(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033932
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】不純物の生成を抑制した医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/53 20060101AFI20220222BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220222BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220222BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220222BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220222BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220222BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220222BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220222BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
A61K31/53
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/38
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199187
(22)【出願日】2021-12-08
(62)【分割の表示】P 2021544457の分割
【原出願日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2020086271
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020122771
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113789
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100209598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 秀昭
(74)【代理人】
【識別番号】100219841
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 綾子
(72)【発明者】
【氏名】落井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】西田 千賀
(72)【発明者】
【氏名】木村 豪
(72)【発明者】
【氏名】尾田 真一
(72)【発明者】
【氏名】馬島 翔平
(72)【発明者】
【氏名】大島 崇宏
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安定性に優れた医薬組成物を提供すること。
【解決手段】
式(I)で示される化合物、これらの製薬上許容される塩又はこれらの溶媒和物(以下、式(I)で示される化合物等という。)を湿式粉砕することによって、安定性に優れた、式(I)で示される化合物等の結晶及びそれらを含有する医薬組成物を提供することができる。また、式(I)で示される化合物等を湿式練合及び/又は湿式造粒することによって、安定性に優れた、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤又は顆粒剤であり、ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルを素錠中又は素顆粒中に含有する、式(I):
【化1】
で示される化合物、その製薬上許容される塩又はこれらの溶媒和物を含有する医薬組成物。
【請求項2】
クエン酸トリエチル、ミグリオール、トリアセチン、マクロゴール6000、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油及びダイズ油からなる群から選択される1以上を素錠中又は素顆粒中に含有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
クエン酸トリエチル、ミグリオール及びトリアセチンからなる群から選択される1以上を素錠中又は素顆粒中に含有する、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
クエン酸トリエチルを素錠中又は素顆粒中に含有する、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルの量が、錠剤又は顆粒剤全量に対し、0.01~10重量%である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルの量が、式(I)で示される化合物、その製薬上許容される塩又はこれらの溶媒和物1重量部に対し、0.0001~0.5重量部である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
乳糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1又はそれ以上を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】
で示される化合物、その製薬上許容される塩又はこれらの溶媒和物(以下、式(I)で示される化合物等という)の結晶の製造方法に関する。さらに詳しくは、式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することを特徴とする、式(I)で示される化合物等の結晶の製造方法に関する。
また、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、式(I)で示される化合物等を湿式粉砕する工程、又は式(I)で示される化合物等を湿式練合及び/又は湿式造粒する工程を含む、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物の製造方法に関する。また、本発明は、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)で示される化合物等は、P2X3及び/又はP2X2/3受容体拮抗作用を有する化合物として、特許文献1及び9に記載されている。しかしながら、特許文献1及び9には、式(I)で示される化合物等を含有する具体的な医薬組成物について、開示や示唆はされていない。
【0003】
医薬品有効成分の結晶化、粉砕方法の検討が行われている。
特許文献10及び11には、ジェットミルで微粉砕すると、部分的な非晶質化及び/又は格子構造の大きな破壊もしくは摂動により、表面積の膨大化及び表面の熱力学的活性化が生じることが従来技術として記載されている。特許文献10には、11β‐ベンズアルドキシム‐エストラ‐4,9‐ジエン誘導体を含有する過飽和溶液を結晶化させながら湿式粉砕機を用いて湿式粉砕にかけるステップを含む製造方法が記載されている。特許文献11には、ステロイドを含有する過飽和溶液を用いた例が記載されている。これらの製造方法により、従来技術の不利な点を有さず、かつ低用量製剤の要件を満たす結晶を製造することができることが記載されている。
また、過飽和溶液を湿式粉砕することによって、所定粒径範囲内の粒度を有する結晶を製造する方法については、例えば、特許文献12にCox-II阻害剤、BK1拮抗剤、ビスホスホネート、DP-IV阻害剤及び脂質低下化合物の結晶を製造する方法が記載されている。
【0004】
しかし、これらの文献には、式(I)で示される化合物等の結晶及びその製造方法については、開示も示唆もされていない。
【0005】
また、固形製剤を安定化する方法が幅広く研究されている。例えば、特許文献2には、アムロジピンをメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのいずれかを溶解または懸濁させた水または含水溶媒を用いて湿式練合又は湿式造粒することを特徴とする、湿式処理されたアムロジピンの安定化方法が記載されている。また、固形製剤を安定化する添加剤も幅広く研究されている。例えば、特許文献3から8には、カンデサルタンシレキセチル、バロキサビルマルボキシルやシアノ基及びアミノ基を有する化合物に、クエン酸トリエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド ミグリオール812又はトリアセチンを添加することによって、保存安定性が改善することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/200078号公報
【特許文献2】国際公開第2006/118210号公報
【特許文献3】特開2013-14547号公報
【特許文献4】特開2013-121951号公報
【特許文献5】特開2015-180684号公報
【特許文献6】国際公開第2016/136849号公報
【特許文献7】国際公開第2017/175855号公報
【特許文献8】国際公開第2019/208540号公報
【特許文献9】国際公開第2020/071530号公報
【特許文献10】特開2005―523333号公報
【特許文献11】特開2005―524698号公報
【特許文献12】特開2009―529982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を製造するにあたり、式(I)で示される化合物等の安定性を調べるために、式(I)で示される化合物等を乾式粉砕した原料を用いて経時安定性試験を行ったところ、式(III):
【化2】
で示される化合物(以下、式(III)で示される化合物という。)の量が増加するということを見出した。すなわち、本発明の課題は、式(I)で示される化合物等を含有する安定性に優れた医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、式(I)で示される化合物等を湿式粉砕し、式(I)で示される化合物等の結晶を得て、当該結晶を含有する医薬組成物を製造することによって、経時安定性試験において、式(III)で示される化合物の生成を抑制することができることを見出し、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を安定化できることを見出した。
すなわち、式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することにより、式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppm、好ましくは0.0001~10ppmである、式(I)で示される化合物等の結晶を製造することができることを見出した。
さらにこれらの結晶が、経時安定性試験を行った場合においても、式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppm、好ましくは0.0001~10ppmである、ことを見出した。
さらに、本発明者らは、式(I)で示される化合物の二水和物結晶においては、式(III)で示される化合物を含有しないか、検出限界以下であることも見出した。
【0009】
また、本発明者らは、式(I)で示される化合物等を湿式練合及び/又は湿式造粒し、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を製造することによって、経時安定性試験において、式(III)で示される化合物の生成を抑制することができることを見出し、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を安定化できることを見出した。
さらに、本発明者らは、湿式練合及び/又は湿式造粒する工程において、多価アルコールエステルを用いることによって、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物をさらに安定化できることも見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)式(I)で示される化合物等を湿式粉砕する工程、及び/又は
式(I)で示される化合物等を湿式練合及び/又は湿式造粒する工程を含む、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物の製造方法。
(2)式(I)で示される化合物等を湿式練合及び/又は湿式造粒する工程を含む、上記(1)記載の医薬組成物の製造方法。
(3)式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(2)記載の医薬組成物の製造方法。
なお、湿式練合及び/又は湿式造粒する工程において、ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルを用いることを特徴とする、上記(2)又は(3)記載の医薬組成物の製造方法、
クエン酸トリエチル、ミグリオール、トリアセチン、マクロゴール6000、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油及びダイズ油からなる群から選択される1以上を用いることを特徴とする、上記(2)又は(3)記載の医薬組成物の製造方法、
クエン酸トリエチル、ミグリオール及びトリアセチンからなる群から選択される1以上を用いることを特徴とする、上記(2)又は(3)記載の医薬組成物の製造方法、
クエン酸トリエチルを用いることを特徴とする、上記(2)又は(3)記載の医薬組成物の製造方法、
湿式練合及び/又は湿式造粒する工程において、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1以上を用いることを特徴とする、上記(2)又は(3)記載の医薬組成物の製造方法も、本発明に含まれる。
(4)40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)1ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(III)で示される化合物が検出されないか、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(3)記載の製造方法。
(5)湿式練合及び/又は湿式造粒に用いる式(I)で示される化合物、その製薬上許容される塩又は該当溶媒和物が、乾式粉砕することにより得られたものである、上記(2)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法。
(6)式(I)で示される化合物等を湿式粉砕する工程を含む、上記(1)記載の医薬組成物の製造方法。
【0011】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法で得られる、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物。
なお、湿式練合及び/又は湿式造粒した式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物も、本発明に含まれる。
(8)式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(7)記載の医薬組成物。
(9)40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)1ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(III)で示される化合物が検出されないか、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(8)記載の医薬組成物。
【0012】
(10)錠剤又は顆粒剤であり、ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルを素錠中又は素顆粒中に含有する、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物。
(11)クエン酸トリエチル、ミグリオール、トリアセチン、マクロゴール6000、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油及びダイズ油からなる群から選択される1以上を素錠中又は素顆粒中に含有する、上記(10)記載の医薬組成物。
(12)クエン酸トリエチル、ミグリオール及びトリアセチンからなる群から選択される1以上を素錠中又は素顆粒中に含有する、上記(11)記載の医薬組成物。
(13)クエン酸トリエチルを素錠中又は素顆粒中に含有する、上記(12)記載の医薬組成物。
(14)ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルの量が、錠剤又は顆粒剤全量に対し、0.01~10重量%である、上記(10)~(13)のいずれかに記載の医薬組成物。
(15)ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルの量が、式(I)で示される化合物等1重量部に対し、0.0001~0.5重量部である、上記(10)~(13)のいずれかに記載の医薬組成物。
なお、式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物、これらの製薬上許容される塩又はこれらの溶媒和物の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(10)~(15)のいずれかに記載の医薬組成物、
40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)1か月の条件下で安定性試験した場合に、式(III)で示される化合物が検出されないか、式(I)で示される化合物、これらの製薬上許容される塩又はこれらの溶媒和物の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(10)~(15)のいずれかに記載の医薬組成物、
式(I)で示される化合物等を10~450mg含有する、上記(10)~(15)のいずれかに記載の医薬組成物、
賦形剤、結合剤及び崩壊剤からなる群から選択される、1又はそれ以上の添加剤を含有する、上記(10)~(15)のいずれかに記載の医薬組成物も、本発明に含まれる。
(16)乳糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1又はそれ以上を含有する、上記(10)~(15)のいずれかに記載の医薬組成物。
なお、素錠である、上記(10)~(16)のいずれかに記載の医薬組成物、
コーティング錠である、上記(10)~(16)のいずれかに記載の医薬組成物も、本発明に含まれる。
【0013】
(17)式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することを特徴とする、式(I)で示される化合物等の結晶の製造方法。
(18)得られた結晶が、式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(17)記載の製造方法。
(19)得られた結晶が、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)1ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(III)で示される化合物が検出されないか、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(18)記載の製造方法。
(20)得られた結晶の90%粒子径が100μm以下である、上記(17)~(19)のいずれかに記載の製造方法。
(21)得られた結晶が式(I)で示される化合物の無水和物結晶である、上記(17)~(20)のいずれかに記載の製造方法。
なお、得られた結晶が式(I)で示される化合物の二水和物結晶である、上記(17)~(20)のいずれかに記載の製造方法、
式(I)で示される化合物等の結晶を湿式粉砕することを特徴とする、上記(17)~(20)のいずれかに記載の製造方法、
式(I)で示される化合物の無水和物結晶を湿式粉砕することを特徴とする、上記(17)~(20)のいずれかに記載の製造方法、
式(I)で示される化合物の二水和物結晶を湿式粉砕することを特徴とする、上記(17)~(20)のいずれかに記載の製造方法も、本発明に含まれる。
(22)式(I)で示される化合物の無水和物結晶及び/又は非晶質を湿式粉砕することを特徴とする、上記(17)~(21)のいずれかに記載の製造方法。
(23)過飽和溶液を湿式粉砕することを特徴とする、上記(17)~(21)のいずれかに記載の製造方法。
なお、過飽和溶液から式(I)で示される化合物の無水和物結晶を製造する工程及び前記工程で得られる結晶の90%粒子径を100μm以下にする工程を含む、上記(23)記載の製造方法も、本発明に含まれる。
(24)過飽和溶液から結晶の核を形成する工程、前記工程で得られた核を結晶成長させる工程、
核形成及び結晶成長を制御する工程並びに結晶を微細化する工程を含む、上記(23)記載の製造方法。
(25)過飽和溶液から式(I)で示される化合物の二水和物結晶を製造する工程、前記工程で得られる結晶から式(I)で示される化合物の無水和物結晶を製造する工程及び前記工程で得られる結晶の90%粒子径を100μm以下にする工程を含む、上記(24)記載の製造方法。
(26)過飽和溶液から式(I)で示される化合物の二水和物結晶を製造する工程を25±5℃で行う、上記(25)記載の製造方法。
(27)式(I)で示される化合物の二水和物結晶から式(I)で示される化合物の無水和物結晶を製造する工程が、加熱及び冷却する工程を含む、上記(25)又は(26)記載の製造方法。
(28)湿式粉砕工程の溶媒が、水、メタノール及び2ープロパノールからなる群から選択される1以上の溶媒を含む、上記(17)~(27)のいずれかに記載の製造方法。
なお、湿式粉砕工程の溶媒が、水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒を含む、上記(17)~(27)のいずれかに記載の製造方法、
湿式粉砕工程が、ローター・ステーター、圧力式ホモジナイザー、ボールミル、媒体ミル及び超音波破砕からなる群から選択される1以上によって行われる、上記(17)~(28)のいずれかに記載の製造方法、
湿式粉砕工程が、バッチ式、半連続式及び連続式からなる群から選択される1以上である、上記(17)~(28)のいずれかに記載の製造方法、
湿式粉砕工程が、再循環ループを用いる工程である、上記(17)~(28)のいずれかに記載の製造方法、
湿式粉砕工程がワンポットで行われる、上記(17)~(28)のいずれかに記載の製造方法も、本発明に含まれる。
【0014】
(29)上記(17)~(28)のいずれかに記載の製造方法で得られる、式(I)で示される化合物等の結晶。
なお、上記(21)記載の方法により得られた式(I)で示される化合物の無水和物結晶、
湿式粉砕した式(I)で示される化合物の結晶、
湿式粉砕した式(I)で示される化合物の無水和物結晶も、本発明に含まれる。
(30)式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(29)記載の結晶。
(31)40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)1ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(III)で示される化合物が検出されないか、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである、上記(30)記載の結晶。
なお、90%粒子径が100μm以下である、上記(29)~(31)のいずれかに記載の結晶も、本発明に含まれる。
(32)式(I)で示される化合物の無水和物結晶である、上記(29)~(31)のいずれかに記載の結晶。
(33)回折角度(2θ):15.8±0.2°、19.4±0.2°、21.7±0.2°、23.9±0.2°及び25.4±0.2°、又は回折角度(2θ):7.9±0.2°、9.3±0.2°、12.9±0.2°、15.8±0.2°及び19.4±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す、上記(32)記載の結晶。
なお、回折角度(2θ):15.8±0.2°、19.4±0.2°、21.7±0.2°、23.9±0.2°及び25.4±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す、上記(32)記載の結晶、
回折角度(2θ):7.9±0.2°、9.3±0.2°、12.9±0.2°、15.8±0.2°及び19.4±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す、上記(32)記載の結晶、
回折角度(2θ):12.6±0.2°、12.9±0.2°、15.8±0.2°、19.4±0.2°、21.7±0.2°、23.9±0.2°、25.4±0.2°、26.6±0.2°、27.8±0.2°及び32.8±0.2°、又は回折角度(2θ):7.9±0.2°、9.3±0.2°、12.9±0.2°、15.8±0.2°、17.2±0.2°、19.4±0.2°、21.7±0.2°、23.9±0.2°、25.4±0.2°及び27.8±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す、上記(32)記載の結晶、
回折角度(2θ):12.6±0.2°、12.9±0.2°、15.8±0.2°、19.4±0.2°、21.7±0.2°、23.9±0.2°、25.4±0.2°、26.6±0.2°、27.8±0.2°及び32.8±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す、上記(32)記載の結晶、
回折角度(2θ):7.9±0.2°、9.3±0.2°、12.9±0.2°、15.8±0.2°、17.2±0.2°、19.4±0.2°、21.7±0.2°、23.9±0.2°、25.4±0.2°及び27.8±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す、上記(32)記載の結晶、
図1に実質的に一致する粉末X線回折パターンにより特徴付けられる、上記(32)記載の結晶、
図2に実質的に一致するラマンスペクトルにより特徴付けられる、上記(32)記載の結晶、
ラマンスペクトルにおいて、829cm
-1±2cm
-1、989cm
-1±2cm
-1、1013cm
-1±2cm
-1、1128cm
-1±2cm
-1および1370cm
-1±2cm
-1に吸収ピークを有する、上記(32)記載の結晶も、本発明に含まれる。
【0015】
(34)a)式(I)で示される化合物等の結晶、又は式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を試料とし、当該試料においてクロマトグラフィー分析を行う工程;及び
b)上記工程で得られたクロマトグラフィー分析において、式(III)で示される化合物の含有量又は含有割合を得る工程、
を含む、試料中の類縁物質を分析する方法。
(35)式(I)で示される化合物等の結晶、又は式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物中の式(III)で示される化合物の含有量又は含有割合を分析する方法であって、式(III)で示される化合物を標準試料として使用する方法。
なお、式(I)で示される化合物の二水和物結晶、
回折角度(2θ):5.7±0.2°、7.7±0.2°、11.8±0.2°、15.2±0.2°及び17.7±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す、式(I)で示される化合物の二水和物結晶、
回折角度(2θ):5.7±0.2°、7.7±0.2°、11.8±0.2°、15.2±0.2°、17.7±0.2°、20.6±0.2°、20.8±0.2°、26.5±0.2°、27.1±0.2°及び29.1±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す、式(I)で示される化合物の二水和物結晶、
図3に実質的に一致する粉末X線回折パターンにより特徴付けられる、式(I)で示される化合物の二水和物結晶も、本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0016】
式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することによって、安定性に優れた結晶を製造することができた。また、当該結晶を用いることにより、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物の安定性を向上させることができた。また、式(I)で示される化合物等を湿式練合及び/又は湿式造粒することによって、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物の安定性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】式(I)で示される化合物の無水和物結晶の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
【
図2】式(I)で示される化合物の無水和物結晶のラマンスペクトルを示す。横軸はラマンシフト(cm
-1)を表し、縦軸はピーク強度を表す。
【
図3】式(I)で示される化合物の二水和物結晶の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
【
図4】式(I)で示される化合物の二水和物結晶のTG/DTA分析結果を示す。縦軸は熱量(μV)又は重量変化(%)を示し、横軸は温度(℃)を示す。図中のCelは、セルシウス度(℃)を意味する。
【
図5】実施例9の検体の示差走査熱量測定(DSC)の結果を示す。横軸は温度(℃)を、縦軸は熱量を表す。
【
図6】参考例4の検体の示差走査熱量測定(DSC)の結果を示す。横軸は温度(℃)を、縦軸は熱量を表す。
【
図7】クエン酸トリエチルを配合した10mg錠の溶出挙動を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は溶出率(%)を表す。
【
図8】クエン酸トリエチルを配合した10mg錠について、60℃密栓で2週間、40℃密栓で1ヵ月、及び40℃/75%RH開栓で1ヵ月保管後の溶出挙動を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は溶出率(%)を表す。
【
図9】クエン酸トリエチルを配合した10mg錠の錠剤物性を示す。横軸は打圧(kN)を、縦軸は硬度(N)を表す。
【
図10】ミグリオール812を配合した10mg錠の錠剤物性を示す。横軸は打圧(kN)を、縦軸は硬度(N)を表す。
【
図11】クエン酸トリエチルを配合した50mg錠の錠剤物性を示す。横軸は打圧(kN)を、縦軸は硬度(N)を表す。
【
図12】造粒時の造粒水分を変化させて、撹拌造粒機で顆粒を製造し、当該顆粒を打錠して製造した10mg錠(素錠)の溶出挙動を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は溶出率(%)を表す。
【
図13】造粒時の造粒水分を変化させて、撹拌造粒機で顆粒を製造し、当該顆粒を打錠して製造した50mg錠(素錠)の溶出挙動を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は溶出率(%)を表す。
【
図14】撹拌造粒機で顆粒を製造し、当該顆粒を打錠して製造した10mg錠(素錠及びコーティング錠)の溶出挙動を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は溶出率(%)を表す。
【
図15】撹拌造粒機で顆粒を製造し、当該顆粒を打錠して製造した50mg錠(素錠及びコーティング錠)の溶出挙動を示す。横軸は時間(分)を、縦軸は溶出率(%)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、詳細に説明する。各用語は特に断りのない限り、単独で用いられる場合も、又は他の用語と組み合わせて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。式(I)、式(II)及び式(III)で示される化学構造式も、それぞれの式において統一して用いられる。
「からなる」という用語は、構成要件のみを有することを意味する。「含む」又は「含有する」という用語は、構成要件に限定されず、記載されていない要素を排除しないことを意味する。
また、本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。
また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0019】
本発明は、式(I):
【化3】
で示される化合物等を湿式粉砕することを特徴とする、式(I)で示される化合物等の結晶の製造方法である。
【0020】
式(I)で示される化合物等は、式(I):
【化4】
で示される化合物、その製薬上許容される塩又はこれらの溶媒和物を意味する。
【0021】
式(I)で示される化合物は、式(I)で示される化合物のみならず、その互変異性体又はこれらの混合物も包含する。
式(I)で示される化合物は、P2X
3及び/又はP2X
2/3受容体拮抗作用を有する化合物として、特許文献1及び9に記載されている。
式(I)で示される化合物の互変異性体は、式(II):
【化5】
で示される化合物であり、式(I)で示される化合物と同様に、P2X
3及び/又はP2X
2/3受容体拮抗作用を有する。
式(I)で示される化合物は、式(I)で示される化合物と式(II)で示される化合物の混合物も包含し、任意の割合で混合されていてもよい。
【0022】
さらに、式(I)で示される化合物、その互変異性体若しくはこれらの混合物の一つ以上の水素、炭素又は他の原子は、水素、炭素又は他の原子の同位体で置換されていてもよい。例えば、式(I)で示される化合物、その互変異性体若しくはこれらの混合物は同位元素(例、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、123I及び36Cl等)で標識されていてもよい。
【0023】
本明細書中で用いる「製薬上許容される塩」とは、例えば「式(I)で示される化合物、その互変異性体若しくはこれらの混合物」とカウンター分子又はカウンターイオンからなり、任意の数のカウンター分子又はカウンターイオンを含んでいてもよい。
【0024】
本発明の一態様において、本化合物は塩基付加塩の形である。塩基付加塩は、無機及び有機塩基を含む薬学的に許容される非毒性塩基から製造される塩を含む。無機塩基由来の塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、亜鉛及び他の金属塩を含み、これに限定されない。薬学的に許容される非毒性塩基由来の塩は、一級、二級又は三級アミン類、天然に存在する置換アミン類、環状アミン類及び塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、ベンザチン、カフェイン、コリン、クロロプロカイン、シクロプロカイン、N’N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-ジエチル-アミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチル-モルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メグルミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、三級ブチルアミン(2-メチルプロパン-2-アミン)、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等を含む置換アミン類、ならびに非毒性アンモニウム及び四級アンモニウム、及びアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムを含み、これらに限定されないカチオンの塩を含む。
【0025】
本発明の一態様において、本化合物は酸付加塩の形である。酸付加塩としては、無機酸及び有機酸を含む薬学的に許容される非毒性酸から製造される塩を含む。無機酸としては、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、オルトリン酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸、ホウ酸もしくは硫酸などを含み、これに限定されない。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、サリチル酸、マレイン酸、グリセロリン酸、酒石酸、安息香酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ヘキサン酸もしくはアセチルサリチル酸などを含み、これに限定されない。また該酸付加塩として、これらの酸から選択される2つ以上の組み合わせの混合酸塩であってもよい。
【0026】
本発明の一態様において、その遊離(又は両性イオン若しくは双性イオン)形態を所望の酸もしくは塩基と反応させることによって、薬学的に許容される塩、または塩の溶媒和物に変換してよい。
【0027】
本明細書中で用いる「製薬上許容される溶媒和物」とは、例えば、式(I)で示される化合物又はその製薬上許容される塩に対し、任意の数の溶媒分子が配列しているものをいう。
溶媒分子としては、例えば、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2-メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2-トリクロロエテン、キシレン、酢酸、アニソール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、酢酸n-ブチル、t-ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3-メチル-1-ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-メチル-1-プロパノール、ペンタン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸及びトリフルオロ酢酸が挙げられる。
好ましくは、酢酸、アニソール、1-ブタノール、2-ブタノール、酢酸n-ブチル、t-ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3-メチル-1-ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-メチル-1-プロパノール、ペンタン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸及びトリフルオロ酢酸が挙げられる。
より好ましくは、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸及びトリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0028】
また、式(I)で示される化合物又はその製薬上許容される塩を、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。
製薬上許容される塩や製薬上許容される溶媒和物は、式(I)で示される化合物から製造することができる。
【0029】
本明細書中で用いる「無水和物」は、「無溶媒和物」、「非溶媒和物」、「無水物」及び「非水和物」と同義である。
【0030】
本明細書中で用いる「湿式粉砕」とは、式(I)で示される化合物等を溶媒の懸濁液で湿式粉砕機により湿式粉砕処理することを意味する。湿式粉砕には、粉砕媒体によるせん断力やずり応力、摩擦力などで粉砕する方法、砕料同士のずり応力や摩擦力で粉砕する方法、高圧流体を衝突させて粉砕する方法、狭い隙間を通過させて粉砕する方法などがあり、本発明において、特に限定されるものではない。
湿式粉砕においては、水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。湿式粉砕する際に用いる水は、特に限定されることはないが、医薬品等の製造に通常用いられる精製水を用いるのがよい。有機溶媒としては、アルコール、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、ホルムアミド、ヘキサン、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2-トリクロロエテン、キシレン、酢酸、アニソール、酢酸n-ブチル、t-ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ペンタン、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール等を用いることができる。
アルコールとしては、メタノール、2ープロパノール、エタノール、t-ブタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、メタノール、2-メトキシエタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、1-プロパノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール等を用いることができる。好ましくは、メタノール及び/又は2ープロパノールである。
混合溶媒としては、水とアルコールの混合溶媒が望ましい。水とアルコールの混合割合は、水:アルコール=0.01~99.9:99.9~0.01、好ましくは15~60:85~40、より好ましくは、20~50:80~50である。
【0031】
式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することには、たとえば、式(I)で示される化合物等の結晶を湿式粉砕すること、式(I)で示される化合物等の非晶質を湿式粉砕すること、式(I)で示される化合物等の溶液を湿式粉砕することが含まれる。
式(I)で示される化合物等の結晶を湿式粉砕することには、たとえば、式(I)で示される化合物の無水和物結晶を湿式粉砕することや、式(I)で示される化合物の二水和物結晶を湿式粉砕することが含まれる。
式(I)で示される化合物の結晶を湿式粉砕することには、結晶を微細化する工程、好ましくは、90%粒子径が100μm以下となるように制御する工程が含まれる。
結晶を微細化する工程においては、圧力式ホモジナイザーを用いて、圧力を10メガパスカル~100メガパスカル(好ましくは、60メガパスカル~90メガパスカル、特に好ましくは、70メガパスカル)として、温度0℃~60℃(好ましくは10℃~55℃、特に好ましくは25±5℃)で、2パス~80パス(好ましくは3パス~10パス、特に好ましくは5パス~7パス)で、2時間~80時間(好ましくは3時間~10時間、特に好ましくは5時間~7時間)処理することが含まれる。
なお、パスとは理論処理回数を示す単位であり、理論処理回数は以下の計算式より求められる。
(計算式)
(数1)
1パスに必要な処理時間(h)=スラリー液量(L)÷湿式粉砕機の処理速度(L/h)
(数2)
理論処理回数(パス)=処理時間(h)÷1パスに必要な処理時間(h)
【0032】
本明細書中で用いる「結晶」とは、構成する原子、イオン、分子などが三次元的に規則正しく配列した固体を意味し、そのような規則正しい内部構造を持たない非晶質固体とは区別される。本発明の結晶は、単結晶、双晶、多結晶などであってもよい。
さらに、「結晶」には、組成が同一でありながら結晶中の配列が異なる「結晶多形」が存在することがあり、これらを含めて「結晶形態」という。
本明細書中で用いる結晶は、これら、塩、水和物、溶媒和物、結晶多形のいずれであってもよく、二つ以上の混合物であっても、発明の範囲内に包含されることが意図される。
結晶形態及び結晶化度は、例えば、粉末X線回折測定、ラマン分光法、赤外吸収スペクトル測定法、水分吸脱着測定、示差走査熱量測定、溶解特性を含めた多くの技術によって測定することができる。
【0033】
(粉末X線回折(XRPD))
粉末X線回折(XRPD)は、固体の結晶形態及び結晶性を測定するための最も感度の良い分析法の1つである。X線が結晶に照射されると、結晶格子面で反射し、互いに干渉しあい、構造の周期に対応した秩序だった回折線を示す。一方、非晶質固体については、通常、その構造の中に秩序だった繰返し周期をもたないため、回折現象は起こらず、特徴のないブロードなXRPDパターン(ハローパターンとも呼ばれる)を示す。
【0034】
式(I)で示される化合物等の結晶形態は、粉末X線回折パターン及び特徴的な回折ピークにより識別可能である。
本明細書中で用いる特徴的な回折ピークは、観測された回折パターンから選択されるピークである。特徴的な回折ピークは、好ましくは回折パターンにおける約10本、より好ましくは約5本から選択される。
複数の結晶を区別する上では、ピークの強度よりも、当該結晶で確認され、他の結晶では確認されないピークが、その結晶を特定する上で好ましい特徴的なピークとなる。そういった特徴的なピークであれば、一つまたは二つのピークでも、当該結晶を特徴付けることができる。測定して得られたチャートを比較し、これらの特徴的なピークが一致すれば、粉末X線回折スペクトルが実質的に一致するといえる。
【0035】
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るため、粉末X線回折の回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0036】
以下の表及び図において表示されるピークの強度は、一般に、多くの因子、例えばX線ビームに対する結晶の選択配向の効果、粗大粒子の影響、分析される物質の純度またはサンプルの結晶化度によって変動し得ることが知られている。また、ピーク位置についても、サンプル高の変動に基づいてシフトし得る。さらに、異なる波長を使用して測定するとブラッグ式(nλ=2dsinθ)に従って異なるシフトが得られるが、このような別の波長の使用により得られる別のXRPDパターンも、本発明の範囲に含まれる。
【0037】
(単結晶構造解析)
結晶を特定する方法の一つで、当該結晶における結晶学的パラメーター、さらに、原子座標(各原子の空間的な位置関係を示す値)及び3次元構造モデルを得ることができる。桜井敏雄著「X線構造解析の手引き」裳華房発行(1983年)、Stout & Jensen著 X―Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York(1968)などを参照。本発明のような互変異性を有する化合物の結晶の構造を同定する際には、単結晶構造解析が有用である。
【0038】
(ラマン分光法)
ラマンスペクトルは分子または複合体系の振動の特徴を示す。その起源は分子と光線を含む光の粒子である光子との間の非弾性的な衝突にある。分子と光子の衝突はエネルギーの交換をもたらし、その結果エネルギーが変化し、これにより光子の波長が変化する。即ち、ラマンスペクトルは、対象分子に光子が入射されたときに発せられる、極めて波長の狭いスペクトル線であるため、光源としてはレーザー等が用いられる。各ラマン線の波長は入射光からの波数シフトにより表示され、これはラマン線と入射光の波長の逆数の間の差である。ラマンスペクトルは分子の振動状態を測定するものであり、これはその分子構造により決定される。
一般に、ラマンスペクトルにおける吸収帯(cm-1)は±2cm-1の範囲内で誤差が生じ得るから、上記の吸収ピークの値は±2cm-1程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、ラマンスペクトルにおける吸収帯のピークが完全に一致する結晶だけでなく、吸収帯のピークが±2cm-1程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0039】
(示差熱熱重量同時測定法(TG/DTA))
TG/DTAは、熱分析の主要な測定方法のひとつで、原子・分子の集合体としての物質の重量及び熱的性質を測定する方法である。
TG/DTAは医薬活性成分の温度又は時間に係る重量及び熱量の変化を測定する方法であり、得られたデータを温度又は時間に対してプロットすることにより、TG(熱重量)及びDTA(示差熱)曲線が得られる。TG/DTA曲線より、医薬活性成分の分解、脱水、酸化、還元、昇華、蒸発に関する重量及び熱量変化の情報を得ることができる。
TG/DTAについて、観察される温度、重量変化は、温度変化速度ならびに用いる試料調製技法及び特定の装置に依存し得ることが知られている。したがって、TG/DTAにおける「融点」とは試料の調製技法の影響を受けにくいオンセット温度のことを指す。結晶の同一性の認定においては、融点のみならず全体的なパターンが重要であり、測定条件や測定機器によって多少は変化し得る。
【0040】
(示差走査熱量測定法(DSC))
DSCは、熱分析の主要な測定方法の一つで、原子・分子の集合体としての物質の熱的性質を測定する方法である。
DSCにより、医薬活性成分の温度又は時間に係る熱量の変化を測定し、得られたデータを温度又は時間に対してプロットすることにより示差走査熱量曲線が得られる。示差走査熱量曲線より、医薬活性成分が融解する際のオンセット温度、融解に伴う吸熱ピーク曲線の最大値及びエンタルピーに関する情報を得ることができる。
DSCについて、観察される温度は、温度変化速度ならびに用いる試料調製技法及び特定の装置に依存し得ることが知られている。したがって、DSCにおける「融点」とは試料の調製技法の影響を受けにくいオンセット温度のことを指す。示差走査熱量曲線から得られるオンセット温度における誤差範囲はおよそ±2℃である。結晶の同一性の認定においては、融点のみならず全体的なパターンが重要であり、測定条件や測定機器によって多少は変化し得る。
【0041】
(水分吸脱着等温線測定法(DVS))
水分吸脱着等温線測定は、測定対象の固体について各相対湿度条件下での重量変化を測定する事で、水分の吸着、脱着挙動を計測する測定法である。
基本的な測定法として、0%RH(相対湿度0%)での乾燥重量を基準とし、5%又は10%ごとに相対湿度を上げ、それぞれの相対湿度での重量安定化後、基準値からの重量増加から、吸着水の量を求める事が出来る。同様に、100%RH(相対湿度100%)から5%又は10%ごとに相対湿度を下げる事で、水の脱着量を測定する事が可能である。
各相対湿度での重量変化値をプロットする事で、吸脱着等温線を得る事ができる。この結果から、各湿度における付着水分の吸着、脱着現象の考察が可能である。また、無水和物結晶が湿度により水和物結晶と相互に結晶転移する場合には、結晶転移が起こる湿度、及び結晶水の量を計算する事が可能である。
付着水、及び結晶水の吸脱着は粒子径、結晶化度、晶癖等の影響を受けるため、測定結果は多少変化し得る。
【0042】
式(I)で示される化合物等の非晶質を湿式粉砕することも本発明には包含される。
【0043】
本明細書中で用いる「非晶質」とは、構成する原子、イオン、分子などが三次元的に一定の規則正しく配列性を持たないものを意味し、例えば、粉末X線回折測定、ラマン分光法、赤外吸収スペクトル測定法、水分吸脱着測定、示差走査熱量測定、溶解特性を含めた多くの技術によって測定することができる。粉砕、凍結乾燥、噴霧乾燥などで非晶質となることがある。
【0044】
式(I)で示される化合物等の溶液を湿式粉砕することには、式(I)で示される化合物等の過飽和溶液を湿式粉砕することが含まれる。式(I)で示される化合物等の溶液は、式(I)で示される化合物等を溶媒に溶解することによって得てもよく、化合物(9)を加水分解し、式(I)で示される化合物等を生成させることによって得てもよい。
【0045】
式(I)で示される化合物等の過飽和溶液を湿式粉砕することには、過飽和溶液から結晶の核を形成する工程、前記工程で得られた核を結晶成長させる工程並びに結晶成長を制御する工程及び得られた結晶を微細化する工程を含んでいてもよい。
過飽和溶液から結晶の核を形成する工程には、湿式粉砕機の物理刺激等により結晶の核を形成する場合、種晶を用いて結晶の核を形成する場合、温度制御することにより結晶の核を形成する場合が含まれる。
得られた核を結晶成長させる工程においては、式(I)で示される化合物の無水和物結晶及び/又は二水和物結晶を製造する場合、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力を1メガパスカル~100メガパスカル(好ましくは、5メガパスカル~20メガパスカル、特に好ましくは10メガパスカル)として、温度0℃~60℃(好ましくは10℃~55℃、特に好ましくは25±5℃)で、5分~10時間(好ましくは15分~8時間、特に好ましくは30分~3時間)処理することが含まれる。
【0046】
別の態様としては、式(I)で示される化合物等の過飽和溶液を湿式粉砕することには、過飽和溶液から式(I)で示される化合物の二水和物結晶を製造する工程、前記工程で得られる結晶から式(I)で示される化合物の無水和物結晶を製造する工程及び前記工程で得られる結晶の90%粒子径を100μm以下にする工程を含んでいてもよい。
過飽和溶液から式(I)で示される化合物の二水和物結晶を製造する工程には、圧力式ホモジナイザーを用いて、圧力を1メガパスカル~100メガパスカル(好ましくは、5メガパスカル~20メガパスカル、特に好ましくは10メガパスカル)として、温度0℃~60℃(好ましくは10℃~55℃、特に好ましくは25±5℃)で、5分~10時間(好ましくは15分~5時間、特に好ましくは30分~1時間)処理することが含まれる。
前記工程で得られる結晶から式(I)で示される化合物の無水和物結晶を製造する工程には、加熱及び冷却する工程が含まれる。加熱する工程には、温度30℃~80℃(好ましくは40℃~65℃、特に好ましくは50℃)に加熱する工程が含まれる。冷却する工程には、温度0℃~50℃(好ましくは10℃~40℃、特に好ましくは25℃)に加熱する工程が含まれる。本工程においては、式(I)で示される化合物の無水和物結晶の種晶を用いることが望ましい。
前記工程で得られる結晶の90%粒子径を100μm以下にする工程においては、圧力式ホモジナイザーを用いて、圧力を10メガパスカル~100メガパスカル(好ましくは、60メガパスカル~90メガパスカル、特に好ましくは70メガパスカル)として、温度0℃~60℃(好ましくは10℃~55℃、特に好ましくは25℃±5℃)で、2時間~80時間(好ましくは3時間~10時間、特に好ましくは5時間~7時間)処理することが含まれる。なお、パスとは理論処理回数を示す単位であり、理論処理回数は計算式(数1)により求められる。
【0047】
湿式粉砕機としては、ローター・ステーター、圧力式ホモジナイザー、ボールミル、媒体ミル、超音波破砕等を用いることができる。好ましくは、ローター・ステーター、圧力式ホモジナイザー、ボールミルであり、特に好ましくは、圧力式ホモジナイザーである。
ローター・ステーターは、ローターを高速回転させることで生じる剪断力、推進力を生じさせ、加えてローターとステーターの剪断溝に生じる高渦流により混合、乳化、分散、破砕する湿式粉砕機である。
ボールミルは、円筒型胴内に粉砕媒体(鋼球、シルペップ、ペブルなど)を入れ、胴体を回転させながら粉砕する湿式粉砕機である。ボールミルには、ビーズミルも含まれる。
圧力式ホモジナイザーは、加圧されたサンプルを間隙より噴出させることによって生じる粒子間の衝突、圧力差による剪断力、インパクトリングへの衝突の破壊力等のエネルギーを利用して、サンプルを乳化・分散・破砕する湿式粉砕機である。
また、湿式粉砕は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことができる。望ましくは、連続式である。当該連続式は、再循環ループにより、行うことができる。
【0048】
湿式粉砕工程は、ワンポットで行うことができる。ワンポットとは、一つの反応容器または装置で、複数の工程を行うことを言う。
【0049】
本発明の式(I)で示される化合物等の結晶の製造方法により得られた式(I)で示される化合物等の結晶又は湿式粉砕した式(I)で示される化合物等の結晶としては、式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmである結晶が好ましい。さらに、本発明の式(I)で示される化合物等の結晶の製造方法により得られた式(I)で示される化合物等の結晶又は湿式粉砕した式(I)で示される化合物等の結晶としては、式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである結晶がより好ましい。
式(III)で示される化合物を含有しないとは、式(III)で示される化合物が含まれないか、含んでいたとしても、式(III)で示される化合物の量が検出限界以下で、式(III)で示される化合物が検出できないことを意味する。
式(I)で示される化合物等を湿式粉砕し、式(I)で示される化合物等の結晶を製造することにより、式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物の含有割合を、0.0001~30ppm、好ましくは0.0001~10ppmとすることができる。
また、式(III)で示される化合物を含有しない式(I)で示される化合物等の結晶としては、式(I)で示される化合物の二水和物結晶が挙げられる。
【0050】
式(III)で示される化合物は、Chemische Berichte(1959),92,724―32に記載されている。また、式(I)で示される化合物等の合成原料として使用されている。
【0051】
特に、式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することにより得られる式(I)で示される化合物等の結晶としては、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)6ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(III)で示される化合物が検出されないか、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmである結晶が好ましい。さらに、式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することにより得られる式(I)で示される化合物等の結晶としては、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)1ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(III)で示される化合物が検出されないか、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである結晶がよりに好ましい。
また、本発明の結晶には、25±2℃相対湿度60±5%(ガラス瓶開栓)12ヵ月又は30±2℃相対湿度65±5%(ガラス瓶開栓)12ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmである、結晶も含まれる。
上記の温度及び相対湿度には幅があるが、上記の範囲に含まれるいずれかの温度及び相対湿度おいて、条件となる期間安定性試験した場合に、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmである、式(I)で示される化合物等の結晶も本発明に含まれる。ガラス瓶開栓又は低密度ポリエチレン袋のいずれかの条件で、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmであればよい。
好ましくは、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~20ppmであり、さらに好ましくは、0.0001~10ppmである、式(I)で示される化合物等の結晶である。
【0052】
本発明の結晶は、経時安定性試験において、式(III)で示される化合物の生成を抑制することができる。
式(III)で示される化合物は、式(I)で示される化合物等が分解されることにより生じると考えられる。式(I)で示される化合物等を用いて経時安定性試験を行うと、式(III)で示される化合物の量が増加する。しかし、本発明の製造方法により、式(I)で示される化合物等の結晶を製造することによって、経時安定性試験において、式(III)で示される化合物の量の増加を抑制できる。また、本発明の医薬組成物の製造方法により、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を製造することによって、経時安定性試験において、式(III)で示される化合物の量の増加を抑制できる。
【0053】
式(III)で示される化合物の含有割合は、式(III)で示される化合物の量を式(I)で示される化合物等の量で除することで求めることができる。式(I)で示される化合物等の結晶中に含まれる各化合物の量及び医薬組成物中に含まれる各化合物の量は、クロマトグラフィー分析を行うことにより得られるピーク面積から求めることができる。例えば、式(III)で示される化合物の標準溶液をクロマトグラフィー分析することで得られる式(III)で示される化合物のピーク面積と、測定試料をクロマトグラフィー分析することで得られる式(III)で示される化合物のピーク面積の比較を行うことで、式(III)で示される化合物の含有量を求め、その値を用いて、式(I)で示される化合物等に対する重量比を求め、含有割合を計算することができる。なお、式(I)で示される化合物等の量としては、分解する式(I)で示される化合物等の量が非常に少ないことから、測定検体作成時点での式(I)で示される化合物等の理論含量を用いることができる。
【0054】
式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppm以下である、式(I)で示される化合物等の結晶及び医薬組成物としては、式(III)で示される化合物の量が検出可能であり、式(III)で示される化合物の含有割合が算出可能であり、当該含有割合が10ppm以下である結晶及び医薬組成物を意味する。
【0055】
本発明により得られる結晶としては、90%粒子径が100μm以下である結晶が好ましい。特に、0.5μm以上50μm以下が好ましく、さらに好ましくは、0.5μm以上10μm以下が好ましい。
縦軸に相対粒子量、横軸に粒子径をプロットしたグラフにおいて、積算%の分布曲線が90%の横軸と交差するポイントの粒子径を90%粒子径という。
本発明により得られる結晶としては、式(I)で示される化合物の無水和物結晶、式(I)で示される化合物の二水和物結晶が好ましい。特に、式(I)で示される化合物の無水和物結晶が好ましい。
【0056】
本発明の結晶としては、本発明の製造方法により得られた式(I)で示される化合物等の結晶が好ましい。特に、本発明の製造方法により得られた式(I)で示される化合物の無水和物結晶が好ましい。
すなわち、本発明の結晶としては、湿式粉砕した式(I)で示される化合物等の結晶が好ましい。特に、湿式粉砕した式(I)で示される化合物の無水和物結晶が好ましい。
なお、式(I)で示される化合物の無水和物結晶は、単結晶構造解析の結果、以下の分子構造を取ることを確認した。
【化6】
式(I)で示される化合物の無水和物結晶に特徴的な粉末X線回析ピークは、粉末X線回折角度(2θ):7.9°、9.3°、12.6°、12.9°、15.8°、17.2°、19.4°、21.7°、23.9°、25.4°、26.6°、27.8°又は32.8°であり、それぞれ、±0.2°程度の範囲内の数値も含む。たとえば、式(I)で示される化合物の無水和物結晶は、回折角度(2θ):15.8°±0.2°、19.4°±0.2°、21.7°±0.2°、23.9°±0.2°及び25.4°±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す結晶、又は回折角度(2θ):7.9°±0.2°、9.3°±0.2°、12.9°±0.2°、15.8°±0.2°及び19.4°±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す結晶として、特定することができる。
【0057】
本発明には、式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することにより、式(I)で示される化合物等の結晶を製造する工程を含む、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物の製造方法も含まれる。
また、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物の製造方法としては、本発明の結晶の製造方法により得られる式(I)で示される化合物の無水和物結晶、または本発明の式(I)で示される化合物の無水和物結晶を用いる製造方法が好ましい。
上記の医薬組成物の製造方法は、さらに他の工程を含んでいてもよい。例えば、乾式混合、乾式造粒、湿式練合及び/又は湿式造粒のいずれの方法を含んでいてもよい。
【0058】
また、本発明は、式(I)で示される化合物等を、湿式練合及び/又は湿式造粒する工程を含む、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物の製造方法に関する。
【0059】
上記の医薬組成物の製造方法においては、湿式練合及び/又は湿式造粒に用いる式(I)で示される化合物等として、乾式粉砕することにより得られたもの、湿式粉砕することにより得られたもの、いずれも用いることができる。特に、本発明の医薬組成物の製造方法は、乾式粉砕することにより得られた式(I)で示される化合物等を用いる場合に有用である。乾式粉砕することにより得られた式(I)で示される化合物等には、非晶質の式(I)で示される化合物等が多く含まれている。この非晶質の式(I)で示される化合物等が、式(III)で示される化合物の生成に寄与していると考えられる。本発明の医薬組成物の製造方法を使用することにより、非晶質の式(I)で示される化合物等を湿式練合及び/又は湿式造粒下で結晶化させることができ、医薬組成物中の非晶質の式(I)で示される化合物等の量を少なくすることができ、経時安定性試験において、式(III)で示される化合物の生成を抑制することができる。
【0060】
本明細書中で用いる「湿式練合及び/又は湿式造粒」とは、式(I)で示される化合物等を含水状態で処理することを意味し、特定の処理に限定されることはない。「湿式練合及び/又は湿式造粒」の一例としては、例えば式(I)で示される化合物等を含む粉末に、ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルを含む溶液を加えて練合する湿式練合、混合物を練合した後、湿式の顆粒を製造する湿式造粒等を挙げることができる。また、湿式造粒法としては、プラネタリーミキサーやスクリュー型混合機などを用いる混合撹拌造粒法、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサーなどを用いる高速混合撹拌造粒法、円筒造粒機、ロータリー型造粒機、スクリュー押し出し造粒機、ペレットミル型造粒機などを用いる押し出し造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、噴霧造粒法などの方法等に細分化することができるが、本発明は、いずれの方法でもおこなうことができる。
【0061】
本発明において「湿式練合及び/又は湿式造粒」する際に用いる水は、特に限定されることはないが、医薬品等の製造に通常用いられる精製水を用いるのがよい。また、「湿式練合及び/又は湿式造粒」のために水を添加する際には、水のみを添加する場合の他、水にアルコール等の有機溶媒を混合させた混合溶媒として添加する場合であってもよい。これらの場合においては、水(含水溶媒)を単独で添加してもよく、可溶成分を溶解させた状態や不溶成分を懸濁させた状態で添加してもよい。混合末に対する造粒時の水分は、1~70%、好ましくは5~50%、より好ましくは、15~30%である。
【0062】
また、湿式練合及び/又は湿式造粒する工程に、ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルを用いることが好ましい。ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルは、湿式練合及び/又は湿式造粒に用いる水に溶解もしくは懸濁させて使用することがより好ましい。ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルは、結合剤を水に溶解した結合液に溶解もしくは懸濁させて使用することが更に好ましい。
ヒドロキシカルボン酸エステル類とは、ヒドロキシカルボン酸エステル又はそのヒドロキシ保護体を意味する。ヒドロキシカルボン酸エステルとは、ヒドロキシ基を有するカルボン酸のエステル体をいう。ヒドロキシ保護体とは、ヒドロキシ基が保護基により保護されているヒドロキシカルボン酸エステルを意味する。保護基としては、ホルミル基、アシル基が挙げられる。具体的には、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリブチル、О-アセチルクエン酸トリメチル、О-アセチルクエン酸トリエチル、О-アセチルクエン酸トリプロピル、О-アセチルクエン酸トリブチル、О-アセチルリシノール酸メチル、О-ブチルクエン酸トリヘキシルが挙げられる。特に好ましいのは、クエン酸トリエチルである。
多価アルコールエステルとは、分子内に水酸基を2個以上有するアルコールのエステル体をいい、多価アルコールにおいて水酸基はそれぞれ別の炭素原子についている。具体的には、ミグリオール(中鎖脂肪酸トリグリセリドをいい、例えばミグリオール812、ミグリオール810、ミグリオール829等が挙げられる)、トリアセチン、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80及び油脂(グリセリンと飽和又は不飽和高級脂肪酸のエステル体をいい、例えば、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ダイズ油等が挙げられる)が、好ましくはミグリオール及びトリアセチン、より好ましくはミグリオールである。
ポリエーテルとは、―CR2―O-CR2―の連続構造を持つ化合物である。具体的には、マクロゴール6000、ポリソルベート20、ポリソルベート60及びポリソルベート80等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルとしては、好ましくは、クエン酸トリエチル、ミグリオール(ミグリオール812、ミグリオール810並びにミグリオール829)、トリアセチン、マクロゴール6000、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80及び油脂(ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油並びにダイズ油等)からなる群から選択される1以上を用いることができる。
【0063】
本発明において、湿式練合及び/又は湿式造粒する工程に、賦形剤、結合剤及び崩壊剤からなる群から選択される、1以上の添加剤を用いてもよい。
【0064】
本発明においては、賦形剤(充填剤ということもある。)を用いてもよい。また、賦形剤によっては、不純物や類縁物質が増加する可能性があるので、不純物や類縁物質が増加しないような賦形剤を選択する必要がある。賦形剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格又は食品添加物公定書等に収載されている賦形剤を使用することができる。例えば、賦形剤としては、糖誘導体、デンプン誘導体、セルロース誘導体、無機系賦形剤、βーシクロデキストリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、クロスポビドン、大豆レシチン、トラガント末、アラビアゴム、デキストラン、プルラン等が挙げられる。
糖誘導体としては、糖類、糖アルコールがあり、糖類としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖等が挙げられ、また、糖アルコールとしては、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、粉末麦芽糖水あめ、マルチトール等が挙げられる。
デンプン誘導体としては、デンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプン、カルボキシスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、低置換度カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチ等が挙げられる。
セルロース誘導体としては、結晶セルロース、粉末セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルエチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
無機系賦形剤としては、ケイ酸塩誘導体、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化マグネシウム、酸化チタン、乳酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、タルク、カオリン、乾燥水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ベントナイト等が挙げられる。
ケイ酸塩誘導体としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等の二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
リン酸塩としては、無水リン酸水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩としては、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等が挙げられる。
これら賦形剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明製剤における賦形剤は、好ましくは乳糖である。糖アルコール糖類及び糖アルコールを混合して使用してもよい。この場合、糖アルコール及び糖類を組み合わせてもよいし、糖アルコール及び他の糖アルコールを組み合わせてもよいし、糖類及び他の糖類を組み合わせてもよい。
【0065】
本発明においては、結合剤を用いてもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格又は食品添加物公定書等に収載されている結合剤を使用することができる。例えば、結合剤としては、セルロース系結合剤、デンプン系結合剤、ビニル系結合剤、ポリエーテル、アラビアゴム、アラビアゴム粉末、アラビアゴム末、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ショ糖、ゼラチン、デキストリン、プルラン、トラガント、トラガント末、キサンタンガム、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、寒天、オウバク末、グァーガム、軽質無水ケイ酸、硬化油等が挙げられる。
【0066】
セルロース系結合剤としては、カルボキシメチルセルロース(カルメロース、CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)(HPMC)、メチルセルロース(MC)、結晶セルロース、微結晶セルロース、エチルセルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0067】
デンプン系結合剤としては、澱粉、α化デンプン、部分α化デンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、有孔デンプン、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム(カルボキシメチルスターチナトリウム) 等が挙げられる。
【0068】
ビニル系結合剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)(PVP)、カルボキシビニルポリマー、コポリビドン等が挙げられる。
【0069】
ポリエーテルとしては、マクロゴール(ポリエチレングリコール)200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000、グリセリン、ポリオキシエチレン[105]ポリオキシプロピレン[5]グリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0070】
これら結合剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明製剤における結合剤は、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である。
【0071】
本発明においては、崩壊剤を用いてもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格又は食品添加物公定書等に収載されている崩壊剤を使用することができる。例えば、崩壊剤としては、セルロース系崩壊剤、デンプン系崩壊剤、ビニル系崩壊剤、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0072】
セルロース系崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム(Ac―Di―Sol)、結晶セルロース、粉末セルロース等が挙げられる。
【0073】
デンプン系崩壊剤としては、部分アルファー化デンプン、バレイショデンプン、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファ化デンプン、デンプン等が挙げられる。
【0074】
ビニル系崩壊剤としては、クロスポビドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0075】
これら崩壊剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明製剤における崩壊剤は、好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0076】
すなわち、湿式練合及び/又は湿式造粒する工程に、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1以上を用いることができる。
【0077】
本発明には、本発明の医薬組成物の製造方法により得られる式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物も含まれる。
本発明の医薬組成物としては、本発明の結晶の製造方法により得られる式(I)で示される化合物等の結晶を含有する医薬組成物も含まれる。特に、式(I)で示される化合物の無水和物結晶を含有する医薬組成物が好ましい。
【0078】
本発明には、本発明の製造方法により得られる、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物も含まれる。なお、本発明の製造方法は、他の工程を含んでいても良い。また、本発明には、湿式練合及び/又は湿式造粒した式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物も含まれる。
本発明の医薬組成物としては、式(III)で示される化合物を含有しないか、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである医薬組成物が好ましい。式(III)で示される化合物を含有しないとは、式(III)で示される化合物が含まれないか、含んでいたとしても、式(III)で示される化合物の量が検出限界以下で、式(III)で示される化合物が検出できないことを意味する。
特に、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)6ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(III)で示される化合物が検出されないか、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmである医薬組成物が好ましい。
さらに、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)1ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(III)で示される化合物が検出されないか、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmである医薬組成物がより好ましい。
また、本発明の医薬組成物には、25±2℃相対湿度60±5%(ガラス瓶開栓若しくは低密度ポリエチレン袋)12ヵ月又は30±2℃相対湿度65±5%(ガラス瓶開栓若しくは低密度ポリエチレン袋)12ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmである、医薬組成物も含まれる。
上記の温度及び相対湿度には幅があるが、上記の範囲に含まれるいずれかの温度及び相対湿度おいて、条件となる期間安定性試験した場合に、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmである、医薬組成物も本発明に含まれる。ガラス瓶開栓又は低密度ポリエチレン袋のいずれかの条件で、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmであればよい。
好ましくは、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~20ppmであり、さらに好ましくは、0.0001~10ppmである、医薬組成物である。
【0079】
本発明の医薬組成物においては、医薬組成物中の非晶質の式(I)で示される化合物等の量が少なく、経時安定性試験において、式(III)で示される化合物の生成を抑制することができる。
【0080】
経時安定性試験は、加速試験として40±2℃相対湿度75%±5%(40±2℃/75±5%RHとも表記できる)6ヵ月の条件で行ってもよく、長期試験として25±2℃相対湿度60±5%(25±2℃/60±5%RHとも表記できる)12ヵ月の条件で行ってもよい。これらの試験は、ガラス瓶密栓又は開栓、低密度ポリエチレン袋の条件下で行うことができる。好ましくは、上記相対湿度下でガラス瓶開栓の条件で行うことが好ましい。これらの安定性試験の実施方法については、日本薬局方に記載されているので、それに従って実施することができる。
【0081】
本発明の医薬組成物は、固形製剤であればよい。具体的には、顆粒剤、細粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤等であればよいが、好ましくは顆粒剤又は錠剤である。本明細書において、素製剤又は素顆粒とは、例えばコーティングされることが可能な製剤又は顆粒剤のことである。散剤、細粒剤又は顆粒剤の素製剤を素顆粒といい、錠剤の素製剤を素錠という。
【0082】
錠剤の形状としては、どのような形状も採用することができ、具体的には、丸形、楕円形、球形、棒状型、ドーナツ型の形状の錠剤とすることができる。また、積層錠、有核錠などであってもよいが、好ましくは製造法が簡便な単層錠が好ましい。さらには、識別性向上のためのマーク、文字などの刻印さらには分割用の割線を付けてもよい。
【0083】
錠剤又は顆粒剤の形態の本発明の医薬組成物において、ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルを素錠中又は素顆粒中に含有する医薬組成物も含まれる。当該ヒドロキシカルボン酸エステル類、当該多価アルコールエステル、当該ポリエーテルとしては、本発明の医薬組成物の製造方法において用いられるものが挙げられる。
例えば、錠剤又は顆粒剤であり、クエン酸トリエチル、ミグリオール(例えば、ミグリオール812、ミグリオール810、ミグリオール829)、トリアセチン、マクロゴール6000、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80及び油脂(ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油及びダイズ油等)からなる群から選択される1以上を素錠中又は素顆粒中に含有する、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物が好ましい。
【0084】
別の態様としては、錠剤又は顆粒剤であり、クエン酸トリエチルを素錠中又は素顆粒中に含有する、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物が好ましい。
【0085】
本発明の医薬組成物である顆粒剤の製造方法は、特に制限されないが、具体的には、有効成分、ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコール及び/又はポリエーテル、賦形剤等の添加剤を混合して、混合末を製造後、当該混合末を造粒する方法であり、好ましくは水や結合剤を含有する水や溶媒を添加して造粒する湿式造粒法である。
【0086】
本発明の医薬組成物である錠剤の製造方法は、特に制限されないが、具体的には、上記方法によって顆粒を製造し、さらに、この顆粒に対して、結合剤、崩壊剤及び滑沢剤を混合し、当該混合顆粒を打錠機で打錠する打錠法である。有効成分や添加剤等を混合する機械として、V型混合機やコンテナブレンダーを使用することができる。また、打錠機としては、単発打錠機、ロータリー式打錠機等を使用することができる。
【0087】
ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコール及び/又はポリエーテルエステルの量は、医薬組成物全量に対し、0.001~15重量%用いることができ、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、さらに好ましくは0.1~2重量%である。
また、ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルの量は、化合物1重量部に対して、0.0001~0.5重量部用いることができ、好ましくは0.001~0.3重量部である。
【0088】
ヒドロキシカルボン酸エステル類、多価アルコールエステル及び/又はポリエーテルを素錠中又は素顆粒中に含有する、錠剤又は顆粒剤の形態の医薬組成物においても、式(III)で示される化合物を含有し、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmであることが好ましい。さらに、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓又は低密度ポリエチレン袋)6ヵ月の条件下で安定性試験した場合に、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmであることが好ましい。
【0089】
本発明の医薬組成物において、式(I)で示される化合物等は、1~1000mg、好ましくは10~450mg、さらに好ましくは50~300mg含まれる。
本発明の医薬組成物において、式(I)で示される化合物等の配合量としては、医薬組成物全量に対し、0.1~90重量%、好ましくは、20~50重量%、より好ましくは25~40重量%である。
本発明の医薬組成物において、式(I)で示される化合物等の配合量としては、素錠又は素顆粒全量に対し、0.1~90重量%、好ましくは、20~50重量%、より好ましくは25~40重量%である。
【0090】
本発明の医薬組成物は、賦形剤、結合剤、崩壊剤及び滑沢剤からなる群から選択される、1又はそれ以上の添加剤を含んでいてもよい。賦形剤、結合剤、崩壊剤としては、上述した本発明の医薬組成物の製造方法において用いられるものが挙げられる。
【0091】
滑沢剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格又は食品添加物公定書等に収載されている滑沢剤を使用することができる。例えば、滑沢剤としては、ステアリン酸及びステアリン酸金属塩、無機系滑沢剤、疎水性滑沢剤、親水性滑沢剤、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
【0092】
ステアリン酸及びステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
【0093】
無機系滑沢剤としては、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0094】
疎水性滑沢剤としては、カカオ脂、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、サラシミツロウ、ダイズ硬化油、ミツロウ、セタノール、ラウリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0095】
親水性滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(マクロゴール)等が挙げられる。
【0096】
これら滑沢剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明製剤における滑沢剤は、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。
【0097】
例えば、本発明の医薬組成物としては、乳糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される1又はそれ以上を含有する医薬組成物が好ましい。
【0098】
本発明の医薬組成物中の賦形剤の含有量は、特に限定はされないが、医薬組成物全量に対して、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは45~65重量%である。賦形剤を2種以上使用する場合、賦形剤の全量が、上記含有量の範囲であればよい。
【0099】
本発明の医薬組成物中の結合剤の含有量は、特に限定はされないが、医薬組成物全量に対して、0.1~20重量%、好ましくは0.5~10重量%、より好ましく1~5重量%である。結合剤を2種以上使用する場合、結合剤の全量が、上記含有量の範囲であればよい。
【0100】
本発明の医薬組成物中の崩壊剤の含有量は、特に限定はされないが、医薬組成物全量に対して、0.1~20重量%、好ましくは0.5~10重量%、より好ましく2~7重量%である。結合剤を2種以上使用する場合、結合剤の全量が、上記含有量の範囲であればよい。
【0101】
本発明の医薬組成物中の滑沢剤の含有量は、特に限定はされないが、医薬組成物全量に対して、0.05~10重量%、好ましくは0.1~7重量%、より好ましくは0.2~3重量%である。
【0102】
本発明の医薬組成物は素錠や素顆粒であってもよく、コーティング錠やコーティング顆粒であってもよい。
コーティング錠やコーティング顆粒は、本発明の医薬組成物の製造方法に従い錠剤や顆粒剤を製造した後、当該錠剤や当該顆粒剤を光安定化物質及び高分子で被覆し、被覆層を形成することにより、製造することができる。顆粒剤に被覆層を形成する際、流動層造粒コーティング機、流動層転動コーティング機等を用いることができる。錠剤に被覆層を形成する際、パンコーティング機、通気式コーティング機等を用いることができる。
【0103】
本医薬組成物において使用するコーティング剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格又は食品添加物公定書等に収載されているコーティング剤を使用することができる。例えば、コーティング剤としては、水溶性コーティング剤、徐放性コーティング剤、腸溶性コーティング剤、糖衣基材等が挙げられる。これらのコーティング剤を、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の表面に被覆する。
【0104】
水溶性コーティング剤としては、セルロース系高分子、アクリル酸系高分子、ビニル系高分子、多糖類があり、セルロース系高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒプロメロース(HPMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられ、アクリル酸系高分子としては、アミノアルキルアクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等が挙げられ、ビニル系高分子としてはポリビニルピロリドン等が挙げられ、また、多糖類としてはプルラン等が挙げられる。
【0105】
日本薬局方記載の徐放性製剤を製造する際に、製剤に徐放性コーティング剤を被覆することがある。徐放性コーティング剤としては、セルロース系高分子、アクリル酸系高分子があり、セルロース系高分子としては、エチルセルロース等が挙げられ、また、アクリル酸系高分子としては、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS〔オイドラギットRS(商品名)〕、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル共重合体懸濁液〔オイドラギットNE(商品名)〕等が挙げられる。
【0106】
日本薬局方記載の腸溶性製剤を製造する際に、製剤に腸溶性コーティング剤を被覆することがある。腸溶性コーティング剤としては、セルロース系高分子、アクリル酸系高分子、天然物があり、セルロース系高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等が挙げられ、アクリル酸系高分子としては、メタアクリル酸コポリマーL〔オイドラギットL(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーLD〔オイドラギットL-30D55(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーS〔オイドラギットS(商品名)〕などのアクリル酸系高分等が挙げられ、また、天然物としては、セラックが挙げられる。
【0107】
糖衣基剤としては、精製白糖が挙げられ、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナバロウなどから選ばれる。
【0108】
これらのコーティング剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明の医薬組成物におけるコーティング剤は、好ましくはヒプロメロース(HPMC)である。
【0109】
本発明の医薬組成物中のコーティング剤の含有量は、特に限定はされないが、製剤全量に対して、0,1~10重量%、好ましくは0.5~7重量%、より好ましくは1~5重量%である。コーティング剤を2種以上使用する場合、コーティング剤の全量が、上記含有量の範囲であればよい。
【0110】
被覆されていない錠剤をフィルムコーティングする場合、フィルムコーティング層は、コーティングされていない錠剤100重量部当たり、通常1~10重量部、好ましくは2~6重量部である。
【0111】
本発明の医薬組成物中には、コーティング剤とともに可塑剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格又は食品添加物公定書等に収載されている可塑剤を使用することができる。例えば、可塑剤としては、クエン酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、界面活性剤、モノステアリン、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0112】
クエン酸エステル類としては、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチル化クエン酸トリエチル等が挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステル類としては、トリアセチン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、モノアセチルグリセリン等が挙げられる。
界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ポロキサマー、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート等が挙げられる。
【0113】
これらの可塑剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明製剤における可塑剤は、好ましくはクエン酸トリエチルである。
【0114】
本発明の医薬組成物中の可塑剤の含有量は、特に限定はされないが、製剤全量に対して、0.01~5重量%、好ましくは0.05~1重量%である。可塑剤を2種以上使用する場合、可塑剤の全量が、上記含有量の範囲であればよい。
【0115】
本発明の医薬組成物中には、着色剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格又は食品添加物公定書等に収載されている着色剤を使用することができる。例えば、着色剤としては、天然色素(天然着色料)、合成色素(合成着色料)、酸化鉄、酸化チタン、タルク、リボフラビン、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
天然色素(天然着色料)としては、カラメル色素、ウコン抽出液、βーカロテン、カロチン、カンゾウエキス、クマザサエキス等が挙げられる。
合成色素(合成着色料)としては、食用青色1号、食用青色2号アルミニウムレーキ、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色等が挙げられる。
酸化鉄としては、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、黄酸化鉄、褐色酸化鉄等が挙げられる。
これらの着色剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
好ましくは、タルク、黄色三二酸化鉄及び/又は三二酸化鉄である。
【0116】
本発明の医薬組成物は、式(I)で示される化合物等を含有する。式(I)で示される化合物等は、P2X3及び/又はP2X2/3受容体に対する拮抗作用を有する。従って、本発明の医薬組成物は、P2X3及び/又はP2X2/3が関与する疾患の治療剤として有用である。
P2X3及び/又はP2X2/3受容体は疼痛、泌尿器系疾患及び呼吸器疾患に関与すると考えられており、本発明の医薬組成物は、鎮痛作用、尿路障害改善作用、排尿障害改善作用又は呼吸器障害改善作用を有する医薬組成物として有用である。本発明の医薬組成物は、これらの疾患の治療、症状の緩和又は予防に有効である。
【0117】
本発明の医薬組成物中、特に、錠剤又は顆粒中に含有する式(I)で示される化合物等の重量は、患者が服用しやすく、錠剤又は顆粒を製造することができる含量であれば、特に制限されないが、1錠又は1包あたり、1~450mg、好ましくは5~350mg、より好ましくは10~300mgである。
具体的には、1錠又は1包あたりに含有する、式(I)で示される化合物等含量は、10mg、20mg、30mg、50mg、70mg、100gm、150gm、200mg、250mg又は300mgである。この場合、10mgとは、9.0~11.0mg、好ましくは9.5~10.5mgの範囲の範囲を示し、20mgとは、18.0~22.0mg、好ましくは19.0~21.0mgの範囲を示し、30mgとは、26.0~34.0mgの範囲を示し、好ましくは28.0~32.0mgの範囲を示し、50mgとは、46.0~54.0mgの範囲を示し、好ましくは48.0~52.0mgの範囲を示し、70mgとは、66.0~74.0mgの範囲を示し、好ましくは68.0~72.0mgの範囲を示し、100mgとは、96.0~104.0mgの範囲を示し、好ましくは98.0~102.0mgの範囲を示し、150mgとは、146.0~154.0mgの範囲を示し、好ましくは148.0~152.0mgの範囲を示し、200mgとは、196.0~204.0mgの範囲を示し、好ましくは198.0~202.0mgの範囲を示し、250mgとは、246.0~254.0mgの範囲を示し、好ましくは248.0~252.0mgの範囲を示し、300mgとは、296.0~304.0mgの範囲を示し、好ましくは298.0~302.0mgの範囲を示す。
【0118】
本発明には、
a)式(I)で示される化合物等の結晶、又は式(I)で示される化合物等を含む医薬組成物を試料とし、当該試料においてクロマトグラフィー分析を行う工程;及び
b)上記工程で得られたクロマトグラフィー分析において、式(III)で示される化合物の含有量又は含有割合を得る工程、
を含む、式(I)で示される化合物等の結晶、又は式(I)で示される化合物等を含む医薬組成物中の類縁物質を分析する方法も含まれる。
また、本発明には、式(I)で示される化合物等の結晶、又は式(I)で示される化合物等を含む医薬組成物中の式(III)で示される化合物の含有量又は含有割合を分析する方法であって、
式(III)で示される化合物を標準試料として使用する方法も含まれる。
【0119】
クロマトグラフィー分析は、UV検出を組み合わせた手法 (HPLC/UV)、又は質量分析と組み合わせた手法(LC/MS、LC/MS/MS)であってもよい。
例えば、式(III)で示される化合物を含む類縁物質の量(含有量又は含有割合)を高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。その際、式(III)で示される化合物を類縁物質測定の際の標準試料(リファレンス・スタンダード)として用いることができる。式(III)で示される化合物の含有量又は含有割合は、クロマトグラフィーデータのピーク面積から算出することができる。含有割合とは、製剤全体に対する割合、式(I)で示される化合物等に対する割合、式(I)で示される化合物等と式(III)で示される化合物の合計に対する割合などを用いることができる。
本発明には、式(I)で示される化合物の二水和物結晶も含まれる。
式(I)で示される化合物の二水和物結晶に特徴的な粉末X線回析ピークは、粉末X線回折角度(2θ):5.7°、7.7°、11.8°、15.2°、17.7°、20.6°、20.8°、26.5°、27.1°又は29.1°であり、それぞれ、±0.2°程度の範囲内の数値も含む。
たとえば、式(I)で示される化合物の二水和物結晶は、回折角度(2θ):5.7±0.2°、7.7±0.2°、11.8±0.2°、15.2±0.2°、17.7±0.2°、20.6±0.2°、20.8±0.2°、26.5±0.2°、27.1±0.2°及び29.1±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す結晶として、特定することができる。
式(I)で示される化合物の二水和物結晶としては、回折角度(2θ):5.7±0.2°、7.7±0.2°、11.8±0.2°、15.2±0.2°及び17.7±0.2°に特徴的な粉末X線回析ピークを示す結晶として、特定することができる。
本発明の二水和物結晶の水分含量は、例えば、4.7~9.7重量%が挙げられる。好ましくは、約5.6~7.6重量%が挙げられる(式(I)で示される化合物の二水和物結晶の水分含量の理論値は6.6%であるが、結晶に付着した水の影響で水分含有量が高くなる場合、測定前に結晶中の水の一部が脱離し水分含有量が低くなる場合もある)。
【実施例0120】
以下に実施例及び参考例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。数値(例えば、量、温度等)に関しては、いくらかの誤差及び偏差は考慮されるべきである。
特筆しない限り、%は成分の重量%及び組成物の全重量の重量%であり、圧力は大気圧か又はそれに近い圧力である。
【0121】
(粉末X線回折パターンの測定)
日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、各実施例で得られた結晶の粉末X線回折測定を行った。測定条件を以下に示す。
(装置)
リガク社製SmartLab
(操作方法)
測定法:反射法
使用波長:CuKα線
管電流:200mA
管電圧:45kV
試料プレート:ガラス
X線の入射角:2.5°
サンプリング幅:0.02°
検出器:HyPix-3000(2次元検出モード)
【0122】
(ラマンスペクトルの測定)
各実施例で得られた結晶のラマンスペクトルの測定を行った。測定条件を以下に示す。
測定機器:LabRAM ARAMIS (HORIBA JOBIN YVON社製)
測定方法:顕微レーザラマン分光法
レーザ波長:633nm(He-Neレーザ)
回折格子:600grooves/mm
検出器:CCD検出器
対物レンズ:20×(NA 0.25)
積算回数:5回
露光時間:5秒
【0123】
(TG/DTAの測定)
参考例Kで得られた結晶約4.4mgを量り、アルミニウムパンにつめ、開放系にて測定した。測定条件は以下のとおりである。
装置:日立ハイテクノロジーズ TG/DTA STA7200RV
測定温度範囲:室温-300℃
昇温速度:10℃/分
【0124】
式(I)で示される化合物等は、特許文献1に開示されている方法を参考に製造することができる。
【0125】
(参考例A)化合物(3)の合成
【化7】
(R)-(+)-1-フェニルエチルアミン(化合物(1))(20.01g、165.1mmol)にメタノール(20mL)、メタクリル酸メチル(化合物(2))(49.64g、495.8mmol)を室温で加えた。-10℃に冷却後、塩化リチウム(7.07g、167mmol)を加えた。反応液を80℃に昇温し、6時間攪拌した。反応液を25℃に冷却し、9.1%塩化ナトリウム水溶液(77.03g)を加えて、分液により有機層及び水層を得た。得られた水層にトルエン(61.04g)を室温で加え、分液により水層を除去した。得られた2つの有機層を合併し、トルエン(16.99g)を加えて50℃で減圧留去した。
p-トルエンスルホン酸一水和物(28.91g、152.0mmol)をエタノール(16.00g)に溶解してp-トルエンスルホン酸のエタノール溶液(44.91g)を調製した。
上記で調製した濃縮液にトルエン(155.91g)を加え、上記で調製したp-トルエンスルホン酸のエタノール溶液(5.88g)及び化合物(3)の種晶(19.95mg、0.05070mmol)にトルエン(63μL)を加えて懸濁させたスラリーを室温で加えた。得られたスラリーに上記で調製したp-トルエンスルホン酸のエタノール溶液(39.93g)を加え、エタノール(10mL)を加えて2時間攪拌し、終夜放置した。0℃に冷却して2時間攪拌し、固体をろ取し化合物(3)(20.75g、31.9%)を粗生成物として得た。
化合物(3)の粗生成物の一部(5.00g)にトルエン(1.92g)、酢酸エチル(21.70g)及びメタノール(2.90g)を加え、50℃で3時間攪拌した。0℃に冷却し、固体をろ取して化合物(3)(4.65g)を得た。
元素分析:C 61.22%, H 7.09%, N 3.56%, S 8.12%
1H-NMR(DMSO-d6)δppm: 1.12(d, J=7.0 Hz,3H), 1.55(br d, J=6.7 Hz, 3H), 2.29(s, 3H), 2.50(s, 2H), 2.83(br dd, J=13.2 Hz, 6.9 Hz, 1H), 2.90(m, 2H), 3.62(s, 3H), 7.13(m, 2H), 7.47(m, 7H)
【0126】
(参考例B)化合物(3)の種晶の合成
(R)-(+)-1-フェニルエチルアミン(化合物(1))(2.00g、16.5mmol)、メタノール(1.59g)、メタクリル酸メチル(化合物(2))(4.97g、49.6mmol)及び塩化リチウム(0.70g、17mmol)を室温で混合し、80℃に昇温して4時間攪拌した。反応液を25℃に冷却し、9.1%塩化ナトリウム水溶液(7.70g)を加えて、分液により水層を除去した。得られた有機層にトルエン(5.21g)を加えた後、p-トルエンスルホン酸一水和物(2.88g、15.1mmol)をメタノール(1.58g)に溶解して調整したp-トルエンスルホン酸のメタノール溶液(4.46g)を加えた。この反応液を0℃に冷却したトルエン(6.94g)に加え、0℃で30分攪拌した。析出した固体をろ取することで化合物(3)の種晶(1.60g,24.6%)を得た。
【0127】
(参考例C)化合物(4)の合成
【化8】
化合物(3)(22.00g、55.91mmol)にトルエン(95.26g)と水(44.00g)を加えて懸濁し、8%水酸化ナトリウム水溶液(27.54g)と水(4.40g)を加えて分液により水層を除去した。得られた有機層に水(11.00g)を加え、分液により水層を除去した。得られた有機層を50℃で減圧留去し、メタノールを加える操作を繰り返し行い、メタノールへ溶媒置換した。得られた濃縮液に濃硫酸(2.04g、19.8mmol)、10%パラジウム炭素(2.20g、約40%湿潤品)及びメタノール(17.41g)を加えた。反応液を40℃に昇温し、水素雰囲気下で90分攪拌した。ろ過によりパラジウム炭素を除去し、得られたろ液にメタノール(52.24g)及び濃硫酸(0.67g、6.5mmol)を加えた。得られた反応液にアセトニトリルを加え、減圧留去する操作を繰り返し行い、アセトニトリルへ溶媒置換して0℃に冷却した。析出した固体をろ取することで化合物(4)(8.58g、92.3%)を得た。
元素分析:C 35.72%, H 7.18%, N 8.55%, S 9.63%
1H-NMR(DMSO-d6)δppm: 1.10(d, J=7.1 Hz, 3H), 2.62(m, 1H), 2.75(dd, J=12.7H, 5.9 Hz, 1H), 2.89(dd, J=12.7 Hz, 7.3 Hz, 1H), 3.63(s, 3H)
【0128】
(参考例D)化合物(5)の合成
【化9】
化合物(4)(19.00g、114.3mmol)をアセトニトリル(45.00g)に懸濁した。2℃で1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(19.10g、125.5mmol)及びアセトニトリル(3.00g)を加え、2℃で30分攪拌した。反応液をN,N-カルボニルジイミダゾール(21.30g、131.4mmol)をアセトニトリル(75.00g)に懸濁したスラリーに2℃で加えた。反応液にアセトニトリル(15.00g)を加え、2℃で1時間22分攪拌した。反応液に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(17.40g、114.3mmol)及びアセトニトリル(3.00g)を2℃で加え、1℃に冷却した。反応液に1H-ピラゾール-1-カルボキシアミジン塩酸塩(16.80g、114.6mmol)及びアセトニトリル(3.00g)を加えた。反応液を60℃に昇温し、2時間10分攪拌した。反応液を20℃に冷却した。反応液に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(27.80g、182.6mmol)及びアセトニトリル(3.00g)を2℃で加え、-10℃に冷却した。反応液にN,N-カルボニルジイミダゾール(29.70g、183.2mmol)及びアセトニトリル(3.00g)を加えた。反応液を2℃で1時間20分攪拌した。反応液にメタノール(7.50g)、酢酸(4.80g、79.9mmol)及びアセトニトリル(3.00g)を2℃で加えた。反応液を50℃で減圧留去した。得られた濃縮液にN,N-ジメチルアセトアミド(27.00g)を加え、10℃に冷却して17%硫酸水(204.1g)及び水(19.00g)を加えた。反応液に17%硫酸水(31.30g)及び水(2.50g)を25℃で加え、1時間48分攪拌した。反応液を50℃で減圧留去した。得られた濃縮液に水(190mL)を加え、2℃に冷却した後、17%硫酸水(3.30g)及び水(1.30g)を加えた。反応液を2℃で1時間15分攪拌し、析出した固体をろ取して化合物(5)(27.13g、85.0%)を得た。
1H-NMR(CDCl
3)δppm:1.24(d, J=7.1 Hz, 3H), 3.02(m, 1H), 3.68(s, 3H), 4.02(dd, J=13.4 Hz, 6.3 Hz, 1H), 4.24(dd, J=13.3 Hz, 8.4 Hz, 1H), 6.60(dd, J=2.8Hz, 1.6 Hz, 1H), 7.85(d, J=1.6Hz, 1H), 8.48(dd, J=2.9 Hz, 0.6 Hz, 1H), 9.70(brs, 1H)
【0129】
(参考例E)化合物(8)の合成
【化10】
ナトリウム tert-ブトキシド(12.50g、130.1mol)をN-メチル-2-ピロリドン(64.00g)に懸濁し、4-アミノフェノール(化合物(7))(14.10g、129.2mmol)及びN-メチル-2-ピロリドン(16.00g)を加えた。反応液を100℃に昇温し、2-ブロモピリジン(化合物(6))(19.50g、123.4mmol)及びN-メチル-2-ピロリドン(4.00g)を加えた。反応液を115℃で8時間20分攪拌し、50℃に冷却した。反応液に水(29.00g)を50℃で加え、25℃に冷却して水(107.00g)を加えた。反応液に化合物(8)の種晶(8、20mg)及び水(195mg)を加えて20℃で50分攪拌した。反応液に水(156.00g)を25℃で加え、5℃に冷却して1時間30分攪拌した。析出した固体をろ取することで化合物(8)(17.81g、77.5%)を得た。
1H-NMR(CDCl
3)δppm:3.60(s,2H), 6.69-6.73(m, 2H), 6.83(ddd, J=8.4Hz, 0.8Hz, 0.8Hz, 1H), 6.92-6.96(m, 3H), 7.63(ddd, J=8.0Hz, 7.2Hz, 2.0Hz, 1H), 8.18(ddd, J=5.2Hz, 2.0Hz, 0.8Hz, 1H)
【0130】
(参考例F)化合物(8)の種晶合成
ナトリウム tert-ブトキシド(3.20g、33.3mmol)をN-メチル-2-ピロリドン(16.42g)に懸濁し、4-アミノフェノール(化合物(7))(3.64g、33.4mmol)及びN-メチル-2-ピロリドン(4.12g)を加えた。反応液を100℃に昇温し、2-ブロモピリジン(化合物(6))(5.01g、31.7mmol)及びN-メチル-2-ピロリドン(1.10g)を加えた。反応液を115℃で6時間攪拌し、ナトリウム tert-ブトキシド(1.07g、11.1mmol)を加えて115℃で2時間35分攪拌した後に50℃に冷却した。反応液に水(7.50g)を50℃で加えた後に25℃に冷却して水(67.54g)を加え、1℃に冷却して結晶化させた。得られたスラリーを5℃で30分攪拌した後に、析出した固体をろ取することで、化合物(8)の種晶(3.84g、65.2%)を得た。
【0131】
(参考例G)化合物(9)の合成
【化11】
化合物(5)(10.13g、36.27mmol)に臭化ナトリウム(4.1g、39.9mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(27.70g)を加えた。反応液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.16g、39.9mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(0.96g)を加え、75℃に昇温した。反応液に4-クロロベンジルクロリド(6.43g、39.9mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド(9.56g)に溶解して調製した4-クロロベンジルクロリドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を75℃で加え、N,N-ジメチルアセトアミド(9.56g)を加えた。反応液を75℃で5時間15分攪拌した。反応液を25℃に冷却し、酢酸(0.65g、11mmol)を加えて40℃に昇温した。反応液に化合物(8)(7.43g、39.9mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド(9.55g)に溶解して調製した化合物(8)のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を加え、N,N-ジメチルアセトアミド(9.55g)を加えた。反応液を40℃で3時間攪拌し、室温に冷却した。反応液にアセトン(27.94g)及び水(35.46g)を加えた。反応液に化合物(9)の種晶(10.13mg)、水(0.40g)及びアセトン(0.08g)を加え、室温で3時間25分攪拌後、終夜放置した。反応液を室温で1時間攪拌後、水(30.39g)を加えて3時間25分攪拌した。析出した固体をろ取して、化合物(9)(16.72g、88.3%)を得た。
1H-NMR(CDCl
3)δppm:1.19(d, J=7.1 Hz, 3H), 2.91(m, 1H), 3.61(s, 3H), 3.90(dd, J=13.6 Hz, 6.2 Hz, 1H), 4.12(dd, J=13.6 Hz, 8.4 Hz, 1H), 5.18(d, J=14.2 Hz, 1H), 5.22(d, J=14.2 Hz, 1H), 6.85(m, 2H), 6.96(m, 1H), 7.00(m, 1H), 7.14(m, 2H), 7.31(m, 2H), 7.50(m, 2H), 7.70(m, 1H), 7.89(brs, 1H), 8.14(m, 1H)
【0132】
(参考例H)化合物(9)の種晶合成
化合物(5)(5.01g、17.9mmol)に臭化ナトリウム(2.00g、19.4mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(13.67g)を加えた。反応液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.55g、19.7mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(0.47g)を加え、75℃に昇温した。反応液に4-クロロベンジルクロリド(3.16g、19.6mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド(4.71g)に溶解して調製した4-クロロベンジルクロリドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を75℃で加え、N,N-ジメチルアセトアミド(4.71g)を加えた。反応液を75℃で4時間30分攪拌した。反応液を25℃に冷却して酢酸(0.32g、5.3mmol)を加え、40℃に昇温した。反応液に化合物(8)(3.66g、19.7mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド(4.71g)に溶解して調製した化合物(8)のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を加え、N,N-ジメチルアセトアミド(4.71g)を加えた。反応液を40℃で3時間25分攪拌し、室温に冷却した。反応液にアセトン(13.79g)及び水(17.54g)を加え、室温で終夜放置した。反応液を25℃に昇温して5時間攪拌し、水(15.00g)を加えて25℃で2時間攪拌した。析出した固体をろ取して、化合物(9)の種晶(8.17g、87.2%)を得た。
【0133】
(参考例I)式(I)で示される化合物の無水和物結晶の合成
【化12】
化合物(9)(70.00g、134.1mmol)に2-プロパノール(109.91g)、水(63.00g)及び48%水酸化ナトリウム水溶液(27.94g、335.3mmol)を加えた。反応液を35℃に昇温し、4時間10分攪拌した。反応液に2-プロパノール(32.97g)、メタノール(177.30g)及び水(63.00g)を加えて50℃に昇温した。反応液にギ酸(18.52g、402.3mmol)及び式(I)で示される化合物の無水和物の種晶(70.00mg)を加え、50℃で1時間10分攪拌した後に水(280.00g)を加えて25℃に冷却した。析出した固体をろ取して、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(62.86g、92.3%)を得た。
無水和物結晶であることは、示差走査熱量測定(DSC)、示差熱・熱重量同時測測定(TG/DTA)、水分吸脱着測定(DVS)及び粉末X線回折測定で確認した。
1H-NMR(CDCl
3)δppm:1.13(d, J=7.0 Hz, 3H), 2.76(m, 1H), 3.83(dd, J=13.5 Hz, 6.1 Hz, 1H), 4.03(dd, J=13.5 Hz, 8.5 Hz, 1H), 5.14(m, 1H), 5.25(d, J=14.4 Hz, 1H), 6.82(d, J=8.6 Hz, 2H), 7.00(m, 2H), 7.08(m, 2H), 7.25(m, 2H), 7.43(d, J=8.3 Hz, 2H), 7.72(m, 1H), 8.06(dd, J=5.4 Hz, 1.8 Hz, 1H), 8.67(brs, 1H)
【0134】
式(I)で示される化合物の無水和物の結晶の粉末X線回折パターンを、
図1に示す。
回折角度(2θ):7.9°、9.3°、12.6°、12.9°、15.8°、17.2°、19.4°、21.7°、23.9°、25.4°、26.6°、27.8°、32.8°
【0135】
式(I)で示される化合物の無水和物の結晶のラマンスペクトルを
図2に示す。
829cm
-1±2cm
-1、989cm
-1±2cm
-1、1013cm
-1±2cm
-1、1093cm
-1±2cm
-1、1128cm
-1±2cm
-1、1243cm
-1±2cm
-1、1370cm
-1±2cm
-1、1599cm
-1±2cm
-1、1659cm
-1±2cm
-1、1735cm
-1±2cm
-1、2938cm
-1±2cm
-1、3067cm
-1±2cm
-1に主な吸収ピークが認められた。
【0136】
融点(オンセット温度):約196℃
【0137】
(参考例J)式(I)で示される化合物の無水和物の種晶の合成
化合物(9)(1.50g、2.87mmol)にメタノール(5.95g)、水(3.00g)及び48%水酸化ナトリウム水溶液(0.60g、7.20mmol)を加えた。反応液を40℃に昇温し、1時間30分攪拌した。反応液を室温に冷却し、ギ酸(0.40g、8.62mmol)、酢酸エチル(10.5mL)、水(9mL)を室温で加えて分液により水層を除去した。得られた有機層に水(3mL)を加え、分液により水層を除去し、有機層に2-プロパノール(90mL)を加え、40℃で減圧留去した。得られた濃縮残渣に水(7.5mL)、2-プロパノール(7.5mL)を加えて25℃で1時間30分攪拌した。水(7.5mL)、メタノール(7.5mL)を加えた後、60℃に昇温して2時間攪拌し、25℃に冷却して析出した固体をろ取して、式(I)で示される化合物の無水和物の種晶(1.25g,85.6%)を得た。
【0138】
(参考例K)式(I)で示される化合物の二水和物結晶の合成
式(I)で示される化合物の無水和物結晶(50.00g、98.43mmol)に、2-プロパノール(314.02g)、水(150.00g)、48%水酸化ナトリウム(20.51g、246.1mmol)を加えて溶解した。得られた溶液に、35%塩酸(25.64g、246.1mmol)と式(I)で示される化合物の二水和物の種晶(50.00mg)を加えた後、室温で1時間攪拌し、水(250.00g)を加えて2時間撹拌した。得られたスラリーを5℃に冷却し、ろ過することで、式(I)で示される化合物の二水和物結晶(49.23g)を得た。
二水和物結晶であることは、示差熱・熱重量同時測測定(TG/DTA)、水分吸脱着測定(DVS)及び粉末X線回折測定で確認した。
【0139】
式(I)で示される化合物の二水和物結晶の粉末X線回折パターンを、
図3に示す。
回折角度(2θ):5.7°、7.7°、11.8°、15.2°、17.7°、20.6°、20.8°、26.5°、27.1°、29.1°
【0140】
式(I)で示される化合物の二水和物結晶の示差熱熱重量同時測定(TG/DTA)の結果を、
図4に示す。この結果、約55℃から約85℃に、吸熱ピークを伴う、6.4%の重量減少を確認した。式(I)で示される化合物の二水和物結晶の、水分含量の理論値は6.6%であることから、式(I)で示される化合物の二水和物結晶であることを確認した。
【0141】
(実施例L)式(I)で示される化合物の二水和物の種晶の合成
化合物(9)(70.00g、134.1mmol)に、2-プロパノール(109.91g)、水(63.02g)、48%水酸化ナトリウム(27.95g、335.4mmol)を加えて、25℃で4時間撹拌した。得られた反応溶液に、2-プロパノール(16.49g)、メタノール(127.43g)、水(217.00g)を加えた後、25℃でギ酸(9.88g、215mmol)を加えて、25℃で35分間攪拌した。得られたスラリーに、ギ酸(8.64g、188mmol)と水(70.00g)を混合して調整したギ酸水溶液を25℃で滴下した後、水(7.00g)及びメタノール(27.70g)を加えた。スラリーをろ過することで、式(I)で示される化合物の二水和物(64.04g、式(III)で示される化合物の含有割合:未検出)を得た。
【0142】
実施例Lで製造した、式(I)で示される化合物の二水和物結晶中の、式(III)で示される化合物の含有割合は、以下の方法で求めた。
実施例1~4及び6並びに参考例1~2においても、同様の方法で求めた。
【0143】
(試験例1)結晶中に含まれる式(III)で示される化合物の含有割合の測定
(標準溶液の調製)
以下の方法で、式(III)で示される化合物の標準試料を作成した。
工程1:式(III)で示される化合物を約25mg精密に量り、N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)に溶かし、正確に20mLとした。
工程2:工程1の液1mLを正確にとり、N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)を加えて正確に50mLとした。
工程3:工程2の液2mLを正確にとり、N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)を加えて正確に20mLとし、標準溶液とした。
【0144】
(試料溶液の調製)
以下の方法で、試料溶液の調製を行った。
試料約125~600mgを精密に量り、N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)を加えて溶かし、正確に5mLとした。
【0145】
(式(III)で示される化合物の量測定法)
以下の方法、条件によって、液体クロマトグラフで、式(III)で示される化合物の量を測定した。
・測定機器:UHPLC(NexeraX2、SHIMADZU)
・検出器:UV
・測定波長:271nm
・カラム:ACQUITY UPLC BEH SHIELD PR18、1.7μm(2.1×100mm)
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相A:20mmol/Lリン酸二水素カリウム水溶液
・移動相B:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
・移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表1のように変えて濃度勾配制御した。
【0146】
【表1】
・流量:0.3mL/min
・注入量:2μL
・サンプルクーラー温度:5℃
・面積測定範囲:注入後11分間
・ニードル洗浄液:N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)
【0147】
(計算式)
(数4)
式(III)で示される化合物の含量(ppm) = MS/MT × AT/AS× 1/2000 × 1000000
MS:式(III)で示される化合物の秤取量(mg)
MT :試料の秤取量(mg)
AS:標準溶液から得られる、式(III)で示される化合物のピーク面積
AT:試料溶液から得られる、式(III)で示される化合物のピーク面積
1/2000:希釈倍率
【0148】
上記試験を行った結果、式(I)で示される化合物の二水和物結晶は、式(III)で示される化合物を含有しないか、検出限界以下であることがわかった。
【0149】
式(I)で示される化合物等の乾式粉砕品の製造方法を以下に示す。
(参考例1)式(I)で示される化合物の乾式粉砕品の製造
上記参考例Iに従って得られた式(I)で示される化合物の無水和物結晶を、カウンタージェットミル(100AFG、ホソカワミクロン)にて乾式粉砕し、検体(14.53μm)を得た。
【0150】
参考例1の製造方法における、90%粒子径は以下の方法で求めた。
実施例1~6及び参考例3においても、同様の方法で求めた。
【0151】
(試験例2)90%粒子径の測定法
以下の方法、条件によって、90%粒子径を測定した。
・測定機器:レーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS&RODOS、Sympatec)
・分散圧:4bar
・送り:50%
・回転:20%
・焦点距離:50mm
・トリガー条件:リファレンス持続時間 2秒
タイムベース 100ミリ秒
スタート Optical concentration≧1.0%
ストップ Optical concentration≦1.0%
・測定レンジ:R2
【0152】
式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することを特徴とする、式(I)で示される化合等の結晶の製造方法を以下に示す。
実施例1~4に、圧力式ホモジナイザーを用いた湿式粉砕工程を含む、式(I)で示される化合等の結晶の製造方法を示す。
【0153】
(実施例1)式(I)で示される化合物の湿式粉砕品の製造(1)
化合物(9)(70.00g、134.12mmol)に2-プロパノール(109.91g)、水(63.00g)、48%水酸化ナトリウム(27.94g、335.3mmol)を加え、35℃で2時間攪拌した。反応液(式(III)で示される化合物の含有割合:54.3ppm)に、2-プロパノール(32.97g)、水(63.00g)、メタノール(177.30g)を加えて50℃に昇温し、圧力式ホモジナイザー(LAB2000、SMT)処理を行いながらギ酸(18.52g、402.35mmol)、式(I)で示される化合物の無水和物の種晶(70.02mg)を加えた後、圧力式ホモジナイザー処理下で1時間攪拌することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶を析出させ、スラリーを得た。
得られたスラリーに圧力式ホモジナイザー処理下で水(280.00g)を加え25℃に冷却した。得られたスラリーを圧力式ホモジナイザーで湿式粉砕した後、ろ過することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(62.86g、90%粒子径:5.51μm、式(III)で示される化合物の含有割合:1.10ppm)を得た。
ろ過後のろ液及び得られた結晶に含まれる式(III)で示される化合物の含有割合の合計量は119.6ppmであり、晶析操作中の式(III)で示される化合物の含有割合の増加量は119.6-54.3=65.3ppmであった。
【0154】
実施例1の製造方法における、溶液中の、式(III)で示される化合物の含有割合は以下の方法で求めた。
実施例4、及び参考例2~3においても、同様の方法で求めた。
【0155】
(試験例3)溶液中に含まれる式(III)で示される化合物の含有割合の測定
(標準溶液の調製)
以下の方法で、式(III)で示される化合物の標準試料を作成した。
工程1:式(III)で示される化合物を約25mg精密に量り、N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)に溶かし、正確に20mLとした。
工程2:工程1の液1mLを正確にとり、N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)を加えて正確に50mLとした。
工程3:工程2の液2mLを正確にとり、N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)を加えて正確に20mLとし、標準溶液とした。
【0156】
(試料溶液の調製)
以下の方法で、試料溶液の調製を行った。
試料約60~1300mgを精密に量り、N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)を加えて溶かし、正確に5mLとした。
【0157】
(式(III)で示される化合物の量測定法)
以下の方法、条件によって、液体クロマトグラフで、式(III)で示される化合物の量を測定した。
・測定機器:UHPLC(NexeraX2、SHIMADZU)
・検出器:UV
・測定波長:271nm
・カラム:ACQUITY UPLC BEH SHIELD PR18、1.7μm (2.1×100 mm)
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相A:20mmol/Lリン酸二水素カリウム水溶液
・移動相B:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
・移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表2のように変えて濃度勾配制御した。
【0158】
【表2】
・流量:0.3mL/min
・注入量:2μL
・サンプルクーラー温度:5℃
・面積測定範囲:注入後11分間
・ニードル洗浄液:N,N―ジメチルホルムアミド/水混液(9:1)
【0159】
(計算式)
(数3)
式(III)で示される化合物の含量(ppm) = MS/MT × AT/AS ×1/2000 × YT/YS ×1000000
MS:式(III)で示される化合物の秤取量(mg)
MT :試料の秤取量(mg)
AS:標準溶液から得られる、式(III)で示される化合物のピーク面積
AT:試料溶液から得られる、式(III)で示される化合物のピーク面積
YS:式(I)で示される化合物の収量(g)
YT:試料の総重量(g)
1/2000:希釈倍率
【0160】
(試験例4)安定性試験
実施例1及び参考例1で得られた検体について、保存安定性試験を行い、式(III)で示される化合物の含有量を評価した。
実施例1の保存条件及び包装形態を表3に、参考例1の保存条件及び包装形態を表4に示す。
表中、包装形態の詳細は下記を示し、他の表においても同様である。
・二重ポリエチレン袋・コンベックス・金属缶:
検体をポリエチレン袋(サンテック―LD M2206(無添加品)100×210×0.1mm、東和化工)に入れて、コンベックス(CV100N、芝軽粗材)で締めた。この袋を更にポリエチレン(サンテック―LD M2206(無添加品)100×210×0.1mm、東和化工)袋に入れ、同様にコンベックス(CV100N、芝軽粗材)で締めた。同じ保存条件の上記検体をまとめて、金属缶(サンダイア、内径16cm、深さ18cmのステンレス缶)に入れた。
・二重ポリエチレン袋・コンベックス(乾燥剤入り)・金属缶:
検体をポリエチレン袋(サンテック―LD M2206(無添加品)100×210×0.1mm、東和化工)に入れて、コンベックス(CV100N、芝軽粗材)で締めた。この袋を更にポリエチレン袋(サンテック―LD M2206(無添加品)100×210×0.1mm、東和化工)に入れ、同様にコンベックス(CV100N、芝軽粗材)で締めた。同じ保存条件の上記検体をまとめて、シリカゲル(富士シリシア化学株式会社の原料使用、1g袋入り)入りの金属缶(サンダイア、内径16cm、深さ18cmのステンレス缶)に入れた。
【表3】
【表4】
【0161】
式(III)で示される化合物の含有量は、試験例1と同様の方法で確認した。
【0162】
(結果)
実施例1及び参考例1について、経時保存品中の、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の量を表5に示す。表中、Mは月を表す。他の表においても同様である。
40±2℃相対湿度75±5%(表5では、40±2℃/75±5%RHと表記)の条件における、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合は、参考例1の検体は、1ヵ月が15ppm(試験開始時からの増加量が12ppm)、3ヵ月が18ppm(試験開始時からの増加量が15ppm)であった。一方、実施例1の検体においては、1ヵ月が2ppm(試験開始時からの増加量が1ppm)、3ヵ月が3ppm(試験開始時からの増加量が2ppm)、6ヵ月が4ppm(試験開始時からの増加量が3ppm)であった。湿式粉砕した実施例1の検体は、参考例1検体と比較して、式(III)で示される化合物量の増加が抑制されていた。このことから、式(I)で示される化合物等を湿式粉砕することにより、安定性が向上することを見出した。
また、上記の結果より、本発明の結晶が、40±2℃相対湿度75±5%、1ヵ月の条件下で安定性試験において、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmとなることが確認された。さらに、本発明の結晶が、40±2℃相対湿度75±5%、6ヵ月の条件下で安定性試験において、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmとなることが確認された。
【0163】
【0164】
(実施例2)式(I)で示される化合物の湿式粉砕品の製造(2)
式(I)で示される化合物の無水和物結晶(1129g、2.300mol)に2-プロパノール(2366g)、水(1004g)、メタノール(3011g)、48%水酸化ナトリウム(463g、5.56mol)を加えて溶解させ、50℃に昇温し、圧力式ホモジナイザー(LAB2000、SMT)処理を行いながら、ギ酸(307g、6.67mol)、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(1.16g)を加えた後、圧力式ホモジナイザー処理下で2時間攪拌することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶を析出させスラリーを得た。
得られたスラリーに、圧力式ホモジナイザー処理下で、水(4.64kg)を加え、25℃に冷却した。得られたスラリーを、圧力式ホモジナイザーで湿式粉砕した後、ろ過することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(1067g、90%粒子径:7.17μm、式(III)で示される化合物の含有割合:1.0ppm)を得た。
【0165】
(実施例3)式(I)で示される化合物の湿式粉砕品の製造(3)
化合物(9)(70.00g、134.12mmol)に2-プロパノール(109.91g)、水(63.00g)、48%水酸化ナトリウム(27.95g、335.4mmol)を加えて、25℃で5時間攪拌し、溶解した。反応液に、2-プロパノール(16.49g)、水(217.00g)、メタノール(127.44g)を加え、圧力式ホモジナイザー(LAB2000、SMT)処理を行いながら、25℃でギ酸(9.88g)を加えて35分攪拌し、ギ酸(8.64g)及び水(70.00g)を2時間かけて滴下した。水(7.00g)、メタノール(27.70g)を加えることで、式(I)で示される化合物の二水和物結晶を析出させ、スラリーを得た。
得られたスラリーに、式(I)で示される化合物の無水和物の種晶(70mg)を加え、50℃で1時間攪拌した後、25℃に冷却した。得られたスラリーを圧力式ホモジナイザーで湿式粉砕した後、ろ過することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(60.44g、90%粒子径:6.48μm、式(III)で示される化合物の含有割合:1.5ppm)を得た。
【0166】
(実施例4)式(I)で示される化合物の湿式粉砕品の製造(4)
式(I)で示される化合物の無水和物結晶(1168g、2.300mol)に2-プロパノール(2166g)、水(4642g)、メタノール(2260g)、48%水酸化ナトリウム(479g、5.75mol)を加えて溶解させた(式(III)で示される化合物の含有割合:58.4ppm)。その後、ギ酸(169g、3.67mol)を25℃で加え、圧力式ホモジナイザー(LAB2000、SMT)処理を行いながら、25℃で30分攪拌した。得られたスラリーに対し、ギ酸(148g、3.22mol)及び水(1202g)を混合した水溶液を25℃で加えた後、さらに水(240g)を加えることで、式(I)で示される化合物の二水和物結晶を析出させ、スラリーを得た。
得られたスラリーに、式(I)で示される化合物の無水和物の種晶(1.20g)、メタノール(475g)を加え、50℃で1時間攪拌した後、25℃に冷却した。得られたスラリーを圧力式ホモジナイザーで湿式粉砕した後、ろ過することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(1659g、90%粒子径:8.82μm、式(III)で示される化合物の含有割合:1.3ppm)を得た。
ろ過後のろ液及び得られた結晶に含まれる、式(III)で示される化合物の含有割合の合計量は67.1ppmであり、晶析操作中の式(III)で示される化合物の含有割合の増加量は67.1-58.4=8.7ppmであった。
【0167】
以下、ローター・ステーター型ホモジナイザーを用いた湿式粉砕工程を含む、式(I)で示される化合等の結晶の製造方法を示す。
(実施例5)式(I)で示される化合物の湿式粉砕品の製造(5)
化合物(9)(220.00g、421.49mmol)に2-プロパノール(345.42g)、水(198.22g)、48%水酸化ナトリウム(87.82g、1054mmol)を加え、30℃で3時間攪拌した。得られた反応液を154.81g取り、2-プロパノール(18.85g)、水(36.01g)、メタノール(101.35g)を加えて、50℃に昇温し、ローター・ステーター型ホモジナイザー(magic LAB、IKA)処理を行いながら、ギ酸(10.58g、229.9mmol)、式(I)で示される化合物の無水和物の種晶(40.07mg)を加えた後、ローター・ステーター型ホモジナイザー処理下で1時間攪拌することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶を析出させ、スラリーを得た。
得られたスラリーに、ローター・ステーター型ホモジナイザー処理下で、水(160.32g)を加え、25℃に冷却した。得られたスラリーを、ローター・ステーター型ホモジナイザーで湿式粉砕した後、ろ過することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(33.67g、90%粒子径:27.57μm)を得た。
【0168】
(実施例6)式(I)で示される化合物の湿式粉砕品の製造(6)
式(I)で示される化合物の無水和物結晶(23.36g、44.75mmol)に2-プロパノール(49.00g)、水(43.20g)、メタノール(60.81g)、48%水酸化ナトリウム(9.58g、115mmol)を加えて、50℃に昇温し、ローター・ステーター型ホモジナイザー(HG92、SMT)処理を行いながら、ギ酸(6.50g、141mmol)、式(I)で示される化合物の無水和物の種晶(24.75mg)を加えた後、ローター・ステーター型ホモジナイザー処理下で2時間攪拌することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶を析出させ、スラリーを得た。
得られたスラリーに、ローター・ステーター型ホモジナイザー処理下で、水(96.32g)を加え、25℃に冷却した。得られたスラリーを、ローター・ステーター型ホモジナイザーで湿式粉砕した後、ろ過することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(22.58g、90%粒子径:61.22μm、式(III)で示される化合物の含有割合: 1.0ppm)を得た。
【0169】
以下、ビーズミルを用いた湿式粉砕工程を含む、式(I)で示される化合等の製造方法を示す。
(実施例7)式(I)で示される化合物の湿式粉砕品の製造(7)
式(I)で示される化合物の無水和物結晶に、メタノール/2―プロパノール/水(1.1/0.9/2vol)の溶液を加えて、スラリー化した。
得られたスラリーをビーズミル(DYNO―MILL ナノ分散機 リサーチラボ型、ウィリー・エ・バッコ―フェン社)で湿式粉砕した後、ろ過することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(90%粒子径:2.794μm)を得た。90%粒子径は、試験例5に記載の方法で測定した。
【0170】
(試験例5)ビーズミルを用いた湿式粉砕品の90%粒子径の測定法
以下の方法、条件によって、90%粒子径を測定した。
・測定機器: 粒度分布測定装置(マスターサイザー2000、Malvern)
・分散溶媒:0.1gのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を1Lの水に溶解
・回転数:2500rpm
・超音波:50%
・スラリー濃度:10~20%の間で調整
【0171】
以下の参考例2及び3に、湿式粉砕処理工程を含まない、式(I)で示される化合物等の結晶の製造方法を示す。
(参考例2)
化合物(9)(220.00g、421.49mmol)に、2-プロパノール(345.42g)、水(198.22g)、48%水酸化ナトリウム(87.82g、1054mmol)を加え、30℃で3時間攪拌して反応液(851.31g)を得た。
得られた反応液(30.53g、式(III)で示される化合物の含有割合:178.9ppm)に、2-プロパノール(3.77g)、水(7.20g)、メタノール(20.26g)を加えて50℃に昇温し、ギ酸(2.12g、46.1mmol)、式(I)で示される化合物の無水和物の種晶(48.53mg)を加えた後、5時間攪拌することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶を析出させ、スラリーを得た。得られたスラリーに水(32.06g)を加え25℃に冷却し、ろ過することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(7.35g、式(III)で示される化合物の含有割合:1.3ppm)を得た。
ろ過後のろ液及び得られた結晶に含まれる式(III)で示される化合物の含有割合の合計量は、316.7ppmであり、晶析操作中の式(III)で示される化合物の含有割合の増加量は316.7-178.9=137.8ppmであった。
【0172】
(参考例3)
化合物(9)(41.00g、78.55mmol)に、2-プロパノール(64.38g)、水(36.93g)、48%水酸化ナトリウム(16.36g、196.3mmol)を加え、35℃で4時間攪拌して反応液(158.29g、式(III)で示される化合物の含有割合:82.0ppm)を得た。
得られた反応液(30.89g)に2-プロパノール(3.77g)、水(5.60g)、メタノール(20.27g)を加えて50℃に昇温し、ギ酸(2.12g、46.1mmol)、式(I)で示される化合物の無水和物の種晶(8.21mg)を加えた後、8時間攪拌することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶を析出させスラリーを得た。得られたスラリーに水(7.18g)を加え25℃に冷却し、ろ過することで、式(I)で示される化合物の無水和物結晶(7.18g、90%粒子径:169.84μm)を得た。
ろ過後のろ液及び得られた結晶に含まれる式(III)で示される化合物の含有割合の合計量は252.5ppmであり、晶析操作中の式(III)で示される化合物の含有割合の増加量は、252.5-82.0=170.5ppmであった。
【0173】
参考例2及び3並びに実施例1及び4における、晶析操作中の式(III)で示される化合物の含有割合の増加量を表6に示す。
【表6】
湿式粉砕機による湿式粉砕処理工程を含む実施例1は、湿式粉砕機による湿式粉砕処理工程を含まない参考例2及び3に比べ、晶析操作中の式(III)で示される化合物の含有割合の増加量が少なかった。このことから、湿式粉砕機による湿式粉砕処理工程によって、晶析操作中の式(III)で示される化合物の含有割合の増加量を抑制できることが分かった。
これは、湿式粉砕機による湿式粉砕処理工程によって、結晶の核形成を促進し、式(I)で示される化合物の無水和物結晶の晶析時間を短縮できたためと推測される。
【0174】
さらに、実施例4は、湿式粉砕機による湿式粉砕処理工程を含み、湿式粉砕処理工程を25℃で実施することで、晶析操作中の式(III)で示される化合物の含有割合の増加量を大幅に減少することができた。実施例4は、湿式粉砕処理工程を25℃で実施することにより、式(I)で示される化合物の二水和物結晶を晶析し、その後、式(I)で示される化合物の無水和物結晶へ溶媒媒介転移を行った。
湿式粉砕処理工程を50℃から25℃に変更することで、式(I)で示される化合物の結晶の晶析時間を短縮することができた。実施例4と実施例1を比べると、短縮時間は半分であるが、式(III)で示される化合物の含有割合の増加量の抑制効果は非常に高かった。このことから、晶析操作中の式(III)で示される化合物の含有割合の増加量を抑制には、低温晶析及び/又は二水和物結晶の経由による効果もあったと推測される。
【0175】
参考例2及び3並びに実施例1及び4の、式(I)で示される化合物の無水和物結晶の90%粒子径、及び無水和物結晶中の式(III)で示される化合物の含有割合を表7に示す。
【0176】
湿式粉砕機による湿式粉砕処理工程を含む実施例1及び4においては、式(I)で示される化合物の結晶の90%粒子径が、100μm以下であることが確認された。
【0177】
【0178】
以下、湿式粉砕することにより得られた式(I)で示される化合物を含有する医薬組成物を製造した。
(実施例8)式(I)で示される化合物を含有する医薬組成物の製造
実施例4と同様の方法で製造した式(I)で示される化合物を、表8に示した処方で、湿式造粒することによって、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を製造した。
【表8】
【0179】
実施例4と同様の方法で製造した式(I)で示される化合物、無水乳糖 24AN(DFE Pharma社)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH21(信越化学工業)及びヒドロキシプロピルセルロースSSL(日本曹達)を調合し、30メッシュの金網で篩過し、袋混合を行った。クエン酸トリエチル(MERCK)を精製水に溶解し、混合物と連続湿式造粒機(CTS―MG100、パウレック)にて造粒水分20%(w/w)で湿式造粒した。造粒物を流動層造粒機(CTS―FD―01W、パウレック)にて通気温度75℃で乾燥を行った。乾燥後、スクリーンミル(QC―197S、パウレック)にて調粒した。整粒した造粒物とステアリン酸マグネシウム 植物性(MALLINCKRODT)を袋混合にて滑沢剤混合し、静的圧縮機(ABM100S型、JTトーシ製)にて打錠を行った。
素錠に、OPADRY ORANGE 03A430007(日本カラコン合同会社)、クエン酸トリエチル(MERCK)を被覆し、コーティング錠を製造した。1錠当たりのコーティング被膜量は素錠質量に対して2%(w/w)(19.8mg/錠)とした。
【0180】
各条件は、以下の通りである。
(混合条件)
・袋混合
・左右10回ずつ
(造粒条件)
・連続湿式造粒機:CTS―MG100
・センターブレード回転数: 5000min―1
・スクレーパー回転数: 50min―1
・造粒水分:20%
・処理速度:20kg/h(調合末として)
【0181】
(乾燥条件)
・乾燥機:CTS―FD―01W
・給気温度:75℃(設定温度)
・給気風量:1.2m3/min
・乾燥減量:1.0%以下
【0182】
(調粒条件)
・整粒機:QC―197S
・スクリーン:目開き1.143mm,丸穴
・インペラ回転数:2000min―1
・インペラ形状:丸型
(滑沢剤混合の条件1)
・袋混合
・左右10回ずつ
【0183】
(打錠条件)
・打錠機:ABM100S型静的圧縮機
・杵:直径17.6×9.2mmオーバル型 CrNコーティング
・LOAD SPEED:2.0F.S./min (F.S.=10kN)
・HOLD TIME:1秒
・HOLD POINT:11.0kN~14.0kN
【0184】
(被覆条件)
・ハイコーターラボ(フロイント産業株式会社)
・仕込み量 約250~300g
・送風温度:50~60℃ (設定温度)
・給気風量:0.8m3/min
・パン内静圧:-50Pa以下
・スプレー圧:0.3MPa
・流量計表示:30 NL/min
・スプレーガン:NAT-2型、1本 (ノズルキャップ径:2mm、ノズル径:1.0mm)
・パン回転数:20 min-1
・液速度:1.5~3.0g/min
・スプレー距離:錠剤表面まで約10~15cm
・コーティング終点:錠剤平均質量増加18.2mg以上
【0185】
実施例8の検体について、表9に示したPTP包装を施した。
【表9】
【0186】
(実施例8-4)式(I)で示される化合物を含有する医薬組成物の製造
乾式粉砕した式(I)で示される化合物を、表10に示した処方で、湿式練合及び/又は湿式造粒することによって、式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物を製造した。
【表10】
【0187】
参考例1の方法で製造した式(I)で示される化合物、無水乳糖 24AN(DFE Pharma社)及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH21(信越化学工業)を調合、30メッシュの金網で篩過し、ハイスピードミキサー(10型、深江工業)で混合し、混合物を得た。ヒドロキシプロピルセルロースSSL(日本曹達)及びクエン酸トリエチル(MERCK)を精製水に溶解し、混合物とハイスピードミキサー(10型、深江工業)にて造粒水分23%(w/w)で湿式造粒した。造粒物をパワーミル(昭和化学機械工作所、P-3S型)にて整粒し、流動層造粒機(5型)(GPCG5型、パウレック)にて通気温度65℃で乾燥を行った。乾燥後、パワーミル(P―3型、昭和化学機械工作所)にて調粒した。整粒した造粒物とステアリン酸マグネシウム 植物性(MALLINCKRODT)を混合機(22L V型)にて滑沢剤混合し、打錠機(LIBRA836BK-AWCZ型、菊水製作所)にて打錠を行った。
素錠に、OPADRY ORANGE 03A430007(日本カラコン合同会社)、クエン酸トリエチル(MERCK)を被覆し、コーティング錠を製造した。1錠当たりのコーティング被膜量は素錠質量に対して4%(w/w)(6.0mg/錠)とした。
【0188】
コーティング錠について、表11に示したPTP包装を施した。
【表11】
【0189】
各条件は、以下の通りである。
(混合条件)
・混合機:10型ハイスピードミキサー
・アジテーター回転数: 250±20min―1
・混合時間:30~35秒
(造粒条件)
・造粒機:10型ハイスピードミキサー
・アジテーター回転数:250±20min―1
・チョッパー回転数:2500±100min―1
・造粒水分:23%
・液注加速度:90~94g/min
・液注加後攪拌時間:0.5~1.5分
【0190】
(整粒条件)
・整粒機:P―3型パワーミル
・バスケット:へリンボン2.5mm
・回転数:2,000±50min―1
・羽:スポイラー羽
(乾燥条件)
・乾燥機:GPCG5型 流動層造粒機
・給気温度:65℃(設定温度)
・給気風量:0.5~5.0m3/min
・乾燥減量:1.0%以下
【0191】
(調粒条件)
・乾燥機:P―3型パワーミル
・バスケット:金網18mesh
・回転数:3000±50min―1
・羽根:スポイラー羽根
(滑沢剤混合)
・混合機:22L V型混合器
・回転数:35±1.0min―1
・混合時間:1~3分
【0192】
(打錠条件)
・打錠機:LIBRA836BK-AWCZ型打錠機
・杵:直径7.0mm2段R(13×2.3) CrNコーティング
・杵立数:12本
・回転数:30±2.0min―1
・フィードシュー:オープン
【0193】
(被覆条件)
・AQC-48型アクアコーター
・仕込み量 約3.7~5.1kg
・送風温度:50~70℃(設定温度)
・給気風量:3.5±0.5m3/min
・パン内静圧:0Pa以下
・スプレー圧:0.5±0.1MPa
・流量計表示(アトマイジング):60 ± 20 NL/min
・流量計表示(パターン):40 ± 20 NL/min
・スプレーガン:NAT-2型、1本(ノズルキャップ型番:015、ノズル径:1.0mm)
・パン回転数:6~15min-1
・液速度:8~14g/min
・スプレー距離:錠剤表面まで約15~20cm
・コーティング終点:錠剤平均質量増加5.5mg以上
【0194】
実施例8-1~8-4の検体について、40±2℃相対湿度75±5%(40±2℃/75±5%RHともいう)、遮光の条件下で保存安定性試験を行い、式(III)で示される化合物の含有量を評価した。
(試験例6)医薬組成物の安定性試験
標準溶液の調製、試料溶液の調製、総類縁物質量測定法及び計算式は、以下の方法で実施した。
(標準溶液の調製)
以下の方法で、式(III)で示される化合物の標準試料を作成した。
工程1:式(III)で示される化合物を約20mg精密に量り、アセトニトリル/水混液 (4:1)を加えて溶かし、正確に100mLとした。
工程2:工程1の液1mLを正確にとり、アセトニトリル/水混液(4:1)を加えて正確に100mLとした。
工程3:工程2の液1mLを正確にとり、アセトニトリル/水混液(4:1)を加えて正確に100mLとした。
工程4:工程3の液5mLを正確にとり、アセトニトリル/水混液(4:1)を加えて正確に20mLとし、標準溶液とした。
【0195】
(実施例8-1~8-3の試料溶液の調製)
工程1:300mg錠1錠を300mLメスフラスコに加えた。
工程2:工程1に、水60mLを加え、10分間激しく振とうし、錠剤を完全に崩壊させた。必要に応じて振とう時間を延長した。
工程3:工程2にアセトニトリル150mLを加え、30分間激しく振とうした。
工程4:冷後、アセトニトリルを加えて正確に300mLとし、液の一部を13000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを試料溶液とした。
【0196】
(実施例8-1~8-4の試料溶液の調製)
工程1:50mg錠1錠を50mLメスフラスコに加えた。
工程2:工程1に、水10mLを加え、10分間超音波照射して完全に崩壊させた。必要に応じて超音波照射時間を延長した。
工程3:工程2にアセトニトリル25mLを加え、30分間超音波照射した。
工程4:冷後、アセトニトリルを加えて正確に50mLとし、液の一部を13000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを試料溶液とした。
【0197】
(総類縁物質量測定法)
以下の方法、条件によって、液体クロマトグラフで、式(III)で示される化合物の量を測定した。
・測定機器:Agilent製LC/MS/MS (PM No.AES676)
・カラム:L-Column24.6×150mm、3μm
・カラム温度:35℃付近の一定温度
・移動相A:10mM酢酸アンモニウム
・移動相B:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
・移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表12のように変えて濃度勾配制御した。
【0198】
【表12】
・ポストランタイム:5分
・流量:0.5mL/min (式(III)で示される化合物の保持時間約9分)
・注入量:5μL
・サンプルクーラー温度:10℃付近の一定温度
・ニードル洗浄液:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
・イオン化法:ESI
・スキャンタイプ:MRM
・極性:ポジティブ
・プレカーサーイオン:m/z=187.2
・プロダクトイオン:m/z=64.9
・フラグメンター:120
・コリジョンエネルギー:33
・キャピラリー:4000V
・ガス温度:350℃
・ガス流量:12L/min
・ネブライザー:40psi
・MS取込み時間:0~12分
【0199】
(計算式)
(数5)
式(III)で示される化合物の含量(ppm) = MS × P/100 × (100-WS)/100 × AT/AS × 1/C × D × 1000000
MS:式(III)で示される化合物の秤取量(mg)
P:式(III)で示される化合物の純度(%)
WS:式(III)で示される化合物の水分(%)
AS:標準溶液から得られる式(III)で示される化合物のピーク面積
AT:試料溶液から得られる式(III)で示される化合物のピーク面積
C:式(I)で示される化合物等の理論含量(50mg錠:50、300mg錠:300)
D:希釈倍率(50mg錠:1/80000、300mg錠:1/480000)
【0200】
(結果)
実施例8-1~8-4の検体について、経時保存品中の式(III)で示される化合物の量を表13に示す。表中、Mは月を表す。
湿式粉砕した式(I)で示される化合物等を含有する医薬組成物中における、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合は、実施例8-1~8-3の試験開始時が1.6ppmであった。40±2℃相対湿度75±5%、遮光の条件下で1ヵ月保存後は、実施例8-1が1.6ppm、実施例8-2が1.7ppm、実施例8-3が1.6ppmであった。この結果より、本発明の医薬組成物が、40±2℃相対湿度75±5%、1ヵ月の条件下で安定性試験において、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmとなることが確認された。
40±2℃相対湿度75±5%、遮光の条件下で6ヵ月保存後は、実施例8-1が2.4ppm、実施例8-2が2.1ppm、実施例8-3が2.0ppmであった。この結果より、本発明の医薬組成物が、40±2℃相対湿度75±5%、6ヵ月の条件下で安定性試験において、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmとなることが確認された。
【0201】
なお、乾式粉砕した式(I)で示される化合物等を湿式造粒することにより得られた医薬組成物である、実施例8-4の検体についても、試験開始時が1.8ppm、経時安定性試験3ヵ月後が2.4ppm、経時安定性試験6ヵ月後が3.2ppmであり、式(III)で示される化合物量の増加が抑制されていた。この結果より、本発明の医薬組成物が、40±2℃相対湿度75±5%、1ヵ月の条件下で安定性試験において、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmとなることが確認された。さらに、本発明の医薬組成物が、40±2℃相対湿度75±5%、6ヵ月の条件下で安定性試験において、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmとなることが確認された。これは、湿式造粒による効果である。
【0202】
【0203】
式(I)で示される化合物等の製剤処方検討を以下に示す。
【0204】
(参考例4)
上記参考例Iに従って得られた式(I)で示される化合物の無水物の結晶を、カウンタージェットミル(100AFG、ホソカワミクロン)にて乾式粉砕し、検体を得た。
【0205】
(実施例9)
参考例4の検体を乳鉢に測りとり、適量の精製水を加えて、乳棒で湿式練合を行った。得られた造粒物を20メッシュの金網で篩過し、通気式乾燥機(TH-80、佐竹化学機械)にて通気温度60℃で30分間乾燥を行った。その後、20メッシュの金網で篩過し、検体を得た。
【0206】
(試験例7)安定性試験
実施例9及び参考例4で得られた検体について、経時保存品中の安定性を評価した。
60℃ガラス瓶密栓、40℃ガラス瓶密栓及び40℃/75%RHガラス瓶開栓の条件下で保存安定性試験を行い、式(III)で示される化合物の含有量を評価した。
(標準溶液の調製)
以下の方法で、式(III)で示される化合物5ng/mL(試料溶液に対して5ppmに相当)の標準試料を作成した。
工程1:式(III)で示される化合物を約20mg精密に量り、アセトニトリル/水混液 (4:1)を加えて溶かし、正確に100mLとした。
工程2:工程1の液1mLを正確にとり、アセトニトリル/水混液(4:1)を加えて正確に100mLとした。
工程3:工程2の液1mLを正確にとり、アセトニトリル/水混液(4:1)を加えて正確に100mLとした。
工程4:工程3の液5mLを正確にとり、アセトニトリル/水混液(4:1)を加えて正確に20mLとし、標準溶液とした。
【0207】
(試料溶液の調製)
以下の方法で、試料溶液の調製を行った。
工程1:式(I)で示される化合物等が50mgに相当する量の試料を50mLメスフラスコに加えた。
工程2:工程1に、水10mLを加え、10分間超音波照射して完全に崩壊させた。必要に応じて超音波照射時間を延長した。
工程3:工程2にアセトニトリル25mLを加え、30分間超音波照射した。
工程4:冷後、アセトニトリルを加えて正確に50mLとし、液の一部を13000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを試料溶液とした。
(総類縁物質量測定法)
以下の方法、条件によって、液体クロマトグラフで、式(III)で示される化合物の量を測定した。
・測定機器:Agilent製LC/MS/MS (PM No.AES676)
・カラム:L-Column24.6×150mm、3μm
・カラム温度:35℃付近の一定温度
・移動相A:10mM酢酸アンモニウム
・移動相B:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
・移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表14のように変えて濃度勾配制御した。
【0208】
【表14】
・ポストランタイム:5分
・流量:0.5mL/min (S202AAの保持時間約9分)
・注入量:5μL
・サンプルクーラー温度:10℃付近の一定温度
・ニードル洗浄液:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
・イオン化法:ESI
・スキャンタイプ:MRM
・極性:ポジティブ
・プレカーサーイオン:m/z=187.2
・プロダクトイオン:m/z=64.9
・フラグメンター:120
・コリジョンエネルギー:33
・キャピラリー:4000V
・ガス温度:350℃
・ガス流量:12L/min
・ネブライザー:40psi
・MS取込み時間:0~12分
【0209】
(計算式)
(数6)
式(III)で示される化合物の含量(ppm) = MS × P/100 × (100-WS)/100 × AT/AS × 1/50 × 1/80000 × 1000000
MS:式(III)で示される化合物の秤取量(mg)
P:式(III)で示される化合物の純度(%)
WS:式(III)で示される化合物の水分(%)
AS:標準溶液から得られる式(III)で示される化合物のピーク面積
AT:試料溶液から得られる式(III)で示される化合物のピーク面積
【0210】
(結果)
実施例9及び参考例4の、経時保存品中の式(III)で示される化合物の量を表15に示す。その結果、湿式練合した実施例9の検体は、参考例4の検体と比較して、式(III)で示される化合物量の増加が抑制されていた。このことから、式(I)で示される化合物等を湿式練合及び/又は湿式造粒を行うことにより、安定性が向上することを見出した。表中、Wは週を表し、Mは月を表す。他の表においても同様である。
参考例4の検体においては、40℃/75%RHガラス瓶開栓の条件において、1ヵ月保存で、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が13.1ppmであった。一方、実施例9の検体においては、6.4ppmであった。この結果より、本発明の医薬組成物が、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)1ヵ月の条件下で安定性試験において、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmとなることが確認された。
参考例4の検体においては、40℃/75%RHガラス瓶開栓の条件において、3ヵ月の保存で、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が19.7ppmであった。一方、実施例9の検体においては、7.1ppmであった。上記の結果より、この結果より、本発明の医薬組成物が、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶開栓)6ヵ月の条件下で安定性試験においても、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmとなることが強く示唆された。
【0211】
【0212】
(試験例8)示差走査熱量測定
実施例9及び参考例4の検体の示差走査熱量測定(DSC)を実施した。
(示差走査熱量測定(DSC))
アルミニウムパンに試料約10mgを量り、簡易密封して測定した。測定条件を以下に示す。なお、示差走査熱量(DSC)による測定は±2℃の範囲内で誤差が生じうる。
装置:TA Instruments Discovery
測定温度範囲:25℃―250℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:N2 50mL/分
【0213】
(結果)
実施例9及び参考例4の検体の示差走査熱量測定(DSC)測定の結果を、
図5及び6に示す。
図6に示すように、参考例4の検体においては、約75℃付近から発熱ピーク(ピークトップ値は114℃)が確認され、結晶化による発熱が起きたと考えられる。つまり、参考例4の検体において、式(I)で示される化合物等に、非晶質が僅かに含まれていたと考えられる。
一方で、
図5に示すように、参考例4の検体を湿式練合した実施例9では、発熱ピークは確認されず、非晶質は示差走査熱量測定(DSC)の検出限界以下であった。すなわち、実施例9の検体において非晶質の量が減少していた。従って、実施例9の検体においては、式(I)で示される化合物等に含まれていた非晶質が、湿式練合工程で結晶化したものと考えられる。
一般的に、非晶質は結晶に比べて安定性が低いため、湿式練合工程で非晶質の量が減少したことにより、式(III)で示される化合物の含量の増加が抑制されたと考えられる。
【0214】
(実施例10~14)安定化剤の検討
式(I)で示される化合物等と添加剤について配合性試験を実施し、経時保存品中の式(III)で示される化合物の量を評価した。参考例4で用いられた検体及び添加剤を測りとり、乳鉢、乳棒で均一に混合した。混合物に適量の精製水を加えて、乳棒で湿式練合を行った。得られた造粒物を20メッシュの金網で篩過し、通気式乾燥機(TH-80、佐竹化学機械)にて通気温度60℃で30分間乾燥を行った。その後、さらに20メッシュの金網で篩過し、実施例10~14の検体を得た。各検体の添加剤と式(I)で示される化合物の配合比は、表16の通りである。
(添加剤)
添加剤としては、クエン酸トリエチル(Merck)、中鎖脂肪酸トリグリセリド ミグリオール812(CREMER OLEO)(以下、ミグリオールという。)、マクロゴール6000(日油)、無水乳糖 24AN(DFE Pharma)、ヒドロキシプロピルセルロースSL(日本曹達)を使用した。
【0215】
【0216】
(試験例9)安定性試験
実施例10~14の検体について、60℃ガラス瓶密栓(表17では、60℃密栓という。)及び40℃ガラス瓶密栓(表17では、40℃密栓という。)の条件下で保存安定性試験を行い、式(III)で示される化合物の含有量を評価した。
式(III)で示される化合物の含有量は、試験例7と同様の方法で確認した。
【0217】
(結果)
実施例9及び参考例4と共に、実施例10~14の検体の経時保存品中の式(III)で示される化合物の量を表17に示す。その結果、式(III)で示される化合物の含量は、添加剤の種類によって、添加剤を加えていない実施例9の検体よりも、増減した。クエン酸トリエチル、ミグリオール及びマクロゴール6000は、添加剤を加えていない実施例9よりも、経時保存品中の式(III)で示される化合物の量の増加を抑制していた。クエン酸トリエチル、ミグリオール及びマクロゴール6000は、安定化剤として有用である可能性が示唆された。無水乳糖、ヒドロキシプロピルセルロースSLを加えた実施例13及び14においても、参考例4の検体よりも、経時保存品中の式(III)で示される化合物の量の増加を抑制していた。
【0218】
【0219】
以下、乳鉢スケールでの製剤処方検討を行った。
試験例9の結果から、式(III)で示される化合物の増加量が低かった、クエン酸トリエチル及びミグリオールを選択し、乳鉢スケールで、10mg錠及び50mg錠の製剤処方検討及び製造方法の検討を行った。なお、賦形剤として無水乳糖 24AN(DFE Pharma社)を用い、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースSL(日本曹達)を用い、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH21(信越化学工業)を用い、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム 植物性(MALLINCKRODT)を用いた。
【0220】
(実施例15~25)10mg錠の製造
参考例4の検体10mg、及びクエン酸トリエチル若しくはミグリオールを含有する錠剤を乳鉢スケールで製造した。
(素錠の製造方法)
表18及び表19に、1錠剤あたりの処方を示す。式(I)で示される化合物、無水乳糖 24AN(DFE Pharma社)及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH21(信越化学工業)を測りとり、乳鉢、乳棒で均一に混合した。ヒドロキシプロピルセルロースSL(日本曹達)及びクエン酸トリエチル(MERCK)若しくはミグリオール(CREMER OLEO)を精製水に溶解し、当該造粒液を乳鉢の混合物に加えて乳棒で練合した。さらに、精製水を少量ずつ加えて練合し、造粒物を得た。なお、造粒時の水分は、約20%に調整した。造粒物を20メッシュの金網で篩過し、通気式乾燥機(TH-80、佐竹化学機械)にて通気温度60℃で乾燥を行った。乾燥後、さらに20メッシュの金網で篩過し、調粒した。整粒物とステアリン酸マグネシウム 植物性(MALLINCKRODT)を瓶混合し、静的圧縮機(ABM100S型、JTトーシ製)にて錠剤を製造した。
【0221】
【0222】
【0223】
(試験例10)錠剤の安定性試験
実施例15~25の検体について、60℃ガラス瓶密栓(表20では、60℃密栓という。)、40℃ガラス瓶密栓(表20では、40℃密栓という。)及び40℃/75%RHガラス瓶開栓(表20では、40℃/75%RH開栓という。)の条件下で保存安定性試験を行い、式(III)で示される化合物の含有量を評価した。
試料溶液の調製及び計算式は以下方法で行い、標準溶液の調製及び総類縁物質量測定法は試験例7と同様の方法で実施した。
(試料溶液の調製)
以下の方法で、試料溶液の調製を行った。
工程1:10mg錠1錠を10mLメスフラスコに加えた。
工程2:工程1に、水2mLを加え、10分間超音波照射して完全に崩壊させた。必要に応じて超音波照射時間を延長した。
工程3:工程2にアセトニトリル5mLを加え、30分間超音波照射した。
工程4:冷後、アセトニトリルを加えて正確に10mLとし、液の一部を13000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを試料溶液とした。
【0224】
(計算式)
(数7)
式(III)で示される化合物の含量(ppm) = MS × P/100 × (100-WS)/100 × AT/AS × 1/C × D × 1000000
MS:式(III)で示される化合物の秤取量(mg)
P:式(III)で示される化合物の純度(%)
WS:式(III)で示される化合物の水分(%)
AS:標準溶液から得られる式(III)で示される化合物のピーク面積
AT:試料溶液から得られる式(III)で示される化合物のピーク面積
C:式(I)で示される化合物等の理論含量(10mg錠:10、50mg錠:50)
D:希釈倍率(10mg錠:1/400000、50mg錠:1/80000)
【0225】
(結果)
実施例15~25の検体について、経時保存品中の式(III)で示される化合物の量を測定した結果を表20及び表21に示す。クエン酸トリエチル及びミグリオールを配合していない実施例15は経時的に式(III)で示される化合物の増加を認めたが、クエン酸トリエチル及びミグリオールを配合した錠剤はいずれも式(III)で示される化合物の増加を抑制していた。
【0226】
【0227】
【0228】
(試験例11)錠剤の溶出試験
実施例15、18及び19の検体、並びに実施例18の検体を60℃ガラス瓶密栓、40℃ガラス瓶密栓及び40℃/75%RHガラス瓶開栓の条件下で保管した検体について、溶出試験を実施した。
(製剤の溶出試験法)
日本薬局方の溶出試験法(第2法、パドル法)にて、式(I)で示される化合物の溶出率を測定した。溶出試験法で使用した液は、溶出第2液を使用し、パドルの回転数は、50rpmとした。
【0229】
(結果)
図7に、実施例15、18及び19の検体について、安定性試験開始時の溶出プロファイルを示す。クエン酸トリエチルを配合した実施18及び19の溶出プロファイルは、クエン酸トリエチルを配合していない実施例15と同等であり、クエン酸トリエチルの配合による溶出低下は確認されなかった。
また、実施例18の検体を、60℃ガラス瓶密栓で2週間(
図8では、60℃/密栓/2週間という。)、40℃ガラス瓶密栓で1ヵ月(
図8では、40℃/密栓/1ヵ月という。)、及び40℃/75%RHガラス瓶開栓で1ヵ月(
図8では、40℃75%RH/開栓/1ヵ月という。)保管後に、溶出試験を実施した。この溶出プロファイルを
図8に示すが、いずれの保管品も、安定性試験開始時の溶出プロファイルと変化を同等であった。
【0230】
(試験例12)錠剤硬度の評価
実施例15~20、21及び22の検体について、錠剤硬度を評価した。
(錠剤硬度)
錠剤硬度計(TBH200型、ERWEKA)を用いて測定し、2~10錠の平均値を算出した。
【0231】
(結果)
実施例15~20の圧縮圧と錠剤硬度の関係を
図9に、実施例15、21及び22の圧縮圧と錠剤硬度の関係を
図10に示す。クエン酸トリエチル配合錠は、クエン酸トリエチルの配合量によらず,錠剤硬度はほぼ一定であった。
【0232】
(実施例26、27-1~27-5)50mg錠の製造
参考例4の検体50mg及びクエン酸トリエチルを含有する錠剤を乳鉢スケールで製造し、経時保存品中の式(III)で示される化合物の量、溶出試験及び錠剤物性を評価した。
(素錠の製造方法)
表22に示した1錠剤あたりの処方で、10mg錠を製造した時と同様の方法で錠剤を製造した。
【0233】
【0234】
(試験例13)安定性試験
実施例26、27-1~27-5の検体について、60℃ガラス瓶密栓(表23では、60℃密栓という。)、40℃ガラス瓶密栓(表23では、40℃密栓という。)及び40℃/75%RHガラス瓶開栓(表23では、40℃/75%RH開栓という。)の条件下で保存安定性試験を行い、式(III)で示される化合物の含有量を評価した。
試料溶液の調製は以下方法で行い、標準溶液の調製、総類縁物質量測定法及び計算式は試験例10と同様の方法で確認した。
(試料溶液の調製)
以下の方法で、試料溶液の調製を行った。
工程1:50mg錠1錠を50mLメスフラスコに加えた。
工程2:工程1に、水10mLを加え、10分間激しく振とうし,錠剤を完全に崩壊させた。必要に応じて振とう時間を延長した。
工程3:工程2にアセトニトリル25mLを加え、30分間激しく振とうした。
工程4:冷後、アセトニトリルを加えて正確に50mLとし、液の一部を13000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを試料溶液とした。
【0235】
(結果)
実施例26、27-1~27-5の検体を60℃ガラス瓶密栓2週間保管、40℃ガラス瓶密栓1ヵ月保管又は40℃/75%RHガラス瓶開栓保管し、保管後の式(III)で示される化合物の量を測定した結果について、表23に示す。その結果、クエン酸トリエチルを配合していない実施例26の検体においては、式(III)で示される化合物が増加したが、クエン酸トリエチルを配合した実施例27-1~27-5の錠剤においては、いずれも式(III)で示される化合物の増加が抑制されていた。
【0236】
【0237】
(試験例14)錠剤硬度の評価
クエン酸トリエチルを配合した実施例27-1~27-3について、試験例12と同様の方法で錠剤硬度を評価した。
(結果)
実施例27-1~27-3の圧縮圧と錠剤硬度の関係を
図20に示す。
【0238】
以下に、撹拌造粒機での製造法検討を行った。
(実施例28-1~35-2)撹拌造粒機での錠剤の製造
乳鉢スケールでの検討結果から候補とした処方をもとに、撹拌造粒機へのスケールアップ及び造粒水分の検討を行った。
(製造方法)
式(I)で示される化合物等として参考例4の検体を用いて、10mg及び50mg含有する錠剤(素錠及びコーティング錠)を、表24に示した処方で製造した。
【0239】
【0240】
式(I)で示される化合物等、無水乳糖 24AN(DFE Pharma社)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH21(信越化学工業)を調合、20メッシュの金網で篩過し、ハイスピードミキサー(10型、深江工業)で混合し、混合物を得た。ヒドロキシプロピルセルロースSSL(日本曹達)及びクエン酸トリエチル(MERCK)を精製水に溶解し、混合物とハイスピードミキサー(10型、深江工業)にて湿式造粒した。造粒物をパワーミル(昭和化学機械工作所、P-3S型)にて整粒し、流動層造粒機(2型)(WSG2型&5型、フロイント)にて通気温度60℃で乾燥を行った。乾燥後、パワーミル(P―3型、昭和化学機械工作所)にて調粒した。整粒した造粒物とステアリン酸マグネシウム 植物性(MALLINCKRODT)を袋混合若しくは瓶混合、又は混合機(8L V型)にて滑沢剤混合し、静的圧縮機(ABM100S型、JTトーシ製)又は打錠機(LIBRA836BK-AWCZ型、菊水製作所)にて打錠を行った。
なお、造粒時の造粒水分は、表25に示す通り、17、20、22及び25%(w/w)と変化させ,各造粒水分で造粒物をサンプリングし、得られた顆粒を静的圧縮により素錠(実施例28-1、29-1、30-1、31-1、32-1、33-1、34-1及び35-1)を製造した。
素錠に、OPADRY ORANGE 03A430007(日本カラコン合同会社)、クエン酸トリエチル(MERCK)を被覆し、コーティング錠(実施例28-2、29-2、30-2、31-2、32-2、33-2、34-2及び35-2)を製造した。1錠当たりのコーティング被膜量は素錠質量に対して4%(w/w)(6.0mg/錠)とした。
【0241】
【0242】
各条件は、以下の通りである。
(混合条件)
・混合機:10型ハイスピードミキサー
・アジテーター回転数: 250±20min―1
・混合時間:0.5~1分
(造粒条件)
・造粒機:10型ハイスピードミキサー
・アジテーター回転数: 250±20min―1
・チョッパー回転数: 2500±100min―1
・造粒水分:17~25%
・液注加速度:83~94g/min
・液注加後攪拌時間:0.5~2分
・マッシング時間:1~2分±5秒
【0243】
(整粒条件)
・整粒機:P―3型パワーミル
・バスケット:へリンボン2.5mm
・回転数:2,000±50min―1
・羽:スポイラー羽
(乾燥条件)
・乾燥機:WSG2型&5型 流動層造粒機(2型)
・給気温度:60℃(設定温度)
・給気動圧:5~8 Pa
・バグフィルター:T611E
・乾燥減量:1.0%以下
【0244】
(調粒条件)
・乾燥機:P―3型パワーミル
・バスケット:金網16mesh
・回転数:2000±50、3000±50min―1
・羽根:スポイラー羽根
(滑沢剤混合の条件1)
・袋混合/瓶混合
・左右10回ずつ/瓶内上下10回ずつ
(滑沢剤混合の条件2)
・混合機:8L V型混合器
・回転数:40±1.0min―1
・混合時間:1.1~3.2分
【0245】
(打錠条件1)
・打錠機:ABM100S型静的圧縮機
・杵:直径7.0mm2段R(13×2.3) CrNコーティング
・LOAD SPEED:2.0F.S./min (F.S.=10kN)
・HOLD TIME:1秒
・HOLD POINT:3.5kN~9.0kN
(打錠条件2)
・打錠機:LIBRA836BK-AWCZ型打錠機
・杵:直径7.0 mm2段R(13×2.3) CrNコーティング
・杵立数:6本
・回転数:30±2.0 min―1
・フィードシュー:オープン
【0246】
(被覆条件1)
・乾燥機:HCT48型ハイコーター
・仕込み量:約2.5kg
・送風温度:60℃ (設定温度)
・給気風量 (差圧) :300Pa
・排気風量 (差圧) :150Pa
・噴霧空気量:約80 NL/min
・スプレー圧:0.8MPa
・キャップ:120SS、ノズル:2850
・パン回転数:20 min-1
・液速度:10~14g/min
・スプレー距離:錠剤表面まで約13~16cm
・コーティング終点:錠剤平均質量増加5.5mg以上
【0247】
(被覆条件2)
・AQC-48型アクアコーター
・仕込み量 約2.5~4.6kg
・送風温度:47~65℃ (設定温度)
・給気風量:3.5±0.5m3/min
・パン内静圧:0Pa以下
・スプレー圧:0.5±0.1MPa
・流量計表示:108 ± 40 NL/min
・スプレーガン:NAT-2型、1本 (ノズルキャップ型番:015、ノズル径:1.0mm)
・パン回転数:6~15 min-1
・液速度:8~16g/min
・スプレー距離:錠剤表面まで約16cm
・コーティング終点:錠剤平均質量増加5.5mg以上
【0248】
(試験例15)錠剤の安定性試験
錠剤を、ガラス瓶、DUMAボトル(プラスチック容器、GERRESHEIMER)及びシリカゲルを入れたDUMAボトルに包装し、60℃及び40℃/75%RHで保存安定性試験を行った。
式(III)で示される化合物の含有量は、試験例10又は試験例13と同様の方法で確認した。
【0249】
(結果)
実施例29-1、29-2、31-1、31-2、33-1、33-2、35-1及び35-2について、60℃密栓2週間保管及び40℃2ヵ月保管品の、式(III)で示される化合物の量(ppm)を表26及び27に示す。その結果、式(III)で示される化合物の量は、試験開始時から最大で4ppm増加であり、スケールアップにおいても、安定化効果を確認した。造粒水分は、造粒水分が20%(w/w)よりも25%(w/w)の方が、式(III)で示される化合物の増加が抑えられていたが、いずれの造粒水分でも安定化効果を確認した。包装形態の比較では、明確な効果はみられたかった。また、素錠とコーティング錠では、式(III)で示される化合物の量は同等であった。
【0250】
試験例7、9、10、13及び15の結果より、本発明の医薬組成物は、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶密栓、ガラス瓶開栓、DUMAボトル、及びシリカゲルを入れたDUMAボトル)、1ヵ月及び2ヵ月の条件下で安定性試験において、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~10ppmとなることが確認された。さらに、本発明の医薬組成物は、40±2℃相対湿度75±5%(ガラス瓶密栓、ガラス瓶開栓、DUMAボトル、及びシリカゲルを入れたDUMAボトル)6ヵ月の条件下で安定性試験においても、式(I)で示される化合物等の量に対する、式(III)で示される化合物の含有割合が、0.0001~30ppmとなると考えられる。
【0251】
【0252】
【0253】
(試験例16)溶出試験(造粒水分の影響)さ
造粒水分を変えた、実施例28-1、29-1、30-1並びに31-1(10mg錠)及び実施例32-1、33-1、34-1並びに35-1(50mg錠)の検体について、試験例11の製剤の溶出試験法と同様の方法で溶出試験を実施した。
【0254】
(結果)
実施例28-1、29-1、30-1及び31-1(10mg錠)の溶出プロファイルを
図12に、実施例32-1、33-1、34-1及び35-1(50mg錠)の溶出プロファイルを
図13に示す。いずれの造粒水分でも15分で90%以上の速やかな溶出性を示し、造粒水分の違いによる溶出性への影響は小さかった。
【0255】
(試験例17)溶出試験(コーティングによる影響)
造粒水分が20%(w/w)である実施例29-1、29-2、33-1及び33-2、並びに造粒水分25%(w/w)である実施例31-1、31-2、35-1及び35-2について、試験例11の製剤の溶出試験法と同様の方法で溶出試験を実施した。
【0256】
(結果)
実施例29-1、29-2、31-1及び31-2の溶出プロファイルを
図14に、実施例33-1、33-2、35-1及び35-2の溶出プロファイルを
図15に示す。10mg錠、50mg錠ともに、コーティングによる溶出への影響は小さかった。
湿式粉砕することにより得られる式(I)で示される化合物等の結晶においては、経時安定性試験における式(III)で示される化合物の生成が抑制されており、その安定性が向上している。湿式粉砕することにより得られる式(I)で示される化合物等の結晶を用いることで、安定性に優れた本発明の医薬組成物を供給することができる。また、式(I)で示される化合物等を湿式練合及び/又は湿式造粒するにより調整した本発明の医薬組成物は、経時安定性試験において、式(III)で示される化合物の生成を抑制することができ、安定性が向上している。それらの点で、本発明は産業上の利用可能性を有する。