(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034078
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】地盤改良装置、および地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022001920
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大麻 広幸
(57)【要約】
【課題】地盤改良の際に排泥を容易に回収できるようにする。
【解決手段】回転噴射管310から固化材を地盤中に噴射して高圧噴射撹拌工法により改良体を造成する地盤改良装置は、外周面を地盤に密着させて設けられるシール管210と、上部に回転噴射管310が密閉状態で挿通される回転噴射管挿入孔が設けられ、上記シール管210の上部に接続されるとともに、排泥送液管212が接続され、シール管210内を上昇する排泥を密閉状態で排泥送液管212に送液する排泥送液管接続部211とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドホールに挿入された回転噴射管から固化材を地盤中に噴射して高圧噴射撹拌工法により改良体を造成する地盤改良装置であって、
下端にビットを有し、外周面を地盤に密着させて設けられる上記ガイドホールより大径のシール管と、
上部に回転噴射管が密閉状態で挿通される回転噴射管挿入孔が設けられ、上記シール管の上部に接続されるとともに、排泥送液管が接続され、シール管内を上昇する排泥を密閉状態で排泥送液管に送液する排泥送液管接続部と、
を備えたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
請求項1の地盤改良装置であって、
さらに、上記排泥送液管で送液される排泥を貯留する排泥タンクを備えたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項3】
ガイドホールに挿入された回転噴射管から固化材を地盤中に噴射して高圧噴射撹拌工法により改良体を造成する地盤改良方法であって、
下端にビットを有する上記ガイドホールより大径のシール管を地盤に挿入する工程と、
上記シール管の上部に、排泥を密閉状態で送液する排泥送液管が接続される排泥送液管接続部を接続する工程と、
上記シール管が地盤に挿入された状態で、上記シール管の内部、および下方に削孔してガイドホールを形成する工程と、
上記排泥送液管接続部の上部に密閉状態で挿通される回転噴射管を上記ガイドホールに挿入し、上記シール管の下方の地盤中に固化材を噴射し撹拌混合するとともに、排泥を上記シール管の内部、上記排泥送液管接続部、および排泥送液管を介し排出して、地盤中に改良体を造成する工程と、
を有することを特徴とする地盤改良方法。
【請求項4】
請求項3の地盤改良方法であって、
上記シール管を地盤に挿入する工程は、シール管を無水で回転および/または圧入させることによって行われることを特徴とする地盤改良方法。
【請求項5】
請求項3から請求項4のうち何れか1項の地盤改良方法であって、
さらに、上記改良体の造成後に、上記シール管を除去する工程を有することを特徴とする地盤改良方法。
【請求項6】
請求項3から請求項5のうち何れか1項の地盤改良方法であって、
さらに、上記シール管における地表面付近の外周面と地盤との間に密封領域を形成する工程を有することを特徴とする地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射攪拌工法によって地盤改良する装置および方法に関し、特に、施工時に生じる排泥の排出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤を改良するために、回転噴射管から固化材を地盤中に噴射して改良体を造成する高圧噴射撹拌工法が知られている。また、地盤中に固化材を噴射する際に排出される排泥を回収するために、地盤上の基礎に地盤改良装置を設け、ボーリング孔から排出される排泥を吸引する手法が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように地盤上の基礎に地盤改良装置を設けて排泥を吸引する手法は、地盤上に基礎が設けられていることが必須の前提となり、そのような基礎が設けられていない地盤の改良に適用することはできない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、基礎が設けられていない地盤などにおいても排泥を容易に回収できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
ガイドホールに挿入された回転噴射管から固化材を地盤中に噴射して高圧噴射撹拌工法により改良体を造成する地盤改良装置であって、
下端にビットを有し、外周面を地盤に密着させて設けられる上記ガイドホールより大径のシール管と、
上部に回転噴射管が密閉状態で挿通される回転噴射管挿入孔が設けられ、上記シール管の上部に接続されるとともに、排泥送液管が接続され、シール管内を上昇する排泥を密閉状態で排泥送液管に送液する排泥送液管接続部と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、密閉状態のシール管が設けられ、その内部から排泥を排出することができるので、地表面に排泥を貯留するピットなどを設けることなく、排泥を排出することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、基礎が設けられていない地盤などにおいても排泥を容易に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】排泥送液管接続部211の上部の構成を示す部分拡大縦断面図である。
【
図4】シール管の組み立て状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態として、
図1に示すような傾斜面を有する堤防の地盤100に改良体を造成する地盤改良の例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(地盤改良装置の構成)
地盤100上には、
図1に示すように足場110が設けられ、その上に設置された地盤改良機400を用いて改良体の造成が行われる。足場110は、例えば単管を組んで構成され、必要に応じて手すり110aなどが設けられる。
【0012】
地盤100の改良体が造成される位置には、例えば外径が200mmのケーシングロッドが用いられたシール管210が設置されている。上記シール管210は、詳しくは、後述するガイド管320、すなわちガイドホール102よりも大径で、例えば
図2に示すように、部分シール管221、1本以上の部分シール管222、および円環状の先端ビット223から構成され、それぞれに形成された雄ねじ221a・222aと図示しない雌ねじとの螺合により連結されるようになっている。また、先端ビット223の下端には地盤切削用の切削チップ223aが設けられ、地盤改良機400によって例えば無水で回転駆動されながらおよび/または圧入によって地盤100に挿入されるようになっている。上記チップは、シール管210の外周面より内側に配置されることにより、シール管210の外周面と地盤100との間に隙間を生じることなく、または狭くするようにしてシール管210を挿入することが容易にできるため、外周面と地盤100との密着程度を高くして、排泥の漏出を抑制しやすくできる。一方、チップがシール管210の内周面より内側に配置されることにより、切削時の摩擦抵抗を小さく抑えて切削を容易にすることができる。
【0013】
シール管210の上部には、排泥送液管212が接続された排泥送液管接続部211が、半割れの接続リング241によって接続されている。排泥送液管接続部211の上部には、
図3に示すように、密閉蓋231が接続リング241によって接続され、密閉された管内空間211aが形成されるようになっている。密閉蓋231の中心部には回転噴射管挿通孔231aが形成され、シール232とシール押さえ233によって、
図4に示すように、回転噴射管310やガイド管320が密閉状態を保って挿通されるようになっている。
【0014】
排泥送液管接続部211に接続された上記排泥送液管212には、さらに、延長管220が接続され、例えば堤防の平坦な領域に設置された排泥タンク510に排泥を導いて貯留し得るようになっている。排泥タンク510には、例えば排泥排出ポンプ520、および排泥排出管530が設けられ、図示しないバキュームカーなどの搬送車両等に送り出し得るようになっている。
【0015】
(地盤改良の工程)
上記のような地盤改良装置を用いた地盤改良は、次のように行われる。
【0016】
まず、
図5に示すように、シール管210を、地盤改良機400により回転駆動させながら、改良体が造成される改良体領域101の上方の地盤100に挿入する。このとき、一般的な削孔のように削孔水を使用してもよいが、シール管210の外周面に地山を焼き付け密着させて、シール管210の外周と地山との間からの排泥の漏出を抑制しやすくなる点では、無水で削孔することが好ましい。
【0017】
上記シール管210の挿入深さは、深いほど削孔の困難性は増すが、排泥の漏出は抑制しやすくなる。そこで、シール管210の下端の深さ位置は、地表面から改良体領域101の上端の深さ位置までの間で、排泥の漏出抑制程度と削孔の容易さとの兼ね合いで決定すればよい。
【0018】
次に、
図6に示すようにシール管210の上方に排泥送液管接続部211を取り付け、延長管220を接続する。その後、ガイド管320をシール管210の密閉蓋231に挿通し、地盤改良機400により回転駆動させながら削孔水を供給してガイドホール102を削孔する。このときに生じる排泥は、シール管210に、排泥送液管接続部211、排泥送液管212、および延長管220が密閉状態で接続されていることによって、改良体領域101の上方の地表面にピットを設けたりすることなく、排泥タンク510等に導くことが容易にできる。
【0019】
次に、
図7に示すように、上記ガイド管320に代えて回転噴射管310を地盤改良機400に取り付け、噴射孔310aから固化材を噴射するとともに、回転噴射管310を回転させながら上方に引き上げる。これによって、
図8に示すように改良体103が造成される。このときに生じる排泥も、やはり、密閉状態のシール管210の内部から、排泥送液管接続部211、排泥送液管212、および延長管220を介して排泥タンク510に導かれ、貯留される。改良体103が造成されると、シール管210は、地盤100から引き抜かれ、他の改良体領域101に対して、順次、同様の作業が繰り返される。
【0020】
上記のように、密閉状態のシール管210が設けられ、その内部から排泥を排出することにより、地表面に排泥を貯留するピットなどを設けることなく、排泥を排出することができる。それゆえ、傾斜地で地盤改良することなども容易にできる。
【0021】
また、密閉状態のシール管210が設けられるので、地盤上に地盤改良装置を取り付けるための基礎などを必要とせず、地表面が地山(裸地)の場合でも、容易に地盤改良することができる。
【0022】
また、排泥送液管によって、改良体の造成位置から離れたところに設けられた排泥タンクまで排泥を送ることができるので、排泥タンクの設置位置の自由度が高くなる。
【0023】
(変形例)
上記の例では、排泥は主として、その排出圧力によって排泥タンク510まで排出される例を示したが、これに限らず、例えば排泥送液管212や延長管220において排泥の流れる方向に清水とエアを噴出させ、排泥を迅速、および/または確実に排出し得るようにしてもよい。
【0024】
また、上記のようにシール管210と排泥送液管接続部211とが接続リング241によって接続される場合には、排泥送液管212が向く方向を調節することが容易にできるが、これに限らず、フランジをボルト締結するなど、種々の接続方法が用いられてもよい。
【0025】
また、シール管210における地表面付近の外周面と地盤との間に、急結モルタルを流し込むなどして密封領域を形成し、排泥の漏出をより確実に抑制できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
100 地盤
101 改良体領域
102 ガイドホール
103 改良体
110 足場
110a 手すり
210 シール管
211 排泥送液管接続部
211a 管内空間
212 排泥送液管
220 延長管
221 部分シール管
221a 雄ねじ
222 部分シール管
222a 雄ねじ
223 先端ビット
223a 切削チップ
231 密閉蓋
231a 回転噴射管挿通孔
232 シール
233 シール押さえ
241 接続リング
310 回転噴射管
310a 噴射孔
320 ガイド管
400 地盤改良機
510 排泥タンク
520 排泥排出ポンプ
530 排泥排出管