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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033738
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】アンチセンス核酸
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220222BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220222BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220222BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220222BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220222BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61K31/712
A61K31/7125
A61P21/04
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179353
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2018144099の分割
【原出願日】2016-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2015182145
(32)【優先日】2015-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004156
【氏名又は名称】日本新薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510147776
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 由輝子
(72)【発明者】
【氏名】戸根 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】青木 吉嗣
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンのスキッピングを可能にするオリゴマーを提供する。
【解決手段】以下の(a)~(e)よりなる群より選ばれる2つのユニットオリゴマーが連結した、アンチセンスオリゴマー。ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの:(a)5’末端から第5~15番目のヌクレオチド配列から選択される7~16塩基の配列に相補的な塩基配列;(b)5’末端から第48~70番目のヌクレオチド配列から選択される7~16塩基の配列に相補的な塩基配列;(c)5’末端から第128~150番目のヌクレオチド配列から選択される7~16塩基の配列に相補的な塩基配列;(d)5’末端から第15~40番目のヌクレオチド配列から選択される7~16塩基の配列に相補的な塩基配列;及び(e)5’末端から第110~125番目のヌクレオチド配列から選択される7~16塩基の配列に相補的な塩基配列。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)~(e)よりなる群より選ばれる2つのユニットオリゴマーが連結した、14
~32塩基長のアンチセンスオリゴマーであって、2つのユニットオリゴマーは連続又は互
いに重複するものではない、アンチセンスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若し
くは水和物:
(a)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第-5~15番目
のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的な塩
基配列からなるユニットオリゴマー;
(b)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第48~70番目
のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的な塩
基配列からなるユニットオリゴマー;
(c)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第128~150
番目のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的
な塩基配列からなるユニットオリゴマー;
(d)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第15~40番目
のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的な塩
基配列からなるユニットオリゴマー;及び
(e)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第110~125
番目のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的
な塩基配列からなるユニットオリゴマー。
【請求項2】
前記2つのユニットオリゴマーのうちの一つが(a)である、請求項1に記載のアンチセ
ンスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
【請求項3】
配列番号7~12、14~33、40~52、57、64、65、79~86よりなる群から選ばれるいずれ
か一つの塩基配列からなる、請求項1又は2に記載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬
的に許容可能な塩若しくは水和物。
【請求項4】
配列番号8、10、25、30、33、79、80よりなる群から選ばれるいずれか一つの塩基配列
からなる、請求項1~3のいずれかに記載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬的に許容
可能な塩若しくは水和物。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドである、請求項1~4のいずれかに記載のアンチセンスオリゴマー又
はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドの糖部分及び/又はリ
ン酸結合部分が修飾されている、請求項5に記載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬
的に許容可能な塩若しくは水和物。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドの糖部分が、2’位の-O
H基が、OR、R、R’OR、SH、SR、NH2、NHR、NR2、N3、CN、F、Cl、Br及びIからなる群より
選択されるいずれかの基で置換されたリボースである、請求項5又は6に記載のアンチセン
スオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
(上記Rは、アルキル又はアリールを示し、上記R’は、アルキレンを示す。)
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドのリン酸結合部分が、
ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、アルキルホスホネート結合、ホス
ホロアミデート結合、及びボラノフォスフェート結合からなる群より選択されるいずれか
1つのものである、請求項6又は7に記載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬的に許容
可能な塩若しくは水和物。
【請求項9】
モルホリノオリゴマーである、請求項1~4のいずれかに記載のアンチセンスオリゴマー又
はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
【請求項10】
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーである、請求項9に記載のアンチセンスオリ
ゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
【請求項11】
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーである、請求項4に記載のアンチセンスオ
リゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
【請求項12】
5’末端が、下記化学式(1)~(3)のいずれかの基である、請求項9~11のいずれかに記
載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。

【化25】
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴマー、その医薬的に許容可能な
塩又は水和物を有効成分とする、筋ジストロフィー治療用医薬組成物。
【請求項14】
さらに医薬的に許容可能な担体を含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬上許容され
る塩若しくは水和物、又は請求項13若しくは14に記載の前記医薬組成物を筋ジストロフィ
ー患者に投与する工程を含む、筋ジストロフィーの治療方法。
【請求項16】
前記筋ジストロフィー患者が、ジストロフィン遺伝子にエクソン45スキップの対象となる
変異を有する患者である、請求項15に記載の治療方法。
【請求項17】
前記患者がヒトである、請求項15又は16に記載の治療方法。
【請求項18】
筋ジストロフィー治療用医薬組成物の製造における請求項1~12のいずれか一項に記載
のアンチセンスオリゴマー又はその医薬上許容される塩若しくは水和物の使用。
【請求項19】
筋ジストロフィー治療に使用するための請求項1~12のいずれか一項に記載のアンチセ
ンスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
【請求項20】
前記治療において、筋ジストロフィー患者が、ジストロフィン遺伝子にエクソン45スキ
ップの対象となる変異を有する患者である、請求項19に記載のアンチセンスオリゴマー又
はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
【請求項21】
前記患者がヒトである、請求項19又は20に記載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬
的に許容可能な塩若しくは水和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンのスキッピングを可能にする
アンチセンスオリゴマー及び該オリゴマーを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は出生男子約3,500人に1人が発症する最も頻度
の高い遺伝性進行性筋疾患である。乳幼児期には正常のヒトとほとんど変わらない運動機
能を示すが、4~5歳頃から筋力低下がみられる。その後筋力低下は進行し12歳頃までに歩
行不能になり、20歳代で心不全又は呼吸不全により死に至る重篤な疾患である。現在、DM
Dに対する有効な治療法はなく、新たな治療薬の開発が強く求められている。
【0003】
DMDはジストロフィン遺伝子の変異が原因であることが知られている。ジストロフィン遺
伝子はX染色体に存在し、220万塩基のDNAから成る巨大な遺伝子である。DNAからmRNA前駆
体に転写され、さらにスプライシングによりイントロンが除かれ79のエクソンが結合した
mRNAは13,993塩基になる。このmRNAから3,685のアミノ酸に翻訳され、ジストロフィンタ
ンパク質が生成される。ジストロフィンタンパク質は筋細胞の膜安定性の維持に関与して
おり、筋細胞を壊れにくくするために必要である。DMD患者のジストロフィン遺伝子は変
異を有するため、筋細胞において機能を持つジストロフィンタンパク質が殆ど発現されな
い。そのため、DMD患者体内では、筋細胞の構造を維持できなくなり、多量のカルシウム
イオンが筋細胞内に流れ込む。その結果、炎症に似た反応が生じ、線維化が進むために筋
細胞が再生されにくくなる。
【0004】
ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)もジストロフィン遺伝子の変異が原因であるが、そ
の症状は筋力低下を呈するものの一般にDMDと比較して軽く、筋力低下の進行も遅く、多
くの場合、成人期に発症する。DMDとBMDとの臨床症状の違いは、変異によりジストロフィ
ンのmRNAがジストロフィンタンパク質へと翻訳される際のアミノ酸読み取り枠が破壊され
るか、あるいは維持されるかによるものと考えられている(非特許文献1)。つまり、DMD
では、アミノ酸読み取り枠がずれる変異を有することにより、機能を持つジストロフィン
タンパク質がほとんど発現しないが、BMDでは変異によりエクソンの一部は欠失している
が、アミノ酸読み取り枠は維持されているために不完全ながらも機能を有するジストロフ
ィンタンパク質が産生される。
【0005】
DMDの治療法として、エクソンスキッピング法が期待されている。この方法は、スプライ
シングを改変することでジストロフィンのmRNAのアミノ酸読み取り枠を修復し、部分的に
機能を回復したジストロフィンタンパク質の発現を誘導する方法である(非特許文献2)
。エクソンスキッピングの対象となるアミノ酸配列部分は失われることになる。そのため
この治療で発現されるジストロフィンタンパク質は正常のものより短くなるが、アミノ酸
読み取り枠が維持されるために筋細胞を安定化する機能が部分的に保持される。従って、
エクソンスキッピングにより、DMDは、より軽症のBMDと同じような症状を呈するようにな
ると期待されている。エクソンスキッピング法は、マウスやイヌによる動物実験を経て、
ヒトDMD患者に対する臨床試験が行われている。
【0006】
エクソンスキッピングは、5’又は3’スプライス部位のいずれか若しくは両方、又はエク
ソンの内部を標的とするアンチセンス核酸の結合により誘導することができる。エクソン
は両方のスプライス部位がスプライソソーム複合体によって認識された場合のみmRNAに包
含される。従って、スプライス部位をアンチセンス核酸でターゲッティングすることによ
り、エクソンスキッピングを誘導することができる。また、エクソンがスプライシングの
機構に認識されるためにはエクソンスプライシングエンハンサー(ESE)へのセリンとア
ルギニンに富むSRタンパク質の結合が必要であると考えられており、ESEをターゲッティ
ングすることでもエクソンのスキッピングを誘導することができる。
【0007】
ジストロフィン遺伝子の変異はDMD患者によって異なるため、遺伝子変異の場所や種類に
応じたアンチセンス核酸が必要になる。ジストロフィン遺伝子の単一エクソンに対して、
一つの連続する配列を標的としてエクソンスキッピングを誘導するアンチセンス核酸につ
いて複数の報告がある(特許文献1~6、並びに非特許文献1及び2)。また、ジストロフィ
ン遺伝子の同一エクソンを標的とする二種類のアンチセンス核酸を混合して作用させると
(二重標的化)、各アンチセンス核酸を単独で用いた場合よりスキッピング活性が増強さ
れる場合があることが報告されている(特許文献7)。
【0008】
しかし、同一のエクソン内の2箇所以上を標的とする連結された一本鎖アンチセンス核酸
(連結型)がスキッピング活性を示すことは未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報第2004/048570号
【特許文献2】国際公開公報第2009/139630号
【特許文献3】国際公開公報第2010/048586号
【特許文献4】米国特許公開公報第2010/0168212号
【特許文献5】国際公開公報第2011/057350号
【特許文献6】国際公開公報第2006/000057号
【特許文献7】国際公開公報第2007/135105号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Annemieke Aartsma-Rus et al., (2002) Neuromuscular Disorders 12: S71-S77
【非特許文献2】Wilton S. D., et al., Molecular Therapy 2007: 15: p. 1288-96
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような状況において、本発明は、ジストロフィン遺伝子の同一エクソン内の別の2
箇所の塩基配列を標的としてエクソンスキッピングを誘導する新規な連結型アンチセンス
オリゴマー及び同オリゴマーを含む筋ジストロフィー治療薬を提供することを主な目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記文献に記載の技術内容及びジストロフィン遺伝子の構造などを詳細
に研究した結果、ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45の異なる2箇所を標的とするオ
リゴマーを連結して得られるアンチセンスオリゴマーが同エクソンのスキッピングを誘導
できることを見出した。本発明者らは、この知見に基づき、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
以下の(a)~(e)よりなる群より選ばれる2つのユニットオリゴマーが連結した、14
~32塩基長のアンチセンスオリゴマーであって、2つのユニットオリゴマーは連続又は互
いに重複するものではない、アンチセンスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若し
くは水和物:
(a)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第-5~15番目
のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的な塩
基配列からなるユニットオリゴマー;
(b)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第48~70番目
のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的な塩
基配列からなるユニットオリゴマー;
(c)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第128~150
番目のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的
な塩基配列からなるユニットオリゴマー;
(d)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第15~40番目
のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的な塩
基配列からなるユニットオリゴマー;及び
(e)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第110~125
番目のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的
な塩基配列からなるユニットオリゴマー。
[2]
前記2つのユニットオリゴマーのうちの一つが(a)である、前記[1]に記載のアンチ
センスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
[3]
配列番号7~12、14~33、40~52、57、64、65、79~86よりなる群から選ばれるいずれ
か一つの塩基配列からなる、前記[1]又は[2]に記載のアンチセンスオリゴマー又はそ
の医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
[4]
配列番号8、10、25、30、33、79、80よりなる群から選ばれるいずれか一つの塩基配列
からなる、前記[1]~[3]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬的
に許容可能な塩若しくは水和物。
[5]
オリゴヌクレオチドである、前記[1]~[4]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴ
マー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
[6]
前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドの糖部分及び/又はリ
ン酸結合部分が修飾されている、前記[5]に記載のアンチセンスオリゴマー又はその医
薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
[7] 前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドの糖部分が、2
’位の-OH基が、OR、R、R’OR、SH、SR、NH2、NHR、NR2、N3、CN、F、Cl、Br及びIからな
る群より選択されるいずれかの基で置換されたリボースである、前記[5]又は[6]に記
載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
(上記Rは、アルキル又はアリールを示し、上記R’は、アルキレンを示す。)

[8] 前記オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1つのヌクレオチドのリン酸結合部
分が、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、アルキルホスホネート結合
、ホスホロアミデート結合、及びボラノフォスフェート結合からなる群より選択されるい
ずれか1つのものである、前記[6]又は[7]に記載のアンチセンスオリゴマー又はその
医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。

[9] モルホリノオリゴマーである、前記[1]~[4]のいずれかに記載のアンチセン
スオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。

[10] ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーである、前記[9]に記載のアンチ
センスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。

[11] ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーである、前記[4]に記載のアンチ
センスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。

[12] 5’末端が、下記化学式(1)~(3)のいずれかの基である、前記[9]~[11]の
いずれかに記載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物


【化1】
[13] 前記[1]~[12]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴマー、その医薬的に
許容可能な塩又は水和物を有効成分とする、筋ジストロフィー治療用医薬組成物。

[14] さらに医薬的に許容可能な担体を含む、前記[13]に記載の医薬組成物。

[15]
前記[1]~[12]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬上許容さ
れる塩若しくは水和物、又は前記[13]若しくは[14]に記載の前記医薬組成物を筋ジス
トロフィー患者に投与する工程を含む、筋ジストロフィーの治療方法。
[16] 前記筋ジストロフィー患者が、ジストロフィン遺伝子にエクソン45スキップの対
象となる変異を有する患者である、前記[15]に記載の治療方法。

[17]
前記患者がヒトである、前記[15]又は[16]に記載の治療方法。
[18]
筋ジストロフィー治療用医薬組成物の製造における前記[1]~[12]のいずれかに記
載のアンチセンスオリゴマー又はその医薬上許容される塩若しくは水和物の使用。
[19]
筋ジストロフィー治療に使用するための前記[1]~[12]のいずれか一項に記載のア
ンチセンスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
[20]
前記治療において、筋ジストロフィー患者が、ジストロフィン遺伝子にエクソン45スキ
ップの対象となる変異を有する患者である、前記[19]に記載のアンチセンスオリゴマー
又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
[21]
前記患者がヒトである、前記[19]又は[20]に記載のアンチセンスオリゴマー又はそ
の医薬的に許容可能な塩若しくは水和物。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアンチセンスオリゴマーにより、ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキ
ッピングを効果的に誘導することが可能である。また、本発明の医薬組成物を投与するこ
とにより、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状を、効果的に軽減することができる。
対象となる患者の欠失エクソンは18-44, 44, 46, 46-47, 46-48, 46-49, 46-51, 46-53等
が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図2】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図3】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図4】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図5】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図6】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図7】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図8】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図9】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図10】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図11】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図12】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図13】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図14】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図15】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図16】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図17】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図18】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図19】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図20】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図21】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図22】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図23】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図24】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
図25】ヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)におけるヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピング効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であ
り、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱し
ない限り、様々な形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許
文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、2015年9
月15日に出願された本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願(特願2015-18
2145号)の明細書及び図面に記載の内容を包含する。
【0017】
1.アンチセンスオリゴマー
本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンをスキッピングしうるアン
チセンスオリゴマー又はその医薬的に許容可能な塩若しくは水和物(以下、「本発明のオ
リゴマー」という)を提供する。
【0018】
[ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソン]
本発明において、「遺伝子」には、ゲノム遺伝子以外に、cDNA、mRNA前駆体及びmRNAも
含まれる。好ましくは、遺伝子は、mRNA前駆体、即ち、pre-mRNAである。
ヒトゲノムにおいて、ヒトジストロフィン遺伝子は遺伝子座Xp21.2に存在する。ヒトジ
ストロフィン遺伝子は、3.0 Mbpのサイズを有しており、既知のヒト遺伝子としては最大
の遺伝子である。但し、ヒトジストロフィン遺伝子のコード領域はわずか14kbに過ぎず、
該コード領域は79個のエクソンとしてジストロフィン遺伝子内に分散している(Roberts,
RG., et al., Genomics, 16: 536-538 (1993))。ヒトジストロフィン遺伝子の転写物で
あるpre-mRNAは、スプライシングを受けて14kbの成熟mRNAを生成する。ヒトの野生型ジス
トロフィン遺伝子の塩基配列は公知である(GenBank Accession No. NM_004006)。
ヒトの野生型ジストロフィン遺伝子のエクソン45の塩基配列を配列番号13に示す。また
、ヒトの野生型ジストロフィン遺伝子のエクソン45のヌクレオチド配列(配列番号13)の
うち、5’末端から数えて-5~15番目の塩基からなる配列を配列番号3に示す。同様に、48
~70番目の塩基からなる配列、128~150番目の塩基からなる配列、15~40番目の塩基から
なる配列及び110~125番目の塩基からなる配列を、それぞれ配列番号4~6、143に示す。
【0019】
本発明のオリゴマーは、ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピングにより
、DMD型ジストロフィン遺伝子でコードされるタンパク質を、BMD型ジストロフィンタンパ
ク質に改変することを目的として作製されたものである。従って、本発明のオリゴマーの
エクソンスキッピングの対象となるジストロフィン遺伝子のエクソン45には、野生型だけ
ではなく、変異型も含まれる。
変異型のヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45又はその一部は、具体的には、以下の
(I)又は(II)に記載のポリヌクレオチドである。
(I)配列番号13、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号143からな
る群より選択されるいずれかの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;
(II)配列番号13、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号143から
なる群より選択されるいずれかの塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列
からなるポリヌクレオチド
【0020】
本明細書中、「ポリヌクレオチド」とは、DNA又はRNAを意味する。
本明細書中、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」と
は、例えば、配列番号13、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号14
3からなる群より選択されるいずれかの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレ
オチドの全部又は一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラーク
ハイブリダイゼーション法又はサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより
得られるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイゼーションの方法としては、例えば、"S
ambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Sprin
g Harbor, Laboratory Press 2001"及び"Ausubel, Current Protocols in Molecular Bio
logy, John Wiley & Sons 1987-1997"などに記載されている方法を利用することができ
る。
【0021】
本明細書中、「相補的な塩基配列」とは、対象となる塩基配列とワトソン・クリック対
を形成する塩基配列に限定されるものではなく、揺らぎ塩基対(Wobble base pair)を形
成する塩基配列も含む。ここで、ワトソン・クリック対とは、アデニン-チミン、アデニ
ン-ウラシル及びグアニン-シトシン間に水素結合が形成される塩基対を意味し、揺らぎ塩
基対とは、グアニン-ウラシル、イノシン-ウラシル、イノシン-アデニン及びイノシン-シ
トシン間に水素結合が形成される塩基対を意味する。また、「相補的な塩基配列」とは、
対象となる塩基配列と100%の相補性を有していなくてもよく、例えば、対象となる塩基
配列に対して、1~3個、1~2個又は1個の非相補的塩基が含まれていてもよい。
【0022】
本明細書中、「ストリンジェントな条件」とは、低ストリンジェントな条件、中ストリ
ンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェン
トな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32
℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハ
ルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃又は5×SSC、1% SDS、50 mM Tris-HCl(
pH7.5)、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例
えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃又は0.2×SSC、0
.1% SDS、65℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い同一性を有
するポリヌクレオチドが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼー
ションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長
さ、イオン強度、時間、塩濃度等の複数の要素が考えられ、当業者であればこれらの要素
を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0023】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct
Labelling and Detection System(GE Healthcare)を用いることができる。この場合は
、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを
一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1%(w/v)SDSを含む1次洗浄バッファーで
洗浄後、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドを検出することができる。あるいは、配列
番号13、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号143からなる群より
選択されるいずれか、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号143か
らなる群より選択されるいずれかの塩基配列と相補的な塩基配列の全部又は一部に基づい
てプローブを作製する際に、市販の試薬(例えば、PCRラベリングミックス(ロシュ・ダ
イアグノス社)等)を用いて該プローブをジゴキシゲニン(DIG)ラベルした場合には、D
IG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノス社)を用いてハイブリダイゼーションを検出す
ることができる。
【0024】
上記のハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドとしては、相同
性検索ソフトウェアであるBLASTにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したと
きに、配列番号13、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号143から
なる群より選択されるいずれかのポリヌクレオチドからなる配列と90%以上、91%以上、
92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、
99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以
上、99.8%以上、又は99.9%以上の同一性を有するポリヌクレオチドをあげることができ
る。
なお、塩基配列の同一性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST (Bas
ic Local Alignment Search Tool)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 872264-2268, 1990; P
roc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに
基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al:
J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメータ
ーは、例えばscore = 100、wordlength = 12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを
用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0025】
ある態様では、本発明のオリゴマーは、以下の(a)~(e)よりなる群より選ばれる2つ
のユニットオリゴマーが連結した、14~32塩基長のアンチセンスオリゴマー又はその医薬
的に許容可能な塩若しくは水和物である。
(a)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第-5~15番目
のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的な配
列からなるユニットオリゴマー;
(b)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第48~70番目
のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的な配
列からなるユニットオリゴマー;
(c)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第128~150
番目のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的
な配列からなるユニットオリゴマー;
(d)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第15~40番目
のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的な配
列からなるユニットオリゴマー;及び
(e)ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンの5’末端から第110~125
番目のヌクレオチド配列から選択される連続する7~16塩基のヌクレオチド配列に相補的
な塩基配列からなるユニットオリゴマー。
【0026】
上記(a)~(e)の各ユニットオリゴマー(以下、単に「ユニット」と称する場合もある
)のサイズは、7~16塩基長であり、好ましくは8~16塩基長、9~16塩基長である。各ユ
ニットのサイズは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0027】
また、(a)~(e)よりなる群より2つのユニットオリゴマーを選ぶ際、2つのユニットオ
リゴマーは(a)~(e)の同じ組合せ(つまり、(a)と(a)、(b)と(b)、(c)と(c)、(d)と(d)、
(e)と(e))であってもよく、あるいは異なった組合せであってもよいが、好ましくは異な
った組合せである。例えば、1つのユニットとして(a)を選んだ場合、他方のユニットは
(b)~(e)のいずれか1つとなることが好ましい。同様に一方にユニット(b)を選んだ
場合、他方のユニットは(a)、(c)、(d)又は(e)となることが好ましく、また、一
方にユニット(c)を選んだ場合、他方のユニットは(a)、(b)、(d)又は(e)とな
ることが好ましい。
【0028】
(a)~(e)より2つのユニットを選択した場合、選択された2つのユニットのいずれが
5’末端側に配置されてもよいが、(a)と(b)を選択した場合であればユニット(a)が
3’末端側に連結され、(b)と(c)を選択した場合であればユニット(b)が3’末端側
に連結され、(a)と(c)を選択した場合であればユニット(a)が3’末端側に連結され
、(a)と(d)を選択した場合であればユニット(a)が3’末端側に連結され、(a)と
(e)を選択した場合であればユニット(a)が3’末端側に連結されることが好ましい。
【0029】
ここで、「連結」とは、(a)~(e)より選択された2つのユニットが直結していること
を意味する。すなわち、2つのユニットが連結している場合、5’末端側に位置するユニッ
トの3’末端と、3’末端側に位置するユニットの5’末端とがリン酸結合又は以下の基を
形成することを意味する。

【化2】
(式中、Xは、-OH、-CH2R1、-O-CH2R1、-S-CH2R1、-NR2R3又はFを表し;
R1は、H、アルキルを表し;
R2及びR3は、同一又は異なって、H、アルキル、シクロアルキル、又は、アリールを表
し;
Y1は、0、S、CH2又はNR1を表し;
Y2は、0、S又はNR1を表し;
Zは、0又はSを表す。)
【0030】
「ヒトジストロフィン遺伝子の第45番目のエクソンのスキッピングを可能にする」とは
、ヒトジストロフィン遺伝子の転写物(例えば、pre-mRNA)のエクソン45に相当する部位
に本発明のオリゴマーが結合することにより、該転写物がスプライシングを受けた際に、
例えばエクソン44に欠失を有するDMD患者の場合、エクソン43の3’末端に相当する塩基に
エクソン46の5’末端に相当する塩基が連結し、コドンのフレームシフトが起こっていな
い成熟mRNAが形成されることを意味する。
【0031】
ここで、前記「結合」は、本発明のオリゴマーとヒトジストロフィン遺伝子の転写物と
を混合した場合に、生理的条件下で両者がハイブリダイズして二本鎖を形成することを意
味する。上記「生理的条件下」とは、生体内と類似のpH、塩組成、温度に調節された条件
を意味する。例えば、25~40℃、好ましくは37℃、pH 5~8、好ましくは、pH 7.4であっ
て、塩化ナトリウム濃度が150 mMの条件が挙げられる。
【0032】
ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピングが生じたか否かは、ジストロフ
ィン発現細胞(例えば、ヒト横紋筋肉腫細胞)に本発明のオリゴマーを導入し、前記ジス
トロフィン発現細胞のtotal RNAから、ヒトジストロフィン遺伝子のmRNAのエクソン45の
周辺領域をRT-PCR増幅し、該PCR増幅産物に対してnested PCR又はシークエンス解析を行
うことにより確認することができる。 スキッピング効率は、ヒトジストロフィン遺伝子
のmRNAを被検細胞から回収し、該mRNAのうち、エクソン45がスキップしたバンドのポリヌ
クレオチド量「A」と、エクソン45がスキップしなかったバンドのポリヌクレオチド量「B
」を測定し、これら「A」及び「B」の測定値に基づき、以下の式に従って計算することが
できる。

スキッピング効率(%)= A /( A + B )x 100

【0033】
好ましくは、本発明のオリゴマーは、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%
以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の効率でエクソン45をスキッピングする

スキッピング効率の計算については、国際公開公報第2012/029986号を参照することが
できる。
【0034】
本発明のオリゴマーとしては、例えば、14~32塩基の長さを有する、オリゴヌクレオチ
ド、モルホリノオリゴマー、又はペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid:PNA)オリゴマー
を挙げることができる。好ましくは、本発明のオリゴマーは、16~30塩基、17~30塩基、
18~30塩基、19~30塩基、20~30塩基、20~29塩基、20~28塩基、20~27塩基、20~26塩
基又は21~26塩基の長さにあり、モルホリノオリゴマーであることが好ましい。
【0035】
前記オリゴヌクレオチド(以下、「本発明のオリゴヌクレオチド」という)は、ヌクレ
オチドを構成単位とする本発明のオリゴマーであり、かかるヌクレオチドは、リボヌクレ
オチド、デオキシリボヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドのいずれであってもよい。
【0036】
修飾ヌクレオチドとは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを構成する核
酸塩基、糖部分、及びリン酸結合部分の全部又は一部が修飾されているものをいう。
【0037】
核酸塩基としては、例えば、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、シトシン、チミン
、ウラシル又はそれらの修飾塩基を挙げることができる。かかる修飾塩基としては、例え
ば、シュードウラシル、3-メチルウラシル,ジヒドロウラシル、5-アルキルシトシン(例
えば、5-メチルシトシン)、5-アルキルウラシル(例えば、5-エチルウラシル)、5-ハロ
ウラシル(5-ブロモウラシル)、6-アザピリミジン、6-アルキルピリミジン(6-メチルウ
ラシル)、2-チオウラシル、4-チオウラシル、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒド
ロキシメチル) ウラシル、5'-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボ
キシメチルアミノメチルウラシル、1-メチルアデニン、1-メチルヒポキサンチン、2,2-ジ
メチルグアニン、3-メチルシトシン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、N6-メチル
アデニン、7-メチルグアニン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミ
ノメチルウラシル、5-メチルカルボニルメチルウラシル、5-メチルオキシウラシル、5-メ
チル-2-チオウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢
酸、2-チオシトシン、プリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノプリン、イソグアニン、イ
ンドール、イミダゾール、キサンチン等が挙げられるが、これらに限定されるものではな
い。
【0038】
糖部分の修飾としては、例えば、リボースの2’位の修飾及び糖のその他の部分の修飾
を挙げることができる。リボースの2’位の修飾としては、例えば、リボースの2’位の-O
H基をOR、R、R’OR、SH、SR、NH2、NHR、NR2、N3、CN、F、Cl、Br、Iに置換する修飾を挙
げることができる。ここで、Rはアルキル又はアリールを表す。R’はアルキレンを表す。
糖のその他の部分の修飾としては、例えば、リボース又はデオキシリボースの4’位のO
をSに置換したもの、糖の 2' 位と 4' 位を架橋したもの、例えば、LNA(Locked Nucleic
Acid)又はENA(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)などが挙げられるが、これ
らに限定されるものではない。
【0039】
リン酸結合部分の修飾としては、例えば、ホスホジエステル結合をホスホロチオエート
結合、ホスホロジチオエート結合、アルキルホスホネート結合、ホスホロアミデート結合
、ボラノフォスフェート結合(Enya et al: Bioorganic & Medicinal Chemistry ,2008,
18, 9154-9160 )に置換する修飾を挙げることができる(例えば、特許再公表公報第2006
/129594号及び第2006/038608号を参照)。
【0040】
アルキルとしては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~6のアルキルが好ましい。具体的に
は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-
ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘ
キシル、イソヘキシルが挙げられる。当該アルキルは置換されていてもよく、かかる置換
基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、ニトロを挙げることができ、これ
らが1~3個置換されていてもよい。
【0041】
シクロアルキルとしては、炭素数5~12のシクロアルキルが好ましい。具体的には、例
えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシ
ル、シクロドデシルが挙げられる。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
アルコキシとしては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~6のアルコキシ、例えば、メトキ
シ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキ
シ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、イソ
ヘキシルオキシ等を挙げることができる。とりわけ、炭素数1~3のアルコキシが好ましい
【0042】
アリールとしては、炭素数6~10のアリールが好ましい。具体的には、例えば、フェニ
ル、α-ナフチル、β-ナフチルを挙げることができる。とりわけフェニルが好ましい。当
該アリールは置換されていてもよく、かかる置換基としては、例えば、アルキル、ハロゲ
ン、アルコキシ、シアノ、ニトロを挙げることができ、これらが1~3個置換されていても
よい。
アルキレンとしては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~6のアルキレンが好ましい。具体
的には、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン
、ヘキサメチレン、2-(エチル)トリメチレン、1-(メチル)テトラメチレンを挙げるこ
とができる。
【0043】
アシルとしては、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルカノイル、又はアロイルを挙げることが
できる。アルカノイルとしては、例えば、ホルミル、アセチル、2-メチルアセチル、2,
2-ジメチルアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、2,2-
ジメチルプロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。アロイルとしては、例えば、ベン
ゾイル、トルオイル、ナフトイルを挙げることができる。かかるアロイルは置換可能な位
置において置換されていてもよく、アルキルで置換されていてもよい。
【0044】
本発明のオリゴヌクレオチドは、好ましくは、リボースの2’位の-OH基がメトキシで置
換され、リン酸結合部分がホスホロチオエート結合である、下記一般式で表される基を構
成単位とする本発明のオリゴマーである。
【化3】

(式中、Baseは、核酸塩基を表す。)
【0045】
本発明のオリゴヌクレオチドは、各種自動合成装置(例えば、AKTA oligopilot plus 1
0 / 100(GE Healthcare))を用いて容易に合成することが可能であり、あるいは、第三
者機関(例えば、Promega社又はTakara社)等に委託して作製することもできる。
【0046】
前記モルホリノオリゴマーは、下記一般式で表される基を構成単位とする本発明のオリ
ゴマーである。
【化4】

(式中、Baseは、前記と同義であり;
Wは、以下のいずれかの式で表わされる基を表す。
【化5】

(式中、Xは、-CH2R1、-O-CH2R1、-S-CH2R1、-NR2R3又はFを表し;
R1は、H、アルキルを表し;
R2及びR3は、同一又は異なって、H、アルキル、シクロアルキル、又は、アリールを表
し;
Y1は、0、S、CH2又はNR1を表し;
Y2は、0、S又はNR1を表し;
Zは、0又はSを表す。))
【0047】
モルホリノオリゴマーは、好ましくは、以下の式で表わされる基を構成単位とするオリ
ゴマー(ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(以下、「PMO」という))である

【化6】

(式中、Base、R2、R3は、前記と同義である。)
【0048】
モルホリノオリゴマーは、例えば、国際公開公報第1991/009033号、又は国際公開公報
第2009/064471号に従って製造することができる。特に、PMOは、国際公開公報第2009/064
471号に記載の方法に従って製造するか、又は国際公開公報第2013/100190号に記載の方法
に従って製造することができる。
【0049】
[PMOの製法]
PMOの1つの態様として、例えば、次の一般式(I)で表される化合物(以下、PMO(I)とい
う。)を挙げることができる。
【化7】

[式中、各Base、R2、R3は、前記と同義であり;
nは、1~99の範囲内にある任意の整数であり、好ましくは、13~31の範囲内にある任意
の整数である。]
【0050】
PMO(I)は、公知の方法に従い製造することができるが、例えば、下記工程の操作を実施
することにより製造することができる。
下記工程に使用されている化合物及び試薬は、PMOの製造に一般的に使用されているも
のであれば特に限定されない。
【0051】
また、下記のすべての工程は、液相法又は固相法(マニュアル又は市販の固相自動合成機
を用いる)で実施することができる。固相法でPMOを製造する場合、操作手順の簡便化及
び合成の正確性の点から自動合成機を用いる方法が望ましい。
【0052】
(1)工程A:
次の一般式(II)で表される化合物(以下、化合物(II)という。)に酸を作用させる
ことによって、次の一般式(III)で表される化合物(以下、化合物(III)という。)を
製造する工程。
【化8】

[式中、n、R2、R3は、前記と同義であり;
各BPは,独立して、保護されていてもよい核酸塩基を表し;
Tは、トリチル基、モノメトキシトリチル基、又はジメトキシトリチル基を表し;
Lは、水素、アシル、又は次の一般式(IV)で表される基(以下、基(IV)という。)
を表す。]
【化9】

BPに係る「核酸塩基」としては、Baseと同じ「核酸塩基」を挙げることができる。但し
、BPに係る核酸塩基のアミノ基又は水酸基は保護されていてもよい。
かかるアミノ基の保護基としては、核酸の保護基として使用されるものであれば特に制
限されず、具体的には、例えば、ベンゾイル、4-メトキシベンゾイル、アセチル、プロピ
オニル、ブチリル、イソブチリル、フェニルアセチル、フェノキシアセチル、4-tert-ブ
チルフェノキシアセチル、4-イソプロピルフェノキシアセチル、(ジメチルアミノ)メチレ
ンを挙げることができる。水酸基の保護基としては、例えば、2-シアノエチル、4-ニト
ロフェネチル、フェニルスルホニルエチル、メチルスルホニルエチル、トリメチルシリル
エチル、置換可能な任意の位置で1~5個の電子吸引性基で置換されていてもよいフェニル
、ジフェニルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、メチルフェ
ニルカルバモイル、1-ピロリジニルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、4-(tert-
ブチルカルボキシ)ベンジル、4-[(ジメチルアミノ)カルボキシ]ベンジル、4-(フェニル
カルボキシ)ベンジルを挙げることができる(例えば、国際公開公報第2009/064471号公報
参照)。
【0053】
「固相担体」としては、核酸の固相反応に使用しうる担体であれば特に制限されないが、
例えば、(i)モルホリノ核酸誘導体の合成に使用しうる試薬(例えば、ジクロロメタン
、アセトニトリル、テトラゾール、N-メチルイミダゾール、ピリジン、無水酢酸、ルチジ
ン、トリフルオロ酢酸)にほとんど溶解せず、(ii)モルホリノ核酸誘導体の合成に使用
しうる試薬に対して化学的に安定であり、(iii)化学修飾ができ、(iv)望ましいモル
ホリノ核酸誘導体の装填ができ、(v)処理中にかかる高圧に耐える十分な強度をもち、
(vi)一定の粒径範囲と分布であるものが望ましい。具体的には、膨潤性ポリスチレン(
例えば、アミノメチルポリスチレン樹脂 1%ジビニルベンゼン架橋(200~400メッシュ)
(2.4~3.0mmol/g)(東京化成社製)、Aminomethylated Polystyrene Resin・HCl[ジビ
ニルベンゼン1%,100~200メッシュ](ペプチド研究所社製))、非膨潤性ポリスチレン
(例えば、Primer Support(GE Healthcare社製))、PEG鎖結合型ポリスチレン(例えば
、NH2-PEG resin(渡辺化学社製)、TentaGel resin)、定孔ガラス(controlled pore g
lass;CPG)(例えば、CPG社製)、オキサリル化-定孔ガラス(例えば、Alulら,Nucleic
Acids Research,Vol.19,1527(1991)を参照)、TentaGel支持体-アミノポリエチレング
リコール誘導体化支持体(例えば、Wrightら,Tetrahedron Letters,Vol.34,3373(1993)
を参照)、Poros-ポリスチレン/ジビニルベンゼンのコポリマーを挙げることができる。
【0054】
「リンカー」としては、通常核酸やモルホリノ核酸誘導体を連結するために使用される公
知のものを用いることができるが、例えば、3-アミノプロピル、スクシニル、2,2’-ジエ
タノールスルホニル、ロングチェーンアルキルアミノ(LCAA)を挙げることができる。
【0055】
本工程は、化合物(II)に酸を作用させることにより実施することができる。
【0056】
本工程に使用しうる「酸」としては、例えば、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸又はトリ
クロロ酢酸を挙げることができる。酸の使用量としては、例えば、化合物(II)1モルに
対して0.1モル当量~1000モル当量の範囲内が適当であり、好ましくは1モル当量~100モ
ル当量の範囲内である。
また、前記酸と一緒に、有機アミンを使用することができる。有機アミンとしては、特
に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミンを挙げることができる。有機ア
ミンの使用量は、例えば、酸1モルに対して、0.01モル当量~10モル当量の範囲内が適当
であり、好ましくは、0.1モル当量~2モル当量の範囲内である。
【0057】
本工程において酸と有機アミンとの塩又は混合物を使用する場合には、例えば、トリフル
オロ酢酸とトリエチルアミンの塩又は混合物を挙げることができ、より具体的には、トリ
フルオロ酢酸2当量に対してトリエチルアミン1当量を混合したものを挙げることができる

本工程に使用しうる酸は、0.1%~30%の範囲内の濃度になるように適当な溶媒で希釈し
て使用することもできる。溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、例
えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、アルコール類(エタノール、イソプロパノール
、トリフルオロエタノールなど)、水又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0058】
上記反応における反応温度は、例えば、10℃~50℃の範囲内が好ましく、より好ましくは
、20℃~40℃の範囲内であり、さらに好ましくは、25℃~35℃の範囲内である。
反応時間は、使用する酸の種類、反応温度によって異なるが、通常0.1分~24時間の範
囲内が適当である。好ましくは、1分~5時間の範囲内である。
【0059】
また、本工程が終了した後、必要に応じて、系中に存在する酸を中和するために塩基を添
加することができる。「塩基」としては、特に限定されないが、例えば、ジイソプロピル
エチルアミンが挙げられる。塩基は、0.1%(v/v)~30%(v/v)の範囲内の濃度になるよ
うに適当な溶媒で希釈して使用することもできる。
本工程に用いる溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、ジクロロメ
タン、アセトニトリル、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、トリフルオロエ
タノールなど)、水又はこれらの混合物を挙げることができる。反応温度は、例えば、10
℃~50℃の範囲内が好ましく、より好ましくは、20℃~40℃の範囲内であり、さらに好ま
しくは、25℃~35℃の範囲内である。
反応時間は、使用する塩基の種類、反応温度によって異なるが、通常0.1分~24時間の
範囲内が適当であり、好ましくは、1分~5時間の範囲内である。
【0060】
なお、化合物(II)において、n=1であって、Lが基(IV)である、次の一般式(IIa)で
表される化合物(以下、化合物(IIa)という。)は、以下の方法に従って製造すること
ができる。
【化10】

[式中、BP、T、リンカー、固相担体は、前記と同義である。]
【0061】
工程1:
次の一般式(V)で表される化合物にアシル化剤を作用させることによって、次の一般
式(VI)で表される化合物(以下、化合物(VI)という。)を製造する工程。
【化11】

[式中、BP、T、リンカーは、前記と同義であり;
R4は、水酸基、ハロゲン、又は、アミノを表す。]
【0062】
本工程は、化合物(V)を出発原料として、公知のリンカーの導入反応により実施するこ
とができる。
特に、次の一般式(VIa)で表される化合物は、化合物(V)と無水コハク酸とを用いて
エステル化反応として知られた方法を実施することにより製造することができる。
【化12】

[式中、BP、Tは、前記と同義である。]

【0063】
工程2:
化合物(VI)に縮合剤等を作用させることによって、固相担体と反応させ、化合物(II
a)を製造する工程。
【化13】

[式中、BP、R4、T、リンカー、固相担体は、前記と同義である。]
本工程は、化合物(VI)と固相担体とを用いて縮合反応として知られた方法により製造す
ることができる。
【0064】
化合物(II)において、n=2~99であって、Lが基(IV)である、次の一般式(IIa2)で表される
化合物は、化合物(IIa)を出発原料とし、本明細書に記載のPMOの製法にかかる工程A及び
工程Bを所望の回数繰り返し実施することにより製造することができる。
【化14】

[式中、BP、R2、R3、T、リンカー、固相担体は、前記と同義であり;
n’は、1~98を表す。]

【0065】
また、化合物(II)において、n=1であって、Lが水素である、次の一般式(IIb)で表される
化合物は、例えば、国際公開公報第1991/009033号に記載の方法により製造することがで
きる。
【化15】

[式中、BP、Tは、前記と同義である。]
【0066】
化合物(II)において、n=2~99であって、Lが水素である、次の一般式(IIb2)で表され
る化合物は、化合物(IIb)を出発原料とし、本明細書に記載のPMOの製法にかかる工程A
及び工程Bを所望の回数繰り返し実施することにより製造することができる。
【化16】

[式中、BP、n’、R2、R3、Tは、前記と同義である。]
【0067】
また、化合物(II)において、n=1であって、Lがアシルである、次の一般式(IIc)で表
される化合物は、化合物(IIb)に対してアシル化反応として知られた方法を実施するこ
とにより製造することができる。
【化17】

[式中、BP、Tは、前記と同義であり;
R5は、アシルを表す。]
【0068】
化合物(II)において、n=2~99であって、Lがアシルである、次の一般式(IIc2)で表さ
れる化合物は、化合物(IIc)を出発原料とし、本明細書に記載のPMOの製法にかかる工程
A及び工程Bを所望の回数繰り返し実施することにより製造することができる。
【化18】

[式中、BP、n’、R2、R3、R5、Tは、前記と同義である。]
【0069】
(2)工程B:
化合物(III)に塩基存在下にモルホリノモノマー化合物を作用させることによって、
次の一般式(VII)で表される化合物(以下、化合物(VII)という。)を製造する工程。
【化19】

[式中、各BP、L、n、R2、R3、Tは、前記と同義である。]
【0070】
本工程は、化合物(III)に塩基存在下にモルホリノモノマー化合物を作用させることに
より実施することができる。
【0071】
モルホリノモノマー化合物としては、例えば、次の一般式(VIII)で表される化合物を挙
げることができる。
【化20】

[式中、BP、R2、R3、Tは前記と同義である。]
本工程に使用しうる「塩基」としては、例えば、ジイソプロピルエチルアミン、トリエ
チルアミン、又は、N-エチルモルホリンを挙げることができる。塩基の使用量としては、
例えば、化合物(III)1モルに対して、1モル当量~1000モル当量の範囲内が適当であり
、好ましくは10モル当量~100モル当量の範囲内である。
【0072】
本工程に使用しうるモルホリノモノマー化合物及び塩基は、0.1%~30%の濃度になるよう
に適当な溶媒で希釈して使用することもできる。溶媒としては、反応に関与しなければ特
に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルイミダゾリドン、N-メチルピペリドン、DMF、
ジクロロメタン、アセトニトリル、テロラヒドロフラン、又はこれらの混合物を挙げるこ
とができる。
【0073】
反応温度は、例えば、0℃~100℃の範囲内が好ましく、より好ましくは、10℃~50℃の範
囲内である。
反応時間は、使用する塩基の種類、反応温度によって異なるが、通常1分~48時間の範
囲内が適当であり、好ましくは、30分~24時間の範囲内である。
【0074】
さらに本工程の終了後、必要に応じて、アシル化剤を添加することができる。「アシル化
剤」としては、例えば、無水酢酸、酢酸クロライド、フェノキシ酢酸無水物を挙げること
ができる。アシル化剤は、例えば、0.1%~30%の範囲内の濃度になるように適当な溶媒で
希釈して使用することもできる。溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されない
が、例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、アルコール類(エタノール、イソプロパ
ノール、トリフルオロエタノールなど)、水又はこれらの混合物を挙げることができる。
また、必要であれば、アシル化剤と一緒に、例えば、ピリジン、ルチジン、コリジン、
トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-エチルモルホリン等の塩基を使用す
ることができる。アシル化剤の使用量としては、0.1モル当量~10000モル当量の範囲内が
好ましく、1モル当量~1000モル当量の範囲内がより好ましい。塩基の使用量としては、
例えば、アシル化剤1モルに対して、0.1モル当量~100モル当量の範囲内が適当であり、
好ましくは1モル当量~10モル当量の範囲内である。
本反応の反応温度は、10℃~50℃の範囲内が好ましく、より好ましくは、10℃~50℃の
範囲内が好ましく、より好ましくは、20℃~40℃の範囲内であり、さらに好ましくは、25
℃~35℃の範囲内である。反応時間は、例えば、使用するアシル化剤の種類、反応温度に
よって異なるが、通常0.1分~24時間の範囲内が適当であり、好ましくは、1分から5時間
の範囲内である。
【0075】
(3)工程C:
工程Bにおいて製造される化合物(VII)において、脱保護剤を用いて保護基を脱離し、
一般式(IX)で表される化合物を製造する工程。
【化21】

[式中、Base、BP、L、n、R2、R3、Tは、前記と同義である。]
【0076】
本工程は、化合物(VII)に脱保護剤を作用させることにより実施することができる。
【0077】
「脱保護剤」としては、例えば、濃アンモニア水、メチルアミンを挙げることができる。
本工程に使用しうる「脱保護剤」は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピ
ルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、DMF、N,N-ジメチルイミダゾリド
ン、N-メチルピペリドン又はこれらの混合溶媒で希釈して使用することもできる。なかで
も、エタノールが好ましい。脱保護剤の使用量としては、例えば、化合物(VII)1モルに
対して、例えば、1モル当量~100000モル当量の範囲内が適当であり、好ましくは10モル
当量~1000モル当量の範囲内である。
【0078】
反応温度は、例えば、15℃~75℃の範囲内が適当であり、好ましくは40℃~70℃の範囲内
であり、より好ましくは50℃~60℃の範囲内である。脱保護反応時間は、化合物(VII)
の種類、反応温度等によって異なるが、10分~30時間の範囲内が適当であり、好ましくは
30分~24時間の範囲内であり、より好ましくは5時間~20時間の範囲内である。
【0079】
(4)工程D:
工程Cにおいて製造される化合物(IX)に酸を作用させることによって、PMO(I)を製
造する工程。
【化22】

[式中、Base、n、R2、R3、Tは、前記と同義である。]
【0080】
本工程は、化合物(IX)に酸を加えることによって実施することができる。
【0081】
本工程において使用しうる「酸」としては、例えば、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、酢
酸、リン酸及び塩酸等を挙げることができる。酸の使用量としては、例えば、溶液のpHが
0.1~4.0の範囲内になるように使用するのが適当であり、より好ましくは1.0~3.0の範囲
内になるように使用する。溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、例
えば、アセトニトリル、水、又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0082】
反応温度は、10℃~50℃の範囲内が好ましく、より好ましくは、20℃~40℃の範囲内であ
り、さらに好ましくは、25℃~35℃の範囲内である。脱保護反応時間は、化合物(IX)の
種類、反応温度等によって異なるが、0.1分~5時間の範囲内が適当であり、好ましくは1
分~1時間の範囲内であり、より好ましくは1分~30分の範囲内である。
【0083】
PMO(I)は、本工程で得られた反応混合物から通常の分離精製手段、例えば、抽出、濃縮、
中和、濾過、遠心分離、再結晶、C8からC18の逆相カラムクロマトグラフィー、陽イオン
交換カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラ
ムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、透析、限界ろ過などの手段を単独
若しくは組み合わせて用いることにより得ることができ、所望のPMO(I)を単離精製するこ
とができる(例えば、国際公開公報WO1991/09033を参照)。
逆相クロマトグラフィーを用いてPMO(I)を精製する場合には、溶出溶媒として、例えば
20mMのトリエチルアミン/酢酸緩衝液とアセトニトリルの混合溶液を使用することができ
る。
また、イオン交換クロマトグラフィーを用いてPMO(I)を精製する場合には、例えば、1M
の食塩水と10mMの水酸化ナトリウム水溶液の混合溶液を使用することができる。
【0084】
前記ペプチド核酸オリゴマーは、下記一般式で表される基を構成単位とする本発明のオ
リゴマーである。
【化23】

(式中、Baseは、前記と同義である。)
ペプチド核酸は、例えば、以下の文献に従って製造することができる。
1)P. E. Nielsen, M. Egholm, R. H. Berg, O. Buchardt,Science, 254, 1497 (1991)
2)M. Egholm, O. Buchardt, P. E. Nielsen, R. H. Berg,Jacs., 114, 1895 (1992)
3)K. L. Dueholm, M. Egholm, C. Behrens, L. Christensen, H. F. Hansen, T. Vulpiu
s, K. H. Petersen, R. H. Berg, P. E. Nielsen, O. Buchardt,J. Org. Chem., 59, 57
67 (1994)
4)L. Christensen, R. Fitzpatrick, B. Gildea, K. H. Petersen, H. F. Hansen, T. K
och, M. Egholm,O. Buchardt, P. E. Nielsen, J. Coull, R. H. Berg, J. Pept. Sci.,
1, 175 (1995)
5)T. Koch, H. F. Hansen, P. Andersen, T. Larsen, H. G. Batz, K. Otteson, H. Oru
m, J. Pept. Res., 49, 80 (1997)
【0085】
また、本発明のオリゴマーは、5’末端が、下記化学式(1)~(3)のいずれかの基であ
ってもよい。好ましくは(3)-OHである。
【化24】

以下、上記(1)、(2)及び(3)で示される基を、それぞれ「基(1)」、「基(2)」及び「基(
3)」と呼ぶ。
【0086】
2.医薬組成物
本発明のオリゴマーは、ジストロフィン遺伝子のエクソン45のスキッピングを可能にす
る。従って、本発明のオリゴマーを含む医薬組成物をジストロフィン遺伝子にエクソン45
スキップの対象となる変異(エクソン45スキッピングでin-frame化する変異)を有するDM
D患者に投与することにより、筋ジストロフィーの症状を緩和することができると予測さ
れる。また、短い鎖長からなる本発明のオリゴマーは製造工程が簡便であり、さらに製造
コストが抑えられるというメリットがある。
そこで、別の実施態様として、本発明のオリゴマー、その医薬的に許容可能な塩又は水
和物を有効成分とする、筋ジストロフィー治療用医薬組成物(以下、「本発明の組成物」
という)を提供する。
【0087】
本発明の組成物に含まれる本発明のオリゴマーの医薬的に許容可能な塩の例としては、
ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネ
シウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル
塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩;t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン
塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジ
アミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン
塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N, N' -ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカ
イン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペ
ラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のよ
うな有機アミン塩;弗化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩のようなハロゲ
ン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;メタンスルホン
酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスル
ホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸
塩;酢酸塩、りんご酸塩、フマール酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸
塩、マレイン酸塩などの有機酸塩;グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩
、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩などが挙げられる。これらの塩
は、公知の方法で製造することができる。あるいは、本発明の組成物に含まれる本発明の
オリゴマーは、その水和物の形態にあってもよい。
【0088】
本発明の組成物の投与形態は、医薬的に許容可能な投与形態であれば特に制限されず、
治療方法に応じて選択することができるが、筋組織への送達容易性の観点から、静脈内投
与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、組織内投与、経皮投与等が好ましい
。また、本発明の組成物が取り得る剤型としては、特に制限されないが、例えば、各種の
注射剤、経口剤、点滴剤、吸入剤、軟膏剤、ローション剤等を挙げることができる。
【0089】
本発明のオリゴマーを筋ジストロフィー患者に投与する場合、本発明の組成物は、該オ
リゴマーの筋組織への送達を促進する担体を含むことが好ましい。このような担体は、医
薬的に許容可能なものであれば特に制限されず、その例として、カチオン性リポソーム、
カチオン性ポリマー等のカチオン性担体、又はウイルスエンベロープを利用した担体を挙
げることができる。カチオン性リポソームとしては、例えば、2-O-(2-ジエチルアミノエ
チル)カルバモイル-1,3-O-ジオレオイルグリセロールとリン脂質とを必須構成成分とし
て形成されるリポソーム(以下、「リポソームA」という)、オリゴフェクトアミン(登
録商標)(Invitrogen社製)、リポフェクチン(登録商標)(Invitrogen社製)、リポフ
ェクトアミン(登録商標)(Invitrogen社製)、Lipofectamine 2000(登録商標)(Invi
trogen社製)、DMRIE-C(登録商標)(Invitrogen社製)、GeneSilencer(登録商標)(G
ene Therapy Systems社製)、TransMessenger(登録商標)(QIAGEN社製)、TransIT TKO
(登録商標)(Mirus社製)、Nucleofector II(Lonza)を挙げることができる。それら
の中で、リポソームAが好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、JetSI(登録商
標)(Qbiogene社製)、Jet-PEI(登録商標)(ポリエチレンイミン、Qbiogene社製)を
挙げることができる。ウイルスエンベロープを利用した担体としては、例えば、GenomeOn
e(登録商標)(HVJ-Eリポソーム、石原産業社製)を挙げることができる。あるいは、特
許2924179号に記載の医薬デバイス、特許再公表公報第2006/129594号及び特許再公表公報
第2008/096690号に記載のカチオン性担体を用いることもできる。
【0090】
本発明の組成物に含まれる本発明のオリゴマーの濃度は、担体の種類等によって異なる
が、0.1 nM~100 μMの範囲内が適当であり、1 nM~10 μMの範囲内が好ましく、10 nM~
1 μMの範囲内がより好ましい。また、本発明の組成物に含まれる本発明のオリゴマーと
担体との重量比(担体/本発明のオリゴマー)は、該オリゴマーの性質及び該担体の種類
等によって異なるが、0.1~100の範囲内が適当であり、1~50の範囲内が好ましく、10~2
0の範囲内がより好ましい。
【0091】
本発明の組成物には、本発明のオリゴマーと上述した担体以外に、任意に医薬的に許容
可能な添加剤を配合することができる。かかる添加剤として、例えば、乳化補助剤(例え
ば、炭素数6~22の脂肪酸やその医薬的に許容可能な塩、アルブミン、デキストラン)、
安定化剤(例えば、コレステロール、ホスファチジン酸)、等張化剤(例えば、塩化ナト
リウム、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース)、pH調整剤
(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノ
ールアミン)を挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。
本発明の組成物中の当該添加剤の含有量は、90重量%以下が適当であり、70重量%以下が
好ましく、50重量%以下がより好ましい。
【0092】
本発明の組成物は、担体の分散液に本発明のオリゴマーを加え、適当に攪拌することに
より調製することができる。また、添加剤は、本発明のオリゴマーの添加前でも添加後で
も適当な工程で添加することができる。本発明のオリゴマーを添加させる際に用い得る水
性溶媒としては、医薬的に許容可能なものであれば特に制限されず、例えば、注射用水、
注射用蒸留水、生理食塩水等の電解質液、ブドウ糖液、マルトース液等の糖液を挙げるこ
とができる。また、かかる場合のpH及び温度等の条件は、当業者が適宜選択することがで
きる。
【0093】
本発明の組成物は、例えば、液剤やその凍結乾燥製剤とすることができる。当該凍結乾
燥製剤は、常法により、液剤の形態を有している本発明の組成物を凍結乾燥処理すること
により調製することができる。例えば、液剤の形態を有している本発明の組成物を適当な
滅菌を行った後、所定量をバイアル瓶に分注し、約-40~-20℃の条件で予備凍結を2時
間程度行い、約0~10℃で減圧下に一次乾燥を行い、次いで、約15~25℃で減圧下に二次
乾燥して凍結乾燥することができる。そして、一般的にはバイアル内部を窒素ガスで置換
し、打栓して本発明の組成物の凍結乾燥製剤を得ることができる。
【0094】
本発明の組成物の凍結乾燥製剤は、一般には任意の適当な溶液(再溶解液)の添加によ
って再溶解し使用することができる。このような再溶解液としては、注射用水、生理食塩
水、その他一般輸液を挙げることができる。この再溶解液の液量は、用途等によって異な
り特に制限されないが、凍結乾燥前の液量の0.5~2倍量、又は500 mL以下が適当である。
【0095】
本発明の組成物を投与する際の用量としては、含有される本発明のオリゴマーの種類、
剤形、年齢や体重等の患者の状態、投与経路、疾患の性質と程度を考慮した上で調製する
ことが望ましいが、成人に対して本発明のオリゴマーの量として、1日当たり0.1mg~10g/
ヒトの範囲内が、好ましくは1 mg~1 g/ヒトの範囲内が一般的である。この数値は標的と
する疾患の種類、投与形態、標的分子によっても異なる場合がある。従って、場合によっ
てはこれ以下でも十分であるし、また逆にこれ以上の用量を必要とするときもある。また
1日1回から数回の投与又は1日から数日間の間隔で投与することができる。
【0096】
本発明の組成物の別の態様として、本発明のオリゴヌクレオチドを発現し得るベクター
と上述した担体とを含む医薬組成物を挙げることができる。かかる発現ベクターは、複数
の本発明のオリゴヌクレオチドを発現し得るものであってもよい。当該組成物には、本発
明のオリゴマーを含有する本発明の組成物と同様に、医薬的に許容可能な添加剤を添加す
ることができる。当該組成物中に含まれる発現ベクターの濃度は、担体の種類等によって
異なるが、0.1 nM~100 μMの範囲内が適当であり、1 nM~10 μMの範囲内が好ましく、1
0 nM~1 μMの範囲内がより好ましい。当該組成物中に含まれる発現ベクターと担体との
重量比(担体/発現ベクター)は、発現ベクターの性質、担体の種類等によって異なるが
、0.1~100の範囲内が適当であり、1~50の範囲内が好ましく、10~20の範囲内がより好
ましい。また、当該組成物中に含まれる担体の含有量は、本発明のオリゴマーを含有する
本発明の組成物の場合と同様であり、その調製方法等に関しても、本発明の組成物の場合
と同様である。
【0097】
以下に、実施例及び試験例を掲げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例
に示される範囲に限定されるものではない。
【実施例0098】
[参考例1]
アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(4-ベンズアミド-2-オ
キソピリミジン-1-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソ
ブタン酸
【0099】
工程1:4-{[(2S,6R)-6-(4-ベンズアミド-2-オキソピリミジン-1(2H)-イ
ル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸の製造
アルゴン雰囲気下、N-{1-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモ
ルホリン-2-イル]-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル}ベンズアミド3
.44gと4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP)1.1gをジクロロメタン50mLに懸濁し、無水
コハク酸0.90gを加え、室温で3時間撹拌した。反応液にメタノール10mLを加え、減圧濃縮
した。残渣に酢酸エチルと0.5Mのリン酸二水素カリウム水溶液を用いて抽出操作を行った
。得られた有機層を0.5Mのリン酸二水素カリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄した
。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、4.0gの目的物を得た。
【0100】
工程2:アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(4-ベンズアミド
-2-オキソピリミジン-1-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4
-オキソブタン酸の製造
4-{[(2S,6R)-6-(4-ベンズアミド-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)
-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸4.0gをピリジン(
脱水)200mLに溶解し、4-DMAP0.73g、1-エチル-3‐(3-ジメチルアミノプロピル)カ
ルボジイミド塩酸塩11.5gを加えた。次いで、アミノポリスチレン樹脂 Primer support
200 amino(GE Healthcare Japan社製、17-5214-97)25.0g、トリエチルアミン8.5mLを
加え、室温で4日間振とうした。反応後、樹脂をろ取した。得られた樹脂をピリジン、メ
タノール、ジクロロメタンの順で洗浄し、減圧乾燥した。得られた樹脂にテトラヒドロフ
ラン(脱水)200mL、無水酢酸15mL、2,6-ルチジン15mLを加え、室温で2時間振とうした
。樹脂をろ取し、ピリジン、メタノール、ジクロロメタンの順で洗浄し、減圧乾燥し、26
.7gの目的物を得た。
【0101】
当該目的物のローディング量は、公知の方法を用いて、樹脂1g当たりのトリチルのモル量
を409nmにおけるUV吸光度を測定することにより決定した。樹脂のローディング量は、129
.2μmol/gであった。

UV測定条件
機器:U-2910(日立製作所)
溶媒:メタンスルホン酸
波長:409 nm
ε値:45000

【0102】
[参考例2]
アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキ
ソピリミジン-1-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブ
タン酸
参考例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、参考例1の工程1で用いたN
-{1-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]-
2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル}ベンズアミドの代わりに、本工程では
、1-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]-5
-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンを使用した。
当該目的物のローディング量は、公知の方法を用いて、樹脂1g当たりのトリチルのモル量
を409nmにおけるUV吸光度を測定することにより決定した。樹脂のローディング量は、164
.0μmol/gであった。
【0103】
[参考例3]
アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズアミドプリン
-9-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸
参考例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、参考例1の工程1で用いたN
-{1-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]-
2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル}ベンズアミドの代わりに、本工程では
、N-{9-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルフォリン-2-イル]プリン-6-イ
ル}ベンズアミドを使用した。
当該目的物のローディング量は、公知の方法を用いて、樹脂1g当たりのトリチルのモル量
を409nmにおけるUV吸光度を測定することにより決定した。樹脂のローディング量は、185
.7μmol/gであった。
【0104】
[参考例4]
アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{{(2S,6R)-6-{6-(2-シアノエトキシ
)-2-[(2-フェノキシアセチル)アミノ]プリン-9-イル}-4-トリチルモルホリン
-2-イル}メトキシ}-4-オキソブタン酸
参考例1と同様の方法に従って、標記化合物を製造した。但し、参考例1の工程1で用いたN
-{1-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]-
2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル}ベンズアミドの代わりに、本工程では
、N-{6-(2-シアノエトキシ)-9-[(2R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)-4-ト
リチルモルホリン-2-イル]プリン-2-イル}-2-フェノキシアセトアミドを使用した

当該目的物のローディング量は、公知の方法を用いて、樹脂1g当たりのトリチルのモル量
を409nmにおけるUV吸光度を測定することにより決定した。樹脂のローディング量は、164
.8μmol/gであった。
【0105】
以下の実施例1の記載に従い、表1のPMO No.1~81の塩基配列を有するPMO(R2、R3はメチ
ルで5’末端は基(3)である)を合成した。合成したPMOを注射用水(大塚製薬工場社
製)で溶解した。
【0106】
【表1-1】
【0107】
【表1-2】
【0108】
【表1-3】
【0109】
[実施例1]
5’末端塩基に対応する、アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6
-(4-ベンズアミド-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-4-トリチルモルホリン
-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例1)、もしくは、アミノポリスチレ
ン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(5-メチル-2,4-ジオキソピリミジン-1-
イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例2)
、もしくは、アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{[(2S,6R)-6-(6-ベンズ
アミドプリン-9-イル)-4-トリチルモルホリン-2-イル]メトキシ}-4-オキソブ
タン酸(参考例3)、もしくは、アミノポリスチレン樹脂に担持された4-{{(2S,6R)
-6-{6-(2-シアノエトキシ)-2-[(2-フェノキシアセチル)アミノ]プリン-9
-イル}-4-トリチルモルホリン-2-イル}メトキシ}-4-オキソブタン酸(参考例4
)0.2gをフィルター付きカラムに充填し、核酸合成機(AKTA Oligopilot 10 plus)を使
用して、下記合成サイクルを開始した。表1に記載の各化合物の塩基配列になるよう、各
カップリングサイクルにおいて所望のモルホリノモノマー化合物を添加した(下記表2を参
照)。
【0110】
【表2】

【0111】
なお、デブロック溶液としては、3%(w/v)トリフルオロ酢酸を含有するジクロロメタン
溶液を用いた。中和・洗浄溶液としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを10%(v/
v)になるように、かつテトラヒドロフランを5%(v/v)になるように、35%(v/v)のア
セトニトリル含有するジクロロメタン溶液で溶解したものを用いた。カップリング溶液A
としては、モルホリノモノマー化合物を0.10Mになるように、テトラヒドロフランで溶解
したものを用いた。カップリング溶液Bとしては、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを2
0%(v/v)になるように、かつテトラヒドロフランを10%(v/v)になるように、アセト
ニトリルで溶解したものを用いた。キャッピング溶液としては、アセトニトリルに対して
20%(v/v)の無水酢酸と30%(v/v)の2,6-ルチジンを溶解したものを使用した。
【0112】
上記で合成したPMOが担持されたアミノポリスチレン樹脂を反応容器から回収し、2時間以
上室温で減圧乾燥した。乾燥したアミノポリスチレン樹脂に担持されたPMOを反応容器に
入れ、28%アンモニア水-エタノール(1/4)5mLを加え、55℃で15時間撹拌した。アミノ
ポリスチレン樹脂をろ別し、水-エタノール(1/4)1mLで洗浄した。得られたろ液を減圧
濃縮した。得られた残渣を20mMの酢酸-トリエチルアミン緩衝液(TEAA緩衝液)とアセト
ニトリルの混合溶媒(4/1)10mLに溶解し、メンブレンフィルターでろ過した。得られた
ろ液を逆相HPLCにて精製した。使用した条件は、以下の表3に示す通りである。
【0113】
【表3】

【0114】
各フラクションを分析して、目的物を回収し、減圧濃縮した。濃縮残渣に2Mのリン酸水溶
液0.5mLを加え、15分間攪拌した。さらに、2Mの水酸化ナトリウム水溶液2mLを加えてアル
カリ性とし、メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過した。
得られた目的物を含有する水溶液を陰イオン交換樹脂カラムで精製した。使用した条件
は下記表4に示す通りである。
【0115】
【表4】

【0116】
各フラクションを分析(HPLC)し、目的物を水溶液として得た。得られた水溶液に0.1Mの
リン酸緩衝液(pH 6.0)を添加し中和した。次いで、下記表5に示す条件で逆相HPLCにて
脱塩した。
【0117】
【表5】

【0118】
目的物を回収し、減圧濃縮した。得られた残渣を水に溶かし、凍結乾燥して、白色綿状固
体として目的化合物を得た。ESI-TOF-MSの計算値、測定値を下記表6に示す。
【0119】
【表6-1】
【0120】
【表6-2】
【0121】
【表6-3】
【0122】

[試験例1]
In vitroアッセイ
RD細胞(ヒト横紋筋肉腫細胞株)3.5×105個に対して、表1のアンチセンスオリゴマー1~
10μMをAmaxa Cell Line Nucleofector Kit Lを用いてNucleofector II(Lonza)により
導入した。プログラムはT-030を用いた。
導入後、細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)(インビトロジェン社製)を含むEagle's m
inimal essential medium(EMEM)培地(シグマ社製、以下同じ) 2mL中、37℃、5% CO2
件下で三晩培養した。
細胞をPBS(ニッスイ社製、以下同じ)で1回洗浄した後、1%の2-メルカプトエタノール(
ナカライテスク社製)を含むBuffer RLT(キアゲン社製)を350 μL細胞に添加し、数分
間室温に放置して細胞を溶解させ、QIAshredder ホモジナイザー(キアゲン社製)に回収
した。15,000 rpmで2分間遠心し、ホモジネートを作製した。RNeasy Mini Kit (キアゲ
ン社製)に添付のプロトコールに従ってtotal RNAを抽出した。抽出したtotal RNAの濃度
はNanoDrop ND-1000(エル・エム・エス社製)を用いて測定した。
【0123】
抽出したtotal RNA 400 ngに対し、QIAGEN OneStep RT-PCR Kit(キアゲン社製)を用
いてOne-Step RT-PCRを行った。キットに添付のプロトコールに従って、反応液を調製し
た。サーマルサイクラーはPTC-100(MJ Research社製)又はTaKaRa PCR Thermal Cycler
Dice Touch(タカラバイオ社製)を用いた。用いたRT-PCRのプログラムは、以下の通りで
ある。

50℃、30分間:逆転写反応
95℃、15分間:ポリメラーゼ活性化、逆転写酵素不活性化、cDNA熱変性
[94℃、30秒間;60℃、30秒間;72 ℃、1分間]x 35サイクル:PCR増幅
72℃、10分間:最終伸長反応
【0124】
RT-PCRに使用したフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列は以下の通り
である。

フォワードプライマー:5’-GCTCAGGTCGGATTGACATT-3’ (配列番号1)
リバースプライマー:5’-GGGCAACTCTTCCACCAGTA -3’ (配列番号2)
【0125】
上記PCRの反応産物1 μLをBioanalyzer(アジレント社製)、及びMultiNA(島津製作所
製)を用いて解析した。
エクソン45がスキップしたバンドのポリヌクレオチド量「A」と、エクソン45がスキッ
プしなかったバンドのポリヌクレオチド量「B」を測定した。これら「A」及び「B」の測
定値に基づき、以下の式に従って、スキッピング効率を求めた。

スキッピング効率(%)= A /( A + B )x 100
【0126】
実験結果結果を図1~5、8、10、11及び16~24に示す。本実験により、本発明のオリゴマ
ーはエクソン45を有効にスキッピングさせることが判明した。
【0127】
[試験例2]
In vitroアッセイ
試験例1と同様の方法で実験を行った。但し、RD細胞(ヒト横紋筋肉腫細胞株)3.5×105
個に対して、本発明オリゴマー単独(PMO NO.11又はPMO NO.9)、それぞれを構成してい
る2本の個々のユニットオリゴマー、又はその混合物を各3μMの濃度でAmaxa Cell Line N
ucleofector Kit Lを用いてNucleofector II(Lonza)により導入した。プログラムはT-0
30を用いた。導入した配列の組み合わせは以下の通りである。
【0128】
【表7】
【0129】
実験結果
結果を図6、25に示す。本実験により、エクソン45内の異なる部位を標的とする2本のア
ンチセンスオリゴマーを連結したPMO NO.11(配列番号10)、PMO NO.9(配列番号8)、又
はPMO NO.72(配列番号79)の本発明のオリゴマーは、それを構成する個々のアンチセン
スオリゴマー(PMO NO.27(配列番号36)、PMO NO.28(配列番号37)、PMO NO.25(配列
番号34)、PMO NO.26(配列番号35)、PMO NO.82(配列番号144)、又はPMO NO.83(配列
番号145))又はその混合物(PMO NO.27 及び PMO NO.28、 PMO NO.25 及び PMO NO.26、
又はPMO NO.82及びPMO NO.83)と比較して、高い効率でエクソン45をスキッピングさせる
ことが判明した。
【0130】
[試験例3]
In vitroアッセイ 配列番号89~141、11及び12に記載の2’-O-メトキシ-ホスホロ
チオエート体(2’-OMe-S-RNA)のアンチセンスオリゴマーを用いて実験を行
った。アッセイに用いた各種アンチセンスオリゴマーは日本バイオサービス社より購入し
た。各種アンチセンスオリゴマーの配列を以下に示す。

【0131】
【表8-1】
【0132】
【表8-2】
【0133】
24穴プレートにRD細胞(ヒト横紋筋肉腫細胞株)5×104個を播種し、10%ウシ胎児血清(
FCS)(インビトロジェン社製)を含むEagle’s minimal essential medium(EMEM)培地
(シグマ社製、以下同じ)0.5mL中、37℃、5% CO2条件下で一晩培養した。上記のエク
ソン45スキッピング用の各種アンチセンスオリゴマー(日本バイオサービス社製)(1μM
又は300 nM)とLipofectamine2000(インビトロジェン社製)の複合体を作成し、0.45mL
で培地交換したRD細胞に、1ウェルあたり50μLを添加し、終濃度100nM又は30nMとした。

添加後、一晩培養した。細胞をPBS(ニッスイ社製、以下同じ)で1回洗浄した後、1%の
2-メルカプトエタノール(ナカライテスク社製)を含むBuffer RLT(キアゲン社製)を35
0 μL細胞に添加し、数分間室温に放置して細胞を溶解させ、QIAshredder ホモジナイザ
ー(キアゲン社製)に回収した。15,000 rpmで2分間遠心し、ホモジネートを作製した。R
Neasy Mini Kit (キアゲン社製)に添付のプロトコールに従ってtotal RNAを抽出した。
抽出したtotal RNAの濃度はNanoDrop ND-1000(エル・エム・エス社製)を用いて測定し
た。
【0134】
抽出したtotal RNA 400 ngに対し、QIAGEN OneStep RT-PCR Kit(キアゲン社製)を用
いてOne-Step RT-PCRを行った。キットに添付のプロトコールに従って、反応液を調製し
た。サーマルサイクラーはPTC-100(MJ Research社製)又はTaKaRa PCR Thermal Cycler
Dice Touch(タカラバイオ社製)を用いた。用いたRT-PCRのプログラムは、以下の通りで
ある。

50℃、30分間:逆転写反応
95℃、15分間:ポリメラーゼ活性化、逆転写酵素不活性化、cDNA熱変性
[94℃、30秒間;60℃、30秒間;72 ℃、1分間]x 35サイクル:PCR増幅
72℃、10分間:最終伸長反応
【0135】
RT-PCRに使用したフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列は以下の通り
である。

フォワードプライマー:5’-GCTCAGGTCGGATTGACATT-3’ (配列番号1)
リバースプライマー:5’-GGGCAACTCTTCCACCAGTA -3’ (配列番号2)
【0136】
上記PCRの反応産物1 μLをBioanalyzer(アジレント社製)、及びMultiNA(島津製作所
社製)を用いて解析した。
エクソン45がスキップしたバンドのポリヌクレオチド量「A」と、エクソン45がスキッ
プしなかったバンドのポリヌクレオチド量「B」を測定した。これら「A」及び「B」の測
定値に基づき、以下の式に従って、スキッピング効率を求めた。

スキッピング効率(%)= A /( A + B )x 100
【0137】
実験結果
結果を図7、12~15に示す。本実験により、本発明のアンチセンスオリゴマーは有
効にエクソン45をスキッピングさせることが判明した。
【0138】
[試験例4]
In vitroアッセイ
試験例1と同様の方法で実験を行った。但し、RD細胞(ヒト横紋筋肉腫細胞株)3.5×105
個に対して、本発明オリゴマー単独(PMO NO.2、PMO NO.31又はPMO NO.32)、それぞれを
構成している2本の個々のユニットオリゴマーを各3μM又は10μMの濃度でAmaxa Cell Lin
e Nucleofector Kit Lを用いてNucleofector II(Lonza)により導入した。プログラムは
T-030を用いた。導入した配列の組み合わせは以下の通りである。
【0139】
【表9】
【0140】
実験結果
結果を図9に示す。本実験により、エクソン45内の異なる部位を標的とする2本のアン
チセンス核酸を連結したPMO No.2(配列番号7)、PMO No.31(配列番号11)又は PMO No.
32(配列番号12)の本発明のオリゴマーは、それを構成する個々のアンチセンス核酸(PM
O No.66、PMO No.63、PMO No.64、又はPMO No.65)と比較して、高い効率でエクソン45を
スキッピングさせることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0141】
試験例に示す実験結果から、短いオリゴマーを連結した本発明のオリゴマーは、RD細胞
においてエクソン45のスキッピングを引き起こすことが示された。従って、本発明のオリ
ゴマーは、DMDの治療において非常に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【配列表】
2022033738000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。