(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033411
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】ステーターおよびこれを備えたモーター
(51)【国際特許分類】
H02K 1/06 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
H02K1/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137275
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】508001305
【氏名又は名称】有限会社アナロジスト
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】森本 浩之
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA05
5H601AA16
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601GA12
5H601GB13
5H601GB22
5H601GB23
5H601GB48
5H601GC33
(57)【要約】
【課題】モーターの大型化および重量の増加を抑止しつつ、モーターの出力を増加することのできるステーターおよびこれを備えたモーターを提供する。放熱性を向上することのできるステーターおよびこれを備えたモーターを提供する。
【解決手段】ステーター10は、互いに間隔をおいて配置され、環状の軸AXを中心としてらせん状に延在する複数のステーターコア1~4の各々と、複数のステーターコア1~4の各々のポロイダル方向に巻き回されたコイルとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をおいて配置され、環状の軸を中心としてらせん状に延在する複数のステーターコアの各々と、
前記複数のステーターコアの各々に対してポロイダル方向に巻き回されたコイルとを備えた、ステーター。
【請求項2】
前記複数のステーターコアの各々は、前記環状の軸の内側に向かって突出したタップであって、磁気を取り出すためのタップを含む、請求項1に記載のステーター。
【請求項3】
前記コイルは、前記複数のステーターコアの各々における、前記複数のステーターコアの各々の延在方向に沿った前記タップの両側を含む領域に局所的に巻き回される、請求項2に記載のステーター。
【請求項4】
前記複数のステーターコアの各々を固定する固定部をさらに備え、
前記固定部は、前記複数のステーターコアの各々の前記タップと嵌合する複数の嵌合孔の各々を含む、請求項1~3のいずれかに記載のステーター。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のステーターと、
前記ステーターの内周側に設けられたローターとを備えた、モーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステーターおよびこれを備えたモーターに関する。より特定的には、本発明は、モーターの大型化および重量の増加を抑止しつつ、モーターの出力を増加することのできるステーターおよびこれを備えたモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
モーターは、ステーターおよびローターで構成されている。ステーターとローラーとの位置関係でモーターを区別した場合、モーターにはインナーローター型とアウターローター型とがある。インナーローター型のモーターは、コイルを含むステーターの内周側にローターを設けたものである。アウターローター型のモーターは、ローターの内周側にコイルを含むステーターを設けたものである。
【0003】
従来のインナーローター型のモーターにおいて、ステーターは、ステーターコアと、コイルとを主に含んでいる。ステーターコアは、環状のヨーク部(リング状コア)と、ヨーク部からステーターの内周側に突出する複数のティース部とを含んでいる。ステーターの周方向で隣り合う2つのティース部の間には、スロットが設けられている。コイルは、スロットに設けられており、複数のティース部の各々に巻き回されている。従来のインナーローター型のモーターの構成は、たとえば下記特許文献1などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のステーターにおいては、ステーターの周方向に沿って複数のティース部の各々がスロットを隔てて配置されている。このため、ステーターの周方向においてコイルを配置することができる領域は、スロットのみに制限されていた。これにより、コイルの巻数およびコイル線の直径を増加することには限界があり、モーターの出力を増加することが困難であるという問題があった。一方、コイルの巻数およびコイル線の直径を増加することでモーターの出力を増加しようすると、スロットとしてより広いスペースを確保するために、ステーターコアの質量および寸法を増加する必要があった。その結果、モーターの大型化および重量の増加を招いていた。
【0006】
また、コイルはスロットという狭い空間に設けられるため、コイルにおける外気に面する部分の面積は小さかった。このため、従来のステーターには、放熱性が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、モーターの大型化および重量の増加を抑止しつつ、モーターの出力を増加することのできるステーターおよびこれを備えたモーターを提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、放熱性を向上することのできるステーターおよびこれを備えたモーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に従うステーターは、互いに間隔をおいて配置され、環状の軸を中心としてらせん状に延在する複数のステーターコアの各々と、複数のステーターコアの各々に対してポロイダル方向に巻き回されたコイルとを備える。
【0010】
上記ステーターにおいて好ましくは、複数のステーターコアの各々は、環状の軸の内側に向かって突出したタップであって、磁気を取り出すためのタップを含む。
【0011】
上記ステーターにおいて好ましくは、コイルは、複数のステーターコアの各々における、複数のステーターコアの各々の延在方向に沿ったタップの両側を含む領域に局所的に巻き回される。
【0012】
上記ステーターにおいて好ましくは、複数のステーターコアの各々を固定する固定部をさらに備え、固定部は、複数のステーターコアの各々のタップと嵌合する複数の嵌合孔の各々を含む。
【0013】
本発明の他の局面に従うモーターは、上記ステーターと、ステーターの内周側に設けられたローターとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モーターの大型化および重量の増加を抑止しつつ、モーターの出力を増加することのできるステーターおよびこれを備えたモーターを提供することができる。また、放熱性を向上することのできるステーターおよびこれを備えたモーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるモーター100の構成を示す上面図である。
【
図2】ステーター10における複数のステーターコア1~4の各々の構成を示す斜視図である。
【
図3】ステーター10の周方向に沿った複数の位置でのステーターコア1~4の各々の位置関係を示す断面図である。
【
図4】タップ1Tb付近を拡大して示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態におけるモーター100の構成を示す上面図である。
図1ではコイルの図示が省略されており、固定部6が点線で示されている。
【0018】
図1を参照して、本実施の形態におけるモーター100(モーターの一例)は、ステーター10(ステーターの一例)と、ローター20(ローターの一例)とを備えている。ステーター10は、中心軸Pを中心軸とする中空の円筒形状を有している。ローター20は、ステーター10の内周側に設けられている。ローター20は、中心軸Pを中心軸とする円筒形状を有している。ローター20は、中心軸Pを中心として回転する。ローター20の外周面は、ローター20の周方向に沿ってS極とN極とに交互に着磁されている。ここでは、ローター20の外周面には、3つのS極の各々と3つのN極の各々とが交互に形成されている。ローター20は永久磁石などにより構成されている。ローター20の外周面に形成される磁極の数は任意である。
【0019】
図2は、ステーター10における複数のステーターコア1~4の各々の構成を示す斜視図である。
図3は、ステーター10の周方向に沿った複数の位置でのステーターコア1~4の各々の位置関係を示す断面図である。
図3(a)は、
図1中IIIA-IIIA線に沿った断面図である。
図3(b)は、
図1中IIIB-IIIB線に沿った断面図である。
図3(c)は、
図1中IIIC-IIIC線に沿った断面図である。
図3(d)は、
図1中IIID-IIID線に沿った断面図である。
図3(e)は、
図1中IIIE-IIIE線に沿った断面図である。
図1中IIIB-IIIB線、IIIC-IIIC線、IIID-IIID線、およびIIIE-IIIE線の各々は、
図1中IIIA-IIIA線を基準として、中心軸Pを中心としてそれぞれ22.5°、45°、67.5°、および90°だけ回転した位置に相当する。なお、
図2においてタップは省略されている。
【0020】
図1~
図3を参照して、ステーター10は、複数のステーターコア1~4(複数のステーターコアの一例)と、固定部6(固定部の一例)と、コイル7(
図4)(コイルの一例)とを含んでいる。複数のステーターコア1~4の各々は、互いに間隔をおいて配置されており、固定部6に固定されている。
【0021】
ステーター10における複数のステーターコアの数は任意であり、必要とされる磁極の数などに応じて決定される。
【0022】
ステーター10は、仮想の環状の軸AXを含んでいる。環状の軸AXは、モーター100の上部から見た場合に、中心軸Pを中心とする円の形状を有しており、トロイダル方向に延在している。環状の軸AXと直交する断面で見た場合に、複数のステーターコア1~4の各々は、隣接する2つのステーターコアが環状の軸AXにおいてなす中心角が等しくなるように、等間隔で配置されている。
【0023】
複数のステーターコア1~4の各々は、環状の軸AXを中心としてらせん状に延在している(複数のステーターコア1~4は、環状の軸AXを中心として4重らせん状に延在している)。具体的には、環状の軸AXに沿って反時計回りに進んだ場合に、複数のステーターコア1~4の各々の位置は、環状の軸AXの周りを時計回りに回るように変化する。一例としてステーターコア1に着目すると、ステーターコア1の位置は、
図3(a)では環状の軸AXの右上にあり、
図3(b)では環状の軸AXの右に変化し、
図3(c)では環状の軸AXの右下に変化し、
図3(d)では環状の軸AXの下に変化し、
図3(e)では環状の軸AXの左下に変化する。
【0024】
複数のステーターコア1~4の各々のらせん回転数(複数のステーターコア1~4の各々が環状の軸AXに沿って一周する間に環状の軸AX周りを回転する数)は任意であり、ここでは2である。
【0025】
ステーター10は、8つの磁極を有している。複数のステーターコア1~4は、磁極を取り出すための8つのタップ1Ta、1Tb、2Ta、2Tb、3Ta、3Tb、4Ta、および4Tb(タップの一例)を含んでいる。タップ1Ta、1Tb、2Ta、2Tb、3Ta、3Tb、4Ta、および4Tbの各々は、環状の軸AXの内側に向かって突出している。タップ1Ta、1Tb、2Ta、2Tb、3Ta、3Tb、4Ta、および4Tbの各々は、中心軸Pを中心として反時計回りに、タップ1Ta、タップ2Ta、タップ3Ta、タップ4Ta、タップ1Tb、タップ2Tb、タップ3Tb、およびタップ4Tbという順序で設けられている。ステーター10の周方向で互いに隣り合う2つのタップからは、互いに異なる磁極が取り出される。
【0026】
ステーターコア1は、タップ1Taおよび1Tbを含んでいる。タップ1Taおよび1Tbは、ステーターコア1における最も内周側に存在する位置(中心軸Pに最も近い位置)に設けられている。タップ1Taおよび1Tbの各々は、中心軸Pを挟んで対向する位置に設けられている。タップ1Taおよび1Tbの各々は互いに逆の磁極性を持つ。
【0027】
ステーターコア2は、タップ2Taおよび2Tbを含んでいる。タップ2Taおよび2Tbは、ステーターコア2における最も内周側に存在する位置に設けられている。タップ2Taおよび2Tbの各々は、中心軸Pを挟んで対向する位置に設けられている。タップ2Taおよび2Tbの各々は互いに逆の磁極性を持つ。
【0028】
ステーターコア3は、タップ3Taおよび3Tbを含んでいる。タップ3Taおよび3Tbは、ステーターコア3における最も内周側に存在する位置に設けられている。タップ3Taおよび3Tbの各々は、中心軸Pを挟んで対向する位置に設けられている。タップ3Taおよび3Tbの各々は互いに逆の磁極性を持つ。
【0029】
ステーターコア4は、タップ4Taおよび4Tbを含んでいる。タップ4Taおよび4Tbは、ステーターコア4における最も内周側に存在する位置に設けられている。タップ4Taおよび4Tbの各々は、中心軸Pを挟んで対向する位置に設けられている。タップ4Taおよび4Tbの各々は互いに逆の磁極性を持つ。
【0030】
複数のステーターコア1~4の各々に巻き回されたコイル7(
図4)に電流が流された場合に、タップ1Ta、1Tb、2Ta、2Tb、3Ta、3Tb、4Ta、および4Tbの各々には磁界が発生する。この磁界が、ローター20に形成された磁極と相互作用することにより、モーター100に回転力が生じ、ローター20が回転する。
【0031】
ステーター10の磁極の数(タップの総数)は、2つ以上であればよく、ステーターコアの数、ステーターコアのらせん回転数、およびコイルの巻き方などにより変化する。
【0032】
固定部6は、中心軸Pを中心軸とする中空の円筒形状を有している。固定部6は、複数のステーターコア1~4の各々における最も内周側に存在する位置と中心軸Pとの距離に等しい外径を有している。固定部6は、複数の嵌合孔6a(複数の嵌合孔の一例)を含んでいる。複数の嵌合孔6aの各々は、タップ1Ta、1Tb、2Ta、2Tb、3Ta、3Tb、4Ta、および4Tbの各々に対応する位置に設けられている。複数の嵌合孔6aの各々は、タップ1Ta、1Tb、2Ta、2Tb、3Ta、3Tb、4Ta、および4Tbの各々と嵌合する。これにより、複数のステーターコア1~4の各々は固定部6に固定される。
【0033】
図4は、タップ1Tb付近を拡大して示す上面図である。
【0034】
図3および
図4を参照して、コイル7は、複数のステーターコア1~4の各々に対してポロイダル方向(
図3(a)中矢印dで示す方向)に巻き回されている。コイル7は、複数のステーターコア1~4の各々における、複数のステーターコア1~4の各々の延在方向に沿ったタップ1Ta、1Tb、2Ta、2Tb、3Ta、3Tb、4Ta、および4Tbの両側を含む領域に局所的に巻き回されている。
図4では、コイル7は、ステーターコア1における、ステーターコア1の延在方向におけるタップ1Tbの両側を含む領域に巻き回されている。
【0035】
コイル7は、複数のステーターコア1~4の各々の全体にわたって(ステーター10の周方向全体にわたって)巻き回されていてもよい。複数のステーターコア1~4の各々におけるコイル7を巻く位置やコイル7の巻き回し方向は、ステーター10に設ける磁極の位置や種類(N極またはS極)に応じて適宜設定されればよい。
【0036】
[実施の形態の効果]
【0037】
上述の実施の形態によれば、ステーターの周方向においてコイルを配置することができる領域を、ステーターの周方向全体に広げることができる。これにより、コイルの巻数およびコイル線の直径を増加することにより、モーターの出力を容易に増加することができる。また、コイルの巻数およびコイル線の直径を増加することでモーターの出力を増加しても、コイルのスペース確保のためにステーターコアの質量および寸法の増加の必要がない。その結果、モーターの大型化および重量の増加を抑止しつつ、モーターの出力を増加することができる。
【0038】
また、複数のステーターコアの各々は、互いに間隔をおいて配置され、環状の軸を中心としてらせん状に延在している(ステーターは多重らせん構造を有している)。これにより、コイルにおける外気に面する部分の面積を増加することができる。その結果、放熱性を向上することができる。
【0039】
[その他]
【0040】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1~4 ステーターコア(複数のステーターコアの一例)
1Ta,1Tb,2Ta,2Tb,3Ta,3Tb,4Ta,4Tb タップ(タップの一例)
6 固定部(固定部の一例)
6a 嵌合孔(複数の嵌合孔の一例)
7 コイル(コイルの一例)
10 ステーター(ステーターの一例)
20 ローター(ローターの一例)
100 モーター(モーターの一例)
AX 環状の軸
P 中心軸