IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-排気ガス処理触媒 図1
  • 特開-排気ガス処理触媒 図2
  • 特開-排気ガス処理触媒 図3
  • 特開-排気ガス処理触媒 図4
  • 特開-排気ガス処理触媒 図5
  • 特開-排気ガス処理触媒 図6
  • 特開-排気ガス処理触媒 図7
  • 特開-排気ガス処理触媒 図8
  • 特開-排気ガス処理触媒 図9
  • 特開-排気ガス処理触媒 図10
  • 特開-排気ガス処理触媒 図11
  • 特開-排気ガス処理触媒 図12
  • 特開-排気ガス処理触媒 図13
  • 特開-排気ガス処理触媒 図14
  • 特開-排気ガス処理触媒 図15
  • 特開-排気ガス処理触媒 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033905
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】排気ガス処理触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20220222BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220222BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220222BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220222BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220222BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220222BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20220222BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20220222BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20220222BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01J37/04 102
B01J37/08 ZAB
B01J37/02 301B
B01J35/04 301Z
B01D53/94 222
B01D53/86 222
B01D53/94 400
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 Q
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021197252
(22)【出願日】2021-12-03
(62)【分割の表示】P 2018544445の分割
【原出願日】2016-11-16
(31)【優先権主張番号】62/256,258
(32)【優先日】2015-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤ エル. モハナン
(72)【発明者】
【氏名】ゲアリー エイ. グラミチョーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ホックムース
(72)【発明者】
【氏名】ケネス イー. ヴォス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改善されたNOx転化効率およびより低いN2O生成を伴う触媒を提供する。
【解決手段】選択的接触還元触媒として使用するための触媒組成物であって、細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有する、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子と、小細孔モレキュラーシーブ粒子内で、かつ小細孔モレキュラーシーブ粒子の細孔構造の外側で分散された金属酸化物粒子とを含み、前記モレキュラーシーブ粒子のD50粒度の前記金属酸化物粒子のD50粒度に対する比は、10超:1である、触媒組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的接触還元触媒として使用するために適した触媒組成物であって、細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有する、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子と、小細孔モレキュラーシーブ粒子内で、かつ小細孔モレキュラーシーブ粒子の細孔構造の外側で分散された、周期律表の第3族または第4族の遷移金属またはランタニドの1種以上の酸化物を含む金属酸化物粒子とを含む、触媒組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子は、ジルコニア、アルミナ、セリア、ハフニア、イットリア、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子は、ジルコニアを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子は、約10nm~約500nmの範囲内の平均粒度を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子は、前記モレキュラーシーブの細孔開口より10倍超大きいD10粒度を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子は、約10nm以上のD10粒度を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記小細孔モレキュラーシーブは、d6r単位を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、およびTSCから選択される構造型を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記促進剤金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Zn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記小細孔モレキュラーシーブは、CHA構造型を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記促進剤金属は、CuもしくはFeまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記促進剤金属は、前記モレキュラーシーブの全質量に対して、約1質量%~約10質量%の範囲内の量で存在する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記促進剤金属は、前記モレキュラーシーブの全質量に対して、約2質量%~約5質量%の範囲内の量で存在する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記金属酸化物は、ウォッシュコートの全質量に対して酸化物基準で、約1質量%~約15質量%の範囲内の量で存在する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項15】
フロースルー型モノリス、ウォールフロー型フィルター、フォーム、またはメッシュから選択される基材を含む触媒物品であって、前記基材上にウォッシュコート層として請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒組成物が付着されている、触媒物品。
【請求項16】
前記ウォッシュコートは、フロースルー型モノリスまたはウォールフロー型フィルター上に配置される、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記触媒物品は、同じ触媒組成を有するウォッシュコートを同じ負荷量で含むが、小細孔モレキュラーシーブ粒子内に金属酸化物粒子が分散されていない触媒物品と比べて、少なくとも10質量%低いN2O生成を特徴とする、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項18】
窒素酸化物(NOx)を選択的に還元するための方法であって、NOxを含有する排気ガス流を、請求項15に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【請求項19】
副生成物として生成されるN2Oの量は、同じ触媒組成を有するウォッシュコートを同じ負荷量で含むが、小細孔モレキュラーシーブ粒子内に金属酸化物粒子が分散されていない触媒物品を使用する方法において生成されるN2Oの量と比べて低減される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項15に記載の触媒物品を、エンジンおよび排気ガス流に還元剤を添加するインジェクターから下流側に備える排気ガス処理システム。
【請求項21】
触媒組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の促進剤金属の塩を水性系金属酸化物ゾル中に溶解させること、
前記少なくとも1種の促進剤金属の塩は、前記水性系金属酸化物ゾル中で解離して、水性系金属塩/金属酸化物ゾル混合物が形成され、ここで、前記金属酸化物粒子は、周期律表の第3族または第4族の遷移金属またはランタニドの1種以上の酸化物を含み、
細孔構造を有し、かつ8個の四面体原子の最大環サイズを有するアンモニウムまたはプロトンで交換された小細孔モレキュラーシーブ粒子を、前記水性系金属塩/金属酸化物ゾル混合物で処理することで、促進剤金属を小細孔モレキュラーシーブの細孔構造内に含浸させること、ならびに
処理された小細孔モレキュラーシーブ粒子を乾燥および焼成することで、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子と、小細孔モレキュラーシーブ粒子内で、かつ小細孔モレキュラーシーブ粒子の細孔構造の外側で分散された金属酸化物粒子とを含む触媒組成物を形成すること
を含む、方法。
【請求項22】
前記金属酸化物は、ジルコニア、アルミナ、セリア、ハフニア、イットリア、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属酸化物は、ジルコニアを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記金属酸化物ゾルは、約10nm~約500nmの範囲内の平均粒度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記金属酸化物ゾルは、前記モレキュラーシーブの細孔開口より10倍超大きいD10粒度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記金属酸化物ゾルは、約10nm以上のD10粒度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記促進剤金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Zn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記金属酸化物ゾルは、水酸化ジルコニルゾル、ナノサイズの水和ジルコニアゾル、アルミナゾル、ジルコニア-イットリアゾル、ジルコニア-アルミナゾル、ジルコニア-セリアゾル、有機ジルコニウムゾル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記金属酸化物粒子は、小細孔モレキュラーシーブの細孔構造内に入り込まない、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記小細孔モレキュラーシーブは、d6r単位を有する、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、およびTSCから選択される構造型を有する、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記小細孔モレキュラーシーブは、CHA結晶構造を有する、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記促進剤金属は、Cu、Fe、またはそれらの組み合わせを含む、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
触媒組成物と水とを混合して、ウォッシュコートスラリーを形成し、該ウォッシュコートスラリーを基材に適用して、基材上にウォッシュコートコーティングを形成し、そして該基材を乾燥および焼成して、触媒物品を形成する工程をさらに含む、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
水溶性金属酸化物化合物をウォッシュコートスラリーに添加して、その全金属酸化物含量を増大させることをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化触媒、該触媒の製造方法、および該触媒の使用方法に関する。より具体的には、本発明は、促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブを含む選択的接触還元触媒に関する。
【0002】
背景
長い時間にわたり、窒素酸化物(NOx)の有害成分は、大気汚染をもたらしている。NOxは、排気ガス、例えば内燃機関(例えば自動車およびトラックでの)、燃焼設備(例えば天然ガス、オイルまたは石炭により加熱される発電所)、そして硝酸産生プラントからの排気ガス中に含まれている。
【0003】
NOx含有ガス混合物の処理においては、様々な処理法が使用されている。1つの処理のタイプは、窒素酸化物の接触還元を要する。それには、2つの方法:(1)一酸化炭素、水素または低級炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元法、および(2)アンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元法が存在する。選択的還元法においては、少量の還元剤で窒素酸化物に関する高い除去の程度を得ることができる。選択的還元法は、SCR法(選択的接触還元)と呼ばれる。SCR法は、窒素酸化物のアンモニアを用いた大気酸素の存在下での接触還元を用い、主として窒素および水蒸気の形成がもたらされる:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準的SCR反応)
2NO2+4NH3→3N2+6H2O(遅いSCR反応)
NO+NO2+NH3→2N2+3H2O(速いSCR反応)。
【0004】
SCR法で使用される触媒は、理想的には、使用される広範囲の温度条件、例えば200℃~600℃以上にわたって水熱条件下で良好な触媒活性を維持することができるべきである。水熱条件は、しばしば実践において、例えば粒子の除去のために使用される排気ガス処理システムの構成要素であるスートフィルターの再生の間に起こる。
【0005】
モレキュラーシーブ、例えばゼオライトは、アンモニア、尿素または炭化水素等の還元剤を用いた酸素の存在下での窒素酸化物の選択的接触還元(SCR)において使用されてきた。ゼオライトは、ゼオライトの種類およびゼオライト格子中に含まれるカチオンの種類と量に応じて、約3Åから10Åまでの範囲の直径を有する、かなり均一な細孔サイズを有する結晶性材料である。8員環細孔開口および二重6員環二次構造単位を有するゼオライト、特にケージ様構造を有するゼオライトは、最近ではSCR触媒としての使用に関心が持たれている。これらの特性を有する具体的な種類のゼオライトは、チャバザイト(CHA)であり、それは、三次元多孔性を通じて到達可能な員環細孔開口(約3.8Å)を有する小細孔ゼオライトである。ケージ様構造は、二重6員環構造単位の4つの環による連結により得られる。
【0006】
窒素酸化物のアンモニアによる選択的接触還元のための、金属で促進されたゼオライト触媒、例えばなかでも鉄で促進されたゼオライト触媒および銅で促進されたゼオライト触媒は公知である。鉄で促進されたゼオライトβは長い間、窒素酸化物のアンモニアによる選択的還元のための効果的な市販の触媒である。残念なことに、例えば局所的に700℃を超える温度を有するスートフィルターの再生の間に示される過酷な水熱条件下では、金属で促進された多くのゼオライトの活性は下降し始めることが見出された。この下降は、しばしば、ゼオライトの脱アルミニウムと、その結果として生ずるゼオライト内部の金属含有活性中心の損失を原因とするものである。
【0007】
CHA構造型を有する金属で促進された、特に銅で促進されたアルミノケイ酸塩ゼオライトは、最近では含窒素還元剤を使用するリーンバーンエンジンにおける窒素酸化物のSCRのための触媒として高い関心を誘っている。これは、米国特許第7,601,662号明細書に記載されるように、これらの材料の幅広い温度ウインドウに加えて、その優れた水熱耐久性を理由とするものである。米国特許第7,601,662号明細書に記載される金属で促進されたゼオライトの発見の前に、該文献は、多数の金属で促進されたゼオライトが特許および科学文献においてSCR触媒としての使用のために提案されていたが、提案された材料のそれぞれは、以下の(1)低い温度、例えば350℃以下の温度での窒素酸化物の不十分な転化、および(2)SCRによる窒素酸化物の転化の触媒活性の大きな下降により示される不十分な水熱安定性という欠点の一方または両方があることを指摘した。このように、米国特許第7,601,662号明細書に記載される発明は、低い温度で窒素酸化物の転化をもたらすとともに、650℃を超える温度での水熱エージング後のSCR触媒活性の保持をもたらすこととなる材料を提供するという差し迫った未解決の必要性に対処するものであった。
【0008】
最近の触媒は優れた特性を示すけれども、SCR反応の間のN2O生成を減らすことは引き続き所望されている。したがって、最近の技術と比べて、改善されたNOx転化効率およびより低いN2O生成を伴う触媒が求められている。
【0009】
概要
本発明は、選択的接触還元触媒として使用するために適した触媒組成物であって、細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有する、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子と、周期律表の第3族または第4族の遷移金属またはランタニドの1種以上の酸化物を含む金属酸化物粒子との均質混合物を含む触媒組成物に関する。モレキュラーシーブ粒子を含み、その中に(しかしながら、小細孔モレキュラーシーブ粒子の外側に)金属酸化物粒子が分散された触媒組成物の特定の実施形態は、金属酸化物粒子を一切含有しないか、または最小限の量の特定のバインダー材料に由来する僅かな金属酸化物を含有する従来の金属で促進されたモレキュラーシーブと比べて、低温および/または高温での高められたNOx還元、ならびに低温および/または高温での低減されたN2O生成をもたらし得ることが分かった。該金属酸化物は、一般的には、ウォッシュコートの全質量に対して酸化物基準で、約1質量%~約15質量%の範囲内の量で存在する。
【0010】
前記金属酸化物粒子は、一般的に、ジルコニア、アルミナ、セリア、ハフニア、イットリア、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む。特定の実施形態においては、金属酸化物粒子は、約10nm~約500nmの範囲内の平均粒度、および/またはモレキュラーシーブの細孔開口よりも10倍超大きいD10粒度を有する。一実施形態においては、金属酸化物粒子は、約10nm以上のD10粒度を有する。
【0011】
触媒組成物は、d6r単位を有する小細孔モレキュラーシーブ粒子を含み得る。例示される小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、およびTSCから選択される構造型を有する。一実施形態においては、モレキュラーシーブ(molecular size)は、SSZ-13である。
【0012】
触媒組成物は、一般的に、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Zn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される促進剤金属を含むこととなる。例示される実施形態においては、該促進剤金属は、CuもしくはFeまたはその組み合わせを含む。促進剤金属の一般的な量は、モレキュラーシーブの全質量に対して、約1質量%~約10質量%、例えば約2質量%~約5質量%である。もう一つの態様においては、本発明は、フロースルー型モノリス、ウォールフロー型フィルター、フォーム、またはメッシュから選択される基材を含む触媒物品であって、前記基材上にウォッシュコート層として本開示の任意の実施形態による触媒組成物が付着されている、触媒物品を提供する。特定の実施形態においては、本発明の触媒物品は、同じ触媒組成を有するウォッシュコートを同じ負荷量で含むが、小細孔モレキュラーシーブ粒子内に金属酸化物粒子が分散されていない触媒物品と比べて、少なくとも10質量%低い(または少なくとも15質量%低い、もしくは少なくとも20質量%以上低い)N2O生成を特徴とする。
【0013】
さらにもう一つの態様においては、本発明は、窒素酸化物(NOx)を選択的に還元するための方法であって、NOxを含有する排気ガス流を、本開示の任意の実施形態による触媒組成物または触媒物品と接触させることを含む方法を提供する。特定の実施形態においては、副生成物として生成されるN2Oの量は、本発明の方法において、特定の従来の触媒組成物および触媒物品を用いて実施された方法と比べて低減される。例えば、一実施形態においては、本発明の方法において副生成物として生成されるN2Oの量は、同じ触媒組成を有するウォッシュコートを同じ負荷量で含むが、小細孔モレキュラーシーブ粒子内に金属酸化物粒子が分散されていない触媒物品を使用する方法において生成されるN2Oの量と比べて低減される。なおもさらなる一態様においては、本発明は、本開示の任意の実施形態による触媒組成物または触媒物品を、エンジン(例えば、ディーゼルエンジンまたはその他のリーンバーンエンジン)および排気ガス流に還元剤を添加するインジェクターから下流側に備える排気ガス処理システムを提供する。
【0014】
本発明はまた、触媒組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の促進剤金属の塩を水性系金属酸化物ゾル中に溶解させること、
前記少なくとも1種の促進剤金属の塩は、前記水性系金属酸化物ゾル中で解離して、水性系金属塩/金属酸化物ゾル混合物が形成され、ここで、前記金属酸化物粒子は、周期律表の第3族または第4族の遷移金属またはランタニドの1種以上の酸化物を含み、
細孔構造を有し、かつ8個の四面体原子の最大環サイズを有するアンモニウムまたはプロトンで交換された小細孔モレキュラーシーブ粒子を、前記水性系金属塩/金属酸化物ゾル混合物で処理することで、促進剤金属を小細孔モレキュラーシーブの細孔構造内に含浸させること、ならびに
処理された小細孔モレキュラーシーブ粒子を乾燥および焼成することで、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子と、小細孔モレキュラーシーブ粒子内で、かつ小細孔モレキュラーシーブ粒子の細孔構造の外側で分散された金属酸化物粒子とを含む触媒組成物を形成すること
を含む、方法を提供する。前記促進剤金属およびモレキュラーシーブは、本明細書の任意の実施形態において記載されるように選択することができる。
【0015】
金属酸化物ゾルは、触媒組成物に関して上述した金属酸化物のいずれかを含んでよく、かつ上述の同じ粒度特性を示してよい。特定の実施形態においては、金属酸化物ゾルは、水酸化ジルコニルゾル、ナノサイズの水和ジルコニアゾル、アルミナゾル(例えば、大結晶の熱安定性のベーマイトゾル)、ジルコニア-イットリアゾル、ジルコニア-アルミナゾル、ジルコニア-セリアゾル、有機ジルコニウムゾル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。有利には、金属酸化物粒子は、製造方法の間に小細孔モレキュラーシーブの細孔構造内に入らない(すなわち、金属酸化物粒子は、該モレキュラーシーブの細孔構造からサイズ排除される)。
【0016】
該方法は、触媒組成物と水とを混合して、ウォッシュコートスラリーを形成し、該ウォッシュコートスラリーを基材に適用して、基材上にウォッシュコートコーティングを形成し、そして該基材を乾燥および焼成して、触媒物品を形成する工程をさらに含んでよい。特定の実施形態においては、該方法は、水溶性金属酸化物化合物(例えば、ジルコニウム化合物)をウォッシュコートスラリーに添加して、その全金属酸化物含量を増大させることを含む。
【0017】
本発明は、制限されるものではないが、以下の実施形態を含む。
【0018】
実施形態1: 選択的接触還元触媒として使用するために適した触媒組成物であって、細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有する、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子と、小細孔モレキュラーシーブ粒子内で、かつ小細孔モレキュラーシーブ粒子の細孔構造の外側で分散された、周期律表の第3族または第4族の遷移金属またはランタニドの1種以上の酸化物を含む金属酸化物粒子とを含む、触媒組成物。
【0019】
実施形態2: 前記金属酸化物粒子は、ジルコニア、アルミナ、セリア、ハフニア、イットリア、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含む、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0020】
実施形態3: 前記金属酸化物粒子は、ジルコニアを含む、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0021】
実施形態4: 前記金属酸化物粒子は、約10nm~約500nmの範囲内の平均粒度を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0022】
実施形態5: 前記金属酸化物粒子は、前記モレキュラーシーブの細孔開口より10倍超大きいD10粒度を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0023】
実施形態6: 前記金属酸化物粒子は、約10nm以上のD10粒度を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0024】
実施形態7: 前記小細孔モレキュラーシーブは、d6r単位を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0025】
実施形態8: 前記小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、およびTSCから選択される構造型を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0026】
実施形態9: 前記促進剤金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Zn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0027】
実施形態10: 前記小細孔モレキュラーシーブは、CHA構造型を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0028】
実施形態11: 前記促進剤金属は、CuもしくはFeまたはそれらの組み合わせを含む、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0029】
実施形態12: 前記促進剤金属は、前記モレキュラーシーブの全質量に対して、約1質量%~約10質量%の範囲内の量で存在する、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0030】
実施形態13: 前記促進剤金属は、前記モレキュラーシーブの全質量に対して、約2質量%~約5質量%の範囲内の量で存在する、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0031】
実施形態14: 前記金属酸化物は、ウォッシュコートの全質量に対して酸化物基準で、約1質量%~約15質量%の範囲内の量で存在する、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【0032】
実施形態15: フロースルー型モノリス、ウォールフロー型フィルター、フォーム、またはメッシュから選択される基材を含む触媒物品であって、前記基材上にウォッシュコート層として上記または下記のいずれかの実施形態による触媒組成物が付着されている、触媒物品。
【0033】
実施形態16: 前記ウォッシュコートは、フロースルー型モノリスまたはウォールフロー型フィルター上に配置される、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒物品。
【0034】
実施形態17: 前記触媒物品は、同じ触媒組成を有するウォッシュコートを同じ負荷量で含むが、小細孔モレキュラーシーブ粒子内に金属酸化物粒子が分散されていない触媒物品と比べて、少なくとも10質量%低いN2O生成を特徴とする、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒物品。
【0035】
実施形態18: 窒素酸化物(NOx)を選択的に還元するための方法であって、NOxを含有する排気ガス流を、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【0036】
実施形態19: 副生成物として生成されるN2Oの量は、同じ触媒組成を有するウォッシュコートを同じ負荷量で含むが、小細孔モレキュラーシーブ粒子内に金属酸化物粒子が分散されていない触媒物品を使用する方法において生成されるN2Oの量と比べて低減される、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0037】
実施形態20: 上記または下記のいずれかの実施形態の触媒物品を、エンジンおよび排気ガス流に還元剤を添加するインジェクターから下流側に備える排気ガス処理システム。
【0038】
実施形態21: 触媒組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の促進剤金属の塩を水性系金属酸化物ゾル中に溶解させること、
前記少なくとも1種の促進剤金属の塩は、前記水性系金属酸化物ゾル中で解離して、水性系金属塩/金属酸化物ゾル混合物が形成され、ここで、前記金属酸化物粒子は、周期律表の第3族または第4族の遷移金属またはランタニドの1種以上の酸化物を含み、
細孔構造を有し、かつ8個の四面体原子の最大環サイズを有するアンモニウムまたはプロトンで交換された小細孔モレキュラーシーブ粒子を、前記水性系金属塩/金属酸化物ゾル混合物で処理することで、促進剤金属を小細孔モレキュラーシーブの細孔構造内に含浸させること、ならびに
処理された小細孔モレキュラーシーブ粒子を乾燥および焼成することで、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子と、小細孔モレキュラーシーブ粒子内で、かつ小細孔モレキュラーシーブ粒子の細孔構造の外側で分散された金属酸化物粒子とを含む触媒組成物を形成すること
を含む、方法。
【0039】
実施形態22: 前記金属酸化物は、ジルコニア、アルミナ、セリア、ハフニア、イットリア、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0040】
実施形態23: 前記金属酸化物は、ジルコニアを含む、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0041】
実施形態24: 前記金属酸化物ゾルは、約10nm~約500nmの範囲内の平均粒度を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0042】
実施形態25: 前記金属酸化物ゾルは、前記モレキュラーシーブの細孔開口より10倍超大きいD10粒度を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0043】
実施形態26: 前記金属酸化物ゾルは、約10nm以上のD10粒度を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0044】
実施形態27: 前記促進剤金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Zn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0045】
実施形態28: 前記金属酸化物ゾルは、水酸化ジルコニルゾル、ナノサイズの水和ジルコニアゾル、アルミナゾル、ジルコニア-イットリアゾル、ジルコニア-アルミナゾル、ジルコニア-セリアゾル、有機ジルコニウムゾル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0046】
実施形態29: 前記金属酸化物粒子は、小細孔モレキュラーシーブの細孔構造内に入り込まない、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0047】
実施形態30: 前記小細孔モレキュラーシーブは、d6r単位を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0048】
実施形態31: 前記小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、およびTSCから選択される構造型を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0049】
実施形態32: 前記小細孔モレキュラーシーブは、CHA結晶構造を有する、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0050】
実施形態33: 前記促進剤金属は、Cu、Fe、またはそれらの組み合わせを含む、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0051】
実施形態34: 触媒組成物と水とを混合して、ウォッシュコートスラリーを形成し、該ウォッシュコートスラリーを基材に適用して、基材上にウォッシュコートコーティングを形成し、そして該基材を乾燥および焼成して、触媒物品を形成する工程をさらに含む、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0052】
実施形態35: 水溶性金属酸化物化合物をウォッシュコートスラリーに添加して、その全金属酸化物含量を増大させることをさらに含む、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【0053】
本開示の前記のおよびその他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に説明されている添付の図面と一緒に以下の詳細な説明を読むことではっきりと理解できるであろう。本発明は、上述の実施形態の2個、3個、4個またはそれ以上の組み合わせ、ならびに本開示に示される任意の2個、3個、4個またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の記載において表現上組み合わされているかどうかにかかわらず包含する。本開示は、開示される発明のその様々な態様および実施形態のいずれかにおける任意の分離可能な特徴または要素を、文脈が明確にそれ以外のことを述べていない限り組み合わせることが可能であると解釈されるものとみなすべきであるというように、全体的に読まれるものと解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】実施例による触媒材料の、温度に対するNOx転化率およびN2O生成のグラフである。
図2】実施例による触媒材料のSEM像である。
図3】実施例による触媒材料のSEM像である。
図4】実施例による触媒材料についてのNOx効率の棒グラフである。
図5】実施例による触媒材料のSEM像である。
図6】6A~6Dは、実施例による触媒材料のSEM像の集まりである。
図7】7A~7Dは、実施例による触媒材料のSEM像の集まりである。
図8】実施例による触媒材料についてのNOx還元の棒グラフである。
図9】実施例による触媒材料についてのNH3スリップ、NH3吸蔵、およびN2O生成の棒グラフである。
図10】10A~10Dは、実施例による触媒材料のSEM像の集まりである。
図11】実施例による触媒材料の温度に対するNOx転化率のグラフである。
図12】実施例による触媒材料の温度に対するN2O生成のグラフである。
図13】先行技術の材料と比較した、実施例による触媒材料の温度に対するNOx転化率およびN2O生成のグラフである。
図14】先行技術の材料と比較した、実施例による触媒材料の温度に対するNOx転化率のグラフである。
図15】本発明による触媒組成物を含み得るハニカム型基材担体の斜視図である。
図16】本発明の触媒組成物が用いられる排出ガス処理システムの一実施形態の概略図を示す。
【0055】
詳細な説明
本発明の幾つかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の詳細な説明に示される構成または方法工程の詳細に制限されるものでないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な様式で実施することができる。
【0056】
政府規制により軽量車および重量車にはNOx還元技術を使用することが義務づけられている。尿素を使用したNOxの選択的接触還元(SCR)は、NOx制御のための効果的かつ優れた放出抑制技術である。政府規制を満足するために、現在のCu-SSZ-13ベースの基準技術と比較して改善された性能を有するSCR触媒が必要とされる。特定の実施形態においては、現在のCu-SSZ-13ベースの基準技術と比べて、改善されたNOx転化効率およびより低いN2O生成を伴う触媒が提供される。該触媒は、200℃~600℃の温度範囲にわたり、アンモニアと窒素酸化物とを反応させて、窒素およびH2Oを選択的に形成させることを効果的に促進する。
【0057】
本発明の実施形態は、小細孔モレキュラーシーブおよびジルコニア含有層を含む選択的接触還元触媒に関する。驚くべきことに、小細孔モレキュラーシーブのジルコニアによる変性によって、より低いN2O生成および改善された低温から高温までの性能窓が得られることが判明した。特定の実施形態においては、本発明は、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子および金属酸化物(例えば、ジルコニア)粒子の均質混合物の形の触媒組成物を提供する。該金属酸化物粒子は、モレキュラーシーブの細孔構造中への大抵の金属酸化物粒子の侵入が妨げられるような大きさである。その代わりに、該金属酸化物粒子は、本質的に、モレキュラーシーブ粒子上に表面コーティングを提供する。金属酸化物粒子の存在は、低温NOx還元を改善し、かつN2O生成を低減することが判明した。
【0058】
本開示で使用される用語に関して、以下の定義が定められる。
【0059】
本明細書で使用される場合に、用語「触媒」または「触媒組成物」または「触媒材料」とは、反応を促進する材料を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合に、用語「触媒物品」とは、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒物品は、触媒種、例えば、触媒組成物を基材上に含むウォッシュコートを含んでよい。
【0061】
本明細書で使用される場合に、用語「選択的接触還元(SCR)」とは、窒素酸化物を2窒素(N2)へと含窒素還元剤を使用して還元する触媒法を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合に、用語「ウォッシュコート」は、処理されるべきガス流の通過を可能にするのに十分に多孔質のハニカム型担体要素のような担体基材材料に適用される触媒材料またはその他の材料の薄い付着性被覆の技術分野における通常の意味を有する。当該技術分野において理解されるように、ウォッシュコートは、スラリー中の粒子の分散液から得られ、前記分散液を、基材に適用し、乾燥させ、焼成することで、多孔質ウォッシュコートが得られる。
【0063】
1つ以上の実施形態においては、選択的接触還元触媒は、細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有し、かつ促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブと、該促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブ上のジルコニア含有層とを含むウォッシュコートであって、前記ジルコニア含有層は、約10nm~約500nmの範囲内の粒度を有するジルコニア粒子を有するウォッシュコートを含む。
【0064】
モレキュラーシーブ
本明細書で使用される場合に、文言「モレキュラーシーブ」とは、粒状形で、かつ1種以上の促進剤金属と組み合わせて触媒として使用することができるゼオライト等の骨格材料およびその他の骨格材料(例えば同型置換材料)を指す。モレキュラーシーブは、一般的に四面体型サイトを含むとともに、平均細孔サイズが20Å以下である本質的に均一な細孔分布を有する酸素イオンの大規模な三次元網目を基礎とする材料である。その細孔サイズは、環のサイズによって定義される。本明細書で使用される場合に、用語「ゼオライト」とは、ケイ素原子およびアルミニウム原子を含むモレキュラーシーブの具体的な一例を指す。1つ以上の実施形態によれば、当然のことながら、モレキュラーシーブのそれらの構造型による定義は、その構造型、ならびにゼオライト材料と同じ構造型を有するSAPO、ALPOおよびMeAPO等の任意の全ての同型の骨格材料を含むことが意図される。
【0065】
より具体的な実施形態においては、アルミノケイ酸塩ゼオライト構造型への参照は、その材料を、骨格中で置換されたリンまたはその他の金属を含まないモレキュラーシーブに制限するものである。しかしながら、明瞭にするために、本明細書で使用される場合に、「アルミノケイ酸塩ゼオライト」は、SAPO、ALPOおよびMeAPO材料のようなアルミノリン酸塩材料を除外し、そして広義の用語「ゼオライト」は、アルミノケイ酸塩およびアルミノリン酸塩を含むことを意図している。ゼオライトは、ゼオライトの種類およびゼオライト格子中に含まれるカチオンの種類と量に応じて、約3Åから10Åまでの範囲内の直径を有する、かなり均一な細孔サイズを有する結晶性材料である。ゼオライトは、一般的に、シリカ対アルミナ(SAR)のモル比の値2以上を有する。
【0066】
用語「アルミノリン酸塩」とは、アルミニウム原子およびリン酸塩を含むモレキュラーシーブのもう一つの具体例を指す。アルミノリン酸塩は、かなり均一な細孔サイズを有する結晶性材料である。
【0067】
アルミノケイ酸塩は、一般的に、角共有TO4四面体から構成される開放3次元骨格構造を含み、その際、Tは、AlもしくはSiまたは任意にPである。アニオン性骨格の電荷を補償するカチオンは、骨格酸素と緩く会合し、残りの細孔容積は、水分子で満たされている。非骨格カチオンは、一般的に交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0068】
1つ以上の実施形態においては、小細孔モレキュラーシーブは、SiO4/AlO4四面体を含み、それらは、共通の酸素原子によって連結されて、三次元網目を形成している。その他の実施形態においては、モレキュラーシーブ成分は、SiO4/AlO4/PO4四面体を含む。1つ以上の実施形態の小細孔モレキュラーシーブは、(SiO4)/AlO4四面体またはSiO4/AlO4/PO4四面体の強固な網目によって形成される空隙の形態によって主に分類される。空隙への入口は、入口開口を形成する原子に関して6個、8個、10個または12個の環原子から形成される。1つ以上の実施形態においては、モレキュラーシーブは、8以下の、例えば6および8の環サイズを有する。
【0069】
1つ以上の実施形態によれば、モレキュラーシーブは、構造を特定する骨格トポロジーを基礎とし得る。一般的に、あらゆる構造型のゼオライト、例えばABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZONまたはそれらの組み合わせの構造型のゼオライトを使用することができる。
【0070】
1つ以上の実施形態においては、モレキュラーシーブは、8員環小細孔アルミノケイ酸塩ゼオライトを含む。本明細書で使用される場合に、「小細孔」とは、約5Åより小さい、例えば約3.8Åのオーダーの細孔開口を指す。文言「8員環」ゼオライトとは、8員環細孔開口および二重6員環二次構造単位を有し、かつ二重6員環構造単位の4つの環による連結により得られるケージ様構造を有するゼオライトを指す。ゼオライトは、二次構造単位(SBU)および複合構造単位(CBU)から構成され、それらは多くの種々の骨格構造で存在する。二次構造単位は、16個までの四面体原子を含み、非キラルである。複合構造単位は、アキラルである必要はなく、骨格全体を構成するために必ずしも使用されなくてもよい。例えば、ゼオライトの1つの群は、その骨格構造において単4員環(s4r)複合構造単位を有する。4員環において、その「4」とは、四面体のケイ素原子およびアルミニウム原子の位置を指し、酸素原子は、四面体原子の間に位置している。その他の複合構成単位には、例えば単6員環(s6r)単位、二重4員環(d4r)単位および二重6員環(d6r)単位が含まれる。d4r単位は、2つのs4r単位がつながることによって形成される。d6r単位は、2つのs6r単位がつながることによって形成される。d6r単位においては、12個の四面体原子が存在する。d6r二次構造単位を有するゼオライト構造型には、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSCおよびWENが含まれる。
【0071】
1つ以上の実施形態においては、モレキュラーシーブは、細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔モレキュラーシーブである。その他の実施形態においては、小細孔モレキュラーシーブは、d6r単位を有する。このように、1つ以上の実施形態においては、小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびそれらの組み合わせから選択される構造型を有する。その他の具体的な実施形態においては、モレキュラーシーブは、CHA、AEI、AFX、ERI、KFI、LEVおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される構造型を有する。なおもさらなる具体的な実施形態においては、小細孔モレキュラーシーブは、CHA、AEIおよびAFXから選択される構造型を有する。1つ以上の非常に具体的な実施形態においては、小細孔モレキュラーシーブ成分は、CHA構造型を有する。
【0072】
チャバザイト型ゼオライトは、ゼオライト群の天然に生じる、近似式:(Ca,Na2,K2,Mg)Al2Si412・6H2O(例えば、水和したカルシウムアルミニウムケイ酸塩)のテクトケイ酸塩鉱物を含む。チャバザイト型ゼオライトの3種の合成形は、1973年にJohn Wiley&Sonsにより発行されたD.W.Breck著の「ゼオライトモレキュラーシーブ(Zeolite Molecular Sieves)」(該文献は参照により本明細書で援用される)に記載されている。Breckにより報告された3種の合成形は、J.Chem.Soc.,p.2822(1956),Barrer et alに記載されるゼオライトK-G、英国特許第868,846号明細書(1961)に記載されるゼオライトD、および米国特許第3,030,181号明細書に記載されるゼオライトRであり、前記文献は、参照により本明細書で援用される。チャバザイト型ゼオライトのもう一つの合成形SSZ-13の合成は、米国特許第4,544,538号明細書(該文献は参照により本明細書で援用される)に記載される。チャバザイト結晶構造を有するモレキュラーシーブの合成形シリコアルミノリン酸塩34(SAPO-34)の合成は、米国特許第4,440,871号明細書および米国特許第7,264,789号明細書(該文献は参照により本明細書で援用される)に記載される。チャバザイト構造を有するさらにもう一つの合成モレキュラーシーブSAPO-44の製造方法は、米国特許第6,162,415号明細書(該文献は参照により本明細書で援用される)に記載される。
【0073】
1つ以上の実施形態においては、モレキュラーシーブには、あらゆるアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ガロケイ酸塩、MeAPSO、およびMeAPO組成物が含まれ得る。これらには、制限されるものではないが、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、Linde D、Linde R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、ZYT-6、CuSAPO-34、CuSAPO-44、およびCuSAPO-47が含まれる。
【0074】
アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブのシリカ対アルミナの比率は、広い範囲にわたり変動し得る。1つ以上の実施形態においては、モレキュラーシーブは、2~300の範囲内の、例えば5~250の、5~200の、5~100の、そして5~50の範囲内のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。1つ以上の具体的な実施形態においては、モレキュラーシーブは、10~200の、10~100の、10~75の、10~60の、および10~50の、15~100の、15~75の、15~60の、および15~50の、20~100の、20~75の、20~60の、および20~50の範囲内のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。
【0075】
1つ以上の具体的な実施形態においては、小細孔モレキュラーシーブは、CHA構造型を有し、かつ2から300までの、例えば5~250の、5~200の、5~100の、および5~50の、10~200の、10~100の、10~75の、10~60の、および10~50の、15~100の、15~75の、15~60の、および15~50の、20~100の、20~75の、20~60の、および20~50のシリカ対アルミナ比を有する。具体的な一実施形態においては、小細孔モレキュラーシーブは、SSZ-13を含む。非常に具体的な一実施形態においては、SSZ-13は、2から300までの、例えば5~250の、5~200の、5~100の、および5~50の、10~200の、10~100の、10~75の、10~60の、および10~50の、15~100の、15~75の、15~60の、および15~50の、20~100の、20~75の、20~60の、および20~50のシリカ対アルミナ比を有する。
【0076】
ゼオライトならびに関連のミクロ孔質およびメソ孔質の材料の合成は、ゼオライト材料の構造型により様々であるが、一般的に幾つかの成分(例えば、シリカ、アルミナ、リン、アルカリ、有機テンプレート等)を合して、合成ゲルを形成させ、それを次いで水熱結晶化させることで、最終生成物を形成させることを伴う。構造規定剤(SDA)は、有機カチオン、すなわちテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)または無機カチオン、すなわちNa+もしくはK+の形であってよい。結晶化の間に、複数の四面体単位がSDAの周りに組織化することで、所望の骨格が形成され、そしてSDAは、しばしばゼオライト結晶の細孔構造内に包埋される。1つ以上の実施形態においては、モレキュラーシーブ材料の結晶化は、構造規定剤/テンプレート、結晶核または元素の添加によって達成することができる。幾つかの場合には、結晶化は、100℃未満の温度で行うことができる。CHA構造を有するモレキュラーシーブは、当該技術分野で公知の様々な技術、例えば米国特許第4,544,538号明細書(Zones)および米国特許第6,709,644号明細書(Zones)(該文献は参照によりその全体が本明細書で援用される)における技術によって製造することができる。
【0077】
任意に、得られたアルカリ金属ゼオライトをNH4交換することで、NH4-チャバザイトが形成される。NH4イオン交換は、当該技術分野で公知の様々な技術、例えばBleken,F.;Bjorgen,M.;Palumbo,L.;Bordiga,S.;Svelle,S.;Lillerud,K.-P.、およびOlsbye,U.Topics in Catalysis 52,(2009),218-228に従って実施することができる。
【0078】
促進剤金属
本明細書で使用される場合に、「促進された」とは、モレキュラーシーブ中に固有の不純物とは異なって、成分がモレキュラーシーブに意図的に添加されたことを指す。このように、促進剤を、意図的に添加することで、促進剤を意図的に添加しなかった触媒と比べて触媒の活性が高められる。窒素の酸化物のSCRを促進するために、1つ以上の実施形態においては、適切な金属が、モレキュラーシーブ成分中に交換される。したがって、1つ以上の実施形態のモレキュラーシーブは、引き続き、1種以上の促進剤金属、例えば銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、銀(Ag)、およびセリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、およびタングステン(W)とイオン交換され得る。具体的な実施形態においては、モレキュラーシーブ成分は、Cu、Fe、およびそれらの組み合わせで促進される。非常に具体的な実施形態においては、モレキュラーシーブ成分は、Cuで促進される。
【0079】
酸化物として計算されたモレキュラーシーブ成分の促進剤金属含量は、1つ以上の実施形態においては、無揮発物基準で報告して、少なくとも約0.1質量%である。1つ以上の実施形態においては、促進剤金属は、モレキュラーシーブの全質量に対して、すべての場合に、約1質量%~約10質量%の範囲内、例えば約2質量%~約5質量%の範囲内の量で存在する。1つ以上の具体的な実施形態においては、促進剤金属はCuを含み、そしてCuOとして計算されるCu含有量は、酸化物基準で、それぞれ焼成されたモレキュラーシーブ成分の全質量に対して、かつ無揮発物基準で報告して、約10質量%までの、例えば9質量%、8質量%、7質量%、6質量%、5質量%、4質量%、3質量%、2質量%、1質量%、0.5質量%、および0.1質量%の範囲内である。具体的な実施形態においては、CuOとして計算されるCu含有量は、約2質量%~約5質量%の範囲内である。
【0080】
モレキュラーシーブの表面上の金属酸化物
1つ以上の実施形態によれば、触媒組成物は、促進剤金属を含むモレキュラーシーブと、該モレキュラーシーブの表面上の金属酸化物とを含む。金属酸化物は、モレキュラーシーブとの均質な混合物で存在し、こうしてモレキュラーシーブ材料内で分散された金属酸化物相がもたらされる。特定の実施形態においては、モレキュラーシーブ材料全体における金属酸化物の分散は、比較的均一であり得る。しかしながら、幾つかの実施形態においては、金属酸化物の少なくとも一部は、通常はウォッシュコート層表面に移行して、基材の被覆過程の間に空気中で分解/酸化される水溶性ジルコニウム化合物(またはその他の金属酸化物化合物)の量の結果として、本発明の触媒組成物を含有するウォッシュコート層の表面に富化領域で見出すことができる。
【0081】
参照を簡潔にするために、本開示の多くは、酸化ジルコニウム(および関連のジルコニウム前駆体)に焦点を絞っている。しかしながら、本発明から逸脱することなく、周期律表の第3族または第4族の遷移金属またはランタニドの1種以上の酸化物を含む金属酸化物のようなその他の金属酸化物を使用することができる。具体例としては、ジルコニア、アルミナ、セリア、ハフニア、イットリア、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、少量のその他の金属酸化物が存在してもよい。特定の実施形態においては、主たる(全金属酸化物の質量に対して50質量%より多く)金属酸化物は、ジルコニア、アルミナ、セリア、ハフニア、イットリア、またはそれらの組み合わせである。特定の好ましい実施形態においては、金属酸化物は、主としてジルコニアであり、それにはジルコニアと、セリア、アルミナ、ハフニアまたはイットリア等のその他の金属酸化物との複合物が含まれる。その他の実施形態においては、金属酸化物は、アルミナ、例えば大結晶ベーマイト材料、例えば約20nm以上の微結晶サイズを有するベーマイトである。
【0082】
特定の実施形態においては、触媒組成物の金属酸化物含有量は、少なくとも一部は、金属酸化物のマイクロ粒子またはナノ粒子を含有する金属酸化物ゾルとモレキュラーシーブとの混合物により規定される。金属酸化物材料の比較的不溶性形での導入は、後に酸化物形に焼成される水溶性前駆体の使用とは異なって、高温NOx還元に支障を来し得る触媒組成物内での促進剤金属の移行の防止に役立ち得る。このように、高められた金属酸化物含有量の利点(低減されたN2O生成および高められた低温NOx還元)は、高温性能に悪影響を及ぼすことなく達成することができる。
【0083】
例えば、幾つかの実施形態においては、ジルコニアは、水性系ジルコニアゾルを使用して導入される。本明細書で使用される場合に、用語「水性系ジルコニアゾル」とは、連続液体(水)媒体中のジルコニアまたは水和ジルコニアの小さな固体粒子のコロイド状懸濁液を指す。1つ以上の実施形態においては、水性系ジルコニアゾルは、水酸化ジルコニルゾル、ナノサイズの水和ジルコニアゾル、ジルコニア-イットリアゾル、ジルコニア-アルミナゾル、ジルコニア-セリアゾル、有機ジルコニウムゾル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本明細書で示されるように、水性系アルミナゾル、例えば大結晶ベーマイトゾルを、特定の実施形態において使用することもできる。
【0084】
幾つかの実施形態においては、水性系ジルコニアゾルは、1種以上の促進剤金属を水性系金属塩の形で含んでよい。すなわち、モレキュラーシーブは、促進剤金属で含浸されてよく、かつ同じ処理工程において金属酸化物粒子と混合されてよい。本明細書で使用される場合に、「促進された」とは、水性系ジルコニアゾル中に固有の不純物とは異なって、成分が水性系ジルコニアゾルに意図的に添加されたことを指す。このように、促進剤を、意図的に添加することで、促進剤を意図的に添加しなかった水性系ジルコニアゾルと比べて水性系ジルコニアゾルの活性が高められる。1つ以上の実施形態においては、水性系ジルコニアゾルは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される促進剤金属を含む。
【0085】
1つ以上の実施形態においては、本明細書で参照されるジルコニウムゾル(またはその他の金属酸化物ゾル)は、約10nm~約500nmの、例えば約10nm~約400nmの、約10nm~約300nmの、約10nm~約250nmの範囲内の平均粒度を有するジルコニア(またはその他の金属酸化物)の粒子を有する。本明細書で使用される場合に「平均粒度」とは、CILAS 1064型レーザー粒度分析装置により製造業者により推奨される液体モード法に従って0.04ミクロン~500ミクロンの測定範囲で測定されるジルコニア粒子(またはその他の金属酸化物粒子)の平均直径を指す。ナノサイズのゾル成分の粒度は、CILAS 1064型レーザー粒度分析装置を使用して製造業者により推奨される液体モード法に従って0.04ミクロン~500ミクロンの測定範囲で測定することができる。40nm未満の粒子の場合に、そのような粒度は、凝縮物の高められた検出だけでなく、小さい試料もしくは希釈試料および非常に低濃度もしくは高濃度の試料の測定のための「NIBS」光学系による動的光散乱を用いた、高性能の2角度式の粒度および分子サイズ分析装置であるMalvern社製Zetasizer Nano ZSを使用して測定することができる。
【0086】
1つ以上の実施形態においては、モレキュラーシーブおよびジルコニア(またはその他の金属酸化物)の粒子は、約10超:1の、例えば約100超:1の、約1000超:1の、約10000超:1の平均的または平均粒度分布の比率を有する。本明細書で使用される場合に、用語「平均的粒度分布の比率」および「平均粒度分布の比率」とは、D50(50%=値)を指す。
【0087】
理論により縛られるものと解釈されるものではないが、ジルコニア(またはその他の金属酸化物)は、有利にはナノサイズの粒子であって、D10値がゼオライトの細孔開口の10倍(10×)より大きく、その粒子が小細孔モレキュラーシーブの細孔に侵入しないようなサイズの粒子を含有すべきであると考えられる。1つ以上の実施形態においては、ジルコニアの粒子(および/または出発ジルコニアゾル中のジルコニア粒子)は、小細孔モレキュラーシーブの細孔開口の10倍より大きいD10粒度を有する。D10粒度への言及は、所定の閾値を下回る直径を有する粒子を10質量%有する粒子分布を意味する。特定の実施形態においては、ジルコニアの粒子は、約10nm以上の、約15nm以上の、または約20nm以上のD10値を有する。
【0088】
驚くべきことに、ジルコニアの存在が、N2O生成を低減することが判明した。1つ以上の実施形態においては、本発明の特定の触媒物品について、N2O生成は、同じ小細孔モレキュラーシーブ/促進剤金属を含むが(同じ触媒および促進剤金属の負荷量で)、ジルコニア含有層を含まないウォッシュコートを含む触媒物品と比較した場合に、約10質量%超だけ、例えば約15%超だけ、約20%超だけ、約25%超だけ、約30%超だけ、約35%超だけ、かつ約40%超だけ低減される。N2O生成の測定のために例示される試験条件は、実施例3に見出すことができる。
【0089】
1つ以上の実施形態においては、ジルコニア(またはその他の金属酸化物)は、酸化物基準で、すべての場合においてウォッシュコートの全質量に対して、約1質量%~約20質量%の、例えば約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%、約11質量%、約12質量%、約13質量%、約14質量%、かつ約15質量%の範囲内の量で存在する。本明細書で使用される場合に、用語「ウォッシュコートの全質量」は、モレキュラーシーブ、促進剤金属、およびジルコニアを含むウォッシュコート中のすべての成分の、該ウォッシュコートが乾燥および焼成された後の質量を意味する。特定の実施形態においては、ジルコニア(またはその他の金属酸化物)は、ウォッシュコートの全質量に対して、少なくとも約5質量%、少なくとも約6質量%、少なくとも約7質量%、少なくとも約8質量%、少なくとも約9質量%、または少なくとも約10質量%の量で存在する。
【0090】
特定の実施形態においては、金属酸化物含有量は、ウォッシュコート被覆過程の間にウォッシュコートスラリーに添加される水溶性金属酸化物前駆体を使用することにより供給される。一実施形態においては、金属酸化物全体は、前記のようにして供給されるが、金属酸化物含有量の少なくとも幾らかを、前記の比較的不溶性の起源から誘導することが好ましい。実施例に示されるように、多量の水溶性金属酸化物前駆体の使用は、ウォッシュコート内での不所望な促進剤金属の移行の原因となることがある。したがって、全金属酸化物含有量への水溶性金属酸化物前駆体の寄与を最小限にすること、および/または水溶性金属酸化物前駆体と接触させる前に金属で促進されたモレキュラーシーブ材料を焼成して(例えば、空気中で少なくとも約300℃の温度での焼成)、促進剤金属の可溶性を最小限にすることのいずれかが望ましい。
【0091】
ウォッシュコートスラリーは一般的に、豊富な量の水を使用して調製され、したがって、水性系ウォッシュコートスラリーが一般的には同様に使用される。ウォッシュコート表面に移行するジルコニウム化合物は、水中に可溶性であり、そしてまたスラリー中にも可溶性でなければならない。1つ以上の実施形態においては、ジルコニウム化合物は、水中に少なくとも15質量%可溶性、例えば少なくとも約20質量%可溶性、少なくとも約30質量%可溶性、少なくとも約40質量%可溶性、少なくとも約50質量%可溶性、少なくとも約60質量%可溶性、少なくとも約70質量%可溶性、少なくとも約80質量%可溶性、かつ少なくとも約90質量%可溶性である。その他の実施形態においては、ジルコニウム化合物は、約15%~約100%の水溶性、例えば約15%~約85%の、約20%~約100%の、約20%~約85%の、約30%~約100%の、約30%~約85%の、約40%~約100%の、約40%~約85%の、約50%~約100%の、かつ約50%~約85%の可溶性の範囲内の水溶性を有する。質量%に関する可溶性への言及は、室温(25℃)および1気圧での水性ウォッシュコート組成物中に溶解されたジルコニウム化合物のパーセンテージを指す。
【0092】
本明細書で使用される場合に、「水溶性ジルコニア成分」、「水溶性ジルコニウム化合物」等は、触媒の焼成または使用に際して分解、酸化、またはその他に転化されて、触媒活性形、通常は金属または金属酸化物(すなわち、ジルコニア)となるそれぞれの水溶性ジルコニウム含有化合物、錯体、前駆体等を指す。上述のように、その他の金属酸化物の水溶性前駆体を、ジルコニウム化合物の代わりに使用してもよい。
【0093】
1つ以上の実施形態においては、イオン強度を高めるために、塩、例えばNH4NO3またはNH4OAcが、ジルコニウム化合物を含有する水性ウォッシュコート組成物に添加される。次いで、ジルコニル塩のようなジルコニウム化合物、例えば酢酸ジルコニルが水溶性であり、かつ乾燥の間に移行することを保証するために、pHを、例えばpH約4~5に調整/制御する。
【0094】
1つ以上の実施形態においては、ジルコニウム化合物は、イオン性ジルコニウム塩、共有結合された有機ジルコニウム錯体、共有結合された有機ジルコニル化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本明細書で使用される場合に、用語「有機ジルコニウム塩、化合物、または錯体」とは、Zr4+と任意のアニオン性有機配位子とが共有結合されて形成された錯体を指し、それはまたポリマー種を含んでもよい。1つ以上の実施形態においては、水溶性ジルコニウム化合物は、酢酸ジルコニウム、クエン酸ジルコニウム、酒石酸ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、アジピン酸ジルコニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本明細書で使用される場合に、用語「有機ジルコニル塩、化合物、または錯体」とは、ZrO2+と任意のアニオン性有機配位子とがイオン結合されて形成された錯体を指し、それはまたポリマー種を含んでもよい。1つ以上の実施形態においては、水溶性ジルコニウム化合物は、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニル、硫酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、酒石酸ジルコニル、乳酸ジルコニル、アジピン酸ジルコニル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0095】
粒子形状および粒度
本発明の実施形態による触媒は、粉体または噴霧された材料の形で、デカンテーション、濾過、遠心分離、または噴霧を含む分離技術から提供されてよい。
【0096】
一般的に、前記粉体または噴霧された材料は、他の化合物を一切用いずに、例えば適切な圧縮成形によって成形することで、所望の形状の成形物、例えばタブレット、円筒物、球状物等を得ることができる。
【0097】
例としては、前記粉体または噴霧された材料は、当該技術分野で良く知られた適切な改質剤と混合されるか、または該改質剤で被覆される。例としては、シリカ、アルミナ、ゼオライトまたは耐火性バインダー(例えばジルコニウム前駆体)のような改質剤を使用することができる。該粉体または噴霧された材料は、任意に適切な改質剤との混合または該改質剤による被覆の後に、例えば水によってスラリーへと形成することができ、それは次いで、適切な耐火性担体、例えばフロースルー型ハニカム型基材担体またはウォールフロー型ハニカム型基材担体上に堆積される。
【0098】
本発明の実施形態による触媒は、粒状触媒の充填床として、またはプレート、サドル、チューブ等のような成形品として使用するための任意のその他の適切な形状の押出物、ペレット、タブレットまたは粒子の形で提供することもできる。
【0099】
SCR活性
1つ以上の実施形態においては、1つ以上の実施形態の選択的接触還元触媒を含む被覆された基材は、ガス空間速度80000h-1で測定して200℃でのエージング後のNOx転化率少なくとも50%を示す。具体的な実施形態においては、該触媒は、ガス空間速度80000h-1で測定して450℃でのエージング後のNOx転化率少なくとも70%を示す。より具体的には、ガスの毎時体積ベースの空間速度80000h-1で定常状態の条件下で、500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のH2O、残部N2のガス混合物中の最大NH3スリップ条件で測定されて、200℃でのエージング後のNOx転化率は、少なくとも55%、450℃の場合に少なくとも75%であってよく、さらにより具体的には、200℃でのエージング後のNOx転化率は、少なくとも60%、450℃の場合に少なくとも80%である。被覆された基材または「コア部」を、管状炉内において10%のH2O、10%のO2、残部N2を含むガス流中で空間速度4000h-1で750℃で5時間にわたって水熱エージングした。
【0100】
SCR活性測定は、刊行物(例えば、PCT出願公開の国際公開第2008/106519号パンフレット(WO2008/106519)を参照のこと)において実証されている。
【0101】
さらに、1つ以上の実施形態によれば、前記触媒は、より低いN2O生成に効果的である。
【0102】
基材
1つ以上の実施形態においては、触媒組成物は、基材へとウォッシュコートとして適用されてよい。本明細書で使用される場合に、用語「基材」とは、触媒が、一般的にウォッシュコートの形で配置されるモノリス型の材料を指す。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中の触媒の特定の固体含有量(例えば30質量%~90質量%)を含むスラリーを調製し、それを次いで基材上に被覆し、乾燥させてウォッシュコート層を得ることによって形成される。
【0103】
1つ以上の実施形態においては、前記基材は、フロースルー型ハニカムモノリス、ウォールフロー型フィルター、フォーム、またはメッシュの1つ以上から選択され、該触媒は、基材にウォッシュコートとして適用される。
【0104】
1つ以上の実施形態によれば、触媒組成物のための基材は、自動車触媒の製造のために一般的に使用される任意の材料から作製されてよく、かつ一般的に金属またはセラミック製のハニカム構造を含むと考えられる。該基材は、一般的に、触媒組成物がその上に適用され、付着され、それにより触媒組成物のための担体として働く複数の壁面を提供する。
【0105】
例示される金属製基材には、耐熱性金属および金属合金、例えばチタンおよびステンレス鋼、ならびに鉄が実質的成分または主成分であるその他の合金が含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムの1種以上を含有してよく、これらの金属の合計量は、有利には合金の少なくとも約15質量%を含んでよく、例えば、約10質量%~25質量%のクロム、約3質量%~8質量%のアルミニウム、および20質量%までのニッケルを含んでよい。該合金は、少量または微量の1種以上のその他の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタン等を含有してもよい。表面または金属担体は、高温で、例えば1000℃以上で酸化されて、基材表面上に酸化層を形成し、合金の耐食性が改善され、そしてウォッシュコート層の金属表面への付着が促進され得る。
【0106】
基材の作製に使用されるセラミック材料には、任意の適切な耐火性材料、例えばコーディエライト、ムライト、コーディエライト-α-アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニアムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコニウム、ペタライト、α-アルミナ、アルミノケイ酸塩等が含まれ得る。
【0107】
任意の適切な基材、例えばモノリス型フロースルー型基材であって、該基材の入口面から出口面まで延びた細かい平行のガス流通路を有し、こうして流体の流動のために通路が開放している基材を使用することができる。その入口から出口まで本質的に直線の経路である通路は、ウォッシュコートとして触媒材料が被覆されている壁部によって区画され、こうして該通路中を流れるガスは触媒材料と接触する。該モノリス型基材の流路は薄壁型通路であり、該通路は、例えば台形、長方形、正方形、折曲状、六角形、楕円形、円形等の任意の適切な断面形状を有してよい。そのような構造は、約60個から約1200個以上の1平方インチの断面積当たりのガス入口開口(すなわち、「セル」)(cpsi)、より一般的には約300個~600個のcpsiを含んでよい。フロースルー型基材の壁厚は、0.002インチから0.1インチの間の典型的な範囲で変動し得る。代表的な市販のフロースルー型基材は、400個のcpsiおよび6milの壁厚、または600個のcpsiおよび4milの壁厚を有するコーディエライト基材である。しかしながら、本発明は、特定の基材型、材料、または形状に制限されないものと理解されるであろう。
【0108】
択一的な実施形態においては、前記基材は、各々の通路が、基材本体の一方の端部で非多孔質プラグで塞がれており、交互の通路が反対側の端面で塞がれているウォールフロー型基材であってよい。これは、ガス流がウォールフロー型基材の多孔質壁部を通じて出口に到達することを必要とする。そのようなモノリス型基材は、約700個以上のcpsi、例えば約100個~400個のcpsi、より一般的には約200個~約300個のcpsiを有してよい。セルの断面形状は、前記のように様々であってよい。ウォールフロー型基材は、一般的に、0.002インチから0.1インチの間の壁厚を有する。代表的な市販のウォールフロー型基材は、多孔質コーディエライトから作製されており、その1つの例は、200個のcpsiおよび10milの壁厚、または300個のcpsiと共に8milの壁厚、ならびに45%~65%の間の壁部気孔率を有する。その他のセラミック材料、例えばチタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、および窒化ケイ素も、ウォールフロー型フィルター基材として使用される。しかしながら、本発明は、特定の基材型、材料、または形状に制限されないものと理解されるであろう。留意すべきは、基材がウォールフロー型基材である場合に、DOC組成物は、壁部表面に配置されている他に、多孔質壁部の細孔構造中に侵入し得る(すなわち、細孔開口を部分的にまたは完全に塞いでいる)ことである。
【0109】
図15は、本明細書に記載された触媒組成物で被覆されたハニカム型モノリスの形の例示される基材2を図解している。例示される基材2は、円柱形状を有し、円柱外面4、上流端面6、および端面6と同一である、対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の細い並行したガス流路10を有する。フロースルー型モノリスの場合に、通路10は、一般的に塞がれていないため、流体、例えばガス流が担体2中を長手方向にそのガス流路10を介して流動することが可能である。あるいは基材2は、先に詳細に述べられたようにウォールフロー型フィルターの形であってよい。そのような一実施形態においては、当該技術分野において理解されるように、各々のガス流路10は、入口端部または出口端部のどちらかで塞がれており、該通路の壁部が多孔質であることで、ガスが一方のガス流路から隣接するガス流路中に通過することが可能となる。所望であれば、触媒組成物は、多くの異なる層で適用することができる。本発明は、1層以上(例えば、2層、3層、または4層)のウォッシュコート層で実施され得る。
【0110】
基材を1つ以上の実施形態の触媒で被覆するために、該基材は、触媒スラリーの一部に垂直に、基材の頂部がちょうど該スラリーの表面の上方に位置するように浸される。こうして、スラリーは、それぞれのハニカム壁の入口面に接触するが、それぞれの壁部の出口面との接触は妨げられる。試料は、スラリー中で約30秒間にわたってそのまま置く。基材をスラリーから取り出し、過剰のスラリーを該基材から、まず通路からそれを流れ出させ、次に圧縮空気を吹き入れ(スラリーの浸透方向に逆らって)、そして次にスラリーの浸透方向から真空引きすることによって除去する。この技術を使用することによって、ウォールフロー型基材の場合には、触媒スラリーは、基材の壁部に浸透するものの、それらの細孔は、完成した基材中に過度の背圧が生ずる程度まで塞がれない。本明細書で使用される場合に、用語「浸透」とは、基材上の触媒スラリーの分散液を説明するために使用されるときに、触媒組成物が基材壁部全体にわたって分散され、こうして少なくとも部分的に該壁部中の細孔が塞がれることを意味する。
【0111】
被覆された基材は、一般的に約100℃で乾燥され、そしてより高い温度(例えば300℃~450℃)で焼成される。焼成後に、触媒負荷量は、基材の被覆後の重さと未被覆の時の重さの計算によって測定することができる。当業者に明らかであるように、触媒負荷量は、被覆スラリーの固体含有量を変更することによって変えることができる。それとは別に、被覆スラリー中での基材の繰り返しの浸漬を行った後に、前記のように過剰のスラリーを除去することができる。
【0112】
触媒の製造
1つ以上の実施形態によれば、選択的接触還元触媒の合成方法が提供される。より具体的には、該触媒は、細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有し、かつ促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブと、該促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブ上のジルコニア含有層とを含み、その際、前記ジルコニア含有層は、一般的に、約10nm~約500nmの範囲内の平均粒度を有するジルコニア粒子を有する。
【0113】
参照を容易にするために、上記記載は、ジルコニアゾルの使用に焦点を絞っている。しかしながら、その他の金属酸化物も、本発明から逸脱することなく使用することができると理解される。1つの実施形態においては、該触媒は、金属塩(例えば、硝酸塩または酢酸塩)を水性系ジルコニアゾル、例えば制限されるものではないが、コロイド状水酸化ジルコニル中に溶解させることによって製造することができる。1つ以上の実施形態においては、金属塩は、La、Ce、Nd、Pr、Cu、Mn、Fe、Ni、Ti、Cr、Zn、Sn、V、Nb、Mo、Hf、Y、およびWからなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩である。該金属塩は、水性系ジルコニアゾル中に溶解および解離することで、可溶性の水性系金属塩/ジルコニアゾル混合物が形成される。例示される金属塩には、硝酸銅(II)、酢酸銅(II)、硝酸鉄(III)、および酢酸鉄(III)が含まれる。水性系ジルコニアゾルは、約10nm~約500nmの範囲内の平均粒度を有するジルコニア粒子を有する。約50%~100%の初期湿分の濃度を有する水性系金属塩(すなわち、促進剤金属)/ジルコニアゾル混合物が形成される。1つ以上の実施形態においては、より高い初期湿分、特に100%に迫る初期湿分が望ましい。
【0114】
引き続き、アンモニウム交換またはプロトン交換されたモレキュラーシーブは、該金属塩/ジルコニアベースのゾル混合物で含浸される。含浸は、当該技術分野において粉体と溶液または分散液との混合のために公知の様々な任意のミキサー、例えば液体をミキサー中に噴霧するためのノズルを備えたリボンミキサーまたは遊星型ミキサー中で行われ得る。含浸された材料は、空気中で乾燥および焼成され、ジルコニア含有層を備えた金属交換/促進されたモレキュラーシーブを含む触媒が形成される。含浸された材料の焼成は、箱形焼成法、ロータリーキルン中での焼成、または流動床型焼成装置の使用による焼成を含む当該技術分野で公知の様々な技術を使用して行われ得る。単回工程における気流乾燥および焼成(例えば、流動床型焼成装置を使用する)が、特定の実施形態においては好ましい。それというのも、そのような方法は、短時間の滞留時間をもたらし、粒子レベルで均一な乾燥/焼成をもたらすからである。
【0115】
理論により縛られるものと解釈されるものではないが、乾燥および焼成に際して、金属塩由来の金属は、小細孔モレキュラーシーブの細孔に入り込み、H2O蒸気の存在下または不存在下で濃度勾配効果を介してブレンステッド酸部位に移行し、その後に促進剤金属として働くが、一方で、ジルコニア(またはその他の金属酸化物)の粒子は、該モレキュラーシーブの細孔構造に入り込まないと考えられる。その代わりに、ジルコニアは、小細孔モレキュラーシーブ上に、および/または粒子の間に富化層(ジルコニア含有層)を形成し、それらの粒子同士が結合して、金属で促進されたゼオライト粒子の凝集物が形成される。
【0116】
1つ以上の実施形態においては、少なくとも1種のバインダー化合物は、粒子がジルコニアで富化されたモレキュラーシーブ粉体の添加および分散後に、水性系ウォッシュコート調製物に添加される。バインダーを含むウォッシュコートを、次いで基材に適用し、乾燥させ、そして焼成することで、最終触媒材料が製造される。そのような1種以上の追加のバインダーは、当業者に公知の任意のバインダーから選択することができる。1つ以上の実施形態においては、追加のバインダーは、当業者に公知のチタニアバインダー、アルミナバインダー、ジルコニアバインダー、またはシリカバインダーであってよい。例えば、制限されるものではないが、該バインダーは、オキシ塩化チタン(TiOCl2)、オキシ硫酸チタン(TiOSO4)、アルミニウム三水和物(Al(OH)3)、ベーマイト(AlO(OH))、硝酸アルミニウムAl(NO33、SiO2ゾル(例えば、市販のNalco(登録商標)1034A)、およびジルコニア化合物から選択することができる。
【0117】
NO x 還元法および排気ガス処理システム
一般的に、前記のジルコニア含有層を有するモレキュラーシーブ材料は、モレキュラーシーブ、吸着材、触媒、触媒担体またはそれらのバインダーとして使用することができる。1つ以上の実施形態においては、該材料は触媒として使用される。
【0118】
本発明のもう一つの態様は、化学反応を触媒する方法であって、1つ以上の実施形態の触媒を使用して、化学反応を触媒することができ、ここで、該触媒が触媒活性材料として使用される方法に関する。
【0119】
なかでも、前記触媒を、窒素酸化物(NOx)の選択的還元(SCR)のための、NH3の酸化のための、特にディーゼルシステムにおけるNH3スリップの酸化のための触媒として使用することができる。
【0120】
1つ以上の実施形態は、窒素酸化物(NOx)の選択的還元の方法を提供する。1つ以上の実施形態においては、前記方法は、NOxを含有する排気ガス流と、1つ以上の実施形態の触媒とを接触させることを含む。特に、本発明の実施形態の窒素酸化物の選択的還元であって、該選択的接触還元触媒が、細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有し、かつ促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブと、該促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブ上のジルコニア(またはその他の金属酸化物)含有層とを含む選択的還元は、アンモニアまたは尿素の存在下で実施される反応における触媒活性材料として使用される。
【0121】
アンモニアは定置式発電所のために選択される還元剤である一方で、尿素は、移動式SCRシステムのために選択される還元剤である。一般的に、SCRシステムは、車両の排気ガス処理システム中に組み込まれ、また一般的に、以下の主要構成要素:細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有し、かつ促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブと、該促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブ上のジルコニア(またはその他の金属酸化物)含有層とを含む本発明の実施形態による選択的接触還元触媒、ならびにSCR触媒物品から上流側に位置しているアンモニアまたはアンモニア前駆体(例えば、尿素)等の還元剤を噴射するインジェクターを備えている。具体的な実施形態においては、該システムは、尿素貯蔵タンク、尿素用ポンプ、尿素計量供給システム、尿素用インジェクター/ノズル、およびそれぞれの制御ユニットを備え得る。
【0122】
その他の実施形態においては、1つ以上の実施形態によるSCR触媒は、リーンバーンガソリン直噴(GDI)エンジン用の排気ガス処理システムにおけるSCR触媒として使用される。そのような場合において、1つ以上の実施形態によるSCR触媒は、パッシブ型アンモニアSCR触媒として働き、400℃以上の温度で効果的にアンモニアを吸蔵することができる。
【0123】
本明細書で使用される場合に、用語「流」とは、概して、固体または液体の粒状物を含有する流動ガスの任意の組み合わせを指す。用語「ガス流」または「排気ガス流」とは、ガス状成分流、例えば液体小滴、固体粒状物等のような非ガス状成分を連行して含有し得るリーンバーンエンジン(すなわち、過剰な酸素の存在下で燃料を燃焼するエンジン)の排ガス流を意味する。リーンバーンエンジンの排ガス流は、一般的に、燃焼産物、不完全燃焼の産物、窒素酸化物、燃焼性および/または炭素質の粒状物(スート)ならびに未反応の酸素および窒素をさらに含む。
【0124】
本発明の実施形態の文脈で使用される場合に、窒素酸化物NOxという用語は、窒素の酸化物、特に酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、三酸化二窒素(N23)、二酸化窒素(NO2)、四酸化二窒素(N24)、五酸化二窒素(N25)、過酸化窒素(NO3)を示す。
【0125】
本発明のさらなる一態様は、排気ガス処理システムに関する。1つ以上の実施形態においては、該排気ガス処理システムは、アンモニア、尿素および/または炭化水素、具体的な一実施形態においては、アンモニアおよび/または尿素のような還元剤を場合により含有する排気ガス流、ならびに細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有し、かつ促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブと、該促進剤金属を含む小細孔モレキュラーシーブ上のジルコニア(またはその他の金属酸化物)含有層とを含む1つ以上の実施形態によるウォッシュコートを含む選択的接触還元触媒を含む。該該触媒は、排気ガス流中のアンモニアの少なくとも一部を破壊するために有効である。
【0126】
1つ以上の実施形態においては、前記触媒は、基材、例えばスートフィルター上に配置されてよい。触媒化されたまたは触媒化されていないスートフィルターが、触媒の上流側または下流側に存在してよい。1つ以上の実施形態においては、前記システムは、ディーゼル酸化触媒をさらに含んでよい。具体的な実施形態においては、ディーゼル酸化触媒は、触媒材料の上流側に配置される。その他の具体的な実施形態においては、ディーゼル酸化触媒および触媒化されたスートフィルターは、触媒材料から上流側にある。
【0127】
具体的な実施形態においては、排ガスは、エンジンから排ガスシステム中の下流側の位置へと運ばれ、該排ガスは、より具体的な実施形態においては、NOxを含んでおり、ここで還元剤、例えば尿素が添加され、添加された還元剤と一緒に排ガス流は触媒へと運ばれる。
【0128】
例えば、触媒化されたスートフィルター、ディーゼル酸化触媒および還元剤は、国際公開第2008/106519号パンフレット(WO2008/106519)(該文献は、参照により本明細書で援用される)に記載される。具体的な実施形態においては、スートフィルターは、通路が交互に塞がれることで、ガス流が一方向(入口方向)から通路に入って、通路壁を通過して流れて、その通路からは他方向(出口方向)から出て行くウォールフロー型フィルター基材を含む。
【0129】
アンモニア酸化触媒(AMOx)は、前記システムからあらゆるスリップアンモニアを除去するために、1つ以上の実施形態の触媒の下流側に設けられてよい。具体的な実施形態においては、AMOx触媒は、白金族金属、例えば白金、パラジウム、ロジウムまたはそれらの組み合わせを含んでよい。
【0130】
そのようなAMOx触媒は、SCR触媒を含む排ガス処理システム中で有用である。本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,516,497号(該文献の全内容は、参照により本明細書で援用される)で論じられるように、酸素、窒素酸化物およびアンモニアを含有するガス流は、第一の触媒と第二の触媒を順次通過してよく、ここで、第一の触媒は、窒素酸化物の還元を担い、かつ第二の触媒は、過剰のアンモニアの酸化またはその他の分解を担う。米国特許第5,516,497号に記載されるように、第一の触媒は、ゼオライトを含むSCR触媒であってよく、かつ第二の触媒は、ゼオライトを含むAMOx触媒であってよい。
【0131】
1種以上のAMOxおよび/またはSCR触媒組成物は、フロースルー型フィルターまたはウォールフロー型フィルター上に被覆されてよい。ウォールフロー型基材が利用されるのであれば、得られたシステムは、ガス状汚染物質と一緒に粒状物を除去することも可能となる。該ウォールフロー型フィルター基材は、当該技術分野において通常知られる材料、例えばコーディエライト、チタン酸アルミニウムまたは炭化ケイ素から製造できる。触媒組成物のウォールフロー型基材上での負荷量は、基材特性、例えば多孔性および壁厚に依存し、一般的にフロースルー型基材上の負荷量よりも少ないことが理解されるであろう。
【0132】
1つの例示的な排出ガス処理システムは、図16に図解されており、それは、排出ガス処理システム32の概略図を示している。示されるように、ガス状汚染物質および粒状物を含む排気ガス流は、排気管36を介してエンジン34(例えば、ディーゼルエンジン、リーンGDIエンジン、またはその他のリーンバーンエンジン)からディーゼル酸化触媒(DOC)38を経由し、触媒化されたスートフィルター(CSF)を経由し、そして本発明のウォッシュコート組成物で被覆されている選択的還元触媒(SRC)へと運ばれる。DOC38においては、未燃焼のガス状の不揮発性炭化水素(すなわち、SOF)および一酸化炭素が大幅に燃焼されて、二酸化炭素および水が形成される。さらに、NOx成分のNOの割合がDOC中で酸化されてNO2となり得る。
【0133】
排ガス流は、次に排気管40を介して触媒化されたスートフィルター(CSF)42へと運ばれ、それにより排ガス流内に存在する粒状物が捕捉される。CSF42は、任意に、パッシブ型またはアクティブ型のスート再生のために触媒化されている。CSF42は、任意に、排気ガス中に存在するNOxの転化のために本発明のSRC組成物を含んでよい。
【0134】
CSF42を介して粒状物を除去した後に、排気ガス流は、排気管44を介して、下流側にある本発明の選択的接触還元構成要素46へと運ばれ、さらにNOxが処理および/または転化される。排気ガスは、SCR構成要素46を、触媒組成物が所定の温度で排気ガス中のNOxのレベルを減少するのに十分な時間を可能にする流速で通過する。SCR構成要素46は、CSF42が既にSCR触媒組成物を含む場合に、排出ガス処理システム中に任意に含まれていてよい。含窒素還元剤を排ガス流中に導入するためのインジェクター50は、SRC46の上流側に配置される。排気ガス流中に導入された含窒素還元剤は、NOxのN2への還元を促進し、水が気体として触媒組成物に曝露される。CSF42がSCR触媒をも含有する場合に、インジェクター50は、CSFの上流側の位置に移動され得る。
【0135】
ここで、本発明を以下の実施例を参照して説明する。本発明の幾つかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の詳細な説明に示される構成または方法工程の詳細に制限されるものでないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な様式で実施することができる。
【0136】
実施例
実施例1 - スラリーに添加される酢酸ジルコニルとしての10%のZrO 2
Cu交換されたCHA(3.25質量%のCuO、SAR 28)を、水中に分散させ、50Hzのインラインホモジナイザーを通じて再循環させ、大きな凝集物を破壊することで、14μm未満のD90が得られた。次いで、焼成後のウォッシュコート基準で10質量%の全バインダー負荷量に達するように、酢酸ジルコニルバインダーを添加した。得られたスラリーの最終pHは、約4.0であった。該混合物を次いで、コーディエライト基材上に被覆し、乾燥させ、そして450℃で焼成し、活性触媒コーティングを形成した。乾燥は、部材を通じた流れを促進するために強制通風加熱炉を使用して行った。酢酸ジルコニルは非常に可溶性であるため、酢酸ジルコニルは乾燥の間にウォッシュコート中を動き、CHAの表面上に富化層を形成した。最終ウォッシュコート組成は、被覆、乾燥および焼成の後に2.9%CuO、87.1%CHA、および10%ZrO2であった。
【0137】
図1を参照すると、SCR転化率は、10%ZrO2の場合に(僅か5%のZrO2で製造された同じウォッシュコートに対して)、200℃~300℃の低温端部では相対的に変化されず、そして高温端部よりは僅かに高い。
【0138】
酢酸ジルコニル溶液はまた、安定化のために過剰の酢酸を含有し(酢酸/ZrO2のモル比 約1.6)、そのためより多くのCuOが可溶性となり、表面に移行する。これにより、10%ZrO2の性能が落ちる450℃~600℃の間に観察された選択性の変化が説明される。それというのも、遊離のCuO(交換部位外)は、NH3を酸化させ、既にそこにある還元に対するより多くのNOxが事実上形成されることが知られているからである。
【0139】
図1に示されるように、ウォッシュコート表面上でのZrO2の富化は、すべての温度(200℃~600℃)で低減されたN2O生成の原因となる。この実験は、ウォッシュコート中の酸化ジルコニウム濃度とN2O生成との間の相関を図示しており、その際、より高い酸化ジルコニウム量は、低減されたN2O生成をもたらす。
【0140】
実施例2 - 5%の酢酸ジルコニルと、より高いスラリー導電率
より高い可溶性のZrの影響を調査するために、実施例1と同様であるが、酢酸ジルコニルとして5質量%だけのZrO2を添加して、1つのスラリーバッチを製造した。酢酸ジルコニルの添加後に、そのスラリーを、試料1および試料2と呼称する2つの試料に分けた。試料1は、さらに変更しなかったため、実施例1の組成物の1つと同じ組成を有していた。
【0141】
試料2に、0.1%の硝酸アンモニウム(NH4NO3)を添加して、導電率を高めた(Cole Parmer社の商品番号EW-19601-04を使用して測定)。導電率は、870μS/cmから2200μS/cmにまで増大し、両方のスラリーの最終pHは、4.4であった(第1表を参照)。
【0142】
第1表:ウォッシュコートスラリーの遠心分離後の水性液相中のCuおよびZrの可溶性
【表1】
【0143】
実施例1と同じ方法を使用して、該混合物を次いで、コーディエライト基材上に被覆し、乾燥させ、そして450℃で焼成し、活性触媒コーティングを形成した。乾燥は、部材を通じた流れを促進するために強制通風加熱炉を使用して行った。第1表は、試料2のZr可溶性が、試料1のそれよりも2倍高かったことを示している。可溶性は、スラリー試料を採取し、それを遠心分離管に加え、それをThermo Electron Corporation IEC CL40R遠心分離器を用いて2時間にわたり7800rpmにかけることによって測定した。得られた澄んだ無色透明ないし青色の上清(Cu2+がどれほど可溶であったかに依存する)を、誘導結合プラズマ(ICP)を使用して分析し、液相中の百万分率濃度を測定し、液相中の所定の元素の%可溶性画分を、スラリー固体含量およびウォッシュコート元素組成に基づき計算した。第1表および第2表(実施例3を参照)は、Zrの可溶性は、可溶性種(すなわち、ジルコニウム化合物)が乾燥の間にウォッシュコートの表面に移行することを容易にするためには、スラリー相中で15%より高く、100%に達するまで可溶である必要があることを裏付けている。
【0144】
図2および図3は、試料1および試料2のそれぞれの、被覆された基材セルの角部におけるウォッシュコートの部分に焦点を絞った走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図2(試料1)および図3(試料2)のEDSの表に示した結果は、両者とも表面上のZr元素およびCu元素の濃度がより高いことを示している。しかしながら、図3は、より高いCuおよびCrを含有する目に見える富化帯域を示しており、それは、第1表で実証されるように、水性スラリー相中に可溶である各々の元素の量と直接的に結びついている。
【0145】
図4は、各々の試料を特定の排出ガス処理システム中で使用した場合のNOx効率に関して試料2と試料1とを比較する棒グラフである(結果は、1試料につき2つの測定値とそれらの平均として報告される)。図4は、試料2(表面上でのより高いZrおよびCu、図3)が、試料1(図2)と比べて改善された性能を有することを示している。該システムの結果は、そのシステムにおける第一の触媒としての同じ/標準化された(一定の)DOCの使用(6.5インチ径×8インチ長で、70g/フィート3でPGMを有する)を含み、そのシステムにおける第二の触媒および第三の触媒は、8インチ径×6インチ長であり、Cu/CHA(SCR)スラリーで400/4.5で被覆されており、そしてそのシステム中の第四の触媒は、8インチ径×10インチ長の寸法の同じ/標準化された(一定の)触媒化されたスートフィルター(CSF)であった。完成したシステムは、低温性能が重要な中型車用途のためのものである。試験前に、該システムを、ディーゼル酸化触媒(DOC)排出口で測定して750℃で6.7Lエンジンを使用してエージングした。効率は、EPA75試験サイクルを使用して測定し、そして再生工程を一切伴わないDOCからSCR排出口の加重モーダルデータとして報告した。データが作成される温度は、180℃から220℃の間であり、データが記録される平均は約200℃であった。
【0146】
この実施例は、ウォッシュコート中での可溶性ジルコニウム種の存在が、ジルコニウムのウォッシュコート表面への高められた移行をもたらし、それが、低温NOx還元を改善することができることを確認している。しかしながら、上述のように、ウォッシュコートの外側部における可溶性ジルコニウム種の増大はまた、同じ領域における高められた銅濃度を同時に起こし、それは、ウォッシュコート被覆過程の間の高められた銅の移行の原因となる。このような銅の移行は、高温NOx転化を損なうことがある。
【0147】
実施例3 - 8%のZrO 2 /3.25%のCuO/CHA
工程1: 1.7kgの硝酸銅(II)結晶を、3.6kgの市販の15質量%のZrO2含有量を有する硝酸ベースのジルコニアゾル中に、室温で混合することにより溶解させた。
【0148】
工程2: 工程1からの溶液を、18.8kgの噴霧乾燥されたNH4/CHA粉体上に含浸させ、次いで同時に乾燥/焼成させた。この工程の生成物である3%のZrO2/3.25%のCuO/CHA粉体は、図5において、10000倍の倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)画像として示されている。そのSEM画像は、取り巻いているジルコニウム粒子(より明るい色の材料)と、中に分散されたゼオライト粒子(より暗色のより大きな粒子)の存在を示している。
【0149】
工程3: 工程2からの焼成された粉体を、次いで水中に分散させ、50Hzのインラインホモジナイザーを通じて再循環させ、大きな凝集物を破壊することで、14μm未満のD90が得られた。バインダーとしての追加の5質量%の酢酸ジルコニルを、焼成後にウォッシュコート基準で約8質量%の全ZrO2負荷量に達するように添加した。得られたスラリーの最終pHは、3.8であった。
【0150】
該混合物を次いで、コーディエライト基材上に被覆し、乾燥させ、そして450℃で焼成し、活性触媒コーティングを形成した。乾燥は、部材を通じた流れを促進するために強制通風加熱炉を使用して行った。最終ウォッシュコート組成は、被覆、乾燥および焼成の後に3.1%CuO、89.1%CHA、および7.8%ZrO2であり、第2表において試料3と呼称されている。第2表は、試料3が、3%ZrO2/3.25%CuO/CHA粉体製造工程の迅速な乾燥/焼成を含んだ予備調製のため、低いCuおよびZr可溶性を有したことを示している。空気中でのこの迅速な乾燥および焼成は、1.5秒未満で迅速な濃度勾配を生じ、それがCu2+をブレンステッド酸部位に移動させる駆動力を生じた。
【0151】
試料4は、Cu交換されたCHA(3.25質量%のCuO、SAR 28)を、水中に分散させ、50Hzのインラインホモジナイザーを通じて再循環させ、大きな凝集物を破壊することで、14μm未満のD90を得ることにより調製した。次いで、焼成後のウォッシュコート基準で5質量%の全バインダー負荷量に達するように、酢酸ジルコニルバインダーを添加した。得られたスラリーの最終pHは、約4.3であった。該混合物を次いで、コーディエライト基材上に被覆し、乾燥させ、そして450℃で焼成し、活性触媒コーティングを形成した。試料4の最終組成は、3.1%のCuO/5.0%のZrO2/91.9%のCHAであった。試料4は、試料3と比較してスラリー相中により高い可溶性のCuおよびZrを含有していた。
【0152】
第2表:ウォッシュコートスラリーの遠心分離後の水性液相中のCuおよびZrの可溶性
【表2】
【0153】
図6A図6Dは、試料4の材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像の集まりである。左上の囲み(6A)は、50倍の倍率での単位基材セル内のウォッシュコートの分布を示すSEM顕微鏡写真である。反時計回りに進んで、左下の囲い(6B)は、電子分散型分光分析(EDS)マッピングを使用したウォッシュコート中のCuの分布を示しており、かつCuが、コーティング表面に僅かな富化を伴ってウォッシュコート全体に一様に分布していることを図解している。続けて反時計回りに、右下隅の顕微鏡写真(6C)は、EDSによるZr分布を示している。ウォッシュコート表面に特徴的なZr富化帯域が存在し、それは、第2表におけるZr可溶性と相関している。右上隅には10000倍で、約1μm~3μmの厚さの表面上のZr富化層に焦点を絞ったもう一つのSEM顕微鏡写真(6D)がある。図6A図6Dは、実施例1および実施例2についても観察されたように、ウォッシュコート表面上にあるZrO2の富化を実証している。
【0154】
図7A図7Dは、試料3の材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像の集まりである。これらの図面は、低減された量の可溶性CuおよびZrを有する試料が富化層を一切形成しなかったことを裏付けているが、ナノ-ZrO2による幾らかの成層および粒子間結合が示され、ウォッシュコートはまた、より多孔質であるようにも見える。左上隅の囲み(7A)は、50倍の倍率での単位基材セル内のウォッシュコートの分布を示している。続けて反時計回りに、左下隅(7B)は、Cuがウォッシュコート全体に一様に分散していることを裏付けている。右下隅(7C)は、Zrが、より高い濃度の領域(より明色の領域)を伴ってウォッシュコート全体に分散しており、そのような領域は、その他の試料にも存在するが、それらはZr濃度が増大するにつれてより行き渡ることを示している。Zrの富化は、ウォッシュコート層の表面上には示されていない。最後に右上隅(7D)では、Zrは、幾つかの粒子の表面上に明らかに現れ、粒子間で橋かけを形成している。そのコーティングも、より多孔質であるように見える。CHAの微粒子は、ZrO2/Cu/CHA複合粉体の製造工程の間の気流乾燥/焼成工程の間に、より大きな粒子と一緒に結合されると考えられる。後にスラリー調製/ウォッシュコート作製工程の間に添加される酢酸ジルコニルは、被覆された基材の乾燥および焼成の工程の間に粒子同士をさらに結合し、最終的な7.8%のZrO2/3.1%のCuO、89.1%のCHAウォッシュコート層が形成される。
【0155】
第3表は、反応器のガス組成および試験プロトコールの概略を述べている。
【0156】
第3表:SCR CAEF
【表3】
【0157】
図8は、ウォッシュコートの表面上にZr富化を含む試料4と比較した、試料3の材料についての、200℃、250℃、および525℃でのNOx還元を示す棒グラフである。まずは試料を、10%スチームおよび空気中で4時間にわたり700℃でエージングした。それらの試料を次いで、第3表に従って反応器中で試験した。図8は、200℃および250℃でのNOxの還元が、僅かに改善され、NOx転化率は、525℃ではより大幅に高いことを裏付けている。試料3(より高いジルコニウム負荷量と、より低い可溶性ジルコニウム種を有する)により示されるより幅広い性能窓は、ブレンステッド酸部位とのCu2+の改善された交換の指標であり、3%ZrO2/3.25%CuO/CHA粉体を導入する前に熱的固定して、組成7.8%ZrO2/3.1%CuO/89.1%CHAを有する最終ウォッシュコートをN400/4基材上に作製する工程の利点である。
【0158】
図9は、実施例3の材料についての様々な温度でのNH3スリップ、NH3吸蔵、およびN2O生成を示す棒グラフである。図9は、N2Oが、試料3の材料について、試料4の材料と比較してさらに低減されたことを裏付けている。これは、粒子レベルでの富化を伴ってより高いZrO2濃度(試料4の場合の5%に対して8%)を有し、スラリー相中の低減された可溶性CuおよびZrが、Cu2+とブレンステッド酸部位とのより効果的な交換と結びつくものと説明され得る。この実施例は、ウォッシュコート中での酸化ジルコニウム濃度の増大の利点(例えば、低減されたN2O生成および低温での改善されたNOx還元)は、不所望な銅の移行を引き起こすことなく、可溶性ジルコニウム種への依存を減らして、高められた酸化ジルコニウム濃度を得ることにより達成できることを示している。
【0159】
実施例4 - 3.25%のCuO/CHA上の5%のナノ-セリア/ジルコニア
3.8kgの3.25%のCuO/CHAをまずは、6.2kgの水中に分散させ、50Hzのインラインホモジナイザーを通じて再循環させ、大きな凝集物を破壊することで、20μm未満のD90を有する粒度分布を達成する。この混合物に、794グラムの、第4表に規定される(Ce45Nd5Zr50)O2の水性分散液を加え、そしてホモジナイザーを通した再循環を、粒度分布がD90<14μmを有するまで続ける。最終スラリーのpHは、4.6であった。
【0160】
該混合物を次いで、コーディエライト基材上に被覆し、乾燥させ、そして450℃で焼成し、活性触媒コーティングを形成した。乾燥は、部材を通じた流れを促進するために強制通風加熱炉を使用して行った。最終ウォッシュコート組成は、被覆、乾燥および焼成の後に2.25%CeO2、0.25%Nd23、2.51%ZrO2、3.09%CuOおよび91.91%CHAであり、それは、第5表において試料5と呼称されている。
【0161】
試料6は、Cu交換されたCHA(3.25質量%のCuO、SAR 28)を、水中に分散させ、50Hzのインラインホモジナイザーを通じて再循環させ、大きな凝集物を破壊することで、14μm未満のD90を得ることにより調製した。次いで、焼成後のウォッシュコート基準で5質量%の全バインダー負荷量に達するように、酢酸ジルコニルバインダーを添加した。得られたスラリーの最終pHは、約4.3であった。該混合物を次いで、コーディエライト基材上に被覆し、乾燥させ、そして450℃で焼成し、活性触媒コーティングを形成した。試料6の最終組成は、3.1%のCuO/5.0%のZrO2/91.9%のCHAであった。
【0162】
第4表: CeO 2 およびNd 2 3 でドープされたZrO 2 の1μm未満の粒子の水性分散液
【表4】
【0163】
第5表:ウォッシュコートスラリーの遠心分離後の水性液相中のCuおよびZrの可溶性
【表5】
【0164】
図10A図10Dは、試料5の材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像の集まりである。左上の囲み(10A)は、25倍の倍率での多単位基材セル内のウォッシュコートの分布を示すSEM顕微鏡写真である。反時計回りに進んで、左下の囲い(10B)は、電子分散型分光分析(EDS)マッピングを使用したウォッシュコート中のCeの分布を示しており、かつCeが、ウォッシュコート全体に一様に分布していることを示している。ZrおよびNdの両方とも、第4表に規定されるゾルの組成に基づいてよく分散されていることが推論される。続けて反時計回りに、右下の顕微鏡写真(10C)は、Cuがウォッシュコート全体に一様に分散されていることを示しており、最後に右上の顕微鏡写真(10D)は、500倍に拡大されるとコーティング中の多孔質が明らかになることを示している。
【0165】
図11を参照すると、SCR転化率は、200℃~250℃で僅かに改善されたが、試料5は、250℃~600℃の間の温度では試料6よりも僅かに劣っていた。図12は、試料5が、N2O生成に関して試料6より僅かに劣っていることを示している。操作の理論によって縛られるものではないが、CeO2の酸化的特性が、少なくとも部分的にこの結果の原因であると思われる。しかしながら、セリア-ジルコニア複合材料の使用は、再生の間のスートの酸化に関して改善された質を有し、それによりゼオライトの汚損が最小限となると考えられる。さらに、セリアと比較してより多くの量のジルコニアを混ぜている金属酸化物複合物は、N2O生成の所望の低減を達成することができた。
【0166】
実施例5 - 3.25%のCuO/CHA上の6%のZrO 2
1.7kgの硝酸銅(II)結晶を、7.2kgの市販の15質量%のZrO2含有量を有する硝酸ベースのジルコニアゾル(第一稀元素化学工業株式会社から入手可能なZSL-15N)中に、室温で混合することにより溶解させた。得られた溶液を、18.2kgの噴霧乾燥されたNH4/CHA粉体上にミキサー中で含浸させ、次いで同時に乾燥/焼成させた。この工程の生成物は、6%ZrO2/3.25%CuO/CHA粉体である。その焼成された粉体を、次いで水中に分散させ、50Hzのインラインホモジナイザーを通じて再循環させ、大きな凝集物を破壊することで、14μm未満のD90が得られた。空気中でのこの迅速な乾燥および焼成は、1.5秒未満で迅速な濃度勾配を生じ、理論により縛られるものではないが、それがCu2+をブレンステッド酸部位に移動させる駆動力を生ずると考えられる。
【0167】
図13は、標準的な3.25%のイオン交換されたCu/CHA材料と、この実施例で調製された6%ZrO2/3.25%CuO/CHAとを比較する粉体反応器温度曲線を示しており、その際、左手側のy軸は、NOxの転化率%を示し、右手側のy軸は、ppmでのN2O生成を示している。そのグラフにおいて、三角形は、ジルコニア変性された材料のNOx転化率を示し、正方形は、比較Cu/CHA材料のNOx転化率を示し、丸形は、ジルコニア変性された材料についてのN2O生成を示し、かつ菱形は、比較CuCHA材料についてのN2O生成を示している。示されるように、CHA材料のジルコニアによる変性は、改善された低温でのNOx転化率をもたらし、僅かに高められた低温でのN2O生成をもたらす。高温NOx性能は、両方の材料で大体同じであり、ジルコニア変性された材料は、より高い温度での改善されたN2O生成をもたらす。
【0168】
実施例6 - 3.25%のCuO/CHA上の6%のAl 2 3
1.7kgの硝酸銅(II)結晶を、5.4kgの市販の20質量%のAl23含有量を有する硝酸ベースのアルミナゾル(Sasol社から入手可能なDispal 23N4-20)、つまり大結晶ベーマイト材料中に、室温で混合することにより溶解させた。得られた溶液を、18.2kgの噴霧乾燥されたNH4/CHA粉体上に、その溶液をCHA粉体上に吹き付けることによってミキサー中で含浸させ、次いで同時に乾燥/焼成させた。この工程の生成物は、6%Al23/3.25%CuO/CHA粉体である。その焼成された粉体を、次いで水中に分散させ、50Hzのインラインホモジナイザーを通じて再循環させ、大きな凝集物を破壊することで、14μm未満のD90が得られた。空気中でのこの迅速な乾燥および焼成は、1.5秒未満で迅速な濃度勾配を生じ、理論により縛られるものではないが、それがCu2+をブレンステッド酸部位に移動させる駆動力を生ずると考えられる。
【0169】
実施例5および実施例6の触媒材料を、10%のH2Oの存在下で800℃で6時間にわたり水熱的にエージングし、未変性のCuO/CHA材料を同じ条件下でエージングしたものと比較して、NOx転化性能について試験した。結果は、図14に示されており、ジルコニアゾルまたはアルミナゾルを含有しないCuO/CHA材料は、菱形で表されている。実施例5の触媒材料(6%のZrO2/3.25%のCuO/CHA)は、三角形により表されており、かつ実施例6の触媒材料(6%のAl23/3.25%のCuO/CHA)は、正方形により表されている。その図面に示されるように、ジルコニアまたはアルミナで変性されたCHA材料は、より高い温度で未変性の材料を凌いでいる。
【0170】
実施例7 - 4.4%のCuO/CHA上の8%のZrO 2 /2%のY 2 3
0.5kgの市販の60/40のZrO2/Y23の混合ゾルを、0.17kgの90%酢酸を含む41kgの脱イオン水中に分散させる。2.2kgの市販の15質量%のZrO2含有量を有する硝酸ベースのジルコニアゾル(第一稀元素化学工業株式会社製のZSL-15N)を、先の工程で作製された分散液に、室温で混合することにより添加する。5.4kgの噴霧乾燥された4.91%のCuO/CHAを、得られた分散液に添加し、こうして8%ZrO2/2%Y23/4.40%CuO/CHAが生成する。先の工程からの生成混合物を、50Hzのインラインホモジナイザーを通じて再循環させ、大きな凝集物を破壊することで、14μm未満のD90が得られた。得られたスラリーを、次いで400/4コーディエライト基材上に被覆し、乾燥させ、450℃で焼成することで、2.75g/インチ3の乾燥増分が得られる。
【0171】
用語「不定冠詞(a)」および「不定冠詞(an)」および「定冠詞(the)」ならびに本明細書で(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)論じられる材料および方法の記載に関する同様の指示対象の使用は、本明細書で特に示されない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を対象に含めるものと解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の指示は、特に記載がない限り、単にその範囲内に含まれるそれぞれ別々の値を個別に指す略式法としての役割を果たすことだけが意図され、そして各々の個別の値は、その値が本明細書で個別に指示されたかのごとく、本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に示されない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書中で規定される任意の全ての例または例示的な言い回し(例えば、「例えば(such as)」)は、単に前記材料および方法をより良く説明すること目的としているだけであり、特に特許請求の範囲に記載されない限りは、その範囲に制限を与えるものではない。本明細書中のどの言い回しも、開示された材料および方法の実施に必須のあらゆる特許請求の範囲に記載されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0172】
本明細書全体を通した「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」または「実施形態」への言及は、該実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味している。したがって、「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」または「実施形態において」のような文言が本明細書全体を通して様々な箇所で現れることは、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、それらの具体的な特徴、構造、材料または特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な様式で組み合わされていてよい。
【0173】
本発明を本明細書において特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、単に本発明の原理および適用を説明しているにすぎないと理解されるべきである。当業者には、本発明の主旨および範囲から逸脱せずに、本発明の方法および装置に様々な変更および変化がなされてよいことは明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内の変更および変化を含むものと解釈される。
【符号の説明】
【0174】
2 基材、 4 円柱外面、 6 上流端面、 8 下流端面、 10 通路、 32 排出ガス処理システム、 34 エンジン、 36 排気管、 38 ディーゼル酸化触媒、 40 排気管、 42 CSF、 44 排気管、 46 SCR構成要素、 50 インジェクター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的接触還元触媒として使用するため触媒組成物であって、細孔構造および8個の四面体原子の最大環サイズを有する、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子と、小細孔モレキュラーシーブ粒子内で、かつ小細孔モレキュラーシーブ粒子の細孔構造の外側で分散された金属酸化物粒子とを含み、前記モレキュラーシーブ粒子のD 50 粒度の前記金属酸化物粒子のD 50 粒度に対する比は、10超:1である、触媒組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子は、ジルコニアを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子は、10nm~500nmの範囲内の平均粒度を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子は、前記モレキュラーシーブの細孔開口より10倍超大きいD10粒度を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子は、10nm以上のD10粒度を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記小細孔モレキュラーシーブは、d6r単位を有する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、およびTSCから選択される構造型を有する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記促進剤金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Sn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記小細孔モレキュラーシーブは、CHA構造型を有する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記促進剤金属は、CuもしくはFeまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記促進剤金属は、前記モレキュラーシーブの全質量に対して、1質量%~10質量%の範囲内の量で存在する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記促進剤金属は、前記モレキュラーシーブの全質量に対して、2質量%~5質量%の範囲内の量で存在する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記金属酸化物は、ウォッシュコートの全質量に対して酸化物基準で、1質量%~15質量%の範囲内の量で存在する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項14】
フロースルー型モノリス、ウォールフロー型フィルター、フォーム、またはメッシュから選択される基材を含む触媒物品であって、前記基材上にウォッシュコート層として請求項1からまでのいずれか1項に記載の触媒組成物が付着されている、触媒物品。
【請求項15】
前記ウォッシュコートは、フロースルー型モノリスまたはウォールフロー型フィルター上に配置される、請求項14に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記触媒物品は、同じ触媒組成を有するウォッシュコートを同じ負荷量で含むが、小細孔モレキュラーシーブ粒子内に金属酸化物粒子が分散されていない触媒物品と比べて、少なくとも10質量%低いN2O生成を特徴とする、請求項14に記載の触媒物品。
【請求項17】
窒素酸化物(NOx)を選択的に還元するための方法であって、NOxを含有する排気ガス流を、請求項14に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【請求項18】
副生成物として生成されるN2Oの量は、同じ触媒組成を有するウォッシュコートを同じ負荷量で含むが、小細孔モレキュラーシーブ粒子内に金属酸化物粒子が分散されていない触媒物品を使用する方法において生成されるN2Oの量と比べて低減される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項14に記載の触媒物品を、エンジンおよび排気ガス流に還元剤を添加するインジェクターから下流側に備える排気ガス処理システム。
【請求項20】
選択的接触還元のための触媒組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の促進剤金属の塩を水性系金属酸化物ゾル中に溶解させること、
前記少なくとも1種の促進剤金属の塩は、前記水性系金属酸化物ゾル中で解離して、水性系金属塩/金属酸化物ゾル混合物が形成され
孔構造を有し、かつ8個の四面体原子の最大環サイズを有するアンモニウムまたはプロトンで交換された小細孔モレキュラーシーブ粒子を、前記水性系金属塩/金属酸化物ゾル混合物で処理することで、促進剤金属を小細孔モレキュラーシーブの細孔構造内に含浸させること、ならびに
処理された小細孔モレキュラーシーブ粒子を乾燥および焼成することで、促進剤金属で含浸された小細孔モレキュラーシーブ粒子と、小細孔モレキュラーシーブ粒子内で、かつ小細孔モレキュラーシーブ粒子の細孔構造の外側で分散された金属酸化物粒子とを含む触媒組成物を形成すること
を含み、前記金属酸化物ゾルは、水酸化ジルコニルゾル、ナノサイズの水和ジルコニアゾル、アルミナゾル、ジルコニア-イットリアゾル、ジルコニア-アルミナゾル、ジルコニア-セリアゾル、有機ジルコニウムゾル、およびそれらの混合物からなる群から選択され、かつ、前記モレキュラーシーブ粒子のD 50 粒度の前記金属酸化物粒子のD 50 粒度に対する比は、10超:1である、方法。
【請求項21】
前記金属酸化物は、ジルコニアを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記金属酸化物ゾルは、10nm~500nmの範囲内の平均粒度を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記金属酸化物ゾルは、前記モレキュラーシーブの細孔開口より10倍超大きいD10粒度を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記金属酸化物ゾルは、10nm以上のD10粒度を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記促進剤金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Sn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記金属酸化物粒子は、小細孔モレキュラーシーブの細孔構造内に入り込まない、請求項20から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記小細孔モレキュラーシーブは、d6r単位を有する、請求項20から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、およびTSCから選択される構造型を有する、請求項20から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記小細孔モレキュラーシーブは、CHA結晶構造を有する、請求項20から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記促進剤金属は、Cu、Fe、またはそれらの組み合わせを含む、請求項20から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
触媒組成物と水とを混合して、ウォッシュコートスラリーを形成し、該ウォッシュコートスラリーを基材に適用して、基材上にウォッシュコートコーティングを形成し、そして該基材を乾燥および焼成して、触媒物品を形成する工程をさらに含む、請求項20から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
水溶性金属酸化物化合物をウォッシュコートスラリーに添加して、その全金属酸化物含量を増大させることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
触媒組成物は、一般的に、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Sn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される促進剤金属を含むこととなる。例示される実施形態においては、該促進剤金属は、CuもしくはFeまたはその組み合わせを含む。促進剤金属の一般的な量は、モレキュラーシーブの全質量に対して、約1質量%~約10質量%、例えば約2質量%~約5質量%である。もう一つの態様においては、本発明は、フロースルー型モノリス、ウォールフロー型フィルター、フォーム、またはメッシュから選択される基材を含む触媒物品であって、前記基材上にウォッシュコート層として本開示の任意の実施形態による触媒組成物が付着されている、触媒物品を提供する。特定の実施形態においては、本発明の触媒物品は、同じ触媒組成を有するウォッシュコートを同じ負荷量で含むが、小細孔モレキュラーシーブ粒子内に金属酸化物粒子が分散されていない触媒物品と比べて、少なくとも10質量%低い(または少なくとも15質量%低い、もしくは少なくとも20質量%以上低い)N2O生成を特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
実施形態9: 前記促進剤金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Sn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記または下記のいずれかの実施形態の触媒組成物。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
実施形態27: 前記促進剤金属は、Cu、Co、Ni、La、Mn、Fe、V、Ag、Ce、Nd、Pr、Ti、Cr、Zn、Sn、Nb、Mo、Hf、Y、W、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記または下記のいずれかの実施形態の方法。
【外国語明細書】