(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033839
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】オルガノシロキサンナノラテックスを含む組成物およびオルガノシロキサンナノラテックスの調製
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20220222BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 3/04 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 1/08 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220222BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220222BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C08F290/06
A61K8/894
A61Q15/00
A61Q19/00
A61Q5/06
A61Q17/04
A61Q19/10
A61Q3/02
A61Q3/04
A61Q1/04
A61Q1/10
A61Q1/08
A61Q13/00 100
A61Q5/02
A61Q5/00
A61K47/24
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192722
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2018547356の分割
【原出願日】2017-03-09
(31)【優先権主張番号】15/066,395
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】プカン,モンジト
(72)【発明者】
【氏名】サクセナ,アヌバウ
(72)【発明者】
【氏名】ハベリ,シュルティサガー,ディー
(72)【発明者】
【氏名】ナイク,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】パワル,アマル
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ディアン
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ユン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水洗浄に対する耐性が改善された疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンラテックスを提供する。
【解決手段】(a)式MaMv
bDcDv
dTeTv
fQgのオルガノシロキサンモノマー
ここで、M=R1R2R3SiO1/2、Mv=R4R5RuSiO1/2、D=R6R7SiO2/2、Dv=R8RuSiO2/2、T=R9SiO3/2、Tv=RuSiO3/2、及びQ=SiO4/2
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立に、H、OH基、100個までのC原子を有し、ヘテロ原子を含んでもよいヒドロカルビル基;Ruはフリーラジカル重合性基;下付き文字a、b、c、d、e、f及びgは独立に0~10,000、b+d+fは少なくとも1、p、q及びrは0~100、並びに
(b)(a)のRuと共重合可能な基を有するモノマー
の共重合体を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式MaMv
bDcDv
dTeTv
fQgのオルガノシロキサンモノマー
ここで
M=R1R2R3SiO1/2、
Mv=R4R5RuSiO1/2、
D=R6R7SiO2/2、
Dv=R8RuSiO2/2、
T=R9SiO3/2、
Tv=RuSiO3/2、および
Q=SiO4/2
ここでR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、100個までの炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよいヒドロカルビル基であり;Ruはフリーラジカル重合性基であり;下付き文字a、b、c、d、e、fおよびgはそれぞれ独立して0~10,000の範囲であってb+d+fは少なくとも1という条件であり、p、qおよびrは、0~100から独立して選択される整数であり、下付き文字hは0または1であり、ならびに
(b)オルガノシロキサンモノマー(a)の基Ruとフリーラジカル共重合可能な基を有するモノマー
の共重合体を含む疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項2】
少なくとも50°の接触角を有するフィルムの形態の、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項3】
少なくとも60°の接触角を有するフィルムの形態の、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項4】
少なくとも70°の接触角を有するフィルムの形態の、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項5】
オルガノシロキサンモノマー(a)において、各R
uは、独立して、式I、II(a)、II(b)およびII(c)から選択されるエチレン性不飽和基であり、
【化1】
ここで各R
10は、独立して、10個までの炭素原子の、少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよい直鎖または分岐アルキル基から選択され;A
1およびA
2はそれぞれ独立してフリーラジカル付加反応を受けることが可能な基であり;そして下付き文字p、qおよびrはそれぞれ独立して0~100の範囲である、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項6】
A
1およびA
2は、それぞれ独立して、式IIIの基であり、
【化2】
ここでR
11、R
12およびR
13は、それぞれ独立して、水素または5個までの炭素原子のヒドロカルビル基であり、Yは、ない、または2~16個の炭素原子の、少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよい2価の脂肪族、脂環式または芳香族の炭化水素基からなる群から選択される連結基である、請求項5に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項7】
モノマー(a)が、ビニル官能性シリコーン、ヒドロキシ官能性シリコーンアクリレート、有機変性シリコーン(メタ)アクリレート、有機変性シリコーンアクリルアミド、有機変性シリコーン(メタ)アクリルアミド、それらの誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項8】
モノマー(b)が、アクリル酸、メタクリル酸、それらのエステル、それらのアミド誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項9】
モノマー(b)が、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ビニルアクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ペルフルオロエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアリレート、セチルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル化シラン、メタクリル化シラン、メタクリロキシルシラン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、アクリレートおよびメタクリレート官能性カルボシラン、六官能性ウレタンアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、オリゴ官能性ウレタンアクリレート、テトラアクリレートモノマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ブタジエン、スチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルラクタム、ハロゲン化ビニル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、ビニルエーテル、アリルアルコール、アリルポリエーテル、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項10】
共重合体の粒子サイズが10~990nmである、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項11】
共重合体の粒子サイズが30~750nmである、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項12】
共重合体の粒子サイズが50~500nmである、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項13】
共重合体の含有量がラテックスの0.1~40重量%である、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項14】
共重合体の含有量がラテックスの0.1~35重量%である、請求項1に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項15】
モノマー(a)と少なくとも2つのモノマー(b)との共重合体である、請求項7に記載の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックス。
【請求項16】
請求項1の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスのフィルム形成量を含むパーソナルケア組成物。
【請求項17】
前記の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスから得られたフィルムが、少なくとも50°の接触角を有する、請求項16に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項18】
前記の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスから得られたフィルムが、少なくとも60°の接触角を有する、請求項16に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項19】
前記の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスから得られたフィルムが、少なくとも70°の接触角を有する、請求項16に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項20】
脱臭剤、制汗剤、発汗抑制/脱臭剤、スティックおよびロールオン製品、スキンローション、モイスチャライザー、化粧液、クレンジング製品、スタイリングジェル、毛髪染料、ヘアカラー製品、ヘア・ストレートナー、ネイルポリッシュ、ネイルポリッシュ・リムーバー、日焼け止め、アンチエイジング製品、口紅、リップクリーム、リップグロス、ファンデーション、フェイスパウダー、アイライナー、アイシャドー、頬紅、メイクアップ、美容液、マスカラ、保湿用調製物、ファンデーション、コンシーラー、ボディーおよびハンド用調製物、スキンケア用調製物、フェイスおよびネック用調製物、フレグランス調製物、ソフトフォーカスアプリケーション、夜間および昼間のスキンケア用調製物、日焼け用調製物、ハンドリキッド、パーソナルケア用不織布アプリケーション、ベビーローション、フェイシャルクレンジング製品、ヘアキューティクルコート、ゲル、フォームバス、ボディーウォッシュ、スクラブ洗浄剤、制御放出パーソナルケア製品、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、スキンケア保湿ミスト、スキンワイプ、毛穴スキンワイプ、毛穴洗浄剤、傷害軽減剤、皮膚剥離剤、皮膚落剥促進剤、スキンタオレットおよび布、除毛用調製物、パーソナルケア用潤滑剤、ネイルカラーリング用調製物、および皮膚に適用される医薬組成物の局所適用のためのドラッグデリバリーシステムからなる群から選択される請求項16に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項21】
前記の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスから得られたフィルムが、少なくとも50°の接触角を有する、請求項20に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項22】
前記の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスから得られたフィルムが、少なくとも60°の接触角を有する、請求項20に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項23】
前記の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスから得られたフィルムが、少なくとも70°の接触角を有する、請求項20に記載のパーソナルケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体の内容が参照によりその全部が本明細書に組み込まれる、2016年3月10日に出願された米国特許出願第15/066,395号の優先権を主張する。
本発明は、オルガノシロキサンラテックス、その調製およびそれを含有するパーソナルケア製品に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類のオルガノシロキサンは、消費者が高く望ましいものと評価するようになった1つ以上の審美的、感覚的および/または機能的特性を付与または増強するために、パーソナルケア組成物、例えば、皮膚およびヘアケア製品および化粧品にしばしば組み込まれる。例えば、オルガノシロキサンは、それらが適用されるときに以下の製品に柔らかく満足のいく感触を与えるように、ローション、皮膚洗浄剤、ボディーウォッシュ、カミソリ保湿ストリップ、シェービングゲル、バーソープ、制汗剤、デオドラント、日焼け止め、リップクリームなどのスキンケア製品の配合物に含まれてもよい。
【0003】
シャンプー、コンディショナー、ヘアカラー、脱毛剤などのヘアケア製品は、消費者に品質および豪華さの印象を与えるために、オルガノシロキサンと配合されることができる。
【0004】
同様に、ファンデーション、コンシーラー、美容液、頬紅、マスカラ、口紅、リップグロスなどの化粧品組成物は、消費者が知覚するような感覚的効果を高めるためにオルガノシロキサンを含有してもよい。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、
(a)一般式MaMv
bDcDv
dTeTv
fQgを有するオルガノシロキサンモノマー
ここで
M=R1R2R3SiO1/2、
Mv=R4R5RuSiO1/2、
D=R6R7SiO2/2、
Dv=R8RuSiO2/2、
T=R9SiO3/2、
Tv=RuSiO3/2、および
Q=SiO4/2
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、100個までの炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよいヒドロカルビル基であり;Ruはフリーラジカル重合性基であり;下付き文字a、b、c、d、e、fおよびgはそれぞれ独立して0~10,000の範囲であってb+d+f>1という条件である;ならびに
(b)オルガノシロキサンモノマー(a)の基Ruとフリーラジカル共重合可能な基を有するモノマー
との共重合体(copolymerizate)を含む疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスが提供される。
【0006】
本明細書のオルガノシロキサンナノラテックスの疎水特性は、このラテックスをパーソナルケア製品、例えば長時間の着用性に相当する能力である水洗浄に対する耐性が非常に求められている機能的特性である上記のものなどを特に望ましい成分にする。拘束されることを望むものではないが、疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスの水洗浄に対する改善された耐性は、少なくともその優れたフィルム形成挙動および/またはそのより大きな疎水性に起因すると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は、示されるように理解されるべきである。
【0008】
単数形の「a」、「an」および「the」には複数形が含まれ、特定の数値への言及は、文脈上他に明確に指示されない限り、少なくともその特定の値を含む。
【0009】
本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意のおよびすべての例、または例示的な用語(例えば、「~など」)の使用は、単に本発明をよりよく示すことを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0010】
本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0011】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「によって特徴づけられる」およびそれらの文法上の均等物は、追加の列挙されていない要素または方法ステップを排除しない包括的なまたはオープンエンドの用語であるが、より限定的な用語「からなる」および「から本質的になる」を含むと理解される。
【0012】
本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その範囲内のすべての下位範囲およびそのような範囲または下位範囲の様々な端点の任意の組み合わせを含むことが理解される。
【0013】
構造的に、組成的におよび/または機能的に関連する化合物、物質または物質の群に属するものとして、明細書および/または請求項に明示的又は黙示的に開示されている任意の化合物、材料または物質は、その群の個々の代表およびそれらの全ての組み合わせが含まれる。
【0014】
「ヒドロカルビル基」という表現は、アルキル、アルケニル、アルキニル、環状アルキル、環状アルケニル、環状アルキニル、アリール、アラルキルおよびアレニルを含み、ヘテロ原子を含んでいてもよい1以上の水素原子が除去された任意の炭化水素を意味する。
【0015】
「アルキル」という用語は、任意の1価の飽和の直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を意味し;「アルケニル」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む任意の1価の直鎖、分岐または環状の炭化水素基を意味し、ここで、基の結合部位は、炭素-炭素二重結合またはその中の他のいずれかでありえ;そして、「アルキニル」という用語は、1つ以上の炭素-炭素三重結合および場合により1つ以上の炭素-炭素二重結合を含有する1価の直鎖、分岐または環状の炭化水素基を意味し、ここで、基の結合部位は炭素-炭素三重結合、炭素-炭素二重結合またはその中の他の部分である。アルキルの例には、メチル、エチル、プロピルおよびイソブチルが含まれる。アルケニルの例には、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルが含まれる。アルキニルの例としては、アセチレニル、プロパルギルおよびメチルアセチレニルが挙げられる。
【0016】
「環状アルキル」、「環状アルケニル」および「環状アルキニル」という表現は、二環式、三環式およびより高次の環状構造ならびにアルキル、アルケニルおよび/またはアルキニル基でさらに置換された前記環状構造を含む。代表的な例には、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボニル、エチルノルボルネニル、シクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニル、シクロヘキシルシクロヘキシルおよびシクロドデカトリエニルが含まれる。
【0017】
「アリール」という用語は、任意の一価の芳香族炭化水素基を意味し;「アラルキル」という用語は、1個以上の水素原子が同じ数の同種および/または異なるアリール基(本明細書で定義)で置換されている任意のアルキル基(本明細書で定義)を意味し;「アレニル」という用語は、1個以上の水素原子が同数の同種および/または異なるアルキル基(本明細書で定義)で置換されている任意のアリール基(本明細書で定義)を意味する。アリールの例には、フェニルおよびナフタレニルが含まれる。アラルキルの例には、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。アレニルの例には、トリルおよびキシリルが含まれる。
【0018】
「ヘテロ原子」という用語は、炭素以外の13~17族元素のいずれかを意味し、例えば、酸素、窒素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0019】
上述したように、オルガノシロキサンモノマー(a)において、R1~R9は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、または100個までの炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよいヒドロカルビル基である。
【0020】
一実施形態において、ヒドロカルビル基は、存在する場合、60個までの炭素原子、別の実施形態では30個までの炭素原子、さらに別の実施形態では20個までの炭素原子を含む。
【0021】
有用なヒドロカルビル基は、その例がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルおよびtert-ペンチルであるアルキル基;n-ヘキシルのようなヘキシル;n-ヘプチルのようなヘプチル;n-オクチル、イソオクチル、2,2,4-トリメチルペンチルのようなオクチル;n-ノニルのようなノニル;n-デシルのようなデシル;および、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびメチルシクロヘキシルのようなシクロアルキルを含む。アルケニル基の例には、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、シクロヘキセニル、ノルボルネニル、エチルノルボルネニル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルが含まれる。アルキニル基の例には、アセチレニル、プロパルギルおよびメチルアセチレニルが含まれる。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、o-、m-およびp-トリル、キシリル、エチルフェニルおよびベンジルである。
【0022】
上述したように、オルガノシロキサンモノマー(a)において、Ruはフリーラジカル重合性基である。したがって、例えば、各Ruは、独立して、アルケニル、アルキニル、アクリレート、アクリルアミド、メタクリレート、メタクリルアミドなどの基から選択することができる。
【0023】
一実施形態において、モノマー(a)のフリーラジカル重合性基R
uは、以下の式I、II(a)、II(b)およびII(c)の1つのエチレン系不飽和基であり得、
【化1】
ここで
各R
10は独立して、少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよい10個までの炭素原子の直鎖または分岐のアルキル基から選択され;A
1およびA
2はそれぞれ、以下のように、モノマー(b)とフリーラジカル付加可能なオレフィン性不飽和基であり、そして下付き文字p、qおよびrはそれぞれ独立して0~100の範囲であり、下付き文字hは0または1である。
【0024】
式II(a)、II(b)および/またはII(c)の一実施形態では、A
1および/またはA
2は、独立して、式IIIの基であり:
【化2】
ここでR
11、R
12およびR
13は、独立して、水素および5個までの炭素原子のヒドロカルビル基から選択され、Yは、何もない、または2~16個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよい2価の脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素基から選択されるリンカー基である。
【0025】
有用なモノマー(a)の例としては、ビニル官能性ポリシリコーン、ヒドロキシ官能性ポリシリコーンアクリレート、有機変性シリコーン(メタ)アクリレート、有機変性シリコーン(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体が挙げられる。
【0026】
モノマー(b)は、オルガノシロキサンモノマー(a)の基Ruとフリーラジカル共重合可能な基を有する任意のモノマーである。一実施形態において、単一のモノマー(b)を単一または複数のモノマー(a)と共重合させ、他の実施形態では2以上のモノマー(b)を単一または複数のモノマー(a)と共重合させる。
【0027】
有用なモノマー(b)の例は、アクリル酸、メタクリル酸、それらのエステルおよびそれらのアミド誘導体、例えば、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ビニルアクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ペルフルオロエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル化シラン、メタクリル化シラン、メタクリルオキシルシラン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、アクリレートおよびメタクリレート官能性カルボシラン、ヘキサ官能性ウレタンアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、オリゴ官能性ウレタンアクリレート、テトラアクリレートモノマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、およびそれらの組み合わせである。
【0028】
フリーラジカル重合性モノマー(b)はまた、エチレン性不飽和モノマーから選択されることができ、その多くはブタジエン、スチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルラクタム、ハロゲン化ビニル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、ビニルエーテル、アリルアルコール、アリルポリエーテルおよびオルガノシロキサンのモノマー(a)のRu基と反応することができるその他として当技術分野で知られている。
【0029】
全モノマー(a)対全モノマー(b)の重量比は広範囲に変わり得、一実施形態では、(a)対(b)の重量比が99.9~0.1である、別の実施形態では、(a)対(b)の重量比が99~1であり、さらに別の実施形態では、(a)対(b)の重量比が95~5である。ナノラテックスの粘度は広く変化することができ、例えば、一実施形態では0.1~250cps、別の実施形態では0.5~230cps、さらに別の実施形態では1~200cpsである。同様に、ナノラテックスの粒子サイズは変化させることができ、例えば一実施形態では10~990nm、別の実施形態では20~800nm、さらに別の実施形態では25~500nmである。
【0030】
本発明のナノラテックスを調製することができるフリーラジカル乳化共重合プロセスの一実施形態によれば、少なくとも1種のフリーラジカル重合性モノマー(a)は、少なくとも1つのフリーラジカル重合性モノマー(b)、1以上の界面活性剤および1以上の補助安定剤と水性媒体中であわせられ、そして5000~50,000rpmのローターステーター混合システムを用いた高速混合、10~2000バールの範囲の圧を利用した高圧ホモジナイゼーション、0.1~16kWの超音波処理およびそれらの組み合わせのような高剪断混合下で乳化させて、油相が10~990nmの粒子サイズを有するエマルションを生成する。1以上のフリーラジカル開始剤をエマルションに添加すると、共重合は、1分~48時間、好ましくは5分~48分、より好ましくは15分~24時間の反応時間で、1~200℃、好ましくは15~150℃、より好ましくは30~100℃の温度を含む条件で行われる。攪拌条件は、本明細書の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスを提供するための反応条件、反応媒体の組成、および攪拌方法による。
【0031】
一実施形態において、疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスは、その疎水性の尺度として、少なくとも50°、好ましくは少なくとも60°、より好ましくは少なくとも70°を示し、それ自身が、日焼け止め、ウォータープルーフマスカラ、アイライナー、リップカラー、液体ファンデーションなどの多くの種類のパーソナルケア製品にとって非常に望ましい特性である、水洗いに対する耐性を表す。
【0032】
一実施形態において、界面活性剤の濃度は0.01~25重量%、好ましくは0.05~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%を含み、そして補助安定剤の濃度は0.01~20重量%、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%を含む。
【0033】
本明細書のフリーラジカル乳化共重合プロセスの別の実施形態では、共重合の後に、疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスを生じさせ、それを乾燥すると、良好な物理的完全性を有する軟質フィルムが得られるミニエマルション法が使用される。このプロセスは以下のステップを含む;
ステップ1:モノマー(a)および(b)および補助安定剤(以下、油相と称する)の均一混合物を、油相に対する1~10重量%の界面活性剤または界面活性剤および補助安定剤の混合物を含む水相中で分散させ、0.1~990ナノメートルの範囲の粒子サイズを有する粗エマルションを形成すること;
ステップ2:ステップ1からの粗エマルションを、例えば高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザーまたは超音波混合装置を用いて1~80℃で高エネルギー混合に供して、油相が10~990nmの範囲の粒子サイズを有し、ステップ1の粗エマルションよりも安定性が改善されているミニエマルションを提供すること;ならびに
ステップ3:ステップ2のミニエマルション中のモノマー(a)および(b)を10~90℃の温度で1以上の適当な水溶性および/または油溶性フリーラジカル開始剤を添加することにより共重合させること。
【0034】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性イオン性および非イオン性の界面活性剤およびそれらの組み合わせから選択することができる。補助安定剤は、例えば、ドデカン、セチルアルコール、セトステアリルアルコールおよびこれらの組み合わせなどの水溶性が限定された化合物から選択することができる。
【0035】
一実施形態において、界面活性剤は、例えば、ドデシル-1酸硫酸塩、テトラデシル-1酸硫酸塩、オクタデシル-1酸硫酸塩、ドデカン-1-スルホン酸、テトラデカン-1-スルホン酸、テトラデカン-1-スルホン酸、ヘキサデカン-スルホン酸およびオクタデカン-スルホン酸のような長鎖アルキル硫酸塩およびスルホン酸塩のアルカリ金属塩、および長鎖スルホン化パラフィン系炭化水素の塩およびそれらの組合せであり得る。
【0036】
開始剤は、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、有機過酸化物、アゾ化合物およびそれらの組み合わせであり得る。開始剤はまた、Fe、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、Cu+などの共開始剤から構成されてもよい。開始剤をエマルションに添加してそこでモノマー(a)と(b)の共重合を開始する。選択された開始剤の性質により、40~100℃の重合温度、1~10時間の反応時間が一般に適している。
【0037】
任意成分
【0038】
本発明のオルガノシロキサンラテックス組成物はまた、通常の量で使用される既知および従来のパーソナルケア製品の任意の成分などの1以上の任意の成分を含んでもよい。これらの成分のうち、他のシリコーン、界面活性剤、乳化剤、溶媒、例えば直鎖および環状シロキサン、有機エステル、アルカン、例えばイソドデカン、イソヘキサデカン、皮膚軟化剤、モイスチャライザー、保湿剤、色素、着色剤、香料、防腐剤、酸化防止剤、殺生物剤、バイオスタット、制汗剤、剥離剤、ホルモン、酵素、医薬品、ビタミン物質、ヒドロキシ酸、レチナール、レチノール誘導体、ナイアシンアミド、皮膚美白剤、塩、電解質、アルコール、ポリオール、エステル、紫外線のための散乱剤および/または吸収剤、植物抽出物、ペプチド、タンパク質、有機油、ガム、糖類、オリゴ糖、多糖類、誘導体、ワックス、フィルム形成剤、増粘剤、粒状充填剤、可塑剤、湿潤剤、閉塞性、感覚増強剤、樹脂および光学活性粒子などを挙げることができる。これらの化合物は、オルガノシロキサンの重合前、重合中または重合後に添加することができる。
【0039】
パーソナルケアの使用
【0040】
本明細書の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスは、広範囲のパーソナルケア製品の耐摩耗性および感覚特性を改善することができ、その例としては、脱臭剤、制汗剤、発汗抑制/脱臭剤、スティックおよびロールオン製品、スキンローション、モイスチャライザー、化粧液、クレンジング製品、スタイリングジェル、毛髪染料、ヘアカラー製品、ヘア・ストレートナー、ネイルポリッシュ、ネイルポリッシュ・リムーバー、日焼け止め、アンチエイジング製品、口紅、リップクリーム、リップグロス、ファンデーション、フェイスパウダー、アイライナー、アイシャドー、頬紅、メイクアップ、美容液、マスカラ、保湿用調製物、ファンデーション、コンシーラー、ボディーおよびハンド用調製物、スキンケア用調製物、フェイスおよびネック用調製物、フレグランス調製物、ソフトフォーカスアプリケーション、夜間および昼間のスキンケア用調製物、日焼け用調製物、ハンドリキッド、パーソナルケア用不織布アプリケーション、ベビーローション、フェイシャルクレンジング製品、ヘアキューティクルコート、ゲル、フォームバス、ボディーウォッシュ、スクラブ洗浄剤、制御放出パーソナルケア製品、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、スキンケア保湿ミスト、スキンワイプ、毛穴スキンワイプ、毛穴洗浄剤、傷害軽減剤、皮膚剥離剤、皮膚落剥促進剤、スキンタオレットおよび布、除毛用調製物、パーソナルケア用潤滑剤、ネイルカラーリング用調製物、および皮膚に適用される医薬組成物の局所適用のためのドラッグデリバリーシステムである。
【0041】
以下の例において、本発明のナノラテックスは、高圧ホモジナイゼーションおよび乳化共重合を含む方法によって製造される。高圧ホモジナイゼーションは、油相が狭い範囲のナノメートルサイズを有し、共重合後に、より安定なラテックス、すなわち実質的に凝固物を含まない、したがって貯蔵寿命が改善されたミニエマルションをもたらす。本明細書の疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスから得られるフィルムは、典型的には透明で光沢があり、それは多くのタイプのパーソナルケア製品にとって非常に望ましい特性であり、その製品としては日焼け防止用のスキンケアクリームおよびローション、モイスチャライザー、アンチエイジング処方物;BBクリーム(美容液);ヘアクリーム、セラムおよびスタイリング剤などのヘアケア製品;カラー化粧品、例えば、口紅、ネイルペイント、マスカラ、ファンデーションおよびローション;およびクレンジング製品、例えば石鹸、ハンドウォッシュ、シャンプーおよびコンディショナーなどが挙げられる。
【0042】
比較例
米国特許第6,207,782号の実施例1の親水性オルガノシロキサンラテックスの調製
【0043】
米国特許第6,207,782号のポリシロキサンBに対応するシリコーンポリエーテルアクリレートを、以下の水/界面活性剤混合物にゆっくりと添加し、続いて開始剤を添加した。充填は次の通りであった:シリコーンポリエーテルアクリレート40g、水156g、ラウリル硫酸ナトリウム4gおよび過硫酸カリウム0.2g。エマルションを撹拌しながら75~80℃に1~2時間加熱した。室温に冷却した後、固体の重炭酸ナトリウムを添加して親水性ラテックス含有エマルションのpHを中性に調整した。
【0044】
例1~4
モノマー(a)の調製:トリシロキサンポリエーテルメタクリレート
トリシロキサンポリエーテルメタクリレート(モノマー(a))の調製は2つのステップで行った。第1のステップでは、一般構造H2C=C(H)CH2O(CH2CH2O)nH(n=0、1、3および8)のアリルポリエーテル1.3モルを用いたヘキサメチルトリシロキサン[(CH3)3SiO-(H)Si(CH3)O-Si(CH3)3]のヒドロシリル化は、80℃で10ppmのKarstedt触媒の存在下で行った。次いで、得られたシリコーンポリエーテルのそれぞれを個々の3つ口フラスコに入れ、0℃に冷却し、その後1.1モル当量のトリエチルアミンを添加した。各フラスコに、20重量%の乾燥メチルエチルケトン(MEK)に溶解した等モル量の塩化メタクリル(ヒドロキシル基に関する)を滴下した。添加が完了したら、反応混合物を周囲温度でさらに3時間混合した。トリエチルアンモニウムクロライドの白色沈殿物を濾過により除去し、濾液を10mbarの減圧下、40℃で溶媒除去に供した。得られた4つのモノマー(a)は、NMRによって、いくらかのメタクリル化ポリエーテル(例1ではn=0、例2ではn=1、例3ではn=3、例4ではn=8)を含むメタクリル化シリコーンポリエーテルであると判定された。
【0045】
例5~15
疎水性ハイブリッドオルガノシロキサンナノラテックスの調製
A.ミニエマルションの形成
ブチルアクリレート(BA)とメチルメタクリレート(MMA)との混合物中に補助安定剤セチルアルコールを溶解することにより、油相を調製した。例1~4のメタクリル化シリコーンポリエーテルを個々に油相に溶解した。水中のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)によって水相を調製した。油相および水相を共にマグネチックスターラーで10分間、1000rpmで混合して粗ミニエマルションを提供し、次いで、GE601超音波装置で5分間、0.5秒パルスで超音波処理、またはCAT X520 Rotar-Stator、20mmシャフトを使用して22,000rpmでホモジナイズして、ミニエマルションを提供した。重合を防止または低減するために超音波処理/ホモジナイズ中に温度を5℃に維持した。
【0046】
ミニエマルション共重合反応混合物の組成物(全ての量はグラム)を以下の表1に示す。
【0047】
【0048】
B.ミニラテックスを提供するためのミニエマルションの共重合
バッチミニエマルション共重合は、還流冷却器、撹拌機および窒素入口を備えた250mLの丸底フラスコ中で行った。各ミニエマルションをフラスコに加え、窒素雰囲気下に保った。温度が70℃に達したら、開始剤としての過硫酸カリウムをフラスコに入れた。四つの共重合は全て70℃で行った。重量測定により転化率を測定しながら一定間隔でサンプルを採取した。ナノエステルおよびそれから得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0049】
【0050】
例16
ビス(メタクリリルポリエーテル)-官能化ポリジメチルシロキサン、Mn約2400の調製
撹拌棒、還流冷却器および窒素注入口を備えた丸底フラスコに、200gのL-8620(Momentiveから入手可能なシリコーンポリエーテル界面活性剤)および123gのトリエチルアミンを充填し、フラスコを窒素でフラッシュした。反応混合物を窒素陽圧下に置き、58g(15%w/w)のp-トルエンスルホニルクロリドを4等分のバッチにて15分間隔で充填した。反応終了後、過剰のp-トルエンスルホニルクロライドを2.5g(0.7%w/w)の水および13g(3.5%w/w)の重炭酸ナトリウムで中和した。反応混合物をさらに1時間撹拌し、濾過して無色液体を得た。反応は1H NMR分光法によってモニターした。
【0051】
攪拌棒および還流冷却器を備えた丸底フラスコに、20gのビス(p-トルエンスルホニルポリエーテル官能化ポリジメチルシロキサンおよび20gのシクロヘキサンを充填した。この反応混合物に、200ppmのブチル化ヒドロキシルトルエンと相間移動触媒として150mgのセチル第3級塩化アンモニウムを加えた。反応混合物を窒素陽圧下に置いた。1.7gのメタクリル酸ナトリウムを加え、反応混合物を85℃で還流した。共重合が完了した後、反応混合物を室温に冷却し、濾過した。濾液からシクロヘキサン溶媒を除去し、淡黄色の液体を得た。反応は1H NMR分光法によってモニターした。
【0052】
例17
ビス(メタクリリル)-官能化ポリジメチルシロキサン、Mn約3500の調製
撹拌棒、還流冷却器および添加漏斗を備えた丸底フラスコに、48gのアリルグリシジルエーテルおよび150gのビス(ヒドリド)末端化ポリジメチルシロキサン(Mn約3100)を充填した。反応混合物を80℃に加熱し、5ppmのヘキサクロロ白金酸(2-プロパノール中10%w/w)を入れた。最初の発熱後、350gのビス(ヒドリド)末端化ポリジメチルシロキサンを3つの間隔で入れた。ヒドリドの最終的な充填中に、さらに5ppmのヘキサクロロ白金酸を添加した。最終的な発熱後、反応混合物の温度を90~95℃に上昇させ、2時間撹拌した。反応が完了した後、過剰のアリルグリシジルエーテルを真空下で除去してストローイエローの液体を得た。反応は1H NMR分光法によってモニターした。
【0053】
攪拌棒および還流冷却器を備えた丸底フラスコに、375gのビス(アリルグリシジルエーテル)官能化ポリジメチルシロキサン、上記の通り、22gのメタアクリル酸(5.4%w/w)および300ppmのブチル化ヒドロキシトルエンを入れた。反応混合物を窒素でフラッシュし、そして陽圧下で、1gのトリエチルアミン(0.25%w/w)を添加した。反応混合物を95℃に加熱し、16~20時間撹拌した。反応の完了後、100ppmの2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシを添加し、反応物を95℃および30mbarで真空に付して過剰のメタクリル酸を除去した。次いで、反応混合物をTulsion T-66 MP樹脂上で撹拌して、痕跡量のトリエチルアミンを除去した。次いで、反応混合物を濾過して、淡黄色の粘性液体を得た。反応は1H NMR分光法によってモニターした。
【0054】
例18
ビス(メタクリリル)-官能化ポリジメチルシロキサン、Mn約2400の調製
撹拌棒、還流冷却器および添加漏斗を備えた丸底フラスコに78gの4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシドおよび500gのビス(ヒドリド)末端化ポリジメチルシロキサン(Mn約2200)を入れた。反応混合物を75℃に加熱し、その時点で10ppmのKarstedt触媒(キシレン中2%)を添加し、反応混合物をさらに90~95℃に加熱した。水素化物流体を混合物に滴下して、発熱による暴走反応を防止した。反応の完了後、過剰の4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシドを真空下で除去し、ストローイエローの液体を得た。反応は1H NMR分光法によってモニターした。
【0055】
攪拌棒および還流冷却器を備えた丸底フラスコに、上記のビス(4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド)官能化ポリジメチルシロキサン500gを入れ、75℃に加熱した。この時点で、2000ppmのチタンイソプロポキシドおよび300ppmのブチル化ヒドロキシルトルエンを反応混合物に加え、さらに90~95℃に加熱した。次いで、42gのメタクリル酸を反応混合物に滴下し、反応が完了するまで混合物を撹拌した。反応生成物を周囲温度に冷却し、Tulsion ACR-499樹脂上を通過させて痕跡量のメタクリル酸を除去した。生成物をさらに濾過して、淡黄色の粘性液体を得た。反応は1H NMR分光法によってモニターした。
【0056】
例19~28
ナノラテックスを提供するためのミニエマルションの調製と共重合
例16~18のアクリル化オルガノシロキサンをモノマー(a)として、ブチルアクリレートをモノマー(b)として、セチルアルコールを補助安定剤として溶解させることにより、個々の油相を調製した。個々の水相は、70%ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)を水に溶解することによって調製した。500~600rpmで撹拌しながら、油相を徐々に水相に添加した。得られた粗エマルションのそれぞれを、CAT X520ローター-ステーター、15000rpmで30mmシャフトまたはマイクロフルイダイザーを用いてホモジナイズし、ミニエマルションを得た。重合を防止または制限するために、温度を15~20℃に維持した。
【0057】
ミニエマルションの成分を表3に示す。
【0058】
【0059】
各ミニエマルション内での共重合は、還流冷却器、撹拌機を備えた丸底フラスコ内で行い、正の窒素流を供給した。開始剤としての過硫酸カリウムを各ミニエマルションに添加し、次いでこれを65℃に加熱した。各反応混合物のサンプルを一定間隔で採取し、転化率を重量測定により決定した。
【0060】
【0061】
表4のデータは、本発明のナノラテックスが、ほとんどの場合、比較例1のものよりも低い粘度を有することを示している。より低い粘度は、パーソナルケア組成物の製造に有利である。加えて、本明細書中の全てのナノラテックスの粒子サイズがはるかに小さいことにより、保持期間の安定性が改善され、そのほとんどが比較例1の透明性(曇りの欠如)を改善する。そのような特性は、本発明のナノラテックスを化粧品用途にて比較例1のラテックスよりも技術的に全体的に優れたものにする。
【0062】
例29
メタクリル化シリコーンエマルションの調製
25℃で約0.7Pa・sの粘度を有するジメチコノール49.14重量部および3-(メタクリルオキシ)プロピルメチルジエトキシシラン0.86重量部を一緒に混合し、4重量部のエトキシル化セテアリルアルコール、0.5重量部のセテアリル硫酸ナトリウムおよび6重量部の脱イオン水の混合物に充填速度および混合速度を高めながら入れて、安定したエマルジョンを得た後、50%の油を含むエマルションに脱イオン水を入れた。pHを2に調整し、内部粘度が6Pa・s以下になるまで中和した。
【0063】
エマルション35重量部を80℃に加熱し、脱イオン水10重量部中の過硫酸アンモニウム0.05重量部と、メチルメタクリレート8.75重量部、ブチルアクリレート8.75重量部、エトキシル化セテアリルアルコール0.5重量部および5重量部の脱イオン水のプレミックスを入れた。共重合反応は2時間行った。脱イオン水および保存料を充填して、35重量%のコポリマー含量を有するメタクリル化シリコーンエマルションを得た。
【0064】
例30
官能化シリコーン/ラウリルメタクリレートエマルションの調製
25℃で約0.7Pa.sの粘度を有するジメチコノール49.67重量部、3-(メタクリルオキシ)プロピルメチルジエトキシシラン0.33重量部を一緒に混合し、4重量部のPEG-40ステアレート、0.5重量部のセテアリル硫酸ナトリウム、および6重量部の脱イオン水の混合物を充填速度および混合速度を増加させて入れて、安定したエマルションを得て、続いて脱イオン水を入れて50%の油を含有するエマルションとした。pHを2に調整し、内部粘度が3Pa.sに達するまで中和した。
【0065】
エマルション56重量部を80℃に加熱し、10重量部の脱イオン水中の0.035重量部の過硫酸アンモニウムと、7重量部のラウリルメタクリレート、0.5重量部のPEG-40ステアレートおよび4重量部の脱イオン水の混合物を入れた。共重合反応は3時間行った。脱イオン水および保存料を充填して、35重量%のコポリマー含量を有する官能化シリコーン/LMAエマルションを得た。
【0066】
比較例1、例5および22のラテックスから得られた乾燥フィルムの接触角を接触角ゴニオメトリーによって測定した。接触角は、フィルムの疎水性の測定値であり、フィルムの洗浄に対する耐性、したがってフィルムが得られるナノラテックスの耐洗い流し性を示す。ラテックスポリマーのフィルムは、ガラス基材上に試験ラテックスを引き伸ばして調製され、200μmの湿潤フィルムを提供した。コーティングされた基材を45℃のオーブンに12時間入れた。次いで、乾燥したコーティングされた基材をRame Hart接触角ゴニオメーターモデル250に置いた。蒸留した脱イオン水5μLの滴をシリンジを介して表面に移した。水滴を1分間平衡させ、接触角を供給されたソフトウェアを介して測定した。接触角は、滴下の前縁がコーティングされたガラス基板に対して示す角度として測定した。角度が大きいほど、フィルムコーティングされた表面はより疎水性である。接触角は以下の表5に示す通りであった。
【0067】
【0068】
表5のデータが示すように、例5および22のラテックスから形成されたフィルムは、比較例1のラテックスから形成されたフィルムよりもはるかに高い接触角を示した。より高い接触角は、上記のように、そのようなラテックスが配合されたパーソナルケア製品の改善された水洗浄への耐性に相当するより大きな疎水性を意味する。
【0069】
例31
官能化シリコーン/アクリレート/スチレンエマルションの調製
25℃で約0.55Pa・sの粘度を有するジメチコノール49.14部および3-(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン0.86部を混合し、エトキシ化セテアリルアルコール4重量部、セテアリル硫酸ナトリウム0.5重量部および脱イオン水6重量部の混合物を増加した充填速度および混合速度で入れて、安定なエマルションを提供し、続いて脱イオン水を入れて50%の油を含有するエマルジョンとした。pHを2に調整し、内部粘度が6Pa.sに達するまで中和した。
【0070】
エマルション56重量部を80℃に加熱し、脱イオン水5重量部中の過硫酸アンモニウム0.035部と、5重量部のブチルアクリレート、2重量部のスチレン、0.5重量部のエトキシル化セテアリルアルコールおよび4重量部の脱イオン水を含む混合物を入れた。共重合反応は3時間行った。脱イオン水および保存料を入れて、48重量%の固形分を有する官能化シリコーン/アクリレート/スチレンエマルションを得た。
【0071】
例32
以下の表6に示す量(グラム)の成分を用いて日焼け止め組成物を調製した(すべての量を重量%で示す)。
【0072】
【0073】
SPF測定は、Labsphere UVアナライザー2000Sを用いて模擬ヒト皮膚(Vitro-Skin(登録商標)、IMS Inc.)に適用した例32の日焼け止め組成物から得られたフィルムに対して行った。20mg/cm2の日焼け止め組成物をVitro-Skin(登録商標)に均一に適用し、続いてVitro-Skin(登録商標)の部分を水に40分間浸漬した。Vitro-Skin(登録商標)部分のラテックスを20分間乾燥させた後に測定したSPFは39であった。
【0074】
例33
BBクリーム組成物を、以下の成分を用いて、以下の表7に示す量(グラム)で調製した。
【0075】
【0076】
相Cおよび相Dを相Bに添加し、均一混合物が得られるまで攪拌しながら85℃に加熱した。相Aもまた85℃に加熱し、次に相B、相Cおよび相Dを合わせたものに添加した。得られた混合物を高速で攪拌して均一なクリーム混合物を製造した。塩化ナトリウムの添加後、クリームを85℃で11,000rpmで2分間ホモジナイズした。均質化後、混合物をゆっくりと撹拌しながら周囲温度まで冷却した。
【0077】
例34
以下の表8に示す成分および量を有するマスカラ組成物を調製した。
【0078】
【0079】
相Bの成分を85℃に加熱し、均一相が得られるまで混合した。別の容器中で、水を85℃に加熱し、その後、ヒドロキシエチルセルロース、黒色酸化鉄および例22のラテックスを絶えず攪拌しながら添加して、相Aを得た。相Bを85℃で撹拌する高速[rpm]下で相Aに添加した。均一なクリーム混合物が得られるまで混合を続けた。得られたマスカラ組成物を周囲温度まで冷却した。
【0080】
例35;比較例2
さらなるマスカラ組成物を、以下の表9に示す量(グラム)の成分を用いて調製した。
【0081】
【0082】
相Aの成分を手で混合し、85℃で30分間500rpmで撹拌した。その後、B相をA相に添加した。相C成分を一緒に混合し、85℃~90℃に加熱し、85℃で500rpmで5分間攪拌しながら、A相とB相を合わせたものに添加した。個々の組成物を2,000rpmで1分間さらに混合した。
【0083】
例34および比較例2のマスカラ組成物の耐水性を、各組成物をインビトロのまつげ(Ardell Runway Lashes)に適用することによって試験した。乾燥後、目のまつげを水に浸し、手で10秒間振った。視覚検査による測定によると、比較例2のマスカラ組成物は、耐水性を示さなかったが、この結果とは対照的に、例34のマスカラ組成物は、水洗いに対するかなりの耐性を示した。
【0084】
例36
日焼け止め組成物は、以下の表10に記載された量(グラム)の成分を用いて調製した。
【0085】
【0086】
耐水性は、水洗い試験の前後で各日焼け止め組成物のSPFを測定することによって定めた。日焼け止め組成物の耐水性を、それぞれの日焼け止め組成物を適用した各々のインビトロ皮膚切片(Vitro-Skin(登録商標)、IMS Inc.)を水に40分間浸漬し、その後乾燥させることによって試験した。
【0087】
水洗い試験の結果を以下の表11に示す。
【0088】
【0089】
これらのデータが示すように、例35の日焼け止めは、比較例3の日焼け止めのSPFよりも高いSPFを示すだけでなく、浸漬後、例35の日焼け止めのSPFは増加しており、一方で、浸漬後の比較例3の日焼け止めのSPFは、浸漬前のレベルと比較して約40%低下した。
【0090】
本開示は好ましい実施形態を参照して記載されているが、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得、その要素に対して等価物が代用され得ることが理解される。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、多くの改変を行うことができる。したがって、本開示は、本開示を実施するために企図された最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施形態を含むものとする。