(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033595
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】グラインダに装着する飛散抑制装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/10 20060101AFI20220222BHJP
B24B 23/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B24B55/10
B24B23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137574
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】516049272
【氏名又は名称】株式会社マルホウ
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 裕己
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
【Fターム(参考)】
3C047FF07
3C047JJ12
3C158AA04
3C158AC05
3C158CB03
(57)【要約】
【課題】グラインダの回転体の外周面および上面を覆うカバーが、構造物の研削対象面からはみ出る場合であっても、構造物から研削された研削物の飛散を抑制することができる飛散抑制装置を提供すること。
【解決手段】飛散抑制装置3は、第4のカバー24の下面の遮蔽範囲R2を遮蔽する遮蔽部材6と、遮蔽範囲R2を遮蔽した状態を保持し、かつ、遮蔽範囲R2を調節可能に遮蔽部材6を保持する第1保持部材4および第2保持部材5と、を備えている。遮蔽部材6は、透明の合成樹脂により長方形の板状に形成されており、第1保持部材4および第2保持部材5は、それぞれゴム製のチューブ(ゴム管)により形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を研削するグラインダに装着され、前記構造物から研削された研削物の飛散を抑制する飛散抑制装置であって、
前記グラインダは、
ケーシングと、
前記ケーシングの下方に配置された回転可能な回転体と、
前記ケーシングに設けられており、前記回転体を回転させるモータと、
前記ケーシングに取付けられており、前記回転体の外周面および上面を覆うカバーと、を備えており、
前記モータにより回転する前記回転体の下面を構造物に接触させることにより、前記構造物を研削するように構成されており、
前記飛散抑制装置は、
前記カバーの下面の所定範囲を遮蔽する遮蔽部材と、
前記所定範囲を遮蔽した状態を保持し、かつ、前記所定範囲を調節可能に前記遮蔽部材を保持する保持部材と、を備えていることを特徴とする飛散抑制装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材の一方の側部と、その側部と対向する他方の側部とは、前記遮蔽部材が前記所定範囲を遮蔽したときにそれぞれ前記カバーの外周縁からはみ出すように形成されており、
前記保持部材は、伸縮性を有し、
前記保持部材の一端は前記ケーシングの上面を跨いで前記一方の側部に取付けられており、前記保持部材の他端は前記ケーシングの上面を跨いで前記他方の側部に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の飛散抑制装置。
【請求項3】
前記保持部材は、管状または紐状の第1保持部材および第2保持部材を有し、
前記第1保持部材および第2保持部材は、前記ケーシングの上面において相互に交差して配置可能であり、
前記遮蔽部材の前記一方の側部には、第1隅部および第2隅部が相互に離間して設けられており、
前記遮蔽部材の前記他方の側部には、前記第1隅部と対角線上に位置する第3隅部と前記第2隅部と対角線上に位置する第4隅部とが相互に離間して設けられており、
前記ケーシングの上面において相互に交差した前記第1保持部材および前記第2保持部材の前記第1保持部材の一端は、前記第1隅部に着脱可能に取付けられており、かつ、前記第1保持部材の他端は、前記第3隅部に着脱可能に取付けられており、
前記ケーシングの上面において相互に交差した前記第1保持部材および前記第2保持部材の前記第2保持部材の一端は、前記第2隅部に着脱可能に取付けられており、かつ、前記第2保持部材の他端は、前記第4隅部に着脱可能に取付けられていることを特徴とする請求項2に記載の飛散抑制装置。
【請求項4】
前記第1保持部材および前記第2保持部材の少なくとも一方は、自身の一端から他端までの長さを調節可能であることを特徴とする請求項3に記載の飛散抑制装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材には、
前記回転体の厚さを超える高さを有し、相対向する側壁と、
前記相対向する側壁間に形成されており、前記回転体の外径を超える幅の底壁と、を有する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の飛散抑制装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材は、透光性を有する合成樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の飛散抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁などの構造物を研削するグラインダに装着され、構造物から除去された研削物の飛散を抑制する飛散抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明者は、先の出願において、
図13に示すグラインダ(塗材剥離装置)50を提案した。
図13は、グラインダ50によって構造物Bの研削対象面B1,B2を研削する状態を示す説明図である。なお、
図13は、グラインダ50に備えられたカバー53の内部を透視して示している。
グラインダ50は、ケーシング51と、このケーシング51の下面に取付けられた回転体(ディスク)52と、この回転体52の外周面および上面を覆うカバー53と、このカバー53の内側に水を供給する給水チューブ54と、研削された塗材などの廃棄物Mを排出する排出パイプ55とを備えている。給水チューブ54は、給水源60に接続されており、排出パイプ55は、排出された廃棄物Mを吸引して収容する吸引装置62に接続されている。ケーシング51の内部には、コンプレッサ61から供給される圧縮空気により駆動するエアモータ(図示せず)が設けられており、そのエアモータの駆動により回転体52が回転する。研削対象面B1,B2の表面は、アスベスト(石綿)を含んだ塗材によって塗装されている。
研削作業を行う作業者は、ケーシング51を手に持ち、回転する回転体52を構造物Bの研削対象面B1,B2に接触させ、研削対象面B1,B2に塗装された塗材を研削して除去する。除去された粉状の塗材は、給水チューブ54からカバー53の内側に供給された水と混合され、泥状の廃棄物Mとなって排出パイプ55から排出され、吸引装置62に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本願発明者は、上記のグラインダを提案した後に新たな課題を発見した。つまり、
図13に示す研削対象面B2のように、研削対象面B1から前方(図では右方)に突出しており、その幅がカバー53の外径よりも小さく、カバー53の外周面が研削対象面B2からはみ出る状態になったときの課題である。このように、カバー53の外周面が研削対象面B2からはみ出し、カバー53が研削対象面B1から浮き、カバー53と研削対象面B1との間に空間Eが形成された状態で研削対象面B2を研削すると、研削により発生した廃棄物Mが、空間Eから矢印F2により示す方向、つまり、カバー53の外部へ飛散することが分かった。
また、カバー53の外周面が研削対象面B2からはみ出した状態では、カバー53の内部における負圧が不足し、カバー53の内側に供給された水がカバー53の内側で充分に対流しないため、水と混合されない塗材が発生することが分かった。
特に、塗材にアスベストが含まれている場合は、研削された塗材に含まれているアスベストがカバー53の外部へ飛散するため、その飛散したアスベストを作業者が吸引し、作業者が健康を害するおそれのあることが分かった。
【0005】
そこで、本願発明は、上述した問題を解決するために創出されたものであり、グラインダの回転体の外周面および上面を覆うカバーが、構造物の研削対象面からはみ出る場合であっても、構造物から研削された研削物の飛散を抑制することができる飛散抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1に係る発明)
前述した目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明では、
構造物(B:
図9)を研削するグラインダ(2)に装着され、構造物(B)から研削された研削物の飛散を抑制する飛散抑制装置(3)であって、
グラインダ(2)は、
ケーシング(2d)と、
ケーシング(2d)の下方に配置された回転可能な回転体(2n:
図3)と、
ケーシング(2d)に設けられており、回転体(2n)を回転させるモータ(2w:
図2)と、
ケーシング(2d)に取付けられており、回転体(2n)の外周面および上面を覆うカバー(2a1,2a2,22,24)と、を備えており、
モータ(2w)により回転する回転体(2n)の下面を構造物(B)に接触させることにより、構造物(B)を研削するように構成されており、
飛散抑制装置(3)は、
カバー(2a1,2a2,22,24)の下面の所定範囲(R2:
図3)を遮蔽する遮蔽部材(6)と、
所定範囲(R2)を遮蔽した状態を保持し、かつ、所定範囲(R2)を調節可能に遮蔽部材(6)を保持する保持部材(4,5)と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の飛散抑制装置(3)において、
遮蔽部材(6)の一方の側部(6h:
図6)と、その側部と対向する他方の側部(6i:
図6)とは、遮蔽部材(6)が所定範囲(R2:
図3)を遮蔽したときにそれぞれカバー(2a1,2a2,22,24)の外周縁からはみ出すように形成されており、
保持部材(4,5)は、伸縮性を有し、
保持部材(4,5)の一端(4a,5a:
図6(B))はケーシング(2d)の上面を跨いで一方の側部(6h)に取付けられており、保持部材(4,5)の他端(4b、5b)はケーシング(2d)の上面を跨いで他方の側部(6i)に取付けられている(
図1)ことを特徴とする。
【0008】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明では、請求項1または請求項2に記載の飛散抑制装置(3)において、
保持部材(4,5)は、管状または紐状の第1保持部材(4)および第2保持部材(5)を有し、
第1保持部材(4)および第2保持部材(5)は、ケーシング(2d:
図1)の上面において相互に交差して配置可能であり、
遮蔽部材(6)の一方の側部(6h)には、第1隅部(6p:
図6)および第2隅部(6q)が相互に離間して設けられており、
遮蔽部材(6)の他方の側部(6i)には、第1隅部(6p)と対角線上に位置する第3隅部(6r)と第2隅部(6q)と対角線上に位置する第4隅部(6s)とが相互に離間して設けられており、
ケーシング(2d)の上面において相互に交差した第1保持部材(4)および第2保持部材(5)の第1保持部材(4)の一端(4a:
図6(B))は、第1隅部(6p)に着脱可能に取付けられており、かつ、第1保持部材(4)の他端(4b)は、第3隅部(6r)に着脱可能に取付けられており、
ケーシング(2d)の上面において相互に交差した第1保持部材(4)および第2保持部材(5)の第2保持部材(5)の一端(5a)は、第2隅部(6q)に着脱可能に取付けられており、かつ、第2保持部材(5)の他端(5b)は、第4隅部(6s)に着脱可能に取付けられていることを特徴とする。
【0009】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明では、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の飛散抑制装置(3)において、
第1保持部材(4)および第2保持部材(5)の少なくとも一方は、自身の一端(4a,5a:
図6(B))から他端(4b,5b)までの長さを調節可能であることを特徴とする。
【0010】
(請求項5に係る発明)
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の飛散抑制装置(3)において、
遮蔽部材(6)には、
回転体(2n)の厚さを超える高さを有し、相対向する側壁(6e,6e:
図11)と、
相対向する側壁(6e,6e)間に形成されており、回転体(2n)の外径(Φ:
図3)を超える幅の底壁(6f:
図11)と、を有する凹部(6g)が形成されていることを特徴とする。
【0011】
(請求項6に係る発明)
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の飛散抑制装置(3)において、
遮蔽部材(6:
図3)は、透光性を有する合成樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0012】
なお、上記各括弧内の符号および図番号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
(請求項1に係る発明の効果)
請求項1に係る発明の飛散抑制装置によれば、遮蔽部材が、カバーの下面の所定範囲を遮蔽するため、回転体によって研削された研削物が、カバーの下面の所定範囲からカバーの外部へ飛散しないようにすることができる。
また、遮蔽部材が遮蔽する所定範囲を調節可能であるため、研削対象面の幅に応じて遮蔽範囲を調節することができるので、作業性を高めることができる。
【0014】
(請求項2に係る発明の効果)
保持部材が伸縮性を有するため、遮蔽範囲を調整するときに、遮蔽部材を回転体から離れる方向に引っ張ると、それに応じて保持部材が伸長するため、遮蔽部材を移動させることができる。また、ケーシングの上面を跨いでいる保持部材をケーシングから離れる方向に引っ張ることにより、保持部材がケーシングによって支持されている位置を移動させることができる。
従って、遮蔽範囲が変更されたことに伴い、遮蔽部材の位置を容易に移動させることができるので、作業性を高めることができる。
【0015】
(請求項3に係る発明の効果)
第1保持部材および第2保持部材の各一端および各他端は、遮蔽部材の隅部に着脱可能に取付けられているため、第1保持部材および第2保持部材の一方または両方の伸縮性が低下した場合に新しい保持部材に交換することができる。また、遮蔽部材を保持するための保持力を変更する場合に、第1保持部材および第2保持部材の一方または両方を、変更したい保持力に対応するヤング率を有するものに交換することができる。
【0016】
(請求項4に係る発明の効果)
第1保持部材および第2保持部材の少なくとも一方の長さを調節することにより、第1保持部材および第2保持部材のケーシングに対する締付強度を調節することができるため、締付強度不足により、研削作業中に遮蔽部材の位置がずれないようにすることができる。
【0017】
(請求項5に係る発明の効果)
構造物を研削する際に、回転体が遮蔽部材の凹部に収容された状態にすると、凹部を形成する側壁の高さは、回転体の厚さを超えるため、回転体のうち遮蔽部材によって遮蔽されていない範囲で構造物を研削しても、回転体の下面が遮蔽部材の上面に接触しないため、遮蔽部材が回転体によって研削されてしまうおそれがない。
【0018】
(請求項6に係る発明の効果)
遮蔽部材は透光性を有するため、遮蔽部材によって覆われている構造物を遮蔽部材を通して視認することができるため、構造物に対する遮蔽部材の位置を容易に確認することができる。また、遮蔽部材は合成樹脂により形成されているため、遮蔽部材を金属により形成した場合と比較して、飛散抑制装置を装着したグラインダの重量を軽くすることができるので、飛散抑制装置を装着することにより研削作業性が低下しないようにすることができる。
【0019】
上述したように、本願発明によれば、グラインダの回転体の外周面および上面を覆うカバーが、構造物の研削対象面からはみ出る場合であっても、構造物から研削された研削物の飛散を抑制することができる飛散抑制装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る飛散抑制装置が装着されたグラインダの平面図である。
【
図4】
図1に示すグラインダに備えられた回転体の底面図である。
【
図5】
図1に示すグラインダに備えられたカバーの内側の構造を示す説明図である。
【
図6】第1実施形態に係る飛散抑制装置の説明図であり、(A)は飛散抑制装置に備えられた遮蔽部材の平面図、(B)は飛散抑制装置の平面図である。
【
図7】
図1に示すグラインダに装着された飛散抑制装置の遮蔽部材を下方に変位させた状態を示す説明図である。
【
図8】
図1に示す遮蔽部材の装着位置を後方に変位させた状態を示す説明図である。
【
図9】
図1に示すグラインダの使用状態を正面から見た説明図である。
【
図10】
図9に示すグラインダの使用状態を左側面から見た説明図である。
【
図12】本発明に係る飛散抑制装置の第2実施形態の説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のA-A矢視断面図である。
【
図13】従来のグラインダの使用状態を左側面から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〈第1実施形態〉
本発明の第1実施形態に係る飛散抑制装置について図を参照しつつ説明する。
[グラインダの構成]
最初に、本実施形態の飛散抑制装置を装着するグラインダの構成について図を参照しつつ説明する。
【0022】
図1から
図3に示すように、グラインダ2は、片手で持つことが可能な筒状のケーシング2dを備えており、そのケーシング2dの内部には、エアモータ2w(
図2)が設けられている。ケーシング2dの後端には、コンプレッサ100(
図11)に接続されたエア供給ホース101を接続するためのコネクタ2tが設けられている。コネクタ2tとケーシング2dとの間には、コンプレッサ100からコネクタ2tを介して供給される圧縮空気の供給および遮断を切替えるためのバルブ(図示省略)が内蔵されている。コネクタ2tとケーシング2dとの間には、上記バルブを開閉させることにより、エアモータ2wの起動および停止を操作するための筒状のスイッチ2eが回動可能に設けられている。
【0023】
図2に示すように、ケーシング2dの前端の内部には、エアモータ2wと連結された歯車機構2xが設けられている。ケーシング2dの前方の下端には、歯車機構2xと連結された円板形状の回転体2n(
図4,
図5)が、回転シャフト2q(
図5)によって回転可能に取付けられている。コンプレッサ100から供給された圧縮空気によってエアモータ2wが駆動すると、歯車機構2xを介して回転シャフト2qが回転し、回転体2nが回転する。
【0024】
図1に示すように、回転体2nの上面は、略円板形状で金属製の第1のカバー2a1によって覆われている。また、第1のカバー2a1には、給水チューブ91および排出パイプ2cが接続されている。
図11に示すように、給水チューブ91は、作業現場の水道などの給水源90に接続され、排出パイプ2cは、廃棄物排出ホース303に接続される。廃棄物排出ホース303は、廃棄物Mを収容する収容体300に接続され、収容体300は、吸引ホース401によって吸引装置400と接続される。
また、第1のカバー2a1の複数箇所には、吸気孔2a5がそれぞれ貫通形成されている。各吸気孔2a5は、吸引装置400が作動したときに、第1のカバー2a1の下面と回転体2nとの間に形成された空間K(
図5)に外気Aを取り込むためのものである。第1のカバー2a1の中心を円形状に囲む部分には、第1のカバー2a1の上面から立ち上がり形成された略円筒形状の立ち上がり部(図示せず)が一体形成されており、その立ち上がり部がケーシング2dの前端下部の周囲を包んでいる。
【0025】
また、
図5に示すように、回転体2nの外周面は、略円筒形状の第2のカバー2a2によって覆われている。第2のカバー2a2は、そのリング状の下端縁2a4が第1のカバー2a1の外周縁から下方に垂下した状態を呈しており、第1のカバー2a1と一体的に形成されている。
図1および
図3に示すように、第1のカバー2a1の周縁の一部が直線状に形成されており、その直線状に形成された周縁の一部から下方に垂下した第2のカバー2a2の周面は、平面状に形成された第1の平面部2a3になっている。各図には表れていないが、第1の平面部2a3は、その面と対向する方向から見ると横長の長方形を呈している。
【0026】
また、
図5に示すように、第2のカバー2a2の外周面は、第3のカバー22によって覆われている。第3のカバー22は、略円筒形状に形成されており、その周面の一部には平面状に形成された第2の平面部22bが設けられている。各図には表れていないが、第2の平面部22bは、その面と対向する方向から見ると横長の長方形を呈している。第2の平面部22bは、第2のカバー2a2の第1の平面部2a3と平行になっている。第2のカバー2a2の外周面と、第3のカバー22の内周面との間には、第2のカバー2a2の外周面に沿って第1の隙間23が形成されている。その第1の隙間23の一部は、第1の平面部2a3と第2の平面部22bとの間に形成された隙間23aになっている。
図3に示すように、隙間23aから回転体2nの外周面が露出している。なお、
図1では、第1の平面部2a3を見易くするために、第1の平面部2a3から外方に露出している回転体2nの外周面を省略している。
【0027】
第1の隙間23および隙間23aは、排出パイプ2cに接続された吸引装置400(
図11)が作動したときに、第1のカバー2a1の下面と回転体2nとの間に形成された空間K(
図5)に外気Aを取り込むためのものである。また、回転体2nの外周面と、第1のカバー2a1の内周面との間には、第2の隙間26が形成されている。この第2の隙間26は、第1の隙間23により取り込まれた外気Aを、第1のカバー2a1の下面と回転体2nの上面との間に形成された空間K(
図5)に導くためのものである。さらに、
図5に示すように、第3のカバー22の下端縁22cが研削対象面B1に当接した状態において、第2のカバー2a2の下端縁2a4と研削対象面B1との間には、第2の隙間26と連通する第3の隙間Sが形成されている。この第3の隙間Sも第2の隙間26と同様に、外気Aを空間Kに導くためのものである。
【0028】
図1に示すように、第3のカバー22は、複数箇所に設けられた略L字状の金具2f1などによって支持されている。
図2に示すように、金具2f1には、圧縮コイルバネ2hを介してボルト2gが挿通されており、そのボルト2gはナット(図示せず)に締結されている。グラインダ2を研削対象面に押し当てていないときは、各ボルト2gは、第1のカバー2a1の上面から、それぞれ圧縮コイルバネ2hの自由長だけ突出した状態になっている。
【0029】
また、
図1から
図3に示すように、第3のカバー22の外周面には、その外周面を覆う軟質の第4のカバー24が着脱可能に捲回されている。この実施形態では、第4のカバー24はゴムにより形成されており、可撓性を有する。第3のカバー22の外周面には、面ファスナー22aが貼着されており、第4のカバー24の内周面にも面ファスナー24aが貼着されている。つまり、第4のカバー24は、面ファスナー24aを第3のカバー22の面ファスナー22aに貼着することにより、第3のカバー22の外周面を覆った状態を維持している。また、第4のカバー24は、その先端を摘み、捲回方向とは逆方向に引っ張ることにより、第3のカバー22から容易に外すことができる。
第1のカバー2a1、第2のカバー2a2、第3のカバー22および第4のカバー24は、本発明のカバーの一例である。
【0030】
図1および
図2に示すように、第1のカバー2a1には、水量を調節する水量調節装置21が取付けられており、その水量調節装置21には、給水チューブ91が接続されている。また、水量調節装置21には、給水チューブ91から供給される水量を調節するための水量調節レバー21aが回動可能に取付けられている。水量調節レバー21aを所定位置まで回動すると、給水が停止する。
図5に示すように、第1のカバー2a1の下面(裏面)には、水を供給(噴射)する給水口2jが設けられている。給水口2jは、水量調節装置21(
図1,
図2)に連通しており、水量調節レバー21aの回動量を調節することにより、給水口2jから水Wが供給(噴射)され、供給(噴射)される水量が調節され、また、供給(噴射)が停止される。
また、
図4に示すように、第1のカバー2a1の下面(裏面)には、回転体2nにより研削された塗材などと水とが混合した廃棄物Mを排出するための排出口2vが貫通形成されている。排出口2vは、排出パイプ2c(
図1から
図3)と接続されている。
【0031】
図4に示すように、回転体2nの下面には、複数の研削部材30,31が取付けられている。研削部材30,31は、それぞれ回転体2nの回転方向F1、つまり回転軌跡に沿って取付けられている。複数の研削部材31の一部は、回転体2nの外周縁近傍の下面に所定間隔置きに取付けられており、他の一部は、それらよりも回転中心P寄りの下面に所定間隔置きに取付けられている。複数の研削部材30は、回転体2nの外周縁に沿って所定間隔置きに取付けられている。以下の説明では、回転体2nの下面から下方に向いている面、つまり研削対象面B1または研削対象面B2(
図9,
図10)と対向する面を平面とする。
【0032】
研削部材31は、肉薄で略板状に形成されており、研削部材30は、横長で幅の狭い直方体板状に形成されている。また、各研削部材30は、その一部が回転体2nの外周から外方に突出している。
つまり、
図3に示すように、隙間23aから回転体2nの外周が露出しており、その外周から外方に突出した各研削部材30により、研削対象面の塗材を研削することができる。したがって、研削対象面に凸部や角部などが存在する場合であって、隙間23aから露出した回転体2nの外周を上記凸部や角部などに当てることにより、その凸部や角部などに塗装された塗材を研削することができる。
【0033】
図5に示すように、回転体2nの周縁2n1は第2のカバー2a2の下端縁2a4と同じ高さであり、各研削部材31の下面が下端縁2a4から下方に突出している。また、図には表れていないが、各研削部材30の下面も下端縁2a4から下方に突出している。
図4に示すように、回転体2nには、その上下面(表裏面)を貫通して形成された複数の窓2pが、回転体2nの回転方向F1(回転軌跡)に沿って配置されている。本実施形態では、計9個の窓2pが貫通形成されている。また、
図5に示すように、回転体2nは、スカート状に形成されており、その周縁2n1から回転中心Pにかけて形成された上向きの凹部25を有する。各窓2pは、凹部25の内周壁にそれぞれ貫通形成されており、回転体2nの半径に沿った長軸を有する略楕円形にそれぞれ形成されている。また、回転体2nの上方には給水口2jが設けられている。給水口2jは、回転体2nが回転したときの各窓2pの回転軌跡上に配置されており、給水口2jの下方を各窓2pが通過すると、通過する窓2pから給水口2jが露出する。
図4では、停止した回転体2nのうち、給水口2jの直下に存在する窓2pから給水口2jが露出している。
【0034】
回転体2nが回転しているときにおいて、窓2pが給水口2jの下方を通過したとき、つまり、窓2pから給水口2jが露出したときは、給水口2jから噴射された水W(
図5)は、窓2pを通って凹部25(
図5)へ供給され、凹部25内を浮遊する研削粉Asを湿らせ、かつ、塗材が研磨された研磨対象面を濡らし(湿潤化し)、研削粉Asが第4のカバー24から外部へ飛散しないようにする。また、回転体2nのうち、窓2pが形成されていない部分が給水口2jの下方を通過したときは、給水口2jから噴射された水Wは、回転体2nの上面に噴射され、その噴射された水Wは、回転する回転体2nの上面によって霧状に変化し、空間Kに供給され、空間K内を浮遊する研削粉Asを湿らせ、研削粉Asが第4のカバー24から外部へ飛散しないようにする。
【0035】
上述したように、グラインダ2は、ケーシング2d(
図1~
図3)と、ケーシング2dの下方に配置された回転可能な回転体2n(
図4,
図5)と、ケーシング2dに設けられており、回転体2nを回転させるエアモータ2w(
図2)と、ケーシング2dに取付けられており、回転体2nの周縁および上面を覆うカバー(第1のカバー2a1、第2のカバー2a2、第3のカバー22および第4のカバー24)と、を備えており、エアモータ2wにより回転する回転体2nの下面を構造物B(
図9,
図10)に接触させることにより、構造物Bを研削するように構成されている。
【0036】
[塗材回収システムの構成]
次に、グラインダ2により研削された塗材を回収する塗材回収システムについて
図11を参照して説明する。
図11に示すように、塗材回収システム1は、グラインダ2と、グラインダ2へ水を供給する給水源90と、グラインダ2へ動力用の圧縮空気を供給するコンプレッサ100と、グラインダ2から排出される廃棄物(研削除去された塗材などと水とが混合した泥状のもの)Mを吸引する吸引装置400と、吸引装置400により吸引された廃棄物Mを蓄積して収容する収容体300とを備える。
【0037】
グラインダ2は、給水チューブ91により給水源90と接続されている。給水源90は、グラインダ2に対して、たとえば、毎分0.05~1.00リットルの水を供給する。給水源90は、作業現場に存在する水道でも良いし、水道に接続された給水ポンプでも良い。また、給水ポンプを使用する場合は、給水ポンプに設けられた水タンクに、剥離された塗材Cの飛散を防止するためのポリマーなどの飛散防止剤を添加することができる。
収容体300は、本体301と、この本体301の上部に開閉可能に設けられた蓋302とを備えている。本体301の内部には、吸引された廃棄物Mを蓄積して収容する二重の回収袋304,305が設けられている。回収袋304,305は、廃棄物Mから水を分離し、研削除去された塗材などを回収する機能を有する。
【0038】
たとえば、回収袋304,305は、0.3μm以下の粒子を濾過する能力を有する。さらに、回収袋304には、凝固剤としての高吸水性樹脂(たとえば、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物など)が予め収容されているため、廃棄物Mが凝固される。したがって、回収袋304,305をそのまま産業廃棄物として処理すれば良いので、廃棄物Mの廃棄作業効率を高めることができる。
収容体300は、吸引ホース401によって吸引装置400と接続されている。吸引装置400の排気口(図示せず)には、ヘパフィルタ402が設けられており、吸引装置400から排気される気体中に含まれるアスベストが極力少なくなるように構成されている。
【0039】
吸引装置400を駆動すると、吸引ホース401を通じて収容体300の内部が負圧になり、これにより、廃棄物排出ホース303を通じて、グラインダ2に設けられた第2のカバー2a2(
図5)の内部が負圧になる。そして、給水源90から給水チューブ91を介して水をグラインダ2へ供給すると、グラインダ2の給水口2j(
図5)から水Wが噴射される。そして、コンプレッサ100を駆動すると、コンプレッサ100から圧縮空気がグラインダ2へ供給され、グラインダ2のエアモータ2w(
図2)が駆動し、回転体2nが回転し、構造物Bを研削可能になる。
【0040】
作業者が第3のカバー22の下端縁22c(
図5)および第4のカバー24の下端縁24bを構造物Bに押し付けると、第3のカバー22および第4のカバー24は、各圧縮コイルバネ2h(
図2)の弾性力に抗して上昇し、
図5に示すように、第3のカバー22の下端縁22cおよび第4のカバー24の下端縁24bと、回転体2nの研削部材30,31の下面とが同じ位置になる。その一方、第2のカバー2a2の下端縁2a4は、研削対象面B1から浮いた状態になり、第1の隙間23と空間Kとが連通した状態になる。そして、回転する回転体2nの各研削部材30,31によって研削対象面B1の塗材が研削される。研削された塗材は、給水口2j(
図5)から噴射された水Wと混合され、泥状の廃棄物Mとなって、排出パイプ2cから廃棄物排出ホース303(
図11)を通じて収容体300へ排出される。
【0041】
[飛散抑制装置の構成]
次に、本実施形態の飛散抑制装置の構成について図を参照しつつ説明する。
図6(B)に示すように、本実施形態の飛散抑制装置3は、遮蔽部材6と、第1保持部材4と、第2保持部材5とを備えている。本実施形態では、遮蔽部材6は、透明の合成樹脂により長方形の板状に形成されている。
図6(A)に示すように、遮蔽部材6は、相対向する短手側部6h,6iと、相対向する長手側部6j,6kとを有する。一方の短手側部6hには、第1隅部6pおよび第2隅部6qが相互に離間して設けられている。また、他方の短手側部6iには、第1隅部6pと対角線上に位置する第3隅部6rと第2隅部6qと対角線上に位置する第4隅部6sとが相互に離間して設けられている。遮蔽部材6は、左右の幅がWで前後の奥行きがDに形成されている。
図3に示すように、遮蔽部材6の左右の幅Wは、グラインダ2の最も外側に設けられた第4のカバー24の外径Φよりも広い。短手側部6hは、本発明の一方の側部の一例であり、短手側部6iは、本発明の他方の側部の一例である。
【0042】
図6(B)に示すように、第1保持部材4および第2保持部材5は、それぞれゴム製のチューブ(管状のゴム(ゴム管))により形成されており、伸縮性を有する。
図6(A)に示すように、遮蔽部材6の第1隅部6pには、第1保持部材4の一端4a(
図6(B))を挿通するための第1挿通孔6aが貫通形成されており、第2隅部6qには、第2保持部材5の一端5a(
図6(B))を挿通するための第2挿通孔6bが貫通形成されている。また、第3隅部6rには、第1保持部材4の他端4b(
図6(B))を挿通するための第3挿通孔6cが貫通形成されており、第4隅部6sには、第2保持部材5の他端5b(
図6(B))を挿通するための第4挿通孔6dが貫通形成されている。第1保持部材4および第2保持部材5は、本発明の保持部材の一例である。第1保持部材4の一端4aおよび第2保持部材5の一端5aは、本発明の保持部材の一端の一例であり、第1保持部材4の他端4bおよび第2保持部材5の他端5bは、本発明の保持部材の他端の一例である。
【0043】
以下、一方の短手側部6hおよび他方の短手側部6iに共通の事項を説明する場合は、短手側部という場合がある。また、第1隅部6pから第4隅部6sに共通の事項を説明する場合は、隅部という場合がある。また、第1挿通孔6aから第4挿通孔6dに共通の事項を説明する場合は、挿通孔という場合がある。
【0044】
図6(B)に示すように、第1挿通孔6aに挿通された第1保持部材4の一端4aは、遮蔽部材6の下面側(裏面側)において止め結びされており、止め結びされた部分の外径が第1挿通孔6aの内径よりも大きいため、一端4aが第1挿通孔6aから上方へ抜けない構造になっている。また、第2挿通孔6bに挿通された第2保持部材5の一端5aは、遮蔽部材6の下面側(裏面側)において止め結びされており、止め結びされた部分の外径が第2挿通孔6bの内径よりも大きいため、一端5aが第2挿通孔6bから上方へ抜けない構造になっている。
【0045】
また、第3挿通孔6cに挿通された第1保持部材4の他端4bは、遮蔽部材6の下面側(裏面側)において止め結びされており、止め結びされた部分の外径が第3挿通孔6cの内径よりも大きいため、他端4bが第3挿通孔6cから上方へ抜けない構造になっている。また、第4挿通孔6dに挿通された第2保持部材5の他端5bは、遮蔽部材6の下面側(裏面側)において止め結びされており、止め結びされた部分の外径が第4挿通孔6dの内径よりも大きいため、他端5bが第4挿通孔6dから上方へ抜けない構造になっている。
【0046】
第1保持部材4の一端4aおよび他端4bの少なくとも一方の止め結びを解くことにより、第1保持部材4を遮蔽部材6から外すことができる。また、第2保持部材5の一端5aおよび他端5bの少なくとも一方の止め結びを解くことにより、第2保持部材5を遮蔽部材6から外すことができる。
従って、第1保持部材4および第2保持部材5の一方または両方の伸縮性が低下した場合に新しい保持部材に交換することができる。また、遮蔽部材6を保持するための保持力を変更する場合に、第1保持部材4および第2保持部材5の一方または両方を、変更したい保持力に対応するヤング率を有するものに交換することができる。
【0047】
また、第1保持部材4の一端4aおよび他端4bの少なくとも一方の止め結びの形成位置を変更することにより、第1挿通孔6aから第3挿通孔6cに至る第1保持部材4の長さを調節することができる。また、第2保持部材5の一端5aおよび他端5bの少なくとも一方の止め結びの形成位置を変更することにより、第2挿通孔6bから第4挿通孔6dに至る第2保持部材5の長さを調節することができる。
従って、第1保持部材4および第2保持部材5の少なくとも一方の長さを調節することにより、第1保持部材4および第2保持部材5のケーシング2dに対する締付強度を調節することができるため、締付強度不足により、研削作業中に遮蔽部材6の位置がずれないようにすることができる。
【0048】
図1に示すように、第1保持部材4および第2保持部材5は、ケーシング2dの上面において相互にX状に交差して配置されている。ケーシング2dの上面において相互にX状に交差した第1保持部材4および第2保持部材5の第1保持部材4の一端4aは、第1隅部6pに着脱可能に取付けられており、かつ、第1保持部材4の他端4bは、第3隅部6rに着脱可能に取付けられている。
また、ケーシング2dの上面において相互にX状に交差した第1保持部材4および第2保持部材5の第2保持部材5の一端5aは、第2隅部6qに着脱可能に取付けられており、かつ、第2保持部材5の他端5bは、第4隅部6sに着脱可能に取付けられている。
【0049】
図3に示すように、遮蔽部材6は、第1のカバー2a1、第2のカバー2a2、第3のカバー22および第4のカバー24のうち、最外周に配置された第4のカバー24の下面の所定範囲を遮蔽する。遮蔽部材6が遮蔽可能な遮蔽範囲R2は、遮蔽部材6の奥行きDにより決まる。遮蔽範囲R2は、回転体2nにより研削されない非研削範囲を含む。図中、符号Φは第4のカバー24の外径である。図示の例では、遮蔽範囲R2を形成する前後の幅は、第4のカバー24の半径(Φ/2)よりも大きく、左右の幅Wは第4のカバー24の外径Φよりも広い。図中、符号R1は、回転体2nのうち遮蔽部材6によって遮蔽されていない範囲、つまり、回転体2nにより研削可能な研削可能範囲である。遮蔽範囲R2は、本発明の所定範囲の一例である。
【0050】
[飛散抑制装置の使用方法]
次に、本実施形態の飛散抑制装置3の使用方法について図を参照しつつ説明する。
【0051】
図9および
図10に示すように、構造物Bには、平面状の研削対象面B1が形成されており、その研削対象面B1の上端には、研削対象面B2が突出形成されている。研削対象面B2は、左右方向に帯状に形成されており、その上下幅は、グラインダ2に設けられた第4のカバー24の外径Φ(
図3)よりも小さい。つまり、グラインダ2によって研削対象面B2の表面を研削しようとすると、第4のカバー24の外周面が研削対象面B2からはみ出る。
【0052】
先ず、作業者は、グラインダ2に設けられた第4のカバー24の上端を研削対象面B2の上端に一致させる。続いて、遮蔽部材6の一方の長手側部6jが研削対象面B2の下端に一致するように、遮蔽部材6の位置を調節する。これにより、第4のカバー24のうち、研削対象面B2からはみ出た部分が、遮蔽部材6によって遮蔽された状態になる。
従って、回転体2nによって研削された研削粉と、研削領域に供給された水とが混合した廃棄物Mが第4のカバー24から外部に飛散しないように抑制することができるため、作業者が廃棄物Mを吸引して健康を害するおそれを無くすことができる。
【0053】
また、第1のカバー2a1の下面のうち、研削対象面B2からはみ出した範囲を遮蔽部材6によって遮蔽することにより、第1のカバー2a1の下面と回転体2nとの間に形成された空間K(
図5)と外気とを非連通状態にすることができるため、吸引装置400(
図11)が作動したときに、第1のカバー2a1の下面と回転体2nとの間に形成された空間K(
図5)を適度な負圧にすることができる。
従って、給水口2j(
図5)から第1のカバー2a1の内側に供給された水Wが空間Kにおいて充分に対流するため、研削粉Asと水Wとが効率良く混合され、水Wと混合されない研削粉Asが第4のカバー24から外部に飛散するおそれがない。特に、研削粉Asにアスベストが含まれている場合は、第4のカバー24から外部に飛散したアスベストを作業者が吸引して健康を害するおそれを無くすことができる。
【0054】
遮蔽範囲R2を小さくする場合は、
図7に示すように、遮蔽部材6を下方に変位させ、
図8に示すように、遮蔽部材6を後方に変位させる。この場合、作業者が片手で遮蔽部材6を持ち、遮蔽部材6を下方に付勢すると、第1保持部材4および第2保持部材5がそれぞれ伸長し、遮蔽部材6が下方に変位する。つまり、第1保持部材および第2保持部材5のヤング率は、片手で伸長させることができる程度の大きさであるため、研削作業中に遮蔽範囲R2を容易に変更することができるので、研削作業効率を高めることができる。
続いて、ケーシング2dの上面にて支持されている第1保持部材4および第2保持部材5を摘まんで後方に移動させ、ケーシング2dの上面における支持位置を後方に移動させる。つまり、第1保持部材4および第2保持部材5がX状に交差している位置を後方に移動させることにより、第1保持部材4および第2保持部材5の遮蔽部材6に対する張力を均等化し、第1保持部材4および第2保持部材5が遮蔽部材6を安定して保持できるようにする。
なお、遮蔽部材6の後方への移動量が小さく、第1保持部材4および第2保持部材5が遮蔽部材6を安定して保持できる場合は、第1保持部材4および第2保持部材5がX状に交差している位置を後方に移動させなくても良い。
【0055】
[第1実施形態の効果]
(1)上述した第1実施形態に係る飛散抑制装置3によれば、遮蔽部材6が、最も外側に設けられた第4のカバー24の下面の遮蔽範囲R2を遮蔽するため、回転体2nによって研削された研削物が、第4のカバー24の下面の遮蔽範囲R2から第4のカバー24の外部へ飛散しないようにすることができる。
また、前述した第1実施形態に係る飛散抑制装置3によれば、遮蔽部材6が遮蔽する遮蔽範囲R2を調節可能であるため、研削対象面B2の幅に応じて遮蔽範囲R2を調節することができるので、作業性を高めることができる。
【0056】
(2)さらに、前述した第1実施形態に係る飛散抑制装置3によれば、第1保持部材4および第2保持部材5がそれぞれ伸縮性を有するため、遮蔽範囲R2を調整するときに、遮蔽部材6を回転体2nから離れる方向に引っ張ると、それに応じて第1保持部材4および第2保持部材5が伸長するため、遮蔽部材6を移動させることができる。また、ケーシング2dの上面を跨いでいる第1保持部材4および第2保持部材5をケーシング2dから離れる方向に引っ張ることにより、第1保持部材4および第2保持部材5がケーシング2dによって支持されている位置を移動させることができる。
従って、遮蔽範囲R2が変更されたことに伴い、遮蔽部材6の位置を容易に移動させることができるので、作業性を高めることができる。
【0057】
(3)さらに、前述した第1実施形態に係る飛散抑制装置3によれば、第1保持部材4および第2保持部材5の各一端4a,5aおよび各他端4b,5bは、遮蔽部材6の隅部6p~6sに着脱可能に取付けられているため、第1保持部材4および第2保持部材5の一方または両方の伸縮性が低下した場合に新しい保持部材に交換することができる。また、遮蔽部材6を保持するための保持力を変更する場合に、第1保持部材4および第2保持部材5の一方または両方を、変更したい保持力に対応するヤング率を有するものに交換することができる。
【0058】
(4)さらに、前述した第1実施形態に係る飛散抑制装置3によれば、第1保持部材4および第2保持部材5の少なくとも一方の長さを調節することにより、第1保持部材4および第2保持部材5のケーシング2dに対する締付強度を調節することができるため、締付強度不足により、研削作業中に遮蔽部材6の位置がずれないようにすることができる。
【0059】
(5)さらに、前述した第1実施形態に係る飛散抑制装置3によれば、遮蔽部材6は透光性を有するため、遮蔽部材6によって覆われている構造物Bを遮蔽部材6を通して視認することができるため、構造物Bに対する遮蔽部材6の位置を容易に確認することができる。また、遮蔽部材6は合成樹脂により形成されているため、遮蔽部材6を金属により形成した場合と比較して、飛散抑制装置3を装着したグラインダ2の重量を軽くすることができるので、飛散抑制装置3を装着することにより研削作業性が低下しないようにすることができる。
【0060】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態に係る飛散抑制装置について
図12を参照しつつ説明する。
本実施形態の飛散抑制装置に備えられた遮蔽部材6には、回転体2nを収容可能な凹部6gが形成されている。凹部6gは、相対向する側壁6e,6eと、相対向する側壁6e,6e間に形成された底壁6fとを有する。各側壁6eは、それぞれ回転体2n(
図4,
図5)の厚さを超える高さを有し、底壁6fは、回転体2nの外径Φを超える幅を有する。これにより、
図3に示すように、飛散抑制装置をグラインダ2に装着し、遮蔽部材6によって遮蔽範囲R2を遮蔽すると、
図12(B)に示すように、回転体2nが凹部6gに収容され、回転体2nの下面が凹部6gの底壁6fと接触しない状態になる。
従って、回転体2nのうち遮蔽部材6によって遮蔽されていない範囲で構造物Bを研削しても、回転体2nの下面が遮蔽部材6の底壁6fに接触しないため、底壁6fが回転体2nによって研削されてしまうおそれがない。
【0061】
[他の実施形態]
(1)第1保持部材4および第2保持部材5としてコイルスプリングを用い、遮蔽部材6の各隅部6p~6sにコイルスプリングを着脱可能に係止する係止突起を設けることもできる。
(2)遮蔽部材6のうち、研削対象面B2の下縁に接触させる長手側部6jから下方に側壁を形成することもできる。つまり、長手側部6jをL字状に形成することもできる。この構成によれば、研削対象面B2の下縁と遮蔽部材6との接触面積を大きくすることができるため、研削対象面B2に沿って遮蔽部材6を安定して移動させることができる。
【0062】
(3)遮蔽部材の長手側部6kは、直線状ではなく、外方に膨らんだ円弧状などの形状でも良い。
(4)第1保持部材4および第2保持部材5は、ゴム製のチューブ(ゴム管)では無く、ゴム紐でも良い。また、ゴムなどの伸縮性を有する材料を編んで形成された紐状でも良い。
(5)第1保持部材4および第2保持部材5の各一端および各他端を係止するための係止部を遮蔽部材6の各隅部6p~6sに設けることもできる。この構成によれば、飛散抑制装置を装着したグラインダ2を地面などに置いた場合に、第1保持部材4および第2保持部材5の各結び目が地面などと接触しないため、各結び目が傷付くおそれがない。
【0063】
(6)グラインダ2のケーシング2dの上面に、第1保持部材4および第2保持部材5を係止するための係止部を設けることもできる。この構成によれば、第1保持部材4および第2保持部材5を上記係止部に係止することにより、第1保持部材4および第2保持部材5がケーシング2dに支持されている箇所が研削作業中にずれないようにすることができるため、遮蔽部材6による遮蔽範囲R2がずれないようにすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1・・・塗材回収システム
2・・・グラインダ
2a1・・第1のカバー
2a2・・第2のカバー
22・・・第3のカバー
24・・・第4のカバー
2d・・ケーシング
2n・・回転体
2w・・エアモータ
3・・・飛散抑制装置
4・・・第1保持部材
4a・・一端
4b・・他端
5・・・第2保持部材
5a・・一端
5b・・他端
6・・・遮蔽部材
6a・・第1挿通孔
6b・・第2挿通孔
6c・・第3挿通孔
6d・・第4挿通孔
6e・・側壁
6f・・底壁
6g・・凹部
6h・・短手側部
6i・・短手側部
6j・・長手側部
6k・・長手側部
6p・・第1隅部
6q・・第2隅部
6r・・第3隅部
6s・・第4隅部
B・・・構造物
R1・・研削可能範囲
R2・・遮蔽範囲
Φ・・・外径