(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033705
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】スペーサを製造するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/36 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
A61F2/36
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021122987
(22)【出願日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】20191372.0
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ トーマス
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA05
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD01
4C097EE03
4C097MM03
4C097MM07
4C097SC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スペーサを製造するための装置を提供する。
【解決手段】スペーサは、内部空間2を有するステムモールド1であって、内部空間は近位開口部3を介してアクセス可能であり、近位開口部を外周的に区切る近位壁4を有するステムモールドと、内部に中空空間6を有するヘッドモールド5であって、中空空間は球面形状の内部表面7を有し、遠位開口部8を介してアクセス可能であり、遠位開口部を外周的に区切る遠位壁9を有するヘッドモールドと、ステム部12、ヘッド部14およびフランジ16を有するメタルコア10であって、フランジは、メタルコアから突出し、ステム部とヘッド部との間に配置され、近位面18および遠位面20を有するメタルコアと、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨セメントペースト(36、86)を硬化させることによりスペーサ(38、88、188、238、288)を製造するための装置であって、スペーサ(38、88、188、238、288)は、医療分野において、関節のヘッド部の関節面を含む関節または関節の一部を一時的に交換するために、特に、股関節または肩関節を一時的に交換するために、提供されるものであり、この装置は、
骨セメントペースト(36、86)からスペーサ(38、88、188、238、288)のステム(42、92、192、242、292)を成形するためのステムモールド(1、51、151、251)であって、ステムモールド(1、51、151、251)は、その内部に内部空間(2、52、152、252)を有し、内部空間(2、52、152、252)は、ステムモールド(1、51、151、251)の近位側の近位開口部(3、53、153)を介してアクセス可能であり、ステムモールド(1、51、151、251)は、ステムモールド(1、51、151、251)の近位開口部(3、53、153)を外周的に区切る近位壁(4、54、154)を有する、ステムモールド(1、51、151、251)と、
骨セメントペースト(36、86)からスペーサ(38、88、188、238、288)のヘッド部(40、90、190、240、290)およびネック部(44、94、194、244、294)を成形するためのヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)であって、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)は、その内部に中空空間(6、56、106、156、206、256)を有し、中空空間(6、56、106、156、206、256)は、スペーサ(38、88、188、238、288)のヘッド部(40、90、190、240、290)の摺動面を成形するための球面形状の内部表面(7、57、107、157、207、257)を有し、中空空間(6、56、106、156、206、256)は、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の遠位側の遠位開口部(8、58、108、158)を介してアクセス可能であり、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)は、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の遠位開口部(8、58、108、158)を外周的に区切る遠位壁(9、59、109、159)を有する、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)と、
メタルコア(10、60、160、260)であって、メタルコア(10、60、160、260)は、ステム部(12、62、162、262)と、ヘッド部(14、64、164、264)と、フランジ(16、66、166、266)とを有し、フランジ(16、66、166、266)は、メタルコア(10、60、160、260)から突出し、フランジ(16、66、166、266)は、ステム部(12、62、162、262)とヘッド部(14、64、164、264)との間に配置され、フランジ(16、66、166、266)は、近位面(18、68、168)と遠位面(20、70、170)とを有する、メタルコア(10、60、160、260)と、を有し、
ステムモールド(1、51、151、251)およびメタルコア(10、60、160、260)のステム部(12、62、162、262)は、ステムモールド(1、51、151、251)の近位壁(4、54、154)がフランジ(16、66、166、266)の遠位面(20、70、170)に当接しているときに、ステム部(12、62、162、262)がステムモールドの内部空間(2、52、152、252)に配置されるように成形され、
ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)およびメタルコア(10、60、160、260)のヘッド部(14、64、164、264)は、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の遠位壁(9、59、109、159)がフランジ(16、66、166、266)の近位面(18、68、168)に当接しているときに、ヘッド部(14、64、164、264)がヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)に配置されるように成形される、
装置。
【請求項2】
メタルコア(10、60、160、260)は、ステム部(12、62、162、262)、ヘッド部(14、64、164、264)およびフランジ(16、66、166、266)から構成され、および/または、メタルコア(10、60、160、260)は一部品である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ステムモールド(1、51、151、251)および/またはヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)は、プラスチック材料、好ましくは少なくとも1つのプラスチックフィルムまたは射出成形されたプラスチック材料で構成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ステムモールド(1、51、151、251)の近位壁(4、54、154)がフランジ(16、66、166、266)の遠位面(20、70、170)に当接しているとき、特に、フランジ(16、66、166、266)の遠位面(20、70、170)に対して平らに当接しているときに、ステム部(12、62、162、262)は、ステムモールド(1、51、151、251)の内部空間(2、52、152、252)において、内部空間(2、52、152、252)を区切るステムモールド(1、51、151、251)の内壁から間隔を空けて配置される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の遠位壁(9、59、109、159)がフランジ(16、66、166、266)の近位面(18、68、168)に当接しているとき、特にフランジ(16、66、166、266)の近位面(18、68、168)と同一平面上に当接しているときに、ヘッド部(14、64、164、264)は、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)において、中空空間(6、56、106、156、206、256)を区切るヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の内壁から間隔をあけて配置される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)は、ヘッド(40、90、190、240、290)とステム(42、92、192、242、292)とを接続する、スペーサ(38、88、188、238、288)のネック部(44、94、194、244、294)を骨セメントペースト(36、86)から成形するためのネックモールド(28、78、128、178、228、278)を有し、ネックモールド(28、78、128、178、228、278)は管状または中空円筒状であり、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の遠位開口部(8、58、108、158)および遠位壁(9、59、109、159)は、ともにネックモールド(28、78、128、178、228、278)の一部であり、中空空間(6、56、106、156、206、256)の球面形状の内部表面(7、57、107、157、207、257)は、ネックモールド(28、78、128、178、228、278)の一部ではない、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)およびメタルコア(10、60、160、260)のヘッド部(14、64、164、264)は、遠位壁(9、59、109、159)がフランジ(16、66、166、266)の近位面(18、68、168)に当接しているときに、ヘッド部(14、64、164、260)がネックモールド(28、78、128、178、228、278)を越えてヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)内に突出するように成形される、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
ネックモールド(28、78、128、178、228、278)の長さは、ネックモールド(28、78、128、178、228、278)を短くすることで調整可能であり、好ましくは、ネックモールド(28、78、128、178、228、278)上に所定の切断点または引き裂き点が配置され、および/または、ネックモールド(28、78、128、178、228、278)上の外部に目盛りが配置される、ことを特徴とする請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
フランジ(16、66、166、266)の近位面(18、68、168)は、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)における、特にネックモールド(28、78、128、178、228、278)におけるメタルコア(10、60、160、260)の変位を制限し、および/または、フランジ(16、66、166、266)の遠位面(20、70、170)は、ステムモールド(1、51、151、251)におけるメタルコア(10、60、160、260)の変位を制限する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
センタリング手段(24、74、174、274)がメタルコア(10、60、160、260)のヘッド部(14、64、164、264)上に配置されており、センタリング手段(24、74、174、274)は、ヘッド部(14、64、164、264)の表面から突出しており、センタリング手段(24、74、174、274)は、メタルコア(10、60、160、260)のステム部(12、62、162、262)がヘッドモールド(5、55、106、156、206、256)の中空空間(6、56、106、156、206、256)に押し込まれたときに、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の内壁をヘッド部(14、64、164、264)から間隔をあけて配置し、特に、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)のネックモールド(28、78、128、178、228、278)は、メタルコア(10、60、160、260)のステム部(12、62、162、262)がヘッドモールド(5、55、105、155、206、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)に押し込まれたときに、ヘッド部(14、64、164、264)から間隔をあけて配置され、センタリング手段(24、74、174、274)は、好ましくはセンタリングフィンであり、メタルコア(10、60、160、260)のヘッド部(14、64、164、264)は、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)内でセンタリングフィンに沿って軸方向に変位可能であり、特に、ネックモールド(28、78、128、178、228、278)内で変位可能である、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
スペーシングピース(22、72、172、272)がメタルコア(10、60、160、260)のステム部(12、62、162、262)上に配置されており、スペーシングピース(22、72、172、272)は、ステム部(12、62、162、262)の表面から突出しており、スペーシングピース(22、72、172、272)は、メタルコア(10、60、160、260)のステム部(12、62、162、262)がステムモールド(1、51、151、251)の内部空間(2、52、152、252)に押し込まれたときに、ステムモールド(1、51、151、251)の内壁をメタルコア(10、60、160、260)のステム部(12、62、162、262)から間隔をあけて配置している、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
フランジ(16、66、166、266)の外周は、ステムモールド(1、51、151、251)の近位開口部(3、53、153)およびヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の遠位開口部(8、58、108、158)の少なくとも一方よりも大きい、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
少なくとも1つの通気口がステムモールド(1、51、151、251)およびヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の少なくとも一方に配置されており、少なくとも1つの通気口は、ステムモールド(1、51、151、251)の内部空間(2、52、152、252)およびヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)の少なくとも一方を、装置の周囲とガス透過的に接続し、少なくとも1つの通気口は、好ましくは、ガスに対して透過性であり、骨セメントペースト(36、86)に対して不透過性であり、特にポリメチルメタクリレート骨セメントペーストに対して不透過性である、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、少なくとも1つの微生物防止セメント容器に包装されたセメント粉末と、少なくとも1つの微生物防止かつ液密なモノマー液体容器に包装されたモノマー液体とを有する、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記装置は、セメント粉末をモノマー液体と混合するための、および混合された骨セメントペースト(36、86)を骨セメントカートリッジ(132)から送出するための少なくとも1つの骨セメントカートリッジ(132)を有し、好ましくは、ポリメチルメタクリレート骨セメント出発成分を混合するための、および混合されたポリメチルメタクリレート骨セメントペーストを骨セメントカートリッジ(132)から送出するための骨セメントカートリッジ(132)を有し、特に好ましくは、少なくとも1つの骨セメントカートリッジ(132)は、少なくとも1つのセメント容器を有し、少なくとも1つのモノマー液体容器を含み、少なくとも1つのセメント容器と少なくとも1つのモノマー液体容器とは、相互に分離した領域に配置される、ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
骨セメントペースト(36、86)を硬化させることによって、異なるスペーサ(38、88、188、238、288)を製造するためのセットであって、スペーサ(38、88、188、238、288)は、医療分野において、関節のヘッド部の関節面を含む関節または関節の一部を一時的に交換するために、特に、股関節または肩関節を一時的に交換するために、提供されるものであり、このセットは、請求項1~15のいずれか1項に記載の装置を有し、セットは、球面形状の内部表面(7、57、107、157、207、257)の直径が異なる少なくとも2つのヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)、および/または、中空空間(6、56、106、156、206、256)の遠位方向の長さが異なるかまたは内径が異なる少なくとも2つのステムモールド(1、51、151、251)を有する、セット。
【請求項17】
前記セットは、ヘッド部(14、64、164、264)および/またはステム部(12、62、162、262)の長さが異なる少なくとも2つのメタルコア(10、60、160、260)を有する、ことを特徴とする請求項16に記載のセット。
【請求項18】
関節の関節面を含む、関節または関節の一部、特に股関節または肩関節を一時的に交換するためのスペーサ(38、88、188、238、288)を製造する方法であり、請求項1~15のいずれか1項に記載の装置を用いて、または請求項16または17の記載のセットを用いて実行される方法であって、
A)骨セメントペースト(36、86)をステムモールド(1、51、151、251)の内部空間(2、52、152、252)に導入し、および骨セメントペースト(36、86)をヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)に導入するステップと、
B)ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の遠位壁(9、59、109、159)がメタルコア(10)のフランジ(16、66、166、266)の近位面(18、68、168)に当接するまで、メタルコア(10、60、160、260)のヘッド部(14、64、164、264)を、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の骨セメントペースト(36、86)で満たされた中空空間(6、56、106、156、206、256)に押し込み、その中に含まれている骨セメントペースト(36、86)を変位させ、およびステムモールド(1、51、151、251)の近位壁(4、54、154)がメタルコア(10、60、160、260)のフランジ(16、66、166、266)の遠位面(20、70、170)に当たるまで、メタルコア(10、60、160、260)のステム部(12、62、162、262)を、ステムモールド(1、51、151、251)の骨セメントペースト(36、86)で満たされた内部空間(2、52、152、252)に押し込み、その中に含まれている骨セメントペースト(36、86)を変位させるステップと、
C)ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)およびステムモールド(1、51、151、251)内で骨セメントペースト(36、86)を硬化させるステップと、
D)得られた成形され硬化されたスペーサ(38、88、188、238、288)を、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)およびステムモールド(1、51、151、251)から取り外すステップと、
を有する方法。
【請求項19】
ステップA)の前に、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)のネックモールド(28、78、128、178、228、278)が、製造するスペーサ(38、88、188、238)のネック部(44、94、194、244、294)の所望の長さに合わせて短くされ、球面形状の内部表面(7、57、107、157、207、257)の一致する内径を有するヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)が、製造するスペーサ(38、88、188、238、288)のヘッド部(40、90、190、240、290)の所望の形状に合わせて選択され、製造するスペーサ(38、88、188、238、288)のステム(42、92、192、242、292)の所望の形状に一致する内部空間(2、52、152、252)を有するステムモールド(1、51、151、251)が選択され、および/または、製造するスペーサ(38、88、188、238、288)のステム(42、92、192、242、292)の所望の形状に一致する寸法を有するメタルコア(10、60、160、260)が選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップA)の前に、モノマー液体とセメント粉末とを混合することによって均質な骨セメントペースト(36、86)が製造され、好ましくは、ステップA)において、混合された骨セメントペースト(36、86)は、骨セメントカートリッジを用いてステムモールド(1、51、151、251)の内部空間(2、52、152、252)およびヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)に押し込まれ、特に好ましくは、そうすることで、空気は、ステムモールド(1、51、151、251)の内部空間(2、52、152、252)から、およびヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)から排出される、ことを特徴とする請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
ステップB)において、メタルコア(10、60、160、260)のヘッド部(14、64、164、264)は、センタリング手段(24、74、174、274)の助けを借りて、特に、センタリングフィンの助けを借りて、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)内でセンタリングされ、センタリングフィンは、ヘッド部(14、64、164、264)の表面から突出し、およびセンタリングフィンは、ヘッド部(14、64、164、264)がヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)に押し込まれたときに、ヘッドモールド(5、55、105、155、205、255)の中空空間(6、56、106、156、206、256)の内壁に当接する、ことを特徴とする請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ステップB)において、メタルコア(10、60、160、260)のステム部(12、62、162、262)は、スペーシングピース(22、72、172、272)の助けを借りて、ステムモールド(1、51、151、251)内でセンタリングされ、スペーシングピース(22、72、172、272)は、ステム部(12、62、162、262)の表面から突出し、およびスペーシングピース(22、72、172、272)は、ステム部(12、62、162、262)がステムモールド(1、51、151、251)の内部空間(2、52、152、252)に押し込まれたときに、ステムモールド(1、51、151、251)の内部空間(2、52、152、252)の内壁に当接する、ことを特徴とする請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメントペーストを硬化させてスペーサを製造するための装置に関する。スペーサは、医療用途において、関節ヘッド部の関節面を含む関節または関節の一部を一時的に交換するための一時的なプレースホルダとして提供される。スペーサは、好ましくは、股関節または肩関節を一時的に交換するために適していて、提供され、特に好ましくは、股関節を一時的に置き換えるために提供される。したがって、この装置は、好ましくは、股関節スペーサまたは肩関節スペーサを製造するために提供される。本発明はまた、そのような装置を用いてそのようなスペーサを製造するためのセットおよび方法に関する。
【0002】
本発明は、それに応じて、特に、一部分の股関節スペーサおよび肩関節スペーサを製造するための二部分の成形型(casting mold)の形態の装置を提供し、成形型は、スペーサを構成するためのヘッドモールドとステムモールドとメタルコアとを有する。股関節スペーサおよび肩関節スペーサは、感染した股関節および肩関節の全関節内部人工補綴の2段階の再置換の文脈において、中間段階の一時的なプレースホルダ(スペーサ)として意図されている。本装置は、低粘度および高粘度のポリメチルメタクリレート骨セメントペーストを用いて、股関節スペーサおよび肩関節スペーサを製造するのに適している。
【背景技術】
【0003】
股関節内部人工補綴および肩関節内部人工補綴などの関節内部人工補綴(joint endoprostheses)は、世界中で広く移植されている。残念なことに、ごく一部のケースでは、関節内部人工補綴に微生物、特にグラム陽性菌およびグラム陰性菌、非常に稀には酵母菌および真菌類がコロニーを形成する。これらの微生物、主に黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌などの典型的な皮膚微生物が、外科手術(OP)の際に患者の体内に侵入し得る。また、微生物が血行によって関節内部人工補綴に侵入する可能性もある。関節内部人工補綴が微生物によってコロニーを形成されると、その周辺の骨および軟部組織も微生物によって感染して損傷を受ける。
【0004】
先行技術は、感染した関節内部人工補綴に対して主に2つの処置法、すなわち1段階敗血症再置換および2段階敗血症再置換を包含する。1段階再置換の場合、1回のOPにおいて最初に感染した関節内部人工補綴を除去し、次に徹底的なデブリードマンが行われ、次いで再置換関節内部人工補綴が移植される。
【0005】
2段階敗血症再置換においては、第1のOPにおいて最初に感染した関節内部人工補綴が除去され、次いでデブリードマンが行われ、その後関節スペーサが移植される。股関節スペーサはステムと、カラーと、ネックと、ボールヘッドとからなっており、股関節内部人工補綴の形状およびサイズを複製している。同様に、肩関節用スペーサは、肩関節内部人工補綴の形状およびサイズを複製している。スペーサは、骨セメントでそれぞれの骨に固定され、例えば、股関節スペーサの場合は、近位大腿骨または大腿管に固定される。炎症が鎮静して臨床炎症マーカが減少するまで、股関節スペーサは最大数週間にわたって患者の体内に残る。その後、第2のOPにおいて股関節スペーサが除去され、新鮮なデブリードマンの後に再置換関節内部人工補綴が移植される。
【0006】
スペーサは、股関節および肩関節の全関節内部人工補綴の2段階敗血症再置換の文脈において、中間段階の一時的なプレースホルダとして大きな意味をもっている。これらのスペーサを術中に製造する際、医療従事者は、感染の原因となっている微生物の利用可能な薬剤感受性に応じて、ポリメチルメタクリレート製の骨セメントに、その微生物に合わせて特別に調整された1つまたは複数の抗生物質を加える。
【0007】
スペーサの場合は、実際にスペーサを製造する前に、セメント粉末に抗生物質を添加する。この抗生物質で修飾された骨セメント粉末を用いて、モノマー液を混合することにより骨セメントペーストを製造し、この骨セメントペーストからスペーサを成形し、セメント粉末に添加されたモノマー液の助けを借りて重合により硬化させる。このようにして、骨セメントペーストは実質的に抗生物質を含んでいる。表面に近い部分にある抗生物質の粒子は、傷口からの分泌物などの体液の作用を受けて放出される。有効成分の放出は、開始時に最も多く、数日後には減少していく。
【0008】
特許文献1は、インプラント内部に液体用のリザーバを有する股関節プロテーゼ(hip joint prosthesis)を開示する。くぼみを有する股関節スペーサが特許文献2から公知であり、このくぼみに骨を処置するための物質を導入してもよい。特許文献3は、表面が抗生物質でコーティングされた股関節プロテーゼを提案する。特許文献4は、装置内部の内袋の助けを借りて液体活性成分を分配する装置を開示する。記載されたプロテーゼのいずれも、洗浄回路を作成するのに適していない。特許文献5および特許文献6は、有効成分を含む股関節スペーサを記載する。特許文献7は、洗浄可能な股関節スペーサを開示し、このスペーサは液体回路が作成可能である。特許文献8および特許文献9は、洗浄機能を有するさらなるスペーサを記載する。
【0009】
抗生物質を有するスペーサを使用することが知られている。スペーサは、一方では、例えば特許文献10または特許文献11に記載されているように、OP人員によってOP自体の間に、例えばスペーサモールドを用いて、PMMA骨セメント粉末と、抗生物質と、モノマー液体とから生産されてもよい。他方では、骨セメントから工業的に予め製作された股関節スペーサを使用することも従来から行われている。
【0010】
ポリメチルメタクリレート製の骨セメントを用いたスペーサを術中に作成するためのプラスチック成形型(casting mold)が従来からある。一部分の股関節スペーサを術中に作成するためのプラスチック成形型が特許文献12に記載されている。この成形型は透明で、2つの独立した充填開口部を有する。その結果、高粘度の骨セメントペーストであっても、骨セメントペーストの流路が比較的短いため、少ない圧力で成形型に導入することができる。高粘度でない骨セメントペーストを使用した場合、成形型への充填が完了した後、硬化前の骨セメントペーストが充填口から逆流してしまう危険性がある。この成形型は、スペーサヘッドの直径が異なるものを販売している。スペーサヘッドの直径は、可変的に調整できない。医療従事者は、予め決められたスペーサヘッドのサイズを選択することしかできない。ステム用の1つの成形型を用いて異なるサイズのスペーサヘッドを医療従事者が可能な限り選択できることが望ましいと思われる。
【0011】
さらなる発展として、特許文献13、特許文献14および特許文献15は、モジュール式股関節スペーサを製造するための多部分成形型を提案する。これらのモジュール式股関節スペーサは、スペーサヘッドと別個のステムとからなる。異なるスペーサヘッド直径を有するスペーサヘッド用の成形型がこの目的のために利用可能である。これは、ステム用の成形型を、選択された直径を有するスペーサヘッド用の成形型に接続することを意味する。このようにして組み立てられた成形型は、次いで一部品となり、成形型をセメントカートリッジに接続するためのねじが充填口に設けられている。特許文献16による別の変形例では、ステムを製造するための成形型と、スペーサヘッド用の別の成形型とを使用する。硬化および離型の完了後、2つのスペーサ部品が組み立てられる。特許文献17には、セメントペーストを成形型に導入した後、プラグを使用して成形型の充填開口部を閉じることができるモジュール式成形型が記載されている。しかし、その前に成形型をセメントカートリッジから取り外さなければならない。低粘度のセメントペーストを使用する場合、成形型を不利な方法で保持すると、プラグがねじ込まれる前に、成形型をセメントカートリッジから分離する際にセメントペーストが流出する可能性がある。高粘度でない骨セメントペーストを使用する場合、成形型を不利な方法で保持すると、プラグがねじ込まれる前に、成形型を骨セメントカートリッジから分離する際に骨セメントペーストが流出する可能性がある。いずれの場合も、骨セメントペーストが成形型の内壁から離れることにより、スペーサモールド内に不要な巻き込み空気が発生する可能性がある。
【0012】
記載された装置に関連する1つの問題は、骨セメントペーストがメタルコアの周りに流れることができ、成形型がセメントペーストで完全に満たされることができるように、骨セメントペーストが比較的低い粘度を有しなければならないことである。
【0013】
特許文献18には、股関節スペーサモールドが記載されている。このスペーサモールドは、互いに連結された複数のモールドセグメントから構成されている。複数のセグメントのおかげで、スペーサモールドは、患者の解剖学的状況に非常に正確に適合させ得る。スペーサモールドのセグメントは、ウォームドライブのホースクリップによって結合される。PMMA骨セメントペースト(polymethyl methacrylate bone cement paste)は、スペーサモールド内のチャネルを通して導入される。成形型の複雑な構造により、スペーサモールドのセグメントを一緒に結合すること、およびPMMA骨セメントペーストの硬化が完了した後にヒップスペーサを取り外すことは、非常に複雑である。
【0014】
特許文献19は、ステムの長さの適合を可能にするために、互いに相対的に変位し得る2つの部分からなる股関節スペーサ用のスペーサモールドを提案する。特許文献20には、さらなる成形型が開示されている。この装置は、少なくとも2つの部分から構成されていて、第1の部分には挿入部が配置され、第2の部分には挿入受容部が配置されている。この2つの部分は、互いに挿入可能であり、股関節スペーサのステムを製造するための成形型を形成する。特許文献21には、複雑な成形型が記載されている。これは、異なるボールヘッドを有するヒップスペーサの製造を可能にする。成形型の要素は、連結要素を用いて所定の位置に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0042213(A1)号
【特許文献2】国際公開第2017/178951(A1)号
【特許文献3】米国特許第6245111(B1)号
【特許文献4】米国特許第5681289号
【特許文献5】欧州特許第1991170(B1)号
【特許文献6】米国特許出願公開第2011/0015754(A1)号
【特許文献7】米国特許出願公開第2019/0290833(A1)号
【特許文献8】国際公開第2016/205077(A1)号
【特許文献9】米国特許第8900322(B2)号
【特許文献10】独国特許第102015104704(B4)号
【特許文献11】欧州特許第2617393(B1)号
【特許文献12】米国特許第6361731(B1)号
【特許文献13】米国特許第7789646(B2)号
【特許文献14】米国特許第8480389(B2)号
【特許文献15】米国特許第8801983(B2)号
【特許文献16】米国特許第7637729(B2)号
【特許文献17】米国特許第7789646(B2)号
【特許文献18】米国特許出願公開第2007/0222114(A1)号
【特許文献19】国際公開第2009/073781(A2)号
【特許文献20】欧州特許第2522310(A1)号
【特許文献21】欧州特許第2787928(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を克服することにある。特に、本発明の目的は、骨セメントペーストを硬化させることにより一部分のスペーサを製造するための簡単かつ安価な装置およびセットの開発、および、骨セメントペーストを硬化させることにより一部分のスペーサを製造するための簡単かつ安価に実施できる方法の開発にあり、これにより、骨セメントペースト、特にポリメチルメタクリレート骨セメントペーストを使用して、一部分のスペーサ、特に股関節スペーサおよび肩関節スペーサをOP中に医療従事者が製造することができる。股関節スペーサおよび肩関節スペーサも同様の構造をしている。それらは、ステムおよびスペーサヘッド、ならびにステムとスペーサヘッドを接続するネックからなる。特に、異なる所定のヘッドの直径と異なるネックの長さを有するスペーサを製造することが可能であることが意図され、製造されるスペーサのオフセット(首の長さ)、すなわちステムからのスペーサヘッドの距離を、医療従事者が成形型(casting mold)上で個別に調整できるようにすることが意図されている。
【0017】
低粘度だけでなく、高粘度(ポリメチルメタクリレート)の骨セメントペーストを用いて、スペーサ、特に股関節スペーサを製造することが可能であることが意図されている。特に、高粘度セメントペーストを使用したスペーサを、特別な手動の力を使わずに製造することが可能であることが意図されている。成形型(casting mold)は、例えばプラスチック射出成形によりまたはプラスチックフィルムの熱成形により、できるだけ安価に簡単に製造できる最大2つの中空プラスチック部品で構成されることが意図されている。この成形型は、股関節スペーサを機械的に補強するための生体適合性金属のメタルコアを含むように意図されている。開発される成形型は、1つまたは複数のスプルーを持たないことが意図されている。したがって、製造されるスペーサは、スプルーを持たないようにすべきである。結果として、製造されたスペーサのコストのかかる機械的な後処理を避けることが意図されている。さらに、患者の特定の個人的な解剖学的条件に対応する異なるヘッドサイズおよびオフセットを有するスペーサ、特に股関節スペーサを製造することが可能なセットまたはキットを開発することが意図されている。さらに、股関節スペーサを製造するための最大限にシンプルな方法を説明することも意図されている。
【0018】
したがって、可能な限り単純で最も安価な構造を確保しつつ、原則として股関節スペーサおよび肩関節スペーサの製造に適した、特に成形型およびメタルコアを備えた装置を開発することが意図されている。その意図は、機械的な安定化を目的として、メタルコアが股関節スペーサおよび肩関節スペーサの内部に配置されまたは配置されたことにある。低粘度または非高粘度だけでなく、高粘度(ポリメチルメタクリレート)の骨セメントペーストを使用してスペーサを製造することが可能であることが意図されている。従来、高粘度の骨セメントペーストを成形型に完全に充填するには、高い射出圧力が必要である。これを回避することができれば助かる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、骨セメントペーストを硬化させることによりスペーサを製造する装置によって達成される。スペーサは、医療分野において、関節のヘッド部の関節面を含む関節または関節の一部を一時的に交換するために、特に、股関節または肩関節を一時的に交換するために提供され、この装置は、骨セメントペーストからスペーサのステムを成形するためのステムモールドであって、ステムモールドは、その内部に内部空間を有し、内部空間は、ステムモールドの近位側に設けられた近位開口部を介してアクセス可能であり、ステムモールドは、ステムモールドの近位開口部を外周的に区切る近位壁を有する、ステムモールドと、骨セメントペーストからスペーサのヘッド部およびネック部を成形するためのヘッドモールドであって、ヘッドモールドは、その内部に中空空間を有し、中空空間は、スペーサのヘッド部の摺動面を成形するための球面形状の内部表面を有し、中空空間は、ヘッドモールドの遠位側に設けられた遠位開口部を介してアクセス可能であり、ヘッドモールドは、ヘッドモールドの遠位開口部を外周的に区切る遠位壁を有する、ヘッドモールドと、メタルコアであって、メタルコアは、ステム部と、ヘッド部と、フランジとを有し、フランジは、メタルコアから突出し、フランジは、ステム部とヘッド部との間に配置され、フランジは、近位面と遠位面とを有する、メタルコアと、を有し、ステムモールドおよびメタルコアのステム部は、ステムモールドの近位壁がフランジの遠位面に当接している(is resting against)ときに、ステム部がステムモールドの内部空間に配置されるように成形され、ヘッドモールドおよびメタルコアのヘッド部は、ヘッドモールドの遠位壁がフランジの近位面に当接しているときに、ヘッド部がヘッドモールドの中空空間に配置されるように成形される。
【0020】
好ましくは、本発明によれば、ステムモールドの近位壁がフランジの遠位面に対して同一平面上に配置可能であるように、および/または、ヘッドモールドの遠位壁がフランジの近位面に対して同一平面上に配置可能であるように規定されてよい。
【0021】
ステムモールドおよびメタルコアのステム部は、ステムモールドの近位壁がフランジの遠位面に当接している(is resting against)とき、特にフランジの遠位面に対して同一平面上に当接しているときに、ステム部がステムモールドの内部空間に完全に配置されるような形状であることが好ましい。
【0022】
ヘッドモールドおよびメタルコアのヘッド部は、同様に、ヘッドモールドの遠位壁がフランジの近位面に当接しているとき、特にフランジの近位面に対して同一平面上に当接しているときに、ヘッド部がヘッドモールドの中空空間内に完全に配置されるような形状であることが好ましい。
【0023】
メタルコアは、好ましくは、生体適合性のある金属で構成される。
【0024】
フランジは、連続した周辺形状であってよく、または1つ以上の中断部を有してもよい。
【0025】
本発明の装置は、特に好ましくは、股関節スペーサを製造するための装置である。
【0026】
ステムモールドおよびヘッドモールド内にメタルコアが全体的にまたはフランジから離れて配置されるように規定されてよい。
【0027】
フランジは、好ましくは、メタルコアから横方向または半径方向に突出する。
【0028】
フランジの近位面は、メタルコアの遠位方向へのヘッドモールドの可能な変位を制限し、フランジの遠位面は、メタルコアの近位方向へのステムモールドの可能な変位を制限する。
【0029】
好ましい展開では、フランジは、メタルコアの周りの円周方向のカラーの形をしていて、カラーはメタルコアを環状に取り囲むか、またはメタルコアのステムに対して傾斜した楕円形のカラーとして配置される。円周状のカラーは、ヘッドモールドおよびステムモールドの確実なリミットストップを提供するという利点がある。
【0030】
近位および遠位の方向と横方向の記述は、解剖学的な方向指定に対応するものと理解される。ここでの遠位とは、身体の中心から離れることを意味し、近位とは、身体の中心に向かうことを意味する。スペーサおよびスペーサを製造するための装置に関して、方向指定は、患者の所定の位置にある状態のスペーサまたはそれを用いて製造されたスペーサに対して正しいであろうように使用される。
【0031】
円筒および円筒形状は、ここでは一般的な円筒を意味するものとする。一般的な円筒は、ベース領域の直線的な変位によって得られるが、ここでは空洞の周縁部で区切られたベース領域を指す。一般的な円筒は、ベース領域(ここでは空洞の周縁部で区切られた部分)を直線的に変位させることで得られるが、右円筒ではこのベース領域に対して垂直に、斜円筒では90°以外の角度で変位させることになる。
【0032】
本発明では、メタルコアがステム部、ヘッド部、フランジで構成されるように、および/またはメタルコアが1部品であるように規定されてよい。
【0033】
このようにして、スペーサの内部にあるメタルコアは、発生する力をよりよく吸収することができ、装置の構築および使用が簡単になる。
【0034】
ステムモールドおよび/またはヘッドモールドがプラスチック材料、好ましくは少なくとも1つのプラスチックフィルムまたは射出成形されたプラスチック材料で構成されるように規定されてもよい。
【0035】
このようにして、デバイスは安価に構築され、容易に使用可能である。さらに、一度使用したステムモールドおよびヘッドモールドは、したがって、焼却することにより簡単に、安価に、そして何よりも衛生的に廃棄され得る。
【0036】
さらに、ステムモールドの近位壁がフランジの遠位面に当接している(is resting against)とき、特にフランジの遠位面に対して同一平面に当接しているときに、ステム部が、ステムモールドの内部空間において、内部空間を画定するステムモールドの内壁から間隔をあけて配置されるように、および/または、ヘッドモールドの遠位壁がフランジの近位面に当接しているとき、特にフランジの近位面に対して同一平面に当接しているときに、ヘッド部が、ヘッドモールドの中空空間において、中空空間を画定するヘッドモールドの内壁から間隔をあけて配置されるように規定されてよい。
【0037】
このようにして、メタルコアは、ヘッドモールドまたはステムモールドの中央にうまく配置されることができ、前記コアが骨セメントペーストの均一な厚さの層に囲まれる。
【0038】
さらに、ヘッドモールドが、骨セメントペーストから、ヘッドとステムとを接続するスペーサのネック部を成形するためのネックモールドを有するように規定されてよく、ネックモールドは、管状または中空円筒状であり、ヘッドモールドの遠位開口部および遠位壁は共にネックモールドの一部であり、中空空間の球面形状の内部表面はネックモールドの一部ではなく、メタルコアのヘッドモールドおよびヘッド部は、好ましくは、遠位壁がフランジの近位面に当接しているときに、ヘッド部がネックモールドを越えてヘッドモールドの中空空間内に突出するような形状であること。
【0039】
ネックモールドのおかげで、異なる首の長さを有する異なる形状のスペーサを製造するために、ヘッドモールド、ひいては装置を可変的に使用することが可能である。ヘッドモールドのネックモールドは、ハサミ、ナイフ、メスまたはノコギリで真っ直ぐに短くすることができる。
【0040】
ここで、ネックモールドを短くする、好ましくは、ネックモールドに所定の切断点または引き裂き点を配置し、および/またはネックモールドの外部に目盛りを配置することにより、ネックモールドの長さを調整できるように規定されてよい。
【0041】
このようにして、装置は、特に迅速かつ簡単に使用することができる。
【0042】
さらに、フランジの近位面が、ヘッドモールド、特にネックモールドにおけるメタルコアの変位を制限するように、および/または、フランジの遠位面が、ステムモールドにおけるメタルコアの変位を制限するように規定されてよい。
【0043】
このようにして、フランジは、装置が単純に使用可能であり、組み立て可能であるように、ヘッドモールドおよび/またはステムモールドのためのリミットストップを作成する。
【0044】
好ましい実施形態によれば、メタルコアのヘッド部にセンタリング手段を配置するように規定されてよく、センタリング手段は、ヘッド部の表面から突出しており、センタリング手段は、メタルコアのステム部がヘッドモールドの中空空間内に押し込まれたときに、ヘッドモールドの内壁をヘッド部から離し、特に、メタルコアのステム部がヘッドモールドの中空空間内に押し込まれたときに、ヘッドモールドのネックモールドの壁をヘッド部から離しており、センタリング手段は、好ましくはセンタリングフィンであり、メタルコアのヘッド部は、ヘッドモールド内でセンタリングフィンに沿って軸方向に変位可能であり、特にネックモールド内で変位可能であり、および/またはメタルコアのステム部上にスペーシングピースが配置されており、スペーシングピースは、ステム部の表面から突出しており、メタルコアのステム部がステムモールドの内部空間に押し込まれたときに、スペーシングピースは、ステムモールドの内壁をメタルコアのステム部から離す。
【0045】
これにより、メタルコアのヘッド部がヘッドモールドの中心に位置すること、および/または、メタルコアのステム部がステムモールドの中心に位置することが保証され、骨セメントペーストが当該部品の周囲全側を取り囲むことができ、または流れることができる。これにより、スペーサの製造時に装置の部品の組み立てがさらに簡単になる。スペーシングピースは、成形されるステムの外側からメタルコアを離間させるのを保証する。
【0046】
フランジの近位面は、メタルコアの遠位方向に、センタリング手段またはセンタリングフィンに平行なヘッドモールドの軸方向の変位を制限し、フランジの遠位面は、メタルコアの近位方向にステムモールドの変位を制限する。
【0047】
センタリング手段またはセンタリングフィンは、特に、ヘッドモールドの中空円筒形のネックモールドの内側のエッジに当接し、ヘッドモールドの軸が近位のメタルコアの軸上に位置するようにヘッドモールドをセンタリングする。ヘッドモールドの中空円筒形のネックモールドは、患者の解剖学的要求に合わせて手動で短くすることができ、オフセットを個別に調整することができる。ここでの利点は、スペーサネックとスペーサヘッドとが一体化し、結果的に股関節スペーサの2つの部分がしっかりと相互に接続されていることである。特許文献13、特許文献14、特許文献15に記載されているように、スペーサヘッドを股関節スペーサのネックまたはステムに固定するための組立工程は必要ない。
【0048】
センタリング手段および/またはスペーシングピースは、好ましくは、メタルコアと一体の部品で具現化される。これにより、装置がさらに簡単になる。
【0049】
さらに、フランジの外周がステムモールドの近位開口部および/またはヘッドモールドの遠位開口部よりも大きくなるように規定されてよい。
【0050】
このようにして、フランジがヘッドモールドの遠位開口部を通ってヘッドモールドの中空空間に、またはステムモールドの近位開口部を通ってステムモールドの内部空間に、不注意で過度に深く押し込まれるのを防止することができる。さらに、ヘッドモールドの遠位エッジ(遠位壁)がメタルコアに対してその軸方向の動きが確実に制限されることが保証されている。
【0051】
少なくとも1つの通気口がステムモールドおよび/またはヘッドモールドに配置されるように規定されてもよく、少なくとも1つの通気口は、ステムモールドの内部空間および/またはヘッドモールドの中空空間と装置の周囲とをガス透過性に接続しており、少なくとも1つの通気口は、好ましくは、ガスを透過し、骨セメントペーストを透過せず、特にポリメチルメタクリレート骨セメントペーストを透過しない。
【0052】
このようにして、内包された空気がステムモールドの内部空間からまたはヘッドモールドの中空空間からより容易に逃げられることを保証することができる。これにより、スペーサの表面に不要な欠陥が発生するのを防ぐことができる。
【0053】
装置が、少なくとも1つの微生物防止セメント容器に包装されたセメント粉末と、少なくとも1つの微生物防止かつ液密なモノマー液体容器に包装されたモノマー液体とを有するようにさらに規定されてよい。
【0054】
これにより、装置がさらに完成する。次いで、この装置は、すぐにスペーサを製造する準備ができる。
【0055】
ここで、装置が、セメント粉末をモノマー液体と混合するための、そして骨セメントカートリッジから混合骨セメントペーストを送出するための少なくとも1つの骨セメントカートリッジを有するように、好ましくは、ポリメチルメタクリレート骨セメント出発成分を混合するための、そして骨セメントカートリッジから混合ポリメチルメタクリレート骨セメントペーストを送出するための骨セメントカートリッジを有するように規定されてよく、特に好ましくは、少なくとも1つの骨セメントカートリッジは、少なくとも1つのセメント容器を有し、少なくとも1つのモノマー液体容器を含み、少なくとも1つのセメント容器および少なくとも1つのモノマー液体容器は、相互に分離した領域に配置されている。
【0056】
このようにして、骨セメントカートリッジで製造された骨セメントペーストは、ステムモールドおよびヘッドモールドに便利に導入することができる。
【0057】
本発明の課題の根底にある目的は、骨セメントペーストを硬化させて異なるスペーサを製造するためのセットによっても達成され、スペーサは、医療分野において、関節のヘッド部の関節面を構成する関節または関節の一部を一時的に交換するために、特に、股関節または肩関節を一時的に交換するために提供され、セットは、上述した本発明による少なくとも1つの装置を有しており、セットは、球面形状の内部表面の直径が異なる少なくとも2つのヘッドモールド、および/または、遠位方向に異なる長さの中空空間または中空空間の異なる内径を有する少なくとも2つのステムモールドを有している。
【0058】
このようにして、複数の異なる治療状況に適した異なる形状のスペーサを製造することが可能な可変セットが提供される。
【0059】
このセットは、特に好ましくは、股関節スペーサを製造するためのセットである。
【0060】
このセットは、ヘッド部および/またはステム部の長さが異なる少なくとも2つのメタルコアを有するように規定されてよい。
【0061】
このセットは、結果的にまだより多くの可変性がある。
【0062】
本発明の根底にある目的は、関節の関節面を構成する、関節または関節の一部、特に股関節または肩関節を一時的に交換するためのスペーサを製造する方法によっても達成され、この方法は、本発明による装置を用いて、または本発明によるセットを用いて実行され、この方法は、
A)骨セメントペーストをステムモールドの内部空間に導入し、および骨セメントペーストをヘッドモールドの中空空間に導入するステップと、
B)ヘッドモールドの遠位壁がメタルコアのフランジの近位面に当接する(is resting against)まで、メタルコアのヘッド部を、ヘッドモールドの骨セメントペーストで満たされた中空空間に押し込み、その中に含まれている骨セメントペーストを変位させ、およびステムモールドの近位壁がメタルコアのフランジの遠位面に当接するまで、メタルコアのステム部を、ステムモールドの骨セメントペーストで満たされた内部空間に押し込み、その中に含まれている骨セメントペーストを変位させるステップと、
C)ヘッドモールドおよびステムモールド内で骨セメントペースト(36、86)を硬化させるステップと、
D)得られた成形され硬化されたスペーサを、ヘッドモールドおよびステムモールドから取り外すステップと、を有する。
【0063】
本方法は、特に好ましくは、股関節スペーサを製造する方法である。
【0064】
本方法は、好ましくは、ヒトまたは動物の身体の治療または医療処置のためのステップを含まない。本方法は、単に、次いで医療用に使用することができるスペーサの製造に関するものである。しかしながら、医療用に使用することは、本発明による方法の過程では進行しない。
【0065】
ステップC)は、ステップA)およびB)の後に進行し、ステップD)は、ステップC)の後に進行する。ステップA)とB)は連続して進行するだけでなく、並行して進行してもよい。
【0066】
ステップA)の前に、製造されるべきスペーサのネック部の所望の長さに合わせてヘッドモールドのネックモールドが短縮され、製造されるべきスペーサのヘッド部の所望の形状に合わせて球面形状の内部表面の内径が一致するヘッドモールドが選択され、製造されるべきスペーサのステムの所望の形状に合わせて内部空間が一致するステムモールドが選択され、および/または、製造されるべきスペーサのステムの所望の形状に合わせた寸法のメタルコアが選択されるように規定されてよい。
【0067】
このようにして、複数の異なる治療状況に適した異なる形状のスペーサを製造することが可能な可変の方法が提供される。
【0068】
さらに、ステップA)の前に、モノマー液とセメント粉末とを混合することによって均質な骨セメントペーストが製造され、好ましくは、ステップA)において、混合された骨セメントペーストは、骨セメントカートリッジとともに、ステムモールドの内部空間およびヘッドモールドの中空空間に押し込まれ、特に好ましくは、その際に、ステムモールドの内部空間およびヘッドモールドの中空空間から空気が排出されるように規定されてよい。
【0069】
これにより、この方法はさらに完璧なものとなる。
【0070】
また、ステップB)において、センタリング手段、特に、ヘッド部の表面から突出し、ヘッド部がヘッドモールドの中空空間に押し込まれたときに、ヘッドモールドの中空空間の内壁に当接するセンタリングフィンの助けを借りて、メタルコアのヘッド部がヘッドモールド内でセンタリングされ、および/または、ステップB)において、ステム部の表面から突出し、ステム部がステムモールドの内部空間に押し込まれたときに、ステムモールドの内部空間の内壁に当接するスペーシングピースの助けを借りて、メタルコアのステム部がステムモールド内でセンタリングされるように規定されてよい。
【0071】
これにより、メタルコアのヘッド部がヘッドモールドの中心に位置すること、および/またはメタルコアのステム部がステムモールドの中心に位置すること、および骨セメントペーストが前記部品の周囲をすべての面で取り囲むか、または、流れることが保証される。これにより、スペーサの製造時に装置の部品の組み立てがさらに簡単になる。
【0072】
本発明は、ヘッドモールドとステムモールドに骨セメントペーストを過剰に充填し、それらをリミットストップとして適切なフランジを備えたメタルコアに押し付けることで、過剰な骨セメントペーストが組み立てられた成形型から押し出され、メタルコアが組み立てられた成形型内の骨セメントペーストの所々に封入されるという驚くべき認識に基づいている。このようにして、本発明によれば、特に高粘度の骨セメントペーストではかなりの圧力と力の適用を必要とする、メタルコアとヘッドモールドおよびステムモールドの内壁との間の空間を介して骨セメントペーストを押し込まなければならないことを回避することができる。そのため、ヘッドモールドおよびステムモールドは、単純なプラスチックから安価に製造することができ、例えばプラスチックの射出成形またはプラスチックフィルムの熱成形によって簡単に製造することができる。ヘッドモールドおよびステムモールドから出てきた過剰な骨セメントペーストは、骨セメントペーストが成形型内で硬化する前または後に除去され、廃棄されることができる。
【0073】
本発明によれば、ステムモールドおよびヘッドモールドは、高粘度の骨セメントペーストを導入する際にも、非常に大きな力に耐える必要がないため、プラスチック材料から射出成形によって安価に製造することができ、また、熱成形されたプラスチックフィルムから製造することもできる。本発明によれば、メタルコアが既にそこに配置されていて結果的に周囲に流されることなく、骨セメントペーストが成形型の2つの部分内に導入されることが可能である。骨セメントペーストの導入に続いてステムモールド内およびヘッドモールド内にメタルコアを配置することが可能なのは、ステムモールドとヘッドモールドとがメタルコアのフランジに対向して配置され、それに応じてメタルコアと互いに適合するように配置され、方向付けられているからである。その結果、ステムモールドおよびヘッドモールドを、コストのかかる耐圧性のある方法で、ねじ止めまたは締結する必要はない。
【0074】
本発明のさらなる特定の利点は、ヘッドモールドを使用して、ネックモールドと表示されてよく、スペーサのネックを形成するために、スペーサのヘッドをスペーサのステムに接続する可変の円筒形領域を、その円筒形領域が特定の患者の解剖学的要件に応じて手動で短縮されることによって製造することが可能であることである。ヘッドの直径が異なるスペーサを製造するために、異なる形状のヘッドモールドを使用し、選択することができる。その他の寸法も、本発明によるセットでは、異なる形状のステムモールドと異なる形状のメタルコアによって適合させることができる。
【0075】
本発明による装置は、骨セメントペーストが最初にヘッドモールドに逆行的に導入されるように使用される。この目的のために、カートリッジと手動操作可能な排出装置とを備えた骨セメントアプリケータとしての混合システムまたはカートリッジシステムを使用することができる。次いで、メタルコアの近位ヘッド部が、骨セメントペーストが充填されたヘッドモールドに押し込まれる。ヘッドモールドの端部としての遠位壁、またはヘッドモールドの中空円筒形のネック部の端部がフランジの近位面に接触するまで、メタルコアの近位ヘッド部は、骨セメントペーストに浸透する。フランジは、ヘッドモールドの軸方向の動きを制限する。その後、ステムモールドは、骨セメントペーストで逆行的に充填される。その後、ステムモールドの端部としての近位壁がフランジの遠位面上に止まるまで、メタルコアのステム部を、骨セメントペーストが充填されたステムモールド内に押し込む。余分に排出された骨セメントペーストは、ステムモールドの開口部から出てきて、手作業で除去される。その後、骨セメントペーストは硬化するまで放置される。その後、ヘッドモールドを切り開いて除去し、形成されたスペーサの硬化したステムからステムモールドを引き抜く。スペーサは、本発明による装置を用いて、最初にステムモールド、その後ヘッドモールドに骨セメントペーストを充填して製造することもできる。この場合も、メタルコアは骨セメントを充填した型内に押し込まれる。
【0076】
特許文献13、特許文献14および特許文献15による公知の成形装置(casting device)で必要とされるような手動で作動可能な排出装置により生成される圧力によって成形型内に配置されたメタルコアの周りに骨セメントペーストを押し付けることができるよりも、本発明による装置は、骨セメントペーストで充填された成形型にメタルコアをより少ない力で押し付けることができるという驚くべき発見に基づいている。
【0077】
その結果、高粘度の骨セメントペーストであっても、高い圧力をかけずに数分でスペーサを製造することが可能となる。耐圧性のある成形型は必要ない。本発明による成形型は、実質的に圧力なしで充填されるので、薄いプラスチックフィルムまたは射出成形されたプラスチック製品から製造することができる。
【0078】
本発明による例示的な装置は、
a)ヘッド部とステム部からなるメタルコアであって、ヘッド部は、メタルコアの表面に配置された1つまたは複数のフランジによってステム部から分離されていて、少なくとも1つのフランジは、近位側(表面)と遠位側(表面)とを有する、メタルコアと、
b)中空のスペーサヘッドモールドまたは、中空円筒形のネックモールドを有するプラスチック材料から製造されたヘッドモールドと、
c)プラスチック材料から製造された中空のステムモールドと、から構成され得て、
d)中空円筒形のネックモールドが少なくとも1つの連結ピースの近位側に当接している(is resting against)ときに、メタルコアのヘッド部はヘッドモールドの内部空間に突出し、ステム部がその開口部を少なくとも1つのフランジの遠位面に当接しているときに、メタルコアのステム部がステムモールドによって完全に囲まれている。
【0079】
スペーサを製造するための本発明による例示的なセットは、
a)ヘッド部、フランジ、およびステム部で構成されるメタルコアと、
b)少なくとも1つのステムモールドと、
c)滅菌可能な微生物防止包装容器内に配置された、ヘッドの直径が異なる少なくとも2つのヘッドモールドと、から構成され得る。
【0080】
本発明によるセットは、セットの1つの包装ユニットを有する医療従事者によって、異なるヘッドサイズを有するスペーサを製造できるという利点がある。その結果、スペーサのヘッドサイズごとに別々の包装ユニットを用意する必要はない。
【0081】
スペーサを製造するための本発明によるさらなる例示的なセットは、
a)微生物防止容器内に包装されたセメント粉末と、
b)微生物を防ぐ液体不透過性の容器内に包装されたモノマー液と、
c)ヘッド部、少なくとも1つのフランジ、およびステム部からなるメタルコアと、
d)少なくとも1つのステムモールドと、
e)滅菌可能な微生物防止包装容器内に配置された、ヘッドの直径が異なる少なくとも2つのヘッドモールドと、から構成され得る。
【0082】
このようなセットは、「プロシージャパック」として医療従事者に提供することができる。このセットは、股関節スペーサの製造に必要なすべてのコンポーネントを含む。
【0083】
本発明による装置を用いてスペーサを製造するための本発明による例示的な方法は、
a)均質な骨セメントペーストが得られるまで、セメント粉末をモノマー液と混合するステップと、
b)骨セメントペーストをヘッドモールドに導入するステップと、
c)骨セメントペーストをステムモールドに導入するステップと、
d)メタルコアのヘッド部を、骨セメントペーストが充填されたヘッドモールド内に押し込み、ヘッドモールドの中空円筒形のネックモールドの端部がフランジの近位面に当接している(is resting against)まで、骨セメントペーストを変位させるステップと、
e)メタルコアのステム部を、骨セメントペーストが充填されたステムモールド内に押し込み、ステムモールドの近位開口部がフランジの遠位面に当接しているまで、骨セメントペーストを変位させるステップと、
f)骨セメントペーストを硬化させるステップと、
g)骨セメントペーストが完全に硬化した後、ヘッドモールドおよびステムモールドを取り外すステップと、の連続したステップを含み得る。
【0084】
本発明によれば、ステップa)の前に、オフセットを調整するために、すなわち、スペーサのヘッドとステムとの間の距離を調整するために、ヘッドモールドの中空円筒形のネックモールドの長さを短くするように規定されてよい。このため、球状モールドの中心からメタルコアの長手方向軸までの距離である所望のオフセットが得られるまで、医療従事者は、ハサミまたはノコギリを使用して、ヘッドモールドの中空円筒形のネックモールドを短くする。
【0085】
本発明のさらなる例示的な実施形態は、25の模式的な図を参照して以下に説明されるが、それによって本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1】
図1は、股関節スペーサを製造するための本発明による組み立てられた第1の例示的な装置の概略的な部分断面斜視図を示す。
【
図2】
図2は、
図1による本発明による組み立てられた第1の装置の概略的な外観斜視図を示す。
【
図3】
図3は、
図1および
図2による本発明による組み立てられた第1の装置の概略的な部分断面斜視図を示す。
【
図4】
図4は、
図1~
図3による本発明による第1の装置の部品の概略的な外観斜視図を示す。
【
図5】
図5は、本発明による組み立てられた第1の装置の概略的な部分断面図を示す。
【
図6】
図6は、骨セメントペーストが導入された本発明による第1の装置の概略的な断面図を示す。
【
図7】
図7は、本発明による第1の装置で製造された股関節スペーサの概略的な側面図を示す。
【
図8】
図8は、股関節スペーサを製造するための本発明による組み立てられた第2の例示的な装置の部分断面斜視図を示す。
【
図9】
図9は、本発明による組み立てられた第2の装置の側面図を示す。
【
図10】
図10は、本発明による組み立てられた第2の装置の部分断面図を示す。
【
図11】
図11は、本発明による第2の装置で製造された股関節スペーサの斜視図を示す。
【
図12】
図12は、短縮されたネックモールドを有する本発明による組み立てられた第2の装置の部分断面図を示す。
【
図13】
図13は、より小さいヘッドモールドを有する本発明による組み立てられた第3の装置の部分断面図を示す。
【
図14】
図14は、スペーサを製造するための骨セメントペーストの導入中の、本発明による第3の装置の部分断面図を示す。
【
図15】
図15は、スペーサを製造するための骨セメントペーストが充填されたヘッドモールドにメタルコアが押し込まれている最中の本発明による第2の装置の部分断面図を示す。
【
図16】
図16は、スペーサを製造するための骨セメントペーストが充填されたヘッドモールドにメタルコアがリミットストップまで完全に押し込まれた状態の本発明による第2の装置の部分断面図を示す。
【
図17】
図17は、スペーサを製造するための骨セメントペーストの導入中の、本発明による第2の装置の部分断面図を示す。
【
図18】
図18は、スペーサを製造するための骨セメントペーストが充填されたステムモールドにメタルコアが押し込まれている最中の本発明による第2の装置の部分断面図を示す。
【
図19】
図19は、スペーサを製造するための骨セメントペーストが充填されたステムモールドにメタルコアがリミットストップまで完全に押し込まれた状態の本発明による第2の装置の部分断面図を示す。
【
図20】
図20は、骨セメントペーストの硬化中に、骨セメントペーストが充填された本発明による第2の装置を組み立てた状態の部分断面図を示す。
【
図21】
図21は、股関節スペーサを製造するための2つの異なるヘッドモールドを有する本発明による例示的な第4の装置を備えた本発明による第1のセットの部品の部分断面斜視図を示す。
【
図23】
図23は、
図21および
図22による本発明による第1のセットの本発明による組み立てられた第4の装置の概略的な部分断面斜視図を示す。
【
図24】
図24のA)~H)は、本発明によるセットとして使用することができる股関節スペーサを製造するためのヘッドモールドに関して異なる8つの装置の概略的な断面図を示す。
【
図25】
図25のA)~H)は、
図24A)~H)による装置で製造されたスペーサの概略的な側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
図1~
図25は、股関節スペーサを製造するために提供される装置、セットおよびその部品、ならびに方法シーケンスを示す。当業者であればこの教示を、肩関節部スペーサを製造するための装置、セットおよびその部品、ならびに方法シーケンスに容易に適用することができる。
【0088】
図1~
図7は、
図7に示すように、股関節スペーサを製造するための本発明による装置の第1の例示的な実施形態と、その装置の部品とを示すさまざまな図である。
【0089】
本発明による第1の装置は、股関節用のスペーサ38(
図7参照)を製造するのに適していて、提供される。この装置は、ステムモールド1とヘッドモールド5とメタルコア10とを有する。ステムモールド1およびヘッドモールド5は、好ましくは、それぞれ、1部品構造である。ステムモールド1およびヘッドモールド5は、そこに導入される骨セメントペースト36を成形するための2部品の成形型を一緒に形成してよい(
図6参照)。骨セメントペースト36は、この目的のために、成形型内で硬化してよい。
図1、
図3、
図5および
図6は、装置の内部構造が見えるように、ステムモールド1およびヘッドモールド5の断面を示す。メタルコア10は、
図6においてのみ断面を示され、それ以外は断面を示されていない。
【0090】
ステムモールド1は、スペーサ38のステム42を形成するために骨セメントペースト36が成形可能な内部空間2を有してよい。内部空間2は、近位開口部3を介してアクセス可能であってよく、骨セメントペースト36がステムモールド1の近位開口部3を介して内部空間2へと導入可能であり、メタルコア10が近位開口部3を介してステムモールド1の内部空間へと部分的に押し込まれることが可能である。近位開口部3の周りに、ステムモールド1は、近位開口部3を区切って囲む近位壁4を有してよい。
【0091】
ヘッドモールド5は、スペーサ38のヘッド部40を形成するために骨セメントペースト36が成形可能な中空空間6を有してよい。中空空間6の近位側では、中空空間6は、スペーサ38の実際の接合面を形成する役割を果たす球面形状の内部表面7を有してよい。中空空間6の球面形状の内部表面7は、それに応じてスペーサ38の股関節表面を成形し、この表面は、股関節ソケット内でスライドするように意図されている。中空空間6は、遠位開口部8を介してアクセス可能であってよく、骨セメントペースト36がヘッドモールド5の遠位開口部8を介して中空空間6へと導入可能であり、メタルコア10が遠位開口部8を介してヘッドモールド5の中空空間6へと部分的に押し込まれることが可能である。遠位開口部8の周りに、ヘッドモールド5は、遠位開口部8を区切って囲う遠位壁9を有してよい。
【0092】
導入される前に、骨セメントペースト36は、モノマー液体とセメント粉末(図示せず)とから混合されてよく、ここで少なくとも1つの抗生物質および/または少なくとも1つの抗真菌剤が、好ましくは骨セメントペースト36と混合されてもよい。骨セメントペースト36は、第2の例示的な実施形態に関連する
図14および
図17に示すように、骨セメントアプリケータ132を介して、ステムモールド1およびヘッドモールド5に充填することができる。
【0093】
メタルコア10は、例えばステンレス鋼またはチタンなどの生体適合性のある金属で構成されてよい。メタルコア10は、スペーサ38を補強し、したがって機械的に安定させる役割を果たす。メタルコア10は、ステム部12、ヘッド部14、およびステム部12とヘッド部14との間に配置されるフランジ16を有する。メタルコア10は、好ましくは1部品である。ステム部12およびヘッド部14は、フランジ16を介して連結されてよい。フランジ16は、ヘッド部14およびステム部12の軸から半径方向に突出してよい。突出したフランジ16は、近位面18および反対側の遠位面20を有する。
【0094】
ステムモールド1の近位壁4は、フランジ16の遠位面20と一致するように成形されてよく、ステムモールド1がフランジ16の遠位面20に対して少なくとも同一平面の位置に配置可能である。これにより、ステムモールド1をメタルコア10のフランジ16上に確実に位置決めすることができる。同様に、ヘッドモールド5の遠位壁9は、フランジ16の近位面18と一致するように成形されてよく、ヘッドモールド5がフランジ16の近位面18に対して少なくとも同一平面の位置に配置可能である。これにより、ヘッドモールド5をメタルコア10のフランジ16上に確実に位置決めすることができる。
【0095】
細長い形状の複数の突出したスペーシングピース22がステム部12上に配置されてよく、このスペーシングピースは、ステム部12が近位開口部3を通してステムモールド1へと押し込まれたときに、ステムモールド1内でのステム部12の位置決めおよび向きを容易にする。スペーシングピース22の高さは、ここでは、ステム部12がステムモールド1内に完全に押し込まれたときに、スペーシングピース22がステムモールド1の内部空間2の内壁に当接する(rest against)ように選択される。この目的のためのリミットストップは、ステムモールド1の近位壁4によって、およびフランジ16の遠位面20によって形成されてよい。
【0096】
例えば4つの突出したフィンの形をした複数の突出したセンタリング手段24がヘッド部14上に配置されてよく、このセンタリング手段は、ヘッド部14が遠位開口部8を通してヘッドモールド5へと押し込まれたときに、ヘッドモールド5内でのヘッド部14の位置決めおよび向きを容易にする。同じ目的のために、ヘッド部14は、その近位側に、骨セメントペースト36へと押し込まれるのを容易にすることを意図したコーン26を有する形状であり得る。フィンの向きは、フィンがその直線的な表面に沿ってヘッドモールド5の中空空間6へとスライドできるように好ましくは選択される。ヘッドモールド5は、中空空間6の一部として円筒状の内部空間を有するネックモールド28を有してよい。センタリング手段24は、ネックモールド28の内壁をスライドすることができる。センタリング手段24の高さは、ここでは好ましくは、ヘッド部14がヘッドモールド5へと完全に押し込まれたときに、センタリング手段24がヘッドモールド5のネックモールド28の中空空間6の内壁に当接する(rest against)ように選択される。この目的のためのリミットストップは、ヘッドモールド5の遠位壁9によって、およびフランジ16の近位面18によって形成されてよい。
【0097】
ネックモールド28は、それに沿ってネックモールド28が切断されて短縮されることができる周辺厚肉部の形をした複数の突出したリング30を有してよい。リング30は、この目的のために、均一な間隔、特に、均一の所定サイズまたはその半分(integral or half-integral)のセンチメートルまたはインチの間隔であってよい。このようにして、ネックモールド28の長さによって決定される、製造されるべきスペーサ38のネック部44の長さを調整することができる。
【0098】
フランジ16は、メタルコア16から半径方向または横方向に突出し得る複数の突起部32を有してよい。突起部32は、フランジ16の近位面18および/または遠位面20を形成してよく、またはフランジ16の近位面18および/または遠位面20の一部であり得る。余分な骨セメントペースト36は、メタルコア10が押し込まれたときに、突起部32間の間隔の間でステムモールド1から、および理論的にはヘッドモールド5からも出てくる可能性がある。
【0099】
ステムモールド1にカラー34が形成されてよく、このカラーは、ステムモールド1の近位壁4から始まってフランジ16を取り囲む。
【0100】
本発明によれば、ステムモールド1およびヘッドモールド5は、高粘度の骨セメントペーストの導入中であっても、それらは非常に大きな力に耐える必要がないので、射出成形によりプラスチック材料から安価に製造することができ、または熱成形されたプラスチックフィルムから製造することもできる。これが可能なのは、本発明によれば、骨セメントペースト36は、メタルコア10が既にそこに配置されて、その結果周囲を流されなければならないことなしに、成形型としてのステムモールド1およびヘッドモールド5へと導入されるからである。骨セメントペースト36の導入に続いてステムモールド1内およびヘッドモールド5内にメタルコア10を配置することが可能なのは、ステムモールド1およびヘッドモールド5がメタルコア10のフランジ16に対向して配置され、それに応じてメタルコア10とおよび互いに適合するように配置されることおよび向きを変えることができるからである。その結果、ステムモールド1とヘッドモールド5とを、コストをかけ、圧力を吸収し、安定した状態で、一緒にネジ止めまたは締結する必要がない。
【0101】
メタルコア10の上にステムモールド1とヘッドモールド5とを組み付けた成形型内の骨セメントペースト36が一旦硬化すると、その中に含まれる骨セメントペースト36が硬化する場合がある(
図6参照)。続いて、ステムモールド1を引き剥がし、ヘッドモールド5を分離し剥離することで、得られたスペーサ38を離型することができる。
図7に示すように、スペーサ38は残され、ここで、メタルコア10は、補強材としてスペーサ38に封入されているか、大部分が封入されている。スペーサ38のステム42からネック44への移行部にあるフランジ16またはフランジ16の突起部32は、スペーサ38の表面にまだ現れている。ステム42に設けられたスペーシングピース22と、スペーサ38のネック44に設けられたセンタリング手段24の外面も同様に現れていてよい。
【0102】
図8~
図12および
図14~
図20は、
図11に示すような股関節スペーサを製造するための本発明による装置の第2の例示的な実施形態と、その装置の部品を示すさまざまな図である。
図13は、単に関節ヘッドを成形するための異なる直径によって第2の例示的な実施形態と区別されるが、その他は同一である、第3の例示的な実施形態を示す。
【0103】
本発明による第2の装置および本発明による第3の装置は、股関節用のスペーサ88(
図11参照)を製造するのに適していて、提供される。本発明による第2の装置は、ステムモールド51とヘッドモールド55とメタルコア60とを有する。ステムモールド51およびヘッドモールド55は、好ましくは、それぞれ、一部品構造である。ステムモールド51およびヘッドモールド55は、そこに導入される骨セメントペースト86を成形するための2部品の成形型を一緒に形成してよい(
図14~
図20参照)。骨セメントペースト86は、この目的のために、成形型内で硬化してよい。
図8、
図10、
図12および
図14~
図20は、装置の内部構造が見えるように、ステムモールド51およびヘッドモールド55の断面を示す。メタルコア60は、常に非断面で示されている。
【0104】
ステムモールド51は、スペーサ88のステム92を形成するために骨セメントペースト86が成形可能な内部空間52を有してよい。内部空間52は、近位開口部53を介してアクセス可能であってもよく、骨セメントペースト86がステムモールド51の近位開口部53を介して内部空間52へと導入可能であり、メタルコア60が近位開口部53を介してステムモールド51の内部空間52へと部分的に押し込まれることが可能である。近位開口部53の周りに、ステムモールド51は、近位開口部53を区切って囲む近位壁54を有してよい。
【0105】
ヘッドモールド55は、スペーサ88のヘッド部90を形成するために骨セメントペースト86が成形可能な中空空間56を有してよい。中空空間56の近位側では、中空空間56は、スペーサ88の実際の接合面を形成する役割を果たす球面形状の内部表面57を有してよい。中空空間56の球面形状の内部表面57は、それに応じてスペーサ88の股関節表面を形成し、この表面は、股関節ソケット内でスライドするように意図されている。中空空間56は、遠位開口部58を介してアクセス可能であってよく、骨セメントペースト86がヘッドモールド55の遠位開口部58を介して中空空間56へと導入可能であり、メタルコア60が遠位開口部58を介してヘッドモールド55の中空空間56へと部分的に押し込まれることが可能である。遠位開口部58の周りに、ヘッドモールド55は、遠位開口部58を区切って囲う遠位壁59を有してよい。
【0106】
メタルコア60は、例えばステンレス鋼またはチタンなどの生体適合性のある金属で構成されてよい。メタルコア60は、スペーサ88を補強し、したがって機械的に安定させる役割を果たす。メタルコア60は、ステム部62、ヘッド部64、およびステム部62とヘッド部64との間に配置されるフランジ66を有する。メタルコア60は、好ましくは1部品である。ステム部62およびヘッド部64は、フランジ66を介して連結されてよい。フランジ66は、ヘッド部64およびステム部62の軸から半径方向に突出してよい。突出したフランジ66は、近位面68および反対側の遠位面70を有する。
【0107】
ステムモールド51の近位壁54は、フランジ66の遠位面70と一致するように成形されてよく、ステムモールド51がフランジ66の遠位面70と少なくとも同一平面の位置に配置可能である。これにより、ステムモールド51をメタルコア60のフランジ66上に確実に位置決めすることができる。同様に、ヘッドモールド55の遠位壁59は、フランジ66の近位面68と一致するように成形されてよく、ヘッドモールド55がフランジ66の近位面68に対して少なくとも同一平面の位置に配置可能である。これにより、ヘッドモールド55をメタルコア60のフランジ66に確実に位置決めすることができる。
【0108】
細長い形状の複数の突出したスペーシングピース72がステム部62上に配置されてよく、このスペーシングピースは、ステム部62が近位開口部53からステムモールド51へと押し込まれたときに、ステムモールド51内でのステム部62の位置決めおよび向きを容易にする。スペーシングピース72の高さは、ここでは、ステム部62がステムモールド51内に完全に押し込まれたときに、スペーシングピース72がステムモールド51の内部空間52の内壁に当接する(rest against)ように選択される。この目的のためのリミットストップは、ステムモールド51の近位壁54によって、およびフランジ66の遠位面70によって形成されてよい。
【0109】
例えば4つの突出したフィンの形をした複数の突出したセンタリング手段74がヘッド部64上に配置されてよく、このセンタリング手段は、ヘッド部64が遠位開口部58を通してヘッドモールド55へと押し込まれたときに、ヘッドモールド55内でのヘッド部64の位置決めおよび向きを容易にする。同じ目的のために、ヘッド部64は、その近位側に、骨セメントペースト86へと押し込まれるのを容易にすることを意図したコーン76を有する形状であり得る。フィンの向きは、フィンがその直線的な表面に沿ってヘッドモールド55の中空空間56へとスライドできるように好ましくは選択される。ヘッドモールド55は、中空空間56の一部として円筒状の内部空間を有するネックモールド78を有してよい。センタリング手段74は、ネックモールド78の内壁をスライドすることができる。センタリング手段74の高さは、ここでは好ましくは、ヘッド部64がヘッドモールド55へと完全に押し込まれたときに、センタリング手段74がヘッドモールド55のネックモールド78の中空空間56の内壁に当接する(rest against)ように選択される。この目的のためのリミットストップは、ヘッドモールド55の遠位壁59によって、およびフランジ66の近位面68によって形成されてよい。
【0110】
ネックモールド78は、それに沿ってネックモールド78が切断されて短縮されることができる周辺厚肉部の形をした複数の突出したリング80を有してよい。リング80は、この目的のために、均一な間隔、特に、均一の所定サイズまたはその半分(integral or half-integral)のセンチメートルまたはインチの間隔であってよい。このようにして、ネックモールド78の長さによって決定される、製造されるべきスペーサ88のネック部94の長さを調整することができる。
【0111】
ステムモールド51にカラー84が形成されてよく、このカラーは、ステムモールド51の近位壁54から始まってフランジ66を取り囲む。
【0112】
本発明によれば、ステムモールド51およびヘッドモールド55は、高粘度の骨セメントペーストの導入中であっても、それらは非常に大きな力に耐える必要がないので、射出成形によりプラスチック材料から安価に製造することができ、または熱成形されたプラスチックフィルムから製造することもできる。これが可能なのは、本発明によれば、骨セメントペースト86は、メタルコア60が既にそこに配置されていて、その結果周囲を流されなければならないことなしに、成形型としてのステムモールド51およびヘッドモールド55へと導入されるからである。骨セメントペースト86の導入に続いてステムモールド51内およびヘッドモールド55内にメタルコア60を配置することが可能なのは、ステムモールド51およびヘッドモールド55がメタルコア60のフランジ66に対向して配置され、それに応じてメタルコア60とおよび互いに適合するように配置されることおよび向きを変えることができるからである。その結果、ステムモールド51とヘッドモールド55とを、コストをかけ、圧力を吸収し、安定した状態で、一緒にねじ止めまたは締結する必要がない。
【0113】
メタルコア60の上にステムモールド51とヘッドモールド55とを組み付けた成形型内の骨セメントペースト36が一旦硬化すると、その中に含まれる骨セメントペースト86が硬化する場合がある(
図20参照)。続いて、ステムモールド51を引き剥がし、ヘッドモールド55を分離し剥離することで、得られたスペーサ38を離型することができる。
図11に示すように、スペーサ88は残され、ここで、メタルコア60は、補強材としてスペーサ88に封入されているか、大部分が封入されている。スペーサ88のステム92からネック94への移行部にあるフランジ66は、スペーサ88の表面にまだ現れている。ステム92に設けられたスペーシングピース72と、スペーサ88のネック94に設けられたセンタリング手段74の外面も同様に現れていてよい。
【0114】
ステムモールド51またはヘッドモールド55に導入される前に、骨セメントペースト86は、モノマー液体とセメント粉末(図示せず)とから混合されてよく、ここで少なくとも1つの抗生物質および/または少なくとも1つの抗真菌剤が、好ましくは骨セメントペースト86と混合されてもよい。骨セメントペースト86は、骨セメントアプリケータ132(
図14および
図17参照)を介して、ステムモールド51およびヘッドモールド55に充填されてよい。ここでは、空気の巻き込みを防ぐために、ステムモールド51の内部空間52を遠位側から、ヘッドモールド55の中空空間56を近位側から充填する。ステムモールド51およびヘッドモールド52の壁に、空気の巻き込みを避けるための通気口(図示せず)が設けられてもよい。
【0115】
骨セメントペースト86がステムモールド51およびヘッドモールド55に過剰に充填されると、メタルコア60のステム部62をステムモールド51へと押し込むこと、およびメタルコア60のヘッド部64をヘッドモールド55へと押し込むことができる。フランジ66は、両方のリミットストップを形成する。出てきた余分な骨セメントペースト86は除去することができる。骨セメントペースト86は、メタルコア60が封入されたこの状態で硬化する(
図20参照)。
【0116】
スペーサ88を解剖学的状況に適合させるために、
図12に示すように、ネック部78をリング80に沿って短くすることができる。
【0117】
図13に示す第3の例示的な実施形態は、単に、球面形状の内部表面107の半径が異なるヘッドモールド105を有する点で、第2の例示的な実施形態と異なる。ヘッドモールド105の形状が異なるため、ヘッドモールド105内にも異なる中空空間106が存在する。ヘッドモールド55と同様に、ヘッドモールド105は、遠位開口部108および周方向の遠位壁109を有してよい。周辺リング130を有するネックモールド128が同様に設けられてよい。第3の例示的な実施形態の他のすべての部分は、第2の例示的な実施形態と同じである。ヘッドモールド55とメタルコア60とステムモールド51と一緒に、所望であれば骨セメントアプリケータ132とも一緒に、ヘッドモールド105は、本発明によるセットの形態をとってよい。
【0118】
骨セメントアプリケータ132は、骨セメントペースト86を混合するためのカートリッジ134を有してよく、このカートリッジは、開口部とは別に、カートリッジヘッド136によって前側を閉じられてよい。さらに、真空ポート138がカートリッジヘッド136上に配置されてよく、骨セメントペースト86がカートリッジ134の内部において真空下で混合することができる。完全に混合されると、骨セメントペースト86は、開口部を通り、送出管140を通って、ステムモールド51およびヘッドモールド55へと押し込むことができる(
図14および
図17参照)。デリバリチューブ140内には、スタティックミキサ(図示せず)が配置されてよく、このミキサで骨セメントペースト86の出発成分を混合することができる。デリバリチューブ140は、スリーブナット142でカートリッジヘッド136に固定することができる。
【0119】
図21~
図23および
図24A)、
図24B)、
図25A)、
図25B)は、
図25A)、
図25B)に示すような、股関節スペーサを製造するための本発明によるセット、および本発明による装置の第4の例示的な実施形態、ならびに装置の部品のさまざまな図を示す。第2および第3の例示的な実施形態の異なるヘッドモールドの組み合わせと同様に、セットは、2つの異なる形状のヘッドモールド155、205を有する。
図24C)~24H)および
図25C)~25H)は、異なる半径の球面形状の内部表面257を有する短縮型および非短縮型のヘッドモールド255を備えた代替品を示す。
【0120】
本発明によるセットまたは第4の装置は、股関節用の2つの異なる形状のスペーサ188、238(
図25A)、25B)参照)を製造するのに適していて、提供される。この装置は、ステムモールド151と、2つのヘッドモールド155、205と、メタルコア160とを有する。ステムモールド151およびヘッドモールド155、205は、好ましくは、それぞれ、一部品構造である。ステムモールド151およびヘッドモールド155、205は、そこに導入される骨セメントペーストを成形するための2つの2部品の成形型を一緒に形成してよい(図示してないが、
図6および
図20と同様)。骨セメントペーストは、この目的のために、成形型内で硬化してよい。
図21、
図23および
図24は、装置の内部構造が見えるように、ステムモールド151およびヘッドモールド155、205の断面図を示す。メタルコア160は、常に非断面で示されている。
【0121】
ステムモールド151は、スペーサ188、238のステム192、242を形成するために、骨セメントペーストが成形可能な内部空間152を有してよい。内部空間152は、近位開口部153を介してアクセス可能であってよく、骨セメントペーストがステムモールド151の近位開口部153を介して内部空間152へと導入可能であり、メタルコア160が近位開口部153を介してステムモールド151の内部空間152へと部分的に押し込まれることが可能である。近位開口部153の周りに、ステムモールド151は、近位開口部153を区切って囲む近位壁154を有してよい。
【0122】
ヘッドモールド155、205は、スペーサ188のヘッド部190を形成するために骨セメントペーストが成形可能な中空空間156、206を有してよい。中空空間156、206の近位側では、中空空間156、206の各々は、スペーサ188の実際の接合面238を形成する役割を果たす球面形状の内部表面157、207を有してよい。中空空間156、206の球面形状の内部表面157、207は、それに応じてスペーサ188、238の股関節表面を成形し、この表面は、股関節ソケット内でスライドするように意図されている。中空空間156、206は、遠位開口部158、208を介してアクセス可能であってよく、骨セメントペーストがヘッドモールド155、205の遠位開口部158、208を介して中空空間156、206へと導入可能であり、メタルコア160が遠位開口部158、208を介してヘッドモールド155、205の中空空間156、206へと部分的に押し込まれることが可能である。遠位開口部158、208の周りに、ヘッドモールド155、205は各々、それぞれの遠位開口部158、208を区切って囲う遠位壁159、209を有してよい。
【0123】
導入される前に、骨セメントペーストは、モノマー液体とセメント粉末(図示せず)とから混合されてよく、ここで少なくとも1つの抗生物質および/または少なくとも1つの抗真菌剤が、好ましくは骨セメントペーストと混合されてもよい。骨セメントペーストは、第2の例示的な実施形態に関連する
図14および
図17に示すように、骨セメントアプリケータ132を介して、ステムモールド151およびヘッドモールド155、205に充填することができる。
【0124】
メタルコア160は、例えばステンレス鋼またはチタンなどの生体適合性のある金属で構成されてよい。メタルコア160は、スペーサ188、238を補強し、したがって機械的に安定させる役割を果たす。メタルコア160は、ステム部162、ヘッド部164、およびステム部162とヘッド部164との間に配置されるフランジ166を有する。メタルコア160は、好ましくは1部品である。ステム部162およびヘッド部164は、フランジ166を介して連結されてよい。フランジ166は、ヘッド部164およびステム部162の軸から半径方向に突出してよい。突出したフランジ166は、近位面168および反対側の遠位面170を有する。
【0125】
ステムモールド151の近位壁154は、フランジ166の遠位面170と一致するように成形されてよく、ステムモールド151がフランジ166の遠位面170対して少なくとも同一平面の位置に配置可能である。これにより、ステムモールド151をメタルコア160のフランジ166上に確実に位置決めすることができる。同様に、ヘッドモールド155、205の遠位壁159、209は、フランジ166の近位面168と一致するように成形されてよく、ヘッドモールド155、205がフランジ166の近位面168に対して少なくとも同一平面の位置に配置可能である。これにより、ヘッドモールド155、205をメタルコア160のフランジ166上に確実に位置決めすることができる。
【0126】
細長い形状の複数の突出したスペーシングピース(間隔片)172がステム部162上に配置されてよく、このスペーシングピースは、ステム部162が近位開口部153を通してステムモールド151へと押し込まれたときに、ステムモールド151内でのステム部172の位置決めおよび向きを容易にする。スペーシングピース172の高さは、ここでは、ステム部162がステムモールド151内に完全に押し込まれたときに、スペーシングピースがステムモールド151の内部空間152の内壁に当接する(rest against)ように選択される。この目的のためのリミットストップは、ステムモールド151の近位壁154によって、およびフランジ166の遠位面170によって形成されてよい。
【0127】
例えば4つの突出したフィンの形をした複数の突出したセンタリング手段174がヘッド部164上に配置されてよく、このセンタリング手段は、ヘッド部164がそれぞれの遠位開口部158、208を通して押し込まれるときに、ヘッドモールド155、205内でのヘッド部164の位置決めおよび向きを容易にする。フィンの向きは、フィンがその直線的な表面に沿ってヘッドモールド155、205の中空空間156、206へとスライドできるように好ましくは選択される。ヘッドモールド155、205は、中空空間156、206の一部として、円筒状の内部空間を有する異なる長さのネックモールド178、228を有してよい。センタリング手段174は、ネックモールド178、228の円筒状の内壁をスライドさせることができる。センタリング手段174の高さは、ここでは好ましくは、ヘッド部164がヘッドモールド155、205へと完全に押し込まれたときに、センタリング手段174がネックモールド178、228の中空空間156、206の円筒状の内壁に当接する(rest against)ように選択される。この目的のためのリミットストップは、ヘッドモールド155、205の遠位壁159、209によって、およびフランジ166の近位面168によって形成されてよい。
【0128】
ネックモールド178は、それに沿ってネックモールド178が切断されて短縮されることができる周辺厚肉部の形をした複数の突出したリング180を有してよい。ネックモールド228は、最大限短くされたネックモールド178として理解されてよい。リング180は、均一な間隔、特に、均一の所定サイズまたはその半分(integral or half-integral)のセンチメートルまたはインチの間隔であってよい。このようにして、それぞれのネックモールド178、228の長さによって決定される、製造されるべきスペーサ188、238のネック部194、244の長さを調整することができる。
【0129】
フランジ166は、メタルコア166から半径方向または横方向に突出し得る複数の突起部182を有してよい。突起部182は、フランジ166の近位面168および/または遠位面170を形成してよく、またはフランジ166の近位面168および/または遠位面170の一部であり得る。余分な骨セメントペーストは、メタルコア160が押し込まれたときに、突起部182間の間隔の間でステムモールド151から、および理論的にはヘッドモールド155、205からも出てくる可能性がある。
【0130】
ステムモールド151にカラー184が形成されてよく、このカラーは、ステムモールド151の近位壁154から始まってフランジ166を取り囲む。
【0131】
本発明によれば、ステムモールド151およびヘッドモールド155、205は、高粘度の骨セメントペーストの導入中であっても、それらは非常に大きな力に耐える必要がないので、射出成形によりプラスチック材料から安価に製造することができ、または熱成形されたプラスチックフィルムから製造することもできる。これが可能なのは、本発明によれば、骨セメントペーストは、メタルコア160が既にそこに配置されて、その結果周囲を流されなければならないことなしに、成形型としてのステムモールド151およびヘッドモールド155、205へと導入されるからである。骨セメントペーストの導入に続いてステムモールド151内およびヘッドモールド155、205のいずれか内にメタルコア160を配置することが可能なのは、ステムモールド151およびヘッドモールド155、205がメタルコア160のフランジ166に対向して配置され、それに応じてメタルコア160とおよび互いに適合するように配置されることおよび向きを変えることができるからである。その結果、ステムモールド151とヘッドモールド155、205とを、コストをかけ、圧力を吸収し、安定した状態で、一緒にネジ止めまたは締結する必要がない。
【0132】
メタルコア160の上にステムモールド151とヘッドモールド155、205のいずれかを組み付けた成形型内の骨セメントペーストが硬化すると、その中に含まれる骨セメントペーストが硬化する場合がある。続いて、ステムモールド151を引き剥がし、使用済みのヘッドモールド155、205を分離し剥離することで、得られたスペーサ188、238を離型することができる。
図25に示すように、スペーサ188、238は残され、ここで、メタルコア160は、補強材としてスペーサ188、238に封入されているか、大部分が封入されている。スペーサ188、238のステム192、242からネック294、244への移行部にあるフランジ166またはフランジ166の突起部182は、スペーサ188、238の表面上にまだ現れている。ステム192、242に設けられたスペーシングピース172と、スペーサ188、238のネック194、244に設けられたセンタリング手段174の外面も同様に現れていてよい。
【0133】
図24C)~
図24H)に示され、および
図25C)~
図25H)に股関節のために製造することができるスペーサ288を備えたさらなる変形例は、球面形状の内部表面257の直径がより小さいことを除けば、
図21~
図23および
図24A)、
図24B)、
図25A)、
図25B)によるセットのものと同一である。簡略化のために、異なる形状のものを含めて、これらの例示的な実施形態のすべてに同じ参照符号を使用した。
【0134】
装置は、ステムモールド251とヘッドモールド255とメタルコア260とを有する。ステムモールド251およびヘッドモールド255は、好ましくは、それぞれ、一部品構造である。ステムモールド251およびヘッドモールド255は、そこに導入される骨セメントペースト(図示せず)を成形するための2部品の成形型を一緒に形成してよい。
【0135】
ステムモールド251は、スペーサ288のステム292を形成するために骨セメントペーストが成形可能な内部空間252を有してよい。内部空間252は、近位開口部を介してアクセス可能であってよく、骨セメントペーストがステムモールド251の近位開口部を介して内部空間252へと導入可能であり、メタルコア260が近位開口部を介してステムモールド251の内部空間252へと部分的に押し込まれることが可能である。近位開口部の周りに、ステムモールド251は、近位開口部を区切って囲む近位壁を有してよい。
【0136】
ヘッドモールド255は、スペーサ288のヘッド部290を形成するために骨セメントペーストが成形可能な中空空間256を有してよい。中空空間256の近位側では、中空空間256は、スペーサ288の実際の接合面を形成する役割を果たす、異なる直径の球面形状の内部表面257を有してよい。中空空間256の球面形状の内部表面257は、それに応じてスペーサ288の股関節表面を成形し、この表面は、股関節ソケット内でスライドするように意図されている。中空空間256は、遠位開口部を介してアクセス可能であってよく、骨セメントペーストがヘッドモールド255の遠位開口部を介して中空空間256へと導入可能であり、メタルコア260が遠位開口部を介してヘッドモールド255の中空空間256へと部分的に押し込まれることが可能である。遠位開口部の周りに、ヘッドモールド255は、遠位開口部を区切って囲う遠位壁を有してよい。
【0137】
メタルコア160は、例えばステンレス鋼またはチタンなどの生体適合性のある金属で構成されてよい。メタルコア160は、スペーサ288を補強し、したがって機械的に安定させる役割を果たす。メタルコア260は、ステム部262、ヘッド部264、およびステム部262とヘッド部264との間に配置されるフランジ266を有する。メタルコア260は、好ましくは一部品である。ステム部262およびヘッド部264は、フランジ266を介して連結されてよい。フランジ266は、ヘッド部264およびステム部262の軸から半径方向に突出してよい。突出したフランジ266は、近位面および反対側の遠位面を有する。
【0138】
細長い形状の複数の突出したスペーシングピース272がステム部262上に配置されてよく、このスペーシングピースは、ステム部262が近位開口部を通してステムモールド251へと押し込まれたときに、ステムモールド251内でのステム部262の位置決めおよび向きを容易にする。スペーシングピース272の高さは、ここでは、ステム部262がステムモールド251内に完全に押し込まれたときに、スペーシングピース272がステムモールド251の内部空間252の内壁に当接する(rest against)ように選択される。
【0139】
例えば4つの突出したフィンの形をした複数の突出したセンタリング手段274がヘッド部264上に配置されてよく、このセンタリング手段は、ヘッド部264が遠位開口部を通してヘッドモールド255へと押し込まれたときに、ヘッドモールド255内でのヘッド部264の位置決めおよび向き(配向)を容易にする。フィンの向きは、フィンがその直線的な表面に沿ってヘッドモールド255の中空空間256へとスライドできるように好ましくは選択される。ヘッドモールド255は、中空空間256の一部として円筒形の内部空間を有するネックモールド278を有してよい。センタリング手段274は、ネックモールド278の内壁をスライドすることができる。センタリング手段274の高さは、ここでは好ましくは、ヘッド部264がヘッドモールド255へと完全に押し込まれたときに、センタリング手段274がヘッドモールド255のネックモールド278の中空空間256の内壁に当接する(rest against)ように選択される。
【0140】
本発明によれば、ステムモールド251およびヘッドモールド255は、高粘度の骨セメントペーストの導入中であっても、それらは非常に大きな力に耐える必要がないので、射出成形によりプラスチック材料から安価に製造することができ、または熱成形されたプラスチックフィルムから製造することもできる。これが可能なのは、本発明によれば、骨セメントペーストは、メタルコア260が既にそこに配置されて、その結果周囲を流されなければならないことなしに、成形型としてのステムモールド251およびヘッドモールド255へと導入されるからである。骨セメントペーストの導入に続いてステムモールド251内およびヘッドモールド255内にメタルコア260を配置することが可能なのは、ステムモールド251およびヘッドモールド255がメタルコア260のフランジ266に対向して配置され、それに応じてメタルコア260とおよび互いに適合するように配置されることおよび向きを変えることができるからである。その結果、ステムモールド251とヘッドモールド255とを、コストをかけ、圧力を吸収し、安定した形で、一緒にねじ止めまたは締結する必要がない。
【0141】
メタルコア260の上にステムモールド251とヘッドモールド255とを組み付けた成形型内の骨セメントペーストが一旦硬化すると、その中に含まれる骨セメントペーストが硬化する場合がある。続いて、ステムモールド251を引き剥がし、ヘッドモールド255を分離し剥離することで、得られたスペーサ288を離型することができる。
図25に示すように、スペーサ288は残され、ここで、メタルコア260は、補強材としてスペーサ288に封入されているか、大部分が封入されている。スペーサ288のステム292からネック294への移行部にあるフランジ266は、スペーサ288の表面上にまだ現れている。ステム292に設けられたスペーシングピース272と、スペーサ288のネック294に設けられたセンタリング手段274の外面も同様に現れていてよい。
【0142】
これまでの説明で開示された本発明の特徴は、特許請求の範囲、図および例示的な実施形態と同様に、そのさまざまな実施形態で本発明を実現するために、個別にも任意の組み合わせでも本質的であり得る。
【符号の説明】
【0143】
1、 51、 151、 251 ステムモールド
2、 52、 152、 252 内部空間
3、 53、 153 ステムモールドの近位開口部
4、 54、 154 ステムモールドの近位壁
5、 55、 105、 155、 205、 255 ヘッドモールド
6、 56、 106、 156、 206、 256 中空空間
7、 57、 107、 157、 207、 257 球面形状の内部表面
8、 58、 108、 158 ヘッドモールドの遠位開口部
9、 59、 109、 159 ヘッドモールドの遠位壁
10、 60、 160、 260 メタルコア
12、 62、 162、 262 ステム部
14、 64、 164、 264 ヘッド部
16、 66、 166、 266 フランジ
18、 68、 168 フランジの近位面
20、 70、 170 フランジの遠位面
22、 72、 172、 272 スペーシングピース
24、 74、 174、 274 センタリング手段
26、 76 コーン
28、 78、 128、 178、 228、 278 ネックモールド
30、 80、 130、 180 リング
32、 182 突起部
34、 84、 154 カラー
36、 86 骨セメントペースト
38、 88、 188、 238、 288 スペーサ
40、 90、 190、 240、 290 スペーサのヘッド部
42、 92、 192、 242、 292 スペーサのステム部
44、 94、 194、 244、 294 スペーサのネック部
132 骨セメントアプリケータ
134 カートリッジ
136 カートリッジヘッド
138 バキュームポート
140 デリバリチューブ
142 スリーブナット
【外国語明細書】