(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033459
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】アプリケータ
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20220222BHJP
A61M 39/22 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
A61M31/00
A61M39/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137350
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】516389226
【氏名又は名称】メディカル・ブレイン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516389237
【氏名又は名称】株式会社シンクメッド
(71)【出願人】
【識別番号】520179464
【氏名又は名称】八龍商店株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】内田 正志
(72)【発明者】
【氏名】八鍬 貴則
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA01
4C066AA09
4C066BB03
4C066CC01
4C066DD07
4C066EE14
4C066FF01
4C066GG03
4C066GG05
4C066GG06
4C066GG07
4C066GG16
4C066GG20
4C066HH24
4C066JJ02
4C066QQ14
(57)【要約】
【課題】シリンジ内に空気を導入するためにシリンジからプランジャを引き抜く必要が無く、操作性の良いアプリケータを提供する。
【解決手段】アプリケータ1は、シリンジSYの筒先に連結される筒状の連結部2と、長筒状に形成され患部に挿入される挿入部3と、連結部2と挿入部3とを連通させる内筒形状部41を有する接続部4と、を備える。接続部4は、内筒形状部41と外部とを連通させるエアベント42を有し、エアベント42は、指で塞ぐことができる大きさに形成されている。この構成によれば、エアベント42を開放すれば外部からシリンジSY内に空気が導入されるので、シリンジSY内に空気を導入するためにシリンジSYからプランジャPを引き抜く必要が無く、操作性が良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジの筒先に連結される筒状の連結部と、
長筒状に形成され患部に挿入される挿入部と、
前記連結部と前記挿入部とを連通させる内筒形状部を有する接続部と、を備え、
前記接続部は、前記内筒形状部と外部とを連通させるエアベントを有し、該エアベントは、指で塞ぐことができる大きさに形成されていることを特徴とするアプリケータ。
【請求項2】
前記接続部に、前記アプリケータを操作するための持ち手部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項3】
前記持ち手部は、前記接続部を挟むように設けられた一対の環状部を有し、
前記エアベントは、一の前記環状部の内周と前記内筒形状部とを連通させるように設けられていることを特徴とする請求項2に記載のアプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹腔鏡手術等で用いられるアプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な開腹手術は、皮膚を20センチ程度切開して行われる。これに対して腹腔鏡手術は、皮膚に1センチ程度の切開孔を3-4箇所設け、これら切開孔からトロカール/スリーブと呼ばれる筒状の器具を腹腔内に挿入する。そして、このトロカール/スリーブを通して鉗子を挿入し、鉗子の先端に取り付けた電気メス、はさみ、ピンセット等で患部を処置する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
患部の止血は、アプリケータと呼ばれる器具を用いて行われる。アプリケータは、細長筒状の器具で、その一端に止血剤が充填されたシリンジが接続されている。鉗子をトロカール/スリーブから引き抜いてアプリケータをトロカール/スリーブに挿入し、アプリケータの他端(先端)を患部に配置する。この状態でシリンジのプランジャを押し込むと、シリンジ内の止血剤がアプリケータを通して患部に注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなアプリケータでは、アプリケータの先端で止血剤が目詰まりしたり、腹腔内の空気圧の関係でプランジャがロックしてしまった場合には、一旦プランジャをシリンジから引き抜いてシリンジ内に空気を導入し直す必要が有り、操作性が良くない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、シリンジ内に空気を導入するためにシリンジからプランジャを引き抜く必要が無く、操作性の良いアプリケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアプリケータは、シリンジの筒先に連結される筒状の連結部と、長筒状に形成され患部に挿入される挿入部と、前記連結部と前記挿入部とを連通させる内筒形状部を有する接続部と、を備え、前記接続部は、前記内筒形状部と外部とを連通させるエアベントを有し、該エアベントは、指で塞ぐことができる大きさに形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記接続部に、前記アプリケータを操作するための持ち手部が設けられていることが好ましい。
【0009】
前記持ち手部は、前記接続部を挟むように設けられた一対の環状部を有し、前記エアベントは、一の前記環状部の内周と前記内筒形状部とを連通させるように設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアプリケータによれば、エアベントを開放することにより外部からシリンジ内に空気を導入することができるので、シリンジ内に空気を導入するためにシリンジからプランジャを引き抜く必要が無く、操作性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るアプリケータをトロカール/スリーブに装着した状態を示す側面図。
【
図2】上記アプリケータのエアベントを通る縦断面での断面図。
【
図3】(a)は、上記エアベントを指で塞いだ状態のアプリケータを示す側面図、(b)は、同エアベントを開放した状態のアプリケータを示す側面図。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るアプリケータの側面図。
【
図5】(a)(b)は、本発明の第3実施形態に係るアプリケータを構成する持ち手部の正面図及び斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1実施形態に係るアプリケータについて
図1乃至
図3を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、アプリケータ1は、シリンジSYの筒先Eに連結される連結部2と、患部に挿入される挿入部3と、挿入部3と連結部2とを接続する接続部4と、接続部4の周囲に設けられたフランジ5と、を備える。以下では、アプリケータ1を用いて液体状又は粉末状の止血剤Hを注入する場合を例にして説明するが、注入する薬剤は、止血剤Hに限定されず他の薬剤であってもよい。
【0013】
連結部2は、円筒状に形成され、挿入部3は、細長の円筒状に形成されている。接続部4は、連結部2と挿入部3とを連通させるように筒状に形成された内筒形状部41と、内筒形状部41と外部とを連通させるエアベント42と、を有する。エアベント42は、内筒形状部41の側壁を貫通して設けられた単一の穴により構成され、指で塞ぐことができる大きさ(例えば、φ3~3.5mm)に形成されている。エアベント42は、図例では丸穴により構成されているが、角穴等の他の形状の穴により構成されてもよい。
【0014】
連結部2は、その外周にねじ山(後の
図5(a)(b)で図示する)を有し、このねじ山とシリンジSYの筒先Eに設けられたルアーロック(不図示)とを螺合させることでシリンジSYに連結される。連結部2、接続部4及びフランジ5は、例えば、3Dプリンタを用いてナイロン系樹脂により一体成型される。挿入部3は、例えば、ステンレススチールにより構成されるが、チタン合金やプラスチック系材料により構成されてもよい。内筒形状部41の内径は、挿入部3側の端部では挿入部3の外径よりも大きく、且つエアベント42が設けられた箇所の挿入部3側では挿入部3の外径よりも小さくなるようなテーパ状に形成され、挿入部3は、内筒形状部41の挿入部3側の端部から挿入されることで接続部4に密着固定(テーパードロック)される。
【0015】
アプリケータ1は、腹腔鏡手術、関節鏡手術、硬性鏡手術等において、皮膚SKに設けた切開孔Pに挿入したトロカールT/スリーブSに挿入部3が挿通された状態で使用される(
図1参照)。挿入部3の先端31が患部に配置された状態でシリンジSYのプランジャPを押し込むと、シリンジSY内の止血剤Hが連結部2及び接続部4を通って挿入部3に流れ込み、最終的に挿入部3の先端31から患部に注入される。フランジ5は、挿入部3の伸長方向に直交して拡がる平板状に形成され、トロカールTの上面に当接することで、連結部2及び接続部4がトロカールT/スリーブSの内部に入らないようにしている。トロカールT/スリーブSは、スリーブSの外周に密着固定したクリップリング型ストッパーCと皮膚SKの表面(体表)とを接触させることにより、体表に対して所定位置に係留されている。
【0016】
次に、アプリケータ1の使用方法について
図3(a)(b)を参照して説明する。
図3(a)に示すように、アプリケータ1により止血剤Hを患部に注入する場合、指Fでエアベント42を塞いだ状態で、シリンジSYのプランジャPを押し込む。そうすると、プランジャPの圧力によってシリンジSYから押し出された止血剤Hが、連結部2、接続部4及び挿入部3を通って、挿入部3の先端31から患部に注入される。
【0017】
このとき、例えば、挿入部3の先端31で止血剤Hが目詰まりしたり、腹腔内の空気圧との関係によってシリンジSY、連結部2、接続部4及び挿入部3の内圧が高まり、プランジャPがロック、すなわち、プランジャPをそれ以上押し込めなくなることがある。このような場合には、エアベント42を塞いでいた指Fを離し、
図3(b)に示すように、エアベント42を開放してプランジャPを引き戻す。そうすると、エアベント42を介して外部からシリンジSY内に空気Aが導入されるので、シリンジSY、連結部2、接続部4及び挿入部3の内圧が低下する。これにより、プランジャPの押し込みが再度可能となるので、
図3(a)に示した操作に戻って、止血剤Hの注入を再開する。このように、
図3(a)(b)に示した操作を交互に行うことで、仮にプランジャPがロックした場合であっても、シリンジSY内の止血剤Hを残らず注入することができる。
【0018】
上記のようにアプリケータ1によれば、エアベント42を塞いでいた指Fを離してエアベント42を開放するだけで、外部からシリンジSY内に空気Aが導入される。従って、シリンジSY内に空気Aを導入するためにシリンジSYからプランジャPを引き抜く必要が無く、止血剤Hの注入を簡単且つ円滑に行うことができて操作性が良い。
【0019】
また、エアベントを備えていない従来のアプリケータでは、止血剤の注入が終了した後にアプリケータからシリンジを外して、挿入部の内径よりも小径の棒状部材を挿入部に差し込み、挿入部に残存していた止血剤を出し切る操作を行うことがある。このような操作は、棒状部材を別に用意する必要がある上、非常に手間がかかる煩雑なものであった。これに対して本実施形態のアプリケータ1では、棒状部材のような別部材を用意する必要やシリンジSYを取り外す必要がなく、単にエアベント42を指Fで塞ぐか塞がないかという簡単な操作だけで挿入部3に残存していた止血剤Hを出し切ることができるので、操作性を向上させることができる。
【0020】
次に、本発明の第2実施形態に係るアプリケータについて
図4を参照して説明する。アプリケータ11では、接続部4にアプリケータ11を操作するための持ち手部6が設けられている。持ち手部6は、接続部4を挟むように設けられた一対の環状部61、62を有する。環状部61、62は、エアベント42の両側に拡がる平板状に形成され、ユーザの指が挿通される大きさに形成された平面視円形の穴61a、62aと、挿入部3側の端面から円弧状に凹設された凹設部61b、62bと、を有する。また、持ち手部6には、エアベント42の位置を指し示す矢印模様63が付されている。
【0021】
ユーザは、例えば、左手の人差し指と中指の腹をそれぞれ凹設部61b、62bに接触させた状態で、人差し指と中指の折り曲げた指先を穴61a、62aに通し、左手の親指でエアベント42の開閉を制御する。これにより、アプリケータ11を確実に保持しつつ、エアベント42の開閉操作を容易に行うことができる。この際、矢印模様63が付されているので、エアベント42の位置が分かり易い。
【0022】
次に、本発明の第3実施形態に係るアプリケータについて
図5(a)(b)を参照して説明する。本アプリケータは、上述した持ち手部6を改良した持ち手部6aを有する。持ち手部6aでは、平面視において穴62aが、その一の辺62cが接続部4に隣接して接続部4と平行に伸び、且つ連結部2側が幅狭となった角丸三角状に形成されている。そして、エアベント42が、穴62aにおいて辺62cに対応する内周62dと接続部4の内筒形状部41とを連通させるようにして、内周62dの連結部2側の端部に設けられている。また、連結部2は、その外周に、円周方向に沿って設けられシリンジSYのルアーロック(不図示)と螺合するねじ山21を有する。
【0023】
ユーザは、例えば、左手の人差し指と親指をそれぞれ穴61a、62aに通し、穴62aの内部で親指を移動させることでエアベント42の開閉を制御する。このとき、エアベント42が、穴62aにおいて幅狭となる連結部2側の端部に設けられているので、エアベント42を塞ぐ際に親指が穴62aの形状によって自然にエアベント42へとガイドされる。そのため、逐一エアベント42の位置を確認しなくてもエアベント42を塞ぐことができ、操作性を向上させることができる。持ち手部6aによれば、人差し指と親指という2本の指でアプリケータを確実に保持しつつ、エアベント42の開閉操作を容易に行うことができる。
【0024】
なお、本発明に係るアプリケータは、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。上記実施形態では、アプリケータが、腹腔鏡手術で用いられる例を示したが、腹腔鏡手術に限らず、例えば、整形外科、脳神経外科、その他の外科系手術時の深部止血に使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1、11 アプリケータ
2 連結部
3 挿入部
4 接続部
41 内筒形状部
42 エアベント
6、6a 持ち手部
61、62 環状部
62d (一の環状部の)内周
SY シリンジ
E (シリンジの)筒先