(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033400
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】スチレンスルホンアミド誘導体及びその塩
(51)【国際特許分類】
C07C 303/40 20060101AFI20220222BHJP
C07C 311/51 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C07C303/40
C07C311/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137247
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】西田 翔大
(72)【発明者】
【氏名】尾添 真治
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006BA92
4H006BB31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】種々の有機溶剤へ可溶であり、且つ酸型として安定保存できる強酸性モノマーの提供。
【解決手段】下記反応式の生成物で例示されるスチレンスルホンアミド誘導体又はその塩、及びスチレンスルホンアミドとカルボン酸無水物を反応させるスチレンスルホンアミド誘導体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、
R
1はフッ素、任意の数の置換基を有する炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルケニル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルキニル基、または炭素数3~10の環状アルキル基を示し、
R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素、任意の数の置換基を有する炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルケニル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルキニル基、または炭素数3~10の環状アルキル基を示し、
R
5、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ独立して、水素、任意の数の置換基を有する炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルケニル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルキニル基、または炭素数3~10の環状アルキル基を示し、それぞれが環状構造を形成してもよい。)で示される、スチレンスルホンアミド誘導体。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】
(式(2)中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は前記式(1)と同じであり、
M
+はアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンである。)で示される、スチレンスルホンアミド誘導体の塩。
【請求項3】
上記一般式(1)及び(2)に示されるR2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が水素原子である、請求項1又は2に記載のスチレンスルホンアミド誘導体及びその塩。
【請求項4】
上記一般式(1)及び(2)に示されるR1がフッ素又は炭素数1~6のパーフルオロアルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のスチレンスルホンアミド誘導体及びその塩。
【請求項5】
下記一般式(3)
【化3】
(式(3)中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は前記式(1)と同じである。)で示されるスチレンスルホンアミドと、
下記一般式(4)
【化4】
(式(4)中、R
1は前記式(1)と同じである。)で示されるカルボン酸無水物を反応させることを特徴とする、スチレンスルホンアミド誘導体の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(3)で示されるスチレンスルホンアミドと前記一般式(4)で示されるカルボン酸無水物を、アルカリ金属塩の水溶液又はアンモニア水溶液共存下で反応させることを特徴とする、請求項5に記載のスチレンスルホンアミド誘導体の塩の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の一般式(1)で示されるスチレンスルホンアミド誘導体を、アルカリ金属塩の水溶液又はアンモニア水溶液と反応させることを特徴とする、スチレンスルホンアミド誘導体の塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料等の原料あるいは中間体として工業的に重要な、新規スチレンスルホンアミド誘導体及びその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレンスルホン酸類は、水溶性と強酸性を有する機能性モノマーであり、エマルション重合用の反応性乳化剤の他、水系レオロジー制御剤、水系分散剤、水系洗浄剤、水系帯電防止剤、導電性ポリマー水性コロイドのドーパント、イオン交換膜を製造するための原料モノマーとして、産業上の幅広い分野で利用されている。
【0003】
しかし、スチレンスルホン酸類は通常、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩といったアルカリ金属塩、アンモニウム塩として市販されているが、これらは水溶性が極めて高く、油溶性が乏しいため、水系用途に限定されている。例えば、樹脂やエラストマーの帯電防止を目的として、各種帯電防止剤が添加されるが、帯電防止剤の長期保持と耐熱性の観点から、アニオン性ポリマー型の帯電防止剤が最適であると考えられている。しかし実際には、特許文献1に記載のように、ポリスチレンスルホン酸塩などのアニオン性ポリマーは、樹脂やエラストマーとの相溶性が極めて低いため、少なくとも単独での使用は困難である。
【0004】
また、特許文献2に記載のような、スチレンスルホンイミドのアルカリ金属塩は、強酸性と両親媒性を併せ持つ有用な機能性モノマーである。しかし、これらスルホンイミドのアルカリ金属塩も、未だ油溶性が十分ではない。
【0005】
一方、上記のスチレンスルホン酸塩類やスチレンスルホンイミド塩類は、酸型(メタルフリー)へと変換して利用する例が多い。例えば、特許文献3や特許文献4に記載のように、導電性ポリマーやその分散剤用途においては、スチレンスルホン酸塩類やスチレンスルホンイミド塩類を重合させた後、イオン交換樹脂を用いて酸型へ変換可能である。スチレンスルホン酸やスチレンスルホンイミドの酸型モノマーから直接重合物を得ることができれば、生産効率及び経済性の観点から好ましいが、非特許文献1に記載のように、これら酸型モノマーは自己重合性(無触媒での自然重合性)が極めて高く、単離が困難である。
【0006】
以上のことから、種々の有機溶剤へ可溶であり、酸型として単離可能な強酸性モノマーの開発が求められた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭48-65237号公報
【特許文献2】特開2017-132728号公報
【特許文献3】特開2017-145323号公報
【特許文献4】特開2013-108006号公報
【0008】
【非特許文献1】Haitao Dong,et al. J.Phys.Chem.B 2009,113,14094-14101.
【非特許文献2】Md.Khalilur Rahman,et al. Electrochimica Acta 2004,50,633-638.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の背景及び課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、種々の有機溶剤へ可溶であり、且つ酸型として安定保存できる強酸性モノマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、非特許文献2に記載のような、ベンゼンスルホニルアセトアミドのメタクリルアミドモノマー類が高い酸性度を有していることに着眼し、鋭意検討を重ねた結果、スチレンスルホンアミド誘導体が、種々の有機溶剤へ可溶であり、酸型モノマーとして合成及び単離も容易であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下の発明に係る。
[1]下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、
R
1はフッ素、任意の数の置換基を有する炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルケニル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルキニル基、炭素数3~10の環状アルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基を示し、
R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、任意の数の置換基を有する炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルケニル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルキニル基、炭素数3~10の環状アルキル基、または炭素数1~10のハロゲン化アルキル基を示し、
R
5、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、任意の数の置換基を有する炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルケニル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルキニル基、炭素数3~10の環状アルキル基、または炭素数1~10のハロゲン化アルキル基を示し、それぞれが環状構造を形成してもよい。)で示される、スチレンスルホンアミド誘導体。
[2]下記一般式(2)
【化2】
(式(2)中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は前記式(1)と同じであり、
M
+はアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンである。)で示される、スチレンスルホンアミド誘導体の塩。
[3]上記一般式(1)及び(2)に示されるR
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8が水素原子である、[1]又は[2]に記載のスチレンスルホンアミド誘導体又はその塩。
[4]上記一般式(1)及び(2)に示されるR
1がフッ素又は炭素数1~10のパーフルオロアルキル基である、[1]~[3]のいずれかに記載のスチレンスルホンアミド誘導体又はその塩。
[5]下記一般式(3)
【化3】
(式(3)中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は前記式(1)と同じである。)で示されるスチレンスルホンアミドと、
下記一般式(4)
【化4】
(式(4)中、R
1は前記式(1)と同じである。)で示されるカルボン酸無水物を反応させることを特徴とする、スチレンスルホンアミド誘導体の製造方法。
[6]上記一般式(3)で示されるスチレンスルホンアミドと上記一般式(4)で示されるカルボン酸無水物を、アルカリ金属塩の水溶液又はアンモニア水溶液共存下で反応させることを特徴とする、[5]に記載のスチレンスルホンアミド誘導体の塩の製造方法。
[7][1]に記載の一般式(1)で示されるスチレンスルホンアミド誘導体を、アルカリ金属塩の水溶液又はアンモニア水溶液と反応させることを特徴とする、スチレンスルホンアミド誘導体の塩の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により得られるスチレンスルホンアミド誘導体又はその塩は、種々の有機溶剤へ可溶であり、且つ酸型として安定保存できるため、電子材料等の原料あるいは中間体として、工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1におけるGPC測定の溶出曲線(拡大図)であり、X軸(横軸)は溶出時間(単位は分)を示し、Y軸(縦軸)はRIピーク面積(単位は%)を示す。
【
図2】実施例2におけるGPC測定の溶出曲線(拡大図)であり、X軸(横軸)は溶出時間(単位は分)を示し、Y軸(縦軸)はRIピーク面積(単位は%)を示す。
【
図3】比較例1におけるGPC測定の溶出曲線(拡大図)であり、X軸(横軸)は溶出時間(単位は分)を示し、Y軸(縦軸)はRIピーク面積(単位は%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0015】
<スチレンスルホンアミド誘導体>
本実施形態のスチレンスルホンアミド誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【化1】
一般式(1)中、R
1はフッ素、任意の数の置換基を有する炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状アルキル、炭素数2~10の直鎖もしくは分岐状アルケニル、炭素数2~10の直鎖もしくは分岐状アルキニル、炭素数3~10の環状アルキル、または炭素数1~10のハロゲン化アルキル基を示す。
【0016】
本発明の一般式(1)で示されるスチレンスルホンアミド誘導体において、R1は具体的に例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、エテニル、1-プロぺニル、2-プロぺニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロプロピル、1’-メチルシクロブチル、2’-メチルシクロブチル、1’-メチルシクロペンチル、2’-メチルシクロペンチル、1’-メチルシクロヘキシル、2’-メチルシクロヘキシル、3’-メチルシクロヘキシル、1’,1’-ジメチルシクロプロピル、1’,2’-ジメチルシクロプロピル、1’,1’-ジメチルシクロブチル、1’,2’-ジメチルシクロブチル、1’,3’-ジメチルシクロブチル、2’,2’-ジメチルシクロブチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリクロロメチル、ペンタクロロエチル、ヘプタクロロプロピル、ノナクロロブチル、トリブロモメチル、ペンタブロモエチル、ヘプタブロモプロピル、ノナブロモブチル等が挙げられ、反応を阻害しない範囲で任意の位置に置換基を有していてもよい。これらの内でも、酸性度の観点から、フッ素、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルを有するものが好ましい。なお具体的例の記載中、置換基を示す「基」の記載を省略した。
【0017】
本発明の一般式(1)で示されるスチレンスルホンアミド誘導体において、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、任意の数の置換基を有する炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルケニル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルキニル基、炭素数3~10の環状アルキル基、または炭素数1~10のハロゲン化アルキル基を示す。
R2、R3およびR4は具体的に例えば、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、エテニル、1-プロぺニル、2-プロぺニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロプロピル、1’-メチルシクロブチル、2’-メチルシクロブチル、1’-メチルシクロペンチル、2’-メチルシクロペンチル、1’-メチルシクロヘキシル、2’-メチルシクロヘキシル、3’-メチルシクロヘキシル、1’,1’-ジメチルシクロプロピル、1’,2’-ジメチルシクロプロピル、1’,1’-ジメチルシクロブチル、1’,2’-ジメチルシクロブチル、1’,3’-ジメチルシクロブチル、2’,2’-ジメチルシクロブチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリクロロメチル、ペンタクロロエチル、ヘプタクロロプロピル、ノナクロロブチル、トリブロモメチル、ペンタブロモエチル、ヘプタブロモプロピル、ノナブロモブチル等が挙げられ、反応を阻害しない範囲で任意の位置に置換基を有していてもよい。なお具体的例の記載中、置換基を示す「基」の記載を省略した。
【0018】
本発明の一般式(1)で示されるスチレンスルホンアミド誘導体において、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、任意の数の置換基を有する炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルケニル基、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状アルキニル基、炭素数3~10の環状アルキル基、または炭素数1~10のハロゲン化アルキル基を示す。
R5、R6、R7およびR8は具体的に例えば、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、エテニル、1-プロぺニル、2-プロぺニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロプロピル、1’-メチルシクロブチル、2’-メチルシクロブチル、1’-メチルシクロペンチル、2’-メチルシクロペンチル、1’-メチルシクロヘキシル、2’-メチルシクロヘキシル、3’-メチルシクロヘキシル、1’,1’-ジメチルシクロプロピル、1’,2’-ジメチルシクロプロピル、1’,1’-ジメチルシクロブチル、1’,2’-ジメチルシクロブチル、1’,3’-ジメチルシクロブチル、2’,2’-ジメチルシクロブチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリクロロメチル、ペンタクロロエチル、ヘプタクロロプロピル、ノナクロロブチル、トリブロモメチル、ペンタブロモエチル、ヘプタブロモプロピル、ノナブロモブチル等が挙げられ、反応を阻害しない範囲で任意の位置に置換基を有していてもよい。さらに、R5、R6、R7およびR8はそれぞれが環状構造を形成してもよい。なお具体的例の記載中、置換基を示す「基」の記載を省略した。
本実施形態における、スチレンスルホンアミド誘導体の具体例は後述する。
【0019】
<スチレンスルホンアミド誘導体の塩>
本実施形態のスチレンスルホンアミド誘導体の塩は、下記一般式(2)で表される。
【化2】
一般式(2)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は前記式(1)と同じであり、M
+はアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンである。アルカリ金属イオンは具体的に、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等である。
【0020】
以上のスチレンスルホンアミド誘導体及びその塩において、原料の入手性の観点から、一般式(1)及び(2)に示されるR2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が水素原子であることが好ましい。
また、酸性度の観点から、上記一般式(1)及び(2)に示されるR1がフッ素又は炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0021】
<スチレンスルホンアミド誘導体の製造方法>
本実施形態のスチレンスルホンアミド誘導体の製造方法は、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
すなわち、
1)下記一般式(3)
【化3】
(式(3)中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は前記式(1)と同じである。)で示されるスチレンスルホンアミドと、
下記一般式(4)
【化4】
(式(4)中、R
1は前記式(1)と同じである。)で示されるカルボン酸無水物を反応させる、スチレンスルホンアミド誘導体の製造方法。
2)上記一般式(3)で示されるスチレンスルホンアミドと上記一般式(4)で示されるカルボン酸無水物を、アルカリ金属塩の水溶液又はアンモニア水溶液共存下で反応させる、スチレンスルホンアミド誘導体の塩の製造方法。
3)上記一般式(1)で示されるスチレンスルホンアミド誘導体を、アルカリ金属塩の水溶液又はアンモニア水溶液と反応させることを特徴とする、スチレンスルホンアミド誘導体の塩の製造方法。
【0022】
上記の製造方法の一例として、撹拌機、冷却管、滴下管などを取り付けた反応器に、下記一般式(3)
【化3】
(式(3)中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は前記式(1)と同じである。)で示されるスチレンスルホンアミドと、
下記一般式(4)
【化4】
(式(4)中、R
1は前記式(1)と同じである。)で示されるカルボン酸無水物と、溶剤を投入し、加熱撹拌させる。その後、反応溶液を冷却し、析出した固体をろ過により採取することで、目的物であるスチレンスルホンアミド誘導体(1)を得ることができる。
【0023】
上記製造方法において、一般式(4)で示されるカルボン酸無水物の使用量は特に限定されないが、一般式(3)で示されるスチレンスルホンアミドに対して、モル比で1.0~20.0にすることが好ましく、コスト低減及び生産性向上のためには1.0~5.0にすることがさらに好ましい。
【0024】
一般式(4)で示されるカルボン酸無水物は、市販品をそのまま、もしくは精製して用いてもよく、或いは、下記一般式(5)
【化5】
(式(5)中、R
1は前記式(1)と同じである。)で示されるカルボン酸を脱水縮合して得たものを用いてもよい。
【0025】
本反応において、ポリマー副生を抑制させるために、適宜酸化防止剤を追加してもよい。酸化防止剤は具体的に、4-tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、メトキシハイドロキノンなどのフェノール系酸化防止剤、フェノチアジンなどのアミン系酸化防止剤、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルなどの安定ニトロキシル系酸化防止剤が挙げられる。
酸化防止剤の添加量は、一般式(3)で示されるスチレンスルホンアミドに対して、0.001重量%~10.0重量%が好ましい。
【0026】
本実施形態の反応は、溶媒の存在下で実施する。
用いられる溶媒として具体的に、水、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、2-メチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1-クロロプロパン、1,2-ジクロロプロパン、1,3-ジクロロプロパン、1-クロロブタン、2-クロロブタン、1,2-ジクロロブタン、1,3-ジクロロブタン、1,4-ジクロロブタン、2,3-ジクロロブタン、ジブロモメタン、ブロモホルム、四臭化炭素、1,1-ジブロモエタン、1-ブロモプロパン、2-ブロモプロパン、1,2-ジブロモプロパン、1,3-ジブロモプロパン、1-ブロモブタン、2-ブロモブタン、1,2-ジブロモブタン、1,3-ジブロモブタン、1,4-ジブロモブタン、2,3-ジブロモブタン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジブロモベンゼン、m-ジブロモベンゼン、p-ジブロモベンゼン、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルターシャリブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの内でも、反応選択率の向上及び精製操作の簡便性の観点から、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、アセトン、メチルエチルケトン及びこれらの混合物が好ましい。
溶媒の使用量については特に限定されないが、一般式(3)で示されるスチレンスルホンアミドに対して、重量比で1.0~100.0にするのが好ましく、反応に用いる釜の効率及びコスト低減の観点から、重量比で1.0~30.0がさらに好ましい。
【0027】
反応温度は0℃~180℃で実施可能であるが、安全面及び十分な反応速度を得るために、40℃~150℃で実施するのが好ましい。
反応時間は特に制限されないが、通常1時間~48時間の範囲内で反応は完結できる。
【0028】
本実施形態の反応において、各化合物の仕込み順、仕込み方法は特に限定されず、一括仕込みしてもよく、もしくは、予め反応器に一般式(3)で示されるスチレンスルホンアミドと溶媒を仕込み、一般式(4)で示されるカルボン酸無水物を滴下する方法でもよい。
尚、本反応における撹拌の方法は特に限定されるものではなく、工業的に多用されている撹拌羽根を使用できる。撹拌羽根の形状、翼径は反応釜に合ったものを使用し、撹拌速度は、運転できる実現可能な範囲で決定すればよい。
【0029】
反応中の基質濃度は、特に限定されるものではないが、攪拌羽根への負荷及び反応に用いる釜の効率の観点から、0.1重量%~30.0重量%の範囲で実施するのが望ましい。
反応器は、大気開放型の反応器、またはオートクレーブ等の密閉系の反応器のいずれも可能であり、反応圧力は、大気圧下、または加圧下のいずれも可能である。
反応終了後、ろ過、抽出、晶析などの常法により分離、精製することができる。
【0030】
<スチレンスルホンアミド誘導体の塩の製造方法>
本実施形態のスチレンスルホンアミド誘導体の塩は、特に限定されないが、上記製造方法により得られたスチレンスルホンアミド誘導体(1)に対して、アルカリ金属塩もしくはアンモニアの水溶液を加え攪拌し、溶媒留去することで、目的物であるスチレンスルホンアミド誘導体の塩(2)を得ることができる。
もしくは、攪拌機、冷却管、滴下管を取り付けた反応器に、前記式(3)で示されるスチレンスルホンアミドと、前記式(4)で示されるカルボン酸無水物、溶剤を投入し、加熱攪拌させ、熟成後、反応溶液にアルカリ金属塩もしくはアンモニアの水溶液を加え、溶媒を留去し、析出した固体をろ過により採取することで、目的物であるスチレンスルホンアミド誘導体の塩(2)を得ることもできる。
【0031】
上記製造方法において、使用するアルカリ金属塩は特に限定されないが、その具体例として、水素化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属塩及びアンモニアの使用量について特に限定はされないが、一般式(1)で示されるスチレンスルホンアミド誘導体、もしくは一般式(3)で示されるスルホンアミドに対して、モル比で1.0~20.0にすることが好ましく、コスト低減及び不純物の含有率低減の観点から、モル比で1.0~5.0にすることがさらに好ましい。
使用するアルカリ金属塩及びアンモニアの水溶液の濃度は、特に限定されないが、通常0.1重量%~50.0重量%が好ましく、経済性および生産性の観点から、1.0重量%~30.0重量%がさらに好ましい。
【0032】
本実施形態のスチレンスルホンアミド誘導体の塩において、溶剤及びその使用量、反応温度、反応時間、仕込み方法、攪拌方法、基質濃度、反応圧力、精製方法等は、上記スチレンスルホンアミド誘導体の製造方法に従って製造できる。
【実施例0033】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の概要を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
<製造方法および製造物の同定>
目的化合物の同定は、核磁気共鳴分析(以下、「NMR分析」と示す)、元素分析により実施した。目的化合物の純度は、内部標準物質を用いたNMR分析により算出した。
ポリマー不純物については、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC分析」と示す)により確認した。
【0035】
[NMR分析]
装置:ブルカー・バイオスピン社製、AV-400M
測定サンプルの調製方法:内部標準物質である1,3,5-トリメトキシベンゼン(≧99.0%)および測定試料をそれぞれ約50mg測りとり、重溶媒約1.0mLで混合溶解し、1H-NMR及び19F-NMRを測定した。
【0036】
[GPC分析]
以下の条件1と条件2は、後述する自己重合性評価(表1を参照)において設定し、評価した。
機種:東ソー株式会社製、HLC-8320GPC
【0037】
<条件1>
カラム:TSK guardcolumn Super AW-H/TSKgel Super AW6000/TSKgel Super AW4000/TSKgel Super AW2500
溶離液:ジメチルホルムアミド(臭化リチウム0.01mol/L)
カラム温度:40℃、流量:0.5mL/min
検出器:RI検出器、注入量:10μL
検量線:創和科学製の単分散ポリスチレン(3K、15K、41K、300K、1000K、2350K、5000K(「K」は1000の意味で、3Kは3000となる。))のピークトップ分子量と溶出時間から作成した。
【0038】
<条件2>
カラム:TSK guardcolumn Super AW-H/TSKgel Super AW6000/TSKgel Super AW3000/TSKgel Super AW2500
溶離液:Na2SO4水溶液(0.20mol/L)/アセトニトリル=65/35
カラム温度:40℃
検出器:RI検出器、注入量:10μL
検量線:アルドリッチ社製の標準ポリエチレングリコールのピークトップ分子量と溶出時間から作成した。
【0039】
[元素分析]
装置:PerkinElmer社製、2400II
測定方法:試料約3mgをスズカプセル内に封入し、装置内にて、酸素雰囲気下で試料を完全燃焼し、炭素分、水素分、窒素分をそれぞれ二酸化炭素、水、窒素酸化物としてガス化し、各元素分を定量した。
【0040】
実施例1:4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド(AcNS-H)の合成
【化7】
冷却管を取り付けた50mL四ツ口フラスコに4-ビニルベンゼンスルホンアミド3.99g(16.37mmol)、トリフルオロ酢酸無水物6.88g(32.75mmol)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.18g(0.82mmol)、トルエン46.4mLを投入し、撹拌子を用いて混合しながら50℃に昇温した後、22時間加熱攪拌した。
反応終了後、0℃まで冷却し、析出した固体を減圧濾過により採取することで、目的物である4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド2.67g(収率58.42%、純度99.45%)を得た。尚、GPC分析を実施したが、ポリマー分は検出されなかった。また、25℃で60日間保存後もポリマー分は検出されず、極めて安定な酸型モノマーであった。
【0041】
NMR分析の結果は以下の通りであった。
1H NMR(DMSO-d6、400MHz)δ(ppm)5.42(d、J=12.0Hz、1H)、5.99(d、J=12.0Hz、1H)、6.75(dd、J=12.0、4.0Hz、1H)、7.67(d、J=8.0Hz、2H)、7.81(d、J=8.0Hz、2H)
19F NMR(376MHz,DMSO-d6)δ(ppm)-74.02(s).
Anal.calcd for C10H8F3NO3S C,43.01;H,2.89;N,5.02.found C,43.12;H,2.74;N,5.05.
【0042】
実施例2:4-(N-(ペンタフルオロエチル)アセチル)スチレンスルホンアミド(PFPANS-H)の合成
【0043】
【化8】
冷却管を取り付けた100mL四ツ口フラスコに4-ビニルベンゼンスルホンアミド3.99g(16.37mmol)、ペンタフルオロプロピオン酸無水物10.15g(32.75mmol)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.18g(0.82mmol)、トルエン61.5mLを投入し、撹拌子を用いて撹拌しながら80℃に昇温した後、24時間加熱撹拌した。
反応終了後、0℃まで冷却し、4時間攪拌後、析出した固体を減圧濾過により採取することで、目的物である4-(N-(ペンタフルオロエチル)アセチル)スチレンスルホンアミド4.27g(収率79.22%、純度>99.99%)を得た。尚、GPC分析を実施したが、ポリマー分は検出されなかった。また、25℃で60日間保存後もポリマー分は検出されず、極めて安定な酸型モノマーであった。
【0044】
NMR分析の結果は以下の通りであった。
1H NMR(Acetone-d6、400MHz)δ(ppm)5.53(d、J=8.0Hz、1H)、6.08(d、J=8.0Hz、1H)、6.90(dd、J=8.0、4.0Hz、1H)、7.79(d、J=8.0Hz、2H)、8.06(d、J=8.0Hz、2H)
19F NMR(376MHz,DMSO-d6)δ(ppm)-83.57(s、3F)、-123.16(s、2F).
Anal.calcd for C11H8F5NO3S C,40.13;H,2.45;N,4.25.found C,40.22;H,2.28;N,4.29.
【0045】
実施例3:ナトリウム 4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド(AcNS-Na)の調整
【0046】
【化7】
冷却管、撹拌機を取り付けた500mL四ツ口フラスコに4-ビニルベンゼンスルホンアミド10.00g(54.58mmol)、トリフルオロ酢酸無水物22.93g(109.15mmol)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.60g(2.73mmol)、トルエン154.7mLを投入し、撹拌羽根を用いて撹拌しながら50℃に昇温した後、23時間加熱撹拌した。
反応終了後、室温まで放冷し、メチルエチルケトン166.6mL、20重量%炭酸ナトリウムの水溶液を加え、1時間撹拌した後、有機層と水層を分離した。得られた有機層を25%食塩水42.4mLで洗浄し、濃縮によりメチルエチルケトンを留去した。析出した固体を減圧濾過により採取することで、目的物であるナトリウム 4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド7.20g(収率43.80%、純度96.43%)を得た。尚、GPC分析を実施したが、ポリマー分は検出されなかった。
【0047】
NMR分析の結果は以下の通りであった。
1H NMR(DMSO-d6、400MHz)δ(ppm)5.37(d、J=8.0Hz、1H)、5.94(d、J=20.0Hz、1H)、6.78(dd、J=20.0、8.0Hz、1H)、7.55(d、J=8.0Hz、2H)、7.78(d、J=8.0Hz、2H)
19F NMR(376MHz,DMSO-d6)δ(ppm)-73.96(s).
【0048】
実施例4:アンモニウム 4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド(AcNS-Am)の調整
【0049】
【化7】
冷却管を取り付けた50mL四ツ口フラスコに4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド1.00g(3.58mmol)、28%アンモニア水溶液0.44g(7.16mmol)、メチルエチルケトン11.2mLを投入し、撹拌子を用いて撹拌しながら室温で1時間加熱撹拌した。
反応終了後、n-ヘプタン26.3mLを加え、濃縮によりメチルエチルケトンを留去した。析出した固体を減圧濾過により採取することで、目的物であるアンモニウム 4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド0.99g(収率86.21%、純度92.31%)を得た。尚、GPC分析を実施したが、ポリマー分は検出されなかった。
【0050】
NMR分析の結果は以下の通りであった。
1H NMR(DMSO-d6、400MHz)δ(ppm)5.37(d、J=12.0Hz、1H)、5.93(d、J=20.0Hz、1H)、6.78(dd、J=20.0、12.0Hz、1H)、7.54(d、J=8.0Hz、2H)、7.75(d、J=8.0Hz、2H)
19F NMR(376MHz,DMSO-d6)δ(ppm)-73.93(s).
【0051】
比較例1:p-スチレンスルホン酸の合成(単離可否の確認)
【0052】
【化9】
40%p-スチレンスルホン酸リチウム水溶液136.5g(248.1mmol)を、強酸性カチオン交換樹脂アンバーライト IR120B 250mLを充填した直径55mmのガラスカラムに8mL/分の流速で通液し、さらに純水136.5gを8mL/分の流速で通液したところ、目的物であるp-スチレンスルホン酸の水溶液が270.5g(純分41.7g、収率91.2%)得られた。
合成直後にGPC分析を実施したところ、ポリマー分は未検出であった。しかし、25℃で1日経過後、同様にGPC分析を実施したところ、p-スチレンスルホン酸に対するポリ(p-スチレンスルホン酸)の含有量を算出すると、3.5area%であり、さらに3日経過後には29.6area%となった。このことから、p-スチレンスルホン酸は自己重合性が非常に高く、単離が困難であることは明白である。
【0053】
比較例2:4-スチレンスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの合成(単離可否の確認)
【0054】
【化10】
4-スチレンスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドのナトリウム塩53.8g(169.6mmol)を純水305.0gに溶解させた後、強酸性カチオン交換樹脂アンバーライト IR120B 150mLを充填した直径30mmのガラスカラムに5mL/分の流速で通液し、さらに純水100gを5mL/分の流速で通液したところ、目的物である4-スチレンスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの水溶液が442.9g(純分40.3g、収率80.1%)得られた。
GPC分析により4-スチレンスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに対するポリ(4-スチレンスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)の含有量を測定したところ、13.2area%であった。このことから、4-スチレンスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドは自己重合性が非常に高く、単離が困難であることは明白である。
【0055】
<自己重合性評価>
実施例1及び2、比較例1及び2で得られた各種酸型モノマーにおける、経過時間毎のモノマーの含有率、ポリマーの含有率を表1に示す。表1から、実施例1及び実施例2で得られたスチレンスルホンアミド誘導体は60日経過後も自己重合性を示すことなく、保存安定性に優れている。
【0056】
【0057】
表1に基づき、実施例1、2及び比較例1の溶出時間に対するモノマーとポリマーの存在量となる面積%に関する結果を、それぞれ
図1、2及び3に示す。図より明らかに、実施例1(
図1)及び実施例2(
図2)では生成直後から60日経過後について、モノマーのピークに対しポリマーのピークは認められない。これに対し比較例1(
図3)では生成直後には認められなかったポリマーのピークが、1日経過後に若干認められ、4日経過後にはポリマーのピークがさらに大きくなっており、ポリマー化が進んでいることが認められた。
【0058】
<溶解性評価>
実施例1~4で得られたスチレンスルホンアミド誘導体及びその塩について、溶解性評価を行った。尚、以下の記載において、4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド(AcNS-H)、4-(N-(ペンタフルオロエチル)アセチル)スチレンスルホンアミド(PFPANS-H)、ナトリウム 4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド(AcNS-Na)、アンモニウム 4-(N-(トリフルオロメチル)アセチル)スチレンスルホンアミド(AcNS-Am)、ナトリウム 4-スチレンスルホン酸(NaSS)、4-スチレンスルホン酸(SSA)、ナトリウム 4-スチレンスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TfNS-Na)の略称を用いる場合がある。NaSSとTfNS-Naは東ソー・ファインケム製を用いた。
【0059】
評価方法:ガラス製のスクリュー管に、アセトニトリル(AN)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール(MeOH)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、2-プロパノール(IPA)、クロロベンゼン(ClBz)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、酢酸エチル(AcOEt)、ジクロロメタン(DCM)をそれぞれ3g加え、25℃でスチレンスルホンイミド又はその塩を少しずつ添加し、手で振り混ぜながら溶解性を確認した。それぞれ、固体が残存した時点(目視で確認)を飽和溶解度とし、下記式において溶解度を算出した。
溶解度(wt%)= A/(S+A)×100
A:添加したスチレンスルホンアミド誘導体又はその塩(g)
S:溶媒の重量(g)
【0060】
溶解性の結果は表2の通りとなった。AcNS-H、PFPANS-H、AcNS-Na、AcNS-Amはいずれも種々の有機溶剤へ十分な溶解性を有していることが確認された。
【0061】
本発明により得られるスチレンスルホンアミド誘導体及びその塩は、種々の有機溶剤へ可溶であり、且つ酸型として安定保存できるため、電子材料等の原料あるいは中間体として、工業的に極めて有用である。