(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033714
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】複合フィルム、蓋材、内容物入り蓋付容器、包装袋、及び内容物入り包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132075
(22)【出願日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2020137408
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 栞
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼村 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】川取 康博
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD24
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB52
3E086BB58
3E086BB62
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA11
(57)【要約】
【課題】ヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、容器本体側の再封面が粘着樹脂層とならない、複合フィルム、当該複合フィルムから形成された蓋材、内容物入り蓋付容器、包装袋、及び内容物入り包装袋を提供する。
【解決手段】ヒートシールして再封可能な包装体を形成するための複合フィルムを、粘着層とアルミニウム層と、が隣接するように構成することで、開封の際には、粘着層とアルミニウム層との間で層間剥離が起こり、容器本体側に粘着樹脂層が残らないようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、粘着層、アルミニウム層、及びヒートシール層を、この順で含み、
前記粘着層と前記アルミニウム層とは、隣接しており、かつ
前記ヒートシール層同士を互いにヒートシールして剥離した際又は前記ヒートシール層と他の材料とをヒートシールして剥離した際に、ヒートシールされた部分の縁で、前記アルミニウム層と前記ヒートシール層が破断し、かつヒートシールされた部分で、前記粘着層と前記アルミニウム層との間の層間剥離が起こる、
複合フィルム。
【請求項2】
前記粘着層は、熱可塑性エラストマーを含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体である、請求項2又は3に記載の複合フィルム。
【請求項5】
ポリテルペン及び/又はロジンエステルを更に含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記粘着層は、非晶性ポリエステルを含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項7】
ポリテルペン及び/又はロジンエステルを更に含む、請求項6に記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記粘着層の厚さは、5μm以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記ヒートシール層は、ポリオレフィン系樹脂を含有しており、かつ、厚さが、1~7μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項10】
前記ヒートシール層は、密度0.920~0.958g/cm3のポリエチレン樹脂層である、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項11】
前記ポリエチレン樹脂層は、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む、請求項10に記載の複合フィルム。
【請求項12】
前記高密度ポリエチレンの含有率は、前記ヒートシール層の質量全体に対して、50~90質量%である、請求項11に記載の複合フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の複合フィルムから成形された蓋材。
【請求項14】
再封用である、請求項13に記載の蓋材。
【請求項15】
開封時には、前記粘着層と前記アルミニウム層とが層間剥離し、前記粘着層が前記アルミニウム層と再封可能な状態で露出する、請求項13又は14に記載の蓋材。
【請求項16】
前記ヒートシール層側にハーフカットを有さない、請求項13~15のいずれか一項に記載の蓋材。
【請求項17】
収納部及びフランジ部を有する容器本体と、
前記容器本体に収容されている内容物と、
請求項1~12のいずれか一項に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、を備え、
前記ヒートシール層が前記フランジ部にヒートシールされて、再封可能な接合部を形成している、
内容物入り蓋付容器。
【請求項18】
開封時には、前記接合部における前記粘着層と前記アルミニウム層とが層間剥離し、前記アルミニウム層が前記フランジ部に再封可能な状態で露出している、請求項17に記載の内容物入り蓋付容器。
【請求項19】
前記容器本体は、紙カップであり、
前記フランジ部は、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有する、請求項17又は18に記載の内容物入り蓋付容器。
【請求項20】
前記基材層及び前記粘着層が透明であり、それによって前記基材層側から前記アルミニウム層を視認可能である、請求項13~16のいずれか一項に記載の蓋材、又は請求項17~19のいずれか一項に記載の内容物入り蓋付容器。
【請求項21】
請求項1~12のいずれか一項に記載の複合フィルムの前記ヒートシール層が少なくとも一部ヒートシールされて形成されている、包装袋。
【請求項22】
開封時には、前記粘着層と前記アルミニウム層とが層間剥離し、前記粘着層が前記アルミニウム層と再封可能な状態で露出する、請求項21に記載の包装袋。
【請求項23】
前記ヒートシール層側にハーフカットを有さない、請求項21又は22に記載の包装袋。
【請求項24】
請求項21~23のいずれか一項に記載の包装袋、前記包装袋に収容されている内容物を有する、内容物入り包装袋。
【請求項25】
前記基材層及び前記粘着層が透明であり、それによって前記基材層側から前記アルミニウム層を視認可能である、請求項21~23のいずれか一項に記載の包装袋、又は請求項24に記載の内容物入り包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルム、蓋材、内容物入り蓋付容器、包装袋、及び内容物入り包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一度では消費しきれない食品や医薬品等の包装手段として、再封機能を有する各種の包装体が用いられている。かかる包装体としては、ジッパー等の付属物を取り付けることなく、包装体そのものに再封機能を付与することのできる、多層フィルムを用いた封止が提案されている。
【0003】
再封を可能とする多層フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂(a)を主成分とする表面樹脂層(A)と、特定の物性を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(b)を主成分とする粘着樹脂層(B)と、オレフィン系樹脂(c)を主成分とするヒートシール樹脂層(C)とが、(A)/(B)/(C)の順に積層された積層体が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された多層フィルムを、容器本体等にヒートシールさせて封止した包装体は、問題を生じることなく、開封及び再封が可能となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された多層フィルムをヒートシールさせて封止した包装体は、開封時には、表面樹脂層(A)と粘着樹脂層(B)とが層間剥離し、容器本体等のヒートシール部に残る剥離面は、粘着樹脂層(B)となっていた。
【0007】
このため、例えば、容器に口をつけて喫食するカップスープ等の容器の蓋材として適用した場合には、粘着樹脂層(B)が口唇と接することとなり、口当たり等において違和感が生じる場合があった。
【0008】
また、再封回数が多い包装体の場合には、再封回数の増加に伴って、再封強度が低下する傾向にあった。
【0009】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、ヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、容器本体側の再封面が粘着樹脂層とならない、複合フィルム、当該複合フィルムから形成された蓋材、内容物入り蓋付容器、包装袋、及び内容物入り包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、ヒートシールして再封可能な包装体を形成するための複合フィルムを、粘着層とアルミニウム層とが隣接するように構成すれば、開封の際には、粘着層とアルミニウム層との間で層間剥離が起こり、容器本体側に粘着層が残らなくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0011】
《態様1》
基材層、粘着層、アルミニウム層、及びヒートシール層を、この順で含み、
前記粘着層と前記アルミニウム層とは、隣接しており、かつ
前記ヒートシール層同士を互いにヒートシールして剥離した際又は前記ヒートシール層と他の材料とをヒートシールして剥離した際に、ヒートシールされた部分の縁で、前記アルミニウム層と前記ヒートシール層が破断し、かつヒートシールされた部分で、前記粘着層と前記アルミニウム層との間の層間剥離が起こる、
複合フィルム。
《態様2》
前記粘着層は、熱可塑性エラストマーを含む、態様1に記載の複合フィルム。
《態様3》
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーである、態様2に記載の複合フィルム。
《態様4》
前記熱可塑性エラストマーは、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体である、態様2又は3に記載の複合フィルム。
《態様5》
ポリテルペン及び/又はロジンエステルを更に含む、態様2~4のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様6》
前記粘着層は、非晶性ポリエステルを含む、態様1に記載の複合フィルム。
《態様7》
ポリテルペン及び/又はロジンエステルを更に含む、態様6に記載の複合フィルム。
《態様8》
前記粘着層の厚さは、5μm以下である、態様1~7のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様9》
前記ヒートシール層は、ポリオレフィン系樹脂を含有しており、かつ、厚さが、1~7μmである、態様1~8のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様10》
前記ヒートシール層は、密度0.920~0.958g/cm3のポリエチレン樹脂層である、態様1~9のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様11》
前記ポリエチレン樹脂層は、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む、態様10に記載の複合フィルム。
《態様12》
前記高密度ポリエチレンの含有率は、前記ヒートシール層の質量全体に対して、50~90質量%である、態様11に記載の複合フィルム。
《態様13》
態様1~12のいずれか一態様に記載の複合フィルムから成形された蓋材。
《態様14》
再封用である、態様13に記載の蓋材。
《態様15》
開封時には、前記粘着層と前記アルミニウム層とが層間剥離し、前記粘着層が前記アルミニウム層と再封可能な状態で露出する、態様13又は14に記載の蓋材。
《態様16》
前記ヒートシール層側にハーフカットを有さない、態様13~15のいずれか一態様に記載の蓋材。
《態様17》
収納部及びフランジ部を有する容器本体と、
前記容器本体に収容されている内容物と、
態様1~12のいずれか一態様に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、を備え、
前記ヒートシール層が前記フランジ部にヒートシールされて、再封可能な接合部を形成している、
内容物入り蓋付容器。
《態様18》
開封時には、前記接合部における前記粘着層と前記アルミニウム層とが層間剥離し、前記アルミニウム層が前記フランジ部に再封可能な状態で露出している、態様17に記載の内容物入り蓋付容器。
《態様19》
前記容器本体は、紙カップであり、
前記フランジ部は、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有する、態様17又は18に記載の内容物入り蓋付容器。
《態様20》
前記基材層及び前記粘着層が透明であり、それによって前記基材層側から前記アルミニウム層を視認可能である、態様13~16のいずれか一態様に記載の蓋材、又は態様17~19のいずれか一態様に記載の内容物入り蓋付容器。
《態様21》
態様1~12のいずれか一態様に記載の複合フィルムの前記ヒートシール層が少なくとも一部ヒートシールされて形成されている、包装袋。
《態様22》
開封時には、前記粘着層と前記アルミニウム層とが層間剥離し、前記粘着層が前記アルミニウム層と再封可能な状態で露出する、態様21に記載の包装袋。
《態様23》
前記ヒートシール層側にハーフカットを有さない、態様21又は22に記載の包装袋。
《態様24》
態様21~23のいずれか一態様に記載の包装袋、前記包装袋に収容されている内容物を有する、内容物入り包装袋。
《態様25》
前記基材層及び前記粘着層が透明であり、それによって前記基材層側から前記アルミニウム層を視認可能である、態様21~23のいずれか一態様に記載の包装袋、又は態様24に記載の内容物入り包装袋。
【発明の効果】
【0012】
(本発明の複合フィルムのヒートシール層を容器本体等にヒートシールして再封可能な包装体を形成する場合)
本発明の複合フィルムによれば、ヒートシール層を容器本体等にヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、容器本体等にヒートシールされた部分の縁で、アルミニウム層とヒートシール層が破断し、かつ容器本体等にヒートシールされた部分で、粘着層とアルミニウム層との間で層間剥離が起こる。
【0013】
これにより、容器本体等の側に粘着層が残ることを抑制することができ、例えば、容器に口をつけて喫食するカップスープ等の容器の蓋材として、本発明の複合フィルムを適用した場合に、粘着層が口唇と接することを抑制して、口当たり等における違和感等を回避することができる。
【0014】
また、本発明の複合フィルムのヒートシール層を、容器本体等にヒートシールして形成した包装体は、ヒートシールされた接合部の外端縁及び内端縁で、アルミニウム層とヒートシール層が破断して開封されるため、複合フィルムの表面、特にヒートシール層側の表面から、複合フィルムの厚さ未満の深さで形成された切り込み(ハーフカット)を設ける必要がない。
【0015】
したがって、容器とヒートシールすることが意図されている領域、例えば、容器本体のフランジ部とヒートシールする領域に沿って、ハーフカットを設ける必要も、ヒートシールの際に位置合わせの操作も必要なくなるため、生産性に寄与することができる。
【0016】
更に、本発明の複合フィルムを用いて再封可能な包装体を作製した場合には、再封回数が増加した場合であっても、再封強度の低下を抑制することができる。
【0017】
また、更に、本発明の複合フィルムのアルミニウム層よりも外層を透明な層とする場合には、包装体を開封した際にアルミニウム層が破断したことを包装体の外側から確認することができる。したがって、包装体が未開封の状態なのか開封済みでリシールされた状態であるのかを、包装体の外側から視認することができる。これは、店頭におけるいたずらの防止にも役立てることができる。
【0018】
(本発明の複合フィルムのヒートシール層同士を互いにヒートシールして又は本発明の複合フィルムのヒートシール層をフィルム等の他の材料にヒートシールして再封可能な包装体を形成する場合)
本発明の複合フィルムによれば、複合フィルムのヒートシール層同士を互いにヒートシールして又はヒートシール層とフィルム等の他の材料とをヒートシールして再封可能な包装袋等の包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、ヒートシールされた部分(接合部)の縁で、アルミニウム層とヒートシール層が破断し、かつヒートシールされた部分で、粘着層とアルミニウム層との間で層間剥離が起こる。
【0019】
これにより、本発明の複合フィルムを用いて形成された包装体は、ヒートシールにより形成された接合部の外端縁及び内端縁で、アルミニウム層とヒートシール層が破断して開封されるため、複合フィルムの表面、特にヒートシール層側の表面から、複合フィルムの厚さ未満の深さで形成された切り込み(ハーフカット)を設ける必要がない。
【0020】
したがって、例えば、本発明の複合フィルムを用いて製袋されるピロー袋等において、ヒートシール部、特に該ヒートシール部を剥離して開封することを意図した領域に沿って、ハーフカットを設ける必要も、ヒートシールの際に位置合わせの操作も必要なくなるため、生産性に寄与することができる。
【0021】
更に、本発明の複合フィルムを用いて再封可能な包装袋等の包装体を作製した場合には、再封回数が増加した場合であっても、再封強度の低下を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の複合フィルムを用いて、内容物が充填された内容物入り包装袋等の包装体を作製した場合には、開封後に内容物を再度保存する際に、輪ゴムやクリップ等を用いることなく再封することが可能となる。更に、例えばチャックテープ等の別部材を用いることなく再封が可能な包装袋を形成できるため、使用樹脂材料の削減や作業工程の簡略化等、コストや環境に配慮した包装体を提供することができる。
【0023】
更に、本発明の複合フィルムのアルミニウム層よりも外層を透明な層とする場合には、包装袋等の包装体を開封した際にアルミニウム層が破断したことを包装袋の外側から確認することができる。したがって、包装袋等が未開封の状態なのか開封済みでリシールされた状態であるのかを、包装袋等の包装体の外側から視認することができる。これは、店頭におけるいたずらの防止にも役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る内容物入り蓋付容器を開封したときの剥離機構を示す図である。
【
図3】実施例1及び比較例1の複合フィルムの再封回数と開封強度との関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る内容物入り包装袋の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
《複合フィルム》
本発明の複合フィルムは、少なくとも、基材層、粘着層、アルミニウム層、及びヒートシール層が、この順で積層された複合フィルムであり、粘着層とアルミニウム層とが隣接した構成となっている。また、本発明の複合フィルムでは、ヒートシール層同士を互いにヒートシールして剥離した際又はヒートシール層と他の材料とをヒートシールして剥離した際に、ヒートシールされた部分の縁で、アルミニウム層と前記ヒートシール層が破断し、かつヒートシールされた部分で、粘着層と前記アルミニウム層との間の層間剥離が起こる。
【0026】
本発明の複合フィルムは、粘着層とアルミニウム層とが隣接していることにより、ヒートシール層を容器本体等にヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときには、容器本体等にヒートシールされた部分の縁で、アルミニウム層とヒートシール層が破断し、かつ容器本体等にヒートシールされた部分で、粘着層とアルミニウム層との間で層間剥離が起こり、容器本体側に粘着層が残ることを抑制することができる。
【0027】
なお、本発明においては、容器本体等にヒートシールされた部分の縁で、アルミニウム層とヒートシール層が破断することを、「エッジ切れ」と呼ぶことがある。本発明の複合フィルムは、このようなエッジ切れを利用することによって、ヒートシール層側にハーフカットを用いない場合であっても、再封可能な蓋材等を作製することができる。
【0028】
本発明の複合フィルムは、例えば、容器に口をつけて喫食するカップスープ等の容器の蓋材として適用した場合に、粘着層が口唇と接することを抑制して、口当たり等における違和感等を回避することができる。
【0029】
また、本発明の複合フィルムを用いて再封可能な包装体を作製した場合には、再封回数が増加した場合であっても、再封強度の低下を抑制することができる。
【0030】
なお、本明細書において、「隣接」とは、直接的に接触していることを意味し、他の層、例えば接着層等を介することなく接触している状態を意味する。
【0031】
《複合フィルムの構成》
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルムの構成について説明する。
図1に、本発明の複合フィルムの一実施形態に係る断面図を示す。
【0032】
図1に示される本発明の複合フィルムの一実施形態に係る複合フィルム10は、第1の基材層1と、第1の基材層1の内側に積層配置された第2の基材層2と、第2の基材層2の内側に積層配置された粘着層3と、粘着層3に隣接するように配置されたアルミニウム層4と、アルミニウム層4の内側に積層配置されたヒートシール層5と、を備える。すなわち、
図1に示される複合フィルム10は、2層の基材層を有する態様となっている。
【0033】
本発明の複合フィルムは、基材層、粘着層、アルミニウム層、及びヒートシール層を、必須の構成として含み、これらがこの順で積層されている。本発明においては、基材層、粘着層、アルミニウム層、及びヒートシール層以外に、任意の層を備えていてもよく、任意の層としては、例えば、バリア性を付与するためのバリア層や、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0034】
図1に示される複合フィルム10は、第1の基材層1、第2の基材層2、粘着層3、アルミニウム層4、及びヒートシール層5のみを備える態様であるが、粘着層3とアルミニウム層4の間以外の層間や、積層体の外側に、その他の層が存在していてもよい。
【0035】
本発明の複合フィルムを構成するそれぞれの層の厚み等は、複合フィルムの用途等に応じて、適宜決定することができる。
【0036】
<基材層>
基材層は、本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層である。
【0037】
本発明の複合フィルムは、基材層、粘着層、アルミニウム層、及びヒートシール層が、この順で積層されているため、基材層は、例えば包装体等の構造体を形成したときに、構造体の外層となる。このため、基材層は、最内層となるヒートシール層をヒートシールして構造体を形成する時の保護層となりうる。また、内容物の表示等のための印刷を施すための印刷層ともなりうる。
【0038】
基材層は、単層であっても、複層からなる積層体となっていてもよい。あるいは、2層以上の基材層が存在していてもよい。
【0039】
基材層が単層である場合には、基材層を構成する材料としては、樹脂、特に保護層となり、印刷が可能となる樹脂であってよい。一般的に用いられている樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ-ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等のポリオレフィン、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0040】
なお、上記の樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0041】
中では、基材層と粘着層との間の接着性を向上させる観点から、基材層を構成する樹脂は、ポリエステルであることが好ましい。更には、印刷適正、複合フィルムへの剛性付与、入手の容易性及び取り扱い性から、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが特に好ましい。
【0042】
なお、基材層が樹脂層である場合には、予め成形されたフィルムを適用してもよい。基材層となるフィルムは、上記の樹脂等から形成されたフィルムであればよく、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。中では、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0043】
また、基材層となる樹脂フィルムには、アルミニウム等の金属や、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物が蒸着された無機物蒸着膜が形成されていてもよい。あるいは、塩化ビニリデンコート層、ポリフッ化ビニリデンコート層等のバリアコート層を有していてもよい。
【0044】
更に、基材層となる樹脂フィルムには、その表面を粗面化させる粗面化処理が施されていてもよい。表面が粗面化されていることにより、隣接する粘着層とのアンカー効果が生じ、密着性を向上させることができる。
【0045】
本発明の複合フィルムが、2層以上の基材層を有する場合には、上記した単層である場合の層に加えて、他の基材層を有するようにする。この場合には、上記の樹脂等からなる層が複数設けられていてもよいし、樹脂以外を材料とする層であってもよい。
【0046】
樹脂以外を材料とする層としては、例えば、紙層等が挙げられる。紙層としては、例えば、コート紙、アート紙等が挙げられる。また、紙層が基材層としての最外層となる場合には、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷が施されていてもよい。
【0047】
<粘着層>
粘着層は、本発明の複合フィルムにおいて必須の構成層であり、粘着層はアルミニウム層と隣接している。
【0048】
本発明の複合フィルムは、ヒートシール層同士又はヒートシール層を容器本体等の他の材料とヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、粘着層と、粘着層に隣接するアルミニウム層との間で層間剥離が起こる。
【0049】
粘着層は、例えば、粘着層の材料となる組成物を調製し、積層対象となる層の表面に印刷手段により塗工することで、作製することができる。印刷手段としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルク印刷等を用いることができる。
【0050】
粘着層の厚さは、5μm以下であることが好ましい。5μm以下であれば、ヒートシール層をヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、粘着層と、粘着層に隣接するアルミニウム層との間の層間剥離を、より容易に行うことができる。
【0051】
粘着層の厚さは、4μm以下、又は3μm以下であってもよく、1μm以上、1.5μm以上、又は2μm以上であることが、十分な再封性を得る観点から好ましい。
【0052】
粘着層は、例えば、熱可塑性エラストマー、及び/又は非晶性ポリエステルを含む層であってよく、更に、粘着付与剤としてポリテルペン及び/又はロジンエステルを含んでいてもよい。中では、熱可塑性エラストマーと粘着付与剤としてポリテルペン及び/又はロジンエステルとを含む態様、非晶性ポリエステルのみが構成材料となっている態様、又は非晶性ポリエステルと粘着付与剤としてロジンエステルとを含む態様が好ましい。以下に、粘着層を構成しうる材料について説明する。
【0053】
(熱可塑性エラストマー)
本発明の複合フィルムの粘着層の構成成分となりうる熱可塑性エラストマーは、高温で流動化して成形が可能であり、常温ではゴム弾性を示す材料である。本発明に適用できる熱可塑性エラストマーは、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーや、スチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0054】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-ブテン共重合体(EBM)、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。
【0055】
また、オレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)のマトリクスに、オレフィン系ゴム(EPM、EPDM等)を分散させたブレンド型のオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることも可能である。
【0056】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン-エチレン・ブテン共重合体(SEB)、スチレン-エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体(部分水添スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体;SBBS)、部分水添スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、部分水添スチレン-イソプレン・ブタジエン-スチレン共重合体等を挙げることができる。
【0057】
本発明の粘着層の構成成分となりうる熱可塑性エラストマーとしては、常温又は高温領域においてゴム弾性を示すことから、スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0058】
更には、粘着付与剤との相溶性が良好であることから、スチレン系熱可塑性エラストマーの中でも、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体であってもよい。
【0059】
粘着層における熱可塑性エラストマーの含有率は、粘着層の質量全体に対して、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってよく、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってよい。
【0060】
(非晶性ポリエステル)
本発明の複合フィルムの粘着層の構成成分となりうる非晶性ポリエステルは、非晶性のポリエステルである。
【0061】
ここで、本発明における「非晶性」とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて-100℃から300℃まで20℃/minの速度で昇温した際に明確な融解ピークを持たないことを意味する。
【0062】
本発明の複合フィルムの粘着層の構成成分となりうる非晶性ポリエステルは、特に限定されるものではないが、例えば、60℃以下のガラス転移温度を有していてもよい。このガラス転移温度は、60℃以下、55℃以下、又は50℃以下であってもよく、-65℃以上、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上、又は-20℃以上であってもよい。
【0063】
ガラス転移温度が上記の範囲の非晶性ポリエステルであれば、実用上問題なく粘着層とアルミニウム層との間で層間剥離を生じさせるとともに、良好な再封性を備えた複合フィルムを実現することができる。
【0064】
更に、開封の際の異音や引っ掛かりを伴う剥離(パルス剥離)を生じさせない観点、すなわち滑らかな剥離を生じさせる観点から、非晶性ポリエステルのガラス転移温度は、45℃以下であることが好ましい。また、常温における良好な易剥離性を得る観点から、ガラス転移温度は、-65℃以上、-50℃以上、-20℃以上、-10℃以上、0℃以上、10℃以上、20℃以上、又は25℃以下であることが好ましい。
【0065】
なお、本明細書におけるガラス転移温度(Tg)とは、JISK7121(1987年)に準拠して、加熱速度10℃/minの昇温条件で熱流束示差走査熱量測定(熱流束DSC)により求めた中間点ガラス転移温度(℃)をいい、試験片の状態調節についてはJISK7121の『一定の熱処理を行なった後、ガラス転移温度を測定する場合』を採用するものとする。
【0066】
非晶性ポリエステルの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、100000以下、90000以下、80000以下、70000以下、60000以下、又は50000以下であれば、粘着層とアルミニウム層との間の層間剥離の後、露出した粘着層のべたつきを抑制することができる。一方で、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上、9000以上、又は10000以上であれば、適度な剥離強度を確保することができる。
【0067】
ここで、本明細書における数平均分子量は、テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレン標準にて、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した数平均分子量を意味するものである。
【0068】
本発明の複合フィルムの粘着層の構成成分となりうる非晶性ポリエステルとしては、50mol%のジカルボン酸成分と、50mol%のジオール成分とを含有している非晶性ポリエステルであって、30mol%以上のテレフタル酸と、25mol%以上のエチレングリコールと、5~45mol%の他のジカルボン酸成分及び/又は他のジオール成分を含有している非晶性ポリエステルであってもよい。
【0069】
他のジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5-ナフタル酸、2,6-ナフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0070】
他のジオール成分としては、例えば、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタンジオール、1,10-ドデカンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0071】
粘着層における非晶性ポリエステルの含有率は、粘着層の質量全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は100質量%であってよく、99質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、又は91質量%以下であってよい。
【0072】
なお、本発明の複合フィルムの粘着層を構成しうる非晶性ポリエステルは、1種単独であっても、2種以上の非晶性ポリエステルを組み合わせて用いてもよい。2種以上の非晶性ポリエステルを組み合わせて用いる場合には、例えば、異なるTg等、異なる物性を有する非晶性ポリエステルの混合物として用いることもできる。
【0073】
(ポリテルペン)
本発明の複合フィルムの粘着層の構成成分となりうるポリテルペンは、上記した熱可塑性エラストマー及び/又は非晶性ポリエステルに配合されて用いられる。ポリテルペンは、分子構造中にイソプレンを基本骨格として持つ有機化合物である。
【0074】
粘着層がポリテルペンを含有していることにより、粘着層とアルミニウム層との間に、良好な再封性をもたらすことができる。また、再封回数が増加した場合であっても、再封強度の低下を抑制することができる。
【0075】
本発明に適用できるポリテルペンは、特に限定されるものではなく、「ポリテルペン」として商業的に入手可能なものを用いることができる。例えば、クレイトン社から市販されている、Sylvares(登録商標) TRA25、同TRB115、同TR1115T、同TR7115、同TRM1115、同TR7125、同TRB125、同TR1135、同TR90、同TR105等を挙げることができる。
【0076】
粘着層におけるポリテルペンの含有率は、粘着層の質量全体に対して、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってよく、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってよい。
【0077】
なお、本発明の複合フィルムの粘着層を構成しうるポリテルペンは、1種単独であっても、2種以上のポリテルペンを組み合わせて用いてもよい。
【0078】
(ロジンエステル)
本発明の複合フィルムの粘着層の構成成分となりうるロジンエステルは、上記した熱可塑性エラストマー及び/又は非晶性ポリエステルに配合されて用いられる。ロジンエステルは、ロジンがエステル化された化合物である。
【0079】
粘着層に、十分な量のロジンエステルを含有させることによって、粘着層の粘着性を改良することができ、また、ロジンエステルの量が過剰にならないようにすることによって、粘着層の強度を維持することができる。
【0080】
エステル化されるロジンの主成分となる樹脂酸(各種異性体)の種類は、特に限定されるものではなく、共役二重結合を有する共役樹脂酸であっても、非共役樹脂酸であっても、またこれらの混合物であってもよい。
【0081】
共役樹脂酸としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸等が挙げられる。また、非共役樹脂酸としては、例えば、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられる。
【0082】
ロジンエステルの形態は特に限定されるものではなく、例えば、ロジンまたは重合ロジンと多価アルコールとのエステル、水素添加ロジンのエステル、更には、エステルにマレイン酸を付加して得られるマレイン酸変性ロジンエステル等であってもよい。
【0083】
「ロジンエステル」として商業的に入手可能なものであってもよく、例えば、ハリマ化成社製のハリタックシリーズや、荒川化学工業社製のエステルガムシリーズ、ペンセル(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0084】
粘着層におけるロジンエステルの含有率は、粘着層の質量全体に対して、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、又は9質量%以上であってよく、50質量%以下、40質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0085】
なお、本発明の複合フィルムの粘着層を構成するロジンエステルは、1種単独であっても、2種以上のロジンエステルを組み合わせて用いてもよい。
【0086】
(その他の成分)
本発明の複合フィルムの粘着層は、必要に応じて、機能性等を付与するための他の樹脂等や添加剤等が配合されていてもよい。
【0087】
<アルミニウム層>
アルミニウム層は、本発明の複合フィルムにおいて必須の構成層であり、上記した粘着層と隣接する層である。
【0088】
本発明の複合フィルムは、ヒートシール層同士又はヒートシール層を容器本体等の他の材料とヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、アルミニウム層と、アルミニウム層に隣接する粘着層との間で層間剥離が起こる。
【0089】
ヒートシール層を容器本体等とヒートシールさせた場合には、開封後は、層間剥離したアルミニウム層が、ヒートシールにより形成された容器本体側の接合部に、露出して存在することとなる。
【0090】
したがって、本発明の複合フィルムにおいてアルミニウム層は、再封可能な包装体を形成した際の剥離界面となる役割を有する。同時に、アルミニウム層は、本発明の複合フィルムにおいて、気体の透過を遮断するためのバリア層としての機能も果たし、特に開封前の包装体のガスバリア性を向上させることができる。
【0091】
アルミニウム層を構成する材料としては、例えば、アルミニウム箔を適用することができる。
【0092】
アルミニウム層の厚みについては、特に限定されるものではないが、例えば、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましい。また、20μm以下、15μm以下、又は12μm以下であることが、複合フィルムを包装材等として用いる場合の取り扱い性、及びエッジ切れの容易さを向上させる観点から好ましい。
【0093】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層である。ヒートシール層は、本発明の複合フィルムを用いて包装体等を形成する際に、ヒートシールされる層となる。このため、ヒートシール層は、複合フィルムの最内層となるように配置する。
【0094】
ヒートシール層を構成する材料としては、熱接着が可能であり、形成された構造体に十分なシール強度を付与できるものであれば、特に限定されるものではない。公知の材料を適用することができ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる
【0095】
耐内容物性を付与したい場合には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることが好ましい。
【0096】
ヒートシール層は、予め成形されたフィルムを用いて形成してもよいし、対象となる積層体の表面に、ヒートシール層を形成するための材料を溶融して押出し、冷却固化させて形成してもよい。
【0097】
なお、ヒートシール層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0098】
本発明の複合フィルムを構成するヒートシール層は、中でも、以下に記載する第1のヒートシール層、又は第2のヒートシール層であってもよい。
【0099】
[第1のヒートシール層]
第1のヒートシール層は、ポリオレフィン系樹脂を含有しており、かつ、厚さが1~7μmである層である。
【0100】
ヒートシール層が、ポリオレフィン系樹脂を含有しており、かつ、厚さが1~7μmであれば、厚さが薄く、ヒートシール時のヒートシールバーによる押圧により押し潰されて更に薄くなり、その結果、脆くなることから、エッジ切れをより容易に実施することができる。
【0101】
第1のヒートシール層の厚さは、6μm以下、5μm以下、又は4μm以下であってもよく、1μm以上、2μm以上、又は3μm以上であってよい。
【0102】
(ポリオレフィン系樹脂)
第1のヒートシール層の材料となるポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、ポリスチレン(PS)等を挙げることができる。
【0103】
中でも、酸変性されたポリオレフィン系樹脂であれば、ヒートシール層の塗工性、及びヒートシール性を兼ね備えるとともに、エッジ切れをより容易とできる観点から好ましい。
【0104】
第1のヒートシール層を構成するポリオレフィン系樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0105】
[第2のヒートシール層]
第2のヒートシール層は、密度0.920~0.958g/cm3のポリエチレン樹脂層である。かかる構成によれば、十分な製膜性、ヒートシール性を備えるとともに、エッジ切れをより容易とすることができる。
【0106】
なお、本発明において、密度は、JIS K7112-1999に準拠して測定した値であってよい。
【0107】
第2のヒートシール層の密度は、0.920~0.958g/cm3である。第2のヒートシール層の密度は、0.923g/cm3以上、0.925g/cm3以上、0.927g/cm3以上、0.930g/cm3以上、0.933g/cm3以上、又は0.935g/cm3以上であってよく、0.952g/cm3以下、0.950g/cm3以下、又は0.948g/cm3以下であってよい。
【0108】
第2のヒートシール層となるポリエチレン樹脂層を構成する樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0109】
第2のヒートシール層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば1μm以上、2μm以上、又は3μm以上であってよい。この厚さは、10μm未満、7μm以下、6μm以下、又は5μm以下であることが、エッジ切れをより容易とする観点から好ましい。
【0110】
第2のヒートシール層となるポリエチレン樹脂層は、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂層であることが好ましい。高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂層であれば、製膜性をより良好にすることができる。
【0111】
ヒートシール層となるポリエチレン樹脂層が高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂層であるか否かは、例えば、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、混合樹脂層ついて測定した曲線と、混合樹脂層を構成する各ポリエチレンに関して測定した曲線とを比較することにより、確認することができる。
【0112】
第2のヒートシール層となるポリエチレン樹脂層が、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂層である場合には、上記の密度は、各成分の密度を各成分の含有率で重みづけした加重平均であってよい。
【0113】
(高密度ポリエチレン)
本明細書中で、高密度ポリエチレンとは、分岐鎖を有する場合その分岐差を含め、メチレン基の繰返し単位を80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、若しくは98mol%以上含み、又は実質的にすべての繰返し単位がメチレン基である、密度が0.942g/cm3以上のポリエチレンをいう。
【0114】
特に、0.942g/cm3以上、0.945g/cm3以上、0.948g/cm3以上、0.950g/cm3以上、0.952g/cm3以上、又は0.955g/cm3以上の密度を有し、長鎖の分岐構造を実質的に有しておらず、エチレンを低圧法によってラジカル重合することによって得られるものである。
【0115】
高密度ポリエチレンの密度は、0.970g/cm3以下、0.967g/cm3以下、0.965g/cm3以下、0.962g/cm3以下、又は0.960g/cm3以下であってよい。
【0116】
好ましい高密度ポリエチレンの熱特性としては、特に限定されるものではないが、例えば、そのメルトマスフローレートが、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、JIS K6922-1及び-2、並びにJIS K7210-1に準拠して測定した場合に、好ましくは0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であり、100g/10min以下、50g/10min以下、30g/10min以下、又は20g/10min以下である。
【0117】
第2のヒートシール層となるポリエチレン樹脂層が、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂層である場合には、ヒートシール層における高密度ポリエチレンの含有率は、ヒートシール層の質量全体に対して、50~90質量%であることが好ましい。
【0118】
更には、高密度ポリエチレンの含有率は、ヒートシール層の質量全体に対して、55質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上であってよく、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下であってよい。
【0119】
(低密度ポリエチレン)
本明細書中で、低密度ポリエチレン(LDPE)とは、分岐鎖を含めて、メチレン基の繰返し単位を80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、若しくは98mol%以上含み、又は実質的にすべての繰返し単位がメチレン基である、密度が0.930g/cm3未満のポリエチレンをいう。
【0120】
低密度ポリエチレンの密度は、0.925g/cm3以下、又は0.923g/cm3以下であってもよく、0.870g/cm3以上、0.875g/cm3以上、0.880g/cm3以上、0.900g/cm3以上、0.910g/cm3以上、又は0.915g/cm3以上であってもよい。
【0121】
低密度ポリエチレンは、いわゆる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であってもよく、又は長鎖若しくは短鎖の分岐構造を有していてもよい。なお、短鎖の分岐構造は、炭素原子数4~18、4~10、又は4~8のα-オレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、1-オクテン等に由来する分岐構造であってよい。
【0122】
好ましい低密度ポリエチレンの熱特性としては、特に限定されるものではないが、例えば、そのメルトマスフローレートが、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、JIS K6922-1及び-2、並びにJIS K7210-1に準拠して測定した場合に、好ましくは0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であり、100g/10min以下、50g/10min以下、30g/10min以下、又は20g/10min以下である。
【0123】
ヒートシール層における低密度ポリエチレンの含有率は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒートシール層の質量全体に対して、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってよい。
【0124】
<その他の層>
本発明の複合フィルムは、基材層、粘着層、アルミニウム層、及びヒートシール層を、この順で含み、粘着層とアルミニウム層が隣接している構成であれば、これら以外の層が含まれていてもよい。その他の層は、必須の構成層となる基材層と粘着層とのの間や、アルミニウム層とヒートシール層の間、あるいは、これらの層を含む積層体の外側等に配置することができる。
【0125】
その他の層としては、特に限定されるものではなく、例えば、バリア性を付与するためのバリア層や、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0126】
バリア性を付与するためのバリア層としては、例えば、酸素や水蒸気等のガスを遮断する機能を発現する、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、又はポリアクリロニトリル(PAN)からなる層等が挙げられる。
【0127】
あるいは、上記した通り、基材層に対して、無機物蒸着層や有機物コート層を形成して、バリア性を付与してもよい。
【0128】
更に、アルミニウム箔以外の金属箔をバリア層として存在させていてもよい。アルミニウム箔以外の金属箔としては、例えば、銅箔、チタン箔等の金属箔、アルミニウム合金箔、ステンレス箔等の合金箔等を挙げることができる。
【0129】
バリア層として無機物蒸着膜又は有機物コート層を存在させる場合には、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、複合フィルムを包装材等として用いる場合の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0130】
バリア層として金属箔を存在させる場合には、バリア層の厚さは、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましい。また、100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、複合フィルムを包装材等として用いる場合の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0131】
強度を補強するための補強層の材料としては、例えば、紙、合成紙、不織布等が挙げられる。これらには、隣接する層との接着性を付与するための粘着剤が塗布されていてもよい。
【0132】
層と層との間を接着するための接着層としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマーからなる層等が挙げられる。
【0133】
接着層は、本発明の複合フィルムとなる積層体を構成する層同士を、ドライラミネート又はホットメルトラミネートする際に使用する、接着剤からなる層であってもよい。例えば、ドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、水溶性接着剤、エマルション接着剤、ノンソルベントラミネート接着剤、及び押出ラミネート用の熱可塑性樹脂等であってよい。
【0134】
その他の層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよい。また、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0135】
《複合フィルムの製造方法》
本発明の複合フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、積層された複合フィルムを形成することのできる方法であればよい。公知の方法を採用することができ、例えば、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びサンドイッチラミネーション方法等が挙げられる。
【0136】
《複合フィルムの用途》
本発明の複合フィルムの用途は、特に限定されるものではない。例えば、包装材として用いることができ、例えば、蓋材等を形成し、当該蓋材のヒートシール層と容器本体等の他の材料とをヒートシールして、内容物入り蓋付き容器を形成してもよい。あるいは、ヒートシール層同士又はフィルム等の他の材料にヒートシールして、包装袋等を形成してもよい。
【0137】
<蓋材>
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、蓋材であってもよい。本発明の複合フィルムから形成される蓋材は、例えば、容器本体の上端開口部を密封するための蓋材となりうる。そして、本発明の複合フィルムから形成された蓋材は、再封可能な蓋材となるため、再封可能な蓋付包装容器を形成することができる。
【0138】
本発明の複合フィルムから形成された蓋材は、例えば、容器本体の上端開口部にヒートシールされて、蓋付包装容器を形成することができ、包装容器の開封時には、アルミニウム層とヒートシール層の破断による外エッジ切れ、蓋材を構成している粘着層とアルミニウム層との間の層間剥離、及びアルミニウム層とヒートシール層の破断による内エッジ切れによって、粘着層がアルミニウム層と再封可能な状態で露出する。そして、包装容器の再封時には、粘着層とアルミニウム層との間で再封されることとなる。
【0139】
すなわち、本発明の複合フィルムのヒートシール層を、容器本体等にヒートシールして形成した包装体は、ヒートシールされた接合部の外端縁及び内端縁で、アルミニウム層とヒートシール層が破断して開封されるため、複合フィルムの表面、特にヒートシール層側の表面から、複合フィルムの厚さ未満の深さで形成された切り込み(ハーフカット)を設ける必要がない。
【0140】
本発明の複合フィルムを用いて形成した再封可能な蓋付包装容器は、再封回数が増加した場合であっても、再封強度の低下が抑制された包装容器となる。
【0141】
<内容物入り蓋付容器>
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、内容物入り蓋付容器であってもよい。
【0142】
具体的には、収納部及びフランジ部を有する容器本体と、容器本体に収容されている内容物と、本発明の複合フィルムから形成された蓋材と、を備え、蓋材のヒートシール層が容器本体のフランジ部にヒートシールされて、再封可能な接合部を形成している、内容物入り蓋付容器である。
【0143】
本発明の複合フィルムから形成された蓋材を用いて形成された内容物入り蓋付容器は、蓋材がヒートシールされた接合部が、再封可能となっている。
【0144】
具体的には、本発明の複合フィルムから形成された蓋材を用いて形成された内容物入り蓋付容器は、開封の際には、エッジ切れ、及び粘着層とアルミニウム層との間の層間剥離が起こる。そして、開封後は、層間剥離したアルミニウム層が、ヒートシールにより形成された容器本体側の接合部に露出して存在し、粘着層は蓋材側に残る状態となっている。
【0145】
これにより、例えば食品容器等に本発明の複合フィルムから形成された蓋材を適用した場合に、粘着層が人体と接することがなくなり、口当たり等における違和感等を回避することができる。
【0146】
そして、再封時には、蓋材側に残っている粘着層と、容器本体側に露出しているアルミニウム層との間で、再封することでできる。
【0147】
本発明の複合フィルムを用いて形成した再封可能な内容物入り蓋付容器は、再封回数が増加した場合であっても、再封強度の低下が抑制された包装容器となる。
【0148】
また、本発明の複合フィルムを用いて形成される再封可能な内容物入り蓋付容器は、複合フィルムの基材層及び粘着層が透明であり、アルミニウム層よりも外層が透明な積層体となっている場合には、基材層側からアルミニウム層を視認可能となる。
【0149】
これにより、包装体を開封した際にアルミニウム層が破断したことを包装体の外側から確認することができ、包装体が未開封の状態なのか開封済みでリシールされた状態であるのかを、包装体の外側から視認することができる。
【0150】
[内容物入り蓋付容器の作用]
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルム用いて形成した内容物入り蓋付容器の作用について説明する。
【0151】
図2は、本発明の一実施形態に係る内容物入り蓋付容器を開封したときの剥離機構を示す図である。
【0152】
本発明の複合フィルムを用いて形成される内容物入り蓋付容器は、本発明の複合フィルムの最内層であるヒートシール層を、フランジを有する容器本体のフランジ部にヒートシールさせることで作製することができる。
【0153】
図2に示される本発明の一実施形態に係る内容物入り蓋付容器300は、本発明の複合フィルムから形成された蓋材100を、内容物250が収納された、フランジ部202を有する容器本体200のフランジ部202にヒートシールして、接合部202aを形成することにより作製されたものである。
【0154】
図2に示される本発明の複合フィルムから形成された蓋材100は、第1の基材層101と、第1の基材層101の内側に積層配置された第2の基材層102と、第2の基材層102の内側に積層配置された粘着層103と、粘着層103に隣接するように配置されたアルミニウム層104と、アルミニウム層104の内側に積層配置されたヒートシール層105と、を備える。すなわち、
図1に示される蓋材100は、2層の基材層を有する態様となっている。
【0155】
上記の態様を有する本発明の一実施形態に係る蓋材100を用いて形成した内容物入り蓋付容器300は、開封時には、
図2(a)に示されるように、フランジ部202から突出しているタブ110を摘まんで蓋材100を引き上げることにより、接合部202aの外周に対応する位置で、ヒートシール層105とアルミニウム層104とが破断(外エッジ切れ)し、この位置に対応する第1の破断部120aが暴露される。
【0156】
更に、蓋材100を引き上げると、
図2(b)に示されるように、粘着層103とアルミニウム層104との界面で蓋材100が層間剥離する。その後、層間剥離が接合部202aの内周に対応する位置に達すると、
図2(c)に示されるように、ヒートシール層105とアルミニウム層104とが破断(内エッジ切れ)し、この位置に対応する第2の破断部120bが暴露されるとともに、容器本体200のフランジ部202には、再封部106が形成される。
【0157】
すなわち、再封部106は、フランジ部202に形成された接合部202aの領域に、蓋材100から層間剥離によって生じた、ヒートシール層105とアルミニウム層104からなる積層体であり、アルミニウム層104が表面に露出した状態となっている。
【0158】
そして、開封された内容物入り蓋付容器300を再封する際には、再封部106に蓋材100が押しつけられることによって、粘着層103とアルミニウム層104再封されることとなる。
【0159】
[内容物入り蓋付容器の構成]
内容物入り蓋付容器は、容器本体と、内容物と、本発明の複合フィルムから形成された蓋材と、を備える。
(容器本体)
内容物入り蓋付容器を形成するための容器本体は、収納部及びフランジ部を有する。
【0160】
容器本体の材料は、特に限定されるものではなく、本発明の複合フィルムから形成された蓋材のヒートシール層がヒートシールできるものであればよい。例えば、樹脂で表面がコーティングされた紙製の容器、又は樹脂製の容器等が挙げられる。
【0161】
{収納部}
収納部は、内容物が収納されている部分である。この部分の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、略円錐台形、多角錐台形、直方体形、立方体形等であってよい。
【0162】
{フランジ部}
フランジ部は、容器本体の収納部の上端開口部周縁の部分である。その形状は特に限定されるものではなく、例えば、鍔状であってよい。また、フランジ部の外周の形状は、蓋材の形状に応じて適宜選択することができる。
【0163】
中では、フランジ部は、容器の少なくともフランジ部が、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有することが好ましい。更には、容器本体が紙カップであり、フランジ部が、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有する態様であることが好ましい。
【0164】
容器本体が、ポリエチレン樹脂でコーティングされたフランジ部を有する紙カップであれば、本発明の複合フィルムから形成された蓋材のヒートシール層との間で、一定のシール強度を得つつ、粘着層とアルミニウム層との界面で、スムーズに層間剥離することが可能となる。
【0165】
(内容物)
内容物は、収納部に収容されているものである。内容物としては、特に限定されるものではないが、例えば、スープ、即席麺、チルド食品、冷凍食品等の加熱式食品、又はスナック菓子、グミキャンディー等の非加熱式食品が挙げられる。
【0166】
<包装袋>
本発明の複合フィルムは、包装袋の形成に用いられてもよい。例えば、本発明の複合フィルムのヒートシール層を互いにヒートシールしたり、本発明の複合フィルムのヒートシール層とフィルム等の他の材料とをヒートシールしたりすることで、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラシック(登録商標)、ブリックパック(登録商標)、チューブ容器等を形成することができる。
【0167】
本発明の複合フィルムから形成される包装袋は、ヒートシールされた接合部の外端縁及び内端縁の一方又は両者で、アルミニウム層及びヒートシール層が破断して開封されるため、複合フィルムのヒートシール層側の表面から、開封に利用するための切り込み(ハーフカット)を設ける必要がない。
【0168】
<内容物入り包装袋>
本発明の複合フィルムは、内容物入り包装袋の形成に用いられてもよい。例えば、複合フィルムのヒートシール層をヒートシールし、内容物を充填することで、内容物が充填された包装袋とすることができる。
【0169】
図4に、本発明の一実施形態に係る内容物入り包装袋の概略図を示す。
図4は、本発明の複合フィルムを包装材として用いて形成した、内容物入り包装袋20である。
図4(a)は、形成された内容物入り包装袋20の正面図であり、
図4(b)は裏面図である。
【0170】
図4に示される内容物入り包装袋20は、複合フィルムからなる包装材30から形成されている。
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、包装材30の上端及び下端において、自身のヒートシール層同士がヒートシールされて、それぞれ10mmの接合部31を形成している。
【0171】
また、
図4(b)に示されるように、上端部の接合部31と下端部の接合部31を連結するように、包装袋20の縦方向に、包装材30の端部同士をヒートシールした接合部31が形成されている。
【0172】
そして、ヒートシールされた接合部31の一部を剥離して開封した場合、ヒートシールされた接合部31の外端縁及び内端縁の一方又は両者で、アルミニウム層及びヒートシール層が破断して開封されるため、粘着層が露出した状態となる。これにより、露出した粘着層によって、包装袋を再封することが可能になる。
【0173】
本発明の複合フィルムから形成される内容物入り包装袋は、例えば、内容物としてスナック菓子やグミキャンディー等の非加熱式食品等が充填された包装体とした場合、開封後に内容物を再度保存する際に、輪ゴムやクリップ等を用いることなく再封することが可能となる。また、例えばチャックテープ等の別部材を用いることなく再封が可能な包装袋を形成できるため、使用樹脂材料の削減や作業工程の簡略化等、コストや環境に配慮した包装体を提供することができる。
【0174】
また、本発明の複合フィルムを用いて形成される再封可能な内容物入り包装袋は、複合フィルムの基材層及び粘着層が透明であり、アルミニウム層よりも外層が透明な積層体となっている場合には、基材層側からアルミニウム層を視認可能となる。
【0175】
これにより、包装袋を開封した際にアルミニウム層が破断したことを包装袋の外側から確認することができ、包装袋が未開封の状態なのか開封済みでリシールされた状態であるのかを、包装袋の外側から視認することができる。
【実施例0176】
実施例及び比較例等により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0177】
<材料>
実施例及び比較例においては、層を構成する材料として、以下を準備した。
【0178】
(1)基材層
・紙(NMアート、日本製紙株式会社、坪量:79.1g/m2)
・PETフィルム(PETB、ユニチカ株式会社、厚み:12μm)
・NY:2軸延伸ナイロンフィルム(エンブレム(登録商標)ON25、ユニチカ株式会社、厚み:25μm)
【0179】
(2)粘着層
・SBBS/ポリテルペン=1:1(質量比)の混合樹脂
SBBS(N515、旭化成株式会社)
ポリテルペン(Sylvares(登録商標)TRB115、クレイトン社)
・SBBS/ロジンエステル=1:1(質量比)の混合樹脂
SBBS(N515、旭化成株式会社)
ロジンエステル(エステルガム(TM)AA-G、荒川化学工業株式会社)
・非晶性ポリエステル(エリーテル(登録商標)UE-3520-51EA、ユニチカ株式会社)
・非晶性ポリエステル/ロジンエステル=9:1(質量比)の混合樹脂
非晶性ポリエステル(エリーテル(登録商標)UE-3520-51EA、ユニチカ株式会社)
ロジンエステル(ハリタック(TM)28JA、ハリマ化成グループ株式会社)
【0180】
(3)アルミニウム層
・アルミニウム箔(1N30、株式会社UACJ製、厚み:7μm)
【0181】
(4)ヒートシール層
・HDPE/LDPE=7:3(質量比)の混合樹脂
HDPE(ノバテック(登録商標)HD HJ490、日本ポリエチレン株式会社、密度:0.958g/cm3)
LDPE(サンテック(登録商標)LD L2340、旭化成株式会社、密度:0.923g/cm3)
・CPP#30:無延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P1128、東洋紡株式会社、厚み:30μm)
【0182】
《実施例1》
<複合フィルムの作製>
表1に記載した積層順となる、複合フィルムを作製した。なお、表1において、ドライラミネートで貼り合わせた部分は、「//」で示している。
【0183】
1.第1の基材層となる紙と、第2の基材層となるPETフィルムとを、ドライラミネートにより貼り合わせた。ドライラミネート用接着剤としては、2液硬化型ドライラミネート接着剤(タケラックA525/タケネートA52、三井化学株式会社)を用いた。
【0184】
2.PETフィルム側に、粘着層となる、SBBS/ポリテルペン=1:1(質量比)の混合樹脂を、粘着層の厚さが4μmとなるように塗工し、粘着層を介して、アルミニウム箔をドライラミネートすることで、(紙//PETフィルム/粘着層/アルミニウム層)の積層体を作製した。
【0185】
3.アルミニウム層の上に、接着剤を介して、ヒートシール層となる、HDPE/LDPE=7:3(質量比)の混合樹脂を、厚さ5μmとなるように押出ラミネートすることで、複合フィルムを得た。接着剤としては、2液硬化型接着剤(タケラックA525/タケネートA52、三井化学株式会社)を用いた。
【0186】
<蓋材の作製>
得られた複合フィルムを菱形状に切り抜き、蓋材を作製した。
【0187】
<蓋付容器の作製>
得られた蓋材を、PEコート紙カップ(フランジ幅:3mm、開口内径:90mm)に、加熱したヒートシールバーを用いて、ヒートシール幅3mm、圧力65Mpa、時間0.7秒の条件でヒートシールして、蓋付容器を作製した。
【0188】
《参考例1》
<複合フィルムの作製>
基材層となる樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、及びヒートシール層(C)に用いる各樹脂組成物をそれぞれ別の押し出し機で加熱溶融させ、(A)/(B)/(C)の順で積層した後、Tダイ・チルロール法により多層フィルムを作成した。
【0189】
《比較例1》
<複合フィルムの作製>
表1に記載した積層順となる、複合フィルムを作製した。なお、表1において、ドライラミネートで貼り合わせた部分は、「//」で示している。
【0190】
1.第2の基材層となるPETフィルムと、アルミニウム箔とを、ドライラミネートにより貼り合わせた。ドライラミネート用接着剤としては、2液硬化型ドライラミネート接着剤(タケラックA525/タケネートA52、三井化学株式会社)を用いた。
【0191】
2.アルミニウム箔側に、第1の基材層となる紙を、ドライラミネートにより貼り合わせることで、(紙//アルミニウム層//PETフィルム)の積層体を作製した。ドライラミネート用接着剤としては、2液硬化型ドライラミネート接着剤(タケラックA525/タケネートA52、三井化学株式会社)を用いた。
【0192】
3.PETフィルム側に、粘着層となる、SBBS/ポリテルペン=1:1(質量比)の混合樹脂を、粘着層の厚さが4μmとなるように塗工し、粘着層を介して、ヒートシール層となる、HDPE/LDPE=7:3(質量比)の混合樹脂を、厚さ5μmとなるように押出ラミネートすることで、複合フィルムを得た。
【0193】
<蓋材の作製、蓋付容器の作製>
得られた複合フィルムから、実施例1と同様にして蓋材を作製し、実施例1と同様にして蓋付容器を作製した。
【0194】
実施例1、参考例1、及び比較例1で作製した積層体の構成を、表1に示す。
【0195】
【0196】
《評価》
(初期層間強度)
実施例1及び参考例1で得られた複合フィルムを、幅15mm×120mmの長方形に切り抜き、これを評価用サンプルとした。
【0197】
評価用サンプルを、温度150℃、圧力3kgf/cm2、時間1.5秒の条件で、ポリエチレンフィルムにヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルについて、以下の方法で層間剥離を実施し、剥離面の初期層間強度を測定した。実施例1作製した複合フィルムの層間剥離は、粘着層-アルミニウム層間で起こり、参考例1で作製した複合フィルムの層間剥離は、粘着層-基材層間で起こった。
【0198】
測定にあたっては、ストログラフ AGS-X(株式会社島津製作所)を測定機として用い、200mm/min、剥離長さ35mmの条件で180°剥離させたときの、剥離長さ10~30mmにおける平均剥離強度を算出した。結果を、表2に示す。
【0199】
【0200】
実施例1で作製した複合フィルムは、初期層間強度が合格範囲にありつつ、参考例1で作製した複合フィルムと比較して、小さい力で開封が可能であった。
【0201】
(層間剥離の場所の確認)
実施例1及び比較例1で作製した蓋付容器について、初期開封を実施し、層間剥離の場所を確認した。剥離場所を表3に示す。
【0202】
【0203】
比較例1で作製した蓋付容器は、PET-粘着層間で層間剥離が起こっていたのに対し、実施例1作製した蓋付容器は、粘着層-アルミニウム層間で層間剥離が起こっていることが確認できた。
【0204】
(再封回数と開封強度の関係)
実施例1及び比較例1で作製した蓋付容器について、再封回数と開封強度の関係を調べた。初期開封を行ったサンプルに関し、実施例1で作製した蓋付容器では粘着層とAl層とを重ね合わせ、比較例1で作製した蓋付容器ではPETと粘着層とを重ね合わせて、フランジに沿って1周、指圧して再び圧着させた後に、300mm/minにて90°剥離させたときの開封強度を測定した。結果を、
図3に示す。
【0205】
(フランジの糊残り評価)
実施例1及び比較例1で作製した蓋付容器について、初期開封時にフランジに粘着剤が残っていないか評価した。評価にあたっては、初期開封した後のフランジを指で触って、タックの有無を確認した(n=10)。結果を、表4に示す。
〇:タックが無かった
×:タックが有った
【0206】
【0207】
《実施例2》
<複合フィルムの作製>
表5に示す材料を用いて、以下に示す方法により、(基材層/粘着層/アルミニウム層//ヒートシール層)の積層構成となる複合フィルムを作製した。なお、ドライラミネートで貼り合わせた部分を、「//」で示している。また、粘着層の組成(質量%)については、粘着層全体に対する各成分の固形分量を示している。
【0208】
1.基材層となるナイロンフィルムに、粘着層となる、SBBS/ポリテルペン=1:1(質量比)の混合樹脂を、乾燥重量で3g/m2(厚み:3μm)となるよう塗工し、粘着層を介してアルミニウム箔をドライラミネートすることで、(ナイロンフィルム/粘着層/アルミニウム層)の積層体を作製した。
【0209】
2.アルミニウム層の上に、接着剤を介して、ヒートシール層となる無延伸PPフィルムを積層することで、複合フィルムを得た。接着剤としては、2液硬化型接着剤(タケラックA525/タケネートA52、三井化学株式会社)を用いた。
【0210】
<包装袋の作製>
得られた複合フィルムを包装材として用いて、
図4に示す包装袋を作製した。複合フィルムから、縦148mm×横200mmの長方形の包装材を切り抜いた。続いて、
図4(b)に示されるように、包装材の長編の端部10mmをヒートシールして筒状物を形成し、最後に、上端部及び下端部のそれぞれ10mmをヒートシールすることで、縦148mm×幅95mmの包装袋を作製した。
【0211】
ヒートシールは、富士インパルス社製FA-300-10Wを使用し、シール温度200℃、シール時間1.0秒、冷却時間2.0秒の条件で実施した。
【0212】
《実施例3~5》
表5に示す材料を用いた以外は、実施例2と同様にして複合フィルムを作製し、実施例2と同様にして包装袋を作製した。
【0213】
《評価》
(初期層間強度)
実施例2~5で得られた複合フィルムを、幅15mm×120mmの長方形に切り抜き、これを評価用サンプルとした。
【0214】
評価用サンプルを、温度150℃、圧力3kgf/cm2、時間1.5秒の条件で、ポリエチレンフィルムにヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルについて、以下の方法で層間剥離を実施し、基材層-アルミニウム層間の初期層間強度を測定した。
【0215】
測定には、ストログラフ AGS-X(株式会社島津製作所)を測定機として用い、300mm/min、剥離長さ35mmの条件で180°剥離させたときの、剥離長さ10~30mmにおける平均剥離強度を算出した。なお、測定は、室温環境下で実施した。結果を、表5に示す。
【0216】
(再封強度)
上記の初期層間強度を測定した後、指で剥離部を押圧して再接着させた。その後、上記と同様の方法で、基材層-アルミニウム層間の層間強度を測定した。結果を、表5に示す。
【0217】
(再封性の確認)
実施例2~5で作成した包装袋を開封し、指圧にて開封部を閉じた。続いて、再び同部位を開封し、再開封の際の抵抗について、以下の評価基準で評価した。結果を、表5に示す。
〇:再開封の際に、指に抵抗感を感じる。
×:再開封の際に、指に抵抗感を感じない。
【0218】