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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034161
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】電池温調システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20220224BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220224BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20220224BHJP
   H01M 10/617 20140101ALN20220224BHJP
【FI】
F25B43/00 G
F25B1/00 101H
F25B1/00 321B
F25B1/00 381D
F25B1/00 399Y
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6569
H01M10/6556
H01M10/651
H01M10/633
H01M10/663
H01M10/617
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137822
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】横井 佑樹
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】電池モジュール全体を均一に暖めること。
【解決手段】蒸発器15の出口15bからアキュムレータ16の出口16bまでに至る通路の途中で、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒がヒータ40により加熱され、アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力が上がる。冷媒の熱力学的特性により、アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の温度である飽和蒸気温度が上がり、冷媒の二相域での等温線が上昇する。その結果、蒸発器15を流れるガス冷媒と電池モジュールM1との蒸発器15を介した熱交換が行われて、ガス冷媒が液冷媒に変化するときの凝縮潜熱によって、電池モジュールM1が暖められる。冷媒の温度は、等温線上となるため、冷媒の温度は一定となる。よって、冷媒と電池モジュールM1との温度差が維持され、電池モジュールM1全体が均一に暖められる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して冷媒を吐出する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を減圧する絞りと、
減圧された前記冷媒が流れるとともに、電池モジュールと熱交換する熱交換器と、を有する冷凍サイクルを備え、
前記熱交換器の出口から前記圧縮機の吸入口までに至る通路の途中に配置されるとともに、前記圧縮機へのガス冷媒の流出を許容するアキュムレータと、
前記熱交換器の出口から前記アキュムレータの出口までに至る通路の途中で、前記熱交換器の出口から流出される冷媒を加熱して前記アキュムレータの出口の飽和蒸気圧力を上げるヒータと、を備えている電池温調システム。
【請求項2】
前記ヒータは、前記アキュムレータを加熱する位置に設けられている請求項1に記載の電池温調システム。
【請求項3】
前記圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器を迂回して前記圧縮機から吐出された冷媒を前記熱交換器に供給するバイパス通路と、
前記圧縮機から吐出された冷媒における前記凝縮器への流れを許容するとともに前記圧縮機から吐出された冷媒における前記バイパス通路への流れを遮断する第1状態と、前記圧縮機から吐出された冷媒における前記凝縮器への流れを遮断するとともに前記圧縮機から吐出された冷媒における前記バイパス通路への流れを許容する第2状態と、に切替可能に構成された弁機構と、
前記電池モジュールの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、前記ヒータを駆動させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、前記弁機構を前記第1状態から前記第2状態に切り替えるとともに前記ヒータを駆動させる請求項1又は請求項2に記載の電池温調システム。
【請求項4】
前記圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器を通過する前記冷媒を冷却する熱交換媒体を前記凝縮器に供給する供給装置と、
前記電池モジュールの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、前記ヒータを駆動させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記供給装置を駆動して前記凝縮器に前記熱交換媒体を供給する第1状態と、前記供給装置を停止して前記凝縮器への前記熱交換媒体の供給を停止する第2状態と、に切替可能であり、
前記制御部は、前記温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、前記第1状態から前記第2状態に切り替えるとともに前記ヒータを駆動させる請求項1又は請求項2に記載の電池温調システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度検出部により検出される温度に基づいて、前記ヒータにおける前記冷媒に対する加熱度合を制御する請求項3又は請求項4に記載の電池温調システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1状態のときに、前記電池モジュールの雰囲気湿度が予め定められた閾値湿度よりも高い場合、前記ヒータを駆動させる請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の電池温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを備えた電池温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを用いて、電池モジュールの温度を調節する電池温調システムとして、例えば特許文献1が知られている。特許文献1では、電池モジュールを冷却する場合には、液冷媒と電池モジュールとの熱交換器を介した熱交換が行われて、液冷媒がガス冷媒に変化するときに必要となる潜熱によって、電池モジュールが冷却される。また、特許文献1では、熱交換器と凝縮器との間にヒータが設けられている。そして、電池モジュールを暖める場合には、ヒータを作動させて、熱交換器に供給される冷媒をヒータにより加熱する。これによれば、熱交換器には、ヒータによって加熱されることにより気化したガス冷媒が供給されるため、熱交換器を介したガス冷媒と電池モジュールとの熱交換が行われることによって、電池モジュールが暖められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-16584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヒータによって加熱されることにより気化したガス冷媒の温度は、熱交換器に供給されて、熱交換器を介した電池モジュールとの熱交換が行われていくにつれて徐々に低下していく。そして、ガス冷媒の温度が電池モジュールの温度と同じ温度まで低下すると、熱交換器を介した冷媒と電池モジュールとの熱交換が行われなくなってしまい、冷媒によって電池モジュールを暖めることができなくなってしまう。その結果、電池モジュール全体を均一に暖めることができない虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電池モジュール全体を均一に暖めることができる電池温調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電池温調システムは、冷媒を圧縮して冷媒を吐出する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された冷媒を減圧する絞りと、減圧された前記冷媒が流れるとともに、電池モジュールと熱交換する熱交換器と、を有する冷凍サイクルを備え、前記熱交換器の出口から前記圧縮機の吸入口までに至る通路の途中に配置されるとともに、前記圧縮機へのガス冷媒の流出を許容するアキュムレータと、前記熱交換器の出口から前記アキュムレータの出口までに至る通路の途中で、前記熱交換器の出口から流出される冷媒を加熱して前記アキュムレータの出口の飽和蒸気圧力を上げるヒータと、を備えている。
【0007】
これによれば、熱交換器の出口からアキュムレータの出口までに至る通路の途中で、熱交換器の出口から流出される冷媒がヒータにより加熱され、アキュムレータの出口の飽和蒸気圧力が上がる。すると、冷媒の熱力学的特性により、アキュムレータの出口のガス冷媒の温度である飽和蒸気温度が上がる。アキュムレータの出口のガス冷媒の飽和蒸気温度が上がると、冷媒の二相域での等温線が上昇する。その結果、熱交換器の出口からアキュムレータの出口までに至る通路の途中で、熱交換器の出口から流出される冷媒をヒータで加熱しない場合に比べると、高い温度で冷媒の凝縮が始まることになる。したがって、熱交換器を流れるガス冷媒と電池モジュールとの熱交換器を介した熱交換が行われて、熱交換器を流れるガス冷媒の温度が、電池モジュールの温度まで低下するよりも先に、飽和蒸気温度に達するため、ガス冷媒の凝縮が始まって、ガス冷媒が液冷媒に変化するときに必要となる凝縮潜熱によって、電池モジュールが暖められる。このとき、冷媒の温度は、等温線上となるため、冷媒の温度は一定となる。したがって、冷媒と電池モジュールとの温度差が維持されるため、電池モジュール全体を均一に暖めることができる。
【0008】
上記電池温調システムにおいて、前記ヒータは、前記アキュムレータを加熱する位置に設けられているとよい。
これによれば、ヒータによって、アキュムレータを加熱することにより、アキュムレータ内の冷媒が加熱されるため、アキュムレータの出口の飽和蒸気圧力を好適に上げることができる。
【0009】
上記電池温調システムにおいて、前記圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器を迂回して前記圧縮機から吐出された冷媒を前記熱交換器に供給するバイパス通路と、前記圧縮機から吐出された冷媒における前記凝縮器への流れを許容するとともに前記圧縮機から吐出された冷媒における前記バイパス通路への流れを遮断する第1状態と、前記圧縮機から吐出された冷媒における前記凝縮器への流れを遮断するとともに前記圧縮機から吐出された冷媒における前記バイパス通路への流れを許容する第2状態と、に切替可能に構成された弁機構と、前記電池モジュールの温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、前記ヒータを駆動させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、前記弁機構を前記第1状態から前記第2状態に切り替えるとともに前記ヒータを駆動させるとよい。
【0010】
これによれば、制御部は、温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、弁機構を第1状態から第2状態に切り替える。これにより、温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、圧縮機から吐出された高温高圧の冷媒がバイパス通路に流れ、絞りを通過することで減圧された高温低圧の冷媒を熱交換器に流すことができる。そして、制御部は、温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、ヒータを駆動させる。これにより、温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、熱交換器の出口から流出される冷媒がヒータにより加熱され、アキュムレータの出口の飽和蒸気圧力を上げることができる。
【0011】
上記電池温調システムにおいて、前記圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器を通過する前記冷媒を冷却する熱交換媒体を前記凝縮器に供給する供給装置と、前記電池モジュールの温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、前記ヒータを駆動させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記供給装置を駆動して前記凝縮器に前記熱交換媒体を供給する第1状態と、前記供給装置を停止して前記凝縮器への前記熱交換媒体の供給を停止する第2状態と、に切替可能であり、前記制御部は、前記温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、前記第1状態から前記第2状態に切り替えるとともに前記ヒータを駆動させるとよい。
【0012】
これによれば、制御部は、温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、供給装置を停止し、第1状態から第2状態に切り替えて凝縮器への熱交換媒体の供給を停止するため、圧縮機から吐出された高温高圧の冷媒が凝縮器によって凝縮されることなく、絞りを通過することで減圧される。したがって、温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、絞りによって減圧された高温低圧の冷媒を熱交換器に流すことができる。そして、制御部は、温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、ヒータを駆動させる。これにより、温度検出部により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、熱交換器の出口から流出される冷媒がヒータにより加熱され、アキュムレータの出口の飽和蒸気圧力を上げることができる。
【0013】
上記電池温調システムにおいて、前記制御部は、前記温度検出部により検出される温度に基づいて、前記ヒータにおける前記冷媒に対する加熱度合を制御するとよい。
これによれば、制御部が、温度検出部により検出される温度に基づいて、ヒータにおける冷媒に対する加熱度合を制御するため、電池モジュール全体を効率良く均一に暖めることができる。
【0014】
上記電池温調システムにおいて、前記制御部は、前記第1状態のときに、前記電池モジュールの雰囲気湿度が予め定められた閾値湿度よりも高い場合、前記ヒータを駆動させるとよい。
【0015】
ここで、電池モジュールの雰囲気湿度が予め定められた閾値湿度よりも高いと、アキュムレータ外で空気が凝縮して結露が生じると想定されており、この閾値湿度は、予め実験等によって求められている。これによれば、アキュムレータ外で空気が凝縮して結露が生じたとしても、制御部が、電池モジュールの雰囲気湿度に基づいて、ヒータを駆動させることにより、ヒータからの熱によって結露を蒸発させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、電池モジュール全体を均一に暖めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における電池温調システムを示す概略構成図。
図2】冷媒のエンタルピと圧力との関係を表したモリエル線図。
図3】別の実施形態における電池温調システムを示す概略構成図。
図4】別の実施形態における電池温調システムを示す概略構成図。
図5】別の実施形態における電池温調システムを示す概略構成図。
図6】別の実施形態における電池温調システムを示す概略構成図。
図7】別の実施形態における電池温調システムを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、電池温調システムを具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。本実施形態の電池温調システムは、例えば、車両に搭載されている。
図1に示すように、電池温調システム10は、冷凍サイクル11を備えている。電池温調システム10は、冷凍サイクル11を用いて、電池モジュールM1の温度を調節する。電池モジュールM1は、図示しない電池セルが複数並設されることにより構成されている。電池セルは、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池である。
【0019】
冷凍サイクル11は、圧縮機12、凝縮器13、膨張弁14、蒸発器15、及びアキュムレータ16を有している。圧縮機12は、低温低圧の冷媒を圧縮して高温高圧の冷媒を吐出する。凝縮器13は、圧縮機12から吐出された冷媒を凝縮する。膨張弁14は、凝縮器13で凝縮されて液化した高温高圧の液冷媒を減圧して低温低圧の液冷媒にする。したがって、膨張弁14は、圧縮機12から吐出された冷媒を減圧する絞りである。蒸発器15には、膨張弁14からの液冷媒が流通可能である。また、蒸発器15は、電池モジュールM1と熱的に結合されている。したがって、蒸発器15は、減圧された冷媒が流れるとともに、電池モジュールM1と熱交換する熱交換器である。アキュムレータ16は、圧縮機12へのガス冷媒の流出を許容する。
【0020】
圧縮機12と凝縮器13とは第1配管17によって接続されている。第1配管17の一端は、圧縮機12の吐出口12aに接続されている。第1配管17の他端は、凝縮器13の供給口13aに接続されている。凝縮器13と膨張弁14とは第2配管18によって接続されている。第2配管18の一端は、凝縮器13の排出口13bに接続されている。第2配管18の他端は、膨張弁14の供給口14aに接続されている。
【0021】
膨張弁14と蒸発器15とは第3配管19によって接続されている。第3配管19の一端は、膨張弁14の排出口14bに接続されている。第3配管19の他端は、蒸発器15の入口15aに接続されている。蒸発器15とアキュムレータ16とは第4配管20によって接続されている。第4配管20の一端は、蒸発器15の出口15bに接続されている。第4配管20の他端は、アキュムレータ16の入口16aに接続されている。アキュムレータ16と圧縮機12とは第5配管21によって接続されている。第5配管21の一端は、アキュムレータ16の出口16bに接続されている。第5配管21の他端は、圧縮機12の吸入口12bに接続されている。アキュムレータ16は、蒸発器15の出口15bと圧縮機12の吸入口12bとの間に配置されている。したがって、アキュムレータ16は、蒸発器15の出口15bから圧縮機12の吸入口12bまでに至る通路の途中に配置されている。
【0022】
電池温調システム10は、バイパス通路22を備えている。バイパス通路22は、第1配管17の途中から分岐して延びるとともに、第3配管19の途中に接続される配管である。したがって、バイパス通路22の一端は、第1配管17の途中に接続されるとともに、バイパス通路22の他端は、第3配管19の途中に接続されている。また、電池温調システム10は、オリフィス23を備えている。オリフィス23は、バイパス通路22に設けられている。オリフィス23は、バイパス通路22の一部の流路断面積を小さくしてある。したがって、オリフィス23は、固定絞りである。
【0023】
電池温調システム10は、弁機構30を備えている。弁機構30は、第1切替弁31及び第2切替弁32を有している。第1切替弁31は、第1配管17におけるバイパス通路22との接続位置よりも凝縮器13側の部位に設けられている。第1切替弁31は、開閉弁である。第2切替弁32は、バイパス通路22におけるオリフィス23よりも第1配管17側の部位に設けられている。第2切替弁32は、開閉弁である。
【0024】
電池温調システム10は、ヒータ40を備えている。ヒータ40は、例えば、電熱線である。ヒータ40は、アキュムレータ16を加熱する位置に設けられている。ヒータ40は、アキュムレータ16内の冷媒を加熱するように構成されている。アキュムレータ16内の冷媒は、蒸発器15の出口15bから流出された冷媒とも言える。したがって、ヒータ40は、蒸発器15の出口15bから流出された冷媒を加熱しているとも言える。ヒータ40は、蒸発器15の出口15bからアキュムレータ16の出口16bまでに至る通路の途中で、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒を加熱している。
【0025】
電池温調システム10は、電池モジュールM1の温度を検出する温度検出部としての温度センサ41を備えている。温度センサ41は、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度、及び電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度をそれぞれ検出可能に構成されている。また、電池温調システム10は、電池モジュールM1を収容する図示しないケース内の湿度を検出する湿度センサ42を備えている。電池モジュールM1を収容するケース内の湿度は、電池モジュールM1の雰囲気湿度である。
【0026】
電池温調システム10は、制御装置50を備えている。制御装置50は、中央処理制御装置(CPU)を備えている。また、制御装置50は、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等により構成されるメモリを備えている。さらに、制御装置50は、タイマカウンタ、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えている。
【0027】
制御装置50は、第1切替弁31に電気的に接続されている。制御装置50は、第1切替弁31の駆動を制御する。制御装置50は、第2切替弁32に電気的に接続されている。制御装置50は、第2切替弁32の駆動を制御する。制御装置50は、ヒータ40に電気的に接続されている。制御装置50は、ヒータ40の駆動を制御する。制御装置50は、温度センサ41に電気的に接続されている。制御装置50は、温度センサ41により検出される温度に関する情報を受信する。制御装置50は、湿度センサ42に電気的に接続されている。制御装置50は、湿度センサ42により検出される湿度に関する情報を受信する。
【0028】
制御装置50には、冷却運転モードを実行する冷却運転モード実行プログラムと、暖機運転モードを実行する暖機運転モード実行プログラムと、が予め記憶されている。また、制御装置50には、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下であるか否かを判定する温度判定プログラムが予め記憶されている。そして、制御装置50には、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下ではない、つまり、温度センサ41により検出される温度が予め定められている閾値温度よりも高いと判定した場合には、冷却運転モードを実行する実行プログラムが予め記憶されている。一方で、制御装置50には、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下であると判定した場合には、暖機運転モードを実行する実行プログラムが予め記憶されている。
【0029】
制御装置50には、冷却運転モードが実行されると、第1切替弁31が開弁状態となるように第1切替弁31の駆動を制御するとともに、第2切替弁32が閉弁状態となるように第2切替弁32の駆動を制御するプログラムが予め記憶されている。したがって、制御装置50によって冷却運転モードが実行されると、弁機構30は、圧縮機12から吐出された冷媒における凝縮器13への流れを許容するとともに圧縮機12から吐出された冷媒におけるバイパス通路22への流れを遮断する第1状態に切り替えられる。
【0030】
一方、制御装置50には、暖機運転モードが実行されると、第1切替弁31が閉弁状態となるように第1切替弁31の駆動を制御するとともに、第2切替弁32が開弁状態となるように第2切替弁32の駆動を制御するプログラムが予め記憶されている。したがって、制御装置50によって暖機運転モードが実行されると、弁機構30は、圧縮機12から吐出された冷媒における凝縮器13への流れを遮断するとともに圧縮機12から吐出された冷媒におけるバイパス通路22への流れを許容する第2状態に切り替えられる。したがって、弁機構30は、第1状態と第2状態とに切替可能に構成されている。
【0031】
また、制御装置50には、暖機運転モードが実行されると、ヒータ40を駆動させるプログラムが予め記憶されている。したがって、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、弁機構30を第1状態から第2状態に切り替えるとともにヒータ40を駆動させる制御部として機能している。
【0032】
制御装置50には、暖機運転モードが実行されると、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差よりも大きいか否かを判定する判定プログラムが予め記憶されている。そして、制御装置50は、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差よりも大きいと判定した場合、ヒータ40におけるアキュムレータ16内の冷媒に対する加熱度合を大きくする。具体的には、制御装置50には、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差よりも大きいと判定した場合、ヒータ40の温度を上げるプログラムが予め記憶されている。
【0033】
一方で、制御装置50は、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差以下であると判定した場合、ヒータ40におけるアキュムレータ16内の冷媒に対する加熱度合を小さくする。具体的には、制御装置50には、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差以下であると判定した場合、ヒータ40の温度を下げるプログラムが予め記憶されている。このように、制御装置50には、温度センサ41により検出される温度に基づいて、ヒータ40におけるアキュムレータ16内の冷媒に対する加熱度合を制御する加熱制御プログラムが予め記憶されている。したがって、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度に基づいて、ヒータ40における冷媒に対する加熱度合を制御する。
【0034】
また、制御装置50には、冷却運転モードが実行されると、湿度センサ42により検出された湿度が予め定められた閾値湿度よりも高いか否かを判定する湿度判定プログラムが予め記憶されている。そして、制御装置50には、湿度センサ42により検出された湿度が予め定められた閾値湿度よりも高いと判定した場合、ヒータ40を駆動させるプログラムが予め記憶されている。したがって、制御装置50は、弁機構30が第1状態に切り替えられているときに、電池モジュールM1の雰囲気湿度が予め定められた閾値湿度よりも高い場合、ヒータ40を駆動させる。一方で、制御装置50には、湿度センサ42により検出された湿度が予め定められた閾値湿度以下であると判定した場合、ヒータ40の駆動を停止させるプログラムが予め記憶されている。なお、湿度センサ42により検出された湿度が予め定められた閾値湿度よりも高いと、アキュムレータ16外で空気が凝縮して結露が生じると想定されており、この閾値湿度は、予め実験等によって求められている。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められている閾値温度よりも高いと判定すると、冷却運転モードを実行し、第1切替弁31が開弁状態となるように第1切替弁31の駆動を制御するとともに、第2切替弁32が閉弁状態となるように第2切替弁32の駆動を制御する。
【0036】
すると、圧縮機12の吐出口12aから第1配管17へ吐出された高温高圧のガス冷媒は、第1配管17及び凝縮器13の供給口13aを介して凝縮器13に供給される。凝縮器13に供給されたガス冷媒は、例えば、外気との凝縮器13を介した熱交換が行われることにより凝縮されて液化する。凝縮器13で凝縮されて液化した高温高圧の液冷媒は、凝縮器13の排出口13bから第2配管18に排出され、膨張弁14の供給口14aを介して膨張弁14内を通過する際に減圧され、低温低圧の冷媒となって膨張弁14の排出口14bを介して第3配管19に排出される。第3配管19に排出された冷媒は、蒸発器15の入口15aを介して蒸発器15の内部を流れる。そして、蒸発器15の内部を流れる冷媒と電池モジュールM1との蒸発器15を介した熱交換が行われて、液冷媒がガス冷媒に変化するときに必要となる潜熱によって、電池モジュールM1が冷却される。
【0037】
蒸発器15の内部を通過した冷媒は、蒸発器15の出口15bを介して第4配管20に流出する。そして、第4配管20に流出した冷媒は、アキュムレータ16の入口16aを介してアキュムレータ16の内部に供給され、アキュムレータ16内において液冷媒とガス冷媒とに分離される。アキュムレータ16内の液冷媒は、アキュムレータ16内に貯留される。一方で、アキュムレータ16内のガス冷媒は、アキュムレータ16の出口16bを介して第5配管21に排出されるとともに第5配管21及び圧縮機12の吸入口12bを介して圧縮機12に吸入される。
【0038】
一方、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下であると判定すると、暖機運転モードを実行し、第1切替弁31が閉弁状態となるように第1切替弁31の駆動を制御するとともに、第2切替弁32が開弁状態となるように第2切替弁32の駆動を制御する。さらに、制御装置50は、ヒータ40を駆動する。
【0039】
図2は、冷媒のエンタルピと圧力との関係を表したモリエル線図を示している。図2において、横軸は、冷媒のエンタルピであり、縦軸は、冷媒の圧力である。図2に示すように、上方に膨らむように延びる曲線において、その頂点である臨界点CPよりも左側に描かれた曲線は飽和液線L1であり、臨界点CPよりも右側に描かれた曲線は飽和蒸気線L2である。飽和液線L1及び飽和蒸気線L2によって囲われた領域は、冷媒が気液二相状態である二相域A1である。飽和液線L1よりも左側の領域は、冷媒が過冷却液状態である過冷却液域A2である。飽和蒸気線L2よりも右側の領域は、冷媒が過熱ガス状態である過熱ガス域A3である。
【0040】
ここで、図2に示す実線L10は、制御装置50が暖機運転モードを実行しているときの冷凍サイクル11の状態を示している。実線L10において飽和蒸気線L2上に存在する状態点a1は、アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の状態を示している。したがって、アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒は、飽和蒸気である。
【0041】
ここで、図2に示す破線L20は、例えば、制御装置50が、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下であると判定したとしても、ヒータ40の駆動を停止したままとした場合の冷凍サイクル11の状態を比較例として示している。破線L20において飽和蒸気線L2上に存在する状態点a11は、アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の状態を示している。
【0042】
本実施形態では、制御装置50によって暖機運転モードが実行されると、ヒータ40が駆動して、ヒータ40によって、アキュムレータ16が加熱されることにより、アキュムレータ16内の冷媒が加熱される。すると、実線L10の状態点a1と破線L20の状態点a11とを比較して分かるように、ヒータ40によってアキュムレータ16内の冷媒を加熱しない場合に比べると、アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力が上がる。したがって、ヒータ40は、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒を加熱してアキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力を上げる。アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力が上がると、冷媒の熱力学的特性により、アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の温度である飽和蒸気温度が上がる。アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の飽和蒸気温度が上がると、冷媒の二相域A1での等温線が上昇する。その結果、アキュムレータ16内の冷媒を加熱しない場合に比べると、高い温度で冷媒の凝縮が始まることになる。
【0043】
例えば、図2に示す実線L30は、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度に相当する等温線を表している。制御装置50は、ヒータ40によってアキュムレータ16内の冷媒が加熱されて、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度に相当する等温線よりも冷媒の温度の等温線が上昇するように、ヒータ40の駆動を制御している。
【0044】
アキュムレータ16の出口16bから第5配管21を介して圧縮機12の吸入口12bに吸入されたガス冷媒は、圧縮機12によって圧縮される。これにより、実線L10において過熱ガス域A3に存在する状態点a2に示すように、高温高圧のガス冷媒となる。圧縮機12の吐出口12aから第1配管17へ吐出された高温高圧のガス冷媒は、第1配管17からバイパス通路22に流出し、バイパス通路22を流れる。バイパス通路22を流れるガス冷媒は、オリフィス23を通過する際に減圧されて、実線L10において過熱ガス域A3に存在する状態点a3に示すように、高温低圧のガス冷媒となる。したがって、オリフィス23は、圧縮機12から吐出された冷媒を減圧する絞りである。
【0045】
オリフィス23によって減圧されて高温低圧となったガス冷媒は、バイパス通路22から第3配管19の途中に流出し、第3配管19を流れて蒸発器15の入口15aに供給される。したがって、バイパス通路22は、凝縮器13及び膨張弁14を迂回して圧縮機12から吐出された冷媒を蒸発器15に供給する。
【0046】
蒸発器15の入口15aに供給されたガス冷媒は、蒸発器15の内部を流れる。そして、蒸発器15の内部を流れるガス冷媒と電池モジュールM1との蒸発器15を介した熱交換が行われる。ここで、制御装置50は、ヒータ40によってアキュムレータ16内の冷媒が加熱されて、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度に相当する等温線よりも冷媒の温度の等温線が上昇するように、ヒータ40の駆動を制御している。よって、蒸発器15を流れるガス冷媒の温度が、電池モジュールM1の温度まで低下するよりも先に、飽和蒸気温度に達するため、ガス冷媒の凝縮が始まって、ガス冷媒が液冷媒に変化するときに必要となる凝縮潜熱によって、電池モジュールM1が暖められる。このとき、冷媒の温度は、等温線上となるため、冷媒の温度は一定となる。したがって、冷媒と電池モジュールM1との温度差が維持されるため、電池モジュールM1全体が均一に暖められる。
【0047】
実線L10において二相域A1に存在する状態点a4は、蒸発器15の出口15bの冷媒の状態を示している。そして、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒は、第4配管20及びアキュムレータ16の入口16aを介してアキュムレータ16の内部に供給され、アキュムレータ16内において液冷媒とガス冷媒とに分離される。アキュムレータ16内に存在する液冷媒の一部はヒータ40によって加熱されて気化し、アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒は、実線L10において状態点a1で示すように、飽和蒸気となる。
【0048】
また、制御装置50は、暖機運転モードを実行している際に、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差よりも大きいと判定した場合、ヒータ40の温度を上げる。これにより、ヒータ40におけるアキュムレータ16内の冷媒に対する加熱度合が大きくなり、アキュムレータ16内の冷媒に対する加熱度合を大きくする前に比べると、さらに高い温度で冷媒の凝縮が始まることになる。したがって、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差よりも大きい場合であっても、電池モジュールM1全体が均一に暖められ易くなる。
【0049】
一方で、制御装置50は、暖機運転モードを実行している際に、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差以下であると判定した場合、ヒータ40の温度を下げる。これにより、ヒータ40におけるアキュムレータ16内の冷媒に対する加熱度合が小さくなり、アキュムレータ16内の冷媒に対する加熱度合を小さくする前に比べると、低い温度で冷媒の凝縮が始まることになる。したがって、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差以下であるにもかかわらず、ヒータ40の温度を不必要に上げてしまうことが回避される。
【0050】
制御装置50は、冷却運転モードを実行している際に、湿度センサ42により検出された湿度が予め定められた閾値湿度よりも高いと判定した場合、ヒータ40を駆動させる。これにより、例えば、アキュムレータ16外で空気が凝縮して結露が生じていても、ヒータ40からの熱によって結露が蒸発する。したがって、アキュムレータ16外の結露が抑えられる。一方で、制御装置50は、湿度センサ42により検出された湿度が予め定められた閾値湿度以下であると判定した場合、ヒータ40の駆動を停止させる。
【0051】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)電池温調システム10は、蒸発器15の出口15bからアキュムレータ16の出口16bまでに至る通路の途中で、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒を加熱してアキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力を上げるヒータ40を備えている。これによれば、蒸発器15の出口15bからアキュムレータ16の出口16bまでに至る通路の途中で、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒がヒータ40により加熱され、アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力が上がる。すると、冷媒の熱力学的特性により、アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の温度である飽和蒸気温度が上がる。アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の飽和蒸気温度が上がると、冷媒の二相域A1での等温線が上昇する。その結果、蒸発器15の出口15bからアキュムレータ16の出口16bまでに至る通路の途中で、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒をヒータ40で加熱しない場合に比べると、高い温度で冷媒の凝縮が始まることになる。したがって、蒸発器15を流れるガス冷媒と電池モジュールM1との蒸発器15を介した熱交換が行われて、蒸発器15を流れるガス冷媒の温度が、電池モジュールM1の温度まで低下するよりも先に、飽和蒸気温度に達する。このため、ガス冷媒の凝縮が始まって、ガス冷媒が液冷媒に変化するときに必要となる凝縮潜熱によって、電池モジュールM1が暖められる。このとき、冷媒の温度は、等温線上となるため、冷媒の温度は一定となる。したがって、冷媒と電池モジュールM1との温度差が維持されるため、電池モジュールM1全体を均一に暖めることができる。
【0052】
(2)ヒータ40が、アキュムレータ16を加熱する位置に設けられていることにより、アキュムレータ16内の冷媒が加熱されるため、アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力を好適に上げることができる。
【0053】
(3)制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、弁機構30を第1状態から第2状態に切り替える。これにより、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、圧縮機12から吐出された高温高圧の冷媒がバイパス通路22に流れ、オリフィス23を通過することで減圧された高温低圧の冷媒を蒸発器15に流すことができる。そして、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、ヒータ40を駆動させる。これにより、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒がヒータ40により加熱され、アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力を上げることができる。
【0054】
(4)制御装置50は、温度センサ41により検出される温度に基づいて、ヒータ40における冷媒に対する加熱度合を制御するため、電池モジュールM1全体を効率良く均一に暖めることができる。
【0055】
(5)制御装置50は、弁機構30が第1状態に切り替えられているときに、電池モジュールM1の雰囲気湿度が予め定められた閾値湿度よりも高い場合、ヒータ40を駆動させるため、アキュムレータ16外で空気が凝縮して結露が生じたとしても、ヒータ40からの熱によって結露を蒸発させることができる。
【0056】
(6)本実施形態の電池温調システム10によれば、電池モジュールM1を冷却する際に用いられる蒸発器15を利用して、電池モジュールM1を暖めることもできるため、例えば、電池モジュールM1を暖めるために、電池モジュールM1にヒータとの接触部位を確保する必要が無く、電池モジュールM1の周囲の省スペース化を図ることができる。
【0057】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0058】
図3に示すように、ヒータ40は、蒸発器15とアキュムレータ16とを接続する第4配管20を加熱するようにしてもよい。したがって、ヒータ40は、蒸発器15の出口15bから流出されて第4配管20内を流れる冷媒を加熱する構成であってもよい。このような構成であっても、アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力が上がる。要は、ヒータ40は、蒸発器15の出口15bからアキュムレータ16の出口16bまでに至る通路の途中で、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒を加熱してアキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力を上げることが可能な構成であればよい。このような構成であれば、上記実施形態の効果(1)と同様な効果を得ることができる。
【0059】
図4に示すように、バイパス通路22の一端が、第1配管17の途中に接続されるとともに、バイパス通路22の他端が、第2配管18の途中に接続されていてもよい。このように、バイパス通路22が、凝縮器13のみを迂回していてもよい。この場合、制御装置50によって暖機運転モードが実行されると、圧縮機12の吐出口12aから第1配管17へ吐出された高温高圧のガス冷媒は、第1配管17からバイパス通路22に流出し、バイパス通路22を流れる。バイパス通路22を流れるガス冷媒は、オリフィス23を通過する際に減圧されて、高温低圧のガス冷媒となる。オリフィス23によって減圧されて高温低圧となったガス冷媒は、バイパス通路22から第2配管18の途中に流出し、第2配管18を流れて、膨張弁14を通過する際にさらに減圧される。そして、膨張弁14によって減圧された高温低圧のガス冷媒は、第3配管19を流れて、蒸発器15の入口15aに供給される。
【0060】
図5に示すように、図4に示す実施形態において、電池温調システム10は、バイパス通路22にオリフィス23が設けられていない構成であってもよい。この場合であっても、制御装置50によって暖機運転モードが実行された場合には、バイパス通路22を流れて第2配管18の途中に流出したガス冷媒は、膨張弁14を通過する際に減圧されて、高温低圧のガス冷媒となる。
【0061】
図6に示すように、電池温調システム10は、バイパス通路22及び弁機構30を備えていない構成であってもよい。ここで、例えば、電池温調システム10は、ファン60を備え、凝縮器13に供給されたガス冷媒と、ファン60の駆動によって凝縮器13に向けて送られる空気との凝縮器13を介した熱交換が行われることにより、ガス冷媒が凝縮される場合を考える。この場合、ファン60の駆動によって凝縮器13に向けて送られる空気は、凝縮器13を通過する冷媒を冷却する熱交換媒体であり、ファン60は、凝縮器13に熱交換媒体を供給する供給装置である。
【0062】
制御装置50は、ファン60と電気的に接続されている。制御装置50は、ファン60の駆動を制御する。制御装置50は、ファン60を駆動して凝縮器13に空気を供給する第1状態と、ファン60を停止して凝縮器13への空気の供給を停止する第2状態と、に切替可能である。そして、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、第1状態から第2状態に切り替えるとともにヒータ40を駆動させる。
【0063】
これによれば、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、ファン60を停止し、第1状態から第2状態に切り替えて凝縮器13への空気の供給を停止するため、圧縮機12から吐出された高温高圧の冷媒が凝縮器13によって凝縮されることなく、膨張弁14を通過することで減圧される。したがって、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、膨張弁14によって減圧された高温低圧の冷媒を蒸発器15に流すことができる。
【0064】
そして、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、ヒータ40を駆動させる。これにより、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒がヒータ40により加熱され、アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力を上げることができる。アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力が上がると、冷媒の熱力学的特性により、アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の温度である飽和蒸気温度が上がる。
【0065】
アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の飽和蒸気温度が上がると、冷媒の二相域での等温線が上昇する。その結果、蒸発器15の出口15bからアキュムレータ16の出口16bまでに至る通路の途中で、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒をヒータ40で加熱しない場合に比べると、高い温度で冷媒の凝縮が始まることになる。したがって、蒸発器15を流れるガス冷媒と電池モジュールM1との蒸発器15を介した熱交換が行われて、蒸発器15を流れるガス冷媒の温度が、電池モジュールM1の温度まで低下するよりも先に、飽和蒸気温度に達する。このため、ガス冷媒の凝縮が始まって、ガス冷媒が液冷媒に変化するときに必要となる凝縮潜熱によって、電池モジュールM1が暖められる。このとき、冷媒の温度は、等温線上となるため、冷媒の温度は一定となる。したがって、冷媒と電池モジュールM1との温度差が維持されるため、電池モジュールM1全体を均一に暖めることができる。
【0066】
図7に示すように、電池温調システム10は、バイパス通路22及び弁機構30を備えていない構成であってもよい。ここで、例えば、電池温調システム10は、冷却水回路70を備え、冷却水回路70を流れる冷却水(LLC:Long Life Coolant)が凝縮器13に供給され、凝縮器13に供給されたガス冷媒と、凝縮器13に供給された冷却水との凝縮器13を介した熱交換が行われることにより、ガス冷媒が凝縮される場合を考える。
【0067】
冷却水回路70は、冷却水が循環する循環通路を構成する循環配管71と、循環配管71内を流れる冷却水を圧送する圧送ポンプ72と、ラジエータ73と、を有している。循環配管71の一部分は、凝縮器13を通過している。また、循環配管71の一部分は、ラジエータ73を通過している。循環配管71内の冷却水は、圧送ポンプ72が駆動することにより、循環配管71内を循環する。また、電池温調システム10は、ラジエータ73に向けて空気を送る冷却水用ファン74を備えている。そして、ラジエータ73を通過する冷却水と、冷却水用ファン74の駆動によってラジエータ73に向けて送られる空気とのラジエータ73を介した熱交換が行われることにより、冷却水が冷却される。ラジエータ73において冷却された冷却水は、凝縮器13を通過する。そして、凝縮器13に供給されたガス冷媒と、凝縮器13に供給された冷却水との凝縮器13を介した熱交換が行われることにより、ガス冷媒が凝縮される。したがって、圧送ポンプ72の駆動によって循環配管71内を循環し、凝縮器13に供給される冷却水は、凝縮器13を通過する冷媒を冷却する熱交換媒体であり、圧送ポンプ72は、凝縮器13に熱交換媒体を供給する供給装置である。
【0068】
制御装置50は、圧送ポンプ72と電気的に接続されている。制御装置50は、圧送ポンプ72の駆動を制御する。制御装置50は、圧送ポンプ72を駆動して凝縮器13に冷却水を供給する第1状態と、圧送ポンプ72を停止して凝縮器13への冷却水の供給を停止する第2状態と、に切替可能である。そして、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、第1状態から第2状態に切り替えるとともにヒータ40を駆動させる。
【0069】
これによれば、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、圧送ポンプ72を停止し、第1状態から第2状態に切り替えて凝縮器13への冷却水の供給を停止する。このため、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、圧縮機12から吐出された高温高圧の冷媒が凝縮器13によって凝縮されることなく、膨張弁14を通過することで減圧される。したがって、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、膨張弁14によって減圧された高温低圧の冷媒を蒸発器15に流すことができる。
【0070】
そして、制御装置50は、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、ヒータ40を駆動させる。これにより、温度センサ41により検出される温度が予め定められた閾値温度以下である場合に、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒がヒータ40により加熱され、アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力を上げることができる。アキュムレータ16の出口16bの飽和蒸気圧力が上がると、冷媒の熱力学的特性により、アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の温度である飽和蒸気温度が上がる。
【0071】
アキュムレータ16の出口16bのガス冷媒の飽和蒸気温度が上がると、冷媒の二相域での等温線が上昇する。その結果、蒸発器15の出口15bからアキュムレータ16の出口16bまでに至る通路の途中で、蒸発器15の出口15bから流出される冷媒をヒータ40で加熱しない場合に比べると、高い温度で冷媒の凝縮が始まることになる。したがって、蒸発器15を流れるガス冷媒と電池モジュールM1との蒸発器15を介した熱交換が行われて、蒸発器15を流れるガス冷媒の温度が、電池モジュールM1の温度まで低下するよりも先に、飽和蒸気温度に達する。このため、ガス冷媒の凝縮が始まって、ガス冷媒が液冷媒に変化するときに必要となる凝縮潜熱によって、電池モジュールM1が暖められる。このとき、冷媒の温度は、等温線上となるため、冷媒の温度は一定となる。したがって、冷媒と電池モジュールM1との温度差が維持されるため、電池モジュールM1全体を均一に暖めることができる。
【0072】
○ 実施形態において、制御装置50は、ヒータ40におけるアキュムレータ16内の冷媒に対する加熱度合を制御しない構成であってもよい。すなわち、制御装置50は、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差よりも大きかったとしても、ヒータ40の温度を上げなくてもよい。また、制御装置50は、電池モジュールM1における蒸発器15の入口15aに対応する部位の温度と、電池モジュールM1における蒸発器15の出口15bに対応する部位の温度との差が予め定められた温度差以下であったとしても、ヒータ40の温度を下げなくてもよい。
【0073】
○ 実施形態において、湿度センサ42は、電池モジュールM1を収容するケース内の湿度を検出したが、これに限らず、例えば、車両の車室内の湿度を検出するようにしてもよい。車両の車室内の湿度は、電池モジュールM1の雰囲気湿度と相関がある。要は、湿度センサ42は、電池モジュールM1の雰囲気湿度を検出できればよく、その湿度の検出対象は、電池モジュールM1の雰囲気湿度と相関があれば、特に限定されるものではない。
【0074】
○ 実施形態において、制御装置50は、弁機構30が第1状態に切り替えられているときに、例えば、外気温が予め定められた閾値温度以下であったり、冷媒の温度が予め定められた閾値温度以下であったりした場合であっても、ヒータ40を駆動させてもよい。なお、外気温が予め定められた閾値温度以下であると、アキュムレータ16外で空気が凝縮して結露が生じると想定されており、この閾値温度は、予め実験等によって求められている。また、冷媒の温度が予め定められた閾値温度以下であると、アキュムレータ16外で空気が凝縮して結露が生じると想定されており、この閾値温度は、予め実験等によって求められている。これによれば、アキュムレータ16外で空気が凝縮して結露が生じたとしても、ヒータ40からの熱によって結露を蒸発させることができる。要は、弁機構30が第1状態に切り替えられているときに、制御装置50がヒータ40を駆動させる条件として、湿度センサ42によって検出される湿度を用いなくてもよい。
【0075】
○ 実施形態において、制御装置50は、弁機構30が第1状態に切り替えられているときに、アキュムレータ16内の湿度が予め定められた閾値湿度よりも高い場合であっても、ヒータ40を駆動させなくてもよい。
【0076】
○ 実施形態において、ヒータ40は、例えば、ペルチェ素子等の熱電素子を用いた構成であってもよい。
○ 実施形態において、弁機構30は、第1切替弁31及び第2切替弁32を有していたが、これに限らず、例えば、第1配管17におけるバイパス通路22との接続位置に設けられる三方弁であってもよい。三方弁は、圧縮機12から吐出されたガス冷媒における凝縮器13への流れを許容するとともに圧縮機12から吐出されたガス冷媒におけるバイパス通路22への流れを遮断する第1状態に切替可能に構成されている。また、三方弁は、圧縮機12から吐出されたガス冷媒における凝縮器13への流れを遮断するとともに圧縮機12から吐出されたガス冷媒におけるバイパス通路22への流れを許容する第2状態に切替可能に構成されている。要は、弁機構30は、第1状態と第2状態とに切替可能に構成されていればよい。
【符号の説明】
【0077】
M1…電池モジュール、10…電池温調システム、11…冷凍サイクル、12…圧縮機、12b…吸入口、13…凝縮器、14…絞りである膨張弁、15…熱交換器である蒸発器、15b…出口、16…アキュムレータ、16b…出口、22…バイパス通路、23…絞りであるオリフィス、30…弁機構、40…ヒータ、41…温度検出部としての温度センサ、50…制御部として機能する制御装置、60…供給装置であるファン、72…供給装置である圧送ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7