(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034174
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】防護ガウン
(51)【国際特許分類】
A41D 13/12 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
A41D13/12 109
A41D13/12 190
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137840
(22)【出願日】2020-08-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (イ) 公開者名:株式会社青島グレース日本 寄付した日:2020年7月10日 寄付の場所:浜松市役所(静岡県浜松市中区元城町103-2) 公開者名:株式会社中日新聞社 株式会社静岡新聞社 新聞掲載日:2020年7月14日 刊行物: 中日新聞 令和2年7月14日付朝刊第19面 静岡新聞 令和2年7月14日付朝刊第16面
(71)【出願人】
【識別番号】520312810
【氏名又は名称】株式会社青島グレース日本
(71)【出願人】
【識別番号】520312821
【氏名又は名称】有限会社神谷縫製
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】富田 経仁
(72)【発明者】
【氏名】神谷 直孝
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA02
3B011AB06
3B011AC21
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】防護効果が損なわれることなく、使用感を高めることができる、防護ガウンを提供する。
【解決手段】防護ガウン10は、前面シート14と、背面シート16と、左袖シート18と、右袖シート20と、開口部22と、左首紐24と、右首紐26とを備えている。左首紐24は、開口部22の内周縁における左右方向の中心線Qよりも左側に位置する第1繋ぎ部58から一続きに延びて形成されており、右首紐26は、開口部22の内周縁における左右方向の中心線Qよりも右側に位置する第2繋ぎ部60から一続きに延びて形成されている。第1繋ぎ部58および第2繋ぎ部60は、背面シート16の上端部に設けられている。左首紐24における第1繋ぎ部58に繋がった第1基端部24aは、第1繋ぎ部58から右方へ延びて形成されており、右首紐26における第2繋ぎ部60に繋がった第2基端部26aは、第2繋ぎ部60から左方へ延びて形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の胴体の前面を覆うシート状の前面シートと、
使用者の胴体の背面を覆うシート状の背面シートと、
前記前面シートの左側縁から左方へ延びて形成されたシート状の第1左袖構成部と前記背面シートの左側縁から左方へ延びて形成されたシート状の第2左袖構成部とによって筒状に形成され、使用者の左腕が通される左袖シートと、
前記前面シートの右側縁から右方へ延びて形成されたシート状の第1右袖構成部と前記背面シートの右側縁から右方へ延びて形成されたシート状の第2右袖構成部とによって筒状に形成され、使用者の右腕が通される右袖シートと、
前記前面シートおよび前記背面シートの上端部の左右方向中央部に設けられ、使用者の首が通される開口を構成する開口部と、
前記開口部の内周縁における左右方向の中心線よりも左側に位置する第1繋ぎ部から一続きに延びて形成された帯状の左首紐と、
前記開口部の内周縁における左右方向の中心線よりも右側に位置する第2繋ぎ部から一続きに延びて形成された帯状の右首紐とを備え、
前記第1繋ぎ部および前記第2繋ぎ部は、前記背面シートの上端部に設けられており、
前記左首紐における前記第1繋ぎ部に繋がった第1基端部は、前記第1繋ぎ部から右方へ延びて形成されており、
前記右首紐における前記第2繋ぎ部に繋がった第2基端部は、前記第2繋ぎ部から左方へ延びて形成されている、防護ガウン。
【請求項2】
前記左首紐における前記第1基端部の先端には、前記左首紐を下方へ案内する第1下方案内部が下方へ延びて設けられており、
前記右首紐における前記第2基端部の先端には、前記右首紐を下方へ案内する第2下方案内部が下方へ延びて形成されている、請求項1に記載の防護ガウン。
【請求項3】
前記第1基端部は、前記第1繋ぎ部に近づくにつれて幅が広くなるように形成されており、
前記第2基端部は、前記第2繋ぎ部に近づくにつれて幅が広くなるように形成されている、請求項1または2のいずれか1項に記載の防護ガウン。
【請求項4】
前記前面シートは、使用者の胴体の前面上部を覆う上側前面シートと使用者の胴体の前面下部を覆う下側前面シートとを有しており、
前記第1左袖構成部および前記第1右袖構成部は、前記上側前面シートから左方および右方へ延びて形成されており、
前記上側前面シートの下端部と前記下側前面シートの上端部とが接合されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の防護ガウン。
【請求項5】
前記背面シートは、左右方向の中心線を挟んで互いに間隔を隔てて形成された左側の第1背面シートおよび右側の第2背面シートを有しており、
前記背面シートの上端部に設けられた前記開口部の背面側の内周部は、前記第1背面シートの右端部で構成された第1内周部と前記第2背面シートの左端部で構成された第2内周部とに分割されており、
前記第1内周部の内周縁に前記第1繋ぎ部が設けられており、
前記第2内周部の内周縁に前記第2繋ぎ部が設けられている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の防護ガウン。
【請求項6】
前記開口部、前記左首紐および前記右首紐を同一平面上に配置した状態において、前記左首紐および前記右首紐は、前記第1内周部と前記第2内周部との間に構成された空間を通して前記開口の外側へ延びて形成されている、請求項5に記載の防護ガウン。
【請求項7】
前記開口部は、孔状の前記開口を構成するように環状に形成されており、
前記開口部、前記左首紐および前記右首紐を同一平面上に配置した状態において、前記左首紐および前記右首紐は、前記開口部の内側に湾曲または屈曲して形成されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の防護ガウン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスなどの病原体から身体を防護するために医療従事者などが着用する防護ガウンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な種類の防護ガウンがあり、その一例が下記特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたエプロン(防護ガウン)は、前面部および背面部を備えており、前面部および背面部の上端部であって、これらの左右方向の中央部には、首通し孔が設けられている。前面部および背面部の左端部には、これらが筒状に接合されることによって左側の袖部が形成されており、前面部および背面部の右端部には、これらが筒状に接合されることによって右側の袖部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたエプロン(防護ガウン)では、首通し孔のサイズが使用者の頭のサイズに比べて小さすぎる場合には、着用する際に首通し孔の内周部が破れるおそれがあった。一方、首通し孔のサイズが使用者の頭のサイズに比べて大きすぎる場合には、着用したときに首通し孔の内周縁と使用者の首との間の隙間幅が広くなりすぎるため、エプロン(防護ガウン)の防護効果が損なわれるおそれがあった。また、左右両側の袖の位置が左右方向へずれ易くなるため、使用感が損なわれるおそれがあった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、防護効果が損なわれることなく、使用感を高めることができる、防護ガウンを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る防護ガウンの特徴は、使用者の胴体の前面を覆うシート状の前面シートと、使用者の胴体の背面を覆うシート状の背面シートと、前記前面シートの左側縁から左方へ延びて形成されたシート状の第1左袖構成部と前記背面シートの左側縁から左方へ延びて形成されたシート状の第2左袖構成部とによって筒状に形成され、使用者の左腕が通される左袖シートと、前記前面シートの右側縁から右方へ延びて形成されたシート状の第1右袖構成部と前記背面シートの右側縁から右方へ延びて形成されたシート状の第2右袖構成部とによって筒状に形成され、使用者の右腕が通される右袖シートと、前記前面シートおよび前記背面シートの上端部の左右方向中央部に設けられ、使用者の首が通される開口を構成する開口部と、前記開口部の内周縁における左右方向の中心線よりも左側に位置する第1繋ぎ部から一続きに延びて形成された帯状の左首紐と、前記開口部の内周縁における左右方向の中心線よりも右側に位置する第2繋ぎ部から一続きに延びて形成された帯状の右首紐とを備え、前記第1繋ぎ部および前記第2繋ぎ部は、前記背面シートの上端部に設けられており、前記左首紐における前記第1繋ぎ部に繋がった第1基端部は、前記第1繋ぎ部から右方へ延びて形成されており、前記右首紐における前記第2繋ぎ部に繋がった第2基端部は、前記第2繋ぎ部から左方へ延びて形成されていることにある。
【0007】
この構成では、第1繋ぎ部および第2繋ぎ部は、背面シートの上端部に設けられており、左袖シートおよび右袖シートは、背面シートから左方および右方へ延びて形成されている。そして、第1繋ぎ部から一続きに延びて帯状の左首紐が形成されており、第2繋ぎ部から一続きに延びて帯状の右首紐が形成されている。左首紐と右首紐とを結んだときには、第1繋ぎ部、背面シートの左側の部分および第2左袖構成部が右方へ引っ張られるとともに、第2繋ぎ部、背面シートの右側の部分および第2右袖構成部が左方へ引っ張られる。したがって、結び目の位置を調整することによって、左袖シートおよび右袖シートの張り具合を調整しながら、開口のサイズを小さくすることが可能であり、病原体からの防護効果が損なわれることを防止しつつ、使用感を高めることができる。
【0008】
また、左首紐における第1繋ぎ部に繋がった第1基端部は、第1繋ぎ部から右方へ延びて形成されており、右首紐における第2繋ぎ部に繋がった第2基端部は、第2繋ぎ部から左方へ延びて形成されている。したがって、左首紐と右首紐とを結ぶときには、第1基端部および第2基端部から第1繋ぎ部および第2繋ぎ部に引張り力を無理なく伝えることが可能であり、第1基端部と第1繋ぎ部との境界部および第2基端部と第2繋ぎ部との境界部が損傷することを防止できる。
【0009】
本発明に係る防護ガウンの他の特徴は、前記左首紐における前記第1基端部の先端には、前記左首紐を下方へ案内する第1下方案内部が下方へ延びて設けられており、前記右首紐における前記第2基端部の先端には、前記右首紐を下方へ案内する第2下方案内部が下方へ延びて形成されていることにある。
【0010】
この構成では、第1下方案内部および第2下方案内部によって左首紐および右首紐を下方へ案内して垂らすことができるので、使用者は、それらの垂れ下がった部分を掴み易い。これにより、左首紐および右首紐を無理に引っ張ることがなくなるため、左首紐および右首紐が損傷することを防止できる。
【0011】
本発明に係る防護ガウンの他の特徴は、前記第1基端部は、前記第1繋ぎ部に近づくにつれて幅が広くなるように形成されており、前記第2基端部は、前記第2繋ぎ部に近づくにつれて幅が広くなるように形成されていることにある。
【0012】
この構成では、左首紐と右首紐とを結ぶときに、第1基端部および第2基端部から第1繋ぎ部および第2繋ぎ部の広い範囲に引張り力を伝えることが可能であり、第1基端部と第1繋ぎ部との境界部および第2基端部と第2繋ぎ部との境界部に引張り力が集中することを抑制して、これらの境界部が損傷することを防止できる。
【0013】
本発明に係る防護ガウンの他の特徴は、前記前面シートは、使用者の胴体の前面上部を覆う上側前面シートと使用者の胴体の前面下部を覆う下側前面シートとを有しており、前記第1左袖構成部および前記第1右袖構成部は、前記上側前面シートから左方および右方へ延びて形成されており、前記上側前面シートの下端部と前記下側前面シートの上端部とが接合されていることにある。
【0014】
この構成では、前面シートが、上側前面シートと下側前面シートとに分割されているので、下側前面シートを長さが異なる他の下側前面シートに変更するだけで、前面シートの全体の長さを簡単に変更することができる。
【0015】
本発明に係る防護ガウンの他の特徴は、前記背面シートは、左右方向の中心線を挟んで互いに間隔を隔てて形成された左側の第1背面シートおよび右側の第2背面シートを有しており、前記背面シートの上端部に設けられた前記開口部の背面側の内周部は、前記第1背面シートの右端部で構成された第1内周部と前記第2背面シートの左端部で構成された第2内周部とに分割されており、前記第1内周部の内周縁に前記第1繋ぎ部が設けられており、前記第2内周部の内周縁に前記第2繋ぎ部が設けられていることにある。
【0016】
この構成では、第1背面シートと第2背面シートとが互いに間隔を隔てて形成されており、開口部の背面側の内周部は、第1内周部と第2内周部とに分割されている。したがって、使用者が防護ガウンを着用するときには、左袖シートおよび右袖シートのそれぞれに後方から左腕および右腕を通した後に、第1内周部と第2内周部との間の空間から開口に首を入れることが可能であり、防護ガウンの着脱作業を簡単に行うことができる。
【0017】
本発明に係る防護ガウンの他の特徴は、前記開口部、前記左首紐および前記右首紐を同一平面上に配置した状態において、前記左首紐および前記右首紐は、前記第1内周部と前記第2内周部との間に構成された空間を通して前記開口の外側へ延びて形成されていることにある。
【0018】
この構成では、左首紐および右首紐が第1内周部と第2内周部との間の空間を通して開口の外側へ延びて形成されているので、左首紐および右首紐を無理なく下方へ垂らすことが可能であり、使用者は、それらの垂れ下がった部分を掴み易い。
【0019】
本発明に係る防護ガウンの他の特徴は、前記開口部は、孔状の前記開口を構成するように環状に形成されており、前記開口部、前記左首紐および前記右首紐を同一平面上に配置した状態において、前記左首紐および前記右首紐は、前記開口部の内側に湾曲または屈曲して形成されていることにある。
【0020】
この構成では、左首紐および右首紐が開口部の内側に湾曲または屈曲して形成されるので、開口部の内側において、互いに結ぶことができる十分な長さの左首紐および右首紐を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る防護ガウンの構成および使用状態を示す図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後方から見た斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る防護ガウンの構成を示す正面図である。
【
図3】第1実施形態に係る防護ガウンの構成を示す背面図である。
【
図4】第1実施形態に係る防護ガウンの開口部の構成を示す拡大図である。
【
図5】第1実施形態に係る防護ガウンの製造方法を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る防護ガウンの構成および使用状態を示す図であり、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後方から見た斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係る防護ガウンの構成を示す正面図である。
【
図8】第2実施形態に係る防護ガウンの構成を示す背面図である。
【
図9】第2実施形態に係る防護ガウンの開口部の構成を示す拡大図である。
【
図10】第2実施形態に係る防護ガウンの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る防護ガウンの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(第1実施形態に係る防護ガウンの構成)
図1は、第1実施形態に係る防護ガウン10の構成および使用状態を示す図であり、
図1(A)は前方から見た斜視図、
図1(B)は後方から見た斜視図である。
図2は、防護ガウン10の構成を示す正面図である。
図3は、防護ガウン10の構成を示す背面図である。
図4は、防護ガウン10の開口部22の構成を示す拡大図である。
図5は、防護ガウン10の製造方法を示す図である。以下の説明で用いる前後、左右、上下の各方向は、使用者Mから見た方向を基準として規定しており、これらの各方向は、図中に矢印で示した各方向と一致する。
【0024】
図1(A),(B)に示す防護ガウン10は、ウイルスなどの病原体から身体を防護するために医療従事者などの使用者Mが着用するガウンであり、
図5に示す1枚のシート12から切り取った第1シート12aおよび第2シート12bを折り曲げたり接合したりすることによって構成されている。なお、シート12の材料は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、ポリエチレンおよびポリ塩化ビニルなどの合成樹脂が用いられている。また、第1シート12aおよび第2シート12bを接合するための接合手段は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、熱溶着が用いられている。
【0025】
図1(A),(B)に示すように、防護ガウン10は、具体的には、使用者Mの胴体の前面を覆うシート状の前面シート14と、使用者Mの胴体の背面を覆うシート状の背面シート16(
図1(B))と、使用者Mの左腕が通される左袖シート18と、使用者Mの右腕が通される右袖シート20と、使用者Mの首が通される開口Eを構成する開口部22とを備えている。また、
図1(B)に示すように、防護ガウン10は、左首紐24と、右首紐26と、左腰紐28と、右腰紐30とを備えている。
【0026】
図1(A)に示すように、前面シート14は、使用者Mの胴体の前面上部を覆う上側前面シート32と使用者Mの胴体の前面下部を覆う下側前面シート34とを有している。
図2に示す上側前面シート32の幅W1は、使用者Mの胴体の前面上部の幅に対応するように定められており、下側前面シート34の幅W2は、使用者Mの胴体の前面下部の幅よりも十分に広く定められている。したがって、
図1(B)に示すように、使用者Mが防護ガウン10を着用したとき、下側前面シート34の幅方向の両端部は、使用者Mの胴体の側面を覆うように配置される。
【0027】
図5に示すように、本実施形態では、上側前面シート32と下側前面シート34とが別々に形成されており、上側前面シート32の下端部32aと下側前面シート34の上端部34aとが熱溶着によって接合されている。本実施形態の左腰紐28および右腰紐30は、下側前面シート34の左側端部および右側端部のそれぞれの上端縁から上方へ一続きに延びて帯状に形成されている。
図1(B)に示すように、使用者Mが防護ガウン10を着用するとき、左腰紐28と右腰紐30とが使用者Mの胴体の背面側(後方)で結ばれる。
【0028】
図3に示すように、背面シート16は、左右方向の中心線Qを挟んで互いに間隔を隔てて形成された左側の第1背面シート36および右側の第2背面シート38を有している。第1背面シート36および第2背面シート38は、前面シート14の上部を構成する上側前面シート32に対向して設けられている。第1背面シート36および第2背面シート38のそれぞれの上端縁36a,38aは、上側前面シート32の上端縁32bに繋がっている。第1背面シート36の右端部36bと第2背面シート38の左端部38bとの間には、前面シート14と背面シート16との間の空間Fに連通する空間Gが構成されており、使用者Mが防護ガウン10を着用するときには、使用者Mの胴体が空間Gを通して空間Fに入れられる。
【0029】
図2および
図3に示す左袖シート18は、
図2に示す前面シート14における上側前面シート32の左側縁32cから左方へ延びて形成されたシート状の第1左袖構成部40と、
図3に示す背面シート16における第1背面シート36の左側縁36cから左方へ延びて形成されたシート状の第2左袖構成部42とによって筒状に形成されている。
図5に示すように、左袖シート18は、第1左袖構成部40および第2左袖構成部42を有する第1シート12aを2つ折りにした後、これらの下端部40a,42aを互いに熱溶着で接合することによって構成されている。したがって、
図2および
図3に示すように、左袖シート18の上端縁18aは、左右方向へ延びる直線状に形成されている。左袖シート18の下端縁18bは、先端に向かうにつれて左袖シート18の幅が狭くなるように傾斜して形成されている。
【0030】
図2および
図3に示す右袖シート20は、
図2に示す前面シート14における上側前面シート32の右側縁32dから右方へ延びて形成されたシート状の第1右袖構成部44と、
図3に示す背面シート16における第2背面シート38の右側縁38cから右方へ延びて形成されたシート状の第2右袖構成部46とによって筒状に形成されている。
図5に示すように、右袖シート20は、第1右袖構成部44および第2右袖構成部46を有する第1シート12aを2つ折りにした後、これらの下端部44a,46aを互いに熱溶着で接合することによって構成されている。したがって、
図2および
図3に示すように、右袖シート20の上端縁20aは、左右方向へ延びる直線状に形成されている。右袖シート20の下端縁20bは、先端に向かうにつれて右袖シート20の幅が狭くなるように傾斜して形成されている。
【0031】
図4は、開口部22、左首紐24および右首紐26を同一平面上に配置した状態を示す拡大図である。
図4では、説明の便宜上、左右方向に対して直交する方向を上下方向としている。
図4に示すように、開口部22は、前面シート14および背面シート16の上端部の左右方向中央部に設けられている。前面シート14の上端部に設けられた開口部22の前面側の内周部50は、円弧状に連続して形成されている。背面シート16の上端部に設けられた開口部22の背面側の内周部52は、第1背面シート36の右端部36bで構成された第1内周部54と、第2背面シート38の左端部38bで構成された第2内周部56とに分割されている。これにより、第1内周部54と第2内周部56との間には、開口Eに連通する空間Gが構成されている。開口部22(開口E)のサイズは、使用者Mの首を、余裕をもって通すことができるように定められている。
【0032】
図4に示すように、左首紐24は、開口部22の内周縁における左右方向の中心線Qよりも左側に位置する第1繋ぎ部58から一続きに延びて帯状に形成されている。本実施形態の第1繋ぎ部58は、上記の第1内周部54における開口Eと空間Gとを連通させる部分の内周縁に設けられている。左首紐24における第1繋ぎ部58に繋がった第1基端部24aは、第1繋ぎ部58から右方へ延びて形成されている。
【0033】
第1基端部24aは、第1繋ぎ部58に近づくにつれて幅が広くなるように形成されており、第1基端部24aの幅方向の一方側縁および他方側縁は、第1内周部54の内周縁との境界部の入隅において円弧状に湾曲して形成されている。第1基端部24aと第1繋ぎ部58との境界部における左首紐24の幅をN1とし、第1基端部24aよりも先方における左首紐24の幅をN2としたとき、幅N1は、幅N2よりも十分に広くなるように定められている。
【0034】
図4に示すように、左首紐24における第1基端部24aの先端には、左首紐24を下方へ案内する第1下方案内部24bが下方へ延びて設けられている。さらに、第1下方案内部24bの先端には、使用者Mに掴まれて結び目が形成される第1掴み部24cが左方へ湾曲しながら延びて設けられている。開口部22および左首紐24を同一平面上に配置した状態(
図4の状態)において、左首紐24は、第1内周部54と第2内周部56との間に構成された空間Gを通して開口Eの外側へ延びて形成されている。
【0035】
図4に示すように、右首紐26は、開口部22の内周縁における左右方向の中心線Qよりも右側に位置する第2繋ぎ部60から一続きに延びて帯状に形成されている。本実施形態の第2繋ぎ部60は、上記の第2内周部56における開口Eと空間Gとを連通させる部分の内周縁に設けられている。右首紐26における第2繋ぎ部60に繋がった第2基端部26aは、第2繋ぎ部60から左方へ延びて形成されている。
【0036】
第2基端部26aは、第2繋ぎ部60に近づくにつれて幅が広くなるように形成されており、第2基端部26aの幅方向の一方側縁および他方側縁は、第2内周部56の内周縁との境界部の入隅において円弧状に湾曲して形成されている。第2基端部26aと第2繋ぎ部60との境界部における右首紐26の幅は、第2基端部26aよりも先方における右首紐26の幅よりも十分に広くなるように定められている。
【0037】
図4に示すように、右首紐26における第2基端部26aの先端には、右首紐26を下方へ案内する第2下方案内部26bが下方へ延びて設けられている。さらに、第2下方案内部26bの先端には、使用者Mに掴まれて結び目が形成される第2掴み部26cが右方へ湾曲しながら延びて設けられている。開口部22および右首紐26を同一平面上に配置した状態(
図4の状態)において、右首紐26は、第1内周部54と第2内周部56との間に構成された空間Gを通して開口Eの外側へ延びて形成されている。
【0038】
(第1実施形態に係る防護ガウンの効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、
図4に示すように、第1繋ぎ部58および第2繋ぎ部60は、背面シート16の上端部に設けられており、左袖シート18および右袖シート20は、背面シート16から左方および右方へ延びて形成されている。そして、第1繋ぎ部58から一続きに延びて帯状の左首紐24が形成されており、第2繋ぎ部60から一続きに延びて帯状の右首紐26が形成されている。左首紐24と右首紐26とを結んだときには、第1繋ぎ部58、第1背面シート36および第2左袖構成部42が右方へ引っ張られるとともに、第2繋ぎ部60、第2背面シート38および第2右袖構成部46が左方へ引っ張られる。したがって、結び目の位置を調整することによって、左袖シート18および右袖シート20の張り具合を調整しながら、開口Eのサイズを小さくすることが可能であり、病原体からの防護効果が損なわれることを防止しつつ、使用感を高めることができる。
【0039】
図4に示すように、左首紐24における第1繋ぎ部58に繋がった第1基端部24aは、第1繋ぎ部58から肩幅方向における右方へ延びて形成されており、右首紐26における第2繋ぎ部60に繋がった第2基端部26aは、第2繋ぎ部60から肩幅方向における左方へ延びて形成されている。したがって、左首紐24と右首紐26とを結ぶときには、第1基端部24aおよび第2基端部26aから第1繋ぎ部58および第2繋ぎ部60に引張り力を無理なく伝えることが可能であり、第1基端部24aと第1繋ぎ部58との境界部および第2基端部26aと第2繋ぎ部60との境界部が損傷することを防止できる。
【0040】
図4に示すように、第1下方案内部24bおよび第2下方案内部26bによって左首紐24および右首紐26を下方へ案内して垂らすことができるので、使用者Mは、それらの垂れ下がった部分を掴み易い。これにより、左首紐24および右首紐26を無理に引っ張ることがなくなるため、左首紐24および右首紐26が損傷することを防止できる。
【0041】
図4に示すように、左首紐24の第1基端部24aは、第1繋ぎ部58に近づくにつれて幅が広くなるように形成されており、右首紐26の第2基端部26aは、第2繋ぎ部60に近づくにつれて幅が広くなるように形成されている。したがって、左首紐24と右首紐26とを結ぶときには、第1基端部24aおよび第2基端部26aから第1繋ぎ部58および第2繋ぎ部60の広い範囲に引張り力を伝えることが可能であり、第1基端部24aと第1繋ぎ部58との境界部および第2基端部26aと第2繋ぎ部60との境界部に引張り力が集中することを抑制して、これらの境界部が損傷することを防止できる。
【0042】
図2および
図3に示すように、前面シート14が、上側前面シート32と下側前面シート34とに分割されているので、下側前面シート34を長さが異なる他の下側前面シート34に変更するだけで、前面シート14の全体の長さを簡単に変更することができる。
【0043】
図4に示すように、第1背面シート36と第2背面シート38とが互いに間隔を隔てて形成されており、開口部22の背面側の内周部52は、第1内周部54と第2内周部56とに分割されている。したがって、使用者Mが防護ガウン10を着用するときには、左袖シート18および右袖シート20のそれぞれに後方から左腕および右腕を通した後に、第1内周部54と第2内周部56との間の空間Gから開口Eに首を入れることが可能であり、防護ガウン10の着脱作業を簡単に行うことができる。
【0044】
図4に示すように、左首紐24および右首紐26が第1内周部54と第2内周部56との間の空間Gを通して開口Eの外側へ延びて形成されているので、左首紐24および右首紐26を無理なく下方へ垂らすことが可能であり、使用者Mは、それらの垂れ下がった部分を掴み易い。
【0045】
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。すなわち、上記実施形態では、接合手段として熱溶着が用いられているが、これに代えて、接着および縫合などが用いられてもよい。また、上記実施形態では、前面シート14が、上側前面シート32と下側前面シート34とに分割して構成されているが、前面シート14は、連続する1枚のシートで構成されてもよい。
【0046】
図3に示すように、上記実施形態では、背面シート16が、左側の第1背面シート36および右側の第2背面シート38を有しているが、以下に示す第2実施形態の防護ガウン66のように、背面シートは、連続する1枚のシートで構成されてもよい。
【0047】
(第2実施形態に係る防護ガウンの構成)
図6は、第2実施形態に係る防護ガウン66の構成および使用状態を示す図であり、
図6(A)は前方から見た斜視図、
図6(B)は後方から見た斜視図である。
図2は、防護ガウン66の構成を示す正面図である。
図3は、防護ガウン66の構成を示す背面図である。
図4は、防護ガウン66の開口部76の構成を示す拡大図である。
図5は、防護ガウン66の製造方法を示す図である。
【0048】
図6(A),(B)に示すように、防護ガウン66は、使用者Mの胴体の前面を覆うシート状の前面シート68と、使用者Mの胴体の背面を覆うシート状の背面シート70(
図6(B))と、使用者Mの左腕が通される左袖シート72と、使用者Mの右腕が通される右袖シート74と、使用者Mの首が通される開口Eを構成する開口部76とを備えている。また、
図6(B)に示すように、防護ガウン66は、左首紐78と、右首紐80と、第1左腰紐82と、第1右腰紐84とを備えている。さらに、
図6(A)に示すように、防護ガウン66は、第2左腰紐86と、第2右腰紐88とを備えている。
【0049】
図7、
図8および
図10に示すように、前面シート68、左袖シート72、右袖シート74、第1左腰紐82および第1右腰紐84は、上述した第1実施形態の前面シート14、左袖シート18、右袖シート20、左腰紐28および右腰紐30に対応しており、これらとほぼ同様に形成されている。したがって、これらについての重複する説明は省略する。なお、前面シート68の上側前面シート90および下側前面シート92は、第1実施形態における前面シート14の上側前面シート32および下側前面シート34に対応しているが、上側前面シート90は、上側前面シート32よりも幅広に形成されている。
【0050】
図8に示すように、背面シート70は、連続する1枚のシート状に形成されており、前面シート68における上側前面シート90の全体および下側前面シート92の上部に対向して設けられている。背面シート70の上端縁70aは、上側前面シート90の上端縁90aに繋がっている。第2左腰紐86は、背面シート70の下端部の左側端縁から左方へ一続きに延びて帯状に形成されており、第2右腰紐88は、背面シート70の下端部の右側端縁から右方へ一続きに延びて帯状に形成されている。
図1(A)に示すように、使用者Mが防護ガウン66を着用するとき、第2左腰紐86と第2右腰紐88とが使用者Mの胴体の前面側(前方)で結ばれる。
【0051】
図7および
図8に示すように、開口部76は、前面シート68および背面シート70の上端部の左右方向中央部に設けられている。
図7に示す前面シート68の上端部に設けられた開口部76の前面側の内周部94は、円弧状に連続して形成されている。また、
図8に示す背面シート70の上端部に設けられた開口部76の背面側の内周部96は、円弧状に連続して形成されている。つまり、開口部76は、円形の孔状の開口Eを構成するように環状に形成されている。開口部76(開口E)のサイズは、使用者Mの頭部を、余裕をもって通すことができるように定められている。
【0052】
図9は、開口部76、左首紐78および右首紐80を同一平面上に配置した状態を示す拡大図である。
図9では、説明の便宜上、左右方向に対して直交する方向を上下方向としている。
図9に示すように、左首紐78は、開口部76の内周縁における左右方向の中心線Qよりも左側に位置する第1繋ぎ部98から一続きに延びて帯状に形成されている。第1繋ぎ部98は、背面シート70の上端部に設けられている。左首紐78における第1繋ぎ部98に繋がった第1基端部78aは、第1繋ぎ部98から右方へ延びて形成されている。
【0053】
第1基端部78aは、第1繋ぎ部98に近づくにつれて幅が広くなるように形成されており、第1基端部78aの幅方向の一方側縁および他方側縁は、開口部76の内周縁との境界部の入隅において円弧状に湾曲して形成されている。第1基端部78aと第1繋ぎ部98との境界部における左首紐78の幅をN3とし、第1基端部78aよりも先方における左首紐78の幅をN4としたとき、幅N3は、幅N4よりも十分に広くなるように定められている。
【0054】
図9に示すように、開口部76および左首紐78を同一平面上に配置した状態において、左首紐78は、開口部76の内側に湾曲または屈曲して形成されている。つまり、左首紐78における第1基端部78aの先端には、左首紐78を下方へ案内する第1下方案内部78bが下方(斜め下方)へ延びて設けられており、第1下方案内部78bの先端には、使用者Mに掴まれて結び目が形成される第1掴み部78cが設けられている。第1掴み部78cは、第1下方案内部78bの先端から右上方へ湾曲して延びる第1湾曲部100aと、第1湾曲部100aの先端から上方へ直線状に延びる第1直線部100bと、第1直線部100bの先端から左上方へ湾曲して延びた後、左下方へ湾曲して延びる半円状の第2湾曲部100cと、第2湾曲部100cの先端から下方へ直線状に延びる第2直線部100dとを有している。
【0055】
図9に示すように、右首紐80は、開口部76の内周縁における左右方向の中心線Qよりも右側に位置する第2繋ぎ部102から一続きに延びて帯状に形成されている。第2繋ぎ部102は、背面シート70の上端部に設けられている。右首紐80における第2繋ぎ部102に繋がった第2基端部80aは、第2繋ぎ部102から左方へ延びて形成されている。
【0056】
第2基端部80aは、第2繋ぎ部102に近づくにつれて幅が広くなるように形成されており、第2基端部80aの幅方向の一方側縁および他方側縁は、開口部76の内周縁との境界部の入隅において円弧状に湾曲して形成されている。第2基端部80aと第2繋ぎ部102との境界部における右首紐80の幅は、第2基端部80aよりも先方における右首紐80の幅よりも十分に広くなるように定められている。
【0057】
図9に示すように、開口部76および右首紐80を同一平面上に配置した状態において、右首紐80は、開口部76の内側に湾曲または屈曲して形成されている。つまり、右首紐80における第2基端部80aの先端には、右首紐80を下方へ案内する第2下方案内部80bが下方(斜め下方)へ延びて設けられており、第2下方案内部80bの先端には、使用者Mに掴まれて結び目が形成される第2掴み部80cが設けられている。第2掴み部80cは、第2下方案内部80bの先端から左上方へ湾曲して延びる第1湾曲部104aと、第1湾曲部104aの先端から上方へ直線状に延びる第1直線部104bと、第1直線部104bの先端から右上方へ湾曲して延びた後、右下方へ湾曲して延びる半円状の第2湾曲部104cと、第2湾曲部104cの先端から下方へ直線状に延びる第2直線部104dとを有している。
【0058】
第2実施形態の防護ガウン66によれば、
図9に示す左首紐78および右首紐80が開口部76の内側に湾曲または屈曲して形成されるので、開口部76の内側の狭い領域において、互いに結ぶことができる十分な長さを確保することができる。
【0059】
なお、第2実施形態の防護ガウン66では、左首紐78および右首紐80が開口部76の内側に形成されるので、第1下方案内部78bおよび第2下方案内部80bは省略されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
M…使用者、Q…中心線、10…防護ガウン、12…シート、14…前面シート、16…背面シート、18…左袖シート、20…右袖シート、22…開口部、24…左首紐、24a…第1基端部、24b…第1下方案内部、24c…第1掴み部、26…右首紐、26a…第2基端部、26b…第2下方案内部、26c…第2掴み部、36…第1背面シート、38…第2背面シート、58…第1繋ぎ部、60…第2繋ぎ部、66…防護ガウン、76…開口部、78…左首紐、78a…第1基端部、78b…第1下方案内部、78c…第1掴み部、80…右首紐、80a…第2基端部、80b…第2下方案内部、80c…第2掴み部、98…第1繋ぎ部、102…第2繋ぎ部。