IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一方社油脂工業株式会社の特許一覧

特開2022-33277未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033277
(43)【公開日】2022-02-28
(54)【発明の名称】未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液
(51)【国際特許分類】
   C08L 91/00 20060101AFI20220218BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20220218BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C08L91/00
C08K3/34
C08K5/098
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000394
(22)【出願日】2022-01-05
(62)【分割の表示】P 2017095644の分割
【原出願日】2017-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一幸
(57)【要約】
【課題】 本発明は、継粉が発生しにくく水に分散しやすい未加硫ゴム用防着剤及び未加硫ゴム用防着剤水分散液を提供することを目的とする。
【解決手段】 前記目的を達成するために、本発明の未加硫ゴム用防着剤は、
下記成分(A)~(E)を含むことを特徴とする。
(A)スメクタイト
(B)油
(C)脂肪酸アルカリ金属塩
(D)成分(C)を除く界面活性剤
(E)スメクタイトを除く無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(E)を含むことを特徴とする未加硫ゴム用防着剤。
(A)スメクタイト
(B)油
(C)脂肪酸アルカリ金属塩
(D)成分(C)を除く界面活性剤
(E)スメクタイトを除く無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
【請求項2】
さらに、下記成分(F)を含む、請求項1記載の未加硫ゴム用防着剤。

(F)アルコール系溶剤
【請求項3】
下記成分(A)~(E)を含むことを特徴とする未加硫ゴム用防着剤水分散液。
(A)スメクタイト
(B)油
(C)脂肪酸アルカリ金属塩
(D)成分(C)を除く界面活性剤
(E)スメクタイトを除く無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
【請求項4】
さらに、下記成分(F)を含む、請求項3記載の未加硫ゴム用防着剤水分散液。

(F)アルコール系溶剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴムの生産加工の現場においては、シート状などに成形された未加硫ゴムを、次の成形、加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねたり、折り畳んだりして貯蔵することがある。このような貯蔵時において、未加硫ゴム同士が密着してしまうことを防止する目的で、未加硫ゴムの表面に防着剤(密着防止剤)を付着させることが行われている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-095010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
未加硫ゴム用防着剤の成分としては、防着性を向上させる効果が高いスメクタイトがよく用いられる。スメクタイトを含む未加硫ゴム用防着剤は、乾燥固化により強固な防着被膜を形成するため防着性に優れる。一方、未加硫ゴム用防着剤を水に分散して使用する際にスメクタイトが凝集し、いわゆる継粉が発生しやすく、分散不良となり、均一な分散溶解に長時間を要するおそれがある。また、継子が異物としてゴム中に混入することによりタイヤ等の製品外観が損なわれる、分散溶解不足により防着剤本来の性能が発現できない、溶解槽・ディップ槽に継子が堆積することにより槽内の清掃頻度が増加する等のおそれがある。
【0005】
特許文献1には、水溶性高分子と、無機化合物と、多価アルコールと、界面活性剤と、水とを必須成分とする未加硫ゴム用防着剤組成物を用いることにより、水分散性に優れ、短時間で乾燥し、滑りがよく、従来よりも高い防着性を未加硫ゴムに付与できると記載されている。しかし、スメクタイトを主とする珪酸塩が多い未加硫ゴム用防着剤では、前述のとおり、継粉が多量に発生しやすい。このため、特許文献1の方法では、そのような未加硫ゴム用防着剤を、継粉を発生させずに水に分散させることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、継粉が発生しにくく水に分散しやすい未加硫ゴム用防着剤及び未加硫ゴム用防着剤水分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の未加硫ゴム用防着剤は、
下記成分(A)~(E)を含むことを特徴とする。
(A)スメクタイト
(B)油
(C)脂肪酸アルカリ金属塩
(D)成分(C)を除く界面活性剤
(E)スメクタイトを除く無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
【0008】
本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液は、
下記成分(A)~(E)を含むことを特徴とする。
(A)スメクタイト
(B)油
(C)脂肪酸アルカリ金属塩
(D)成分(C)を除く界面活性剤
(E)スメクタイトを除く無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、継粉が発生しにくく水に分散しやすい未加硫ゴム用防着剤及び未加硫ゴム用防着剤水分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0011】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前記成分(A)~(E)を含むことにより、継粉が発生しにくく水に分散しやすい。なお、本発明において「分散」は「溶解」を含む。例えば、本発明の未加硫ゴム用防着剤が水に「分散」するとは、本発明の未加硫ゴム用防着剤の成分のうち、水に可溶な成分が水に溶解し、水に不溶な成分が水に分散することをいう。また、このようなことを、以下において「分散溶解」という場合がある。
【0012】
本発明の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液は、例えば、さらに、下記成分(F)を含んでいてもよい。

(F)アルコール系溶剤
【0013】
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、継粉が発生しにくく水に分散しやすい理由(メカニズム)は、必ずしも明らかではないが、オイル成分(成分(B))および石鹸成分(成分(C))を含むことで、従来の未加硫ゴム用防着剤と比較して継粉形成が抑制され、速やかに水に分散可能であると推測される。
【0014】
[スメクタイト(A)]
スメクタイト(A)(成分(A))は、特に限定されないが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト、および、モンモリロナイトを含有するベントナイト等が挙げられる。成分(A)は、スメクタイトを1種類のみ含んでいても良いが、2種類以上のスメクタイトを併用しても良い。
【0015】
成分(A)は、例えば、防着性を担う成分として機能する。具体的には、例えば、成分(A)が被膜を形成することで、防着性を発揮し得ると考えられる。本発明の未加硫ゴム用防着剤中における成分(A)の含有率は、目的に応じて選択可能であるが、前記成分(A)~(C)の質量の合計に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上85質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上70質量%以下である。前記成分(A)の含有率が10質量%以上であると、良好な防着性が得られるため好ましい。一方、前記成分(A)の含有率が50質量%以下であると、本発明の防着剤乾燥固化物硬度の低減効果がより有効に得られ、良好な異物抑制効果を得ることができるため好ましい。
【0016】
成分(A)(スメクタイト)は、例えば、スメクタイトを含む無機化合物(例えば、前記無機化合物の粉末等)の形態で用いても良い。その場合、前記無機化合物中のスメクタイト含有量の測定方法は、特に限定されないが、例えば、下記の測定方法により測定できる。
【0017】
(スメクタイト含有量の測定方法)
スメクタイトを含む無機化合物をX線回折により分析し、2θ=7°付近に出現するスメクタイト由来の回折ピーク強度からスメクタイト含有量を算出する。スメクタイト含有量を定量する際のX線回折の分析条件は、下記のとおりとする。

X線回折分析条件
・測定装置:X‘Pert PRO MRD(PANalytical社製)
・ターゲット:Cu
・管電圧:45kV
・管電流:40mA
・スキャン軸:ゴニオ
・スキャン範囲:5°~60°
・ステップサイズ:0.03°
・ステップ時間:12.7秒
・発散スリット:1/2°
・散乱スリット:1°
・受光スリット:なし
【0018】
成分(A)の含有率は、成分(A)~(E)の合計に対し、例えば、20質量%以上90質量%以下、25質量%以上85質量%以下、または30質量%以上80質量%以下であってもよい。成分(A)の含有率が上記範囲内であると、未加硫ゴム用防着剤が分散性と防着性に優れるという観点から好ましい。
【0019】
[油(B)]
油(B)(成分(B))は、特に限定されないが、本発明の未加硫ゴム用防着剤の使用環境(未加硫ゴムの表面に付着させて密着を防止する環境)温度において流動性を有する油が好ましい。本発明の未加硫ゴム用防着剤の使用環境温度は、特に限定されないが、具体的には、例えば-5~60℃である。油(B)は、例えば、鉱物油、植物油、動物油等があげられ、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。油(B)は、鉱物油および植物油の少なくとも一方が好ましい。また、例えば、油(B)が、分子中にケイ素原子を含まないことが好ましい。前記鉱物油としては、例えば、流動パラフィン、灯油、軽油があげられ、中でも、流動パラフィン、灯油、軽油が好ましい。植物油としては、例えば、菜種油、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、大豆油、パーム核油、ゴマ油、ひまし油、綿実油があげられ、中でも菜種油、ヤシ油、パーム油が好ましい。成分(B)の含有率は、成分(A)~(E)の合計に対し、例えば、0.5質量%以上10質量%以下、1質量%以上9質量%以下、または2質量%以上8質量%以下であってもよい。成分(B)の含有率が上記範囲内であると、未加硫ゴム用防着剤が分散性と抑泡性に優れるという観点から好ましい。
【0020】
[脂肪酸アルカリ金属塩(C)]
脂肪酸アルカリ金属塩(C)(成分(C))は、特に限定されず、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。脂肪酸アルカリ金属塩(C)としては、特に限定されないが、例えば、炭素数が6~30の脂肪酸ナトリウム塩またはカリウム塩がよく、より具体的には、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の脂肪酸のナトリウム塩や、カリウム塩等があげられる。これらの脂肪酸石鹸(脂肪酸アルカリ金属塩)の中でも、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸のナトリウム塩や、カリウム塩等が、起泡性および溶解性の点で好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸のナトリウム塩や、カリウム塩がさらに好ましい。また、例えば、脂肪酸アルカリ金属塩(C)のヨウ素価が80未満であると、未加硫ゴム用防着剤において、さらに継粉が発生しにくく水に分散しやすいため好ましい。前記ヨウ素価は、例えば、70以下、65以下、または60以下でもよく、例えば、0以上、0.1以上、または0.2以上でもよい。また、脂肪酸アルカリ金属塩(C)において、脂肪酸の平均炭素鎖長は、例えば、14以上、16以上、または18以上でもよく、24以下、22以下、または20以下でもよい。
【0021】
脂肪酸アルカリ金属塩(C)の含有率は、成分(A)~(E)の合計に対し、例えば、1質量%以上10質量%以下、1質量%以上8質量%以下、または2質量%以上7質量%以下であってもよい。起泡性の観点から、成分(C)の含有率が多すぎないことが好ましく、溶解性の観点から、成分(C)の含有率が少なすぎないことが好ましい。
【0022】
また、本発明の未加硫ゴム用防着剤において、成分(B)/成分(C)の質量比が0.2以上10以下であると、さらに継粉が発生しにくく水に分散しやすいため好ましい。成分(B)/成分(C)の質量比は、例えば、0.3以上、0.4以上、0.5以上、または0.7以上でもよく、8以下、5以下、3以下、または2以下でもよい。
【0023】
[成分(D)]
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、成分(D)は、前述のとおり、成分(C)を除く(すなわち、成分(C)以外の)界面活性剤である。界面活性剤(D)(成分(D))は、例えば、未加硫ゴム用防着剤に濡れ性および水への分散性を付与する働きをする。界面活性剤(D)(成分(D))としては、特に限定されないが、例えば、下記(1)~(5)等が挙げられる。また、界面活性剤(D)は、界面活性剤を1種類のみ用いても良いし、2種類以上併用しても良い。

(1)高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルキル(又はアルケニル)アミドエーテルカルボン酸塩、アシルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤
(2)高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノ硫酸エステル塩等の硫酸エステル型アニオン界面活性剤
(3)アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤
(4)アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤
(5)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型のノニオン界面活性剤
【0024】
アニオン界面活性剤の対イオンは、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンが好ましい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
アニオン界面活性剤としては、未加硫ゴムの表面との濡れ性により優れる防着剤懸濁液が得られることから、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩が好ましく、α-オレフィンスルホン酸塩としてはα-オレフィンスルホン酸ナトリウム「リポランLB-840」(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、ジアルキルスルホコハク酸塩としてはジオクチルスルホコハク酸ナトリウムがより好ましい。
【0026】
ノニオン界面活性剤は、特に限定されないが、本発明では、例えば、下記式(1)で表されるノニオン界面活性剤を用いることができる。下記式(1)のノニオン界面活性剤は、アニオン界面活性剤とともに、防着剤懸濁液の未加硫ゴムの表面に対する表面張力を低下させることに加えて、防着剤の未加硫ゴムの表面への付着性を効果的に高める作用を奏するものと推測される。ただし、この推測は、本発明をなんら限定しない。

RO-(AO)-H (1)
【0027】
前記式(1)中、Rは、炭素数が8~18の脂肪族炭化水素基を示す。該脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。Rの炭素数は、成分(A)の分散性に優れる点から、好ましくは10~16であり、12~14がさらに好ましい。
AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を示し、nはAOの平均付加モル数である。
nは、1~30が好ましく、1~25がより好ましく、1~15がさらに好ましい。具体的には、界面活性能が低下し、成分(A)の分散性が低下することを防止する観点からは、nは、1以上である(すなわち、0ではない)ことが好ましい。また、親水性が高くなりすぎることによる付着性低下を防止する観点からは、nは、30を超えないことが好ましく、25を超えないことがより好ましい。nが、好ましくは1~30の範囲、より好ましくは1~25の範囲であれば、成分(A)の分散性がさらに向上し、かつ、未加硫ゴム表面の疎水性が高い場合にも被覆に充分な粘弾性を与えることで付着性を向上させるものと推測される。ただし、この推測は、本発明をなんら限定しない。
【0028】
炭素数2~4のオキシアルキレン基とは、例えば、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが付加してなる(付加重合により形成される)重合単位である。炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、具体的には、エチレンオキサイドが付加してなるオキシエチレン基(EO)、プロピレンオキサイドが付加してなるオキシプロピレン基(PO)、および、ブチレンオキサイドが付加してなるオキシブチレン基(BO)がある。(AO)は、その構造中に、少なくともオキシエチレン基を含む。(AO)が、オキシエチレン基(EO)と、オキシプロピレン基(PO)と、オキシブチレン基(BO)とのうち複数種類を含む場合は、これらの基はブロック状に配列していても、ランダムに配列していてもよい。好ましい(AO)は、親水性、疎水性のバランスに優れる点から、オキシエチレン基(EO)のみからなる。
【0029】
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における界面活性剤(D)は、1種類のみ用いてもよいし、任意の複数種類を併用してもよいが、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤を併用すると、未加硫ゴム用防着剤が濡れ性と付着性に優れるという観点から好ましい。本発明の未加硫ゴム用防着剤中における界面活性剤(D)の含有率は、目的に応じて選択可能であるが、前記成分(A)~(E)の質量の合計に対して、例えば、1質量%以上25質量%以下、2質量%以上20質量%以下、または3質量%以上15質量%以下であってもよい。成分(D)の含有率が上記範囲内であると、未加硫ゴム用防着剤が濡れ性と付着性に優れるという観点から好ましい。
【0030】
[成分(E)]
本発明の未加硫ゴム用防着剤の成分(E)は、前述のとおり、スメクタイトを除く無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質である。成分(E)は、例えば、主に滑剤として働く(未加硫ゴム用防着剤に滑り性を付与する)と考えられる。
【0031】
成分(E)において、前記スメクタイトを除く無機珪酸塩は、特に限定されないが、例えば、カオリン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、セリサイト、ネフェリン・サイヤナイト等のケイ酸塩が挙げられる。前記無機炭酸塩は、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩が挙げられる。前記無機硫酸塩は、特に限定されないが、例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩が挙げられる。前記金属酸化物は、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物が挙げられる。前記金属水酸化物は、特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物が挙げられる。
【0032】
また、成分(E)は、例えば、成分(E1)、すなわち、亜鉛、マグネシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つの金属石鹸(脂肪酸金属塩)を含んでいてもよい。前記金属石鹸を含むことにより、未加硫ゴム用防着剤の硬度が低減し、防着性が向上すると考えられる。なお、成分(E1)の具体例等については後述する。前記金属石鹸としては、成分(E1)以外には、例えば、脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。前記脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩は、特に限定されないが、例えば、後述する成分(E1)の金属(亜鉛、マグネシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つの金属)を、カルシウムまたはバリウムに変えた塩でも良い。なお、これらの例示に係る各金属石鹸は、非水溶性塩であり、アニオン界面活性剤には該当しない。成分(E)は、さらに、無機炭酸塩およびスメクタイトを除く無機珪酸塩の少なくとも一方を含むことが好ましく、その中でもカオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウムの少なくとも一つを含むことが、未加硫ゴム用防着剤の硬度がより低下するため好ましい。硬度低下の観点からは、炭酸カルシウムを含むことがさらに好ましく、カオリン、マイカ、タルクの少なくとも一つと炭酸カルシウムとを共に含むことがさらに好ましい。また、カオリンと、マイカおよび/またはタルクとを併用すると、より優れた防着性が得られるため好ましい。
【0033】
[成分(E1)]
亜鉛、マグネシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つの金属石鹸(E1)(成分(E1)、以下において「金属石鹸(E1)」ともいう場合がある。)は、特に限定されないが、例えば、カプリル酸亜鉛、カプリル酸マグネシウム、カプリン酸亜鉛、カプリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、14-オクタデカン酸亜鉛、14-オクタデカン酸マグネシウム、8-オクタデカン酸亜鉛、8-オクタデカン酸マグネシウム、6-オクタデカン酸亜鉛、6-オクタデカン酸マグネシウム、ヤシ脂肪酸亜鉛、ヤシ脂肪酸マグネシウム、パーム油脂肪酸亜鉛、パーム油脂肪酸マグネシウム、パーム核油脂肪酸亜鉛、パーム核油脂肪酸マグネシウム、牛脂脂肪酸亜鉛、牛脂脂肪酸マグネシウム、ひまし油脂肪酸亜鉛、ひまし油脂肪酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種類の金属石鹸が挙げられる。
【0034】
金属石鹸(E1)は、成分(A)とともに本発明の未加硫ゴム用防着剤中に含まれることにより、十分な防着性を有しながら、未加硫ゴムの表面に形成される防着剤の乾燥被膜の硬度を低減し、ゴム中の異物を低減すると考えられる。また、金属石鹸(E1)により、防着性も向上させることができる。
【0035】
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における金属石鹸(E1)の含有率は、成分(E)全体の質量に対し、例えば、2質量%以上、または5質量%以上であってもよい。また、金属石鹸(E1)の含有率(質量)は、成分(E)全体の質量に対し、例えば、50質量%以下であり、35質量%以下、25質量%以下、または15質量%以下であってもよい。成分(E)中の金属石鹸(E1)の含有率を2質量%以上とすることで、乾燥固化物の硬度が低減し、良好な防着性を得ることができる。一方、成分(E)中の金属石鹸(E1)の含有率が50質量%以下であれば、十分な防着剤乾燥固化物の硬度低減効果、異物抑制効果が得られ、未加硫ゴム表面に形成された被膜の飛散を抑制する上で好ましい。また、成分(E1)以外の他の成分(E)を十分に配合することができる。
【0036】
また、成分(E1)の含有率は、成分(A)~(C)の質量の合計に対しては、例えば、1質量%以上25質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下、3質量%以上15質量%以下、または3質量%以上10質量%以下であってもよい。成分(E1)の含有率が前記範囲であることにより、例えば、本発明の防着剤乾燥固化物の硬度低減効果、異物抑制効果を十分に得ることができ、さらに未加硫ゴム表面に飛散しにくい被膜を形成し、さらに、成分(E1)以外の他の成分(E)を十分に配合できるので良好な滑り性も得られるため好ましい。
【0037】
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における成分(E)の含有率は、目的に応じて選択可能であるが、前記成分(A)~(E)の質量の合計に対して、例えば、1質量%以上25質量%以下、2質量%以上20質量%以下、または3質量%以上15質量%以下であってもよい。成分(E)の含有率が上記範囲内であると、未加硫ゴム用防着剤が沈降防止性(水に分散した際に無機成分が沈降しにくい性質)と防着性に優れるという観点から好ましい。
【0038】
また、本発明の未加硫ゴム用防着剤において、成分(E)/成分(A)の質量比が0.05以上10以下であると、さらに継粉が発生しにくく水に分散しやすいため好ましい。成分(E)/成分(A)の質量比は、例えば、0.1以上、0.15以上、または0.2以上でもよく、5以下、3以下、または2以下でもよい。
【0039】
[任意成分]
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前述のとおり、成分(A)~(E)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分としては、例えば、前述のアルコール系溶剤(F)があげられる。
【0040】
アルコール系溶剤(F)は、特に限定されず、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。アルコール系溶剤(F)は、例えば、アルコール系溶剤としては、1価アルコール、多価アルコールおよびグリコール系溶剤があげられる。1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~24の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有する1価アルコールがよく、具体的には、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、1-オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールがあげられる。多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量100~1000のポリエチレングリコール等があげられる。前記アルキル基またはアルケニル基の炭素数は、例えば、4以上、6以上、または8以上であってもよい。グリコール系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖のアルコールに炭素数2~5のオキシアルキレン基が1~5モル付加重合したものがあげられる。より具体的には、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等の炭素数1~8のアルコールのEO(1~5モル)付加体、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等の炭素数1~8のアルコールのPO(1~5モル)付加体、等があげられる。前記アルキル基またはアルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、2~8、または4~8であってもよい。
【0041】
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における成分(F)の含有率は、目的に応じて選択可能であるが、前記成分(A)~(F)の質量の合計に対して、例えば、1質量%以上15質量%以下、2質量%以上12質量%以下、または3質量%以上10質量%以下であってもよい。成分(F)の含有率が上記範囲内であると、未加硫ゴム用防着剤が防着性、沈降性および溶解性に優れるという観点から好ましい。
【0042】
成分(F)以外の任意成分としては、例えば、消泡剤、濡れ性補助剤、粘性補助剤、異物低減補助剤などの添加剤があげられる。
【0043】
消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;シリコーン油;などがあげられる。前記消泡剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0044】
濡れ性補助剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類があげられ、より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、ヘキサノール、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルトール、マルチトール、スクロース、エリスリトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、多価アルコールのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの付加物等があげられる。前記濡れ性補助剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0045】
粘性補助剤としては、特に限定されないが、例えば、水溶性高分子類があげられ、より具体的には、例えば、蛋白類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポ
リエチレンオキシド、水溶性ウレタン樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ブタジエン樹脂、水溶性フェノール樹脂等の合成水溶性高分子;キサンタンガム、グアーガム、ウェランガム、ローカストビーンガム、ダイユータンガム、タマリンドガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、アラビアガム、カラギーナン、ラムザンガム、サクシノグリカン、タラガム、ジェランガム、カラヤガム、ペクチン、アルギン酸誘導体、セルロースエーテル類等の天然水溶性高分子があげられる。前記粘性補助剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0046】
また、本発明の未加硫ゴム用防着剤には、その粉体流動を抑制するなどの目的で、水を含有させてもよい。その場合、水の含有量は、特に限定されないが、例えば1~3質量%程度である。
【0047】
[未加硫ゴム用防着剤、未加硫ゴム用水分散液および防着処理済み未加硫ゴム]
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前述のとおり、成分(A)~(E)を含有する。スメクタイト(成分(A))の含有率は、特に限定されないが、前述のとおり、10質量%以上90質量%以下含有することが好ましい。スメクタイトは、防着性を担う成分であるため、良好な防着性を得るためには、前述のとおり、防着剤中の含有量が10質量%以上であることが好ましい。一方、防着剤中の含有量が90質量%以下であれば、前述のとおり、本発明の防着剤乾燥固化物硬度の低減効果がより有効に得られ、良好な異物抑制効果を得ることができるため好ましい。なお、スメクタイトには、水を含んだ状態で流通するものもあるが、本明細書においてスメクタイトの含有量といった場合、該含有量は、水の量を含まない値である。
【0048】
本発明の未加硫ゴム用防着剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、未加硫ゴム用防着剤の全ての成分(成分(A)~(E)と、必要に応じて配合される任意成分と)を混合することにより製造できる。混合に用いる装置としては、例えば、撹拌羽根を容器内に備えた構成の装置などを使用できる。具体的には、例えば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動撹拌または撹拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、撹拌装置が複数組み合わされたスーパーミキサー(株式会社カワタ製)、ハイスピードミキサー(株式会社アーステクニカ製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等の多機能粉体混合機なども使用できる。また、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミルなどの乾式粉砕機を用いてもよい。
【0049】
また、未加硫ゴム用防着剤の全ての成分(成分(A)~(E)と、必要に応じて配合される任意成分と)のうち、液体成分を少なくとも1種使用する場合には、前記液体成分を液体成分以外の混合物に対して吹付けたり散布したりするスプレー装置、シャワー装置などを併用してもよい。
【0050】
粉末状の未加硫ゴム用防着剤とする場合、粉末防着剤全体に対する成分(A)~(E)の質量の合計の割合は100質量%でもよい。また、水および/またはその他の前記任意成分を含む場合、成分(A)~(E)の質量の合計の割合は特に限定はされないが、未加硫ゴム用防着剤の質量全体に対し、例えば、80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上97質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以上95質量%以下である。
【0051】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液として用いることができる。本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液の製造方法は、特に限定されない、例えば、前述のようにして本発明の未加硫ゴム用防着剤の全ての成分を混合し、本発明の未加硫ゴム用防着剤を製造した後に、それを水中に分散させても良い。また、例えば、本発明の未加硫ゴム用防着剤の各成分を、それぞれ水中に溶解または分散させ、水中で混合することにより、本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液としても良い。前記各成分を溶解または分散させる方法も特に限定されず、例えば、粉末状の未加硫ゴム用防着剤を攪拌槽内で所定量の水に分散させれば良い。本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液中における、成分(A)~(E)の合計の含有量は、特に限定されないが、本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液全体の質量に対し、例えば、0.5質量%以上10質量%以下、0.5質量%以上8質量%以下、0.5質量%以上6質量%以下、または0.5質量%以上4質量%以下であってもよい。
【0052】
未加硫ゴム用防着剤水分散液とする場合、前記未加硫ゴム用防着剤水分散液中における水以外の成分の質量の合計に対する成分(A)~(E)の合計の含有量は、例えば、90質量%以上100質量%以下、90質量%以上99質量%以下、または93質量%以上98質量%以下であってもよい。
【0053】
このように未加硫ゴム用防着剤水分散液として製造した場合、そのまま後述のウェット法などにより未加硫ゴム表面に塗布して使用することもできる。なお、前記のように未加硫ゴム用防着剤水分散液とする場合、成分(E1)が亜鉛塩およびマグネシウム塩の少なくとも一方を含むと、未加硫ゴム用防着剤水分散液の粘度が増加するので、これを後述のウェット法などにより未加硫ゴムに塗布する際、均質に塗布しやすくなり好ましい。特に、前記マグネシウム塩は、スメクタイト(成分(A))の配合量(含有率)が少ない場合でも良好な増粘性を示すためより好ましい。
【0054】
本発明の未加硫ゴム用防着剤を用いた防着処理済み未加硫ゴムの製造方法は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤を未加硫ゴムの表面に付着させて防着処理する防着処理工程を有する。このようにして製造された防着処理済み未加硫ゴムは、積み重ねたり、折り畳んだりして貯蔵されても、例えば、未加硫ゴム同士が密着してしまうことがない。
【0055】
前記防着処理工程は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液を前記未加硫ゴムの表面に付着させ、さらに水を揮発させることにより、前記未加硫ゴムの表面に前記本発明の未加硫ゴム用防着剤を付着させる工程であっても良い。より具体的には、前記防着処理工程は、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液(防着剤懸濁液)を未加硫ゴムの表面に付着させる懸濁液付着工程(水分散液付着工程)と、未加硫ゴムの表面の前記防着剤懸濁液を乾燥して、防着剤からなる被膜を未加硫ゴムの表面に形成する乾燥工程とを有することが好ましい。このような防着処理工程を、例えば、ウェット法という。
【0056】
本発明の防着処理済み未加硫ゴムの製造方法において、前記ウェット法は、特に限定されず、例えば、一般的な未加硫ゴム用防着剤におけるウェット法と同様にして行うことも可能である。前記防着剤懸濁液(水分散液)中における前記本発明の未加硫ゴム用防着剤の濃度は、例えば前述のとおりであり、より具体的には、例えば2~3質量%とすることができるが、これには限定されず、任意に調整可能である。
【0057】
前記懸濁液付着工程では、例えば、シート状などに成形された時の熱により高温状態(例えば80~150℃程度)にある未加硫ゴムに対して、防着剤懸濁液を付着させることが好ましい。
【0058】
前記懸濁液付着工程の具体的方法としては、例えば、防着剤懸濁液を未加硫ゴムにシャワー装置で散布する方法、防着剤懸濁液の入った槽に未加硫ゴムを短時間浸漬するディップ法が挙げられる。また、塗布装置を用いて防着剤懸濁液を未加硫ゴムに塗布する方法などを採用してもよく、これらの方法を適宜併用してもよい。
【0059】
本発明によれば、前述のとおり、防着性と、防着剤起因の異物低減とを両立可能である。本発明の未加硫ゴム用防着剤がこのような効果を奏する理由(メカニズム)は、必ずしも明らかではないが、次のように推測される。すなわち、金属石鹸である成分(B1)により、防着性発現を担う成分である成分(A)が少ない量でも、防着剤の未加硫ゴムの表面への付着性を効果的に高め、防着剤懸濁液が表面にムラなく付着する効果があると推察される。これにより、本発明によれば、優れた防着剤が得られると推測される。これにより、本発明の未加硫ゴム用防着剤から調製された防着剤懸濁液は、防着剤起因の異物(例えば、タイヤ異物)を抑制するとともに、未加硫ゴムの表面を効率的に覆うため良好な防着性を得られるものと考えられる。ただし、これらは、推測されるメカニズムの一例であり、本発明をなんら限定しない。
【0060】
本発明によれば、従来困難であった防着性と防着剤起因の異物低減の両立を達成できる。本発明の未加硫ゴム用防着剤が適用可能なゴム種には特に制限はなく、未加硫のゴムであればよい。前記ゴム種としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等のゴムや、これらのうちの複数種が混合されたゴムが挙げられる。
【実施例0061】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により、何ら限定されない。
【0062】
以下の実施例および比較例において使用した原料名(化合物名)と、その製品名(商品名)および製造元とを、下記表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
下記表2~4に示す重量(質量)比で、各成分を混練して、実施例1~57及び比較例1~6の未加硫ゴム用防着剤を、それぞれ製造した。そして、下記(1)~(3)に示す方法で、分散溶解性(分散性)、防着性、および沈降性を、それぞれ評価した。下記表2~4には、これらの評価結果も併せて示す。
【0065】
下記「(2)防着性の評価」には、評価用ゴムとして下記の未加硫NR/BRゴムを用いた。
(未加硫NR/BRゴム)
NR(RSS♯3)70質量部とBR(JSR(株)製、商品名「BR-01」)30質量部の合計100質量部に対して、ホワイトカーボン(東ソー・シリカ(株)製、商品名「ニップシールVN-3」)10質量部と、ISAFブラック(東海カーボン(株)製、商品名「シースト6」)30質量部と、JSRAROMA(プロセスオイル)(日本サン石油(株)製、商品名「アロマ790」)15質量部と、亜鉛華(ハクスイテック(株)製、亜鉛華2種)3質量部と、ステアリン酸(日油(株)製、椿)1質量部と、6PPD(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクラック6C」)1質量部、CBS(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ-G」)1質量部、硫黄(鶴見化学(株)製)1.5質量部を配合した(合計162.5質量部)未加硫NR/BRゴム。
【0066】
(1)分散溶解性の評価
まず、実施例1~57及び比較例1~6の各未加硫ゴム用防着剤を準備した。つぎに、温度20℃の水をビーカーに入れ、撹拌モーターにて200rpmの速度で水を撹拌しながら、未加硫ゴム用防着剤を水97質量%に対して3質量%添加し、水に完全に分散(分散溶解)させて未加硫ゴム用防着剤水分散液(懸濁液)を製造した。このような未加硫ゴム用防着剤水分散液の製造を、実施例1~57及び比較例1~6のそれぞれの未加硫ゴム用防着剤を用いて行った。添加した未加硫ゴム用防着剤が完全に分散溶解するまでの時間を測定し、その時間が早いものほど分散溶解性は良好であると判定した。
【0067】
(2)防着性の評価
まず、実施例1~57および比較例1~6の各未加硫ゴム用防着剤を用い、前記「(1)分散溶解性の評価」と同様にして未加硫ゴム用防着剤水分散液(懸濁液)を製造した。つぎに、前記未加硫ゴム(未加硫NR/BRゴム)を温度80~120℃のオープンロールで練り出してゴムシート(厚さ:5~8mm、60cm×15cm)とし、繰り出された直後の該ゴムシートを、実施例1~15および比較例1~2の各未加硫ゴム用防着剤水分散液(温度40℃)1Lに約1秒間浸漬した。その後、前記ゴムシートをすばやく垂直に引き上げ、室温下において垂直状態で静置し、自然乾燥した。その後、前記ゴムシートを6cm×15cmにカットした試験片2枚を重ね合わせて積層状態とし、その積層状態にある試験片に対して、一方の面から垂直方向に1t/mの荷重をかけ、60℃で12時間放置した。さらにその後、前記試験片を室温に戻し、引張り試験機〔AGS-500D型、SHIMADZU〕を用いて180°剥離試験を行い、引っ張り速度300mm/minで剥離抗力(N/cm)を測定した。剥離抗力が小さいものほど防着性は良好であると判定した。
【0068】
(3)沈降性の評価
まず、実施例1~57および比較例1~6の各未加硫ゴム用防着剤を用い、前記「(1)分散溶解性の評価」と同様にして未加硫ゴム用防着剤水分散液(懸濁液)を製造した。つぎに、前記未加硫ゴム用防着剤水分散液(懸濁液)を100mlメスシリンダーに入れ、10回上下に振とうした後、20℃の恒温槽の中で静置し、24時間後の固形分沈降量(mL)を測定した。固形分沈降量が少ないほど沈降性は良好であると判定した。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
前記表2~4に示したとおり、成分(A)~(E)を全て含む実施例の未加硫ゴム用防着剤水分散では、分散溶解性(分散性)、防着性、および沈降性の全てが良好であった。すなわち、実施例によれば、継粉が発生しにくく水に分散しやすい未加硫ゴム用防着剤及び未加硫ゴム用防着剤水分散液を得ることができた。これに対し、成分(B)および(C)の一方または両方を含まない比較例1~6は、いずれも、実施例と比較して分散溶解性(分散性)、防着性、および沈降性が劣っていた。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(E)を含み、成分(B)/成分(C)の質量比が0.2以上10以下であることを特徴とする未加硫ゴム用防着剤。
(A)スメクタイト
(B)-5~60℃の条件下で流動性を有する
(C)脂肪酸アルカリ金属塩
(D)成分(C)、POE(18)硬化ヒマシ油、およびステアロイルメチルタウリンソーダ塩を除く界面活性剤
(E)スメクタイトを除く無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
【請求項2】
前記成分(C)が、ヨウ素価が80未満の脂肪酸アルカリ金属塩である、請求項1記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項3】
さらに、下記成分(F)を含む、請求項1または2記載の未加硫ゴム用防着剤。

(F)アルコール系溶剤
【請求項4】
前記成分(D)が、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項5】
前記成分(D)が、下記式(1)で表されるノニオン界面活性剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の未加硫ゴム用防着剤。

RO-(AO) -H (1)

前記式(1)中、Rは、炭素数が8~18の脂肪族炭化水素基を示し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を示し、nはAOの平均付加モル数である。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の未加硫ゴム用防着剤と、水と、を含むことを特徴とする未加硫ゴム用防着剤水分散液。