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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033394
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】基板接続コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/55 20110101AFI20220222BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20220222BHJP
【FI】
H01R12/55
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137239
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】細田 翔平
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AC11
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB25
5E223DB33
5E223DB36
5E223EA03
(57)【要約】
【課題】基板間を接続する従来のコネクタは、携帯端末等の小型電子機器内の基板に実装されるため、非常に小さなコネクタである。ハウジングに埋め込まれる複数の端子自体が小さいと、それら端子とハウジングとをインサート成形する際に、ハウジングから露出させる端子又は金属部材の一部分を十分に金型又は固定冶具等で隙間なく覆うことができないことがあるため、当該一部分への樹脂の流れ込みを防ぐことができない。
【解決手段】ハウジングの側壁に保持される複数の端子又は金属部材等の金具において、ハウジングの側壁に保持された固定部の側面に、固定部の幅を広げるように構成された傾斜を備えた肩部を設けたことで、金型又は固定冶具等で金具の側面を支持する際に、固定部の幅を広げた肩部が金型又は固定冶具等による支持に適した突起となり、金具を隙間なく十分に支持することができ、インサート成形によるハウジングの形成に適した金具を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタに用いられる金具であって、
前記コネクタのハウジングの側壁に設けられた固定部と、
前記ハウジングの側壁に設けられ、前記固定部よりも前記側壁から突出した突出部と
を含み、
前記固定部は、前記突出部よりも幅広であり、
前記固定部は、一対の肩部を前記固定部の両側側面に有し、
前記肩部は、前記固定部と前記突出部との間の側面に設けられたこと
を特徴とする金具。
【請求項2】
前記肩部は、前記固定部の幅を広げるように傾斜状に形成されたこと
を特徴とする請求項1に記載の金具。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の金具は、前記コネクタに用いられる端子であり、
前記端子は、相手コネクタの相手端子との接点となる可動接点を備えた可動部と、
前記可動部と前記固定部との間をつなぐ底部と
を含み、
前記突出部は、前記可動部と対向し、前記相手コネクタの相手端子との接点となる固定接点として機能すること
を特徴とする端子。
【請求項4】
前記請求項1又は2に記載の金具は、前記コネクタに用いられる付加部材であり、
前記付加部材は、第1ロック部と第2ロック部とを含み、
前記突出部は、少なくとも前記第1ロック部及び前記第2ロック部のいずれかであり、
前記第1ロック部は、両側に、前記第1ロック部とは直交する方向に延在する前記第2ロック部を備えたこと
を特徴とする付加部材。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の金具と、
ハウジングと
を含み
前記ハウジングは、側壁部と、底壁と、前記側壁部と前記底壁とで形成される受容部とを有し、
前記金具の一部分を前記側壁部に埋設し、前記金具の側面の少なくとも一部を前記側壁部から前記受容部に向けて露出させたことを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
前記肩部の少なくとも一部は、嵌合方向から視認可能であることを特徴とする請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
複数のレセプタクル端子と、相手コネクタとの嵌合状態を維持するためのレセ付加部材と、レセプタクルハウジングとを含むレセプタクルコネクタであって、
前記レセプタクルハウジングは、第1側壁部と第2側壁部とを含み、
前記レセ付加部材は、前記第1側壁部に設けられた第1レセ固定部と、前記第1側壁部に設けられ、前記第1レセ固定部よりも前記第1側壁部から突出した第1レセロック部と、前記第2側壁部に設けられた第2レセ固定部と、前記第2側壁部に設けられ、前記第2レセ固定部よりも前記第2側壁部から突出した第2レセロック部と、
を含み、
前記第1レセ固定部は、前記第1レセロック部よりも幅広であり、
前記第2レセ固定部は、前記第2レセロック部よりも幅広であり、
前記第1レセ固定部は、前記第1レセ固定部と前記第1レセロック部との間の両側側面に、一対の肩部を有し、
前記第2レセ固定部は、前記第2レセ固定部と前記第2レセロック部との間の両側側面に、一対の肩部を有し、
前記レセ付加部材は、前記第1レセロック部の両側に、前記第1レセロック部とは直交する方向に延在する前記第2レセロック部を備えたこと
を特徴とするレセプタクルコネクタ。
【請求項8】
複数のプラグ端子と、相手コネクタとの嵌合状態を維持するためのプラグ付加部材と、プラグハウジングとを含むプラグコネクタであって、
前記プラグハウジングは、第1側壁部と第2側壁部とを含み、
前記プラグ付加部材は、前記第2側壁部に設けられたプラグ固定部と、前記第2側壁部に設けられ、前記プラグ固定部よりも前記第2側壁部から突出した突出部と、
を含み、
前記プラグ固定部は、前記突出部よりも幅広であり、
前記プラグ固定部は、前記プラグ固定部と前記突出部との間の両側側面に、一対の肩部を有すること
ことを特徴とするプラグコネクタ。
【請求項9】
請求項5又は6に記載のコネクタを製造するコネクタ製造方法であって、
固定冶具によって前記金具を下部金型に載置する工程と、
前記金具が載置された前記下部金型に、前記金具を内部に収納可能なように構成された上部金型を被せることで、前記金具を前記上部金型の内部に入れて、前記金具の前記肩部の各々を前記上部金型で押さえる工程と、
前記下部金型と前記上部金型との間の空間に、ハウジングを形成するための絶縁性の樹脂を注入する工程と、
前記樹脂を硬化する工程と、
前記上部金型及び前記下部金型を取り外して、前記樹脂を硬化して形作られ、前記金具を保持するハウジングを取り出す工程と
を含むことを特徴とするコネクタ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端子やロック機構を備えた金属部材等の金具が保持されたハウジングを備えたコネクタを製造する際に、各種金具とハウジングとをインサート成形(一体成形)するのに適した金具の構造に関する。具体的には、コネクタ製造時に金型において各種金具を固定し、ハウジングを成形する絶縁体である樹脂を金型に流し込む際に、樹脂が意図しない位置に流れ込むことを防いで、設計したとおりに金具の一部分を覆うことに適した金属部材等の金具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の端子がハウジングにインサート成形(一体成形)等により配列保持され、基板間を接続する基板接続コネクタとして、例えば、特開2020-031025号公報(特許文献1)に開示されているコネクタがある。当該コネクタは、プラグ側のコネクタ(プラグコネクタ)と接続されるレセプタクル側のコネクタ(レセプタクルコネクタ)であり、複数の端子を長手方向に配列保持した、長方形状のハウジングを備える。
【0003】
プラグコネクタ及びレセプタクルコネクタは、それぞれプリント配線基板又はフレキシブルフラットケーブル等に設けることができる。例えば、表面実装等でプリント配線基板に設けられたレセプタクルコネクタと、フレキシブルフラットケーブルの端部に設けられたプラグコネクタとを互いに嵌合することで、基板間を接続することができる。
【0004】
従来、コネクタ同士を接続した状態を維持するために、各コネクタは、互いに嵌り合う構造を有している。例えば、先に述べた先行例(特許文献1)のプラグコネクタ及びレセプタクルコネクタでは、複数の端子の他に、該複数の端子の列を間に挟んで、長手方向の両側に金属部材を備えている。レセプタクルコネクタの内側を向いた金属部材の一部分には、凸状の付加部材が設けられ、プラグコネクタの外側を向いた金属部材の一部分には、凹部が設けられ、コネクタ同士の嵌合時に、凸状の付加部材が、凹部に嵌ることで、プラグコネクタの金属部材とレセプタクルコネクタの金属部材とが電気的に接続した状態を維持することができる。
【0005】
このようなプラグコネクタ及びレセプタクルコネクタのハウジングは、インサート成形によって、複数の端子等の金属部材が埋め込まれて形成される。インサート成形では、一般的に、金型、固定冶具等によってハウジングの長手方向になり得る方向に端子を配列し、長手方向の両端部にロック機構を備えた金属部材(付加部材)等を配置し、次に、金型によって定められた空間に絶縁体である樹脂を流し込むことで端子及び付加部材等の金具の一部分を樹脂で覆って、最後に、樹脂を硬化させることで、複数の端子及び付加部材等の金具が埋め込まれて保持されたハウジングが形成される。
【0006】
複数の端子及び付加部材等の金具においてハウジングの樹脂から露出する部分は、樹脂で覆われないように金型や固定冶具等で樹脂の流れ込みを防いでいる。このように、ハウジングの設計に基づいて作られた金型、固定冶具等によって、複数の端子及び付加部材等の金具の表面上の樹脂の流れを制御することで、ハウジングにおいて、金具の表面を樹脂で覆った部分と樹脂から露出させた部分とを分けて形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-031025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基板間を接続する従来のプラグコネクタ及びレセプタクルコネクタは、スマートフォン、携帯端末等の小型電子機器内の基板に実装されるため、非常に小さなコネクタであり、その部品である複数の端子やその他の金属部材等の金具も非常に小さく、金型、固定冶具等でそれら端子を保持して固定し、インサート成形によって、設計どおりにハウジングを形成することは、一般的にコネクタのサイズが小さいほどその難易度が上がる。例えば、ハウジングに埋め込まれる複数の端子の他の金属部材等の金具自体が小さいと、それら金具とハウジングとをインサート成形する際に、ハウジングから露出させる金具の一部分を十分に金型又は固定冶具等で隙間なく覆うことができないことがあるため、当該一部分への樹脂の流れ込みを防ぐことができない。
【0009】
例えば、特許文献1に記載の従来のレセプタクルコネクタのハウジングに埋め込まれる複数の端子の各々では、ハウジングの樹脂から内側に露出した端子の一部分(相手端子との接触部を備えたバネ部に向かい合った対向部)の両側側面が平坦である。そのため、金型又は固定冶具等で端子を支持する際に、端子の平坦な側面には支持に適した突起等の引っ掛かりがないため、金型又は固定冶具等との隙間がなく端子を十分に支持することができず、インサート成形の際に樹脂がその隙間から流れ込み、本来ならハウジングから露出させる端子の表面を覆ってしまうという問題が生じる。端子の平坦な側面と金型又は固定冶具等との隙間は、例えば、端子の製造上の誤差等の様々な要因によって端子の平坦な側面に歪等が生じた場合に引き起こされる。その他の金属部材等の金具についても、同様の問題が生じ得る。
【0010】
以上のような課題を解決するために、プラグコネクタ又はレセプタクルコネクタのハウジングの側壁に保持された複数の端子又は金属部材等の金具において、ハウジングの側壁に保持された固定部の側面に、固定部の幅を広げるように構成された傾斜を備えた肩部を設けたことで、金型又は固定冶具等で金具の側面を支持する際に、固定部の幅を広げた肩部が金型又は固定冶具等による支持に適した突起となり、金具を隙間なく十分に支持することができ、インサート成形によるハウジングの形成に適した金具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの実施形態に係るコネクタに用いられる金具は、
前記コネクタのハウジングの側壁に設けられた固定部と、
前記ハウジングの側壁に設けられ、前記固定部よりも前記側壁から突出した突出部と
を含み、
前記固定部は、前記突出部よりも幅広であり、
前記固定部は、一対の肩部を前記固定部の両側側面に有し、
前記肩部は、前記固定部と前記突出部との間の側面に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
プラグコネクタ又はレセプタクルコネクタのハウジングの側壁に保持された複数の端子又は金属部材等の金具において、ハウジングの側壁に保持された固定部の側面に、固定部の幅を広げるように構成された傾斜を備えた肩部を設けたことで、金型又は固定冶具等で金具の側面を支持する際に、固定部の幅を広げた肩部が金型又は固定冶具等による支持に適した突起となり、金具を隙間なく十分に支持することができ、インサート成形の際に絶縁体の樹脂が意図しない部分に流れ込むことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るプラグコネクタとレセプタクルコネクタを、プラグ側からみた斜視図である。
図2図1に示したプラグコネクタ及びレセプタクルコネクタのそれぞれに含まれるプラグ付加部材及びレセ付加部材のみを示した図である。
図3】本発明の一実施形態に係るプラグコネクタとレセプタクルコネクタを、側面からみた側面図である。
図4図3に示した切断箇所A-Aで切断したプラグ端子及びレセプタクル端子の断面図である。
図5図3に示した切断箇所B-Bで切断した電源端子及び電源端子が接触する部分の断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るプラグコネクタとレセプタクルコネクタを、レセプタクル側からみた斜視図である。
図7図6に示したプラグコネクタ及びレセプタクルコネクタのそれぞれに含まれるプラグ付加部材及びレセ付加部材のみを示した図である。
図8】レセプタクルコネクタを示す上面図である。
図9図8に示した切断箇所C-Cで切断したレセプタクルコネクタの断面図である。
図10】プラグコネクタを示す上面図である。
図11図10に示した切断箇所D-Dで切断したプラグコネクタの断面図である。
図12図8に示した点線E-Eで囲まれたレセプタクルコネクタに含まれる付加部材の一部分を切り出し、当該一部分にインサート成形でハウジングを形成するための金型を示す外観図である。
図13図12に示した下部金型に付加部材の一部分を載置した状態を示す図である。
図14図13に示した下部金型に載置された付加部材を上部金型で覆った状態を示す斜視図である。
図15図14に示した切断箇所G-Gで上部金型を切断した断面を示す斜視図である。
図16図14に示した切断箇所G-Gで上部金型を切断した断面を示す側面図である。
図17】上部金型の内側を示す図である。
図18図14に示した下部金型に載置された付加部材を上部金型で覆った状態を側面からみた側面図である。
図19図18に示した切断箇所H-Hで金型及び付加部材を切断した断面を示す断面図である。
図20】インサート成形後に金型を取り除いてレセプタクルコネクタのハウジングに保持された付加部材の一部分を示す図である。
図21図20から金具である付加部材を除いたハウジングの一部分を示す図である。
図22】本発明の別の実施形態に係るプラグコネクタの外観を示す斜視図である。
図23図22に示した切断箇所I-Iで切断したプラグコネクタの付加部材の断面を示す斜視図である。
図24図22に示した切断箇所I-Iで切断したプラグコネクタの付加部材の断面を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、実施の形態を説明するための全ての図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、本発明の一実施形態に係るプラグコネクタ又はレセプタクルコネクタの構成、形状は、嵌合方向(Z軸方向)の中止軸を対称点として点対称の関係にあるから、符号が付された部分、部材、部品等に対して点対称である部分、部材、部品等については、基本的には、同一の符号を付すことを省略する。さらに、それぞれの実施形態は、独立して説明されているが、互いの構成要素を組み合わせて、プラグコネクタ又はレセプタクルコネクタを構成することを排除するものではない。また、プラグコネクタ及びレセプタクルコネクタからなる構成を、コネクタ装置とも呼ぶ。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲においては、2つのコネクタを区別するために、プラグコネクタ及びレセプタクルコネクタと呼び、各々の部材又は部品等を、プラグハウジングとレセプタクルハウジング、プラグ端子とレセプタクル端子、第1プラグロック部と第1レセロック部、第2プラグロック部と第2レセロック部、プラグ固定部とレセ固定部等と呼んでいるが、コネクタの形状で区別せずに呼ぶ場合には、プラグ及びレセプタクル(レセ)との表現を省略して、単にコネクタ、ハウジング、端子、第1ロック部、第2ロック部、固定部等と呼ぶことにする。また、コネクタの形状で区別せずに呼ぶ場合には、第1プラグロック部と第1レセロック部を第1突出部とも呼び、第2プラグロック部と第2レセロック部を第2突出部とも呼ぶ。また、第1ロック部及び第2ロック部を単に、突出部とも呼ぶ。
【0016】
また、コネクタの形状で区別しない場合には、一方のコネクタと嵌合する他方のコネクタを相手コネクタと呼び、相手コネクタの第1ロック部及び第2ロック部を第1相手ロック部及び第2相手ロック部と呼ぶことにする。さらに、プラグ端子、レセプタクル端子、プラグ付加部材、レセ付加部材等の金属製部材を、単に金具とも呼ぶ。
【0017】
図1から図7は、本発明の1つの実施形態に係るプラグコネクタ及びレセプタクルコネクタを示す。図1は、本発明の一実施形態に係るプラグコネクタ及びレセプタクルコネクタを、プラグ側(Z2側)から見た時のそれぞれのコネクタの外観を示す。図2は、図1に示したプラグコネクタ及びレセプタクルのそれぞれに含まれるプラグ付加部材及びレセ付加部材のみを示す。図3は、本発明の一実施形態に係るプラグコネクタとレセプタクルコネクタを、側面(Y1側)からみた側面図であり、図4は、図3に示した切断箇所A-Aで切断したプラグ端子及びレセプタクル端子の断面を示し、図5は、図3に示した切断箇所B-Bで切断した電源端子及び電源端子が接触する部分の断面を示す。また、図6は、図1とは上下が逆転し、レセプタクルコネクタ側(Z1側)から見た時のそれぞれのコネクタの外観を示す。図7は、図6に示したプラグコネクタ及びレセプタクルのそれぞれに含まれるプラグ付加部材及びレセ付加部材のみを示す。
【0018】
本発明のプラグコネクタ及びレセプタクルは、例えば、携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラ、ノートパソコンなどの小型電子機器における内部部品として使用することができる。コネクタの嵌合方向は、図中のZ1―Z2方向(Z軸方向)である。コネクタ嵌合状態における嵌合方向(Z軸方向)の長さは、0.3~1mm程度であり、本実施形態のコネクタ装置においては0.5mm程度である。プラグコネクタ200は、Z軸方向のZ1側にある相手コネクタであるレセプタクルコネクタ100と嵌合し、レセプタクルコネクタ100は、Z軸方向のZ2側にある相手コネクタであるプラグコネクタ200と嵌合し、それぞれ電気的に接続される。本発明において、矩形状のコネクタの長手方向はX1―X2方向(X軸方向)であり、長手方向(X軸方向)と直交する短手方向はY1―Y2方向(Y軸方向)である。
【0019】
また、レセプタクルコネクタ100及びレセプタクル端子120における上下について、基板側(基板に取り付けられる側)を「下」又は「裏」とし、プラグコネクタ200及びプラグ端子220を受け入れる側を「上」又は「表」とする。同様に、プラグコネクタ200及びプラグ端子220における上下について、基板側(基板に取り付けられる側)を「下」又は「裏」とし、レセプタクルコネクタ100及びレセプタクル端子120を受け入れる側を「上」又は「表」とする。
【0020】
レセプタクルコネクタ100及びプラグコネクタ200は、プリント配線基板又はフレキシブルフラットケーブル等に半田付けされて実装される。ここでは、プリント配線基板及びフレキシブルフラットケーブル等、コネクタが実装されるものを、単に「基板」と呼ぶ。図1に示されるように、レセプタクルコネクタ100は基板300に実装され、図6に示されるように、プラグコネクタ200は基板400に実装される。
【0021】
まず、図1及び図2を主に参照して、レセプタクルコネクタ100の構成について説明する。レセプタクルコネクタ100は、レセプタクルハウジング110と、レセプタクル端子120と、相手コネクタであるプラグコネクタ200との嵌合状態を維持するためのレセ付加部材150とを含む。レセプタクル端子120は、リン青銅等の金属からなり、レセプタクルハウジング110の長手方向(X軸方向)に延在した第2側壁部114に埋め込まれて、相手端子であるプラグ端子220と接触する表面を第2側壁部114から露出させてレセプタクルハウジング110に保持される。レセプタクル端子120は、半田付け等により基板300に取り付けるための実装部121を端部に備える。
【0022】
レセプタクルハウジング110は、液晶ポリマー(LCP)等の絶縁性の樹脂からなり、短手方向(Y軸方向)に延在した一対の第1側壁部112及び長手方向(X軸方向)に延在した一対の第2側壁部114を備え、第1側壁部112及び第2側壁部114に囲まれた中央部分に長手方向(X軸方向)に延在した嵌合凸部116を備える。つまり、レセプタクルハウジング110は、レセプタクル端子120の可動部127側に、嵌合凸部116と、レセプタクル端子120の端子固定部125側に第2側壁部114を含む。また、レセプタクルハウジング110は、嵌合凸部116と第1側壁部112及び第2側壁部114との間に空間としての受容部118を備え、受容部118の基板側(Z1側)は、底壁119によって塞がれている。すなわち、第1側壁部112及び第2側壁部114と底壁119とによって規定され、相手コネクタとの嵌合側(Z2側)に向けて開放された空間として受容部118が形成されており、この受容部118の内部に嵌合凸部116が配置されている。
【0023】
レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ200とが接続した際には、レセプタクルコネクタ100の嵌合凸部116は、プラグコネクタ200の嵌合凹部216(図6参照)に収容され、プラグコネクタ200の第1側壁部212及び第2側壁部214(図6参照)は、レセプタクルコネクタ100の受容部118に収容される。
【0024】
ここで、図1及び図2に加えて、図4を参照すると、レセプタクル端子120は、実装部121から上方(Z軸方向のZ2側)に折れ曲がった部分を介して脚部122を備える。脚部122は、固定接点124及び端子固定部125とレセプタクルハウジング110の第2側壁部114を挟んで対向し、脚部122と固定接点124及び端子固定部125との間は、第2側壁部114の上端に位置する頂部123を介してつながっている。
【0025】
脚部122の周囲は、頂部123に隣接する部分を除いて、すべてレセプタクルハウジング110の樹脂(周壁部113と第2側壁部114の樹脂)に覆われている。すなわち、脚部122は、頂部123に隣接する部分を除いて、第1側壁部112及び第2側壁部114を囲む周壁部113によって、第2側壁部114に埋め込まれて、レセプタクルハウジング110に保持される。脚部122、頂部123、固定接点124及び端子固定部125の裏面(相手端子に接触する面とは反対側の面)は、第2側壁部114によって支持される。つまり、レセプタクル端子120の脚部122及び端子固定部125は、それぞれ対向する面を第2側壁部114によって支持される。
【0026】
レセプタクル端子120の固定接点124は、第2側壁部114の表面よりも嵌合凸部116側に突出し、固定接点124の接点側面129が第2側壁部114から露出している。固定接点124は、相手端子であるプラグ端子220との嵌合状態において、外側脚部225に当接し電気的に接続される(図4参照)。固定接点124及び端子固定部125は、相手端子との嵌合の際に動くことがないように、相手端子と接触する面とは反対側の面を第1側壁部112によって支持されて固定される。
【0027】
図4に示す断面図からも明らかなように、レセプタクル端子120は、レセプタクルハウジング110とのインサート成形(一体成形)により、可動部127側の部分以外は、レセプタクルハウジング110に密着している。また、レセプタクル端子120の脚部122、頂部123、固定接点124及び端子固定部125で囲まれた空間は、樹脂(ハウジング)が充填されている。
【0028】
レセプタクル端子120は、端子固定部125と可動部127との間に、それらとつながっている底部126を含む。底部126は、レセプタクルコネクタ100の短手方向(Y軸方向)に延び、直角に折れ曲がった部分を介して端子固定部125及び可動部127につながっている。底部126の板厚方向は、嵌合方向(Z軸方向)に沿っており、底部126の受容部118側の面(Z2側の面)は、レセプタクルハウジング110の底壁119から露出している。底部126の基板側(相手端子を受け入れる面(Z2側の面)とは反対側(Z1側))の面(つまり、裏面)の一部分は、レセプタクルハウジング110の底壁119の裏面から露出し、露出した部分以外の部分は、第2側壁部114及び嵌合凸部116付近の樹脂によって支持される(図6参照)。そのため、底壁の裏面側から可動部127は視認できない。
【0029】
可動部127は、嵌合凸部116の側壁には触れておらず自由端であり、端部周辺を固定接点124側に突出させて形成された可動接点128を含む。可動部127は、相手端子であるプラグ端子220を受け入れて嵌合する際に、弾性により嵌合凸部116側に押されて変形し、嵌合状態において、可動接点128は、プラグ端子220の内側脚部222に当接し電気的に接続される。
【0030】
レセ付加部材150は、レセプタクル端子120が保持された第2側壁部114の中央部分を間に挟んで、レセプタクルコネクタ100の両側に配置される。つまり、レセ付加部材150は、レセプタクルコネクタ100の長手方向(X軸方向)両側の端に、それぞれ設けられる。レセ付加部材150は、1つの突出部である第1レセロック部154と、一対の突出部である第2レセロック部155とを含む。レセプタクルハウジング110は、第1レセロック部154を第1側壁部112で保持し、第2レセロック部155を第2側壁部114で保持する。レセ付加部材150は、第1側壁部112に保持された第1レセロック部154の両側(Y1及びY2側)に、第1レセロック部154とは直交する方向(X軸方向)に延在する第2レセロック部155を備える。すなわち、第1レセロック部154は、短手方向(Y軸方向)において、一対の第2レセロック部155の間に位置する。第1レセロック部154を備える部分と第2レセロック部155を備える部分とは、レセ連結部165を介してつながっている。レセ連結部165は、レセプタクルハウジング110に埋設されている。
【0031】
ここで、図1及び図2に加えて、図8及び図9も合わせて参照しながら、本発明の一実施形態に係るレセプタクルコネクタの構成について説明する。図8は、本発明の一実施形態に係るレセプタクルコネクタを上方からみた上面図であり、図9図8に示した切断箇所C-Cで切断したレセプタクルコネクタの断面図である。
【0032】
レセ付加部材150は、半田付け等により基板300に取り付けるための実装部151A,151Bを備えており、実装部151A,151Bから上方(Z軸方向のZ2側)に折れ曲がった部分を介してレセ脚部152A,152Bを備える。第1レセロック部154及びレセ脚部152Aは、第1側壁部112を挟んで対向し、第1レセロック部154とレセ脚部152Aとの間は、第1側壁部112の端部に位置する頂部153Aを介してつながっている。同様に、第2レセロック部155及びレセ脚部152Bは、第2側壁部114を挟んで対向し、第2レセロック部155とレセ脚部152Bとの間は、第2側壁部114の端部に位置する頂部153Bを介してつながっている。
【0033】
第1レセロック部154は、レセ脚部152Aを介して実装部151Aとつながっており、実装部151Aを半田付け等により基板300に取り付けることで、コネクタ同士の接続の際に、レセ付加部材150に加わる力に耐えることができる。同様に、第2レセロック部155は、レセ脚部152Bを介して実装部151Bとつながっており、実装部151Bを半田付け等により基板300に取り付けることで、コネクタ同士の接続の際に、レセ付加部材150に加わる力に耐えることができる。
【0034】
レセ脚部152A,152Bの周囲は、頂部153A,153Bに隣接する部分を除いて、すべてレセプタクルハウジング110の樹脂に覆われている。すなわち、レセ脚部152A,152Bは、頂部153A,153Bに隣接する部分を除いて、第1側壁部112及び第2側壁部114を囲む周壁部113によって、第1側壁部112及び第2側壁部114に埋め込まれて、レセプタクルハウジング110に保持される。レセ脚部152A、頂部153A及び第1レセロック部154の裏面は、第1側壁部112によって支持され、レセ脚部152B、頂部153B及び第2レセロック部155の裏面は、第2側壁部114によって支持される。
【0035】
第1レセロック部154は、第1側壁部112の表面から突出した曲面となるように構成され、短手方向(Y軸方向)と直交する断面形状が同じ曲面として短手方向(Y軸方向)に延在している。第2レセロック部155は、第2側壁部114の表面から突出した曲面となるように構成され、長手方向(X軸方向)と直交する断面形状が同じ曲面として長手方向(X軸方向)に延在している。第1レセロック部154及び第2レセロック部155は、それぞれ第1側壁部112及び第2側壁部114からレセロック側面159A,159Bを露出する。レセ付加部材150は、第1レセロック部154及び第2レセロック部155が設けられた位置よりもレセプタクルハウジング110の底側(Z1側)に、第1レセロック部154及び第2レセロック部155よりも第1側壁部112及び第2側壁部114側に位置するレセ固定部156A,156B(第1レセ固定部、第2レセ固定部)をそれぞれ備える。なお、レセロック側面159Aの底壁119側(Z1側)には、後述する肩部166(図20参照)が形成され、レセロック側面159Aと肩部166とは連続した面である。レセロック側面159Bについても、レセロック側面159Aと同様の構成である。
【0036】
レセ付加部材150は、第1レセロック部154に対向してT字部158を含み、T字部158は、底部157、第1レセ固定部156Aを介して第1レセロック部154とつながっている。T字部158は、嵌合方向(Z軸方向)に延在する嵌合部固定片161によって、嵌合凸部116の長手方向(X軸方向)の端部分の側壁を覆うように保持され、レセ付加部材150をレセプタクルハウジング110に固定することができる。底部157、第1レセ固定部156A及び嵌合部固定片161はレセプタクルハウジング110から露出した状態で受容部118に面している。また、レセ付加部材150は、レセプタクル端子120に隣接する側(X1側のレセ付加部材150のX2側、X2側のレセ付加部材150のX1側)に、電源端子160を備える。電源端子160は、数アンペア程度の電力を供給するための端子である。レセ付加部材150の電源端子160は、レセプタクル端子120の両側(X1側及びX2側)に等間隔に配列される。
【0037】
ここで、図1及び図2に加えて、図5を参照すると、レセ付加部材150のレセ脚部152Bは、第2レセロック部155及び第2レセ固定部156Bとレセプタクルハウジング110の第2側壁部114を挟んで対向し、レセ脚部152Bと第2レセロック部155及び第2レセ固定部156Bとの間は、第2側壁部114の上端に位置する頂部153Bを介してつながっている。
【0038】
レセ脚部152Bの周囲は、頂部153Bに隣接する部分を除いて、すべてレセプタクルハウジング110の樹脂(周壁部113と第2側壁部114の樹脂)に覆われている。すなわち、レセ脚部152Bは、頂部153Bに隣接する部分を除いて、第1側壁部112及び第2側壁部114を囲む周壁部113によって、第2側壁部114に埋め込まれて、レセプタクルハウジング110に保持される。レセ脚部152B、頂部153B、第2レセロック部155及び第2レセ固定部156Bの裏面(第2プラグロック部235に接触する面とは反対側の面)は、第2側壁部114によって支持される。つまり、レセ付加部材150の第2レセロック部155側のレセ脚部152B及び第2レセ固定部156Bは、それぞれ対向する面を第2側壁部114によって支持される。
【0039】
電源端子160は、第2レセ固定部156Bから嵌合凸部116に向けて延出し、第2レセ固定部156Bと可動部163との間に、それらとつながっている底部162を含む。底部162は、レセプタクルコネクタ100の短手方向(Y軸方向)に延び、直角に折れ曲がった部分を介して第2レセ固定部156B及び可動部163につながっている。底部162の基板側(相手端子を受け入れる面(Z2側の面)とは反対側(Z1側))の面(つまり、裏面)の一部分は、レセプタクルハウジング110の裏面から露出し、露出した部分以外の部分は、第2側壁部114及び嵌合凸部116付近の樹脂によって支持される(図5及び6参照)。
【0040】
図5に示す断面図からも明らかなように、レセ付加部材150は、レセプタクルハウジング110とのインサート成形(一体成形)により、電源端子160の可動部163側の部分以外は、レセプタクルハウジング110に密着している。また、レセ付加部材150のレセ脚部152B、頂部153B、第2レセロック部155及び第2レセ固定部156Bで囲まれた空間は、樹脂(ハウジング)が充填されている。
【0041】
可動部163は、嵌合凸部116の側壁には触れておらず自由端であり、端部周辺を第2レセロック部155側に突出させて形成された可動接点164を含む。可動部163は、相手付加部材であるプラグ付加部材230を受け入れて嵌合する際に、弾性により嵌合凸部116側に押されて変形し、嵌合状態において、可動接点164は、プラグ付加部材230のプラグ固定部232に当接し電気的に接続される。
【0042】
次に、図6及び図7を主に参照して、プラグコネクタ200の構成について説明する。プラグコネクタ200は、プラグハウジング210と、プラグ端子220端子と、相手コネクタであるレセプタクルコネクタ100との嵌合状態を維持するためのプラグ付加部材230とを含む。プラグ端子220は、リン青銅等の金属からなり、プラグハウジング210の長手方向(X軸方向)に延在した第2側壁部214に埋め込まれて、レセプタクル端子120と接触する表面を第2側壁部214から露出させて、プラグハウジング210に保持される。プラグ端子220は、半田付け等により基板400に基板に取り付けるための実装部221を端部に備える。
【0043】
プラグハウジング210は、液晶ポリマー(LCP)等の絶縁性の樹脂からなり、短手方向(Y軸方向)に延在した第1側壁部212及び長手方向(X軸方向)に延在した第2側壁部214を備え、第1側壁部212及び第2側壁部214に囲まれた中央部分に、嵌合凸部116を収容するための空間として嵌合凹部216を備える。
【0044】
プラグコネクタ200とレセプタクルコネクタ100とが接続した際には、プラグコネクタ200の嵌合凹部216は、レセプタクルコネクタ100の嵌合凸部116を収容する受容部として機能し、プラグコネクタ200の第1側壁部212及び第2側壁部214は、レセプタクルコネクタ100の受容部118に収容される。
【0045】
ここで、図6及び図7に加えて、図4を参照すると、プラグ端子220は、基板側(Z2側)の端部に実装部221を備え、実装部221から上方(Z1側)に直角に折れ曲がった部分を介して内側脚部222を備える。内側脚部222は、外側脚部225とプラグハウジング210の第2側壁部214を挟んで対向し、内側脚部222と外側脚部225との間は、第2側壁部214の端部に位置する頂部223を介してつながっている。内側脚部222、頂部223、突出部224、外側脚部225の裏面(相手端子に接触する面とは反対側の面)は、第2側壁部214によって支持される。
【0046】
突出部224は、頂部223に隣接した外側脚部225の部分を外側に突出させて形成される。突出部224の接点側面226は、第2側壁部214から露出している。相手端子であるレセプタクル端子120との嵌合状態において、突出部224は、第2レセロック部155に係合して嵌合した状態(ロックした状態)を維持することができる。内側脚部222、頂部223、突出部224及び外側脚部225は、相手端子との嵌合の際に動くことがないように第2側壁部214によって固定される。
【0047】
図4に示す断面図からも明らかなように、プラグ端子220は、プラグハウジング210とのインサート成形(一体成形)により、プラグハウジング210に密着している。また、プラグ端子220の内側脚部222、頂部223、突出部224及び外側脚部225で囲まれた空間は、樹脂(ハウジング)が充填されている。
【0048】
プラグ付加部材230は、プラグ端子220が保持された第2側壁部214の中央部分を間に挟んで、プラグコネクタ200の両側に配置される。つまり、プラグ付加部材230は、プラグコネクタ200の長手方向(X軸方向)両側の端に、それぞれ設けられる。プラグ付加部材230は、2つの突出部である第1プラグロック部234と、一対の突出部である第2プラグロック部235とを含む。プラグハウジング210は、第1プラグロック部234を第1側壁部212で保持し、第2プラグロック部235を第2側壁部214で保持する。プラグ付加部材230は、第1側壁部212に保持された第1プラグロック部234の両側(Y1及びY2側)に、第1プラグロック部234とは直交する方向(X軸方向)に延在する第2プラグロック部235を備える。すなわち、2つの第1プラグロック部234は、短手方向(Y軸方向)において、一対の第2レセロック部155の間に位置する。第1プラグロック部234を備える部分と第2プラグロック部235を備える部分とは、プラグ連結部238を介してつながっている。プラグ連結部238は、プラグハウジング210から露出されている。
【0049】
図5を参照すると、プラグ付加部材230は、半田付け等により基板400に取り付けるための実装部231を備えており、実装部231から上方(Z軸方向のZ1側)に折れ曲がった部分を介してプラグ固定部232を備える。第2プラグロック部235及びプラグ固定部232は、第2側壁部214を挟んで対向し、第2プラグロック部235とプラグ固定部232との間は、第2側壁部214の端部に位置する頂部233Bを介してつながっている。
【0050】
図5に示す断面図からも明らかなように、プラグ付加部材230は、プラグハウジング210とのインサート成形(一体成形)により、プラグハウジング210に密着している。また、プラグ付加部材230のプラグ固定部232、頂部233B、第2プラグロック部235及びプラグ平面部236Bで囲まれた空間は、樹脂(ハウジング)が充填されている。
【0051】
プラグ固定部232は、第2側壁部214から露出している。プラグ固定部232と実装部231との間の部分は、プラグハウジング210の樹脂に覆われて、プラグハウジング210に保持される。第1プラグロック部234及び頂部233Aの裏面は、第1側壁部212によって支持され、第2プラグロック部235、頂部233A及びプラグ固定部232の裏面は、第2側壁部214によって支持される。
【0052】
ここで、図6及び図7に加えて、図10及び図11も合わせて参照しながら、本発明の一実施形態に係るプラグコネクタの構成について説明する。図10は、本発明の一実施形態に係るプラグコネクタを上方からみた上面図であり、図11図10に示した切断箇所D-Dで切断したプラグコネクタの断面図である。プラグ付加部材230のプラグ固定部232は、プラグ端子220のプラグ固定部232の両側(X1側及びX2側)を等間隔に間をあけて第2側壁部214に保持される。
【0053】
第1プラグロック部234は、第1側壁部212の表面から突出した曲面となるように構成され、短手方向(Y軸方向)と直交する断面形状が同じ曲面として短手方向(Y軸方向)に延在している。第2プラグロック部235は、第2側壁部214の表面から突出した曲面となるように構成され、長手方向(X軸方向)と直交する断面形状が同じ曲面として長手方向(X軸方向)に延在している。第1プラグロック部234及び第2プラグロック部235は、それぞれ第1側壁部212及び第2側壁部214からプラグロック側面237を露出する。プラグ付加部材230は、第1プラグロック部234及び第2プラグロック部235が設けられた位置よりもプラグハウジング210の底側(Z1側)に、プラグ平面部236A,236Bをそれぞれ備える。
【0054】
第1プラグロック部234は、短手方向(Y軸方向)に延在する第1側壁部212に対して直交する方向(X軸方向)で分割されている。分割された第1プラグロック部234及びプラグ平面部236Aの端部には、半田付け等により基板400に取り付けるための実装部は設けられていない。つまり、分割された第1プラグロック部234及びプラグ平面部236Aの端部は自由端である。一方で、レセ付加部材150の第1レセロック部154及び第2レセロック部155のそれぞれの第1レセ固定部156A及び第2レセ固定部156Bが実装部151A,151Bにより基板300に固定される。
【0055】
このように、第1レセロック部154及び第2レセロック部155がレセプタクルハウジング110に強固に固定されることによりレセ付加部材150が基準となり、プラグ付加部材230との干渉量等を調整することで、プラグコネクタ200とレセプタクルコネクタ100とが接続する際及び接続中にかかる力(ここでは、「ロック力」という)を微調整することが可能となる。つまり、2つに分割した第1プラグロック部234及びプラグ平面部236Aを基板400に固定しないように構成したことで、コネクタ同士の嵌合時に、2つに分割した第1プラグロック部234と共に当該第1プラグロック部234を保持する第1側壁部212を変形し易くして、第1プラグロック部234に係る力を逃がして、ロック力を調整することができる。
【0056】
また、レセ付加部材150の第1レセロック部154及び第2レセロック部155と、プラグ付加部材230の第1プラグロック部234及び第2プラグロック部235とを、それぞれ第1側壁部112、212の表面及び第2側壁部114、214の表面よりも突出した曲面となるように構成したことで、製造工程において金属部材(レセ付加部材150やプラグ付加部材230)を加工して凸部や凹部を設ける工程を省いて製造コストを抑えることができる。さらに、レセ付加部材150の第1レセロック部154及び第2レセロック部155と、プラグ付加部材230の第1プラグロック部234及び第2プラグロック部235とは、それぞれ側壁部によって支持された曲面なのでコネクタの脱着の際にかかる力が一点に集中することを防ぎ、変形や摩耗に強い構造である。
【0057】
なお、プラグ付加部材230の第1プラグロック部234を2つに分割した構成は、レセ付加部材150の第1レセロック部154にも適用することができ、レセ付加部材150の第1レセロック部154を、2つに分割し、第1レセロック部154に頂部153Aを介してつながっているレセ脚部152Aの端部を基板300に固定しないように構成することもできる。
【0058】
図12は、図8に示した点線E-Eで囲まれたレセプタクルコネクタに含まれる付加部材の一部分を切り出し、当該一部分にインサート成形でハウジングを形成するための金型を示す外観図である。金型は、レセ付加部材150を載置するための下部金型600と、下部金型600に載置したレセ付加部材150を覆うための上部金型500とを含む。レセ付加部材150を下部金型600に載置した状態を図13に示す。
【0059】
図12に加えて、図13も参照すると、下部金型600は、X軸方向のX2側からX1側へ順に、T字部支持柱602と、底部支持面604と、階段状に形成されたレセ脚部支持柱606と、連結部支持面608とを含む。レセ付加部材150が下部金型600に載置された際に、T字部支持柱602はレセ付加部材150のT字部158を支持し、底部支持面604はレセ付加部材150の底部157を支持し、レセ脚部支持柱606はレセ付加部材150のレセ脚部150Aを支持することができる。また、インサート成形前のレセ付加部材150は、実装部151Aからキャリア(図示せず)との連結部151ZがX軸方向に延在する。連結部支持面608は、レセ付加部材150の連結部151Zを支持する。
【0060】
また、下部金型600に載置したレセ付加部材150を上部金型500で覆った状態を図14に示す。図14に示した切断箇所G-Gで上部金型500を切断した断面を図15及び図16に示す。図14に加えて、図15及び図16も参照すると、上部金型500は、X軸方向のX2側からX1側へ順に、凹状に形成されたT字部当接面502と、凹状に形成された頂部当接面504とを含み、T字部当接面502と頂部当接面504との間を隔てる底部固定壁505を含む。T字部当接面502は、レセ付加部材150のT字部158及び嵌合部固定片161の表面に密接する。頂部当接面504は、レセ付加部材150の突出部である第1レセロック部154及び頂部153Aの表面に密接する。また、底部固定壁505は、レセ付加部材150の底部157及び嵌合部固定片161の表面に密着する。
【0061】
T字部158及びT字部支持柱602と嵌合部固定片161との間には、第1樹脂充填空間601があり、レセ付加部材150の第1レセロック部154及び頂部153Aの裏側には、第2樹脂充填空間603がある。インサート成形の際に、液晶ポリマー(LCP)等の絶縁性の樹脂が第1樹脂充填空間601及び第2樹脂充填空間603に流れ込み、樹脂が硬化することで嵌合凸部116及び第1側壁部112が形成される。
【0062】
レセ付加部材150の突出部である第1レセロック部154の下方(Z1側)には、第1レセ固定部156Aと底部固定壁505との隙間である非充填空間503がある。インサート成形の際に、非充填空間503に樹脂が流れ込むことはないように、非充填空間503の周囲は上部金型500の内側の面に密着する。上部金型500の内側は図17に示す。
【0063】
上部金型500の内側には、底部固定壁505の頂部当接面504側(X1側)に、側部当接面506と、肩部当接面507とを含む。図14に示した下部金型600に載置されたレセ付加部材150を上部金型500で覆った状態を側面からみた側面図を図18に示す。第1レセロック部154及び第1レセ固定部156Aの側面は、上部金型500の内側の側部当接面506及び肩部当接面507と密着する。その密着した状態を図19に示す。
【0064】
図19は、図18に示した切断箇所H-Hで金型及び付加部材を切断した断面を示す。肩部当接面507は、レセ付加部材150の突出部である第1レセロック部とレセ固定部との間の側面に形成された肩部166に隙間なく当接し、レセ付加部材150を底部支持面604側(Z1側)に押し込んで固定する。
【0065】
図20は、インサート成形後に金型を取り除いてレセプタクルコネクタのハウジングに保持された付加部材の一部分を示す。インサート成形により、レセ付加部材150のT字部158及び嵌合部固定片の内側に嵌合凸部116が形成され、レセ付加部材150の底部157の側面及び裏側に底壁119が形成される。また、インサート成形により、レセ付加部材150の第1レセロック部154及び頂部153Aの裏側に第1側壁部112が形成され、さらに、外側(X1側)に周壁部113が形成される。インサート成形の際に上部金型500の肩部当接面507で、嵌合方向(Z軸方向)の下部金型600側(Z1側)に押し当てられていた肩部166の少なくとも一部は、インサート成形後(上部金型500を取り除いた後)、嵌合方向(Z軸方向)から視認可能であり、第1側壁部112から受容部118に向けて露出している。
【0066】
レセ付加部材150の第1レセ固定部156Aは、裏側及び側面が、レセプタクルコネクタ100の第1側壁部112に埋設されることで保持される。同様に、第1レセロック部154は、裏側及び側面が、第1側壁部112に埋設されることで保持される。第1レセロック部154は、第1レセ固定部156Aよりも突出した突出部である。第1レセ固定部156Aの横幅(Y軸方向の幅)は、第1レセロック部154の横幅(Y軸方向の幅)よりも広い。第1レセ固定部156Aは、第1レセ固定部156Aと第1レセロック部154との間に、一対の肩部166が第1レセ固定部156Aの両側側面に設けられる。肩部166は、第1レセ固定部156Aを第1レセロック部154よりも幅広にする形状であり、例えば、第1レセ固定部156Aの幅を広げるように傾斜状に形成される。肩部166は、それぞれレセロック側面159Aと連続した同一面上に形成される。なお、第2レセロック部155及び周囲の構成は、図20に示す第1レセロック部154及び周囲の構成と同様の構成にすることができる。
【0067】
図21は、図20から金具である付加部材を除いたハウジングの一部分を示す。突出部である第1レセロック部154と第1レセ固定部156Aとの間の側面に設けられた肩部166の形状に合わせて、第1側壁部112には肩部当接面111が形成される。肩部当接面111は、肩部166の表面に密接する。
【0068】
図12から図21に示される実施例は、レセ付加部材150の第1レセロック部154の構成例であるが、これに限定されるものではなく、レセ付加部材150の第2レセロック部155、レセプタクル端子120等の金具についても同様に肩部を設けるように構成して、同様にインサート成形を行うことができる。
【0069】
図12から図21に示されるインサート成形の製造工程は、まず、固定治具によって金具であるレセ付加部材150を下部金型600に載置する。次に、レセ付加部材150が載置された下部金型600に、レセ付加部材150を内部に収納可能なように構成された上部金型500を被せることで、レセ付加部材150を上部金型500の内部に入れて、レセ付加部材150の肩部166の各々を上部金型500の肩部当接面507で押さえる。そして、下部金型600と上部金型500との間の空間に、ハウジングを形成するための絶縁性の樹脂を注入し、注入後、樹脂を硬化させてハウジングを形成する。最後に、上部金型500及び下部金型600を取り外して、樹脂を硬化して形作られ、レセ付加部材150を保持するレセプタクルハウジング110を取り出す。
【0070】
このような製造工程は、レセプタクルコネクタだけではなく、プラグコネクタでも、プラグ付加部材に肩部を設けて、同様のインサート成形の製造工程を行うことができる。
【0071】
図22は、本発明の別の実施形態に係るプラグコネクタの外観を示す斜視図である。別の実施形態に係るプラグコネクタ200’は、前述した実施形態に係るプラグコネクタ200と基本的な構成は同じであり、実質的に形状の異なる部材は、プラグ端子220’と及びプラグ付加部材230’である。プラグコネクタ200は、プラグハウジング210と、プラグ端子220’と、プラグ付加部材230’を含む。プラグ付加部材230’は、レセ付加部材150の肩部166と同様の構成を備える。図22に示す線I-Iに沿って、プラグ付加部材230’の一部分を切断した断面図を、図23及び図24に示す。
【0072】
プラグハウジング210は、一対の第1側壁部212と一対の第2側壁部214との間に空間として形成される嵌合凹部216を備え、嵌合凹部216の基板側(Z2側)は底壁215によって塞がれている。すなわち、第1側壁部212及び第2側壁部214と底壁とによって規定され、相手コネクタとの嵌合側(Z1側)に向けて開放される空間として嵌合凹部216(受容部)が形成されている。プラグ端子220’と、プラグ付加部材230’とは、プラグハウジングとのインサート成形(一体成形)により設けられている。
【0073】
プラグ付加部材230’の基本的な構成は、レセ付加部材150と同様の構成である。インサート成形対象の金具であるプラグ付加部材230’は、プラグコネクタ200’の第2側壁部214に設けられたプラグ固定部239と、同じく第2側壁部214に設けられた突出部227とを含む。プラグ固定部239の横幅(Y軸方向の幅)は、突出部227の横幅(Y軸方向の幅)よりも広い。プラグ固定部239は、プラグ固定部239と突出部227との間に、一対の肩部229をプラグ固定部239の両側側面に設けられる。肩部229は、プラグ固定部239を突出部227よりも幅広にする形状であり、例えば、プラグ固定部239の幅を広げるように傾斜状に形成される。突出部227は、第2側壁部214から突部側面228を露出する。なお、突部側面228の底壁215側(Z2側)には、肩部229が形成され、突部側面228と肩部229とは連続した面である。つまり、肩部229は、それぞれ突部側面228と連続した同一面上に形成される。また、肩部229は、肩部166と同様の構成であり、肩部229の少なくとも一部は、嵌合方向(Z軸方向)から視認可能であり、第2側壁部214から嵌合凹部216(受容部)に向けて露出している。
【0074】
図22から図24に示される実施例は、プラグ付加部材230’の第2側壁部214で保持される部分の構成例であるが、これに限定されるものではなく、プラグ付加部材230’の第1側壁部212で保持される部分、プラグ端子220’等の金具についても同様に肩部を設けるように構成して、同様にインサート成形を行うことができる。
【0075】
つまり、本発明の一実施形態に係るコネクタは、インサート成形のために、端子や付加部材等の金具に肩部を設けて、肩部を上部金型で押さえて、金具を下部金型に固定することで、インサート成形により製造される。インサート成形の際に肩部が、金型や固定治具等による支持に適した突起として機能し、金具を隙間なく十分に支持することができ、絶縁体の樹脂が意図しない部分に流れ込むことを防ぐことができる。
【0076】
以上のとおり、本発明は、本発明の個々の実施形態は、独立したものではなく、それぞれ組み合わせて適宜実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係るコネクタは、電気信号の高速伝送を行うスマートフォン、携帯電話等の電子機器において、基板間をフラットケーブルで接続する等の用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
100 レセプタクルコネクタ
110 レセプタクルハウジング
111 肩部当接面
112 第1側壁部
113 周壁部
114 第2側壁部
116 嵌合凸部
118 受容部
119 底壁
120 レセプタクル端子
121 実装部
122 脚部
123 頂部
124 固定接点
125 端子固定部
126 底部
127 可動部
128 可動接点
129 接点側面
150 レセ付加部材
151A,151B 実装部
151Z キャリア連結片
152A,152B レセ脚部
153A,153B 頂部
154 第1レセロック部(突出部)
155 第2レセロック部(突出部)
156A 第1レセ固定部
156B 第2レセ固定部
157 底部
158 T字部
159A,159B レセロック側面
160 電源端子
161 嵌合部固定片
162 底部
163 可動部
164 可動接点
165 レセ連結部
166 肩部
200,200’ プラグコネクタ
210 プラグハウジング
212 第1側壁部
214 第2側壁部
215 底壁
216 嵌合凹部(受容部)
220,220’ プラグ端子
221 実装部
222 内側脚部
223 頂部
224 突出部
225 外側脚部
226 接点側面
227 突出部
228 突部側面
229 肩部
230,230’ プラグ付加部材
231 実装部
232 プラグ固定部
233A,233B 頂部
234 第1プラグロック部
235 第2プラグロック部
236A,236B プラグ平面部
237A,237B プラグロック側面
238 プラグ連結部
239 プラグ固定部
300 基板
400 基板
500 上部金型
501 第3樹脂充填空間
502 T字部当接面
503 非充填空間
504 頂部当接面
505 底部固定壁
506 側部当接面
507 肩部当接面
600 下部金型
601 第1樹脂充填空間
602 T字部支持柱
603 第2樹脂充填空間
604 底部支持面
606 レセ脚部支持柱
608 連結部支持面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24