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特開2022-33465ブッシング及び異形断面ガラス繊維製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033465
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】ブッシング及び異形断面ガラス繊維製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/08 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
C03B37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137363
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松浦 禅
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021MA02
4G021MA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】所望の異形断面ガラス繊維を安定して製造することができるブッシング、及び該ブッシングを用いて異形断面ガラス繊維を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】所定の一方向に延び、溶融ガラスを冷却可能に構成された冷却部材を配置可能な複数の冷却領域Sを具備するベースプレート41と、ベースプレート41に設けられ、溶融ガラスが流出する先端部において、扁平形状をなすノズル孔53と、ノズル孔53の短径方向で対向し、凹状の切欠き54を有する一対の第1の壁部51と、ノズル孔53の長径方向で対向する一対の第2の壁部52と、を備えた複数のノズル5と、を備え、第1の壁部51が、冷却領域Sの方向に向くように複数のノズル5が配置されたブッシング4。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の一方向に延び、溶融ガラスを冷却可能に構成された冷却部材を配置可能な複数の冷却領域を具備するベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられてなり、前記溶融ガラスが流出する先端部において、扁平形状をなすノズル孔と、前記ノズル孔の短径方向で対向し、凹状の切欠きを有する一対の第1の壁部と、前記ノズル孔の長径方向で対向する一対の第2の壁部と、を備えた複数のノズルと、
を備え、前記第1の壁部が、前記冷却領域の方向に向くように複数の前記ノズルが配置されたブッシングであって、
隣接する前記冷却領域の間には、前記冷却領域の延びる方向に沿って、所定の間隔を有して複数の前記ノズルが配置された第1ノズル列と、
前記第1ノズル列と間隔を有するとともに、前記冷却領域の延びる方向に沿って、所定の間隔を有して複数の前記ノズルが配置された第2ノズル列とが配置され、
前記第1ノズル列における、前記ノズルの一対の第1の壁部に設けられた前記切欠きのそれぞれが、前記冷却領域と対向可能となるように、前記第1ノズル列のノズルが配置される、ブッシング。
【請求項2】
前記第2ノズル列における、前記ノズルの一対の第1の壁部に設けられた切欠きのそれぞれが、前記冷却領域と対向可能となるように、前記第2ノズル列のノズルが配置される、請求項1に記載のブッシング。
【請求項3】
前記第1ノズル列における前記複数のノズル間及び前記第2ノズル列における前記複数のノズル間の間隔は、前記ノズルにおける前記ノズルの切欠きの先端の幅よりも狭い、請求項1または2に記載のブッシング。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のブッシングを用いて異形断面ガラス繊維を製造する異形断面ガラス繊維製造方法。
【請求項5】
前記溶融ガラスがEガラスである請求項4に記載の異形断面ガラス繊維製造方法。
【請求項6】
成形温度において、前記溶融ガラスは、102.0~103・5dPa・sの粘度を有する請求項4または5に記載の異形断面ガラス繊維製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形断面ガラス繊維の製造技術の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断面が長円形や楕円形のような扁平形状などの非円形断面を有する異形断面ガラス繊維は、樹脂と混合して複合化した場合に高い補強効果を実現できることから、さまざまな分野で利用されている。
【0003】
この種の異形断面ガラス繊維は、ブッシングのノズルから溶融ガラスを引き出しながら冷却することにより製造されるのが一般的である。この際、製造されるガラス繊維の断面形状は、ノズル先端部のノズル孔の形状に依存するため、異形断面ガラス繊維を製造する場合、ノズル先端部においてノズル孔が扁平状とされることが多い。
【0004】
しかしながら、扁平状のノズル孔を有するノズルを使用したとしても、ノズルから引き出される溶融ガラスの粘度が低すぎれば、ノズル先端部の直下で表面張力により溶融ガラスの断面が丸くなるように形成されやすく、所望の異形断面ガラス繊維を製造することができなくなる。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1のノズルでは、溶融ガラスが流出するノズル先端部において、扁平状のノズル孔の短径方向で対向する一対の長壁部のそれぞれに凹状の切欠き部を設け、この凹状の切欠き部により冷却して溶融ガラスの粘度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-226579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、1つのブッシングから引き出される異形断面ガラス繊維を増やすことにより、生産性を向上させることや、大きな番手のストランドを製造することが検討されている。特許文献1に記載の通り、両方の切欠きの近くに冷却部材を配することにより、ブッシングに設けられるノズルの個数が減り、異形断面ガラス繊維の生産性を十分に上げられない場合がある。
【0008】
また、両方の切欠き近くに冷却部材を配して溶融ガラスを冷却した場合、溶融ガラスが冷却されすぎる場合がある。そのため、異形断面ガラス繊維を安定的に成形できない場合もあった。
【0009】
以上の実情に鑑み、本発明は、所望の異形断面ガラス繊維を安定して製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るブッシングは、所定の一方向に延び、溶融ガラスを冷却可能に構成された冷却部材を配置可能な複数の冷却領域を具備するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられてなり、前記溶融ガラスが流出する先端部において、扁平形状をなすノズル孔と、前記ノズル孔の短径方向で対向し、凹状の切欠きを有する一対の第1の壁部と、前記ノズル孔の長径方向で対向する一対の第2の壁部と、を備えた複数のノズルと、を備え、前記第1の壁部が、前記冷却領域の方向に向くように複数の前記ノズルが配置されたガラス繊維製造装置であって、隣接する前記冷却領域の間には、前記冷却領域の延びる方向に沿って、所定の間隔を有して複数の前記ノズルが配置された第1ノズル列と、前記第1ノズル列と間隔を有するとともに、前記冷却領域の延びる方向に沿って、所定の間隔を有して複数の前記ノズルが配置された第2ノズル列とが配置され、前記第1ノズル列における、前記ノズルの一対の第1の壁部に設けられた前記切欠きのそれぞれが、前記冷却領域と対向可能となるように、前記第1ノズル列のノズルが配置される。
【0011】
このような構成によれば、冷却部材の間に、第1ノズル列と第2ノズル列が配されるため、従来と比較してより多くのノズルを配置することができる。そのため、異形断面ガラス繊維の生産性を向上させることができるとともに、一度に多数のガラス繊維を得ることができるため、大きな番手のストランドを製造することができる。
さらに、第1ノズル列に含まれるノズルについては、一方の切欠きが冷却部材に直接向かい合い、他方の切欠きは、第2ノズル列のノズル間の隙間の領域を介して冷却部材に向かい合うため、溶融ガラスが冷却されすぎることを抑制できる。従って、成形時の溶融ガラスの粘度を適正に調整し、異形断面ガラス繊維を安定的に成形することができる。
なお、他方の切欠きが、第2ノズル列のノズルのみと向かい合う場合、溶融ガラスが冷却されない。
【0012】
本発明においては、前記第2ノズル列における、前記ノズルの一対の第1の壁部に設けられた切欠きのそれぞれが、前記冷却領域と対向可能となるように、前記第2ノズル列のノズルが配置されることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、第2ノズル列に含まれるノズルから引き出された溶融ガラスにおいても、成形時の溶融ガラスの粘度を適正に調整し、異形断面ガラス繊維を安定的に成形することができる。
【0014】
本発明においては、前記第1ノズル列における前記複数のノズル間及び前記第2ノズル列における前記複数のノズル間の間隔は、前記ノズルにおける前記ノズルの切欠きの先端の幅よりも狭いことが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、溶融ガラスが冷却されすぎることを確実に抑制できる。
【0016】
本発明に係る異形断面ガラス繊維製造方法は、上述のブッシングを用いて異形断面ガラス繊維を製造することを特徴としている。このような構成によれば、既に述べた構成と同様の効果を得ることができる。
【0017】
本発明においては、前記溶融ガラスがEガラスであることが好ましい。Eガラスは失透しにくいガラスであるため、異形断面ガラス繊維の生産性が向上する。
【0018】
本発明においては、成形温度において、溶融ガラスは、102.0~103・5dPa・sの粘度を有することが好ましい。すなわち、103・5dPa・s以下であれば、溶融ガラスの粘度が高くなりすぎないため、ガラス繊維の成形性を良好に維持することができる。また、102.0dPa・s以上であれば、溶融ガラスの粘度が低くなりすぎないため、溶融ガラスが表面表力によって円形断面に戻ろうとする力が弱められ、ガラス繊維の扁平比(長径寸法/短径寸法)を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、 所望の異形断面ガラス繊維を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る異形断面ガラス繊維製造装置を示す断面図である。
図2図2は、図1のブッシングのノズル周辺を拡大して示す断面図である。
図3図3は、図1のブッシングのノズル周辺を拡大して示す底面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るブッシングのノズルを示す図であって、(a)はその側面図、(b)は(a)のA1-A1断面図、(c)は(a)のB1-B1断面図である。
図5図5は、図3のブッシングのノズル周辺を拡大して示す底面図である。
図6図6は、比較例に係るブッシングのノズル周辺を拡大して示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0022】
(異形断面ガラス繊維の製造装置及び製造方法の一実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係る異形断面ガラス繊維製造装置10は、ガラス溶融炉1と、ガラス溶融炉1に接続されたフォアハース2と、フォアハース2に接続されたフィーダー3とを備えている。ここで、図1に示すXYZからなる直交座標系において、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向が鉛直方向である(以下、同様)。
【0023】
溶融ガラスGは、ガラス溶融炉1からフォアハース2を通じてフィーダー3に供給されると共に、フィーダー3内に貯留される。図1では1つのフィーダー3を図示しているが、ガラス溶融炉1には複数のフィーダー3が接続されていてもよい。また、ガラス溶融炉1とフォアハース2との間に清澄炉を設けてもよい。
【0024】
この実施形態では、溶融ガラスGはEガラスからなるが、Dガラス、Sガラス、ARガラス、Cガラス等の他のガラス材質であってもよい。
【0025】
フィーダー3の底部に、ブッシング4が配置されている。ブッシング4は、ブッシングブロック等を介してフィーダー3に取り付けつけられている。ブッシング4の底部は、図2に示すようにベースプレート41により構成されており、ベースプレート41には、複数のノズル5が設けられている。また、ベースプレート41には、所定の一方向であるY方向に延び、冷却管6を配置可能な複数の冷却領域Sが設けられている(図3参照)。そして、冷却領域Sには、冷却部材としての冷却管6が設けられている。
【0026】
ブッシング4のベースプレート41に設けられた複数のノズル5からフィーダー3内に貯留された溶融ガラスGが下方に引き出され、ガラス繊維(モノフィラメント)Gmが製造される。この際、成形温度における溶融ガラスGの粘度は、102.0~103・5dPa・s(好ましくは102.5~103・3dPa・s)の範囲内に設定される。なお、成形温度における溶融ガラスGの粘度は、ノズル5に流入する位置における溶融ガラスGの粘度とする。ガラス繊維Gmの表面には、図示しないアプリケータにより集束剤が塗布されるとともに、100~10000本が1本のストランドGsに紡糸される。なお、ストランドGsの番手は、紡糸されるガラス繊維Gmに依存し、ガラス繊維Gmの本数が多いほど、ストランドGsの番手が大きくなる。紡糸されたストランドGsは、巻き取り装置のコレット7に繊維束Grとして巻き取られる。ストランドGsは、例えば、1~20mm程度の所定長に切断され、チョップドストランドとして利用される。
【0027】
ガラス溶融炉1、フォアハース2、フィーダー3、ブッシング4、ノズル5及び冷却管6は、少なくとも一部が白金又は白金合金(例えば、白金ロジウム合金)により形成されている。
【0028】
溶融ガラスGの粘度を調整するために、フォアハース2、フィーダー3およびブッシング4の中から選ばれた一又は複数の要素を通電加熱などで加熱してもよい。
【0029】
図2及び図3に示すように、ノズル5は、先端部(下側部分)において、X方向で対向する一対の長壁部(第1の壁部)51と、Y方向で対向する一対の短壁部(第2の壁部)52と、長壁部51と短壁部52で区画形成された扁平状(本実施形態では長円形)のノズル孔53とを備えている。各々の長壁部51には切欠き54が設けられており、ノズル孔53の一部が切欠き54を通じてノズル5の外部空間に連通している。この実施形態では、ノズル孔53の長径方向はY方向と一致しており、ノズル孔53の短径方向はX方向と一致している。また、この実施形態では、短壁部52のX方向寸法は長壁部51のY方向寸法よりも短い。もちろん、壁部51,52のこれら寸法関係は特に限定されるものではない。また、ノズル孔53の断面形状は、長円形以外にも、楕円形等の形状であってもよい。
【0030】
図4(a)~(c)に示すように、ノズル5の各々の長壁部51に設けられた切欠き54は、同一寸法の台形状である。詳細には、この実施形態では、切欠き54は、長壁部51の中心線M1上に上底の中心点T1を有し、かつ、中心線M1に対して対称な等脚台形状(上底が下底よりも短い)である。内角θ1(上底の両側の内角)は、例えば90°超~160°(好ましくは110°~150°)である。なお、この実施形態では、ノズル孔53は扁平な長円形であり、Z方向で一定の形状である。図4(c)に示すように、ノズル5の先端部において、ノズル孔53は、Y方向寸法(長径寸法)aに対するX方向寸法(短径寸法)bの比率(a/b)が1.5~20(好ましくは3~10)の範囲である。
【0031】
このような構成によれば、ノズル5の切欠き54に起因する形状変形を抑えつつ、切欠き54の開口面積も十分に確保できる。したがって、扁平形状などの非円形断面を有する異形断面を有するガラス繊維Gmを安定的に成形可能となる。換言すれば、製造されたガラス繊維Gmの断面形状のばらつきが小さくなる。
【0032】
ノズル5は、先端部において長壁部51と短壁部52によって区画形成された扁平状のノズル孔53を有していれば、基端部(上側部分)の形状はノズル5の先端部の形状と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
ノズル5は、ベースプレート41に200~10000個配置されていることが好ましい。ノズル5を上記の個数配置することにより、番手の大きなストランドGsを得ることができる。なお、ノズル5は、ベースプレート41に1500個以上配置されていることが好ましい。
【0034】
冷却管6は、その内部に流体としての冷却水Fを循環させて冷却作用を及ぼすようになっている。冷却管6は、板状体であって、その板面が一定の方向(上下方向)に沿うように複数配置されている。なお、冷却管6は、この実施形態では、ベースプレート41の冷却領域Sに一体的に設けられているが、ブッシング4の底部から離して設けてもよい。また、冷却管6は、円管状体であってもよい。冷却管6の高さ位置は、溶融ガラスGの冷却条件に応じて適宜調整することができる。例えば、冷却管6は、ノズル5から引き出された溶融ガラスGに直接対面しないようにノズル5の先端よりも上方に配置されていてもよいし、ノズル5とノズル5から引き出された溶融ガラスGの双方に跨るように配置されていてもよい。冷却部材は、冷却管6に限らず、空気流を誘導して冷却作用を及ぼす冷却フィンなどであってもよい。
【0035】
図3及び図5に示すように、ブッシング4のベースプレート41において、隣接する冷却領域Sの間に、複数のノズル列L1,L2がX方向に間隔を置いて平行に配置されている。各ノズル列L1,L2は、ノズル孔53の長径方向をY方向に向けた複数のノズル5をY方向に延びる同一直線上に配置することで構成される。冷却管6は、X方向に隣接するノズル列L1,L2の間に、ノズル列L1,L2と平行に配置されている。なお、本実施形態において、ノズル列L1とノズル列L2は、Y方向におけるノズル5の配置位置が異なるものの、それ以外は同じである。これにより、図5に示すように冷却管6が、冷却管6と隣接するノズル5の切欠き54aに対向し、切欠き54aを通じてノズル5内を流通する溶融ガラスGが冷却されるようになっている。具体的には、ノズル5の先端部において、溶融ガラスGは冷却管6によって1000℃以上の温度から急激に冷却される。なお、冷却管6は、ブッシング4やノズル5を冷却し、これらの熱劣化を抑えて耐久性を高める機能もある。
【0036】
また、冷却管6と隣接しないノズル5の切欠き54bに関しても、隣接するノズル列(ノズル列L1に隣接するノズル列はL2であり、ノズル列L2に隣接するノズル列はL1である)に含まれるノズル5間の隙間の領域を介して冷却部材6に向かい合うため、溶融ガラスGが冷却されすぎることを抑制できる。従って、成形時の溶融ガラスGの粘度を適正に調整し、異形断面ガラス繊維を安定的に成形することができる。すなわち、ノズル5の切欠き54a側の溶融ガラスGは、冷却管6に直接向かい合うために急激に冷やされ、ノズル5の切欠き54b側の溶融ガラスGは、所定の距離を置いて冷却管6に向かい合うために、切欠き54a側の溶融ガラスGと比べてゆっくりと冷やされる。そのために、切欠き54a側の溶融ガラスGはすぐに固まり、変形しにくくなる一方、切欠き54b側の溶融ガラスGは、固まるまでにおいて、ある程度変形可能である。扁平率の高い異形断面ガラス繊維を安定して成形するためには、溶融ガラスGの一部分のみを急激に固めて繊維の断面が円くなるのを抑制する一方、その他の部分は徐々に固める必要がある。例えば、両方の長径側の溶融ガラスGを急激に固めてしまうと、扁平率は高くなるものの、ガラス繊維の切断等が発生しやすくなる。
【0037】
なお、図6のように、ノズル列L1のみからなり、冷却管6と隣接しないノズル5の切欠き54bが冷却部材6に向かい合わないと、溶融ガラスGが十分に冷却されない。
【0038】
本実施形態において、間隔D1及びD2は、切欠き54a及び54bの先端での幅Wよりも狭い。そのため、溶融ガラスGが冷却されすぎることを抑制できる。
【0039】
ノズル5間の間隔D1及びD2は、1~10mmであることが好ましく、1~5mmであることがより好ましい。これにより、ベースプレート41により多くのノズル5を配置することができる。また、切欠き54の先端での幅Wは、2~20mmであることが好ましい。なお、間隔D1及びD2と切欠き54の先端での幅Wの比率(W/D(D1,D2))は、例えば、0.5~5とすることができるが、1.1~2.5であることが好ましい。
【0040】
なお、1個のノズル列L1及びL2に含まれるノズル5の数は、10~500個以下であることが好ましい。
【0041】
以上のようにして異形断面ガラス繊維を製造する本実施形態によれば、以下に示すような作用効果が得られる。
【0042】
本実施形態では、冷却領域S(冷却管6)の間に、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2が配されるため、従来と比較してより多くのノズル5を配置することができる。そのため、異形断面ガラス繊維の生産性を向上させることができる。また、多くのノズル5が配置されるため、一度に得られるガラス繊維Gmの本数が多くなり、その結果、番手の大きなストランドGsを製造することができる。さらに、第1ノズル列Lに含まれるノズル5については、一方の切欠き54aが冷却管6に直接向かい合い、他方の切欠き54bは、第2ノズル列L2のノズル5間の隙間の領域を介して冷却管6に向かい合うため、溶融ガラスGが冷却されすぎることを抑制できる。従って、成形時の溶融ガラスGの粘度を適正に調整し、異形断面ガラス繊維を安定的に成形することができる。
【0043】
さらに、第2ノズル列Lに含まれるノズル5についても、一方の切欠き54aが冷却管6に直接向かい合い、他方の切欠き54bは、第1ノズル列L1のノズル5間の隙間の領域を介して冷却管6に向かい合うため、溶融ガラスGが冷却されすぎることを抑制できる。
【0044】
以上、本発明の実施形態に係る異形断面ガラス繊維の製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々のバリエーションが可能である。
【0045】
上記実施形態では、ノズル5間の間隔D1及びD2が等しいが、これらは異なっていてもよい。その場合、D1とD2の比率D1/D2は、0.5~2.0の範囲内であることが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1:ガラス溶融炉、4:ブッシング、41:ベースプレート、5:ノズル、51:長壁部(第1の壁部)、52:短壁部(第2の壁部)、53:ノズル孔、54:切欠き、6:冷却管、10:異形断面ガラス繊維製造装置、G:溶融ガラス、Gm:ガラス繊維(モノフィラメント)、Gs:ストランド、S:冷却領域、L1:第1ノズル列、L2:第2ノズル列、W:切欠きの開口幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6