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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033369
(43)【公開日】2022-03-01
(54)【発明の名称】通信装置、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20220221BHJP
   H04W 72/02 20090101ALI20220221BHJP
   H04L 1/08 20060101ALI20220221BHJP
   H04L 1/16 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
H04W28/04 110
H04W72/02
H04L1/08
H04L1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018236279
(22)【出願日】2018-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 茂
【テーマコード(参考)】
5K014
5K067
【Fターム(参考)】
5K014DA02
5K014FA03
5K067AA11
5K067DD11
5K067DD24
5K067EE02
5K067HH28
5K067JJ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より信頼性の高い通信を有する通信装置及び通信方法を提供する。
【解決手段】通信装置(無線通信モジュール15)は、利用可能な周波数チャネルを利用して、データを他の通信装置に送信する。通信装置は、データの正常な受信の確認に用いられる確認信号を要求するために要求信号を生成し、利用可能な複数の周波数チャネルを利用して、生成した要求信号を他の通信装置に送信する。要求信号は、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用可能な周波数チャネルを利用して、データを他の通信装置に送信し、
前記データの正常な受信の確認に用いられる確認信号を要求するための信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関する第1のチャネル情報を含む要求信号を生成し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記要求信号を前記他の通信装置に送信する
制御を行う制御部を備える
通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の周波数チャネルに含まれる各周波数チャネルで、前記要求信号を同時に送信する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記データの送信に利用した周波数チャネルと異なる複数の周波数チャネルの利用状況を監視し、
その監視結果に応じた利用可能な複数の周波数チャネルを利用して、前記要求信号を送信する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記確認信号は、前記他の通信装置側で利用可能な複数の周波数チャネルに関する第2のチャネル情報を含み、
前記制御部は、前記要求信号を送信した周波数チャネルで、前記他の通信装置から送信されてくる前記確認信号を待ち受ける動作を制御する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記データは、複数のサブフレームをアグリゲートしたデータフレームとして送信され、
前記確認信号は、前記他の通信装置側で利用可能な複数の周波数チャネルに関する第2のチャネル情報、及び再送が必要な再送データに関する特定情報を含み、
前記制御部は、前記他の通信装置から送信されてくる前記確認信号に含まれる前記特定情報に基づいて、前記サブフレームごとに前記再送データを特定する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記確認信号を受信した周波数チャネルを利用して、前記再送データを送信する
請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、監視している複数の周波数チャネルのいずれかで、所定の受信電界強度以上の信号を検出した場合に、前記信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなす
請求項3に記載の通信装置。
【請求項8】
前記受信電界強度の設定値は、検出した前記信号の特性に応じて可変とされる
請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記制御部は、
監視している複数の周波数チャネルのいずれかで、所定のプリアンブル信号を検出した場合に、その後に取得されるヘッダ情報に記載されたパラメータに基づき、前記プリアンブル信号を検出した周波数チャネルが占有される時間を算出し、
算出した前記時間が経過するまで、当該プリアンブル信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなす
請求項3に記載の通信装置。
【請求項10】
通信装置が、
利用可能な周波数チャネルを利用して、データを他の通信装置に送信し、
前記データの正常な受信の確認に用いられる確認信号を要求するための信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む要求信号を生成し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記要求信号を前記他の通信装置に送信する
制御を行う
通信方法。
【請求項11】
利用可能な周波数チャネルを利用して、他の通信装置から送信されてくるデータを受信し、
前記データの正常な受信の確認に用いられる信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関する第1のチャネル情報を含む確認信号を生成し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記確認信号を前記他の通信装置に送信する
制御を行う制御部を備える
通信装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記複数の周波数チャネルに含まれる各周波数チャネルで、前記確認信号を同時に送信する
請求項11に記載の通信装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記データの受信に利用した周波数チャネルと異なる複数の周波数チャネルの利用状況を監視し、
その監視結果に応じた利用可能な複数の周波数チャネルを利用して、前記確認信号を送信する
請求項11に記載の通信装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記データを受信した周波数チャネルを除いた周波数チャネルで、前記他の通信装置から送信されてくる、前記確認信号を要求するための信号であって前記他の通信装置側で利用可能な複数の周波数チャネルに関する第2のチャネル情報を含む要求信号を待ち受ける動作を制御する
請求項11に記載の通信装置。
【請求項15】
前記制御部は、
前記他の通信装置から送信されてくる、前記確認信号を要求するための信号であって前記他の通信装置側で利用可能な複数の周波数チャネルに関する第2のチャネル情報を含む要求信号を受信し、
前記要求信号を受信した複数の周波数チャネルを利用して、前記確認信号を送信する
請求項11に記載の通信装置。
【請求項16】
前記データは、複数のサブフレームをアグリゲートしたデータフレームとして送信され、
前記制御部は、
前記サブフレームごとに受信の確認を実施して、再送が必要な再送データを特定し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、特定した前記再送データに関する特定情報を含む前記確認信号を送信する
請求項11に記載の通信装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記確認信号を送信した周波数チャネルを利用して、前記他の通信装置から送信されてくる前記再送データを待ち受ける動作を制御する
請求項16に記載の通信装置。
【請求項18】
前記制御部は、監視している複数の周波数チャネルのいずれかで、所定の受信電界強度以上の信号を検出した場合に、前記信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなす
請求項13に記載の通信装置。
【請求項19】
前記制御部は、
監視している複数の周波数チャネルのいずれかで、所定のプリアンブル信号を検出した場合に、その後に取得されるヘッダ情報に記載されたパラメータに基づき、前記プリアンブル信号を検出した周波数チャネルが占有される時間を算出し、
算出した前記時間が経過するまで、当該プリアンブル信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなす
請求項13に記載の通信装置。
【請求項20】
通信装置が、
利用可能な周波数チャネルを利用して、他の通信装置から送信されてくるデータを受信し、
前記データの正常な受信の確認に用いられる信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む確認信号を生成し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記確認信号を前記他の通信装置に送信する
制御を行う
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、通信装置、及び通信方法に関し、特に、より信頼性の高い通信を実現することができるようにした通信装置、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からのデータ伝送方法として、データフレームの送信が終了した直後に受領確認のACK(Acknowledgement)フレームを同一の周波数チャネル上で返送する技術が用いられている。
【0003】
また、特許文献1には、データ伝送の直後のSIFS(Short Inter Frame Space)間隔で、衝突検出を実施する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-110245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ACKフレームが正しく返送されないと、他の通信に誤りが生じたり、あるいは他の通信と衝突したりするなど、通信の品質が低下するため、より信頼性の高い通信を実現するための技術方式が求められていた。
【0006】
本技術はこのような状況に鑑みてなされたものであり、より信頼性の高い通信を実現することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の一側面の通信装置は、利用可能な周波数チャネルを利用して、データを他の通信装置に送信し、前記データの正常な受信の確認に用いられる確認信号を要求するための信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む要求信号を生成し、前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記要求信号を前記他の通信装置に送信する制御を行う制御部を備える通信装置である。
【0008】
本技術の一側面の通信方法は、通信装置が、利用可能な周波数チャネルを利用して、データを他の通信装置に送信し、前記データの正常な受信の確認に用いられる確認信号を要求するための信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む要求信号を生成し、前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記要求信号を前記他の通信装置に送信する制御を行う通信方法である。
【0009】
本技術の一側面の通信装置、及び通信方法においては、利用可能な周波数チャネルを利用して、データが他の通信装置に送信され、前記データの正常な受信の確認に用いられる確認信号を要求するための信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む要求信号が生成され、前記複数の周波数チャネルを利用して、生成された前記要求信号が前記他の通信装置に送信される。
【0010】
本技術の一側面の通信装置は、利用可能な周波数チャネルを利用して、他の通信装置から送信されてくるデータを受信し、前記データの正常な受信の確認に用いられる信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む確認信号を生成し、前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記確認信号を前記他の通信装置に送信する制御を行う制御部を備える通信装置である。
【0011】
本技術の一側面の通信方法は、通信装置が、利用可能な周波数チャネルを利用して、他の通信装置から送信されてくるデータを受信し、前記データの正常な受信の確認に用いられる信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む確認信号を生成し、前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記確認信号を前記他の通信装置に送信する制御を行う通信方法である。
【0012】
本技術の一側面の通信装置、及び通信方法においては、利用可能な周波数チャネルを利用して、他の通信装置から送信されてくるデータが受信され、前記データの正常な受信の確認に用いられる信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む確認信号が生成され、前記複数の周波数チャネルを利用して、生成された前記確認信号が前記他の通信装置に送信される。
【0013】
なお、本技術の一側面の通信装置は、独立した装置であってもよいし、1つの装置を構成している内部ブロックであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】無線ネットワークの構成の例を示した図である。
図2】現状の方式によるデータ再送の流れを示した図である。
図3】現状の方式によるデータ再送の流れを示した図である。
図4】新方式を適用した場合における各通信装置の動作の流れを示す図である。
図5】フレームアグリゲーションを適用したA-MPDUの構成の例を示す図である。
図6】本技術を適用したSBARフレームの構成の例を示す図である。
図7】BAR Controlフィールドの詳細な構成の例を示す図である。
図8】BAR Informationフィールドの詳細な構成の第1の例を示す図である。
図9】BAR Informationフィールドの詳細な構成の第2の例を示す図である。
図10】ビットマップ形式のチャネル情報のパラメータの例を示した図である。
図11】無線LANシステムで利用可能な周波数チャネルの配置の例を示した図である。
図12】本技術を適用したSACKフレームの構成の例を示す図である。
図13】BA Controlフィールドの詳細な構成の例を示す図である。
図14】BA Informationフィールドの詳細な構成の第1の例を示す図である。
図15】BA Informationフィールドの詳細な構成の第2の例を示す図である。
図16】本技術を適用した通信装置の構成の例を示したブロック図である。
図17】無線通信モジュールの構成の例を示したブロック図である。
図18】データフレームの送信側の通信装置の動作を説明するフローチャートである。
図19】データフレームの送信側の通信装置の動作を説明するフローチャートである。
図20】データフレームの受信側の通信装置の動作を説明するフローチャートである。
図21】データフレームの受信側の通信装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本技術の実施の形態について説明する。なお、説明は以下の順序で行うものとする。
【0016】
1.本技術の実施の形態
2.変形例
【0017】
<1.本技術の実施の形態>
【0018】
現状のデータ伝送方法(現状の方式)では、データフレームの送信が終了した直後に受領確認のACK(Acknowledgement)フレームを同一の周波数チャネル上で返送する技術が用いられている。
【0019】
また、現状の方式において、RTS(Request to Send)フレームとCTS(Clear to Send)フレームの交換による仮想的キャリア検出を用いたネットワークアロケーションベクタ(NAV:Network Allocation Vector)の設定に際しては、RTSフレームとCTSフレームを交換したチャネルのみでのデータフレーム及びACKフレームの交換がなされていた。
【0020】
さらに、無線LAN(Local Area Network)システムにおいては、複数のデータユニット(MPDU:MAC Protocol Data Unit)をアグリゲーションして送信するフレームアグリゲーション技術を適用して、1回のアクセス制御によって、大量のデータを届ける技術が利用されている。ここでは、当該データの受領を確認するために、ブロックACKフレームを返送する方法が実用化されている。
【0021】
ここで、現状の方式では、1つの周波数チャネルでデータフレームを送信した後に、その周波数チャネルでACKフレームを受領する方法が一般的であった。
【0022】
また、例えば、上述した特許文献1によれば、データ伝送の直後のSIFS(Short Inter Frame Space)間隔で、衝突検出を実施する技術が開示されている。
【0023】
ところで、現状の方式のように、1つの周波数チャネル上でデータフレームの送信を終了した直後に、ブロックACKリクエストによって、ブロックACKフレームの返送を要求する場合に、無線伝送路が他のデータフレームの通信(他の通信)によって重ねて受信に利用されていると、そのACKフレームの返送によって、他のデータフレームの通信に誤りを生じてしまう可能性がある。
【0024】
データフレームを受信している通信装置では、こうしてデータに誤りが生じている場合に、データを正しく復号することができないため、誤りの生じている周波数チャネルでACKフレームを返送してしまうと、他の通信と衝突してしまうことが容易に想定される。
【0025】
また、フレームアグリゲーション技術を適用した場合においては、その後のブロックACKフレームが正しく返送されないときには、再度、全てのデータが再送されてしまい、無線伝送路が長い時間に渡って占有されてしまうという問題があった。
【0026】
例えば、上述した特許文献1に開示された構成では、データ伝送の直後のSIFS間隔でのみ衝突を検出することはできるが、それ以外のタイミングでは、衝突を検出することができない、という問題がある。
【0027】
さらに、上述した特許文献1に開示された構成では、データ伝送に使用した周波数チャネル以外の利用状況を把握することができないという問題もあった。つまり、データ伝送の後に、受領確認を返送する場合において、1つの周波数チャネルの状況を把握しただけでは、他の周波数チャネルで受領確認を返送することができなかった。
【0028】
本技術では、上述した問題を解決して、より信頼性の高い通信を実現するための通信方法(新方式)を提案する。
【0029】
すなわち、本技術を適用した通信方法(新方式)において、データフレームの送信側となる通信装置(例えば基地局)では、利用可能な周波数チャネルを利用して、データ(例えばA-MPDUフレーム)を他の通信装置(例えば端末局)に送信し、データの正常な受信の確認に用いられる確認信号(例えばSACKフレーム)を要求するための信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関する第1のチャネル情報(例えばSimulcast Channel Map)を含む要求信号(例えばSBARフレーム)を生成し、複数の周波数チャネルを利用して、生成した要求信号を他の通信装置(例えば端末局)に送信する制御が行われる。
【0030】
一方で、データフレームの受信側となる通信装置(例えば端末局)では、利用可能な周波数チャネルを利用して、他の通信装置(例えば基地局)から送信されてくるデータ(例えばA-MPDUフレーム)を受信し、データの正常な受信の確認に用いられる信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関する第1のチャネル情報(例えばSimulcast Channel Map)を含む確認信号(例えばSACKフレーム)を生成し、複数の周波数チャネルを利用して、生成した確認信号を他の通信装置に送信する制御が行われる。
【0031】
なお、詳細は後述するが、SBAR(Simulcast Block ACK Request)フレームは、ブロックACKリクエストフレームを、複数の周波数チャネル(サイマルキャストチャネル)を利用してサイマルキャストで伝送する場合のフレームに相当する。また、SACK(Simulcast Block ACK)フレームは、ブロックACKフレームを、複数の周波数チャネル(サイマルキャストチャネル)を利用してサイマルキャストで伝送する場合のフレームに相当する。
【0032】
このように、送信側の通信装置では、ブロックACKリクエストフレームのような要求制御情報の送信を、利用可能な周波数チャネルの全てを利用して送信し、その応答となるブロックACKフレームを全ての周波数チャネルで待ち受ける。また、受信側の通信装置では、データフレームの受信終了後に、利用可能な全ての周波数チャネルでブロックACKリクエストフレームの受信を実施し、利用可能な周波数チャネルでブロックACKフレームを返送する。
【0033】
つまり、ブロックACKリクエストフレームを、利用可能な空き周波数チャネルを利用して送信することで、データフレームの送信に利用した周波数チャネルに加えて、他の周波数チャネルを併用してブロックACKリクエストフレームが送信されることによって、受信側の通信装置でもブロックACKリクエストフレームの受領が確実に実施されることになる。
【0034】
さらに、受信側の通信装置では、ブロックACKリクエストフレームを受信できた周波数チャネルを利用するとともに、他の通信装置が受信に利用していない他の周波数チャネルを併用して、ブロックACKフレームを返送することで、送信側の通信装置でも、ブロックACKフレームの受領が確実に実施されることになる。
【0035】
このとき、送信側の通信装置では、ブロックACKリクエストフレームを送信した周波数チャネルの全てで、受信側の通信装置から送信されてくるブロックACKフレームを待ち受けることで、送信側の通信装置で、ブロックACKフレームの受領が確実になされる。
【0036】
そして、送信側の通信装置と受信側の通信装置において、利用可能な周波数チャネルの中から、ブロックACKフレームを受信できた周波数チャネルを利用して、再送が必要な再送データを含むデータフレームを送信(再送)することで、より確実にデータの再送を実施することができる。
【0037】
以下、本技術を適用した通信方法(新方式)の詳細について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
(無線ネットワークの構成の例)
図1は、無線ネットワークの構成の例を示した図である。
【0039】
図1において、図中の白丸(○)は、各通信装置10の存在位置を示し、その存在位置を中心とした外側の破線の円が、各通信装置10からの電波到達範囲に相当することを示している。また、図中の太い矢印は、各通信装置10の間のデータフレームの流れを示し、図中の細い矢印は、ACKフレームを示している。なお、図1においては、通信装置10の他に、通信装置20も存在するが、通信装置20についても同様である。
【0040】
ここで、ベーシックサービスセット(BSS:Basic Service Set)の無線LANネットワークにおいて、送信側の通信装置10Tx(BSS)と、受信側の通信装置10Rx(BSS)との間で通信を実施している。
【0041】
この状況において、その周囲にオーバーラップしたベーシックサービスセット(OBSS1,OBSS2)のそれぞれの無線LANネットワークにおける送信側の通信装置10Tx(OBSS1)と、受信側の通信装置10Rx(OBS2S)が存在し、さらに、無線LANシステムとは異なる他のシステムの送信側の通信装置20Tx(Other System)が存在している。
【0042】
なお、他のシステムとしては、例えば、3GPP(Third Generation Partnership Project)により策定されるLTE(Long Term Evolution)/LTE-Advancedや、5G(5th Generation)等の無線通信システムが含まれる。
【0043】
このとき、通信装置10Tx(BSS)から通信装置10Rx(BSS)にデータフレームを送信する場合(図中の「Data」の矢印)、通信装置10Tx(BSS)の周囲に存在している通信装置10Tx(OBSS1)からの信号が干渉波となる(図中のハッチングを施した矢印)。
【0044】
また、通信装置10Rx(BSS)では、通信装置10Tx(BSS)からのデータフレームを受信した後に、その受領確認のためのACKフレームを返送するが(図中の「ACK」の矢印)、通信装置10Rx(BSS)の周囲に存在している通信装置10Rx(OBSS2)や、通信装置20Tx(Other System)からの信号が干渉波となる(図中のハッチングを施した矢印)。
【0045】
また、その逆に、通信装置10Rx(BSS)から送信されたACKフレームが、その周囲の通信装置10Rx(OBSS2)や、通信装置20Tx(Other System)からすれば、干渉源となり得る(図中のハッチングを施した矢印内の細い矢印)。
【0046】
(現状のデータ再送の流れ)
ここで、図2及び図3を参照して、現状の方式によるデータ再送の流れを説明する。
【0047】
図2では、通信装置10Tx(BSS)がデータフレームを送信して、そのデータフレームを通信装置10Rx(BSS)が受信する場合に、他のシステム(通信装置20Tx(Other System))からの干渉波によって、通信装置10Rx(BSS)がACKフレームを返送(送信)できないケースを示している。
【0048】
すなわち、本来、無線LANシステムであれば、RTSフレームとCTSフレームの交換によって、無線伝送路が利用されることを予め、ネットワークアロケーションベクタ(NAV)による仮想的なキャリアセンスを設定することが可能であったが、他のシステムが存在する場合には、RTSフレームとCTSフレームの存在を把握できないため、同様に対応することはできない。
【0049】
図2においては、RTSフレームとCTSフレームの存在を把握できない他のシステム(Other System)の通信装置20Txが存在する場合に、当該他のシステムの通信装置20Txからの信号により干渉が発生し、通信装置10Rx(BSS)が検出することで、データ伝送が終了した後に、無線伝送路が利用中であることを検出してしまい、ACKフレームを返送できないことを示している。
【0050】
このとき、通信装置10Tx(BSS)は、データフレームを送信した後に、通信装置10Rx(BSS)からACKフレームが返送されないことから、全てのデータフレームを再送してしまう。そのため、通信装置10Rx(BSS)において、他のシステムからの干渉を受ける前の正常に受信できていた部分のデータまで再送されることになり、本来受領できていた部分のデータまで、不要な部分のデータの再送が実施されてしまうという問題がある。
【0051】
また、図3では、通信装置10Tx(BSS)がデータフレームを送信して、そのデータフレームを通信装置10Rx(BSS)が受信する場合に、他のシステムからの干渉波によって、通信装置10Tx(BSS)がACKフレームを受領(受信)できないケースを示している。
【0052】
すなわち、上述した図2のケースと同様に、本来、無線LANシステムであれば、ネットワークアロケーションベクタ(NAV)による仮想的なキャリアセンスを設定可能であるが、他のシステムでは、RTSフレームとCTSフレームの存在を把握できないため、同様に対応することはできない。
【0053】
図3においては、他のシステム(Other System)の通信装置20Txからの信号が干渉となって、通信装置10Tx(BSS)では、通信装置10Rx(BSS)が送信したACKフレームを正常に受信できないことを示している。
【0054】
このとき、通信装置10Tx(BSS)は、データフレームを送信した後に、通信装置10Rx(BSS)からACKフレームが返送されないことから、全てのデータを再送してしまう。つまり、図3のケースでも、上述した第2のケースと同様に、他のシステムからの干渉を受ける前の正常に受信できていた部分のデータまで再送して、不要な部分のデータの再送が実施されてしまう。
【0055】
本技術を適用した通信方法(新方式)では、無線LANシステムとともに他のシステムを含むような混雑した環境下においても、確実に、データフレームの送信と、ACKフレームの返送ができる仕組みを提供することができる。
【0056】
(新方式の動作の流れ)
図4は、新方式を適用した場合における各通信装置10と通信装置20の動作の流れを示している。
【0057】
図4においては、データ伝送に利用する周波数チャネルが複数になることから、説明の便宜上、縦軸を周波数チャネル(f)とし、横軸を時間(t)として、f1からf4までの4つの周波数チャネルを利用して動作する状態にあることを示し、それぞれ時間の変化とともに変化する動きを並列に示している。
【0058】
なお、図4においては、4つの周波数チャネルを利用する場合を例示するが、これに限定されるものではなく、周波数チャネルの数は、3つ以下又は5つ以上であってもよい。
【0059】
図4のAとB、すなわち、図中の1段目と2段目は、送信側の通信装置10Tx(BSS)と、送信側の通信装置10Tx(OBSS1)の動作の流れをそれぞれ示している。また、図4のCとD、すなわち、図中の3段目と4段目は、受信側の通信装置10Rx(BSS)と、受信側の通信装置10Rx(OBSS2)の動作の流れを示している。さらに、図4のE、すなわち、図中の5段目は、他のシステムの通信装置20Tx(Other System)の動作の流れを示している。
【0060】
なお、図4において、通信装置10Tx(BSS)、通信装置10Tx(OBSS1)、通信装置10Rx(BSS)、通信装置10Rx(OBSS2)、及び通信装置20Tx(Other System)のそれぞれ位置は、図1に示した位置関係に対応している。
【0061】
時刻t1において、通信装置10Tx(BSS)は、周波数チャネルf3を利用して、RTSフレームを送信する(図4のAの「RTS」)。このRTSフレームは、通信装置10Rx(BSS)と、通信装置10Tx(OBSS1)により受信(検出)される(図4のAの「RTS」に対応する図4のB,Cの「Rx」)。
【0062】
このとき、通信装置10Tx(OBSS1)では、受信したRTSフレームに記載された持続時間に渡って、周波数チャネルf3のネットワークアロケーションベクタ(NAV)を設定する(図4のBの「NAV」)。また、通信装置10Rx(BSS)では、受信したRTSフレームが自己宛のRTSフレームである場合には、これに応答するCTSフレームを返信する構成になっている。
【0063】
そして、時刻t2において、通信装置10Rx(BSS)は、周波数チャネルf3を利用して、CTSフレームを送信する(図4のCの「CTS」)。このCTSフレームは、通信装置10Tx(BSS)と、通信装置10Rx(OBSS2)と、通信装置20Tx(Other System)により受信(検出)される(図4のCの「CTS」に対応する図4のA,D,Eの「Rx」)。
【0064】
ここで、通信装置10Rx(OBSS2)は、受信したCTSフレームに記載された持続時間に渡って、周波数チャネルf3のネットワークアロケーションベクタ(NAV)を設定する(図4のDの「NAV」)。また、通信装置10Tx(BSS)は、受信したCTSフレームが自己宛のCTSフレームである場合には、これに応答してデータフレームを送信する構成になっている。
【0065】
また、CTSフレームを認識できない通信装置20Tx(Other System)では、CTSフレームの信号を受信レベルによって検出したが、当該CTSフレームの内容までは把握できない。そのため、通信装置20Tx(Other System)では、ネットワークアロケーションベクタ(NAV)は設定されず、それ以降に周波数チャネルf3で信号を送信するためのキャリアセンスの待ち時間(LBT:Listen Before Talk)のカウンタが設定されてしまう(図4のEの「T_LBT」)。
【0066】
これにより、時刻t3において、通信装置10Tx(BSS)は、周波数チャネルf3を利用して、データフレーム(A-MPDUフレーム)を送信する(図4のAの「Data」)。このデータフレームは、通信装置10Rx(BSS)と通信装置10Tx(OBSS1)により受信(検出)される(図4のAの「Data」に対応する図4のCの「Rx」)。ただし、通信装置10Tx(OBSS1)では、周波数チャネルf3のネットワークアロケーションベクタ(NAV)が設定されている(図4のBの「NAV」)。
【0067】
つまり、通信装置10Tx(BSS)では、時刻t3から時刻t7までの間に、周波数チャネルf3を利用して、このデータフレームを送信するが、新方式では、周波数チャネルf3以外の周波数チャネルf1,f2,f4においても、無線通信路の状態を監視する構成としてある。
【0068】
それに併せて、通信装置10Rx(BSS)においても、時刻t3から時刻t7までの間に、周波数チャネルf3を利用して、このデータフレームを受信するが、新方式では、周波数チャネルf1,f2,f4においても、無線通信路の状態を監視する構成とする。
【0069】
ここで、時刻t4において、通信装置10Tx(OBSS1)が、周波数チャネルf1を利用して、RTSフレームを送信する(図4のBの「RTS」)。このRTSフレームは、通信装置10Tx(BSS)により受信(検出)される(図4のBの「RTS」に対応する図4のAの「Rx」)。
【0070】
このとき、通信装置10Tx(BSS)では、受信したRTSフレームに記載された持続時間に渡って、周波数チャネルf1のネットワークアロケーションベクタ(NAV)を設定する構成になっている(図4のAの「NAV」)。
【0071】
そして、通信装置10Tx(OBSS1)では、周波数チャネルf1で、CTSフレームを受信することで(図4のBの「RTS」の隣の「Rx」)、それ以降に、周波数チャネルf1を利用して、データフレームを送信する(図4のBの「Data」)。そのため、通信装置10Tx(BSS)では、このデータフレームを受信できてしまうことから、当該データフレームの送信が終了するまでの期間に渡って、周波数チャネルf1はネットワークアロケーションベクタ(NAV)が設定された上で、BUSY状態とされる。
【0072】
続いて、時刻t5において、通信装置10Rx(OBSS2)によって、それ以降に周波数チャネルf2を利用してデータフレームを受信するために、CTSフレームが送信される(図4のDの「CTS」)。
【0073】
このとき、このCTSフレームが、通信装置10Rx(BSS)により受信(検出)されると(図4のDの「CTS」に対応する図4のCの「Rx」)、通信装置10Rx(BSS)では、当該CTSフレームに記載された持続時間に渡って、周波数チャネルf2の周波数チャネルf2のネットワークアロケーションベクタ(NAV)を設定する構成になっている(図4のCの「NAV」)。
【0074】
さらに、時刻t6において、通信装置20Tx(Other System)によって、周波数チャネルf3を利用して、データが送信された場合(図4のEの「T_Data」)、通信装置10Rx(BSS)では、このデータ(信号)が干渉となって、通信装置10Tx(BSS)から受信中のデータフレームを正しく復号できないという問題が生じてしまう(図4のCの「Error」)。
【0075】
すなわち、他のシステムの通信装置20Tx(Other System)では、周波数チャネルf3において通信装置10Rx(BSS)がCTSフレームを受信した後に、所定の持続時間(T_LBT)に渡って信号を検出しなかったことから、通信装置10Rx(BSS)が受信中であるにもかかわらず、所定の持続時間に渡ってデータ(信号)を送信することになる(図4のEの「T_Data」)。
【0076】
さらに、この通信装置20Tx(Other System)では、当該データ(信号)を送信した後であっても、所定の持続時間(T_LBT)に渡って信号を検出しない場合には、再度、データを送信してしまう(図4のEの「T_Data」)。
【0077】
このような場合でも、新方式では、データ伝送中において、通信装置10Txと通信装置10Rxでは、他の周波数チャネル(周波数チャネルf1,f2,f4)の状況を監視(モニタ)することで、その都度、利用可能な周波数チャネルを把握する構成となっている。
【0078】
その後、時刻t7において、通信装置10Tx(BSS)からのデータフレームの送信が終了した場合、その時点で、通信装置10Tx(OBSS)によるネットワークアロケーションベクタ(NAV)が設定されている周波数チャネルf1を除いた周波数チャネル(f2~f4)が利用可能な周波数チャネルとなる。
【0079】
新方式では、通信装置10Tx(BSS)によって、SBARフレームが、これらの周波数チャネルf2,f3,f4を利用して送信され、通信装置10Tx(BSS)では、それ以降に当該周波数チャネルf2,f3,f4で応答受信の設定をして待ち受ける(図4のAの「SBAR」)。
【0080】
ここでは、通信装置10Rx(BSS)によって、受信可能な周波数チャネルf2,f3,f4を利用して、SBARフレームが受信されるが(図4のAの「SBAR」に対応した図4のCの「Rx」)、通信装置10Rx(OBSS)によるネットワークアロケーションベクタ(NAV)が設定されている周波数チャネルf2では、当該SBARフレームを受信できてもそれに応答することはできない。
【0081】
そして、通信装置10Rx(BSS)では、該当するデータフレームの受信状況を、SACK情報として、SACKフレームを生成する。ここでは、他のシステムの通信装置20Tx(Other System)からの干渉で復号できなかったデータフレームの末尾に相当するMPDU部分が未達であることを示したSACKフレームが構築される。
【0082】
これにより、時刻t8には、周波数チャネルf3,f4において、通信装置10Rx(BSS)から通信装置10Tx(BSS)に、SACKフレームが送信される(図4のCの「SACK」)。
【0083】
それに対し、通信装置10Tx(BSS)では、周波数チャネルf3,f4を利用して、通信装置10Rx(BSS)からのSACKフレームが受信することができる(図4のCの「SACK」に対応した図4のAの「Rx」)。
【0084】
そして、通信装置10Tx(BSS)では、その時点で利用可能な周波数チャネルが、周波数チャネルf3,f4であることを把握するとともに、受信したSACKフレームから得られるSACK情報に基づき、未達であるMPDU部分を把握する。また、所定の送信待ち時間が経過した時刻である時刻t9に、通信装置10Tx(BSS)は、SACKフレームが返送された周波数チャネルf3,f4を利用して、未達となるMPDUを含むデータフレームを再送する(図4のAの「Data」)。
【0085】
ここで、時刻t9に、通信装置10Rx(BSS)では、SACKフレームを送信した周波数チャネルf3,f4にて再送のデータフレームの待ち受けを実施し、これらの周波数チャネルf3,f4を利用して再送のデータフレームを受信する(図4のAの「Data」に対応した図4のCの「Rx」)。
【0086】
さらに、時刻t10において、通信装置10Tx(BSS)では、再送のデータフレームの送信が終了したとき、その時点で、通信装置10Tx(OBSS)によるネットワークアロケーションベクタ(NAV)が終了した周波数チャネルf1を含めて全ての周波数チャネルが利用可能となることから、周波数チャネルf1~f4を利用して、SBARフレームが送信される(図4のAの「SBAR」)。
【0087】
そして、通信装置10Tx(BSS)では、それ以降、SBARフレームを送信した周波数チャネルf1~f4にて応答受信の設定をして待ち受ける。
【0088】
ここでは、通信装置10Rx(BSS)によって、周波数チャネルf1~f4を利用してSBARフレームが受信されるが(図4のAの「SBAR」に対応した図4のCの「Rx」)、周波数チャネルf3は、他のシステムの通信装置20Tx(Other System)からの干渉によって正しくデータを復号できない(図4のCの「Error」)。
【0089】
そのため、通信装置10Rx(BSS)では、周波数チャネルf1,f2,f4を利用して、SBARフレームが受信されるが、通信装置10Rx(OBSS2)によるネットワークアロケーションベクタ(NAV)が設定されている周波数チャネルf2では、当該SBARフレームを受信できてもそれに応答することはできない。
【0090】
これにより、時刻t11には、周波数チャネルf1,f4において、通信装置10Rx(BSS)から通信装置10Tx(BSS)に、SACKフレームが送信される(図4のCの「SACK」)。
【0091】
それに対し、通信装置10Tx(BSS)では、周波数チャネルf1,f4を利用して、通信装置10Rx(BSS)からのSACKフレームを受信する(図4のCの「SACK」に対応した図4のAの「ACK」)。そして、通信装置10Tx(BSS)では、受信したSACKフレームから、通信装置10Rx(BSS)に対して全てのMPDUが届いたことを把握することができる。
【0092】
このように、新方式においては、現状の方式のような唯一の周波数チャネルを利用してデータを伝送していた方式と比べて、他の周波数チャネルを併用することで、確実に、ACKフレームの受領確認と、データフレームの再送を実施することが可能とされる。これにより、より信頼性の高い通信を実現することができる。
【0093】
(データフレームの構成)
図5は、フレームアグリゲーションを適用したA-MPDU(Aggregation-MPDU)の構成の例を示している。
【0094】
ここでは、A-MPDU、すなわち、複数のMAC層プロトコルデータユニット(MPDU)をアグリゲートした1つのフレームとして伝送するA-MPDUのフレーム構成を用いる場合を説明する。また、A-MPDUの構成としては、アグリゲートするフレーム数に相当するMPDUから構成されるので、ここでは、例えば、フレームとしてのA-MPDUが、MPDU1からMPDU8までの8つのサブフレームから構成される例を示している。
【0095】
A-MPDUは、PHYレイヤのプリアンブル信号(Preamble)に続いて送信される。プリアンブル信号は、L-STF,L-LTF,L-SIG,RL-SIG,HE-SIG-A,HE-STFに加えて、空間多重化の多重数に応じてHE-LTFが所定の個数だけ繰り返して構成される。
【0096】
具体的には、L-STFは、従来の短いトレーニングフィールドを示し、L-LTFは、従来の長いトレーニングフィールドを示している。また、L-SIGは、従来のシグナリング情報を示し、RL-SIGは、繰り返しシグナリング情報を示し、HE-SIG-Aは、高密度のシグナリング情報を示している。また、HE-STFは、高密度の短いトレーニングフィールドを示し、HE-LTFは、高密度の長いトレーニングフィールドを示している。
【0097】
また、A-MPDUを構成する各MPDUは、サブフレームの境界を示すデリミタ(Delimiter)とMPDU(MAC Protocol Data Unit)を含み、必要に応じてパディング(Pad)が付加されて構成される。さらに、各MPDU(ここでは多重化される前のMPDU-Nとする)は、所定のMACヘッダ(MAC Header)と、データペイロード(Data Payload)と、FCS(Frame Check Sequence)から構成される。
【0098】
(SBARフレームの構成)
図6は、本技術を適用したSBAR(Simulcast Block ACK Request)フレームの構成の例を示している。
【0099】
このSBARフレームは、基本的に、データフレーム(例えばA-MPDU)の末尾に付加されて送信されるか、あるいは、所定のプリアンブル信号に続いて独立して送信される構成になっている。
【0100】
図6において、SBARフレームは、Frame Control,Duration,Transmit Address,Receive Address,BAR Control,BAR Information,Simulcast Channel Map,FCSを含む。
【0101】
Frame Controlには、このフレームがSBARフレームであることを示すフレームタイプ等の情報が記載される。Durationには、当該SBARフレームと応答するBlock ACKフレームの持続時間を示す情報が記載される。
【0102】
Transmit Addressには、当該SBARフレームの送信元の通信装置を識別する情報が記載される。Receive Addressには、当該SBARフレームの受信先の通信装置を識別する情報が記載される。
【0103】
BAR Controlには、ブロックACKの制御情報が記載される。BAR Informationには、ブロックACK情報を要求するMPDUの範囲を特定する情報が記載される。なお、BAR ControlとBAR Informationのフィールドの詳細は、図7乃至図9を参照して後述する。
【0104】
Simulcast Channel Mapには、利用可能な複数の周波数チャネル(例えば、同時にフレームを送信する周波数チャネル)に関するチャネル情報が記載される。なお、Simulcast Channel Mapのフィールドの詳細は、図10乃至図11を参照して後述する。FCSは、末尾に付加される誤り検出のためのフレームチェックシーケンスである。
【0105】
(BAR Controlの詳細)
図7は、BAR Controlフィールドの詳細な構成の例を示している。
【0106】
このBAR Controlフィールドは、ブロックACKリクエストの種類や返送する条件を示すBAR(Block ACK Request) Ack Policy,複数のTIDが含まれることを示すMulti TID,ビットマップの圧縮を示すCompressed Bitmap,グループキャストを示すGCR,上述したチャネル情報(図6)の付加を示すSimulcast,将来の拡張のためのReserved,TIDを識別するためのTID INFOを含んでいる。
【0107】
(BAR Informationの詳細)
図8は、BAR Informationフィールドの詳細な構成の例を示している。
【0108】
このBAR Informationフィールドは、フラグメントされている場合の数を示すFragment Number,ブロックACKの開始シーケンス番号が記載されるBlock Ack Starting Sequence Controlを含んでいる。
【0109】
なお、BAR Informationフィールドは、図8に示した構成に限らず、例えば、図9に示すような構成を用いてもよい。
【0110】
すなわち、図9においては、BAR Informationフィールドが、Multi TID Block ACK Requestフレームとして構成される場合を示している。これにより、BAR Informationフィールドは、各TIDを識別するためのPer TID Info,ブロックACKの開始シーケンス番号が記載されるBlock Ack Starting Sequence Controlを含んで構成され、これがTIDごとに繰り返されて構成される。
【0111】
(Simulcast Channel Mapの詳細)
図10は、図6のSimulcast Channel Mapをビットマップ形式で表した場合の例を示している。
【0112】
図10においては、32ビットのビットマップの各ビットを、0~31の数字で表している。ここでは、先頭のビット0を36チャネル、その次のビット1を40チャネル、・・・、末尾のビット31を160チャネルとして表現し、各ビットに対して利用可能な周波数チャネルが割り当てられる。
【0113】
ここで、図11には、無線LANシステムで利用可能な周波数チャネルの配置の例を示している。図11の例では、中心周波数に応じて20MHz単位で低い周波数から、チャネル36,40,44,48,52,56,60,64が配置されている。さらに高い周波数では20MHz単位で、チャネル100,104,108,112,116,120,124,128,132,136,140,144までが配置されている。
【0114】
すなわち、図10図11では、周波数チャネルの番号が対応しており、20MHz単位で割り当てられた周波数チャネルごとに、利用可能な周波数チャネルであるかどうかを指定することができる。例えば、図6に示したSimulcast Channel Mapでは、0~31のビットで表された利用可能な周波数チャネルのうち、送信可能な周波数チャネルに対応したビットを"1"とし、それ以外のビットを"0"とすることができる。
【0115】
このように、Simulcast Channel Mapには、ビットマップ形式等によって、周波数チャネルに関するチャネル情報が記載される。
【0116】
なお、図10では、ビットマップ形式によって、チャネル情報を表現したが、このような形式に限定されるものではなく、チャネル情報としては、チャネル番号を指定可能な形式であれば、他の形式を採用するようにしてもよい。具体的には、例えば、チャネル番号の開始と終了のみを指定したり、あるいはチャネル番号の一部が欠落していたりしてもよい。
【0117】
また、図11に示した周波数チャネルの配置の例は、一例であって、これらの利用可能な周波数チャネルについては、各国で法制度化されている利用可能な周波数帯域が異なっていることから、それぞれ範囲が異なる場合がある。ここでは、例えば、20MHzである周波数帯域幅よりも狭い周波数帯域幅を利用することができる。具体的には、例えば、IEEE802.11axで規定されているリソースユニット単位に対応するようにしてもよい。
【0118】
(SACKフレームの構成)
図12は、本技術を適用したSACK(Simulcast Block ACK)フレームの構成の例を示している。
【0119】
このSACKフレームは、基本的に、所定のプリアンブル信号に続いて独立して送信される構成になっている。
【0120】
図12において、SACKフレームは、Frame Control,Duration,Transmit Address,Receive Address,Simulcast Channel Map,BA Control,BA Information,FCSを含む。
【0121】
Frame Controlには、このフレームがSACKフレームであることを示すフレームタイプ等の情報が記載される。Durationには、当該SACKフレームと必要に応じて再送されるデータフレームまでの持続時間を示す情報が記載される。
【0122】
Transmit Addressには、当該SACKフレームの送信元の通信装置を識別する情報が記載される。Receive Addressには、当該SACKフレームの受信先の通信装置を識別する情報が記載される。
【0123】
Simulcast Channel Mapには、利用可能な複数の周波数チャネル(例えば、同時にフレームを送信する周波数チャネル)に関するチャネル情報が記載される。なお、このSimulcast Channel Mapのフィールドの詳細は、上述した図10乃至図11に示した内容と同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0124】
BA Controlには、ブロックACKの制御情報が記載される。BA Informationには、ブロックACK情報として、受信できたMPDUを特定する情報(以下、特定情報ともいう)が記載される。換言すれば、この特定情報は、MPDUごとに受信の確認を実施したときに特定される再送データ(再送が必要なデータ)に関する情報であるとも言える。なお、BA ControlとBA Informationのフィールドの詳細は、図13乃至図15を参照して後述する。FCSは、末尾に付加される誤り検出のためのフレームチェックシーケンスである。
【0125】
(BA Controlの詳細)
図13は、BA Controlフィールドの詳細な構成の例を示している。
【0126】
このBA Controlフィールドは、ブロックACKの種類や返送する条件を示すBA(Block ACK) Ack Policy,複数のTIDが含まれることを示すMulti TID,ビットマップの圧縮を示すCompressed Bitmap,グループキャストを示すGCR,上述したチャネル情報(図12)の付加を示すSimulcast,将来の拡張のためのReserved,TIDを識別するためのTID INFOを含んでいる。
【0127】
(BA Informationの詳細)
図14は、BA Informationフィールドの詳細な構成の例を示している。
【0128】
このBA Informationフィールドは、ブロックACKの開始シーケンス番号が記載されるBlock Ack Starting Sequence Control,開始シーケンス番号からビットマップ形式で実際に受領されたACKのシーケンス番号を識別するBlock Ack Bitmapを含んでいる。
【0129】
なお、BA Informationフィールドは、図14に示した構成に限らず、例えば、図15に示したような構成を用いてもよい。
【0130】
すなわち、図15においては、BA Informationフィールドが、Multi TID Block ACKフレームとして構成される場合を示している。これにより、BA Informationフィールドは、各TIDを識別するためのPer TID Info,Block ACKの開始シーケンス番号が記載されるBlock Ack Starting Sequence Control,開始シーケンス番号からビットマップ形式で実際に受領されたACKのシーケンス番号を識別するBlock Ack Bitmapを含んで構成され、これがTIDごとに繰り返されて構成される。
【0131】
(通信装置の構成の例)
図16は、本技術を適用した通信装置(無線通信装置)の構成の例を示したブロック図である。図16に示した通信装置10は、無線ネットワーク(図1)における送信側の通信装置10Tx、又は受信側の通信装置10Rxとして構成される。
【0132】
図16において、通信装置10は、インターネット接続モジュール11、情報入力モジュール12、機器制御部13、情報出力モジュール14、及び無線通信モジュール15を含んで構成される。
【0133】
インターネット接続モジュール11は、例えば、基地局(アクセスポイント)として光ファイバ網やその他の通信回線からサービスプロバイダを介してインターネット網に接続するための機能を有する回路やその周辺回路、マイクロコントローラ、半導体メモリなどから構成される。
【0134】
インターネット接続モジュール11は、機器制御部13からの制御に従い、インターネット接続に関する各種の処理を行う。例えば、インターネット接続モジュール11は、通信装置10が基地局として動作する場合に、インターネット網へ接続するための通信モデム等の機能が実装される構成となっている。
【0135】
情報入力モジュール12は、例えば、押しボタンやキーボード、タッチパネル等の入力デバイスから構成される。情報入力モジュール12は、ユーザからの指示に対応する指示情報を、機器制御部13に入力する機能を有する。
【0136】
機器制御部13は、例えばマイクロプロセッサやマイクロコントローラ等から構成される。機器制御部13は、通信装置10を基地局又は端末局として動作させるために各部(モジュール)の制御を行う。
【0137】
機器制御部13は、インターネット接続モジュール11、情報入力モジュール12、又は無線通信モジュール15から供給される情報に対する各種の処理を行う。また、機器制御部13は、自己の処理の結果得られる情報を、インターネット接続モジュール11、情報出力モジュール14、又は無線通信モジュール15に供給する。
【0138】
例えば、機器制御部13は、データの送信時に、プロトコル上位層のアプリケーション等から渡される送信データを、無線通信モジュール15に供給したり、データの受信時に、無線通信モジュール15から供給される受信データを、プロトコル上位層のアプリケーション等に渡したりする。
【0139】
情報出力モジュール14は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Light Emitting Diode)、LED(Light Emitting Diode)表示器などの表示素子を含む出力デバイスから構成される。
【0140】
情報出力モジュール14は、機器制御部13から供給される情報に基づき、ユーザに対して必要な情報を表示する機能を有する。ここで、情報出力モジュール14で処理される情報には、例えば、通信装置10の動作状態やインターネット網を介して得られる情報などが含まれる。
【0141】
無線通信モジュール15は、例えば、無線チップや周辺回路、マイクロコントローラ、半導体メモリなどから構成される。無線通信モジュール15は、機器制御部13からの制御に従い、無線通信に関する各種の処理を行う。無線通信モジュール15の構成の詳細は、図17を参照して後述する。
【0142】
なお、ここでは、無線通信チップや周辺回路などが搭載された無線通信モジュールを一例に説明するが、本技術は、無線通信モジュールに限らず、例えば、無線通信チップや無線通信LSIなどに適用することができる。さらに、無線通信モジュールにおいて、アンテナを含めるかどうかは任意である。
【0143】
また、図16の通信装置10において、機器制御部13及び無線通信モジュール15は、必須の構成要素となるが、それらを除いたインターネット接続モジュール11、情報入力モジュール12、及び情報出力モジュール14を構成要素に含めるかどうかは任意である。
【0144】
すなわち、基地局又は端末局として動作する通信装置10ごとに、必要とされるモジュールのみで構成されるようにすることができ、不要な部分は簡素化されるか、又は組み込まれない構成とすることができる。より具体的には、例えば、インターネット接続モジュール11は、基地局にのみ組み込まれ、情報入力モジュール12や情報出力モジュール14は、端末局にのみ組み込まれるようにすることができる。
【0145】
(無線通信モジュールの構成の例)
図17は、図16の無線通信モジュール15の構成の例を示したブロック図である。
【0146】
この無線通信モジュール15において、インターフェース101、送信バッファ102、ネットワーク管理部103、及び送信フレーム構築部104は、現状の方式に対応した通信装置(無線通信モジュール)に対する送信側共通部分として構成される。
【0147】
また、無線通信モジュール15は、サイマルキャストチャネル管理部105、管理情報生成部106、送信電力制御部107、ベースチャネル送信処理部108、サイマルキャスト送信処理部109、周波数チャネル制御部110、アンテナ制御部111、ベースチャネル受信処理部112、サイマルキャスト受信処理部113、検出閾値制御部114、及び管理情報処理部115を含んでいる。
【0148】
すなわち、新方式に対応した通信装置10の無線通信モジュール15における特徴的な構成として、サイマルキャストチャネル管理部105及び周波数チャネル制御部110に加えて、複数の周波数チャネルで信号送信が可能となるサイマルキャスト送信処理部109と、複数の周波数チャネルで信号受信が可能となるサイマルキャスト受信処理部113が設けられている。
【0149】
さらに、無線通信モジュール15において、受信データ構築部116、及び受信バッファ117は、現状の方式に対応した通信装置(無線通信モジュール)に対する受信側共通部分として構成される。
【0150】
インターフェース101は、例えば入出力インターフェース回路等から構成される。インターフェース101は、機器制御部13(図16)との間でデータをやり取りするためのインターフェースであって、そこに入力される情報やそこから出力される情報を、所定の信号形式で交換するための機能を有する。
【0151】
インターフェース101は、機器制御部13から入力される送信データを送信バッファ102に書き込む。また、インターフェース101は、機器制御部13から入力される情報を、ネットワーク管理部103に供給したり、あるいはネットワーク管理部103から供給される情報を、機器制御部13に出力したりする。
【0152】
送信バッファ102は、例えばバッファメモリ等の半導体メモリ装置から構成される。送信バッファ102は、インターフェース101を介して書き込まれた送信データを一時的に格納する。
【0153】
ネットワーク管理部103は、無線ネットワークにおける通信装置10のアドレス情報などの管理を行う。また、ネットワーク管理部103は、基地局として通信装置10が動作している場合に、インターネット網への接続を実施する構成となっている。
【0154】
送信フレーム構築部104は、送信バッファ102に格納された送信データを読み出して、無線通信により伝送するためのデータフレームとして構築する機能を有し、例えば、送信バッファ102に格納されたMPDUを複数集めてA-MPDUフレームを構築して、ベースチャネル送信処理部108に供給する。
【0155】
サイマルキャストチャネル管理部105は、複数の周波数チャネルを同時に利用して情報を送受信する制御を一元的に管理する機能を有しており、その都度、利用可能な周波数チャネルを把握している。
【0156】
管理情報生成部106は、通信制御プロトコルに必要な制御フレームを構築する機能を有している。例えば、送信側の通信装置10Txでは、RTSフレームやSBARフレーム等の制御フレームを構築する構成になり、受信側の通信装置10Rxでは、CTSフレームやSACKフレーム等の制御フレームを構築する構成になっている。
【0157】
送信電力制御部107は、所定のフレームを送信する場合に、不要な電波到達範囲まで信号が届かないように送信電力を制御する機能を有し、ここでは、受信側の通信装置10Rxに意図した受信電界強度で信号が届くように必要最低限の送信電力を調整してデータを送信するように制御する機能が備わっている。ここでは、例えば、送信するフレームごとに送信電力を調整することができる。
【0158】
ベースチャネル送信処理部108は、所定の周波数チャネルにおいて、無線送信するデータフレーム等の情報に所定のプリアンブル信号を付加するとともに、所定の形式のベースバンド信号に変換してアナログ信号として処理する機能を有する。
【0159】
サイマルキャスト送信処理部109は、サイマルキャストチャネル管理部105からの制御に従い、サイマルキャストを実施する周波数チャネルで、SBARフレーム、SACKフレーム、又はデータフレームを送信する機能を有する。
【0160】
なお、サイマルキャスト送信処理部109は、上述のベースチャネル送信処理部108と同様のハードウェアから構成されてもよいが、例えば、予めSBARフレームやSACKフレーム等のフレームを用意できる必要最低限の回路で構成されていればよく、さらに利用する周波数チャネル数に応じて、同一の回路がパラレルで構成されていてもよい。
【0161】
周波数チャネル制御部110は、ベースチャネルとサイマルキャストチャネルで、送受信されるデータや制御情報(を含むフレーム)について、利用する周波数チャネルの設定を行う機能を有する。周波数チャネル制御部110は、例えば、データフレームや、SBARフレーム、SACKフレームを送受信する周波数チャネルを切り替えて制御する構成となっている。
【0162】
アンテナ制御部111は、複数のアンテナ素子が接続されて構成される。アンテナ制御部111は、空間多重ストリームとして信号を無線送信する制御と、空間多重ストリームとして送信された信号を無線受信する制御と、ベースチャネルとサイマルキャストチャネルでの信号の送受信の制御を、同一のアンテナ素子を用いて行う構成としても、異なるアンテナ素子を用いて行う構成としてもよい。
【0163】
ベースチャネル受信処理部112は、所定のプリアンブル信号を検出した場合に、個々のストリームを分離して、当該プリアンブル信号以降に付加されるヘッダやデータ部分を受信する受信処理を実施する機能を有する。
【0164】
サイマルキャスト受信処理部113は、サイマルキャストチャネル管理部105からの制御に従い、サイマルキャストを実施する周波数チャネルで、SBARフレーム、SACKフレーム、又はデータフレームを受信する機能を有する。
【0165】
なお、サイマルキャスト受信処理部113は、上述のベースチャネル受信処理部112と同様のハードウェアから構成されてもよいが、例えば、キャリア検出を行う回路や、ヘッダパラメータを取得する回路などで構成されていればよく、さらに同時に状況を検出する周波数チャネル数に応じて、同一の回路がパラレルに構成されていてもよい。
【0166】
検出閾値制御部114は、送信電力制御部107により送信電力制御を実施した場合に、その範囲内に存在する通信装置10からの信号を検出することができるような信号の検出レベルが設定され、ここでは、必要最低限の検出閾値で信号を検出できるように制御する機能が備わっている。そして、検出閾値制御部114では、現在利用中の周波数チャネルがあれば、所定の検出レベル以上の信号を検出する構成になっている。
【0167】
管理情報処理部115は、受信したフレームが制御フレームであった場合に、通信制御プロトコルに必要な制御情報を構築する機能を有する。例えば、送信側の通信装置10Txでは、CTSフレームやSACKフレーム等から制御情報を構築する構成になり、受信側の通信装置10Rxでは、RTSフレームやSBARフレーム等から制御情報を構築する構成になっている。
【0168】
受信データ構築部116は、受信したデータフレーム(例えばA-MPDUフレーム)から所定のヘッダ情報を除去してMPDUを抽出し、必要とされるデータ部分のみを抽出する機能を有する。受信データ構築部116により抽出されたデータ部分は、受信バッファ117に書き込まれる。
【0169】
受信バッファ117は、例えばバッファメモリ等の半導体メモリ装置から構成される。受信バッファ117は、全てのデータが揃うまで抽出された部分を、シーケンスに基づいて一時的に格納しておくためのバッファであり、機器制御部13(例えば、接続されたアプリケーション機器)に受信データを出力するタイミングが到来するまで、データを格納する構成となっている。
【0170】
そして、受信データを出力するタイミングになったとき、受信バッファ117に格納された受信データは適宜読み出され、インターフェース101を介して機器制御部13に出力される。
【0171】
なお、図17において、各ブロック間の矢印は、データ(信号)の流れや制御を表しており、各ブロックは、自己の機能を実現するために、矢印で接続された他のブロックと協働して動作する。すなわち、例えば、サイマルキャストチャネル管理部105では、複数の周波数チャネルを同時に利用して情報を送受信する制御を一元的に管理する機能を実現するために、ネットワーク管理部103、管理情報生成部106、送信電力制御部107、サイマルキャスト送信処理部109、周波数チャネル制御部110、サイマルキャスト受信処理部113、検出閾値制御部114、及び管理情報処理部115と協働して動作する。
【0172】
また、図17において、無線通信モジュール15を構成する各部は、例えば、破線の枠で示すように、送受信データ入出力部151と、制御部152と、無線信号送受信部153との3つのブロックに分けることができるが、これ以外の数(例えば4以上の数)のブロックに分けて構成してもよい。
【0173】
ここで、送受信データ入出力部151は、インターフェース101、送信バッファ102、ネットワーク管理部103、送信フレーム構築部104、受信データ構築部116、及び受信バッファ117を含んで構成され、主に、入力される送信データや出力される受信データに関する処理や制御が行われる。
【0174】
また、制御部152は、サイマルキャストチャネル管理部105、管理情報生成部106、及び管理情報処理部115を含んで構成され、主に、フレームの送受信に関する処理や制御が行われる。なお、制御部152には、サイマルキャスト送信処理部109、周波数チャネル制御部110、及びサイマルキャスト受信処理部113などの他のブロックが含まれてもよい。
【0175】
さらに、無線信号送受信部153は、送信電力制御部107、ベースチャネル送信処理部108、サイマルキャスト送信処理部109、周波数チャネル制御部110、ベースチャネル受信処理部112、サイマルキャスト受信処理部113、及び検出閾値制御部114を含んで構成され、主に、送信信号や受信信号などの信号に関する処理や制御が行われる。
【0176】
以上のように構成される無線通信モジュール15においては、特に、サイマルキャストチャネル管理部105、サイマルキャスト送信処理部109、周波数チャネル制御部110、及びサイマルキャスト受信処理部113を含む制御部152によって、例えば、次のような処理が行われる。
【0177】
すなわち、送信側の通信装置10Tx(の無線通信モジュール15)では、制御部152によって、利用可能な周波数チャネルを利用して、データフレームを受信側の通信装置10Rxに送信し、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報(例えば、図6のSimulcast Channel Map)を含むSBARフレーム(図6のSBARフレーム)を生成し、当該複数の周波数チャネル(サイマルキャストチャネル)を利用して、生成したSBARフレームを受信側の通信装置10Rxに送信(サイマルキャスト送信)する制御が行われる。
【0178】
また、受信側の通信装置10Rx(の無線通信モジュール15)では、制御部152によって、利用可能な周波数チャネルを利用して、送信側の通信装置10Txから送信されてくるデータフレームを受信し、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報(例えば、図12のSimulcast Channel Map)を含むSACKフレーム(図12のSACKフレーム)を生成し、当該複数の周波数チャネル(サイマルキャストチャネル)を利用して、生成したSACKフレームを送信側の通信装置10Txに送信(サイマルキャスト送信)する制御が行われる。
【0179】
(データ送信側の動作)
まず、図18及び図19のフローチャートを参照して、データフレームの送信側の通信装置10Tx(の無線通信モジュール15)の動作を説明する。
【0180】
無線通信モジュール15では、A-MPDUフレームの送信を行うかどうかが判定される(S101)。なお、ステップS101の判定処理で、A-MPDUフレームの送信を行わないと判定された場合(S101の「NO」)、直ちに処理は終了する。
【0181】
ステップS101の判定処理で、A-MPDUフレームの送信を行うと判定された場合(S101の「YES」)、処理は、ステップS102に進められ、ステップS102乃至S104の処理が実行される。
【0182】
すなわち、無線通信モジュール15において、ベースチャネル送信処理部108では、ベースチャネルに相当する周波数チャネルで、データフレーム(A-MPDUフレーム)の送信が行われる(S102)。また、サイマルキャストチャネル管理部105では、サイマルキャストチャネルに対応可能かどうか、すなわち、SBARフレームとSACKフレームに対応しているかどうかを判定する(S103)。
【0183】
ステップS103の判定処理で、サイマルキャストチャネルに対応可能であると判定された場合、処理は、ステップS104に進められる。そして、サイマルキャストチャネル管理部105では、サイマルキャスト受信を行う周波数チャネルの設定を行う(S104)。
【0184】
つまり、無線通信モジュール15では、本来のA-MPDUフレームの送信を行うベースチャネルのデータ送信に加えて、他のサイマルキャストチャネル(いわば、サイマルキャストチャネルの候補)の利用状況を把握する構成になっている。
【0185】
ステップS104の処理が終了すると、処理は、ステップS105に進められる。そして、サイマルキャストチャネル管理部105では、サイマルキャストチャネル(の候補)で、エネルギーを検出したと判定された場合(S105の「YES」)、エネルギーが検出された周波数チャネルが利用中であるとして、当該周波数チャネルにBUSY状態を設定する(S106)。
【0186】
すなわち、ここでは、監視している複数の周波数チャネル(サイマルキャストチャネルの候補)のいずれかで、所定の受信電界強度以上の信号が検出された場合に、当該信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなしている。このとき、受信電界強度の設定値は、検出された信号の特性に応じて可変とすることができる。ここでは、例えば、送信側の通信装置10Txでは、自己宛の信号に対してはより低めの設定値を設定して検出しやすくする一方で、隣接する他の通信装置宛の信号に対してはより高めの設定値を設定して検出し難くすることができる。
【0187】
さらに、無線通信モジュール15では、所定のプリアンブル信号を検出した場合(S107の「YES」)には、ヘッダ情報に記載されるパラメータが取得され(S108)、当該周波数チャネルにおけるネットワークアロケーションベクタ(NAV)が設定される(S109)。
【0188】
すなわち、ここでは、監視している複数の周波数チャネル(サイマルキャストチャネルの候補)のいずれかで、所定のプリアンブル信号が検出された場合に、例えば、その後に取得されるヘッダ情報に記載されたパラメータに基づき、当該プリアンブル信号を検出した周波数チャネルが占有される時間を算出し、算出した時間が経過するまで、当該プリアンブル信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなすことができる。
【0189】
無線通信モジュール15では、このステップS105乃至S109の処理を、A-MPDUフレームの末尾が到来したと判定される(S110の「YES」)まで、ステップS105に戻って周波数チャネルの利用状況の把握を繰り返す構成となっており、利用可能な全ての周波数チャネルでこの処理が実施される。
【0190】
なお、ここでは、ステップS105の判定処理で、エネルギーが未検出であると判定された場合(S105の「NO」)、あるいは、ステップS107の判定処理で、プリアンブル信号が未検出であると判定された場合(S107の「NO」)、その後の処理はスキップされ、処理はステップS110に進められる。
【0191】
そして、ステップS110の判定処理で、A-MPDUフレームの末尾が到来したと判定された場合(S110の「YES」)、処理は、ステップS111に進められ、ステップS111乃至S115の処理が実行される。
【0192】
すなわち、無線通信モジュール15において、サイマルキャストチャネル管理部105では、その時点でBUSY状態やネットワークアロケーションベクタ(NAV)が設定されていない利用可能な周波数チャネル(サイマルキャストチャネルの候補)を把握し(S111)、この周波数チャネルをサイマルキャストチャネルとして設定する(S112)。
【0193】
また、サイマルキャスト送信処理部109では、サイマルキャスト送信するチャネル情報(例えば、図6のSimulcast Channel Map)等の情報をSBARフレームに設定し(S113)、実際にSBARフレームとして送信されるようにする(S114)。そして、無線通信モジュール15では、サイマルキャストチャネルとして設定された周波数チャネルでSACKフレームの返送を待ち受ける(S115)構成になっている。
【0194】
なお、ステップS103の判定処理で、サイマルキャストチャネルに未対応であると判定された場合(S103の「NO」)、ステップS104乃至S113の処理はスキップされ、処理は、ステップS114に進められる。この場合、SBARフレームとSACKフレームには未対応であるため、無線通信モジュール15では、現状の方式と同様に、ベースチャネルに相当する周波数チャネルのみで、BARフレームを送信して(S114)、その後にACKフレームを待ち受ける(S115)。
【0195】
ステップS115の処理が終了すると、処理は、ステップS116に進められる。そして、無線通信モジュール15では、SACKフレーム(又はACKフレーム)が受信されたかどうかが判定される。ステップS116の判定処理でSACKフレーム(又はACKフレーム)が受信されたと判定された場合(S116の「YES」)、受信側の通信装置10Rxにて未達のデータが存在するかどうかが判定される(S117)。
【0196】
ステップS117の判定処理で、未達のデータがないと判定された場合(S117の「NO」)、一連のデータフレームの送信は終了する。一方で、ステップS117の判定処理で、未達のデータがあると判定された場合(S117の「YES」)、処理は、ステップS118に進められ、ステップS118乃至S120の処理が実行される。
【0197】
すなわち、無線通信モジュール15において、サイマルキャスト送信処理部109では、SACKフレームに含まれる特定情報に基づき、受信側の通信装置10Rxにおける未達のデータ(つまり、再送が必要なデータ)を特定して、再送データを構築する(S118)。また、サイマルキャストチャネル管理部105では、利用可能な周波数チャネルの中から再送に利用する周波数チャネルを設定する(S119)。これにより、受信側の通信装置10Rxに再送するための再送フレームが設定される(S120)。
【0198】
あるいは、ステップS116の判定処理でSACKフレーム(又はACKフレーム)が受信されていないと判定された場合(S116の「NO」)、処理は、ステップS121に進められる。この場合、全てのMPDUを再送データとして構築し(S121)、再送フレームが設定される(S120)ものの、少なくとも1つのチャネルでSACKフレームが受信されていれば、全てのMPDUを再送データとする必要はない。
【0199】
ステップS120の処理が終了すると、処理は、ステップS122に進められる。ステップS122の判定処理では、サイマルキャストチャネルとして利用可能な全ての周波数チャネルで待ち受けを行っている場合(S122の「NO」)には、処理は、ステップS116に戻される。そして、SBARフレームを送信した全ての周波数チャネルで、SACKフレームの受領の有無が確認され(S116)、適宜、上述したステップS117乃至S122の処理が実行される。
【0200】
そして、無線通信モジュール15では、所定のアクセス手順に従って待ち時間が経過した後、すなわち、無線伝送路が利用可能になったとき(S123の「YES」)に、再送フレームを送信する(S124)構成となっている。なお、ここでは、再送フレームを送信した後に、処理は、ステップS124からステップS104に戻って、再度、SBARフレームの送信や、SACKフレームの返送が実施される構成としてもよい。
【0201】
以上、データフレームの送信側の通信装置10Txの動作を説明した。
【0202】
(データ受信側の動作)
次に、図20及び図21のフローチャートを参照して、データフレームの受信側の通信装置10Rx(の無線通信モジュール15)の動作を説明する。
【0203】
無線通信モジュール15では、A-MPDUフレームの受信を行うかどうかが判定される(S201)。なお、ステップS201の判定処理で、A-MPDUフレームの受信が行われないと判定された場合(S201の「NO」)、直ちに処理は終了する。
【0204】
ステップS201の判定処理で、A-MPDUフレームの受信を行うと判定された場合(S201の「YES」)、処理は、ステップS202に進められ、ステップS202乃至S204の処理が実行される。
【0205】
すなわち、無線通信モジュール15において、ベースチャネル受信処理部112では、ベースチャネルに相当する周波数チャネルで、送信側の通信装置10Txから送信されてくるデータフレーム(A-MPDUフレーム)の受信が行われる(S202)。また、サイマルキャストチャネル管理部105では、サイマルキャストチャネルに対応しているかどうかが判定される(S203)。
【0206】
ステップS203の判定処理で、サイマルキャストチャネルに対応可能であると判定された場合、処理は、ステップS204に進められる。そして、サイマルキャストチャネル管理部105では、サイマルキャスト受信を行う周波数チャネルの設定を行う(S204)。
【0207】
つまり、無線通信モジュール15では、本来のA-MPDUフレームの受信を行うベースチャネルのデータ受信に加えて、他のサイマルキャストチャネル(いわば、サイマルキャストチャネルの候補)の利用状況を把握する構成になっている。
【0208】
ステップS204の処理が終了すると、処理は、ステップS205に進められる。そして、サイマルキャストチャネル管理部105では、サイマルキャストチャネル(の候補)で、エネルギーを検出したと判定された場合(S205の「YES」)、当該周波数チャネルが利用中であるとしてBUSY状態を設定する(S206)。
【0209】
すなわち、ここでは、監視している複数の周波数チャネル(サイマルキャストチャネルの候補)のいずれかで、所定の受信電界強度以上の信号が検出された場合に、当該信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなしている。このとき、受信電界強度の設定値は、検出された信号の特性に応じて可変とすることができる。ここでは、例えば、受信側の通信装置10Rxでは、自己宛の信号に対してはより低めの設定値を設定して検出しやすくする一方で、隣接する他の通信装置宛の信号に対してはより高めの設定値を設定して検出し難くすることができる。
【0210】
さらに、無線通信モジュール15では、所定のプリアンブル信号を検出した場合(S207の「YES」)、ヘッダ情報に記載されるパラメータが取得され(S208)、当該周波数チャネルにおけるネットワークアロケーションベクタ(NAV)が設定される(S209)。
【0211】
すなわち、ここでは、監視している複数の周波数チャネル(サイマルキャストチャネルの候補)のいずれかで、所定のプリアンブル信号が検出された場合に、例えば、その後に取得されるヘッダ情報に記載されたパラメータに基づき、当該プリアンブル信号を検出した周波数チャネルが占有される時間を算出し、算出した時間が経過するまで、当該プリアンブル信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなすことができる。
【0212】
無線通信モジュール15では、このステップS205乃至S209の処理を、A-MPDUフレームの末尾が到来したと判定される(S210の「YES」)まで、ステップS205に戻って、周波数チャネルの利用状況の把握を繰り返す構成となっており、利用可能な全ての周波数チャネルでこの処理が実施される。
【0213】
なお、ここでは、ステップS205の判定処理で、エネルギーが未検出であると判定された場合(S205の「NO」)、あるいは、ステップS207の判定処理で、プリアンブル信号が未検出であると判定された場合(S207の「NO」)、その後の処理はスキップされ、処理はステップS210に進められる。
【0214】
そして、ステップS210の判定処理で、A-MPDUフレームの末尾が到来したと判定された場合(S210の「YES」)、処理は、ステップS211に進められ、ステップS211乃至S213の処理が実行される。
【0215】
すなわち、無線通信モジュール15において、サイマルキャストチャネル管理部105では、その時点でBUSY状態やネットワークアロケーションベクタ(NAV)が設定されていない利用可能な周波数チャネル(サイマルキャストチャネルの候補)を把握し(S211)、この周波数チャネルをサイマルキャストチャネルとして設定する(S212)。
【0216】
また、サイマルキャスト送信処理部109では、サイマルキャスト送信するチャネル情報(例えば、図12のSimulcast Channel Map)等の情報をSACKフレームに設定する(213)。ステップS213の処理が終了すると、処理は、ステップS217に進められる。すなわち、無線通信モジュール15では、サイマルキャストチャネルとして設定された周波数チャネルでSBARフレームを待ち受ける(S217)構成になっている。
【0217】
一方で、ステップS203の判定処理で、サイマルキャストチャネルに未対応であると判定された場合(S203の「NO」)、処理は、ステップS214に進められる。また、サイマルキャストチャネルに対応可能である場合(S203の「YES」)でも、ベースチャネルにおいては、データフレーム(A-MPDUフレーム)の受信が行われている。この場合、無線通信モジュール15では、ベースチャネルに相当する周波数チャネルを利用して、A-MPDUフレームの受信を継続して、A-MPDUフレームを構成する各MPDUが正常に受信された場合(S214の「YES」)には、当該MPDUを受領済みとして設定する(S215)。
【0218】
さらに、無線通信モジュール15では、A-MPDUフレームが終了したかどうかが判定され(S216)、A-MPDUフレームが終了するまで、ステップS214に戻って、A-MPDUフレームを構成する各MPDUの正常受信が判断される。そして、A-MPDUフレームが終了したと判定された場合(S216の「YES」)、無線通信モジュール15では、BARフレームを待ち受ける(S217)構成になっている。
【0219】
そして、無線通信モジュール15では、SBARフレーム(又はBARフレーム)が受信されたかどうかが判定される(S218)。ステップS218の判定処理で、SBARフレーム(又はBARフレーム)が受信されたと判定された場合(S218の「YES」)、処理は、ステップS219に進められ、ステップS219乃至S220の処理が実行される。
【0220】
すなわち、無線通信モジュール15においては、MPDUの受領済み情報が取得される(S219)ので、サイマルキャスト送信処理部109では、取得された受領済み情報を、SACKフレーム(又はACKフレーム)として設定する(S220)。なお、ステップS218の判定処理で、SBARフレーム(又はBARフレーム)が未受信であると判定された場合(S218の「NO」)、一連のデータフレームの受信処理は終了する。
【0221】
ステップS220の処理が終了すると、処理は、ステップS221に進められる。ステップS221の判定処理では、サイマルキャストチャネルとして利用可能な全ての周波数チャネルで待ち受けを行っている場合(S221の「NO」)には、処理は、ステップS218に戻される。そして、SBARフレームを受信した全ての周波数チャネルを対象として、SACKフレームが設定される。
【0222】
そして、無線通信モジュール15では、SACKフレーム(又はACKフレーム)を送信する(S222)とともに、再送データがあるかどうかを判定する(S223)構成となっている。ステップS223の判定処理で、再送データがないと判定された場合(S223の「NO」)、一連のデータフレームの受信処理は終了する。
【0223】
また、ステップS223の判定処理で、再送データがあると判定された場合(S223の「YES」)、処理は、ステップS224に進められる。そして、無線通信モジュール15において、サイマルキャストチャネル管理部105では、利用可能な周波数チャネルの中から再送フレームの待ち受けに利用する周波数チャネルを設定し(S224)、ステップS201の処理に戻って、送信側の通信装置10Txから再送される再送フレーム(A-MPDUフレーム)を待ち受ける構成になっている。
【0224】
以上、データフレームの受信側の通信装置10Rxの動作を説明した。
【0225】
以上のように、本技術を適用した通信方法(新方式)では、データフレームの送信側の通信装置10Txと、受信側の通信装置10Rxのそれぞれが、データフレームの送受信チャネル以外の周波数チャネルを監視(モニタ)している。そして、送信側の通信装置10Txが、SBARフレーム、すなわち、利用可能な全ての周波数チャネルを利用してブロックACKリクエストフレームを送信し、それを受信する受信側の通信装置10Rxでも、SACKフレーム、すなわち、利用可能な周波数チャネルの全てを利用してブロックACKフレームを送信している。
【0226】
これにより、より確実に制御情報を交換することが可能となって、より信頼性の高い通信を実現することができる。
【0227】
すなわち、新方式では、SBARフレームとSACKフレームを、利用可能な複数の周波数チャネルを用いて交換することで、現状の方式のような1つの周波数チャネルを利用する場合よりも、格段に信頼性を向上させた情報交換が可能となる。つまり、新方式は、現状の方式のような1つの周波数チャネルのみを利用してBARフレームとACKフレームの交換を行う方法と比べて、伝送エラーが生じた周波数チャネルを除いた周波数チャネルを利用して、SBARフレームとSACKフレームを交換できるため、より確実にACK情報を交換することができる。また、このとき、SBARフレームとSACKフレームには、チャネル情報(図6又は図12のSimulcast Channel Map)が含まれるため、受信側の通信装置10Rxと送信側の通信装置10Txのそれぞれでは、確実に利用した周波数チャネルを把握することができる。
【0228】
また、新方式においては、例えば、データフレームとしてA-MPDUフレームを用いて多数のデータを伝送する場合に、伝送に利用する周波数チャネルが他のシステムの干渉を受けて、ACKフレームの返送が難しい場合にも、他の周波数チャネルを利用してSACKフレームを確実に返送することができる。
【0229】
さらに、新方式では、現状の方式のように、データ送信チャネルを用いたデータの再送に限定せずに、送信側の通信装置10Txで、SACKフレームが受領された周波数チャネルを利用して、再送データを送信するため、より信頼性の高い再送方法を実現することができる。
【0230】
すなわち、新方式では、SBARフレームとSACKフレームとを明確に交換できたチャネルを用いて、データの再送を実施することで、より確実に再送データを送信することができる。これにより、他のシステムが混在する環境においても、無線LANシステムの通信プロトコルを効果的に運用することが可能となる。
【0231】
また、送信側の通信装置10Txでは、受信側の通信装置10Rxで利用可能な他の周波数チャネルに関するチャネル情報を含んだSACKフレームを併用することで、直前に利用できた周波数チャネルを利用して、未受領の再送データを含むデータフレーム(再送フレーム)を送信(再送)することができる。さらに、新方式においては、確実にSBARフレームとSACKフレームとの交換が行われることで、ACKフレームの未達による全データの再送を防ぐことができ、必要なデータのみを再送データとすることができる。その結果として、伝送路利用効率を向上させることができる。
【0232】
<2.変形例>
【0233】
(他の構成の例)
上述した送信側の通信装置10Txは、基地局(アクセスポイント)として構成され、受信側の通信装置10Rxは、端末局として構成することができる。ただし、通信装置10Tx又は通信装置10Rxは、基地局又は端末局を構成する装置の一部(例えば、無線通信モジュールや無線チップ等)として構成されるようにしてもよい。
【0234】
また、例えば、端末局として構成される受信側の通信装置10Rxは、例えば、スマートフォン、タブレット型端末、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、ゲーム機、テレビ受像機、ウェアラブル端末、スピーカ装置などの無線通信機能を有する電子機器として構成することができる。
【0235】
なお、ここでは、送信側の通信装置10Txが基地局であり、受信側の通信装置10Rxが端末局であるとして説明したが、送信側と受信側とを反対にして、基地局を、受信側の通信装置10Rxとし、端末局を、送信側の通信装置10Txとしてもよい。
【0236】
すなわち、通信装置10としての基地局は、図18及び図19のフローチャートに示したデータフレームの送信側の動作は勿論、図20及び図21のフローチャートに示したデータフレームの受信側の動作を行うことも可能である。同様に、通信装置10としての端末局は、図20及び図21のフローチャートに示したデータフレームの受信側の動作は勿論、図18及び図19のフローチャートに示したデータフレームの送信側の動作を行うことも可能である。
【0237】
なお、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0238】
また、本技術は、以下のような構成をとることができる。
【0239】
(1)
利用可能な周波数チャネルを利用して、データを他の通信装置に送信し、
前記データの正常な受信の確認に用いられる確認信号を要求するための信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関する第1のチャネル情報を含む要求信号を生成し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記要求信号を前記他の通信装置に送信する
制御を行う制御部を備える
通信装置。
(2)
前記制御部は、前記複数の周波数チャネルに含まれる各周波数チャネルで、前記要求信号を同時に送信する
前記(1)に記載の通信装置。
(3)
前記制御部は、
前記データの送信に利用した周波数チャネルと異なる複数の周波数チャネルの利用状況を監視し、
その監視結果に応じた利用可能な複数の周波数チャネルを利用して、前記要求信号を送信する
前記(1)又は(2)に記載の通信装置。
(4)
前記確認信号は、前記他の通信装置側で利用可能な複数の周波数チャネルに関する第2のチャネル情報を含み、
前記制御部は、前記要求信号を送信した周波数チャネルで、前記他の通信装置から送信されてくる前記確認信号を待ち受ける動作を制御する
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の通信装置。
(5)
前記データは、複数のサブフレームをアグリゲートしたデータフレームとして送信され、
前記確認信号は、前記他の通信装置側で利用可能な複数の周波数チャネルに関する第2のチャネル情報、及び再送が必要な再送データに関する特定情報を含み、
前記制御部は、前記他の通信装置から送信されてくる前記確認信号に含まれる前記特定情報に基づいて、前記サブフレームごとに前記再送データを特定する
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の通信装置。
(6)
前記制御部は、前記確認信号を受信した周波数チャネルを利用して、前記再送データを送信する
前記(5)に記載の通信装置。
(7)
前記制御部は、監視している複数の周波数チャネルのいずれかで、所定の受信電界強度以上の信号を検出した場合に、前記信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなす
前記(3)に記載の通信装置。
(8)
前記受信電界強度の設定値は、検出した前記信号の特性に応じて可変とされる
前記(7)に記載の通信装置。
(9)
前記制御部は、
監視している複数の周波数チャネルのいずれかで、所定のプリアンブル信号を検出した場合に、その後に取得されるヘッダ情報に記載されたパラメータに基づき、前記プリアンブル信号を検出した周波数チャネルが占有される時間を算出し、
算出した前記時間が経過するまで、当該プリアンブル信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなす
前記(3)、(7)、及び(8)のいずれかに記載の通信装置。
(10)
通信装置が、
利用可能な周波数チャネルを利用して、データを他の通信装置に送信し、
前記データの正常な受信の確認に用いられる確認信号を要求するための信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む要求信号を生成し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記要求信号を前記他の通信装置に送信する
制御を行う
通信方法。
(11)
利用可能な周波数チャネルを利用して、他の通信装置から送信されてくるデータを受信し、
前記データの正常な受信の確認に用いられる信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関する第1のチャネル情報を含む確認信号を生成し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記確認信号を前記他の通信装置に送信する
制御を行う制御部を備える
通信装置。
(12)
前記制御部は、前記複数の周波数チャネルに含まれる各周波数チャネルで、前記確認信号を同時に送信する
前記(11)に記載の通信装置。
(13)
前記制御部は、
前記データの受信に利用した周波数チャネルと異なる複数の周波数チャネルの利用状況を監視し、
その監視結果に応じた利用可能な複数の周波数チャネルを利用して、前記確認信号を送信する
前記(11)又は(12)に記載の通信装置。
(14)
前記制御部は、前記データを受信した周波数チャネルを除いた周波数チャネルで、前記他の通信装置から送信されてくる、前記確認信号を要求するための信号であって前記他の通信装置側で利用可能な複数の周波数チャネルに関する第2のチャネル情報を含む要求信号を待ち受ける動作を制御する
前記(11)乃至(13)のいずれかに記載の通信装置。
(15)
前記制御部は、
前記他の通信装置から送信されてくる、前記確認信号を要求するための信号であって前記他の通信装置側で利用可能な複数の周波数チャネルに関する第2のチャネル情報を含む要求信号を受信し、
前記要求信号を受信した複数の周波数チャネルを利用して、前記確認信号を送信する
前記(11)乃至(13)のいずれかに記載の通信装置。
(16)
前記データは、複数のサブフレームをアグリゲートしたデータフレームとして送信され、
前記制御部は、
前記サブフレームごとに受信の確認を実施して、再送が必要な再送データを特定し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、特定した前記再送データに関する特定情報を含む前記確認信号を送信する
前記(11)乃至(15)のいずれかに記載の通信装置。
(17)
前記制御部は、前記確認信号を送信した周波数チャネルを利用して、前記他の通信装置から送信されてくる前記再送データを待ち受ける動作を制御する
前記(16)に記載の通信装置。
(18)
前記制御部は、監視している複数の周波数チャネルのいずれかで、所定の受信電界強度以上の信号を検出した場合に、前記信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなす
前記(13)に記載の通信装置。
(19)
前記制御部は、
監視している複数の周波数チャネルのいずれかで、所定のプリアンブル信号を検出した場合に、その後に取得されるヘッダ情報に記載されたパラメータに基づき、前記プリアンブル信号を検出した周波数チャネルが占有される時間を算出し、
算出した前記時間が経過するまで、当該プリアンブル信号を検出した周波数チャネルを使用中であるとみなす
前記(13)又は(18)に記載の通信装置。
(20)
通信装置が、
利用可能な周波数チャネルを利用して、他の通信装置から送信されてくるデータを受信し、
前記データの正常な受信の確認に用いられる信号であって、利用可能な複数の周波数チャネルに関するチャネル情報を含む確認信号を生成し、
前記複数の周波数チャネルを利用して、生成した前記確認信号を前記他の通信装置に送信する
制御を行う
通信方法。
【符号の説明】
【0240】
10,10Tx,10Rx 通信装置, 11 インターネット接続モジュール, 12 情報入力モジュール, 13 機器制御部, 14 情報出力モジュール, 15 無線通信モジュール, 101 インターフェース, 102 送信バッファ, 103 ネットワーク管理部, 104 送信フレーム構築部, 105 サイマルキャストチャネル管理部, 106 管理情報生成部, 107 送信電力制御部, 108 ベースチャネル送信処理部, 109 サイマルキャスト送信処理部, 110 周波数チャネル制御部, 111 アンテナ制御部, 112 ベースチャネル受信処理部, 113 サイマルキャスト受信処理部, 114 検出閾値制御部, 115 管理情報処理部, 116 受信データ構築部, 117 受信バッファ, 151 送受信データ入出力部, 152 制御部, 153 無線信号送受信部
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