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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033863
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】タペンタドールの非経口的投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20220222BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220222BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220222BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K45/00
A61P25/04
A61K9/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021195330
(22)【出願日】2021-12-01
(62)【分割の表示】P 2019091047の分割
【原出願日】2012-03-02
(31)【優先権主張番号】61/449,317
(32)【優先日】2011-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】11003602.7
(32)【優先日】2011-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】390035404
【氏名又は名称】グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】インゲルブレヒト・サビーネ・カリーネ・カトリーン
(72)【発明者】
【氏名】エンブレヒツ・ローガー・カロルス・アウグスタ
(72)【発明者】
【氏名】ヴュルステン・エーファ
(72)【発明者】
【氏名】シーネ・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シラー・マルク
(72)【発明者】
【氏名】ブロムス-フンケ・ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト・ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ファイル・ウルリヒ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】保存剤を含む医薬製剤で典型的に観察される保存剤に基づく副作用、例えばアレルギー反応を有さず、タペンタドールの非経口投与に好適な医薬組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも5.4のpH値を有する、タペンタドールまたはその生理学的に許容可能な塩の非経口的投与に適した水性の医薬組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5.4のpH値を有する、タペンタドールまたはその生理学的に許容可能な塩の非経口的投与に適合されている水性の医薬組成物。
【請求項2】
局所および/または全身投与に適合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
注射または注入による投与に適合されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
タペンタドールの濃度が組成物の全体積を基準として50mg/mL未満である、請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
さらにバッファーを含む、請求項1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
いずれの保存剤も含まない、請求項1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも0.25オスモル/Lの浸透圧モル濃度を有する、請求項1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
麻酔薬と組み合わせての投与に適合されている、請求項1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の医薬組成物を含む、医薬製剤。
【請求項10】
小児への投与に適合されている、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
デポー製剤である、請求項9または10のいずれか一つに記載の製剤。
【請求項12】
疼痛の治療に使用するための、請求項1~8のいずれか1つに記載の組成物、または請求項9~11のいずれか1つに記載の製剤。
【請求項13】
疼痛が糖尿病性の神経因性疼痛、癌性疼痛、周術期のおよび/または術後の疼痛から成る群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
投与が、筋肉内、静脈内、皮下、硬膜外、髄腔内、脊髄内および/または脳室内に行われる、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
投与されるべきタペンタドールの用量が患者によって調節される、請求項12~14のいずれか1つに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも4.0、好ましくは少なくとも5.4のpH値を有する、タペンタドールまたはその生理学的に許容可能な塩の非経口的投与に適した水性の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タペンタドールはμ-オピオイド受容体のアゴニストとしておよびノレピネフリン再取り込み阻害剤としてデュアル・モードの作用を有する中枢作用性の鎮痛薬である(非特許文献1参照)。ヒトにおいて、組み換え的に産生されたμ-オピオイド受容体に対するタペンタドールの親和性は、モルヒネのそれの18分の1である。しかしながら、臨床研究は、タペンタドールの疼痛緩和作用が、モルヒネのそれの2分の1から3分の1に過ぎないことを明らかにした。組み換えμ-オピオイド受容体に対して同時に18分の1に低下した親和性と併せてほんのわずかだけ低下した鎮痛効力は、タペンタドールのノルアドレナリン輸送体阻害特性も、その鎮痛効力に寄与していることを示している。したがって、タペンタドールは、純粋なμ-オピオイド受容体拮抗剤のそれと同様の鎮痛効力を有するが、μ-オピオイド受容体に関係する副作用がより少ないと仮定することができる。化合物は、その遊離塩基の形態でまたは塩もしくは溶媒和物として使用することができる。遊離塩基の製造は、例えば特許文献1から公知である。タペンタドールの製剤は先行技術、例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および特許文献10から公知である。
【0003】
しかしながら、タペンタドールを含むこれらの公知の製剤は全ての点では満足でなく、既知の製剤と比較して有利な点を有する医薬製剤への需要が存在する。特に、タペンタドールの非経口投与に適合された医薬組成物への需要が存在する。
【0004】
最終製品中の活性成分の安定性は製剤化する者にとっての一番の関心事である。一般に、原体は固体の製剤より水性溶媒においてそれほど安定しておらず、液体の水性製剤、例えば、液剤、懸濁剤および乳剤を適切に安定させて保存することが重要である。酸塩基反応、酸もしくは塩基触媒作用、酸化および還元が、これらの製品では生じる場合がある。これらの反応は、原体-成分相互作用、成分-成分相互作用又は容器-製品相互作用から発生し得る。pH感受性化合物については、これらの相互作用のうちのいずれもがpHを変え得るものであり、析出を引き起こし得る。
【0005】
酸化に不安定な原体またはビタミン、精油およびほとんどすべての油脂は、自己酸化によって酸化し得る。そのような反応は熱、光、過酸化物または他の不安定な化合物または、重金属、例えば銅または鉄によって開始され得る。
【0006】
微量金属の影響は、キレート剤、例えばEDTAまたはそのナトリウムもしくはカルシウム塩を使用することにより最小限にすることができる。酸化防止剤は、それらが形成されるにつれ、遊離基と急速に反応することにより、酸化を防ぐかまたは遅らせることができる(クエンチング)。一般的な酸化防止剤には、没食子酸のプロピル、オクチルおよびドデシルエステル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウムもしくはナトリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロールまたはビタミンEが含まれる。
【0007】
化学的および物理的な分解に対する医薬調製物の安定化に加えて、液体および半固形調製物、特に多回用投薬単位調製物は、通常、微生物汚染から保護されていなければならない。固形調製物とは対照的に、水性の液剤、シロップ剤、乳剤および懸濁剤は、多くの場合に微生物、例えば、かび、酵母および細菌(例えばシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas Aeruginosa)、大腸菌(E.Coli)、サルモネラ(Salmonella spp.)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger))に対して優れた培養培地を供給してしまう。これらの微生物による汚染は、製造の間に、または投与量を多回投与用製剤から取る際に生じ得る。十分な量の水が製剤中にある場合に、微生物の増殖が起こり得る。
【0008】
眼用のおよび注射可能な調製物は、典型的には、オートクレーブ滅菌またはろ過により殺菌される。しかしながら、それらのうちの多くは、それらの一定の有効期間にわたって無菌状態を維持するために、特に多回用投薬単位調製物に関しては、抗菌性保存剤の存在を必要とする。
【0009】
保存剤が必要な場合、その選択はいくつかの考察に基づき、特に、使用する部位が内服用か外用か、眼用かに基づく(さらなる詳細は、例えば非特許文献2を参照することができる)。
【0010】
多くの液体製剤および半固形製剤、特に多回用投薬単位製剤は、保存剤としてパラベン、例えばメチルパラベン(メチル-4-ヒドロキシベンゾアート)およびプロピルパラベン(プロピル-4-ヒドロキシベンゾアート)を含んでいる。
【0011】
医薬製剤における賦形剤および添加剤は多数なため、これらの製品が投与された際に過敏な患者に立ちはだかるリスクを減少させるために、全ての成分が容器上に列挙されることが推奨される。
【0012】
他の商品化された医薬製剤は、保存剤としてソルビン酸またはそのカリウム塩(例えばMobilat(登録商標))または塩化ベンザルコニウムを含む。最近、塩化ベンザルコニウムとソルビン酸カリウムによって引き起こされた粘膜の損傷に起因する副作用が報告された(非特許文献3参照)。局所的な眼の治療における保存剤の過敏反応に関する限り、第四級アンモニウム(塩化ベンザルコニウム)は一般に刺激性の毒性反応に関連し、一方、有機水銀化合物(チメロサール)およびアルコール(クロロブタノール)はそれぞれアレルギー反応と高い関連性を有する(非特許文献4参照)。パラベンは、皮膚暴露に伴う接触過敏症の多くの場合に関与していることが示されており(非特許文献5参照)、そして、弱いエストロゲン様活性を発揮することも報告されている(非特許文献6および非特許文献7参照)。
【0013】
既知の保存剤がこれらの望ましくない副作用を有するため、保存剤の非存在下においてまたは少なくとも比較的低い量の保存剤の存在下において十分な有効期間を示す、タペンタドールの非経口投与に適合された医薬組成物を提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第693475号明細書
【特許文献2】WO 02/067651
【特許文献3】WO 03/035053
【特許文献4】WO 2006/002886
【特許文献5】WO 2007/128412
【特許文献6】WO 2007/128413
【特許文献7】WO 2008/110323
【特許文献8】WO 2009/067703
【特許文献9】WO 2009/092601
【特許文献10】US 2010-272815
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】T.M. Tzschentke et al., Drugs of the future, 2006, 12, 1053-1061
【非特許文献2】Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition, Lippincott Williams & Wilkins, 2005
【非特許文献3】C.Y. Ho et al., Am J Rhinol. 2008, 22(2), 125-9
【非特許文献4】J. Hong et al., Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2009, 9(5), 447-53
【非特許文献5】M.G. Soni et al., Food Chem Toxicol. 2001, 39(6), 513-32
【非特許文献6】S. Oishi, Food Chem Toxicol. 2002, 40(12), 1807-13
【非特許文献7】M.G. Soni et al., Food Chem Toxicol. 2005, 43(7), 985-015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、先行技術の医薬製剤に対して有利な点を有する、タペンタドールの医薬製剤を提供することを目的とする。前記医薬製剤は、保存剤を含む医薬製剤で典型的に観察される保存剤に基づく副作用、例えばアレルギー反応を有するべきではなく、タペンタドールの非経口投与に好適であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、特許請求の範囲の主題によって達成された。
【0018】
タペンタドールそれ自体が、保存剤特性を示し、それ故に比較的不安定な組成物、水性の液体組成物もしくは半固形組成物を製剤化する場合、一定の有効期間を達成するために、保存剤を完全に省くか、あるいは少なくとも、比較的低い量で存在させることができることが見出された。
【0019】
驚くべきことに、タペンタドールの抗菌活性がpH値に依存することが見出された。
【0020】
さらに、驚くべきことに、脳室内投与および髄腔内投与の組み合わせが疼痛の治療に関して相乗効果を示すことが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】痛覚過敏抑制活性に関する結果を示す。
図2】退避反応の絶対数を各実験に関して示す。
図3】痛覚過敏抑制活性に関する結果を示す。
図4】退避反応の絶対数を各実験に関して示す。
図5】痛覚過敏抑制活性に関する結果を示す。
図6】退避反応の絶対数を各実験に関して示す。
図7】髄腔内および脳室内の併用投与のED50計算値と、髄腔内投与および脳室内投与のED 50値に基づいて計算した理論的な相加効果との比較
図8】カラゲーナン誘発疼痛モデルにおけるタペンタドールとリドカインの組み合わせのED50
図9】CFA誘発炎症性疼痛モデルにおけるタペンタドールとリドカインの組み合わせのED50
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の態様は、少なくとも4.0、好ましくは少なくとも4.5、さらに好ましくは少なくとも5.0、さらに一層好ましくは少なくとも5.4のpH値を有する、タペンタドールまたはその生理学的に許容可能な塩の非経口投与に適合された水性の医薬組成物に関する。
【0023】
本明細書の目的において、「タペンタドール」という語句には、遊離塩基((1R,2R)-3-(3-ジメチルアミノ-1-エチル-2-メチル-プロピル)-フェノール)ならびにその任意の生理学的に許容可能な塩、特に塩酸塩(((1R,2R)-3-(3-ジメチルアミノ-1-エチル-2-メチル-プロピル)-フェノール塩酸塩)が含まれる。したがって、特に明記しない限り、用語「タペンタドール」は遊離塩基だけでなく任意の生理学的に許容可能な塩も表す。さらに、特に明記しない限り、全ての量、含有量および濃度はタペンタドール遊離塩基に対する等量である。
【0024】
好ましくは、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、0.0001~20.0重量%、より好ましくは0.001~15.0重量%、より好ましくは0.005~10重量%、より一層好ましくは0.01~5.0重量%、最も好ましくは0.05~3.0重量%、特に0.1~2.0重量%の範囲内にある。
【0025】
好ましい実施形態において、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、0.05~5重量%、より好ましくは0.1~4重量%、さらにより好ましくは0.5~3.0重量%、より一層好ましくは1.0~2.5重量%、最も好ましくは1.25~2.25重量%、特に1.5~2.0重量%の範囲内にある。
【0026】
好ましい実施形態において、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、0.001~2.5重量%、より好ましくは0.005~1.0重量%、さらにより好ましくは0.01~0.75重量%、より一層好ましくは0.025~0.5重量%、最も好ましくは0.05~0.25重量%、特に0.075~0.15重量%の範囲内にある。
【0027】
好ましい実施形態において、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、0.01~3.0重量%、より好ましくは0.05~2.8重量%、さらにより好ましくは0.1~2.6重量%、より一層好ましくは0.2~2.4重量%、最も好ましくは0.3~2.2重量%、特に0.4~2.0重量%の範囲内にある。
【0028】
タペンタドールの抗菌効果、その保存剤効果は、pH値の相関的要素であることが見出された。従って、特定のpH値では、タペンタドールの特定の最小濃度が所望の保存効果を達成するために既に十分であるが、一方で、別のpH値では、同一の保存効果を達成するためにはタペンタドールの別の最小濃度が必要である。特定のpH値のためのこの最小濃度は、日常的な実験作業によって決定することができる。
【0029】
好ましくは、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、100mg/mL以下、より好ましくは75mg/mL以下、さらにより好ましくは50mg/mL以下、より一層好ましくは40mg/mL以下、最も好ましくは35mg/mL以下、特に30mg/mL以下である。
【0030】
好ましくは、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、0.01~100mg/mLの範囲内、より好ましくは0.05~75mg/mLの範囲内、さらにより好ましくは0.1~50mg/mLの範囲内、より一層好ましくは0.25~30mg/mLの範囲内、最も好ましくは0.4~25mg/mLの範囲内、特に0.5~20mg/mLの範囲内である。
【0031】
好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、25mg/mL未満、より好ましくは20mg/mL未満、さらにより好ましくは最大で19mg/mL、より一層好ましくは最大で18mg/mL、最も好ましくは最大で17mg/mL、特に最大で16mg/mLである。
【0032】
好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、17.5±6mg/mL、より好ましくは17.5±5mg/mL、より好ましくは17.5±4mg/mL、より一層好ましくは17.5±3mg/mL、最も好ましくは17.5±2mg/mL、特に17.5±1mg/mLの範囲内である。
【0033】
別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、15±6mg/mL、より好ましくは15±5mg/mL、さらにより好ましくは15±4mg/mL、より一層好ましくは15±3mg/mL、最も好ましくは15±2mg/mL、特に15±1mg/mLの範囲内である。
【0034】
別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、12.5±6mg/mL、より好ましくは12.5±5mg/mL、さらにより好ましくは12.5±4mg/mL、より一層好ましくは12.5±3mg/mL、最も好ましくは12.5±2mg/mL、特に12.5±1mg/mLの範囲内である。
【0035】
別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、10±6mg/mL、より好ましくは10±5mg/mL、さらにより好ましくは10±4mg/mL、より一層好ましくは10±3mg/mL、最も好ましくは10±2mg/mL、特に10±1mg/mLの範囲内である。
【0036】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、5±4mg/mL、より好ましくは5±3mg/mL、さらにより好ましくは5±2mg/mL、より一層好ましくは5±1.5mg/mL、最も好ましくは5±1mg/mL、特に5±0.5mg/mLの範囲内である。
【0037】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、0.01~10mgmg/mL、より好ましくは0.025~7.5mg/mL、さらにより好ましくは0.05~5.0mg/mL、より一層好ましくは0.1~3.0mg/mL、最も好ましくは0.25~2.0mg/mL、特に0.5~1.5mg/mLの範囲内である。
【0038】
好ましい実施形態では、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、1.0±0.9mg/mL、より好ましくは1.0±0.8mg/mL、さらにより好ましくは1.0±0.7mg/mL、更に好ましくは1.0±0.4mg/mL、より一層好ましくは1.0±0.5mg/mL、最も好ましくは1.0±0.4mg/mL、特に1.0±0.3mg/mLの範囲内である。
【0039】
好ましい実施形態では、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、5.0±4.5mg/mL、より好ましくは5.0±4.0mg/mL、さらにより好ましくは5.0±3.5mg/mL、更に好ましくは5.0±3.0mg/mL、より一層好ましくは5.0±2.5mg/mL、最も好ましくは5.0±2.0mg/mL、特に5.0±1.5mg/mLの範囲内である。
【0040】
好ましい実施形態では、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、10±9mg/mL、より好ましくは10±8mg/mL、さらにより好ましくは10±7mg/mL、更に好ましくは10±6mg/mL、より一層好ましくは10±5mg/mL、最も好ましくは10±4mg/mL、特に10±3mg/mLの範囲内である。
【0041】
好ましい実施形態では、タペンタドールの含有量は、組成物の全重量を基準として、15±14mg/mL、より好ましくは15±12mg/mL、さらにより好ましくは15±10mg/mL、更に好ましくは15±8mg/mL、より一層好ましくは15±6mg/mL、最も好ましくは15±4mg/mL、特に15±2mg/mLの範囲内である。
【0042】
用語「医薬組成物」には、ヒトまたは動物に投与されるためにカスタマイズされたあらゆる医薬調製物もしくは製剤が含まれる。好ましくは、組成物は水性溶液である。
【0043】
好ましくは、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、よりさらに好ましくは少なくとも70重量%、より一層好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも85重量%、特に少なくとも90重量%である。
【0044】
好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも92重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、より一層好ましくは少なくとも96重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%である。
【0045】
別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、90±9重量%、より好ましくは90±8重量%、よりさらに好ましくは90±7重量%、より一層好ましくは90±6重量%、最も好ましくは90±5重量%、特に90±2.5重量%の範囲内にある。
【0046】
さらに別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、95±4.5重量%、より好ましくは95±4重量%、よりさらに好ましくは95±3.5重量%、より一層好ましくは95±3重量%、最も好ましくは95±2重量%、特に95±1重量%の範囲内にある。
【0047】
さらに別の好ましい実施形態では、組成物の含水率は、組成物の全重量を基準として、98±1.9重量%、より好ましくは98±1.5重量%、よりさらに好ましくは98±1.25重量%、より一層好ましくは98±1.0重量%、最も好ましくは98±0.75重量%、特に98±0.5重量%の範囲内にある。
【0048】
水に加えて、本発明による組成物はさらなる溶剤を含んでいてもよい。
【0049】
さらなる好適な溶剤には、すべてのタイプの生理学的に許容可能な親水性溶剤、好ましくはエタノール、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオールおよびマクロゴール300から成る群から選択される親水性溶剤が含まれる。
【0050】
好ましい一実施形態において、本発明の組成物は局所投与に適している。この点に関して、局所投与には、障害の部位と同一の部位、および/または少なくとも近くに位置する部位への組成物のあらゆる投与が含まれる。特に、局所投与には所望の作用部位にタペンタドールを直接送達するという目的があり、それによって全身性副作用を回避する。
【0051】
好ましくは、タペンタドールの全身濃度は治療量以下の濃度で維持され、すなわち、治療中に、タペンタドールの全身濃度は、薬剤が単に全身的にのみ投与された場合に治療効果を示すために必要なレベルに達しない。
【0052】
別の好ましい一実施形態において、本発明の組成物は全身投与に適している。この実施形態では、組成物の投与は、好ましくは、タペンタドールの全身作用を誘導する目的を有する。
【0053】
本発明による組成物は、非経口投与、好ましくは注入または注射による非経口投与に適している。
【0054】
それぞれ、注入および注射液剤のための高品質の要件を満たすためには、組成物は生理学的に許容可能な浸透圧モル濃度および生理学的に許容可能なpHを示さなければならない。
【0055】
等張塩化ナトリウム溶液(食塩水)は、例えば、0.9重量%の塩化ナトリウムを含み、0.308オスモル/Lの浸透圧モル濃度を示し、これは血液の浸透圧モル濃度に近い。
【0056】
好ましくは、組成物は、少なくとも0.22オスモル/L、より好ましくは少なくとも0.23オスモル/L、よりさらに好ましくは少なくとも0.24オスモル/L、より一層好ましくは少なくとも0.25オスモル/L、最も好ましくは少なくとも0.26オスモル/L、特に少なくとも0.27オスモル/Lの浸透圧モル濃度を有する。
【0057】
好ましい実施態様において、組成物は、最大で0.36オスモル/L、より好ましくは最大で0.34オスモル/L、よりさらに好ましくは最大で0.32オスモル/L、より一層好ましくは最大で0.31オスモル/L、最も好ましくは最大で0.30オスモル/L、特に最大で0.29オスモル/Lの浸透圧モル濃度を有する。
【0058】
別の好ましい実施態様において、組成物は、0.28±0.08オスモル/L、より好ましくは0.28±0.06オスモル/L、よりさらに好ましくは0.28±0.04オスモル/L、より一層好ましくは0.28±0.03オスモル/L、最も好ましくは0.28±0.02オスモル/L、特に0.28±0.01オスモル/Lの浸透圧モル濃度を有する。
【0059】
組成物の浸透圧モル濃度はタペンタドールの含有量、および場合によりバッファーに依存し、好ましくは、組成物の製造の間に適当量の塩化ナトリウムの添加によって調節される。他の等張化剤、例えばマンニトールまたはソルビトールも、二者択一的にまたは追加的に添加することができる。
【0060】
好ましくは、本発明による組成物はさらに塩化ナトリウムを含む。
【0061】
好ましくは、塩化ナトリウムの含有量は、組成物の全重量を基準として、最大で2.0重量%、より好ましくは最大で1.75重量%、よりさらに好ましくは最大で1.5重量%、より一層好ましくは最大で1.3重量%、最も好ましくは最大で1.1重量%、特に最大で1.0重量%である。
【0062】
好ましくは、塩化ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、0.5mg/mL~25mg/mL、より好ましくは1.0mg/mL~20mg/mL、より一層好ましくは2.0mg/mL~15mg/mL、最も好ましくは2.5mg/mL~12mg/mL、特に3mg/mL~10mg/mLの範囲内である。
【0063】
好ましい実施形態では、塩化ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、9.0±8.0mg/mL、より好ましくは9.0±5.0mg/mL、さらに好ましくは9.0±3.0mg/mL、より一層好ましくは9.0±2.0mg/mL、最も好ましくは9.0±1.0mg/mL、特に9.0±0.5mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0064】
別の好ましい実施形態では、塩化ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、8.0±7.0mg/mL、より好ましくは8.0±5.0mg/mL、さらに好ましくは8.0±3.0mg/mL、より一層好ましくは8.0±2.0mg/mL、最も好ましくは8.0±1.0mg/mL、特に8.0±0.5mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0065】
さらに別の好ましい実施形態では、塩化ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、6.0±5.0mg/mL、より好ましくは6.0±4.0mg/mL、さらに好ましくは6.0±3.0mg/mL、より一層好ましくは6.0±2.0mg/mL、最も好ましくは6.0±1.0mg/mL、特に6.0±0.5mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0066】
さらに別の好ましい実施形態では、塩化ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、5.0±4.5mg/mL、より好ましくは5.0±4.0mg/mL、さらに好ましくは5.0±3.5mg/mL、より一層好ましくは5.0±2.0mg/mL、最も好ましくは5.0±1.0mg/mL、特に5.0±0.5mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0067】
好ましい実施形態では、組成物は少なくとも4.00の、少なくとも4.25の、少なくとも4.50の、少なくとも4.75の、少なくとも5.00の、少なくとも5.25の、または少なくとも5.50のpH値を有し;より好ましくは少なくとも5.75、さらに好ましくは少なくとも6.00、より一層好ましくは少なくとも6.25、さらに好ましくは少なくとも6.50、最も好ましくは少なくとも6.75、特に少なくとも7.00のpH値を有する。
【0068】
別の好ましい実施形態では、組成物は最大で7.00、より好ましくは最大で6.75、さらに好ましくは最大で6.50、より一層好ましくは最大で6.25、一層好ましくは最大で6.00のpH値を有する。
【0069】
好ましくは、組成物は5.4~6.5、より好ましくは5.5~6.3、さらに好ましくは5.4~6.0の範囲内のpH値を有する。
【0070】
好ましい実施形態では、前記組成物は、5.0±1.0、より好ましくは5.0±0.9、よりさらに好ましくは5.0±0.8、より一層好ましくは5.0±0.7、さらに一層好ましくは5.0±0.6又は5.0±0.5、最も好ましくは5.0±0.4又は5.0±0.3、そして特に5.0±0.2又は5.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0071】
好ましい実施形態では、前記組成物は、5.5±1.0、より好ましくは5.5±0.9、よりさらに好ましくは5.5±0.8、より一層好ましくは5.5±0.7、さらに一層好ましくは5.5±0.6又は5.5±0.5、最も好ましくは5.5±0.4又は5.5±0.3、そして特に5.5±0.2又は5.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0072】
好ましい実施形態では、組成物は、5.7±0.3、より好ましくは5.7±0.25、さらに好ましくは、5.7±0.2、最も好ましくは5.7±0.15、そして特に5.7±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0073】
好ましい実施形態では、組成物は、6.0±0.6、より好ましくは6.0±0.5、さらに好ましくは6.0±0.4、さらに一層好ましくは6.0±0.3、最も好ましくは6.0±0.2、そして特に6.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0074】
好ましい実施形態では、前記組成物は、6.5±1.0、より好ましくは6.5±0.9、よりさらに好ましくは6.5±0.8、より一層好ましくは6.5±0.7、さらに一層好ましくは6.5±0.6又は6.5±0.5、最も好ましくは6.5±0.4又は6.5±0.3、そして特に6.5±0.2又は6.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0075】
好ましい実施形態では、前記組成物は、7.0±1.4又は7.0±1.3、より好ましくは7.0±1.2又は7.0±1.1、よりさらに好ましくは7.0±1.0又は7.0±0.9、より一層好ましくは7.0±0.8又は7.0±0.7、さらに一層好ましくは7.0±0.6又は7.0±0.5、最も好ましくは7.0±0.4又は7.0±0.3、そして特に7.0±0.2又は7.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0076】
好ましい実施形態では、前記組成物は、7.5±1.4又は7.5±1.3、より好ましくは7.5±1.2又は7.5±1.1、よりさらに好ましくは7.5±1.0又は7.5±0.9、より一層好ましくは7.5±0.8又は7.5±0.7、さらに一層好ましくは7.5±0.6又は7.5±0.5、最も好ましくは7.5±0.4又は7.5±0.3、そして特に7.5±0.2又は7.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0077】
好ましい実施形態では、前記組成物は、8.0±1.4又は8.0±1.3、より好ましくは8.0±1.2又は8.0±1.1、よりさらに好ましくは8.0±1.0又は8.0±0.9、より一層好ましくは8.0±0.8又は8.0±0.7、さらに一層好ましくは8.0±0.6又は8.0±0.5、最も好ましくは8.0±0.4又は8.0±0.3、そして特に8.0±0.2又は8.0±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0078】
好ましい実施形態では、前記組成物は、8.5±1.4又は8.5±1.3、より好ましくは8.5±1.2又は8.5±1.1、よりさらに好ましくは8.5±1.0又は8.5±0.9、より一層好ましくは8.5±0.8又は8.5±0.7、さらに一層好ましくは8.5±0.6又は8.5±0.5、最も好ましくは8.5±0.4又は8.5±0.3、そして特に8.5±0.2又は8.5±0.1の範囲内にpH値を有する。
【0079】
驚くべきことに、タペンタドールがpH依存性の抗菌効果を示すことが見出された。したがって、本発明による組成物のpH値は、好ましくは、タペンタドールの抗菌効果を最大限にする生理学的に許容可能な範囲内の値に調節される。
【0080】
好ましくは、本発明による組成物は緩衝されており、すなわち、1種またはそれ以上のバッファーおよび緩衝系(すなわち、共役酸‐塩基対)をそれぞれ含む。好ましい緩衝系は、以下の酸に由来する:有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、マンデル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸;または無機酸、例えばリン酸。緩衝系が上記酸のいずれかに由来する場合、緩衝系は前記酸およびその共役塩基から構成される。酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸またはリン酸に由来した緩衝系が、特に好ましい。
【0081】
多プロトン酸が1を越える緩衝系を形成できることは、当業者にはよく知られている。例えば、クエン酸は、共役酸-塩基対、クエン酸-二水素シトレート、二水素シトレート-水素シトレートおよび水素シトレート-シトレートを形成するような三塩基酸である。すなわち、クエン酸、二水素シトレートおよび水素シトレートのいずれも、共役塩基を有する緩衝系の酸であることができる。本明細書の目的において、「バッファーおよび緩衝系は、それぞれ」という表現は、好ましくは酸およびその共役塩基の両方の量を表す。さらに、緩衝系、例えば共役系クエン酸/クエン酸二水素ナトリウムは、クエン酸および適当な量の水酸化ナトリウムを添加するか、またはクエン酸およびそのようなものとしてのクエン酸二水素ナトリウムを添加することによって構築できることが、当業者にはよく知られている。
【0082】
従って、組成物が適切な量のタペンタドールをその塩酸塩の形態で含む場合、クエン酸ナトリウムまたはその二水和物を添加することによって緩衝系を構築することができる。
【0083】
好ましくは、それぞれ、バッファーおよび緩衝系の濃度、好ましくはクエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムの濃度を調節することにより、十分な緩衝能力を付与する。
【0084】
好ましい実施態様において、それぞれ、バッファーおよび緩衝系の含有量、好ましくは、クエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムの含有量は、組成物の全重量を基準として、0.0001~5.0重量%、より好ましくは0.0002~2.5重量%、さらに好ましくは0.0005~1.0重量%、より一層好ましくは0.001~0.5重量%、最も好ましくは0.005~0.25重量%、特に0.01~0.1重量%の範囲内にある。
【0085】
別の好ましい実施態様において、それぞれ、バッファーおよび緩衝系の含有量、好ましくは、クエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムの含有量は、組成物の全重量を基準として、0.0001~5.0重量%、より好ましくは0.0002~4.0重量%、さらに好ましくは0.0005~3.0重量%、より一層好ましくは0.001~2.0重量%、最も好ましくは0.005~1.0重量%、特に0.05~0.55重量%の範囲内にある。
【0086】
好ましい実施形態において、それぞれ、バッファーおよび緩衝系は、好ましくは、クエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、1.0±0.6mg/mL、より好ましくは1.0±0.5mg/mL、さらにより好ましくは1.0±0.4mg/mL、より一層好ましくは1.0±0.3mg/mL、最も好ましくは1.0±0.2mg/mL、そして特に1.0±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0087】
別の好ましい実施形態において、それぞれ、バッファーおよび緩衝系は、好ましくは、クエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、0.8±0.6mg/mL、より好ましくは0.8±0.5mg/mL、さらにより好ましくは0.8±0.4mg/mL、より一層好ましくは0.8±0.3mg/mL、最も好ましくは0.8±0.2mg/mL、そして特に0.8±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0088】
別の好ましい実施形態において、それぞれ、バッファーおよび緩衝系は、好ましくは、クエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、0.6±0.55mg/mL、より好ましくは0.6±0.5mg/mL、さらにより好ましくは0.6±0.4mg/mL、より一層好ましくは0.6±0.3mg/mL、最も好ましくは0.6±0.2mg/mL、そして特に0.6±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0089】
別の好ましい実施形態において、それぞれ、バッファーおよび緩衝系は、好ましくは、クエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、0.5±0.45mg/mL、より好ましくは0.5±0.4mg/mL、さらにより好ましくは0.5±0.35mg/mL、より一層好ましくは0.5±0.3mg/mL、最も好ましくは0.5±0.25mg/mL、そして特に0.5±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0090】
別の好ましい実施形態において、それぞれ、バッファーおよび緩衝系は、好ましくは、クエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、0.4±0.35mg/mL、より好ましくは0.4±0.3mg/mL、さらにより好ましくは0.4±0.25mg/mL、より一層好ましくは0.4±0.2mg/mL、最も好ましくは0.4±0.15mg/mL、そして特に0.4±0.1mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0091】
さらに別の好ましい実施形態において、それぞれ、バッファーおよび緩衝系は、好ましくは、クエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、0.3±0.25mg/mL、より好ましくは0.3±0.2mg/mL、より一層好ましくは0.3±0.15mg/mL、最も好ましくは0.3±0.1mg/mL、そして特に0.3±0.05mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0092】
さらに別の好ましい実施形態において、それぞれ、バッファーおよび緩衝系は、好ましくは、クエン酸ナトリウムもしくはその二水和物、または酢酸ナトリウムは、組成物の全体積を基準として、0.15±0.14mg/mL、より好ましくは0.15±0.13mg/mL、より一層好ましくは0.15±0.12mg/mL、最も好ましくは0.15±0.10mg/mL、そして特に0.15±0.05mg/mLの範囲内の濃度を有する。
【0093】
好ましくは、組成物は保存剤を含まない。明細書の目的において、「保存剤」は、好ましくは、微生物分解または微生物増殖から医薬組成物を保護するために、それらに通常添加される任意の物質を指す。この点に関して、典型的には微生物増殖が本質的な役割を果たし、すなわち、保存剤は、微生物汚染を回避するという主要な目的を果たす。副次的な態様として、活性成分および賦形剤に対する微生物の影響を避けること、すなわち、微生物分解を回避することが望ましいかもしれない。
【0094】
保存剤の代表的な例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロルブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、プロピオン酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、ソルビン酸およびソルビン酸カリウムが含まれる。
【0095】
驚くべきことに、タペンタドールそれ自体が保存剤特性を示し、タペンタドールの抗菌活性が、組成物のpH値に依存することが見出された。
【0096】
タペンタドールの含有量が、その保存剤特性により所望の有効期間または使用中安定性が薬剤自体の存在によって達成できるほど十分に高く、そして組成物が適切なpHを有する場合、当該組成物には保存剤が完全に存在しないことが好ましい。上述のように、タペンタドールの保存剤特性はpH値の相関的要素であり、従って、1つのpH値では、別の保存剤の添加が必要かもしれないが、別のpH値では、それを完全に省略することができる。好ましくは、これらの状況下で、タペンタドールの濃度は、組成物の全体積を基準として、少なくとも1.0mg/mLまたは少なくとも5.0mg/mL、より好ましくは少なくとも10mg/mL、少なくとも12mg/mLまたは少なくとも14mg/mLである。
【0097】
本明細書の目的において、好ましくは、有効期間と使用中安定性とは区別される。有効期間は、好ましくは、医薬組成物の閉じた容器の保管安定性を表す。使用中安定性は、好ましくは、初めて利用された、多回用投薬単位調製物を含む貯蔵容器を表す。典型的には、多回用投薬単位調製物の有効期間は、その使用中安定性よりもはるかに長い。
【0098】
他の好ましい実施態様において、前記組成物はさらに、好ましくは以下からなる群から選択される保存剤を含む:塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロルブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、プロピオン酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、ソルビン酸およびソルビン酸カリウム。
【0099】
驚くべきことに、安息香酸ナトリウムを含む水性のタペンタドール組成物が、パラベンを含む水性のタペンタドール組成物と比較して、全体の分解産物がより少ないことが見出された。
【0100】
したがって、安息香酸ナトリウムは本発明において特に好ましい保存剤である。
【0101】
好ましくは、保存剤、好ましくは安息香酸またはそのナトリウム塩の含有量は、組成物の全重量を基準として、最大で5.0重量%、より好ましくは最大で4.0重量%、よりさらに好ましくは最大で3.0重量%、より一層好ましくは最大で2.0重量%、最も好ましくは最大で1.0重量%、特に最大で0.5重量%である。含有量は、組成物のpH値に依存することができる。
【0102】
好ましい実施形態では、保存剤の含有量は、タペンタドールの非存在下で医薬組成物を、その有効期間に関して、または多回用投薬単位調製物の場合には場合によりその使用中安定性に関して十分に保存するために欧州薬局方に従って必要とされる含有量の、最大で90%、より好ましくは最大で80%、さらにより好ましくは最大で70%、より一層好ましくは最大で60%、最も好ましくは最大で50%、特に最大で40%である。(a)生菌の濃度が7日目までに初期濃度の0.1%以下に減少し;(b)各試験微生物の濃度が28日間の試験期間の残りの間にこれらの指定のレベル以下にある場合、欧州薬局方による十分な保存のための基準を満たす。これらの基準は、実験欄においてより明確に定義されている。
【0103】
好ましくは、本発明による組成物は、欧州薬局方の要件、好ましくは2010年バージョンにおける要件を満たす抗菌ロバストネス(antimicrobial robustness)を示す。好ましくは、抗菌ロバストネスは、S.アウレウス、Ps.エルジノーサ、サルモネラ、C.アルビカンスおよび/またはA.ニガーに対して達成され、7日後にlogが1、好ましくは3減少し、28日後に増加はないという要件を満たす。特に好ましい実施態様において、抗菌ロバストネスは細菌に対して達成され、14日後にlogが3減少し、カビおよび酵母に対して14日後にlogが1減少するという要件を満たす。
【0104】
好ましくは、本発明による組成物は、加速保存条件下において、少なくとも1月、より好ましくは少なくとも2月、さらにより好ましくは少なくとも3月、より一層好ましくは少なくとも4月、最も好ましくは少なくとも5月、特に少なくとも6月の有効期間を示す。
【0105】
好ましくは、有効期間は、特に実験欄に記載のように、欧州薬局方に従って決定される。
【0106】
加速保存条件は、好ましくは、40±2℃/75%RHを意味する。
【0107】
好ましくは、本発明による組成物は、周囲条件下において、少なくとも6月、より好ましくは少なくとも12月、さらにより好ましくは少なくとも15月、より一層好ましくは少なくとも18月、最も好ましくは少なくとも21月、特に少なくとも24月の有効期間を示す。
【0108】
好ましくは、本発明による組成物は、周囲条件下において、少なくとも1週、より好ましくは少なくとも2週、さらにより好ましくは少なくとも3週、より一層好ましくは少なくとも4週、最も好ましくは少なくとも5週、特に少なくとも6週の使用中安定性を示す多回用投薬単位調製物である。
【0109】
本発明の組成物に関する特に好ましい実施形態E~Eを、以下の表にまとめる:
【0110】
【表1】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、麻酔薬と組み合わせた投与に適している。
【0111】
したがって、本発明のさらなる態様は、成分(a)タペンタドールおよび(b)麻酔薬、好ましくはリドカインを含む組み合わせに関し、これは当該組み合わせが非経口投与に適した水性の医薬組成物であるかどうか、および/または少なくとも5.4のpH値を有するかどうかにかかわらない。しかしながら、好ましくは、前記の組み合わせは非経口投与に適合されており、および/または少なくとも5.4のpH値を有する水性の医薬組成物である。
【0112】
(a)タペンタドールおよび(b)リドカインまたはその誘導体を含む組み合わせが、鎮痛効果を示すことが見出された。相乗効果が患者への投与後に観察されるような重量比でこれらの成分が前記の組み合わせ内に存在する場合、全体の投与用量を低下させることができ、その結果、生じる望ましくない副作用がより少なくなる。
【0113】
本発明の組み合わせの一部としての成分(a)および(b)は両方とも、それらの通常の1日投薬量で投与することができる。
【0114】
本発明の別の実施形態では、本発明の組み合わせは、本質的に同効の比率で成分(a)および(b)を含んでもよい。
【0115】
本発明のさらなる実施態様において、組み合わせ成分(a)および(b)は、結果として生じる組成物が患者への投与において相乗効果を発揮するような重量比で存在する。好適な重量比は当業者に広く知られた方法によって、例えば、Randall-Selitto試験によって決定することができる。
【0116】
成分(a)および(b)は両方とも、同効比から外れた比で本発明の組み合わせ中に存在してもよい。例えば、成分の各々は、同効量の1/5~同効量の5倍、好ましくは同効量の1/4~4、より好ましくは1/3~3、さらに好ましくは1/2~2の範囲で存在することができる。
【0117】
別の実施形態において、成分(a)および(b)は、疼痛、例えば糖尿病性神経因性疼痛、癌性疼痛、周術期および/または術後の疼痛を治療するための特定の投薬レジメンで投与することができる。成分(a)および(b)は、同一または異なる投与経路による各場合に、互いに同時にまたは連続的に投与することができる。したがって、本発明の別の態様は、成分(a)および(b)が哺乳類に同時にまたは連続的に投与されることを特徴とする、疼痛、例えば糖尿病性神経因性疼痛、癌性疼痛、周術期および/または術後の疼痛を治療する方法であって、成分(a)を成分(b)の前または後に投与してもよく、そして、成分(a)または(b)を同一または異なる投与経路のいずれかにより哺乳類に投与する方法である。投与の好適な経路には、経口、静脈内、腹腔内、経皮的、鞘内、筋肉内、鼻腔内、経粘膜、皮下または直腸内投与が含まれるが、これらに限定はされない。
【0118】
本発明の組み合わせは毒物学的に安全で、したがって、哺乳類、特に幼児、子供、および成人を含むヒトの治療に適している。
【0119】
好ましくは、麻酔薬は、ジエチルエーテル、ビニルエーテル、ハロタン、クロロホルム、メトキシフルレン、エンフルラン、トリクロロエチレン、イソフルラン、デスフルラン、セボフルラン、メトヘキシタール、ヘキソバルビタール、チオペンタール、ナルコバルビタール、フェンタニル、アルフェンタニル、サフェンタニル、フェノペリジン、アニレリジン、レミフェンタニル、ドロペリドール、ケタミン、プロパニジド、アルファキサロン、エトミデート、プロポフォール、ヒドロキシ酪酸、一酸化二窒素、エスケタミン、メタブテサミン、プロカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、ベンゾカイン、ブピカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ブタニリカイン、シンコカイン、エチドカイン、アルチカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、コカイン、塩化エチル、ディクロニン、フェノールおよびカプサイシンから成る群から選択される。
【0120】
好ましい実施形態では、麻酔薬は、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、ブピカイン、ロピバカイン、エチドカイン、ディクロニン、プロカイン、ベンゾカイン、2-クロロプロカイン、テトラカインおよびホルモカインから成る群から選択される局所麻酔薬である。リドカインが特に好ましい。
【0121】
好ましくは、麻酔薬の用量に対するタペンタドールの用量は、100:1~1:100、より好ましくは80:1~1:80、さらに好ましくは60:1~1:60、より一層好ましくは40:1~1:40、最も好ましくは20:1~1:20、特に10:1~1:10の範囲内である。
【0122】
好ましい実施形態では、麻酔薬の用量に対するタペンタドールの用量は、100±80:1、より好ましくは100±60:1、さらに好ましくは100±40:1、より一層好ましくは100±30:1、最も好ましくは100±20:1、特に100±10:1の範囲内である。
【0123】
別の好ましい実施形態では、麻酔薬の用量に対するタペンタドールの用量は、75±60:1、より好ましくは75±50:1、さらに好ましくは75±40:1、より一層好ましくは75±30:1、最も好ましくは75±20:1、特に75±10:1の範囲内である。
【0124】
さらに別の好ましい実施形態では、麻酔薬の用量に対するタペンタドールの用量は、50±40:1、より好ましくは50±30:1、さらに好ましくは50±25:1、より一層好ましくは50±20:1、最も好ましくは50±15:1、特に50±10:1の範囲内である。
【0125】
さらに別の好ましい実施形態では、麻酔薬の用量に対するタペンタドールの用量は、25±20:1、より好ましくは25±15:1、さらに好ましくは25±12.5:1、より一層好ましくは25±10:1、最も好ましくは25±7.5:1、特に25±5:1の範囲内である。
【0126】
好ましい実施形態では、タペンタドールの用量に対する麻酔薬の用量は、100±80:1、より好ましくは100±60:1、さらに好ましくは100±40:1、より一層好ましくは100±30:1、最も好ましくは100±20:1、特に100±10:1の範囲内である。
【0127】
別の好ましい実施形態では、タペンタドールの用量に対する麻酔薬の用量は、75±60:1、より好ましくは75±50:1、さらに好ましくは75±40:1、より一層好ましくは75±30:1、最も好ましくは75±20:1、特に75±10:1の範囲内である。
【0128】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの用量に対する麻酔薬の用量は、50±40:1、より好ましくは50±30:1、さらに好ましくは50±25:1、より一層好ましくは50±20:1、最も好ましくは50±15:1、特に50±10:1の範囲内である。
【0129】
さらに別の好ましい実施形態では、タペンタドールの用量に対する麻酔薬の用量は、25±20:1、より好ましくは25±15:1、さらに好ましくは25±12.5:1、より一層好ましくは25±10:1、最も好ましくは25±7.5:1、特に25±5:1の範囲内である。
【0130】
好ましい実施態様において、麻酔薬の用量に対するタペンタドールの用量は、25:1~1:25、より好ましくは10:1~1:20、さらに好ましくは5:1~1:15、より一層好ましくは1:1~1:10、最も好ましくは1:2~1:8、特に1:3~1:6の範囲内である。
【0131】
好ましい実施形態では、麻酔薬およびタペンタドールは、単一の組成物(本明細書の目的において「配合剤組成物(combined composition)」とも呼ぶ)に含まれる。
【0132】
別の好ましい実施形態では、麻酔薬およびタペンタドールは2つの別個の医薬組成物に含まれる。本明細書の目的において、これらの別個の医薬組成物を、「第一の組成物」(成分(a)、すなわちタペンタドールを含む)および「第二の組成物」(成分(b)、すなわち麻酔薬を含む)とも呼ぶ。
【0133】
好ましくは、配合剤組成物および第一の組成物はそれぞれ、本発明の水性医薬組成物を含み、すなわち、本発明の組成物に関して上述した全ての好ましい実施形態は、前記の配合剤組成物および前記の第一の組成物にもそれぞれ当てはまる。
【0134】
特に明記しない限り、一般的用語、「組成物」および「医薬組成物」はそれぞれ、今後言及される場合、それぞれ、タペンタドールを含有する組成物、すなわち水性の医薬組成物、配合剤組成物、および第一の組成物に関する全ての実施態様を表す。
【0135】
好ましい実施形態では、麻酔薬は、好ましくは非経口投与に適した第二の別個の組成物に含まれる。
【0136】
本発明による第一の組成物は、本発明による第二の組成物より前に、第二の組成物と同時に、および/または第二の組成物の後に投与することができる。さらに、第一および第二の組成物をサブユニットに分割し、いくつかのサブユニットを、他のサブユニットより前に、他のサブユニットと同時に、および/または他のサブユニットの後に投与することも可能である。例えば、第一の組成物は2つのサブユニットに分割することができ、第一のサブユニットが最初に投与される。その後、第二の組成物が投与される。第一の組成物の第二のサブユニットをその後、第二の組成物と同時に、または第二の組成物の後に投与することができる。
【0137】
本発明は、それぞれ、本発明の第一のおよび/または第二の医薬組成物の投与の前に、該投与と同時に、および/または該投与の後に、本発明の配合剤組成物の投与を組み合わせた投与レジメンも包含する。
【0138】
投与の順序とは無関係に、両方、すなわち第一のおよび第二の医薬組成物の投与間の期間の長さは、好ましくは、最大で60分、より好ましくは最大で45分、さらに好ましくは最大で30分、より一層好ましくは最大で15分、最も好ましくは最大で10分、特に最大で5分である。
【0139】
好ましい実施形態では、タペンタドールを含む第一の組成物、および麻酔薬を含む第二の別個の組成物は、キットの中に含まれる。
【0140】
好ましくは、第一の組成物および第二の組成物は両方とも注射溶液または注入溶液の両方である。
【0141】
本発明のさらなる態様は、本発明の医薬組成物、好ましくは本発明の水性の医薬組成物、配合剤組成物または第一の組成物を含む医薬製剤に関する。本発明の組成物に関して上述したすべての好ましい実施形態は、本発明による製剤にも当てはまる。
【0142】
好ましくは、製剤は、注射溶液、注射懸濁液、注入溶液、注入懸濁液およびデポー製剤、例えばデポー注射溶液、デポー懸濁液、インプラントおよび輸液ポンプから成る群から選択される。
【0143】
特に患者が幼いか、または呑み込みに問題がある場合、経口製剤と比較して、非経口の製剤はいくつかの有利な点を有する。それらは、例えば、患者の体重に応じて(これは小児患者において特に重要になり得る)、正確に投薬することができる、さらに、それらは、長期間(例えば24時間)にわたって注入によって、例えば、輸液ポンプによって間断なく投与することができる。
【0144】
好ましい実施形態では、製剤は、多回用投薬単位形態であり、すなわち、1回よりも多い投与(好ましくは注射による)のためにカスタマイズされている。
【0145】
本明細書の目的において、「多回投与用」とは、好ましくは、製剤が1を越える投薬単位を包含することを意味する。
【0146】
例えば、製剤が多回投与用の注射溶液である場合、その全体積は、典型的に1回に投与されるべき体積を越えるものである。あるいは、多回投与用の注射溶液は、典型的には数日を包含する治療期間にわたって投与されるための多数の投薬単位に分けられるようにカスタマイズされている。個々の投薬単位は、好ましくは、注射器による多回用の投薬単位形態から切り離されていてもよい。本発明による多回用の製剤の代表例は、隔壁で密閉された、場合により滅菌されているガラス製容器である。前記のガラス製容器は、患者への1回での投与を意図した個々の投薬単位の個々の体積を十分に越える体積の医薬の組み合わせを含む。例えば、保存容器の中に含まれる多回投与用製剤が250mLの全体積を有し、処方された投薬単位が1日1回25mLである場合には、治療期間の1日目に患者は25mLを取り、その結果225mLが保存容器に残り、治療期間の2日目に患者はさらに25mLをとり、その結果200mLが保存容器に残り、10日目に全量が患者によって取られるまで、同様である。
【0147】
好ましくは、多回用投薬単位形態は、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくは少なくとも5つ、より一層好ましくは少なくとも10個、最も好ましくは少なくとも12個、特に少なくとも15個の個々の投薬単位を含む。
【0148】
好ましくは、個々の投薬単位は、0.25mL~3.0mL、より好ましくは0.5mL~2.75mL、さらに好ましくは0.75mL~2.5mL、最も好ましくは1.0mL~2.0mLの体積を有する。
【0149】
好ましい実施形態では、個々の投薬単位は、1.0±0.9mL、より好ましくは1.0±0.75mL、さらに好ましくは1.0±0.5mL、より一層好ましくは1.0±0.4mL、さらに一層好ましくは1.0±0.2mL、最も好ましくは1.0±0.15mL、特に1.0±0.1mLの体積を有する。
【0150】
好ましい実施形態では、個々の投薬単位は、2.0±0.9mL、より好ましくは2.0±0.75mL、さらに好ましくは2.0±0.5mL、より一層好ましくは2.0±0.4mL、さらに一層好ましくは2.0±0.2mL、最も好ましくは2.0±0.15mL、特に2.0±0.1mLの体積を有する。
【0151】
個々の投薬単位は1回、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上の頻度で、場合により規則的な時間間隔で、投与することができる。
【0152】
多回用投薬単位形態は、連続的な投与(好ましくは注入による)のためにカスタマイズされていてもよい。好ましくは、製剤は、少なくとも30分間または45分間、より好ましくは少なくとも1時間または2時間、さらに好ましくは少なくとも3時間または4時間、より一層好ましくは少なくとも6時間または8時間、最も好ましくは少なくとも10時間、特に少なくとも12時間の連続的投与に適合されている。
【0153】
さらに別の好ましい実施形態では、製剤は単一の個々の投薬単位を提供し、それはそのようなもの(単一の投薬単位形態)として投与される。
【0154】
タペンタドールは治療的に有効な量で投与される。治療的に有効な量を構成する量は、治療される病気、前記病気の重症度および治療される患者に応じて変わる。
【0155】
個々の投薬単位に含まれるタペンタドールの量は、好ましくは10mg~250mgの範囲内に、より好ましくは15mg~200mgの範囲内に、さらに好ましくは20mg~150mgの範囲内に、より一層好ましくは30mg~130mgの範囲内に、最も好ましくは40mg~115mgの範囲内に、特に50mg~100mgの範囲内にある。
【0156】
好ましくは、タペンタドールの1日用量は最大で250mg、より好ましくは最大で225mg、さらに好ましくは最大で200mg、より一層好ましくは最大で175mg、特に最大で150mgである。
【0157】
好ましくは、タペンタドールの1日用量は少なくとも15mg、より好ましくは少なくとも20mg、さらに好ましくは少なくとも25mg、より一層好ましくは少なくとも30mg、最も好ましくは少なくとも30mg、特に少なくとも40mgである。
【0158】
好ましい実施形態では、製剤は注入用溶液または注入用懸濁液である。
【0159】
別の好ましい実施形態では、製剤は注射溶液または注射用懸濁液であり、好ましくは、これらは単一の投薬単位形態または多回用の投薬単位形態である。多回用の投薬単位注射溶液は、好ましくは注射バイアルに含まれており、単一の投薬単位形態は好ましくは使い捨ての注射器に含まれる。
【0160】
さらに別の好ましい実施形態では、製剤は埋め込み可能な装置、例えば埋め込み可能な輸液ポンプである。
【0161】
好ましい実施形態では、本発明による製剤はデポー製剤(徐放製剤)である。
【0162】
好ましくは、デポー製剤は、好ましくは筋肉内または皮下投与のためにカスタマイズされた、注入溶液または注入用懸濁液である。
【0163】
好ましくは、デポー製剤はさらに、粘度を高める賦形剤、例えばメチルセルロース、ゼラチン、および好ましくは最大で40,000g/molの分子量を有するポリビドン(ポリビニルピロリドン)を含む。適切なタイプのそして適切な量の、粘度を高める賦形剤を選択することによって、デポー製剤の蓄積効果に影響を及ぼすことができる。
【0164】
好ましくは、デポー製剤は、少なくとも12時間または14時間、より好ましくは少なくとも16時間または18時間、さらに好ましくは少なくとも20時間、より一層好ましくは少なくとも24時間、最も好ましくは少なくとも36時間、特に少なくとも48時間の期間にわたって、薬剤を放出することができる。
【0165】
デポー製剤は、好ましくは、術後の疼痛の治療における使用のために投与される。
【0166】
好ましい一実施形態において、本発明の製剤は、小児患者への投与に適合されている。
【0167】
明細書の目的において、小児患者には好ましくは、未熟児、幼児、子供および青年が包含される。
【0168】
好ましくは、小児患者の年齢の上限は1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16または17歳である。
【0169】
好ましくは、小児患者の体重の下限は30kgまたは25kg、より好ましくは20kgまたは15kg、さらに好ましくは10kgまたは7.5kg、より一層好ましくは5kgまたは3kg、最も好ましくは2kgまたは1kg、特に500gである。
【0170】
好ましい実施形態では、製剤は、10~15kg、16~20kg、21~25kg、26~30kg、31~35kg、36~40kgおよび/または41~45kgの体重を有する子供への投与に適合されている。
【0171】
別の好ましい実施形態では、製剤は、0.5kg未満、0.6kg~0.9kg、1.0kg~1.9kg、2.0kg~2.9kg、3.0kg~3.9kg、4.0kg~4.9kg、5.0kg~5.9kg、6.0kg~8.0kgおよび/または8.1kg~9.9kgの体重を有する幼児または子供への投与に適合されている。
【0172】
この点に関して、薬剤承認当局は小児患者用の薬剤における保存剤の存在に関してはより厳格な基準を設定しているので、タペンタドールの驚くべき保存剤特性はさらに有益である。さらに、タペンタドールは重度の障害を患う患者における疼痛を治療するために、例えば癌性疼痛を治療するために適しているので、小児患者を含むこのような患者は通常、重度の副作用を有する他の薬剤、例えば化学療法剤で同時に治療される。これらの状況下では、回避可能な場合、そのような小児患者を保存剤に暴露させないほうがさらに望ましい。
【0173】
この点に関して、タペンタドールの全身濃度を治療量以下のレベルで維持することができ、生物全体を悩ませる全身性の副作用を回避できるので、局所的なまたは局部の処置が特に有益である。低いレベルで薬剤の全身濃度を維持することは、小児患者の治療において特に重大である。
【0174】
本発明のさらなる態様は、上記または下記で定義されるような麻酔薬をタペンタドールと組み合わせて、好ましくは上記または下記に記載されるような水性の医薬組成物と組み合わせて含む製剤に関する。
【0175】
好ましい実施形態では、本発明による製剤は本発明の水性の医薬組成物を含む。
【0176】
好ましい実施形態では、本発明による製剤は本発明の配合剤医薬組成物を含む。この実施形態では、配合剤医薬組成物は、好ましくは、本発明の水性の医薬組成物を含む。
【0177】
好ましくは、本発明の水性の医薬組成物、本発明による組み合わせ、および本発明による製剤は、それぞれ、疼痛の治療において使用するためのものである。
【0178】
前記疼痛は慢性疼痛または急性疼痛のいずれかであることができる。
【0179】
好ましくは、疼痛は、炎症性疼痛、神経因性疼痛、内臓痛、陣痛、癌性疼痛、周術期の、および術後の疼痛からなる群から選択される。
【0180】
好ましい実施形態では、疼痛は、癌性疼痛、好ましくは癌によって誘導される神経因性疼痛であり、ここには、末梢神経における癌の直接的な結果としての、または化学療法、外科手術もしくは放射線傷害の副作用としての神経因性疼痛が含まれる。
【0181】
別の好ましい実施形態では、疼痛は糖尿病に関連した神経因性疼痛(糖尿病性多発ニューロパチー)である。
【0182】
別の好ましい実施形態では、疼痛は周術期の、および術後(外科手術後)の疼痛であり、バニオン切除術の疼痛が含まれる。
【0183】
別の好ましい実施形態では、疼痛は陣痛である。
【0184】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明の水性の医薬組成物、本発明による組み合わせ、および本発明による製剤は、それぞれ、緊急の疼痛処理において使用するためのものである。
【0185】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明の水性の医薬組成物、本発明による組み合わせ、および本発明による製剤は、それぞれ、新生児における急性疼痛の治療において使用するためのものである。好ましくは、新生児は、2.500gの下限の、より好ましくは2.000gの下限の、さらに好ましくは1.500gの下限の、より一層好ましくは1.000gの下限の、最も好ましくは750gの下限の、特に500gの下限の体重を有することができる。
【0186】
本発明による水性組成物、および本発明の水性組成物を含む製剤は、それぞれ、タペンタドールの非経口的投与に適合されている。
【0187】
投与は注入(infusion)または注射(injection)によって行うことができる。
【0188】
注入用溶液または懸濁剤は、連続的に、断続的にまたは自己調節法により投与することができる。投与については、注入用装置、例えば埋め込み可能な輸液ポンプ、埋め込みができない輸液ポンプおよび脊髄ポンプを使用することができる。
【0189】
タペンタドールの投与は、筋肉内、静脈内、皮下、硬膜外、髄腔内、脊髄内および/または脳室内に行ってもよい。
【0190】
好ましい実施形態では、投与は、脊髄内、髄腔内もしくは硬膜外のいずれかに、好ましくは注入によって行われる。髄腔内投与は、周術期の疼痛、術後の疼痛、陣痛および癌性疼痛から選択される疼痛を治療するのに特に適している。髄腔内投与の用量は、輸液ポンプによって、患者によるかもしくは適当な一定のもしくは周期的な注入速度の選択のいずれかにより、制御することができる。
【0191】
別の好ましい実施形態では、投与は筋肉内に、静脈内にまたは皮下に行われる。このタイプの投与は、肢遠位部における局所的または局部的治療のために特に好ましい。
【0192】
デポー製剤は好ましくは筋肉内にまたは皮下に投与される。
【0193】
さらに別の好ましい実施形態では、投与は髄腔内におよび/または脳室内に行われる。このタイプの投与は、癌または糖尿病に関連した神経因性疼痛を含む神経因性疼痛の治療のために特に好ましい。
【0194】
好ましい実施形態では、タペンタドールの投与は脳室内および髄腔内投与の組み合わせによって行われる。
【0195】
好ましくは、髄腔内投与の用量は、脳室内投与の用量を越える。
【0196】
好ましい実施形態では、髄腔内投与におけるタペンタドールの用量と、脳室内投与におけるタペンタドールの用量との比は、少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも1.1:1、さらに好ましくは少なくとも1.2:1、より一層好ましくは少なくとも1.4:1、最も好ましくは少なくとも1.6:1、特に少なくとも1.8:1である。
【0197】
好ましくは、脳室内および髄腔内の併用投与は、疼痛の治療に関して相乗効果を示す。
【0198】
前記の併用投与が疼痛の治療に対して相乗効果を示すかどうかを評価する方法は当業者に十分に知られている。例えば、当業者は、単一の髄腔内投与、単一の脳室内投与および併用投与に関するED50値を決定し、併用投与のED50値を理論的な相加ED50値と比較することができる。この測定法についてのさらなる詳細は実験欄に含まれる。
【0199】
好ましくは、本発明によるタペンタドール含有組成物の効能はそれぞれモルヒネまたはオキシコドンのいずれかの同一用量を含む同様の組成物の効能より高い。
【0200】
好ましい実施形態では、疼痛、好ましくは神経因性疼痛は、本発明のタペンタドール含有組成物の投与後に、タペンタドールの代わりに同一用量のオキシコドンを含有する同様の組成物の投与後よりも、早く軽減する。
【0201】
好ましくは、疼痛が有効に軽減されるまでの時間が、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも15%、より一層好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%減少する。
【0202】
好ましい実施形態では、疼痛、好ましくは神経因性疼痛は、本発明のタペンタドール含有組成物の投与後に、タペンタドールの代わりに同一用量のモルヒネを含有する同様の組成物の投与後よりも、早く軽減する。
【0203】
好ましくは、疼痛が有効に軽減されるまでの時間が、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも15%、より一層好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%減少する。
【0204】
本発明のさらに別の態様は、非経口投与に適合されている、上記のような本発明の水性の医薬組成物または上記のような本発明の水性医薬組成物を含有する医薬製剤を製造するためのタペンタドールの使用に関する。
【0205】
本発明のさらに別の態様は、上記のような本発明の水性医薬組成物または上記のような本発明の水性医薬組成物を含有する医薬製剤をそれを必要とする対象に非経口投与することを含む、疼痛の治療方法に関する。
【0206】
以下の例は、本発明をさらに例証するが、本発明の範囲を限定するものとして解してはならない。
【実施例0207】
例1
a)注射用に、1Lの水に20gのタペンタドールHClを溶解し、塩化ナトリウムの添加によって等張性の条件を調節することにより、タペンタドールHCl溶液を調製した。前記溶液は5.4未満のpH値を有していた。したがって、水に溶解した場合、タペンタドールHClは弱酸性の特性を有する。
【0208】
b)15mg/mLのタペンタドール遊離塩基を含む注射用のタペンタドールHCl溶液を、次の表に従って製剤化した。
【0209】
【表2】
製剤をスタフィロコッカス・アウレウス(Staph. aureus)、シュードモナス・エルジノーサ(Ps. Aeruginosa)、アスペルギルス・ニガー(Asp. niger)およびカンジダ・アルビカンスでスパイクし、それらの抗菌性保存の有効性を欧州薬局方によって推奨されるように試験「efficacy of antimicrobial preservation」によって評価した。
【0210】
欧州薬局方による非経口用調製物に関する試験合否基準を表2に示す。
【0211】
基準Aは、達成されるべき推奨有効性を示す。例えば有害反応のリスク増加の理由によりA基準に到達できないという正当な場合には、B基準が満たされなければならない。
【0212】
【表3】
「efficacy of antimicrobial preservation」試験により、Asp.ニガーが他の3つの試験細菌/真菌と比較して、タペンタドールに対してより耐性であると考えられることが明らかになった。欧州薬局方の試験基準Aは達成されず、基準Bが達成された。
【0213】
例2
その後、多発性ニューロパシーの疼痛に対する本発明組成物の効果を以下のように調べた:
クエン酸塩で緩衝されたストレプトゾトシン含有溶液(用量:200mg/kg;第一の注射溶液)の単一の腹腔内注射によって、雄のC57/BL/6マウスにおいて糖尿病性痛覚過敏症を誘発させた。1-2週間後に、タペンタドールまたはビヒクルを含む第二の注射溶液5μLを髄腔内に注射し、ビヒクルを含む第三の注射5μlを脳室内に注射し、そしてマウスを50℃に維持されたホットプレートに置いて侵害防衛反応(後肢を舐める/振る、生殖器を舐める、ジャンピング)の数を記録した。カットオフ時間を2分に設定した。
【0214】
温熱性痛覚過敏のしきい値(退避反応潜時)を、注射直後に短い時間間隔で測定した(15、30、45および60分後)。群のサイズは10であった。試験を行った医薬組成物の痛覚過敏抑制活性を、可能な最大効果のパーセント(%MPE)として表す。
【0215】
前記試験により、本発明組成物の痛覚過敏抑制活性を、3つの異なる用量(0.316μg、1.00μgおよび3.16μg)に関して調べた。比較のために、2つの比較実験も行った。
【0216】
異なる条件を以下の表にまとめる:
【0217】
【表4】
痛覚過敏抑制活性に関する結果を図1に表す。退避反応の絶対数を各実験に関して図2に表す。
【0218】
図1および2から、タペンタドールが糖尿病性の熱痛覚過敏の用量依存的阻害を示すことが明らかである。15分後の温熱性痛覚過敏閾値を使用して、ED-50値を計算したところ、髄腔内投与に関して0.42(0.26-0.58)mg/動物であった。
【0219】
例3
例2に従って、しかしながら、第二の注射溶液を脳室内に注射し、ビヒクルを含む第三の注射溶液を髄腔内に注射する点を変更して、多発性ニューロパシーの疼痛に対する本発明組成物の効果を以下の注射溶液を使用して調べた:
【0220】
【表5】
痛覚過敏抑制活性に関する結果を図3に表す。退避反応の絶対数を各実験に関して図4に表す。
【0221】
図3および4から、タペンタドールが糖尿病性の熱痛覚過敏の用量依存的阻害を示すことが明らかになる。15分後の温熱性痛覚過敏閾値を使用して、ED-50値を計算したところ、脳室内投与に関して0.18(0.14-0.22)mg/動物であった。
【0222】
例4
例1に従って、しかしながら、タペンタドールまたはビヒクルを含む2つの注射溶液を同時に投与する点を変更して、多発性ニューロパシーの疼痛に対する本発明組成物の効果を調べた:一方は髄腔内(2.注射溶液)、他方は脳室内(3.注射溶液)。以下の注射溶液を使用した:
【0223】
【表6】
痛覚過敏抑制活性に関する結果を図5に表す。退避反応の絶対数を各実験に関して図6に表す。
【0224】
図5および6から、タペンタドールが糖尿病性の熱痛覚過敏の用量依存的阻害を示すことが明らかである。15分後の温熱性痛覚過敏閾値を使用して、ED-50値を計算したところ、髄腔内および脳室内の併用投与に関して0.053(0.032-0.074)mg/動物であった。
【0225】
図7において、髄腔内および脳室内の併用投与のED50計算値を、髄腔内投与および脳室内投与のED 50値に基づいて計算した理論的な相加効果と比較する。髄腔内および脳室内投与の併用が、相乗的により良好であることが明らかとなった(p<0.001)。
【0226】
例5
薬理学的な方法:
本発明の医薬組成物の超相加的効果(相乗効果)をもたらす成分(a)および(b)の重量比は、「Arch.Int.Pharmacodyn., 1957, 111:409‐419」に記載されるようなRandallおよびSelittoの下肢足底の知覚テスト(paw pressure test)によって決定することができ、これは炎症性疼痛のためのモデルである。文献の各部分は、参照により本明細書に組み込まれ、本願開示の一部を形成する。
【0227】
従って、本発明の医薬組成物の超相加的効果(相乗効果)をもたらす成分(a)および(b)の重量比を、急性疼痛(A)のモデルおよび慢性疼痛(B)のモデルにおいて決定した。
【0228】
A)カラゲーナンはラットの中で急性炎症性疼痛を誘発した(下肢足底の知覚テスト)。
【0229】
ラットの右後肢の足底の表面に0.1mlのカラゲーナン溶液(蒸留水において0.5%)を皮下的に注射することにより、急性炎症を誘発した。機械的侵害受容の閾値を圧痛計(Ugo Basile、Italy)を使用して測定した。当該装置は、時間とともに直線的に増加する機械的な力を生成する。丸い先端を有する円錐形の針(3mm)によって炎症を起こした後足の背面に力を加えた。侵害受容の閾値(T)は、そこでラットが発声する力(カットオフ力450g)として定義した。化合物またはビヒクルをカラゲーナン注射の3時間後に与えた。機械的な侵害受容の閾値を、薬剤またはビヒクル投与の種々の時間後に測定した。薬物の効果を、下記式に基づいて可能な最大効果のパーセント(%MPE)として表す:%MPE=(TV薬剤-TVコントロール)/(カットオフ-TVコントロール)×100。群のサイズはn=12である。
【0230】
B)完全フロイントアジュバント(CFA)はラットにおいて慢性の炎症性疼痛を誘発した(下肢足底の知覚テスト)。
【0231】
慢性炎症を、一方の後肢に0.05mLのCFA溶液(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis), H37 Ra, Difco Laboratories, Detroit, Mi., U.S.A.; 鉱油における1mg/mL)を足底内に注射することによって誘発した。機械的侵害受容の閾値を、CFA注射前(Pre値)および1日後に、圧痛計(Ugo Basile、Italy)を使用して測定する。当該装置は、時間とともに直線的に増加する機械的な力を生成する。丸い先端を有する円錐形の針(2mmのチップ直径)によって炎症を起こしたラット後足の背面に力を加える。侵害受容の閾値は、そこでラットが発声する力(グラム)として定義される(カットオフ力450g)。機械的な侵害受容の閾値を、薬剤またはビヒクル投与後の種々の時間点で測定する。試験を行った物質の抗侵害受容活性および痛覚過敏抑制活性を、可能な最大効果のパーセント(%MPE)として表す。可能な最大効果は、CFA注射の前の退避反応閾値pre値のパーセントとして定義される。群のサイズはn=10である。
【0232】
カラゲーナンで誘発された(急性)およびCFAで誘発された(緩性)炎症性疼痛における結果の解析
成分(a)および(b)を含む本発明の医薬組成物の超相加的効果に関しての結果の解析は、いわゆる固定比率の組み合わせ(Tallarida JT, Porreca F, and Cowan A. Statistical analysis of drug-drug and site-site interactions with isobolograms. Life Sci 1989; 45: 947 - 961によるisobolographicな解析)の理論的な相加的ED50値と実験的に決定したED50値との統計的比較によって行なった。
【0233】
ここに示された相互作用試験、単独で投与された場合の成分の各ED50値の比から計算した、同効の用量の2つの成分を使用して行った。
【0234】
結果
適用経路は、タペンタドール(A)((-)-(1R,2R)-3-(3-ジメチルアミノ-1-エチル-2-メチル-プロピル)-フェノール)に関してはそれぞれカラゲーナン誘発およびCFA誘発炎症性疼痛における静脈内(i.v.)および腹腔内(i.p.)であり、リドカイン(塩酸リドカイン)に関しては両動物モデルにおける腹腔内(i.p.)である。
【0235】
カラゲーナン誘発(急性)炎症性疼痛モデルにおけるタペンタドール(A)のピーク効果は、投与の15分後に達し(第一の測定の時点)、1.75(1.69-1.81)mg/kgのi.vのED50値が計算された。CFA誘発(慢性)炎症性疼痛モデルにおけるタペンタドール(A)のピーク効果は、投与の15分後に達し(第一の測定の時点)、6.34(4.42-1.81)mg/kgのi.p.のED50値が計算された。
【0236】
リドカインは、カラゲーナン誘発(急性)炎症性疼痛モデルにおいて32.4(30.0-34.6)mg/kgのi.p.のED50値を有し、CFA誘発(緩性)炎症性疼痛モデルにおいて26.8(25.2-29.0)mg/kgのi.pのED50値を有する、用量依存的な鎮痛効果を誘導し、両モデルにおいて投与15分後にピーク効果に達した。ピーク効果のそれぞれの時間点に従い、両方の動物モデルにおいて、相互作用実験の測定時点の15分前にタペンタドール(A)を、そして15分前にリドカインを適用した(すなわち、両成分を同時に適用した)。
【0237】
したがって、Aとリドカインの組み合わせのED50計算の時間点は、それぞれの化合物のピーク効果の時間点に相当する。isobolographicな解析により、カラゲーナン誘発(図8)、およびCFA誘発炎症性疼痛モデル(図9)における前記組み合わせの実験的ED50値が、各理論ED50値より著しく低いことが明らかとなった。したがって、併用試験により、炎症性疼痛のための急性および慢性動物モデルにおけるタペンタドール(A)とリコカインの相乗的相互作用が実証される。
【0238】
isobolographicな解析の結果を以下の表にまとめる。
【0239】
【表7】
上記実験において使用したタペンタドールとリドカインの比率を、以下の表にまとめる。
【0240】
【表8】
例6
pH3およびpH8でのタペンタドールの抗菌効果
15mg/mLのタペンタドール(遊離塩基)濃度を有するタペンタドール溶液を調製した。pH値を、クエン酸および1N NaOH溶液を使用して、3または8の標的値にそれぞれ調節した。追加の緩衝系は添加しなかった。プラセボ溶液が抗菌効果自体を示さないことを保証するために、pH調節用に異なる量の1N NaOH溶液を使用する場合であっても、同一のpH値に焦点を当ててプラセボ溶液pH8を調製した。
【0241】
製剤を調製し、ガラスのボトルに満たし、オートクレーブにおいて121℃および2barで30分間滅菌した。滅菌したガラスのボトルを、欧州薬局方「6.6 monograph 5.1.3.」に基づいた試験「Efficacy of antimicrobial preservation」のために、スタフィロコッカス・アウレウス(Staph. aureus)、シュードモナス・エルジノーサ(Ps.aerouginosa)、アスペルギルス・ニガー(Asp.niger)およびカンジダ・アルビカンスでスパイクした。
【0242】
非経口用調製物に関する欧州薬局方の試験合否基準を表に記載する(NI=増加なし、NR=回復なし)。A基準は、達成されるべき推奨の効果を示し、例えば有害反応のリスク増加の理由によりA基準に到達できないという正当な場合には、B基準が満たされなければならない。pH値実験のこの第一のセットアップのための実験の量を減らすために、6および24時間の試験時間点を30分の試験時間点で置き換えた(表8)。
【0243】
【表9】
溶液の微生物試験の結果を、各細菌/真菌に関して表9~12に示す。
【0244】
【表10】
【0245】
【表11】
【0246】
【表12】
【0247】
【表13】
追加の保存剤がない場合、タペンタドール溶液pH3は、アスペルギルス・ニガーおよびカンジダ・アルビカンスに関しては欧州薬局方(基準AおよびB)に従って十分に保存されないが、タペンタドール溶液pH8は、試験を行った全ての細菌および真菌に対して基準AおよびBを満たした。プラセボpH8溶液は溶液自体の保存効果を示さないので、タペンタドールHClを含む製剤の抗菌効果はタペンタドールHClの添加された量の結果である。この結果を考慮すると、タペンタドールHCl溶液の保存効果の明白なpH値依存性が示された。
【0248】
より高いpH値8を有するタペンタドールHCl溶液は、pH3溶液と比較して改善された抗菌効果を有し、従って、タペンタドールの保存効果における当該溶液のpH値の明瞭な依存性が見出された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0248
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0248】
より高いpH値8を有するタペンタドールHCl溶液は、pH3溶液と比較して改善された抗菌効果を有し、従って、タペンタドールの保存効果における当該溶液のpH値の明瞭な依存性が見出された。

更に、本発明は以下の実施の態様も包含する:
1.少なくとも5.4のpH値を有する、タペンタドールまたはその生理学的に許容可能な塩の非経口的投与に適合されている水性の医薬組成物。
2.局所および/または全身投与に適合されている、上記1に記載の組成物。
3.注射または注入による投与に適合されている、上記1または2に記載の組成物。
4.タペンタドールの濃度が組成物の全体積を基準として50mg/mL未満である、上記1~3のいずれか1つに記載の組成物。
5.さらにバッファーを含む、上記1~4のいずれか1つに記載の組成物。
6.いずれの保存剤も含まない、上記1~5のいずれか1つに記載の組成物。
7.少なくとも0.25オスモル/Lの浸透圧モル濃度を有する、上記1~6のいずれか1つに記載の組成物。
8.麻酔薬と組み合わせての投与に適合されている、上記1~7のいずれか1つに記載の組成物。
9.上記1~8のいずれか1つに記載の医薬組成物を含む、医薬製剤。
10.小児への投与に適合されている、上記9に記載の製剤。
11.デポー製剤である、上記9または10のいずれか一つに記載の製剤。
12.疼痛の治療に使用するための、上記1~8のいずれか1つに記載の組成物、または上記9~11のいずれか1つに記載の製剤。
13.疼痛が糖尿病性の神経因性疼痛、癌性疼痛、周術期のおよび/または術後の疼痛から成る群から選択される、上記12に記載の組成物。
14.投与が、筋肉内、静脈内、皮下、硬膜外、髄腔内、脊髄内および/または脳室内に行われる、上記12または13に記載の組成物。
15.投与されるべきタペンタドールの用量が患者によって調節される、上記12~14のいずれか1つに記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4.0のpH値を有する、タペンタドールまたはその生理学的に許容可能な塩およびバッファーを含む、非経口的投与に適合されている水性の医薬組成物であって、該組成物がいずれの保存剤も含まず、タペンタドールの含有量が組成物の全重量を基準として0.05~5.0重量%の範囲内にある、上記医薬組成物
【請求項2】
局所および/または全身投与に適合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
注射または注入による投与に適合されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
タペンタドールの濃度が組成物の全体積を基準として50mg/mL未満である、請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも0.25オスモル/Lの浸透圧モル濃度を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
麻酔薬と組み合わせての投与に適合されている、請求項1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の医薬組成物を含む、医薬製剤。
【請求項8】
小児への投与に適合されている、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
デポー製剤である、請求項7または8に記載の製剤。
【請求項10】
疼痛の治療に使用するための、請求項1~6のいずれか1つに記載の組成物、または請求項7~9のいずれか1つに記載の製剤。
【請求項11】
疼痛が糖尿病性の神経因性疼痛、癌性疼痛、周術期のおよび/または術後の疼痛から成る群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
投与が、筋肉内、静脈内、皮下、硬膜外、髄腔内、脊髄内および/または脳室内に行われる、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
投与されるべきタペンタドールの用量が患者によって調節される、請求項10~12のいずれか1つに記載の組成物。
【外国語明細書】