IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

特開2022-33599重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033599
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20220222BHJP
   B65G 57/00 20060101ALI20220222BHJP
   B65G 57/03 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B65G1/00 501A
B65G57/00 A
B65G57/03 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137579
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宗孝
【テーマコード(参考)】
3F022
3F029
【Fターム(参考)】
3F022AA06
3F022CC03
3F022EE09
3F022FF01
3F022FF19
3F022JJ16
3F022KK15
3F022LL06
3F022MM02
3F022MM11
3F029BA01
3F029CA42
3F029CA74
3F029CA75
3F029DA21
(57)【要約】
【課題】収納部への重量物の搬入および収納部からの重量物の搬出について、作業の簡略化および作業時間の短縮と、部品点数の削減とを実現する。
【解決手段】重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法が、仮載置面を有する一または複数の個別架台を、それぞれが載置面を有する複数の段を備える収納部の正面までフォークリフトにより順次に運搬して段積し、前記収納部の前記正面に架台段積体を配設する工程と、前記架台段積体において最下に位置する前記個別架台である最下部用個別架台の仮載置面の高さを調整する工程と、あらかじめ前記仮載置面または前記載置面に載置されてなる重量物をフリーベアに下方支持させたうえでフリーベアを移動させることにより、前記重量物を、仮載置面の上から載置面の上まで又は載置面の上から仮載置面の上まで搬送する工程を備えるようにした。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法であって、
a) 仮載置面を有する一または複数の個別架台を、それぞれが載置面を有する複数の段を備える収納部の正面までフォークリフトにより順次に運搬して段積し、前記収納部の前記正面に架台段積体を配設する工程と、
b) 前記工程a)と並行して又は前記工程a)の後に、前記架台段積体において最下に位置する前記個別架台である最下部用個別架台の前記仮載置面の高さを調整する工程と、
c) あらかじめ前記仮載置面または前記載置面に載置されてなる重量物をフリーベアに下方支持させたうえで前記フリーベアを移動させることにより、前記重量物を前記仮載置面の上から前記載置面の上まで又は前記載置面の上から前記仮載置面の上まで搬送する工程と、
を備える重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法であって、
前記工程a)は、
a-1) 前記最下部用個別架台を前記フォークリフトにより運搬するに先立って、当該個別架台のピラーの上端に取り付けられていたショートフレームを取り外して前記ピラーの下端に取り付ける工程
を備える
重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法であって、
工程b)は、
b-1) 前記仮載置面の高さと前記載置面の高さとの差があらかじめ設定された既定値に合うまで爪ジャッキにより前記最下部用個別架台を設置面から持ち上げる工程と、
b-2) 前記工程b-1)の後に、前記最下部用個別架台と前記設置面との隙間にライナーを挿入する工程と、
を備える
重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法であって、
d) 前記工程a)の前に、前記収納部の正面に位置出しブロックを配置する工程
を備え、
前記工程a)は、
a-2) 前記最下部用個別架台が前記位置出しブロックに当たるまで前記フォークリフトにより前記最下部用個別架台をスライドさせる工程
を備える
重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法であって、
前記工程c)は、
c-1) 前記フリーベアに結合されたプッシャーアームに伸縮棒を接続する工程と、
c-2) 前記工程c-1)の後に、前記伸縮棒に力を加えて前記プッシャーアームと一体となった前記フリーベアを移動させる工程と、
を備える
重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法であって、
前記工程c-2)は、
c-2-1) 前記伸縮棒が前記個別架台の骨格要素に干渉する前まで前記伸縮棒により前記フリーベアを移動させる工程と、
c-2-2) 前記工程c-2-1)の後に、前記フリーベアがさらに移動可能となるように前記伸縮棒の長さを違える工程と、
c-2-3) 前記工程c-2-2)の後に、前記伸縮棒により前記フリーベアを移動させる工程と、
を備える
重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナトリウム-硫黄電池のモジュール電池は、パッケージ、コンテナ、架台段積体等の収納部に搬入される。
【0003】
収納部は、鉛直方向に複数の段を備える。あるいは、複数個が鉛直方向に積み重ねられることで、複数の段をなしている。このため、モジュール電池が収納部に搬入される場合は、モジュール電池が複数の段から選択された搬入先の段に搬入される。また、モジュール電池が収納部から搬出される場合は、モジュール電池が複数の段から選択された搬出元の段から搬出される。
【0004】
モジュール電池の搬入先の段への搬入及び搬出元の段からの搬出は、レール及びフリーベアを備える専用治具並びに専用の吊治具を用いて行われる。専用治具は、モジュール電池が仮載置される仮載置面の高さを、搬入先の段又は搬出元の段の載置面の高さに応じて変更する機能を有する。当該機能を有する専用治具は、油圧式の専用治具及び段積式の専用治具に大別される。油圧式の専用治具は、油圧ポンプにより仮載置面の高さを変更することができる。特許文献1に記載された技術は、油圧式の専用治具の例である。段積式の専用治具は、積み重ねる段積架台の数を変更すること等により仮載置面の高さを変更することができる。
【0005】
図23から図27は、段積式の専用治具の参考例を模式的に示す斜視図である。参考例では、収容部が鉛直方向に最大で5つの段を備える場合を例示している。
【0006】
図23に示される専用治具91は、モジュール電池が鉛直方向下側から5段目の段に搬入される又は鉛直方向下側から5段目の段から搬出される場合に用いられる。専用治具91は、段積架台台車901、1段目の段積架台902、2段目の段積架台903、3段目の段積架台904及びメンテナンスパレット905を備える。段積架台台車901、1段目の段積架台902、2段目の段積架台903、3段目の段積架台904及びメンテナンスパレット905は、記載された順序で鉛直方向下側から鉛直方向上側へ段積される。
【0007】
なお、本明細書においては以降、記載の簡単のため、鉛直方向下側を単に「下側」あるいは「下」と称し、鉛直方向上側を単に「上側」あるいは「上」と称することがある。
【0008】
図24に示される専用治具92は、モジュール電池が下から4段目の段に搬入される又は下当該段から搬出される場合に用いられる。専用治具92は、段積架台台車901、1段目の段積架台902、2段目の段積架台903及びメンテナンスパレット905を備える。段積架台台車901、1段目の段積架台902、2段目の段積架台903及びメンテナンスパレット905は、記載された順序で下から上へ段積される。
【0009】
図25に示される専用治具93は、モジュール電池が下から3段目の段に搬入される又は当該段から搬出される場合に用いられる。専用治具93は、段積架台台車901、1段目の段積架台902及びメンテナンスパレット905を備える。段積架台台車901、1段目の段積架台902及びメンテナンスパレット905は、記載された順序で下から上へ段積される。
【0010】
図26に示される専用治具94は、モジュール電池が下から2段目の段に搬入される又は当該段から搬出される場合に用いられる。専用治具94は、段積架台台車901及びメンテナンスパレット905を備える。段積架台台車901及びメンテナンスパレット905は、記載された順序で下から上へ段積される。
【0011】
図27に示される専用治具95は、モジュール電池が下から1段目の段に搬入される又は当該段から搬出される場合に用いられる。専用治具95は、メンテナンスパレット905を備える。
【0012】
図23から図26に示すように、段積架台台車901は、ホイール911を備える。図23から図27に示すように、メンテナンスパレット905は、ホイール912を備える。図23から図26に示される専用治具91~94では、ホイール911がレール921の上に載置される。図27に図示される専用治具95では、ホイール912がレール921の上に載置される。これにより、段積架台台車901を最も下側に備える専用治具91~94およびメンテナンスパレット905を最も下側に備える専用治具95は、レール921の上を走行することができる。専用治具91~95は、人力で動かされる。
【0013】
図23から図27に示すように、メンテナンスパレット905は、メンテナンスパレット本体931、フリーベア932R及び932L並びにハンドル933を備える。なお、フリーベア932R及び932Lは、メンテナンスパレット本体931に対して着脱可能とされていてもよい。
【0014】
フリーベア932R及び932Lの各々は、複数のボール受及びボールを備える。フリーベア932R及び932Lは、窒素ガスによって加圧されることでそれぞれのボールがボール受から鉛直下方に突出しかつ転動自在とされる下向きフリーベアである。フリーベア932R及び932Lの上面には、搬入及び搬出の対象たるモジュール電池が載置される。それぞれのボールが非加圧状態である場合は、フリーベア932R及び932L並びにそれらの上に載せられたモジュール電池は、容易に動かすことができない。一方、それぞれのボールが加圧状態である場合は、フリーベア932R及び932L並びにそれらの上に載せられたモジュール電池は転動自在な複数のボールにて下方支持されているだけであるので、フリーベア932R及び932L並びにそれらの上に載せられたモジュール電池は、容易に動かすことができる。
【0015】
それゆえ、ボールが加圧状態である場合、フリーベア932R及び932Lは、ハンドル933を回転させることにより水平方向に動かすことができる。これにより、フリーベア932R及び932Lの上にモジュール電池が載置されている場合には、これを搬送することが出来る。
【0016】
モジュール電池が収納部に搬入される際には、少なくとも収納部の正面において収納部と平行となるように、レール921が設置される。続いて、収納部の高さに応じて、レール921の上に専用治具91~95のいずれかが設置される。フリーベア932R及び932Lがメンテナンスパレット本体931から取り外されていた場合は、このタイミングで取り付けられる。続いて、フリーベア932R及び932Lの上にモジュール電池が載置される。フリーベア932R及び932Lの上にモジュール電池が載置される際には、専用の吊治具が取り付けられたモジュール電池がクレーンにより吊られる。
【0017】
続いて、モジュール電池が載置された専用治具91、92、93、94又は95が、レール921の上を走行させられ、収納部の正面まで人力で移動させられる。続いて、ハンドル933を回転させることにより、フリーベア932R及び932L並びにその上に載置されたモジュール電池が、メンテナンスパレット本体931の上から搬入先の段の載置面の上まで搬送される。続いて、専用治具91、92、93、94又は95が、レール921の上を走行させられ、クレーンの作業半径内まで人力で移動させられる。
【0018】
モジュール電池が収納部から搬出される際にも、レール921の設置から専用治具91、92、93、94又は95が収納部の正面まで人力により移動させられるまでは、搬入の場合と同様に行われる。続いて、フリーベア932R及び932L並びにその上に載置されたモジュール電池が、搬出元の段の載置面の上からメンテナンスパレット本体931の上まで搬送される。続いて、モジュール電池が載置された専用治具91、92、93、94又は95が、レール921の上を走行させられ、クレーンの作業半径内まで人力で移動させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2005-53611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
参考例の専用治具を用いたモジュール電池の搬入及び搬出においては、レールを設置及び撤去する作業に3時間程度の時間を要し、1日に収納部に搬入することができる又は収納部から搬出することができるモジュール電池の数を増やすことができない。
【0021】
また、搬入及び搬出に係る作業においては、クレーン及び専用の吊治具が必要である。モジュール電池を備える設備が設置される場所によってはさらに、フォークリフトが必要である。
【0022】
また、参考例においては、専用治具に備えられる部品の数が多いため、部品を倉庫で保管する際に大きな面積が必要であり、また、倉庫からモジュール電池を備える設備が設置される場所に部品を輸送する輸送車の台数が多くなる。
【0023】
これらの問題は、モジュール電池以外の重量物が搬入又は搬出される場合にも生じる。
【0024】
本発明は、これらの問題を解決するためになされた。本発明は、収納部への重量物の搬入および収納部からの重量物の搬出について、作業の簡略化および作業時間の短縮と、部品点数の削減とを実現することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
重量物を収納部に搬入又は収納部から搬出する方法は、仮載置面を有する一または複数の個別架台を、それぞれが載置面を有する複数の段を備える収納部の正面までフォークリフトにより順次に運搬して段積し、前記収納部の前記正面に架台段積体を配設する工程と、前記架台段積体において最下に位置する前記個別架台である最下部用個別架台の前記仮載置面の高さを調整する工程と、あらかじめ前記仮載置面または前記載置面に載置されてなる重量物をフリーベアに下方支持させたうえで前記フリーベアを移動させることにより、前記重量物を前記仮載置面の上から前記載置面の上まで又は前記載置面の上から前記仮載置面の上まで搬送する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、重量物の搬入及び搬出に際して、時間を要するレールの設置及び撤去する作業が不要となる。これにより、作業が簡略化されて作業時間が短縮されるので、1日に収納部に搬入することができる又は収納部から搬出することができる重量物の数を従来よりも増やすことができる。
【0027】
また、本発明によれば、従来は必要とされたクレーンで重量物を持ち上げる作業が不要となるので、この点からも作業が簡略化されて作業時間が短縮される。
【0028】
また、本発明によれば、重量物を収納部に搬入する又は収納部から搬出する作業に必要な部品の数が従来よりも削減される。これにより、部品を倉庫で保管する際に必要な面積が削減される。また、倉庫から重量物が設置される場所に必要な部品を輸送する輸送車の台数も削減される。
【0029】
この発明の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】収納部及び架台段積体を模式的に図示する側面図である。
図2】収納部及び架台段積体を模式的に図示する上面図である。
図3】個別架台の輸送時の構成を模式的に図示する斜視図である。
図4】個別架台の移動時の構成を模式的に図示する斜視図である。
図5】個別架台の搬入時及び搬出時の状態を模式的に図示する斜視図である。
図6】個別架台の搬入時及び搬出時の状態を模式的に図示する斜視図である。
図7】個別架台の搬入時及び搬出時の状態を模式的に図示する斜視図である。
図8】個別架台の搬入時及び搬出時の状態を模式的に図示する斜視図である。
図9】フリーベアの一部を模式的に図示する側面図である。
図10】定尺棒を模式的に図示する斜視図である。
図11】伸縮棒を模式的に図示する斜視図である。
図12】重量物を収納部に搬入する手順を示すフローチャートである。
図13】重量物を収納部に搬入する手順を示すフローチャートである。
図14】重量物を収納部に搬入する手順を示すフローチャートである。
図15】重量物を収納部に搬入する手順を示すフローチャートである。
図16】重量物を収納部に搬入する手順を示すフローチャートである。
図17】収納部の前に個別架台を配設する際の様子を模式的に示す上面図である。
図18】収納部の前に個別架台を配設する際の様子を模式的に示す上面図である。
図19】個別架台の高さを調整する様子を模式的に示す側面図である。
図20】重量物を収納部から搬出する手順を示すフローチャートである。
図21】重量物を収納部から搬出する手順を示すフローチャートである。
図22】重量物を収納部から搬出する手順を示すフローチャートである。
図23】段積式の専用治具の参考例を模式的に示す斜視図である。
図24】段積式の専用治具の参考例を模式的に示す斜視図である。
図25】段積式の専用治具の参考例を模式的に示す斜視図である。
図26】段積式の専用治具の参考例を模式的に示す斜視図である。
図27】段積式の専用治具の参考例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1 重量物の収納部への搬入又は収納部からの搬出
図1および図2はそれぞれ、本実施形態に係る方法において用いられる収納部及び架台段積体を模式的に示す側面図および上面図である。
【0032】
図1及び図2には、重量物1と、収納部2と、架台段積体3とが、示されている。本実施形態は、重量物1を収納部2に搬入する又は収納部2から搬出する方法に関する。当該方法においては、それら搬入および搬出に、架台段積体3が用いられる。より具体的には、図1および図2は、架台段積体3の最上位置の個別架台30に載置された重量物1を収納部2の最上位置の段20に搬入する直前の様子、あるいは、収納部2の最上位置の段20から架台段積体3の最上位置の個別架台30へと重量物1を搬出した直後の様子を、示している。
【0033】
本実施の形態において、重量物1は、2200kg以上の重量を有する物体であるとする。重量物1は例えば、ナトリウム-硫黄電池のモジュール電池である。重量物1が、ナトリウム-硫黄電池のモジュール電池以外の重量物であってもよい。
【0034】
また、収納部2は、重量物1を収納するパッケージである。収納部2が、パッケージ以外の収納部であってもよい。例えば、収納部2が、コンテナ、架台段積体等であってもよい。
【0035】
個別架台30は、本来的には、収納部2が設置されてなる場所の付近に設けられる搬入出拠点と他所との間にて重量物1を輸送する輸送時(以下、単に輸送時と称することがある)に、重量物1を梱包して輸送するための、輸送用の架台である。
【0036】
架台段積体3は、一または複数の個別架台(輸送用架台)30を、鉛直方向に段積したものである。本実施形態では、従来は上述のような重量物1の輸送にのみ使用されていた個別架台30を、収納部2の正面において段積して架台段積体3を構成し、係る架台段積体3を収納部2への重量物1の搬入および収納部2からの重量物1の搬出に利用する。
【0037】
なお、以降においては、収納部2の側面であって、架台段積体3との間で重量物1の搬入および搬出がなされる面を特に該収納部2の正面と称し、係る正面と対向する側面を特に背面と称し、それ以外の側面を単に側面と称する。
【0038】
2 収納部
図1及び図2に示すように、収納部2は、それぞれに重量物1を個別に収納可能な複数の段20を備える。複数の段20は、鉛直方向に積み重ねられる。
【0039】
本実施形態においては、複数の段20が4つの段20a~20dである場合を例示している。収納部2が、3つ以下又は5つ以上の段を備えていてもよい。
【0040】
図1及び図2に示すように、各々の段20(20a~20d)は、ピラー21、ビーム22、ブレス23、ジョイスト24、正面カバー25、側面カバー26および背面カバー27を備える。
【0041】
図1及び図2は、下から4段目の段20dに備えられる正面カバー25及び側面カバー26が取り外された状態を図示する。
【0042】
ピラー21は、平面視において矩形の頂点位置のそれぞれに配置されたベース2Bの上に配置され、鉛直方向に延びる。各々の段20のそれぞれのピラー21は、ベース2Bの上において他の段のピラー21と鉛直方向に連結されてなる。これにより、複数の段20は、ベース2Bの上に鉛直方向に積み重ねられている。
【0043】
ビーム22は、平面視において矩形の辺位置のそれぞれにおいて上下二段にかつ水平方向に延設されてなる。それぞれのビーム22の両端は、ピラー21に結合されてなる。
【0044】
ブレス23は、平面視において矩形の辺位置のそれぞれにて、鉛直方向及び水平方向から傾斜した方向に延設されてなる。それぞれのブレス23の両端は、ピラー21に結合されてなる。ジョイスト24は、下側に配設されたビーム22にて区画される矩形領域に格子状に配設されてなる。それぞれのジョイスト24の端部はビーム22に結合されてなる。
【0045】
ジョイスト24は、所定の間隔にて複数設けられてなる。それら複数のジョイスト24の上面は全体として、重量物1が載置される載置面20Sとなる。
【0046】
正面カバー25、側面カバー26、および背面カバー27は、ピラー21に付設されたパネルステー28に取り付けられる。ただし、重量物1の搬入および搬出の対象とされる段20の正面カバー25は、収納部2への重量物1の搬入時(以下、単に搬入時と称することがある)および収納部2からの重量物1の搬出時(以下、単に搬出時と称することがある)にはパネルステー28から一時的に取り外される。
【0047】
3 架台段積体
架台段積体3は、一または複数の個別架台(輸送用架台)30を備える。それぞれの個別架台30は、一の重量物1を独立に梱包出来るように構成されており、輸送時には、重量物1を梱包した個別架台30が個々に輸送される。
【0048】
図1及び図2に示すように、個別架台30は、その骨格要素として、ピラー31、ビーム32、ブレス33及びジョイスト34を備える。
【0049】
ピラー31は、平面視において矩形の頂点位置のそれぞれに配置され、鉛直方向に延びる。複数の個別架台30が段積される場合は、各々の個別架台30の4つのピラー31がそれぞれ、他の個別架台30の対応する位置のピラー31と鉛直方向に連結される。
【0050】
ビーム32は、平面視において矩形の辺位置のそれぞれにおいて上下二段にかつ水平方向に延設されてなる。それぞれのビーム32の両端は、ピラー31に結合されてなる。
【0051】
ブレス33は、個別架台30の強度を確保する目的で、個別架台30の4つの側面のうちの3つのそれぞれに、鉛直方向及び水平方向から傾斜した方向に延設されてなる。それぞれのブレス33の両端は、ピラー31またはビーム32に結合されてなる。
【0052】
ジョイスト34は、下側に配設されたビーム32にて区画される矩形領域に格子状に配設されてなる。それぞれのジョイスト34の端部はビーム32に結合されてなる。ジョイスト34は、所定の間隔にて複数設けられてなる。
【0053】
架台段積体3は、搬入時および搬出時、収納部2の正面に対向させて配設される。その際、図1及び図2に示すように、複数の個別架台30は、鉛直方向に積み重ねられる。また、搬入および搬出に先立って架台段積体3を収納部2の正面に配設する際、並びに、搬入および搬出が終了した後に架台段積体3を収納部2の正面から撤去させる際には、個々の個別架台30が順次に移動させられる。
【0054】
その際には、重量物1が載置された個別架台30も移動させられるが、以降において、個別架台30の移動時とは、重量物1が載置されていない個別架台30が搬入出拠点と収納部2の正面との間で搬送されるときのことを指し示すものとする。これは、収納部2に搬入される重量物1および収納部2から搬出された重量物1の搬入出拠点と収納部2との間の搬送は、輸送時の構成のままの個別架台30にて行われることを鑑み、両者を区別するためである。
【0055】
図1においては、収納部2の段20の数に対応させるべく、複数の個別架台30が4つの個別架台30a~30dである場合を例示している。
【0056】
ただし、複数の個別架台30のうち、重量物1が収納部2に搬入される際または収納部2から搬出される際に実際に段積される個別架台30の個数は、収納部2において最上の搬入先または搬出先となる段20の位置に応じて変更される。換言すれば、重量物1の搬入および搬出は、架台段積体3において最上位置の個別架台30を対象に行われる。後述するように、最上位置に配置されて重量物1の搬入および搬出を担う個別架台30(以下、最上部用個別架台30Tとも称する)には、係る搬入および搬出を可能とするための種々の部品が取り付けられる。
【0057】
例えば、重量物1が下から1段目の段20aにのみ搬入される場合は、個別架台30aのみが最上部用個別架台30Tとして搬入に使用される。また、下から2段目の段20bが最上の搬入先である場合は、2つの個別架台30a~30bが段積され、個別架台30bが最上部用個別架台30Tとされる。同様に、下から3段目の段20cが最上の搬入先である場合は、3つの個別架台30a~30cが段積され、個別架台30cが最上部用個別架台30Tとされる。そして、下から4段目の段20dが最上の搬入先である場合は、4つの個別架台30a~30dが段積され、個別架台30dが最上部用個別架台30Tとされる。
【0058】
同様にして、重量物1が収納部2から搬出される際に実際に段積される個別架台30の個数も、収納部2において最上の搬出元となる段20の位置に応じて変更される。
【0059】
一方、収納部2の最上位置の段20に加えて途中位置の段20についても搬入または搬出の対象とされる場合は、先の搬入または搬出における最上部用個別架台30Tが、次に搬入または搬出の対象とされる段20に対応する位置においても最上部用個別架台30Tとなるように、架台段積体3が再構成される。換言すれば、先の搬入または搬出の際に架台段積体3の中間に位置していたものの、続く搬入または搬出の際には不要な個別架台30は、架台段積体3から除外される。除外された個別架台30が、構成を違えられて重量物1の輸送に用いられる場合もある。
【0060】
また、詳細は後述するが、図1に示す4つの個別架台30a~30dの水平姿勢には、相異なる2通りの姿勢がある。概略的にいえば、一方は、収納部2との間で実際に重量物1の搬入および搬出が可能な姿勢であり、これを正姿勢と称する。他方は、係る搬入および搬出を行い得ない姿勢であり、これを逆姿勢と称する。これら正姿勢と逆姿勢とは、それぞれの個別架台30が水平面内で180°異なる向きにて段積されることにより実現されてなる。
【0061】
なお、少なくとも最下位置と最上位置の個別架台30は、正姿勢にて段積される。前者は、後述する高さ合わせを可能とするためであり、後者は、必ず搬入または搬出の対象とされるためである。図1には、個別架台30aと個別架台30dとが正姿勢にて段積されてなり、個別架台30bと個別架台30cとは逆姿勢にて段積されてなる場合を、例示している。なお、図1においては、正姿勢と逆姿勢の相違が、それぞれの個別架台30の側面におけるブレス33の向きの相違として現れている。具体的には、正姿勢にある個別架台30aと個別架台30dとでは、収納部2に近づくほどブレス33が下に向かっており(図面視で右下がりとなっており)、逆姿勢にある個別架台30bと個別架台30cとでは、収納部2に近づくほどブレス33が上に向かっている(図面視で右上がりとなっている)。
【0062】
4 個別架台の骨格要素の詳細
図3は、本実施形態において架台段積体3を構成する個別架台30の輸送時の構成を模式的に示す斜視図である。図4は、架台段積体3において搬入または搬出に使用される個別架台30(最上部用個別架台30T)に対し、搬入または搬出のための部品を取り付けた状態を模式的に示す斜視図である。図5ないし図8は、図4に示した最上部用個別架台30Tの搬入時及び搬出時の状態を、段階的にかつ模式的に示す斜視図である。図3図5ないし図8には、重量物1を二点鎖線にて示している。
【0063】
以降においては、個別架台30の4つの側面のうち、搬入時および搬出時に収納部2との間で実際に重量物1の受け渡しが行われる面を、個別架台30の正面と称し、該正面と対向する側面を背面と称し、他の側面を単に側面と称する。換言すれば、個別架台30の正面は、個別架台30が正姿勢にあるときに収納部2の正面と対向する面である。
【0064】
図3から図8に示すように、ピラー31は、ピラー31FR、31FL、31BR及び31BLを含む。
【0065】
ピラー31FR及び31FLは、個別架台30の正面側に配置される。ピラー31BR及び31BLは、個別架台30の背面側に配置される。ピラー31FR及び31BRは、個別架台30の一方の側面側に配置される。ピラー31FL及び31BLは、個別架台30の他方の側面側に配置される。
【0066】
図3に示すように、ビーム32は、ビーム32DF、32DB、32DR、32DL、32UF、32UB、32UR及び32ULを含む。
【0067】
ビーム32DF及び32UFは、個別架台30の正面側に配置される。ビーム32DF及び32UFの一方の端は、ピラー31FRに結合される。ビーム32DF及び32UFの他方の端は、ピラー31FLに結合される。
【0068】
なお、最上部用個別架台30Tにおいては、ビーム32UFは図3に図示される輸送時にのみ配設され、移動時、搬入時、および搬出時には、取り外される。
【0069】
ビーム32DB及び32UBは、個別架台30の背面側に配置される。ビーム32DB及び32UBの一方の端は、ピラー31BRに結合される。ビーム32DB及び32UBの他方の端は、ピラー31BLに結合される。
【0070】
ビーム32DR及び32URは、個別架台30の一方の側面側に配置される。ビーム32DR及び32URの一方の端は、ピラー31FRに結合される。ビーム32DR及び32URの他方の端は、ピラー31BRに結合される。
【0071】
ビーム32DL及び32ULは、個別架台30の他方の側面側に配置される。ビーム32DL及び32ULの一方の端は、ピラー31FLに結合される。ビーム32DL及び32ULの他方の端は、ピラー31BLに結合される。
【0072】
ビーム32DF、32DB、32DR及び32DLは、個別架台30の底面側に配置される。ビーム32UF、32UB、32UR及び32ULは、個別架台30の天面側に配置される。
【0073】
図3から図8に示すように、ブレス33は、ブレス33B、33R及び33Lを含む。
【0074】
ブレス33Bは、個別架台30の背面側に配置される。ブレス33Bの一方の端は、ピラー31BRに結合される。ブレス33Bの他方の端は、ビーム32DBに結合される。ブレス33Rは、個別架台30の一方の側面側に配置される。ブレス33Rの一方の端は、ピラー31FRに結合される。ブレス33Rの他方の端は、ピラー31BRに結合される。ブレス33Lは、個別架台30の他方の側面側に配置される。ブレス33Lの一方の端は、ピラー31FLに結合される。ブレス33Lの他方の端は、ピラー31BLに結合される。
【0075】
より詳細には、ブレス33R及び33Lは、個別架台30の正面に近づくほど下に向かうように設けられる。これにより、図1に示したように、正姿勢にて段積される個別架台30の側面においては、ブレス33が収納部2に近づくほど下に向かうようになり、逆姿勢にて段積される個別架台30の側面においては、ブレス33が収納部2に近づくほど上に向かうようになる。
【0076】
ジョイスト34は、ビーム32DF、32DB、32DR及び32DLに結合される。
【0077】
5 個別架台に配設される部品
個別架台30には、上述の骨格要素を備える他、輸送時、移動時、搬入時、および搬出時という4つのシチュエーションに応じて、必要な部品がさらに配設(具体的には取付または載置)される。それらの部品には、輸送時に配設されたまま他のシチュエーションにおいても維持されるものや、架台段積体3を構成する際の個別架台30の位置や姿勢に応じて配設態様が違えられるものなどがある。
【0078】
まず、輸送時に配設される部品について説明する。
【0079】
図3に示すように、輸送時の個別架台30においては、ピラー31FR、31FL、31BR及び31BLの上端に、ショートフレーム51FR、51FL、51BR及び51BLがそれぞれ取り付けられている。これらショートフレーム51FR、51FL、51BR及び51BLは、移動時、搬入時及び搬出時には取り外されるが、架台段積体3において最下部とされる個別架台30においてのみ、図4から図8に示すように、ピラー31FR、31FL、31BR及び31BLの下端にそれぞれ付け替えられる。これは、架台段積体3を収納部2の正面に配設する際の、仮載置面41Sと載置面20Sとの高さの違いを相殺するためである。
【0080】
それゆえ、図4ないし図8においてピラー31FR、31FL、31BR及び31BLの下端にショートフレーム51FR、51FL、51BR及び51BLが取り付けられているのはあくまで図示の都合によるものであり、架台段積体3の最下部以外において搬入または搬出に用いられる個別架台30には、ショートフレーム51FR、51FL、51BR及び51BLが取り付けられない。
【0081】
また、図3に示すように、輸送時の個別架台30においては、重量物1の周囲に、緩衝材41R及び41Lと、受材42F、42B、42R及び42Lと、受材42Uとが、取り付けられている。
【0082】
緩衝材41R及び41Lは、ジョイスト34の上に取り付けられる。緩衝材41R及び41Lの上面41Sは、直接にまたは間接に重量物1が仮載置される仮載置面41Sである。輸送時には、図3に示すように、仮載置面41Sの上に重量物1が載置される。これにより、輸送時に重量物1に対し下方から大きな衝撃が加わることが抑制される。
【0083】
受材42F、42B、42R及び42Lはそれぞれ、ビーム32DF、32DB、32DR及び32DLの上に取り付けられる。受材42F、42B、42R及び42Lにはそれぞれ、緩衝材43F、43B、43R及び43Lが取り付けられてなる。緩衝材43F、43B、43R及び43Lは、輸送時に重量物1の前面、背面、一方の側面及び他方の側面にそれぞれ接触する。これにより、輸送時に、重量物1が水平方向に動くこと、及び、重量物1に対し側方から大きな衝撃が加わることが、抑制される。
【0084】
受材42Uは、ビーム32UFと32UBとの間に掛け渡す態様にて取り付けられる。また、受材42Uには、下側に向けて緩衝材43Uが取り付けられる。緩衝材43Uは、輸送時に重量物1の天面に接触する。これにより、輸送時に、重量物1が鉛直方向に動くこと、及び重量物1に対し上方から大きな衝撃が加わることが、抑制される。
【0085】
以上により、輸送時においては、個別架台30に梱包された重量物1は6つの面において緩衝材と接触する状態となっているので、振動などに起因した衝撃を受けることが、好適に抑制される。
【0086】
次に、重量物1の搬入又は搬出に使用される(それゆえに正姿勢にて段積される)個別架台30につき、移動時、搬入時、および搬出時における部品の配設について説明する。
【0087】
図4から図8に示すように、受材42F及び42U並びに緩衝材43F、43B、43R、43L及び43Uは、移動時、搬入時及び搬出時には、個別架台30から取り外される。
【0088】
一方、緩衝材41R及び41Lと、受材42B、42R及び42Lは、移動時、搬入時及び搬出時においても個別架台30に取り付けられたままである。
【0089】
これに加え、最上部用個別架台30Tには、搬入または搬出に先立って、図4に示すように、緩衝材41R及び41Lの仮載置面41Sの上にフリーベア45R及び45Lが載置され、その上方にさらに重量物1が載置される。
【0090】
すなわち、緩衝材41R及び41Lは、仮載置面41Sにて直接またはフリーベア45R及び45Lを介して間接に、重量物1を下方支持する。これにより、移動時にも輸送時と同様、重量物1に対し下方から大きな襲撃が加わることが抑制される。
【0091】
また、受材42B、42R及び42Lは、フリーベア45R及び45L並びに後述するプッシャーアーム46が個別架台30から脱落することを阻害する。
【0092】
図9は、フリーベア45の一部を模式的に示す側面図である。
【0093】
図9に示すように、フリーベア45R及び45Lの各々は、複数のボール受451及びボール452を備える。フリーベア45R及び45Lは、窒素ガスによって加圧されることでそれぞれのボール452がボール受451から鉛直下方に突出しかつ転動自在とされる下向きフリーベアである。
【0094】
それぞれのボール452が窒素ガスにより加圧されていない非加圧状態である場合は、ボール452は、ボール受451から鉛直方向下側に突出しない。一方、それぞれのボール452が窒素ガスにより加圧されている加圧状態である場合は、それぞれのボール452は、ボール受451から鉛直下方向けて突出する。
【0095】
それゆえ、ボール452が非加圧状態である場合、フリーベア45R及び45Lを単独で仮載置面41Sの上を水平移動させることは行い得るものの、フリーベア45R及び45Lの上に重量物1が載置されると、それゆえ容易には動かせない状態となる。
【0096】
より詳細には、重量物1の底面には上方に向けて溝1R及び1Lが形成されてなり、重量物1は、それぞれの溝1R及び1Lにフリーベア45R及び45Lを入り込ませる態様にて載置される。重量物1の溝1R及び1Lの深さは、フリーベア45R及び45Lにおいてボール452が非加圧状態である場合のフリーベア45R及び45Lの高さより深く、加圧状態である場合のフリーベア45R及び45Lの高さより浅い。これにより、ボール452が非加圧状態である場合は、重量物1は、溝1R及び1Lの近傍で仮載置面41Sにも接触する。それゆえ、重量物1が載置されたフリーベア45R及び45Lは、非加圧状態においては容易には動き得ない。
【0097】
これに対し、ボール452が加圧状態である場合は、フリーベア45R及び45L並びにそれらの上に載せられた重量物1は転動自在な複数のボールにて下方支持されているだけとなり、重量物1も仮載置面41Sとは接触しないので、重量物1が載置されたフリーベア45R及び45Lは、水平面内にて移動容易となる。
【0098】
図4から図8に示すように、仮載置面41Sの上に載置されたフリーベア45R及び45Lの背面側の端には、プッシャーアーム46が結合される。これにより、フリーベア45R及び45Lをプッシャーアーム46と一体に動かすことが可能とされてなる。以降においては、フリーベア45R及び45Lがプッシャーアーム46と結合されて一体となったものを、搬送体とも称する。
【0099】
加えて、図4から図8に示すように、搬入時及び搬出時には、正面側に備わるビーム32DFの上に、ツメ47R及び47Lが取り付けられる。ツメ47R及び47Lの各々は、矩形板状の渡し板471及びヒンジ472を備える。ヒンジ472は、渡し板471の姿勢を、垂直姿勢と水平姿勢との間で切り替える。搬入または搬出が行われない間は、図4に図示されるように、渡し板471はその主面が鉛直方向に平行な垂直姿勢とされる。これにより、搬送体が最上部用個別架台30Tから脱落することが阻害される。また、最上部用個別架台30Tをなるべくコンパクトにすることで、段積に際して収納部2と接触するリスクも低減される。一方、搬入時及び搬出時には、図5から図8に図示されるように、渡し板471はその主面が鉛直方向と直交する水平姿勢とされる(図1および図2も参照)。
【0100】
より詳細には、渡し板471は、係る水平姿勢における上面の高さが仮載置面41Sの高さと略同一となるように、設けられてなる。すなわち、個別架台30が正姿勢にて段積された状態で、その正面側において渡し板471が水平姿勢とされることで、フリーベア45Rおよび45Lがその上を移動して収納部2の対応する段20の載置面20Sにまでアクセスすることが可能となる。これにより、当該段20との間で重量物1の搬入および搬出を行えるようになる。
【0101】
図4に示すように、プッシャーアーム46の上面かつ両端部近傍には、穴46R及び46Lが形成されてなる。穴46R及び46Lの各々は、鉛直方向に沿って設けられてなる。図5から図8に図示されるように、搬入時及び搬出時には、その進行状態に応じて、穴46R及び46Lにそれぞれ、定尺棒49R及び49Lが嵌合されるか、または伸縮棒50R及び50Lが嵌合される。
【0102】
図10は、定尺棒49R及び49Lを模式的に示す斜視図である。図11は、伸縮棒50R及び50Lを模式的に示す斜視図である。
【0103】
図10に示すように、定尺棒49Rと定尺棒49Lとは同一の形状をなしており、それぞれに、先端部491と該先端部491に連続する手持ち部492とを備える。先端部491と手持ち部492とは、互いに垂直な方向に延在する。
【0104】
一方、図11に示すように、伸縮棒50Rと伸縮棒50Lとは互いに鏡面対称な形状をなしており、それぞれに、先端部501と、該先端部501に連続する伸縮部502と、該伸縮部502にさらに連続する手持ち部503とを備える。伸縮部502は、先端部501と手持ち部503との双方に垂直な方向に延在している。ただし、先端部501と伸縮部502とを含む平面と、手持ち部503と伸縮部502とを含む平面とは、直交している。これにより、先端部501と手持ち部503とは、互いにねじれの位置にある。
【0105】
先端部491および先端部501は、搬入時および搬出時に、搬送体を構成するプッシャーアーム46の穴46R及び46Lに嵌合される部位である。手持ち部492および手持ち部503は、先端部491または先端部501が穴46R及び46Lに嵌合された状態において定尺棒49R及び49Lまたは伸縮棒50R及び50Lにより搬送体を移動させる際に、作業員の手にて保持される部位である。伸縮部502は、伸縮自在に設けられた部位である。係る伸縮部502の長さは、例えば、該伸縮部502を先端部501に連続する部分と手持ち部503に連続する部分との二重構造とし、両者を相対的にスライドさせることによって自在に調整することができる。係る場合、長さの固定は、係る伸縮部502に適宜に設けた図示しない固定用の穴に図示しないピンを指すことなどによって、行い得る。
【0106】
定尺棒49R及び49Lの先端部491の断面形状とプッシャーアーム46の穴46R及び46Lの断面形状とは、穴46R及び46Lのそれぞれに先端部491が上方から嵌合されたときの手持ち部492の延在方向が、水平面内において個別架台30から垂直に突出する方向に固定的に定まるように、あらかじめ設定される。これにより、先端部491を穴46R及び46Lに嵌合し、さらにフリーベア45R及び45Lのボール452を加圧状態にすれば、定尺棒49R及び49Lの手持ち部492に対し水平面内においてその延在方向に垂直な方向に力を加えることによって、搬送体を前後方向に容易に動かすことができる。フリーベア45R及び45Lに重量物1が載置されている場合には、該重量物1を前後方向に搬送することが可能となる。
【0107】
また、伸縮棒50Rおよび50Lの先端部501の断面形状との穴46R及び46Lの断面形状とについても同様に、穴46R及び46Lのそれぞれ先端部501が上方から嵌合されたときの手持ち部503の延在方向が、水平面内において個別架台30から垂直に突出する方向に固定的に定まるように、あらかじめ設定される。係る場合も、先端部501を穴46R及び46Lに嵌合し、さらにフリーベア45R及び45Lのボール452を加圧状態にすれば、伸縮棒50R及び50Lの手持ち部503に対し水平面内においてその延在方向に垂直な方向に力を加えることによって、搬送体を前後方向に容易に動かすことができる。フリーベア45R及び45Lに重量物1が載置されている場合には、該重量物1を前後方向に搬送することが可能となる。
【0108】
以上に加え、搬入時及び搬出時、架台段積体3の最下部に正姿勢にて配置される個別架台30に対してはさらに、位置出しブロック48R及び48Lが当接される。位置出しブロック48R及び48Lは、搬入時及び搬出時に架台段積体3を収納部2に対し位置決めするための部品である。より詳細には、図5から図8に示すように、位置出しブロック48R及び48Lは、ピラー31FR及び31FLの正面側の面にそれぞれ、当接される。なお、図示の都合上、図5から図8においては、重量物1の搬入または搬出に用いられる最上部用個別架台30Tに位置出しブロック48Rおよび48Lが当接させられている様子を示しているが、実際には、架台段積体3の最下部に配置される個別架台30以外に位置出しブロック48R及び48Lが当接されることはなく、係る当接と重量物1の搬入または搬出とは必ずしもリンクしない。
【0109】
典型的には、位置出しブロック48R及び48Lは同一形状の直方体をなしており、搬入時及び搬出時には、図1および図2に示すように、地面に載置された状態で、対向する2つの面の一方が収納部2の最下部に配設されてなるベース2Bの正面側に当接させられ、他方が、上述のように個別架台30の正面側においてピラー31FR及び31FLに当接させられる。これにより、搬入時及び搬出時に架台段積体3が収納部2に対し平行に配置される。係る平行配置が実現されるのであれば、位置出しブロック48R及び48Lの形状は直方体に限定されない。
【0110】
次に、逆姿勢にて段積される個別架台30の移動時、搬入時、および搬出時における部品の配設についてであるが、正姿勢にて段積される場合と同様、ショートフレーム51FR、51FL、51BR及び51BLと、受材42Uおよび緩衝材43Uとは、個別架台30から取り外されるが、その他は、輸送時のまま維持されていてよい。また、ビーム32UFについても配設されたままであってもよい。あるいは、重量物1を搬入出拠点との間で移動可能な構成とされていてもよい。
【0111】
また、正姿勢にて段積される個別架台30であっても、最下段以外に配設されかつ重量物1の移動にも用いられないものについては、部品の配設態様は逆姿勢にて段積される個別架台30と同様とされてよい。
【0112】
6 重量物を収納部に搬入する手順
以下、収納部2が図1に示した4つの段20a~20dからなり、最上の段20dに重量物1を搬入する場合を主たる対象として、重量物1を収納部2に搬入する手順について説明する。
【0113】
図12から図16は、重量物1を所定の搬入出拠点から移動させて収納部2に搬入する手順を示すフローチャートである。図17及び図18は、収納部2の前に個別架台30を配設する際の様子を模式的に示す上面図である。図19は、個別架台30の高さを調整する様子を模式的に示す側面図である。
【0114】
重量物1を収納部2に搬入する方法は、図12に示す工程S11からS15を備える。
【0115】
6.1 位置出しブロックの配置
重量物1の搬入に際してはまず、図17に示すように、収納部2の正面に位置出しブロック48R及び48Lが配置される(工程S11)。より詳細には、位置出しブロック48R及び48Lは、収納部2の正面側両端部において2つのピラー21の下方に配置されたベース2Bにそれぞれの側面が当接するように、地面(収納部2および架台段積体3の設置面)に載置される。
【0116】
6.2 架台段積体の配設
次に、複数の個別架台30(30a~30d)が収納部2の正面にて段積されることにより、架台段積体3が配設される。搬入出拠点から収納部2の正面までの個々の個別架台30の移動は、図17に示すように、フォークリフト52による運搬にて行われる。
【0117】
移動の対象とされる個別架台30には、架台段積体3を構成するための個別架台30に加えて、具体的には、最下部に配置されて高さ合わせに用いられる個別架台30(30a)、最上部に配置されて実際に収納部2への重量物1の搬入を担う最上部用個別架台30T(30d)、および、中間に配置される個別架台30(30b、30c)に加えて、搬入対象たる重量物1を搬入出拠点から搬送する、輸送時の構成の個別架台30も含まれる。
【0118】
段積される個々の個別架台30においてはあらかじめ適宜に、輸送時にのみ必要であった部品の取り外しや移動時または搬入時に必要な部品の配設がなされているものとする。例えば、搬入に用いられる個別架台30(最上部用個別架台30T)については、遅くとも重量物1が載置されるまでに、図4に示すようにフリーベア45R及び45Lが配置される。ただし、フリーベア45R及び45Lのボール452は非加圧状態とされる。
【0119】
初めに、最下部となる個別架台30(以下、最下部用個別架台30aとも称する)が配設される(工程S12)。最下部用個別架台30aについては必ず(実際に収納部2の段20との間で重量物1の搬入が行われるか否かによらず)、正姿勢にて配設される(工程S12a)。続いて、最下部用個別架台30aの高さを調整する高さ合わせが行われる(工程S12b)。なお、最下部用個別架台30aが搬入に使用されない場合においても正姿勢にて配設されるのは、係る高さ合わせを行い得るためである。最下部用個別架台30aが重量物1の搬入に使用される場合を除き、最下部用個別架台30aにはフリーベア45R及び45Lは載置されない。
【0120】
最下部用個別架台30aの高さ合わせが完了すると、その他の個別架台30が順次に搬送され、段積される(工程S13)。その際には、搬入対象たる重量物1の搬送も併せて行われる。また、収納部2の段20に対する重量物1の搬入に使用される最上部用個別架台30Tについては、正姿勢にて段積される(工程S13a)。高さ合わせに相応の時間を要する場合には、その他の個別架台30の搬送と並行して、高さ合わせが行われる態様であってもよい。
【0121】
より詳細には、図3に示す輸送時の構成とされたある個別架台30を用いて収納部2の正面にまで搬送されてきた重量物1は、フリーベア45R及び45Lを備える最上部用個別架台30Tの該フリーベア45Rおよび45L上に載置される。そして、このようにフリーベア45R及び45L並びに重量物1が載置された最上部用個別架台30Tが、架台段積体3において最上位置に段積される。
【0122】
一方で、重量物1の搬入に使用されない個別架台30については、正姿勢と逆姿勢のどちらも許容される。そのような個別架台30は単に、架台段積体3の高さ(段積数)を収納部2の高さ(段数)と揃えるために、段積されているともいえる。なお、重量物1を収容していた個別架台30を段積に使用する態様であってもよい。
【0123】
なお、実際に配設(段積)される個別架台30の個数およびそれぞれの個別架台30の姿勢は、重量物1が搬入される最上の搬入先の段20の高さ位置に応じて定まる。すなわち、個別架台30の数は必ずしも常に収納部2の段数と一致させられるわけではなく、また、全ての個別架台30の姿勢が常に固定されているわけでもない。
【0124】
例えば、重量物1が段20aにのみ搬入される場合は、重量物1が載置された1つの個別架台30aのみが最上部用個別架台30Tとして正姿勢にて配設されればよい。すなわち、他の個別架台30b~30dの段積は不要である。
【0125】
あるいは、段20dが重量物1の最上の搬入先である場合であれば、少なくとも個別架台30aと最上部用個別架台30Tとして使用される個別架台30dとは正姿勢にて段積される必要があるが、個別架台30bと個別架台30cとは正姿勢、逆姿勢のどちらで段積されてもよい。
【0126】
最下部用個別架台30aが配設される工程S12aは、図13に示す工程S12a1~S12a3を備える。
【0127】
最下部用個別架台30aの配設にあたっては、まずあらかじめ、最下部用個別架台30aのピラー31FR、31FL、31BR及び31BLのそれぞれの下端に、ショートフレーム51FR、51FL、51BR及び51BLが取り付けられる(工程S12a1)。具体的には、輸送時には最下部用個別架台30aのピラー31FR、31FL、31BR及び31BLのそれぞれの上端に取り付けられていたショートフレーム51FR、51FL、51BR及び51BLが、あらかじめそれぞれのピラーの下端へと付け替えられる。
【0128】
続いて、図17に示すように、最下部用個別架台30aは、フォークリフト52により搬入出拠点から収納部2の正面へと搬送される(工程S12a2)。搬送された個別架台30は、図18に示すように、位置出しブロック48R及び48Lに当たるまでフォークリフト52によりスライドさせられる(工程S12a3)。これにより、最下部用個別架台30aが収納部2に平行に配置される。換言すれば、係るスライド動作によって、最下部用個別架台30aが収納部2に対して位置決めされたことになる。
【0129】
6.3 最下部用個別架台の高さ合わせ
最下部用個別架台30aの高さ合わせを行う工程S12bは、図14に示す工程S12b1~S12b4を備える。
【0130】
まず、図19に示すように、爪ジャッキ53が最下部用個別架台30aのジョイスト34の下方に差し入れられる(工程S12b1)。そして、爪ジャッキ53が上昇させられ、最下部用個別架台30aのジョイスト34の上面34Sの高さと載置面20Sの高さとの差が所定の既定値(例えば100mm)となるまで、最下部用個別架台30aが爪ジャッキ53により設置面54から持ち上げられる(工程S12b2)。ここで、ジョイスト34の上面34Sの高さと載置面20Sの高さとの差の既定値は、ジョイスト34の上面34Sに載置される緩衝材41R及び41Lの厚みと略同一の値として設定される。
【0131】
爪ジャッキ53による持ち上げ高さの調整は、例えば、最下部用個別架台30aのジョイスト34の上面34Sに高さが既定値と一致する水平器55を載置し、さらに該水平器55の上面と収納部2の下から1段目の段20aの載置面20Sとに跨がるように水平器56を載置して、それら水平器55及び56の双方が水平を示すようにすることで、実現される。なお、ジョイスト34の上面34Sまたは載置面20Sの一方に重量物1が存在する場合があるが、その場合には、重量物1と干渉しない位置にて、水平器55及び56を配置すればよい。
【0132】
爪ジャッキ53による持ち上げにて生じる、最下部用個別架台30aと設置面54との隙間には、例えば木製のライナーが挿入される(工程S12b3)。隙間が生じない場合は、係る挿入は省略される。
【0133】
爪ジャッキ53による調整がなされると、爪ジャッキ53がジョイスト34の下方から取り除かれる(工程S12b4)。これにより、最下部用個別架台30aの高さ合わせは完了する。
【0134】
6.4 重量物の搬送
上述した最下部用個別架台30aの高さ合わせと、これに続く、他の個別架台30の段積とが完了すると、続いて、最上部用個別架台30Tである個別架台30dから収納部2の段20dへのフリーベア45R及び45Lを含む搬送体を用いた重量物1の搬送がなされる(工程S14)。
【0135】
係る搬送は概略、上面に重量物1が載置されたフリーベア45R及び45Lとプッシャーアーム46とが一体となった搬送体を、個別架台30dの仮載置面41Sの上から渡し板471の上面を経て段20dの載置面20Sの上まで移動させることにより行われる。搬送は、移動時には非加圧状態であったフリーベア45R及び45Lのボール452が加圧状態とされることによりなされる。係る加圧状態においては、重量物1は溝1R及び1Lにてフリーベア45R及び45Lのみ下方支持される。なお、搬送に先立って、渡し板471の高さ位置が微調整されてよい。
【0136】
搬送体の移動は、定尺棒49R及び49Lと伸縮棒50R及び50Lとを用いて、図15に示す工程S141からS145により行われる。
【0137】
まず、移動時には垂直姿勢とされていた渡し板471の姿勢が水平姿勢に変更される(工程S141)。
【0138】
続いて、図5に示すように、フリーベア45R及び45Lに結合されて搬送体を構成するプッシャーアーム46に定尺棒49R及び49Lがそれぞれ接続される(工程S142)。具体的には、プッシャーアーム46に備わる穴46R及び46Lに、定尺棒49R及び49Lの先端部491がそれぞれ嵌合される。これにより、定尺棒49R及び49Lの手持ち部492が最上部用個別架台30Tの2つの側面から垂直に突出する。
【0139】
この突出した手持ち部492は作業員により把持される。該作業員が、該手持ち部492を通じてプッシャーアーム46とフリーベア45R及び45Lとが一体となった搬送体に対し水平面内において収納部2の正面側へと向かう力を加えることで、フリーベア45R及び45Lの上に重量物1が載置された搬送体が仮載置面41Sの上から移動させられる(工程S143)。係る移動は、定尺棒49R及び49Lの手持ち部492がブレス33R及び33Lに干渉する手前の位置(第1干渉限界位置)に到達するまで行われるのが好ましい。図6は、手持ち部492が第1干渉限界位置に到達したときの様子を示している。
【0140】
定尺棒49R及び49Lを用いた移動がなされると、定尺棒49R及び49Lはプッシャーアーム46から取り外され、代わって、伸縮部502が縮められた状態の伸縮棒50R及び50Lがプッシャーアーム46に接続される(工程S144)。具体的には、プッシャーアーム46に備わる穴46R及び46Lに、伸縮棒50R及び50Lの先端部501がそれぞれ嵌合される。これにより、伸縮棒50R及び50Lの手持ち部503が、個別架台30の2つの側面から垂直に突出する。ただし、その際の手持ち部503の突出位置は、第1干渉限界位置から背面側に離隔している。
【0141】
この突出した手持ち部503は作業員により把持される。次いで、定尺棒49R及び49Lが接続されていたときと同様、作業員が手持ち部503を通じて搬送体に力を加えることで、搬送体が移動させられる(工程S145)。
【0142】
伸縮棒50R及び50Lを用いて搬送体を移動させる工程S145は、図16に示す工程S1451からS1453を備える。
【0143】
まず、定尺棒49R及び49Lのときと同様、作業員が手持ち部503を通じて搬送体に対し水平面内において収納部2の正面側へと向かう力を加えることにより、図7に示すように、手持ち部503が第1干渉限界位置に到達するまで、搬送体をさらに移動させる(工程S1451)。なお、図7においては図示を省略しているが、少なくともこの時点までにはすでに、搬送体の一部は収納部2の載置面20S上に到達している。
【0144】
続いて、伸縮棒50R及び50Lの伸縮部502が背面側へと向けて伸ばされる(工程S1452)。これに伴い、第1干渉限界位置にまで移動していた手持ち部503が再度、水平面内においてブレス33R及び33Lから離隔させられる。換言すれば、伸縮部502は、伸縮棒50R及び50Lにより搬送体をさらに移動させることが出来るように、その長さを違えられているといえる。
【0145】
係る離隔がなされると、作業員は改めて、手持ち部503を通じて搬送体に対し水平面内において収納部2の正面側へと向かう力を加え、図8に示すように、搬送体をさらに移動させる(工程S1453)。図8においては図示を省略しているが、係る移動により、手持ち部503が第1干渉限界位置に到達するまでの間に、フリーベア45R及び45Lの上面に重量物1が載置された搬送体は完全に載置面20Sの上に到達する。
【0146】
6.5 重量物の載置
重量物1が載置された搬送体が完全に載置面20Sの上に到達すると、フリーベア45R及び45Lのボール452が非加圧状態とされる。すると、それまで溝1R及び1Lにてフリーベア45R及び45Lに下方支持されていた重量物1は、係る支持を解かれて載置面20Sに直接に下方支持される。すなわち、重量物1は載置面20S上に載置される(工程S15)。これにより、重量物1が収納部2に搬入された状態が実現される。
【0147】
係る載置が完了すると、フリーベア45R及び45Lを溝1R及び1Lから抜き取るように、搬送体が載置面20Sの上から仮載置面41Sの上まで移動させられる。係る移動は例えば、フリーベア45R及び45Lのボール452を非加圧状態のままとするほかは、後述する工程S251~S255と同様の手順にて行える。また、その後、ツメ47R及び47Lの渡し板471は垂直姿勢に戻される。以上により、収納部2の段20dへの重量物1の搬入は終了する。
【0148】
引き続き当該段20dよりも下の段20においても搬入がなされる場合は、新たに搬入先となる段20に応じた高さ位置に最上部用個別架台30Tが配置されるよう、架台段積体3を再構成したうえで、工程S14以降の手順が繰り返される。
【0149】
例えば、段20dへの搬入が完了した後、続いて段20bへの搬入が行われる場合であれば、最上部用個別架台30Tとして構成され重量物1の搬入に使用された個別架台30dと、中間に位置する個別架台30cと個別架台30bとがいったん下ろされる。そして、あらかじめ(例えば先の搬入の間に)別の重量物1を搬送してきた個別架台30から個別架台30dに対し新たに搬入すべき重量物1が移載された後、個別架台30dが再び最上部用個別架台30Tとして個別架台30aの上に段積される。これにより、段20bへの搬入を行えるように架台段積体3が再構成されたことになる。
【0150】
7 重量物を収納部から搬出する手順
以下、収納部2が図1に示した4つの段20a~20dからなり、最上の段20dから重量物1を搬出する場合を主たる対象として、重量物1を収納部2から搬出する手順について説明する。図20から図22は、重量物1を収納部2から搬出する手順を示すフローチャートである。
【0151】
重量物1を収納部2から搬出する方法は、図20に示す工程S21からS25を備える。
【0152】
7.1 位置出しブロックの配置
重量物1の搬出に際してはまず、収納部2の正面に位置出しブロック48R及び48Lが配置される(工程S21)。工程S21は重量物1を搬入する際の工程S11と実質的に同じ工程であるので、その説明は省略する。
【0153】
7.2 架台段積体の配設
次に、複数の個別架台30(30a~30d)が収納部2の正面にて段積されることにより、架台段積体3が配設される。搬入出拠点から収納部2の正面までの個々の個別架台30の移動は、搬入時と同様、フォークリフト52による運搬にて行われる。
【0154】
移動の対象とされる個別架台30には、架台段積体3を構成するための個別架台30に加えて、具体的には、最下部に配置されて高さ合わせに用いられる個別架台30(30a)、最上部に配置されて実際に収納部2からの重量物1の搬出を担う最上部用個別架台30T(30d)、および、中間に配置される個別架台30(30b、30c)に加えて、搬出された重量物1を搬入出拠点まで搬送する、輸送時の構成の個別架台30も含まれる。ただし、架台段積体3の解体後、搬出時に中間に配置されていた個別架台30を輸送時の構成へと変更し、重量物1の搬入出拠点までの搬送さらには他所への輸送に、転用する態様であってもよい。
【0155】
段積される個々の個別架台30においてはあらかじめ適宜に、不要な部品の取り外しや移動時または搬出時に必要な部品の配設がなされているものとする。例えば、搬出に用いられる個別架台30(最上部用個別架台30T)については、遅くとも重量物1が搬出されるまでに、図4に示すようにフリーベア45R及び45Lが配置される。ただし、フリーベア45R及び45Lのボール452は非加圧状態とされる。
【0156】
重量物1を搬出する際も、搬入の際と同様、架台段積体3の配設に際しては、初めに、最下部用個別架台30aが配設される(工程S22)。その際、最下部用個別架台30aについては必ず、正姿勢にて配設される(工程S22a)。係る工程S22aにおいては、搬入の場合と同様、図13に示す工程S12a1~S12a3が行われる。また、配設に続いて、最下部用個別架台30aのジョイスト34の上面34Sの高さを調整する高さ合わせが行われる(工程S22b)点も同様である。
【0157】
最下部用個別架台30aの高さ合わせが完了すると、その他の個別架台30が順次に搬送され、段積される(工程S23)点も、搬入のときと同様である。高さ合わせに相応の時間を要する場合には、その他の個別架台30の搬送と並行して、高さ合わせが行われてもよい点も、搬入のときと同様である。なお、収納部2の段20からの重量物1の搬出に使用される最上部用個別架台30Tについては、正姿勢にて段積される(工程S23a)。なお、重量物1の搬出に使用されない個別架台30については、正姿勢と逆姿勢のどちらも許容される。
【0158】
また、実際に配設(段積)される個別架台30の個数およびそれぞれの個別架台30の姿勢は、重量物1が搬出される搬出元の段20の高さ位置に応じて定まる点も、搬入の場合と同様である。
【0159】
7.3 最下部用個別架台の高さ合わせ
重量物1を搬出する場合においても、搬入の場合と同様、最下部用個別架台30aの高さ合わせのために、図14に示す工程S12b1~S12b4が行われる。なお、最下部用個別架台30aが重量物1の搬出に使用される場合を除き、最下部用個別架台30aにはフリーベア45R及び45Lは載置されない。
【0160】
7.4 搬送体の配置
上述した最下部用個別架台30aの高さ合わせと、これに続く、他の個別架台30の段積とが完了すると、続いて、収納部2の段20dから最上部用個別架台30Tである個別架台30dへの重量物1の搬送を可能とするべく、最上部用個別架台30Tに載置されていたフリーベア45R及び45Lを含む搬送体が、重量物1が収納されてなる収納部2の段20dに移動させられる。具体的には、段20dに収納されている重量物1の溝1R及び1Lにフリーベア45R及び45Lが位置するよう、搬送体が配置される(工程S24)。
【0161】
係る搬送体の配置は例えば、フリーベア45R及び45Lのボール452を非加圧状態のままとするほかは、前述した工程S141~S145と同様の手順にて行える。あるいは、移動時にはフリーベア45R及び45Lとプッシャーアーム46とからなる搬送体を配置することなく個別架台30dを段積し、工程S24の実施に際して重量物1の溝1R及び1Lに対し直接にフリーベア45R及び45Lを配置、それらをプッシャーアーム46にて結合して搬送体を構成するようにしてもよい。
【0162】
溝1R及び1Lに差し入れられたフリーベア45R及び45Lは、加圧状態とされる。これにより、重量物1は、載置面20Sから持ち上げられて、フリーベア45R及び45Lにて下方支持されるようになる。換言すれば、それまで載置面20Sに載置されていた重量物1が、フリーベア45R及び45Lの上面に載置された状態となる。
【0163】
7.5 重量物の搬送
フリーベア45R及び45Lが溝1R及び1Lに差し入れられて重量物1がフリーベア45R及び45Lの上面に載置されると、続いて、該フリーベア45R及び45Lを含む搬送体を用いた重量物1の搬送がなされる(工程S25)。
【0164】
係る搬送は概略、上面に重量物1が載置されたフリーベア45R及び45Lとプッシャーアーム46とが一体となった搬送体を、段20dの載置面20Sの上から渡し板471の上面を経て個別架台30dの仮載置面41Sの上まで移動させることにより行われる。なお、搬送に先立って、渡し板471の高さ位置が微調整されてよい。
【0165】
搬送体の移動は、定尺棒49R及び49Lと伸縮棒50R及び50Lとを用いて、図21に示す工程S251からS255により行われる。
【0166】
まず、渡し板471の姿勢が垂直姿勢となっている場合、水平姿勢に変更される(工程S251)。
【0167】
続いて、フリーベア45R及び45Lに結合されて搬送体を構成するプッシャーアーム46に伸縮棒50R及び50Lがそれぞれ接続され(工程S252)、該伸縮棒50R及び50Lを用いた搬送体の移動がなされる(工程S253)。
【0168】
伸縮棒50R及び50Lによる搬送体の移動は2段階でなされる。伸縮棒50R及び50Lを用いて搬送体を移動させる工程S253は、図22に示す工程S2531からS2533を備える。
【0169】
プッシャーアーム46への伸縮棒50R及び50Lの接続は、伸縮部502を伸ばした状態でなされる(工程S252)。具体的には、プッシャーアーム46に備わる穴46R及び46Lに、伸縮棒50R及び50Lの先端部501がそれぞれ嵌合される。これにより、図8に示すように、伸縮棒50R及び50Lの手持ち部503が個別架台30の2つの側面から垂直に突出する。
【0170】
この突出した手持ち部503は作業員により把持される。該作業員が、該手持ち部503を通じてプッシャーアーム46とフリーベア45R及び45Lとが一体となった搬送体に対し水平面内において収納部2の背面側へと向かう力を加えることで、フリーベア45R及び45Lの上に重量物1が載置された搬送体が載置面20Sの上から移動させられる(工程S2531)。係る移動は、伸縮棒50R及び50Lの手持ち部503がピラー31BR及び31BLにそれぞれ干渉する手前の位置(第2干渉限界位置)に到達するまで行われるのが好ましい。
【0171】
続いて、伸縮棒50R及び50Lの伸縮部502が正面側へと縮められる(工程S2532)。これに伴い、第2干渉限界位置にまで移動していた手持ち部503が、水平面内においてピラー31BR及び31BLから離隔させられる。換言すれば、伸縮部502は、伸縮棒50R及び50Lにより搬送体をさらに移動させることが出来るように、その長さを違えられているといえる。例えば図7は、伸縮部502が縮められた後の一態様を示しているともいえる。
【0172】
係る離隔がなされると、作業員は改めて、手持ち部503を通じて搬送体に対し水平面内において収納部2の背面側へと向かう力を加え、手持ち部503が再び第2干渉限界位置に到達するまで搬送体をさらに移動させる(工程S2533)。
【0173】
伸縮棒50R及び50Lによる移動はこれが限界であるので、伸縮棒50R及び50L工程はプッシャーアーム46から取り外され、代わって、定尺棒49R及び49Lがプッシャーアーム46にそれぞれ接続される。具体的には、プッシャーアーム46に備わる穴46R及び46Lに、定尺棒49R及び49Lの先端部491がそれぞれ嵌合される。これにより、定尺棒49R及び49Lの手持ち部492が、個別架台30の2つの側面から垂直に突出する。ただし、その際の手持ち部492の突出位置は、第2干渉限界位置から正面側に離隔している。図6は、係る態様にて定尺棒49R及び49Lが接続されたときの様子にも該当する。
【0174】
この突出した手持ち部492は作業員により把持される。該作業員が、該手持ち部492を通じてプッシャーアーム46とフリーベア45R及び45Lとが一体となった搬送体に対し水平面内において収納部2の正面側へと向かう力を加えることで、フリーベア45R及び45Lの上に重量物1が載置された搬送体は、完全に仮載置面41Sの上に到達する。
【0175】
7.6 重量物の載置
重量物1が載置された搬送体が完全に仮載置面41Sの上に到達すると、フリーベア45R及び45Lのボール452が非加圧状態とされる。すると、それまで溝1R及び1Lにてフリーベア45R及び45Lに下方支持されていた重量物1は、係る支持を解かれて緩衝材41R及び41Lの仮載置面41Sに直接に下方支持される。すなわち、重量物1は仮載置面41S上に載置される。また、その後、ツメ47R及び47Lの渡し板471は垂直姿勢に戻される。
【0176】
重量物1が最上部用個別架台30Tとしての個別架台30dに載置されると、フォークリフト52にて架台段積体3が解体され、個別架台30dに載置されていた重量物1は、搬入出拠点へと搬送される。以上により、収納部2の段20dからの重量物1の搬出は終了する。
【0177】
より詳細には、ある最上部用個別架台30Tにて搬出された重量物1は、図3に示す輸送時の構成とされてなる別の個別架台30に移し替えられて搬入出拠点へと搬送され、さらに他所に輸送される。
【0178】
引き続き当該段20dよりも下の段20からも搬出がなされる場合は、新たに搬出元となる段20に応じた高さ位置に最上部用個別架台30Tが配置されるよう、架台段積体3を再構成したうえで、工程S24以降の手順が繰り返される。
【0179】
8 本実施形態に係る方法の効果
本実施形態の方法によれば、重量物1を収納部2に搬入する又は収納部2から搬出するに際し、従来の方法において行われていたレールの設置及び撤去作業が省略される。これにより、作業が簡略化されて作業時間が短縮されるので、1日に収納部2に搬入することができる又は収納部2から搬出することができる重量物1の数を、従来よりも増やすことができる。
【0180】
また、本実施形態の方法によれば、従来は必要とされたクレーンで重量物1を持ち上げる作業が不要となるので、この点からも作業が簡略化されて作業時間が短縮される。
【0181】
また、本実施形態の方法によれば、重量物1を収納部2に搬入する又は収納部2から搬出する作業に必要な部品の数が従来よりも削減される。これにより、部品を倉庫で保管する際に必要な面積が削減される。また、倉庫から重量物1を備える設備が設置される場所に必要な部品を輸送する輸送車の数も削減される。
【0182】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0183】
1 重量物
2 収納部
3 架台段積体
20 (収納部の)段
20S 載置面
30 個別架台
41R、41L 緩衝材
41S 仮載置面
42F、42B、42R、42L、42U 受材
43F、43B、43R、43L、43U 緩衝材
45R、45L フリーベア
46 プッシャーアーム
47R、47L ツメ
48R、48L 位置出しブロック
49R、49L 定尺棒
50R、50L 伸縮棒
51FR、51FL、51BR、51BL ショートフレーム
52 フォークリフト
53 爪ジャッキ
55、56 水平器
91、92、93、94、95 専用治具
901 段積架台台車
902 1段目の段積架台
903 2段目の段積架台
904 3段目の段積架台
905 メンテナンスパレット
911 ホイール
912 ホイール
921 レール
931 メンテナンスパレット本体
932R、932L フリーベア
933 ハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27