(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033755
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】固形製剤、飼料、サプリメント、食品添加物、及び食品
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20220222BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220222BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220222BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220222BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20220222BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220222BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220222BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220222BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220222BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20220222BHJP
A23K 20/22 20160101ALI20220222BHJP
A23K 40/30 20160101ALI20220222BHJP
A61K 47/02 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P39/06
A61P17/18
A61P43/00 171
A61K9/28
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A23L33/10
A23K20/158
A23K20/22
A23K40/30 B
A61K47/02
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182376
(22)【出願日】2021-11-09
(62)【分割の表示】P 2019034384の分割
【原出願日】2017-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2016015123
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519175617
【氏名又は名称】株式会社ボスケシリコン
(71)【出願人】
【識別番号】309005168
【氏名又は名称】株式会社KIT
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】小林 光
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠輝
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シリコン微細粒子又は該シリコン微細粒子の凝集体を含む、水素を発生させる固形製剤を提供する。
【解決手段】本発明の1つの固形製剤は、シリコン微細粒子を主成分とし、水素発生能を有する。この固形製剤によれば、pH値が7以上の水含有液にシリコン微細粒子が接触したときに水素が生成される。したがって、その特徴を活かすと、例えば経口摂取されて胃を通過した後、膵液が分泌されることによってpH値が7以上の領域になった消化管内においては、水素の生成が促進されることになる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン微細粒子を主成分とし、水素発生能を有する、
固形製剤。
【請求項2】
主として結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子を主成分とし、pH値が7以上の水含有液に接触したときに3ml/g以上の水素発生能を有する、
固形製剤。
【請求項3】
前記水含有液のpH値を7.4超とするpH値調整剤をさらに含む、
請求項2に記載の固形製剤。
【請求項4】
前記pH値調整剤が炭酸水素ナトリウムである、
請求項3に記載の固形製剤。
【請求項5】
有機酸をさらに含む、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項6】
前記シリコン微細粒子を内包するカプセル剤、又は前記シリコン微細粒子が塊状となるよう形成された錠剤である、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項7】
胃内において溶解せず、小腸及び/又は大腸において溶解する被覆層を有する、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項8】
結晶粒径が1μm超のシリコン粒子を物理的粉砕法により微細化し、主として結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子とする工程を含み、
前記シリコン微細粒子がpH値7以上の水含有液に接触したときに3ml/g以上の水素発生能を有する、
固形製剤の製造方法。
【請求項9】
前記物理的粉砕法が、ビーズミル粉砕法、遊星ボールミル粉砕法、ジェットミル粉砕法、又はそれらの組み合わせの粉砕法の中から選択される、
請求項8に記載の固形製剤の製造方法。
【請求項10】
主として結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子を主成分とし、pH値が7以上の水含有液に接触したときに3ml/g以上の水素発生能を有する固形製剤を、pHが7未満の第1水含有液に接触させる第1接触工程と、
前記第1接触工程の後に、前記シリコン微細粒子をpH値が7以上の第2水含有液に接触させる第2接触工程と、を含む、
水素発生方法。
【請求項11】
35℃以上45℃以下の第2水含有液に接触させる、
請求項10に記載の水素発生方法。
【請求項12】
pH値が8以上の第2水含有液に接触させる、
請求項10又は請求項11に記載の水素発生方法。
【請求項13】
前記固形製剤が、前記シリコン微細粒子を内包するカプセル剤、及び前記シリコン微細粒子が塊状となるよう形成された錠剤の群から選択される1種である、
請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の水素発生方法。
【請求項14】
前記固形製剤を飼育動物に経口摂取させる工程をさらに有し、
前記飼育動物の消化管内において前記固形製剤を崩壊させる、
請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の水素発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を発生させる固形製剤、その製造方法及び水素を発生させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人を含む動物の体内には、体内において生成され、また肺から取り込まれた酸素に由来する活性酸素が存在する。活性酸素は生命維持に必要である一方、生体を構成する細胞を酸化して損傷させることが知られている。例えば、活性酸素、特に活性酸素の中でも最も酸化力の強いヒロドキシルラジカルは癌、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病その他の生活習慣病、皮膚の老化や皮膚炎などの皮膚障害といった様々な疾病を引き起こすと考えられている。したがって、生体にとって有益な反応に用いられなかった余剰の活性酸素、特にヒロドキシルラジカルはできる限り体内に存在させないようにすることが望ましい。
【0003】
体内で生成したヒドロキシルラジカルは、幾つかの物質と反応することによって消滅する。ヒドロキシルラジカルを消滅させる物質の一例として水素が知られている。水素がヒドロキシルラジカルと反応して生成するのは水であり、生体に有害な物質を生成しない。そこで、体内のヒドロキシルラジカルを消滅させる水素を含有する、水素水の生成装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
しかしながら、水素水中の水素は空気中に拡散しやすい。そのため、ヒドロキシルラジカルを消滅するために必要な量の水素を体内に取り込むためには、水素水の溶存水素濃度を高く保つ必要がある。したがって、水素水を摂取するという方法では、体内のヒドロキシルラジカルと反応させるために十分な量の水素を体内に取り込むことは容易ではない。そこで、水素を体内に取り込みやすくするために、水素と界面活性剤とを含む水素含有組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5514140号公報
【特許文献2】特開2015-113331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、たとえ高濃度の水素水を摂取したとしても、1リットルの水素水中に含まれる水素量は気体換算で最大18mlにすぎず、その上、胃腸内において水素水中の水素の多くがガス化してしまう。そのため、必ずしも十分な量の水素が体内に取り込まれず、呑気症状(いわゆる「げっぷ」)を引き起こす問題がある。一方、界面活性剤によって水素を内包させた水素含有組成物を摂取する場合、十分な量の水素を体内に取り込むためには多くの水素含有組成物の摂取が必要となる。加えて、胃内において水素が放出されてしまうという上述の問題も生じうる。
【0007】
本発明は、上述の技術課題の少なくとも1つを解消し、体内のヒドロキシルラジカルを消滅するために十分な量の水素を体内に取り込みやすくすることに大いに貢献するものである。また、本発明は、特に、胃内から水素ガスが体外に出ていくという上述の問題を解消するとともに、体内への水素取り込みを容易化及び効率化することに貢献し得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ある特徴を有するシリコン微細粒子について分析と検討を重ねた。その結果、大変興味深いことに、そのシリコン微細粒子は、ある数値範囲のpH値を有する水含有液(例えば水や水溶液)に接触させたとしてもほとんど水素を発生させることがないが、別の数値範囲のpH値を有する水含有液に接触させたときには、顕著に水素を発生させ得ることを見出した。また、その水素の発生量はpH値が大きくなるに伴って大きく増加するという知見が得られた。加えて、それらの事実を応用すれば、例えば、胃の中において水素を発生させないようにする一方で、胃を通過した後、膵液が分泌された後の消化管内(代表的には小腸及び/又は大腸)においては水素を発生させることが可能であることを本発明者らは見出した。
【0009】
なお、シリコン微細粒子と水分子との反応による水素発生機構は、下記の(1)式に示されている。しかしながら、本発明者らは、この(1)式に示された反応がpH値の低い(代表的にはpH値が7未満)水含有液との接触によってはほとんど進行せず、pH値が7以上(好適にはpH値が7超であり、さらに好適にはpH値が7.4を超える塩基性(以下、アルカリ性という)の水含有液)に接触したときに進行することを見出した。本発明は、上述の視点に基づいて創出されたものである。
【0010】
(化1)Si+2H2O→SiO2+2H2
【0011】
本発明の1つの固形製剤は、シリコン微細粒子を主成分とし、水素発生能を有する、固形製剤である。より具体的な一例の固形製剤は、主として結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子を主成分とし、pH値が7以上の水含有液に接触したときに3ml/g以上の水素発生能を有する。
【0012】
この固形製剤によれば、水含有液にシリコン微細粒子が接触したときに水素が生成する。特に、pH値が7以上の水含有液にシリコン微細粒子が接触したときに多量の水素が生成する。したがって、その特徴を活かすと、例えば経口摂取されて胃を通過した後、膵液が分泌されることによってpH値が7以上の領域になった消化管内においては、水素の生成が促進されることになる。なお、pH値が7を超える値(より狭義には、アルカリ域)であれば、水素の発生がより一層促進されることになる。その結果、いわば特定のpH値の範囲において選択的に多くの水素を発生させることができる。なお、本願においては、結晶についての径の大きさが「nmオーダー」になる場合は、「結晶粒(又は結晶粒子)」という表現ではなく、「結晶子」という表現を採用する。一方、結晶についての径の大きさが、「μmオーダー」になる場合は、「結晶粒(又は結晶粒子)」という表現を採用する。
【0013】
また、本発明の1つの水素発生方法は、主として結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子を主成分とし、pH値が7以上の水含有液に接触したときに3ml/g以上の水素発生能を有する固形製剤を、pHが7未満の第1水含有液に接触させる第1接触工程と、その第1接触工程の後に、前述のシリコン微細粒子をpH値が7以上の第2水含有液に接触させる第2接触工程と、を含む。
【0014】
この水素発生方法は、水素が全く又はあまり発生しないpH値の範囲であるpH値が7未満という第1水含有液に接触させる工程と、水素の発生が促進されるpH値の範囲であるpH値が7以上の第2水含有液に接触させる工程とを有している。そのため、ある特定の範囲のpH値において、いわば選択的な水素の生成を実現することができる。その特徴を活かすと、例えば経口摂取されて胃を通過した後、膵液が分泌されることによってpH値が7以上の領域になった消化管内において、該固形製剤が第2水含有液に接触することによって水素の生成が促進されることになる。なお、第2水含有液のpH値が7を超える値(より狭義には、アルカリ域)であれば、水素の発生がより一層促進されることになる。
【0015】
なお、上述の水素発生方法の見方を変えると、固形製剤の使用方法の一つとして捉えることができる。
【0016】
また、本発明の1つの固形製剤の製造方法は、結晶粒径が1μm超のシリコン粒子をビーズミル法により微細化し、主として結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子とする工程を含む。また、この製造方法は、前述のシリコン微細粒子がpH値7以上の水含有液に接触したときに3ml/g以上の水素発生能を有する固形製剤の製造方法である。
【0017】
ここで、本願における「シリコン微細粒子」は、平均の結晶子径がナノレベル、具体的には結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコンナノ粒子を主たる粒子とする。より狭義には、本願における「シリコン微細粒子」は、平均の結晶子径がナノレベル、具体的には結晶子径が1nm以上50nm以下のシリコンナノ粒子を主たる粒子とする。また、本願においてシリコン微細粒子には、各シリコンナノ粒子が分散している状態のもののみならず、複数のシリコンナノ粒子が自然に集まってμm近い(概ね0.1μm以上1μm以下)の大きさの凝集体を構成した状態のものを含む。
【0018】
また、本願における「水含有液」とは、水又は水溶液であり、動物(ヒトを含む)消化管内液を含む。なお、「消化管内液」は、胃液、膵液、及び膵液が分泌された後の小腸内液並びに大腸内液を含む。また、本願における「pH調整剤」としては、pH値を7.4超のアルカリ域に調整できる薬剤(以下、「アルカリ剤」)であれば、特に材料は限定されない。例えば、アルカリ剤には、固形製剤を工業用薬剤として使用する場合、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が含まれ得る。また、固形製剤を生体内活性酸素中和用薬剤として使用する場合は、食品添加物として認められているアルカリ剤を使用することができる。最も好適なアルカリ剤は、炭酸水素ナトリウムである。炭酸水素ナトリウムは、食品添加物として広く用いられており、本発明が求めるpH値調整機能と、安全性、汎用性に優れるという複数の長所を兼ね揃えるためである。
【0019】
加えて、本願における「シリコン微細粒子」は、それを使用に供する前の状態として、例えば経口摂取可能な固形製剤とされる態様も含む。ここでシリコン微細粒子は、自然な状態において凝集することによってμmレベル(例えば、1μm)の径の大きさの凝集体を構成し得る。この「凝集体」と区別するために、本願においては、結合剤の添加や圧縮等により、人為的にシリコン微細粒子を集合させることによって、人間の指によってつまめる程度の大きさの塊状の固体の製剤としたものを「塊状製剤」と称する場合がある。「塊状製剤」の代表的な例は、錠剤、又はカプセル剤である。本願の「固形製剤」には、このような塊状製剤が含まれ、さらに、塊状を呈さず粉状を呈する顆粒及び散剤の製剤も含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の1つの固形製剤によれば、シリコン微細粒子がpH値7以上の水含有液に接触したときに該シリコン微細粒子から多くの水素が生成する。その結果、pH値が7以上の領域において、いわば特定のpH値の範囲において選択的に多くの水素を生成することができる。
【0021】
また、本発明の1つの水素発生方法によれば、水素が全く又はあまり発生しないpH値の範囲であるpH値が7未満という第1水含有液に接触させる工程と、水素の発生が促進されるpH値の範囲であるpH値が7以上の第2水含有液に接触させる工程とを有しているため、ある特定の範囲のpH値において、いわば選択的な水素の生成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施形態の固形製剤の写真((a)斜視図、(b)側面図)である。
【
図2】実施例1~3及び参考例1において発生した水素量を示すグラフである。
【
図3】本発明の第1実施形態の固形製剤を60秒間、純水に浸して剤形が崩壊した状態の写真である。
【
図4】実施例4~8の水素発生量を示すグラフである。
【
図5】実施例9,10の水素発生量を示すグラフである。
【
図6】実施例11の水素発生量を示すグラフである。
【
図7】実施例12及び13、並びに参考例2の水素発生量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を、添付する図面を参照して詳細に述べる。
【0024】
[1]固形製剤及びその製造方法
<第1の実施形態>
本実施形態の固形製剤は、シリコン微細粒子を主成分とし、水素発生能を有する、固形製剤である。本実施形態の固形製剤には、シリコン粒子として市販の高純度シリコン粒子粉末(高純度化学社製,粒度分布<φ5μm(ただし、代表的には、結晶粒径が1μm超のシリコン粒子,純度99.9%,i型シリコン>)をビーズミル法によって微細化した、シリコンナノ粒子を主たる粒子とするシリコン微細粒子(以下、便宜的に、「シリコンナノ粒子」ともいう)を用いる。
【0025】
具体的には、ビーズミル装置(アイメックス株式会社製:RMB型バッジ式レディーミル)を用いて、高純度Si粉末15gを99%以上のイソプロピルアルコール(IPA)300mlに分散させ、φ0.5μmのジルコニア製ビーズ(容量300ml)を加えて4時間、回転数2500rpmで粉砕(一段階粉砕)を行って微細化する。
【0026】
ビーズを含むシリコンナノ粒子は、ビーズ分離容器(アイメックス株式会社製)に装着したステンレス鋼材フィルター(メッシュ0.35mm)を用いて吸引濾過することによってビーズをシリコンナノ粒子から分離する。ビーズから分離されたシリコンナノ粒子を含むIPA溶液は、減圧蒸発装置を用いて40℃に加熱することにより、IPAを蒸発させてシリコンナノ粒子を得る。
【0027】
上記方法により得たシリコンナノ粒子は、主として結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子を主成分とするものである。より具体的には、シリコンナノ粒子をX線回折装置(リガク電機製スマートラボ)によって測定した結果、一例として、次の値が得られた。体積分布においては、モード径が6.6nm、メジアン径が14.0nm、平均結晶子径が20.3nmであった。
【0028】
このシリコンナノ粒子を、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて観察したところ、シリコンナノ粒子は一部が凝集して、0.5μm程度以下のやや大きな、不定形の凝集体が形成されていた。また、個別のシリコンナノ粒子を、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察したところ、その多くは、結晶子径が約2nm以上20nm以下であった。
【0029】
上述のシリコンナノ粒子5mgを、炭酸水素ナトリウム粉末(和光純薬株式会社製、純度99.5%)495mgと混合する。この混合物を混錬し、打錠法を用いて、直径8mm、高さ4mmの円柱型の塊状体として、
図1に示す錠剤を得ることができる。なお、
図1(a)は一例としての錠剤の斜視図であり、
図1(b)は一例としての錠剤の側面図である。なお、錠剤は、固形製剤である塊状製剤の一例である。
【0030】
<第2の実施形態>
第1の実施形態において用いたシリコンナノ粒子5mg及び炭酸水素ナトリウム粉末495mgに対して、さらにクエン酸(和光純薬株式会社製、純度99.5%)50mgを加えて混練することによって直径8mm、高さ6mmの円柱型の塊状体を形成することにより、
図1に示す錠剤と同様の錠剤を得ることができる。
【0031】
<第3の実施形態>
クエン酸の量を200mgとした以外は、第2の実施形態と同様の処理を行うことによって錠剤を得る。この錠剤は、
図1に示す錠剤と同様の円柱型の錠剤であって、その直径は8mmであり、その高さは10mmである。
【0032】
<第4の実施形態>
第1の実施形態において説明したシリコンナノ粒子を、5質量%の濃度のフッ化水素酸水溶液中に10分間浸漬させる。その後、100nmメッシュのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターを用いて大気中濾過処理を行うことによって、シリコンナノ粒子をメンブレンフィルター上にトラップする。このメンブレンフィルターを、シリコンナノ粒子をフィルター上にトラップしている状態のまま、フッ素樹脂製ビーカー上に保持する。そしてビーカー上に保持したフィルターにエタノールを滴下することにより、フッ化水素酸成分を除去する。フッ化水素酸成分を除去したメンブレンフルター上のシリコンナノ粒子を、空気中において30分程度乾燥処理する。以上の手順により、フッ化水素酸処理されたシリコンナノ粒子を得る。
【0033】
ここで、本発明者らは、上記方法によりフッ化水素酸処理されたシリコンナノ粒子の表面上のシリコン酸化膜厚をX線光電子分光分析法(XPS法)により測定した。フッ化水素酸処理しないシリコンナノ粒子は、膜厚が1.6nm程度の二酸化シリコン膜を有していた。一方、フッ化水素酸処理をした場合は酸化膜が確度高く除去され、0.1nm以下となった。従って、フッ化水素酸処理をしたシリコンナノ粒子は、酸化膜をほとんど有していなかった。
【0034】
第4の実施形態においては、第1の実施形態のシリコンナノ粒子に代えて、上述の処理によって酸化膜を除去したシリコンナノ粒子を用いる。それ以外の条件は、第2の実施形態と同じにして錠剤を得た。この錠剤は、
図1に示す錠剤と同様の円柱型の錠剤であって、その直径は8mmであり、その高さは4mmである。
【0035】
<第5の実施形態>
第4の実施形態のフッ化水素酸処理されたシリコンナノ粒子に対して、さらに第2の実施形態において説明したクエン酸200mgを加えて混合する。その後、第2の実施形態と同様の処理を行うことによって錠剤を得る。この錠剤は、
図1に示す錠剤と同様の円柱型の錠剤であって、その直径は8mmであり、その高さは10mmである。
【0036】
<第6の実施形態>
第1の実施形態で用いたのと同じ高純度シリコン粒子粉末(代表的には、結晶粒径が1μm超のシリコン粒子)を、第1の実施形態で説明した手順で一段階粉砕する。続いて、一段階粉砕に用いるφ0.5μmのジルコニア製ビーズ(容量300ml)をビーズ分離容器(アイメックス株式会社製)に装着したステンレス鋼材フィルター(メッシュ0.35mm)を用いて吸引濾過することによってビーズをシリコンナノ粒子から分離する。ビーズが分離されシリコンナノ粒子を含む溶液に、0.3μmのジルコニア製ビーズ(容量300ml)を加えて4時間、回転数2500rpmで粉砕(二段階粉砕)して微細化する。
【0037】
ビーズを含むシリコンナノ粒子は、ステンレス鋼材フィルター(メッシュ0.35mm)を装着したビーズ分離機を用いてビーズをシリコンナノ粒子から分離する。ビーズから分離されたシリコンナノ粒子を含むIPA溶液は、第1の実施形態と同様に減圧蒸発装置を用いて40℃に加熱することにより、IPAを蒸発させてシリコンナノ粒子を得る。
【0038】
[2]水素発生方法
<第7の実施形態>
第1~第5の実施形態において説明した錠剤を動物に経口摂取させる。錠剤は、まず第1接触工程として、例えば、胃においてpH値が7未満(より具体的には、pH値が3~4程度)である第1水含有液としての胃液と接触する。また、錠剤は、例えば、胃を通過し、胃の後段の消化管具体的には小腸及び/又は大腸において、第2接触工程としてpH値が7以上の第2水含有液としての消化管内液と接触する。
【0039】
このように、上述の各実施形態のシリコンナノ粒子(より具体的な一例として、錠剤)を、例えば動物(ヒトを含む)に固形製剤を経口摂取させて、第1接触工程でpH値が7未満の第1水含有液に接触させ、その後の第2接触工程でpH値が7以上の第2水含有液と接触させ、第2接触工程で水素を発生させることができる。従って、上述の各実施形態のシリコンナノ粒子を含む固形製剤は、pH値が7以上の水含有液に接触したときに著しい水素発生能を有し得る。
【0040】
本実施形態の錠剤は、第1接触工程としての胃において第1水含有液(胃液)と接触した後、胃の後段の消化管内(より具体的には、小腸及び/又は大腸)において第2水含有液に接触することによって水素の生成が促進されることになる。胃を通過した後の消化管内においては、膵液が分泌されることによって第2水含有液はpH値が7以上(より狭義には、アルカリ域)を示す。このように本実施形態によれば、水素の発生を所望する条件下において、いわば選択的に水素を発生させることが可能となることは特筆に値する。
【0041】
上述の作用効果を利用することにより、例えば、動物(ヒトを含む)の体内のヒドロキシルラジカルを消滅するために十分な量の水素を吸収率の高い腸内において発生させて体内に取り込みやすくすることができる。特にヒトの場合を考慮すると、固形製剤は、pH値が7を大きく下回る胃内においては水素を多く発生しない。一方、固形製剤は胃を通過して崩壊して粉状となって小腸及び/又は大腸に至る。小腸及び/又は大腸においては、膵液が分泌されているため、pH値が7.5~8.9程度のアルカリ域となるため、固形製剤は多くの水素を発生させることになる。これは、ヒトの体内(温度は、一般的には35℃以上37℃以下)において、抗酸化作用を有する水素が、より確度高く吸収され得ることを示す。
【0042】
なお、第1~第5の各実施形態において説明したシリコンナノ粒子を用いた固形製剤としての活用例は、錠剤に限定されない。例えば、錠剤の代わりに、粉状のシリコンナノ粒子(凝集体となった状態のものを含む)をカプセルに内包させたカプセル剤を採用した場合であっても、上述の効果と同様の効果が奏され得る。シリコンナノ粒子は、後述するとおり、塊状でなく表面積の大きな粉状である方が多くの水素を発生させ得るが、錠剤又はカプセル剤にすることより、経口摂取が容易になる。また、錠剤又はカプセル剤にすることにより、胃内ではある程度、塊状を保つ一方、胃を通過した後は崩壊が進み粉状を呈するようになる。このため水素発生反応を抑制したい胃内においては、シリコンナノ粒子が胃液及び/又は胃の内容物に曝される表面積を少なくし、水素発生反応を促進したい小腸及び/又は大腸において水含有液に曝される表面積を多くすることができる。
【0043】
また、固形製剤は顆粒の製剤としてもよい。顆粒の製剤は錠剤やカプセル剤に比して経口摂取された後、早い段階で粉状を呈する。しかし胃液はpH値が低い(7未満)であるため胃に達してすぐに粉状を呈してもほとんど水素を発生させず、胃を通過した後の水存在下で水素を発生させる。
【0044】
固形製剤は散剤であってもよい。散剤は、例えば、健康食品を含む食品の構成成分、例えば食品添加物として固形製剤を用いる場合に扱いやすい。食品添加物として用いる場合、本発明に係る固形製剤として結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子を混合して用いることができる。シリコン微細粒子は、1質量%以上含まれることが好ましい。シリコン微細粒子の含量の上限は本来ないが食味を考慮すると、40質量%以下とすることが好ましい。
【0045】
また、錠剤に適用し得る被覆層の例は、錠剤の最外層を覆うコーティング剤である、公知の胃難溶性腸溶性の材料である。また、カプセル剤に適用し得る被覆層の例は、シリコン微細粒子(主として、シリコン微細粒子の凝集体)を内包する、公知の胃難溶性腸溶性材料から製造されるカプセル自身である。
【0046】
上述のとおり、本実施形態のシリコンナノ粒子の活用例として好適な固形製剤の例は、十分な量を経口摂取しやすい塊状製剤である錠剤、又は粉状のシリコン微細粒子(凝集体となった状態のものを含む)をカプセルに内包させたカプセル剤である。なお、錠剤を採用した場合は、さらに崩壊剤を含んでもよい。また、崩壊剤については、公知の材料を採用することができる。加えて、より好適な崩壊剤の好適な例は、有機酸であり、最も好適な例はクエン酸である。ここで、有機酸は、シリコンナノ粒子を塊状にする結合剤としても機能し得る。
【0047】
加えて、上述の各実施形態における水素発生のための第2水含有液の温度条件は限定されない。但し、第2水含有液の温度が35℃以上であれば、水素発生反応が促進される。なお、第2水含有液はヒトの体内の液体に限定されない。第2水含有液の温度が35℃以上50℃以下であれば、確度高く、水素発生の促進が図られる。ただし、第2水含有液の温度の上限は、本来、限定されるものではない。例えば、本実施形態の固形製剤を工業薬品として使用する場合、50℃を超えてもよい。ただし、温度が高くなるほど設備(容器を含む)に高い耐熱性が求められる、取り扱いに注意が必要といった問題が生じるため、工業薬品として使用する場合も100℃以下で使用することが好ましい。
【0048】
<実施例>
以下、上述の実施形態をより詳細に説明するために、実施例を挙げて説明するが、上述の実施形態はこれらの例によって限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
まず、以下の実施例1~実施例3については、予備的な実施例として、打錠法による打錠工程を行わずに、シリコンナノ粒子自身を評価する。具体的には、実施例1として、一段階粉砕したシリコンナノ粒子を用いて、固形製剤に加工する前の段階で、実験を行った。
【0050】
第1の実施形態において説明したシリコンナノ粒子10mgを散剤の状態で(すなわち炭酸水素ナトリウム粉末を混合することなく、また混錬することもなく)容量100mlのガラス瓶(硼ケイ酸ガラス厚さ1mm程度、ASONE社製ラボランスクリュー管瓶)に入れた。このガラス瓶にpH値7.1の水道水30mlを入れて、液温を25℃の温度条件において密閉し、該ガラス瓶内の液中の水素濃度を測定し、これを用いて水素発生量を求めた。水素濃度の測定には、ポータブル溶存水素計(東亜DKK株式会社製、型式DH-35A)を用いた。
【0051】
(実施例2)
実施例2は、超純水に水酸化カリウムを溶解してpH値を8.0とした以外は実施例1と同じである。
【0052】
(実施例3)
実施例3は、超純水に水酸化カリウムを溶解してpH値を8.6とした以外は実施例1と同じである。
【0053】
(参考例1)
参考例1は、水道水の代わりに超純水を用い、ガラス瓶内液のpH値を7.0とした以外は実施例1と同じである。また、pH値が7未満の水含有液の例である比較例1については、超純水にpH値調整剤として塩酸を添加してpH値を1.5とした以外は実施例1と同条件として評価を行った。
【0054】
図2は、予備的な実施例である実施例1~3、及び参考例1についての水素発生に関する結果である。グラフの横軸はシリコンナノ粒子を水含有液に浸漬させることによって各種のpH値を有する水含有液と接触させている時間(分)を示し、グラフの縦軸は水素発生量を示す。
図2に示すとおり、pH値が7を超えた条件において、多くの水素を発生させることができることが示された。加えて、そのpH値が大きいほど、換言すれば、アルカリ性が強くなるほど、ある一定時間当りの水素の発生量が増加するという、興味深い結果が得られた。具体的には、pH値が8以上の実施例2及び実施例3は、pH値が8未満の実施例1より顕著に多い水素発生量を示した。すなわち、pH値が8以上の水含有液に接触させると短時間で多くの水素を発生させることができて好ましいことが示された。なお、比較例1(図示しない)については、5時間で2ml/gという微量の水素量しか発生しなかった。
【0055】
上述の予備実施例(実施例1~実施例3)の結果を踏まえ、本発明者は、打錠法を用いて加工した固形製剤について、実施例4以降に示す各評価を行った。
【0056】
(実施例4)
まず、実施例4として、第1の実施態様において説明した処理によって製造した錠剤1個を容量30mlのガラス瓶に入れた。このガラス瓶に30mlの水含有液の例である純水(pH値7.0)を入れて該錠剤を浸漬させ、液温を25℃に維持した。この条件下、ガラス瓶を密閉し、ガラス瓶内において生成した水素水の水素濃度を、実施例1において説明した装置を用いて測定し、水素発生量を求めた。
【0057】
なお、錠剤の形状は、純水中において時間の経過とともに次第に崩れていった。具体的には、
図3に示すように、該錠剤が純水と接触してから約60秒後に、炭酸水素ナトリウムが液中に溶解し、シリコンナノ粒子が該液中にほぼ均一に拡散しつつ、容器の底面に一部が沈んで残った。その結果、錠剤はほぼ原形をとどめない粉状(又は微粉状、以下、総称して「粉状」という)を呈した(以下、固形の剤形が崩れて粉状を呈することを「崩壊」という。粉体を内包するカプセル剤のカプセルが溶解することも剤形が崩れることであり、カプセルの溶解によって粉体が露出することも「崩壊」に含める)。この例においては、錠剤の崩壊に伴って放出した炭酸水素ナトリウムが水中に溶解したため、該ガラス瓶中の水含有液のpH値は、8.3に上昇した。
【0058】
(実施例5)
実施例5は、第2の実施態様において説明した処理によって製造した錠剤を用いた例である。該錠剤は、液温を25℃の温度条件において、純水と接触してから約5分後に、ほぼ全体が崩壊して粉状を呈した。錠剤が崩壊する過程において(すなわち錠剤が純水と接触してから90分後まで)、錠剤の崩壊に伴い炭酸水素ナトリウムとクエン酸とが放出されることにより、水含有液のpH値は8.6を示した。
【0059】
(実施例6)
実施例6は、錠剤として第3の実施態様として説明した手順で作製した錠剤を用いた。該錠剤は、液温を25℃の温度条件において、純水と接触してから約5分後、ほぼ全体が崩壊して粉状を呈した。錠剤が崩壊する過程において(すなわち錠剤が純水と接触してから90分後まで)、錠剤の崩壊に伴い炭酸水素ナトリウムとクエン酸とが放出されることにより、水含有液のpH値は8.2を示した。
【0060】
(実施例7)
実施例7は、錠剤として第2の実施態様として説明した手順で作製した錠剤を用いた。また、ガラス瓶を恒温槽中に保持することより水温を37℃に維持した。水含有液としてはpH値7.0の純水を用いた。該錠剤が純水と接触してから約5分後にほぼ全体が崩壊して粉状を呈した。錠剤の崩壊に伴い炭酸水素ナトリウムとクエン酸とが放出されることにより、水含有液のpH値は8.6を示した。
【0061】
(実施例8)
実施例8は、錠剤として第3の実施態様として説明した手順によって作製した錠剤を用いた。また、ガラス瓶を恒温槽中に保持することより水温を37℃に維持した。水含有液としてはpH値7.0の純水を用いた。該錠剤が純水と接触してから約5分後にほぼ全体が崩壊して粉状を呈した。錠剤の崩壊に伴い炭酸水素ナトリウムとクエン酸とが放出されることにより、水含有液のpH値は8.3を示した。
【0062】
図4に、実施例4~8の結果を示す。
図4の横軸は錠剤を水含有液と接触させている時間(分)を示し、グラフの縦軸は水素発生量を示す。
【0063】
実施例4について、
図3に示すように錠剤は、剤形が崩壊して炭酸水素ナトリウムを放出した。また、
図4に示すように、錠剤と水含有液との接触時間の経過に伴って水素発生量が多くなった。
【0064】
また、実施例5と実施例7、実施例6と実施例8とをそれぞれ比較すると、体内温度に近い37℃という温度条件において、水素発生量が多くなった。具体的には、実施例9及び実施例10において、150分(2時間半)の間に、20ml/g以上の水素を発生することができることが確認されたことは特筆に値する。
【0065】
さらに、シリコンナノ粒子を粉状のまま水含有液と接触させた実施例1~3の結果と、シリコンナノ粒子を固形製剤として用いた実施例4~6の結果とを比較すると、シリコンナノ粒子は粉状のまま水含有液と接触させる方が多くの水素を発生させることができることがわかる。しかし、粉状のシリコン微細粒子は経口摂取して消化管内に送り込むことは難しい。そこで、本実施例においては、錠剤やカプセル剤といった固形製剤とする。
図3に示すように、固形製剤はある程度の時間、水含有液と接触することによって崩壊して粉状を呈する。このため、本実施例の固形製剤は、水素発生が活発でないpH値が7未満の水含有液とある程度の時間、接触させて崩壊を促した後、第2接触工程においてある程度粉状になった固形製剤をpH値が7以上、好適には7.4超、より好適には、8以上の水含有液と接触させて水素発生を促進させて用いるのに適する。
【0066】
(実施例9)
実施例9においては、錠剤として第4の実施態様として説明した手順によって作製した錠剤を用いた。水含有液としてはpH値が7.0の純水を用いた。該錠剤が純水と接触してから約5分後にほぼ全体が崩壊して粉状を呈し、水含有液のpH値は8.6になった。
【0067】
(実施例10)
実施例10においては、錠剤として第5の実施態様として説明した手順によって作製した錠剤を用いた。水含有液としてはpH値が7.0の純水を用いた。該錠剤が純水と接触してから約5分後にほぼ全体が崩壊して粉状を呈し、水含有液のpH値は8.2になった。
【0068】
図5に、実施例9及び10の結果を示す。また、対比を容易にするために、上述の実施例4~6の結果も併せて表示する。また、グラフの横軸は錠剤を水含有液と接触させている時間(分)を示し、グラフの縦軸はガラス瓶内の水素濃度を示す。具体的には、実施例9及び実施例10において、150分(2時間半)の間に、20ml/g以上の水素を発生することができることが確認されたことは特筆に値する。
【0069】
(実施例11)
実施例11として、実施例1のシリコンナノ粒子に代えて、表面処理をしたシリコンナノ粒子を用いて、水との反応による水素発生を観測した。具体的には、第4の実施形態において説明したシリコンナノ粒子2.5mgを実施例1で用いたのと同じガラス瓶に入れた。このガラス瓶に炭酸水素ナトリウムの濃度が0.03質量%、pH値8.4の水を110ml入れることによって空隙部分をなくし、液温37℃の温度条件において密閉し、該ガラス瓶内の液中の水素濃度を測定し、これを用いて水素発生量を求めた。水素濃度の測定は、実施例1と同様にした。
【0070】
この実施例においては、
図6に示すように、12時間の反応によってシリコンナノ粒子1gあたり397ml(ミリリットル)の水素が発生した。この水素発生量は、水素濃度が1.6ppmの飽和水素水22l(リットル)に含まれる水素量に相当する。このような極めて多量といえる量の水素を、(例えば、12時間後という)長時間後であっても発生させることは特筆に値する。
【0071】
(実施例12)
実施例12では、固形製剤としてシリコン粒子を2段階破砕して得られたシリコンナノ粒子を用いた。具体的には、第6実施形態で説明した手順に沿って二段階粉砕したシリコンナノ粒子を得た。
【0072】
得られたシリコンナノ粒子をX線回折装置(リガク電機製スマートラボ)によって測定した。その結果、体積分布においては、モード径が5.8nm、メジアン径が9.6m、平均結晶子径が12.2nmであった。
【0073】
上述の手順により二段階粉砕したシリコンナノ粒子2.5mgを実施例11と同様の容量100mlのガラス瓶に入れた。このガラス瓶に炭酸水素ナトリウムの濃度が0.03質量%、pH値8.4の水を110ml入れて液温37℃の温度条件において密閉し、該ガラス瓶内の液中の水素濃度を測定し、これを用いて水素発生量を求めた。水素濃度の測定は、実施例1と同様にした。
【0074】
(実施例13)
また、二段階粉砕のシリコンナノ粒子に代えて、粉砕を一段階としたシリコンナノ粒子、すなわち実施例1で用いたものと同じシリコンナノ粒子を固形製剤として用いて、実施例12と同じ条件で実験を行った。
【0075】
(参考例2)
参考例2としてシリコンナノ粒子に代えて、微細化しないシリコン粒子、すなわち直径が5μmのシリコン粒子を用いて、実施例12と同じ条件で実験を行った。
【0076】
図7に、実施例12及び13、並びに参考例2の結果を示す。実施例1及び実施例12の結果から、表面処理を施さないシリコンナノ粒子であっても水素を発生させることが示された。また、二段階粉砕したシリコンナノ粒子を12時間反応させた場合の水素発生量はシリコンナノ粒子1mg当たり262mlであり、一段階粉砕のシリコンナノ粒子の149mlより多くなった。一方、微細化処理をせず、粒子径がナノレベルでないシリコン粒子については、12時間の反応時間での水素発生量は4.8mlに過ぎなかった。これらの実験から、シリコンナノ粒子の結晶子径が小さくなるほど、水素を多く発生させることが示された。なお、上述のいずれの例であっても、少なくとも12時間、継続して、水素を発生していることは特筆に価する。
【0077】
上述のとおり、シリコン微細粒子を含む固形製剤は、pH値が7以上の水含有液中において、少なくとも一部は粉状を呈し、水素を発生させることができる。該固形製剤は、経口投与により動物の胃及び腸を含む消化管内に入り、pH値が7未満の、いわゆる酸性条件にある胃内を経て崩壊が進む。崩壊が進んだ固形製剤(その崩壊物を含む)は、膵液が分泌され、pH値が7を超えるアルカリ域(特に、7.4超のアルカリ域)となる小腸以降において、水素発生が促進されて多くの水素を発生させる。なお、pH値の上限は特に限定されないが、例えば、入浴剤として好ましいpH値の範囲は11以下であり、飲料水として好ましいpH値の範囲は9以下であるという観点から言えば、pH値が11未満であることが好ましい。
【0078】
従って、上述の各実施形態又は各実施例における固形製剤は、例えば、胃内においての水素ガスの発生を抑制するとともに、胃を通過した後に多くの水素を発生させる。このため、上述の各実施形態又は各実施例によれば、胃内の水素ガス発生を抑制しつつ、体内の活性酸素を低減又は活性酸素を消滅させるために必要な水素を小腸以降で供給する。その結果、上述の各実施形態又は各実施例における固形製剤は、活性酸素の低減又は活性酸素の消滅に大きく貢献し得る。
【0079】
上述の固形製剤の製造方法の1つの態様は、結晶粒径が1μm超のシリコン粒子を物理的粉砕法により微細化し、主として結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子とする工程を含む。該製造方法により得られる固形製剤はシリコン微細粒子を主成分とし、そのシリコン微細粒子がpH値7以上の水含有液に接触したときに3ml/g以上の水素発生能を有する。なお、この態様の製造方法において、前述のシリコン微細粒子が固形製剤の主成分となることは好適な一例である。また、物理的粉砕法の好適な例は、ビーズミル粉砕法、遊星ボールミル粉砕法、ジェットミル粉砕法、又はこれらを2種以上組み合わせた粉砕法によって粉砕する方法である。但し、製造コスト又は、製造管理の容易性の観点から言えば、特に好適な例は、ビーズミル粉砕法のみ、又はビーズミル粉砕法を少なくとも含む粉砕法である。
【0080】
なお、上述の各実施形態及び実施例においては、固形製剤の一例としての錠剤が採用されているが、上述の各実施形態及び実施例の対象は、錠剤に限定されない。他の「塊状製剤」(例えばカプセル剤)、あるいは固形製剤の他の一例である、塊状を呈さず粉状を呈する顆粒及び散剤の固形製剤が採用された場合であっても、上述の各実施形態及び実施例の少なくとも一部の効果が奏され得る。
【0081】
なお、上述の各実施形態においては、ビーズミル装置におけるSi粉末の微細化の処理のためにイソプロピルアルコール(IPA)を使用しているが、該微細化の処理においてSi粉末を分散させるための液体の種類は、イソプロピルアルコール(IPA)に限定されない。例えば、イソプロピルアルコール(IPA)の代わりにエタノール(例えば、99.5wt%)が採用された場合であっても、第1の実施形態に基づく効果と同様の効果が奏され得る。また、上述の第4の実施形態においてフッ化水素酸水溶液が用いられているが、第4の実施形態においてシリコンナノ粒子を浸漬させる液体は、フッ化水素酸水溶液に限定されない。例えば、フッ化水素酸水溶液の代わりに、過酸化水素水(例えば、パイレックス(登録商標)ガラス容器中に収容された、約75℃に加熱された3.5wt%の過酸化水素水100mL)の中に約30分間、シリコンナノ粒子を浸漬させることにより、第4の実施形態に基づく効果と同様の効果が奏され得る。上述のとおり、エタノール及び/又は過酸化水素水を用いることは、より安全かつ安心な(例えば、人体への影響がより少ない)材料を用いることによって水素を発生させることができる観点から言えば、好適な一態様である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の固形製剤は、例えば、飼育用の動物、食料用の動物、医療用として活用される動物、又は、養殖用の魚類などの飼料として使用することもできる。さらに、工業用薬品又は薬剤として使用することもできる。また、人間のサプリメントや食品添加物としても利用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン微細粒子又は該シリコン微細粒子の凝集体を含み、
小腸以降の消化管内液に接触したときに水素を発生する水素発生能を有する、
固形製剤。
【請求項2】
有機酸をさらに含む、
請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
前記固形製剤が、前記シリコン微細粒子を内包するカプセル剤、
前記シリコン微細粒子が塊状となるよう形成された錠剤、
顆粒剤、又は
散剤である、
請求項1又は請求項2に記載の固形製剤。
【請求項4】
前記小腸及び/又は大腸において溶解する被覆層を有する、
請求項1又は請求項2に記載の固形製剤。
【請求項5】
請求項1、請求項2又は請求項4に記載の固形製剤を含む、
飼料。
【請求項6】
動物のための、
請求項5に記載の飼料。
【請求項7】
魚類のための、
請求項5に記載の飼料。
【請求項8】
請求項3に記載の固形製剤を含む、
飼料。
【請求項9】
請求項1、請求項2又は請求項4に記載の固形製剤を含む、
サプリメント。
【請求項10】
請求項1、請求項2又は請求項4に記載の固形製剤を含む、
食品添加物。
【請求項11】
請求項1、請求項2又は請求項4に記載の固形製剤を含む、
食品。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
また、実施例5と実施例7、実施例6と実施例8とをそれぞれ比較すると、体内温度に近い37℃という温度条件において、水素発生量が多くなった。具体的には、実施例7及び実施例8において、150分(2時間半)の間に、20ml/g以上の水素を発生することができることが確認されたことは特筆に値する。