(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033647
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/34 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
H03F3/34 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137650
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悟
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA11
5J500AA53
5J500AC13
5J500AC41
5J500AC98
5J500AF18
5J500AH25
5J500AH38
5J500AK23
(57)【要約】
【課題】ゼロキャリブレーションの実行時において広範囲の周波数領域のノイズの影響を受けにくい増幅装置を提供する。
【解決手段】増幅装置10は、入力信号を所定の減衰比で減衰させる減衰回路20と、減衰回路20で減衰した入力信号を増幅する増幅器40と、増幅器40の入力と減衰回路20との間に接続されるスイッチ回路30とを備える。スイッチ回路30は、増幅器40の入力を、前記減衰回路に電気的に接続する回路と、接地点80に電気的に接続する回路とのいずれかの回路に切り替える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を所定の減衰比で減衰させる減衰回路と、
前記減衰回路で減衰した前記入力信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器の入力と前記減衰回路との間に接続されるスイッチ回路と
を備え、
前記スイッチ回路は、前記増幅器の入力を、前記減衰回路に電気的に接続する回路と、接地点に電気的に接続する回路とのいずれかの回路に切り替える、増幅装置。
【請求項2】
前記減衰回路は、
前記入力信号が入力されている場合、前記所定の減衰比を第1の減衰比に設定し、
前記入力信号が入力されていない場合、前記所定の減衰比を、前記第1の減衰比より大きい第2の減衰比に設定する、請求項1に記載の増幅装置。
【請求項3】
前記スイッチ回路は、前記増幅器の入力と前記接地点との間の電気抵抗の抵抗値を変更可能に構成される、請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項4】
前記減衰回路は、前記減衰回路の出力と前記接地点との間の電気抵抗の抵抗値を変更可能に構成される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高精度のオフセットキャンセルが可能であるとともに、低周波領域でのノイズの低減化が可能な増幅装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オフセットの補正するゼロキャリブレーションの実行時において、低周波領域だけでなく高周波領域においてもノイズの低減が求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、ゼロキャリブレーションの実行時において広範囲の周波数領域のノイズの影響を受けにくい増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る増幅装置は、入力信号を所定の減衰比で減衰させる減衰回路と、前記減衰回路で減衰した前記入力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の入力と前記減衰回路との間に接続されるスイッチ回路とを備える。前記スイッチ回路は、前記増幅器の入力を、前記減衰回路に電気的に接続する回路と、接地点に電気的に接続する回路とのいずれかの回路に切り替える。このように、増幅器の入力に接続される回路が切替可能に構成されることで、入力信号にかかわらず、増幅器に接地電圧を入力できる。その結果、増幅装置は、入力信号を止めずにゼロキャリブレーションを実行しても、広範囲の周波数領域のノイズの影響を受けにくい。
【0007】
一実施形態に係る増幅装置において、前記減衰回路は、前記入力信号が入力されている場合、前記所定の減衰比を第1の減衰比に設定し、前記入力信号が入力されていない場合、前記所定の減衰比を、前記第1の減衰比より大きい第2の減衰比に設定してよい。このようにすることで、入力信号を止めずにゼロキャリブレーションが実行されても、入力信号が増幅器の入力に影響を及ぼしにくくなる。その結果、増幅装置は、入力信号を止めずにゼロキャリブレーションを実行しても、より一層ノイズの影響を受けにくくなる。
【0008】
一実施形態に係る増幅装置において、前記スイッチ回路は、前記増幅器の入力と前記接地点との間の電気抵抗の抵抗値を変更可能に構成されてよい。このようにすることで、増幅装置は、増幅器の入力に流れるバイアス電流に起因する出力のズレを測定し、測定結果に基づいてゼロキャリブレーションを実行できる。その結果、ゼロキャリブレーションによる補正の精度が高められる。
【0009】
一実施形態に係る増幅装置において、前記減衰回路は、前記減衰回路の出力と前記接地点との間の電気抵抗の抵抗値を変更可能に構成されてよい。このようにすることで、入力信号が入力されたままゼロキャリブレーションが実行されても、入力信号が増幅器の入力に影響を及ぼしにくくなる。その結果、増幅装置は、入力信号を止めずにゼロキャリブレーションを実行しても、より一層ノイズの影響を受けにくくなる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ゼロキャリブレーションの実行時において広範囲の周波数領域のノイズの影響を受けにくい増幅装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】増幅器から見た電気抵抗を表す回路図である。
【
図3】一実施形態に係る増幅装置の構成例を示す回路図である。
【
図4】増幅器の入力と接地点との間に接続される電気抵抗を切り替えるスイッチ回路の構成例を示す回路図である。
【
図5】減衰回路の出力と接地点との間に接続される電気抵抗をバイパスするスイッチを備える構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る実施形態が、比較例と対比しながら説明される。
【0013】
(比較例)
図1に示されるように、比較例に係る増幅装置90は、増幅器91と、減衰回路92とを備える。減衰回路92は、増幅装置90の入力端子94から入力される入力信号を所定の減衰比で減衰させて出力する。減衰回路92は、所定の減衰比として、少なくとも第1の減衰比と第2の減衰比とのいずれかに設定可能に構成される。増幅装置90は、減衰回路92から入力された信号を増幅して出力端子95に出力する。つまり、増幅装置90は、減衰回路92で入力信号を減衰し、増幅器91で増幅して出力する。増幅装置90は、減衰回路92の減衰比を切り替えることによって、入力信号の増幅率を制御できる。
【0014】
減衰回路92は、増幅器91の入力に接続される側の端部において、電気抵抗R94を介して接地点80に接続されている。電気抵抗R94の抵抗値は、750kΩである。
【0015】
減衰回路92は、第1の減衰比で入力信号を減衰するように構成される第1減衰回路921と、第2の減衰比で入力信号を減衰するように構成される第2減衰回路922とを含む。減衰回路92は、増幅装置90の入力端子94と増幅器91の入力との間を、第1減衰回路921と第2減衰回路922とのいずれかの回路で接続するように切り替えるスイッチ92A及び92Bを備える。スイッチ92A及び92Bは、第1減衰回路921に接続する切替端子aと、第2減衰回路922に接続する切替端子bとを有する。減衰回路92は、スイッチ92A及び92Bそれぞれにおいて接続する端子を切替端子a及びbのいずれかに切り替えることによって第1減衰回路921及び第2減衰回路922のいずれかに切り替える。
【0016】
第1減衰回路921は、第1の減衰比が1となるように、減衰回路92の入力と出力との間に接地点80を接続せず、減衰回路92の入力と出力とを単に導通させる。第2減衰回路922は、第2の減衰比が10となるように、減衰回路92に入力される電圧を分圧する分圧抵抗R92及びR93を含む。分圧抵抗R92及びR93の抵抗値は、分圧抵抗R92の抵抗値と、分圧抵抗R93と電気抵抗R94とが並列に接続された抵抗値との比が10になるように設定される。具体的には、分圧抵抗R92及びR93の抵抗値は、それぞれ675kΩ及び83.33kΩである。減衰回路92は、スイッチ92A及び92Bによって入力と出力との間を接続する回路を第1減衰回路921及び第2減衰回路922のいずれかに切り替えることによって減衰比を制御する。
【0017】
増幅装置90の出力は、入力信号がゼロである場合でも、増幅器91の出力に加わるオフセット電圧、又は、増幅器91の入力に流れるバイアス電流等に起因してゼロからずれることがある。この場合、増幅装置90は、入力信号がゼロである場合の出力がゼロになるようにキャリブレーションを実行する。入力信号がゼロである場合の出力がゼロになるように実行されるキャリブレーションは、ゼロキャリブレーション又はゼロ点調整とも称される。
【0018】
増幅装置90は、スイッチ93を更に備える。スイッチ93は、増幅装置90の入力端子94と減衰回路92との間に接続される。スイッチ93は、減衰回路92への入力を、電気抵抗R91を介して入力端子94に接続する切替端子aと、電気抵抗R95を介して接地点80に接続する切替端子bとを有する。電気抵抗R95の抵抗値は、250kΩである。スイッチ93は、減衰回路92に接続する端子を切替端子a及びbのいずれかに切り替えることによって、減衰回路92への入力を、入力端子94と接地点80とのいずれかに切り替える。スイッチ93が減衰回路92への入力を入力端子94に切り替える場合、減衰回路92に、入力端子94から入力信号が入力される。スイッチ93が減衰回路92への入力を接地点80に切り替える場合、減衰回路92に、接地電圧が入力される。
【0019】
増幅装置90は、ゼロキャリブレーションを実行する場合において、スイッチ93によって減衰回路92への入力を接地点80に切り替えて減衰回路92に接地電圧を入力する。減衰回路92に接地電圧が入力される場合、増幅器91にも接地電圧が入力される。増幅器91に接地電圧が入力される場合、増幅器91の出力は、理想的にはゼロとなる。しかし、増幅器91の出力は、オフセット電圧又はバイアス電流等によってゼロではない値となり得る。増幅器91に接地電圧が入力されるときの増幅器91の出力は、増幅器91のゼロ点のズレに対応する。したがって、増幅器91の出力は、増幅器91のゼロ点のズレに基づいて、増幅器91に接地電圧が入力される場合にゼロとなるように補正される。
【0020】
ゼロキャリブレーションが実行される場合において、スイッチ93は、減衰回路92への入力を接地点80に接続するように切り替える。しかし、スイッチ93において、信号が漏れることがある。したがって、スイッチ93に入力される入力信号の一部が漏れて減衰回路92に入力されることがある。例えば、スイッチ93がリレーによって接続を切り替える場合、リレーにおいて入力信号の一部が漏れて減衰回路92に入力されることがある。具体的には、入力信号の交流成分に対するリレーのアイソレーションが完全ではないことによって、リレーにおいて入力信号の一部が漏れ得る。信号の周波数が高くなるほどリレーのアイソレーションが悪化する傾向にある。例えば、信号の周波数が100MHzである場合、リレーのアイソレーションは、-50dB(0.0032倍)にとどまる。よって、入力信号の一部がリレーで遮断されずに減衰回路92に漏れることがある。
【0021】
以上述べてきたように、減衰回路92への入力を接地点80に接続したとしても、減衰回路92に漏れた入力信号が増幅器91に入力され得る。したがって、ゼロキャリブレーションが実行される場合における増幅器91の出力は、減衰回路92に漏れた入力信号の影響を受け得る。例えば、入力信号として振幅が20Vp-pかつ周波数が100MHzの信号が入力されている場合、スイッチ93が減衰回路92への入力を接地点80に切り替えていたとしても、減衰回路92に漏れる信号の振幅は、以下の式(1)で表される値で観測される。
20Vp-p×0.0032(-50dB)=63mVp-p (1)
【0022】
さらに、減衰回路92の減衰比が1である場合、増幅器91に入力される信号の振幅は、ゼロにならず、上記式(1)で表される値となる。その結果、ゼロキャリブレーションが実行される場合における増幅器91の出力は、スイッチ93で漏れた入力信号の影響を受けて、実際のゼロ点のズレを表さない。つまり、増幅器91のゼロ点のズレに基づく補正に誤差が生じる。
【0023】
また、増幅器91のゼロ点のズレは、増幅器91の入力に流れるバイアス電流Ibに起因して生じる電圧の影響を受ける。具体的には、バイアス電流Ibが1nAである場合、増幅器91の入力に印加される電圧は、以下のように表される。
【0024】
減衰比が1となるように第1減衰回路921に切り替えられた場合に増幅器91の入力から見た抵抗値は、
図2(A)に示されるように、250kΩの電気抵抗R95と750kΩの電気抵抗R94とが並列に接続された回路で計算される。したがって、減衰比が1となる場合における増幅器91の入力から見た抵抗値は、187.5kΩである。そうすると、バイアス電流Ibが1nAである場合に増幅器91の入力に印加される電圧は、187.5μVとなる。入力信号のレンジが10mVであるとすると、バイアス電流Ibに起因する電圧は、約2.5%の影響になる。
【0025】
また、減衰比が10となるように構成された第2減衰回路922の抵抗値は、増幅器91の入力から見て、
図2(B)に示されるように、250kΩの電気抵抗R95と675kΩの分圧抵抗R92とが直列に接続された電気抵抗と、83.33kΩの分圧抵抗R93と、750kΩの電気抵抗R94とが並列に接続された回路で計算される。したがって、減衰比が10となるように構成された減衰回路92の、増幅器91の入力から見た抵抗値は、69.375kΩである。そうすると、バイアス電流Ibが1nAである場合に増幅器91の入力に印加される電圧は、69.4μVとなる。入力信号のレンジが10mVであるとすると、バイアス電流Ibに起因する電圧は、約0.9%の影響になる。
【0026】
<小括>
以上述べてきたように、比較例に係る増幅装置90において、ゼロキャリブレーションの実行時において入力信号がノイズとなってゼロ点の補正の精度を低下させ得る。特に、入力信号の高周波成分がノイズとなりやすい。また、バイアス電流Ibに起因して増幅器91に入力される電圧は、入力信号と比較して無視しにくい程度に大きくなり得る。
【0027】
そこで、本開示は、ゼロキャリブレーションの実行時において広範囲の周波数領域でノイズを低減できる増幅装置10(
図3等参照)を説明する。
【0028】
(本開示の一実施形態)
図3に示されるように、一実施形態に係る増幅装置10は、増幅器40と、減衰回路20と、スイッチ回路30とを備える。減衰回路20とスイッチ回路30と増幅器40とは、直列に接続される。増幅装置10は、入力信号を減衰回路20で減衰し、増幅器40で増幅して出力する。
【0029】
減衰回路20は、増幅装置10の入力端子50に電気抵抗R1を介して接続される。言い換えれば、電気抵抗R1は、入力端子50と減衰回路20との間に直列に接続される。電気抵抗R1の抵抗値は、250kΩであるとする。減衰回路20は、入力端子50から入力される入力信号を所定の減衰比で減衰させて出力する。減衰回路20は、所定の減衰比として、少なくとも第1の減衰比と第2の減衰比とのいずれかに設定可能に構成される。
【0030】
減衰回路20は、スイッチ回路30に接続される側の端部において、電気抵抗R4を介して接地点80に接続されている。電気抵抗R4の抵抗値は、750kΩであるとする。
【0031】
減衰回路20は、第1の減衰比で入力信号を減衰するように構成される第1減衰回路21と、第2の減衰比で入力信号を減衰するように構成される第2減衰回路22とを含む。減衰回路20は、減衰回路20にスイッチ回路30を介して接続される増幅器40の入力と、増幅装置10の入力端子50との間を接続する回路を、第1減衰回路21及び第2減衰回路22のいずれかの回路に切り替えるスイッチ23及び24を備える。スイッチ23及び24は、第1減衰回路21に接続する切替端子aと、第2減衰回路22に接続する切替端子bとを有する。減衰回路20は、スイッチ23及び24それぞれにおいて接続する端子を切替端子a及びbのいずれかに切り替えることによって第1減衰回路21及び第2減衰回路22のいずれかに切り替える。
【0032】
第1減衰回路21は、第1の減衰比が1となるように、減衰回路20の入力と出力との間に接地点80を接続せず、減衰回路20の入力と出力とを単に導通させる。第2減衰回路22は、第2の減衰比が10となるように、減衰回路20に入力される電圧を分圧する分圧抵抗R2及びR3を含む。分圧抵抗R2及びR3の抵抗値は、分圧抵抗R2の抵抗値と、分圧抵抗R3と電気抵抗R4とが並列に接続された抵抗値との比が10になるように設定される。具体的には、分圧抵抗R2及びR3の抵抗値は、それぞれ675kΩ及び83.33kΩであるとする。減衰回路20は、スイッチ23及び24によって入力と出力との間を接続する回路を第1減衰回路21及び第2減衰回路22のいずれかに切り替えることによって減衰比を制御する。
【0033】
スイッチ回路30は、減衰回路20の出力と増幅器40の入力との間に接続される。スイッチ回路30は、減衰回路20の出力と、接地点80とのいずれかを選択して増幅器40の入力に接続するように構成される。つまり、スイッチ回路30は、増幅器40に入力する信号を選択するように構成される。
【0034】
具体的には、スイッチ回路30は、スイッチ31及び32を備える。スイッチ31は、減衰回路20と増幅器40の入力との間に接続される。スイッチ31は、減衰回路20と増幅器40の入力とを導通させる閉状態と、増幅器40の入力を減衰回路20から電気的に切り離す開状態とのいずれかの状態に遷移する。スイッチ32は、増幅器40の入力と接地点80とを導通させる閉状態と、増幅器40の入力を接地点80から電気的に切り離す状態とのいずれかの開状態に遷移する。
【0035】
スイッチ回路30は、スイッチ31を閉状態に遷移させ、かつ、スイッチ32を開状態に遷移させることによって、減衰回路20で減衰した入力信号を増幅器40に入力できる。スイッチ回路30は、スイッチ32を閉状態に遷移させ、かつ、スイッチ31を開状態に遷移させることによって、接地電位を増幅器40に入力できる。
【0036】
スイッチ回路30が減衰回路20の出力を増幅器40の入力に接続する場合、減衰回路20において所定の減衰比で減衰された入力信号が増幅器40に入力される。スイッチ回路30が接地点80を増幅器40の入力に接続する場合、接地電圧が増幅器40に入力される。
【0037】
増幅器40は、入力された信号を所定の増幅率で増幅し、増幅装置10の出力端子60に出力する。
【0038】
以上述べてきたように、増幅装置10は、減衰回路20において減衰比を切り替えることによって、全体として増幅率を切り替えることができる。
【0039】
<キャリブレーション>
増幅装置10の出力は、入力信号がゼロである場合でも、増幅器40の出力に加わるオフセット電圧、又は、増幅器40の入力に流れるバイアス電流等に起因してゼロからずれることがある。この場合、増幅装置10は、入力信号がゼロである場合の出力がゼロになるようにキャリブレーションを実行する。入力信号がゼロである場合の出力がゼロになるように実行されるキャリブレーションは、ゼロキャリブレーション又はゼロ点調整とも称される。
【0040】
増幅装置10は、ゼロキャリブレーションを実行する場合、スイッチ回路30において、増幅器40の入力に接地点80を接続する。つまり、増幅装置10は、ゼロキャリブレーションの実行時に、増幅器40の入力に接続される回路を切り替え可能に構成される。このようにすることで、増幅装置10は、増幅装置10の入力端子50に入力信号が入力されていても、増幅器40の入力に接地電圧を入力できる。つまり、増幅装置10は、ゼロキャリブレーションの実行時において、増幅器40の入力に対する入力信号等のノイズの影響を低減できる。また、増幅装置10は、増幅器40の入力に接地電圧を入力できることによって、低周波のノイズの影響も高周波のノイズの影響も低減できる。その結果、増幅装置10は、入力端子50への入力信号の入力を止めずにゼロキャリブレーションを実行しても、広範囲の周波数領域のノイズの影響を受けにくくなり、ゼロ点の補正の精度を高めることができる。
【0041】
さらに、増幅装置10は、ゼロキャリブレーションを実行する場合、減衰回路20の減衰比を大きい値に設定する。つまり、増幅装置10は、ゼロキャリブレーションを実行する場合、減衰回路20で入力信号をより大きく減衰させる。本実施形態において、減衰回路20は、第2減衰回路22に切り替えることによって、減衰比を10に設定できる。増幅装置10は、ゼロキャリブレーションを実行する場合、減衰回路20の減衰比を10に設定する。このようにすることで、増幅器40の入力に対する入力信号の影響がより一層低減される。その結果、増幅装置10は、入力端子50への入力信号の入力を止めずにゼロキャリブレーションを実行しても、より一層、入力信号等のノイズの影響を受けにくくなり、ゼロ点の補正の精度を高めることができる。
【0042】
<バイアス電流Ibに起因する出力のズレの検出>
図4に示されるように、スイッチ回路30は、スイッチ33を更に備えてよい。スイッチ33は、スイッチ32と接地点80との間に接続される。スイッチ33は、電気抵抗R5を介して増幅器40の入力を接地点80に接続する回路と、電気抵抗を介さずに増幅器40の入力を接地点80に接続する回路とを切り替える。スイッチ33は、切替端子a及びbを有する。スイッチ回路30は、接続する端子を切替端子aに切り替えることによって、増幅器40の入力を、電気抵抗を介さずに増幅器40の入力を接地点80に接続する回路に接続する。スイッチ回路30は、接続する端子を切替端子bに切り替えることによって、増幅器40の入力を、電気抵抗R5を介して増幅器40の入力を接地点80に接続する回路に接続する。言い換えれば、スイッチ回路30は、スイッチ33が接続する端子を切替端子a及びbのいずれかに切り替えることによって、増幅器40の入力と接地点80との間の電気抵抗の抵抗値を変更可能に構成される。
【0043】
上述したように、スイッチ回路30は、スイッチ31を開状態にすることによって、増幅器40に入力信号を入力させない。ここで、スイッチ31で入力信号の一部がリークして増幅器40に入力されることがある。しかし、スイッチ31で入力信号の一部がリークしても、増幅器40に接地点80の接地電圧が入力されることによって、ゼロ点の補正がスイッチ31におけるリークの影響を受けにくくなる。
【0044】
一方で、増幅器40に接地電圧が入力される場合、増幅器40の入力に流れるバイアス電流Ibに起因する電圧は、増幅器40に入力されない。したがって、バイアス電流Ibに起因する増幅器40の出力のズレが測定されない。そこで、増幅装置10は、バイアス電流Ibに起因する増幅器40の出力のズレを測定できるように、スイッチ33を、電気抵抗R5を介して増幅器40の入力を接地点80に接続する回路に切り替える。
【0045】
具体的には、増幅装置10は、スイッチ33を、電気抵抗を介さずに増幅器40の入力を接地点80に接続する回路に切り替えて増幅器40が出力する電圧を測定する。測定した電圧は、増幅器40のオフセット電圧に対応する。増幅器40のオフセット電圧は、増幅器40の出力のズレの一因となる。増幅器40のオフセット電圧は、Vosで表されるとする。
【0046】
さらに、増幅装置10は、スイッチ33を、電気抵抗R5を介して増幅器40の入力を接地点80に接続する回路に切り替えて増幅器40が出力する電圧を測定する。この場合、測定した電圧は、バイアス電流Ibに起因する出力のズレと、増幅器40のオフセット電圧(Vos)とを含む。バイアス電流Ibに起因する出力のズレを含む出力電圧がVsで表されるとすると、バイアス電流Ibに起因する出力のズレは、VsとVosとの差として表される。バイアス電流Ibに起因する出力のズレは、バイアス電流Ibと、電気抵抗R5の抵抗値との積として、Vs-Vos=Ib×R5という式で表される。この式に基づいて、バイアス電流Ibは、Ib=(Vs-Vos)/R5という式で算出される。
【0047】
バイアス電流Ibが判明することによって、減衰回路20が第1減衰回路21及び第2減衰回路22のどちらの回路に切り替えられた場合でも、増幅器40の入力から見た抵抗値に基づいて、バイアス電流Ibに起因する出力のズレが算出される。例えば、減衰回路20が第1減衰回路21に切り替えられることによって減衰比が1に設定される場合、増幅器40の入力から見た抵抗値は187.5kΩである。この場合、バイアス電流Ibに起因する増幅器40の出力のズレは、187.5kΩ×Ibで表される。また、減衰回路20が第2減衰回路22に切り替えられることによって減衰比が10に設定される場合、増幅器40の入力から見た抵抗値は69.375kΩである。この場合、バイアス電流Ibに起因する増幅器40の出力のズレは、69.375kΩ×Ibで表される。
【0048】
以上述べてきたように、スイッチ33で増幅器40の入力と接地点80との間に接続される電気抵抗の抵抗値を変更することによって、増幅装置10は、増幅器40の入力に流れるバイアス電流Ibに起因する出力のズレを測定できる。そして、増幅装置10は、バイアス電流Ibに起因する出力のズレの測定結果に基づいてゼロキャリブレーションを実行できる。その結果、ゼロキャリブレーションによる補正の精度が高められる。
【0049】
<入力信号の影響のさらなる低減>
図5に示されるように、減衰回路20は、減衰回路20の出力を接地点80に接続する電気抵抗R4をバイパスするスイッチ25を更に備えてよい。減衰回路20は、スイッチ25を開状態と閉状態とのいずれかに遷移させることによって、減衰回路20の出力と接地点80との間の電気抵抗の抵抗値を変更可能に構成される。
【0050】
増幅装置10は、スイッチ25を閉状態に遷移させることによって、電気抵抗R4を介さずに減衰回路20の出力を接地点80に接続させる。この場合、入力信号にかかわらず、減衰回路20の出力は、接地電位になる。つまり、入力信号にかかわらず、スイッチ回路30のスイッチ31へ接地電位が入力される。
【0051】
増幅装置10は、スイッチ25を開状態に遷移させることによって、電気抵抗R4を介して減衰回路20の出力を接地点80に接続させる。このようにすることで、増幅装置10は、入力信号を増幅する動作を継続できる。
【0052】
一方で、増幅装置10は、ゼロキャリブレーションの実行時において、スイッチ25を閉状態にして減衰回路20の出力を接地電位にでき、増幅器40への入力を接地電位にできる。このようにすることで、入力信号が入力されたままゼロキャリブレーションが実行されても、入力信号が増幅器40の入力に影響を及ぼしにくくなる。その結果、増幅装置10は、入力信号を止めずにゼロキャリブレーションを実行しても、より一層ノイズの影響を受けにくくなる。
【0053】
増幅装置10は、
図4に示されるスイッチ33と、
図5に示されるスイッチ25とを両方とも備えてもよいし、一方だけを備えてもよい。
【0054】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 増幅装置
20 減衰回路(21:第1減衰回路、22:第2減衰回路、23、24:切替スイッチ、25:開閉スイッチ)
30 スイッチ回路(31、32:開閉スイッチ、33:切替スイッチ)
40 増幅器
50 入力端子
60 出力端子
80 接地点
R1~R5 電気抵抗
Ib バイアス電流