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  • 特開-空気清浄装置および空気清浄方法 図1
  • 特開-空気清浄装置および空気清浄方法 図2
  • 特開-空気清浄装置および空気清浄方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033491
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】空気清浄装置および空気清浄方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20220222BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20220222BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20220222BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220222BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20220222BHJP
【FI】
A61L9/014
B01J20/34 D
B01J20/20 B
A61L9/01 B
F24F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137416
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】520309407
【氏名又は名称】黒田 高史
(74)【代理人】
【識別番号】100154335
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】黒田 政昭
(72)【発明者】
【氏名】黒田 高史
【テーマコード(参考)】
3L053
4C180
4G066
【Fターム(参考)】
3L053BD02
3L053BD05
4C180AA07
4C180AA10
4C180CC04
4C180EA14X
4C180HH05
4G066AA05B
4G066CA20
4G066DA03
4G066GA01
4G066GA18
(57)【要約】
【課題】効率的な照射により、迅速かつ普遍的に菌類やウイルスを除去できる空気清浄装置および空気清浄方法を提供する。
【解決手段】空気清浄装置1は、主に、送風機2と、パイプ3と、活性炭収容タンク4と、マイクロ波照射機5とから構成され、送風機2よりパイプ3を介してタンク4に下方へ吸気を行い、タンク4内に収容された活性炭ACに上方からの空気中の微粒子を吸着させた後、マイクロ波照射機5より、タンク4内に向けてマイクロ波を照射する。これにより、活性炭ACが加熱され、これに吸着した微粒子が焼かれるので、これに菌類やウイルスが付着していた場合、それらも同時に除去される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機と、
この送風機により下方に吸気されるとともに、活性炭を収容し、この活性炭に前記送風機からの吸気により空気中の菌類やウイルスを含み得る微粒子を吸着させるようにするタンクと、
前記タンク内の前記活性炭にマイクロ波を照射して、前記活性炭に吸着した微粒子が含み得る菌類やウイルスを除去する照射機と、を備えることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記タンクは、少なくとも一部がガラス板または陶器よりなる請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記照射機による前記活性炭へのマイクロ波照射時に火花を伴う請求項1または2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
入院施設、介護施設、または、換気を行い難くかつ人が密集して、飛沫が付着し易い場所にて用いられる請求項1から3のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項5】
活性炭を収容したタンクに下方への吸気を行って前記活性炭に空気中の菌類やウイルスを含み得る微粒子を吸着させた後、前記活性炭にマイクロ波を照射して微粒子が含み得る菌類やウイルスを除去することを特徴とする空気清浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の微粒子を吸着させた活性炭にマイクロ波を照射して菌類やウイルスを除去する空気清浄装置および空気清浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に蔓延し、多大な脅威をもたらしている。このような治療方法が確立されていない新たな病原体による感染症は、近年のグローバル化の進展に伴い、今後も発生することが懸念される。
【0003】
この脅威を収束させるには、いち早くワクチンが開発されることが望まれる。しかし、ワクチンの開発には時間がかかるのみならず、ワクチンは特異的な型をターゲットとして製造されるところ、新型コロナウイルスに様々な変異株が発生しているように、ウイルスは変異しやすく、開発されたワクチンが所望の効果を奏するとは限らないことがある。
【0004】
ここで、殺菌手段としては、紫外線照射が広く知られている。しかし、紫外線は皮膚に対して有害性があるため、人に当たらないように照射方向が制限される。また、紫外線は照射範囲が狭く、実際にウイルスを不活性化させるには相当の時間が必要になる。
【0005】
そのため、より迅速かつ普遍的な対処法が望まれる。これに関連して、たとえば特許文献1および2では、活性炭にパルス電流を放電して、活性炭を再生させることが提案されている。そして、たとえば特許文献3では、これを応用して、オゾンを吸着させた活性炭にパルス電流を放電して殺菌することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51-121496号公報
【特許文献2】特開昭51-121497号公報
【特許文献3】特開2005-87393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、パルス電流は、瞬間的に流れるため電流の大きさを制御し難く、照射面積が大きくなる傾向があるとともに、活性炭に均一に照射するには活性炭を撹拌する器具が必要となり、セッティングに手間がかかる懸念がある。
【0008】
また、上述の殺菌に関する開示がある特許文献3でも、単純に塵埃等の汚染物質の除去の過程で副次的にパルス電流による殺菌を行えることが記載されているにすぎず、特にウイルスの除去については何ら開示されていない。
【0009】
したがって、ウイルスの除去までを考慮すると、照射をピンポイントに制御できる効率的な手段であることが好ましい。
【0010】
本発明の目的は、効率的な照射により、迅速かつ普遍的に菌類やウイルスを除去できる空気清浄装置および空気清浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
<1> 送風機と、この送風機により下方に吸気されるとともに、活性炭を収容し、この活性炭に前記送風機からの吸気により空気中の菌類やウイルスを含み得る微粒子を吸着させるようにするタンクと、前記タンク内の前記活性炭にマイクロ波を照射して、前記活性炭に吸着した微粒子が含み得る菌類やウイルスを除去する照射機と、を備えることを特徴とする空気清浄装置である。
【0012】
<2> 前記タンクは、少なくとも一部がガラス板または陶器よりなる<1>に記載の空気清浄装置である。
【0013】
<3> 前記照射機による前記活性炭へのマイクロ波照射時に火花を伴う<1>または<2>に記載の空気清浄装置である。
【0014】
<4> 入院施設、介護施設、または、換気を行い難くかつ人が密集して、飛沫が付着し易い場所にて用いられる<1>から<3>のいずれかに記載の空気清浄装置である。
【0015】
<5> 活性炭を収容したタンクに下方への吸気を行って前記活性炭に空気中の菌類やウイルスを含み得る微粒子を吸着させた後、前記活性炭にマイクロ波を照射して微粒子が含み得る菌類やウイルスを除去することを特徴とする空気清浄方法である。
【0016】
なお、本発明において、「微粒子」とは、具体的な大きさにより区別する趣旨ではないが、概ね粒径20μm以下の目視が困難な程度の塵埃等を意味し、この中には飛沫や飛沫核を含むこととする。
【0017】
また、本発明において、「菌類」とは、細菌および真菌を問わず、さらには厳密には、このいずれに含まれなくても、目視できない程度の大きさの微生物も含むこととする。
【0018】
さらに、本発明において、菌類やウイルスの「除去」とは、概ね、菌類であれば殺菌、ウイルスであれば不活性化のことを意味するが、要は人への感染の懸念がなくなる状態になれば足りるものとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の空気清浄装置および空気清浄方法は、活性炭にマイクロ波を照射して、活性炭に吸着した微粒子が含み得る菌類やウイルスを除去するので、照射をピンポイントに制御できる。そのため、効率的な照射により、迅速かつ普遍的に菌類やウイルスを除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の空気清浄装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の空気清浄装置の一例を示す写真である。
図3図3(a)~(c)は、いずれも活性炭へのマイクロ波照射時に発生した火花を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態では、本発明の空気清浄装置の説明をしながら、本発明の空気清浄方法についても合わせて説明することとする。
【0022】
図1は本発明の空気清浄装置の概略構成図である。図1に示すように、本発明の空気清浄装置1は、主に、送風機2と、パイプ3と、活性炭収容タンク(以下、単に「タンク」と称する。)4と、マイクロ波照射機5と、搭載台6と、から構成される。
【0023】
搭載台6においては、上段に、タンク4と、マイクロ波照射機5が、下段に送風機2が、それぞれ搭載されており、送風機2とタンク4とがパイプ3により接続されている。なお、図では見えないが、タンク4においては、パイプ3は側面の下方側に接続されるようになっている。また、送風機2は、図示しない電源により駆動力が得られるようになっている。なお、空気清浄装置1は、必要に応じてカバーや操作盤を備えてもよい。
【0024】
この構成により、送風機2を駆動させると、パイプ3を介してタンク4に下方へ吸気がなされ、タンク4内に収容された活性炭ACに上方からの空気中の微粒子が吸着される。なお、送風機2により吸引した空気は、図示しない排気口より排気される。
【0025】
次いで、マイクロ波照射機5より、タンク4内に向けてマイクロ波を照射すると、直ちに活性炭ACに吸収されて1200~1600℃程度に加熱され、これに吸着した微粒子が焼かれるので、これに菌類やウイルスが付着していた場合、それらも同時に除去される。つまり、活性炭の間にマイクロ波が到達すると、到達したマイクロ波の一方側に位置する活性炭に、このマイクロ波が照射されて吸着していた微粒子が焼けて脱離し、他方側に位置する活性炭に吸着される。
【0026】
そして、送風機2を駆動し続ければ、その間、空気が吸引されて微粒子が活性炭ACに吸着し続けるので、マイクロ波照射機5より活性炭ACにマイクロ波を照射することで、順次、微粒子が処理される。
【0027】
空気清浄装置1を構成する各要素は、該当する機能を有する市販製品を、本装置が用いられる施設の大小に応じて適宜選択すればよいが、パイプ3としては、タンク4との位置調整を行い易くするために、蛇腹パイプ等の可撓性のパイプを使用することが好ましい。
【0028】
また、タンク4は、マイクロ波が照射されることを考慮すると、金属板やガラス板からなることが好ましく、少なくとも一部にガラス板か陶器を使用すると、活性炭ACへのマイクロ波照射効率が高くなるので、より好ましい。
【0029】
タンク4は、金属板を使用する場合、マイクロ波照射機5からのマイクロ波を側面から照射するのであれば、マイクロ波が活性炭ACに当たるように、照射部分にドット状に孔を開ける等して空隙を形成する必要がある。
【0030】
また、タンク4全体をガラス板や陶器で形成した場合、たとえば、タンク4を回転台の上に置いて本装置作動中は回転させる等すると、活性炭ACへのマイクロ波照射が、より均一化され易くなる。
【0031】
さらに、陶器で形成した場合には、ガラスより低コストで済み、しかもガラスと同程度のマイクロ波透過性を示すので、特に家庭用等の小規模用途で本装置を使用する場合に好適である。
【0032】
マイクロ波照射機5からのマイクロ波の照射方向は、タンク4の上方からであってもよい。この場合、マイクロ波の照射方向が、空気の流れる方向に沿い、活性炭ACに当たり易くなる利点がある。この際に、タンク4に蓋をして、この蓋に少なくともガラス板や陶器を使用すると、マイクロ波がガラス板を透過して活性炭ACに選択的に照射されるので、効率良く微粒子中の菌類やウイルスを除去し易くなる。なお、ガラス板と陶器は、それぞれ単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。
【0033】
マイクロ波照射機5から照射されるマイクロ波の周波数は、照射対象が加熱されるため、通常は電波漏洩対策をしなくても使用可能なISM周波数であり、発振管のコストを考慮すると、2450MHz帯であることが好ましい。
【0034】
マイクロ波照射機5によるマイクロ波照射は、一時的であっても連続的であってもよいし、不規則的に行ってもよいが、たとえば10分間隔等、装置あるいは使用される施設の大きさや目的に応じて、一定の間隔を置いて行うと、活性炭に吸着した微粒子の処理が確実に行える。
【0035】
また、一回毎のマイクロ波の照射時間は、特に制限はないが、上述したように直ちに活性炭ACに吸収されて高温加熱され、これにより菌類やウイルスの除去という所望の効果は達成されるので、安全面とコスト面を考慮すると、1秒未満であることが好ましい。
【0036】
このように、本発明では、活性炭にマイクロ波を照射するので、波によるピンポイントの照射が可能になる。また、マイクロ波は、上述したように、瞬時に活性炭に吸収されて加熱されるので、活性炭に吸着された微粒子を極めて迅速に処理することができる。さらに、活性炭にマイクロ波を当てた際には、瞬時の加熱により、たとえば図3(a)~(c)に示すような、火花を伴うことがあるので、活性炭間で接触し、相乗的に微粒子を処理することができる。さらには、本発明は、マイクロ波の照射による物理的な処理にて、感染症の懸念がある菌類やウイルスを除去するため、各病原体の特異性を考慮することなく、普遍的に、これらを除去することができる。
【0037】
本発明は、このようにマイクロ波の照射により効率的で、迅速かつ普遍的に菌類やウイルスを除去できるため、たとえば、新型コロナウイルスによる感染者が発生し得る施設にて、好適に用いることができる。つまり、病院等の入院施設や介護施設のように、疾病を患う者が多く滞在して施設内における感染拡大が懸念される場所、キャバクラ、ホストクラブといった接待を伴う飲食店、居酒屋、ライブハウス等の小劇場のような、「三密空間」と称される、換気を行い難くかつ人が密集して、飛沫がかかり易い場所などである。これらの場所にて、本発明を用いることで、飛沫あるいは飛沫核内に含まれている可能性が高い新型コロナウイルスが除去され、当該感染症を懸念することなく、利用者の安心確保が期待される。
【0038】
また、本発明は、空気清浄方法として、たとえば、浄化槽のフィルターに含まれる活性炭に、電子レンジからマイクロ波を照射するようにすれば、家庭用等の小規模用途においても好適に行うことができる。
【0039】
[実施例]
図2に示すように、実際に本発明の空気清浄装置1Aを試作した。この空気清浄装置1Aでは、送風機2としては、圧力吸引式の機械を使用した。また、タンク4としては、金属板からなり、マイクロ波照射機5からのマイクロ波照射側となる側面に、ドット状の空隙7が形成された容器を使用した。そして、このタンク4には、一部にガラス板を有する蓋8を準備した。さらに、マイクロ波照射機5としては、使用済みの電子レンジの発振器部分を活用した。なお、パイプ3としては、蛇腹式パイプを使用した。
【0040】
この空気清浄装置1Aにて、送風機2を駆動させてタンク4に下方への吸気を開始した後、マイクロ照射機5によりタンク4の側面から内部の活性炭にマイクロ波を照射した。その結果、活性炭は瞬時に加熱され、しばしば図3(a)~(c)に示すような火花を発しながら活性炭が接触し合い、効率的かつ迅速に活性炭に付着した微粒子が処理されていることが窺えた。また、タンク4の上面に蓋8をして上方から同様にマイクロ波を照射したところ、図3(a)~(c)に示したような火花が、より高頻度で発生し、さらに効率的に微粒子が処理されていることが窺えた。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、本発明の空気清浄装置および空気清浄方法は、上記実施の形態に限定されず、その範囲内で想定されるあらゆる技術的思想を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、施設内における感染症の拡大が懸念され易い場所の菌類やウイルスの除去に、広く用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1,1A 空気清浄装置
2 送風機
3 パイプ
4 活性炭収容タンク(タンク)
5 マイクロ波照射機(照射機)
6 搭載台
7 空隙
8 蓋
AC 活性炭
図1
図2
図3