(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034152
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】スタンプセット
(51)【国際特許分類】
B41K 3/00 20060101AFI20220224BHJP
B41F 17/30 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
B41K3/00 Z
B41F17/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137808
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】古谷 眞
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 友也
(57)【要約】
【課題】比較的広範囲に捺印する場合でも、球体の被捺印物に対してブレないように印面を捺印できるようにすること。
【解決手段】球体の被捺印物の直径と略同一の内径を有する環状部21と、該環状部内で被捺印物を保持する保持部22と、前記環状部に貫通して設けた捺印溝23と、該捺印溝の周縁に形成した歯車部24と、を有する捺印ガイド2を備えるとともに、前記印面部51を有し、該印面部の周縁に前記歯車部と噛み合うギア部52を敷設した印判5を有するスタンプセット1とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体の被捺印物の直径と略同一の内径を有する環状部と、該環状部内で被捺印物を保持する保持部と、前記環状部に貫通して設けた捺印溝と、該捺印溝の周縁に形成した歯車部と、を有する捺印ガイドと、
印面部を有し、該印面部の周縁に前記歯車部と噛み合うギア部を敷設した印判と、
を有するスタンプセット。
【請求項2】
前記印判の揺動を防止するガイド突起を前記捺印溝の周辺に設けた請求項1に記載のスタンプセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状の被捺印物への捺印に用いられるスタンプセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からゴルフボールなどの球体にマークをつけることがなされている。例えば特許文献1や特許文献2に、そのような技術が開示されている。特許文献1に開示された技術は、球体を保持した状態にしてペンなどで球体表面にマークを付けるためのマーキング器具に関するものである。この技術では、ペンで塗りつぶすなどの作業が必要であるため、マークを付けるのが煩わしい。また、捺印によってマークがされることが想定されていないマーキング器具に対して無理やり捺印を施そうとしても、印判を球体に沿って回転させる作業の際にブレが生じる可能性が高い。これに対して、特許文献2に開示されている技術は、球体に対して捺印することに関するものではある。しかしながら、球体の被捺印物を保持する部材が直方体形状であることもあり、一度に捺印できる範囲はあまり広くは無い。このため印面全体を捺印できないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3138076号公報
【特許文献2】特開2004-255624号公報
【0004】
ところで、球体に線分状の捺印をする場合など、球体への捺印が比較的広範囲に求められる場合がある。このような場合、上記のような技術では、実質的に対応が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景でなされた発明であり、本発明が解決しようとする課題は、比較的広範囲に捺印する場合でも、球体の被捺印物に対してブレないように印面を捺印できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、球体の被捺印物の直径と略同一の内径を有する環状部と、該環状部内で被捺印物を保持する保持部と、前記環状部に貫通して設けた捺印溝と、該捺印溝の周縁に形成した歯車部と、を有する捺印ガイドと、印面部を有し、該印面部の周縁に前記歯車部と噛み合うギア部を敷設した印判と、を有するスタンプセットとする。
【0007】
また、前記印判の揺動を防止するガイド突起を前記捺印溝の周辺に設けた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明を用いると、比較的広範囲に捺印する場合でも、球体の被捺印物に対してブレないように印面を捺印できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態におけるスタンプセットの斜視図である。
【
図2】
図1に示すスタンプセットの捺印ガイドをA方向から見た図である。
【
図3】
図1に示すスタンプセットの捺印ガイドをB方向から見た図である。
【
図4】
図1に示すスタンプセットの捺印ガイドをC方向から見た図である。
【
図5】
図1に示すスタンプセットの印判のD-D断面図である。
【
図7】スタンプセットの使用例を示す斜視図である。
【
図8】スタンプセットの使用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1に示されていることから理解されるように、本実施形態のスタンプセット1は、球体の被捺印物8の直径と略同一の内径を有する環状部21と、該環状部21内で被捺印物8を保持する保持部22と、前記環状部21に貫通して設けた捺印溝23と、該捺印溝23の周縁に形成した歯車部24と、を有する捺印ガイド2を備えている。また、印面部51を有し、該印面部51の周縁に前記歯車部24と噛み合うギア部52を敷設した印判5を備えている。このため、比較的広範囲に捺印する場合でも、球体の被捺印物8に対してブレないように印面を捺印できる。
【0011】
以下、ゴルフボールに捺印をする例を用いて、実施形態のスタンプセット1について説明する。実施形態のスタンプセット1は、ゴルフボールを保持することができる捺印ガイド2と、捺印ガイド2に保持したゴルフボールに対して捺印を施すことができる印判5を備えている。実施形態の捺印ガイド2は、ゴルフボールが移動しないように内側部分で押さえつけることができる。このような構成とするため、捺印ガイド2には、ゴルフボールの直径と略同一の内径を有する環状部21を備えており、環状部21の内側にゴルフボールを保持する保持部22を備えている。なお、実施形態の捺印ガイド2には、保持部22に嵌めたゴルフボールが容易に脱落しないように保持突起28が備えられている。
【0012】
実施形態の環状部21は側面視略半円状であり、その一端及び他端に把持部26が接続されている。
図2に示すことから理解されるように、実施形態の捺印ガイド2は、それらによりなされる側面視略U字状の部位を備えている。実施形態の捺印ガイド2は、弾性変形可能な樹脂を用いて構成されており、使用者は捺印ガイド2の両端に設けられた把持部26を近づけるように移動させることで、捺印ガイド2に嵌めたゴルフボールが回転できないようにすることができる。なお、把持部26をしっかり近づけるまでは、捺印ガイド2に嵌めたゴルフボールは、回転させることができ、捺印したい面を選ぶことができる。
【0013】
実施形態の捺印ガイド2は、使用者が片手で把持部26同士を近づけることができる。また、
図2及び
図3に示すことから理解されるように、実施形態の把持部26の表面側には、滑り止めとして機能する凹凸27を設けている。このため、把持部26同士を近づける作業をする際に指が滑ってしまうことを抑制でき、把持部26にしっかりと力を伝えることができる。
【0014】
捺印ガイド2は、保持したゴルフボールに対して捺印できるように、環状部21を貫通する捺印溝23を備えているが、この捺印溝23の周縁に歯車部24を形成している(
図3及び
図4参照)。この歯車部24は、印判5に設けられたギア部52と噛み合うことができる。使用者は、ゴルフボールを保持した捺印ガイド2を持ち、捺印ガイド2に設けられた円弧状の歯車部24に印判5のギア部52を噛み合わせて移動させれば、適切にゴルフボールに捺印することができる。なお、しっかりとした印影を得るために印判5を複数回往復移動させた場合であっても、歯車部24とギア部52が噛み合うため、ブレが生じにくい。
【0015】
実施形態の印判5は、略直方体状であり、その一面に印面部51が設けられている。印面部51の周縁には、歯車部24と噛み合わせるギア部52が設けられているが、実施形態のギア部52は印面部51の短手方向の両端側に、印面部51の長手方向に向けて直線状に延びるように設けられている。尚、歯車部24及びギア部52の形状は、印判5と捺印ガイド2が互いに干渉せず相対移動できるように構成されていれば図示するような波型形外にも三角形、楕円形など種々採用できる。
【0016】
実施形態において印判5の印字体は、非多孔性印材のスチレンブタジエンゴムからなり、インキを転写して捺印するゴム印タイプのものを採用している。印材はインキとの相性、被捺印物の材質、硬度等を考慮してスチレンブタジエンゴム以外にも様々な材質が使用可能である。例えば、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多流化ゴム等が挙げられる。印字体として非多孔性印材を適用する事により、スタンプ台等で転写した際、印字面に一定量のインキを塗布する事が可能である為、捺印荷重に依らずゴルフボール表面に適量のインキを塗布する事ができ、滲みのない綺麗な印影を残すことが可能である。印判5に多孔質印材を用いる事も可能であるが、捺印荷重が強すぎる場合にインキが過剰に吐き出される為、印影滲みの観点から非多孔性印材を採用する方が好ましい。
また、印判5の印字面は表面に凹凸のない所謂ベタ印ではなく、表面に微細な複数の突起を有するドット処理が施されており(図示なし)、その為、捺印時に空気の逃げ道が確保され、印影の中抜けを防止している。
【0017】
また、
図5に示すように、印判5の印字体の下側には印字体より硬度が低いクッション材53を配し、更に印字体天面は印判5の本体部よりも僅かに突出するように構成している。こうする事でゴルフボール表面に捺印する際、印字体に適度な柔軟性が付与され、ゴルフボールのディンプルにインキを均一に塗布する事が可能である。捺印性の観点からクッション材は0.5~1.5mm、突出高さHは1.5~3.0mmが好ましい。
【0018】
またインキは、ゴルフボールの様な非吸収材に押印するため、速乾性インキ、紫外線硬化インキ等が好適に用いられる。紫外線硬化インキの場合、印判5に気密構造を必要としない点で速乾性インキより取り扱いに優れており、本実施形態では紫外線硬化インキを採用している。ゴルフボールに捺印した印影は天日干し若しくは紫外線ランプを照射させる事で重合を促し硬化させる。
被捺印面がテニスボール等の吸収面である場合は、顔料系、染料系、油性系、水性系を問わず従来公知のインキが適宜使用可能である。
【0019】
なお、
図6に示すことから理解されるように、実施形態においては印判5にキャップ6が取り付けられるようになっている。このキャップ6は、保管時に印面部51側の面を覆うことができるものであり、印面部51の汚れや破損などを抑制することができる。また、実施形態のキャップ6は、印面部51とは反対の面側に取り付けることができる。
図7から
図9に示すことから理解されるように、スタンプセット1の使用時にキャップ6をこちら側の面に取り付けた状態とすると、印判5の操作がしやすくなる。なお、印判5の操作時には、
図7に示す矢印方向に傾けるように移動させれば良い。
【0020】
また、実施形態の捺印ガイド2には、捺印溝23の周辺に、捺印時に前記印判5の揺動を防止するガイド突起25が設けられている。
図8に示すことから理解されるように、実施形態のガイド突起25は、歯車部24の外側に並ぶように設けられている。捺印溝23の両外側に位置するガイド突起25同士の間隔は、使用時に印判5が双方のガイド突起25と当接できる程度としており、捺印のブレを抑制することができる。
【0021】
以上、実施形態を中心として本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば印判には、転写するための形状を一つの帯状としているが、複数の形状が分散配置されているものでもよい。また、帯状の印字面内側に個人名、団体名を印字しても良い。
【0022】
実施形態の印面部はゴム状の部材を用いて構成され、スタンプ台を用いて印面部の形状を球体に転写できる構成であるが、インキを含侵させたものを捺印ガイドに備えるようにしたインキ自給式の構造を採用しても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 スタンプセット
2 捺印ガイド
5 印判
8 被捺印物
21 環状部
22 保持部
23 捺印溝
24 歯車部
25 ガイド突起
51 印面部
52 ギア部
H 突出高さ