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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034007
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】薬剤注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20220222BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
A61M5/34 540
A61M5/32 500
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021207655
(22)【出願日】2021-12-22
(62)【分割の表示】P 2018527147の分割
【原出願日】2016-11-21
(31)【優先権主張番号】15196690.0
(32)【優先日】2015-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者が注射の開始を望むような時間まで針を薬剤から分離できるような注射デバイスを提供する。
【解決手段】薬剤注射デバイスであって、第1の貫通可能バリアによって封止された薬剤カートリッジ19を受けるように構成された本体と;ボタンキャップ51およびキャリアユニット54を含むキャップアセンブリであって、ボタンキャップはキャリアユニットに対して回転可能であり、ボタンキャップは、ボタンが回されてキャリアユニットに対して位置合わせされない限り軸方向に近位方向に変位することが防止される、キャップアセンブリと、キャリアユニットに解放可能に連結されたニードルキャリアであって、近位端および遠位端を有する針17を支持し、また押しボタンに解放可能に連結されているニードルキャリアとを含む。キャリアユニットに対してボタンキャップが回転位置合わせされた後に、ボタンキャップは軸方向に近位方向に変位可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤注射デバイスであって:
第1の貫通可能バリアによって封止された薬剤カートリッジを受けるように構成された本体と;
ボタンキャップおよびキャリアユニットを含むキャップアセンブリであって、ボタンキャップは、キャリアユニットに覆って嵌まるように寸法設定され、ボタンキャップは、キャリアユニットに対して回転可能であり、ボタンキャップは、ボタンが回されてキャリアユニットに対して位置合わせされない限り軸方向に近位方向に変位することが防止される、キャップアセンブリと、
該キャップアセンブリに解放可能に連結されたニードルキャリアであって、近位端および遠位端を有する針を支持するニードルキャリアとを含み、
ここで、キャリアユニットに対してボタンキャップが回転位置合わせされた後に、ボタンキャップは軸方向に近位方向に変位可能であり、
ボタンキャップが軸方向に近位方向に変位することにより、ニードルキャリアは軸方向に近位方向に変位し、
ボタンキャップが軸方向に近位方向に変位した後に、キャップアセンブリのボタンキャップおよびキャリアユニットは本体から遠位方向に分離可能になる、前記薬剤注射デバイス。
【請求項2】
薬剤カートリッジを保持するための薬剤カートリッジホルダをさらに含み、この薬剤カートリッジホルダは、ニードルキャリアが軸方向に近位方向に変位した後にニードルキャリアを薬剤カートリッジに固定するための固定部材を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
ボタンキャップおよびキャリアユニットはそれぞれその上に、キャリアユニットに対してボタンキャップが回転位置合わせされたという使用者インジケーションを提供するための位置合わせマークを有する、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
キャリアユニットは、起動したときにキャップアセンブリをデバイスの本体から解放するように配置された旋回可能ラッチを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
ボタンキャップは、針の遠位端を受けるための穴を含み、キャリアユニットは、ボタンキャップの軸方向変位の前に針の近位端を受けるための穴を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
針の近位端を受けるための穴は、その近位端において第2の貫通可能バリアによって封止される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
ボタンキャップおよびキャリアユニットはロッキング配置を含み、それにより、キャリアユニットに対するボタンキャップの軸方向変位の後に、ボタンキャップおよびキャリアユニットが互いに固定される、請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
ロッキング配置は、ボタンキャップおよびキャリアユニットのそれぞれの面に位置する少なくとも1つの突出部材と、少なくとも1つのそれぞれの協働凹部とを含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
第1の貫通可能バリアによって封止された薬剤カートリッジを含み、ニードルキャリアの近位方向の軸方向運動により針の近位端が第1の貫通可能バリアを穿孔する、請求項1
~8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
薬剤カートリッジは薬剤を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
デバイスは自動注射デバイスである、請求項1~10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
キャップアセンブリを有する薬剤注射デバイスを操作する方法であって、
キャリアユニットに嵌まるように寸法設定されているボタンキャップを回して、キャリアユニットと位置合わせすること、
ボタンキャップをキャリアユニットに対して近位軸方向に変位させ、それによって、針をカートリッジセプタムに貫通させること;
近位軸方向と反対の遠位軸方向にキャップアセンブリを引っ張ることによって、キャップアセンブリのボタンキャップおよびキャリアユニットを取り外すことを含む、前記方法。
【請求項13】
旋回可能ラッチを起動してキャップアセンブリをデバイスの本体から解放することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ボタンキャップを回してキャリアユニットと位置合わせすることは、ボタンキャップおよびキャリアユニットの上に設けられたそれぞれの位置合わせマークを整列することを含む、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤注射デバイスはさまざまな形態をとることができる。1つの形態ではシリンジを使用し、通常ではガラスで形成される中空シリンダに薬剤が収納される。薬剤は、シリンダの中で可動のプランジャと、シリンジの遠位端に流体連結された針とによって環境から封止される。針は、薬剤を滅菌状態のもとで保持するために、キャップを被せたままにしておかなければならない。
【0003】
注射デバイスの別の形態では、シリンジの代わりにカートリッジを使用し、このカートリッジには、シリンジの針の代わりの遠位封止がある。通常は、注射の前に患者が両頭針をカートリッジに連結し、それによって、カートリッジの封止が両頭針の近位先端部で穿孔される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カートリッジは、シリンジと比べて取り扱いおよび収納を有利にすることができるが、欠点がないわけではない。たとえば、針をカートリッジに取り付けるには追加の段階が必要である。この段階は、器用さが限られていたり、協調が不十分であったり、または手の感覚をある程度失っている患者にとって問題になり得る。このような短所があっても、特定の状況においては、患者が注射の開始を望むような時間まで針を薬剤から分離したままにしておく注射デバイスが得られることが望ましい。本明細書に記載の注射デバイスは、従来のデバイスに付随する1つまたはそれ以上の問題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の実施形態は薬剤注射デバイスを提供し、このデバイスは、第1の貫通可能バリアによって封止された薬剤カートリッジを受けるように構成された本体と;ボタンキャップおよびキャリアユニットを含むキャップアセンブリであって、ボタンキャップは、キャリアユニットに嵌まるように寸法設定され、ボタンキャップは、キャリアユニットに対して回転可能であり、ボタンキャップは、ボタンが回されてキャリアユニットに対して位置合わせされない限り軸方向に近位方向に変位することが防止される、キャップアセンブリと、キャップアセンブリに解放可能に連結されたニードルキャリアであって、近位端および遠位端を有する針を支持するニードルキャリアとを含み、キャリアユニットに対してボタンキャップが回転位置合わせされた後に、ボタンキャップは軸方向に近位方向に変位可能であり、ボタンキャップが軸方向に近位方向に変位することにより、ニードルキャリアは軸方向に近位方向に変位し、ボタンキャップが軸方向に近位方向に変位した後に、キャップアセンブリのボタンキャップおよびキャリアユニットは本体から遠位方向に分離可能になる。
【0006】
デバイスは、薬剤カートリッジを保持するための薬剤カートリッジホルダをさらに含むことができ、この薬剤カートリッジホルダは、ニードルキャリアが軸方向に近位方向に変位した後にニードルキャリアを薬剤カートリッジに固定するための固定部材を有する。
【0007】
ボタンキャップおよびキャリアユニットはそれぞれその上に、キャリアユニットに対してボタンキャップが回転位置合わせされたという使用者インジケーションを提供するための位置合わせマークを有し得る。
【0008】
キャリアユニットは、起動したときにキャップアセンブリをデバイスの本体から解放するように配置された旋回可能ラッチを含み得る。
【0009】
ボタンキャップは、針の遠位端を受けるための穴を含み、キャリアユニットは、ボタンキャップの軸方向変位の前に針の近位端を受けるための穴を含む。
【0010】
針の近位端を受けるための穴は、その近位端において第2の貫通可能バリアによって封止される。
【0011】
ボタンキャップおよびキャリアユニットはロッキング配置を含むことができ、それにより、キャリアユニットに対するボタンキャップの軸方向変位の後に、ボタンキャップおよびキャリアユニットが互いに固定される。
【0012】
ロッキング配置は、ボタンキャップおよびキャリアユニットのそれぞれの面に位置する少なくとも1つの突出部材と、少なくとも1つのそれぞれの協働凹部とを含み得る。
【0013】
デバイスは、第1の貫通可能バリアによって封止された薬剤カートリッジを含むことができ、ニードルキャリアの近位方向の軸方向運動により、針の近位端が第1の貫通可能バリアを穿孔する。
【0014】
薬剤カートリッジは薬剤を含み得る。
【0015】
デバイスは自動注射デバイスであり得る。
【0016】
第2の実施形態は、キャップアセンブリを有する薬剤注射デバイスを操作する方法を提供し、この方法は、キャリアユニットに嵌まるように寸法設定されているボタンキャップを回して、キャリアユニットと位置合わせすること、ボタンキャップをキャリアユニットに対し近位軸方向に変位させ、それによって、針をカートリッジセプタムに貫通させること;近位軸方向と反対の遠位軸方向にキャップアセンブリを引っ張ることによって、キャップアセンブリのボタンキャップおよびキャリアユニットを取り外すことを含む。
【0017】
この方法は、旋回可能ラッチを起動してキャップアセンブリをデバイスの本体から解放することをさらに含む。
【0018】
ボタンキャップを回してキャリアユニットと位置合わせすることは、ボタンキャップおよびキャリアユニットの上に設けられたそれぞれの位置合わせマークを整列することを含み得る。
【0019】
本発明の例示的な実施形態について添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態による自動注射デバイスの側面図である。
図2A】自動注射デバイスの異なる使用段階における斜視図である。
図2B】自動注射デバイスの異なる使用段階における斜視図である。
図2C】自動注射デバイスの異なる使用段階における斜視図である。
図2D】自動注射デバイスの異なる使用段階における斜視図である。
図3図2Aに示された段階における自動注射デバイスの遠位端の要素の断面図である。
図4図2Aおよび図2Bに示された段階中の自動注射デバイスの遠位端の部分の分解断面図である。
図5図2Cに示された段階における自動注射デバイスの遠位端の要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の実施形態は、患者または介護者が注射デバイスの針を、注射用の薬剤を含むカートリッジに挿入するための機構を提供する。この機構は、使用者が注射の開始を望むような時間まで薬剤カートリッジが封止されたままであることを可能にする。針を薬剤カートリッジに挿入するための機構を自動化することによりまた、使用者が注射の前に針を手で扱うことが減る。実際、以下に記載のいくつかの実施形態では、使用者は、針が薬剤カートリッジに挿入されるときに針に触れない。
【0022】
本開示の実施形態では、針は最初にデバイスのキャップに連結され、収納中は(すなわち、製造後および使用前)封止薬剤カートリッジから分離されている。キャップを押すことによって使用者は、針が薬剤カートリッジに固定されるように、またキャップから係合解除されるようにする。キャップは、回して位置合わせした後にしか押すことができない。これにより、キャップが偶発的に押されることが防止される。次に、キャップが取り外される。その結果、針は薬剤と流体連通することになり、注射が開始される。
【0023】
デバイスを収納する段階と、その後に針を薬剤カートリッジに挿入する段階とは、針を露出せずに実行することができる。
【0024】
実施形態では、針キャップによってトリガされる穿孔ユニットが提供され、あるいはむしろ自動注射器のための方法が提供され、この方法では、キャップが取り外される前(注射またはデバイス使用の前)に針キャップ上のボタンを使用者が起動したときに針がカートリッジに連結される。
【0025】
この配置は、針の安全性をもたらし、滅菌された針を環境の状態に対して封止する。
【0026】
使用者は、穿孔手順が実行されることになるキャップを位置合わせすること、および押すことが行われる前に、キャップを取り外すことができない。キャップは、針がその最後位置に達したときに機構によって解放される。
【0027】
本明細書に記載の薬物送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成される。たとえば送達は、皮下、筋肉内、または静脈内送達とすることができる。このようなデバイスは、患者、または看護師もしくは医師などの介護者によって操作され、さまざまなタイプの安全シリンジ、ペン注射器または自動注射器を含み得る。このデバイスは、使用前に封止アンプルを穿孔する必要がある、カートリッジベースのシステムを含み得る。これらのさまざまなデバイスを用いて送達される薬剤の量は、約0.5mLから約2mLになり得る。さらに別のデバイスは、「大」量の薬剤(通常約2mLから約10mLまで)を送達するためにある期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)患者の皮膚に粘着するように構成された、大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含み得る。
【0028】
特定の薬剤と組み合わせることで、本記載のデバイスはまた、必要な仕様内で動作するようにカスタマイズされる。たとえば、デバイスは、ある一定の期間内(たとえば、自動注射器では約3秒から約20秒、LVDでは約10分から約60分)に薬剤を注射するようにカスタマイズされる。他の仕様には、低レベルまたは最小レベルの不快感、またはヒューマンファクタに関連するいくつかの条件に対し、保存寿命、使用期限、生体適合性、環境的考慮事項などが含まれ得る。このような違いは、たとえば、粘性が約3cPから約
50cPまでの薬物など、さまざまな要因により生じ得る。その結果、薬物送達デバイスは、サイズが約25から約31ゲージまでの中空針を含むことが多い。一般的なサイズは27および29ゲージである。
【0029】
本明細書に記載の送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化機能を含み得る。たとえば、1回またはそれ以上の針挿入、薬剤注射、および針引き込みが自動化される。1つまたはそれ以上の自動化段階のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給される。エネルギー源は、たとえば、機械エネルギー、空気エネルギー、化学エネルギーまたは電気エネルギーを含み得る。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを保存または解放するためのばね、てこ、エラストマー、または他の機械機構を含み得る。1つまたはそれ以上のエネルギー源は、単一のデバイスの中に集約することができる。デバイスはさらに、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、弁、または他の機構を含み得る。
【0030】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動化機能はそれぞれ、起動機構を介して起動される。このような起動機構は、1つまたはそれ以上のボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素を含み得る。自動化機能の起動は、一段階または多段階手順になり得る。すなわち、使用者が、自動化機能を行わせるために1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要があり得る。たとえば、一段階手順では、使用者が、薬剤の注射をするためにニードルスリーブを使用者の体に当てて押し下げることができる。他のデバイスでは、自動化機能の多段階起動が必要となり得る。たとえば、使用者が、注射をするためにボタンを押し下げ、ニードルシールドを引き込む必要がある。
【0031】
加えて、1つの自動化機能の起動が1つまたはそれ以上の後続の自動化機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することもできる。たとえば、第1の自動化機能の起動が、少なくとも2回の針挿入、薬剤注射、および針引き込みを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化機能を行わせるための特定の一連の段階を必要とし得る。他のデバイスは、一連の独立した段階によって動作し得る。
【0032】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器の1つまたはそれ以上の機能を含み得る。たとえば、送達デバイスが、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(自動注射器で通常見られる)と、用量設定機構(ペン注射器で通常見られる)とを含み得る。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態による、例示的な薬物送達デバイス40が図1に示されている。上述のように、デバイス40は、薬剤を患者の体に注射するように構成される。デバイス40は、注射予定の薬剤を含むリザーバを通常は含む本体56(たとえば、シリンジ)と、送達手順の1つまたはそれ以上の段階を容易にするために必要な構成要素とを含む。デバイス40はまた、本体56に取り外し可能に取り付けられるキャップアセンブリ50を含み得る。通常は使用者が、デバイス40が動作する前に、キャップ50を本体56から取り外さなければならない。
【0034】
図示のように、本体56は実質的に円筒形であり、長手方向軸Xに沿って実質的に一定の直径を有する。本体56は、遠位領域20および近位領域21を有する。用語「遠位」は、注射の部位に相対的に近い場所を指し、用語「近位」は、注射部位から相対的に遠い場所を指す。
【0035】
デバイス40はまた、本体56に対してスリーブ55が動くことを可能にするように本体56に連結されたニードルスリーブ55を含み得る。たとえば、スリーブ55は長手方向軸Xと平行な長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ55が近位方向に動
くことにより、針17が本体56の遠位領域20から延びることが可能になり得る。
【0036】
針17を挿入することは、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、本体56に対して固定して配置され、最初に、延びたニードルスリーブ55の中に配置される。スリーブ55の遠位端を患者の体に当て、本体56を遠位方向に動かすことによってスリーブ55が近位に動くと、針17の遠位端のカバーが取り外される。このような相対的な動きが、針17の遠位端が患者の体の中へ延びることを可能にする。このような挿入は、スリーブ55に対して本体56が患者の手操作で動くことにより針17が手動で挿入されるので、「手動」挿入と呼ばれる。
【0037】
挿入の別の形態は「自動化された」ものであり、それによって針17が本体56に対して動く。このような挿入は、スリーブ55が動くことによって、または、たとえばボタン22などの別の形態の起動によってトリガされる。図1に示されるように、ボタン22は本体56の近位端にある。しかし、他の実施形態では、ボタン22は本体56の側面にある。
【0038】
他の手動または自動化機能には、薬物注射もしくは針引き込み、または両方が含まれ得る。注射とは、薬剤をシリンジから針17に強制的に通すために、栓またはピストン23をシリンジ(図示せず)内の近位位置からシリンジ内のより遠くの位置まで動かす過程のことである。いくつかの実施形態では、駆動ばね(図示せず)が、デバイス40が起動される前に圧縮の状態にある。駆動ばねの近位端は本体56の近位領域21内に固定され、駆動ばねの遠位端は、ピストン23の近位面に圧縮力をかけるように構成される。起動に続いて、駆動ばねに保存されたエネルギーの少なくとも一部がピストン23の近位面に加えられる。この圧縮力はピストン23に、ピストンを遠位方向に動かすように作用する。このような遠位の動きは、シリンジ内の液体薬剤を圧縮するように作用して、液体薬剤を針17から外に強制的に出す。
【0039】
注射に続いて、針17はスリーブ55または本体56の中に引き込まれる。引き込みは、使用者がデバイス40を患者の体から離すにつれてスリーブ55が遠位に動くときに行うことができる。これは、針17が本体56に対して固定位置にとどまったままであるので行うことができる。スリーブ55の遠位端が針17の遠位端を通り過ぎ、針17が覆われると、スリーブ55がロックされる。このようなロッキングは、本体56に対するスリーブ55の近位の動きをロックすることを含み得る。
【0040】
別の形態の針引き込みは、針17が本体56に対して動く場合に行うことができる。このような動きは、本体56内のシリンジが本体56に対して近位方向に動く場合に行うことができる。この近位動きは、遠位領域20にある引き込みばね(図示せず)を使用して実現される。圧縮された引き込みばねが、起動したときに十分な力をシリンジに供給して、シリンジを近位方向に動かすことができる。十分な引き込みの後では、針17と本体56の間の相対的な動きがロッキング機構によってロックされる。加えて、デバイス40のボタン22または他の構成要素が必要に応じてロックされる。
【0041】
図2Aは、デバイス40をその元の状態で示す。これは、デバイスが組み立てられパッケージされた後のデバイスの状態である。デバイス40は、使用者がデバイス40をパッケージから取り出すときに、この状態にある。デバイス40は、ボタンキャップ51およびキャリアユニット54を含むキャップアセンブリ50を含む。ボトムキャップ51は、その表面に位置合わせマーク500が設けられ、キャリアユニット54は、その表面に位置合わせマーク540を有する。
【0042】
図2Bは、位置合わせマーク500が位置合わせマーク540と位置合わせされるよう
にボタンキャップ51がキャリアユニット54に対して回転した後のデバイス40を示す。これにより、ボタンキャップ51を押すことができるという視覚インジケーションが使用者に提供される。
【0043】
図2Cは、ボタンキャップ51が押された後のデバイス40を示す。針17は、薬剤カートリッジ19に挿入されている。
【0044】
図2Dは、キャップ50が取り外された後のデバイス40を示す。針17は、薬剤カートリッジ19に挿入されている。針17は、ニードルスリーブ55が針17の視像を遮っているので、図2Dでは見えない。
【0045】
図3は、本発明の第2の実施形態によるデバイス40を示す。キャップアセンブリ50は、ボタンキャップ51およびキャリアユニット54を含む。収納段階では、ボタンキャップ51およびキャリアユニット54は、互いに回転可能に可動である。回転可能に位置合わせされた後、ボタンキャップ51およびキャリアユニット54は、使用者がボタンキャップ51を押したときに互いに軸方向に可動である。
【0046】
キャップアセンブリ50は、ボタンキャップ51を含む。ボタンキャップ51は、概ね円筒形のカップである。ボタンキャップ51は、遠位端壁51aと、遠位端壁51aに対して直交する湾曲側壁51bとを有する。ボタンキャップ51は、キャリアユニットの直径よりも大きい直径を有する。そのように、ボタンキャップ51は、キャリアユニット54に嵌まるように寸法設定されている。ボタンキャップ51は、デバイス40が収納段階にあるときに針17の遠位端を受けるための針受け部材51cを有する。針受け部材51cは、遠位端壁51aから延びる管状壁であり、その近位端において、針17の遠位端を受けるために開いている。
【0047】
針17は、ニードルキャリア53によって保持されている。ニードルキャリア53は、使用者がボタンキャップ51を押した後に薬剤カートリッジホルダ59と係合するためのテーパ付き近位端53aを有する。ニードルキャリア53は、収納段階中に管状針受け部材51cとの境界面嵌合を形成する遠位端に、円筒形端53bを有する。この境界面嵌合は、収納段階中にニードルキャリア53を保持するには十分な強度があるが、キャップが取り外されるときにニードルキャリア53を解放するには十分に弱いものである。ニードルキャリア53は、テーパ付き端53aと円筒形端53bの間に周溝53cを有する。
【0048】
針17の近位端が区画の遠位端に収納され、その区画を封止するための、ゴムまたは他の任意の適切な材料で作られた封止リング52が、受け部材51cとキャリアユニット54との間の境界面に設けられる。封止リング52の代替形態として、封止面がキャップ51およびキャリアユニット54の表面に組み込まれる。
【0049】
箔または他の封止材料57が、針17の近位端が収納される区画の近位端を封止するために設けられる。
【0050】
キャリアユニット54は、互いに同軸であり径方向部材54cによって互いに連結された内側管状部材54aおよび外側管状部材54bを有するキャップアセンブリの要素である。内側管状部材54aはニードルスリーブ55の内部に位置し、径方向部材54cから薬剤カートリッジまで延びており、デバイス収納段階中に針17の近位端が収納される区画の側壁を画成する。外側管状部材54bは径方向部材54cから、ボタンキャップ側壁51bと本体56およびニードルスリーブ55との間に延びる。
【0051】
針受け部材51cの近位端は、内側管状部材54aの内部に位置するように配置される
。内側管状部材54aの内面は、押しボタン51の針受け部材51cの近位端を支持するための、かつボタンキャップ51およびキャリアユニット54が回転可能に位置合わせされるまでキャリアユニット54に対するボタンキャップ51の軸方向運動を防止するための、ボタンキャップ係合阻止部材54dを備える。
【0052】
デバイス40は、内向きフランジ付き遠位端55aを有する実質的に管状のニードルスリーブ55を備える。
【0053】
外側管状部材54bの近位端は、外側管状部材54bの残りの部分に旋回するように取り付けられたラッチ部材60を含む。ラッチ部材60は、ラッチ部材60の内側に向く面に位置する、内側に延びる協働隆起部60aを含む。ラッチ部材60は、ラッチ部材60の外側に向く面にある、外側に延びる協働隆起部60bを有する。
【0054】
図5に示されるように、内側に延びる協働隆起部60aは、本体56の壁にある周溝56aと係合するように配置される。
【0055】
外向きに延びる協働隆起部60bは、ボタンキャップ51が押された後に、側壁51bの内向き面に延びる周溝62と係合するように配置される。
【0056】
ラッチ部材60の近位端はロッキングアーム60cを備える。ロッキングアーム60cは、ボタンキャップ51が押された後に、側壁51bの内向き面に延びる周溝64と係合するように配置される。そのため、ボタンキャップ51は、ボタンキャップ51が押された後にキャリアユニット54に固定されるように配置される。
【0057】
ニードルキャリア53と薬剤カートリッジ19との間の境界面を提供するカートリッジホルダ59が設けられる。
【0058】
キャリアユニット54は本体56に対して、これらがデバイス40の収納段階中に一緒に固定されているように配置される。回り止めロック(図示せず)が、図2Bに示されるように、キャリアユニットと位置合わせするために使用者がボタンキャップ51を回したときのキャリアユニット54または本体56の共回転を防止するために設けられる。
【0059】
使用の際、使用者はデバイス40を、デバイスが収納されているパッケージから取り出すことができる。注射を開始する前に、針17は薬剤カートリッジ19に挿入される必要があり、キャップは取り外される必要がある。収納段階におけるデバイス40が図2Aに示されている。
【0060】
使用者は、図2Bに示されるように、ボタンキャップ51上のマーク500がキャリアユニット54上のマーク540と整列するようにキャップ51を回す。ボタンキャップ51が回転することにより、図4に示されるように、ボタンキャップ係合阻止部材54dが、ボタンキャップ51の針受け部材51cの管状壁の外面に設けられたスロット51dと回転可能に位置合わせする。
【0061】
ボタンキャップ51およびキャリアユニット54が回転可能に位置合わせされた後、ボタンキャップ51は、図5に示されるように、軸方向にデバイス40の近位端に向けて押される。ボタンキャップ51は、軸方向にデバイス40の近位端に向けて動くように押される。ボタンキャップ51の軸方向運動により、ニードルキャリア53および針17が軸方向に薬剤カートリッジ19に向けて動く。針17の近位端は箔57を破り、薬剤カートリッジのセプタムを穿孔する。ニードルキャリア53のテーパ付き端53aは、薬剤カートリッジホルダ59の遠位端フランジ59aを押し分けて通過する。針17が封止箔57
を穿孔すると、箔57はニードルキャリア53のテーパ付き部材53aによって変位する。遠位端フランジ59aは、ニードルキャリア53の周溝53cと係合する。そのため、ニードルキャリアは薬剤カートリッジ19に固定される。
【0062】
ボタンキャップ51が軸方向に図5に示される位置まで動いた後、使用者は、キャップアセンブリを軸方向に引っ張ることによって、キャップアセンブリをデバイス40から取り外すことができる。隆起部60bは溝62と係合し、ロッキングアーム60cは溝64と係合し、それによって、ボタンキャップ51はキャリアユニット54に固定される。
【0063】
使用者は、ボタンキャップの近位端をラッチ部材60の近くに押し込むことができる。この押し込み動作により、ラッチ部材60は旋回し、部材60aは、本体56の壁にある溝56aから係合解除する。したがって、キャップアセンブリは本体から分離される。押し込まれる必要がある旋回可能ラッチを設けることは、たとえば子供による不要なキャップアセンブリの取り外しを防止するので、有利である。
【0064】
協働する周溝と隆起部について上で説明したが、代替実施形態では代わりに、個別の協働する隆起部と凹部がボタンキャップ51、キャリアユニット54および本体56の周囲に設けられる。隆起バンプおよび凹部の配置および設計は、最善のプラスチック成形可能性に応じて選択される。
【0065】
本発明の実施形態を自動注射器に関して説明してきたが、本発明はまた、代替注射デバイス、たとえばシリンジ、ペン注射器、手動注射器、脊髄注射システムなどにも適用可能であることに留意されたい。針を薬剤カートリッジに取り付ける機構は、注射の直前まで針を薬剤から分離したままにしておくことが望ましい任意の注射デバイスに使用することができる。
【0066】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0067】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、さまざまなタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組み合わせを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0068】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物または薬剤をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。それだけには限らないが、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、潅流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み型デバ
イス(たとえば、薬物またはAPIコーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここで説明される薬物は、たとえば24以上のゲージ数を有する、たとえば皮下針である針を含む注射デバイスでは特に有用であり得る。
【0069】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0070】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0071】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、元の物質と構造的に十分に類似しており、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。特に、用語「類似体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然の
ペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0072】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0073】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0074】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0075】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0076】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、
サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0077】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0078】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0079】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0080】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0081】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上の
アミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0082】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0083】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0084】
API、製剤、装置、方法、システムのさまざまな構成要素および本明細書に記載の実施形態の修正(追加および/または除去)を、このような修正、およびありとあらゆるその均等物を包含する本発明の全範囲および趣旨から逸脱せずに加えることができることは当業者に理解されよう。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
【外国語明細書】