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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033634
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】触覚センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137633
(22)【出願日】2020-08-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】520311466
【氏名又は名称】株式会社SensAI
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】蕨野 智之
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB03
(57)【要約】
【課題】触覚センサを小型化すること
【解決手段】触覚センサは、センサ基板、弾性部材、被支持部材、および光放射部材を備える。センサ基板は、第1波長の光を検出可能な複数の光センサが配置された第1面を有する。弾性部材は、センサ基板の第1面側に配置され、第1波長に対して透過性を有する。被支持部材は、弾性部材に支持され、弾性部材とは異なる光学特性を有する。光放射部材は、弾性部材よりセンサ基板側において弾性部材に覆われて配置され、弾性部材に向けて第1波長を含む光を放射する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長の光を検出可能な複数の光センサが配置された第1面を有するセンサ基板と、
前記センサ基板の前記第1面側に配置され、前記第1波長に対して透過性を有する弾性部材と、
前記弾性部材に支持され、前記弾性部材とは異なる光学特性を有する被支持部材と、
前記弾性部材より前記センサ基板側において前記弾性部材に覆われて配置され、前記弾性部材に向けて前記第1波長を含む光を放射する光放射部材と、
を備える触覚センサ。
【請求項2】
前記光放射部材は、光放射面を有し、前記センサ基板と前記弾性部材との間に挟まれた状態で配置され、前記第1波長に対して透過性を有する、請求項1に記載の触覚センサ。
【請求項3】
前記光放射部材は、前記センサ基板と前記弾性部材との間に挟まれた面光源を含む、請求項1または請求項2に記載の触覚センサ。
【請求項4】
前記光放射部材は、光源および前記光源からの光を拡散して前記弾性部材に導くための光拡散板を含み、
前記光拡散板は、前記弾性部材と前記センサ基板に挟まれる、請求項1または請求項2に記載の触覚センサ。
【請求項5】
前記被支持部材は球体形状を有する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項6】
前記被支持部材はメッシュ形状を有する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項7】
前記センサ基板は、前記複数の光センサよりも前記光放射部材側に配置され当該複数の光センサのそれぞれに対応して配置された複数の光導入部を含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項8】
前記第1波長は、可視光外の波長を含む、請求項1から請求項7のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項9】
前記第1波長は、可視光の波長を含む、請求項1から請求項7のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項10】
前記センサ基板は、イメージセンサであり、
前記複数の光センサの検出結果に応じて前記センサ基板から出力される画像信号を解析して、前記弾性部材への圧力に関連する情報を出力する解析装置をさらに備える、請求項1から請求項9のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項11】
前記センサ基板は、イベント検出型センサであり、
前記複数の光センサの検出結果に応じて前記センサ基板から出力されるイベント情報信号を解析して、前記弾性部材への圧力に関連する情報を出力する解析装置をさらに備える、請求項1から請求項9のいずれかに記載の触覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
触覚センサは、様々な構成により実現されている。例えば、特許文献1に開示される光学式の触覚センサは、物体が接触する部分に配置される透明弾性体を含む。透明弾性体の内部には、光を反射するマーカが配置されている。物体によって透明弾性体が圧力を受けると、透明弾性体の弾性変形によってマーカの位置が変化する。この位置変化をカメラによって検出することによって、物体から透明弾性体に与えられた力の大きさおよび向きを測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/18893号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マーカをカメラで撮影する必要があるため、光学式の触覚センサは、マーカに光を照射するための光源を必要とする。その結果、光学式の触覚センサは、大型の装置として構成される。一方、触覚センサは、例えば、ロボットが手で物体を掴むときに、その掴む力を調整するために用いられる。触覚センサは、このような用途で用いられることを想定する場合には、特に小型化が求められる。圧力の検出範囲を狭くせずに、触覚センサを小型にするためには、触覚センサを薄型にする必要がある。
【0005】
本発明の目的の一つは、触覚センサを小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、第1波長の光を検出可能な複数の光センサが配置された第1面を有するセンサ基板と、前記センサ基板の前記第1面側に配置され、前記第1波長に対して透過性を有する弾性部材と、前記弾性部材に支持され、前記弾性部材とは異なる光学特性を有する被支持部材と、前記弾性部材より前記センサ基板側において前記弾性部材に覆われて配置され、前記弾性部材に向けて前記第1波長を含む光を放射する光放射部材と、を備える触覚センサが提供される。
【0007】
前記光放射部材は、光放射面を有し、前記センサ基板と前記弾性部材との間に挟まれた状態で配置され、前記第1波長に対して透過性を有してもよい。
【0008】
前記光放射部材は、前記センサ基板と前記弾性部材との間に挟まれた面光源を含んでもよい。
【0009】
前記光放射部材は、光源および前記光源からの光を拡散して前記弾性部材に導くための光拡散板を含み、前記光拡散板は、前記弾性部材と前記センサ基板に挟まれてもよい。
【0010】
前記被支持部材は球体形状を有してもよい。
【0011】
前記被支持部材はメッシュ形状を有してもよい。
【0012】
前記センサ基板は、前記複数の光センサよりも前記光放射部材側に配置され当該複数の光センサのそれぞれに対応して配置された複数の光導入部を含んでもよい。
【0013】
前記第1波長は、可視光外の波長を含んでもよい。
【0014】
前記第1波長は、可視光の波長を含んでもよい。
【0015】
前記センサ基板は、イメージセンサであり、前記複数の光センサの検出結果に応じて前記センサ基板から出力される画像信号を解析して、前記弾性部材への圧力に関連する情報を出力する解析装置をさらに備えてもよい。
【0016】
前記センサ基板は、イベント検出型センサであり、前記複数の光センサの検出結果に応じて前記センサ基板から出力されるイベント情報信号を解析して、前記弾性部材への圧力に関連する情報を出力する解析装置をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、触覚センサを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態における触覚センサの構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態における検出装置の構造を説明する図である。
図3】圧力検出面に対して物体から圧力を受けたときの反射部材の位置変化の一例を示す図である。
図4】圧力検出面に対して物体から圧力を受けたときの反射部材の撮影画像の一例を示す図である。
図5】圧力検出面に対して物体から圧力を受けたときの反射部材の撮影画像の一例を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態における検出装置の構造を説明する図である。
図7】本発明の第3実施形態における検出装置の構造を説明する図である。
図8】本発明の第4実施形態におけるイメージセンサの構造を説明する図である。
図9】本発明の第5実施形態におけるイメージセンサの構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態における触覚センサについて、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、Bなど付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0020】
<第1実施形態>
[1.触覚センサの構成]
図1は、本発明の第1実施形態における触覚センサの構成を示す図である。図2は、本発明の第1実施形態における検出装置の構造を説明する図である。触覚センサ1は、圧力検出面60aを含む検出装置10および解析装置90を含む。図1に示す触覚センサのうち、検出装置10については、圧力検出面60aに垂直な断面の構造を想定して図示されている。図2は、検出装置10の各構成をわかりやすく説明するための図であって、分解斜視図に対応する。検出装置10は、イメージセンサ基板20、光放射部材40、弾性部材60および反射部材80を含む。
【0021】
イメージセンサ基板20は、基板21、光検出部25および光導入部28を含む。基板21は、剛性を有する材料、例えば、セラミックス等の無機材料で形成されている。基板21は、弾性部材60よりも剛性を有していれば、セラミックスに限らず、例えば、有機材料で形成されてもよい。光検出部25は、複数の光センサ26を含む。この例では、複数の光センサ26は、イメージセンサ基板20の第1面20a側において、マトリクス状に配置されている。
【0022】
光導入部28は、複数の開口部29を有し、光検出部25を覆っている。複数の開口部29のそれぞれは、複数の光センサ26のそれぞれに対応した位置に配置されている。開口部29は、ピンホール形状を有し、光放射部材40側から到達する光を限定し、その開口部29に対応する位置に配置された光センサ26に導入する。開口部29は光センサ26に光を導入できればよいから、開口部29の内部には透明な部材が充填されていてもよい。開口部29の形状は、例えば、反射部材80からの反射光が光センサ26に対して効率よく到達するように設定されればよい。
【0023】
以下、本明細書において「透明」という場合には、光放射部材40から放射される光のうち、少なくとも一部の波長の光(第1波長の光)に対して透過性を有していることをいう。後述するように、この光は可視光である場合に限られない。透過性を有することは、その波長に対する透過率によって明確に規定するものではなく、本明細書で説明される触覚センサとしての機能が実現できる透過率の範囲であればよい。
【0024】
イメージセンサ基板20は、光センサ26による検出結果に応じた信号を出力する。光センサ26は、第1波長の光を検出可能である。これは、光センサ26が少なくとも第1波長の光を検出できることを示し、第1波長の光のみを検出するものではない。この信号は、マトリクス状に配置された光センサ26の検出結果に応じた画像を示している。この画像は、後述するように、反射部材80の位置を示す情報を含む。
【0025】
光放射部材40は、透明な部材であって、イメージセンサ基板20の第1面20a側に配置される面光源である。光放射部材40は、この例では、透明導電層で挟まれた有機ELに構成される発光素子であり、電力の供給を受けることによって光を放射する。放射される光の波長は、可視光外の他の波長範囲(例えば、赤外光、紫外光)であってもよいし、可視光外の波長に限られず可視光の波長であってもよいし、可視光外の波長と可視光の波長との双方であってもよい。光放射部材40は、有機EL素子に限らず、無機EL素子であってもよい。
【0026】
弾性部材60は、例えば、シリコンゴムなどの透明な弾性体である。弾性部材60は、光放射部材40の両面のうち、イメージセンサ基板20が対向する面とは反対側の面に配置される。したがって、光放射部材40は、弾性部材60とイメージセンサ基板20とによって挟まれている。弾性部材60の両面のうち光放射部材40とは反対側の面が圧力検出面60aである。例えば、物体1000による圧力検出面60aへの圧力によって、弾性部材60は弾性変形する。このとき、弾性部材60におけるイメージセンサ基板20側の面(圧力検出面60aとは反対側の面)側においては、イメージセンサ基板20(基板21)の合成によって支持されているため、弾性部材60は、圧力検出面60a側において大きく変形する。圧力検出面60aへの圧力は、面に垂直方向に加わる場合に限らず、面に沿った方向に加わってもよい。
【0027】
反射部材80は、球体形状を有し、弾性部材60とは異なる光学特性を有する弾性部材である。ここでいう球体形状とは、完全な球である場合に限らず、略球体のことを示し、多少の歪みを許容する概念である。反射部材80は、弾性部材でなくてもよい。反射部材80は、弾性部材60とは異なる光学特性を有することにより、光放射部材40からの光を反射する。言い換えれば、反射部材80において光放射部材40からの光が反射できることは、反射部材80を取り囲む弾性部材60と反射部材80とが異なる光学特性を有しているといえる。
【0028】
複数の反射部材80は、弾性部材60の内部において、第1面20aと略平行な面内においてマトリクス状に配置された状態で、弾性部材60に支持されている。複数の反射部材80は、弾性部材60の内部に配置される場合に限られず、例えば、圧力検出面60aに沿って配置されていてもよい。複数の反射部材80は、圧力検出面60aへの圧力による弾性部材60の弾性変形に追従して動く位置に配置されていればよく、すなわち、弾性部材60に支持されていればよい。反射部材80は、球体形状を有する場合に限らず、様々な形態を取り得る。
【0029】
図1に戻って説明を続ける。解析装置90は、画像解析部95および電力供給部98を含む。電力供給部98は、検出装置10において消費される電力を供給する。例えば、この電力は、光放射部材40における発光およびイメージセンサ基板20の動作に用いられる。電力の供給源は、解析装置90とは別の装置であってもよい。
【0030】
画像解析部95は、検出装置10(イメージセンサ基板20)から出力される信号(以下、画像信号という場合がある)を解析して、検出装置10の圧力検出面60aに対して加わった圧力に関連する情報(例えば、圧力の大きさ、圧力の向き)を算出して出力する。具体的な解析方法については、後述する。以上が触覚センサ1の構造についての説明である。
【0031】
[検出原理]
次に、触覚センサ1による圧力の検出原理について説明する。ここでは、圧力検出面60aが物体1000から圧力を受けた場合における構造上の変化(弾性部材60および反射部材80の変化)が生じたことを想定する。
【0032】
図3は、圧力検出面に対して物体から圧力を受けたときの反射部材の位置変化の一例を示す図である。物体1000が圧力検出面60aに対して圧力を加えていることを想定している。この例では、その圧力が加わる方向は、圧力検出面60aに垂直である。以下の説明では、この方向をz方向といい、z方向に垂直であり図3における左方向をx方向といい、z方向とx方向とに垂直な方向をy方向という。
【0033】
物体1000が圧力検出面60aに対してz方向に圧力を加えると、弾性部材60が変形する。図1に示すように物体1000が圧力検出面60aから離れれば、弾性部材60は、弾性力によって元の形に復元される。
【0034】
弾性部材60が変形すると、その変形に追従して反射部材80が移動する。図3に示す例では、反射部材80は、移動後の位置が実線で示され、元の位置が破線で示されている。図示されるように、物体1000によって弾性部材60の弾性変形によりz方向(イメージセンサ基板20に近づく方向)に圧縮されていることにより、反射部材80が相対的にz方向に移動する。物体1000の周辺部においては、圧力の成分がz方向だけでなく、x方向などxy平面方向にも存在する。したがって、物体1000の周辺部に存在する反射部材80の移動方向は、z方向以外の成分(xy平面方向の成分)も有する。
【0035】
光放射部材40は、上述したように面光源であるから、少なくとも、イメージセンサ基板20に向けた光(以下、例示として光Ld1、Ld2、Ld3という場合がある)および弾性部材60に向けた光(以下、例示として光Lr1、Lr2、Lr3という場合がある)を放射する。すなわち、光放射部材40は、イメージセンサ基板20側と弾性部材60側に光放射面を有する。
【0036】
光Ld1、Ld2、Ld3は、いずれも光検出部25に到達する。光Lr1は、弾性部材60を透過して圧力検出面60aから外に放出される。放出された光Lr1が何らかの物体に反射されたり、圧力検出面60aにおける反射されたりすることによって、光Lr1の一部が光検出部25まで戻ってくる場合もある。例えば、物体1000のうち圧力検出面60aに接触しない部分が想定される。光Lr2は、弾性部材60を透過し、反射部材80において反射されて、光検出部25に到達する。光Lr3は、弾性部材60を透過し、圧力検出面60aに接触する部分の物体1000において反射されて、光検出部25に到達する。光検出部25にこれらの光が到達することによって、イメージセンサ基板20によって得られる画像について図4および図5を用いて説明する。
【0037】
図4は、圧力検出面に対して物体から圧力を受けたときの反射部材の撮影画像の一例を示す図である。この例では、図3に示す状況において、イメージセンサ基板20によって得られる画像を示している。イメージセンサ基板20の光検出部25には、光放射部材40からの光Ld1、Ld2、Ld3が面光源の全体の光として到達するが、光Lr2、Lr3も反射光として到達する。したがって、光Ld1、Ld2、Ld3の成分をバックグラウンドとして除去することで、光Lr2の成分を取り出すことで反射部材80の画像を得ることができる。また、光Lr3の成分を取り出すことで物体1000(特に圧力検出面60aに接触している部分)の画像を得ることができる。
【0038】
図4によれば、物体1000の直下にある反射部材80(例えば、80d1)が、z方向に移動してイメージセンサ基板20に近づく。その結果、反射部材80d1は、移動前の反射部材80よりも大きい画像として得られる。物体1000の周辺部に対応する位置の反射部材80のうち反射部材80d2は、物体1000に対して外側に押し出されるように移動する。その結果、反射部材80d2は、移動前の反射部材80に対して物体1000から離れる方向(図4の例ではX方向)に移動した画像として得られる。反射部材80d3も同様に、移動前の反射部材80に対して物体1000から離れる方向(図4の例ではX方向とY方向とを合成した方向)に移動した画像として得られる。反射部材80d2、80d3のいずれも、z方向への移動も含んでいるから、反射部材80d1と同様に、移動前の反射部材80よりも大きい画像として得られるが、反射部材80d1よりは小さい画像として得られる。
【0039】
図5は、圧力検出面に対して物体から圧力を受けたときの反射部材の撮影画像の一例を示す図である。図4では、物体1000が圧力検出面60aに対してz方向に圧力を加えることを想定していたが、図5では、物体1000が圧力検出面60aに対してz方向だけではなくx方向にも圧力を加えることを想定している。図5によれば、反射部材80d1に対応する位置の反射部材80d4が、反射部材80d1よりもx方向へ移動した画像として得られる。
【0040】
上述した画像解析部95は、このようにイメージセンサ基板20で取得された画像を解析することによって、複数の反射部材80のそれぞれに関する変化情報(大きさの変化、位置の変化および位置の変化量)を取得する。画像上では、反射部材80の大きさが変わるため、反射部材80の位置は反射部材80の重心(この例では反射部材80が球体であるため、画像上では円の中心に相当)として扱う。
【0041】
画像解析部95は、変化情報に基づいて、圧力検出面60aへの物体1000の圧力に関する触覚情報を算出する。触覚情報は、例えば、圧力検出面60aのxy平面における各座標に対応した圧力の大きさおよび向きを示し、各座標における圧力のベクトル情報ともいえる。このとき、画像から得られる物体1000(特に圧力検出面60aに接触する部分)の位置も算出に用いてもよい。
【0042】
以上、一実施形態における触覚センサ1は、イメージセンサ基板20と弾性部材60との間に面光源となる光放射部材40を挟む構成を有する。弾性部材60および光放射部材40が、光放射部材40から放射される光に対して透明であることによって、光放射部材40がイメージセンサ基板20と弾性部材60との間に挟まれていたとしても、弾性部材60に配置された反射部材80からの反射光をイメージセンサ基板20で検出することができる。
【0043】
この構成によれば、反射部材80へ光を提供する光源を、非常に薄い面光源として配置することができるため、触覚センサ1を小型化(薄型化)することができる。イメージセンサ基板20が弾性部材60よりも剛性を有することで、圧力検出面60aに圧力を受ける弾性部材60を支持するための部材として、イメージセンサ基板20(基板21)を機能させることもできる。
【0044】
弾性部材60が光放射部材40を覆うことにより、光放射部材40が反射部材80の直下(z方向に沿った方向)から反射部材80に対して光を放射し、反射部材80からの反射光がz方向に進んでイメージセンサ基板20に到達する。そのため、様々な画像処理(例えば透視変換)において処理負荷を低減することができる。反射部材80を球体にすることで画像処理の負荷を低減することもできる。光放射部材40からの光が赤外光などの可視光外の光である場合には、圧力検出面60aから漏れ出る光が視認されないようにすることもできる。
【0045】
<第2実施形態>
第2実施形態では、面光源である光放射部材40に代えて、擬似的に面光源を形成する光放射部材40Aを有する検出装置10Aについて説明する。
【0046】
図6は、本発明の第2実施形態における検出装置の構造を説明する図である。検出装置10Aは、光放射部材40Aを含む。光放射部材40A以外の構成については、第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0047】
光放射部材40Aは、光拡散板45および光源48を含む。光拡散板45は、イメージセンサ基板20の第1面20a側において弾性部材60とイメージセンサ基板20との間に挟まれて配置されている。光源48は、例えば、光拡散板45は、光源48から光が提供され、その光を少なくとも弾性部材60側に拡散するとともに、その光に対して透過性も有する。
【0048】
光拡散板45から弾性部材60に放射された光は、反射部材80において反射される。この反射光は、光拡散板45を透過して光検出部25に到達する。光拡散板45は、光の拡散効果を有していることから、第1実施形態における光放射部材40よりも透過率が低い場合もあるが、光源48から提供される光が、最終的に光検出部25まで到達すればよい。
【0049】
このような構成を有する検出装置10Aであっても、第1実施形態における検出装置10と同様の機能を有することができる。
【0050】
<第3実施形態>
第3実施形態では、面光源である光放射部材40に代えて、擬似的に面光源を形成するために複数の点光源の光放射部材40Bを有する検出装置10Bについて説明する。
【0051】
図7は、本発明の第3実施形態における検出装置の構造を説明する図である。検出装置10Bは、イメージセンサ基板20Bおよび光放射部材40Bを含む。イメージセンサ基板20Bおよび光放射部材40B以外の構成については、第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0052】
光検出部25Bは、第1実施形態における光検出部25に対して一部の光センサ26が存在しない構成を有する。光放射部材40Bは、基板21の第1面20Baのうち光センサ26が存在しない領域に配置されている。光放射部材40Bは、LEDなどの発光素子である。光導入部28Bは、光放射部材40Bが配置された領域に対応する部分に開口部を有する。この開口部によって光放射部材40Bが露出されてもよい。この開口部を通して光放射部材40Bから放射される光が弾性部材60に到達する。光放射部材40Bから放射される光が、圧力検出範囲に存在する反射部材80に到達するように、光放射部材40Bの光放射角度が決められればよい。光放射部材40Bの一部として、第2実施形態のような光拡散板45が、弾性部材60とイメージセンサ基板20Bとの間に設けられてもよい。
【0053】
このような構成を有する検出装置10Bであっても、第1実施形態における検出装置10と同様の機能を有することができる。
【0054】
<第4実施形態>
第4実施形態では、ピンホール形状の開口部29を含む光導入部28に代えて、コリメータの機能を有する光導入部28Cを有するイメージセンサ基板20Cについて説明する。
【0055】
図8は、本発明の第4実施形態におけるイメージセンサ基板の構造を説明する図である。イメージセンサ基板20Cは、コリメータアレイである光導入部28Cを含む。光導入部28Cは、基板21の第1面20Ca側に配置され、複数の孔29Cを含む。複数の孔29Cのそれぞれは、複数の光センサ26のそれぞれに対応した位置に配置されている。孔29Cは、第1面20Caに垂直に延び、光放射部材40側から到達する光を、その孔29Cに対応する位置に配置された光センサ26に導入する。孔29Cは光センサ26に光を導入できればよいから、孔29Cの内部には透明な部材が充填されていてもよい。
【0056】
このような構成を有するイメージセンサ基板20Cであっても、第1実施形態におけるイメージセンサ基板20と同様の機能を有することができる。
【0057】
<第5実施形態>
第5実施形態では、ピンホール形状の開口部29を含む光導入部28に代えて、マイクロレンズアレイによる集光機能を有する光導入部28Dを有するイメージセンサ基板20Dについて説明する。
【0058】
図9は、本発明の第5実施形態におけるイメージセンサ基板の構造を説明する図である。イメージセンサ基板20Dは、第1面20Da側に配置された光導入部28Dを含む。光導入部28Dは、マイクロレンズアレイ27Dと開口部29Dとの複数の組を含む。複数の組のそれぞれは、複数の光センサ26のそれぞれに対応した位置に配置され、光放射部材40側から到達する光を光センサ26に導入する。
【0059】
このような構成を有するイメージセンサ基板20Dであっても、第1実施形態におけるイメージセンサ基板20と同様の機能を有することができる。
【0060】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の一実施形態は、以下のように様々な形態に変形することもできる。また、上述した実施形態および以下に説明する変形例は、それぞれ互いに組み合わせて適用することもできる。
【0061】
(1)反射部材80より圧力検出面60a側(例えば、圧力検出面60a上)において、光放射部材40からの光を遮るとともに弾性部材60の弾性変形に追従して変形できる遮光膜が配置されてもよい。この場合には、遮光膜の遮光性能によっては物体1000の画像を取得できなくなるが、圧力検出面60aに漏れ出る光を低減することができる。
【0062】
(2)触覚センサは、イメージセンサ基板20を用いる代わりに、イベント検出型センサを用いてもよい。イベント検出型センサは、光検出部25によって検出された光から得られる画像の信号を出力するのではなく、画像の変化に基づいて検出されるイベント情報(例えば画像において閾値以上の輝度変化のあった座標)を示す信号を出力する。この場合には、解析装置90は、画像解析部95の機能に代えて、イベント情報を解析する機能を有するイベント解析部を含む。イベント解析部は、イベント検出型センサから出力される信号(イベント情報信号)を解析して、検出装置10の圧力検出面60aに対して加わった圧力に関連する情報(例えば、圧力の大きさ、圧力の向き)を算出して出力する。
【0063】
(3)光導入部28は、光センサ26よりも光放射部材40側に配置され、光放射部材40からの光(特に光Lr2のような反射部材80に関連する光)を光センサ26に導入する。同様な機能の光導入部28B、28C、28Dを例示したが、このような機能を有していれば、例示された構成に限らない。
【0064】
(4)反射部材80は、光放射部材40からの光を光センサ26に到達させるために、少なくとも第1波長の光に対する反射機能を有する。一方、光放射部材40からの光を光センサ26に到達させることによって、反射部材80に相当する構成がイメージセンサ基板20において認識できれば、必ずしもこの反射機能を有していなくてもよい。弾性部材60は、反射部材80を支持するのではなく、例えば、第1波長の光に対する吸収機能を有する吸収部材を支持してもよい。光放射部材40からの光が、例えば圧力検出面60aで反射して光センサ26に到達する間に、吸収部材によって光が吸収される。これによって、イメージセンサ基板20は、吸収部材の画像を得ることができる。
【0065】
このように、弾性部材60の弾性変形に追従して移動できるように弾性部材60に支持される部材(被支持部材)は、反射部材80に限られず、弾性部材60とは異なる光学特性を有する様々な部材から採用されることができる。弾性部材60は、複数種類の被支持部材(例えば、反射部材80と吸収部材との双方)を支持してもよい。
【0066】
(5)弾性部材60によって複数の反射部材80が支持されている場合に限らず、一つの反射部材が支持されてもよい。一つの反射部材は、例えば、メッシュ形状を有してもよい。ここでいうメッシュ形状の部材は、複数の開口が形成された面形状の部材である。メッシュ形状の部材は、一例として、矩形の開口がマトリクス状に配置され、格子状のパターン形状を有する。面形状の部材が弾性部材60に支持されることによって、弾性部材60の弾性変形に追従して、この部材が変形する。イメージセンサ基板20は、例えば、この弾性変形によって開口部分の形状が変化したり、開口部分が移動したりする画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…触覚センサ、10,10A,10B…検出装置、20,20B,20C,20D…イメージセンサ基板、20a,20Ba,20Ca,20Da…第1面、21…基板、25,25B…光検出部、26…光センサ、27D…マイクロレンズアレイ、28,28B,28C,28D…光導入部、29…開口部、29C…孔、29D…開口部、40,40A,40B…光放射部材、45…光拡散板、48…光源、60…弾性部材、60a…圧力検出面、80,80d1,80d2,80d3,80d4…反射部材、90…解析装置、95…画像解析部、98…電力供給部、1000…物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長の光を検出可能な複数の光センサが配置された第1面を有するセンサ基板と、
前記センサ基板の前記第1面側に配置され、前記第1波長に対して透過性を有する弾性部材と、
前記弾性部材に支持され、前記弾性部材とは異なる光学特性を有する被支持部材と、
前記弾性部材より前記センサ基板側において前記弾性部材に覆われて配置され、前記弾性部材に向けて前記第1波長を含む光を放射する光放射部材と、
を備え
前記センサ基板は、前記複数の光センサよりも前記光放射部材側に配置され当該複数の光センサのそれぞれに対応して配置された複数の光導入部を含み、
前記光放射部材は、前記センサ基板と前記弾性部材との間に配置されている触覚センサ。
【請求項2】
前記光放射部材は、光放射面を有し、前記センサ基板と前記弾性部材との間に挟まれた状態で配置され、前記第1波長に対して透過性を有する、請求項1に記載の触覚センサ。
【請求項3】
第1波長の光を検出可能な複数の光センサが配置された第1面を有するセンサ基板と、
前記センサ基板の前記第1面側に配置され、前記第1波長に対して透過性を有する弾性部材と、
前記弾性部材に支持され、前記弾性部材とは異なる光学特性を有する被支持部材と、
前記弾性部材より前記センサ基板側において前記弾性部材に覆われて配置され、前記弾性部材に向けて前記第1波長を含む光を放射する光放射部材と、
を備え
前記光放射部材は、光放射面を有し、前記センサ基板と前記弾性部材との間に挟まれた状態で配置され、前記第1波長に対して透過性を有し、
前記光放射面は、前記光センサと前記弾性部材との間に配置され、
前記光放射部材は前記センサ基板に支持される触覚センサ。
【請求項4】
前記光放射部材は、前記センサ基板と前記弾性部材との間に挟まれた面光源を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項5】
前記面光源はEL素子を含む、請求項4に記載の触覚センサ。
【請求項6】
前記光放射部材は、光源および前記光源からの光を拡散して前記弾性部材に導くための光拡散板を含み、
前記光拡散板は、前記弾性部材と前記センサ基板に挟まれる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項7】
前記被支持部材は球体形状を有する、請求項1から請求項のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項8】
前記被支持部材はメッシュ形状を有する、請求項1から請求項のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項9】
前記第1波長は、可視光外の波長を含む、請求項1から請求項のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項10】
前記第1波長は、可視光の波長を含む、請求項1から請求項のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項11】
前記センサ基板は、イメージセンサであり、
前記複数の光センサの検出結果に応じて前記センサ基板から出力される画像信号を解析して、前記弾性部材への圧力に関連する情報を出力する解析装置をさらに備える、請求項1から請求項10のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項12】
前記センサ基板は、イベント検出型センサであり、
前記複数の光センサの検出結果に応じて前記センサ基板から出力されるイベント情報信号を解析して、前記弾性部材への圧力に関連する情報を出力する解析装置をさらに備える、請求項1から請求項10のいずれかに記載の触覚センサ。