(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033371
(43)【公開日】2022-03-01
(54)【発明の名称】襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 27/18 20060101AFI20220221BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20220221BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
A41D27/18 Z
A41D1/02 Z
A41D13/05 112
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137200
(22)【出願日】2020-08-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】504028894
【氏名又は名称】株式会社安藤
(74)【代理人】
【識別番号】100167081
【弁理士】
【氏名又は名称】本谷 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 俊介
【テーマコード(参考)】
3B011
3B031
3B035
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B031AA07
3B031AB09
3B031AB10
3B031AC06
3B031AD01
3B035AA14
3B035AB06
3B035AB18
3B035AB20
3B035AC15
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、襟を折り込んだ衣服の上に重ね着をした場合であっても見栄えがよい襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服を提供することである。
【解決手段】
少なくとも、左前身頃部、右前身頃部、後身頃部、及び所定の高さを有する襟部を含み、少なくとも、前記襟部の中間部が前記後身頃部に縫合された衣服であって、前記左前身頃部と右前身頃部の上部において、首の側方から胸部前側垂立端縁の間において直線的に傾斜する結合部が形成されている。当該結合部を折り目として襟部、及び前身頃部の一部を身頃部の下側に折り込む可能であり、上着を着用した場合、当該襟部等が上着の下方に隠れることから、外見上の見栄えが良くなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、左前身頃部(104)、右前身頃部(106)、後身頃部(108)、及び所定の高さを有する襟部(110)を含み、少なくとも、前記襟部(110)の中間部が前記後身頃部(108)に結合された衣服であって、
首の側方の肩部(SL、SR)から胸部中心線(CL)に対して斜め下向きであって、直線的な、前記左前身頃部(104)、又は前記右前身頃部(106)を構成する生地の結合部(126)が形成されている
ことを特徴とする襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服。
【請求項2】
少なくとも、左前身頃部(104)、右前身頃部(106)、後身頃部(108)、及び所定の高さを有する襟部(110)を含み、少なくとも、前記襟部(110)の中間部が前記後身頃部(108)に結合された衣服であって、
前記左前身頃部(104)と右前身頃部(106)の上端部に、斜辺部(104S、106S)と当該斜辺部に相対する直線状の第一辺部(114V、116V)と第二辺部(114U、116U)により下端部に頂点を有する略三角形の左成形前身頃部(114)、及び右成形前身頃部(116)を配置し、前記斜辺部(114S,116S)が首側方の肩部(SL、SR)から胸部中心線(CL)に向かって下向きの直線状に縫合され、前記第一辺部(114V、116V)は前記ファスナー部(112)に縫合され、前記第二辺部(114U、116U)は、前記襟部(110)の端部に縫合され、
前記左前身頃部(114)と前記右前身頃部(116)において、首の側方から前記ファスナー部(112)の間において直線的に斜めに縫合部(126L、126R)が形成されている
ことを特徴とする襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服。
【請求項3】
前記成形前身頃部(114、116)の斜辺部(104S、106S)の縫合部(126L、126R)は、所定の幅(W)で縫合されている
ことを特徴とする請求項2の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服。
【請求項4】
前記衣服(100)は、表裏反転着用可能なリバーシブル衣服である
ことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載した襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服。
【請求項5】
前記襟部(110)は、内側襟部(132)と外側襟部(111)によって構成される
ことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載した襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服。
【請求項6】
前記内側襟部(132)よりも前記外側襟部(111)の方が高さが高い
ことを特徴とする請求項5の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、襟を立て、首回りからの外気の侵入を防止することが可能な襟付き衣服に関する。
特に、襟を立てた状態、又は襟を身頃の下側に折曲して襟を隠した状態で着用できる襟付き衣服に関する。
更には、襟を立てた状態、及び襟を身頃の下側に容易に、且つ見栄え良く身頃下に折り込んで襟を隠した状態で着用できる襟付き衣服に関する。
本明細書において、結合とは、裁断片が容易に分離しないよう結合する機能を意味し、具体的手法としては、融着、接着、縫合等が想定される。なお、縫合は、生地へのダメージが小さく、生地の変形に追従して変形することができ、かつ外見上見栄えが良いことから、衣服用としては最も好ましい。
【背景技術】
【0002】
第一の従来技術として、綿入りフードを簡単に見た目よく折り畳める上着を提供するため、フードを有する上着であって、上着の襟ぐりには中綿入りの生地からなる台襟が形成されており、前記フードは中綿入りの生地で前記台襟の上端で縫合され、前記フードの頂点にはテープ状のフックが設けられ、前記フードを前記台襟の上端の縫合線の位置で内側に折り曲げられた際に前記フックが対応する後身頃の位置にボタンが設けられており、前記フードを使用しない場合には前記フックを前記ボタンに掛けて固定し、前記台襟が立襟の形態になることを特徴とする上着が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
第二の従来技術として、着用者の首の周りに立つように構成された襟部を備えた釣り用上着において、前記襟部の上下方向中間部に、該襟部の周方向に沿う折り目を備え、前記折り目が、前記襟部の下端から該襟部の周方向ほぼ全域に渡ってほぼ同一高さ位置に位置し、該折り目から該襟部の上端までの長さを、該襟部の前側よりも後側を長くした釣り用上着が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
第三の従来技術として、胸部から腹部を被う胴衣部と、その胴衣部の上部開口部に設けられた襟部とを有する上着において、前記襟部が首回りから後頭部までを被うとともに、前記襟部は、首の前部にて前開き可能とされ、その首の前部から周方向に頬骨に沿って、前記開口部から耳元の高さまでを被う首被覆部と、前記首被覆部の上側に構成され、前記耳元から該耳を被い、さらに後頭部周方向に沿って前記後頭部までを被う後頭部被覆部とにより構成され、さらに、前記首被覆部と前記後頭部被覆部との間に周方向に第一の折り目が形成され、また前記後頭部被覆部の中間に周方向に第二の折り目が形成され、これら第一及び第二の折り目によって、前記襟部は前記首被覆部である下側部分と前記後頭部被覆部が2分された中間部分と上側部分との都合3領域に区分され、かつ前記上側部分が前記中間部分より幅が狭くなるように形成されるとともに、前記第一及び第二の折り目で折り畳み可能とされ、さらに当該襟部には、前記後頭部を被う状態を安定に保つための襟部補強手段が設けられていることを特徴とする日焼け防止用上着が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
第四の従来技術として、防寒用の大型保温織り衿と小型保温立衿を一つの衿台に各々その基側を縫い込んで折り曲げ自在に着装してなる防寒衣が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3218283号(
図1~
図2、段落0006)
【特許文献2】特開2009-24306(
図1~
図8、段落0005)
【特許文献3】特許第3072843号(
図1~
図2、段落0006~0007)
【特許文献4】実全昭52-137908(
図1~
図4、第一頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第一の従来技術において、フードが台襟の上端に縫合されるため、フードは台襟の上端で折り曲げることができるため、フードを使用しない場合、内側に折り込み、フックとボタンで、フードを固定でき、台襟の上端で内側に折り込んでいるため、外観は立襟の形態となり、首回りがすっきりし、見栄えが良くなる。しかしながら、台襟は常に立った状態であるため、この上着の上に重ね着した場合、台襟が露出することから、見栄えが悪くなる懸念がある。
【0008】
第二の従来技術において、上着の襟の上下方向の中間において、折り目が設けられているため、襟は、折り目に沿って内側に折り込んだ低い襟と、折り込まない高い襟とを選択できるので、寒い条件下においては、首を高い襟によってカバーして保温し、熱い条件下においては、襟を折り込んで低い襟とし、首回りを大気に晒すことで冷感を得られる利点がある。しかし、低い襟は常に存在するため、第一の従来技術同様に、重ね着した場合、台襟が露出することから、見栄えが悪くなる懸念がある。
【0009】
第三の従来技術において、襟部を三段階に折り曲げ可能に構成され、胴衣部の開口部から襟部の全体を外側へ折り曲げて襟無しにすることができ、襟の途中で折り曲げた場合、襟の高さを変えることが出来る。しかし、襟部は、首の前部にて前開き可能とされ、円形開口部回りの全周に襟部が設けられていることから、第一の従来技術同様に、重ね着した場合、襟部が露出することから、見栄えが悪くなる懸念がある。
【0010】
第四の従来技術において、大型保温織り衿と小型保温立衿を一つの衿台に各々その基側を縫い込んで大型保温織り衿を内側に折り込むことができることから、大型襟によって防寒効果を高め、大型襟を内側に曲げることにより、小型の襟にすることにより、保温調整が行える利点がある。しかし、第一の従来技術同様に、重ね着した場合、襟部が露出することから、見栄えが悪くなる懸念がある。
【0011】
本発明の目的は、襟付き衣服の上に上着を重ね着をした場合、襟を身頃下に見栄え良く隠すことが可能な襟付き衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、請求項1に係る第一の発明は以下のように構成されている。
少なくとも、左前身頃部、右前身頃部、後身頃部、及び所定の高さを有する襟部を含み、少なくとも、前記襟部の中間部が前記後身頃部に縫合された衣服であって、首の側方の肩部から胸部中心線に対して斜め下向きであって、直線的な、前記左前身頃部、又は前記右前身頃部を構成する生地の結合部が形成されていることを特徴とする襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服である。
【0013】
本発明に係る第二の発明は以下のように構成されている。
少なくとも、左前身頃部、右前身頃部、後身頃部、及び所定の高さを有する襟部を含み、少なくとも、前記襟部の中間部が前記後身頃部に縫合された衣服であって、前記左前身頃部と右前身頃部の上端部に、斜辺部と当該斜辺部に相対する直線状の第一辺部と第二辺部により下端部に頂点を有する略三角形の左成形前身頃部、及び右成形前身頃部を配置し、前記斜辺部が首側方の肩部から胸部中心線に向かって下向きの直線状に縫合され、前記第一辺部は前記ファスナー部に縫合され、前記第二辺部は、前記襟部の端部に縫合され、前記左前身頃部と前記右前身頃部において、首の側方から前記ファスナー部)の間において直線的に斜めに縫合部が形成されていることを特徴とする襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服である。
【0014】
本発明に係る第3の発明は以下のように構成されている。
前記左成形前身頃部と前記左前身頃部との縫合部は、所定の幅で縫合されていることを特徴とする第二の発明の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服である。
【0015】
本発明に係る第4の発明は以下のように構成されている。
前記衣服は表裏反転着用可能なリバーシブル衣服であることを特徴とする第1~第3の発明の何れかに記載した襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服である。
【0016】
本発明に係る第5の発明は以下のように構成されている。
前記襟部は、内側襟部と外側襟部によって構成されることを特徴とする第1~第4の発明の何れかに記載した襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服である。
【0017】
本発明に係る第6の発明は以下のように構成されている。
前記内側襟部よりも前記外側襟部の方が高さが高いことを特徴とする第5の発明の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服である。
【発明の効果】
【0018】
第一の発明によれば、所定の高さを有する襟部はその中間を後身頃上端部に結合され、襟部結合部が形成される。左前身頃上部には、首の左側方から右前身頃側の垂立する端縁へ斜め下方へ向かう直線的な、左前身頃部結合部が形成される。右前身頃上部には、首の右側方から左前身頃側の垂立する端縁へ斜め下方へ向かう直線的な右前身頃部結合部が形成されている。これらの首後結合部、左前身頃部結合部、及び右前身頃部結合部は、実質的に連続して形成されている。したがって、これらの結合部を利用して襟部を前身頃部及び後身頃部の下側へ折り込むことにより、後身頃部襟部は後身頃部の下側へ隠すことができる。左前身頃側の襟部及び当該襟部に連なる左前身頃の一部は左前身頃部の下側へ隠すことができる。また、右前身頃側の襟部及び当該襟部に連なる右前身頃の一部は右前身頃部の下側へ隠すことができる。特に、襟部に加え左前身頃部の一部が左前身頃部の下方に、及び右前身頃部の一部が右前身頃部の下方に隠すことが出来るので、上着を重ね着した場合であっても、襟部及び前身頃部の一部が上着の下方に隠されて見えないので、見栄えが良く、本発明の目的を達成できる利点がある。なお、「直線的な」とは、直線に加え、大きな半径の弧状線を含む概念である。
【0019】
第二の発明において、所定の高さを有する襟部はその中間を後身頃の上端部に縫い合わされ、首後部縫合部が形成される。左前身頃部と右前身頃部の上端部に、略三角形であって、下端部を頂点とし、当該頂点に対する直線的な第一辺部を相対する前身頃側に配置し、第二辺部は襟部に縫合された左成形前身頃部、及び右成形前身頃部が配置されている。左前身頃部と右前身頃部の首部の側方上部から胸部中心線に向かって、直線的に斜め下方へ向かう結合部たる縫合部が形成されている。換言すれば、首の左側方から左前身頃の垂立する端縁へ向かって、斜め下向きの直線的な左前身頃部縫合部が形成される。一方、首の右側方から右前身頃の垂立する端縁へ向かって、斜め下向きの直線的な右前身頃部縫合部が形成される。これらの首後部縫合部、左前身頃部縫合部、及び右前身頃部縫合部は、実質的に連続して形成されている。したがって、これらの縫合部を利用して襟部を内側(身頃部の下側)へ折り込むことにより、後身頃部襟部は後身頃部の下側へ隠すことができる。左前身頃側の襟部の端部、及び当該襟部に連なる左前身頃部の一部は左前身頃部の下側へ隠すことができる。右前身頃部側の襟部の一部、及び当該襟部に連なる右前身頃部の一部は右前身頃部の下側へ隠すことができる。特に、襟部に加え、左前身頃部の一部が左前身頃部の下方に、及び右前身頃部の一部が右前身頃部の下方に隠すことが出来るので、上着を重ね着した場合であっても、下側に着用している襟付き衣服が見えないので、見栄えが良く、本発明の目的を達成できる利点がある。
【0020】
第3の発明は、第二の発明と基本的構成は同一であるので、本発明における目的を達成することができる。さらに、第3の発明においては、左成形前身頃部と前記左前身頃部との縫合部は、所定の幅で縫合されている。この構成によって、縫い目が所定の幅を有するので、この縫合部を境に折り込みやすい利点がある。
【0021】
第4の発明は、第一及び第二の発明と基本的構成は同一であるので、本発明における目的を達成することができる。さらに、第4の発明における襟付き衣服は、表裏を反転して着用可能なリバーシブル型である。したがって、一つの襟付き衣服において、表であって、襟を立てた状態と襟を隠した状態、及び裏であって、襟を立てた状態と襟を隠した状態の、四つの服装を構成することができ、多様なファッションを楽しめる利点がある。
【0022】
第5の発明は、第一、又は第二の発明と基本的構成は同一であるので、本発明における目的を達成することができる。さらに、第5の発明において襟部は、内側襟部と外側襟部の複数によって構成される、したがって、内側襟部を折り込んだ状態、外側襟部を折り込んだ状態、又は内側襟部及び外側襟部を折り込んだ状態で着用できるため、多様なファッションを楽しめる利点がある。
【0023】
第6の発明は、第一、又は第二の発明と基本的構成は同一であるので、本発明における目的を達成することができる。さらに、第6の発明において襟部は、内側襟部よりも外側襟部の方が高さが高く形成される、したがって、内側襟部を折り込んだ状態、外側襟部を折り込んだ状態、又は内側襟部及び外側襟部を折り込んだ状態で着用できるため、多様なファッションを楽しめる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明にかかる実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服において、襟を立てた状態であり、(A)は正面図、(B)は左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服において、襟を立てた状態であり、(A)は右側面図、(B)は背面図である。
【
図3】
図3は、本発明にかかる実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の裁断片(表側)であり、(A)は襟部裁断片、(B)は左成形前身頃部裁断片、(C)は右成形前身頃部裁断片、(D)は主左前身頃部裁断片、(E)は主右成形前身頃部裁断片である。
【
図4】
図4は、本発明にかかる実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の後身頃部裁断片(裏側)である。
【
図5】
図5は、本発明にかかる実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服であり、一部の裁断片を縫合した説明図である。
【
図6】
図6は、本発明にかかる実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の襟を身頃下に隠した状態であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は背面図である。
【
図7】
図7は、本発明にかかる実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の縫合する際のミシン目の例であり、(A)は直線縫い、(B)はジグザグ縫い、(C)はシェル縫い、(D)は点線ジグザグ縫い、(E)は直線伸縮縫い、(F)はダブルオーバー縫いのシンボル図である。
【
図8】
図8は、本発明にかかる実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の
図5におけるY―Y線断面図である。
【
図9】
図9は、本発明にかかる実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の上に上着たるスーツを重ね着した場合の説明図である。
【
図10】
図10は、本発明にかかる実施例2の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の裁断片であり、(A)は第一襟部裁断片、(B)は左成形前身頃部裁断片、(C)は右成形前身頃部裁断片、(D)は左前身頃部裁断片、(E)は右成形前身頃部裁断片、(F)は第二襟部裁断片である。
【
図11】
図11は、本発明にかかる実施例2の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の第一襟を身頃下に折り返し、第二襟を立てた状態であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は背面図である。
【
図12】
図12は、本発明にかかる実施例3の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の、
図8と同様位置での断面図である。
【
図13】
図13は、本発明にかかる実施例4の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の裁断片であり、(A)は襟部と左成形前身頃部裁断片及び右成形前身頃部裁断片を一体化した裁断片、(B)は(A)の裁断片と左前身頃部裁断片と右前身頃部裁断片の関係を示した図である。
【
図14】
図14は、本発明にかかる実施例4の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服であり、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は左側面図、(D)は背面図である。
【
図15】
図15は、本発明にかかる実施例5の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の裁断図であり、(A)は襟部裁断片、(B)は左前身頃及び左後身頃の裁断片、(C)は右前身頃及び右後身頃の裁断片である。
【
図16】
図16は、本発明にかかる実施例5の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服であり、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は左側面図、(D)は背面図である。
【
図17】
図17は、本発明にかかる実施例6の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の裁断図であり、(A)は襟部裁断片、(B)は身頃部裁断片である。
【
図18】
図18は、本発明にかかる実施例6の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服であり、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は左側面図、(D)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服の最良の形態は、少なくとも、左前身頃部、右前身頃部、後身頃部、及び所定の高さを有する襟部を含み、少なくとも、前記襟部の中間部が前記後身頃部に縫合された衣服であって、首の側方の肩部から胸部中心線に対して斜め下向きであって、直線的な、前記左前身頃部、又は前記右前身頃部を構成する生地の結合部が形成されていることを特徴とする襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服であることが好ましい。
また、
少なくとも、左前身頃部、右前身頃部、後身頃部、及び所定の高さを有する襟部を含み、少なくとも、前記襟部の中間部が前記後身頃部に縫合された衣服であって、前記左前身頃部と右前身頃部の上端部に、斜辺部と当該斜辺部に相対する直線状の第一辺部と第二辺部により下端部に頂点を有する略三角形の左成形前身頃部、及び右成形前身頃部を配置し、前記斜辺部が首側方の肩部から胸部中心線に向かって下向きの直線状に縫合され、前記第一辺部は前記ファスナー部に縫合され、前記第二辺部は、前記襟部の端部に縫合され、前記左前身頃部と前記右前身頃部において、首の側方から前記ファスナー部)の間において直線的に斜めに縫合部が形成されていることを特徴とする襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服であることが好ましい。
さらに、
前記左成形前身頃部と前記左前身頃部との縫合部は、所定の幅で縫合されていることが好ましい。
さらにまた、
前記衣服は表裏反転着用可能なリバーシブル衣服であることが好ましい。
また、
前記襟部は、内側襟部と外側襟部の複数によって構成されることが好ましい。
さらに、
前記内側襟部よりも前記外側襟部の方が高さが高いことが好ましい。
【実施例0026】
本発明に係る実施例1を
図1~10を参照しつつ説明する。
図1は、実施例1の襟を身頃下に隠すことが可能な襟付き衣服100であり、本実施例1は、袖が無い短い胴着、所謂、防寒用ベストに適用した例である。以下、便宜的に実施例1において、第一ベスト102という。
しかし、本発明は袖を有する胴着、ジャケット等の衣服、裾が長い上着等にも採用することができる。
【0027】
実施例1の第一ベスト102の構成を
図1~
図8を参照しつつ説明する。
第一ベスト102は、大まかには、左前身頃部104、右前身頃部106、後身頃部108、襟部110、及びファスナー部112を含んでいる。なお、実施例1は防寒用の第一ベスト102であるから、左前身頃部104、右前身頃部106、後身頃部108、及び襟部110は、例えば
図8に示すように、表地と裏地を含み、それら表地と裏地との間に羽毛等の保温部材122が内包されているが、
図8の断面図を除き、図面上は表地と裏地を一体として表している。
【0028】
まず、左前身頃部104を主に
図1及び
図3を参照しつつ説明する。
左前身頃部104は、前身頃の左側部であり、着衣者の左胸部及び左腹部を覆う機能を有する。本実施例1において左前身頃部104は、主左前身頃部104Mと左成形前身頃部114によって構成され、大凡縦長長方形に形成されている。
【0029】
次に主左前身頃部104Mを説明する。
主左前身頃部104Mは、着衣者の左胸部の一部、及び左腹部を覆う機能を有する。本実施例1において、主左前身頃部104Mは、右端部の垂立する左前身頃右端部104Rにはファスナー部112の左ファスナー部112Lが結合され、同様に大凡垂立する左前身頃左端部104Lは、後身頃部108の後身頃左端部108Lに縫合等によって結合される。主左前身頃部104Mは、例えば、
図3(E)に示す裁断された左前身頃裁断片104Cを二枚重ね合わせ、内部に羽毛等の保温部材122を内包させて周縁を縫合することにより構成する。また、保温部材122の偏在を防止するため、移動防止ステッチ124を形成する。
左前身頃裁断片104Cは、大凡縦長長方形であるが、上部左側部に内向きの弧状の左腕繰り部104Aが形成され、上部右側部は左前身頃右端部104Rから左腕繰り部104A側に向かって右側に約60度傾いた大凡直線的な、左前身頃上斜辺部104Sに形成されている。換言すれば、左前身頃上部には、着衣者の首の左側方から右前身頃側の垂立する左前身頃右端部104Rへ斜め下方へ向かう直線的な、左前身頃部下向の左前身頃上斜辺部104Sが形成される。実施例1の左前身頃上斜辺部104Sは、弧状に形成されているが、本明細書にける直線的な範囲に含まれるものである。左前身頃上斜辺部104Sの上端と左腕繰り部104Aの上端は、直線的に右肩下がりの左肩斜辺部104Tに形成されている。
【0030】
次に左成形前身頃部114を説明する。
左成形前身頃部114は、左前身頃部104の一部を構成する機能を有する。具体的に左成形前身頃部114は、首部の左側から左側胸部上部の一部を覆う位置に配置される。本実施例1において、左成形前身頃部114は、下端に頂点を有する大凡直角三角形状を呈する。左成形前身頃部114は、例えば、
図3(C)に示す左成形前身頃裁断片114Cを二枚重ね合わせ、内部に羽毛等の保温部材122を内包させて周縁を縫合することにより構成する。また、保温部材122の偏在を防止するため、移動防止ステッチ124を形成することもできるが、本実施例1において、移動防止ステッチ124は形成されていない。左成形前身頃部114は、第一辺部たる垂立直線状の左成形垂立辺部114V、斜辺部たる直線状の左成形斜辺部114S、及び第二辺部たる弧状の左成形上辺部114Uによって、倒立三角形状に形成されている。左成形斜辺部114Sは、左前身頃上斜辺部104Sに合わせて弧状に形成されている。
【0031】
換言すれば、左成形斜辺部114S(斜辺部)と、左成形垂立辺部114V(第一辺部)、及び左成形上辺部114U (第二辺部)によって大凡三角形状に構成されている。そして、左成形斜辺部114S(斜辺部)と左成形垂立辺部114V(第一辺部)によって形成する鋭角の角部が下端に位置し、左成形垂立辺部114V(第一辺部)が着衣者の胸部中心線CL側に位置し、左成形上辺部114U (第二辺部)が着衣者の左首側方から左胸部前側へ延在する略三角形に形成される。詳細には、左成形垂立辺部114V(第一辺部)は、ファスナー部112の左ファスナー部112Lの上端部に縫合等によって結合され、直線状に垂立配置される。左成形斜辺部114S(斜辺部)は主左前身頃部104Mの左前身頃上斜辺部104Sに縫合等によって結合され、結合部たる左前身頃部結合部126Lが構成される。換言すれば、左前身頃部結合部126Lは左前身頃部縫合部である。詳述すれば、左前身頃部結合部126Lは、着衣者の首の左側の肩部S(左肩SL)から、着衣者の胸部中心線CL側へ下向きに直線的に傾斜する結合部である。本実施例1において、左前身頃部結合部126Lは、僅かに弧状に形成される。左成形上辺部114Uは、襟部110の襟左下端縁部110Lに縫合等によって結合され、左襟部結合部126NLが形成される。換言すれば、左前身頃部結合部126Lは、左前身頃部104の上部において、着衣者の首の側方の左肩部SLから胸部中心線Clに対して右肩下がりの斜め下向きであって、直線的な結合部である。
【0032】
これによって、主左前身頃部104Mの左前身頃上斜辺部104Sに左成形前身頃部114の左成形斜辺部114Sが縫合等によって結合されるので、左前身頃部104の右端部上部には、左ファスナー部112L側から約60度で正面視において右肩上がりに大凡直線的に傾斜する左前身頃部結合部126Lが形成される。左前身頃部結合部126Lは、縫合される場合、通常、ミシンにより機械縫合されるが、手縫いであってもよい。機械縫合は、
図7(A)~(F)に示すように、直線縫い、ジグザク縫い、シェル縫い、点線ジグザク縫い、直線伸縮縫い、ダブルオーバー縫い等、各種採用することができる。しかし、同図(B)~(F)に示すように、縫い目自体が所定の幅Wを有する縫い目であることが好ましい。左前身頃部結合部126Lが所定の幅Wを有することにより、折り曲げる際に、起点になりやすいからである。幅Wは、例えば、5mmが好ましい。したがって、
図9に示すように、この左前身頃部結合部126Lに沿って折り曲げた場合、スーツ128の左返り襟128LLに沿って折り曲げられた状態を容易に作ることができる。左前身頃部結合部126Lは、
図9に示すように、左胸の上部から左肩の中間へ斜めに、上着たるスーツ128の左返り襟128LLの下に隠れる位置に形成される。
【0033】
次に右前身頃部106を主に
図1及び
図3を参照しつつ説明する。
右前身頃部106は、前身頃の右側部であり、着衣者の右胸部及び右腹部を覆う機能を有する。本実施例1において右前身頃部106は、主右前身頃部106Mと右成形前身頃部116によって構成されている。
【0034】
次に主右前身頃部106Mを説明する。
主右前身頃部106Mは、着衣者の右胸部の一部、及び右腹部を覆う機能を有する。本実施例1において、主右前身頃部106Mは、左端部の垂立する右前身頃左端部106Lにはファスナー部112の右ファスナー部112Rが縫合等により結合され、同様に垂立する右端部の右前身頃右端部106Rは、後身頃部108の後身頃右端部108Rに縫合等によって結合される。主右前身頃部106Mは、例えば、
図3(D)に示す裁断された右前身頃裁断片106Cを二枚重ね合わせ、内部に羽毛等の保温部材122を内包させて周縁を縫合することにより構成される。また、保温部材の偏在を防止するため、移動防止ステッチ124を形成する。
右前身頃裁断片106Cは、
図3(D)に示すように、大凡縦長長方形であるが、上部右側部に内向きの弧状部の右腕繰り部106Aが形成され、上部左側部は右ファスナー部112Rから右腕繰り部106A側に向かって正面視において左側に約60度傾いた大凡直線的な右前身頃上斜辺部106Sに形成されている。本実施例1において、右前身頃上斜辺部106Sは弧状に形成されている。右前身頃上斜辺部106Sの上端と右腕繰り部106Aの上端は、正面視において直線的に右肩上がりの右肩斜辺部106Tに形成されている。
【0035】
次に右成形前身頃部116を説明する。
右成形前身頃部116は、右前身頃部106の着衣者の首の右側に近い一部を構成する機能を有する。具体的に右成形前身頃部116は、首部の右側から右側胸部上部の一部を覆う位置に配置される。本実施例1において、右成形前身頃部116は、下端に頂点を有する、大凡直角三角形状を呈する。右成形前身頃部116は、例えば、
図3(B)に示す裁断された右成形前身頃部裁断片116Cを二枚重ね合わせ、内部に羽毛等の保温部材122を内包させて周縁を縫合することにより構成する。また、保温部材122の偏在を防止するため、移動防止ステッチ124を形成することもできるが、本実施例1において、移動防止ステッチ124は形成されていない。右成形前身頃部116は、垂立直線状の右成形垂立辺部116V、直線状の右成形斜辺部116S、及び弧状の右成形上辺部116Uによって、倒立三角形状に形成されている。
【0036】
換言すれば、右成形斜辺部116S(斜辺部)と、右成形垂立辺部116V(第一辺部)、及び右成形上辺部116U (第二辺部)によって大凡三角形状に構成されている。そして、右成形斜辺部116S(斜辺部)と右成形垂立辺部116V(第一辺部)によって形成する鋭角の角部が下端に位置し、右成形垂立辺部116V(第一辺部)が着衣者の胸部中心線CL側に位置し、右成形上辺部116U (第二辺部)が着衣者の右首側方から右胸部側へ延在する略三角形に形成される。詳細には、右成形垂立辺部116V(第一辺部)は、ファスナー部112の右ファスナー部112Rの上端部に縫合等によって結合され、直線状に垂立配置される。右成形斜辺部116S(斜辺部)は主右前身頃部106Mの右前身頃上斜辺部106Sに縫合等によって結合され、結合部たる右前身頃部結合部126Rが構成される。換言すれば、右前身頃部結合部126Rは右前身頃部縫合部である。詳細には、右前身頃部結合部126Rは、着衣者の首の右側の右肩部SRから、着衣者の胸部中心線CL側へ下向きに直線的に傾斜する結合部である。本実施例1において、右前身頃部結合部126Rは、僅かに弧状に形成されている。右成形上辺部116Uは、襟部110の襟右下端縁部110Rに縫合等によって結合され、右襟部結合部126NRが形成される。換言すれば、右前身頃部結合部126Rは、正面視において、右前身頃部106の上部において、首の側方の右肩部SRから胸部中心線CLに対して右肩下がりの斜め下向きであって、直線的な結合部である。
【0037】
これによって、主右前身頃部106Mの右前身頃上斜辺部106Sに右成形前身頃部116の右成形斜辺部116Sが結合(縫合)されるので、右前身頃部106の左端部上部には、正面視において、約60度で左肩下がりに大凡直線的に傾斜する右前身頃部結合部126Rが形成される。右前身頃部結合部126Rは左前身頃部結合部126Lと同様に形成される。
図9に示すように、右前身頃部結合部126Rは、右胸の上部から首右側の右肩部SRへ斜めに、大凡スーツ128の右返り襟128RLに沿って延在している。したがって、この右前身頃部結合部126Rに沿って折り曲げた場合、スーツ128の右返り襟128RLに沿って折り曲げられた状態を容易に作ることができる。
よって、正面から見た場合、左前身頃部結合部126Lと右前身頃部結合部126Rは、胸部中心線CLを中心線として左右対称に形成され、左成形前身頃部114と右成形前身頃部116も同様に、左右対称に配置される。
【0038】
次に後身頃部108を主に
図2及び
図4を参照しつつ説明する。
後身頃部108は、着衣者の背中部を覆う機能を有する。本実施例1において後身頃部108は、垂立する後身頃右端部108Rが右前身頃部106の右前身頃右端部106Rに結合され、後身頃左端部108Lは左前身頃部104の左前身頃左端部104Lに結合される。後身頃部108は、例えば、
図4に示す裁断された後身頃裁断片108Cを二枚重ね合わせ、内部に羽毛等の保温部材122を内包させて周縁を縫合することにより構成する。また、保温部材122の偏在を防止するため、移動防止ステッチ124を形成する。
後身頃裁断片108Cは、大凡縦長長方形であるが、上部右側部に内向きの弧状部の後右腕繰り部108RAが形成され、後左腕繰り部108LAとして上部左側部に内向きの弧状部が形成されている。後身頃裁断片108Cの上中央部は下向き弧状の後首繰り部108NAが形成される。後首繰り部108NAの右端と後右腕繰り部108RAの上端は、直線状の右方下がりの後身頃右肩辺部108REによって接続される。後首繰り部108NAの左端と後左腕繰り部108LAの上端は、直線状の左下がりの後身頃左肩辺部108LEによって接続される。後身頃右肩辺部108REと右肩斜辺部106Tは同一長さである。後身頃左肩辺部108LEと左肩斜辺部104Tは同一長さである。
【0039】
次に襟部110を主に
図1~
図3を参照しつつ説明する。
襟部110は、着衣者の首回りに相対して配置され、首回りを覆う機能を有する。本実施例1において、襟部110は横長の長方形であって、その下端部は、左前身頃部104、右前身頃部106、及び後身頃部108の上端部に縫合される。本実施例1において、襟部110は、例えば、
図3(A)に示す横長長方形の襟部裁断片110Cを二枚重ね合わせ、内部に羽毛等の保温部材122を内包させて周縁を縫合することにより構成される。襟部110の襟中央部下端縁部110Mは後身頃部108の後首繰り部108NAに縫合等によって結合され、襟右下端縁部110Rは右成形前身頃部116の左成形上辺部114Uに縫合等によって結合され、襟左下端縁部110Lは右成形前身頃部116の右成形上辺部116Uに縫合等によって結合される。襟部110の襟左端部110LEは、左ファスナー部112Lの上端部に縫合等によって結合され、襟右端部110REは右ファスナー部112Rの上端部に縫合等によって結合される。
【0040】
次にファスナー部112を説明する。
ファスナー部112は、襟部110を含む左前身頃部104の右端部と、襟部110を含む右前身頃部106の左端部を係止する機能を有する。なお、襟部110のファスナー部112での係止は必須ではなく、左前身頃部104と右前身頃部106のファスナー部112での係止は、その全長ではなく、一部であってもよい。ファスナー部112は、締具,留具などの総称であり、一般的なスナップ,かぎホック、クリップ,スナップ,留め針,バックル,スライドファスナー(ジッパー(登録商標))なども含む。本実施例1においては、ジッパーである、左ファスナー部112Lと右ファスナー部112Rよりなるファスナー部112が用いられる。左ファスナー部112Lの下端部及び中間部は、左前身頃部104の左前身頃右端部104Rに結合され、上端部は左成形前身頃部114の左成形垂立辺部114Vと襟部110の襟左端部110LEに結合される。右ファスナー部112Rの下端部及び中間部は、右前身頃部106の右前身頃左端部106Lに結合され、上端部は右成形前身頃部116の右成形垂立辺部116Vと襟部110の襟右端部110REに結合される。
【0041】
第一ベスト102は、左前身頃部104、右前身頃部106、左成形前身頃部114、右成形前身頃部116、襟部110、及びファスナー部112を、個別に製作し、所定の部位どうしを縫合等によって結合し、完成品が製造される。
具体的には、主左前身頃部104Mの左前身頃上斜辺部104Sに、左成形前身頃部114の左成形斜辺部114Sを縫合等によって結合し、左前身頃部結合部126Lが形成される。したがって、主左前身頃部104Mと左成形前身頃部114によって左前身頃部104が構成される。また、同様に、主右前身頃部106Mの右前身頃上斜辺部106Sに、右成形前身頃部116の右成形斜辺部116Sが縫合等によって結合され、右前身頃部結合部126Rが形成される。したがって、主右前身頃部106Mと右成形前身頃部116によって右前身頃部106が構成される。
【0042】
次に、主左前身頃部104Mの左肩斜辺部104Tと後身頃部108の後身頃左肩辺部108LEを縫合等によって結合し、左肩部結合部126LSを形成する。同様に、主右前身頃部106Mの右肩斜辺部106Tと後身頃部108の後身頃右肩辺部108REを縫合等によって結合し、右肩部結合部126RSを形成する。
また、主左前身頃部104Mの左前身頃左端部104Lと後身頃部108の後身頃左端部108Lを縫合等によって結合し、左胴部結合部126LBを形成する(
図1(B))。同様に、主右前身頃部106Mの右前身頃右端部106Rと後身頃部108の後身頃右端部108Rを縫合等によって結合し、右胴部結合部126RBを形成する(
図2(A))。なお、左肩部結合部126LS、右肩部結合部126RS、左胴部結合部126LB、又は右胴部結合部126RBの形成の順番は、何れの順番であってもよい。
【0043】
次に、襟部110の下端部を左前身頃部104(左成形上辺部114U)、後身頃部108(後首繰り部108NA)、及び右前身頃部106(右成形上辺部116U)に縫合等によって結合し、襟部後部結合部126NB、左襟部結合部126NL、及び右襟部結合部126NRを形成する。具体的には、右成形上辺部116Uに襟右下端縁部110Rを縫合等よって結合し、右襟部結合部126NRを形成する。後首繰り部108NAに襟中央部下端縁部110Mを縫合等よって結合し、襟部後部結合部126NBを形成する。そして、左成形上辺部114Uに襟左下端縁部110Lを縫合等によって結合し、左襟部結合部126NLを形成する。
【0044】
次に、左ファスナー部112Lを左前身頃右端部104R、左成形垂立辺部114V、及び襟左端部110LEに縫合等によって結合する。次に、右ファスナー部112Rを右前身頃左端部106L、右成形垂立辺部116V、及び襟右端部110REに結合する。これによって、
図1及び
図2に示すように、襟部110が首回りを囲うように立った状態を呈する第一ベスト102が完成する。着衣者が襟部110が立った状態で第一ベスト102を着衣した場合、ファスナー部112を留め、又は開放した何れの場合においても、襟部110は首回りに立った状態で位置することになる。
【0045】
次に襟部110を身頃部の下側に折り込んだ状態を主に
図6を参照しつつ説明する。
襟部110が立った状態では外見上不都合がある場合、襟部110を身頃下に折り込んで第一ベスト102を着用する。
すなわち、
図6の各図に示すように、左成形前身頃部114、及び襟部110の一部(襟左下端縁部110L)を左前身頃部結合部126Lに沿って下方へ折り曲げ、主左前身頃部104Mの下側へ折り込む。右成形前身頃部116及び襟部110の一部(襟右下端縁部110R)を右前身頃部結合部126Rに沿って下方へ折り曲げ、主右前身頃部106Mの下側へ折り込む。襟部110の一部(襟中央部下端縁部110M)を左襟部結合部126NLに沿って下方へ折り曲げ、後身頃部108の下側へ折り込む。
【0046】
これにより、
図6に示すように、第一ベスト102は襟無しのベストになる。左成形前身頃部114及び襟部110の一部(襟左下端縁部110L)は、左前身頃部結合部126Lに沿って折り曲げられ、同様に、右成形前身頃部116及び襟部110の一部(襟右下端縁部110R)は、右前身頃部結合部126Rに沿って折り曲げられるので、容易に、かつ外見の見栄え良く折り込むことができる。また、左前身頃部結合部126Lは、左前身頃部の上下方向の中間まで、及び右前身頃部結合部126Rは、右前身頃部106の上下方向の中間まで達している。よって、
図9に示すように、スーツ128を着用した場合、左前身頃部104及び右前身頃部106は、スーツ128の下方に位置するので、見栄えが良い利点がある。
【0047】
なお、一状態において表側に位置する、右前身頃部106(主右前身頃部106M及び右成形前身頃部116)、左前身頃部104(主左前身頃部104M及び左成形前身頃部114)、後身頃部108、及び襟部110を同一配色(模様を含む)とし、裏側に位置する右前身頃部106、左前身頃部104、後身頃部108、及び襟部110を異なる配色(模様を含む)として構成することにより、表地着用と裏地着用、所謂、リバーシブル衣服にすることが好ましい。一着で表側又は裏側の異なるファッションを楽しむことができるからである。
したがって、例えば、第一襟部111を表側(外側襟部)位置、第二襟部132を裏側(内側襟部)に配置した場合、2つの襟付きベスト130を表側で着用した際には、第二襟部132は第一襟部111よりも内側に位置し、着用者の首に接する状態となり、外見上は見えない。2つの襟付きベスト130を裏返した場合(リバーシブル)、第二襟部132は外側襟部になり、第一襟部111は内側襟部となる。この場合、第一襟部111と第二襟部132の両方を立てた状態で着用しても良いし、第一襟部111を実施例1のように身頃下に折り込んで着用してもよい。なお、第一襟部111と第二襟部132は、同じ高さにすることもできる。第一襟部111と第二襟部132をリバーシブル可能な襟付き衣服100に採用することにより、一着の襟付き衣服100で多様なファッションを楽しむことができる利点がある。