピルスルホネート、カプロ(capro)アンホジアセテート、カプロアンホアセテート、カプロアンホジプロピオネート、及びステアロアンホアセテートである。
【0062】
本発明の材料の調製において使用される界面活性剤はまた、N-置換ポリイソブテニルスクシンイミド及びスクシネート、アルキルメタクリレートビニルピロリジノンコポリマー、アルキルメタクリレート-ジアルキルアミノエチルメタクリレートコポリマー、アルキルメタクリレートポリエチレングリコールメタクリレートコポリマー、ポリステアルアミド、及びポリエチレンイミンなどのポリマーであり得る。
【0063】
本発明の材料の調製において使用される界面活性剤は、アルキルスクシンイミド、スクシネートエステル、高分子量アミン、並びにマンニッヒ塩基及びリン酸誘導体を含む、オイルベースの分散剤であり得る。具体例としては、ポリイソブテニルスクシンイミド-ポリエチレンポリアミン、ポリイソブテニルスクシネートエステル、ポリイソブテニルヒドロキシベンジル-ポリエチレンポリアミン、及びビス-ヒドロキシプロピルホスホレート(phosphorate)がある。
【0064】
本発明の材料の調製において使用される界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性、両性、及び両性イオン性界面活性剤からなる群から選択される、同一又は異なる種類の2種以上の界面活性剤の組合せであってもよい。同一の種類の2種以上の界面活性剤の組合せの好適例としては、限定されないが、2種のアニオン性界面活性剤の混合物、3種のアニオン性界面活性剤の混合物、4種のアニオン性界面活性剤の混合物、2種のカチオン性界面活性剤の混合物、3種のカチオン性界面活性剤の混合物、4種のカチオン性界面活性剤の混合物、2種の非イオン性界面活性剤の混合物、3種の非イオン性界面活性剤の混合物、4種の非イオン性界面活性剤の混合物、2種の両性イオン性界面活性剤の混合物、3種の両性イオン性界面活性剤の混合物、4種の両性イオン性界面活性剤の混合物、2種の両性界面活性剤の混合物、3種の両性界面活性剤の混合物、4種の両性界面活性剤の混合物、2種の両性イオン性界面活性剤の混合物、3種の両性イオン性界面活性剤の混合物、及び4種の両性イオン性界面活性剤の混合物が挙げられる。
【0065】
本発明の電極組成物及びそれらの調製方法では、界面活性剤が一定の重量パーセントの組成物として電極組成物に添加される。一実施形態において、界面活性剤は、最終組成物の約0.01重量%~10重量%の量で存在する。別の実施形態では、界面活性剤は、最終組成物の約0.1重量%~5重量%の量で存在する。更に別の実施形態では、界面活性剤は、最終組成物の約0.5重量%~3重量%の量で添加される。
【0066】
バインダー
本発明の電極組成物は、電極への混和に適した1種以上のバインダーを含むことができ、バインダーは、電極組成物を、自立した又は銅箔などの集電体上に沈着したフィルム及び/又は膜に形成することを可能にするか促進する。沈着の場合、バインダーは、集電体に対して、ある程度高い接着性を有することが好ましい。膜は、選択的遮断特性又は選択的移動特性を与えるのに対し、フィルムは、単に薄く連続的な基材であり、多孔質かつ/又は柔軟性であってもよく、そのいずれでなくてもよい。本発明の電極組成物は、電解質の取込みを促進することを意図したものであるため、フィルム又は膜として調製することができる。バインダーは、電気化学的に安定でありイオンの移動を促進するものが好ましい。
【0067】
バインダーは導電性又は非導電性であり得る。例としては、限定されないが、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアルギネート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフルオレン、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ポリエチレンイミン、ポリ(アクリロニトリル-co-アクリルアミド)、ポリスチレンブタジエンゴム、及びポリ-1,3-ブタジエン、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0068】
本発明の電極組成物のいくつかの実施形態において、バインダーは、最終電極組成物の約0.1重量%~40重量%を占める。本発明の電極組成物のいくつかの実施形態において、バインダーは、最終電極組成物の約0.5重量%~30重量%を占める。更に別の実施形態において、バインダーは、最終電極組成物の約1重量%~25重量%を占める。
【0069】
任意選択成分
本発明の電極組成物はまた、その他の所望の化学又は物理的特性及び性質を実現するために、1つ以上のその他の任意選択成分を(カーボンナノ粒子/金属又は半金属系粒子混合物及び界面活性剤並びに任意のバインダーに加えて)含有し得る。以下で個別に説明する任意選択成分に加えて、染料及び脱泡剤などの他の多くの公知の任意選択成分も、本発明の組成物に含まれ得る。一般に、任意選択成分は、組成物の性能特性及び性質を強化するのに十分である少量が組成物中にて用いられる。従って、この量は、組成物の使用目的及び特性により変わる。場合によって、任意選択成分は、調合時に含まれることがあるが、加工プロセスにおいて殆どが洗い流され、最終組成物中にわずかしか残らないか、全く残らない。
【0070】
好適な任意選択成分としては、限定されないが、接着促進剤、酸化防止剤、緩衝剤、腐食防止剤、染料、顔料、電解質、流体、摩擦調整剤、電解質、導電助剤、ホスト材料、スケール防止剤、シール膨潤剤、溶剤、安定剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0071】
接着及び硬化促進剤
本発明の組成物は、1種以上の接着及び硬化促進剤を含み得る。接着及び硬化促進剤は、硬さ並びにガラス、金属、シリコンウエハ、アモルファスシリコン、及びプラスチックなどの基材への接着性を増大させる。接着促進剤の例としては、Pd、Mg、W、Ni、Cr、Bi、B、Sn、In、及びPtの金属錯体が挙げられる。
【0072】
酸化防止剤
本発明の組成物は1種以上の酸化防止剤を含み得る。酸化防止剤の例としては、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、及び有機ホスフェートが挙げられる。例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、三級ブチル化フェノールの液体混合物、2,6-ジ-tertブチル-4-メチルフェノール、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、混合メチレン架橋ポリアルキルフェノール、4,4'-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N,N'-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、4-イソプロピルアミノジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、及びフェニル-βナフチルアミンが挙げられる。
【0073】
緩衝剤
本発明の組成物は1種以上の緩衝剤を含み得る。緩衝剤は、公知の又は一般に使用される緩衝剤から選択され得る。選択された緩衝剤は、耐食特性と緩衝特性の両方を示すことがある。ベンゾエート、ボレート、及びホスフェートなどの特定の調合物は、緩衝と耐食両方の利点を実現することができる。加えて、組成物のpH値を調整するために塩基を用いてもよい。塩基の実例としては、一般に知られ用いられる塩基、例えば、KOH、NaOH、NaHCO3、K2CO3、及びNa2CO3などの無機塩基が挙げられる。加えて、組成物のpH値を調整するために酸を用いてもよい。使用できる酸の実例としては、一般に知られ用いられる酸、例えば、限定されないが、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸などのα-ヒドロキシ酸、及びこれらの混合物を含む有機酸、並びに限定されないが、ホウ酸、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、及び硫酸などの鉱酸を含む無機酸が挙げられる。いくつかの実施形態において、pHは、約4~約11になり、好ましくは約5~約10になる。他の実施形態において、pHは、約5~約7又は約7~約10になる。上記のpH値は、調製中の組成物での値である。
【0074】
腐食防止剤
本発明の組成物は、有機添加剤又は無機添加剤であり得る1種以上の腐食防止剤を含み得る。有機腐食防止剤の例としては、マレイン酸などの短鎖脂肪族ジカルボン酸;コハク酸及びアジピン酸;ベンゾトリアゾール及びトリトリアゾールなどのトリアゾール;メルカプトベンゾチアゾールなどのチアゾール; 2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ(hydrocarbylthio)-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ(hydrocarbyldithio)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(ヒドロカルビルチオ)-1,3,4-チアジアゾール、及び2,5-(ビス)ヒドロカルビルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールなどのチアジアゾール;スルホネート;及びイミダゾリンが挙げられる。有機腐食防止剤の更なる例としては、二量体及び三量体酸、例えばタル油脂肪酸、オレイン酸、又はリノール酸から製造されるもの;テトラプロペニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸無水物などの、アルケニルコハク酸及びアルケニル無水コハク酸腐食防止剤;並びにポリグリコールなどのアルコールによる、アルケニル基に8~24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸の半エステルが挙げられる。その他の腐食防止剤としては、エーテルアミン;酸性リン酸塩;アミン;エトキシル化アミン、エトキシル化フェノール、及びエトキシル化アルコールなどのポリエトキシ化化合物;イミダゾリン;アミノコハク酸又はその誘導体が挙げられる。無機添加剤としては、ボレート、ホスフェート、シリケート、ナイトレート、ナイトライト(nitrites)、及びモリブデートが挙げられる。
【0075】
銅腐食防止剤
本発明の組成物に含まれ得る銅腐食防止剤の例としては、2-メルカプトベンゾチアゾールなどのチアゾール;ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、及びドデシルトリアゾールなどのトリアゾール; 2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(ヒドロカルビルチオ)-1,3,4-チアジアゾール、及び2,5-(ビス(ヒドロカルビルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールなどのチアジアゾールが挙げられる。
【0076】
希釈剤
本発明の組成物は1種以上の希釈剤を含み得る。代表的な希釈剤としては、モノグリシジルエーテル及びジグリシジルエーテル、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル及びグリコールエーテルケトン、並びにこれらの組合せが挙げられる。希釈剤はこれらの薬剤に限定されず、組成物の所望の特性に基づいて、好適な希釈剤を選択することができる。
【0077】
電解質
いくつかの実施形態は電解質を含み得る。電解質は、電池を作製するときに特に好適となる。市販の又は現在用いられている電解質は、電極での使用に好適である。一実施形態において、電解質は導電助剤を更に含むことができる。
【0078】
流体
実施形態には、親水性又は疎水性の流体が含まれ得る。流体は、ポリマー及び熱伝達用途に使用される従来の流体であり得る。
【0079】
流体は、単一成分又は多成分混合物であり得る。例えば、親水性流体は、水、エチレングリコール、及びジエチレングリコールを様々な比率で含有し得る。親水性流体は、約0.1~約99.9容積%の水、約0.1~約99.9容積%のエチレングリコール、及び約0.1~約99.9容積%のジエチレングリコール;並びに約20~約80容積%、約40~約60容積%、又は約50容積%の水又はエチレングリコールを含有し得る。典型的に、ジエチレングリコールは、親水性流体の微量成分を構成し、総容積の約20%以下、約10%以下、又は約5%以下となる。
【0080】
双極子モーメント(電気双極子モーメントとしても知られる)とは、電荷系における正電荷と負電荷の分離度の尺度、即ち、電荷系全体の極性の尺度を指す。より大きな双極子モーメントを持つ流体は、ナノ粒子の整列をより迅速にすることが見出されている。そのため、一実施形態では、少なくとも約0若しくはそれ超、少なくとも約1若しくはそれ超、約2若しくはそれ超、約3若しくはそれ超の双極子モーメントを持つ流体が使用される。流体及びそれらの対応する双極子モーメントの例としては、ヘキサン(双極子モーメント0)、水(双極子モーメント1.85)、及びジメチルホルムアミド(DMF)(双極子モーメント3.82)が挙げられる。
【0081】
親水性流体
親水性流体としては、水に対する混和性を有する親水性流体が挙げられ、非限定的例としては、限定されないが、水、脂肪族アルコール、アルキレングリコール、ジ(アルキレン)グリコール、アルキレングリコール又はジ(アルキレン)グリコールのモノアルキルエーテル、及びこれらの様々な混合物が挙げられる。好適な脂肪族アルコールは、6個以下の炭素及び4個以下の水酸基を含有するものであり、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びグリセロールなどを含む。
【0082】
好適なアルキレングリコールは、5個以下の炭素を含有するものであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、及び1,2-ブチレングリコールなどを含む。特定の実施形態では、親水性流体は、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物を含む。エチレングリコール及びプロピレングリコールは、優れた不凍剤でもあり、水の凝固点を著しく低下させる。好適なジ(アルキレン)グリコールは、10個以下の炭素を含有するものであり、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びジプロピレングリコールなどを含む。
【0083】
本明細書で使用するとき、用語「アルキレングリコール」とは、一般にその構造内にグリコール官能部位を有する分子を指し、アルキレングリコール、アルキレングリコール、ジ(アルキレン)グリコール、トリ(アルキレン)グリコール、テトラ(アルキレン)グリコール、及びこれらの様々な誘導体、例えばエーテル及びカルボン酸エステルを含む。
【0084】
疎水性流体
疎水性流体は、幅広い周知の有機油(基油としても知られる)から選択することができ、石油蒸留物、合成石油、グリース、ゲル剤、油溶性ポリマー組成物、植物油、及びこれらの組合せを含む。石油蒸留物は、鉱油としても知られ、一般にパラフィン、ナフテン及び芳香族化合物を含む。
【0085】
合成石油は、様々な工業界で広く使用されている潤滑剤の主要クラスである。いくつかの例として、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、及びジ-(2-エチルヘキシル)ベンゼンなどのアルキルアリール;ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニルなどのポリフェニル;ポリクロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロエチレンとペルフルオロプロピレンのコポリマーなどのフルオロカーボン;ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-オクテン)、及びポリ(1-デセン)などの重合化オレフィン;トリアリール又はトリアキルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びデシルホスホン酸のジエチルエステルなどの有機ホスフェート;並びにテトラ(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ(2-エチルブチル)シリケート、及びヘキサ(2-エチルブトキシ)ジシロキサンなどのシリケートが挙げられる。その他の例としては、ポリオールエステル、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、重合体テトラヒドロフラン及びシリコーンが挙げられる。
【0086】
一実施形態において、疎水性流体は、アジピン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、セバシン酸、スベリン酸、及びコハク酸などのジカルボン酸と、ブチルアルコール、ドデシルアルコール、エチレングリコールジエチレングリコールモノエーテル、2-エチルヘキシルアルコール、イソデシルアルコール、ヘキシルアルコール、ペンタエリトリトール(pentaerytheritol)、プロピレングリコール、トリデシルアルコール、及びトリメチロールプロパンなどの、直鎖、環状、及び分岐鎖を有する種々のアルコールの縮合により形成される、ジエステルである。アルケニルマロン酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸などの変性ジカルボン酸も使用することができる。これらのエステルの具体例としては、ジブチルアジパート、ジイソデシルアゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジヘキシルフマレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケート、ジシコシル(dicicosyl)セバケート、及びリノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、即ち、セバシン酸1モルをテトラエチレングリコール2モル及び2-エチルヘキサン酸2モルを反応させることにより形成された複合エステルが挙げられる。
【0087】
別の実施形態において、疎水性流体は、2~32個の炭素を含有する1-オレフィン又はそのようなオレフィンの混合物のオリゴマー化を通じて形成されるポリαオレフィン(polyalphaolefine)である。一般的なαオレフィンには、1-オクテン、1-デセン、及び1-ドデセンがある。ポリαオレフィンの例としては、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセン、ポリ-1-ドデセン、これらの混合物、及び混合オレフィン誘導ポリオレフィンが挙げられる。ポリαオレフィンは、それぞれ6、18、32、45、及び460cStの粘度を有するDURASYN(登録商標)162、164、166、168、及び174(BP-Amoco Chemicals、Naperville、Ill.)を含めて、様々な販売元から市販されている。
【0088】
更に別の実施形態において、疎水性流体は、5~12個の炭素を含有するモノカルボン酸と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びトリペンタエリスリトールなどのポリオール及びポリオールエーテルの縮合により形成される、ポリオールエステルである。市販のポリオールエステルの例は、ROYCO(登録商標)500、ROYCO(登録商標)555、及びROYCO(登録商標)808である。ROYCO(登録商標)500は、5~10個の炭素を有する飽和直鎖脂肪酸のペンタエリスリトールエステル約95%、トリクレジルホスフェート約2%、N-フェニル-αナフチルアミン約2%、及びその他の微量添加剤約1%を含有する。ROYCO(登録商標)808は、ヘプタン酸、カプリル酸及びカプリン酸のトリメチロールプロパンエステル約30~40重量%、バレリアン酸及びヘプタン酸のトリメチロールプロパンエステル20~40重量%、脂肪酸のネオペンチルグリコールエステル約30~40重量%、並びにその他の微量添加剤を含有する。
【0089】
一般に、ポリオールエステルは、良好な酸化及び加水分解安定性を有する。本明細書において用いるポリオールエステルは、約-100℃以下~-40℃の流動点及び100℃にて約2~100cStの粘度を持つことが好ましい。
【0090】
更に別の実施形態において、疎水性流体は、アルキレンオキシドポリマー又はコポリマーであるポリグリコールである。ポリグリコールの末端水酸基は、公知の合成油の別クラスを作り出すために、エステル化又はエーテル化により更に変性され得る。興味深いことに、重合プロセスにおけるプロピレン及びエチレンオキシドの混合物は、水溶性潤滑油を生成する。液体又は油状ポリグリコールは、低い粘度及び約400の分子量を有するが、分子量3,000のポリグリコールは、室温で粘着性のポリマーとなる。
【0091】
更に別の実施形態において、疎水性流体は、石油蒸留物、合成石油、グリース、ゲル剤、油溶性ポリマー組成物、及び植物油からなる群から選択された2つ以上の組合せである。好適例としては、限定されないが、2種のポリαオレフィンの混合物、2種のポリオールエステルの混合物、1種のポリαオレフィンと1種のポリオールエステルとの混合物、3種のポリαオレフィンの混合物、2種のポリαオレフィンと1種のポリオールエステルとの混合物、1種のポリαオレフィンと2種のポリオールエステルとの混合物、及び3種のポリオールエステルの混合物が挙げられる。上記実施形態において、熱伝達流体は、約1~約1,000cSt、より好ましくは約2~約800cSt、最も好ましくは約5~約500cStの粘度を持ち得る。
【0092】
更に別の実施形態において、疎水性流体は、石油又は合成潤滑液と増粘剤とを組み合わせることにより作製されたグリースである。増粘剤は一般に、シリカゲル並びにリチウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム、アルミニウム、及びバリウムの脂肪酸石鹸である。グリース調合物は、四級アンモニウム化合物でコーティングされたベントナイト及びヘクトライトクレーなどの、コーティングされたクレー(coated clay)をも含むことがある。場合により、石油及び合成潤滑グリースの高温特性を強化するための増粘剤として、カーボンブラックが添加される。アリール尿素化合物、インダンスレン、ウレイド、及びフタロシアニンを含む有機顔料及び粉末の添加により、高温安定性が得られる。場合により、境界潤滑を得るために、グラファイト、モリブデンジスルフィド、アスベスト、タルク、及び酸化亜鉛などの固体粉末も添加される。増粘剤を用いて前述の合成潤滑油を調合することで、特殊グリースが得られる。合成潤滑油としては、限定されないが、ジエステル、ポリαオレフィン、ポリオールエステル、ポリグリコール、シリコーン-ジエステル、及びシリコーン潤滑剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、銅フタロシアニン、アリール尿素、インダンスレン、及び有機界面活性剤でコーティングされたクレーなどの非溶解性増粘剤が好ましい。
【0093】
摩擦調整剤
好適な摩擦調整剤としては、脂肪族アミン、脂肪族脂肪酸アルニド(arnides)、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステルアルニド(esterarnides)、脂肪族ホスホネート、脂肪族ホスフェート、脂肪族チオホスホネート、及び脂肪族チオホスフェートが挙げられ、ここで、脂肪族基は通常、化合物が適切に油溶性となるように約8個超の炭素原子を含有する。1種以上の脂肪族コハク酸又は無水物をアンモニアと反応させることにより形成される脂肪族置換スクシンイミドも好適である。
【0094】
スケール防止剤
特定の実施形態では、スケール防止剤が用いられる。好適なスケール防止剤としては、ホスフェートエステル、ホスフィノカルボキシレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、スチレン-無水マレイン酸、スルホネート、無水マレイン酸コポリマー、及びアクリレート-スルホネートコポリマーなどの成分が挙げられる。基本組成物は、選択的用途に応じて調整することができる。例えば、ナイトレート及びシリケートは、アルミニウム保護を可能にする。フェラスメタル保護のためにボレート及びナイトライトを添加することができ、銅及び真鍮保護のためにベンゾトリアゾール及びトリトリアゾールを添加することができる。
【0095】
増粘剤
特定の実施形態では、増粘剤が用いられる。増粘剤の例としては、限定されないが、シリカゲル並びにリチウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム、アルミニウム、及びバリウムの脂肪酸石鹸を挙げることができる。
【0096】
導電助剤
電気伝導率を更に高めるための追加の薬剤を調合物に含めてもよく、例えばバインダーと共に導入してもよい。これらの導電助剤としては、限定されないが、アセチレンカーボンブラック粒子、多孔性カーボン、グラファイト粒子、及び/又は単層又は多層グラフェン粒子/プレートレット(platelet)が挙げられ得る。
【0097】
代表的実施形態
本発明の電極組成物の成分の例示的範囲を表1に示す。全ての成分は、材料組成物全体に対する重量%で記載されている。
【0098】
【表1】
【0099】
一実施形態では、カーボンナノ粒子と金属、金属酸化物、半金属又は半金属酸化物の均質分散及び集積を促進するために、界面活性剤を超音波処理などの物理的撹拌方法と組み合わせて用いることができる。界面活性剤がナノ粒子の表面に吸着した後、超音波処理において、立体反発力又は静電反発力によりナノ粒子の束を解く(debundle)ことができる。
【0100】
使用される界面活性剤に対するナノ粒子の比は、材料特性に与える影響の点で重要であることがわかっている。その上で、ナノ粒子と界面活性剤の比は、重量を基準として、約100:1~約1:20、好ましくは約1:3~約1:15、より好ましくは約1:5~約1:12であり得る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子と界面活性剤の比は、重量を基準として、約1:7~約1:10である。上記の比は、混合中の混合物におけるものである。上述した比の範囲は、当該範囲を規定する数を含み、規定された比の範囲内に各整数及び少数を含む。
【0101】
一実施形態において、本発明の電極組成物は、カーボンナノ粒子と比較して、改善された電気特性を示す。例えば、電極組成物中の活物質(ナノ粒子材料と組み合わされた金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子)は、カーボンナノ粒子及びグラファイトと比較して少なくとも5%改善された比容量(多くの場合、グラムなどの重量当たりのミリアンペア時として示され、mAh/gと略記される)を持ち得る。キャパシタンスは、金属、金属酸化物、半金属又は半金属酸化物のキャパシタンスによって制限される。ただし、キャパシタンスは特定の金属及び/又は金属酸化物の選択により影響を受けることがある。一実施形態において、本発明の電極組成物は、約0.1Cの充電/放電レート(10時間充電及び10時間放電のレート)でサイクルさせたとき、少なくとも450mAh/g活物質、好ましくは少なくとも500mAh/g活物質、より好ましくは少なくとも600mAh/g活物質の比容量を持つ。
【0102】
一実施形態において、本発明の電極組成物は、金属酸化物ナノ粒子、半金属ナノ粒子又は金属ナノ粒子と比較して、電気特性を改善している。更なる例では、特定の実施形態において、電気伝導率が、金属酸化物ナノ粒子及び半金属ナノ粒子と比較して少なくとも1桁ほど改善されることが期待される。
【0103】
本発明の組成物は、目的とする多くの用途のために様々な特性を有する多様な形態で調製することができる。例えば、本発明の組成物のいくつかは、改善された充電/放電容量、伝導率、改善されたサイクル寿命数、再充電性、及び可逆性を有する電極を形成し得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、本組成物はアノードを形成し得る。アノードに関して好ましい金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子としては、Al2O3、CuO、MgO、SiO2、GeO2、B2O3、TeO2、V2O5、BiO2、Sb2O5、TiO2、ZnO、FeO、Fe2O3、Fe3O4、CrO3、NiO、Ni2O3、CoO、Co2O3、及びCo3O4が挙げられる。
いくつかの実施形態において、本組成物はカソードを形成し得る。カソードに関して好ましい金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子としては、LiFePO4、LiCoO2、LiMn2O4、及びLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNiO2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiMn3/2Ni1/2O4、LiFe1/2Mn1/2PO4、Li4Ti5O12が挙げられる。
【0105】
電極組成物を作製するための本発明の方法のいくつかの実施形態では、均質に混合されたカーボンナノ粒子(例えば、グラフェン、ナノチューブ、カーボンナノ繊維)並びに金属酸化物及び/又は金属粒子を実現するために、特定の分散技術が用いられる。界面活性剤を使用すると、金属酸化物及び/又は金属粒子は、より均一にカーボンナノ粒子に付着することがわかっている。金属酸化物粒子、金属及び/又は半金属粒子は、静電引力によりカーボンナノ粒子の表面に集まり(例えば、金属酸化物は適切なpHにおいて正ゼータ電位電荷(positive zeta potential charge)を持ち、カーボンナノチューブは疎水性頭部を介して炭素表面に付着できる界面活性剤によって負電荷を持つ)、カーボンナノ材料と一体化した金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子の十分に分散した堆積物を形成すると考えられている。
【0106】
図1~6は、種々の例示的なナノ繊維、ナノチューブ、及び/又はその他のナノ粒子に集まり付着した例示的な金属酸化物粒子、金属及び/又は半金属粒子を示す実例画像である。
【0107】
図1は、カーボンナノ繊維にほぼ均一に付着した酸化鉄(Fe2O3)ナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像(倍率29,380倍)(界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)である。Fe2O3ナノ粒子(黒い点)が、実質的に非凝集性の配置でナノ繊維の表面に空間的に分布し、互いの上に重なったFe2O3ナノ粒子の実例はほとんど又は全くないことがわかる。
【0108】
図2は、カーボンナノ繊維に付着したシリコン(Si)ナノ粒子のSEM画像(倍率16,810倍)(界面活性剤:セチルトリメチルアンモニウムブロミド)である。Siナノ粒子(黒い点)が、実質的に非凝集性の配置でナノ繊維の表面に空間的に分布し、互いの上に重なったSiナノ粒子の実例はほとんど又は全くないことがわかる。
【0109】
図3は、単層カーボンナノチューブ(C-SWNT)に付着したシリコン(Si)ナノ粒子のSEM画像(倍率62,270倍)(界面活性剤:セチルトリメチルアンモニウムブロミド)である。Siナノ粒子(黒い点)が、実質的に非凝集性の配置でC-SWNTの表面に空間的に分布し、互いの上に重なったSiナノ粒子の実例はほとんど又は全くないことがわかる。
【0110】
図4は、単層カーボンナノチューブ(C-SWNT)に付着したシリコン(Si)ナノ粒子のSEM画像(倍率35,120倍)(界面活性剤:ベンゼトニウムクロリド)である。Siナノ粒子(黒い点)が、実質的に非凝集性の配置でC-SWNTの表面に空間的に分布し、互いの上に重なったSiナノ粒子の実例はほとんど又は全くないことがわかる。
【0111】
図5は、グラフェンに付着した酸化鉄(Fe2O3)ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像(スケールバーは200nm)(界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)である。透過画像は多くの多層領域を含んでおり(特に下方部分)、これらの領域の分析を曖昧にしているが、Fe2O3ナノ粒子(六角形の形状)は、実質的に非凝集性の配置でグラフェンの表面上に空間的に分布しているように見える。
【0112】
図6は、グラフェンに対して実質的に均一に付着したシリコン(Si)ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像(スケールバーは500nm)(界面活性剤:ベンゼトニウムクロリド)である。透過画像はいくつかの多層領域を含んでおり、これらの領域の分析を曖昧にしているが、Siナノ粒子(円の形状)は、実質的に非凝集性の配置でグラフェンの表面上に空間的に分布しているように見える。
【0113】
電気化学的デバイス
図7は、薄膜リチウムイオン電池10の断面を示している。電池710は、アノード712、カソード714、及びアノード712とカソード714との間に挟入された電解質716を含む。アノード712及び/又はカソード714は、本明細書に記載された電極組成物を持つ。アノード集電体718は、アノード712と電気的に接触している。同様に、カソード集電体720は、カソード714と電気的に接触している。ガス拡散層又は基材722は、カソード集電体720に隣接して配置されている。特定の実施例では、セパレーター(ポリマーセパレーター、不織繊維セパレーター、及び/又はその他の膜セパレーターなど)(図示せず)が、電池710内の電流の流れに関して荷電イオンの移動を可能にしつつアノード712とカソード714との間の短絡を防止するため、アノード712とカソード714との間に提供される。セパレーターは、電解質716に対して化学的及び電気化学的に安定である一方、アノード712とカソード714との間でイオンが移動することを可能にする。保護層726は、基材722と接合し、電池710の残りの成分を包み込んでいる。
【0114】
アノード712及び/又はカソード714を形成するために、本明細書に記載された実施例の電極組成物の1種以上を使用すると、従来の電極組成物と比較して、エネルギー貯蔵システムにおいて、より大きな容量及びより高い性能が得られる。カーボンナノ粒子(例えば、グラフェン、ナノチューブ、カーボンナノ繊維)と金属酸化物粒子、金属粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子の非凝集性の一体化により、限定されないが、例えば、改善された電荷容量、導電率、改善されたサイクル寿命数、改善された再充電性、及び/又は可逆性を含む所望の特性を有する、アノード712及び/又はカソード714が形成され得る。イオン吸収粒子は、磁気的に整列したカーボンナノ粒子と集積し、発熱及び誤動作を低減しつつ、改善された電気化学的セル機能及び動作性能を実現する。このような組合せは、限定されないが、電気伝導率、熱導電率、増加した引張係数(硬さ)、曲げ弾性率、引張強度、曲げ強度、弾性、及び靭性を含む、物理的特性の改善をもたらす。
【0115】
電池710は、例えば、ラップトップコンピューター、タブレットコンピューター、スマートフォン、ハイブリッド及び/若しくは電気自動車、並びに/又はその他の電子デバイスを含む種々のデバイスに電力を供給するために使用することができる。電池710は、例えば、電源として直接接続すること及び/又は電池組立品の一部として組み込むことが可能である。
【0116】
電極を調製する方法
電極は、本明細書に記載される複合材料を使用して調製することができる。各種方法を用いて、材料を固化して所望の形状に形成することができる。殆どの場合、金属/カーボンナノ粒子又は金属酸化物/カーボンナノ粒子材料の母材として、バインダーが使用される。
【0117】
上記のように、カーボンナノ粒子並びに金属酸化物及び/又は金属粒子の均質分散を促進するために、界面活性剤を使用することができる。上記のように、物理的撹拌によって分散を補助してもよい。カーボンナノ粒子並びに金属酸化物及び/又は金属粒子の分散の後、過剰な界面活性剤が除去される。過剰な界面活性剤の除去は、例えば、濾過又は遠心分離によって行うことができる。過剰な界面活性剤を洗い流すために、任意の好適な液体を使用することができる。例えば、場合により、水、エタノール、又はイソプロピルアルコールを使用してもよい。過剰な界面活性剤が除去された後、いくらかの残留界面活性剤が残ることがある。金属、金属酸化物、半金属又は半金属酸化物粒子をカーボンナノ粒子に付着させるのに必要な界面活性剤のみが残ることが好ましい。次いで、電極を形成するために、分散したカーボンナノ粒子及び金属、金属酸化物、半金属又は半金属酸化物にバインダーを添加することができる。
【0118】
図9は、約25重量%のグラフェンに付着した約75重量%のFe2O3ナノ粒子を含む電極における複数の寿命(充電/放電)サイクルにわたる電荷容量の変化を示すグラフである。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが材料調製に用いられた界面活性剤であった。この分散を調製する際に用いられたバインダーはポリアクリル酸(PAA)であった。この調合物は、典型的に約350mAh/gの比容量を持つグラファイトから作製された電極と比較して、700mAh/gの範囲の十分に良好な電荷容量を示す。
【0119】
好適な界面活性剤を含めることの重要性は、図9図8と比較することで示される。図8は、75重量%のFe2O3及び25重量%のグラフェンを含有するが、界面活性剤が含まれなかった調合物を示す。この場合、最初の3又は4回目の(充電/放電)サイクルにおける相当な容量減退が明らかであり、電極容量は界面活性剤を用いて調製した電極と比較して著しく低くなっている。
【0120】
図10は、約50重量%のグラフェンナノ粒子に付着した約50重量%のシリコンナノ粒子を含む電極における複数の寿命(充電/放電)サイクルにわたる電荷容量の変化を示すグラフである。ベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド界面活性剤が電極の調製に用いられた。この分散を調製する際に用いられたバインダーはポリアクリル酸(PAA)であった。この場合も、この調合物は、典型的に約350mAh/gの容量を持つグラファイトから作製された電極と比較して、1200mAh/gの範囲の十分に良好な電荷容量を示す。
【0121】
物理的撹拌
ナノ粒子の均一かつ安定した分散は、均質かつ一体化したカーボンナノ粒子/金属酸化物組成物又はカーボンナノ粒子/金属ナノ粒子組成物の形成において重要な役割を果たす。カーボンナノ粒子が組成物中で凝集している場合、不十分な分散により、不均一な負荷が生じ、伝導率及びキャパシタンスが低下することがあり、材料のその他の特性に悪影響が生じることがある。
【0122】
本組成物は、適切なカーボンナノ粒子、金属酸化物及び/若しくは金属ナノ粒子、界面活性剤、並びに/又はバインダーを含むその他の任意選択の添加剤の混合物を分散させるという従来の手段によって調製することができる。例えば、一般的な方法では、流体中にナノ粒子の安定した懸濁を形成するために物理的方法を用いる。乳鉢と乳棒による従来的混合(乾燥材料の場合)、高速ミキサー、ローター/ステーター式ミキサー、粉砕機(milling)、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザーなどによる高剪断混合、高衝撃混合、撹拌(手動及び/又は撹拌子による)、遠心分離、並びに超音波処理法を含む、種々の物理的混合方法が好適である。上記の種々の物理的混合方法は、室温、冷却温度、及び/又は加熱温度にて実施可能である。
【0123】
物理的撹拌の1つの方法は、特に撹拌子を用いて撹拌するものである。物理的撹拌の別の方法は超音波処理である。超音波処理は、好適な動作条件下で用いる場合、ナノ粒子、特にカーボンナノチューブの構造に対する破壊が少ない方法の1つとなる。超音波処理は、浴槽型超音波破砕機(bath-type ultrasonicator)内で行うか、先端型超音波破砕機(tip-type ultrasonicator)を使用して行うことができる。通常、先端型超音波破砕機は、より高いエネルギー出力を必要とする用途に用いられる。超音波処理は、例えば、中程度の強度で最長60分行うことができる。更に、過熱を避けるために、混合物に対して断続的に超音波処理を行ってもよく、特にフロースルーセルを用いる場合、深冷器を使用してもよい。過熱はカーボンナノチューブにおける共有結合の破壊を引き起こすことがあり、ナノチューブがその有益な物理的特性のいくつかを失うことになることが周知となっている。このように、バッチプロセスの場合、カーボンナノ粒子含有混合物は一般に、所定の期間にわたり、途中に休止をはさみながら活性化される。各活性化時間は、約30分以下、約15分以下、10分以下、5分以下、2分以下、1分以下、又は30秒以下である。各活性化時間の間の休止は、活性化されたカーボンナノ粒子がエネルギーを放散する機会を与える。休止時間は通常、約1分以下、約2分以下、約5分以下、又は約5~約10分である。
【0124】
原材料混合物は、好適な乾式又は湿式粉砕方法によって微粉砕することができる。粉砕方法には、液体ホスト材料中にて原材料混合物を微粉砕して濃縮物又はペーストを得た後、微粉砕された生成物を、上記のような界面活性剤の補助により液体ホスト材料中にて更に分散させる方法がある。ただし、微粉砕又は粉砕は、多くの場合、カーボンナノ粒子の平均縦横比を低減させ、最終材料の特性に有害な影響を及ぼすことがある。
【0125】
個々の成分(例えば、カーボンナノ粒子、金属、金属酸化物)は、別個に混合して液体ホスト材料にしてもよく、所望により、その液体ホスト材料において種々の部分組合せ(sub-combination)を用いて混合してもよい。通常、このような混合ステップの具体的順序は重要ではない。更に、上記の成分は、希釈剤中にて別個の溶液の形態で混合することができる。ただし、混合操作を簡素化し、混合の誤りの可能性を減らし、濃縮物全体により与えられる相溶性及び溶解度の性質を利用するために、添加濃縮物(additive concentrate)の形態で使用成分を混合してもよい。
【0126】
一実施形態において、物理的撹拌の方法は、かき混ぜること及び/又は超音波処理を含み、それらから成り、又はそれらから本質的に成る。別の実施形態において、分散ステップは、バッチプロセス又は連続フロースルー超音波処理プロセスにおける超音波処理を含み、それから成り、又はそれから本質的に成ることができる。一実施形態において、超音波処理の持続時間は、約5秒~約50分、好ましくは約5分~約40分、より好ましくは約10分~約30分、更により好ましくは約15分~約20分である。超音波処理の強度は、約5%~約80%の増幅、好ましくは約10%~約70%の増幅、より好ましくは約20%~約60%の増幅、最も好ましくは約30%~約50%の増幅である。物理的撹拌の時間及び強度は、製造の方法及び規模によって決定される。
【0127】
図11は、電気化学的電池セルのアノード又はカソードなどの電極を形成する例示的方法1100を説明するフローチャートである。例示的方法1100は、ブロック1110~1180の1つ以上により示される、1つ以上の操作、作用、又は処置を含み得る。各ブロックは連続的順序で示されているが、これらのブロックは並行して実行されてもよく、及び/又は本明細書に記載されたものと異なる順序で実行されてもよい。また、所望の実施に基づいて、種々のブロックをより少ないブロックに組み合わせ、追加ブロックに分割し、及び/又は削除してもよい。加えて、例示的方法1100並びに本明細書に記載されるその他のプロセス及び方法について、本発明の実施形態として可能な一実施の機能及び操作が、フローチャートに示されている。
【0128】
ブロック1110では、カーボンナノ粒子を用いて、第1の懸濁液を調製する。例えば、カーボンナノ粒子(例えば、グラフェン、カーボンナノチューブ、又はカーボンナノ繊維)の第1の懸濁液を、流体(例えば、脱イオン水)中で調製する。
【0129】
特定の実施例では、最初に(例えば、超音波処理又は遠心分離を用いて)界面活性剤を流体(例えば脱イオン水)中に分散させて透明な溶液を形成し、次いで、その溶液中にカーボンナノ粒子を添加して第1の懸濁液を調製する。特定の実施例では、(例えば磁石棒を用いて)溶液を撹拌し、懸濁液を混合してもよい。
【0130】
ブロック1120では、界面活性剤により第1の懸濁液中の材料を分散させる。第1の懸濁液中にカーボンナノ粒子を分散させるために、超音波処理又は遠心分離などの物理的撹拌を用いてもよい。特定の実施例では、懸濁液の撹拌は、超音波処理による分散の後に継続してもよい。
【0131】
ブロック1130では、金属酸化物粒子、金属粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子の1種以上を用いて、第2の懸濁液を調製する。例えば、金属酸化物粒子、金属粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子(例えば、酸化鉄又はシリコン粒子の懸濁液)の第2の懸濁液を、流体(例えば、脱イオン水)中にて調製する。
【0132】
特定の実施例では、別個の第2の懸濁液を形成するのではなく、金属酸化物粒子、金属粒子、半金属粒子、及び/又は半金属酸化物粒子の1種以上を第1の懸濁液に添加することにより、第1の懸濁液から第2の懸濁液を形成する。その他の実施例では、第1の懸濁液から第2の懸濁液を別個に形成し、混合し、第1の懸濁液に添加する。
【0133】
ブロック1140では、第2の懸濁液中の材料を分散させ、第1の懸濁液と混合する。例えば、超音波処理又は遠心分離を用いて、第2の懸濁液中にナノ粒子を分散させてもよい。
【0134】
ブロック1150では、混合した第1及び第2の懸濁液を(例えば、漏斗又は濾過器及び真空を用いて)濾過し、乾燥させて残留物を得る。次いで、フィルターから残留物を掻取り、(例えば、乳鉢と乳棒又は粉砕技術を用いて)磨砕する。
【0135】
ブロック1160では、電極組成物を形成するためにバインダーを添加する。特定の実施形態では、バインダーを添加する前に、第1及び第2の懸濁液の混合残留物を流体(例えば、脱イオン水)中に再度分散させる。特定の実施形態では、電極組成物を形成するために、(例えば、超音波処理又は遠心分離を用いた)混合懸濁液の更なる分散の後に、混合懸濁液にバインダーを添加してもよい。特定の実施形態では、バインダーを含有してもよい流体(例えば、脱イオン水)と共に、カーボンナノ粒子並びに金属酸化物粒子、金属粒子、半金属粒子及び/又は半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種の磨砕残留物を用いて、スラリーを調製する。
【0136】
特定の実施例では、限定されないが、接着及び硬化促進剤、酸化防止剤、緩衝剤、腐食防止剤、希釈剤、電解質、流体(例えば、親水性流体又は疎水性流体)、摩擦調整剤、スケール防止剤、増粘剤、及び/又は導電助剤を含む、1種以上の任意選択成分を、第1の懸濁液、第2の懸濁液及び/又は得られた混合物に添加してもよい。
【0137】
ブロック1170では、電極組成物を集電体に転写して1つ以上の電極を形成する。例えば、電極組成物を噴霧し、ドクターブレードにより適用し、及び/又はその他の方法として銅箔上の層に適用し、電極組成物の更なる又は以降の圧縮を行ってもよい。代替的実施形態では、電極組成物は、自立型フィルム又は膜として形成される。
【0138】
ブロック1180では、電極組成物を乾燥させる。例えば、集電体を加熱して集電体上に残留している材料を乾燥させ、乾式電極材料を形成する。代替的実施形態では、電極が自立型フィルム又は膜である場合、乾式電極組成物は、分離され、1つ以上の電極へと形成される。
【0139】
特定の実施例では、得られた電極は、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせたときに少なくとも450mAh/g活物質、好ましくは少なくとも600mAh/g活物質の比容量を持つ。電極は、(例えば、1つ以上の電池用のアノード及び/又はカソードとして)セル組立品内で使用され1つ以上の電池を形成する。例えば、乾式電極組成物を使用して、1つ以上のリチウムイオン電池(例えば、コインセル電池、自動車蓄電池、コンピューター用電池、又は携帯電話用電池)を形成することができる。
【実施例0140】
[比較例1]
比較実施例として、材料調製プロセスにおいて界面活性剤を使用せずに、Fe2O3/グラフェンアノードを調製した。Fe2O3ナノ粒子0.04gを脱イオン水20mlに添加することにより、グラフェン懸濁液を調製した。グラフェン懸濁液を、磁気撹拌子により800毎分回転数(rpm)にて2時間混合し、Misonix Sonicator(S-4000)を使用して電力出力30Wにて15分間にわたり超音波処理により更に分散させた。次いで、グラフェン懸濁液を磁気プレート上に戻し、撹拌を継続した。Fe2O3ナノ粒子0.12gを脱イオン水60mlに混合することにより、Fe2O3ナノ粒子懸濁液を調製し、機械的方法により2時間撹拌した。次いで、Misonix Sonicator(S-4000)を電力出力30Wにて5分間使用し、上記懸濁液を超音波処理にかけた。次いで、調製後そのままのグラフェン懸濁液20mlを、Fe2O3ナノ粒子懸濁液にゆっくりと移した。15分間の超音波処理の後、5分間の休止時間を入れながら合計30分間、上記混合物に音波処理を施した。最後に、ポリアクリル酸(PAA)バインダー0.8gの5重量%水溶液を懸濁液に添加し、最終混合物に対して更に15分間にわたり更なる音波処理を施した。得られた混合物を、Paasche製エアブラシキットを使用して、140℃にて、加熱した銅箔(集電体)に噴霧した。圧縮空気を運搬ガスとして使用し、圧力を18psiに制御した。ノズルと集電体との間の距離を10~20cmの範囲に維持した。得られた電極を真空オーブン内に移し、80℃にて16時間加熱した。形成された電極組成物を直径2.5cmのペレット状に打ち抜き、次いで、セル組立のために、アルゴンガスを満たしたグローブボックス内に移した。リチウム箔を対電極として使用し、ペレットをCR2032型コインセル電池へと組み立てた。エチレンカーボネート/ジエチレンカーボネートの容積比1:1の混合物中の1M LiPF6を電解質溶液として使用し、Celgard(登録商標)3501微孔質膜をセパレーターとして使用した。0.1CのレートにてArbin(商標)電池試験ステーションを使用して、0.05~3V(vs.Li/Li+)で、セルの放電充電サイクルを繰り返した。材料調製に界面活性剤を使用しなかった、このアノード材料での複数のサイクルにわたる放電容量は、図8に示されており、ここではサイクルを繰り返すことに伴う急速な容量減退が見られる。
【0141】
[具体例2]
以下のように材料調製プロセスにおいて界面活性剤を使用して、Fe2O3/グラフェンアノードを調製した。1/2インチ破砕ホーンを備えたBranson Model 450 Digital Sonifierにより超音波処理を実施した。始めに、振幅20%にて15分間にわたり音波処理を行うことにより、まず界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)1gを脱イオン水中に分散させ、透明溶液を得た。次いで、グラフェン0.05gを溶液に添加し、同じ振幅にて更に15分間にわたり音波処理を施し、処理を2回繰り返した。最後に、Fe2O3ナノ粒子1.5gを混合物に添加し、30分間にわたり音波処理を施した。調製された流体を、真空濾過に接続した漏斗に添加した。液位が漏斗の底部に近づいたとき、脱イオン水を更に添加した。水150mlを使用した。フィルターを漏斗から取り出し、真空オーブンに入れ(80℃、20インチ水銀)12時間放置した。次いで、サンプルをフィルターから掻き取り、大理石の乳鉢と乳棒により磨砕した。スラリー噴霧法を用いて、金属酸化物及びグラフェンを含む電極を調製した。75重量%のFe2O3ナノ粒子及び25重量%のグラフェンからなる電極組成物0.05gを、PAA0.25gの5重量%水溶液と更に混合した。活物質(Fe2O3ナノ粒子/グラフェン複合材料)とPAAの比は8:2であった。脱イオン水10mlをスラリーに添加した。機械的撹拌方法によりスラリーを4時間混合した。得られたスラリーを、Paasche製エアブラシキットを使用して、140℃にて加熱した銅箔(集電体)に噴霧した。圧縮空気を運搬ガスとして使用し、圧力を18psiに制御した。ノズルと集電体との間の距離を10~20cmの範囲に維持した。得られた電極を真空オーブンに移し、80℃にて16時間加熱した。次に、形成された電極組成物を直径2.5cmのペレット状に打ち抜き、次いで、セル組立のために、アルゴンガスを満たしたグローブボックス内に移した。リチウム箔を対電極として使用し、ペレットをCR2032型コインセル電池へと組み立てた。エチレンカーボネート/ジエチレンカーボネートの容積比1:1の混合物中の1Mリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を電解質溶液として使用し、Celgard(登録商標)3501微孔質膜をセパレーターとして使用した。0.1CのレートにてArbin(商標)電池試験ステーションを使用して、0.05~3V(vs.Li/Li+)でセルの放電充電サイクルを繰り返した。材料調製においてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム界面活性剤が使用された、このアノード材料での94回のサイクルにわたる放電容量は、図9に示されており、図9から、アノード容量は700mAh/gの領域にあり容量減退は表れていないことがわかる。このサンプルでは、750mAh/gの領域における安定したサイクルが継続している。
【0142】
[具体例3]
以下のように材料調製プロセスにおいて界面活性剤を使用して、シリコン/C-SWNTアノードを調製した。1/2インチ破砕ホーンを備えたBranson Model 450 Digital Sonifierにより音波処理を実施した。始めに、振幅20%にて15分間にわたり音波処理を行うことにより、まず界面活性剤(ベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr))0.5gを脱イオン水中に分散させ、透明溶液を得た。次いで、単層カーボンナノチューブ(SWNT)0.05gを溶液に添加し、同じ振幅にて更に15分間にわたり音波処理を施し、処理を2回繰り返した。最後に、Siナノ粒子(サイズ50~70nm)0.05gを混合物に添加し、振幅15%にて10分間にわたり音波処理を行った。調製された流体を、真空濾過に接続した漏斗に添加した。液位が漏斗の底部に近づいたとき、脱イオン水を更に添加した。水200mlを使用した。フィルターを漏斗から取り出し、真空オーブンに入れ(80℃、20インチ水銀)12時間放置した。次いで、サンプルをフィルターから掻き取り、大理石の乳鉢と乳棒により磨砕した。スラリー噴霧法を用いて、シリコン(Si)及びカーボンナノチューブ(CNT)を含む電極を調製した。50重量%のSiナノ粒子及び50重量%のCNTからなる電極組成物0.05gを、PAAバインダー0.25gの5重量%の水溶液と更に混合した。活物質(Siナノ粒子-CNT複合材料)とPAAの比は8:2であった。脱イオン水10mlをスラリーに添加した。機械的撹拌方法によりスラリーを4時間混合した。得られたスラリーを、Paasche製エアブラシキットを使用して、140℃にて、加熱した銅箔(集電体)に噴霧した。圧縮空気を運搬ガスとして使用し、圧力を18psiに制御した。ノズルと集電体との間の距離を10~20cmの範囲に維持した。得られた電極を真空オーブン内に移し、80℃にて16時間加熱した。形成された電極組成物を直径2.5cmのペレット状に打ち抜き、次いで、セル組立のために、アルゴンガスを満たしたグローブボックス内に移した。リチウム箔を対電極として使用し、ペレットをCR2032型コインセル電池へと組み立てた。エチレンカーボネート/ジエチレンカーボネートの容積比1:1の混合物中の1M LiPF6を電解質溶液として使用し、Celgard(登録商標)3501微孔質膜をセパレーターとして使用した。0.1CのレートにてArbin(商標)電池試験ステーションを使用して、0.05~0.7V(vs.Li/Li+)でセルの放電充電サイクルを繰り返した。材料調製においてベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド界面活性剤が使用された、このアノード材料での23回のサイクルにわたる放電容量は、図10に示されており、図10から、アノード容量は1200mAh/g~1300mAh/gの領域にあり容量減退は表れていないことがわかる。このサンプルでは、1250mAh/gの領域における安定したサイクルが継続している。
【0143】
本発明の特定の要素、実施形態及び用途を示し説明してきたが、当業者であれば特に上述の技術に照らして本開示の範囲を逸脱することなく改変を加えることでき、本発明はそれらの特定の要素、実施形態及び用途に限定されるものではないと理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0143
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0143】
本出願では、以下の態様が提供される。
1.(a)カーボンナノ粒子、(b)金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種、(c)前記カーボンナノ粒子を前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種に付着させ、電極組成物を形成するための界面活性剤、及び(d)前記電極組成物をフィルム又は膜に形成するためのバインダー、を含む電極であって、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、電極。
2.前記カーボンナノ粒子が、グラファイトナノ粒子、グラフェンナノ粒子、カーボンナノチューブ及び炭素繊維からなる群から選択される、態様1に記載の電極。
3.前記界面活性剤が、スルフェート基、スルホネート基、ピリジニウム基及びアンモニウム基のうちの1種を含む、態様1に記載の電極。
4.前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及びベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)のうち少なくとも1種を含む、態様3に記載の電極。
5.前記電極がアノードである、態様1に記載の電極。
6.前記電極がカソードである、態様1に記載の電極。
7.前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、下記の酸化物: Al 2 O 3 、CuO、MgO、SiO 2 、GeO 2 、B 2 O 3 、TeO 2 、V 2 O 5 、BiO 2 、Sb 2 O 5 、TiO 2 、ZnO、FeO、Fe 2 O 3 、Fe 3 O 4 、CrO 3 、NiO、Ni 2 O 3 、CoO、Co 2 O 3 、及びCo 3 O 4 のうち少なくとも1種を含み、前記電極が、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも600mAh/g活物質の比容量を有する、態様5に記載の電極。
8.前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、Fe 2 O 3 である、態様5に記載の電極。
9.前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、下記の酸化物: LiFePO 4 、LiCoO 2 、LiMn 2 O 4 、LiNi 1/3 Mn 1/3 Co 1/3 O 2 、LiNiO 2 、LiNi 0.8 Co 0.15 Al 0.05 O 2 、LiMn 3/2 Ni 1/2 O 4 、LiFe 1/2 Mn 1/2 PO 4 、及びLi 4 Ti 5 O 12 のうち少なくとも1種を含む、態様6に記載の電極。
10.前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、下記:ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、コバルト、バナジウム、マンガン、ニオブ、鉄、ニッケル、銅、ホウ素、シリコン、チタン、ゲルマニウム、テルル、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、上述の金属及び半金属の酸化物、並びに前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種の合金のうち少なくとも1種を含む、態様1に記載の電極。
11.前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、シリコンである、態様5に記載の電極。
12.前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、ナノ粒子の形態である、態様1に記載の電極。
13.前記界面活性剤が正味負電荷を有し、前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種のpHpzcよりも高いpH値を有する、態様1に記載の電極。
14.前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)からなる群から選択される、態様13に記載の電極。
15.前記界面活性剤が正味正電荷を有し、前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種のpHpzcよりも低いpH値を有する、態様1に記載の電極。
16.前記界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド(BdhaCl)、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、アンプロリウムヒドロクロリド(AH)、及びベンゼトニウムクロリド(BC)からなる群から選択される、態様15に記載の電極。
17.前記カーボンナノ粒子並びに前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、非凝集性である、態様1に記載の電極。
18.前記カーボンナノ粒子並びに前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、均質に分散する、態様17に記載の電極。
19.前記バインダーが、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアルギネート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフルオレン、ポリウレタン、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ポリエチレンイミン、ポリ(1,3-ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル-co-アクリルアミド)、ポリスチレンブタジエンゴム、及びポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-9-フルオレノン-co-メチル安息香酸エステル)(PFM)のうち少なくとも1種を含む、態様1に記載の電極。
20.前記バインダーが、ポリアクリル酸(PAA)を含む、態様19に記載の電極。
21.(e)前記電極組成物が適用される金属集電体を更に含む、態様1に記載の電極。
22.(e)前記電極組成物が適用される非金属導電性基材を更に含む、態様1に記載の電極。
23.アノード、カソード、及びこれらの間に挟入された電解質を含む電池であって、前記アノードが、(a)カーボンナノ粒子、(b)金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種、(c)前記カーボンナノ粒子を前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種に付着させ、アノード組成物を形成するための界面活性剤、及び(d)前記アノード組成物をフィルム又は膜に形成するためのバインダー、を含み、前記アノードが、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、電池。
24.前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及びベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)のうち少なくとも1種を含む、態様23に記載の電池。
25.前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、Fe 2 O 3 である、態様23に記載の電池。
26.前記金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種が、シリコンである、態様23に記載の電池。
27.アノードとカソードとを隔離するセパレーターを更に含む、態様23に記載の電池。
28.(a)界面活性剤、カーボンナノ粒子、並びに金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種を混合して、電極組成物を形成し、(b)前記電極組成物とバインダーとを混合し、(c)前記電極組成物を集電体上に層として適用するか、前記電極組成物を自立型フィルム又は膜として形成するプロセスにより調製される電極であって、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、電極。
29.ステップ(a)、(b)、及び(c)が逐次的に実行される、態様28に記載の電極。
30.界面活性剤、カーボンナノ粒子、並びに金属粒子、金属酸化物粒子、半金属粒子及び半金属酸化物粒子のうち少なくとも1種を混合して、電極組成物を形成すること、前記電極組成物とバインダーとを混合して、電極組成物をフィルム又は膜に形成すること、を含む、電極を調製する方法であって、これにより、前記電極が、約0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、方法。
本発明の特定の要素、実施形態及び用途を示し説明してきたが、当業者であれば特に上述の技術に照らして本開示の範囲を逸脱することなく改変を加えることでき、本発明はそれらの特定の要素、実施形態及び用途に限定されるものではないと理解される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、カソード、及びこれらの間に挟入された電解質を含む電池であって、前記アノードが、
(a)15~50重量%のカーボンナノ粒子、
(b)シリコンを含む、少なくとも1種の活物質
(c)前記カーボンナノ粒子を前記少なくとも1種の活物質に付着させ、アノード組成物を形成するための、極性官能性親水基を有する界面活性剤、及び
(d)前記アノード組成物をフィルム又は膜に形成するためのバインダー、
を含み、
前記界面活性剤が、スルフェート基、スルホネート基、ピリジニウム基及びアンモニウム基のうちの1種を含み、
前記アノードが、0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、電池。
【請求項2】
前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及びベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)のうち少なくとも1種を含む、請求項に記載の電池。
【請求項3】
前記活物質が金属粒子、金属酸化物粒子、半金属酸化物粒子又は追加の半金属粒子を更に含む、請求項に記載の電池。
【請求項4】
アノードとカソードとを隔離するセパレーターを更に含む、請求項に記載の電池。
【請求項5】
極性官能性親水基を有する界面活性剤、カーボンナノ粒子、並びにシリコンを含む少なくとも1種の活物質を混合して、電極組成物を形成すること、
前記電極組成物とバインダーとを混合して、電極組成物をフィルム又は膜に形成すること、
を含む、電極を調製する方法であって、
前記カーボンナノ粒子が前記電極組成物の15~50重量%であり、
前記界面活性剤が、スルフェート基、スルホネート基、ピリジニウム基及びアンモニウム基のうちの1種を含み、
これにより、前記電極が、0.1Cの充電/放電レートでサイクルさせるとき、少なくとも450mAh/g活物質の比容量を有する、方法。
【請求項6】
前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及びベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)のうち少なくとも1種を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
活物質、界面活性剤及びカーボンナノ粒子に、金属粒子、金属酸化物粒子、半金属酸化物粒子又は追加の半金属粒子を混合することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
アノードとカソードとを隔離するセパレーターを更に含む、請求項5に記載の方法。
【外国語明細書】