(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034193
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】構造物または施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
E02D27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137870
(22)【出願日】2020-08-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 実施日 :令和1年8月28日 実施場所 :綾瀬小学校「東綾瀬仮設校舎」等賃借
(71)【出願人】
【識別番号】592145327
【氏名又は名称】郡リース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康則
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地盤または基礎に関し、自由度の高い設計が可能な構造物を提供する。
【解決手段】地盤2から構造物の重量分に相当する土砂を掘削して形成された掘削部21上に設置された発泡スチロール15と、発泡スチロール15の側方において、発泡スチロール15を介さずに掘削部21上に形成された基礎11と、発泡スチロール15上に形成された土間コンクリート14と、を備える構造物。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤から構造物の重量分に相当する土砂を掘削して形成された掘削部上に設置された発泡スチロールと、
前記発泡スチロールの側方において、前記発泡スチロールを介さずに前記掘削部上に形成された基礎と、
前記発泡スチロール上に形成された土間コンクリートと、を備える構造物。
【請求項2】
前記発泡スチロールの厚みは50センチメートル以上である、請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
前記発泡スチロール15の圧縮強度は、35kN/m2(キロニュートン/平米)以上100kN/m2以下である、請求項1に記載の構造物。
【請求項4】
前記基礎の少なくとも一部は、前記発泡スチロールを型枠としてコンクリート打設することにより形成されたものである、請求項1から3のいずれか1項に記載の構造物。
【請求項5】
前記掘削部は、前記基礎の下方において、地盤改良工事が施工された部分を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の構造物。
【請求項6】
前記基礎は杭に支持される、請求項1から5のいずれか1項に記載の構造物。
【請求項7】
構造物の施工方法であって、
地盤から前記構造物の重量分に相当する土砂を掘削して掘削部を形成する工程と、
前記掘削部に発泡スチロールを設置する工程と、
前記発泡スチロールの側方において、前記発泡スチロールを介さずに前記掘削部上に基礎を形成する工程と、
前記発泡スチロール上に土間コンクリートを形成する工程と、を備える施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物または施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、構造部の基礎周辺に発泡スチロールを用いた工法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本建築学会:建築物荷重指針・同解説(2015)、2015年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術においては、土間コンクリートの下部に発泡スチロールを用いることによって断熱及び防湿という効果を得ることができる。しかし、地盤または基礎などの構造部材の設計に対して、何らかの効果を与えるものではなかった。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、地盤または基礎に関し、自由度の高い設計が可能な構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は一態様として、地盤から構造物の重量分に相当する土砂を掘削して形成された掘削部上に設置された発泡スチロールと、前記発泡スチロールの側方において、かつ、前記発泡スチロールを介さずに前記掘削部上に形成された基礎と、前記発泡スチロール上に形成された土間コンクリートと、を備える構造物を提供する。
【0008】
また本発明は一態様として、構造物の施工方法であって、地盤から前記構造物の重量分に相当する土砂を掘削して掘削部を形成する工程と、前記掘削部上に発泡スチロールを設置する工程と、前記発泡スチロールの側方において、かつ、前記発泡スチロールを介さずに前記掘削部上に基礎を形成する工程と、前記発泡スチロール上に土間コンクリートを形成する工程と、を備える施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地盤または基礎に関し、自由度の高い設計が可能な構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る構造物の軸組及び基礎周辺の構造を示す図である。
【
図2】実施形態に係る基礎部分及びその周辺の拡大図である。
【
図3】基礎部分及びその周辺部の施工工程を(a)~(f)の各図に順に示したものである。
【
図4】変形例に係る基礎部分及びその周辺部の施工工程を(a)、(b)各図に示したものである。
【
図5】構造物の基礎下周りに地盤改良を行った場合の軸組及び基礎周辺の構造を示す図である。
【
図6】構造物の施工領域全体に地盤改良を行った場合の軸組及び基礎周辺の構造を示す図である。
【
図10】積載荷重を変えた場合、及び構造種別を変えた場合における構造物の総重量算定表である
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図10を参照して、実施形態に係る構造物1及びその工法について以下に説明する。なお、構造物の具体例としては、建築物などのほか、工作物、土木構造物などが想定される。
【0012】
本実施形態における構造物1は、
図1に示すように、地盤2の掘削部21の上に建設された建築物であり、基礎11、柱12、梁13、土間コンクート14及び発泡スチロール15を有する。
【0013】
地盤2の掘削部21は、地盤2の地盤面GLから、構造物1全体の重量とほぼ同じ重量の土砂を掘削することによって形成され、断面視で矩形状に形成される。
【0014】
構造物1の基礎11は、
図1及び
図2に示すように、掘削部21の上に捨てコンクリート31を介して設置される。基礎11は、鉄筋コンクリート造の基礎であり、配筋111とコンクリート部112によって構成される。なお、本実施形態において、基礎11は布基礎であるが、独立基礎、複合基礎など他種別の基礎が採用されてもよい。また、基礎11が杭によって支持される構造としてもよい。
【0015】
柱12及び梁13は、構造物1の荷重を支持する構造部材であり、
図1に示すように、基礎11の上部においてそれぞれ鉛直及び水平に延び、互いに接合されて構造物1のフレームを構成する。柱12の下端部は基礎11の上端部に接合され、梁13は柱12の間に水平に架渡される。本発明において柱12及び梁13の構造種別は特に限定されるものではなく、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など、建物の用途に応じた構造が適宜採用される。
【0016】
土間コンクリート14は、
図1及び
図2に示すように、基礎11の間に形成された、鉄筋コンクリート造の平板状部材であり、発泡スチロール15の上部に直接、または、捨てコンクリート31及び防湿シート32を介して設置される。土間コンクリート14は、配筋141とコンクリート部142によって主に構成される。土間コンクリート14の水平方向の端部は、基礎11に対して、防水シート等を介してまたは直接に接触するが、接合されてはいない。配筋141も、基礎11の配筋111とは連続していない。
【0017】
土間コンクリート14については、本実施形態や一般的な工場建築などにみられるように、そのまま1階の床として使用する設計としてもよいし、一般的な住宅建築などにみられるように、土間コンクリート14の上方に1階の床スラブを設ける設計としてもよい。
【0018】
発泡スチロール15は、掘削部21の上方に敷設、設置された直方体形状の部材であり、発泡スチロール15の上方には土間コンクリート14が設けられる。なお、捨てコンクリート31を介して発泡スチロール15を掘削部21の上方に敷設する構成としてもよい。
【0019】
その際、発泡スチロール15の層厚は、50センチメートル以上とすることが好ましい。一般的な構造物の重量相当分の土砂を掘削して形成した掘削部21に発泡スチロール15を敷設することを考慮すると、掘削部21の深さが50センチメートル以上となるためである。また、発泡スチロール15の圧縮強度は、土間コンクリート14及び積載荷重に応じて、35kN/m2(キロニュートン/平米)以上、100kN/m2以下とすることが望ましい。これらの算定根拠などの詳細は後述する。
【0020】
また、発泡スチロール15は、一体の部材とする必要はなく、複数の層に分割された構成とすることが可能である。発泡スチロール15を複数の層に分割することにより、施工現場への搬入や基礎11の間に敷設する作業が容易となる。
【0021】
発泡スチロール15は、合成樹脂素材の一種であり、気泡を含ませたポリスチレンである。発泡スチロール15の、より具体的な素材名称としては、ビーズ法発泡スチロール(expanded polystyrene、EPS)、発泡ポリスチレンシート(polystyrene paper、PSP)、押出発泡ポリスチレン(extruded polystyrene、XPS)などが考えられる。
【0022】
<工程>
構造物1の基礎11周りの工程について、大まかに工程1~4に分けて、以下に説明する。
【0023】
(工程1)
まず、地盤2を掘削し、掘削部21の形成を行う。掘削は、地盤面GLから構造物1全体の重量のほぼ同じ重量の土砂を掘削することによって行われる(
図3(a)、(b))。掘削は、断面がなるべく矩形状となるように、また、構造物1の施工領域全体に亘って形成される。さらに掘削部21の表面を整形し、以降の工程での施工性を向上させるため、表面に割栗地業または砕石地業が施される場合がある。
【0024】
地盤2が軟弱地盤であった場合などは、地盤2の地盤改良が行われる。
図5及び
図6に改良部22として示すように、地盤の性状に応じて、基礎周辺のみの地盤改良の場合(
図5)と、構造物1の施工区域の概ね全体に対して地盤改良をする場合(
図6)とがある。もちろん、地盤の強度が十分な場合には、
図1に示すように、地盤改良は実施されない。
【0025】
(工程2)
次に基礎11の施工が行われる。墨出しなどを容易にするため、まず捨てコンクリート31が打設される。さらに、
図3(c)に示すように、捨てコンクリート31の上方において、基礎11の配筋111が組まれる。配筋111の完了後に、型枠33が基礎11の外形に沿って組み立てられる。さらに型枠33内にコンクリートを打設することによって、基礎11の形成が完了する。
【0026】
(工程3)
基礎11のコンクリート部112が硬化し、型枠33の脱型が完了した後(
図3(d))、発泡スチロール15の設置が行われる。発泡スチロール15は、
図3(e)に示すように、基礎11の側方において、基礎11の側面との間に隙間の生じないように敷設される。発泡スチロール15の基礎11に面する端面は、基礎11の形状に沿うように外形が予め加工されている。敷設を容易にするため、発泡スチロール15は、上述のとおり複数の層に分割されてもよい。
【0027】
(工程4)
発泡スチロール15の敷設完了後、土間コンクリート14の形成が行われる(
図3(f))。まず準備として、捨てコンクリート31及び防湿シート32が順次、発泡スチロール15の上面に打設及び敷設される。
【0028】
その後、防湿シート32の上方に配筋141が組まれ、コンクリートが打設されることによって、土間コンクリート14の形成が完了する。
【0029】
(工程の変形例)
なお、上記は標準的な工程を示したものであり、工程の一部省略や、工程の順序の変更も可能である。1つの変形例として、工程2及び工程3の施工手順を変更し、コンクリート打設を発泡スチロール15の敷設後に行うことが可能である。
【0030】
変形例に係る工程を
図4(a)、(b)に示す。変形例においては、工程2において、配筋111をまず施工する(
図4(a))。その後、型枠33の組立、及び発泡スチロール15の敷設を行う(
図4(b))。発泡スチロール15の端面は基礎11の外形と同形状に加工されているため、基礎11の型枠として機能する。
【0031】
その後、工程3としてコンクリート打設を行うことによって基礎11が形成される。
【0032】
このような変形例とした場合、発泡スチロール15は、コンクリート打設時において基礎11の一部または全体の型枠として機能する。この工法では、型枠の組立作業の省略及び脱型作業の省略が可能となり、工期短縮やコスト削減などの効果が得られる。
【0033】
上記の説明においては布基礎である基礎11を想定して工程を説明したが、他種の基礎構造においても、上記工程は同様に適用が可能である。例えば、杭基礎であった場合、地盤2を掘削して構造物1の重量と同じ重量の土砂をまず排土し、掘削部21を形成する。その後、杭及びフーチングを掘削部21に設置または形成するとともに、掘削部21に発泡スチロール15を敷設すればよい。
【0034】
<発泡スチロールの層厚>
以下においては、地盤2の掘削深さ及び発泡スチロール15の層厚の算定方法を、
図7~
図9の例を用いて説明する。軟弱地盤の即時沈下と圧密沈下を抑制するためには、建築物の建設に伴う軟弱地盤の地中応力を増加させないことが最も有効である。この条件を満足するためには、土間コンクリート14下の土砂を排土して発泡スチロール15に置換することで、排土重量と構造物1の建設に伴う荷重増をバランスさせることが望ましい。構造物1の重量は、構造物1の固定荷重と積載荷重との和によって計算される。構造物1の重量の計算を適切に行うことによって、盤ぶくれなどの発生を防ぎつつ、地盤2への負荷の軽減することにより即時沈下及び圧密沈下の低減、及びこれに伴う不同沈下の低減を図ることができる。
【0035】
上記条件を考慮し、
図7~
図9に示す算定例においては、構造物1が一般的な2~3階建ての鉄骨造事務所建築であると想定して全体重量を算定し、この全体重量と同じ重量の排土を行うこととしている。固定荷重及び積載荷重の算定に当たり、通常の設計で行われる手法と同様に、建築物荷重指針・同解説(非特許文献1)及び建築基準法施行令(以下、「施行令」とする)に準拠した。
図7に示すように、主要な構造部材は、実在する建築物に基づいて標準的な部材寸法及び重量を有するものとし、柱のスパンを7.2m、階高3.2~3.5mと想定した。壁部材の重量の算定に当たり、壁率は0.333とした。床の重量算定では、湿式床及び乾式床の二通りについて、また、床厚及び床の構造の違いを考慮して重量算定を行い、重量の取りうる範囲を示している。
【0036】
図8及び
図9に示すように、発泡スチロール15の層厚は、建物総重量、土の比重、及び有効率に基づき、式1(
図9)として算定される。有効率は、基礎11のコンクリート体積を除いた土の体積を、基礎11と土の体積との和で除したものであり、軽量鉄骨造の布基礎のコンクリート体積については基礎面積(1階の床面積)当たり0.1m
3/m
2が標準値であることから、ここでは0.9とした。
【0037】
結果、掘削深さ及び発泡スチロール15の層厚は、
図9の第3節に下線で示すように、0.67m~1.13m(メートル)の範囲となることが分かる。
【0038】
軟弱地盤の物理試験結果に基づき、軟弱地盤の即時沈下量及び圧密沈下量を許容値内に収めることを設計の目的とする場合も考えられる。また、実際の建物重量の算定に当たり、建物用途の違い(事務所、住宅など)、及び、施行令における積載荷重の架構用荷重(大梁等計算用)と地震力計算用荷重との違いにより、建物重量には25%前後の違いが発生することも想定される。
【0039】
一例として、
図9の第4節には、施行令における事務室用途の地震荷重を積載荷重とした場合の建物重量の算定結果と、住宅居室用途の地震荷重を積載荷重とした場合の算定結果を示す。建物の実際の積載荷重、及び住宅居室用途の地震荷重を積載荷重とした場合には、最小発泡スチロール厚さは、約50cmとなることが分かる。
【0040】
このような根拠に基づき、発泡スチロール15の層厚及び掘削深さは、50cm(センチメートル)以上とすればよいことが理解できる。
【0041】
鉄骨造が鉄筋コンクリート造などの他種構造と比較すると軽量であることを考慮すると、構造種別で重量のバラツキがあることを考慮した場合においても、2~3階の構造では、発泡スチロール15の層厚及び掘削深さを50cm以上とすればよいことが分かる。
【0042】
なお、発泡スチロール15の層厚の最大値は、150cm程度であると考えられる。
図10の第5節に示すように、構造物1が鉄筋コンクリート造などの自重の大きな構造であった場合、及び、自動車車庫の積載荷重(施行令での積載荷重:3900N/m
2)のように大きな積載荷重を有する場合を考慮しても、
図8に示した総重量の3倍以内に収まると考えられるためである。
【0043】
発泡スチロール15の圧縮強度は、35kN/m
2(キロニュートン/平米)以上100kN/m
2以下とする。この圧縮強度を備える発泡スチロール15は、それ自体に負荷される荷重を充分に支持できる強度を有する。例えば
図8を参照すると、3階建ての建物総重量は最大で18kN/m
2程度である。圧縮強度を35kN/m
2とした場合、発泡スチロール15は建物総重量の2倍程度の負荷にも耐えうる強度を持つ。構造物1の重量の殆どが基礎11によって支持され、発泡スチロール15が1階の床荷重のみを支持することを考えれば、上記の圧縮強度の設定には、さらに大きな安全率が掛けられていることが分かる。また、構造物1の総重量が、上述の如く
図8に示す値の3倍が上限であると考えると、発泡スチロール15の圧縮強度の上限は、35kN/m
2を約3倍した105kN/m
2である。なお、現在一般に用いられるEPS材料の強度規格を考慮すると、発泡スチロール15の圧縮強度の上限は、105kN/m
2以下の範囲で最も強度の高い、100kN/m
2とすることが望ましい。
【0044】
<効果>
実施形態において構造物1は、地盤から構造物の重量分に相当する土砂を掘削して形成された掘削部21上に設置された発泡スチロール15と、発泡スチロール15の側方において、発泡スチロール15を介さずに掘削部21上に形成された基礎11と、発泡スチロール15上に形成された土間コンクリート14とを備える。
【0045】
構造物1全体の重量分の土砂を掘削し、軽量な発泡スチロール15と置換することによって、地盤2が支持しなければならない重量を軽減させることが可能となる。地盤2に発生する応力が減少するため、特に地盤2が軟弱地盤であった場合において、即時沈下、圧密沈下などの発生リスクを低減させることができる。すなわち、地盤が軟弱であった場合でも、必ずしも地盤改良や杭基礎とする必要がない。そのため、設計の自由度を維持しながら、構造物1の設計を遂行することができる。
【0046】
発泡スチロール15は断熱性能及び防湿性能を有するため、土間コンクリート14の上方を快適な居住空間とすることが可能となる。また、土間コンクリート14の劣化を防止することができる。
【0047】
また、基礎11の下方には発泡スチロール15は敷設されず、基礎11は地盤によって支持される。基礎11の下方に発泡スチロール15がないため、発泡スチロール15の耐荷重を考慮する必要がなく、また、建築基準法令では、主要構造部材は無機材料であることを前提としているため、材料の大臣認定取得(建築基準法第37条関連)の必要が無いように配慮した。詳細に述べると、発泡スチロールは、鉄及びコンクリートよりも耐候性、耐火耐熱性、クリープ変形などの観点において不利が多く、構造材料として用いる場合には、特別な配慮のもとに設計・施工を行ったうえで大臣認定を取得する必要がある。しかし、本実施形態においては、このような特別な配慮を行う必要がなく、技術的効果においても設計手続き上においても有利である。
【0048】
発泡スチロール15の厚みは50センチメートル以上であるため、発泡スチロール15を複数の層に分割して施工することが可能である。これにより、施工現場への搬入や基礎11の間に敷設する作業が容易となる。また、発泡スチロール15の圧縮強度は、35kN/m2(キロニュートン/平米)以上100kN/m2以下であるため、建物重量分の排土を行った掘削部21に発泡スチロール15を敷設した場合において、発泡スチロール15は、自身に負荷される荷重に耐える強度を有する。
【0049】
基礎11の少なくとも一部は、発泡スチロール15を型枠としてコンクリート打設することにより形成される。発泡スチロール15を型枠として機能させるため、コンクリートパネルを用いた型枠の組立作業及び脱型作業の省略が可能となる。工事の省力化、またはコスト削減などの効果を得ることができる。
【0050】
掘削部21が基礎11の下方において、地盤改良工事が施工された改良部22を備えてもよい。この場合、地盤2の沈下を防止または抑制できる。
【0051】
また、基礎11は杭に支持されてもよい。この場合、地盤にかかる負荷をさらに低減させることができる。また、発泡スチロール15の使用によって地盤2に対する負担が低減されているので、杭の本数や杭に係る負荷を低減させることが可能である。
【0052】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 構造物
11 基礎
14 土間コンクリート
15 発泡スチロール