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  • 特開-緩衝材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033432
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】緩衝材
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/03 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
B65D81/03 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137316
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】坂本 伸一
(72)【発明者】
【氏名】畑 明子
【テーマコード(参考)】
3E066
【Fターム(参考)】
3E066AA22
3E066AA52
3E066BA05
3E066CA03
3E066CB03
3E066KA08
3E066KA20
(57)【要約】
【課題】紙を主たる素材とし、リサイクルが容易な気泡緩衝体を提供する。
【解決手段】互いに対向する第一のシート1と第二のシート2との間に気泡室0を形成し、第一のシート1における気泡室0の周囲の部位13と第二のシート2における気泡室0の周囲の部位13とを接合して気泡室0内に気体を封入してなる緩衝材において、第一のシート1及び第二のシート2の各々を、紙主体のシート本体11、21の少なくとも一方の面に熱可塑化デンプンを用いたコート層12、22が敷設されたものとした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第一のシートと第二のシートとの間に気泡室を形成し、第一のシートにおける気泡室の周囲の部位と第二のシートにおける気泡室の周囲の部位とを接合して気泡室内に気体を封入する緩衝材であって、
前記第一のシート及び前記第二のシートがそれぞれ、紙主体のシート本体の少なくとも一方の面に熱可塑化デンプンを用いたコート層が敷設されたものである緩衝材。
【請求項2】
前記シート本体の少なくとも一方の面に熱可塑化デンプンを塗工することで前記コート層が敷設される請求項1記載の緩衝材。
【請求項3】
前記シート本体の少なくとも一方の面に熱可塑化デンプンによるラミネーションを施すことで前記コート層が敷設される請求項1記載の緩衝材。
【請求項4】
前記第一のシートまたは前記第二のシートの相手方に対向する面に前記コート層が設けられており、第一のシートにおける気泡室の周囲の部位と第二のシートにおける気泡室の周囲の部位とを熱溶着して接合する請求項1、2または3記載の緩衝材。
【請求項5】
前記第一のシート及び前記第二のシートの双方における気泡室に面する部位が、互いに離反する方向に膨出している請求項1、2、3または4記載の緩衝材。
【請求項6】
前記第一のシートまたは前記第二のシートの何れかにおける気泡室に面する部位が、相手方から離反する方向に膨出している請求項1、2、3または4記載の緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包される各種の物品を保護するべく使用される緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに対向する二枚のシートの間に気泡室を形成し、その気泡室内に気体を封入してなる気泡緩衝材が公知である(例えば、下記特許文献を参照)。
【0003】
緩衝材を構成するシートには、気泡室に封入した気体を透過させないガスバリア性、及び気泡室の周囲の部位を溶着して必要十分な気密及び強度を維持できるヒートシール性が要求される。現状では、一般に、ナイロンやEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等のエンジニアリングプラスチック(合成樹脂)をシートの材料に用いて、緩衝材を作製している。
【0004】
近時、プラスチックごみの排出の削減が世界的に求められている。枯渇性資源の消費を抑制するべく、更新性資源(再生可能資源)により代替しようとする機運も益々高まっている。更新性資源の代表が、紙である。
【0005】
紙自体は通常、ガスバリア性及びヒートシール性を有していない。紙を主体として緩衝材を作製するには、紙シートにガスバリア性及びヒートシール性を付与する必要がある。そのために、紙シートにプラスチックを塗布し、または紙シートにプラスチックシートを積層するラミネーションを施すことが考えられる。
【0006】
だが、そうしてできた緩衝材は当然、紙とプラスチックとの複合材となり、紙としてリサイクルすることが困難である。紙の層からプラスチックの層をわざわざ剥離させて分別することは、現実的とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-100411号公報
【特許文献2】特開2014-133588号公報
【特許文献3】特開2014-008762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の所期の目的は、紙を主たる素材とし、リサイクルが容易な気泡緩衝体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、互いに対向する第一のシートと第二のシートとの間に気泡室を形成し、第一のシートにおける気泡室の周囲の部位と第二のシートにおける気泡室の周囲の部位とを接合して気泡室内に気体を封入する緩衝材であって、前記第一のシート及び前記第二のシートがそれぞれ、紙主体のシート本体の少なくとも一方の面に熱可塑化デンプンを用いたコート層が敷設されたものである緩衝材を構成した。
【0010】
前記コート層は、例えば、前記シート本体の少なくとも一方の面に熱可塑化デンプンを塗工することにより、またはシート本体の少なくとも一方の面に熱可塑化デンプンによるラミネーションを施すことにより敷設される。
【0011】
前記第一のシートまたは前記第二のシートの相手方に対向する面に前記コート層が設けられていれば、第一のシートにおける気泡室の周囲の部位と第二のシートにおける気泡室の周囲の部位とを熱溶着して接合することができる。
【0012】
本発明に係る緩衝材の構造は、前記第一のシート及び前記第二のシートの双方における気泡室に面する部位が互いに離反する方向に膨出しているようなものでもよいし、第一のシートまたは第二のシートの何れかにおける気泡室に面する部位が相手方から離反する方向に膨出しているようなものでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙を主たる素材とし、リサイクルが容易な気泡緩衝体を具現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の緩衝材の斜視図。
図2】同実施形態の緩衝材の要部を拡大した端面図。
図3】同実施形態の緩衝材の要部を拡大した端面図。
図4】本発明の変形例の一を示す端面図。
図5】本発明の変形例の一を示す端面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の気泡緩衝材は、例えば各種の物品を梱包する際に梱包箱内の隙間を埋めて物品を保護するために使用される。図1ないし図3に示すように、本緩衝材は、互いに対向する二枚のシート1、2の間に気泡室0を形成し、その気泡室0内に空気等の気体を封入してなる。
【0016】
気泡室0は、ピロー形(枕状)に膨らんでおり、梱包される物品に接触しながら弾性変形し得るクッションとなる。本実施形態では、第一のシートたるキャップシート1、及び第二のシートたるバックシート2の双方における気泡室0に面する部位が、互いに離反する方向に膨出している。
【0017】
本緩衝材を構成するキャップシート1及びバックシート2はそれぞれ、紙(特に、再生紙)主体のシート本体11、21に熱可塑性デンプンを用いたコート層12、22を積層し、そのコート層12、22によりガスバリア性及びヒートシール性を付与したものである。
【0018】
熱可塑性デンプンは、天然資源であるデンプンを変性することで得られる既知の生分解性バイオマス素材であり、酸素ガスや極性の大きい炭酸ガスに対してこれを透過させ難い気密性、遮蔽性を備えることができる。熱可塑性デンプンのガラス転移温度は、70℃ないし100℃の間である。キャップシート1及びバックシート2にコート層12、22を敷設するにあたっては、紙製のシート本体11、21に熱可塑性デンプンを含む材料(熱可塑性デンプンに、他の生分解性樹脂またはそれ以外の素材を混合(特に、ドライブレンド)したものであることがある)12、22を塗布してもよいし、熱可塑性デンプンを含む材料を成形したシート12、22により紙製のシート本体11、21をラミネートしてもよい。
【0019】
図2に示すように、コート層12、22は、キャップシート1及びバックシート2の各々のシート本体11、21の表裏両面に設ける。尤も、シート本体11、21の両面にコート層12、22を設けることは必須ではない。必要十分なガスバリア性及びヒートシール性を確保できるのであれば、図3に示すように、各シート本体11、21の片面にのみコート層12、22を設けることも許される。その場合には、キャップシート1とバックシート2とのうち一方のシート本体11、21の、他方に相対する側の面に、熱可塑性デンプンを用いたコート層12、22を敷設する。
【0020】
その上で、キャップシート1における気泡室3を囲繞する周囲の部位13と、バックシート2における気泡室3を囲繞する周囲の部位23とを、熱溶着即ちコート層12、22を融着させるように加熱して接合する。
【0021】
本実施形態によれば、更新性資源でありかつ生分解性を有した植物由来の素材を主原料とし、実用上必要十分な気密及び強度を確保した気泡緩衝体を実現できる。コート層12、22は、段ボールの貼合にも用いられるデンプンを主原料としており、リサイクル性を阻害しない。本緩衝材をリサイクルまたは廃棄するにあたり、シート本体11、21からコート層12、22を分離させる工程は不要であり、省力化を図ることができる。
【0022】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、キャップシート1及びバックシート2の双方における気泡室0に面する部位が、互いに離反する方向に膨出した構造としていた。だが、図4に示すように、キャップシート1またはバックシート2の何れかのみ、その気泡室0に面する部位が、相手方から離反する方向に膨出している構造としてもよい。相手方における、気泡室0に面する部位は、膨出しておらず平板状のままである。
【0023】
加えて、図5に示すように、キャップシート1またはバックシート2の何れかにおける、膨出しその内に気泡室0を包有する部位の頂面部に、第三のシートたるライナーシート3を接合してもよい。このライナーシート3もまた、紙主体のシート本体31の少なくとも一方の面に熱可塑化デンプンを用いたコート層32を敷設したものである。
【0024】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
【符号の説明】
【0025】
0…気泡室
1…第一のシート(キャップシート)
11…シート本体
12…コート層
13…気泡室の周囲の部位
2…第二のシート(バックシート)
21…シート本体
22…コート層
23…気泡室の周囲の部位
図1
図2
図3
図4
図5