(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033857
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)iRNA組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220222BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220222BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220222BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220222BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220222BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220222BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220222BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220222BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220222BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
C12N15/113 140Z
A61K31/7105 ZNA
A61K31/713
A61K48/00
A61P31/00
A61P31/12
A61P35/00
A61K9/127
A61P43/00 105
C12Q1/02
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195074
(22)【出願日】2021-12-01
(62)【分割の表示】P 2018511488の分割
【原出願日】2016-08-22
(31)【優先権主張番号】62/213,224
(32)【優先日】2015-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505369158
【氏名又は名称】アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヒンクル グレゴリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】PD-L1遺伝子のRNA転写物のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)媒介切断に影響するRNAi組成物を提供する。
【解決手段】プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該RNAi剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、該センス鎖が、特定のヌクレオチド配列からなる配列の部分配列の群のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、もう一つの特定のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、かつ該RNAi剤が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、二本鎖RNAi剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該RNAi剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、該センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、かつ該RNAi剤が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、二本鎖RNAi剤。
【請求項2】
プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該RNAi剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、二重鎖AD-67635、AD-67637、AD-67658、AD-67632、AD-67629、AD-67631、AD-67633、AD-67643、AD-67653、AD-67640、AD-67650、AD-67676、AD-67661、AD-67667、AD-67655、AD-67672、AD-67659、AD-67673、AD-67664、AD-67662、AD-67660、AD-67656、AD-67628、AD-67647、AD-67626、またはAD-67645のうちのいずれか1つにおけるアンチセンス配列のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含む相補性領域を含む、二本鎖RNAi剤。
【請求項3】
センス鎖およびアンチセンス鎖が、二重鎖AD-67635、AD-67637、AD-67658、AD-67632、AD-67629、AD-67631、AD-67633、AD-67643、AD-67653、AD-67640、AD-67650、AD-67676、AD-67661、AD-67667、AD-67655、AD-67672、AD-67659、AD-67673、AD-67664、AD-67662、AD-67660、AD-67656、AD-67628、AD-67647、AD-67626、またはAD-67645のうちのいずれか1つにおけるヌクレオチド配列のうちのいずれか1つからなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1または2記載のdsRNA剤。
【請求項4】
センス鎖のヌクレオチドの実質的に全てまたはアンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、ヌクレオチド修飾を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項5】
センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全てが、修飾を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項6】
プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、
該センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、
該センス鎖のヌクレオチドの実質的に全ておよび該アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、ヌクレオチド修飾を含み、かつ
該センス鎖が、3'末端に結合したリガンドにコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
【請求項7】
センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全てが、修飾を含む、請求項6記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項8】
ヌクレオチド修飾のうちの少なくとも1つが、デオキシ-ヌクレオチド、3'末端デオキシ-チミン(dT)ヌクレオチド、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ-修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、アンロックドヌクレオチド、配座固定ヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ-修飾ヌクレオチド、2'-O-アリル-修飾ヌクレオチド、2'-C-アルキル-修飾ヌクレオチド、2'-ヒドロキシル(hydroxly)-修飾ヌクレオチド、2'-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2'-O-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミデート、非天然塩基を含むヌクレオチド、テトラヒドロピラン修飾ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5'-ホスフェートを含むヌクレオチド、および5'-ホスフェートミミックを含むヌクレオチドからなる群より選択される、請求項1~6のいずれか一項記載のRNAi剤。
【請求項9】
ヌクレオチド修飾が、3'末端デオキシ-チミンヌクレオチド(dT)の短い配列を含む、請求項8記載のRNAi剤。
【請求項10】
相補性領域が、少なくとも17ヌクレオチド長である、請求項2記載のRNAi剤。
【請求項11】
相補性領域が、19~21ヌクレオチド長である、請求項2記載のRNAi剤。
【請求項12】
相補性領域が、19ヌクレオチド長である、請求項11記載のRNAi剤。
【請求項13】
各鎖が、30ヌクレオチド長以下である、請求項1、2、および6のいずれか一項記載のRNAi剤。
【請求項14】
少なくとも1つの鎖が、少なくとも1ヌクレオチドの3'オーバーハングを含む、請求項1、2、および6のいずれか一項記載のRNAi剤。
【請求項15】
少なくとも1つの鎖が、少なくとも2ヌクレオチドの3'オーバーハングを含む、請求項1、2、および6のいずれか一項記載のRNAi剤。
【請求項16】
リガンドをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項記載のRNAi剤。
【請求項17】
リガンドが、dsRNA剤のセンス鎖の3'末端にコンジュゲートしている、請求項16記載のRNAi剤。
【請求項18】
リガンドが、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体である、請求項6または16記載のRNAi剤。
【請求項19】
リガンドが、下記である、請求項18記載のRNAi剤:
。
【請求項20】
下記の概略図に示されるように、dsRNA剤がリガンドにコンジュゲートしている、請求項18記載のRNAi剤:
式中、Xは、OまたはSである。
【請求項21】
XがOである、請求項20記載のRNAi剤。
【請求項22】
相補性領域が、表3および表5におけるアンチセンス配列のうちのいずれか1つを含む、請求項2記載のRNAi剤。
【請求項23】
相補性領域が、表3または表5におけるアンチセンス配列のうちのいずれか1つからなる、請求項2記載のRNAi剤。
【請求項24】
PD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;
p、p'、q、およびq'は、各々独立して0~6であり;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
p'、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
【請求項25】
iが0である;jが0である;iが1である;jが1である;iおよびjの両方が0である;またはiおよびjの両方が1である、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項26】
kが0である;lが0である;kが1である;lが1である;kおよびlの両方が0である;またはkおよびlの両方が1である、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項27】
XXXが、X'X'X'と相補的であり、YYYが、Y'Y'Y'と相補的であり、かつZZZが、Z'Z'Z'と相補的である、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項28】
YYYモチーフが、センス鎖の切断部位またはその近傍に出現する、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項29】
Y'Y'Y'モチーフが、アンチセンス鎖の5'末端から11、12および13位に出現する、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項30】
Y'が、2'-O-メチルである、請求項29記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項31】
式(III)が、式(IIIa)によって表される、請求項24記載の二本鎖RNAi剤:
。
【請求項32】
式(III)が、式(IIIb)によって表される、請求項24記載の二本鎖RNAi剤:
式中、各N
bおよびN
b'は、独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【請求項33】
式(III)が、式(IIIc)によって表される、請求項24記載の二本鎖RNAi剤:
式中、各N
bおよびN
b'は、独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【請求項34】
式(III)が、(IIId)によって表される、請求項24記載の二本鎖RNAi剤:
式中、各N
bおよびN
b'は、独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、かつ各N
aおよびN
a'は、独立して、2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【請求項35】
二本鎖領域が、15~30ヌクレオチド対長である、請求項6または24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項36】
二本鎖領域が、17~23ヌクレオチド対長である、請求項35記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項37】
二本鎖領域が、17~25ヌクレオチド対長である、請求項35記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項38】
二本鎖領域が、23~27ヌクレオチド対長である、請求項35記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項39】
二本鎖領域が、19~21ヌクレオチド対長である、請求項35記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項40】
二本鎖領域が、21~23ヌクレオチド対長である、請求項6または24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項41】
各鎖が、15~30個のヌクレオチドを有する、請求項6または24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項42】
各鎖が、19~30個のヌクレオチドを有する、請求項6、24、および34のいずれか一項記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項43】
ヌクレオチド修飾が、LNA、HNA、CeNA、2'-メトキシエチル、2'-O-アルキル、2'-O-アリル、2'-C-アリル、2'-フルオロ、2'-デオキシ、2'-ヒドロキシル、およびその組合せからなる群より選択される、請求項6または24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項44】
ヌクレオチド修飾が、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾である、請求項43記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項45】
リガンドが、二価もしくは三価の分枝リンカーを経由して結合した1つもしくは複数のGalNAc誘導体;またはコレステロールである、請求項6または24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項46】
リガンドが、下記である、請求項24記載の二本鎖RNAi剤:
。
【請求項47】
リガンドが、センス鎖の3'末端に結合している、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項48】
下記の概略図に示されるように、リガンドにコンジュゲートしている、請求項47記載の二本鎖RNAi剤:
。
【請求項49】
少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合をさらに含む、請求項6または24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項50】
ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合が、一方の鎖の3'末端にある、請求項49記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項51】
前記鎖がアンチセンス鎖である、請求項50記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項52】
前記鎖がセンス鎖である、請求項50記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項53】
ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合が、一方の鎖の5'末端にある、請求項49記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項54】
前記鎖がアンチセンス鎖である、請求項53記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項55】
前記鎖がセンス鎖である、請求項53記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項56】
ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合が、一方の鎖の5'末端および3'末端の両方にある、請求項49記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項57】
前記鎖がアンチセンス鎖である、請求項56記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項58】
二重鎖のアンチセンス鎖の5'末端の1位の塩基対が、AU塩基対である、請求項6または24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項59】
Yヌクレオチドが、2'-フルオロ修飾を含有する、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項60】
Y'ヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾を含有する、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項61】
p'>0である、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項62】
p'=2である、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項63】
q'=0、p=0、q=0であり、かつp'オーバーハングヌクレオチドが標的mRNAと相補的である、請求項62記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項64】
q'=0、p=0、q=0であり、かつp'オーバーハングヌクレオチドが標的mRNAと非相補的である、請求項62記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項65】
センス鎖が、合計21個のヌクレオチドを有し、かつアンチセンス鎖が、合計23個のヌクレオチドを有する、請求項56記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項66】
少なくとも1つのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されている、請求項61~65のいずれか一項記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項67】
全てのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されている、請求項66記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項68】
表3および表5に列挙されるRNAi剤の群より選択される、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項69】
センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全てが、修飾を含む、請求項24記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項70】
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して、0または1であり;
p、p'、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
p'、n
q、およびn
q'は、独立して 、オーバーハングヌクレオチドを表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
【請求項71】
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力のある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
p、q、およびq'は、各々独立して0~6であり;
n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
【請求項72】
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力のある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
p、q、およびq'は、各々独立して0~6であり;
n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしており、該リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である、
二本鎖RNAi剤。
【請求項73】
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力のある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して、0または1であり;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
p、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;
n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしており、該リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である、
二本鎖RNAi剤。
【請求項74】
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力のある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
p、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;
n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
YYYおよびY'Y'Y'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしており、該リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である、
二本鎖RNAi剤。
【請求項75】
PD-L1の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、
該二本鎖RNAi剤が、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、
該センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、
該センス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾からなる群より選択されるヌクレオチド修飾を含み、
該センス鎖が、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、
該アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾からなる群より選択されるヌクレオチド修飾を含み、
該アンチセンス鎖が、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合および3'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、かつ
該センス鎖が、3'末端で二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体にコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
【請求項76】
センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全てが、ヌクレオチド修飾を含む、請求項75記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項77】
各鎖が、19~30個のヌクレオチドを有する、請求項75記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項78】
請求項1、2、6、24、および70~75のいずれか一項記載のRNAi剤を含有する、細胞。
【請求項79】
請求項1~77のいずれか一項記載のRNAi剤を含む、PD-L1遺伝子の発現を阻害するための薬学的組成物。
【請求項80】
前記RNAi剤が、緩衝化されていない溶液中で投与される、請求項79記載の薬学的組成物。
【請求項81】
緩衝化されていない溶液が、生理食塩水または水である、請求項80記載の薬学的組成物。
【請求項82】
RNAi剤が、緩衝溶液と共に投与される、請求項79記載の薬学的組成物。
【請求項83】
緩衝溶液が、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩、もしくはリン酸塩またはその任意の組合せを含む、請求項82記載の薬学的組成物。
【請求項84】
緩衝溶液が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である、請求項82記載の薬学的組成物。
【請求項85】
請求項1~5のいずれか一項記載の二本鎖RNAi剤および脂質製剤を含む、薬学的組成物。
【請求項86】
脂質製剤が、LNPを含む、請求項85記載の薬学的組成物。
【請求項87】
脂質製剤が、MC3を含む、請求項85記載の薬学的組成物。
【請求項88】
細胞を、請求項1~77のいずれか一項記載の二本鎖RNAi剤または請求項79~87のいずれか一項記載の薬学的組成物と接触させ、それにより、該細胞におけるPD-L1遺伝子の発現を阻害する工程
を含む、細胞におけるPD-L1の発現を阻害する方法。
【請求項89】
細胞が、対象内にある、請求項88記載の方法。
【請求項90】
対象が、ヒトである、請求項89記載の方法。
【請求項91】
PD-L1の発現が、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%;またはアッセイの検出レベル未満に阻害される、請求項88~90のいずれか一項記載の方法。
【請求項92】
治療有効量の請求項1~77のいずれか一項記載のRNAi剤または請求項79~87のいずれか一項記載の薬学的組成物を対象に投与し、それにより、該対象を処置する工程
を含む、PD-L1の発現の低減から恩恵を被るであろう疾患または障害を有する対象を処置する方法。
【請求項93】
対象へのRNAiの投与が、PD-L1シグナル伝達経路に減少を引き起こす、請求項92記載の方法。
【請求項94】
障害が、PD-L1関連疾患である、請求項92記載の方法。
【請求項95】
PD-L1関連疾患が、感染である、請求項94記載の方法。
【請求項96】
感染が、慢性細胞内感染である、請求項95記載の方法。
【請求項97】
PD-L1関連疾患が、ウイルス感染である、請求項94~96のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
PD-L1関連疾患が、肝炎ウイルス感染である、請求項94~97のいずれか一項記載の方法。
【請求項99】
対象における感染の少なくとも1つの徴候または症状を検出する工程をさらに含む、請求項95~98のいずれか一項記載の方法。
【請求項100】
PD-L1関連疾患が、がんである、請求項92記載の方法。
【請求項101】
対象が、ヒトである、請求項92~100のいずれか一項記載の方法。
【請求項102】
感染またはがんの処置のための剤を投与する工程をさらに含む、請求項92~101のいずれか一項記載の方法。
【請求項103】
dsRNA剤が、約0.01mg/kg~約50mg/kgの用量で投与される、請求項92~102のいずれか一項記載の方法。
【請求項104】
dsRNA剤が、対象に皮下投与される、請求項92~103のいずれか一項記載の方法。
【請求項105】
対象におけるPD-L1シグナル伝達経路のレベルを測定する工程をさらに含む、請求項92~104のいずれか一項記載の方法。
【請求項106】
対象におけるPD-L1のレベルを測定する工程をさらに含む、請求項92~104のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年9月2日に出願された米国仮特許出願第62/213,224号の恩典を主張し、この出願の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された、その全体が参照により本明細書に組み入れられる配列表を含む。2016年7月29日に作成されたASCIIコピーは、名称が121301-04220_SL.txtであり、サイズが108,003バイトである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)は、マウス19番染色体およびヒト9番染色体上のCD274遺伝子によってコードされる、アミノ酸290個のI型膜貫通タンパク質である。PD-L1の発現は、慢性感染、例えば、慢性ウイルス感染(例えば、とりわけHIV、HBV、HCVおよびHTLVを含む)、慢性細菌感染(例えば、とりわけヘリコバクター-ピロリ(Helicobacter pylori)を含む)、および慢性寄生虫感染(例えば、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)を含む)に関与する免疫応答の回避に関与する。PD-L1の発現は、T細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、ならびに内皮細胞、肝細胞、筋肉細胞、および胎盤を含む非造血細胞を含む多数の組織および細胞型において検出されている。
【0004】
PD-L1の発現は、抗腫瘍免疫活性の抑制にも関与する。腫瘍は、宿主T細胞によって認識され得る抗原を発現するが、腫瘍の免疫学的排除は稀である。この失敗の一部は、腫瘍の微小環境による免疫抑制のせいである。多くの腫瘍上のPD-L1の発現は、この抑制環境の構成要素であり、他の免疫抑制シグナルと協調して作用する。PD-L1の発現は、乳房、肺、結腸、卵巣、黒色腫、膀胱、肝臓、唾液、胃、グリオーマ、甲状腺、胸腺上皮、頭部、および頸部を含む多種多様な固形腫瘍上にインサイチューで示されている(Brown JA et al., 2003. J. Immunol. 170:1257-66; Dong H et al. 2002. Nat. Med. 8:793-800; Hamanishi J, et al. 2007. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:3360-65; Strome SE et al. 2003. Cancer Res. 63:6501-5; Inman BA et al. 2007. Cancer 109:1499-505; Konishi J et al. 2004. Clin. Cancer Res. 10:5094-100; Nakanishi J et al. 2007. Cancer Immunol. Immunother. 56:1173-82; Nomi T et al. 2007. Clin. Cancer Res. 13:2151-57; Thompson RH et al. 2004. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:17174-79; Wu C, Zhu Y, Jiang J, Zhao J, Zhang XG, Xu N. 2006. Acta Histochem. 108:19-24)。加えて、PD-L1に対する受容体であるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1およびCD279としても公知)の発現は、腫瘍浸潤リンパ球上でアップレギュレーションされ、これは腫瘍の免疫抑制にも寄与する(Blank C et al. 2003. J. Immunol. 171:4574-81)。最も重要なことに、腫瘍上でのPD-L1の発現を疾患の転帰と関係づける研究は、PD-L1の発現が腎臓がん、卵巣がん、膀胱がん、乳がん、胃がん、および膵臓がんにおける予後不良と強く相関することを示している(Hamanishi J et al. 2007. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:3360-65; Inman BA et al. 2007. Cancer 109:1499-505; Konishi J et al. 2004. Clin. Cancer Res. 10:5094-100; Nakanishi J et al. 2007. Cancer Immunol. Immunother. 56:1173-82; Nomi T et al. 2007. Clin. Cancer Res. 13:2151-57; Thompson RH et al. 2004. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:17174-79; Wu C, Zhu Y, Jiang J, Zhao J, Zhang XG, Xu N. 2006. Acta Histochem. 108:19-24)。加えて、これらの研究は、腫瘍上でのより高いレベルのPD-L1発現が腫瘍の病期の進行およびより深い組織構造への浸潤を促進する場合があることを示唆している。
【0005】
PD-1経路は、血液悪性腫瘍にも役割を果たすことができる。PD-L1は、正常な形質細胞上ではなく、多発性骨髄腫細胞上に発現される(Liu J et al. 2007. Blood 110:296-304)。PD-L1は、いくつかの原発性T細胞リンパ腫、特に未分化大細胞Tリンパ腫上に発現される(Brown JA et al., 2003. J. Immunol. 170:1257-66)。PD-1は、血管免疫芽球性リンパ腫のT細胞上に高度に発現され、PD-L1は、関連する濾胞樹状細胞ネットワーク上に発現される(Dorfman DM et al. 2006. Am. J. Surg. Pathol. 30:802-10)。結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫において、リンパ球または組織球(L&H)細胞と関連するT細胞は、PD-1を発現する。PD-1連結によって誘導される遺伝子の読出しを使用するマイクロアレイ分析は、ホジキンリンパ腫において腫瘍関連T細胞がインサイチューでPD-1シグナルに応答性であることを示唆している(Chemnitz JM et al. 2007. Blood 110:3226-33)。PD-1およびPD-L1は、HTLV-1媒介成人T細胞白血病およびリンパ腫においてCD4 T細胞上に発現される(Shimauchi T et al. 2007. Int. J. Cancer 121: 2585-90)。これらの腫瘍細胞は、TCRシグナルに低応答性である。
【0006】
動物モデルにおける研究は、腫瘍上のPD-L1がT細胞活性化および腫瘍細胞の溶解を阻害し、場合によっては増加した腫瘍特異的T細胞死を導くことを実証している(Dong H et al. 2002. Nat. Med.8:793-800; Hirano F et al. 2005. Cancer Res.65:1089-96)。腫瘍関連APCは、PD-1:PD-L経路を利用して抗腫瘍T細胞応答を制御することもできる。腫瘍関連骨髄DC集団上のPD-L1の発現は、腫瘍の環境因子によってアップレギュレーションされる(Curiel TJ et al. 2003. Nat. Med. 9:562-67)。B16黒色腫の腫瘍流入領域リンパ節における形質細胞様樹状細胞(DC)は、制御性T細胞の抑制活性を強く活性化するIDOを発現する。IDOで処置された制御性T細胞の抑制活性は、IDO発現DCとの細胞接触を必要とした(Sharma MD et al. 2007. J. Clin. Invest. 117:2570-82)。
【0007】
したがって、当技術分野において、慢性細胞内感染症などの感染症、例えば、 ウイルス疾患、例えば、肝炎感染、または細菌感染、例えば、結核感染;およびがん、例えば、肝臓がん、例えば、肝細胞がんといった、PD-L1関連疾患のための有効な処置の必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、PD-L1遺伝子のRNA転写物のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)媒介切断に影響するiRNA組成物を提供する。PD-L1遺伝子は、細胞、例えば、ヒトなどの対象内の細胞の内部にあり得る。
【0009】
したがって、一局面では、本発明は、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、RNAiが、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含む、RNAi剤を提供する。
【0010】
特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、表3における配列のうちのいずれかより選択される配列を含む。他の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、表5における配列のうちのいずれかより選択される配列を含む。
【0011】
ある局面では、本発明は、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、RNAiが、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が、表3に列挙されるアンチセンス配列のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含む相補性領域を含む、dsRNA剤を提供する。特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、表5における配列のうちのいずれかより選択される配列を含む。
【0012】
特定の態様では、RNAiは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。一部の態様では、実質的に、センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全ては、修飾を含む。一部の態様では、センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全ては、修飾を含む。
【0013】
一局面では、本発明は、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、RNAi剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、RNAi剤が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、RNAi剤を提供する。
【0014】
別の局面では、本発明は、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、RNAi剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が、二重鎖AD-67635、AD-67637、AD-67658、AD-67632、AD-67629、AD-67631、AD-67633、AD-67643、AD-67653、AD-67640、AD-67650、AD-67676、AD-67661、AD-67667、AD-67655、AD-67672、AD-67659、AD-67673、AD-67664、AD-67662、AD-67660、AD-67656、AD-67628、AD-67647、AD-67626、またはAD-67645のうちのいずれか1つにおけるアンチセンス配列のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含む相補性領域を含む、RNAi剤を提供する。
【0015】
一態様では、センスおよびアンチセンス鎖は、二重鎖AD-67635、AD-67637、AD-67658、AD-67632、AD-67629、AD-67631、AD-67633、AD-67643、AD-67653、AD-67640、AD-67650、AD-67676、AD-67661、AD-67667、AD-67655、AD-67672、AD-67659、AD-67673、AD-67664、AD-67662、AD-67660、AD-67656、AD-67628、AD-67647、AD-67626、またはAD-67645のうちのいずれか1つにおけるヌクレオチド配列のうちのいずれか1つからなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0016】
一局面では、本発明は、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖RNAi剤であって、二本鎖RNAi剤が、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、センス鎖のヌクレオチドの実質的に全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、修飾ヌクレオチドであり、センス鎖が、3'末端に結合したリガンドとコンジュゲートしている、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0017】
一局面では、本発明は、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、PD-L1の発現を阻害するための二本鎖RNAi剤であって、センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的な対応する位置とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、それによりアンチセンス鎖が、センス鎖のうちの3つ以下のヌクレオチドが異なる連続する少なくとも15ヌクレオチドと相補性である、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0018】
特定の態様では、センス鎖は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的な対応する位置とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、それによりアンチセンス鎖は、センス鎖のうちの3つ以下のヌクレオチドが異なる連続する少なくとも15ヌクレオチドと相補性である。
【0019】
特定の態様では、センス鎖は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、1093~1115、1093~1114、1094~1115、3221~3242、または3222~3243とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的な対応する位置とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、それにより、アンチセンス鎖は、センス鎖のうちの3つ以下のヌクレオチドが異なる連続する少なくとも15ヌクレオチドと相補的である。
【0020】
別の局面では、本発明は、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、二本鎖RNAi剤が、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、センス鎖のヌクレオチドの実質的に全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、ヌクレオチド修飾を含み、センス鎖が、3'末端に結合したリガンドとコンジュゲートしている、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0021】
特定の態様では、センス鎖のヌクレオチドの実質的に全てもしくはアンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、修飾ヌクレオチドである、または両方の鎖のヌクレオチドの実質的に全てが修飾されており;ここで、センス鎖は、3'末端に結合したリガンドとコンジュゲートしている。
【0022】
一局面では、本発明は、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、PD-L1の発現を阻害するための二本鎖RNAi剤であって、センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243からの連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的な対応する位置からの連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、それにより、アンチセンス鎖が、センス鎖のうちの連続する少なくとも15ヌクレオチドと相補的である、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0023】
特定の態様では、この剤は、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここで、センス鎖は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243からの連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的な対応する位置からの連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、それにより、アンチセンス鎖は、センス鎖のうちの連続する少なくとも15ヌクレオチドと相補的である。
【0024】
特定の態様では、この剤は、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここで、センス鎖は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3222~3243 1093~1115、1093~1114、1094~1115、3221~3243、または3221~3242からの連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的な対応する位置からの連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、それにより、アンチセンス鎖は、センス鎖のうちの連続する少なくとも15ヌクレオチドと相補的である。特定の態様では、センス鎖のヌクレオチドの実質的に全ては、修飾ヌクレオチドである。特定の態様では、アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全ては、修飾ヌクレオチドである。特定の態様では、両方の鎖のヌクレオチドの実質的に全ては、修飾されている。好ましい態様では、センス鎖は、3'末端に結合したリガンドとコンジュゲートしている。
【0025】
特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、表3および5のいずれか1つに列挙されるアンチセンス配列のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含む相補性領域を含む。例えば、特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、二重鎖AD-67635、AD-67637、AD-67658、AD-67632、AD-67629、AD-67631、AD-67633、AD-67643、AD-67653、AD-67640、AD-67650、AD-67676、AD-67661、AD-67667、AD-67655、AD-67672、AD-67659、AD-67673、AD-67664、AD-67662、AD-67660、AD-67656、AD-67628、AD-67647、AD-67626、またはAD-67645のアンチセンス配列のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含む相補性領域を含む。特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、前述の二重鎖のアンチセンス配列のいずれか1つの連続する少なくとも15ヌクレオチドを含む相補性領域を含む。
【0026】
一部の態様では、センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全ては、修飾を含む。一態様では、修飾ヌクレオチドの少なくとも1つは、デオキシ-ヌクレオチド、3'末端デオキシ-チミン(dT)ヌクレオチド、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ-修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、アンロックドヌクレオチド、配座固定ヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ修飾ヌクレオチド、2'-O-アリル修飾ヌクレオチド、2'-C-アルキル修飾ヌクレオチド、2'-ヒドロキシル(hydroxly)修飾ヌクレオチド、2'-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2'-O-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミデート、非天然塩基を含むヌクレオチド、テトラヒドロピラン修飾ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5'-ホスフェートを含むヌクレオチド、および5'-ホスフェートミミックを含むヌクレオチドからなる群より選択される。別の態様では、修飾ヌクレオチドは、3'末端デオキシ-チミンヌクレオチド(dT)の短い配列を含む。
【0027】
特定の態様では、センス鎖のヌクレオチドの実質的に全ては、修飾されている。特定の態様では、アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全ては、修飾されている。特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方のヌクレオチドの実質的に全ては、修飾されている。
【0028】
特定の態様では、二重鎖は、表5に提供される修飾アンチセンス鎖を含む。特定の態様では、二重鎖は、表5に提供される修飾センス鎖を含む。特定の態様では、二重鎖は、表5に提供される修飾二重鎖を含む。
【0029】
特定の態様では、アンチセンス鎖と標的との間の相補性領域は、少なくとも17ヌクレオチド長である。例えば、アンチセンス鎖と標的との間の相補性領域は、19から21ヌクレオチド長であり、例えば、相補性領域は、21ヌクレオチド長である。好ましい態様では、各鎖は、30ヌクレオチド長以下である。
【0030】
一部の態様では、少なくとも1つの鎖は、少なくとも1ヌクレオチドの3'オーバーハングを含み、例えば、少なくとも1つの鎖は、少なくとも2ヌクレオチドの3'オーバーハングを含む。
【0031】
多くの態様では、RNAi剤は、リガンドをさらに含む。リガンドは、RNAi剤のセンス鎖の3'末端にコンジュゲートしていることができる。リガンドは、非限定的に
を含むN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体であることができる。
【0032】
以下の概略図に示されるようにリガンドにコンジュゲートしている、例示的なRNAi剤:
式中、XはOまたはSである。一態様では、XはOである。
【0033】
特定の態様では、リガンドは、コレステロール部分であることができる。
【0034】
特定の態様では、相補性領域は、表3および表5のいずれか1つのアンチセンス配列の1つを含む。別の態様では、相補性領域は、表3および表5のいずれか1つのアンチセンス配列の1つからなる。
【0035】
別の局面では、本発明は、PD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖RNAi剤であって、二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;p、p'、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
p'、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し;N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、センス鎖は、少なくとも1つのリガンドとコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤を提供する。
【0036】
特定の態様では、iは0である;jは0である;iは1である;jは1である;iおよびjの両方は0である;またはiおよびjの両方は1である。別の態様では、kは0である;lは0である;kは1である;lは1である;kおよびlの両方は0である;またはkおよびlの両方は1である。別の態様では、XXXは、X'X'X'と相補的であり、YYYは、Y'Y'Y'と相補的であり、ZZZは、Z'Z'Z'と相補的である。別の態様では、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位またはその近傍に出現する。別の態様では、Y'Y'Y'モチーフは、アンチセンス鎖の5'末端から11、12および13位に出現する。一態様では、Y'は、2'-O-メチルである。
【0037】
例えば、式(III)は、式(IIIa)によって表すことができる:
。
【0038】
別の態様では、式(III)は、式(IIIb)によって表される:
式中、各N
bおよびN
b'は、独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0039】
あるいは、式(III)は、式(IIIc)によって表すことができる:
式中、各N
bおよびN
b'は、独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0040】
さらに、式(III)は、式(IIId)によって表すことができる:
式中、各N
bおよびN
b'は、独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各N
aおよびN
a'は、独立して、2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0041】
特定の態様では、二本鎖領域は、15~30ヌクレオチド対長である。例えば、二本鎖領域は、17~23ヌクレオチド対長であることができる。二本鎖領域は、17~25ヌクレオチド対長であることができる。二本鎖領域は、23~27ヌクレオチド対長であることができる。二本鎖領域は、19~21ヌクレオチド対長であることができる。二本鎖領域は、21~23ヌクレオチド対長であることができる。
【0042】
特定の態様では、各鎖は、15~30個のヌクレオチドを有する。他の態様では、 各鎖は、19~30個のヌクレオチドを有する。
【0043】
ヌクレオチド上の修飾は、非限定的に、LNA、HNA、CeNA、2'-メトキシエチル、2'-O-アルキル、2'-O-アリル、2'-C- アリル、2'-フルオロ、2'-デオキシ、2'-ヒドロキシル、およびその組合せを含む群より選択され得る。別の態様では、ヌクレオチド上の修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾である。
【0044】
特定の態様では、リガンドは、一価のリンカーまたは二価もしくは三価の分枝リンカーを介して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である。一態様では、リガンドは、下記である:
。
【0045】
リガンドは、センス鎖の3'末端に結合していることができる。
【0046】
リガンドとコンジュゲートしたRNAi剤の例示的な構造は、下記の概略図に示される:
。
【0047】
特定の態様では、リガンドは、コレステロール部分であることができる。
【0048】
特定の態様では、 RNAi剤は、少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合をさらに含む。例えば、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合は、一方の鎖、すなわち、センス鎖もしくはアンチセンス鎖の3'末端に;または両方の鎖、すなわち、センス鎖およびアンチセンス鎖の末端にある。
【0049】
特定の態様では、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合は、一方の鎖、すなわち、センス鎖もしくはアンチセンス鎖の5'末端に;または両方の鎖、すなわち、センス鎖およびアンチセンス鎖の末端にある。
【0050】
特定の態様では、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合は、一方の鎖、すなわち、センス鎖もしくはアンチセンス鎖の5'末端および3'末端の両方に;または両方の鎖、すなわち、センス鎖およびアンチセンス鎖の末端にある。
【0051】
特定の態様では、二重鎖のアンチセンス鎖の5'末端の1位の塩基対は、AU塩基対である。
【0052】
特定の態様では、Yヌクレオチドは、2'-フルオロ修飾を含有する。別の態様では、Y'ヌクレオチドは、2'-O-メチル修飾を含有する。別の態様では、p'>0である。一部の態様では、p'=2である。一部の態様では、q'=0、p=0、q=0であり、p'オーバーハングヌクレオチドは、標的mRNAと相補的である。一部の態様では、q'=0、p=0、q=0であり、p'オーバーハングヌクレオチドは、標的mRNAと非相補的である。
【0053】
特定の態様では、センス鎖は、合計21個のヌクレオチドを有し、アンチセンス鎖は、合計23個のヌクレオチドを有する。
【0054】
特定の態様では、少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されている。他の態様では、全てのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されている。
【0055】
特定の態様では、 RNAi剤は、表3および5のいずれか1つに列挙されるRNAi剤の群より選択される。特定の態様では、センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全ては、修飾を含む。
【0056】
一局面では、本発明は、細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖RNAi剤であって、二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;p、p'、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
p'、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、センス鎖は、少なくとも1つのリガンドとコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤を提供する。
【0057】
一局面では、本発明は、細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖RNAi剤であって、二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、i、j、k、およびlは、各々独立して、0または1であり;各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;p、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し; XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、センス鎖は、少なくとも1つのリガンドとコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤を提供する。
【0058】
一局面では、本発明は、細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖RNAi剤であって、二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;p、q、およびq'は、各々独立して0~6であり;n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、センス鎖は、少なくとも1つのリガンドとコンジュゲートしており、リガンドは、一価のリンカーまたは二価もしくは三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である、
二本鎖RNAi剤を提供する。
【0059】
一局面では、本発明は、細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖RNAi剤であって、二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;p、q、およびq'は、各々独立して0~6であり;n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み;センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしており、リガンドは、一価のリンカーまたは二価もしくは三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である、
二本鎖RNAi剤を提供する。
【0060】
一局面では、本発明は、細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖RNAi剤であって、二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;p、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;YYYおよびY'Y'Y'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、かつ
ここで、センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み;センス鎖は、少なくとも1つのリガンドとコンジュゲートしており、リガンドは、一価のリンカーまたは二価もしくは三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である、
二本鎖RNAi剤を提供する。
【0061】
一局面では、本発明は、PD-L1の発現を阻害するための二本鎖RNAi剤であって、二本鎖RNAi剤が、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、センス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾より選択される修飾を含み、センス鎖が、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾より選択される修飾を含み、アンチセンス鎖が、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合および3'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖が、3'末端で一価のリンカーまたは二価もしくは三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体とコンジュゲートしている、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0062】
別の局面では、本発明は、PD-L1の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、二本鎖RNAi剤が、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、センス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾からなる群より選択されるヌクレオチド修飾を含み、センス鎖が、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾からなる群より選択されるヌクレオチド修飾を含み、アンチセンス鎖が、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合および3'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖が、3'末端で二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体とコンジュゲートしている、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0063】
特定の態様では、センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全ては、修飾ヌクレオチドである。特定の態様では、各鎖は、19~30個のヌクレオチドを有する。
【0064】
特定の態様では、センス鎖のヌクレオチドの実質的に全ては、修飾されている。特定の態様では、アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全ては、修飾されている。特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方のヌクレオチドの実質的に全ては、修飾されている。
【0065】
一局面では、本発明は、本明細書に記載のRNAi剤を含有する細胞を提供する。
【0066】
一局面では、本発明は、RNAi剤の少なくとも1つの鎖をコードするベクターであって、RNAi剤が、PD-L1をコードするmRNAの少なくとも一部と相補的な領域を含み、RNAiが、30塩基対長以下であり、RNAi剤が、切断のために当該mRNAを標的とする、ベクターを提供する。特定の態様では、相補性領域は、少なくとも15ヌクレオチド長である。特定の態様では、相補性領域は、19から23ヌクレオチド長である。
【0067】
一局面では、本発明は、本明細書に記載のベクターを含む細胞を提供する。
【0068】
一局面では、本発明は、本発明のRNAi剤を含む、PD-L1遺伝子の発現を阻害するための薬学的組成物を提供する。一態様では、RNAii剤は、緩衝化されていない溶液中で投与される。特定の態様では、緩衝化されていない溶液は、生理食塩水または水である。他の態様では、RNAii剤は、緩衝溶液中で投与される。そのような態様では、緩衝溶液は、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩、もしくはリン酸塩、またはその任意の組合せを含むことができる。例えば、緩衝溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であることができる。
【0069】
一局面では、本発明は、本発明の二本鎖RNAi剤および脂質製剤を含む薬学的組成物を提供する。特定の態様では、脂質製剤は、LNPを含む。特定の態様では、脂質製剤は、MC3を含む。
【0070】
一局面では、本発明は、細胞におけるPD-L1発現を阻害する方法であって、(a)細胞を、本発明の二本鎖RNAi剤または本発明の薬学的組成物と接触させる工程;および(b)工程(a)で産生した細胞を、PD-L1遺伝子のmRNA転写物の分解を得るために十分な時間にわたって維持し、それにより、細胞におけるPD-L1遺伝子の発現を阻害する工程を含む、方法を提供する。特定の態様では、細胞は、対象、例えば、ヒト対象、例えば女性のヒトまたは男性のヒトの内部にある。好ましい態様では、PD-L1の発現は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%、または使用されるアッセイ方法の検出の閾値未満まで阻害される。
【0071】
一局面では、本発明は、PD-L1の発現の低減から恩恵を被るであろう疾患または障害を有する対象を処置する方法であって、対象に、治療有効量の本発明のRNAi剤または本発明の薬学的組成物を投与し、それにより、対象を処置する工程を含む、方法を提供する。
【0072】
一局面では、本発明は、PD-L1の発現の低減から恩恵を被るであろう疾患または障害を有する対象において少なくとも1つの症状を予防する方法であって、対象に、予防有効量の本発明のRNAi剤または本発明の薬学的組成物を投与し、それにより、PD-L1の発現の低減から恩恵を被るであろう障害を有する対象において少なくとも1つの症状を予防する工程を含む、方法を提供する。
【0073】
特定の態様では、対象へのRNAiの投与は、PD-L1シグナル伝達経路に減少を引き起こす。特定の態様では、RNAiの投与は、対象におけるPD-L1のレベル、例えば、対象におけるPD-L1の血清レベルに減少を引き起こす。
【0074】
特定の態様では、PD-L1関連疾患は、慢性細胞内感染症などの感染症、例えば、ウイルス疾患、例えば、肝炎感染、または細菌感染、例えば、結核感染である。
【0075】
特定の態様では、PD-L1関連疾患は、がん、例えば、肝臓がん、例えば、肝細胞がんである。
【0076】
特定の態様では、本発明は、PD-L1関連疾患を有する対象に抗ウイルス剤を投与する工程をさらに含む。特定の態様では、抗ウイルス剤は、ヌクレオチドまたはヌクレオシド類似体である。特定の態様では、抗ウイルス剤は、肝炎ウイルス感染、例えば、HBV感染、HDV感染の処置用である。特定の態様では、抗ウイルス剤は、免疫刺激剤ではない。
【0077】
特定の態様では、本発明は、PD-L1関連疾患を有する対象に化学療法剤を投与する工程をさらに含む。
【0078】
PD-L1関連疾患ががんである特定の態様では、対象は、がんについてさらに処置される。特定の態様では、がんについての処置は、外科手術を含む。特定の態様では、がんについての処置は、照射を含む。特定の態様では、がんについての処置は、化学療法剤の投与を含む。
【0079】
様々な態様では、RNAi剤は、約0.01mg/kg~約10mg/kgまたは約0.5mg/kg~約50mg/kgの用量で投与される。一部の態様では、RNAi剤は、約10mg/kg~約30mg/kgの用量で投与される。特定の態様では、RNAi剤は、約0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、および30mg/kgより選択される用量で投与される。特定の態様では、RNAi剤は、約0.1mg/kg~約5.0mg/kgの用量で1週間に約1回、1ヶ月に1回、2ヶ月おきに1回、または四半期に1回(すなわち、3ヶ月毎に1回)投与される。
【0080】
特定の態様では、RNAi剤は、対象に1週間に1回投与される。特定の態様では、RNAii剤は、対象に1ヶ月に1回投与される。特定の態様では、RNAii剤は、四半期に(すなわち、3ヶ月毎に)1回投与される。
【0081】
ある態様では、RNAi剤は、対象に皮下投与される。
【0082】
様々な態様では、本発明の方法は、対象におけるPD-L1レベルを測定する工程をさらに含む。特定の態様では、PD-L1シグナル伝達経路の発現レベルまたは活性レベルの減少は、PD-L1関連疾患が処置されつつあることを示す。
【0083】
様々な態様では、PD-L1発現の代用マーカーが測定される。例えば、感染症の処置において、病原体、例えば、病原体からのタンパク質または核酸、例えば、HBsAg、HBeAg、HB cccDNAの存在が検出される。特定の態様では、病原体に対する免疫応答の指標、例えば、抗HBs抗体が検出される。特定の態様では、感染の有効な処置を示す変化、好ましくは代用マーカーにおける臨床的に意味のある変化が検出される。がんの処置において、RECIST基準を使用する腫瘍量の安定化または低減の実証を、PD-L1の発現または活性の低減についての代用マーカーとして使用することができる。
[本発明1001]
プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該RNAi剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、該センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、かつ該RNAi剤が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、二本鎖RNAi剤。
[本発明1002]
プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該RNAi剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、二重鎖AD-67635、AD-67637、AD-67658、AD-67632、AD-67629、AD-67631、AD-67633、AD-67643、AD-67653、AD-67640、AD-67650、AD-67676、AD-67661、AD-67667、AD-67655、AD-67672、AD-67659、AD-67673、AD-67664、AD-67662、AD-67660、AD-67656、AD-67628、AD-67647、AD-67626、またはAD-67645のうちのいずれか1つにおけるアンチセンス配列のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含む相補性領域を含む、二本鎖RNAi剤。
[本発明1003]
センス鎖およびアンチセンス鎖が、二重鎖AD-67635、AD-67637、AD-67658、AD-67632、AD-67629、AD-67631、AD-67633、AD-67643、AD-67653、AD-67640、AD-67650、AD-67676、AD-67661、AD-67667、AD-67655、AD-67672、AD-67659、AD-67673、AD-67664、AD-67662、AD-67660、AD-67656、AD-67628、AD-67647、AD-67626、またはAD-67645のうちのいずれか1つにおけるヌクレオチド配列のうちのいずれか1つからなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、本発明1001または1002のdsRNA剤。
[本発明1004]
センス鎖のヌクレオチドの実質的に全てまたはアンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、ヌクレオチド修飾を含む、本発明1001~1003のいずれかのdsRNA剤。
[本発明1005]
センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全てが、修飾を含む、本発明1001~1003のいずれかのdsRNA剤。
[本発明1006]
プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、
該センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243のうちのいずれか1つとは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、
該センス鎖のヌクレオチドの実質的に全ておよび該アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、ヌクレオチド修飾を含み、かつ
該センス鎖が、3'末端に結合したリガンドにコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
[本発明1007]
センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全てが、修飾を含む、本発明1006の二本鎖RNAi剤。
[本発明1008]
ヌクレオチド修飾のうちの少なくとも1つが、デオキシ-ヌクレオチド、3'末端デオキシ-チミン(dT)ヌクレオチド、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ-修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、アンロックドヌクレオチド、配座固定ヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ-修飾ヌクレオチド、2'-O-アリル-修飾ヌクレオチド、2'-C-アルキル-修飾ヌクレオチド、2'-ヒドロキシル(hydroxly)-修飾ヌクレオチド、2'-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2'-O-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミデート、非天然塩基を含むヌクレオチド、テトラヒドロピラン修飾ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5'-ホスフェートを含むヌクレオチド、および5'-ホスフェートミミックを含むヌクレオチドからなる群より選択される、本発明1001~1006のいずれかのRNAi剤。
[本発明1009]
ヌクレオチド修飾が、3'末端デオキシ-チミンヌクレオチド(dT)の短い配列を含む、本発明1008のRNAi剤。
[本発明1010]
相補性領域が、少なくとも17ヌクレオチド長である、本発明1002のRNAi剤。
[本発明1011]
相補性領域が、19~21ヌクレオチド長である、本発明1002のRNAi剤。
[本発明1012]
相補性領域が、19ヌクレオチド長である、本発明1011のRNAi剤。
[本発明1013]
各鎖が、30ヌクレオチド長以下である、本発明1001、1002、および1006のいずれかのRNAi剤。
[本発明1014]
少なくとも1つの鎖が、少なくとも1ヌクレオチドの3'オーバーハングを含む、本発明1001、1002、および1006のいずれかのRNAi剤。
[本発明1015]
少なくとも1つの鎖が、少なくとも2ヌクレオチドの3'オーバーハングを含む、本発明1001、1002、および1006のいずれかのRNAi剤。
[本発明1016]
リガンドをさらに含む、本発明1001~1005のいずれかのRNAi剤。
[本発明1017]
リガンドが、dsRNA剤のセンス鎖の3'末端にコンジュゲートしている、本発明1016のRNAi剤。
[本発明1018]
リガンドが、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体である、本発明1006または1016のRNAi剤。
[本発明1019]
リガンドが、下記である、本発明1018のRNAi剤:
。
[本発明1020]
下記の概略図に示されるように、dsRNA剤がリガンドにコンジュゲートしている、本発明1018のRNAi剤:
式中、Xは、OまたはSである。
[本発明1021]
XがOである、本発明1020のRNAi剤。
[本発明1022]
相補性領域が、表3および表5におけるアンチセンス配列のうちのいずれか1つを含む、本発明1002のRNAi剤。
[本発明1023]
相補性領域が、表3または表5におけるアンチセンス配列のうちのいずれか1つからなる、本発明1002のRNAi剤。
[本発明1024]
PD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;
p、p'、q、およびq'は、各々独立して0~6であり;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
p'、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
[本発明1025]
iが0である;jが0である;iが1である;jが1である;iおよびjの両方が0である;またはiおよびjの両方が1である、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1026]
kが0である;lが0である;kが1である;lが1である;kおよびlの両方が0である;またはkおよびlの両方が1である、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1027]
XXXが、X'X'X'と相補的であり、YYYが、Y'Y'Y'と相補的であり、かつZZZが、Z'Z'Z'と相補的である、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1028]
YYYモチーフが、センス鎖の切断部位またはその近傍に出現する、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1029]
Y'Y'Y'モチーフが、アンチセンス鎖の5'末端から11、12および13位に出現する、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1030]
Y'が、2'-O-メチルである、本発明1029の二本鎖RNAi剤。
[本発明1031]
式(III)が、式(IIIa)によって表される、本発明1024の二本鎖RNAi剤:
。
[本発明1032]
式(III)が、式(IIIb)によって表される、本発明1024の二本鎖RNAi剤:
式中、各N
bおよびN
b'は、独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
[本発明1033]
式(III)が、式(IIIc)によって表される、本発明1024の二本鎖RNAi剤:
式中、各N
bおよびN
b'は、独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
[本発明1034]
式(III)が、(IIId)によって表される、本発明1024の二本鎖RNAi剤:
式中、各N
bおよびN
b'は、独立して、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、かつ各N
aおよびN
a'は、独立して、2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
[本発明1035]
二本鎖領域が、15~30ヌクレオチド対長である、本発明1006または1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1036]
二本鎖領域が、17~23ヌクレオチド対長である、本発明1035の二本鎖RNAi剤。
[本発明1037]
二本鎖領域が、17~25ヌクレオチド対長である、本発明1035の二本鎖RNAi剤。
[本発明1038]
二本鎖領域が、23~27ヌクレオチド対長である、本発明1035の二本鎖RNAi剤。
[本発明1039]
二本鎖領域が、19~21ヌクレオチド対長である、本発明1035の二本鎖RNAi剤。
[本発明1040]
二本鎖領域が、21~23ヌクレオチド対長である、本発明1006または1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1041]
各鎖が、15~30個のヌクレオチドを有する、本発明1006または1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1042]
各鎖が、19~30個のヌクレオチドを有する、本発明1006、1024、および1034のいずれかの二本鎖RNAi剤。
[本発明1043]
ヌクレオチド修飾が、LNA、HNA、CeNA、2'-メトキシエチル、2'-O-アルキル、2'-O-アリル、2'-C-アリル、2'-フルオロ、2'-デオキシ、2'-ヒドロキシル、およびその組合せからなる群より選択される、本発明1006または1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1044]
ヌクレオチド修飾が、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾である、本発明1043の二本鎖RNAi剤。
[本発明1045]
リガンドが、二価もしくは三価の分枝リンカーを経由して結合した1つもしくは複数のGalNAc誘導体;またはコレステロールである、本発明1006または1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1046]
リガンドが、下記である、本発明1024の二本鎖RNAi剤:
。
[本発明1047]
リガンドが、センス鎖の3'末端に結合している、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1048]
下記の概略図に示されるように、リガンドにコンジュゲートしている、本発明1047の二本鎖RNAi剤:
。
[本発明1049]
少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合をさらに含む、本発明1006または1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1050]
ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合が、一方の鎖の3'末端にある、本発明1049の二本鎖RNAi剤。
[本発明1051]
前記鎖がアンチセンス鎖である、本発明1050の二本鎖RNAi剤。
[本発明1052]
前記鎖がセンス鎖である、本発明1050の二本鎖RNAi剤。
[本発明1053]
ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合が、一方の鎖の5'末端にある、本発明1049の二本鎖RNAi剤。
[本発明1054]
前記鎖がアンチセンス鎖である、本発明1053の二本鎖RNAi剤。
[本発明1055]
前記鎖がセンス鎖である、本発明1053の二本鎖RNAi剤。
[本発明1056]
ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合が、一方の鎖の5'末端および3'末端の両方にある、本発明1049の二本鎖RNAi剤。
[本発明1057]
前記鎖がアンチセンス鎖である、本発明1056の二本鎖RNAi剤。
[本発明1058]
二重鎖のアンチセンス鎖の5'末端の1位の塩基対が、AU塩基対である、本発明1006または1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1059]
Yヌクレオチドが、2'-フルオロ修飾を含有する、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1060]
Y'ヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾を含有する、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1061]
p'>0である、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1062]
p'=2である、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1063]
q'=0、p=0、q=0であり、かつp'オーバーハングヌクレオチドが標的mRNAと相補的である、本発明1062の二本鎖RNAi剤。
[本発明1064]
q'=0、p=0、q=0であり、かつp'オーバーハングヌクレオチドが標的mRNAと非相補的である、本発明1062の二本鎖RNAi剤。
[本発明1065]
センス鎖が、合計21個のヌクレオチドを有し、かつアンチセンス鎖が、合計23個のヌクレオチドを有する、本発明1056の二本鎖RNAi剤。
[本発明1066]
少なくとも1つのn
p'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されている、本発明1061~1065のいずれかの二本鎖RNAi剤。
[本発明1067]
全てのn
p'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されている、本発明1066の二本鎖RNAi剤。
[本発明1068]
表3および表5に列挙されるRNAi剤の群より選択される、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1069]
センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全てが、修飾を含む、本発明1024の二本鎖RNAi剤。
[本発明1070]
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力がある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して、0または1であり;
p、p'、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
p'、n
q、およびn
q'は、独立して 、オーバーハングヌクレオチドを表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
[本発明1071]
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力のある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
p、q、およびq'は、各々独立して0~6であり;
n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
[本発明1072]
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力のある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して0または1であり;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
p、q、およびq'は、各々独立して0~6であり;
n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしており、該リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である、
二本鎖RNAi剤。
[本発明1073]
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力のある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して、0または1であり;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
p、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;
n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
N
b上の修飾は、Y上の修飾と異なり、かつN
b'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり、
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしており、該リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である、
二本鎖RNAi剤。
[本発明1074]
細胞におけるPD-L1の発現を阻害する能力のある二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、該二本鎖RNAi剤が、アンチセンス鎖と相補的なセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖が、PD-L1をコードするmRNAの一部と相補的な領域を含み、各鎖が、約14から約30ヌクレオチド長であり、該二本鎖RNAi剤が、式(III)によって表され:
式中、
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p、n
q、およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
p、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;
n
p'>0であり、かつ少なくとも1つのn
p'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており;
各N
aおよびN
a'は、独立して、修飾もしくは非修飾のいずれかまたはその組合せである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
YYYおよびY'Y'Y'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表し、ここで、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、かつ
ここで、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしており、該リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体である、
二本鎖RNAi剤。
[本発明1075]
PD-L1の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(RNAi)剤であって、
該二本鎖RNAi剤が、二本鎖領域を形成しているセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、
該センス鎖が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のヌクレオチド3221~3243、351~372、618~641、618~639、619~640、620~641、1093~1115、1093~1114、1094~1115、1167~1188、1293~1314、1518~1539、2103~2124、2220~2261、2220~2241、2240~2261、2648~2680、2648~2669、2658~2679、2659~2680、3143~3164、3198~3219、3221~3242、または3222~3243とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列の相補的部分とは3つ以下のヌクレオチドが異なる、連続する少なくとも15ヌクレオチドを含み、
該センス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾からなる群より選択されるヌクレオチド修飾を含み、
該センス鎖が、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、
該アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾からなる群より選択されるヌクレオチド修飾を含み、
該アンチセンス鎖が、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合および3'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、かつ
該センス鎖が、3'末端で二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体にコンジュゲートしている、
二本鎖RNAi剤。
[本発明1076]
センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全てが、ヌクレオチド修飾を含む、本発明1075の二本鎖RNAi剤。
[本発明1077]
各鎖が、19~30個のヌクレオチドを有する、本発明1075の二本鎖RNAi剤。
[本発明1078]
本発明1001、1002、1006、1024、および1070~1075のいずれかのRNAi剤を含有する、細胞。
[本発明1079]
本発明1001~1077のいずれかのRNAi剤を含む、PD-L1遺伝子の発現を阻害するための薬学的組成物。
[本発明1080]
前記RNAi剤が、緩衝化されていない溶液中で投与される、本発明1079の薬学的組成物。
[本発明1081]
緩衝化されていない溶液が、生理食塩水または水である、本発明1080の薬学的組成物。
[本発明1082]
RNAi剤が、緩衝溶液と共に投与される、本発明1079の薬学的組成物。
[本発明1083]
緩衝溶液が、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩、もしくはリン酸塩またはその任意の組合せを含む、本発明1082の薬学的組成物。
[本発明1084]
緩衝溶液が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である、本発明1082の薬学的組成物。
[本発明1085]
本発明1001~1005のいずれかの二本鎖RNAi剤および脂質製剤を含む、薬学的組成物。
[本発明1086]
脂質製剤が、LNPを含む、本発明1085の薬学的組成物。
[本発明1087]
脂質製剤が、MC3を含む、本発明1085の薬学的組成物。
[本発明1088]
細胞を、本発明1001~1077のいずれかの二本鎖RNAi剤または本発明1079~1087のいずれかの薬学的組成物と接触させ、それにより、該細胞におけるPD-L1遺伝子の発現を阻害する工程
を含む、細胞におけるPD-L1の発現を阻害する方法。
[本発明1089]
細胞が、対象内にある、本発明1088の方法。
[本発明1090]
対象が、ヒトである、本発明1089の方法。
[本発明1091]
PD-L1の発現が、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%;またはアッセイの検出レベル未満に阻害される、本発明1088~1090のいずれかの方法。
[本発明1092]
治療有効量の本発明1001~1077のいずれかのRNAi剤または本発明1079~1087のいずれかの薬学的組成物を対象に投与し、それにより、該対象を処置する工程
を含む、PD-L1の発現の低減から恩恵を被るであろう疾患または障害を有する対象を処置する方法。
[本発明1093]
対象へのRNAiの投与が、PD-L1シグナル伝達経路に減少を引き起こす、本発明1092の方法。
[本発明1094]
障害が、PD-L1関連疾患である、本発明1092の方法。
[本発明1095]
PD-L1関連疾患が、感染である、本発明1094の方法。
[本発明1096]
感染が、慢性細胞内感染である、本発明1095の方法。
[本発明1097]
PD-L1関連疾患が、ウイルス感染である、本発明1094~1096のいずれかの方法。
[本発明1098]
PD-L1関連疾患が、肝炎ウイルス感染である、本発明1094~1097のいずれかの方法。
[本発明1099]
対象における感染の少なくとも1つの徴候または症状を検出する工程をさらに含む、本発明1095~1098のいずれかの方法。
[本発明1100]
PD-L1関連疾患が、がんである、本発明1092の方法。
[本発明1101]
対象が、ヒトである、本発明1092~1100のいずれかの方法。
[本発明1102]
感染またはがんの処置のための剤を投与する工程をさらに含む、本発明1092~1101のいずれかの方法。
[本発明1103]
dsRNA剤が、約0.01mg/kg~約50mg/kgの用量で投与される、本発明1092~1102のいずれかの方法。
[本発明1104]
dsRNA剤が、対象に皮下投与される、本発明1092~1103のいずれかの方法。
[本発明1105]
対象におけるPD-L1シグナル伝達経路のレベルを測定する工程をさらに含む、本発明1092~1104のいずれかの方法。
[本発明1106]
対象におけるPD-L1のレベルを測定する工程をさらに含む、本発明1092~1104のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】抗原提示細胞とT細胞との間のPD-L1シグナル伝達を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
発明の詳細な説明
本発明は、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)遺伝子のRNA転写物のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)媒介切断を生じさせるiRNA組成物を提供する。この遺伝子は、細胞内、例えば、ヒトなどの対象内部の細胞内にあり得る。これらのiRNAの使用は、哺乳動物における対応する遺伝子(PD-L1遺伝子)のmRNAの、標的とされた分解を可能にする。
【0086】
本発明のiRNAは、他の哺乳動物種のPD-L1オルソログにおいて保存されている遺伝子部分を含むヒトPD-L1遺伝子を標的とするように設計されている。理論に制約されることを意図するわけではないが、これらのiRNA剤における前述の特性と特異的標的部位または特定の修飾との組合せまたは副組合せが、本発明のiRNAに、改善された有効性、安定性、効力、耐久性、および安全性を付与すると考えられる。
【0087】
したがって、本発明は、PD-L1遺伝子のRNA転写物のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)媒介切断を生じさせるiRNA組成物を使用して、PD-L1遺伝子の発現を阻害または低減することから恩恵を被るであろう障害、例えば、感染などのPD-L1関連疾患、例えば、ウイルス感染、例えば、肝炎ウイルス感染、または肝臓がんなどのがん、例えば、肝細胞がんを有する対象を処置するための方法も提供する。
【0088】
特に、非常に低い投薬量の本発明のiRNAが、RNA干渉(RNAi)を特異的かつ効率的に媒介する結果、対応する遺伝子(PD-L1遺伝子)の発現の顕著な阻害を招くことができる。
【0089】
本発明のiRNAは、約30ヌクレオチド長以下、例えば、15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24,20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22ヌクレオチド長である領域であって、PD-L1遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的な領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。特定の態様では、本発明のiRNAは、PD-L1遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的な、少なくとも19個の連続するヌクレオチドの領域を有する、より長い長さ、例えば最大66ヌクレオチド長、例えば、36~66、26~36、25~36、31~60、22~43、27~53ヌクレオチド長を含むことができるRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。より長い長さのアンチセンス鎖を有するiRNAは、好ましくは、20~60ヌクレオチド長の第2のRNA鎖(センス鎖)を含み、ここで、センス鎖およびアンチセンス鎖は、18~30個の連続するヌクレオチドの二重鎖を形成する。これらのiRNAの使用は、哺乳動物における対応する遺伝子(PD-L1遺伝子)のmRNAの、標的とされた分解を可能にする。特に、非常に低い投薬量の本発明のiRNAが、RNA干渉(RNAi)を特異的かつ効率的に媒介する結果、対応する遺伝子(PD-L1遺伝子)の発現の顕著な阻害を招くことができる。インビトロおよびインビボアッセイを使用して、本発明者らは、PD-L1遺伝子を標的とするiRNAが、RNAiを媒介する結果、PD-L1の発現の顕著な阻害を招くことができるだけでなく、感染症、例えば、ウイルス疾患もしくは慢性細胞内感染;またはがんなどのPD-L1関連疾患に関連する症状のうちの1つまたは複数を減少させるであろう、PD-L1経路を介したシグナル伝達を低減できることを実証した。したがって、これらのiRNAを含む方法および組成物は、感染症などのPD-L1関連疾患、例えば、ウイルス疾患もしくは慢性細胞内感染、またはがんを有する対象を処置するために有用である。本明細書における方法および組成物は、対象におけるPD-L1、例えば、特に慢性細胞内感染、特に慢性肝臓感染、または腫瘍を有する対象における、対象における肝臓PD-L1のレベルを低減するために有用である。
【0090】
以下の詳細な説明は、iRNAを含有する組成物をどのように作製および使用して、PD-L1遺伝子の発現を阻害するか、ならびにPD-L1遺伝子の発現の低減から恩恵を被るであろう疾患または障害を有する対象を処置するための組成物、使用、および方法を開示する。
【0091】
I. 定義
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語を最初に定義する。加えて、パラメータの値または値の範囲が列挙される場合は常に、列挙された値の中間の値および範囲もまた、本発明の一部であることが意図されることに留意すべきである。
【0092】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書において、冠詞の文法的指示対象の1つまたは1つ超(すなわち少なくとも1つ)に言及するために使用される。一例として、「エレメント(an element)」は、1つのエレメント、または1つ超のエレメント、例えば複数のエレメントを意味する。
【0093】
「含む」という用語は、本明細書において、「非限定的に含む」という語句を意味するために使用され、それと互換的に使用される。
【0094】
「または」という用語は、本明細書において、文脈が明確に別のことを示さない限り、「および/または」という用語を意味するために使用され、それと互換的に使用される。例えば、「センス鎖またはアンチセンス鎖」は、「センス鎖もしくはアンチセンス鎖、またはセンス鎖およびアンチセンス鎖」と理解される。
【0095】
「約」という用語は、本明細書において、当技術分野における典型的な許容範囲内であることを意味するために使用される。例えば、「約」を、平均から約2標準偏差と理解することができる。特定の態様では、約は、±10%を意味する。特定の態様では、約は、±5%を意味する。約が一連の数または範囲の前に存在する場合、「約」は、その連なりまたは範囲の中の数のそれぞれを修飾することができると理解される。
【0096】
1つの数または一連の数の前の「少なくとも」という用語は、「少なくとも」という用語に隣接する数、および文脈から明確なように論理的に含めることもできる全ての後続の数または整数を含むと理解される。例えば、核酸分子中のヌクレオチドの数は、整数でなければならない。例えば、「21個のヌクレオチドの核酸分子の少なくとも18個のヌクレオチド」は、18、19、20、または21個のヌクレオチドが指定の性質を有することを意味する。少なくともが、一連の数または範囲の前に存在する場合、「少なくとも」は、その連なりまたは範囲の中の数のそれぞれを修飾することができると理解される。
【0097】
本明細書において使用される「以下」または「未満」は、その語句に隣接する値および文脈から論理的であるような、ゼロまでの論理的なより低い値または整数として理解される。例えば、「2つ以下のヌクレオチド」のオーバーハングを有する二重鎖は、2つ、1つ、または0個のヌクレオチドオーバーハングを有する。「以下」は、一連の数または範囲の前に存在する場合、「以下」はその連なりまたは範囲の中の数の各々を修飾できると理解される。
【0098】
配列と、転写物または他の配列上のそれが指し示す部位との間に矛盾がある場合、明細書に列挙されるヌクレオチド配列が優先されるものとする。
【0099】
本発明の様々な態様は、当業者が適切であると判定するように組み合わせることができる。
【0100】
B7-H;B7H1;PDL1;PD-L1;PDCD1L1;PDCD1LG1、B7ホモログ1、PDCD1リガンド1、およびプログラム細胞死リガンド1としても公知の「プログラム細胞死1リガンド1」、「PD-L1」、または「CD274」は、マウスT細胞およびB細胞、DC、マクロファージ、間葉系幹細胞、および骨髄由来マスト細胞上に恒常的に発現されることが示されている。PD-L1の発現は、広範囲の非造血細胞上にも見出され、活性化後のいくつかの細胞型上でアップレギュレーションされる。IFN-γで刺激すると、PD-L1は、T細胞、NK細胞、マクロファージ、骨髄DC、B細胞、上皮細胞、および血管内皮細胞上に発現されている(Flies DB and Chen L (2007) J Immunother. 30 (3): 251-60)。PD-L1は、マクロファージ上に著しく発現されている。PD-L1に関するさらなる情報は、例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/29126のNCBI遺伝子データベース(本出願の出願日現在で参照により本明細書に組み入れられる)に提供されている。
【0101】
「PD-L1」という用語(および任意で、上に列挙されたその他の認知された名称のいずれか)と互換的に使用される、本明細書に使用される「プログラム細胞死1リガンド1」は、プログラム細胞死1リガンド1タンパク質をコードする天然遺伝子を指す。ヒトPDL-1遺伝子の参照配列のアミノ酸配列および完全コード配列は、例えば、GenBankアクセッション番号GI:390979638(RefSeqアクセッション番号NM_001267706.1;SEQ ID NO:1;SEQ ID NO:2)およびGenBankアクセッション番号GI:292658763(RefSeqアクセッション番号NM_014143.3;SEQ ID NO:9および10)に見出され得る。さらなるスプライス変種が、例えば、参照により本明細書に組み入れられるGrzywnowicz et al., PLoS One. 2012;7:e35178に提供されている。ヒト PD-L1遺伝子の哺乳動物オルソログは、例えば、GI:755563510(RefSeqアクセッション番号XM_006527249.2、マウス;SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4);GI:672040129(RefSeqアクセッション番号XM_006231248.2、ラット;SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6);GenBankアクセッション番号GI:544494555(RefSeqアクセッション番号XM_005581779.1、カニクイザル;SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8)に見出され得る。
【0102】
いくつかの天然SNPが公知であり、それらを、例えば、ヒトPD-L1におけるSNPを列挙しているwww.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/snp_ref.cgi?locusId=29126におけるNCBIのSNPデータベース(本出願の出願日現在で参照により本明細書に組み入れられる)中に見出すことができる。好ましい態様では、そのような天然変種は、PD-L1遺伝子配列の範囲内に含まれる。
【0103】
PD-L1のmRNA配列の追加的な例は、公的に利用可能なデータベース、例えば、GenBank、UniProt、およびOMIMを使用して容易に入手可能である。
【0104】
本明細書において使用される「標的配列」は、一次転写産物のRNAプロセシング産物であるmRNAを含む、PD-L1遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の連続部分を指す。配列の標的部分は、PD-L1遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の部分またはその近辺における、iRNA指向切断のための基質として少なくとも役立つために足るほど長い。一態様では、標的配列は、PD-L1のタンパク質コード領域内である。
【0105】
標的配列は、約9~36ヌクレオチド長、例えば、約15~30ヌクレオチド長であり得る。例えば、標的配列は、約15~30ヌクレオチド長、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24,20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22ヌクレオチド長であることができる。上に列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
【0106】
本明細書に使用される「配列を含む鎖」という用語は、標準ヌクレオチド命名法を使用して、言及される配列によって記載されるヌクレオチド鎖を含む、オリゴヌクレオチドを指す。
【0107】
「G」、「C」、「A」、「T」、および「U」は、一般的に、塩基としてそれぞれグアニン、シトシン、アデニン、チミジン、およびウラシルを含有するヌクレオチドを表す。しかし、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、以下にさらに詳述されるような修飾ヌクレオチドまたは代替置換部分も指すことができると理解されよう(例えば表2を参照されたい)。当業者は、そのような置換部分を保持するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変更することなく、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルを他の部分により置き換えることができることを十分承知している。例えば、非限定的に、塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対を形成することができる。したがって、ウラシル、グアニン、またはアデニンを含有するヌクレオチドを、本発明で取り上げるdsRNAのヌクレオチド配列中で、例えばイノシンを含有するヌクレオチドにより置き換えることができる。別の例では、オリゴヌクレオチドの任意の場所のアデニンおよびシトシンを、それぞれグアニンおよびウラシルで置き換えて、標的mRNAとG-Uゆらぎ塩基対を形成させることができる。そのような置換部分を含有する配列は、本発明で取り上げる組成物および方法に適切である。
【0108】
本明細書において互換的に使用される「iRNA」、「RNAi剤」、「iRNA剤」、および「RNA干渉剤」という用語は、本明細書においてその用語が定義されるRNAを含有する剤であって、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を介してRNA転写物の標的切断を媒介する剤を指す。iRNAは、RNA干渉(RNAi)として公知の過程を経由して、mRNAの配列特異的分解を指令する。iRNAは、例えば、細胞、例えば、哺乳動物対象などの対象内の細胞において、PD-L1遺伝子の発現を調節し、例えば、阻害する。
【0109】
一態様では、本発明のRNAi剤は、標的RNA配列、例えば、PD-L1標的mRNA配列と相互作用して、標的RNAの切断を指令する一本鎖RNAを含む。理論に縛られることを望むものではないが、細胞に導入された長い二本鎖RNAは、ダイサーとして公知のIII型エンドヌクレアーゼによってsiRNAに分解されると考えられている(Sharp et al. (2001) Genes Dev. 15:485)。リボヌクレアーゼIII様酵素であるダイサーがこれらのdsRNAをプロセシングして、特有の2塩基3'オーバーハングを有する19~23塩基対の低分子干渉RNAにする(Bernstein, et al., (2001) Nature 409:363)。次に、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み入れられ、そこで1種または複数種のヘリカーゼがsiRNA二重鎖を巻き戻し、相補的なアンチセンス鎖が標的認識を導くことを可能にする(Nykanen, et al., (2001) Cell 107:309)。適切な標的mRNAに結合すると、RISC内の1種または複数種のエンドヌクレアーゼが標的を切断してサイレンシングを誘導する(Elbashir, et al., (2001) Genes Dev. 15:188)。したがって、一局面では、本発明は、細胞内で生成する一本鎖RNA(siRNA)であって、RISC複合体の形成を促進して、標的遺伝子、すなわちPD-L1遺伝子のサイレンシングを生じさせるsiRNAに関する。したがって、「siRNA」という用語は、本明細書において、上記のiRNAを指すためにも使用される。
【0110】
特定の態様では、RNAi剤は、細胞または生物内に導入されて標的mRNAを阻害する一本鎖siRNA(ssRNAi)であり得る。一本鎖RNAi剤は、RISCエンドヌクレアーゼであるアルゴノート2に結合し、次にこれが標的mRNAを切断する。一本鎖siRNAは、一般的に、15~30個のヌクレオチドであり、かつ化学修飾されている。一本鎖siRNAの設計および試験については、米国特許第8,101,348号およびLima et al., (2012) Cell 150:883-894(その各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。本明細書に記載のアンチセンスヌクレオチド配列の任意のものが、本明細書に記載の一本鎖siRNAとして、またはLima et al., (2012) Cell 150:883-894に記載される方法によって化学修飾されたものとして使用され得る。
【0111】
特定の態様では、本発明の組成物、使用、および方法において用いられる「iRNA」は、二本鎖RNAであり、かつ本明細書において「二本鎖RNAi剤」、「二本鎖RNA(dsRNA)分子」、「dsRNA剤」、または「dsRNA」と称される。「dsRNA」という用語は、標的RNA、すなわちPD-L1遺伝子に対して「センス」および「アンチセンス」方向を有すると称される、2つの逆平行の、かつ実質的に相補的な核酸鎖を含む二重鎖構造を有するリボ核酸分子複合体を指す。本発明の一部の態様では、二本鎖RNA(dsRNA)は、本明細書においてRNA干渉またはRNAiと称される転写後遺伝子サイレンシングメカニズムによる標的RNA、例えばmRNAの分解を誘起する。
【0112】
一般に、dsRNA分子の各鎖のヌクレオチドの大多数はリボヌクレオチドであるが、本明細書に詳細に記載されるとおり、各々または両方の鎖は、1つまたは複数の非リボヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドも含むことができる。加えて、本明細書に使用される「iRNA」は、化学修飾を有するリボヌクレオチドを含む場合があり;iRNAは、複数のヌクレオチドに実質的な修飾を含み得る。本明細書に使用される用語「修飾ヌクレオチド」は、独立して、修飾糖部分、修飾ヌクレオチド間結合、もしくは修飾核酸塩基、またはその任意の組合せを有するヌクレオチドを指す。したがって、修飾ヌクレオチドという用語には、ヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基に対する例えば官能基または原子の置換、付加または除去が包含される。本発明の剤における使用に適した修飾には、本明細書に開示される、または当技術分野において公知の全ての種類の修飾が含まれる。siRNA型分子に使用される任意のそのような修飾が、本明細書および特許請求の範囲のための「iRNA」または「RNAi剤」に包含される。
【0113】
二重鎖領域は、RISC経路を経由する所望の標的RNA特異的分解を可能にする任意の長さであり得、かつ約9~36塩基対長、例えば、約15~30塩基対長、例えば、約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36塩基対長、例えば、約15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24,20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22塩基対長の範囲であり得る。上に列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
【0114】
二重鎖構造を形成する2つの鎖は、1つのより大きなRNA分子の異なる部分であり得、またはそれらは、別々のRNA分子であり得る。2つの鎖が1つのより大きな分子の部分であり、したがって二重鎖構造を形成する一方の鎖の3'末端と、それぞれの他方の鎖の5'末端との間で中断されていないヌクレオチド鎖によって繋がれている場合、繋いでいるRNA鎖は「ヘアピンループ」と称される。ヘアピンループは、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを含むことができる。一部の態様では、ヘアピンループは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、23個またはそれより多くの不対ヌクレオチドを含むことができる。一部の態様では、ヘアピンループは、10個以下のヌクレオチドであることができる。一部の態様では、ヘアピンループは、8個以下の不対ヌクレオチドであることができる。一部の態様では、ヘアピンループは、4~10個の不対ヌクレオチドであることができる。一部の態様では、ヘアピンループは、4~8個のヌクレオチドであることができる。
【0115】
dsRNAの2つの実質的に相補的な鎖が、別々のRNA分子によって構成されている場合、これらの分子は、共有結合的に繋がれている必要はないが、繋がれていることができる。2つの鎖が、一方の鎖の3'末端と、それぞれの他方の鎖の5'末端との間で中断されていないヌクレオチド鎖以外の手段によって共有結合的に繋がれており、二重鎖構造を形成している場合、繋いでいる構造は「リンカー」と称される。RNA鎖は、同じまたは異なる数のヌクレオチドを有し得る。塩基対の最大数は、dsRNAの最短鎖中のヌクレオチド数から、二重鎖に存在するいかなるオーバーハングも差し引いた数である。二本鎖構造に加えて、RNAiは、1つまたは複数のヌクレオチドオーバーハングを含み得る。
【0116】
特定の態様では、本発明のiRNA剤は、各鎖が19~23個のヌクレオチドを含むdsRNAであり、標的RNA配列、例えば、PD-L1遺伝子と相互作用する。理論に縛られることを望むものではないが、細胞に導入された長い二本鎖RNAは、ダイサーとして公知のIII型エンドヌクレアーゼによってsiRNAに分解される(Sharp et al. (2001) Genes Dev. 15:485)。リボヌクレアーゼIII様酵素であるダイサーがdsRNAをプロセシングして、特有の2塩基3'オーバーハングを有する19~23塩基対の低分子干渉RNAにする(Bernstein, et al., (2001) Nature 409:363)。次に、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み入れられ、そこで1種または複数種のヘリカーゼがsiRNA二重鎖を巻き戻し、相補的なアンチセンス鎖が標的認識を導くことを可能にする(Nykanen, et al., (2001) Cell 107:309)。適切な標的mRNAに結合すると、RISC内の1種または複数種のエンドヌクレアーゼが標的を切断してサイレンシングを誘導する(Elbashir, et al., (2001) Genes Dev. 15:188)。
【0117】
一部の態様では、本発明のiRNAは、標的RNA配列、例えば、PD-L1標的mRNA配列と相互作用して標的RNAの切断を指令する24~30個のヌクレオチド、または可能性があることにはいっそう長い、例えば、25~35, 27~53、または27~49個のヌクレオチドのdsRNAである。理論に縛られることを望むものではないが、細胞に導入された長い二本鎖RNAは、ダイサーとして公知のIII型エンドヌクレアーゼによってsiRNAに分解される(Sharp et al. (2001) Genes Dev. 15:485)。リボヌクレアーゼIII様酵素であるダイサーがdsRNAをプロセシングして、特有の2塩基3'オーバーハングを有する19~23塩基対の低分子干渉RNAにする(Bernstein, et al., (2001) Nature 409:363)。次に、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み入れられ、そこで1種または複数種のヘリカーゼがsiRNA二重鎖を巻き戻し、相補的なアンチセンス鎖が標的認識を導くことを可能にする(Nykanen, et al., (2001) Cell 107:309)。適切な標的mRNAに結合すると、RISC内の1種または複数種のエンドヌクレアーゼが標的を切断してサイレンシングを誘導する(Elbashir, et al., (2001) Genes Dev. 15:188)。
【0118】
本明細書に使用される「ヌクレオチドオーバーハング」という用語は、二本鎖iRNAの二重鎖構造から突出する、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。例えば、dsRNAの一方の鎖の3'末端が他方の鎖の5'末端を越えて伸展する、またはその逆の場合、ヌクレオチドオーバーハングがある。dsRNAは、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含むことができ;あるいは、オーバーハングは、少なくとも2つのヌクレオチド、少なくとも3つのヌクレオチド、少なくとも4つのヌクレオチド、少なくとも5つのヌクレオチド、またはそれより多くを含むことができる。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシヌクレオチド/ヌクレオシドを含む、ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含むまたはそれからなることができる。オーバーハング(単数または複数)は、センス鎖、アンチセンス鎖、またはその任意の組合せにあることができる。さらに、オーバーハングのヌクレオチド(単数または複数)は、dsRNAのアンチセンス鎖またはセンス鎖のいずれかの5'末端、3'末端、または両方の末端上に存在することができる。
【0119】
特定の態様では、dsRNAのアンチセンス鎖は、3'末端または5'末端に1~10個のヌクレオチド、例えば、0~3、1~3、2~4、2~5、4~10、5~10、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のヌクレオチドのオーバーハングを有する。特定の態様では、センス鎖もしくはアンチセンス鎖、またはその両方の上のオーバーハングは、10ヌクレオチド長よりも長い、例えば、1~30ヌクレオチド、2~30ヌクレオチド、10~30ヌクレオチド、または10~15ヌクレオチド長の伸展長を含むことができる。特定の態様では、伸展したオーバーハングは、二重鎖のセンス鎖上にある。特定の態様では、伸展したオーバーハングは、二重鎖のセンス鎖の3'末端上に存在する。特定の態様では、伸展したオーバーハングは、二重鎖のセンス鎖の5'末端上に存在する。特定の態様では、伸展したオーバーハングは、二重鎖のアンチセンス鎖上にある。特定の態様では、伸展したオーバーハングは、二重鎖のアンチセンス鎖の3'末端上にある。特定の態様では、伸展したオーバーハングは、二重鎖のアンチセンス鎖の5'末端上に存在する。特定の態様では、オーバーハング中のヌクレオチドの1つまたは複数は、ヌクレオシドチオリン酸で置き換えられている。
【0120】
「平滑な」または「平滑末端」は、二本鎖RNAi剤の当該の末端に、不対ヌクレオチドがない、すなわち、ヌクレオチドオーバーハングがないことを意味する。「平滑末端の」二本鎖RNAi剤は、その全長にわたって二本鎖である、すなわち、分子のいずれの末端にもヌクレオチドオーバーハングがない。本発明のRNAi剤は、一方の末端にヌクレオチドオーバーハングを有さない(すなわち、1つのオーバーハングおよび1つの平滑末端を有する剤)、またはどちらの末端にもヌクレオチドオーバーハングを有さないRNAi剤を含む。
【0121】
「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」という用語は、標的配列、例えば、PD-L1 mRNAと実質的に相補的な領域を含むiRNA、例えば、dsRNAの鎖を指す。本明細書に使用される「相補性領域」という用語は、配列、例えば、標的配列、例えば、本明細書において同義のPD-L1ヌクレオチド配列と実質的に相補的な、アンチセンス鎖上の領域を指す。相補性領域が標的配列と完全には相補的でない場合、分子の内部または末端領域にミスマッチがある可能性がある。一般的に、最も耐容性のあるミスマッチは、末端領域に、例えば、iRNAの5'または3'末端の5、4、3、2、または1つのヌクレオチド内にある。一部の態様では、本発明の二本鎖RNAi剤は、アンチセンス鎖にヌクレオチドミスマッチを含む。一部の態様では、本発明の二本鎖RNAi剤は、センス鎖にヌクレオチドミスマッチを含む。一部の態様では、ヌクレオチドミスマッチは、例えば、iRNAの3'末端から5、4、3、2、または1つのヌクレオチド内にある。別の態様では、ヌクレオチドミスマッチは、例えば、iRNAの3'末端ヌクレオチドにある。
【0122】
本明細書に使用される「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」という用語は、その用語が本明細書において定義されるものと同義のアンチセンス鎖の領域と実質的に相補的な領域を含む、iRNA鎖を指す。
【0123】
本明細書に使用される「切断領域」という用語は、切断部位のすぐ隣に位置する領域を指す。切断部位は、標的上で切断が起こる標的上の部位である。一部の態様では、切断領域は、切断部位のいずれかの側、かつすぐ隣の3つの塩基を含む。一部の態様では、切断領域は、切断部位の一方の側かつすぐ隣の2つの塩基を含む。一部の態様では、切断部位は、アンチセンス鎖のヌクレオチド10および11が結合する部位に特異的に存在し、切断領域はヌクレオチド11、12および13を含む。
【0124】
特に指摘しない限り、本明細書に使用される「相補的」という用語は、第2のヌクレオチド配列との関連で第1のヌクレオチド配列を記述するために使用される場合、当業者に理解されるように、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、ある特定の条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズして、二重鎖構造を形成できることを指す。そのような条件は、例えば、ストリンジェントな条件であることができ、ここで、ストリンジェントな条件は、400mM NaCl、40mM PIPES(pH6.4)、1mM EDTA、50℃または70℃で12~16時間、それに続く洗浄を含むことができる(例えば、"Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook, et al. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい)。生物内部で遭遇することができる生理学的に意義のある条件などの他の条件を適用することができる。当業者は、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終適用に従って、2つの配列の相補性検査に最適な条件の組を決定することができる。
【0125】
iRNA内、例えば、本明細書に記載のdsRNA内の相補配列は、一方または両方のヌクレオチド配列全長にわたる、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとの塩基対形成を含む。そのような配列は、本明細書において相互に関して「完全に相補的」と称することができる。しかし、本明細書において第1の配列が第2の配列に関して「実質的に相補的」と称される場合、2つの配列は完全に相補的であることができ、またはそれらは最大で30塩基対の二重鎖のハイブリダイゼーションに際して、例えばRISC経路を介した遺伝子発現の阻害などのそれらの最終適用に最適な条件下でハイブリダイズする能力を保ちながら、1つもしくは複数であるが概して5、4、3もしくは2つ以下のミスマッチ塩基対を形成することができる。しかし、ハイブリダイゼーションに際して、1つまたは複数の一本鎖オーバーハングを形成するように2つのオリゴヌクレオチドが設計される場合、そのようなオーバーハングは、相補性の判定に関してミスマッチと見なされないものとする。例えば、21ヌクレオチド長の1つのオリゴヌクレオチドと、23ヌクレオチド長の別のオリゴヌクレオチドとを含み、長い方のオリゴヌクレオチドが短い方のオリゴヌクレオチドと完全に相補的な21個のヌクレオチドの配列を含むdsRNAは、本明細書に記載される目的のために、それでも「完全に相補的」と称される。
【0126】
本明細書に使用される「相補的」配列は、それらがハイブリダイズする能力に関する上の要件が満たされる限りにおいて、非ワトソン-クリック塩基対または非天然および修飾ヌクレオチドから形成される塩基対も含む、またはそれから完全に形成されることができる。そのような非ワトソン-クリック塩基対には、非限定的に、G:Uゆらぎ塩基対形成またはフーグスティーン型塩基対形成が含まれる。
【0127】
本明細書における「相補的」、「完全に相補的」および「実質的に相補的」という用語を、それらが使用される文脈から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖と間の、または二本鎖RNAi剤のアンチセンス鎖と標的配列との間の塩基整合に関して使用することができる。
【0128】
本明細書に使用されるメッセンジャーRNA(mRNA)の「少なくとも一部と実質的に相補的」なポリヌクレオチドは、関心対象となるmRNA(例えばPD-L1遺伝子をコードするmRNA)の連続する部分と、実質的に相補的なポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、配列が、PD-L1遺伝子をコードするmRNAの非中断部分と実質的に相補的であれば、PD-L1 mRNAの少なくとも一部と相補的である。
【0129】
したがって、ある態様では、本明細書開示のセンス鎖ポリヌクレオチドおよびアンチセンスポリヌクレオチドは、標的PD-L1配列と完全に相補的である。
【0130】
他の態様では、本明細書開示のアンチセンスポリヌクレオチドは、標的PD-L1配列と実質的に相補的であり、SEQ ID NO:1のいずれか1つのヌクレオチド配列またはSEQ ID NO:1のいずれか1つのフラグメントの等価の領域とその全長にわたって少なくとも約80%相補的、例えば、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%相補的または100%相補的な連続するヌクレオチド配列を含む。
【0131】
一部の態様では、本発明のiRNAは、アンチセンスポリヌクレオチドと実質的に相補的なセンス鎖を含み、アンチセンスポリヌクレオチドは、次いで標的PD-L1配列と相補的であり、かつ、センス鎖は、表3もしくは表5のアンチセンス鎖のいずれか1つのヌクレオチド配列、または表3および表5のアンチセンス鎖のいずれか1つのフラグメントの等価の領域とその全長にわたって少なくとも約80%相補的、例えば約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%相補的、または100%相補的な連続するヌクレオチド配列を含む。
【0132】
一部の態様では、本発明のiRNAは、アンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、標的PD-L1配列と実質的に相補的であり、表3もしくは表5のセンス鎖のいずれか1つのヌクレオチド配列、または表3および表5のセンス鎖のいずれか1つのフラグメントの等価の領域とその全長にわたって少なくとも80%相補的、例えば約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%相補的、または100%相補的な連続するヌクレオチド配列を含む。
【0133】
本発明の局面では、本発明の方法および組成物に使用するための剤は、アンチセンス阻害メカニズムを介して標的mRNAを阻害する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子である。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、標的mRNA内の配列と相補的である。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAとの塩基対形成および翻訳機構の物理的な妨害によって化学量論的に翻訳を阻害することができる。Dias, N. et al., (2002) Mol Cancer Ther 1:347-355を参照されたい。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、約14から約30ヌクレオチド長であり得、かつ標的配列と相補的な配列を有し得る。例えば、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、本明細書に記載のアンチセンス配列のいずれか1つからの少なくとも14、15、16、17、18、19、20、またはそれより多くの連続するヌクレオチドである配列を含み得る。
【0134】
本明細書に使用される、dsRNAなどの「iRNAと細胞を接触させる」という語句は、任意の可能な手段によって細胞を接触させることを含む。細胞をiRNAと接触させることは、細胞をiRNAとインビトロで接触させること、または細胞をiRNAとインビボで接触させることを含む。接触させることは、直接的または間接的に行われ得る。したがって、例えば、iRNAは、方法を遂行している個体によって細胞との物理的接触状態にされ得る、またはその代わりに、iRNAは、続いて細胞と接触することを可能にするもしくはそれを引き起こす状況にされ得る。
【0135】
細胞をインビトロで接触させることは、例えば、細胞をiRNAと共にインキュベートする工程によって行われ得る。細胞をインビボで接触させることは、例えば、細胞が位置する組織にまたはその近辺にiRNAを注射することによって、またはiRNAを別の領域、例えば、血流もしくは皮下腔に注射することにより、例えば続いて、接触させる細胞が位置する組織に剤が到達することによって行われ得る。例えば、iRNAは、iRNAを対象となる部位に、例えば肝臓に方向付けるリガンド、例えば、GalNAc、例えば、GalNAc3を含有する、またはそれと結合されている場合がある。インビトロ接触方法とインビボ接触方法との組合せも可能である。例えば、細胞が、iRNAとインビトロで接触され、続いて対象に移植される場合もある。
【0136】
特定の態様では、細胞をiRNAと接触させることは、細胞内への取込みまたは吸収を容易にするまたは生じさせることによって「iRNAを細胞内に導入する」または「送達する」ことを含む。iRNAの吸収または取込みは、援助なしの拡散もしくは活発な細胞過程を通じて、または補助的な剤もしくはデバイスによって起こることができる。細胞内にiRNAを導入することは、インビトロまたはインビボであり得る。例えば、インビボでの導入の場合、iRNAを、組織部位に注射する、または全身投与することができる。インビボ送達は、全内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,032,401号および同第5,607,677号、ならびに米国特許出願公開第2005/0281781号に記載されるもののような、ベータ-グルカン送達系によって行うこともできる。細胞内へのインビトロ導入は、エレクトロポレーションおよびリポフェクションなどの当技術分野において公知の方法を含む。さらなるアプローチが、本明細書において後述される、または当技術分野において公知である。
【0137】
「脂質ナノ粒子」または「LNP」という用語は、核酸分子、例えば、iRNAまたはiRNAが転写されるプラスミドなどの薬学的活性分子を封入する脂質層を含む小胞である。LNPは、例えば、全内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,858,225号、同第6,815,432号、同第8,158,601号、および同第8,058,069号に記載されている。
【0138】
本明細書で使用される「対象」は、標的遺伝子配列が標的のノックダウンを促進するためにiRNA剤と十分な相補性を有する場合、標的遺伝子を内因性または異種性のいずれかで発現する霊長類(ヒト、非ヒト霊長類、例えば、サル、およびチンパンジー)、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス、ウマ、およびクジラ)を含む哺乳動物、または鳥類(例えば、アヒルもしくはガチョウ)などの動物である。特定の態様では、対象は、本明細書に記載の、PD-L1遺伝子の発現もしくは複製の低減から恩恵を被るであろう疾患、障害もしくは状態について処置もしくは判断されているヒト;PD-L1遺伝子の発現の低減から恩恵を被るであろう疾患、障害もしくは状態のリスクがあるヒト;PD-L1遺伝子の発現の低減から恩恵を被るであろう疾患、障害もしくは状態を有するヒト;またはPD-L1遺伝子の発現の低減から恩恵を被るであろう疾患、障害もしくは状態について処置されているヒトなどのヒトである。一部の態様では、対象は、女性のヒトである。他の態様では、対象は、男性のヒトである。
【0139】
本明細書に使用される「処置する」または「処置」という用語は、非限定的に、PD-L1遺伝子の発現またはPD-L1タンパク質の産生に関連する1つまたは複数の症状、例えば、感染、特に慢性細胞内感染、例えば、慢性ウイルス感染、またはがんの軽減または改善を含む、有益または望ましい結果を指す。「処置」は、処置の不在下の予測生存期間と比較して生存期間を延長することも意味することができる。処置は、共存症の発生予防、例えば、肝臓感染を有する対象における低減した肝損傷を含むことができる。
【0140】
対象におけるPD-L1遺伝子の発現もしくはPD-L1タンパク質の産生のレベル、または疾患マーカーもしくは症状と関連して「低下させる」という用語は、そのようなレベルの統計的に有意な減少を指す。減少は、例えば、適切な対照と比較して、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または検出方法についての検出レベル未満であることができる。特定の態様では、標的の発現は、正常化される、すなわち、そのような障害を有さない個体についての正常範囲内として受け入れられているレベルまで減少する。特定の態様では、この方法は、例えば、PD-L1の発現を低減するための剤を用いて対象を処置した後の、臨床的に意味のある転帰によって実証されるような、PD-L1の発現の臨床的に意味のある阻害を含む。
【0141】
本明細書に使用される「プログラム細胞死1リガンド1関連疾患」または「PD-L1関連疾患」という用語は、PD-L1遺伝子の発現またはPD-L1タンパク質の産生によって引き起こされる、またはそれと関連する疾患または障害である。「PD-L1関連疾患」という用語は、PD-L1遺伝子の発現、複製、またはタンパク質活性の減少から恩恵を被るであろう疾患、障害または状態を含む。PD-L1関連疾患の非限定的な例には、例えば、感染、特に慢性細胞内感染、例えば、ウイルス感染、例えば、肝炎感染、またはがんが含まれる。
【0142】
特定の態様では、PD-L1関連疾患は、感染、特に慢性、細胞内感染、例えば、ウイルス感染、例えば、肝炎ウイルス感染、例えば、B型肝炎感染またはD型肝炎感染である。特定の態様では、感染は、慢性細菌感染、例えば、結核である。特定の態様では、PD-L1関連疾患は、がん、特に肝臓がん、例えば、肝細胞がん(HCC)である。
【0143】
本明細書に使用される「治療有効量」は、感染、特に慢性細胞内感染、またはがん、または他のPD-L1関連疾患を有する対象を処置するために患者に投与される場合、疾患の処置(例えば、既存の疾患または疾患もしくはその関連共存症の1つもしくは複数の症状を縮小、改善または維持することによって)を生じさせるために十分なiRNAの量を含むことが意図される。「治療有効量」は、iRNA、それがどのように投与されるか、疾患およびその重症度および病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝的構造、PD-L1遺伝子の発現によって媒介される病的過程の病期、もしあれば先行処置または併用処置の種類、ならびに処置される患者の他の個別の特徴に応じて変動し得る。
【0144】
「治療有効量」は、任意の処置に適用可能な、妥当なベネフィット/リスク比で、ある所望の局所または全身効果を産生するiRNAの量も含む。本発明の方法に採用されるiRNAは、そのような処置に適用可能な、妥当なベネフィット/リスク比を産生するために十分な量で投与され得る。治療有効量は、適宜、疾患または状態の指標の臨床的に意味のある変化または安定化を招く量を含む。
【0145】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに妥当なベネフィット/リスク比にふさわしい、ヒト対象および動物対象の組織と接触して使用するために適した化合物、材料、組成物、または剤形を指すために採用される。
【0146】
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、身体の1つの器官または部分から、身体の別の器官または部分に、主題化合物を運搬または輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、もしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤のその他の成分と適合し、処置されている対象に有害でないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立つことができる材料のいくつかの例には:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンなどのデンプン;(3)セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体;(4)トラガカント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)マグネシウムステート(state)、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの滑沢剤;(8)カカオ脂および坐薬用ロウなどの賦形剤;(9)ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質不含水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ酸無水物;(22)ポリペプチドおよびアミノ酸などの増量剤(23)血清アルブミン、HDLおよびLDLなどの血清構成成分;ならびに(22)医薬製剤に採用される他の無毒の適合性物質が含まれる。
【0147】
本明細書に使用される「試料」という用語は、対象から単離された類似の液体、細胞、または組織だけでなく、対象内に存在する液体、細胞、または組織の集団を含む。生物学的液体の例には、血液、血清および漿膜液、血漿、脳脊髄液、眼液、リンパ液、尿、唾液などが含まれる。組織試料は、組織、器官または局所領域からの試料を含み得る。例えば、試料は、特定の器官、器官の一部、またはそれらの器官内の液体もしくは細胞に由来し得る。特定の態様では、試料は、肝臓(例えば、全肝臓または肝臓のある特定の区域、または例えば肝細胞などの肝臓中のある特定の細胞型)に由来し得る。「対象に由来する試料」は、対象から抜き取られた血液または対象から得られた血漿を指すことができる。PD-L1のレベルを検出する場合の特定の態様では、「試料」は、好ましくは、本発明の剤の投与前にPD-L1が検出可能な、対象からの組織または体液、例えば肝臓感染を有する対象からの肝生検、腫瘍生検を指す。ある特定の対象、例えば、健康な対象では、PD-L1のレベルは、いくつかの体液、細胞型、および組織から検出不能であり得る。
【0148】
I. 本発明のiRNA
本発明は、PD-L1遺伝子の発現を阻害するiRNAを提供する。好ましい態様では、iRNAは、対象、例えば、PD-L1関連疾患、例えば、慢性感染を有するヒトなどの哺乳動物の内部の細胞などの、細胞中のPD-L1遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を含む。dsRNAi剤は、PD-L1遺伝子の発現において形成されるmRNAの少なくとも一部と相補的な相補性領域を有するアンチセンス鎖を含む。相補性領域は、約30ヌクレオチド長以下(例えば、約30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、もしくは18ヌクレオチド長以下)である。PD-L1遺伝子を発現している細胞と接触すると、iRNAはPD-L1遺伝子(例えば、ヒト、霊長類、非霊長類、または鳥類PD-L1遺伝子)の発現を、例えば、PCRもしくは分枝DNA(bDNA)ベースの方法、または例えば、ウエスタンブロッティングもしくはフローサイトメトリー技法を使用する免疫蛍光分析などによるタンパク質ベースの方法によりアッセイした場合、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも30%阻害する。好ましい態様では、発現の阻害は、実施例に提供されるqPCR法によって、例えば、二重鎖濃度10nMで決定される。低減のレベルは、例えば、適切な歴史的対照またはプール集団試料対照と比較することができる。
【0149】
dsRNAは、相補的であり、かつdsRNAが使用される条件下でハイブリダイズして二重鎖構造を形成する2つのRNA鎖を含む。dsRNAの一方の鎖(アンチセンス鎖)は、標的配列と実質的に相補的で、概して完全に相補的な相補性領域を含む。標的配列は、PD-L1遺伝子の発現の間に形成されるmRNA配列から得ることができる。他方の鎖(センス鎖)は、アンチセンス鎖と相補的な領域を含み、その結果、2つの鎖は、適切な条件下で組み合わされると、ハイブリダイズし、二重鎖構造を形成する。本明細書の他の箇所に記載され、当技術分野において公知のように、dsRNAの相補的配列は、別々のオリゴヌクレオチド上にあるのとは対照的に、単一の核酸分子の自己相補性領域としても含有されることができる。
【0150】
一般的に、二重鎖構造は、約15~30塩基対長、例えば、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24,20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22塩基対長である。上に列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
【0151】
同様に、標的配列と相補的な領域は、約15~30ヌクレオチド長、例えば、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24,20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22ヌクレオチド長である。上に列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
【0152】
一部の態様では、dsRNAは、約15~23ヌクレオチド長、または約25~30ヌクレオチド長である。一般に、dsRNAは、ダイサー酵素に対する基質として役立つために十分長い。例えば、約21~23ヌクレオチド長よりも長いdsRNAは、ダイサーに対する基質として役立つ場合があることが当技術分野において周知である。当業者も認識しているように、切断のために標的とされるRNA領域は、多くの場合、より大きなRNA分子(mRNA分子であることが多い)の一部である。関連する場合、mRNA標的の「一部」は、RNAi指向性切断(すなわち、RISC経路を経由する切断)のための基質であるのが可能であるために十分な長さのmRNA標的の連続する配列である。
【0153】
当業者は、二重鎖領域、例えば、約9~約36塩基対、例えば、10~36、11~36、12~36、13~36、14~36、15~36、9~35、10~35、11~35、12~35、13~35、14~35、15~35、9~34、10~34、11~34、12~34、13~34、14~34、15~34、9~33、10~33、11~33、12~33、13~33、14~33、15~33、9~32、10~32、11~32、12~32、13~32、14~32、15~32、9~31、10~31、11~31、12~31、13~32、14~31、15~31、15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24,20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22塩基対の二重鎖領域が、dsRNAの主要機能部分であることも認識している。したがって、一態様では、切断のために所望のRNAを標的とする(例えば、15~30塩基対の)機能的二重鎖へとプロセシングされる範囲において、30塩基対よりも大きな二重鎖領域を有するRNA分子またはRNA分子の複合体は、dsRNAである。したがって、当業者は、一態様では、miRNAがdsRNAであることを認識している。別の態様では、dsRNAは、天然に存在するmiRNAではない。別の態様では、PD-L1遺伝子の発現を標的とするために有用なiRNA剤は、より大きなdsRNAの切断により標的細胞において生成されない。
【0154】
本明細書に記載のdsRNAは、1つまたは複数の一本鎖ヌクレオチドオーバーハング、例えば、1~4、2~4、1~3、2~3、1、2、3、または4ヌクレオチドのオーバーハングをさらに含むことができる。少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを有するdsRNAは、その平滑末端の対応物と比べて優れた阻害特性を有することができる。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシヌクレオチド/ヌクレオシドを含むヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含む、またはそれからなることができる。オーバーハング(単数または複数)は、センス鎖、アンチセンス鎖、またはその任意の組合せ上にあることができる。さらに、オーバーハングのヌクレオチド(単数または複数)は、dsRNAのアンチセンス鎖またはセンス鎖の5'末端、3'末端、または両方の末端上に存在することができる。
【0155】
例えば、自動DNA合成装置(例えば、Biosearch、Applied Biosystems, Inc.から市販されているもの)の使用によって、さらに後述されるように、当技術分野において公知の標準方法によって、dsRNAを合成することができる。
【0156】
本発明の二本鎖RNAi化合物は、2工程の手順を用いて調製され得る。まず、二本鎖RNA分子の個別の鎖が別々に調製される。次に、構成成分である鎖がアニールされる。siRNA化合物の個別の鎖を、溶液相もしくは固相有機合成またはその両方を用いて調製することができる。有機合成は、非天然または修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド鎖を容易に調製できるという利点を提供する。同様に、本発明の一本鎖オリゴヌクレオチドを、溶液相もしくは固相有機合成またはその両方を用いて調製することができる。
【0157】
一局面では、本発明のdsRNAは、少なくとも2つのヌクレオチド配列、すなわちセンス配列およびアンチセンス配列を含む。センス鎖は、表3および5に提供される配列の群より選択され、当該センス鎖が対応するアンチセンス鎖は、表3および5の配列の群より選択される。この局面では、2つの配列の一方が2つの配列のもう一方と相補的であり、配列の一方が、PD-L1遺伝子の発現中に生成するmRNAの配列と実質的に相補的である。このように、この局面では、dsRNAは、2つのオリゴヌクレオチドを含み、ここで、一方のオリゴヌクレオチドは、表3または5におけるセンス鎖として記載され、第2のオリゴヌクレオチドは、表3または5における、当該センス鎖が対応するアンチセンス鎖として記載される。特定の態様では、dsRNAの実質的に相補的な配列は、別々のオリゴヌクレオチドに含有される。他の態様では、dsRNAの実質的に相補的な配列は、1つのオリゴヌクレオチドに含有される。
【0158】
表3における配列は、修飾またはコンジュゲートした配列として記載されないものの、本発明のiRNA、例えば、本発明のdsRNAのRNAは、表3に示される配列、または修飾された表5の配列、またはコンジュゲートした表5の配列のいずれか1つを含み得ることが理解されている。言い換えると、本発明には、本明細書に記載のように非修飾、非コンジュゲート、修飾、またはコンジュゲートした、表3および5のdsRNAが包含される。
【0159】
当業者は、約20~23塩基対の間、例えば、21塩基対の二重鎖構造を有するdsRNAが、RNA干渉を誘導するのに特に有効であると認められていることを十分に認識している(Elbashir et al., EMBO 2001, 20:6877-6888)。しかし、より短いまたはより長いRNA二重鎖構造も有効であり得ることを、他の者が見出した(Chu and Rana (2007) RNA 14:1714-1719; Kim et al. (2005) Nat Biotech 23:222-226)。上記の態様では、表3および5のいずれか1つに提供されるオリゴヌクレオチド配列の性質によって、本明細書に記載されるdsRNAは、最小で21ヌクレオチド長の少なくとも1つの鎖を含むことができる。表3および5の配列のうちの1つから一方または両方の末端のごく少数のヌクレオチドを差し引いた配列を有するより短い二本鎖が、上記のdsRNAと比較して、同様に有効であることができると無理なく予期できる。したがって、表3および5の配列のうちの1つから得られる、少なくとも15、16、17、18、19、20、またはそれを超える連続するヌクレオチドの配列を有するdsRNAであって、PD-L1遺伝子の発現を阻害する能力が、完全な配列を含むdsRNAとは約5、10、15、20、25、または30%以下の阻害だけ異なるdsRNAが、本発明の範囲内であると考えられる。
【0160】
加えて、表3および5に提供されるRNAは、RISC媒介切断に感受性の、PD-L1転写物中の部位を特定する。このように、本発明は、これらの部位の1つ内を標的とするiRNAをさらに取り上げる。本明細書に使用されるiRNAが、特定の部位内のどこかでRNA転写物の切断を促進するならば、iRNAは、その転写物の特定の部位内を標的とすると言われる。そのようなiRNAは、一般的に、PD-L1遺伝子中の選択された配列に隣接する領域から取り出された追加的なヌクレオチド配列に結合された、表3および5に提供される配列のうちの1つからの少なくとも約15個の連続するヌクレオチドを含む。
【0161】
標的配列は、一般的に、約15~30ヌクレオチド長である一方で、この範囲内の特定の配列が任意の所与の標的RNAの切断を指令する適性には幅広い変動がある。本明細書に述べられる様々なソフトウェアパッケージおよび指針は、任意の所与の遺伝子標的に最適な標的配列の特定のための指針を与えるが、所与のサイズ(非限定的な例として、21個のヌクレオチド)の「ウインドウ」または「マスク」が、標的配列として役立つことができるサイズ範囲内の配列を特定するために、文字通りにまたは比喩的に(例えば、インシリコを含む)標的RNA配列上に置かれる、実証的アプローチを用いることもできる。可能性のある配列の完全なセットが、選択された任意の所与の標的サイズについて特定されるまで、最初の標的配列位置の1ヌクレオチド上流または下流に配列「ウインドウ」を徐々に移動させることによって、次の潜在的な標的配列を特定することができる。このプロセスは、最適な性能を発揮する配列を特定するための(本明細書に記載されるまたは当技術分野において公知であるまたは本明細書に提供されるアッセイを用いた)特定された配列の系統的合成および検査と一緒になって、iRNA剤により標的とされるときに標的遺伝子の発現の最良の阻害を媒介するRNA配列を特定することができる。したがって、例えば、表3および5において特定される配列が、有効な標的配列を表す一方で、同等のまたはより良好な阻害特徴を有する配列を特定するために、所与の配列の1ヌクレオチド上流または下流に徐々に「ウインドウを移動させる」ことによって、阻害効率のさらなる最適化を達成することができると意図される。
【0162】
さらに、例えば、表3および5において特定された任意の配列について、より長いまたはより短い配列を生成するためにヌクレオチドを付加または除去のいずれかを系統的に行うことによって、かつ、より長いまたは短いサイズのウインドウをその点から標的RNAの上流または下流に移動させることにより生成したそれらの配列を検査することによって、さらなる最適化を達成することもできると意図される。また、当技術分野において公知の、または本明細書に記載の阻害アッセイにおいて、新規な候補標的を生成するためのこのアプローチを、それらの標的配列に基づくiRNAの有効性の検査と結び付けることで、阻害効率のさらなる改善を導くことができる。さらにまた、そのような最適化された配列を、例えば、本明細書に記載のもしくは当技術分野において公知の修飾ヌクレオチドの導入、オーバーハングにおける追加もしくは変化、または発現阻害剤として分子をさらに最適化するための当技術分野において公知のもしくは本明細書に説明される他の修飾(例えば、血清安定性もしくは循環半減期の増加、熱安定性の増加、経膜送達の強化、特定の位置または細胞型を標的とすること、サイレンシング経路酵素との相互作用の増加、エンドソームからの放出の増加)によって、調整することができる。
【0163】
本明細書に記載のiRNAは、標的配列との1つまたは複数のミスマッチを含有することができる。一態様では、本明細書に記載のiRNAは、3つ以下のミスマッチを含有する。iRNAのアンチセンス鎖が、標的配列とのミスマッチを含有するならば、ミスマッチの領域が相補性領域の中心に位置しないことが好ましい。iRNAのアンチセンス鎖が標的配列とのミスマッチを含有するならば、ミスマッチが、相補性の領域の5'末端または3'末端のいずれかから最後の5つのヌクレオチド内に限られることが好ましい。例えば、23個のヌクレオチドのiRNA剤について、PD-L1遺伝子の領域と相補的な鎖は、一般的に、中央の13個のヌクレオチド内にミスマッチを全く含有しない。本明細書に記載の方法または当技術分野において公知の方法を用いて、標的配列とのミスマッチを含有するiRNAがPD-L1遺伝子の発現を阻害するのに有効であるかどうかを判定することができる。ミスマッチを有するiRNAがPD-L1遺伝子の発現を阻害する有効性を考慮することは、特に、PD-L1遺伝子における特定の相補性領域が集団内で多型配列多様性を有することが分かっている場合に、重要である。
【0164】
II. 本発明の修飾iRNA
特定の態様では、本発明のiRNA、例えば、dsRNAのRNAは、非修飾であり、例えば、当技術分野において公知のおよび本明細書に記載の化学的修飾またはコンジュゲーションを含まない。他の態様では、本発明のiRNA、例えば、dsRNAのRNAは、安定性または他の有益な特徴を高めるために化学的に修飾されている。本発明の特定の態様では、本発明のiRNAのヌクレオチドの実質的に全ては、修飾されている。本発明の他の態様では、iRNAのヌクレオチドの全てまたはiRNAのヌクレオチドの実質的に全ては、修飾されている、すなわち、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の非修飾ヌクレオチドがiRNAの鎖内に存在する。
【0165】
本発明に取り上げられる核酸を、参照により本明細書に組み入れられる"Current protocols in nucleic acid chemistry," Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されるものなどの、当技術分野において十分に確立された方法によって合成または修飾することができる。修飾には、例えば、末端修飾、例えば、5'末端の修飾(リン酸化、コンジュゲーション、逆結合(inverted linkage))または3'末端の修飾(コンジュゲーション、DNAヌクレオチド、逆結合など);塩基の修飾、例えば、安定化塩基、不安定塩基、または広いレパートリーのパートナーと塩基対形成する塩基による置換、塩基の除去(脱塩基ヌクレオチド)、またはコンジュゲートした塩基;糖修飾(例えば、2'位もしくは4'位で)または糖の置換;あるいはホスホジエステル結合の修飾または置換を含む骨格修飾が含まれる。本明細書に記載の態様に有用なiRNA化合物の具体例には、非限定的に、修飾された骨格を含有する、または天然のヌクレオシド間結合を含有しないRNAが含まれる。修飾された骨格を有するRNAには、とりわけ、骨格中にリン原子を有さないものが含まれる。本明細書の目的のために、および当技術分野において時に言及されるように、ヌクレオシド間骨格中にリン原子を有さない修飾RNAも、オリゴヌクレオシドであると見なすことができる。一部の態様では、修飾iRNAは、そのヌクレオシド間骨格中にリン原子を有する。
【0166】
修飾RNA骨格には、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルホスホネートならびに3'-アルキレンホスホネートおよびびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3'-アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデートを含むホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および通常の3'-5'結合を有するボラノホスフェート、これらの2'-5'結合類似体、およびヌクレオシドユニットの隣接する対が、3'-5'から5'-3'または2'-5'から5'-2'に連結する、反転した極性を有するものが含まれる。様々な塩、混合塩および遊離酸形態も含まれる。
【0167】
上記のリン含有結合の調製を教示する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,195号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,316号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;同第5,625,050号;同第6,028,188号;同第6,124,445号;同第6,160,109号;同第6,169,170号;同第6,172,209号;同第6,239,265号;同第6,277,603号;同第6,326,199号;同第6,346,614号;同第6,444,423号;同第6,531,590号;同第6,534,639号;同第6,608,035号;同第6,683,167号;同第6,858,715号;同第6,867,294号;同第6,878,805号;同第7,015,315号;同第7,041,816号;同第7,273,933号;同第7,321,029号;および米国再発行特許第39464号が含まれ、これらの各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0168】
中にリン原子を含まない修飾RNA骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ結合(一部がヌクレオシドの糖部分から形成された)を有するもの;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびメチレンチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびにN、O、S、およびCH2構成成分部分が混在するその他のものが含まれる。
【0169】
上記のオリゴヌクレオシドの調製を教示する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,64,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;および同第5,677,439号が含まれ、それらの各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0170】
ヌクレオチドユニットの糖およびヌクレオシド間結合の両方、すなわち骨格が、新規な基で置換される適切なRNA模倣体が、本明細書提供のiRNAにおける使用のために意図されている。塩基ユニットは、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているRNA模倣体である、そのようなオリゴマー化合物の1つは、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、RNAの糖骨格が、アミド含有骨格、特に、アミノエチルグリシン骨格で置換されている。核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合されている。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号が含まれ、これらの各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる。本発明のiRNAに使用するのに適した追加的なPNA化合物は、例えば、Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497-1500に記載されている。
【0171】
本発明に取り上げられるいくつかの態様は、ホスホロチオエート骨格を有するRNA、ならびにヘテロ原子骨格、特に上述した米国特許第5,489,677号の--CH2--NH--CH2-、--CH2--N(CH3)--O--CH2--[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として公知]、--CH2--O--N(CH3)--CH2--、--CH2--N(CH3)--N(CH3)--CH2--および--N(CH3)--CH2--CH2--[式中、天然のホスホジエステル骨格は、--O--P--O--CH2--として表される]および上述の米国特許第5,602,240号のアミド骨格を有するオリゴヌクレオシドを含む。一部の態様では、本明細書に取り上げられるRNAは、上述の米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有する。
【0172】
修飾RNAは、1つまたは複数の置換された糖部分も含有することができる。本明細書に取り上げられるiRNA、例えば、dsRNAは、2'位において以下:OH;F;O-、S-、もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル;O-、S-もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルのうちの1つを含むことができ、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換のC1~C10アルキルまたはC2~C10アルケニルおよびアルキニルのうちの1つを含むことができる。例示的な適切な修飾には、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2).nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2が含まれ、式中、nおよびmは、1から約10である。他の態様では、dsRNAは、2'位において以下:C1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリールまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、挿入基(intercalator)、iRNAの薬物動態特性を改善するための基、またはiRNAの薬力学特性を改善するための基、および類似の特性を有する他の置換基のうちの1つを含む。一部の態様では、修飾は、(2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても公知の2'-メトキシエトキシ(2'-O--CH2CH2OCH3)(Martin et al., Helv. Chim. Acta、1995, 78:486-504)、すなわち、アルコキシ-アルコキシ基を含む。別の例示的な修飾は、本明細書下記の実施例に記載される、2'-DMAOEとしても公知の2'-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、O(CH2)2ON(CH3)2基、および2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野において2'-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2'-DMAEOEとしても公知)、すなわち、2'-O--CH2--O--CH2--N(CH2)2である。さらなる例示的な修飾には:5'-Me-2'-Fヌクレオチド、5'-Me-2'-OMeヌクレオチド、5'-Me-2'-デオキシヌクレオチド(これらの3つのファミリーのRおよびS異性体の両方);2'-アルコキシアルキル;および2'-NMA(N-メチルアセトアミド)が含まれる。
【0173】
他の修飾には、2'-メトキシ(2'-OCH3)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)および2'-フルオロ(2'-F)が含まれる。類似の修飾を、iRNAのRNA上の他の位置、特に、3'末端ヌクレオチド上または2'-5'結合dsRNA中の糖の3'位および5'末端ヌクレオチドの5'位で行うこともできる。iRNAはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有することもできる。そのような修飾された糖構造の調製を教示する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第4,981,957号;同第5,118,800号;同第5,319,080号;同第5,359,044号;同第5,393,878号;同第5,446,137号;同第5,466,786号;同第5,514,785号;同第5,519,134号;同第5,567,811号;同第5,576,427号;同第5,591,722号;同第5,597,909号;同第5,610,300号;同第5,627,053号;同第5,639,873号;同第5,646,265号;同第5,658,873号;同第5,670,633号;および同第5,700,920号が含まれ、これらのうちのいくつかは、本出願と所有者が同一である。上記の各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0174】
iRNAは、核酸塩基(当技術分野において多くの場合、単に「塩基」と称される)の修飾または置換も含むことができる。本明細書において使用される「非修飾」または「天然」核酸塩基には、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、デオキシ-チミン(dT)、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチル誘導体および他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピル誘導体および他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシンおよび6-アゾチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルならびに他の8-置換アデニンおよび8-置換グアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルならびに他の5-置換ウラシルおよび5-置換シトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン(daazaadenine)ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなどの他の合成および天然核酸塩基が含まれる。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されたもの、Modified Nucleosides in Biochemistry, Biotechnology and Medicine, Herdewijn, P. ed. Wiley-VCH, 2008に開示されたもの;The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. L, ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されたもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613によって開示されたこれら、およびSanghvi, Y S., Chapter 15, dsRNA Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., Ed., CRC Press, 1993によって開示されたものが含まれる。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明に取り上げられるオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6および0-6置換プリンが含まれる。5-メチルシトシン置換は、よりさらに詳細には2'-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合に、核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃だけ増加させることが示されており(Sanghvi, Y. S., Crooke, S. T. and Lebleu, B., Eds., dsRNA Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、かつ例示的な塩基置換である。
【0175】
上記の修飾された核酸塩基だけでなく、他の修飾された核酸塩基のいくつかの調製を教示する代表的な米国特許には、非限定的に、上記の米国特許第3,687,808号、同第4,845,205号:同第5,130,30号:同第5,134,066号:同第5,175,273号:同第5,367,066号:同第5,432,272号:同第5,457,187号:同第5,459,255号:同第5,484,908号:同第5,502,177号:同第5,525,711号:同第5,552,540号:同第5,587,469号:同第5,594,121号、同第5,596,091号:同第5,614,617号:同第5,681,941号:同第5,750,692号:同第6,015,886号:同第6,147,200号:同第6,166,197号:同第6,222,025号:同第6,235,887号:同第6,380,368号:同第6,528,640号:同第6,639,062号:同第6,617,438号:同第7,045,610号:同第7,427,672号:および同第7,495,088号が含まれ、これらの各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0176】
iRNAのRNAを、1つまたは複数のロックド核酸(LNA)を含むように修飾することもできる。ロックド核酸は、修飾されたリボース部分を有するヌクレオチドであって、リボース部分が、2'および4'炭素を繋いでいる追加の架橋を含むヌクレオチドである。この構造は、リボースを3'-エンド構造配座に効果的に「ロックする」。siRNAにロックド核酸を加えると、血清中のsiRNAの安定性が増加し、オフターゲット効果が低減することが示されている(Elmen, J. et al., (2005) Nucleic Acids Research 33(1):439-447; Mook, OR. et al., (2007) Mol Canc Ther 6(3):833-843; Grunweller, A. et al., (2003) Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。
【0177】
一部の態様では、本発明のiRNAは、UNA(アンロックド核酸)ヌクレオチドである1つまたは複数のモノマーを含む。UNAは、糖の結合のいずれかが除去されてアンロックド「糖」残基を形成しているアンロックド非環式核酸である。一例では、UNAには、C1'-C4'間の結合(すなわち、C1'炭素とC4'炭素との間の共有炭素-酸素-炭素結合)が除去されているモノマーも包含される。別の例では、糖のC2'-C3'結合(すなわち、C2'炭素とC3'炭素との間の共有炭素-炭素結合)が除去されている(参照により本明細書に組み入れられるNuc. Acids Symp. Series, 52, 133-134 (2008)およびFluiter et al., Mol. Biosyst., 2009, 10, 1039を参照されたい)。
【0178】
iRNAのRNAを、1つまたは複数の二環式糖部分を含むように修飾することもできる。「二環式糖」は、2個の原子の架橋によって修飾されたフラノシル環である。「二環式ヌクレオシド」(「BNA」)は、糖環の2つの炭素原子を繋ぐことによって、二環式環系を形成している架橋を含む糖部分を有するヌクレオシドである。特定の態様では、架橋は、糖環の4'-炭素と2'-炭素とを繋ぐ。したがって、一部の態様では、本発明の剤は、1つまたは複数のロックド核酸(LNA)を含み得る。ロックド核酸は、修飾されたリボース部分を有するヌクレオチドであって、リボース部分が、2'炭素と4'炭素とを繋いでいる追加の架橋を含むヌクレオチドである。言い換えると、LNAは、4'-CH2-O-2'架橋を含む二環式糖部分を含むヌクレオチドである。この構造は、リボースを3'-エンド構造配座に効果的に「ロックする」。siRNAにロックド核酸を加えると、血清中のsiRNA安定性が増加し、オフターゲット効果が低減することが示されている(Elmen, J. et al., (2005) Nucleic Acids Research 33(1):439-447; Mook, OR. et al., (2007) Mol Canc Ther 6(3):833-843; Grunweller, A. et al., (2003) Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。本発明のポリヌクレオチドに使用するための二環式ヌクレオシドの例には、非限定的に、4'リボシル環原子と2'リボシル環原子との間の架橋を含むヌクレオシドが含まれる。特定の態様では、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド剤は、4'から2'架橋を含む1つまたは複数の二環式ヌクレオシドを含む。そのような4'から2'架橋二環式ヌクレオシドの例には、非限定的に、4'-(CH2)-O-2'(LNA);4'-(CH2)-S-2';4'-(CH2)2-O-2'(ENA);4'-CH(CH3)-O-2'(「拘束エチル」または「cEt」とも称される)および4'-CH(CH2OCH3)-O-2'(およびその類似体;例えば、米国特許第7,399,845号参照);4'-C(CH3)(CH3)-O-2'(およびその類似体;例えば、米国特許第8,278,283号参照);4'-CH2-N(OCH3)-2'(およびその類似体;例えば、米国特許第8,278,425号参照);4'-CH2-O-N(CH3)-2'(例えば、米国特許出願公開第2004/0171570号参照);4'-CH2-N(R)-O-2'、式中、Rは、H、C1-C12アルキル、または保護基である(例えば、米国特許第7,427,672号参照);4'-CH2-C(H)(CH3)-2'(例えば、Chattopadhyaya et al., J. Org. Chem., 2009, 74, 118-134参照);および4'-CH2-C(=CH2)-2'(およびその類似体;例えば、米国特許第8,278,426号参照)が含まれる。前述の各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0179】
ロックド核酸ヌクレオチドの調製を教示する追加的で代表的な米国特許および米国特許出願公開には、非限定的に、以下:米国特許第6,268,490号;同第6,525,191号;同第6,670,461号;同第6,770,748号;同第6,794,499号;同第6,998,484号;同第7,053,207号;同第7,034,133号;同第7,084,125号;同第7,399,845号;同第7,427,672号;同第7,569,686号;同第7,741,457号;同第8,022,193号;同第8,030,467号;同第8,278,425号;同第8,278,426号;同第8,278,283号;US2008/0039618;およびUS2009/0012281が含まれ、これらの各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0180】
例えば、α-L-リボフラノースおよびβ-D-リボフラノースを含む1つまたは複数の立体化学的糖配置を有する前述の二環式ヌクレオシドのいずれかを調製することができる(国際公開公報第99/14226号参照)。
【0181】
iRNAのRNAは、1つまたは複数の拘束エチルヌクレオチドを含むように修飾することもできる。本明細書において使用される「拘束エチルヌクレオチド」または「cEt」は、4'-CH(CH3)-O-2'架橋を含む二環式糖部分を含むロックド核酸である。一態様では、拘束エチルヌクレオチドは、本明細書において「S-cEt」と称されるS配座にある。
【0182】
本発明のiRNAは、1つまたは複数の「配座固定ヌクレオチド」(「CRN」)も含み得る。CRNは、リボースのC2'炭素とC4'炭素とを、またはリボースのC3炭素とC5'炭素とを繋いでいるリンカーを有するヌクレオチド類似体である。CRNは、リボース環を安定した配座にロックし、mRNAに対するハイブリダイゼーション親和性を増加させる。リンカーは、酸素を安定性および親和性に最適な位置に配置するために十分な長さであり、リボース環の歪み(puckering)を少なくする。
【0183】
上記のCRNのいくつかの調製を教示する代表的な公報には、非限定的に、米国特許出願公開第2013/0190383号;およびPCT公報WO2013/036868が含まれ、これらの各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0184】
一部の態様では、本発明のiRNAは、UNA(アンロックド核酸)ヌクレオチドである1つまたは複数のモノマーを含む。UNAは、糖の結合のいずれかが除去されてアンロックド「糖」残基を形成している、アンロックド非環式核酸である。一例では、UNAには、C1'-C4'間の結合(すなわち、C1'炭素とC4'炭素との間の共有炭素-酸素-炭素結合)が除去されているモノマーも包含される。別の例では、糖のC2'-C3'結合(すなわち、C2'炭素とC3'炭素との間の共有炭素-炭素結合)が除去されている(参照により本明細書に組み入れられるNuc. Acids Symp. Series, 52, 133-134 (2008)およびFluiter et al., Mol. Biosyst., 2009, 10, 1039を参照されたい)。
【0185】
UNAの調製を教示する代表的な米国特許公報には、非限定的に、米国特許第8,314,227号;ならびに米国特許出願公開第2013/0096289号;同第2013/0011922号;および同第2011/0313020号が含まれ、これらの各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0186】
RNA分子の末端への潜在的安定化修飾は、N-(アセチルアミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-NHAc)、N-(カプロイル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6)、N-(アセチル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-NHAc)、チミジン-2'-0-デオキシチミジン(エーテル)、N-(アミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-アミノ)、2-ドコサノイル-ウリジン-3"-ホスフェート、逆塩基(inverted base)dT(idT)およびその他のものを含むことができる。この修飾の開示は、PCT公報WO2011/005861に見出すことができる。
【0187】
本発明のiRNAのヌクレオチドの他の修飾には、5'ホスフェートまたは5'ホスフェートミミック、例えば、iRNAのアンチセンス鎖上の5'末端ホスフェートまたはホスフェートミミックが含まれる。適切なホスフェートミミックは、例えば、米国特許出願公開第2012/0157511号に開示されており、この全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0188】
A. 本発明のモチーフを含む修飾iRNA
本発明のある特定の局面では、本発明の二本鎖RNAi剤は、例えば、その各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2013/075035号に開示される化学修飾を有する剤を含む。国際公開公報第2013/075035号は、dsRNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖中の、特に切断部位またはその近傍の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾があるモチーフを提供する。一部の態様では、dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、別の方法で完全に修飾される場合がある。これらのモチーフの導入は、センス鎖またはアンチセンス鎖の修飾パターンを、それが存在する場合、中断する。dsRNAi剤は、例としてセンス鎖上で、GalNAc誘導体リガンドに任意でコンジュゲートしている場合がある。
【0189】
より詳細には、二本鎖RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖が、dsRNAi剤の少なくとも1つの鎖の切断部位またはその近傍の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つまたは複数のモチーフを有するように完全に修飾される場合、dsRNAi剤の遺伝子サイレンシング活性が観察された。
【0190】
したがって、本発明は、インビボでの標的遺伝子(すなわち、PD-L1遺伝子)の発現を阻害する能力がある二本鎖RNAi剤を提供する。RNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。RNAi剤の各鎖は、独立して、12~30ヌクレオチド長であり得る。例えば、各鎖は、独立して、14~30ヌクレオチド長、17~30ヌクレオチド長、25~30ヌクレオチド長、27~30ヌクレオチド長、17~23ヌクレオチド長、17~21ヌクレオチド長、17~19ヌクレオチド長、19~25ヌクレオチド長、19~23ヌクレオチド長、19~21ヌクレオチド長、21~25ヌクレオチド長、または21~23ヌクレオチド長であり得る。
【0191】
センス鎖およびアンチセンス鎖は、典型的には、本明細書において「dsRNAi剤」とも称される二重鎖二本鎖RNA(「dsRNA」)を形成する。dsRNAi剤の二重鎖領域は、12~30ヌクレオチド対長であり得る。例えば、二重鎖領域は、14~30ヌクレオチド対長、17~30ヌクレオチド対長、27~30ヌクレオチド対長、17~23ヌクレオチド対長、17~21ヌクレオチド対長、17~19ヌクレオチド対長、19~25ヌクレオチド対長、19~23ヌクレオチド対長、19~21ヌクレオチド対長、21~25ヌクレオチド対長、または21~23ヌクレオチド対長であることができる。別の例では、二重鎖領域は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長より選択される。
【0192】
特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、いっそう長い場合がある。例えば、特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、独立して、25~35ヌクレオチド長である。特定の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各々は、独立して、27~53ヌクレオチド長、例えば、27~49、31~49、33~49、35~49、37~49、および39~49ヌクレオチド長である。
【0193】
特定の態様では、dsRNAi剤は、一方または両方の鎖の3'末端、5'末端、または両方の末端において1つまたは複数のオーバーハング領域またはキャッピング基を含有し得る。オーバーハングは、独立して、1~6ヌクレオチド長、例として、2~6ヌクレオチド長、1~5ヌクレオチド長、2~5ヌクレオチド長、1~4ヌクレオチド長、2~4ヌクレオチド長、1~3ヌクレオチド長、2~3ヌクレオチド長、または1~2ヌクレオチド長であることができる。特定の態様では、オーバーハング領域は、上に提供されたような、伸展したオーバーハング領域を含むことができる。オーバーハングは、一方の鎖が他方よりも長い結果である、または同じ長さの2つの鎖が互い違いになっている結果であることができる。オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成することができ、またはオーバーハングは、標的とされている遺伝子配列と相補的であることができ、もしくは別の配列であることができる。第1および第2の鎖を、例えば、追加的な塩基によって結合させてヘアピンを形成させることもでき、または他の非塩基リンカーによって結合させることもできる。
【0194】
特定の態様では、dsRNAi剤のオーバーハング領域中のヌクレオチドは、各々独立して、非限定的に、2-F、2'-O-メチル、チミジン(T)、2'-O-メトキシエチル-5-メチルウリジン(Teo)、2'-O-メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2'-O-メトキシエチル-5-メチルシチジン(m5Ceo)、およびそれらの任意の組合せなどの2'-糖修飾を含む、修飾または非修飾ヌクレオチドであることができる。例えば、TTは、いずれかの鎖上のいずれかの末端についてのオーバーハング配列であることができる。オーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成することができ、またはオーバーハングは、標的とされている遺伝子配列と相補的であることができ、もしくは別の配列であることができる。
【0195】
dsRNAi剤のセンス鎖、アンチセンス鎖または両方の鎖における5'-または3'-オーバーハングは、リン酸化され得る。一部の態様では、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートを有する2つのヌクレオチドを含有し、ここで、2つのヌクレオチドは、同じまたは異なることができる。一部の態様では、オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖の3'末端に存在する。一部の態様では、この3'-オーバーハングは、アンチセンス鎖中に存在する。一部の態様では、この3'-オーバーハングは、センス鎖中に存在する。
【0196】
dsRNAi剤は、その全体的な安定性に影響を与えずに、RNAiの干渉活性を増強することができるただ1つのオーバーハングを含有し得る。例えば、一本鎖オーバーハングは、センス鎖の3'末端、またはその代わりにアンチセンス鎖の3'末端に位置し得る。RNAiは、アンチセンス鎖の5'末端(もしくはセンス鎖の3'末端)またはその逆に位置する平滑末端も有し得る。一般的に、dsRNAi剤のアンチセンス鎖は、3'末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5'末端は平滑である。理論に縛られることを望むものではないが、アンチセンス鎖の5'末端およびアンチセンス鎖の3'末端オーバーハングにおける非対称の平滑末端は、RISC過程へのガイド鎖積込みに好都合である。
【0197】
特定の態様では、dsRNAi剤は、19ヌクレオチド長の平滑末端二本鎖(double ended bluntmer)であり、センス鎖は、5'末端から7位、8位、9位の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含有する。アンチセンス鎖は、5'末端から11位、12位、13位の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含有する。
【0198】
他の態様では、dsRNAi剤は、20ヌクレオチド長の平滑末端二本鎖であり、センス鎖は、5'末端から8位、9位、10位の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含有する。アンチセンス鎖は、5'末端から11位、12位、13位の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含有する。
【0199】
さらに他の態様では、dsRNAi剤は、21ヌクレオチド長の平滑末端二本鎖であり、センス鎖は、5'末端から9位、10位、11位の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含有する。アンチセンス鎖は、5'末端から11位、12位、13位の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含有する。
【0200】
特定の態様では、dsRNAi剤は、21個のヌクレオチドのセンス鎖および23個のヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、センス鎖は、5'末端から9位、10位、11位の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含有し;アンチセンス鎖は、5'末端から11位、12位、13位の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含有し、RNAi剤の一方の末端が平滑である一方で、他方の末端は、ヌクレオチド2つのオーバーハングを含む。好ましくは、ヌクレオチド2つのオーバーハングは、アンチセンス鎖の3'末端にある。
【0201】
2つのヌクレオチドオーバーハングが、アンチセンス鎖の3'末端にある場合、末端の3つのヌクレオチドの間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合があり得、ここで、3つのうちの2つのヌクレオチドが、オーバーハングヌクレオチドであり、第3のヌクレオチドは、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対形成ヌクレオチドである。一態様では、RNAi剤は、センス鎖の5'末端およびアンチセンス鎖の5'末端の両方における末端の3つのヌクレオチドの間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を追加的に有する。特定の態様では、モチーフの一部であるヌクレオチドを含む、dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖中の各ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドである。特定の態様では、各残基は、独立して、例えば、交互のモチーフとして、2'-O-メチルまたは3'-フルオロで修飾されている。dsRNAi剤は、任意で、リガンド(好ましくは、GalNAc3)をさらに含む。
【0202】
特定の態様では、dsRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖は、25~30ヌクレオチド残基長であり、5'末端ヌクレオチド(1位)を起点として、第1の鎖の1位~23位が、少なくとも8つのリボヌクレオチドを含み;アンチセンス鎖は、36~66ヌクレオチド残基長であり、3'末端ヌクレオチドを起点として、センス鎖の1位~23位と対形成した位置に少なくとも8つのリボヌクレオチドを含んで、二重鎖を形成し;アンチセンス鎖の少なくとも3'末端ヌクレオチドが、センス鎖と対形成せず、最大で6つの連続する3'末端ヌクレオチドが、センス鎖と対形成せず、それによって、1~6つのヌクレオチドの3'一本鎖オーバーハングを形成し;アンチセンス鎖の5'末端は、センス鎖と対形成しない10~30個の連続するヌクレオチドを含み、それによって、10~30個のヌクレオチドの一本鎖5'オーバーハングを形成し;少なくともセンス鎖の5'末端および3'末端ヌクレオチドは、センス鎖およびアンチセンス鎖が最大の相補性となるためにアライメントされるとき、アンチセンス鎖のヌクレオチドと塩基対を形成し、それによって、センス鎖とアンチセンス鎖との間に実質的に二重鎖の領域を形成し;アンチセンス鎖は、二本鎖核酸が哺乳動物細胞中に導入されたときに標的遺伝子の発現を低減するように、アンチセンス鎖の少なくとも19リボヌクレオチド長に沿って標的RNAと十分に相補的であり;センス鎖は、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含有し、ここで、モチーフのうちの少なくとも1つが、切断部位またはその近傍に出現する。アンチセンス鎖は、切断部位またはその近傍の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含有する。
【0203】
特定の態様では、dsRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、dsRNAi剤は、少なくとも25および最大29ヌクレオチド長を有する第1の鎖と、5'末端から11位、12位、13位の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを有する、最大30ヌクレオチド長を有する第2の鎖とを含み;第1の鎖の3'末端および第2の鎖の5'末端は、平滑末端を形成し、第2の鎖は、その3'末端で、第1の鎖よりもヌクレオチド1~4つ長く、二重鎖領域は、少なくとも25ヌクレオチド長であり、第2の鎖は、RNAi剤が哺乳動物細胞中に導入されたときに標的遺伝子の発現を低減するように、第2の鎖長の少なくとも19個のヌクレオチドに沿って標的mRNAと十分に相補的であり、dsRNAi剤のダイサー切断が、第2の鎖の3'末端を含むsiRNAを優先的にもたらし、それによって、哺乳動物における標的遺伝子の発現を低減する。dsRNAi剤は、任意で、リガンドをさらに含む。
【0204】
特定の態様では、dsRNAi剤のセンス鎖は、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾の少なくとも1つのモチーフを含有し、ここで、モチーフの1つは、センス鎖の切断部位に存在する。
【0205】
特定の態様では、dsRNAi剤のアンチセンス鎖も、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾の少なくとも1つのモチーフを含有することができ、ここで、モチーフの1つは、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に出現する。
【0206】
17~23ヌクレオチド長の二重鎖領域を有するdsRNAi剤について、アンチセンス鎖の切断部位は、典型的には、5'末端から10位、11位、および12位の付近である。したがって、3つの同一の修飾のモチーフは、アンチセンス鎖の5'末端から1つ目のヌクレオチドから数え始めて、またはアンチセンス鎖の5'末端から、二重鎖領域内の1つ目の対形成ヌクレオチドから数え始めて、アンチセンス鎖の9、10、11位;10、11、12位;11、12、13位;12、13、14位;または13、14、15位に存在し得る。アンチセンス鎖中の切断部位は、5'末端からのdsRNAi剤の二重鎖領域の長さに応じても変化し得る。
【0207】
dsRNAi剤のセンス鎖は、鎖の切断部位に連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾の少なくとも1つのモチーフを含有する場合があり;アンチセンス鎖は、鎖の切断部位またはその近傍の連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾の少なくとも1つのモチーフを有し得る。センス鎖およびアンチセンス鎖がdsRNA二重鎖を形成する場合、センス鎖およびアンチセンス鎖は、センス鎖上の3つのヌクレオチドの1つのモチーフと、アンチセンス鎖上の3つのヌクレオチドの1つのモチーフとが、少なくとも1つのヌクレオチドの重複を有し、すなわち、センス鎖中のモチーフの3つのヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、アンチセンス鎖中のモチーフの3つのヌクレオチドのうちの少なくとも1つと塩基対を形成するようにアライメントすることができる。あるいは、少なくとも2つのヌクレオチドが重複する場合があり、または3つのヌクレオチド全てが重複する場合がある。
【0208】
一部の態様では、dsRNAi剤のセンス鎖は、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾の1つを超えるモチーフを含有し得る。第1のモチーフは、鎖の切断部位またはその近傍に出現する場合があり、他方のモチーフは、ウイング修飾(wing modification)であり得る。本明細書における「ウイング修飾」という用語は、鎖の切断部位またはその近傍のモチーフから離れた同じ鎖の別の部分に出現するモチーフを指す。ウイング修飾は、第1のモチーフに隣接するか、または少なくとも1つもしくは複数のヌクレオチドによって隔てられているかのいずれかである。モチーフが、相互に直接隣接している場合、モチーフの化学構造は、互いに異なり、モチーフが、1つまたは複数のヌクレオチドによって隔てられている場合、化学構造は、同じまたは異なることができる。2つまたはそれより多くのウイング修飾が存在し得る。例として、2つのウイング修飾が存在する場合、各ウイング修飾は、切断部位またはその近傍の第1のモチーフに対して一方の末端にまたは先導モチーフの両側に出現し得る。
【0209】
センス鎖と同様に、dsRNAi剤のアンチセンス鎖は、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾の1つを超えるモチーフを含有する場合があり、モチーフの少なくとも1つが、鎖の切断部位またはその近傍に存在する。センス鎖上に存在し得るウイング修飾と同様、このアンチセンス鎖も、アライメントにおいて1つまたは複数のウイング修飾を含有し得る。
【0210】
一部の態様では、dsRNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖上のウイング修飾は、典型的には、鎖の3'末端、5'末端または両方の末端に最初の1つまたは2つの末端ヌクレオチドを含まない。
【0211】
他の態様では、dsRNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖上のウイング修飾は、典型的には、鎖の3'末端、5'末端または両方の末端の二本鎖領域内に最初の1つまたは2つの対形成ヌクレオチドを含まない。
【0212】
dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖が、各々、少なくとも1つのウイング修飾を含有する場合、ウイング修飾は、二重鎖領域の同じ末端に位置する場合があり、1つ、2つまたは3つのヌクレオチドの重複を有し得る。
【0213】
dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖が、各々、少なくとも2つのウイング修飾を含有する場合、1つの鎖から1つずつの2つの修飾が、二重鎖領域の一方の末端に位置し、1つ、2つまたは3つのヌクレオチドの重複を有し;1つの鎖から1つずつの2つの修飾が、二重鎖領域の他方の末端に位置し、1つ、2つまたは3つのヌクレオチドの重複を有し;1つの鎖からの2つの修飾が先導モチーフの両側にあり、二重鎖領域中に1つ、2つまたは3つのヌクレオチドの重複を有するように、センス鎖およびアンチセンス鎖をアライメントすることができる。
【0214】
一部の態様では、モチーフの一部であるヌクレオチドを含む、dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖中の各ヌクレオチドが修飾され得る。各ヌクレオチドは、同じまたは異なる修飾で修飾され得、この修飾は、非結合リン酸酸素または結合リン酸酸素の1つもしくは複数の一方または両方の1つまたは複数の変更;リボース糖の構成成分、例えば、リボース糖の2'ヒドロキシルの変更;「脱リン(dephospho)」リンカーによるリン酸部分の大規模な置換;天然塩基の修飾または置換;およびリボース-リン酸骨格の置換または修飾を含むことができる。
【0215】
核酸は、サブユニットのポリマーであるため、多くの修飾、例えば、塩基、またはリン酸部分、またはリン酸部分の非結合Oの修飾は、核酸内の繰り返される位置に存在する。場合によっては、修飾は、核酸中の対象位置の全てに存在するが、多くの場合、そうではない。例として、修飾は、3'または5'末端位のみに存在する場合があり、末端領域に、例えば、末端ヌクレオチド上の位置、または鎖の最後の2、3、4、5、または10個のヌクレオチドのみに存在する場合がある。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、またはその両方に存在し得る。修飾は、dsRNAi剤の二本鎖領域のみに存在する場合がある、またはdsRNAi剤の一本鎖領域のみに存在する場合がある。例えば、非結合O位置におけるホスホロチオエート修飾は、一方または両方の末端のみに存在する場合がある、末端領域、例えば、末端ヌクレオチド上の位置または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10個のヌクレオチドのみに存在する場合がある、あるいは二本鎖および一本鎖領域の、特に末端に存在する場合がある。1つまたは複数の5'末端をリン酸化することができる。
【0216】
例えば、安定性を高めること、オーバーハング中に特定の塩基を含むこと、または一本鎖オーバーハング、例えば、5'もしくは3'オーバーハング、もしくはその両方に修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオチド代用物を含むことが可能であり得る。例えば、オーバーハング中にプリンヌクレオチドを含むことが望ましい可能性がある。一部の態様では、3'または5'オーバーハング中の塩基の全てまたは一部が、例えば、本明細書に記載の修飾で修飾され得る。修飾は、例えば、当技術分野において公知の修飾によるリボース糖の2'位における修飾の使用、例えば、核酸塩基のリボ糖の代わりのデオキシリボヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロ(2'-F)または2'-O-メチル修飾の使用、およびリン酸基の修飾、例えば、ホスホロチオエート修飾を含むことができる。オーバーハングは、標的配列と相同である必要はない。
【0217】
一部の態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立して、LNA、CRN、cET、UNA、HNA、CeNA、2'-メトキシエチル、2'-O-メチル、2'-O-アリル、2'-C-アリル、2'-デオキシ、2'-ヒドロキシル、または2'-フルオロで修飾されている。鎖は、1つを超える修飾を含有することができる。一態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立して、2'-O-メチルまたは2'-フルオロで修飾されている。
【0218】
少なくとも2つの異なる修飾が、典型的には、センス鎖およびアンチセンス鎖上に存在する。それらの2つの修飾は、2'-O-メチルもしくは2'-フルオロ修飾、または他のものであり得る。
【0219】
特定の態様では、NaまたはNbは、交互のパターンの修飾を含む。本明細書に使用される「交互のモチーフ」という用語は、1つまたは複数の修飾を有するモチーフであって、各修飾が、一方の鎖の交互のヌクレオチド上に存在するモチーフを指す。交互のヌクレオチドは、1つおきのヌクレオチドに1つ、または3つ毎のヌクレオチドに1つ、または類似のパターンを指し得る。例えば、A、BおよびCが、各々、ヌクレオチドに対する1種類の修飾を表すならば、交互のモチーフは、「ABABABABABAB…」、「AABBAABBAABB…」、「AABAABAABAAB…」、「AAABAAABAAAB…」、「AAABBBAAABBB…」、または「ABCABCABCABC…」などであることができる。
【0220】
交互のモチーフに含有される修飾の種類は、同じまたは異なる場合がある。例えば、A、B、C、Dが、各々、ヌクレオチド上の1種類の修飾を表すならば、交互のパターン、すなわち、1つおきのヌクレオチド上の修飾は、同じであり得るが、センス鎖またはアンチセンス鎖の各々は、「ABABAB…」、「ACACAC…」、「BDBDBD…」または「CDCDCD…」などの交互のモチーフ内の修飾のいくつかの可能性より選択することができる。
【0221】
一部の態様では、本発明のdsRNAi剤は、アンチセンス鎖上の交互のモチーフについての修飾パターンに対してシフトされた、センス鎖上の交互のモチーフについての修飾パターンを含む。このシフトは、センス鎖のヌクレオチドの修飾基が、アンチセンス鎖のヌクレオチドの異なって修飾された基に対応するか、かつその逆であるようなシフトであり得る。例えば、センス鎖が、アンチセンス鎖とdsRNA二重鎖において対形成する場合、センス鎖における交互のモチーフは、鎖の5'から3'に「ABABAB」から開始する場合があり、アンチセンス鎖における交互のモチーフは、二本鎖領域内で鎖の5'から3'に「BABABA」から開始する場合がある。別の例として、センス鎖とアンチセンス鎖との間で修飾パターンの完全または部分的なシフトがあるように、センス鎖における交互のモチーフは、鎖の5'から3'に「AABBAABB」から開始する場合があり、アンチセンス鎖における交互のモチーフは、二本鎖領域内で鎖の5'から3'に「BBAABBAA」から開始する場合がある。
【0222】
一部の態様では、dsRNAi剤は、最初にセンス鎖上の2'-O-メチル修飾および2'-F修飾の交互のモチーフのパターンを含み、このパターンは、最初に、アンチセンス鎖上の2'-O-メチル修飾および2'-F修飾の交互のモチーフのパターンに対してシフトを有し、すなわち、センス鎖上の2'-O-メチル修飾ヌクレオチドが、アンチセンス鎖上の2'-F修飾ヌクレオチドと塩基対を形成し、かつその逆も同様である。センス鎖の1位は、2'-F修飾から開始する場合があり、アンチセンス鎖の1位は、2'-O-メチル修飾から開始する場合がある。
【0223】
センス鎖またはアンチセンス鎖への、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つまたは複数のモチーフの導入は、センス鎖またはアンチセンス鎖中に存在する最初の修飾パターンを中断する。センス鎖またはアンチセンス鎖に連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つまたは複数のモチーフを導入することによる、センス鎖またはアンチセンス鎖の修飾パターンのこの中断は、標的遺伝子に対する遺伝子サイレンシング活性を高め得る。
【0224】
一部の態様では、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾があるモチーフが、鎖のいずれかに導入される場合、モチーフに隣接するヌクレオチドの修飾は、モチーフの修飾と異なる修飾である。例えば、モチーフを含有する配列の部分は、「…NaYYYNb…」であり、ここで、「Y」は、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾があるモチーフの修飾を表し、「Na」および「Nb」は、Yの修飾と異なる、モチーフ「YYY」に隣接するヌクレオチドの修飾を表し、NaおよびNbは、同じかまたは異なる修飾であることができる。あるいは、NaまたはNbは、ウイング修飾が存在する場合、存在する場合または不在の場合がある。
【0225】
iRNAは、少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合をさらに含み得る。ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合の修飾は、鎖の任意の位置に、センス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖上の任意のヌクレオチドに存在し得る。例として、ヌクレオチド間結合の修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖におけるあらゆるヌクレオチド上に存在する場合があり;各ヌクレオチド間結合の修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖上に交互のパターンで存在する場合があり;またはセンス鎖もしくはアンチセンス鎖は、両方のヌクレオチド間結合の修飾を交互のパターンで含有し得る。センス鎖上のヌクレオチド間結合の修飾の交互のパターンは、アンチセンス鎖と同じまたは異なる場合があり、センス鎖上のヌクレオチド間結合の修飾の交互のパターンは、アンチセンス鎖上のヌクレオチド間結合の修飾の交互のパターンに対してシフトを有し得る。一態様では、二本鎖RNAi剤は、6~8つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一部の態様では、アンチセンス鎖は、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合および3末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、センス鎖は、5'末端または3'末端のいずれかに少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0226】
一部の態様では、dsRNAi剤は、オーバーハング領域にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合の修飾を含む。例えば、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合を有する2つのヌクレオチドを含有し得る。ヌクレオチド間結合の修飾は、オーバーハングヌクレオチドを二重鎖領域内の末端の対形成ヌクレオチドと連結するためにも行われ得る。例えば、少なくとも2、3、4、または全てのオーバーハングヌクレオチドが、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合によって連結され得、任意で、オーバーハングヌクレオチドを、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対形成ヌクレオチドと連結する追加的なホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合があり得る。例として、末端の3つのヌクレオチド間に少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合があり得、ここで、これらの3つのヌクレオチドのうちの2つが、オーバーハングヌクレオチドであり、第3のヌクレオチドが、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対形成ヌクレオチドである。これらの末端の3つのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3'末端、センス鎖の3'末端、アンチセンス鎖の5'末端、またはアンチセンス鎖の5'末端にあり得る。
【0227】
一部の態様では、ヌクレオチド2つのオーバーハングは、アンチセンス鎖の3'末端にあり、末端の3つのヌクレオチド間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合があり、3つのヌクレオチドのうちの2つが、オーバーハングヌクレオチドであり、第3のヌクレオチドが、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対形成ヌクレオチドである。任意で、dsRNAi剤は、センス鎖の5'末端およびアンチセンス鎖の5'末端の両方において、末端の3つのヌクレオチド間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を追加的に有し得る。
【0228】
一態様では、dsRNAi剤は、標的とのミスマッチ、二重鎖内のミスマッチ、またはそれらの組合せを含む。ミスマッチは、オーバーハング領域または二重鎖領域で生じ得る。塩基対は、解離または融解を促進する傾向に基づき(例えば、特定の対形成の会合または解離の自由エネルギーに関して、最も簡単なアプローチは、個々の対ベースで対を調べることであるが、近隣(next neighbor)分析または類似の分析も使用することができる)順位付けされ得る。解離の促進に関して: A:Uが、G:Cよりも好ましく; G:Uが、G:Cよりも好ましく; I:Cが、G:Cよりも好ましい(I=イノシン)。ミスマッチ、例えば、非古典的対形成または古典的以外の対形成(本明細書の他の箇所に記載される)が、古典的(A:T、A:U、G:C)対形成よりも好ましく;ユニバーサル塩基を含む対形成が、古典的対形成よりも好ましい。
【0229】
特定の態様では、dsRNAi剤は、A:U、G:U、I:Cの群より独立して選択される、アンチセンス鎖の5'末端からの二重鎖領域内の最初の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの塩基対のうちの少なくとも1つ、および二重鎖の5'末端におけるアンチセンス鎖の解離を促進するためのミスマッチ対、例えば、非古典的対形成または古典的以外の対形成またはユニバーサル塩基を含む対形成を含む。
【0230】
特定の態様では、アンチセンス鎖の5'末端からの二重鎖領域内の1位におけるヌクレオチドは、A、dA、dU、U、およびdTより選択される。あるいは、アンチセンス鎖の5'末端からの二重鎖領域内の最初の1、2または3塩基対のうちの少なくとも1つは、AU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5'末端からの二重鎖領域内の最初の塩基対は、AU塩基対である。
【0231】
他の態様では、センス鎖の3'末端におけるヌクレオチドは、デオキシ-チミン(dT)である、または、アンチセンス鎖の3'末端におけるヌクレオチドは、デオキシ-チミン(dT)である。例えば、センス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖の3'末端上にデオキシ-チミンヌクレオチドの短い配列、例えば、2つのdTヌクレオチドがある。
【0232】
特定の態様では、センス鎖配列は、式(I)によって表され得る:
式中、
iおよびjは、各々独立して、0または1であり;
pおよびqは、各々独立して、0~6であり;
各N
aは、独立して、0~25個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bは、独立して、0~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各n
pおよびn
qは、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
NbおよびYは、同じ修飾を有さず;
XXX、YYY、およびZZZは、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表す。好ましくは、YYYは、全て2'-F修飾ヌクレオチドである。
【0233】
一部の態様では、NaまたはNbは、交互のパターンの修飾を含む。
【0234】
一部の態様では、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。例えば、dsRNAi剤が、17~23ヌクレオチド長の二重鎖領域を有する場合、YYYモチーフは、5'末端から、1つ目のヌクレオチドから数え始めて;または任意で、5'末端から、二重鎖領域内の1つ目の対形成ヌクレオチドから数え始めて、センス鎖の切断部位またはその近くに存在することができる(例えば:6、7、8位;7、8、9位;8、9、10位;9、10、11位;10、11,12;または11、12、13位に存在することができる)。
【0235】
一態様では、iは1であり、jは0である、またはiは0であり、jは1である、またはiおよびjの両方は1である。したがって、センス鎖を、下記式によって表すことができる:
。
【0236】
センス鎖が、式(Ib)によって表される場合、Nbは、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2つ、または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すことができる。
【0237】
センス鎖が、式(Ic)として表される場合、Nbは、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2つ、または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すことができる。
【0238】
センス鎖が、式(Id)によって表される場合、各Nbは、独立して、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2つ、または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、Nbは、0、1、2、3、4、5、または6である。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すことができる。
【0239】
X、YおよびZの各々は、相互に同じまたは異なり得る。
【0240】
他の態様では、iは0であり、jは0であり、センス鎖は、下記式によって表され得る:
5' np-Na-YYY-Na-nq 3' (Ia)。
【0241】
センス鎖が、式(Ia)によって表される場合、各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すことができる。
【0242】
一態様では、RNAiのアンチセンス鎖配列は、式(II)によって表され得る:
式中、
kおよびlは、各々独立して、0または1であり;
p'およびq'は、各々独立して、0~6であり;
各N
a'は、独立して、0~25個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
b'は、独立して、0~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各n
p'およびn
q'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
N
b'およびY'は、同じ修飾を有さず;
X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表す。
【0243】
一部の態様では、Na'またはNb'は、交互のパターンの修飾を含む。
【0244】
Y'Y'Y'モチーフは、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。例えば、dsRNAi剤が17~23ヌクレオチド長の二重鎖領域を有する場合、Y'Y'Y'モチーフは、5'末端から、1つ目のヌクレオチドから数え始めて;または任意で、5'末端から、二重鎖領域内の1つ目の対形成ヌクレオチドから数え始めて、アンチセンス鎖の9、10、11位;10、11、12位;11、12、13位;12、13、14位;または13、14、15位に存在することができる。好ましくは、Y'Y'Y'モチーフは、11、12、13位に存在する。
【0245】
特定の態様では、Y'Y'Y'モチーフは、全て2'-OMe修飾ヌクレオチドである。
【0246】
特定の態様では、kは1であり、lは0である、またはkは0であり、lは1である、またはkおよびlの両方は1である。
【0247】
したがって、アンチセンス鎖は、下記式:
によって表すことができる。
【0248】
アンチセンス鎖が、式(IIb)によって表される場合、Nb'は、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2つ、または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na'は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0249】
アンチセンス鎖が、式(IIc)として表される場合、Nb'は、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2つ、または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na'は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0250】
アンチセンス鎖が、式(IId)として表される場合、各Nb'は、独立して、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2つ、または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na'は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、Nbは、0、1、2、3、4、5、または6である。
【0251】
他の態様では、kは0であり、lは0であり、アンチセンス鎖は、下記式によって表され得る:
5' np'-Na'-Y'Y'Y'-Na'-nq' 3' (Ia)。
【0252】
アンチセンス鎖が、式(IIa)として表される場合、各Na'は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。X'、Y'およびZ'の各々は、相互に同じまたは異なり得る。
【0253】
センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、独立して、LNA、CRN、UNA、cEt、HNA、CeNA、2'-メトキシエチル、2'-O-メチル、2'-O-アリル、2'-C-アリル、2'-ヒドロキシル、または2'-フルオロで修飾されている場合がある。例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、独立して、2'-O-メチルまたは2'-フルオロで修飾されている。各X、Y、Z、X'、Y'、およびZ'は、特に、2'-O-メチル修飾または2'-フルオロ修飾を表し得る。
【0254】
一部の態様では、dsRNAi剤のセンス鎖は、二重鎖領域が21ntの場合、5'末端から、1つ目のヌクレオチドから数え始めて、または任意で、5'末端から、二重鎖領域内の1つ目の対形成ヌクレオチドから数え始めて、鎖の9、10、および11位に存在するYYYモチーフを含有する場合があり;Yは、2'-F修飾を表す。センス鎖は、追加的に、XXXモチーフまたはZZZモチーフをウイング修飾として二重鎖領域の反対側の末端に含有する場合があり;XXXおよびZZZは、各々独立して、2'-OMe修飾または2'-F修飾を表す。
【0255】
一部の態様では、アンチセンス鎖は、5'末端から、1つ目のヌクレオチドから数え始めて、または任意で、5'末端から、二重鎖領域内の1つ目の対形成ヌクレオチドから数え始めて、鎖の11、12、13位に存在するY'Y'Y'モチーフを含有する場合があり;Y'は、2'-O-メチル修飾を表す。アンチセンス鎖は、追加的に、X'X'X'モチーフまたはZ'Z'Z'モチーフをウイング修飾として二重鎖領域の反対側の末端に含有する場合があり;X'X'X'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、2'-OMe修飾または2'-F修飾を表す。
【0256】
上記式(Ia)、(Ib)、(Ic)、および(Id)のうちのいずれか1つによって表されるセンス鎖は、それぞれ、式(IIa)、(IIb)、(IIc)、および(IId)のいずれか1つによって表されるアンチセンス鎖と共に二重鎖を形成する。
【0257】
したがって、本発明の方法に使用するためのdsRNAi剤は、各鎖が14から30個のヌクレオチドを有するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む場合があり、iRNA二重鎖は、式(III)によって表される:
式中、
i、j、k、およびlは、各々独立して、0または1であり;
p、p'、q、およびq'は、各々独立して、0~6であり;
各N
aおよびN
a'は、独立して、0~25個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N
bおよびN
b'は、独立して、0~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各々が存在する場合または存在しない場合がある各n
p'、n
p、n
q'、およびn
qは、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'、およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続的な3つのヌクレオチド上に3つの同一の修飾がある1つのモチーフを表す。
【0258】
一態様では、iは0であり、jは0である;またはiは1であり、jは0である;またはiは0であり、jは1である;またはiおよびjの両方は0である;またはiおよびjの両方は1である。別の態様では、kは0であり、lは0である;またはkは1であり、lは0である;kは0であり、lは1である;またはkおよびlの両方は0である;またはkおよびlの両方は1である。
【0259】
iRNA二重鎖を形成しているセンス鎖とアンチセンス鎖との例示的な組合せには、下記式が含まれる:
。
【0260】
dsRNAi剤が、式(IIIa)によって表される場合、各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0261】
dsRNAi剤が、式(IIIb)によって表される場合、各Nbは、独立して、1~10、1~7、1~5、または1~4つの修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0262】
dsRNAi剤が、式(IIIc)として表される場合、各Nb、Nb'は、独立して、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2つまたは0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0263】
dsRNAi剤が、式(IIId)として表される場合、各Nb、Nb'は、独立して、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2つまたは0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na、Na'は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。Na、Na'、Nb,およびNb'の各々は、独立して、交互のパターンの修飾を含む。
【0264】
式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)中のX、YおよびZの各々は、相互に同じまたは異なり得る。
【0265】
dsRNAi剤が、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)によって表される場合、Yヌクレオチドの少なくとも1つが、Y'ヌクレオチドの1つと塩基対を形成し得る。あるいは、Yヌクレオチドの少なくとも2つが、対応するY'ヌクレオチドと塩基対を形成する;またはYヌクレオチドの3つ全部が、全て、対応するY'ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0266】
dsRNAi剤が、式(IIIb)または(IIId)によって表される場合、Zヌクレオチドの少なくとも1つが、Z'ヌクレオチドの1つと塩基対を形成し得る。あるいは、Zヌクレオチドの少なくとも2つが、対応するZ'ヌクレオチドと塩基対を形成する;またはZヌクレオチドの3つ全部が、全て、対応するZ'ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0267】
dsRNAi剤が、式(IIIc)または(IIId)として表される場合、Xヌクレオチドの少なくとも1つが、X'ヌクレオチドの1つと塩基対を形成し得る。あるいは、Xヌクレオチドの少なくとも2つが、対応するX'ヌクレオチドと塩基対を形成する;またはXヌクレオチドの3つ全部が、全て、対応するX'ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0268】
特定の態様では、Yヌクレオチド上の修飾は、Y'ヌクレオチド上の修飾と異なり、Zヌクレオチド上の修飾は、Z'ヌクレオチド上の修飾と異なり、かつ/またはXヌクレオチド上の修飾は、X'ヌクレオチド上の修飾と異なる。
【0269】
特定の態様では、dsRNAi剤が、式(IIId)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾である。他の態様では、RNAi剤が、式(IIId)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、np'>0であり、かつ少なくとも1つのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに連結されている。さらに他の態様では、RNAi剤が、式(IIId)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、np'>0であり、かつ少なくとも1つのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており、センス鎖は、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体にコンジュゲートしている(以下に記載)。他の態様では、RNAi剤が、式(IIId)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、np'>0であり、かつ少なくとも1つのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており、センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、センス鎖は、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体にコンジュゲートしている。
【0270】
一部の態様では、dsRNAi剤が、式(IIIa)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、np'>0であり、かつ少なくとも1つのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに連結されており、センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、センス鎖は、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数のGalNAc誘導体にコンジュゲートしている。
【0271】
一部の態様では、dsRNAi剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)によって表される少なくとも2つの二重鎖を含有するマルチマーであり、該二重鎖がリンカーによって繋がっている。リンカーは、切断可能または切断不可能であることができる。任意で、マルチマーは、リガンドをさらに含む。二重鎖の各々は、同じ遺伝子もしくは2つの異なる遺伝子を標的とすることができ;または二重鎖の各々は、2つの異なる標的部位において同じ遺伝子を標的とすることができる。
【0272】
一部の態様では、dsRNAi剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)によって表される3つ、4つ、5つ、6つまたはそれより多くの二重鎖を含有するマルチマーであり、該二重鎖がリンカーによって繋がっている。リンカーは、切断可能または切断不可能であることができる。任意で、マルチマーは、リガンドをさらに含む。二重鎖の各々は、同じ遺伝子もしくは2つの異なる遺伝子を標的とすることができ;または二重鎖の各々は、2つの異なる標的部位において同じ遺伝子を標的とすることができる。
【0273】
一態様では、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)のうちの少なくとも1つによって表される2つのdsRNAi剤は、5'末端、および3'末端の一方または両方で互いに連結しており、任意で、リガンドにコンジュゲートしている。剤の各々は、同じ遺伝子もしくは2つの異なる遺伝子を標的とすることができ;または剤の各々は、2つの異なる標的部位において同じ遺伝子を標的とすることができる。
【0274】
様々な刊行物に、本発明の方法に使用することができるマルチマー性iRNAが記載されている。そのような刊行物には、米国特許第7,858,769号、WO2007/091269、WO2010/141511、WO2007/117686、WO2009/014887、およびWO2011/031520が含まれ、これらの各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0275】
以下により詳細に説明されるように、iRNAに対する1つまたは複数の炭水化物部分のコンジュゲーションを含有するiRNAは、iRNAの1つまたは複数の特性を最適化することができる。多くの場合、炭水化物部分は、iRNAの修飾サブユニットに結合される。例えば、iRNAの1つまたは複数のリボヌクレオチドサブユニットのリボース糖を、別の部分、例えば、炭水化物リガンドが結合する非炭水化物(好ましくは環状の)担体で置換することができる。サブユニットのリボース糖がそのように置換されたリボヌクレオチドサブユニットは、本明細書において、リボース置換修飾サブユニット(RRMS)と称される。環状担体は、炭素環系(すなわち、全ての環原子が炭素原子である)または複素環系(すなわち、1つまたは複数の環原子がヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、硫黄であり得る)であり得る。環状担体は、単環系であり得、または2つまたはそれより多くの環、例えば縮合環を含有し得る。環状担体は、完全に飽和した環系であり得、またはそれは、1つもしくは複数の二重結合を含有し得る。
【0276】
リガンドは、担体を介してポリヌクレオチドに結合され得る。担体は、(i)少なくとも1つの「骨格結合点」、好ましくは、2つの「骨格結合点」および(ii)少なくとも1つの「テザー結合点(tethering attachment point)」を含む。本明細書に使用される「骨格結合点」は、官能基、例えば、ヒドロキシル基、または一般的に、リボ核酸の骨格中への、例えば、ホスフェート、または修飾ホスフェート、例えば、硫黄含有骨格中への担体の組入れに利用可能であり、かつそれに適した結合を指す。「テザー結合点」(TAP)は、ある態様では、選択された部分を繋ぐ環状担体の構成環原子、例えば、炭素原子またはヘテロ原子(骨格結合点を提供する原子と異なる)を指す。この部分は、例えば、炭水化物、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖であることができる。任意で、選択された部分は、介在するテザー(intervening tether)によって環状担体に繋がっている。したがって、環状担体は、多くの場合、官能基、例えば、アミノ基を含み、または一般的に、構成環への別の化学的主体、例えばリガンドの組入れまたはテザリング(tethering)に適した結合を提供する。
【0277】
iRNAは、担体を介してリガンドにコンジュゲートしている場合があり、ここで、担体は、環式基または非環式基であることができ;好ましくは、環式基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラン、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフリル、およびデカリンより選択され;好ましくは、非環式基は、セリノール骨格またはジエタノールアミン骨格である。
【0278】
特定の態様では、iRNAは、表3および5に列挙される剤より選択される剤である。一態様では、iRNA剤は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド3221~3243を標的とする。一態様では、RNAi剤は、AD-67635である(SEQ ID NO:1のヌクレオチド3224~3243を標的とする)。別の態様では、RNAi剤は、AD-67637である(SEQ ID NO:1のヌクレオチド3223~3242を標的とする)。これらの剤は、リガンドをさらに含み得る。
【0279】
III. リガンドにコンジュゲートしているiRNA
本発明のiRNAのRNAの別の修飾は、iRNAの活性、細胞分布または例えば細胞内への細胞取込みを高める1つまたは複数のリガンド、部分またはコンジュゲートをiRNAに化学的に連結することを含む。そのような部分には、非限定的に、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 1989, 86: 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1994, 4:1053-1060)などの脂質部分が含まれる。特定の態様では、修飾は、チオエーテル、例えば、ベリル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306-309; Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533-538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J, 1991, 10:1111-1118; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327-330; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777-3783)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229-237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923-937)を含むことができる。
【0280】
特定の態様では、リガンドは、それが組み入れられるiRNA剤の分布、標的指向または寿命を変化させる。好ましい態様では、リガンドは、例えば、そのようなリガンドが不在の種と比較して、選択された標的(例えば、分子、細胞または細胞型)、区画(例えば、細胞または器官の区画)、身体の組織、器官または領域に対して強化された親和性を提供する。好ましいリガンドは、二重鎖核酸における二重鎖の対形成に関与しない。
【0281】
リガンドは、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低比重リポタンパク(LDL)、またはグロブリン);炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、N-アセチルガラクトサミン、もしくはヒアルロン酸);または脂質などの天然の物質を含むことができる。リガンドは、合成ポリマー、例えば、合成ポリアミノ酸などの組換え分子または合成分子であることもできる。ポリアミノ酸の例には、ポリリシン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが含まれる。ポリアミンの例には、ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬似ペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの第四級塩、またはアルファ-へリックスペプチドが含まれる。
【0282】
リガンドは、標的指向基、例えば、細胞または組織標的指向剤、例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質、例えば、腎細胞などの特定の細胞型に結合する抗体も含むことができる。標的指向基は、サイロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントタンパク質A、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、一価もしくは多価N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタメート、ポリアスパルテート、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸塩、ビタミンB12、ビタミンA、ビオチン、またはRGDペプチドもしくはRGDペプチド模倣体であることができる。特定の態様では、リガンドは、一価または多価N-アセチル-ガラクトサミンである。特定の態様では、リガンドは、コレステロールである。
【0283】
リガンドの他の例には、色素、挿入剤(例えばアクリジン)、架橋剤(例えばソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えばEDTA)、親油性分子、例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸(cholenic acid)、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザ大環状Eu3+錯体)、ジニトロフェニル、HRP、またはAPが含まれる。
【0284】
リガンドは、タンパク質、例えば、糖タンパク質、またはペプチド、例えば、共リガンド(co-ligand)に対して特異的親和性を有する分子、または抗体、例えば、肝細胞などの特定の細胞型に結合する抗体であることができる。リガンドは、ホルモンおよびホルモン受容体を含むこともできる。リガンドは、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、多価マンノース、または多価フコースなどの非ペプチド種も含むことができる。リガンドは、例えば、リポ多糖、p38MAPキナーゼ活性化因子、またはNF-κB活性化因子であることができる。
【0285】
リガンドは、例えば、細胞の微小管、マイクロフィラメント、または中間径フィラメントを破壊することによって、例えば、細胞骨格を破壊することによって、細胞内へのiRNA剤の取込みを増加させることができる物質、例えば、薬物であることができる。薬物は、例えば、タキサン(taxon)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャスプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンであることができる。
【0286】
一部の態様では、本明細書に記載のiRNAに結合したリガンドは、薬物動態モジュレーター(PKモジュレーター)として作用する。PKモジュレーターには、親油性物質、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどが含まれる。例示的なPKモジュレーターには、非限定的に、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが含まれる。いくつかのホスホロチオエート結合を含むオリゴヌクレオチドは、血清タンパク質に結合することも公知であり、したがって、短いオリゴヌクレオチド、例えば、骨格中に複数のホスホロチオエート結合を含む、約5塩基、10塩基、15塩基または20塩基のオリゴヌクレオチドも、リガンド(例えばPKモジュレートリガンド)として本発明に適している。加えて、血清成分(例えば血清タンパク質)と結合するアプタマーも、本明細書に記載の態様においてPKモジュレートリガンドとして使用するために適切である。
【0287】
本発明のリガンドコンジュゲートiRNAは、オリゴヌクレオチド上の連結分子の結合から得られたものなどの、反応性ペンダント官能基を有するオリゴヌクレオチドの使用によって合成され得る(後述される)。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、多様な保護基のいずれかを有する合成されたリガンド、または連結部分が結合したリガンドと、直接反応され得る。
【0288】
本発明のコンジュゲートに使用されるオリゴヌクレオチドは、固相合成の周知の技法によって好都合におよび日常的に作製され得る。そのような合成のための装置は、例えば、Applied Biosystems(Foster City, Calif.)を含むいくつかの業者によって販売されている。当技術分野において公知のそのような合成のための任意の他の手段が、追加的または代替的に採用される場合がある。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などの他のオリゴヌクレオチドを調製するための類似の技術を使用することも公知である。
【0289】
本発明の配列特異的連結ヌクレオシドを有するリガンドコンジュゲートiRNAおよびリガンド分子において、本発明のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドは、標準的なヌクレオチドもしくはヌクレオシド前駆体、または連結部分をすでに有するヌクレオチドもしくはヌクレオシドコンジュゲート前駆体、リガンド分子をすでに有するリガンド-ヌクレオチドもしくはヌクレオシド-コンジュゲート前駆体、または非ヌクレオシド性リガンド含有構成ブロックを利用して、適切なDNA合成装置を用いて組み立てられ得る。
【0290】
連結部分をすでに有するヌクレオチドコンジュゲート前駆体を使用する場合、配列特異的連結ヌクレオシドの合成が、典型的には完了され、次にリガンド分子が、連結部分と反応して、リガンド-コンジュゲートオリゴヌクレオチドを形成する。一部の態様では、本発明のオリゴヌクレオチドまたは連結ヌクレオシドは、市販で、かつオリゴヌクレオチド合成に日常的に使用される標準的なホスホロアミダイトおよび非標準的なホスホロアミダイトに加えて、リガンド-ヌクレオシドコンジュゲートから得られるホスホロアミダイトを使用して、自動合成装置によって合成される。
【0291】
A. 脂質コンジュゲート
特定の態様では、リガンドまたはコンジュゲートは、脂質または脂質ベースの分子である。そのような脂質または脂質ベースの分子は、好ましくは、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)と結合する。HSA結合リガンドは、標的組織、例えば身体の非腎臓標的組織へのコンジュゲートの分布を可能にする。例えば標的組織は、肝臓の実質細胞を含む肝臓であることができる。HSAと結合することができる他の分子もまた、リガンドとして使用することができる。例えば、ナプロキセンまたはアスピリンを使用することができる。脂質または脂質ベースのリガンドは、(a)コンジュゲートの分解耐性を増大させることができる、(b)標的細胞または細胞膜への標的指向もしくは輸送を増加させることができる、または(c)血清タンパク質、例えばHSAへの結合を調整するために使用することができる。
【0292】
脂質ベースのリガンドは、コンジュゲートの標的組織への結合を阻害するために、例えば、制御するために、使用することができる。例えば、より強力にHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓に標的とされる可能性がより低く、したがって、身体から除去される可能性がより低い。HSAにあまり強く結合しない脂質または脂質ベースのリガンドを使用して、コンジュゲートを腎臓に標的指向させることができる。
【0293】
特定の態様では、脂質ベースのリガンドは、HSAと結合する。好ましくは、リガンドは、コンジュゲートが好ましくは非腎臓組織に分布するために十分な親和性でHSAと結合する。しかし、HSA-リガンド結合を元に戻せないほど親和性が強くないことが好ましい。
【0294】
他の態様では、脂質ベースのリガンドが、HSAと弱く結合する、または全く結合しないことにより、コンジュゲートは、好ましくは腎臓に分布する。腎細胞を標的とするその他の部分もまた、脂質ベースのリガンドの代わりに、またはそれに加えて使用することができる。
【0295】
別の局面では、リガンドは、標的細胞、例えば増殖中の細胞によって取り込まれる、部分、例えば、ビタミンである。これらは、例えば、悪性または非悪性型の、例えば、がん細胞の望まれない細胞増殖によって特徴付けられる障害を処置するために、特に有用である。例示的なビタミンには、ビタミンA、E、およびKが含まれる。他の例示的なビタミンには、ビタミンB、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール、または肝細胞などの標的細胞によって取り込まれる他のビタミンもしくは栄養素が含まれる。HSAおよび低密度リポタンパク質(LDL)も含まれる。
【0296】
B. 細胞透過剤
別の局面では、リガンドは細胞透過剤、好ましくはヘリカル細胞透過剤である。好ましくは、この剤は両親媒性である。例示的な剤は、tatまたはアンテナペディア(antennopedia)などのペプチドである。剤がペプチドである場合、それはペプチジル模倣薬、逆転異性体、非ペプチドまたは偽ペプチド結合、およびD-アミノ酸の使用を含む、修飾を受けることができる。ヘリカル剤は、好ましくは、親油性相および疎油性相を有するアルファ-ヘリカル剤であることが好ましい。
【0297】
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であることができる。ペプチド模倣薬(本明細書においてオリゴペプチド模倣薬とも称される)は、天然ペプチドに類似する定義された三次元構造に折り畳まれる能力がある分子である。ペプチドおよびペプチド模倣薬のiRNA剤への結合は、細胞認識および吸収を高めることなどにより、iRNAの薬物動態分布に影響を及ぼすことができる。ペプチドまたはペプチド模倣薬部分は、約5~50アミノ酸長、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長であることができる。
【0298】
ペプチドまたはペプチド模倣薬は、例えば、細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば、主にTyr、TrpまたはPheからなる)であることができる。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束ペプチドまたは架橋ペプチドであることができる。別の代替態様では、ペプチド部分は、疎水性膜移行配列(MTS)を含むことができる。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(SEQ ID NO:14)を有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えば、アミノ酸配列AALLPVLLAAP(SEQ ID NO:15))もまた、標的指向部分であることができる。ペプチド部分は、細胞膜を通過して、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質を含む、大型の極性分子を運搬することができる「送達」ペプチドであることができる。例えばHIV Tatタンパク質からの配列
およびショウジョウバエ(Drosophila)アンテナペディアタンパク質からの配列
は、送達ペプチドとして機能する能力があることが分かっている。ペプチドまたはペプチド模倣薬は、ファージ-ディスプレイライブラリー、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリー(Lam et al., Nature, 354:82-84, 1991)から同定されるペプチドなどの、DNAのランダム配列によってコードされることができる。細胞を標的とするという目的のために、組み入れられたモノマーユニットを介してdsRNA剤に繋ぎ止められたペプチドまたはペプチド模倣薬の例は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)ペプチド、またはRGDミミックである。ペプチド部分は、約5アミノ酸から約40アミノ酸長に及ぶことができる。ペプチド部分は、安定性を増加させる、または配座特性を方向付けるなどのために、構造修飾を有することができる。下記の構造修飾のいずれかを利用することができる。
【0299】
本発明の組成物および方法に使用するためのRGDペプチドは、直鎖または環状であり得、修飾されて、例えば、グリコシル化またはメチル化されて、特定組織への標的指向を促進され得る。RGD含有ペプチドおよびペプチド模倣体(peptidiomimemtics)には、D-アミノ酸だけでなく合成RGDミミックが含まれ得る。RGDに加えて、インテグリンリガンドを標的とする他の部分を使用することができる。このリガンドの好ましいコンジュゲートは、PECAM-1またはVEGFを標的とする。
【0300】
「細胞透過性ペプチド」は、例えば、細菌もしくは真菌細胞などの微生物細胞、またはヒト細胞などの哺乳動物細胞などの細胞を透過する能力がある。微生物細胞透過性ペプチドは、例えば、α-ヘリカル直鎖ペプチド(例えばLL-37またはセクロピン(Ceropin)P1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α-デフェンシン、β-デフェンシンまたはバクテネシン)、または1種もしくは2種の支配的アミノ酸のみを含有するペプチド(例えば、PR-39もしくはインドリシジン)であることができる。細胞透過性ペプチドは、核局在化シグナル(NLS)も含むことができる。例えば、細胞透過性ペプチドは、HIV-1 gp41の融合ペプチドドメインおよびSV40ラージT抗原のNLSに由来する、MPGなどの二分両親媒性ペプチドであることができる(Simeoni et al., Nucl.Acids Res. 31:2717-2724, 2003)。
【0301】
C. 炭水化物コンジュゲート
本発明の組成物および方法の一部の態様では、iRNAは、炭水化物をさらに含む。炭水化物コンジュゲート型iRNAは、核酸だけでなく、本明細書に記載のインビボ治療用途に適切な組成物のインビボ送達に有利である。本明細書に使用される「炭水化物」は、酸素、窒素もしくは硫黄原子が各炭素原子に結合する、少なくとも6つの炭素原子(直鎖、分枝もしくは環状であることができる)を有する、1つもしくは複数の単糖ユニットから構成される炭水化物それ自体;または酸素、窒素もしくは硫黄原子が各炭素原子に結合する、少なくとも6つの炭素原子(直鎖、分枝もしくは環状であることができる)をそれぞれ有する、1つもしくは複数の単糖ユニットから構成される炭水化物部分をその一部として有する化合物のいずれかである化合物を指す。代表的な炭水化物には、糖類(単糖類、二糖類、三糖類、および約4、5、6、7、8、または9つの単糖ユニットを含有するオリゴ糖類)、およびデンプン、グリコーゲン、セルロース、および多糖ガムなどの多糖類が含まれる。特定の単糖類には、HBV以上(例えば、C5、C6、C7、またはC8)の糖類が含まれ;二および三糖類には、2または3つの単糖ユニット(例えば、C5、C6、C7、またはC8)を有する糖類が含まれる。
【0302】
一態様では、本発明の組成物および方法に使用するための炭水化物コンジュゲートは、単糖である。別の態様では、本発明の組成物および方法に使用するための炭水化物コンジュゲートは:
からなる群より選択される。
【0303】
一態様では、単糖は、下記のようなN-アセチルガラクトサミンである:
。
【0304】
本明細書に記載の態様に使用するための別の代表的な炭水化物コンジュゲートには、非限定的に、下記が含まれる
XまたはYの一方がオリゴヌクレオチドの場合、もう一方は水素である。
【0305】
本発明の特定の態様では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、一価のリンカーを介して本発明のiRNA剤に結合している。一部の態様では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、二価のリンカーを介して本発明のiRNA剤に結合している。本発明のさらに他の態様では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、三価のリンカーを介して本発明のiRNA剤に結合している。
【0306】
一態様では、本発明の二本鎖RNAi剤は、iRNA剤に結合した1つのGalNAcまたはGalNAc誘導体を含む。別の態様では、本発明の二本鎖RNAi剤は、複数の一価のリンカーを経由して二本鎖RNAi剤の複数のヌクレオチドに各々独立して結合した複数(例えば、2、3、4、5、または6つ)のGalNAcまたはGalNAc誘導体を含む。
【0307】
一部の態様では、例えば、本発明のiRNA剤の2つの鎖が、一方の鎖の3'末端と、それぞれの他方の鎖の5'末端との間でヌクレオチドの中断されていない鎖により繋がって、複数の不対ヌクレオチドを含むヘアピンループを形成している1つのより大きな分子の一部である場合、ヘアピンループ内のそれぞれの不対ヌクレオチドは、独立して、一価のリンカーを介して結合したGalNAcまたはGalNAc誘導体を含み得る。ヘアピンループは、二重鎖の1つの鎖における伸展したオーバーハングによって形成される場合もある。
【0308】
一部の態様では、炭水化物コンジュゲートは、非限定的に、PKモジュレーターまたは細胞透過性ペプチドなどの、上記の1つまたは複数の追加的なリガンドをさらに含む。
【0309】
本発明に使用するために適切な追加的な炭水化物コンジュゲートには、各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる、PCT公報のWO2014/179620およびWO2014/179627に記載されるものが含まれる。
【0310】
D. リンカー
一部の態様では、本明細書に記載のコンジュゲートまたはリガンドは、切断可能または切断不可能であることができる多様なリンカーを用いて、iRNAオリゴヌクレオチドと結合させることができる。
【0311】
「リンカー」または「連結基」という用語は、化合物の2つの部分を繋ぐ、例えば、化合物の2つの部分に共有結合する有機部分を意味する。リンカーは、典型的には、直接結合、または酸素もしくは硫黄などの原子、NR8、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NHなどのユニット、または、非限定的に、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル(alkylhererocyclylalkynyl)、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリール(alkynylhereroaryl)などの原子鎖を含み、ここで、1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、N(R8)、C(O)、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、または置換もしくは非置換複素環によって中断または終結されることができ、ここで、R8は水素、アシル、脂肪族または置換脂肪族である。一態様では、リンカーは、約1~24個の間の原子、2~24、3~24、4~24、5~24、6~24、6~18、7~18、8~18、7~17、8~17、6~16、7~16個、または8~16個の原子の間である。
【0312】
切断可能な連結基は、細胞の外部では十分安定であるが、標的細胞内に進入すると、切断されて、リンカーが一緒に保持する2つの部分を解放するものである。好ましい態様では、切断可能な連結基は、標的細胞内または第一の参照条件(例えば、細胞内条件を真似し、もしくは表すよう選択することができる)下で、対象の血液中、または第二の参照条件(例えば、血液または血清中に見出される条件を真似し、もしくは表すよう選択することができる)下と比べて少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または約100倍速く切断される。
【0313】
切断可能な連結基は、切断作用因子、例えば、pH、酸化還元電位、または分解性分子の存在に感受性である。一般的に、切断作用因子は、血清または血液中と比較して、細胞内部に広く存在し、またはより高いレベルもしくは活性で見出される。そのような分解剤の例には、例えば、細胞内に存在する酸化もしくは還元酵素または還元により酸化還元切断可能な連結基を分解することができるメルカプタンなどの還元剤を含む、特定の基質用に選択された、または基質特異性を有さない酸化還元剤;エステラーゼ;エンドソームまたは酸性環境を創出することができる剤、例えば、5以下のpHをもたらす剤;一般的な酸として作用することにより、酸切断可能な連結基を加水分解または分解することができる酵素、ペプチダーゼ(基質特異性であることができる)、およびホスファターゼが含まれる。
【0314】
ジスルフィド結合などの切断可能な結合基は、pHに感受性であることができる。ヒト血清のpHは7.4である一方で、平均細胞内pHは、わずかに低く、約7.1~7.3の範囲である。エンドソームは、5.5~6.0の範囲内のより酸性のpHを有し、リソソームは、ほぼ5.0の、さらにより酸性のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断される切断可能な連結基を有し、それにより、細胞内部で、または細胞の所望の区画内へリガンドからカチオン性脂質を放出する。
【0315】
リンカーは、特定の酵素により切断可能な、切断可能連結基を含むことができる。リンカーに組み入れられる切断可能な連結基の種類は、標的とされる細胞に依存することができる。例えば、肝臓を標的とするリガンドを、エステル基を含むリンカーを経由して、カチオン性脂質に連結することができる。肝細胞はエステラーゼに富んでいるため、このリンカーは、エステラーゼに富んでいない細胞型と比較して、肝細胞内でより効率的に切断される。エステラーゼに富んだ他の細胞型には、肺、腎皮質、および精巣の細胞が含まれる。
【0316】
ペプチド結合を含有するリンカーは、肝細胞および滑膜細胞などのペプチダーゼに富んだ細胞型を標的とする際に使用することができる。
【0317】
一般に、切断可能な候補連結基の適合性は、分解剤(または分解条件)が候補連結基を切断する能力を検査することによって評価することができる。血液中、または他の非標的組織との接触の際に、切断可能な候補連結基が切断に抵抗する能力も検査することが望ましい。したがって、第1の条件が、標的細胞内での切断を示すよう選択され、かつ第2の条件が、他の組織内または生体液、例えば血液もしくは血清中での切断を示すよう選択される、第1の条件と第2の条件との間で、切断に対する相対的な感受性を決定することができる。この評価は、無細胞系内、細胞内、細胞培養物中、器官内もしくは組織培養物中、または全動物内で行うことができる。無細胞条件または培養物条件内で最初の評価を行い、全動物内でのさらなる評価によって確認することが有用であることができる。好ましい態様では、有用な候補化合物は、血液または血清(または細胞外条件を真似するように選択されたインビトロ条件下)と比較して、細胞内(または細胞内条件を真似するように選択されたインビトロ条件下)で少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または約100倍速く切断される。
【0318】
i. 酸化還元切断可能な連結基
特定の態様では、切断可能な連結基は、還元または酸化の際に切断される酸化還元切断可能な連結基である。還元的に切断可能な連結基の例は、ジスルフィド連結基(-S-S-)である。切断可能な候補連結基が適切な「還元的に切断可能な連結基」であるか、または例えば、特定のiRNA部分および特定の標的指向剤との使用に適しているかを判定するために、本明細書に記載の方法に目を向けることができる。細胞内、例えば、例えば標的細胞内で観察される切断速度を真似する公知の試薬を用いたジチオスレイトール(DTT)または当技術分野における他の還元剤とのインキュベーションによって、候補を評価することができる。血液または血清条件を真似するよう選択された条件下でも、候補を評価することができる。その1つにおいて、候補化合物は、血液中で最大約10%切断される。他の態様では、有用な候補化合物は、血液中(または、細胞外条件を真似するように選択されたインビトロ条件下)と比較して、細胞内(または、細胞内条件を真似するように選択されたインビトロ条件下)で少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または約100倍速く分解される。細胞内媒体を真似するように選択された条件下での標準的な酵素動力学アッセイを用いて、候補化合物の切断速度を決定し、細胞外媒体を真似するように選択された条件と比較することができる。
【0319】
ii. リン酸エステルベースの切断可能な連結基
他の態様では、切断可能なリンカーは、リン酸エステルベースの切断可能な連結基を含む。リン酸エステルベースの切断可能な連結基は、リン酸基を分解または加水分解する剤によって切断される。細胞内でリン酸基を切断する剤の例は、細胞内のホスファターゼなどの酵素である。リン酸エステルベースの連結基の例は、-O-P(O)(ORk)-O-、-O-P(S)(ORk)-O-、-O-P(S)(SRk)-O-、-S-P(O)(ORk)-O-、-O-P(O)(ORk)-S-、-S-P(O)(ORk)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(ORk)-O-、-O-P(O)(Rk)-O-、-O-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-O-、-S-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-S-、-O-P(S)(Rk)-S-である。好ましい態様は、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-S-P(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-、および-O-P(S)(H)-S-である。好ましい態様は、-O-P(O)(OH)-O-である。これらの候補を、上記方法と類似した方法を使用して評価することができる。
【0320】
iii.酸切断可能な連結基
他の態様では、切断可能なリンカーは、酸切断可能な連結基を含む。酸切断可能な連結基は、酸性条件下で切断される連結基である。好ましい態様では、酸切断可能な連結基は、約6.5以下(例えば、約6.0、5.5、5.0以下)のpHを有する酸性環境内で、または一般的な酸として作用することができる酵素などの剤によって切断される。細胞内では、エンドソームおよびリソソームなどの特定の低pH小器官は、酸切断可能な連結基のための切断環境を提供することができる。酸切断可能な連結基の例には、非限定的に、ヒドラゾン、エステル、およびアミノ酸のエステルが含まれる。酸切断可能な基は、一般式-C=NN-、C(O)O、または-OC(O)を有することができる。好ましい態様は、エステルの酸素に付加した炭素(アルコキシ基)が、アリール基、置換アルキル基、またはジメチルペンチルもしくはt-ブチルなどの第三級アルキル基の場合である。これらの候補を、上述した方法と類似した方法を用いて評価することができる。
【0321】
iv. エステルベースの連結基
他の態様では、切断可能なリンカーは、エステルベースの切断可能な連結基を含む。エステルベースの切断可能な連結基は、細胞内のエステラーゼおよびアミラーゼなどの酵素によって切断される。エステルベースの切断可能な連結基の例には、非限定的に、アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレン基のエステルが含まれる。エステル切断可能な連結基は、一般式-C(O)O-、または-OC(O)-を有する。これらの候補を、上記方法と類似した方法を用いて評価することができる。
【0322】
v. ペプチドベースの切断基
さらに他の態様では、切断可能なリンカーは、ペプチドベースの切断可能な連結基を含む。ペプチドベースの切断可能な連結基は、細胞内のペプチダーゼおよびプロテアーゼなどの酵素によって切断される。ペプチドベースの切断可能な連結基は、アミノ酸間で形成されるペプチド結合であり、オリゴペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドを与える。ペプチドベースの切断可能な基は、アミド基(-C(O)NH-)を含まない。アミド基は、任意のアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン(alkynelene)のいずれかの間で形成されることができる。ペプチド結合は、アミノ酸間で形成される特別な種類のアミド結合であり、ペプチドおよびタンパク質を与える。ペプチドベースの切断基は、一般的に、アミノ酸間で形成されてペプチドおよびタンパク質を与えるペプチド結合(すなわち、アミド結合)に限定され、アミド官能基全体は含まない。ペプチドベースの切断可能な連結基は、一般式:
を有し、式中、RAおよびRBは、隣接する2つのアミノ酸のR基である。これらの候補は、上記方法と類似した方法を用いて評価することができる。
【0323】
一部の態様では、本発明のiRNAは、リンカーを経由して炭水化物とコンジュゲートしている。本発明の組成物および方法のリンカーとのiRNA炭水化物コンジュゲートの非限定的な例には、限定はされないが、下記が含まれる:
XまたはYの一方がオリゴヌクレオチドである場合、もう一方は水素である。
【0324】
本発明の組成物および方法の特定の態様では、リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを経由して結合した1つまたは複数の「GalNAc」(N-アセチルガラクトサミン)誘導体である。
【0325】
特定の態様では、本発明のdsRNAは、式(XXXII)~(XXXV)のうちのいずれかに示される構造の群より選択される二価または三価の分枝リンカーにコンジュゲートしている:
式中、
q2A、q2B、q3A、q3B、q4A、q4B、q5A、q5Bおよびq5Cは、出現する毎に独立して、0~20を表し、繰返しユニットは、同じまたは異なることができ;
P
2A、P
2B、P
3A、P
3B、P
4A、P
4B、P
5A、P
5B、P
5C、T
2A、T
2B、T
3A、T
3B、T
4A、T
4B、T
4A、T
5B、T
5Cは、各々出現する毎に独立して、不在である、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oであり;
Q
2A、Q
2B、Q
3A、Q
3B、Q
4A、Q
4B、Q
5A、Q
5B、Q
5Cは、出現する毎に独立して、不在である、アルキレン、置換アルキレンであり、ここで、1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R')=C(R")、C≡C、またはC(O)のうちの1つまたは複数によって中断または終結されることができ;
R
2A、R
2B、R
3A、R
3B、R
4A、R
4B、R
5A、R
5B、R
5Cは、各々出現する毎に独立して、不在である、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、-C(O)-CH(R
a)-NH-、CO、CH=N-O、
またはヘテロシクリルであり;
L
2A、L
2B、L
3A、L
3B、L
4A、L
4B、L
5A、L
5B、およびL
5Cは、リガンドを表し;すなわち、各々出現する毎に独立して、単糖(例えばGalNAc)、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖であり;R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖である。式(XXXV)のGalNAc誘導体などの三価コンジュゲートGalNAc誘導体は、標的遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤との使用に特に有用である:
式中、L
5A、L
5BおよびL
5Cは、GalNAc誘導体などの単糖を表す。
【0326】
GalNAc誘導体にコンジュゲートする適切な二価および三価の分枝リンカー基の例には、非限定的に、式II、VII、XI、X、およびXIIIとして上に列挙される構造が含まれる。
【0327】
RNAコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号、同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号、同第5,391,723号;同第5,416,203号、同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号;同第5,688,941号;同第6,294,664号;同第6,320,017号;同第6,576,752号;同第6,783,931号;同第6,900,297号;同第7,037,646号;および同第8,106,022号が含まれ、これらの各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0328】
所与の化合物の全ての位置が均一に修飾されている必要はなく、実際には、上記の修飾のうちの1つ超を、単一の化合物中にまたはiRNA内の単一のヌクレオシドにさえ組み入れることができる。本発明は、キメラ化合物であるiRNA化合物も含む。
【0329】
本発明に関連して、「キメラ」iRNA化合物または「キメラ」は、少なくとも1つのモノマーユニット、すなわち、dsRNA化合物の場合はヌクレオチドからそれぞれ構成される2つ以上の化学的に別個の領域を含有するiRNA化合物、好ましくはdsRNAi剤である。これらのiRNAは、典型的には、少なくとも1つの領域を含有し、ここで、RNAは、ヌクレアーゼ分解に対する増加した耐性、増加した細胞取込み、または標的核酸に対する増加した結合親和性をiRNAに付与するように修飾される。iRNAの追加的な領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断する能力がある酵素に関する基質として役立つことができる。例として、RNアーゼHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがって、RNアーゼHの活性化は、RNA標的の切断をもたらし、それによって、遺伝子発現のiRNA阻害の効率を大幅に高める。その結果として、キメラdsRNAが使用される場合、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比較して、より短いiRNAによって多くの場合に同等の結果を得ることができる。RNA標的の切断を、ゲル電気泳動によって、および必要に応じて、当技術分野において公知の関連する核酸ハイブリダイゼーション技法によって、日常的に検出することができる。
【0330】
場合によっては、iRNAのRNAを、非リガンド基によって修飾することができる。いくつかの非リガンド分子が、iRNAの活性、細胞分布または細胞取込みを高めるためにiRNAにコンジュゲートされており、そのようなコンジュゲーションを行うための手順は、科学文献から入手可能である。そのような非リガンド部分は、コレステロール(Kubo, T. et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 2007, 365(1):54-61; Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86:6553)などの脂質部分を含んでいたが、それを本発明の剤中に使用することができる。他の非リガンド部分は、脂質部分、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10:111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923)を含んでいた。そのようなRNAコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許が上に列挙されている。典型的なコンジュゲーションプロトコールは、配列の1つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するRNAの合成を含む。次に、適切なカップリング試薬または活性化試薬を使用して、アミノ基が、コンジュゲートされる分子と反応される。コンジュゲーション反応は、固体支持体に依然として結合されたRNAを用いるか、または溶液相中のRNAの切断に続いてかのいずれかで行うことができる。HPLCによるRNAコンジュゲートの精製により、典型的には、純粋なコンジュゲートが得られる。
【0331】
IV. 本発明のiRNAの送達
細胞、例えば、ヒト対象などの対象(例えば、PD-L1遺伝子の発現に関連する疾患、障害、または状態を有する対象などのiRNAを必要とする対象)中の細胞への本発明のiRNAの送達は、いくつかの異なる方法で実行することができる。例えば、送達は、細胞を、本発明のiRNAとインビトロまたはインビボのいずれかで接触させることによって行われ得る。インビボ送達は、iRNA、例えば、dsRNAを含む組成物を対象に投与することによって直接的にも行われ得る。あるいは、インビボ送達は、iRNAの発現をコードし、それを指令する1つまたは複数のベクターを投与することによって、間接的に行われ得る。これらの代替態様は、以下にさらに説明される。
【0332】
一般に、核酸分子を(インビトロまたはインビボで)送達する任意の方法を、本発明のiRNA用として適合させることができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Akhtar S. and Julian RL. (1992) Trends Cell. Biol. 2(5):139-144およびWO94/02595参照)。インビボ送達について、iRNA分子を送達するために考慮されるべき要因には、例えば、送達される分子の生物学的安定性、非特異的効果の予防、および標的組織における送達された分子の蓄積が含まれる。iRNAの非特異的効果は、局所投与によって、例えば、組織への直接注射もしくは植込みによって、または調製物を局所投与することによって、最小限にすることができる。処置部位への局所投与は、剤の局所濃度を最大にし、さもなければ剤によって悪影響を受ける可能性があるかまたは剤を分解する可能性がある、全身組織への剤の曝露を制限し、かつ投与されるiRNA分子のより低い総用量を可能にする。いくつかの研究は、dsRNAi剤が局所投与された場合に、遺伝子産物のノックダウンの成功を示している。例えば、カニクイザルにおける硝子体内注射によるVEGF dsRNAの眼内送達(Tolentino, MJ, et al (2004) Retina 24:132-138)およびマウスにおける網膜下注射(Reich, SJ., et al (2003) Mol. Vis. 9:210-216)は、両方とも、加齢性黄斑変性の実験モデルにおける血管新生を予防することが示された。加えて、マウスにおけるdsRNAの直接腫瘍内注射は、腫瘍体積を低減し(Pille, J., et al (2005) Mol. Ther.11:267-274)、かつ担腫瘍マウスの生存期間を延長することができる(Kim, WJ., et al (2006) Mol. Ther. 14:343-350; Li, S., et al (2007) Mol. Ther. 15:515-523)。RNA干渉は、直接注射によるCNSへの局所送達(Dorn, G., et al. (2004) Nucleic Acids 32:e49; Tan, PH., et al (2005) Gene Ther. 12:59-66; Makimura, H., et al (2002) BMC Neurosci. 3:18; Shishkina, GT., et al (2004) Neuroscience 129:521-528; Thakker, ER., et al (2004) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101:17270-17275; Akaneya,Y., et al (2005) J. Neurophysiol. 93:594-602)および鼻腔内投与による肺への局所送達(Howard, KA., et al (2006) Mol. Ther. 14:476-484; Zhang, X., et al (2004) J. Biol. Chem. 279:10677-10684; Bitko, V., et al (2005) Nat. Med. 11:50-55)にも成功を示している。疾患の処置のためにiRNAを全身投与するために、RNAを修飾する、またはその代わりに剤送達系を用いて送達することができ;両方の方法は、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼによるインビボでのdsRNAの急速な分解を防ぐように作用する。RNAまたは薬学的担体の修飾は、iRNAを標的組織へ標的指向させることを可能にし、かつ望ましくないオフターゲット効果を回避することもできる。細胞取り込みを高め、かつ分解を防ぐコレステロールなどの親油基への化学的コンジュゲーションによって、iRNA分子を修飾することができる。例えば、親油性コレステロール部分にコンジュゲートしている、ApoBに対するiRNAが、マウスに全身注射され、肝臓および空腸の両方においてapoB mRNAのノックダウンがもたらされた(Soutschek, J., et al (2004) Nature 432:173-178)。アプタマーへのiRNAのコンジュゲーションは、前立腺がんのマウスモデルにおいて腫瘍成長を阻害し、腫瘍退縮を媒介することが示されている(McNamara, JO, et al (2006) Nat. Biotechnol. 24:1005-1015)。代替的な態様では、iRNAを、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン送達系などの薬物送達系を使用して送達することができる。正電荷を帯びたカチオン送達系は、iRNA分子(負電荷を帯びている)の結合を促進し、かつ負電荷を帯びている細胞膜における相互作用も高めて、細胞によるiRNAの効率的な取込みを可能にする。カチオン性脂質、デンドリマー、またはポリマーをiRNAに結合させること、またはiRNAを包む小胞もしくはミセルを形成するように誘導することのいずれかができる(例えば、Kim SH, et al (2008) Journal of Controlled Release 129(2):107-116参照)。小胞またはミセルの形成は、全身投与された場合、iRNAの分解をさらに防ぐ。カチオン性iRNA複合体を作製および投与するための方法は、十分に当業者の能力の範囲内である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Sorensen, DR, et al (2003) J. Mol. Biol 327:761-766; Verma, UN, et al (2003) Clin. Cancer Res. 9:1291-1300; Arnold, AS et al (2007) J. Hypertens. 25:197-205参照)。iRNAの全身送達に有用な薬物送達系の一部の非限定的な例には、DOTAP(Sorensen, DR., et al (2003), 前記;Verma, UN, et al (2003), 前記)、オリゴフェクタミン(Oligofectamine)、「固体核酸脂質粒子」(Zimmermann, TS, et al (2006) Nature 441:111-114)、カルジオリピン(Chien, PY, et al (2005) Cancer Gene Ther. 12:321-328; Pal, A, et al (2005) Int J. Oncol. 26:1087-1091)、ポリエチレンイミン(Bonnet ME, et al (2008) Pharm. Res. Aug 16 Epub ahead of print; Aigner, A. (2006) J. Biomed. Biotechnol. 71659)、Arg-Gly-Asp(RGD)ペプチド(Liu, S. (2006) Mol. Pharm. 3:472-487)、およびポリアミドアミン(Tomalia, DA, et al (2007) Biochem. Soc. Trans. 35:61-67; Yoo, H., et al (1999) Pharm. Res. 16:1799-1804)が含まれる。一部の態様では、iRNAは、全身投与用のシクロデキストリンとの複合体を形成する。iRNAおよびシクロデキストリンの投与方法および薬学的組成物は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,427,605号に見出すことができる。
【0333】
A. ベクターにコードされる本発明のiRNA
PD-L1遺伝子を標的とするiRNAは、DNAまたはRNAベクターに挿入された転写ユニットから発現させることができる(例えば、Couture, A, et al., TIG. (1996), 12:5-10; Skillern, A.らの国際PCT公報WO00/22113、Conradの国際PCT公報WO00/22114、およびConradの米国特許第6,054,299号参照)。発現は、使用される特定の構築物および標的組織または細胞型に応じて、一過性(数時間から数週間程度)または持続性(数週間から数カ月以上)であることができる。これらの導入遺伝子は、線状構築物、環状プラスミド、または組込み型もしくは非組込み型ベクターであることができるウイルスベクターとして導入することができる。導入遺伝子を、染色体外プラスミドとして遺伝することを可能にするように構築することもできる(Gassmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92:1292)。
【0334】
iRNAの個別の1つまたは複数の鎖を、発現ベクター上のプロモーターから転写させることができる。2つの別々の鎖を発現させて、例えば、dsRNAを生成させようとする場合、2つの別々の発現ベクターを、(例えば、トランスフェクションまたは感染によって)標的細胞中に共導入することができる。あるいは、dsRNAの各個別の鎖を、両方とも同じ発現プラスミド上に位置するプロモーターによって転写させることができる。一態様では、dsRNAは、それがステム-ループ構造を有するように、リンカーポリヌクレオチド配列によって結合される逆方向反復ポリヌクレオチドとして発現される。
【0335】
iRNA発現ベクターは、一般的に、DNAプラスミドまたはウイルスベクターである。真核細胞と適合性の発現ベクター、好ましくは、脊椎動物細胞と適合性の発現ベクターを使用して、本明細書に記載のiRNAの発現のための組換え構築物を産生することができる。真核細胞の発現ベクターは、当技術分野において周知であり、いくつかの商業的供給源から入手可能である。典型的には、所望の核酸セグメントを挿入するために好都合な制限部位を含有する、そのようなベクターが提供される。iRNA発現ベクターの送達は、静脈内または筋肉内投与によるか、患者から外植された標的細胞に投与した後に患者に再導入することによるか、または所望の標的細胞への導入を可能にする任意の他の手段によるような全身的であることができる。
【0336】
本明細書に記載の方法および組成物と共に利用することができるウイルスベクター系には、非限定的に、(a)アデノウイルスベクター;(b)非限定的にレンチウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルスなどを含む、レトロウイルスベクター;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d)単純ヘルペスウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイルスベクター;(g)パピローマウイルスベクター;(h)ピコルナウイルスベクター;(i)オルソポックス、例えば、ワクシニアウイルスベクターまたはアビポックス、例えばカナリア痘または鶏痘などのポックスウイルスベクター;および(j)ヘルパー依存性またはガットレス(gutless)アデノウイルスが含まれる。複製欠損ウイルスも有利であることができる。異なるベクターが、細胞のゲノムに組み入れられるようになる、またはそうならない。構築物は、所望であれば、トランスフェクションのためのウイルス配列を含むことができる。あるいは、構築物を、エピソーム複製が可能なベクター、例えばEPVおよびEBVベクターに組み入れることができる。iRNAの組換え発現のための構築物は、一般的に、標的細胞内でのiRNAの発現を確実にするために、調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサーなどを必要とする。ベクターおよび構築物に関する考慮すべき他の局面は、当技術分野において公知である。
【0337】
V. 本発明の薬学的組成物
本発明は、本発明のiRNAを含む薬学的組成物および製剤も含む。一態様では、本明細書において、本明細書に記載のiRNAと、薬学的に許容される担体とを含有する薬学的組成物が提供される。iRNAを含有する薬学的組成物は、PD-L1遺伝子の発現または活性に関連する疾患または障害を処置するために有用である。そのような薬学的組成物は、送達様式に基づいて製剤化される。一例は、非経口送達を介した、例えば、皮下(SC)または静脈内(IV)送達による全身投与用に製剤化されている組成物である。本発明の薬学的組成物は、PD-L1遺伝子の発現を阻害するために十分な投薬量で投与され得る。
【0338】
本発明の薬学的組成物は、PD-L1遺伝子の発現を阻害するために十分な投薬量で投与され得る。一般に、本発明のiRNAの適切な用量は、レシピエントの体重1キログラムあたり1日に約0.001~約200.0ミリグラムの範囲内であり、一般的に、1日に約1~50mg/キログラム体重の範囲内である。典型的には、本発明のiRNAの適切な用量は、約0.1mg/kg~約5.0mg/kg、例えば、約0.3mg/kgと約3.0mg/kgとの範囲内である。繰返し投与レジメンは、治療量のiRNAを、1日おきまたは1年に1回などの定期ベースで投与することを含み得る。特定の態様では、iRNAは、1ヶ月に約1回から四半期に約1回(すなわち、3ヶ月毎に約1回)投与される。
【0339】
最初の処置レジメンの後に、処置をより低い頻度で施すことができる。例えば、毎週または隔週3ヶ月間投与した後、投与を1ヶ月に1回、6ヶ月間、もしくは1年;またはより長く繰り返すことができる。
【0340】
薬学的組成物を、1日1回投与することができ、またはiRNAを、1日を通して適切な間隔で、2、3、もしくはそれより多くの部分用量として投与する、またはさらには、連続注入もしくは制御放出製剤による送達を用いて投与することができる。その場合、各部分用量中に含有されるiRNAは、合計1日投薬量を達成するように、対応してより少なくなければならない。例えば、数日間の期間にわたりiRNAの徐放を提供する従来の徐放製剤を使用して、投薬ユニットを数日間にわたる送達用に配合することもできる。徐放製剤は当技術分野にて周知であり、本発明の剤と共に使用することもできるように、特定部位での剤の送達に特に有用である。この態様では、投薬ユニットは、1日用量の対応する倍数を含有する。
【0341】
他の態様では、薬学的組成物の単回用量は、長期持続性であることができ、その結果、その後の用量は、3、4、もしくは5日以下の間隔、または1、2、3、もしくは4週間以下の間隔で投与される。本発明の一部の態様では、本発明の薬学的組成物の単回用量は、週に1回投与される。本発明の他の態様では、本発明の薬学的組成物の単回用量は、2ヶ月に1回(bi-monthly)投与される。特定の態様では、iRNAは、1ヶ月に約1回から四半期に約1回(すなわち、3ヶ月毎に約1回)投与される。
【0342】
当業者は、非限定的に、疾患または疾患の重症度、以前の処置、対象の全身の健康状態または年齢、ならびに存在する他の疾患を含む、ある特定の要因が対象を効果的に処置するために必要な投薬量およびタイミングに影響する可能性があることを認識している。さらに、治療有効量の組成物を用いた対象の処置は、単一の処置または一連の処置を含むことができる。本発明により包含される個別のiRNAに関する有効な投与量、およびインビボ半減期の推定は、従来の方法論を用いて、または当技術分野において公知の適切な動物モデルを使用するインビボ検査に基づいて行うことができる。
【0343】
例えば、HBVのチンパンジー、ウッドチャック、およびトランスジェニックマウスモデルを含む、B型肝炎感染の動物モデルが、当技術分野において公知である(Wieland, 2015. Cold Spring Harb. Perspect. Med., 5:a021469, 2015; Tennant and Gerin, 2001. ILAR Journal, 42:89-102;およびMoriyama et al., 1990. Science, 248:361-364)。チンパンジーモデルは、D型肝炎感染のモデルとしても使用することができる。化学的に誘導された腫瘍および異種移植腫瘍を含む、多数のがんモデルが当技術分野において公知である。
【0344】
本発明の薬学的組成物を、局所または全身処置が望ましいかどうか、および処置される領域に応じて、いくつかの方法で投与することができる。投与は、局所(例えば、経皮パッチによる)、例えば、噴霧器によるものを含む、粉末もしくはエアロゾルの吸入もしくは吹入による肺;気管内、鼻腔内、表皮および経皮、経口または非経口投与であることができる。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内の注射または注入;例えば、植込みデバイスを介した皮下;または例えば、実質内、髄腔内もしくは脳室内投与による頭蓋内が含まれる。
【0345】
iRNAを、特定の組織(例えば、肝細胞)を標的とする方法で送達することができる。
【0346】
局所または経皮投与用の薬学的組成物および製剤には、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤および散剤が含まれることができる。従来の薬学的担体、水性、粉末または油性基剤、粘稠化剤などが必要であるまたは望ましい可能性がある。コーティングされたコンドーム、手袋なども有用であることができる。適切な局所製剤には、本発明で取り上げられるiRNAが、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤および界面活性剤などの局所送達剤と混合されたものが含まれる。適切な脂質およびリポソームは、中性(例えば、ジオレイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が含まれる。本発明で取り上げられるiRNAは、リポソーム内に封入されることができ、またはリポソームと、特にカチオン性リポソームと複合体を形成することができる。あるいは、iRNAは、脂質と、特にカチオン性脂質と複合体を形成することができる。適切な脂肪酸およびエステルには、非限定的に、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1-20アルキルエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピルIPM)、モノグリセリド、ジグリセリドまたはこれらの薬学的に許容される塩が含まれる)。局所製剤は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,747,014号に詳細に記載されている。
【0347】
A. 膜状分子集合体を含むiRNA製剤
本発明の組成物および方法に使用するためのiRNAを、膜状分子集合体、例えば、リポソームまたはミセル中での送達用に製剤化することができる。本明細書において使用される「リポソーム」という用語は、少なくとも1つの二重層、例えば、1つの二重層または複数の二重層に配置された両親媒性脂質から構成される小胞を指す。リポソームには、親油性材料および水性内部から形成される膜を有する単層および多重層小胞が含まれる。水性部分は、iRNAを含有する。親油性材料は、水性外部から水性内部を分離し、典型的には、iRNA組成物を含まないが、一部の例では含む場合がある。リポソームは、作用部位への活性成分の輸送および送達に有用である。リポソーム膜は生体膜と構造が類似しているため、リポソームが組織に適用されると、リポソームの二重層が、細胞膜の二重層と融合する。リポソームおよび細胞の合併が進むにつれて、iRNAを含む内部の水性内容物が、細胞内に送達され、そこで、iRNAは、標的RNAに特異的に結合することができ、RNA干渉を媒介することができる。場合によっては、リポソームは、例えば、iRNAを特定の細胞型に方向付けるように、特異的に標的指向される。
【0348】
iRNA剤を含有するリポソームを、様々な方法によって調製することができる。一例において、リポソームの脂質構成成分は、脂質構成成分と一緒にミセルが形成されるように、洗剤中に溶解される。例えば、脂質構成成分は、両親媒性のカチオン性脂質または脂質コンジュゲートであることができる。洗剤は、高い臨界ミセル濃度を有することができ、非イオン性であり得る。例示的な洗剤には、コール酸塩、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコール酸塩、およびラウロイルサルコシンが含まれる。次に、iRNA剤調製物は、脂質構成成分を含むミセルに添加される。脂質におけるカチオン性基は、iRNA剤と相互作用し、iRNA剤の周りで凝縮して、リポソームを形成する。凝縮後、洗剤は、例えば透析によって除去されて、iRNA剤のリポソーム調製物が得られる。
【0349】
必要に応じて、凝縮を補助する担体化合物を、例えば、制御添加によって、凝縮反応中に添加することができる。例えば、担体化合物は、核酸以外のポリマー(例えば、スペルミンまたはスペルミジン)であることができる。凝縮に好都合なようにpHも調整することができる。
【0350】
ポリヌクレオチド/カチオン性脂質複合体を送達ビヒクルの構造構成成分として組み入れている安定なポリヌクレオチド送達ビヒクルを製造するための方法が、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるWO96/37194にさらに記載されている。リポソームの形成は、Felgner, P. L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 8:7413-7417, 1987;米国特許第4,897,355号;米国特許第5,171,678号; Bangham, et al. M. Mol. Biol. 23:238, 1965; Olson, et al. Biochim. Biophys. Acta 557:9, 1979; Szoka, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 75: 4194, 1978; Mayhew, et al. Biochim. Biophys. Acta 775:169, 1984; Kim, et al. Biochim. Biophys. Acta 728:339, 1983;およびFukunaga, et al. Endocrinol. 115:757, 1984に記載される例示的な方法の1つまたは複数の局面も含むことができる。送達ビヒクルとして使用するために適切なサイズの脂質集合体を調製するための一般に使用されている技法には、超音波処理および凍結融解に加えた押出しが含まれる(例えば、Mayer, et al. Biochim. Biophys. Acta 858:161, 1986を参照されたい)。一貫して小さく(50~200nm)、比較的均一な集合体が望ましい場合、顕微溶液化を使用することができる(Mayhew, et al. Biochim. Biophys. Acta 775:169, 1984)。これらの方法は、iRNA剤調製物をリポソーム内にパッケージングするために容易に適合される。
【0351】
リポソームは、2つの大きなクラスに分かれる。カチオン性リポソームは、負電荷を帯びた核酸分子と相互作用して安定な複合体を形成する正電荷を帯びたリポソームである。正電荷を帯びた核酸/リポソーム複合体は負電荷を帯びた細胞表面に結合し、エンドソーム内にインターナリゼーションする。エンドソーム内の酸性pHのせいで、リポソームは破裂し、その内容物を細胞質内に放出する(Wang et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987, 147, 980-985)。
【0352】
pH感受性で、負電荷を帯びたリポソームは、核酸と複合体を形成するのではなく、核酸を内封する。核酸および脂質の両方は同様に帯電するため、複合体形成ではなく反発が起こる。それにもかかわらず、一部の核酸はこれらのリポソームの水性内部に内封される。pH感受性リポソームは、チミジンキナーゼ遺伝子をコードする核酸を培養物中の細胞単層に送達するために使用されている。標的細胞内で外来遺伝子の発現が検出された(Zhou et al., Journal of Controlled Release, 1992, 19, 269-274)。
【0353】
リポソーム組成物の主要な一種類には、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質が含まれる。例えば、中性リポソーム組成物を、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成させることができる。アニオン性リポソーム組成物は、一般的に、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成され、一方で、アニオン性膜融合リポソームは、主としてジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別の種類のリポソーム組成物は、ホスファチジルコリン(PC)から、例えば、ダイズPC、および卵PCなどから形成される。別の種類は、リン脂質、ホスファチジルコリン、およびコレステロールの2種またはそれより多くの混合物から形成される。
【0354】
リポソームを細胞内にインビトロおよびインビボで導入するための他の方法の例には、米国特許第5,283,185号および同第5,171,678号;WO94/00569;WO93/24640;WO91/16024;Felgner, J. Biol. Chem. 269:2550, 1994; Nabel, Proc. Natl. Acad. Sci. 90:11307, 1993; Nabel, Human Gene Ther. 3:649, 1992; Gershon, Biochem. 32:7143, 1993;およびStrauss EMBO J. 11:417, 1992が含まれる。
【0355】
非イオン性リポソーム系、特に非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系も試験されて、皮膚への薬物の送達におけるそれらの有用性が決定されている。Novasome(商標)I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome(商標)II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を使用して、シクロスポリン-Aがマウス皮膚の真皮に送達された。結果は、そのような非イオン性リポソーム系が皮膚の異なる層内へのシクロスポリンAの蓄積を容易にするのに有効であったことを示した(Hu et al. S.T.P.Pharma. Sci., 1994, 4(6) 466)。
【0356】
リポソームには、「立体的に安定化された」リポソームも含まれ、本明細書で使用されるこの用語は、1種または複数種の専門化された脂質を含むリポソームを指し、それらの脂質は、リポソームに組み入れられると、そのような専門化された脂質を欠いたリポソームと比較して増大した循環寿命をもたらす。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が、(A)モノシアロガングリオシドGM1などの1種もしくは複数種の糖脂質を含むもの、または(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1種もしくは複数種の親水性ポリマーにより誘導体化されているものである。任意の特定の理論に縛られることを望むものではないが、当技術分野において、少なくとも、ガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG-誘導体化脂質を含有する立体的に安定化されたリポソームに関して、これらの立体的に安定化されたリポソームの増大した循環半減期は、細網内皮系(RES)の細胞内への取込みの低減に由来すると考えられている(Allen et al., FEBS Letters, 1987, 223, 42; Wu et al., Cancer Research, 1993, 53, 3765)。
【0357】
1種または複数種の糖脂質を含む多様なリポソームが、当技術分野において公知である。Papahadjopoulosら(Ann. N.Y. Acad. Sci., 1987, 507, 64)は、モノシアロガングリオシドGM1、硫酸ガラクトセレブロシドおよびホスファチジルイノシトールがリポソームの血中半減期を改善するできることを報告した。これらの知見は、Gabizonら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1988, 85, 6949)によって詳述された。両方ともAllenらに付与された米国特許第4,837,028号および国際公開公報第88/04924号は、(1)スフィンゴミエリンおよび(2)ガングリオシドGM1または硫酸ガラクトセレブロシドエステルを含む、リポソームを開示している。米国特許第5,543,152号(Webbら)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示している。1,2-sn-ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、国際公開第97/13499号(Limら)に開示されている。
【0358】
一部の態様では、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームには、細胞膜に融合することができるという利点がある。非カチオン性リポソームは、同じくらい効率的に形質膜と融合することができないものの、インビボでマクロファージによって取り込まれ、iRNA剤をマクロファージに送達するために使用することができる。
【0359】
リポソームのさらなる利点には以下が含まれる:天然リン脂質から得られるリポソームは、生体適合性があり、生分解性であり;リポソームは、広範囲の水溶性および脂溶性薬物を組み入れることができ;リポソームは、その内部区画中に封入されたiRNAを代謝および分解から保護することができる(Rosoff, in "Pharmaceutical Dosage Forms," Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, volume 1, p. 245)。リポソーム製剤の調製における重要な考慮事項は、脂質表面電荷、小胞サイズおよびリポソームの水性容積である。
【0360】
正電荷を帯びた合成カチオン性脂質である、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を使用して、核酸と自然に相互作用して脂質-核酸複合体を形成する、小さなリポソームを形成させることができ、その複合体は、組織培養細胞の細胞膜の負電荷を帯びた脂質と融合する能力があり、iRNA剤の送達をもたらす(例えば、DOTMAの説明およびDNAとのその使用については、Felgner, P. L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 8:7413-7417, 1987および米国特許第4,897,355号を参照されたい)。
【0361】
DOTMA類似体である、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)をリン脂質と組み合わせて使用して、DNA複合体化小胞を形成させることができる。Lipofectin(商標)(Bethesda Research Laboratories, Gaithersburg, Md.)は、生きた組織培養細胞中に高アニオン性の核酸を送達するための効果的な剤であり、その剤は、負電荷を帯びたポリヌクレオチドと自然に相互作用して複合体を形成する、正荷電を帯びたDOTMAリポソームを含む。十分に正電荷を帯びたリポソームが使用される場合、生じる複合体の正味電荷も正である。この方法で調製された正荷電を帯びた複合体は、負荷電を帯びた細胞表面に自然に付着し、形質膜と融合し、機能性核酸を、例えば、組織培養細胞中に効率的に送達する。別の市販のカチオン性脂質である1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3,3-(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim, Indianapolis, Indiana)は、オレオイル部分がエーテル結合ではなく、エステルによって連結されている点でDOTMAとは異なる。
【0362】
他の報告されているカチオン性脂質化合物には、2種類の脂質のうちの一方にコンジュゲートしているカルボキシスペルミンを含む、多様な部分にコンジュゲートしているものが含まれ、例えば、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(Transfectam(商標), Promega, Madison, Wisconsin)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン5-カルボキシスペルミル-アミド(「DPPES」)などの化合物が含まれる(例えば、米国特許第5,171,678号を参照されたい)。
【0363】
別のカチオン性脂質コンジュゲートは、DOPEと組み合わせてリポソームに製剤化されたコレステロール(「DC-Chol」)による脂質の誘導体化を含む(Gao, X. and Huang, L., Biochim. Biophys. Res. Commun. 179:280, 1991を参照されたい)。ポリリシンをDOPEにコンジュゲートすることによって作製されるリポポリリシンは、血清の存在下でトランスフェクションに有効であると報告されている(Zhou, X. et al., Biochim. Biophys. Acta 1065:8, 1991)。ある特定の細胞株では、コンジュゲートしているカチオン性脂質を含有するこれらのリポソームは、DOTMA含有組成物よりも低い毒性を示し、より効率的なトランスフェクションを提供すると言われている。他の市販のカチオン性脂質製品には、DMRIEおよびDMRIE-HP(Vical, La Jolla, California)ならびにリポフェクタミン(DOSPA)(Life Technology, Inc., Gaithersburg, Maryland)が含まれる。オリゴヌクレオチドの送達に適切な他のカチオン性脂質が、WO98/39359およびWO96/37194に記載されている。
【0364】
リポソーム製剤は、局所投与に特に適しており、リポソームは、他の製剤よりもいくつかの利点を示す。そのような利点には、投与される薬物の高い全身吸収に関連する副作用の低減、所望の標的における投与された薬物の蓄積の増加、およびiRNA剤を皮膚内に投与できることが含まれる。一部の実施では、iRNA剤を表皮細胞に送達するために、また、真皮組織、例えば、皮膚へのiRNA剤の透過を高めるために、リポソームが使用される。例えば、リポソームを局所的に適用することができる。リポソームとして製剤化された薬物の皮膚への局所送達が立証されている(例えば、Weiner et al., Journal of Drug Targeting, 1992, vol. 2,405-410およびdu Plessis et al., Antiviral Research, 18, 1992, 259-265; Mannino, R. J. and Fould-Fogerite, S., Biotechniques 6:682-690, 1988; Itani, T. et al. Gene 56:267-276. 1987; Nicolau, C. et al. Meth. Enz. 149:157-176, 1987; Straubinger, R. M. and Papahadjopoulos, D. Meth. Enz. 101:512-527, 1983; Wang, C. Y. and Huang, L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7851-7855, 1987を参照されたい)。
【0365】
非イオン性リポソーム系、特に、非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系も、皮膚への薬物の送達におけるそれらの有用性を決定するために調査されている。Novasome(商標)I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome(商標)II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤が、マウス皮膚の真皮に薬物を送達するために使用された。iRNA剤を有するそのような製剤は、皮膚障害を処置するために有用である。
【0366】
iRNAを含むリポソームを、高度に変形可能にすることができる。そのような変形能は、リポソームが、リポソームの平均半径より小さい孔を透過するのを可能にできる。例えば、トランスファーソーム(transfersome)は、変形可能なリポソームの一種である。トランスファーソームは、表面縁活性化因子、通常、界面活性剤を、標準的なリポソーム組成物に添加することによって作製することができる。皮膚のケラチノサイトにiRNAを送達するために、iRNAを含むトランスファーソームを、例えば、感染によって皮下に送達することができる。無傷の哺乳動物皮膚を通り抜けるために、脂質小胞は、適切な経皮勾配の影響下で、それぞれ50nm未満の直径を有する一連の微細孔を通過しなければならない。加えて、脂質特性のため、これらのトランスファーソームは、自己最適化性(例えば、皮膚の、孔の形状に適合)、自己修復性であることができ、かつ頻繁に断片化せずにそれらの標的に到達することができ、かつ多くの場合に自己負荷性(self-loading)である。
【0367】
本発明に適した他の製剤が、WO/2008/042973に記載されている。
【0368】
トランスファーソームは、リポソームのさらに別の種類であり、薬物送達ビヒクルの魅力的な候補である、高度に変形可能な脂質凝集体である。トランスファーソームは、脂質小滴と記載することができ、この脂質小滴は、高く変形可能であるため、小滴よりも小さい孔内を容易に透過することができる。トランスファーソームは、それらが使用される環境に適合性であり、例えば、自己最適化性(皮膚の、孔の形状に適合)であり、自己修復性であり、多くの場合に、断片化せずにそれらの標的に到達し、多くの場合に自己負荷性である。トランスファーソームを作製するために、表面縁活性化因子、通常、界面活性剤を、標準的なリポソーム組成物に添加することが可能である。トランスファーソームは、皮膚に血清アルブミンを送達するのに使用されている。トランスファーソームが媒介する血清アルブミンの送達は、血清アルブミンを含有する溶液の皮下注射と同様に効果的であることが示されている。
【0369】
界面活性剤は、エマルション(マイクロエマルションを含む)およびリポソームなどの製剤に広い適用を見出している。天然および合成の両方の多数の異なる種類の界面活性剤の特性を分類および順位付けする最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)の使用によるものである。親水性基(「頭部」としても公知)の性質は、製剤中に使用される異なる界面活性剤を類別するための最も有用な手段を提供する(Rieger, in "Pharmaceutical Dosage Forms", Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p.285)。
【0370】
界面活性剤分子がイオン化されていない場合、この界面活性剤は非イオン性界面活性剤に分類される。非イオン性界面活性剤は、医薬品および化粧品に広い適用を見出し、広範囲のpH値にわたり使用可能である。一般に、それらのHLB値は、その構造に応じて2から約18の範囲である。非イオン性界面活性剤には、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが含まれる。非イオン性アルカノールアミド、ならびに脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、およびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーなどのエーテルも、このクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤のクラスの最も一般的なメンバーである。
【0371】
界面活性剤分子が水中に溶解または分散した際に負電荷を有する場合、この界面活性剤はアニオン性に分類される。アニオン性界面活性剤には、セッケンなどのカルボキシレート、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、アルキルスルフェートおよびエトキシル化アルキルスルフェートなどの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホネートなどのスルホネート、アシルイセチオネート、アシルタウレートおよびスルホスクシネート、ならびにホスフェートが含まれる。アニオン性界面活性剤クラスの最も重要なメンバーは、アルキルスルフェートおよびセッケンである。
【0372】
界面活性剤分子が水中に溶解または分散した際に正電荷を有する場合、この界面活性剤はカチオン性に分類される。カチオン性界面活性剤には、第四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが含まれる。第四級アンモニウム塩は、最も使用されているこのクラスのメンバーである。
【0373】
界面活性剤分子が正または負電荷のいずれかを有する能力を有する場合、この界面活性剤は両性に分類される。両性界面活性剤には、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタインおよびホスファチドが含まれる。
【0374】
薬物製品、製剤およびエマルション中での界面活性剤の使用は、総説されている(Rieger, in "Pharmaceutical Dosage Forms", Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p. 285)。
【0375】
本発明の方法に使用するためのiRNAを、ミセル製剤としても提供することができる。「ミセル」は、本明細書において、分子の全ての疎水性部分が内側を向いて、親水性部分を周囲の水相と接触したままにするように両親媒性分子が球形構造に配置される、特定の種類の分子集合体として定義される。環境が疎水性である場合、逆の配置が存在する。
【0376】
経皮的な膜による送達に適切な混合ミセル製剤は、iRNAの水溶液、アルカリ金属のC8~C22アルキル硫酸塩、およびミセル形成化合物を混合することによって調製され得る。例示的なミセル形成化合物には、レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の薬学的に許容される塩、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ボリジ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシンおよびその薬学的に許容され得る塩、グリセリン、ポリグリセリン、リシン、ポリリシン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテルおよびその類似体、ポリドカノールアルキルエーテルおよびその類似体、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの混合物が含まれる。ミセル形成化合物は、アルカリ金属アルキル硫酸塩の添加と同時にまたはその後に添加され得る。混合ミセルは、成分の実質的に任意の種類の混合で形成するが、より小さいサイズのミセルを提供するためには強い混合で形成される。
【0377】
一方法では、RNAiおよび少なくともアルカリ金属アルキル硫酸塩を含有する第1のミセル組成物が調製される。次に、第1のミセル組成物は、少なくとも3種のミセル形成化合物と混合されて、混合ミセル組成物が形成される。別の方法では、ミセル組成物は、RNAi、アルカリ金属アルキル硫酸塩および少なくとも1種のミセル形成化合物を混合し、続いて、強く混合しながら残りのミセル形成化合物を添加することによって調製される。
【0378】
フェノールまたはm-クレゾールは、混合ミセル組成物に添加されて、製剤を安定化し、細菌の増殖から保護し得る。あるいは、フェノールまたはm-クレゾールは、ミセル形成成分と共に加えられる場合がある。グリセリンなどの等張剤も、混合ミセル組成物の形成後に添加され得る。
【0379】
ミセル製剤のスプレーとしての送達のために、製剤は、エアロゾルディスペンサー中に入れることができ、ディスペンサーに噴射剤が充填される。圧力下にある噴射剤は、ディスペンサー中で液状である。成分の比率は、水相および噴射剤相が1つになるように、すなわち、1つの相が存在するように調整される。2つの相が存在する場合、例えば、定量弁を経由して内容物の一部を供給する前にディスペンサーを振盪する必要がある。薬品の供給用量は、定量弁から微細なスプレー状で噴射される。
【0380】
噴射剤には、水素含有クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、ジメチルエーテルおよびジエチルエーテルが含まれ得る。特定の態様では、HFA 134a(1,1,1,2テトラフルオロエタン)が使用され得る。
【0381】
必須成分の特定の濃度を、比較的単純な実験によって決定することができる。口腔を経由した吸収について、注射による、または消化管を経由した投与のための投薬量を、例えば、少なくとも2倍または3倍に増加させることが望ましいことが多い。
【0382】
B. 脂質粒子
本発明のiRNA、すなわちdsRNAi剤は、脂質製剤中、例えばLNP中、または他の核酸-脂質粒子に完全に封入され得る。
【0383】
本明細書に使用される「LNP」という用語は、安定な核酸-脂質粒子を指す。LNPは、典型的には、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および粒子の凝集を防ぐ脂質(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)を含有する。LNPは、静脈内(i.v.)注射後に延長された循環寿命を示し、遠位部位(例えば、投与部位から物理的に分離された部位)に蓄積するため、全身適用に極めて有用である。LNPは「pSPLP」を含み、pSPLPは、PCT公報WO00/03683に示されているように、封入された凝縮剤-核酸複合体を含む。本発明の粒子は、典型的には、約50nm~約150nm、より典型的には約60nm~約130nm、より典型的には約70nm~約110nm、最も典型的には約70nm~約90nmの平均直径を有し、実質的に無毒である。加えて、核酸は、本発明の核酸-脂質粒子中に存在する場合、水性溶液中で、ヌクレアーゼによる分解に耐性である。核酸-脂質粒子、およびそれらの調製方法は、例えば、米国特許第5,976,567号;同第5,981,501号;同第6,534,484号;同第6,586,410号;同第6,815,432号;米国特許出願公開第2010/0324120号およびPCT公報WO96/40964に開示されている。
【0384】
一態様では、脂質対薬物の比(質量/質量比)(例えば、脂質対dsRNAの比)は、約1:1~約50:1、約1:1~約25:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、または約6:1~約9:1の範囲内である。上記に引用された範囲の中間の範囲も、本発明の一部であることが意図される。
【0385】
カチオン性脂質は、例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(I-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N-(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイル(Dilinoley)オキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、もしくは3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(propanedio)(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)もしくはその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1'-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(Tech G1)、またはこれらの混合物であることができる。カチオン性脂質は、粒子中に存在する全脂質の約20mol%~約50mol%または約40mol%を構成することができる。
【0386】
一部の態様では、化合物2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソランを、脂質-siRNAナノ粒子を調製するために使用することができる。
【0387】
一部の態様では、脂質-siRNA粒子は、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソランを40%:DSPCを10%:コレステロールを40%:PEG-C-DOMG(モルパーセント)を10%含み、粒径63.0±20nmおよびsiRNA/脂質比0.027である。
【0388】
イオン化可能/非カチオン性脂質は、非限定的に、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジル(phosphatidy)エタノールアミン(SOPE)、コレステロール、またはその混合物を含むアニオン性脂質または中性脂質であることができる。非カチオン性脂質は、コレステロールが含まれる場合、粒子中に存在する全脂質の約5mol%~約90mol%、約10mol%、または約58mol%であることができる。
【0389】
粒子の凝集を阻害するコンジュゲート型脂質は、例えば、非限定的にPEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、またはその混合物を含む、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質であることができる。PEG-DAAコンジュゲートは、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル(Ci2)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(Ci4)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(Ci6)、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C]8)であることができる。粒子の凝集を防ぐコンジュゲート型脂質は、粒子中に存在する総脂質の0mol%~約20mol%または約2mol%であることができる。
【0390】
一部の態様では、核酸-脂質粒子は、粒子中に存在する総脂質の、例えば、約10mol%~約60mol%または約48mol%のコレステロールをさらに含む。
【0391】
一態様では、リピドイド(lipidoid)ND98・4HCl(MW 1487)(参照により本明細書に組み入れられるUS20090023673参照)、コレステロール(Sigma-Aldrich)、およびPEG-セラミドC16(Avanti Polar Lipids)を、脂質-dsRNAナノ粒子(すなわち、LNP01粒子)を調製するために使用することができる。エタノール中のそれぞれの原液を、以下のように調製することができる:ND98、133mg/ml;コレステロール、25mg/ml、PEG-セラミドC16、100mg/ml。次に、ND98、コレステロール、およびPEG-セラミドC16原液を、例えば、42:48:10のモル比で混ぜることができる。最終的なエタノール濃度が約35~45%であり、かつ最終的な酢酸ナトリウム濃度が約100~300mMであるように、混ざった脂質溶液を水性dsRNA(例えば酢酸ナトリウム(pH5)中)と混合することができる。脂質-dsRNAナノ粒子は、典型的には、混合時に自然に形成する。所望の粒子径分布に応じて、例えば、Lipex Extruder(Northern Lipids, Inc)などのサーモバレル押出機(thermobarrel extruder)を使用して、結果として生じるナノ粒子混合物にポリカーボネート膜(例えば、100nmのカットオフ)を通過させて押し出すことができる。場合によっては、押出し工程を省略することができる。エタノール除去および同時の緩衝液交換を、例えば、透析または接線流ろ過によって達成することができる。緩衝液を、例えば、約pH7、例えば、約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、または約pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と交換することができる。
【0392】
LNP01製剤は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2008/042973号に記載されている。
【0393】
追加的な例示的脂質-dsRNA製剤が、表1に記載されている。
【0394】
(表1)例示的な脂質製剤
DSPC:ジステアロイルホスファチジルコリン
DPPC:ジパルミトイルホスファチジルコリン
PEG-DMG:PEG-ジジミリストイル(didimyristoyl)グリセロール(C14-PEG、またはPEG-C14)(平均分子量2000のPEG)
PEG-DSG:PEG-ジスチリルグリセロール(C18-PEG、またはPEG-C18)(平均分子量2000のPEG)
PEG-cDMA:PEG-カルバモイル-1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン(平均分子量2000のPEG)
【0395】
SNALP(1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミンプロパン(DLinDMA))を含む製剤は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2009/127060号に記載されている。
【0396】
XTCを含む製剤は、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるPCT公報WO2010/088537に記載されている。
【0397】
MC3を含む製剤は、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2010年6月10日に出願された米国特許出願公開第2010/0324120号に記載されている。
【0398】
ALNY-100を含む製剤は、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるPCT公報WO2010/054406に記載されている。
【0399】
C12-200を含む製剤は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるPCT公報WO2010/129709に記載されている。
【0400】
i. イオン化可能/カチオン性脂質の合成
本発明の核酸-脂質粒子に使用される、例えば、カチオン性脂質などの化合物のいずれを、公知の有機合成技法によって調製することができる。
【0401】
標準的な方法または押出しなしの方法のいずれかによって調製された製剤を、同様の方法で特徴付けることができる。例えば製剤は、典型的には、目視検査によって特徴付けられる。製剤は、凝集体または沈殿物を含まない白みがかった半透明溶液であるべきである。脂質-ナノ粒子の粒子径および粒子径分布は、例えば、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern, USA)を使用した光散乱によって測定することができる。粒子は、40~100nmなどの約20~300nm径であるべきである。粒子径分布は、単峰形であるべきである。製剤中の総dsRNA濃度、および内封された割合は、色素排除アッセイを用いて推定される。製剤化されたdsRNAの試料を、製剤破壊性の界面活性剤、例えば0.5%トリトン(登録商標)-X100の存在または不在下で、Ribogreen(Molecular Probes)などのRNA結合色素と共にインキュベートすることができる。製剤中の総dsRNAは、標準曲線と対比させた界面活性剤含有試料からのシグナルによって決定することができる。内封された割合は、総dsRNA含量から(界面活性剤の不在下でのシグナルにより測定した)「遊離」dsRNA含量を差し引くことによって決定される。内封されたdsRNAのパーセントは、典型的には>85%である。SNALP製剤について、粒子径は、少なくとも30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、または120nmである。適切な範囲は、典型的には、50nm~110nm、60nm~100nm、または80nm~90nmである。
【0402】
経口投与用の組成物および製剤には、散剤または顆粒、微粒子、ナノ粒子、懸濁剤、または水もしくは非水性媒体中の液剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、サシェ、錠剤またはミニ錠剤が含まれる。粘稠化剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい可能性がある。一部の態様では、経口製剤は、本発明に取り上げられるdsRNAが、1種または複数種の透過促進剤界面活性剤およびキレート剤と共に投与されるものである。適切な界面活性剤には、脂肪酸またはそのエステルもしくは塩、胆汁酸またはその塩が含まれる。適切な胆汁酸/塩には、ケノデオキシコール酸(CDCA)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウムおよびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが含まれる。適切な脂肪酸には、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、もしくはモノグリセリド、ジグリセリド、またはその薬学的に許容される塩(例えば、ナトリウム)が含まれる。一部の態様では、透過促進剤の組み合わせ、例えば、胆汁酸/塩と組み合わせた脂肪酸/塩が使用される。例示的な1つの組合せは、ラウリン酸、カプリン酸およびUDCAのナトリウム塩である。さらなる透過促進剤には、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテルが含まれる。本発明に取り上げられるDsRNAを、噴霧乾燥粒子、またはマイクロもしくはナノ粒子を形成するために複合体化されたものを含む顆粒形態で経口的に送達することができる。dsRNA複合体化剤には、ポリ-アミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;ポリアルキルアクリレート、ポリオキセタン、ポリアルキルシアノアクリレート;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)、およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリレート;DEAE誘導体化ポリイミン、プルラン(pollulan)、セルロースおよびデンプンが含まれる。適切な複合体化剤には、キトサン、N-トリメチルキトサン、ポリ-L-リシン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p-アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノ(cynao)アクリレート)、DEAE-メタクリレート、DEAE-ヘキシルアクリレート、DEAE-アクリルアミド、DEAE-アルブミンおよびDEAE-デキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、アルギネート、およびポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。dsRNA用の経口製剤、およびそれらの調製は、その各々が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,887,906号、米国特許出願公開第20030027780号および米国特許第6,747,014号に記載されている。
【0403】
非経口、実質内(脳内へ)、くも膜下腔内、脳室内または肝内投与用の組成物および製剤は、無菌水溶液を含むことができ、その無菌水溶液は、緩衝剤、希釈剤、ならびに非限定的に、透過促進剤、担体化合物、および他の薬学的に許容される担体または賦形剤などの他の適切な添加剤も含有することができる。
【0404】
本発明の薬学的組成物には、非限定的に、液剤、エマルション、およびリポソーム含有製剤が含まれる。これらの組成物は、非限定的に、予め形成された液体、自己乳化型固体および自己乳化型半固体を含む多様な構成成分から生成することができる。肝臓がんなどの肝障害を処置する場合、製剤には、肝臓を標的とするものが含まれる。
【0405】
ユニット剤形として好都合に提示することができる本発明の薬学的製剤は、医薬品工業において周知の従来技法に従って調製することができる。そのような技法は、活性成分を医薬担体または賦形剤と関連させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体もしくは微粉化固体担体またはその両方と均一および密接に関連させ、次に必要であれば、産物を形状化することによって調製される。
【0406】
本発明の組成物を、非限定的に、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液体シロップ剤、ソフトゲル剤、坐剤、および浣腸などの多数の可能な剤形のいずれかに製剤化することができる。本発明の組成物を、水性、非水性または混合媒体中に懸濁液として製剤化することもできる。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含む、懸濁液の粘度を増加させる物質をさらに含有することができる。懸濁液は、安定剤も含有することができる。
【0407】
C. 追加的な製剤
i. エマルション
本発明のiRNAは、エマルションとして調製および製剤化することができる。エマルションは、典型的には、1種の液体が、通常、直径0.1μmを超える液滴の形態で別の液体中に分散された不均一系である(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199; Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p. 245; Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p. 335; Higuchi et al., in Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 301を参照されたい)。エマルションは、多くの場合、互いに密接に混合されおよび分散された2つの非混和性液相を含む二相系である。一般に、エマルションは、油中水(w/o)または水中油(o/w)の変種のいずれかであることができる。水相が微細分割され、微小液滴としてバルク油相中に分散された場合、結果として生じた組成物は、油中水(w/o)型エマルションと呼ばれる。あるいは、油相が微細に分割され、微小液滴としてバルク水相中に分散された場合、結果として生じた組成物は、水中油(o/w)型エマルションと呼ばれる。エマルションは、分散相および活性薬物に加えて追加的な構成成分を含有することができ、その活性薬物は、水相中、油相中、またはそれ自体が別個の相としてのいずれかで溶液として存在することができる。必要に応じて、エマルション中に乳化剤、安定化剤、色素、および抗酸化剤などの薬学的賦形剤も存在することができる。薬学的エマルションは、例えば、油中水中油(o/w/o)および水中油中水(w/o/w)型エマルションの場合のように、2つを超える相から行使される多重エマルションであることもできる。そのような複合製剤は、多くの場合に、単純な二成分エマルションが提供しないある特定の利点を提供する。o/w型エマルションの個別の油小滴が小さい水小滴を囲い込む多重エマルションが、w/o/w型エマルションを構成する。同様に、油性連続相中で安定化された水の小球に囲い込まれた油小滴の系が、o/w/o型エマルションを提供する。
【0408】
エマルションは、熱力学的安定性をほとんどまたは全く有さないことによって特徴付けられる。多くの場合、エマルションの分散相または不連続相は、外部相または連続相中に良好に分散され、乳化剤の手段、または製剤の粘度によりこの形態に維持される。エマルションの相のいずれかは、エマルション型軟膏基剤およびクリームの場合のように、半固体または固体であることができる。エマルションを安定化させる他の手段は、エマルションのいずれかの相に組み入れることができる乳化剤の使用を伴う。乳化剤は、合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、および微細に分散した固体の4つの部類に大きく分類することができる(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199を参照されたい)。
【0409】
表面活性剤としても公知の合成界面活性剤は、エマルションの製剤化に広い適用性が見出されており、かつ文献に総説されている(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY; Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, volume 1, p. 199を参照されたい)。界面活性剤は、典型的には、両親媒性であり、親水性部分および疎水性部分を含む。界面活性剤の疎水性に対する親水性の比率は、親水性/親油性バランス(HLB)と名付けられており、製剤の調製において界面活性剤を分類および選択する際の貴重な手段である。親水性基の性質に基づいて、界面活性剤を異なるクラス、すなわち、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性に分類することができる(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285を参照されたい)。
【0410】
エマルション製剤中に使用される天然乳化剤には、ラノリン、ミツロウ、ホスファチド、レシチンおよびアカシアが含まれる。吸収基剤は、無水ラノリンおよび親水性ワセリンなどの、水を吸収してw/o型エマルションを形成するが、それでもその半固体稠度を保持することができるような親水性特性を有する。微粉化固体も、特に界面活性剤と組み合わせて、および粘稠な調製物中で、良好な乳化剤として使用されている。これらには、重金属水酸化物などの極性無機固体、ベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイド状ケイ酸アルミニウム、およびコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどの非膨潤粘土、顔料、ならびに炭素などの非極性固体またはトリステアリン酸グリセリルが含まれる。
【0411】
多種多様な非乳化材料もエマルション製剤中に含まれ、エマルションの特性に寄与する。それらには、脂肪、油、ロウ、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、保水剤、親水性コロイド、保存剤および抗酸化剤が含まれる(Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0412】
親水性コロイドまたはハイドロコロイドには、多糖(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアーガム、カラヤガム、およびトラガカント)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、および合成ポリマー(例えば、カルボマー、セルロースエーテル、およびカルボキシビニルポリマー)などの天然ゴムおよび合成ポリマーが含まれる。これらは水中で分散または膨潤して、分散相の小滴の周囲に強力な界面フィルムを形成することにより、かつ外部相の粘度を増加させることにより、エマルションを安定化するコロイド溶液を形成する。
【0413】
エマルションは、多くの場合に、微生物の増殖を容易に支援することができる炭水化物、タンパク質、ステロールおよびホスファチドなどのいくつかの成分を含有するため、これらの製剤は、多くの場合に、保存剤を組み入れている。エマルション製剤中に含まれる、通常使用される保存剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、第四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩化物、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、およびホウ酸が含まれる。製剤の劣化を防ぐために、抗酸化剤も、通常、エマルション製剤に添加される。使用される抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカルスカベンジャー、またはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤、ならびにクエン酸、酒石酸およびレシチンなどの抗酸化剤相乗剤であることができる。
【0414】
皮膚、経口、および非経口経路を介したエマルション製剤の適用ならびにそれらの製造方法は、文献に総説されている(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199を参照されたい)。経口送達用のエマルション製剤は、製剤化の容易さ、ならびに吸収およびバイオアベイラビリティの観点からの有効性のため、非常に広範に使用されている(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY; Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199を参照されたい)。鉱油ベースの緩下薬、油溶性ビタミンおよび高脂肪栄養調製物が、o/w型エマルションとして一般に経口投与されている材料に含まれる。
【0415】
ii. マイクロエマルション
本発明の一態様では、iRNAは、マイクロエマルションとして製剤化される。マイクロエマルションは、光学的に等方性で、熱力学的に安定した単一の液体溶液である、水、油および両親媒性物質の系として定義することができる(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY; Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245を参照されたい)。典型的には、マイクロエマルションは、最初に油を水性界面活性剤溶液中に分散し、次に十分な量の第4の構成成分、一般的に中間の鎖長のアルコールを添加して透明系を形成することによって調製される系である。したがって、マイクロエマルションは、表面活性分子の界面フィルムにより安定化されている2つの非混和性液体の、熱力学的に安定な、等方的に透明な分散物としても記載されている(Leung and Shah, in: Controlled Release of Drugs: Polymers and Aggregate Systems, Rosoff, M., Ed., 1989, VCH Publishers, New York, pages 185-215)。マイクロエマルションは通常、油、水、界面活性剤、補助界面活性剤および電解質を含む3~5種の構成成分の組合せにより調製される。マイクロエマルションが油中水(w/o)型または水中油(o/w)型のいずれであるかは、使用される油および界面活性剤の特性と、界面活性剤分子の極性頭部および炭化水素尾部の構造および幾何学的充填とに依存する(Schott, in Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 271)。
【0416】
状態図を利用する現象論的アプローチが広範に研究されており、マイクロエマルションをどのように製剤化するかについての幅広い知識を当業者にもたらしている(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY; Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245; Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335を参照されたい)。従来のエマルションと比較して、マイクロエマルションは、自然に形成する熱力学的に安定な小滴の製剤中で水不溶性薬物を可溶化する利点を提供する。
【0417】
マイクロエマルションの調製に使用される界面活性剤には、非限定的に、単独でまたは補助界面活性剤と組み合わせた、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij(登録商標)96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、モノラウリン酸テトラグリセロール(ML310)、モノオレイン酸テトラグリセロール(MO310)、モノオレイン酸ヘキサグリセロール(PO310)、ペンタオレイン酸ヘキサグリセロール(PO500)、モノカプリン酸デカグリセロール(MCA750)、モノオレイン酸デカグリセロール(MO750)、セスキオレイン酸(sequioleate)デカグリセロール(SO750)、デカオレイン酸デカグリセロール(DAO750)が含まれる。通常、エタノール、1-プロパノール、および1-ブタノールなどの短鎖アルコールである補助界面活性剤は、界面活性剤フィルム中に浸透し、その結果、界面活性剤分子間に生成された空隙空間のせいで無秩序なフィルムを創出することによって、界面流動性を増加させるように作用する。しかし、補助界面活性剤を使用せずにマイクロエマルションを調製することができ、アルコール不含の自己乳化型マイクロエマルション系が、当技術分野にて公知である。水相は、典型的には、非限定的に水、薬物の水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコール誘導体であることができる。油相は、非限定的に、Captex(登録商標)300、Captex(登録商標)355、Capmul(登録商標)MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8-C12)モノ、ジ、およびトリ-グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8-C10グリセリド、植物油、ならびにシリコーン油などの材料を含むことができる。
【0418】
マイクロエマルションは、薬物可溶化および薬物吸収強化の観点から特に関心対象である。脂質ベースのマイクロエマルション(o/wおよびw/oの両方)は、ペプチドを含む薬物の経口バイオアベイラビリティを高めると提唱されている(例えば米国特許第6,191,105号;同第7,063,860号;同第7,070,802号;同第7,157,099号;Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385-1390; Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol., 1993, 13, 205を参照されたい)。マイクロエマルションは、薬物可溶化の改善、酵素加水分解からの薬物の保護、界面活性剤が誘導する膜流動性および透過性の変更により薬物吸収を強化する可能性、調製の容易さ、固体剤形よりも経口投与の容易さ、臨床効力の改善、および毒性の減少という利点を提供する(例えば、米国特許第6,191,105号;同第7,063,860号;同第7,070,802号;同第7,157,099号;Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385; Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85, 138-143を参照されたい)。多くの場合、マイクロエマルションは、マイクロエマルションの構成成分が周囲温度で一緒にされた場合に自然に形成することができる。このことは、熱不安定な薬物、ペプチドまたはiRNAを製剤化する場合に特に有利であることができる。マイクロエマルションは、化粧学的適用および薬学的適用の両方において活性構成成分の経皮送達にも有効である。本発明のマイクロエマルション組成物および製剤は、消化管からのiRNAおよび核酸の増加した全身吸収を促進するだけでなく、iRNAおよび核酸の局所細胞取込みを改善すると予想される。
【0419】
本発明のマイクロエマルションは、モノステアリン酸ソルビタン(Grill(登録商標)3)、Labrasol(登録商標)、および透過促進剤などの追加的な構成成分および添加剤も含有して、製剤の特性を改善し、かつ本発明のiRNAおよび核酸の吸収を高めることができる。本発明のマイクロエマルション中で使用される透過促進剤を、5つの広い部類、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、および非キレート非界面活性剤のうちの1つに属するものとして分類することができる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92)。これらのクラスの各々は、上に論じられている。
【0420】
iii. 微粒子
本発明のiRNAは、粒子、例えば、微粒子に組み入れられ得る。微粒子は、噴霧乾燥によって産生されることができるが、凍結乾燥、蒸発、流体床乾燥、真空乾燥、またはこれらの技法の組合せを含む他の方法によっても産生され得る。
【0421】
iv. 透過促進剤
一態様では、本発明は、動物の皮膚への、核酸、特にiRNAの効率的な送達をもたらすために様々な透過促進剤を採用する。たいていの薬物が、イオン化形態および非イオン化形態の両方で溶液中に存在する。しかし、通常、脂溶性または親油性の薬物のみが、細胞膜を容易に通り抜ける。通り抜けようとする膜が透過促進剤で処理されている場合、非親油性薬物であっても細胞膜を通り抜けることができることが発見されている。細胞膜を通過する非親油性薬物の拡散を助けることに加えて、透過促進剤は、親油性薬物の透過性も高める。
【0422】
透過促進剤を、5つの広い部類、すなわち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、および非キレート非界面活性剤のうちの1つに属するものとして分類することができる(例えば、Malmsten, M. Surfactants and polymers in drug delivery, Informa Health Care, New York, NY, 2002; Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92を参照されたい)。このような化合物は、当技術分野において周知である。
【0423】
v. 担体
本発明のある特定の組成物は、製剤中に担体化合物も組み入れている。本明細書に使用される「担体化合物」または「担体」は、不活性(すなわち、生物学的活性自体を有さない)であるが、例えば、生物学的に活性な核酸を分解し、または循環からの核酸の除去を促進することにより生物学的活性を有する核酸のバイオアベイラビリティを低減するインビボ過程により、核酸であると認識される、核酸またはその類似体を指すことができる。核酸および担体化合物の共投与、典型的には、後者の物質が過剰な共投与は、おそらくは共通の受容体に対する担体化合物と核酸との競合のせいで、肝臓、腎臓または他の循環外リザーバ中で回収される核酸の量の実質的な低減を招くことができる。例えば、肝組織内での部分的ホスホロチオエートdsRNAの回収は、それがポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジン酸(polycytidic acid)または4-アセトアミド-4'イソチオシアノ-スチルベン-2,2'-ジスルホン酸と共投与された場合、低減する可能性がある(Miyao et al., DsRNA Res. Dev., 1995, 5, 115-121; Takakura et al., DsRNA & Nucl. Acid Drug Dev., 1996, 6, 177-183。
【0424】
vi. 賦形剤
担体化合物とは対照的に、「薬学的担体」または「賦形剤」は、動物に1種または複数種の核酸を送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁化剤、または任意の他の薬理学的不活性ビヒクルである。賦形剤は、液体または固体であることができ、かつ計画された投与方式を考慮に入れて、核酸および所与の薬学的組成物の他の構成成分と組み合わされた場合に、所望のかさ、稠度などを与えるように選択される。典型的な薬学的担体には、非限定的に、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウムなど);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど);および湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)が含まれる。
【0425】
核酸と有害に反応しない、非経口でない投与に適切な、薬学的に許容される有機または無機賦形剤も、本発明の組成物を製剤化するために使用することができる。適切な、薬学的に許容される担体には、非限定的に、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれる。
【0426】
核酸の局所投与用の製剤は、アルコールなどのの通常の溶媒中の無菌および非無菌水溶液、非水溶液、または液体もしくは固体油基剤中の核酸溶液を含むことができる。溶液は、緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加剤も含有することができる。核酸と有害に反応しない、非経口でない投与に適切な薬学的に許容される有機または無機賦形剤を使用することができる。
【0427】
薬学的に許容される適切な賦形剤には、非限定的に、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれる。
【0428】
vii. 他の構成成分
本発明の組成物は、追加的に、薬学的組成物中に従来見出される他の補助構成成分を、当技術分野で確立されたそれらの利用レベルで含有することができる。したがって、例えば、組成物は、例えば、鎮痒薬、収斂薬、局所麻酔薬もしくは抗炎症剤などの、追加的な適合性薬学的活性材料を含有することができ、または色素、着香剤、保存剤、抗酸化剤、乳白剤、粘稠化剤および安定化剤などの、本発明の組成物の多様な剤形を物理的に製剤化するのに有用な追加的な材料を含有することができる。しかし、そのような材料は、添加された場合、本発明の組成物の構成成分の生物学的活性を過度に妨害してはならない。製剤を滅菌することができ、所望であれば、製剤の核酸と有害に相互作用しない佐剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色料、着香料および/または芳香性物質などと混合される。
【0429】
水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含む、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有することができる。懸濁液は、安定化剤も含有することができる。
【0430】
一部の態様では、本発明に取り上げられる薬学的組成物は、(a)1種または複数種のiRNAおよび(b)非iRNAメカニズムによって機能し、PD-L1関連障害を処置するのに有用な、1種または複数種の剤を含む。
【0431】
そのような化合物の毒性および治療有効性を、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果との間の用量比は、治療係数であり、それは、LD50/ED50比として表現することができる。高い治療係数を示す化合物が好ましい。
【0432】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータを、ヒトにおける使用のための投薬量範囲を処方するのに使用することができる。本発明において本明細書に取り上げられる組成物の投薬量は、一般的に、ほとんどまたは全く毒性を有さずにED50を含む循環濃度の範囲内である。投薬量は、採用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動することができる。本発明に取り上げられる方法に使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推測することができる。用量は、細胞培養において決定されるIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む、化合物の、または適切な場合、標的配列のポリペプチド産物の循環血漿中濃度範囲を動物モデルにおいて達成する(例えば、ポリペプチドの濃度の減少を達成する)ように処方することができる。そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより精密に決定することができる。血漿中のレベルを、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0433】
上記のそれらの投与に加えて、本発明に取り上げられるiRNAを、PD-L1の発現によって媒介される病的過程の処置に有効な他の公知の剤と組み合わせて投与することができる。いずれにせよ、投与する医師は、観察された結果に基づいて、当技術分野において公知または本明細書に記載の標準的な有効性の尺度を使用して、iRNAの投与の量およびタイミングを調整することができる。
【0434】
VI. PD-L1の発現を阻害するための方法
本発明は、細胞におけるPD-L1遺伝子の発現を阻害する方法も提供する。この方法は、細胞を、細胞におけるPD-L1の発現を阻害するために有効な量のRNAi剤、例えば、二本鎖RNAi剤と接触させ、それにより、細胞におけるPD-L1の発現を阻害する工程を含む。本発明の特定の態様では、PD-L1は、肝細胞において優先的に阻害される。
【0435】
細胞をiRNA、例えば、二本鎖RNAi剤と接触させる工程は、インビトロまたはインビボで行われ得る。細胞をインビボでiRNAと接触させる工程は、対象、例えば、ヒト対象内の細胞または細胞群をiRNAと接触させる工程を含む。細胞を接触させるインビトロ方法およびインビボ方法の組合せも可能である。細胞を接触させる工程は、上述のように直接的または間接的であり得る。さらに、細胞を接触させる工程は、本明細書に記載または当技術分野において公知の任意のリガンドを含む、標的指向リガンドを介して達成され得る。好ましい態様では、標的指向リガンドは、炭水化物部分、例えば、GalNAc3リガンド、またはRNAi剤を関心対象の部位に方向付ける任意の他のリガンドである。
【0436】
本明細書において使用される「阻害する」という用語は、「低減する」、「サイレンシングする」、「ダウンレギュレーションする」、「抑制する」、および他の類似の用語と互換的に使用され、任意のレベルの阻害を含む。
【0437】
「PD-L1の発現を阻害する」という語句は、任意のPD-L1遺伝子(例えば、マウスPD-L1遺伝子、ラットPD-L1遺伝子、サルPD-L1遺伝子、またはヒトPD-L1遺伝子)だけでなく、PD-L1遺伝子の変種または変異体の発現の阻害を指すことが意図される。したがって、PD-L1遺伝子は、遺伝的に操作された細胞、細胞群、または生物に関連する、野生型PD-L1遺伝子、変異型PD-L1遺伝子、またはトランスジェニックPD-L1遺伝子であり得る。
【0438】
「PD-L1遺伝子の発現を阻害する」は、PD-L1遺伝子の任意のレベルの阻害、例えば、PD-L1遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を含む。PD-L1遺伝子の発現は、PD-L1遺伝子の発現に関連する任意の変数のレベル、またはレベルの変化、例えば、PD-L1 mRNAのレベルまたはPD-L1タンパク質のレベルに基づき判断され得る。このレベルは、例えば、対象由来の試料を含む、個別の細胞または細胞群において判断され得る。PD-L1の発現は、正常な対象では、多くの細胞型および体液において検出レベル付近またはそれ未満であり得ると理解されている。したがって、PD-L1の発現の阻害は、例えば、肝炎ウイルスに感染した対象の肝臓において、PD-L1の阻害のための剤を用いた処置の前および後に、または腫瘍において、PD-L1の阻害のための剤を用いた処置の前もしくは後に、PD-L1のレベルを比較することができる。
【0439】
特定の態様では、PD-L1の阻害を検出するために代用マーカーを使用することができる。例えば、PD-L1の発現を低減するための剤を用いた許容される診断およびモニタリング基準によって実証されるような、感染、例えば、肝炎ウイルス感染の有効な処置は、PD-L1に臨床的に意味のある低減を示すことと理解することができる。PD-L1を低減するための剤を用いた処置後にRECIST基準によって決定されるような、がんを有する対象における腫瘍量の安定化または低減は、PD-L1における臨床的に意味のある低減を示すことと理解することができる。
【0440】
阻害は、対照レベルと比較した、PD-L1の発現と関連する1つまたは複数の変数の絶対レベルまたは相対レベルにおける減少によって判断され得る。対照レベルは、当技術分野において利用される任意の種類の対照レベル、例えば、投与前のベースラインレベル、または未処置である、もしくは対照(例えば、緩衝液のみの対照もしくは不活性剤対照など)で処置された、類似の対象(例えば、歴史的対照)、細胞、もしくは試料から決定されたレベルであり得る。
【0441】
本発明の方法の一部の態様では、PD-L1遺伝子の発現は、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、またはアッセイの検出レベル未満に阻害される。特定の態様では、この方法は、例えば、PD-L1の発現を低減するための剤を用いた対象の処置の後の臨床的に意味のある転帰によって実証されるような、PD-L1の発現の臨床的に意味のある阻害を含む。
【0442】
PD-L1遺伝子の発現の阻害は、その中でPD-L1遺伝子が転写され、かつPD-L1遺伝子の発現が阻害されるように処置された(例えば、1つもしくは複数の細胞を本発明のiRNAと接触させることによって、または細胞が中に存在するもしくは存在した対象に本発明のiRNAを投与することによって)第1の細胞または細胞群(そのような細胞は、例えば、対象由来の試料中に存在し得る)によって発現されるmRNAの量が、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、そのように処置されなかった第2の細胞または細胞群(iRNAで処置されていないまたは関心対象の遺伝子を標的とするiRNAで処置されていない対照細胞)と比較して低減していることによって、明らかになり得る。好ましい態様では、阻害は、10nM iRNAで処置されたRKOヒト結腸がん細胞において、実施例2に提供される方法によって、かつ、下記式を使用して、処置された細胞におけるmRNAのレベルを対照細胞におけるmRNAのレベルに対するパーセンテージとして表現することによって、判断される:
。
【0443】
他の態様では、PD-L1遺伝子の発現の阻害は、PD-L1遺伝子の発現と機能的に連結されるパラメーター、例えば、PD-L1タンパク質の発現またはPD-L1シグナル伝達経路の低減により判断され得る。PD-L1遺伝子のサイレンシングは、発現構築物から内因性または異種性のいずれかでPD-L1を発現している任意の細胞において、および当技術分野において公知の任意のアッセイによって決定され得る。
【0444】
PD-L1タンパク質の発現の阻害は、細胞または細胞群によって発現されているPD-L1タンパク質のレベル(例えば、対象由来の試料中で発現されているタンパク質のレベル)における低減によって明らかになり得る。上に説明したように、mRNAの抑制の判断について、処置された細胞または細胞群におけるタンパク質の発現レベルの阻害は、同様に、対照細胞または細胞群におけるタンパク質のレベルに対するパーセンテージとして表現され得る。
【0445】
PD-L1遺伝子の発現の阻害を判断するために使用され得る対照細胞または細胞群には、本発明のRNAi剤とまだ接触されたことのない細胞または細胞群が含まれる。例えば、対照細胞または細胞群は、RNAi剤を用いた対象の処置前の、個別の対象(例えば、ヒトまたは動物対象)由来であり得る。
【0446】
細胞または細胞群によって発現されているPD-L1 mRNAのレベルは、mRNAの発現を判断するための当技術分野において公知の任意の方法を使用して決定され得る。一態様では、試料中のPD-L1の発現レベルは、転写されたポリヌクレオチド、またはその部分、例えば、PD-L1遺伝子のmRNAを検出することによって決定される。RNAは、例えば、酸性フェノール/グアニジンイソチオシアネート抽出(RNAzol B; Biogenesis)、RNeasy(商標)RNA調製キット(Qiagen(登録商標))またはPAXgene(PreAnalytix, Switzerland)を使用することを含む、RNA抽出技法を使用して細胞から抽出され得る。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する典型的なアッセイ形式には、核ランオンアッセイ、RT-PCR、RNアーゼ保護アッセイ、ノーザンブロッティング、インサイチューハイブリダイゼーション、およびマイクロアレイ分析が含まれる。循環PD-L1 mRNAは、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、PCT公報WO2012/177906に記載される方法を使用して検出され得る。
【0447】
一部の態様では、PD-L1の発現レベルは、核酸プローブを使用して決定される。本明細書に使用される「プローブ」という用語は、特定のPD-L1に選択的に結合する能力のある任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成される、または適切な生物学的調製物から得られることができる。プローブは、標識されるように特異的に設計され得る。プローブとして利用できる分子の例には、非限定的に、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機分子が含まれる。
【0448】
単離されたmRNAを、非限定的に、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析およびプローブアレイを含む、ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイに使用することができる。mRNAレベルの決定のための一方法は、単離されたmRNAを、PD-L1 mRNAとハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)と接触させる工程を伴う。一態様では、例えば、単離されたmRNAをアガロースゲル上で泳動させ、mRNAをゲルからニトロセルロースなどのメンブレンに移行させることによって、mRNAは、固体表面に固定化され、プローブと接触される。代替的な態様では、プローブが固体表面に固定化され、mRNAが、例えば、Affymetrix GeneChip(登録商標)アレイ中の、プローブと接触される。技術者は、PD-L1 mRNAのレベルを決定するのに使用するために、公知のmRNA検出方法を容易に適合させることができる。
【0449】
試料中のPD-L1の発現レベルを決定するための代替方法は、例えば試料中mRNAの、核酸増幅および/または逆転写酵素(cDNAを調製するため)のプロセスを伴い、例えば、RT-PCR(Mullis、1987年の米国特許第4,683,202号に示される実験態様)、リガーゼ連鎖反応(Barany (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193)、自家持続配列複製(Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)、転写増幅系(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177)、Q-ベータレプリカーゼ(Lizardi et al. (1988) Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardiら、米国特許第5,854,033号)または任意の他の核酸増幅方法に続く、当業者に周知の技法を使用する幅された分子の検出による。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に少ない数で存在するならば、そのような分子の検出に特に有用である。本発明の特定の局面では、PD-L1の発現レベルは、実施例2における定量蛍光発生RT-PCR(すなわち、TaqMan(商標)システム)またはDual-Glo(登録商標)Luciferaseアッセイによって決定される。
【0450】
PD-L1 mRNAの発現レベルは、メンブレンブロット(例えばノーザン、サザン、ドットなどのようなハイブリダイゼーション分析において使用されるもの)、またはマイクロウェル、試料チューブ、ゲル、ビーズ、もしくは繊維(もしくは結合した核酸を含む任意の固体支持体)を使用してモニタリングされ得る。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,770,722号、同第5,874,219号、同第5,744,305号、同第5,677,195号および同第5,445,934号を参照されたい。PD-L1の発現レベルの決定は、溶液状態の核酸プローブを使用する工程も含み得る。
【0451】
好ましい態様では、mRNAの発現レベルは、分枝DNA(bDNA)アッセイまたはリアルタイムPCR(qPCR)を使用して判断される。このPCR方法の使用は、本明細書に提示される実施例に記載および説明されている。そのような方法は、病原体の核酸、例えば、肝炎ウイルスの核酸の検出のためにも使用することができる。
【0452】
PD-L1タンパク質の発現レベルは、タンパク質レベルの測定のための当技術分野において公知の任意の方法を使用して決定され得る。そのような方法には、例えば、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散(hyperdiffusion)クロマトグラフィー、液体またはゲル沈降素反応、吸収分光法、比色アッセイ、分光光度アッセイ、フローサイトメトリー、免疫拡散(一元または二元)、免疫電気泳動、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、電気化学発光アッセイなどが含まれる。そのようなアッセイは、病原体の存在または複製を示すタンパク質、例えば、ウイルスタンパク質の検出のためにも使用することができる。
【0453】
一部の態様では、PD-L1関連疾患の処置における本発明の方法の有効性は、PD-L1 mRNAレベルの減少によって判断される(肝生検による)。
【0454】
一部の態様では、HBV感染の処置における本発明の方法の有効性は、下述の血清学的マーカーの組合せを評価することによってモニタリングされる。HBVを有する対象の処置の有効性は、対象における肝炎Bs抗原(HBsAg)またはHBeAgのレベルを検出することによってモニタリングすることができ、ここで、例えば、血清中の、HBsAgまたはHBeAgのレベルにおける低減は、疾患の有効な処置を示す。好ましい態様では、HBsAgまたはHbeAgのレベルの低減は、臨床的に意味があり、例えば、標準治療で観察される低減のレベルに匹敵する。処置の有効性を、対象におけるHBV DNAのレベルの臨床的に意味のある低減、例えば、標準治療で観察される低減のレベルに匹敵する低減、例えば、少なくとも4log10IU/mL、好ましくは少なくとも5log10IU/mLの抑制によっても、決定することができる(Dienstag, Hepatology, 2009, 49:S112-S121)。処置の有効性は、抗HBsAg抗体の存在によっても決定することができる。
【0455】
一部の態様では、がんの処置における本発明の方法の有効性を、原発性腫瘍もしくは転移性腫瘍の腫瘍量の維持もしくは好ましくは低減、または転移の予防について対象を評価することによって、モニタリングすることができる。腫瘍量の検出およびモニタリングのための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、Eisenhauer et al., 2009, New response evaluation criteria in solid tumours: Revised RECIST guideline (version 1.1). Eur. J. Cancer. 45:228-247に提供されるようなRECIST基準である。
【0456】
本発明の方法の一部の態様では、iRNAは、iRNAが対象内の特定部位に送達されるように、対象に投与される。PD-L1の発現の阻害は、対象内の特定部位、例えば、肝臓から得られる試料中のPD-L1 mRNAまたはPD-L1タンパク質のレベルまたはそのレベルにおける変化の測定を使用して判断され得る。特定の態様では、この方法は、例えば、剤を用いた対象の処置後の、PD-L1の発現を低減する臨床的に意味のある転帰によって実証される、PD-L1の発現の臨床的に意味のある阻害を含む。
【0457】
本明細書に使用される、分析物のレベルを検出または決定するという用語は、材料、例えば、タンパク質、RNAが存在するかどうかを決定する工程を行うことを意味すると理解される。本明細書に使用される、検出または決定する方法は、使用される方法についての検出レベル未満である分析物のレベルの検出または決定を含む。
【0458】
PD-L1関連疾患の動物モデルは、当技術分野において周知である。例えば、HBVのチンパンジー、ウッドチャック、およびトランスジェニックマウスモデルを含む、B型肝炎感染の動物モデルは、当技術分野において公知である(Wieland, 2015. Cold Spring Harb. Perspect. Med., 5:a021469, 2015; Tennant and Gerin, 2001. ILAR Journal, 42:89-102;およびMoriyama et al., 1990. Science, 248:361-364)。チンパンジーモデルは、D型肝炎感染のモデルとしても使用され得る。リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の慢性対急性感染の比較モデルは、免疫消耗(immune exhaustion)の研究に有用である(Matloubian et al., 1994, J. Virol. 68:8056-8063)。PD-L1発現腫瘍を含む、多数のがんモデルが、当技術分野において公知である(Iwai et al., 2002, PNAS, 99:12293-12297)。
【0459】
VII. PD-L1関連疾患を治療または予防する方法
本発明は、本発明のiRNAまたは本発明のiRNAを含有する組成物を使用して、細胞におけるPD-L1の発現を低減または阻害する方法も提供する。この方法は、細胞を本発明のdsRNAと接触させる工程、およびPD-L1遺伝子のmRNA転写物の分解を得るために十分な時間、細胞を維持し、それにより、細胞におけるPD-L1遺伝子の発現を阻害する工程を含む。遺伝子発現の低減を、当技術分野においての公知の任意の方法によって判断することができる。例えば、PD-L1の発現の低減は、当業者に日常的な方法、例えば、ノーザンブロッティング、qRT-PCRを使用して、例えば、肝臓試料中のPD-L1のmRNAの発現レベルを、例えば、実施例2に提供されるように決定することによって;ウエスタンブロッティング、免疫学的技法などの、当業者に日常的な方法を使用して、PD-L1のタンパク質のレベルを決定することによって決定され得る。PD-L1の発現における低減は、PD-L1の生物学的活性の減少を測定すること、または対象の試料(例えば、血清試料)中のPD-L1のレベルを測定することによって、間接的にも判断され得る。PD-L1の発現における低減は、PD-L1関連疾患の少なくとも1つの徴候または症状における変化、好ましくは臨床的に意味のある変化を測定または観察することによって、間接的に判断することもできる。
【0460】
本発明の方法において、細胞は、インビトロまたはインビボで接触される場合があり、すなわち、細胞は、対象内にあり得る。
【0461】
本発明の方法を使用する処置に適切な細胞は、PD-L1遺伝子を発現する任意の細胞、典型的には、肝細胞であり得る。本発明の方法における使用に適切な細胞は、標的遺伝子配列が標的のノックダウンを促進するために十分な相補性をiRNA剤に対して有する場合、哺乳動物細胞、例えば、霊長類細胞(例えば、ヒト細胞もしくは非ヒト霊長類細胞、例えば、サル細胞もしくはチンパンジー細胞)、非霊長類細胞(例えば、ウシ細胞、ブタ細胞、ラクダ細胞、ラマ細胞、ウマ細胞、ヤギ細胞、ウサギ細胞、ヒツジ細胞、ハムスター、モルモット細胞、ネコ細胞、イヌ細胞、ラット細胞、マウス細胞、ライオン細胞、トラ細胞、クマ細胞、もしくは水牛細胞)、トリ細胞(例えば、アヒル細胞もしくはガチョウ細胞)、またはクジラ細胞であり得る。一態様では、細胞は、ヒト細胞、例えばヒト肝細胞である。
【0462】
PD-L1の発現は、細胞において、少なくとも20%、25%、好ましくは、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、またはアッセイの検出レベル未満のレベルに阻害される。特定の態様では、この方法は、例えば、PD-L1の発現を低減するための剤を用いた対象の処置後の臨床的に意味のある転帰によって実証されるような、PD-L1の発現の臨床的に意味のある阻害を含む。
【0463】
本発明のインビボ方法は、iRNAを含有する組成物を対象に投与する工程を含む場合があり、ここで、iRNAは、処置される哺乳動物のPD-L1遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と相補的なヌクレオチド配列を含む。処置される生物がヒトなどの哺乳動物である場合、組成物は、非限定的に、経口、腹腔内、または頭蓋内(例えば、脳室内、実質内、およびくも膜下腔内)、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、経鼻、直腸、および局所(口腔および舌下を含む)投与を含む非経口経路を含む、当技術分野において公知の任意の手段によって投与されることができる。特定の態様では、組成物は、静脈内注入または注射によって投与される。特定の態様では、組成物は、皮下注射によって投与される。
【0464】
一部の態様では、投与は、デポー注射を介する。デポー注射は、長期間にわたってiRNAを一貫して放出し得る。したがって、デポー注射は、所望の効果、例えば、PD-L1の所望の阻害、または治療効果を得るのに必要な投薬の頻度を低減し得る。デポー注射は、より一貫した血清濃度も提供し得る。デポー注射は、皮下注射または筋肉内注射を含み得る。好ましい態様では、デポー注射は、皮下注射である。
【0465】
一部の態様では、投与は、ポンプを介する。ポンプは、外部ポンプまたは外科的に植え込まれたポンプであり得る。特定の態様では、ポンプは、皮下に植え込まれた浸透圧ポンプである。他の態様では、ポンプは、注入ポンプである。注入ポンプは、静脈内、皮下、動脈内、または硬膜外注入のために使用され得る。好ましい態様では、注入ポンプは、皮下注入ポンプである。他の態様では、ポンプは、iRNAを肝臓に送達する、外科的に植え込まれたポンプである。
【0466】
投与様式は、局所または全身処置のいずれが望ましいかに基づいて、および処置される領域に基づいて選択され得る。投与経路および投与部位は、標的指向を強化するように選択され得る。
【0467】
一局面では、本発明は、哺乳動物におけるPD-L1遺伝子の発現を阻害するための方法も提供する。この方法は、哺乳動物に、哺乳動物の細胞におけるPD-L1遺伝子を標的とするdsRNAを含む組成物を投与する工程、およびPD-L1遺伝子のmRNA転写物の分解を得るために十分な時間、哺乳動物を維持し、それにより、細胞におけるPD-L1遺伝子の発現を阻害する工程を含む。遺伝子発現の低減は、当技術分野において公知の任意の方法および本明細書に記載の方法、例えばqRT-PCRによって判断することができる。タンパク質産生の低減は、当技術分野において公知の任意の方法および本明細書に記載の方法、例えばELISAによって判断することができる。一態様では、穿刺肝生検試料は、PD-L1の遺伝子またはタンパク質の発現における低減をモニタリングするための組織材料として役立つ。特定の態様では、PD-L1の発現の阻害は、臨床的に意味のある転帰の観察によって確認される。
【0468】
本発明は、それを必要とする対象の処置方法をさらに提供する。本発明の処置方法は、対象、例えば、PD-L1の発現の低減または阻害から恩恵を被るであろう対象に、本発明のiRNAを、PD-L1遺伝子を標的とするiRNAまたはPD-L1遺伝子を標的とするiRNAを含む薬学的組成物を治療有効量で投与する工程を含む。
【0469】
本発明のiRNAは、「遊離iRNA」として投与され得る。遊離iRNAは、薬学的組成物の不在下で投与される。裸の(naked)iRNAは、適切な緩衝溶液中にあり得る。緩衝溶液は、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩、もしくはリン酸塩、またはそれらの任意の組合せを含み得る。一態様では、緩衝溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。iRNAを含有する緩衝溶液のpHおよび浸透圧を、対象に投与するために適切なように調整することができる。
【0470】
あるいは、本発明のiRNAは、dsRNAリポソーム製剤などの薬学的組成物として投与され得る。
【0471】
PD-L1遺伝子の発現の低減または阻害から恩恵を被るであろう対象は、増加した免疫応答から恩恵を被るであろう障害、例えば、感染症、例えば、ウイルス疾患、例えば、肝炎;またはがんを有する対象である。
【0472】
iRNAおよび追加的な治療剤は、同時にまたは同じ組合せで、例えば、非経口的に投与される場合があり、あるいは追加的な治療剤は、別の組成物の一部としてまたは別々の時間にまたは当技術分野において公知もしくは本明細書に記載の別の方法により、投与することができる。
【0473】
一態様では、この方法は、標的PD-L1遺伝子の発現が、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、18、24時間、28、32、または約36時間減少するように、本明細書に取り上げられた組成物を投与する工程を含む。一態様では、標的PD-L1遺伝子の発現は、長期間、例えば、少なくとも約2、3、4日またはそれより多く、例えば、約1週間、2週間、3週間、もしくは4週間またはそれよりも長く、例えば、約1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月間、減少される。
【0474】
好ましくは、本明細書に取り上げられた方法および組成物に有用なiRNAは、標的PD-L1遺伝子のRNA(一次またはプロセシング済み)を特異的に標的とする。iRNAを使用してこれらの遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法は、本明細書に記載のように調製および実行することができる。
【0475】
本発明の方法によるiRNAの投与は、例えば、増大したPD-L1またはPD-L1応答性腫瘍を有する患者におけるそのような疾患または障害の重症度、徴候、症状、またはマーカーの低減を招き得る。これに関連する「低減」は、そのようなレベル、例えば、対象における病原体の存在の指標、例えば、B型肝炎に感染した対象の血清中のHBsAg、HBeAg、またはHB cccDNAのレベルにおける統計的に有意な減少を意味する。低減は、例えば、少なくとも約20%、25%、好ましくは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または使用されるアッセイの検出レベル未満であることができる。特定の態様では、マーカー、例えば、抗HBs抗体における増加は、疾患の重症度の低減を示す。したがって、増加は、抗体のレベルにおける、例えば、対象における検出可能なレベルへの統計的に有意な増加であることができる。
【0476】
疾患の治療または予防の有効性は、例えば、疾患の進行、疾患の寛解、症状の重症度、疼痛の低減、クオリティーオブライフ、処置効果を持続させるのに必要な投薬の用量、疾患マーカーのレベル、または処置されているもしくは予防の対象となる所与の疾患に適切な測定可能な任意の他のパラメータを測定することによって判断することができる。そのようなパラメータのいずれか1つ、またはパラメータの任意の組合せを測定することによって治療または予防の有効性をモニタリングすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、増加した免疫応答から恩恵を被るであろう障害、例えば、感染症、例えば、ウイルス疾患、例えば、肝炎、またはがんの処置の有効性である。
【0477】
感染症の処置の有効性は、例えば、対象の試料から感染性因子を培養できないことによって実証されるような、感染性因子の存在の減少によって実証することができる。感染症の処置の有効性は、例えば、感染性因子中に存在するタンパク質、核酸、または炭水化物の減少によって実証されるような、感染性因子の存在の減少によって実証することができる。処置の有効性は、例えば、感染性因子を標的とする抗体または免疫細胞の存在によって実証されるような、免疫応答の存在によって実証することができる。感染症の処置の有効性は、例えば、感染の1つまたは複数の徴候または症状、例えば、発熱、疼痛、悪心、嘔吐、異常な血液化学、体重減少の減少によって実証されるような、感染性因子の存在の減少によって実証することができる。特定の徴候または症状は、特定の病原体に依存する。感染症の処置の有効性は、病原体を標的とする抗体または免疫細胞の生成によって実証することができる。
【0478】
がんの処置の有効性は、原発性腫瘍、転移性腫瘍の腫瘍量の安定化もしくは減少、または腫瘍転移の遅延もしくは予防によって示されるような、腫瘍量の安定化または減少によって実証することができる。診断方法およびモニタリング方法は、本明細書に、例えば、RECIST基準において提供される。
【0479】
後の読み取りと最初の読み取りとの比較は、医師に処置が有効であるかの指標を与える。そのようなパラメーターのいずれか1つ、またはパラメーターの任意の組合せを測定することによって、治療または予防の有効性をモニタリングすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。PD-L1を標的とするiRNAまたはその薬学的組成物の投与に関連して、PD-L1関連障害「に対して有効」は、臨床的に適切な方式での投与が、疾患における、症状の改善、治癒、軽減、寿命の延長、クオリティーオブライフの改善、または、例えば、本明細書に提供されるHBVについての診断基準に提供されるような、PD-L1関連障害の処置に精通している医師によって一般的に陽性と認識される他の効果などの、患者の少なくとも統計的に有意な割合にとって有益な効果を招くことを示す。
【0480】
疾患状態の1つまたは複数のパラメーターに統計的に有意な改善がある場合、またはそうでなければ予期される症状を悪化させたりもしくは発症しない場合、治療または予防効果が明らかである。例として、疾患の測定可能なパラメーターにおける少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%またはそれより多くの好都合な変化は、有効な処置を示すことができる。所与のiRNA薬またはその薬物の製剤についての有効性は、当技術分野において公知の所与の疾患についての実験的動物モデルを使用して判定することもできる。実験的動物モデルを使用するとき、マーカーまたは症状において統計的に有意な低減が観察される場合に処置の有効性が証明される。
【0481】
あるいは、有効性は、診断分野の技術者によって、臨床的に許容される疾患重症度の評価尺度に基づき決定される疾患の重症度における低減によって測定することができる。例えば、適切な尺度を使用して測定される疾患の重症度の軽減を招く任意の陽性の変化は、本明細書に記載のiRNAまたはiRNA製剤を使用する妥当な処置に相当する。
【0482】
対象に、約0.01mg/kg~約200mg/kgなどの、iRNAの治療量を投与することができる。
【0483】
iRNAは、ある期間にわたる定期ベースでの静脈内注入によって投与することができる。特定の態様では、初回処置レジメンの後に、処置をより低頻度ベースで投与することができる。iRNAの投与は、例えば、患者の細胞または組織中のPD-L1のレベルを、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または使用されるアッセイ方法の検出レベル未満に低減することができる。特定の態様では、投与は、PD-L1関連障害の少なくとも1つの徴候または症状の臨床的安定化または好ましくは臨床的に意味のある低減を招く。
【0484】
iRNAの総用量の特定の態様では、患者に5%注入反応などのより少ない用量を投与し、アレルギー反応などの有害作用についてモニタリングすることができる。別の例では、増加したサイトカイン(例えば、TNF-アルファまたはINF-アルファ)のレベルなどの望まれない免疫刺激作用について患者をモニタリングすることができる。
【0485】
あるいは、iRNAは、皮下に、すなわち、皮下注射によって投与することができる。1つまたは複数回の注射を使用して、iRNAの所望の1日用量が対象に送達され得る。注射は、ある期間にわたり繰り返され得る。投与は、定期ベースで繰り返され得る。特定の態様では、初回処置レジメンの後に、処置をより低い頻度ベースで投与することができる。繰り返し投与レジメンは、治療量のiRNAの、1日おきまたは1年に1回までなどの定期ベースの投与を含み得る。特定の態様では、iRNAは、1ヶ月に約1回から四半期に約1回(すなわち、3ヶ月毎に約1回)投与される。
【0486】
IX. PD-L1関連疾患のための診断基準および処置
様々なPD-L1関連疾患についての例示的な診断およびモニタリング基準を下に提供する。
【0487】
A. B型肝炎
肝炎は、肝臓の炎症を意味する一般用語であり、肝炎A、B、C、DおよびE型肝炎などの多様な異なるウイルスによって引き起こされる可能性がある。黄疸の発生は、肝疾患の特徴であるので、特異的抗ウイルス抗原または抗体の存在について患者の血清を検査することによってのみ、正しい診断を行うことができる。持続性HBV感染の重篤な病理学的帰結は、慢性肝不全、肝硬変、および肝細胞がん(HCC)の発生を含む。加えて、HBVキャリアは、この疾患を長年、伝染させる可能性がある。
【0488】
HBVは、大型のウイルスであり、胎盤を通り抜けないが、HBVに感染している妊婦は、出産の際に自分の疾患を乳児に伝染させる可能性がある。出生時にワクチン接種されないと、これらの乳児の多くが生涯のHBV感染を発症し、後年、多くが肝不全または肝臓がんを発症する。急性HBV感染の後、慢性感染を発症するリスクは、年齢に反比例して変わる。慢性HBV感染は、出生時に感染した乳児の約90%、年齢1~5歳で感染した小児の25~50%および年齢が高い子どもおよび成人で感染したヒトの約1~5%に起こる。慢性HBV感染は、免疫不全を有するヒトにもよく見られる(参照により本明細書に組み入れられる、Hepatitis B: World Health Organization. Department of Communicable Diseases Surveillance and Response、www.who.int/csr/disease/hepatitis/HepatitisB_whocdscsrlyo2002_2.pdf?ua=1から入手可能)。
【0489】
この疾患の潜伏期(6から24週間)の間、患者は、起こり得る悪心、嘔吐、下痢、食欲不振、および頭痛で気分が優れない場合がある。次いで患者は、低度の発熱および食欲不振は改善し得るものの、黄疸になり得る。時に、HBV感染は、黄疸も明らかな症状も引き起こさない。無症候例は、血中の生化学的またはウイルス特異的血清学的変化を検出することによって同定することができる。そのような無症候の個体は、ウイルスの無症状(silent)キャリアになる場合があり、他人へのさらなる伝染の病原体保有者(reservoir)を構成する場合がある。
【0490】
大部分の成人患者は、HBV感染から完全に回復するが、他の約5~10%は、ウイルスを除去せず、進行して無症候キャリアになる、または肝硬変もしくは肝臓がんを招く可能性がある慢性肝炎を発症する。稀に、一部の患者は、劇症肝炎を発生し、死亡する場合がある。持続または慢性HBV感染は、ヒトにおいて最もよく見られる持続ウイルス感染の中に入る。今日、世界中の3億5千万人超の人々が、HBVに持続感染していると推定されている。これらの大部分は、東アジアおよびサハラ以南のアフリカにおり、そこでは、慢性肝疾患および肝臓がんの随伴合併症が、最も重要な健康問題である。
【0491】
B型肝炎のための3つの標準的な血液検査(HBs抗原、抗HBs抗体、およびHBc抗原)は、ある人が現在HBVに感染しているか、回復したか、慢性キャリアか、またはHBV感染に感受性かどうかを判定することができる。
【0492】
出典:Hollinger FB, Liang TJ. Hepatitis B Virus. In: Knipe DM et al., eds. Fields Virology, 4th ed., Philadelphia, Lippincott Williams &Wilkins, 2001:2971-3036。
【0493】
慢性もしくは急性HBVを有する、またはキャリアであり得る対象を識別するために、さらなる血清学的検査を行うことができる。HBVに対するいくつかのワクチンが入手可能であり、現在、処置よりもはるかに効果的で、費用効果が高い。
【0494】
現在、急性B型肝炎に利用可能な処置はない。悪心、食欲不振、嘔吐、および他の症状の対症療法が適応され得る。
【0495】
慢性B型肝炎の処置は、HBV DNA、HBeAg、およびHBcAgなどの血清および肝臓中のHBV複製のマーカーをなくすことによって、HBVの伝染および蔓延を予防するために感染性を除去すること、肝疾患の進行を止めること、ならびに臨床および組織像を改善すること、ならびにHCCの発生を予防することを目指している。ALT活性の正常化、肝炎の消散および患者の症状の改善は、通常、これらのウイルス学的変化を伴う。しかし、HBVのために現在利用可能な処置は、めったに治癒的ではない。患者は、疾患を抑制し、伝染を予防するために、無期限に処置を受けなければならない。
【0496】
2つの主なクラスの処置:ウイルスの複製を妨害することによってHBVを抑制または破壊することを目指す抗ウイルス剤;およびヒト免疫系がウイルスに対する防御を開始するのと助けることを目指す免疫モジュレーターがある。ウイルスおよびウイルス抗原の発現強化ならびにTリンパ球の機能抑制を誘導するコルチコステロイドも、アデニンアラビノシド、アシクロビル、またはジデオキシイノシンも、慢性B型肝炎の処置に有益であることは示されていない。
【0497】
現在、慢性B型肝炎は、免疫応答をモジュレートするためにインターフェロンで処置される。唯一認可されているものは、インターフェロン-α-2aおよびインターフェロン-α-2bである。インターフェロンは、抗ウイルス効果、免疫調節効果、および抗増殖効果を含む多様な特性を示す。インターフェロンは、T細胞のヘルパー活性を高め、Bリンパ球の成熟を引き起こし、サプレッサーT細胞を阻害し、HLA I型の発現を高める。インターフェロン療法に適格であるためには、患者は、少なくとも6ヶ月間記録された感染、上昇した肝酵素(ASTおよびALT)、および血中で活発に分裂しているウイルス(HBeAgおよび/またはHBV DNA検査陽性)を有するべきである。急性感染、末期肝硬変または他の大きな医学的問題を有する患者は、処置されるべきでない。インターフェロン-αは、慢性B型肝炎を有する患者の35%に、肝酵素の正常化および活動性感染症に関する3つのマーカーの消失(HBeAg、HBV DNA、およびHBsAg)を伴う疾患の長期持続的寛解をもたらす。ウイルスの完全除去は、一部の慎重に選択された患者において達成される。
【0498】
HBV関連肝硬変を有する患者のためのインターフェロン療法は、特に、血清HBV DNAの量がより大きい患者において、HCCの率を有意に減少させる。HBeAg陽性の代償性肝硬変を有する患者では、インターフェロン療法の後のウイルス学的および生化学的寛解は、生存期間の改善と関連する。慢性HBV感染を有する患者では、インターフェロン-αを用いた処置の後のHBeAgの排除は、改善された臨床転帰と関連する。
【0499】
インターフェロン-α(Intron A(インターフェロン-α-2b), Schering Plough、およびRoferon(インターフェロン-α-2a) Roche Labs)は、慢性B型肝炎のための一次処置である。治療の標準持続期間は、16週間と見なされる。標準レジメンに低レベルのウイルス複製を示す患者は、延長された処置から最も大きく恩恵を被る。
【0500】
ヌクレオチドおよびヌクレオシド類似体は、長い間、HBVの処置のために使用されている。現在利用可能な化合物および開発中の化合物には、ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テルビブジン、テノホビル、エムトリシタビン、クレブジン、リトナビル、ジピボキシル(dipivoxil)、ロブカビル、ファムビル、FTC、N-アセチル-システイン(NAC)、PC1323、テラダイム(theradigm)-HBV、チモシン-アルファ、およびガンシクロビルが含まれる。他のウイルス感染、例えば、HCV、HIVに有用なものもあれば、主としてHBVの処置に有効なものもある。
【0501】
HBV DNAおよびHBeAgの永久消失は、抗ウイルス処置の目標と見なされる。それは、これらの結果が、壊死性炎症性損傷の改善および感染性の低減と関連するからである。
【0502】
B. D型肝炎
肝炎デルタウイルス(HDV)は、活動性HBV感染の存在下でのみ感染性である欠損ウイルスである。HDV感染は、HBVとの同時感染またはHBVキャリアの重感染のいずれかとして起こる。同時感染は、通常、消散する。しかし重感染は、多くの場合に慢性HDV感染および慢性活動性肝炎を引き起こす。両方の種類の感染は、劇症肝炎を引き起こし得る。
【0503】
伝染経路は、HBVと同様である。ワクチン接種による、感受性のヒトの急性および慢性HBV感染の予防は、HDV感染も予防する。ある特定のHBV処置、例えば、アデホビル併用またはアデホビル不在のインターフェロン-アルファは、HDVの処置にも有効である。しかし、HBV-DNAの複製阻害剤であるラミブジンなどの他の処置は、慢性D型肝炎の処置に有用ではない。
【0504】
C. 結核(TB)
結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる疾患である。結核は、原因不明の体重減少、食欲不振、寝汗、発熱、疲労、3週間よりも長い咳嗽、喀血(血液の喀出)、および胸痛を含む症状と関連する。ある人がTB細菌に感染しているかどうかを判定するために使用される2種類の検査:ツベルクリン皮膚検査ならびにQuantiFERON(登録商標)-TB Gold In-Tube検査(QFT-GIT)およびT-SPOT(登録商標).TB検査(T-Spot)を含むTB血液検査がある。しかし、これらの検査は、活動性TB感染を示すものではない。TB感染の診断は、病歴、身体検査、胸部X線撮影、および薬物耐性についての分析を含む診断的微生物培養アッセイの判断を含む。TBの徴候または症状における臨床的に意味のある変化の判断は、当業者の能力の範囲内である。
【0505】
D. がん
がんは、周辺組織に浸潤し、新しい身体部位に転移する傾向のある未分化細胞の増殖によって特徴付けられる多様な悪性新生物のいずれかを指し、かつそのような悪性新生物の成長によって特徴付けられる病的状態も指す。がんは、腫瘍または血液悪性腫瘍の可能性があり、非限定的に、全ての種類のリンパ腫/白血病、がん腫および肉腫を含む。特定の態様では、がんは肝臓がんを含む。特定の態様では、がんは肝細胞がん(HCC)を含む。
【0506】
RECIST基準は、固形腫瘍の測定への標準的なアプローチを提供する、および臨床試験に使用するために腫瘍サイズの変化を客観的に評価するための定義を提供するために使用される、臨床的に受け入れられている疾患評価基準である。そのような基準を、固形腫瘍について処置を受けている個体の応答をモニタリングするためにも、使用することができる。RECIST1.1基準は、参照により本明細書に組み入れられる、Eisenhauer et al., New response evaluation criteria in solid tumors: Revised RECIST guideline (version 1.1). Eur. J. Cancer. 45:228-247, 2009に詳細に論じられている。標的病変についての応答基準には下記が含まれる:
完全奏功(CR):全ての標的病変が消失。いかなる病的リンパ節(標的であろうと非標的であろうと)も、短軸が<10mmに低減していなければならない。
部分奏功(PR):ベースラインの直径和を基準として採用して、標的病変の直径和が少なくとも30%減少。
進行性疾患(PD):試験での最小の直径和(これは、ベースラインの和が試験で最小ならば、それを含む)を基準として採用して、標的病変の直径和が少なくとも20%増加。20%の相対増加に加えて、この和は、少なくとも5mmの絶対増加も示さなければならない。(注:1つまたは複数の新病変の出現も進行と見なされる。)
安定性疾患(SD):試験中の最小の直径和を基準として採用して、PRに適格であるために足る収縮もPDに適格であるために足る増加もない。
【0507】
RECIST1.1基準は、測定可能であり得るが、測定する必要がなく、所望の時点で定性的にのみ判断されるべき病変として定義される非標的病変も考慮する。非標的病変の応答基準には下記が含まれる:
完全奏功(CR):全ての非標的病変の消失および腫瘍マーカーレベルの正常化。全てのリンパ節は、サイズが非病的でなければならない(短軸が<10mm)。
非CR/非PD:1つまたは複数の非標的病変の存続および/または腫瘍マーカーレベルの正常限度を超える維持。
進行性疾患(PD):既存の非標的病変の明らかな進行。1つまたは複数の新病変の出現も進行と見なされる。非標的疾患に基づいて「明らかな進行」を達成するには、標的疾患にSDまたはPRが存在するとしても、全体の腫瘍量が治療の中止に十分値するほど増加しているような、非標的疾患の実質的な増悪という全体レベルでなければならない。1つまたは複数の非標的病変のサイズの中程度の「増加」は、通常、明らかな進行状態に適格とするには不十分である。したがって、標的疾患におけるSDまたはPRにもかかわらず、非標的疾患における変化のみに基づいて全進行と呼称することは、極めて稀である。
【0508】
急性白血病の処置に対する応答の臨床的に許容される基準は、以下の通りである:
完全寛解(CR):患者は、白血病に関係する症状が全て消失していなければならず、好中球の絶対数≧1.0×109/L、血小板数≧100×109/L、ならびに芽球<5%およびアウエル小体なしの正常骨髄を有さなければならない。
血球数回復が不完全な完全寛解(Cri):CEの通りであるが、残存する血小板減少(血小板数<100×109/L)または残存する好中球減少(絶対好中球数<1.0×109/L)を有する。
部分寛解(PR):骨髄芽球が≧50%減少し、骨髄中に5~25%;またはアウエル小体が存在する場合、芽球が≦5%のCR。
処置失敗:処置がCR、Cri、またはPRを達成できなかった。再発。
CR確定後の再発:末梢血中に白血病性芽球の再出現または任意の他の原因(例えば、地固め療法後の骨髄再生)に帰することができない、骨髄中の芽球≧5%、または新しい異形成変化の出現。
【0509】
本発明の組成物および方法の使用は、固形腫瘍を有する対象において、RECIST基準による安定性疾患の定義を満たすために十分な時間、少なくとも安定性疾患を達成することを含む。特定の態様では、本発明の組成物および方法の使用は、固形腫瘍を有する対象において、RECIST基準による安定性疾患の定義を満たすために十分な時間、少なくとも部分奏功を達成することを含む。
【0510】
本発明の組成物および方法の使用は、急性白血病を有する対象において、RECIST基準による安定性疾患の定義を満たすために十分な時間、少なくとも部分寛解を達成することを含む。特定の態様では、本発明の組成物および方法の使用は、急性白血病を有する対象において、RECIST基準による安定性疾患の定義を満たすために十分な時間、不完全な血球数回復を伴う少なくとも完全寛解を達成することを含む。
【0511】
限定的と見なすべきではない以下の実施例により、本発明をさらに例証する。本出願全体にわたり引用された全ての参考文献、特許および公開された特許出願の全内容、ならびに配列表は、参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例0512】
実施例1:iRNAの合成
試薬の入手元
本明細書において試薬の入手元を具体的に示さない場合、そのような試薬は、分子生物学における応用のための品質/純度規格で分子生物学用の試薬の任意の供給業者から得ることができる。
【0513】
転写物
siRNAの設計
ヒトPD-L1/CD274(ヒト:NCBI refseqID NM_001267706; NCBI GeneID: 29126; SEQ ID NO:1)、ならびに毒性学的種PD-L1オルソログ(マウス:XM_006527249(SEQ ID NO:3);ラット、XM_006231248(SEQ ID NO:5);およびカニクイザル:XM_005581779(SEQ ID NO: 7))を標的とするsiRNAのセットを、カスタムRスクリプトおよびPythonスクリプトを使用して設計した。ヒトPD-L1 REFSEQ mRNAは、3349塩基長を有する。siRNA設計のセットについての理論的根拠および方法は、以下の通りである:多数の脊椎動物遺伝子を標的とする20,000超の別個のsiRNA設計からのmRNAのノックダウンの直接測定から導き出される線形モデルを用いて、109位から3349位(コード領域および3'UTR)にわたる全ての可能性のある19マーsiRNAの予測される有効性を決定した。ヒトとカニクイザルとの完全マッチまたは完全に近いマッチを有するPD-L1 siRNAのサブセットを設計した。マウスおよびラットPD-L1オルソログとの完全マッチまたは完全に近いマッチを有するさらなるサブセットを設計した。ヒト、カニクイザル、マウス、およびラットPD-L1オルソログとの完全マッチまたは完全に近いマッチを有するさらなるサブセットを設計した。siRNAの各鎖について、カスタムPythonスクリプトを力まかせ探索に使用して、siRNAと標的種トランスクリプトームにおける全ての潜在的アライメントとの間のミスマッチの数および位置を測定した。ここでアンチセンスオリゴヌクレオチドの2~9位として定義されるシード領域内およびここでアンチセンスオリゴヌクレオチドの10~11位として定義されるsiRNAの切断部位のミスマッチに重みを上乗せした。シードのミスマッチ、切断部位、および下流のアンチセンスの19位に至る他の位置についてミスマッチの相対重みは、2.8;1.2:1であった。1位のミスマッチは無視した。重みつきミスマッチの各値を合計することによって、各鎖について特異性スコアを計算した。ヒトおよびカニクイザルにおけるアンチセンススコアが≧3.0であり、予測される有効性が、PD-L1転写物の≧70%のノックダウンであったsiRNAを優先した。
【0514】
非修飾PD-L1センス配列およびアンチセンス鎖配列の詳細なリストを表3に示す。修飾PD-L1センス配列およびアンチセンス鎖配列の詳細なリストを表5に示す。
【0515】
siRNAの合成
Mermade 192合成装置(BioAutomation)を用いて、固体支持体が媒介するホスホロアミダイト化学反応を使用して、PD-L1のsiRNA配列を1μmolスケールで合成した。固体支持体は、カスタムGalNAcリガンドまたはユニバーサル固体支持体(AM biochemical)を負荷した制御孔ガラス(500A)であった。補助的合成試薬である2'-F-メチルRNA、2'-O-メチルRNAおよびデオキシホスホロアミダイトを、Thermo-Fisher(登録商標)(Milwaukee, WI)およびHongene(China)から得た。2'F2'-O-メチル、GNA(グリコール核酸)、5'ホスフェートおよび他の修飾を、対応するホスホロアミダイトを使用して導入する。3'GalNAcコンジュゲート型一本鎖の合成は、GalNAc修飾CPG支持体上で行った。カスタムCPGユニバーサル固体支持体を、アンチセンス一本鎖の合成のために使用した。全てのホスホロアミダイト(アセトニトリル中100mM)のための結合時間は、活性化剤として5-エチルチオ-1H-テトラゾール(ETT)(アセトニトリル中0.6M)を採用して、5分である。3-((ジメチルアミノ-メチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT、Chemgenes(登録商標)(Wilmington, MA, USA)から入手)の50mM無水アセトニトリル/ピリジン(1:1 v/v)溶液を使用して、ホスホロチオエート結合を生成させた。酸化時間は3分であった。DMT基を最終的に除去して(「DMTオフ」)全ての配列を合成した。
【0516】
固相合成が完了すると、オリゴリボヌクレオチドを固体支持体から切断し、水性メチルアミン試薬200μLを使用して、密封深型96ウェルプレート中で60℃で20分間脱保護した。tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基で保護されている2'リボ残基(2'-OH)を含有する配列について、第2の工程の脱保護を、TEA.3HF(トリエチルアミン三フッ化水素酸塩)試薬を使用して行う。メチルアミン脱保護溶液に、ジメチルスルホキシド(DMSO)200uLおよびTEA.3HF試薬300ulを添加し、この溶液を60℃で追加的に20分間インキュベートした。切断および脱保護工程の終わりに、合成プレートを室温に戻し、アセトニトリル:エタノール混合物(9:1)1mLの添加によって沈殿させる。プレートを-80Cで2時間冷却し、マルチチャネルピペットの助けを借りて上清を慎重にデカンテーションした。オリゴヌクレオチドのペレットを20mM NaOAc緩衝液中に再懸濁した。A905オートサンプラーおよびFrac 950フラクションコレクターを備えるAKTA(登録商標)Purifierシステム上の5mLのHiTrap(登録商標)サイズ排除カラム(GE Healthcare)を使用してそれを脱塩する。脱塩した試料を96ウェルプレート中に収集する。各配列からの試料をLC-MSによって分析して、同一性を確認し、UV(260nm)により定量し、IEXクロマトグラフィーにより試料のセットを選択して純度を決定した。
【0517】
Tecan(登録商標)のリキッドハンドリングロボットを用いてPD-L1一本鎖のアニーリングを行った。センス一本鎖とアンチセンス一本鎖との等モル混合物を混ぜ、96ウェルプレート中でアニーリングした。相補的一本鎖を混ぜた後、96ウェルプレートを堅く密封し、乾燥器に入れて100℃で10分間加熱し、2~3時間かけてゆっくりと室温に戻した。各二重鎖の濃度を、1×PBS中に10μMとなるよう正規化した。
【0518】
実施例2 - インビトロスクリーニング
Dual-Glo(登録商標)アッセイ用の細胞培養およびプラスミド/トランスフェクション:
Cos7細胞(ATCC(登録商標), Manassas, VA)を、10% FBSを補充したDMEM(ATCC(登録商標))中で、5% CO2雰囲気において37℃でコンフルエンス近くまで増殖させ、その後トリプシン処理によってプレートから遊離させた。完全ヒトCD274参照配列(NM_001267706.1)を、約750bp、1.4kb、および1.4kb長のインサートを有する3つの構築物(SEQ ID NO:11~13)を使用してデュアル-ルシフェラーゼpsiCHECK2(商標)ベクターにクローニングした。Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen(商標), Carlsbad CA. cat # 11668-019)を使用して、デュアル-ルシフェラーゼプラスミドをsiRNAと共に細胞15×103個に共トランスフェクトした。96ウェルプレートの各ウェルについて、Lipofectamine(商標)0.2ulを、Opti-MEM(登録商標)14.8ul中のプラスミドベクター10ngおよびsiRNAに添加し、室温で15分間複合体を形成させた。次に、この混合物を、新鮮完全培地80ul中に再懸濁した細胞に添加した。細胞を48時間インキュベートし、その後ルシフェラーゼを測定した。二重鎖の終濃度10nMおよび0.1nMで単一用量実験を行った。
【0519】
Dual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイ
siRNAをトランスフェクトした48時間後に、ホタル(トランスフェクション対照)およびウミシイタケ(Renilla)(PD-L1標的配列と3'UTRで融合したもの)ルシフェラーゼを測定した。まず、細胞から培地を除去した。次に、培地体積と等しいDual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼ試薬75ulを各ウェルに添加し、混合することによって、ホタルルシフェラーゼ活性を測定した。この混合物を室温で30分間インキュベートし、その後、発光(500nm)をSpectramax(登録商標)(Molecular Devices(登録商標))で測定して、ホタルルシフェラーゼのシグナルを検出した。各ウェルに室温のDual-Glo(登録商標)Stop & Glo(登録商標)試薬75ulを添加することによってウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定し、プレートを10~15分間インキュベートし、その後、発光を再び測定して、ウミシイタケルシフェラーゼのシグナルを決定した。Dual-Glo(登録商標)Stop & Glo(登録商標)試薬は、ホタルルシフェラーゼのシグナルを消光し、ウミシイタケルシフェラーゼ反応に関する発光を持続させた。各ウェル内でウミシイタケ(PD-L1)シグナルをホタル(対照)シグナルに対して正規化することによって、siRNA活性を決定した。次に、同じベクターをトランスフェクトされたが、siRNAで処理されなかった、または非標的指向siRNAで処理された細胞に対してsiRNA活性の強度を判断した。全てのトランスフェクションを3つ組で行った。
【0520】
細胞培養およびqPCRのためのトランスフェクション
RKOヒト結腸がん細胞(ATCC(登録商標), Manassas, VA)を、10% FBSを補充したEMEM(ATCC(登録商標))中で、5% CO2雰囲気において37℃でコンフルエンス近くまで増殖させ、その後トリプシン処理によってプレートから遊離させた。
【0521】
384ウェルプレートのウェル1つあたり、Opti-MEM 4.9μlに加えてLipofectamine(商標)RNAiMax(Invitrogen(商標), Carlsbad CA. cat # 13778-150)0.1μlをsiRNA二重鎖5μlに添加し、室温で15分間インキュベートすることによって細胞にトランスフェクトした。次に、細胞約5×103個を含有するDMEM 40μlをsiRNA混合物に添加した。細胞を24時間インキュベートし、その後RNAを精製した。二重鎖の終濃度10nMおよび0.1nMで単一用量実験を行った。
【0522】
DYNABEADS(登録商標)mRNA単離キットを使用する総RNAの単離
DYNABEADs(登録商標)(Invitrogen(商標), cat#61012)を使用するBioTek-EL406プラットフォームを用いる自動化プロトコールを使用して、RNAを単離した。手短に言えば、溶解/結合緩衝液50μlおよび磁気ビーズ3μlを含有する溶解緩衝液25μlを、細胞を有するプレートに添加した。プレートを電磁振盪機に載せて室温で10分間インキュベートし、次に磁気ビーズを捕捉し、上清を除去した。次に、ビーズに結合したRNAを洗浄緩衝液A 150μlで2回洗浄し、洗浄緩衝液Bで1回洗浄した。次に、ビーズを溶離緩衝液150μlで洗浄し、再捕捉し、上清を除去した。
【0523】
ABI(商標)高能力cDNA逆転写キット(Applied Biosystems(登録商標), Foster City, CA, Cat #4368813)を使用するcDNA合成
1反応あたり、10×緩衝液1μl、25×dNTP 0.4μl、10×ランダムプライマー1μl、逆転写酵素0.5μl、RNアーゼ阻害剤0.5μlおよびH2O 6.6μlを含有するマスターミックス10μlを、上で単離されたRNAに添加した。プレートを密封し、混合し、電磁振盪機上で室温で10分間、続いて37℃で2時間インキュベートした。次に、プレートを81℃で5分間インキュベートした。
【0524】
リアルタイムPCR
384ウェルプレート(Roche cat # 04887301001)の各ウェルあたり、GAPDH TaqMan(登録商標)プローブ(Hs99999905)0.5μl、CD274プローブ(Hs01125301_m1, CD274)0.5μlおよびLightcycler(登録商標)480プローブマスターミックス(Roche Cat # 04887301001)5μlを含有するマスターミックスにcDNA 2μlを添加した。ΔΔCt(RQ)アッセイを使用してLightCycler(登録商標)480リアルタイムPCRシステム(Roche)においてリアルタイムPCRを行った。各二重鎖を4つの独立したトランスフェクションにおいて検査した。
【0525】
相対変化倍率を計算するために、ΔΔCt法を使用してリアルタイムのデータを分析し、10nM AD-1955をトランスフェクトされた細胞、または模擬トランスフェクトされた細胞を用いて行ったアッセイに対して正規化した。
【0526】
(表2)核酸配列の表示に使用されたヌクレオチドモノマーの略語。これらのモノマーがオリゴヌクレオチド中に存在する場合、5'-3'-ホスホジエステル結合によって相互に連結されていることが理解されよう。
【0527】
(表3)PD-L1 dsRNAの非修飾センスおよびアンチセンス鎖配列
【0528】
(表4)CD274 Dual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼおよびqPCRのデータ
データを非標的指向対照に対する残留メッセンジャーのパーセントとして表現する。
【0529】
【0530】
等価物
当業者は、本明細書に記載の特定の態様および方法の多くの等価物を認識している、または単なる日常的な実験を用いて確認することができる。そのような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
ヌクレオチド修飾のうちの少なくとも1つが、デオキシ-ヌクレオチド、3'末端デオキシ-チミン(dT)ヌクレオチド、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ-修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、アンロックドヌクレオチド、配座固定ヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ-修飾ヌクレオチド、2'-O-アリル-修飾ヌクレオチド、2'-C-アルキル-修飾ヌクレオチド、2'-ヒドロキシル-修飾ヌクレオチド、2'-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2'-O-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミデート、非天然塩基を含むヌクレオチド、テトラヒドロピラン修飾ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5'-ホスフェートを含むヌクレオチド、および5'-ホスフェートミミックを含むヌクレオチドからなる群より選択される、請求項1記載の二本鎖リボ核酸分子。