(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034005
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】クリーニング装置
(51)【国際特許分類】
B08B 1/02 20060101AFI20220222BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20220222BHJP
B08B 6/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B08B1/02
B08B1/04
B08B6/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207447
(22)【出願日】2021-12-21
(62)【分割の表示】P 2018127169の分割
【原出願日】2017-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2016046370
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】三橋 浩
(72)【発明者】
【氏名】金子 加津寛
(72)【発明者】
【氏名】谷 新太
(72)【発明者】
【氏名】松本 英樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象物の表面から比較的大きな異物及び微細な異物の双方を効率良く除去する。
【解決手段】板状又はフィルム状の対象物Sを搬送しつつ表面の異物を除去するクリーニング装置であって、搬送される上記対象物Sの上方に着脱可能に配設され、表側ブラシローラ41により上記対象物Sの表側表面S1の異物を除去する表側ブラシローラユニット4と、上記対象物Sの上方かつ上記表側ブラシローラユニット4の搬送方向下流側に着脱可能に配設され、クリーニングローラ51により上記対象物Sの表側表面S1の異物を除去する表側クリーニングローラユニット5と、上記ブラシローラ41及び/又はクリーニングローラ51を帯電させるための帯電回路と、上記表側ブラシローラユニット4及び/又は表側クリーニングローラユニット5が装着されると同時に、上記ブラシローラ41及び/又はクリーニングローラ51と上記帯電回路とを電気的に接続する端子とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状又はフィルム状の対象物を搬送しつつ表面の異物を除去するクリーニング装置であって、
搬送される上記対象物の上方に着脱可能に配設され、表側ブラシローラにより上記対象物の表側表面の異物を除去する表側ブラシローラユニットと、
上記対象物の上方かつ上記表側ブラシローラユニットの搬送方向下流側に着脱可能に配設され、表側クリーニングローラにより上記対象物の表側表面の異物を除去する表側クリーニングローラユニットと、
上記表側ブラシローラ及び/又は表側クリーニングローラを帯電させるための帯電回路と、
上記表側ブラシローラユニット及び/又は表側クリーニングローラユニットが装着されると同時に、上記表側ブラシローラ及び/又は表側クリーニングローラと上記帯電回路とを電気的に接続する端子と、
搬送される上記対象物の下方に着脱可能に配設され、上記表側ブラシローラの直下に位置する第一の裏側対向ローラと、上記表側クリーニングローラの直下に位置する第二の裏側対向ローラとを含む裏側対向ローラユニットと
を備え、
上記対象物の搬送速度Wに対する前記表側ブラシローラの周速度Bの比率B/Wが25%以下であるクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイ(FPD)のガラス基板や、樹脂基板や、電子部品を搭載するプリント基板や、積層セラミンクコンデンサ等を形成するためのセラミックグリーンシートや、樹脂薄板や、長尺フィルムなどの対象物表面に付着した塵埃等の異物を取り除くためのクリーニング装置が開発されている。
【0003】
このようなクリーニング装置として、帯電ブラシで対象物表面の異物を除去し、この除去した異物を電界の力でクリーニングローラにより搬送及び回収するクリーニング装置が提案されている(特開2011-92846号公報参照)。
【0004】
しかし、上記クリーニング装置では、ミリサイズの比較的大きな異物については帯電ブラシにより除去可能であるが、帯電ブラシが対象物表面に接触しない部分が発生し得るため、その非接触部分に存在する異物(特に、微細な異物)を十分に除去できないおそれがある。また、上記クリーニング装置では、上述の通り帯電ブラシによる対象物表面からの異物の除去効率が十分であると言い難いばかりか、クリーニングローラによる異物の搬送効率及び回収効率も十分であるとは言い難い。そのため、上記クリーニング装置では、異物の除去効率等において改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、対象物の表面から比較的大きな異物及び微細な異物の双方を効率良く除去することができるクリーニング装置及びクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、板状又はフィルム状の対象物を搬送しつつ表面の異物を除去するクリーニング装置であって、搬送方向と略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で回転駆動される第1のブラシローラと、搬送方向と略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で回転駆動されるクリーニングローラと、上記対象物を介して上記第1のブラシローラ及びクリーニングローラと対向し、共に上記対象物の搬送方向に対し順回り方向に回転駆動される一対の対向ローラと、上記第1のブラシローラ及び上記クリーニングローラに電圧を印加する1又は複数の電圧印加機構とを備え、上記1又は複数の電圧印加機構が、上記第1のブラシローラに対し、上記クリーニングローラと同極性かつ絶対値において高い電圧を印加することを特徴とする。
【0008】
当該クリーニング装置は、第1のブラシローラによって対象物から比較的大きな異物を除去できると共に、クリーニングローラによって対象物から微細な異物を除去できる。また、第1のブラシローラ及びクリーニングローラと対向する一対の対向ローラを備えることで、第1のブラシローラ及びクリーニングローラを対象物に効果的に押圧することができるため、第1のブラシローラ及びクリーニングローラによる対象物からの異物の除去効率を高めることができる。さらに、第1のブラシローラ及びクリーニングローラに対し電圧印加機構により電圧を印加することで、第1のブラシローラ及びクリーニングローラによる対象物からの異物の除去効率をさらに高めることができる。特に、第1のブラシローラに対し、クリーニングローラと同極性かつ絶対値において高い電圧を印加することで、第1のブラシローラによる比較的大きな異物の除去と、クリーニングローラによる微細な異物の除去とを共に効率化できる。このように、当該クリーニング装置では、対象物の表面から比較的大きな異物だけでなく微細な異物を共に効率良く除去することができる。
【0009】
上記第1のブラシローラが上記対象物の搬送方向に対し逆回り方向に回転駆動され、上記クリーニングローラが上記対象物の搬送方向に対し順回り方向に回転駆動されるとよい。このように、第1のブラシローラが対象物の搬送方向に対し逆回り方向に回転駆動されることで、対象物の表面に付着する比較的大きい異物を効果的に掻き起こして除去することができる。また、クリーニングローラが対象物の搬送方向に対し順回り方向に回転駆動されることで、対象物を搬送しつつその表面に付着する微細な異物を効果的に除去することができる。
【0010】
上記1又は複数の電圧印加機構が、上記第1のブラシローラに-800V以上-200V未満の電圧を印加し、上記クリーニングローラに-200V以上0V未満の電圧を印加するとよい。このように、電圧印加機構が第1のブラシローラ及びクリーニングローラに上記範囲の電圧を印加することで、第1のブラシローラ及びクリーニングローラの電位がそれぞれ異物除去に適したものとなるため、比較的大きな異物及び微細な異物をより効果的に除去できる。
【0011】
上記1又は複数の電圧印加機構が、上記第1のブラシローラ及び上記クリーニングローラに絶対値において100V以上500V以下の電位差を与えるとよい。このように、電圧印加機構が第1のブラシローラ及びクリーニングローラの電位差が上記範囲となるように電圧を印加することで、クリーニングローラ及びブラシローラの電位をそれぞれ異物除去に適したものとすることができ、その結果、比較的大きな異物及び微細な異物をさらに効果的に除去できる。
【0012】
上記一対の対向ローラの電位が所定の固定電位であるとよい。このように、一対の対向ローラの電位を所定の固定電位とすることで、第1のブラシローラ及び一方の対向ローラの間と、クリーニングローラ及び他方の対向ローラの間とにそれぞれ効果的に電界を形成できるため、第1のブラシローラ及びクリーニングローラによる対象物からの異物除去効率をより向上できる。
【0013】
当該クリーニング装置は、上記第1のブラシローラによって上記対象物から除去した異物を回収する第1の回収ローラを備え、上記1又は複数の電圧印加機構が、上記第1の回収ローラに対し、上記第1のブラシローラと同極性かつ絶対値において高い電圧を印加するとよい。このように、当該クリーニング装置が第1の回収ローラを備え、この第1の回収ローラに対し第1のブラシローラと同極性かつ絶対値において高い電圧を印加することで、第1のブラシローラによって対象物から除去した異物を第1の回収ローラにより回収することができる。その結果、第1のブラシローラの清浄性及び電荷を維持し、異物の除去効率の低下を抑制することができる。
【0014】
上記1又は複数の電圧印加機構が、上記第1の回収ローラ及び上記第1のブラシローラに絶対値において200V以上600V以下の電位差を与えるとよい。このように、第1の回収ローラ及び第1のブラシローラに上記範囲の電位差を与えることで、第1のブラシローラによって対象物から除去した異物を第1の回収ローラによって効果的に回収できるため、第1のブラシローラの清浄性及び電荷を効果的に維持し、異物の除去効率低下を効果的に抑制することができる。
【0015】
上記第1の回収ローラの回転方向が、上記第1のブラシローラの回転方向に対し逆回り方向であり、上記第1の回収ローラの回転速度が、上記第1のブラシローラの回転速度に対し1.0倍以上1.5倍以下であるとよい。このように、第1の回収ローラの回転条件を上述の通り設定することで、第1の回収ローラによる第1のブラシローラからの異物の回収効率を高めることができるため、第1のブラシローラの清浄性及び電荷をより効果的に維持し、異物の除去効率の低下をより効果的に抑制することができる。
【0016】
当該クリーニング装置は、上記クリーニングローラにより上記対象物から除去した異物を回収する第2のブラシローラをさらに備え、上記第2のブラシローラが、上記クリーニングローラに対し逆回り方向に回転駆動されるとよく、その回転速度としては、上記クリーニングローラの回転速度に対し、1.0倍以上1.5倍以下が好ましい。このように、当該クリーニング装置が第2のブラシローラを備えることで、クリーニングローラにより対象物から除去した異物を第2のブラシローラによって除去することができる。このように、クリーニングローラから異物を除去することで、クリーニングローラ表面の清浄性及び電荷を維持し、異物の除去効率低下を抑制することができる。また、第2のブラシローラの回転条件を上述の通り設定することで、第2のブラシローラによるクリーニングローラからの異物の回収効率をより高めることができる。
【0017】
当該クリーニング装置は、上記第2のブラシローラにより上記クリーニングローラから除去した異物を回収する第2の回収ローラをさらに備え、上記第2の回収ローラが、上記第2のブラシローラに対し逆回り方向に回転駆動されるとよく、その回転速度としては、上記第2のブラシローラの回転速度に対し1.0倍以上1.5倍以下が好ましい。このように、当該クリーニング装置が第2の回収ローラを備えることで、クリーニングローラから第2のブラシローラによって除去した異物を第2の回収ローラによって回収することができる。その結果、第2のブラシローラ、ひいてはクリーニングローラ表面の清浄性及び電荷が維持され、クリーニングローラによる異物の除去効率低下を抑制することができる。また、第2の回収ローラの回転条件を上述の通り設定することで、第2の回収ローラによる第2のブラシローラからの異物の回収効率を高め、ひいては第2のブラシローラによるクリーニングローラからの異物の回収効率を高めることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、板状又はフィルム状の対象物を搬送しつつ表面の異物を除去するクリーニング方法であって、搬送される上記対象物に、搬送方向と略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で搬送方向に対し逆回り方向に回転駆動されるブラシローラを当接させる工程と、上記対象物に、搬送方向と略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で回転する回転駆動されるクリーニングローラを当接させる工程とを備え、上記クリーニングローラに電圧を印加すると共に、上記ブラシローラに上記クリーニングローラへの印加電圧と同極性かつ絶対値において高い電圧を印加する。
【0019】
当該クリーニング方法によれば、ブラシローラによって対象物から比較的大きな異物を除去できると共に、クリーニングローラによって対象物から微細な異物を除去できる。また、ブラシローラ及びクリーニングローラに対し電圧を印加することで、上述の対象物からの異物除去の効率をより高めることができる。特に、ブラシローラに対しクリーニングローラと同極性かつ絶対値において高い電圧を印加することで、上述の対象物からの異物除去の効率をさらに高めることができる。このように、当該クリーニング方法では、対象物の表面から、比較的大きな異物だけでなく微細な異物を効率よく除去できる。
【0020】
上記対象物にブラシローラを当接させる工程において、上記ブラシローラの上記対象物への食い込み量を所定の値に設定し、かつ上記対象物にクリーニングローラを当接させる工程において、上記クリーニングローラが上記対象物に所定の圧力で押圧されるよう設定するとよい。このように、ブラシローラの食い込み量及びクリーニングローラの圧力を上記範囲とすることで、ブラシローラによる比較的大きな異物の除去と、クリーニングローラによる微細な異物の除去とをより効率良く行うことができる。
【0021】
なお、本明細書の各ローラの回転方向の説明において、対象物又は他のローラの運動方向に対し、連れ回り方向に回転していることを「順回り方向に回転」といい、その逆を「逆回り方向に回転」という。また、「略垂直」とは、垂直線に対する交差角度が±10°以内であることを意味し、垂直であってもよい。さらに、「略平行」とは、二直線のなす角の鋭角が0°超10°以内であるか、又は平行であることを意味する。本明細書において、対象物の「表側」及び「裏側」は、単に便宜上の区別であり、必ずしも対象物を使用する際の表側及び裏側に対応するものではない。
【発明の効果】
【0022】
本発明のクリーニング装置及びクリーニング方法は、対象物の表面から比較的大きな異物及び微細な異物の双方を効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例に係るクリーニング装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すクリーニング装置の模式的断面図である。
【
図3】
図1に示すクリーニング装置のブラシローラの模式的断面図である。
【
図4】
図1に示すクリーニング装置の回収ローラの模式的断面図である。
【
図5】
図1に示すクリーニング装置の搬送ローラの模式的正面図である。
【
図6】
図5のX-X線における模式的断面図である。
【
図7】本発明の一実施例に係るクリーニング装置に適用可能な高さ調節機構の一例を示す模式的断面図である。
【
図8】
図7の高さ調節機構を用いた高さ調節の一工程を示す模式的断面図である。
【
図9】
図8の高さ調節機構を示す模式的斜視図である。
【
図10】
図1に示すクリーニング装置のクリーニングローラの模式的断面図である。
【
図11】本発明の一実施例に係るクリーニング装置に適用可能なユニット側端子を示す模式的斜視図である。
【
図12】本発明の一実施例に係るクリーニング装置に適用可能なホルダ側端子を示す模式的斜視図である。
【
図13】本発明の一実施例に係るクリーニング装置に適用可能な電圧印加機構を示す模式的断面図である。
【
図14】対象物、ブラシ及び異物の帯電列を示す図である。
【
図15】ブラシローラユニットにおけるブラシローラの印加電圧の最適化の実験方法を説明するための模式図である。
【
図16】ブラシローラの印加電圧に対する異物の吸着幅の測定結果を示すグラフである。
【
図17】クリーニング性能の確認結果を示す対象物表面の撮像結果である。
【
図18】クリーニング性能の確認結果を示す対象物表面の撮像結果である。
【
図19】クリーニング性能の確認結果を示す対象物表面の撮像結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るクリーニング装置及びクリーニング方法の一例について、適宜図面を参照しつつ詳説する。本発明の具体的な構成及び細部については、本発明の本質を利用する範囲内で適宜変更できることは言うまでもない。
【0025】
図1及び
図2に示す当該クリーニング装置は、平板状の対象物Sを搬送方向Dに搬送しつつその表面(表側表面S1及び裏側表面S2)の異物を除去するものである。当該クリーニング装置は、ホルダ1と、外部搬送機構(上流側外部搬送機構2A及び下流側外部搬送機構2B)と、クリーニング機構3とを主に備えている。また、当該クリーニング装置は、後述するブラシローラ41、クリーニングローラ51等に電圧の印加等を行う電圧印加機構(
図1及び
図2では省略)を備えている。さらに、当該クリーニング装置は、外部搬送機構、クリーニング機構3及び電圧印加機構を制御する制御機構を備えている。この制御機構は、従来公知の種々のものを採用でき、例えばパーソナルコンピューター等から構成することができる。
【0026】
〔対象物〕
対象物Sは、
図2では平板状の部材であるが、板状又はフィルム状の部材であれば特に制限はない。具体的には、対象物の表面は、
図2に示すように平坦であってもよいが、窪みが存在していてもよい。さらに、対象物には、孔等が存在していてもよい。
【0027】
板状の対象物としては、例えばFPDのガラス基板や、樹脂基板や、電子部品搭載用プリント基板や、積層セラミックコンデンサ等を形成するためのセラミックグリーンシートや、樹脂薄板等が挙げられる。フィルム状の対象物としては、例えば樹脂フィルム等が挙げられる。
【0028】
対象物の平均厚さは、特に限定されるものではないが、その下限としては、30μmが好ましく、50μmがより好ましい。対象物の平均厚さが上記下限に満たないと、対象物を搬送し難くなるおそれがある。一方、対象物の平均厚さの上限としては、例えば5mmである。
【0029】
[ホルダ]
ホルダ1は、クリーニング機構3を保持するものである。このホルダ1は、対向する一対の板状部材10の間を複数のロッド11及びシャフト12により連結したものである。
【0030】
[外部搬送機構]
外部搬送機構は、対象物Sに搬送のための推進力を付与するものであり、クリーニング機構3の外部に設けられる。この外部搬送機構は、クリーニング機構3よりも搬送方向上流側に配置される上流側外部搬送機構2Aと、クリーニング機構3よりも搬送方向下流側に配置される下流側外部搬送機構2Bとを有する。この外部搬送機構による対象物Sの搬送速度は、クリーニング機構3により対象物Sから異物を除去できる範囲であれば特に制限はない。対象物Sの搬送速度の下限としては、5m/minが好ましく、10m/minがより好ましい。一方、対象物Sの搬送速度の上限としては、30m/minが好ましく、20m/minがより好ましい。対象物Sの搬送速度が上記下限に満たないと、異物除去に要する時間が長くなり、異物の除去効率が低下するおそれがある。逆に、対象物Sの搬送速度が上記上限を超えると、クリーニング機構3により対象物Sの表面の異物を十分に除去できなくなるおそれがある。
【0031】
<上流側外部搬送機構>
上流側外部搬送機構2Aは、対象物Sをクリーニング機構3に搬入するものであり、複数のベルト搬送部20Aを有している。ベルト搬送部20Aは、搬送方向Dに沿って離間して配置される一対のローラ21Aの間に無端ベルト22Aが巻き掛けられたものである。一対のローラ21Aのうち、一方は回転力が付与される駆動ローラであり、他方は駆動ローラの回転により無端ベルト22Aと共に回転する従動ローラである。複数のベルト搬送部20Aは、搬送方向Dに直交する水平方向(以下、「搬送幅方向」ともいう)に一定間隔で配置されている。
【0032】
<下流側外部搬送機構>
下流側外部搬送機構2Bは対象物Sをクリーニング機構3から搬出するものであり、複数のベルト搬送部20Bを有している。ベルト搬送部20Bは、上流側外部搬送機構2Aの複数のベルト搬送部20Aと同様な構成とされている。すなわち、複数のベルト搬送部20Bは、搬送方向Dに沿って離間して配置される駆動ローラ及び従動ローラにより構成される一対のローラ21Bの間に無端ベルト22Bが巻き掛けられたものである。複数のベルト搬送部20Bも搬送幅方向に一定間隔で配置されている。
【0033】
[クリーニング機構]
クリーニング機構3は、対象物Sの表側表面S1及び裏側表面S2の両面のクリーニングが可能な機構であり、表側クリーニング機構3A及び裏側クリーニング機構3Bを有している。
【0034】
<表側クリーニング機構>
表側クリーニング機構3Aは、搬送される対象物Sの表側表面S1の異物を除去するユニットである。この表側クリーニング機構3Aは、表側ブラシローラユニット4、表側クリーニングローラユニット5及び裏側対向ローラユニット6を有している。当該クリーニング装置は、工場等の床面の基台上に設置されるホルダ1に、表側ブラシローラユニット4及び表側クリーニングローラユニット5が着脱可能に装着される。ホルダ1は、上記基台上にネジ等の固着具により固定されていてもよいが、固着具を用いず移動可能な状態で載置されていることが好ましい。表側ブラシローラユニット4及び表側クリーニングローラユニット5は、搬送される対象物Sの上方(搬送経路の上方)に配設され、ホルダ1に着脱可能に保持される。
【0035】
〔表側ブラシローラユニット〕
表側ブラシローラユニット4は、筐体40に収容されたブラシローラ41により対象物Sの表側表面S1の異物を除去するユニットであり、ミリサイズの比較的大きな異物の除去に好適である。この表側ブラシローラユニット4の筐体40には、ブラシローラ41の他に、回収ローラ42、ブレード43、異物回収部44及び搬送ローラ45が収容され、全体がユニット化されている。このように表側ブラシローラユニット4がホルダ1に着脱可能にユニット化されることで、表側ブラシローラユニット4をホルダ1から容易に取り外すことができる。その結果、対象物Sや異物の種類にあわせてブラシローラ41を交換する必要がある場合にユニットごと交換することができるため、効果的な異物の除去を簡便に行うことができる。また、表側ブラシローラユニット4をホルダ1から取り外すことで、ブラシローラ41に対向する後述の対向金属ローラ60を露出させて交換や洗浄を容易に行えるため、メンテナンス性に優れる。加えて、筐体40に収容されるブラシローラ41等に関しても、ホルダ1に組み込み固定する場合に比べて、メンテナンスが容易となる。
【0036】
(筐体)
筐体40は、ブラシローラ41等を収容してユニット化し、ホルダ1に着脱可能とするものである。この筐体40は、搬送面に略垂直となるように対向して配設される上流板及び下流板と、上流板及び下流板の側端部同士を接続する一対の側板と、上流板、下流板及び一対の側板の上端部に接続される天板と、上流板、下流板及び一対の側板の下端部に接続される底板とを有する。天板には、幅方向において離間している一対の把持部40Aが設けられている。一対の把持部40Aは、表側ブラシローラユニット4の着脱時に利用されるものである。底板には開口部40Bが設けられ、この開口部40Bから後述するブラシローラ41のブラシ毛41Cの先端部が突出している。なお、筐体40を構成する材料としては、特に制限はないが、例えばステンレス等が挙げられる。
【0037】
(ブラシローラ)
ブラシローラ41は、搬送される対象物Sに当接して表側表面S1の異物、特に比較的大きな異物(例えばミリサイズの異物)を除去する表側の第1のブラシローラである。このブラシローラ41は、上記電圧印加機構により帯電した状態で外部駆動源からの動力により搬送方向Dと略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で搬送方向Dに対して逆回り方向(
図2の時計回り方向)に回転駆動される。なお、ブラシローラ41は、帯電状態で搬送方向Dに対して逆回り方向に回転駆動することが好ましいが、非帯電状態で回転駆動してもよい。
【0038】
このようなブラシローラ41は、
図3に示すように円柱状の芯棒41Aと、芯棒41Aの外周面に接着層41Bを介して植設される複数のブラシ毛41Cとを有する。
【0039】
芯棒41Aは、例えば金属、カーボン材、合成樹脂複合材等の導電性を有する材料により形成される。上記導電性を有する材料の体積抵抗率の上限としては、例えば105Ωcmである。この芯棒41Aには、後述する電圧印加機構により電圧が印加される。また、芯棒41Aに印加される電圧は、後述する表側クリーニングローラユニット5のクリーニングローラ51よりも同極性かつ絶対値が大きくなるように設定される。
【0040】
芯棒41Aに印加される電圧の下限としては、-800Vが好ましく、-600Vがより好ましい。一方、上記電圧の上限としては、-200Vが好ましく、-300Vがより好ましい。
【0041】
ブラシ毛41Cとしては、物理的に異物が付着し易いものが好ましく、例えば合成樹脂繊維製のものが挙げられる。また、ブラシ毛41Cとしては、対象物Sの表側表面S1に付着する異物を吸着するための電荷を帯電し得るものが好ましく、例えばカーボンブラック、炭素繊維、金属粉、金属ウィスカ等の導電性材料を含有する合成樹脂繊維製のものが好適に使用できる。
【0042】
ブラシ毛41Cの断面形状は特に限定されるものではなく、例えば円形状、楕円形状、星型形状等が挙げられる。また、ブラシ毛41Cの外形も特に限定されるものではなく、例えば直線状、波曲線形状、曲線と直線とが組み合わされて構成された形状等が挙げられる。なお、ブラシ毛41Cは、表面積が大きいほど異物を吸着し易くなる。そのため、ブラシ毛41Cとしては、表面積を大きく確保できる断面形状が異形状のもの、例えば星型形状のものを用いることができる。
【0043】
ブラシローラ41は、対象物Sの搬送方向Dに対して逆回り方向となるよう回転駆動されることにより、対象物Sの表側表面S1に付着の異物を掻き起こしてブラシ毛41Cに付着させることができる。また、ブラシローラ41に電圧を印加して帯電させることで、電界の力による吸着力を作用させ、効果的に対象物Sの表側表面S1の異物をブラシ毛41Cに吸着させることができる。特に、ブラシローラ41を帯電させることで、対象物Sに孔や表面の窪みが存在する場合においても、上記孔や窪みの中にある異物を効率的に除去することができる。さらに、上記範囲の電圧を芯棒41Aに印加することで、比較的大きな異物を対象物Sの表側表面S1からより効果的にブラシローラ41に吸着させることができる。
【0044】
さらに、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41は、ブラシ毛41Cを有すること、搬送方向Dに対して逆回り方向に回転すること、及びクリーニングローラ51よりも同極性かつ絶対値の大きい電圧が印加されることで、ミリオーダーの比較的大きな異物を対象物Sの表側表面S1から除去することができる。
【0045】
ブラシローラ41の対象物Sへの平均圧接量の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記平均圧接量の上限としては、1.5mmが好ましく、1mmがより好ましい。上記平均圧接量が上記下限未満であると、対象物Sの表側表面S1の異物を十分に掻き起こせないおそれがある。逆に、上記平均圧接量が上記上限を超えると、ブラシ毛41Cと対象物Sの表側表面S1との間の抵抗が大きくなるため、対象物Sの搬送速度が低下するおそれがある共に対象物Sの表側表面S1を傷付けるおそれがある。なお、「圧接量」とは、対象物Sへのブラシ毛41の食い込み量であり、ブラシ毛41Cの平均長さから、芯棒41Aの表面と対象物Sの表側表面S1との最小距離を差分した値を意味する。
【0046】
ブラシローラ41の周速度の下限としては、1m/minが好ましく、2m/minがより好ましい。一方、ブラシローラ41の周速度の上限としては、30m/minが好ましく、15m/minがより好ましい。ブラシローラ41の周速度が上記下限に満たないと、対象物Sの表側表面S1の異物を十分に掻き起こせないおそれがある。逆に、ブラシローラ41の周速度が上記上限を超えると、ブラシ毛41Cと対象物Sの表側表面S1との間の抵抗が大きくなるため、対象物Sの搬送速度が低下するおそれがあると共に対象物Sの表側表面S1が傷付くおそれがある。また、対象物Sの搬送速度Wに対するブラシローラ41の周速度Bの比率(B/W)の上限は、25%が好ましい。対象物Sの搬送速度Wに対しブラシローラ41の周速度Bが大きすぎると、比較的大きな異物をブラシローラ41により掻き起こすのが困難となるおそれがある。
【0047】
(回収ローラ)
回収ローラ42は、ブラシローラ41と略平行かつブラシ毛41Cと当接し、このブラシ毛41Cに付着した異物を回収する表側の第1の回収ローラである。この回収ローラ42は、ブラシローラ41よりも小径であり、ブラシローラ41の上方においてブラシローラ41よりも搬送方向上流側に配置されている。このように配置することにより、後述するブレード43で掻き取られた異物が回収ローラ42等の部材に再付着するなどの悪影響を低減できる。
【0048】
回収ローラ42は、
図4に示すように、導電性材料により形成されるローラ本体42Aと、その外周面に積層される耐食性層42Bとを備える。ローラ本体42Aの材質としては、導電性材料であれば特に限定されないが、例えばステンレス、銅、アルミニウム等の金属材料や、合成樹脂に導電性フィラー等の導電材料を配合した導電性樹脂材料などが挙げられ、これらの中で金属材料が好ましい。耐食性層42Bとしては、ニッケルメッキや金メッキ等のメッキ処理により形成される金属メッキ層とすることができる。但し、回収ローラ42としては、全体がステンレス等の酸化し難い導電性材料により形成され、耐食性層42Bを有さないものを用いてもよい。
【0049】
この回収ローラ42は、上記電圧印加機構により帯電した状態で、外部駆動源からの動力によりブラシローラ41に対して逆回り方向(
図2の時計回り方向)に回転駆動される。このように回収ローラ42の回転方向をブラシローラ41に対して逆回り方向とすることで、異物の回収効率が高めることができる。ブラシローラ41の回転速度に対する回収ローラ42の回転速度の倍率の下限としては、1.0倍が好ましい。一方、上記回転速度の倍率の上限としては、1.5倍が好ましい。これにより、ブラシローラ41から回収ローラ42に効果的に異物を移動させることができる。但し、回収ローラ42の回転方向は、ブラシローラ41に対して順回り方向であってもよい。
【0050】
回収ローラ42への印加電圧は、ブラシローラ41への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにする。回収ローラ42への印加電圧とブラシローラ41への印加電圧の差の絶対値の下限としては、200Vが好ましく、300Vがより好ましい。一方、上記差の絶対値の上限としては、600Vが好ましく、500Vがより好ましい。また、回収ローラ42への印加電圧の下限としては、-1,500Vが好ましく、-1,200Vがより好ましい。一方、上記印加電圧の上限としては、-400Vが好ましく、-600Vがより好ましい。回収ローラ42への印加電圧をブラシローラ41への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにすることで、回収ローラ42の外周面の電位がブラシローラ41のブラシ毛41Cの電位に対して同極性かつ絶対値が高くなるので、ブラシローラ41に付着した異物を回収ローラ42の外周面に吸着させることができる。特に、回収ローラ42とブラシローラ41との印加電圧の差を上記範囲とし、さらに回収ローラ42への印加電圧を上記範囲とすることで、ブラシローラ41に付着した異物を回収ローラ42の外周面に効果的に吸着させることができる。回収ローラ42の電気抵抗の上限としては、108Ωが好ましい。回収ローラ42の電気抵抗を108Ω以下とすることで、回収ローラ42に表面処理を行った場合や、被膜を形成した場合においても、電圧の印加によって効果的に帯電させることができる。
【0051】
(ブレード)
ブレード43は、回収ローラ42から異物を掻き取って除去する第1のブレードである。このブレード43は、例えば弾性を有する矩形板状部材である。
【0052】
このブレード43は、先端部が自由端とされていると共に、根元部がブレード支持部43aに固定されている。ブレード43の自由端である先端部は、回収ローラ42の軸方向に亘って回収ローラ42の外周面に当接している。ブレード43は、傾斜した状態で回収ローラ42の外周面に当接していることが好ましい。ブレード43及び回収ローラ42の接点において、ブレード43と回収ローラ42の外周の仮想接線との傾斜角の下限としては、5°が好ましく、15°がより好ましい。一方、上記傾斜角の上限としては、30°が好ましく、25°がより好ましい。上記角度が上記下限未満の場合、圧接力の不足によってブレード43で異物を十分に掻き落とすことができず、ブレード43をすり抜けた異物が対象物Sに再付着してしまう再転写現象が生じるおそれがある。一方、上記傾斜角が上記上限を超える場合、回収ローラ42の回転に巻き込まれてブレード43がめくれるおそれがある。従って、上記傾斜角が上記範囲となるようにブレード43を回収ローラ42に当接させることで、回収ローラ42から効果的に異物を掻き落とすことができる。また、ブレード43は、回収ローラ42よりも搬送方向上流側、すなわち搬送ローラ45の上方に配置されている。これにより、搬送ローラ45の上方のスペースを有効に活用することができ、表側ブラシローラユニット4を小型化することができる。また、後述の異物回収部44を搬送方向上流側に引き出す構成を採用し、利便性を向上することができる。
【0053】
ブレード43の材質としては、特に限定されないが、弾性を有するものが好ましく、合成樹脂がより好ましい。具体的には、適度な弾性を付与するため、例えば熱硬化性ポリウレタン等の合成樹脂により形成されているとよい。また、ブレード43のうち少なくとも先端部は、当接する回収ローラ42との摩擦軽減のため、フッ素樹脂等のフッ素含有化合物によりフッ素コーティングされていてもよい。フッ素コーティングの平均厚さの下限としては、5μmが好ましい。一方、上記平均厚さの上限としては、15μmが好ましい。上記平均厚さが上記下限未満では摩擦軽減効果が十分に発現せず、ブレード43が回収ローラ42の回転に巻き込まれ易くなるおそれがある。一方、上記平均厚さが上記上限を超える場合、フッ素コーティングの割れが発生するおそれがある。なお、ブレード43の形状は、
図2の矩形板状に限定されず、根元部から先端部にかけて屈曲又は湾曲した形状であってもよい。
【0054】
(異物回収部)
異物回収部44は、ブレード43によって回収ローラ42から掻き落とされた異物を回収及び収容する第1の異物回収部である。この異物回収部44は、ブレード43の先端部の下方かつ、ブラシローラ41よりも搬送方向上流側に配設されている。そして、異物回収部44は、筐体40の上流板の開口部に嵌め込まれ、この開口部から搬送方向上流側に引き出し可能とされている。異物回収部44の上流側には、把持部44Aが設けられており、この把持部44Aを利用して異物回収部44の出し入れが容易化されている。また、異物回収部44は、搬送方向上流側に引き出すことが可能であるため、表側ブラシローラユニット4をホルダ1に固定した状態のまま引き出して異物を回収することができ、利便性に優れる。
【0055】
(搬送ローラ)
搬送ローラ45は、後述する裏側対向ローラユニット6の補助ローラ62と共に、クリーニング機構3に搬入される対象物Sの移動をガイドするものである。また、搬送ローラ45及び補助ローラ62は、搬送方向Dに対して逆回りするブラシローラ41の下方に対象物Sを適切な力で進入させるために、対象物Sに推進力を与えるための機能も有する。この搬送ローラ45は、後述の裏側対向ローラユニット6の補助ローラ62に対向して配置されている。搬送ローラ45は、搬送方向Dに対して順回り方向(
図2の反時計回り方向)に回転する。ここで、補助ローラ62と搬送ローラ45とで対象物Sを挟み込む力が強すぎる場合、異物が対象物Sに押し付けられて除去しにくくなるおそれや、対象物Sに傷を付けてしまうおそれがある。これらを考慮して、搬送ローラ45は、補助ローラ62を0.49N程度の力で押圧するように配設されている。但し、上記押圧力は、対象物Sの材質や厚み等を考慮して適宜調整することができる。また、対象物Sの硬度が比較的高く、補助ローラ62だけでブラシローラ41の下方に進入させることができる場合は、当該クリーニング装置から搬送ローラ45を省略することも可能である。
【0056】
搬送ローラ45は、
図5及び6に示すように、芯軸45Aと、この芯軸45Aの外周に積層されるリング状部材であって、芯軸45Aの軸方向に沿って離間して配置されている複数の樹脂部45Bとを備える。樹脂部45Bは、
図5及び6に示すように、外周面に凹凸を有する。このように、外周面に凹凸を有する複数の樹脂部45Bが離間して配置されていることで、搬送ローラ45と対象物Sの表側表面S1との接触面積を小さくすることができる。その結果、クリーニング機構3に対象物Sが搬入される際に搬送ローラ45と補助ローラ62との間に対象物Sが詰まることを抑制できる。
【0057】
芯軸45Aは、例えばステンレス、銅、アルミニウム等の金属により形成されている。樹脂部45Bは、例えばポリウレタン等により形成されている。このポリウレタンとしては、例えばアクリル混合ウレタン、フッ素混合ウレタン等が挙げられる。ここで、「アクリル混合ウレタン」とは、ポリエステルポリウレタン又はポリエーテルポリウレタンを主成分とする樹脂であって、(1)熱可塑性ポリウレタン及びシリコン・アクリル共重合樹脂の混合物、(2)アクリル樹脂(例えばメタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体からなる主鎖にアミノエチル基がグラフトされてなるグラフト化合物)及び熱可塑性ポリウレタンからなる混合物、又は(3)アクリル樹脂、ポリウレタン及びフッ素系表面コーティング剤からなる混合物を意味する。「フッ素混合ウレタン」とは、ポリウレタンを主成分とする樹脂で、熱可塑性ポリウレタンにウレタン・フッ素共重合体を混合したものを意味する。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば50質量%以上含有される成分である。
【0058】
(高さ調節機構)
表側ブラシローラユニット4は、高さ調節機構により高さ調節が可能に構成されているとよい。このように、高さ調節機構により表側ブラシローラユニット4の高さ調節を可能とすることで、対象物Sに対するブラシローラ41の圧接量を調節し、ブラシローラ41による比較的大きな異物の除去をより効率的に行うことができる。
【0059】
図7~9に、ホルダ1の板状部材10に、表側ブラシローラユニット4の高さ調節機構を介して表側ブラシローラユニット4を配設した状態の一例を示す(ホルダ1、高さ調節機構及び表側ブラシローラユニット4の筐体40の天板103以外の部材は図示略)。
図7~9の高さ調節機構は、ホルダ1の板状部材10に固定されている略板状の固定部材101と、この固定部材101の上面に載置され、搬送方向Dに沿った水平移動、及び上下移動が可能なスライド部材102と、固定部材101を被覆するカバー104とを主に備える。表側ブラシローラユニット4の天板103は、スライド部材102によって長手方向端部が支持され、スライド部材102に伴って上下移動する。
図7~9の高さ調節機構には、板状部材10に固定され、スライド部材102等の垂直位置を測定可能なゲージや、スライド部材102の水平位置を固定するための調整具をさらに設けてもよい。
図7は、表側ブラシローラユニット4の高さが最小となるように調節した状態を示す。
図8及び9は、表側ブラシローラユニット4の高さが最大になるように調節した状態を示す。
【0060】
固定部材101の上面の一部には、搬送方向Dの略中央付近から下流側(
図7及び8では右側)にかけて高さが漸増する斜面が形成されている。一方、スライド部材102は、上面が略水平面となっているが、下面の一部には搬送方向Dの略中央付近から下流側にかけて高さが漸増する斜面が形成されている。固定部材101の上面の斜面と、スライド部材102の下面の斜面とは、同一の勾配を有し、突き合わされている。そのため、スライド部材102を搬送方向Dに沿って水平移動させることで、スライド部材102の上面を略水平面状態に維持しつつ高さを上下させることができる。これにより、スライド部材102によって支持されている天板103の高さ(天板103の上面と板状部材10の上端との距離L1及びL2)を変更し、この天板103の高さ変更によって表側ブラシローラユニット4を所望の高さに調節することができる。
【0061】
図7~9の高さ調節機構では、スライド部材102の比較的大きな水平移動を天板103の比較的微細な上下移動に無段階で変換することができるため、対象物Sの種類や厚みに応じてブラシローラユニット4の高さを無段階で微調節することができる。また、
図7~9の高さ調節機構は、ホルダ1の上端付近に配設できるため、ホルダ1の空間を有効活用できると共に、高さ調節時の作業性に優れる。
【0062】
但し、ブラシローラユニット4の高さ調節機構の方式や構造等は、
図7~9に制限されない。他の高さ調節の方法としては、例えばホルダ1におけるブラシローラユニット4の固定部に所定の高さのスペーサを配置する方法や、表側ブラシローラユニット4に突出部を設けると共に、この突出部と嵌合するレール状部材をホルダ1に上下方向に沿って配置し、無段階に表側ブラシローラユニット4の取り付け高さを調節できるようにする方法等が挙げられる。
【0063】
〔表側クリーニングローラユニット〕
表側クリーニングローラユニット5は、筐体50に収容されたクリーニングローラ51により対象物Sの表側表面S1の異物を除去するユニットである。この表側クリーニングローラユニット5の筐体50には、クリーニングローラ51の他に、ブラシローラ52、回収ローラ53、ブレード54及び異物回収部55が主に収容され、全体がユニット化されている。表側クリーニングローラユニット5は、ミリサイズよりも小さい微細な異物の除去に好適であり、表側ブラシローラユニット4よりも搬送方向下流側の隣接した位置に、ホルダ1に着脱可能に配設されている。ここで、クリーニングローラ51は、微細な異物を効果的にその表面に移動させるために、後述する対向樹脂ローラ61と共に対象物Sの両面から圧力を加えるように設定されている。従って、もしも表側クリーニングローラユニット5を表側ブラシローラユニット4の上流側に配置した場合、クリーニングローラ51が比較的大きな異物を対象物Sに押し付けて圧着し、ブラシローラ41によっても上記異物を除去しきれないおそれがある。そのため、表側クリーニングローラユニット5は、表側ブラシローラユニット4の下流側に配置することが好ましい。
【0064】
このように表側クリーニングローラユニット5がホルダ1に着脱可能にユニット化されることで、表側クリーニングローラユニット5をホルダ1から容易に取り外すことができる。その結果、対象物Sや異物の種類に対応してクリーニングローラ51を変更する必要がある場合にユニットごと交換することができるため、効果的な異物の除去を簡便に行うことができる。また、表側クリーニングローラユニット5をホルダ1から取り外すことで、クリーニングローラ51に対向する後述の対向樹脂ローラ61等を露出させて交換や洗浄を容易に行えるため、メンテナンス性に優れる。加えて、筐体50に収容されるクリーニングローラ51等に関しても、筐体50に収容してユニット化することで、装置に組み込み固定する場合に比べてメンテナンスが容易となる。
【0065】
(筐体)
筐体50は、クリーニングローラ51等を収容してユニット化し、ホルダ1に着脱可能とするものである。この筐体50は、表側ブラシローラユニット4と同様に、上流板、下流板、一対の側板、天板及び底板を有する。天板には、搬送幅方向に離間している一対の把持部50Aが設けられている。一対の把持部50Aは、表側クリーニングローラユニット5の着脱時に利用されるものである。底板には開口部50Bが設けられ、この開口部50Bからクリーニングローラ51の一部が突出している。下流板は、上方から下方にかけて屈曲している。なお、筐体50を構成する材料には、特に制限はなく、例えばステンレス等の金属が好適に用いられる。
【0066】
(クリーニングローラ)
クリーニングローラ51は、対象物Sの表側表面S1の異物、特に比較的微細な異物(例えばミリサイズよりも小さい異物)を除去するものであり、外周面が上記電圧印加機構により帯電した状態で搬送方向Dと略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で搬送方向Dに対して順回り方向(
図2の反時計回り方向)に回転駆動される。このクリーニングローラ51は、
図10に示すように、芯棒51Aと、この芯棒51Aの外周面に形成される内層部51Bと、この内層部51Bの外周面を被覆する外層部51Cとを有する弾性ローラである。
【0067】
芯棒51Aは、導電性材料により円柱状に形成されている。芯棒51Aに用いる導電性材料としては、例えば金属材料等が挙げられ、具体的には表側ブラシローラユニット4の回収ローラ42のローラ本体42Aと同様にステンレス、銅、アルミニウム等が挙げられる。
【0068】
内層部51Bは、クリーニングローラ51及び後述する対向樹脂ローラ61による対象物Sへの一定の押圧力やニップ幅を確保するものである。すなわち、内層部51Bは、対象物Sに対する所望の密着力や接触幅を確保し、その表側表面S1からの比較的微細な異物の効率的な除去に寄与するものである。この内層部51Bを形成する材料としては、弾性及び導電性を有している樹脂材料が好ましく、ポリウレタン、シリコーン樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の樹脂成分とカーボンとを含有する樹脂材料がより好ましい。このポリウレタンとしては、上述の搬送ローラ45の樹脂部45Bのポリウレタンと同様のものが好適に用いられる。内層部51Bを形成する材料としては、ポリエステル系ポリウレタン及びカーボンブラックを含有する導電性エラストマーがさらに好ましい。これらの材料により、クリーニングローラ51の弾性が十分に確保され、クリーニングローラ51によって対象物Sに異物が過度に押し付けられることを回避し、異物の除去効率の低下を抑制できる。
【0069】
外層部51Cは、対象物Sとの密着性や、適度な表面電位の付与を阻害することなく、クリーニングローラ51の防汚性や耐摩耗性を確保しつつ、湿気等による悪影響を回避する役割を果たすものである。この外層部51Cの材料としては、対象物Sの表側表面S1に付着した異物を電界の力により吸着するために帯電し得るものであればよく、例えばアクリル混合ポリウレタンやフッ素混合ポリウレタン等のポリウレタンや、シリコーン樹脂、天然ゴム、合成ゴムなどが挙げられ、これらの中でポリウレタンが好ましい。このように、外層部51Cをポリウレタンで形成することで、シリコーン樹脂やブチルゴム等で形成する場合に比べて耐摩耗性が向上し、また可塑剤や低分子量化合物の添加によるクリーニングローラ51の汚染を低減することができる。また、外層部51Cは、内層部51Bよりも硬度が高いことが好ましく、具体的にはJIS-A硬度が50°以上であることが好ましい。外層部51CのJIS-A硬度が50°以上であることで、クリーニングローラ51の耐摩耗性を十分に確保することができる。
【0070】
外層部51Cの材質としてアクリル混合ポリウレタンを用いることにより、マイナスに帯電した異物を対象物Sの表側表面S1から除去し易くなる。一方、外層部51Cの材質としてフッ素混合ポリウレタンを用いることにより、クリーニングローラ51をマイナスに帯電させ易くなり、プラスに帯電した異物を対象物Sから除去し易くなる。
【0071】
なお、外層部51Cの粘着力が強すぎると、対象物Sの厚みが薄い場合にクリーニングローラ51が対象物Sを巻き込んでしまうおそれがある。そこで、クリーニングローラ51の表面(外層部51C)には、対象物Sの巻き込みを防止するために、微小突起が形成されていることが好ましい。この微小突起を形成する具体的な方法としては、外層部51Cの形成に用いる熱可塑性ポリウレタン等の樹脂材料に上記微小突起の素となる粒子を配合する方法が好ましい。この粒子としては、定形粒子でも不定形粒子でもよいが、微小突起の突出形状を均一化させる観点から定形の球状粒子が好ましい。この球状粒子の平均粒子径の下限としては、2μmが好ましく、2.5μmがより好ましい。一方、上記平均粒子径の上限としては、5μmが好ましく、4.5μmがより好ましい。また、この球状粒子において、平均粒子径に係る標準偏差(σ)を平均粒子径で除すことで求められる変動係数(CV値)の下限としては、3.0%が好ましく、3.5%がより好ましい。一方、上記変動係数の上限としては、5.0%が好ましく、4.5%がより好ましい。ここで「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法によって求められる体積平均粒子径(Mv)を意味している。
【0072】
上記球状粒子は、熱可塑性ポリウレタンよりも硬質であることが好ましい。但し、上記球状粒子は、ガラスビーズやセラミックスビーズのように過度に硬質なものであると対象物Sを傷付けてしまうおそれがあるため、樹脂製のものが好ましい。この球状粒子を形成する硬質な樹脂としては、例えばメラミン樹脂やアクリル樹脂等が挙げられ、なかでもメラミン樹脂が好ましい。
【0073】
外層部51Cの平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、外層部51Cの平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、300μmがより好ましい。外層部51Cの平均厚さが上記下限に満たないと、クリーニングローラ51の表面を十分に帯電させることができず、異物の吸着効果が十分に得られないおそれがある。逆に、外層部51Cの平均厚さが上記上限を超えると、異物を吸着するための良好な帯電特性が得られないおそれがある。
【0074】
クリーニングローラ51は、上記電圧印加機構によって帯電させられ、表面電位(表面電荷)が与えられる。すなわち、クリーニングローラ51は、表面を帯電させた状態で対象物Sの表側表面S1に当接し、電界の力により対象物Sの表側表面S1に付着する比較的微細な異物を吸着して除去する。このように、クリーニングローラ51を帯電させることで、対象物Sに孔や表面の窪みが存在する場合においても、上記孔や窪みの中にある異物を効率的に除去することができる。
【0075】
クリーニングローラ51への印加電圧は、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が低くなるようにする。クリーニングローラ51への印加電圧の下限としては、例えば-400Vであり、-200Vが好ましい。一方、上記印加電圧は、例えば0V未満であり、-50V以下が好ましい。このようにクリーニングローラ51への印加電圧を表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が低くなるようにすることで、比較的微細な異物を対象物Sの表側表面S1から除去することができる。特に、クリーニングローラ51への印加電圧を上記範囲とすることで、比較的微細な異物を対象物Sの表側表面S1から効率的に除去することができる。なお、クリーニングローラ51の電気抵抗の上限としては、108Ωが好ましい。クリーニングローラ51の電気抵抗が108Ω以下であることで、電圧を印加したときに効果的に帯電させることができる。
【0076】
なお、クリーニングローラ51は、微細な異物の回収効率を高めるために、対向樹脂ローラ61との間で対象物Sに適切な圧力をかけられる高さに設定されていることが好ましい。クリーニングローラ51及び対向樹脂ローラ61によって対象物Sに加える圧力は、例えば線圧:2.4kg/250mmとすることができる。ここで、250mmは、本実施形態におけるクリーニングローラ51の外層部51Cの軸方向長さである。また、クリーニングローラ51は、対向樹脂ローラ61と共に、対象物Sに適切な推進力を与える機能も兼ねていている。これにより、搬送方向Dに対して逆回り方向に回転している後述の裏側ブラシローラユニット7のブラシローラ71の下方に対象物Sを進入させ易くなる。
【0077】
(ブラシローラ)
ブラシローラ52は、クリーニングローラ51が対象物Sから除去した異物を回収する表側の第2のブラシローラであり、クリーニングローラ51の直上においてクリーニングローラ51に略平行かつ当接するよう配設されている。このブラシローラ52は、帯電状態で、外部駆動源からの動力により、クリーニングローラ51に対して逆回り方向(
図2の反時計回り方向)に回転駆動される。このようなブラシローラ52は、円柱状の芯棒52Aと、この芯棒52Aの外周面に接着層52Bを介して植設される複数のブラシ毛52Cとを有し(
図3参照)、その詳細は表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41の芯棒41A及びブラシ毛41Cと同様であるため、重複説明は省略する。また、ブラシローラ52への印加電圧(芯棒52Aに印加される電圧)は、クリーニングローラ51への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにする。具体的なブラシローラ52への印加電圧の下限としては、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41と同様に、-800Vが好ましく、-600Vがより好ましい。一方、上記印加電圧の上限としては、-200Vが好ましく、-300Vがより好ましい。
【0078】
(回収ローラ)
回収ローラ53は、ブラシローラ52がクリーニングローラ51から回収した異物を回収する表側の第2の回収ローラであり、ブラシローラ52の上方においてブラシローラ52と略平行かつブラシ毛52Cと当接するように配設される。この回収ローラ53は、上記電圧印加機構により帯電した状態で、外部駆動源からの動力によりブラシローラ52に対して逆回り方向(
図2の反時計回り方向)に回転駆動される。回収ローラ53の詳細は、上述の表側ブラシローラユニット4の回収ローラ42と同様とすることができるため、重複説明は省略する。
【0079】
回収ローラ53への印加電圧は、ブラシローラ52への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにする。回収ローラ53への印加電圧とブラシローラ52への印加電圧との差の絶対値の下限としては、200Vが好ましく、300Vがより好ましい。一方、上記差の絶対値の上限としては、600Vが好ましく、500Vがより好ましい。また、回収ローラ53への印加電圧の下限としては、-1,500Vが好ましく、-1,200Vがより好ましい。一方、上記印加電圧の上限としては、-400Vが好ましく、-600Vがより好ましい。回収ローラ53への印加電圧をブラシローラ52への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにすることで、回収ローラ53の外周面の電位がブラシローラ52のブラシ毛52Cの電位よりも同極性かつ絶対値が高くなるので、ブラシローラ52に付着した異物を回収ローラ53の外周面に吸着させることができる。特に、回収ローラ53とブラシローラ52との印加電圧の差を上記範囲とし、さらに回収ローラ53への印加電圧を上記範囲とすることで、ブラシローラ52に付着した異物を回収ローラ53の外周面に効果的に吸着させることができる。
【0080】
回収ローラ53は、ブラシローラ52よりも搬送方向下流側に配置されている。これにより、回収ローラ53がブラシローラ52よりも小径であっても、後述するブレード53によって搬送方向下流側に異物を掻き落とすことができ、ブラシローラ52への異物の再吸着を抑制できる。
【0081】
回収ローラ53の回転方向は、ブラシローラ52に対して順回り方向及び逆回り方向のいずれの方向であってもよく、後述するブレード54により外周面から異物を回収し易い回転方向とするとよい。本実施形態では、回収ローラ53の回転方向は、
図2に示すようにブラシローラ52に対して逆回り方向(
図2の反時計回り方向)とされ、ブレード54による異物の回収効率が高められている。ブラシローラ52の回転速度に対する回収ローラ53の回転速度の倍率の下限としては、1.0倍が好ましい。一方、上記回転速度の倍率の上限としては、1.5倍が好ましい。これにより、ブラシローラ52から回収ローラ53に効果的に異物を移動させることができる。
【0082】
(ブレード)
ブレード54は、回収ローラ53から異物を掻き取る第2のブレードである。このブレード54及びこれを支持するブレード支持部53aの詳細は、上述の表側ブラシローラユニット4のブレード43及びブレード支持部43aと同様である。
【0083】
(異物回収部)
異物回収部55は、ブレード54によって回収ローラ53から掻き落とされた異物を回収及び収容するものである。この異物回収部55は、ブレード54の先端部の下方かつ、ブラシローラ52よりも搬送方向下流側に配設されている。そして、異物回収物55は、筐体50の下流板の開口部に嵌め込まれ、この開口部を介して搬送方向下流側に引き出し可能とされている。異物回収部55の下流側には把持部55Aが設けられており、この把持部55Aを利用して異物回収部55の出し入れが容易化されている。また、異物回収部55は搬送方向下流側に引き出すことが可能であるため、クリーニングローラユニット5をホルダ1に固定した状態のまま引き出して異物を回収することができるという点で利便性に優れる。
【0084】
(高さ調節機構)
表側クリーニングローラユニット5は、高さ調節機構により高さ調節が可能に構成されているとよい。このように、高さ調節機構で表側クリーニングローラユニット5の高さを調節することで、対象物Sに対するクリーニングローラ51の押圧力(ニップ幅)を調節し、その結果、微細な異物の除去を効率良く行うことができる。
【0085】
表側クリーニングローラユニット5の高さ調節機構の具体例としては、例えば表側ブラシローラユニット4の高さ調節機構として例示したものと同様の機構等を用いることができる。
【0086】
上述の通り、表側ブラシローラユニット4及び表側クリーニングローラユニット5は、いずれも着脱可能であるため、ユニットごとに独立して高さ調節機構を設けることが可能である。そのため、当該クリーニング装置は、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41よる対象物Sへの最適な圧接条件と、表側クリーニングローラユニット5のクリーニングローラ51による対象物Sへの最適な圧接条件とが異なる場合においても、それぞれの圧接状態を最適化することができる。
【0087】
〔裏側対向ローラユニット〕
裏側対向ローラユニット6は、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41及び表側クリーニングローラユニット5のクリーニングローラ51と共に対象物Sの搬送経路を規定するものであり、対象物Sの裏側(搬送経路の下方)に配設されている。この裏側対向ローラユニット6は、裏側の第1の対向ローラである対向金属ローラ60及び裏側の第2の対向ローラである対向樹脂ローラ61からなる一対の対向ローラと補助ローラ62とを主に備えている。裏側対向ローラユニット6は、メンテナンス性の観点から、ホルダ1に着脱可能に装着されていることが好ましい。
【0088】
ここで、対象物Sに対するブラシローラ41のブラシ毛41Cの圧接量を正確に制御するためには、対象物Sをその下面で保持する第1の対向ローラの硬度が高い方が有利である。そのため、対向金属ローラ60が比較的硬質な金属ローラであることで、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41のブラシ毛41Cを対象物Sに適切に当接させてその表側表面S1から比較的大きな異物を効果的に除去することができる。一方、クリーニングローラ51は、微細な異物を効率よくその表面に吸着させるために、第2の対向ローラとの間で対象物Sに適切な圧力をかける必要があるが、圧力をかけすぎると異物を対象物Sに圧着することで回収を困難にするおそれがある。従って、第2の対向ローラとしては、例えば金属のような硬度の高いローラは適しておらず、クリーニングローラ51とほぼ同等の硬度を有する樹脂ローラであることが好ましい。そのため、対向樹脂ローラ61が弾性を有する樹脂ローラ(弾性ローラ)であることで、表側クリーニングローラユニット5のクリーニングローラ51との間で対象物Sに適切な圧力をかけて密着性を高めると共に、好適なニップ幅を確保できるため、クリーニングローラ51によって対象物Sの表側表面S1から微細な異物を効率的に除去することができる。
【0089】
(対向金属ローラ)
対向金属ローラ60は、対象物Sを介して表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41に対向し、かつ対象物Sに当接するようにブラシローラ41の直下に配設されている第1の裏側対向ローラである。この対向金属ローラ60は、対象物Sの搬送方向Dに対して順回り方向(
図2の時計回り方向)に回転駆動されている。すなわち、対向金属ローラ60は、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41に対して逆回り方向に回転駆動されている。対向金属ローラ60の詳細は、表側ブラシローラユニット4の回収ローラ42と同様である。但し、対向金属ローラ60は上記電圧印加機構により電気的に接地され、これにより、ブラシローラ41が帯電されている場合に異物の除去に好適な電界を生じさせることができる。
【0090】
対向金属ローラ60の表面には、対象物Sの裏側表面S2に傷を付けることを防止するために、ウレタン樹脂等がコーティングされていてもよい。対向金属ローラ60に表面処理を行った場合や被膜を形成した場合、対向金属ローラ60の電気抵抗は、108Ω以下であることが好ましい。対向金属ローラ42の電気抵抗が108Ω以下であることで、対向金属ローラ42を電気的に接地し易くなる。
【0091】
上述のとおり、ブラシローラ41は、対象物Sへのブラシの食い込み量が正確に制御されている必要がある。このためには、ブラシローラ41に対向する第1の裏側対向ローラが安定して対象物Sを支持する必要がある。従って、第1の裏側対向ローラとしては、硬度が高いものが好ましく、具体的には本実施形態のように対向金属ローラ60が好ましい。但し、第1の裏側対向ローラは必ずしも金属ローラである必要はなく、対象物Sへのブラシの食い込み量を制御できる範囲で硬度の高い導電性樹脂ローラなどを用いてもよい。
【0092】
(対向樹脂ローラ)
対向樹脂ローラ61は、対象物Sを介して表側クリーニングローラユニット5のクリーニングローラ51に対向し、対象物Sに当接するようにクリーニングローラ51の直下に配設されている。この対向樹脂ローラ61は、対象物Sの搬送方向Dに対して順回り方向(
図2の時計回り方向)に回転駆動されている。すなわち、対向樹脂ローラ61は、クリーニングローラ51に対して順回り方向に回転駆動されている。対向樹脂ローラ61の詳細は、表側クリーニングローラユニット5のクリーニングローラ51とほぼ同様である。但し、対向樹脂ローラ61の外層部の形成においては、微小突起の形成のために用いる微小突起の素となる粒子として、酸化チタン、チタン酸バリウム等を配合することが好ましい。上記粒子として酸化チタン、チタン酸バリウム等を用いることで、微小突起の密度が粗くなり、対象物Sを適切に搬送することができるようになる。また、対向樹脂ローラ61は上記電圧印加機構により電気的に接地されており、帯電されたクリーニングローラ51との間に異物の除去に好適な電界を生じさせることができる。
【0093】
上述のとおり、クリーニングローラ51は、微細な異物の回収効率を高めるために、対向樹脂ローラ61との間で対象物Sに適切な圧力をかけるように設定される。この圧力は、低すぎると、クリーニングローラ51と対向樹脂ローラ61とで、対象物Sを裏側ブラシユニット7のブラシローラ71に突入させるための推進力を十分与えることができなくなるおそれがあり、高すぎると異物が対象物Sに押し付けられて固着し、回収できなくなるおそれがある。そのため、この圧力を調整するために、弾性体などを用いて、対向樹脂ローラ61をクリーニングローラ51の方向に押圧できる構造としてもよい。
【0094】
(補助ローラ)
補助ローラ62は、上流側外部搬送機構2Aによりクリーニング機構3に搬入される対象物Sの移動を表側ブラシローラユニット4の搬送ローラ45と共にガイドするものである。この補助ローラ62の層構造等は、対向樹脂ローラ61と同様とすることができる。
【0095】
<裏側クリーニング機構>
裏側クリーニング機構3Bは、対象物Sの裏側表面S2の異物を除去するものである。この裏側クリーニング機構3Bは、概ね表側クリーニング機構3Aの上下を反転させた構成とされており、裏側ブラシローラユニット7、裏側クリーニングローラユニット8及び表側対向ローラユニット9を有している。
【0096】
〔裏側ブラシローラユニット〕
裏側ブラシローラユニット7は、ブラシローラ71により対象物Sの裏側表面S2の異物を除去するものであり、対象物Sの裏側(搬送経路の下方)において表側クリーニング機構3Aの裏側対向ローラユニット6よりも搬送方向下流側に隣接して配設されている。この裏側ブラシローラユニット7は、ブラシローラ71、回収ローラ72及びブレード73を主に備えており、その基本構成は上述の表側クリーニング機構3Aの表側ブラシローラユニット4と同様である。但し、裏側ブラシローラユニット7は、表側ブラシローラユニット4と比較し、搬送ローラ45及び異物回収部44に相当する部材が設けられていない点等で異なっている。なお、裏側ブラシローラユニット7に搬送ローラ45に相当する部材が設けられていない理由は、ブラシローラ71が搬送方向Dに対して逆回り方向に回転駆動されているものの、ブラシローラ71よりも搬送方向上流に配置されているクリーニングローラ51と対向樹脂ローラ61とが、ブラシローラ71の下方への進入のために適切な推進力を対象物Sに与えているからである。また、裏側ブラシローラユニット7は、異物回収部44に相当する部材が設けられていないが、その底部が開口していることによりユニット外に異物を排出することができる。裏側ブラシローラユニット7から排出された異物は、後述する裏側クリーニングローラユニット8から排出された異物と共に、ホルダ1の最下部に設けられた異物回収部13により回収される。裏側ブラシローラユニット7は、メンテナンス性の観点から、ホルダ1に着脱可能に装着されていることが好ましい。
【0097】
(ブラシローラ)
ブラシローラ71は、上記電圧印加機構により帯電した状態で対象物Sの裏側表面S2に当接し、対象物Sの搬送方向Dに対して逆回り方向(
図2の反時計回り方向)に回転駆動されることで、対象物Sの裏側表面S2におけるミリサイズの比較的大きな異物を除去する裏側の第1のブラシローラである。このようなブラシローラ71は、円柱状の芯棒71Aと、この芯棒71Aの外周面に接着層71Bを介して植設される複数のブラシ毛71Cとを有し(
図3参照)、その詳細は表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41の芯棒41A及びブラシ毛41Cと同様であるため重複説明は省略する。また、ブラシローラ71への印加電圧(芯棒71Aに印加される電圧)は、後述の裏側クリーニングローラユニット8のクリーニングローラ80への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにする。具体的なブラシローラ71への印加電圧の下限としては、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41と同様に、-800Vが好ましく、-600Vがより好ましい。一方、上記印加電圧の上限としては、-200Vが好ましく、-300Vがより好ましい。
【0098】
(回収ローラ)
回収ローラ72は、ブラシローラ71が対象物Sの裏側表面S2から除去した異物を回収する裏側の第1の回収ローラであり、ブラシローラ71よりも下方においてブラシローラ71と略平行かつブラシ毛71Cと当接して配設される。この回収ローラ72は、上記電圧印加機構により帯電した状態で外部駆動源からの動力によりブラシローラ71に対して逆回り方向(
図2の反時計回り方向)に回転駆動される。回収ローラ72の詳細は、上述の表側ブラシローラユニット4の回収ローラ42と同様とすることができるため、重複説明は省略する。
【0099】
回収ローラ72への印加電圧は、ブラシローラ71への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにする。回収ローラ72への印加電圧とブラシローラ71への印加電圧との差の絶対値の下限としては、200Vが好ましく、300Vがより好ましい。一方、上記差の絶対値の上限としては、600Vが好ましく、500Vがより好ましい。また、回収ローラ72への印加電圧の下限としては、-1,500Vが好ましく、-1,200Vがより好ましい。一方、上記印加電圧の上限としては、-400Vが好ましく、-600Vがより好ましい。回収ローラ72への印加電圧をブラシローラ71への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにすることで、回収ローラ72の外周面の電位がブラシローラ71のブラシ毛71Cの電位に対して同極性かつ絶対値が高くなるので、ブラシローラ71に付着した異物を回収ローラ72の外周面に吸着させることができる。特に、回収ローラ72とブラシローラ71との印加電圧の差を上記範囲とし、さらに回収ローラ72への印加電圧を上記範囲とすることで、ブラシローラ71に付着した異物を回収ローラ72の外周面に効果的に吸着させることができる。
【0100】
回収ローラ72の回転方向は、ブラシローラ71に対して順回り方向及び逆回り方向のいずれの方向であってもよく、後述するブレード73により外周面の異物を回収し易い回転方向で駆動するとよい。本実施形態では、回収ローラ72の回転方向は、
図2に示すようにブラシローラ71に対して逆回り方向(
図2の反時計回り方向)とされ、ブレード73による異物の回収効率が高められている。ブラシローラ71の回転速度に対する回収ローラ72の回転速度の倍率の下限としては、1.0倍が好ましい。一方、上記回転速度の倍率の上限としては、1.5倍が好ましい。これにより、ブラシローラ71から回収ローラ72に効果的に異物を移動させることができる。
【0101】
(ブレード)
ブレード73は、回収ローラ72から異物を掻き取る第3のブレードである。このブレード73及びこれを支持するブレード支持部73aの詳細は、上述の表側クリーニング機構3Aの表側ブラシローラユニット4のブレード43及びブレード支持部43aと同様である。
【0102】
〔裏側クリーニングローラユニット〕
裏側クリーニングローラユニット8は、クリーニングローラ80により対象物Sの裏側表面S2の微細な異物を除去するものであり、対象物Sの裏側(搬送経路の下方)において裏側ブラシローラユニット7よりも搬送方向下流側に隣接して配設されている。この裏側クリーニングローラユニット8は、クリーニングローラ80、ブラシローラ81、回収ローラ82、ブレード83、及び搬送ローラ85を主に備えており、その基本構成は上述の表側クリーニング機構3Aの表側クリーニングローラユニット5と同様である。但し、裏側ブラシローラユニット7は、表側ブラシローラユニット4と比較し、搬送ローラ85を有する点や、異物回収部55に相当する部材が設けられていない点等が異なる。裏側ブラシローラユニット7は、異物回収部55に相当する部材が設けられていない代わりに、その底部が開口し、ユニット外に異物を排出可能とされている。裏側クリーニングローラユニット8から排出された異物は、裏側ブラシローラユニット7から排出された異物と共に、ホルダ1の最下部に設けられた異物回収部13により回収される。裏側クリーニングローラユニット8は、メンテナンス性の観点から、ホルダ1に着脱可能に装着されていることが好ましい。
【0103】
(クリーニングローラ)
クリーニングローラ80は、対象物Sの裏側表面S2の微細な異物を除去する裏側クリーニングローラであり、対象物Sの裏側(搬送経路の下方)に配設されている。このクリーニングローラ80は、外周面が上記電圧印加機構により帯電した状態で搬送方向Dと略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で搬送方向Dに対して順回り方向(
図2の時計回り方向)に回転駆動される。クリーニングローラ80の詳細は、上述の表側クリーニングローラユニット5のクリーニングローラ51と同様とすることができるため、重複説明は省略する。
【0104】
クリーニングローラ80への印加電圧は、裏側ブラシローラユニット7のブラシローラ71への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が低くなるようにする。クリーニングローラ80への印加電圧の下限としては、例えば-400Vであり、-200Vが好ましい。一方、上記印加電圧としては、例えば0V未満であり、-50V以下が好ましい。このように、クリーニングローラ80への印加電圧を裏側ブラシローラユニット7のブラシローラ71への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が低くなるようにすることで、比較的微細な異物を対象物Sの裏側表面S2から除去することができる。特に、クリーニングローラ80への印加電圧を上記範囲とすることで、比較的微細な異物を対象物Sの裏側表面S2から効率的に除去することができる。
【0105】
(ブラシローラ)
ブラシローラ81は、クリーニングローラ80が対象物Sの裏側表面S2から除去した微細な異物を回収する裏側の第2のブラシローラであり、クリーニングローラ80に当接してクリーニングローラ80の下方に配設されている。このブラシローラ81は、上記電圧印加機構により帯電した状態で搬送方向Dと略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸でクリーニングローラ80に対して逆回り方向(
図2の時計回り方向)に回転駆動される。このブラシローラ81は、上述の表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41と同様に、芯棒81Aに接着層81Bを介して複数のブラシ毛81Cを植設したものであり、その詳細は表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41と同様である。
【0106】
ブラシローラ81への印加電圧(芯棒81Aに印加される電圧)は、クリーニングローラ80への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにする。具体的なブラシローラ81への印加電圧の下限としては、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41と同様に、-800Vが好ましく、-600Vがより好ましい。一方、上記印加電圧の上限としては、-200Vが好ましく、-300Vがより好ましい。
【0107】
(回収ローラ)
回収ローラ82は、ブラシローラ81がクリーニングローラ80から回収した微細な異物を回収する裏側の第2の回収ローラであり、ブラシローラ81の下方においてブラシローラ81と略平行かつブラシ毛81Cと当接して配設される。この回収ローラ82は、上記電圧印加機構により帯電した状態で外部駆動源からの動力によりブラシローラ81に対して逆回り方向(
図2の時計回り方向)に回転駆動される。回収ローラ82の詳細は、上述の表側ブラシローラユニット4の回収ローラ42と同様とすることができるため、重複説明は省略する。
【0108】
回収ローラ82への印加電圧は、ブラシローラ81への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにする。回収ローラ82への印加電圧とブラシローラ81への印加電圧の差の絶対値の下限としては、200Vが好ましく、300Vがより好ましい。一方、上記差の絶対値の上限としては、600Vが好ましく、500Vがより好ましい。また、回収ローラ82への印加電圧の下限としては、-1,500Vが好ましく、-1,200Vがより好ましい。一方、上記印加電圧の上限としては、-400Vが好ましく、-600Vがより好ましい。回収ローラ82への印加電圧をブラシローラ81への印加電圧に対して同極性かつ絶対値が高くなるようにすることで、回収ローラ82の外周面の電位がブラシローラ81のブラシ毛81Cの電位よりも同極性かつ絶対値が高くなるので、ブラシローラ81に付着した異物を回収ローラ82の外周面に吸着させることができる。特に、回収ローラ82とブラシローラ81との印加電圧の差を上記範囲とし、さらに回収ローラ82への印加電圧を上記範囲とすることで、ブラシローラ81に付着した異物を回収ローラ82の外周面に効果的に吸着させることができる。
【0109】
回収ローラ82の回転方向は、ブラシローラ81に対して順回り方向及び逆回り方向のいずれの方向であってもよく、後述するブレード83により外周面から異物を回収し易い回転方向で駆動するとよい。本実施形態では、回収ローラ82の回転方向は、
図2に示すようにブラシローラ81に対して逆回り方向(
図2の時計回り方向)とされ、ブレード83による異物の回収効率が高められている。ブラシローラ81の回転速度に対する回収ローラ82の回転速度の倍率の下限としては、1.0倍が好ましい。一方、上記回転速度の倍率の上限としては、1.5倍が好ましい。これにより、ブラシローラ81から回収ローラ82に効果的に異物を移動させることができる。
【0110】
(ブレード)
ブレード83は、回収ローラ81から異物を掻き取る第4のブレードである。このブレード83及びこれを支持するブレード支持部83aの詳細は、上述の表側クリーニング機構3Aの表側ブラシローラユニット4のブレード43及びブレード支持部43aと同様である。
【0111】
(搬送ローラ)
搬送ローラ85は、対象物Sの搬送をガイドするものであり、クリーニングローラ800よりも搬送方向下流側に配設されている。この搬送ローラ85としては、対向樹脂ローラ61と同様のものが好適に用いられる。
【0112】
〔表側対向ローラユニット〕
表側対向ローラユニット9は、裏側ブラシローラユニット7のブラシローラ71及び裏側クリーニングローラユニット8のクリーニングローラ80と共に対象物Sの搬送経路を規定するものであり、対象物Sの表側(搬送経路の上方)に配設されている。この表側対向ローラユニット9は、筐体90と、第1の表側対向ローラである対向金属ローラ91と、第2の表側対向ローラである対向樹脂ローラ92とを主に備えており、ホルダ1に着脱可能に配設されている。当該クリーニング装置は、工場等の地面の基台に対して固定設置される装置本体に、表側対向ローラユニット9が着脱可能に配設される。このように表側対向ローラユニット9がホルダ1に着脱可能に配設されることで、表側対向ローラユニット9をホルダ1から容易に取り外し、裏側ブラシローラユニット7のブラシローラ71及び裏側クリーニングローラユニット8のクリーニングローラ80を露出させることができる。そのため、ブラシローラ71やクリーニングローラ80の交換や洗浄を容易に行えることから、メンテナンス性に優れる。加えて、筐体90に収容される対向金属ローラ91及び対向樹脂ローラ92に関しても、ホルダ1に組み込み固定する場合に比べて、メンテナンスが容易となる。
【0113】
(筐体)
筐体90は、対向金属ローラ91及び対向樹脂ローラ92を収容してユニット化し、ホルダ1に着脱可能とするものである。この筐体90の天板には、搬送方向Dに垂直な水平方向に離間して一対の把持部90Aが設けられている。一対の把持部90Aは、表側対向ローラユニット9の着脱時に利用されるものである。筐体90は、底板に開口部90Bが設けられており、この開口部90Bから対向金属ローラ91や対向樹脂ローラ92の一部が突出している。なお、筐体90を構成する材料には、特に制限はなく、例えばステンレス等の金属が好適に用いられる。
【0114】
(対向金属ローラ)
対向金属ローラ91は、対象物Sを介して裏側ブラシローラユニット7のブラシローラ71に対向し、かつ対象物Sに当接するようにブラシローラ71の直上に配設されている。この対向金属ローラ91は、回転駆動されるものであり、裏側ブラシローラユニット7のブラシローラ71に対して逆回り方向(
図2の反時計回り方向)に回転する。対向金属ローラ91の詳細は、表側ブラシローラユニット4の回収ローラ42と同様である。但し、対向金属ローラ91は上記電圧印加機構により電気的に接地されており、ブラシローラ71との間に異物の除去に好適な電界を生じさせることができる。
【0115】
対向金属ローラ91が比較的硬質な金属ローラであることで、裏側ブラシローラユニット7のブラシローラ71のブラシ毛71Cを対象物Sに適切に当接させることができるため、ブラシローラ71によって対象物Sの裏側表面S2から比較的大きな異物を効果的に除去することができる。但し、表側対向ローラは必ずしも金属ローラである必要はなく、導電性樹脂ローラなどを用いてもよい。
【0116】
(対向樹脂ローラ)
対向樹脂ローラ92は、対象物Sを介して裏側クリーニングローラユニット8のクリーニングローラ80に対向し、かつ対象物Sに当接するようにクリーニングローラ80の直上に配設されている。この対向樹脂ローラ92は、回転駆動されるものであり、クリーニングローラ80に対して順回り方向(
図2の反時計回り方向)に回転する。対向樹脂ローラ92の詳細は、表側対向ローラユニット6の対向樹脂ローラ61と同様である。但し、対向樹脂ローラ92は上記電圧印加機構により電気的に接地されており、クリーニングローラ80との間に異物の除去に好適な電界を生じさせることができる。
【0117】
対向樹脂ローラ92が弾性を有する樹脂ローラであることで、裏側クリーニングローラユニット8のクリーニングローラ80との間で好適なニップ幅を確保できるため、クリーニングローラ80と対象物Sとの密着性を高めることができ、クリーニングローラ80によって対象物Sの裏側表面S2から微細な異物を効果的に除去することができる。なお、裏側クリーニング機構3Bの裏側ブラシローラユニット7、及び裏側クリーニングローラユニット8に、それぞれの高さを調節する高さ調節機構が備えられているのも、表側クリーニング機構3Aと同様である。
【0118】
<帯電回路>
上述のように、回収ローラ42,53,72,82と、クリーニングローラ51,80と、ブラシローラ52,81の外周面とは帯電させられ、ブラシローラ41,71も帯電させることが好ましい。また、補助ローラ62、対向金属ローラ60,91、対向樹脂ローラ61,92は電気的に接地させることが好ましい。これらのローラを帯電又は電気的に接地(0Vに固定することも含む)させるための帯電回路は、既知の回路を用いることができる。この帯電回路は、電位差が異なる2つのローラが、長尺状の導電性異物などを介して短絡した場合の安全対策として、例えば500μAの電流を閾値とし、閾値以上の電流が流れた場合に回路を遮断する機構(例えばヒューズ等)を備えている。
【0119】
[ユニット及びホルダの端子]
以下、各ユニットを外部電源やグラウンド等と電気的に接続するために用いられるユニット及びホルダ1の端子の一例について説明する。
図11には、各ユニットの搬送幅方向の一方又は両方の端部に配設されるユニット側端子110を示す。
図12には、ホルダ1の内面に配設されるホルダ側端子120を示す。なお、当該クリーニング装置は、全ユニットがこの接続構造によって外部電源等と電気的に接続されることが好ましいが、一部又は全部のユニットが従来公知の接続構造によって外部電源等と電気的に接続されていてもよい。
【0120】
図11のユニット側端子110は、搬送方向Dと平行な軸Zに沿って平行に配設される2枚のユニット側金属板111と、平面視において各ユニット側金属板111をそれぞれ取り囲むように配設される2つのカバー112とを主に備える。ユニット側金属板111は、各ユニットが有するローラに図示しない配線を介して電気的に接続されている。なお、
図11のユニット側端子110が有するユニット側金属板111の枚数は2枚であるが、ユニット側金属板111の枚数は各ユニットのローラ数等に応じて適宜変更可能である。また、カバー112の形状についても、ユニット側金属板111の枚数等に応じて適宜変更可能である。
【0121】
図12のホルダ側端子120は、絶縁部材により形成される土台部121と、この土台部121の上面に配設され、上述のユニット側金属板111を上方から挿入でき、かつ挿入されたユニット側金属板111を両面から把持できるように折り曲げられた2つのホルダ側金属板122と、絶縁部材により形成され、各ホルダ側金属板122を取り囲むように配設される囲繞部123とをそれぞれ有する。ホルダ側金属板122は、図示しない配線等を介して外部電源等に電気的に接続されている。2つの囲繞部123は、その外面がユニット側端子110のカバー112の内面と当接できる形状とされている。なお、
図12のホルダ側端子120が有するホルダ側金属板122の枚数や囲繞部123の形状は、ユニット側端子110におけるユニット側金属板111の枚数やカバー112の形状等に応じて適宜変更可能である。
【0122】
各ユニットをホルダ1に装着することで、
図11のユニット側端子110が
図12のホルダ側端子120に電気的に接続される。具体的には、ユニット側端子110の各ユニット側金属板111が各ホルダ側端子120のホルダ側金属板122に挿入されることで両金属板が電気的に接続されると共に、ユニット側端子110のカバー112が囲繞部123に覆い被さるようにしてカバー112及び囲繞部123が嵌合する。このように、カバー112及び囲繞部123は、ユニット側端子110及びホルダ側端子120を接続する際のガイドとなるため、両端子を容易に接続させることができ、かつ接続された両端子を強固に固定できる。そのため、当該クリーニング装置に上述のユニット側端子110及びホルダ側端子120を用いることで、各ユニットの装着と同時に電気的にも容易に接続することができるため利便性を向上でき、かつ強固な接続構造を形成できるため稼働時に振動等が生じても各ローラに印加する電圧を一定に保ち易い。
【0123】
[ローラへの電圧印加機構]
各ユニットには、通常各ローラの一方の端部付近に電圧印加機構(電気的に接地させる機構を含む)が設けられると共に、上述のユニット側端子110及び上記電圧印加機構の間が配線により電気的に接続される。外部電源等から各ユニットに供給される電圧は、上述のユニット側端子110、上記配線及び上記電圧印加機構を介して各ローラに供給される。この場合、各ローラを駆動させるための歯車等の駆動機構は、絶縁材料により形成される部材を用いた上で、各ローラの他方の端部付近に設けるとよい。
図13には、上記電圧印加機構の一例として、ローラ130の一方の端面に設けられた円錐状の窪み130aと、半球状の先端部を有し、この先端部がローラ130の円錐状の窪み130aの内周面に当接している筐体側電極131と、この筐体側電極131に連結され、筐体側電極131をローラ130側に与圧する金属製の板バネ132とを備える電圧印加機構を示す。ローラ130の中心軸及び円錐状の窪みの頂点と、筐体側電極131の先端部の半球の中心とは、搬送幅方向視において略一致する。なお、ローラ130及び筐体側電極131の間は、導電性グリースによるグリース潤滑下としてもよい。
【0124】
この電圧印加機構では、ユニット側端子110及び板バネ132の間が図示しない配線により電気的に接続され、上記配線、板バネ132、筐体側電極131及び窪み130aを介してローラ130に電圧が印加される。この電圧印加機構は、ローラ130の中心軸付近、すなわちローラ130における比較的周速度の小さい部位に筐体側電極131を当接させることで、ローラ130及び筐体側電極131の摩耗を抑制できる。また、ローラ130に設けた円錐状の窪みに筐体側電極131の半球状の先端部を接触させ、かつ筐体側電極131を板バネ132によりローラ130側に与圧することにより、ローラ130が振動した場合においても電気的接触を維持し易くなる。さらに、筐体側電極131をローラ130の端面に当接させ、板バネ132で筐体側電極131を搬送幅方向に与圧することで、ローラ130が上下に振動しても板バネ132のたわみが抑制されるため、安定して与圧し易くなる。さらに、円錐状の窪み130aの内周面及び筐体側電極131の半球状の先端部を当接させることで、窪み130a及び筐体側電極101の先端部により囲まれる空間が形成されるため、この空間にグリースを封入してその飛散を抑制することができる。但し、電圧印加機構の周辺には、グリースの飛散をより抑制するため、必要に応じてカバー等を設けてもよい。
【0125】
但し、各ユニットにおける電圧印加機構は、上述の
図13に示すものに限定されず、例えば筐体に導電性ブラシ、導電性軸受等の導電性摺動部材を設け、この導電性摺動部材を各ローラに接触させることで電圧を印加させる方法等が挙げられる。
【0126】
[クリーニング方法]
図1及び
図2のクリーニング装置を用いて対象物Sから異物を除去するクリーニング方法について説明する。当該クリーニング方法は、搬送される対象物Sに、搬送方向Dと略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で搬送方向Dと逆回り方向に回転駆動されるブラシローラ41を当接させる工程と、ブラシローラ41と当接した後の対象物Sに、搬送方向Dと略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で回転するクリーニングローラ51を当接させる工程とを有する。さらに、当該クリーニング方法は、クリーニングローラ51に当接させた後の対象物Sに、搬送方向Dと略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で搬送方向Dと逆回り方向に回転駆動されるブラシローラ71を当接させる工程と、ブラシローラ71と当接した後の対象物Sに、搬送方向と略垂直かつ搬送面と略平行な回転軸で回転するクリーニングローラ80を接触させる工程を有する。当該クリーニング方法では、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41に対して、表側クリーニングローラユニット5のクリーニングローラ51と同極性かつ絶対値が高い電圧を印加する。また、裏側ブラシローラユニット7のブラシローラ71に対しも同様に、裏側クリーニングローラユニット8のクリーニングローラ80と同極性かつ絶対値が高い電圧を印加する。このように、ブラシローラ41,71に対しクリーニングローラ51,80よりも同極性かつ絶対値の高い電圧を印加することで、ブラシローラ41,71によりミリレベルの比較的大きな異物を除去できると共にクリーニングローラ51,80により微細な異物を除去できる。このクリーニング方法における各ローラへの印加電圧、回転等の各種条件については、上述の当該クリーニング装置と同様とできるため重複した説明を省略する。
【0127】
〔その他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。特に、
図1及び
図2は、当該クリーニング装置の一例を示したものに過ぎず、例えば各ローラの層構造は
図2と異なっていてもよい。
【0128】
当該クリーニング装置の各ローラのうち、第1のブラシローラ、クリーニングローラ及び一対の対向ローラ以外のローラは、従動ローラであってもよい。このように、当該クリーニング装置のローラの一部を従動ローラとしても、この従動ローラは、回転駆動される他のローラや搬送物と当接しているため従動してその機能を発揮することができる。また、第1のブラシローラの回転方向は、対象物の搬送方向に対し逆回り方向が好ましいが、順回り方向であってもよい。さらに、クリーニングローラの回転方向は、対象物の搬送方向に対し順回り方向が好ましい。
【0129】
当該クリーニング装置は、第1のブラシローラと、クリーニングローラと、一対の対向ローラと電圧印加機構とを少なくとも1つずつ備えればよく、他の構成は任意である。また、第1のブラシローラ、クリーニングローラ及び一対の対向ローラは、ユニット化されておらず、当該クリーニング装置のホルダに直接固定されていてもよい。
【0130】
また、上記実施形態において、裏側クリーニングローラユニット及び裏側ブラシローラユニットの底部に開口を設けることに代えて、裏側クリーニングローラユニット及び裏側ブラシローラユニットにそれぞれ異物回収部を設けてもよい。
【0131】
さらに、本実施形態の一例では、一対の対向ローラをいずれも電気的に接地させたが、他の構成を採用してもよい。例えば、一対の対向ローラをいずれも0Vに固定しても良く、異物の帯電状況によっては、所定のプラス電位に固定することもできる。満たすべき条件としては、帯電されたブラシローラ41及び帯電されたクリーニングローラ51に対して基準となる固定電位を一対の対向ローラに印加するということである。従って、必要に応じて、一対の対向ローラのそれぞれに異なる固定電位を印加することもできる。固定電位と帯電されたクリーニングローラ51との電圧差が小さすぎると異物の除去のための十分な電界を生じさせることができないため、この電位差の下限としては、50Vが好ましい。
【0132】
なお、異物が極端にマイナスに帯電している場合などは、ブラシローラ41,71、クリーニングローラ51,80をプラス電位とすることも本発明の思想の範囲内であることは言うまでもない。この場合においても、一対の対向ローラについては、電気的に接地させてもよく、又は基準となる固定電位を印加してもよい。この固定電位としては、0Vでもよく、異物の帯電状況によっては所定のマイナス電位又はプラス電位でもよい。
【実施例0133】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0134】
<ブラシローラ(ブラシ毛)の最適化>
摩擦帯電性の観点から異物除去に適したブラシ毛の材質を選定することを目的とし、ワーク(対象物)及びブラシ毛の帯電性を評価し帯電列を決定した。
【0135】
ブラシ毛としては、下記表1に示す特性を有する材質のものを用いた。下記表1中、「-」は、該当する特性を測定していないことを示す。
【0136】
【0137】
対象物及び異物としては、狙い市場の対象物と、その市場で問題となっている異物とを用いた。具体的には、対象物としてはアクリル板、ガラス板、グリーンシート及びPETフィルムを用い、異物としてはアクリル削りカス、銅粉、セラミックスカス(セラカス)、ガラス削りカス、ポリエステル粒子及び繊維を用いた。
【0138】
摩擦帯電性は、対象物及びブラシ毛については、対象物同士、対象物及びブラシ毛、又はブラシ毛同士をそれぞれ摩擦帯電させたときの極性を表面電位計で測定することで評価した。また、異物及び対象物の帯電関係は、異物を対象物で挟み込んで摩擦帯電させた後、異物を吸引してデジタルエレクトロメーターで帯電量を測定することで評価した。これらの評価結果は、
図14に帯電列として示す。
【0139】
一般的に、帯電列において、対象物及び異物に対して逆極性のなるべく離れた場所に位置付けられる材質を用いたブラシ毛ほど異物の吸着力が高くなる。そのため、
図14の結果から、導電性ポリエステルである材質1及び材質4が異物除去に適していると推察される。
【0140】
次に、最も異物除去に適していると推察される導電性ポリエステルに関し、材質1及び材質4を用いた異物の除去性能の評価を実施した。この評価では、
図1及び
図2に示すクリーニング装置を用いて対象物Sの異物の除去を行い、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41が有するブラシ毛41Cの材質を材質1又は材質4とした場合の異物回収部44への異物回収率を算出した。対象物Sとしては、セラミックスカスを付着させたグリーンシートを用いた。その結果、異物の回収率は、材質1を用いた場合は86.6%であったのに対し、材質4を用いた場合は26.7%であった。そのため、ブラシ毛としては、繊度が比較的大きい繊維、すなわち比較的太い繊維である材質1が好ましいと判断される。なお、材質4を用いた場合の回収率が、摩擦帯電性が同等である材質1を用いた場合の回収率よりも低くなった原因は、以下の通りと推察される。すなわち、材質4は、繊度が比較的小さい繊維、すなわち比較的細い繊維であるため、ブラシ毛41Cの剛性が不足し、対象物Sに付着した比較的大きなセラミックスカスを動かすことができなかったためであると考えられる。
【0141】
<ブラシローラへの印加電圧の最適化>
ブラシローラへの印加電圧の最適化は、
図15(A)に示すようにゴミを付着させた対象物に、所定の電圧を印加したブラシローラを当接させ、この所定電圧を印加している状態を10秒間保持した。次に、
図15(B)に示すように対象物からブラシローラを引き離し、ゴミの除去により形成された帯状領域の幅をゴミの吸着幅(電界作用幅)として評価した。
【0142】
ブラシローラのブラシ毛としては、先の評価で好適な結果が得られた材質1の導電性ポリエステルを用いた。対象物としては、厚みが50μmであるPETフィルムを用いた。異物としては、粒径が50μm~150μmのポリエステル粒子を用いた。ブラシローラに印加する所定電圧は、0V、-100V、-400V、-800V又は-1,600Vとした。ゴミの吸着幅の評価結果は、
図16に示す。
【0143】
図16から分かるように、ブラシローラへの印加電圧が-400Vのときに最もゴミ吸着幅が大きいこと、つまり吸着能が高いことが確認された。また、
図16に示す結果から、ブラシローラへの印加電圧の下限としては、-800Vが好ましく、-600Vがより好ましいといえる。一方、上記印加電圧の上限としては、-200Vが好ましく、-300Vがより好ましいといえる。
【0144】
<ブラシの周速度及び圧接量の検討>
図1及び
図2に示すクリーニング装置を用い、表側ブラシローラユニット4のブラシローラ41の周速度と対象物への圧接量とを変量させながら対象物の異物除去を行った。これにより、ブラシローラの周速度、及びブラシローラの対象物への圧接量が異物除去に与える影響について検討した。
【0145】
ブラシローラの周速度による影響は、対象物の搬送速度Wに対するブラシローラの周速度Bの比率(B/W)を変量し、セラミックスカスの除去性との関係として評価した。その結果、B/Wを50%(例えば対象物の搬送速度12m/minに対してブラシローラの周速度6m/min)のとき、セラミックスカスをワークの入口側にはじき飛ばした。一方、ブラシローラの周速度を3m/minに変更してB/Wを25%にすると、上述のはじき飛ばしが抑えられた。一般的に、大きい異物より小さい異物の方がはじき飛ばされやすいため、B/Wは25%以下であることが好ましいと判断される。
【0146】
対象物へのブラシローラの圧接量の影響は、圧接量を0.3mm又は0.6mmに変量しながら、セラミックスカスの除去を実施することで評価した。その結果、圧接量を0.3mmとすると、セラミックスカスの一部がブラシローラをすり抜けて対象物上に残存した。一方、圧接量を0.6mmとすると、セラミックスカスを除去できた。ここで、圧接量は、大きくするほど異物の除去性が向上するが、あまり大きくし過ぎると対象物の種類や状態によっては擦り傷が発生する。但し、圧接量の上限は対象物毎に異なる。そのため、高さ調節機構を用いてブラシローラユニットの高さを調節することで、対象物の厚さ、種類、状態等が異なる場合においてもブラシローラの圧接量を最適化することができる。
【0147】
<クリーニング性能の確認>
当該クリーニング装置のクリーニング性能を評価した。具体的には、種々の異物と対象物との組み合わせについて、
図1及び
図2に示すクリーニング装置を用い、各ローラの周速度及び印加電圧を表2の通りとし、クリーニング前後の対象物表面を撮像することで評価した。
【0148】
具体的な異物と対象物との組み合わせは、セラミックパンチカス及びグリーンシート、皮脂及び偏光板、綿繊維及びアクリル板、ポリエステル繊維及びグリーンシート、又はポリエステル粒子及びPETフィルムとした。また、対象物の搬送速度は10m/minに設定した。各組み合わせの撮像結果については、
図17~
図19の(A)~(F)に示す。
図17~19の(A)~(F)は、いずれも左図がクリーニグ前、右図がクリーニング後の撮像結果である。
図17の(A)の組み合わせは、対象物Saがグリーンシート、異物Xaがセラミックパンチカス(φ4mm、厚さ120μm)である。
図17の(B)の組み合わせは、対象物Sbがグリーンシート、異物Xbが様々なサイズ・形状のセラミックカス(長さ0.1~3mm、厚さ170μm)である。
図18の(C)の組み合わせは、対象物Scが偏向板、異物Xcが皮脂である。
図18の(D)の組み合わせは、対象物Sdがアクリル板、異物Xdが綿繊維である。
図19の(E)の組み合わせは、対象物Seがグリーンシート、異物Xeがポリエステル繊維(長さ2~15mm)である。
図19の(F)の組み合わせは、対象物SfがPETフィルム、異物Xfがポリエステル粒子(粒径50~150μm)である。
【0149】
【0150】
図17~
図19に示す通り、いずれの組み合わせについても、対象物から異物が好適に除去されていることが確認できた。