(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034196
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】多チャンネル(ch)双方向光ファイバロータリージョイント(FORJ)
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20220224BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20220224BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G02B6/36
H04N5/222 100
G02B6/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137873
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514025764
【氏名又は名称】小嶋 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】川尻 喜広
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 哲郎
【テーマコード(参考)】
2H036
2H137
5C122
【Fターム(参考)】
2H036QA03
2H036QA11
2H036QA44
2H036QA58
2H137AB01
2H137BA01
2H137BC02
2H137BC12
2H137CA15A
2H137CA15C
2H137CA35
2H137CA45
5C122DA11
5C122EA54
5C122FA03
5C122GC86
5C122GD04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】波長多重伝送技術で、回転系の多チャンネル(ch)双方向伝送系を構築するために、信号回線器と信号回線器との一体構造を小型化、軽量化することのできる多ch双方向光ファイバロータリージョイント(FORJ)を提供する。
【解決手段】多ch双方向FORJ90は、回転機構の回転側に搭載される回転側電子機器と静止側に設置される静止側機器との間に構成する光ファイバ結合光学系を自動調心する機構を持つFORJで、回転機構の回転枠回転シャフト71に接続されるスリップリング或いは駆動モータの中空シャフト62の中空部63にFORJの筐体を固定しFORJの回転可能側の光ファイバ結合光学系20を回転機構の静止側に固定する形態とすることによって、中空シャフトを中心とする同心円状に一体構造化されたFORJであって、回転枠の回転時にFORJの筐体が中空シャフトと共に回転する構成である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機構の回転側に搭載される回転側電子機器と静止側に設置される静止側電子機器との間に構成する光ファイバ結合光学系を自動調心する機構を持つ光ファイバロータリージョイント(FORJ/Fiber Optical Rotary Joint)は、
前記回転機構の回転枠回転シャフトに接続されるスリップリング或いは駆動モータの中空シャフトの中空部に前記FORJの筐体を固定し前記FORJの回転可能側の前記光ファイバ結合光学系を前記回転機構の静止側に固定する形態とすることによって、前記中空シャフトを中心とする同心円状に一体構造化されたFORJであって、
前記回転枠回転シャフトの回転時に前記FORJの前記筐体が前記中空シャフトと共に回転することを特徴とする多ch双方向光ファイバロータリージョイント(FORJ)。
【請求項2】
前記一体構造化されたFORJは、静止空間内のAとBの異なる2地点のそれぞれに設置された多チャンネル出力の電子機器、SFP(Small Form Factor Pluggable)型光トランシーバ及びTFF(Thin Film Filter)方式の波長合分波器で構成され、
WDM(WaveIength Division Multiplexer)技術適用のA側伝送系とB側伝送系とを、両端に光コネクタを持つ1芯の光ファイバで接続し構成された静止系の多ch双方向伝送系に対し、前記回転機構上に前記A側伝送系を移行搭載した後、その入出力形態が変更されて新たに構成された、光コネクタ付帯の一体構造FORJへの前記両端に光コネクタを持つ1芯の光ファイバからの変換によって、前記A側伝送系と前記B側伝送系との間の回転系の多ch双方向伝送系を構成することを特徴とする請求項1記載の多ch双方向光ファイバロータリージョイント(FORJ)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機構の回転側と静止側とに設置される各電子機器間の光ファイバ通信系の中に空間光路を構成して、高精細画像伝送他を行う高速赤外線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高速大容量情報の伝送分野では、4K画像のような高精細画像の同軸ケーブルによる伝送は実現しているものの、長距離伝送には有利なので光伝送が拡大している。
波長の異なる多数の光信号を光ファイバ上に重ね合わせて送る波長多重伝送技術(WDM/Wavelength Division Multiplexer)が知られているが、1芯の光ファイバで、多チャンネル(ch)の双方向伝送を実現するWDM技術に対応したSFP(Small Form Factor Pluggable)型光トランシーバや波長合分波器(Mux/Demux)が低価格で入手できるようになって来ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転機構の回転部位においては、回転側と静止側との間の信号回線(Signal Circuit)と電力回線(Power Circuit)が課題になる。
前者の信号回線に対しては、接触式であれば「伝送速度は略3Gbpsが限度」との制約があるもののスリップリングが、非接触式であれば台形状のダブプリズムを機械的に回転させることで光ファイバに光結合させる構造のタブプリズム型の周知の光ファイバロータリージョイント(FORJ/Fiber Optical Rotary Joint)が一般的であった。
但し、後者の非接触式のものは振動・衝撃等の耐環境性の課題があったから用途は限定的である。
一方、回転側と静止側の光ファイバ間を接続する、光ファイバ結合光学系をボールレンズや屈折率分布型(GRIN)レンズ等で構成する信号回線器のFORJは上記のタブプリズム方式に比べ小型軽量になったものの、回転側への給電用スリップリングや回転トランス等の電力回線器と一体構造化し実現化するには小型化、軽量化に課題が残っている。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために成されたもので、近年低価格で入手できるようになってきた、SFP型光トランシーバや波長合分波器を適用した波長多重伝送技術(WDM)で、回転系の多ch双方向伝送系を構築するために、信号回線器と信号回線器との一体構造を小型化、軽量化する手段の提案を行う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による請求項1の多チャンネル(ch)双方向光ファイバロータリージョイント(FORJ)は、回転機構の回転側に搭載される回転側電子機器と静止側に設置される静止側電子機器との間に構成する光ファイバ結合光学系を自動調心する機構を持つFORJ(Fiber Optical Rotary Joint)であって、前記回転機構の回転枠回転シャフトに接続されるスリップリング或いは駆動モータの中空シャフトの中空部に前記FORJの筐体を固定し前記FORJの回転可能側の前記光ファイバ結合光学系を前記回転機構の静止側に固定する形態とすることによって、前記中空シャフトを中心とする同心円状に一体構造化されたFORJであって、前記回転枠の回転時に前記FORJの筐体が前記中空シャフトと共に回転することを特徴としている。
これにより、例えば、この筐体回転形態でスリップリング等と一体構造化されたFORJによって、回転機構の回転側と静止側との間で信号回線と電力回線を実施するときの回転側の作動環境を静止側の環境と同一とすることができる。
【0007】
前記した課題を解決するため、本発明の請求項2において、前記一体構造化されたFORJは、静止空間内のAとBの異なる2地点のそれぞれに設置された多チャンネル出力の電子機器、SFP(Small Form Factor Pluggable)型光トランシーバ及びTFF(Thin Film Filter)方式の波長合分波器で構成され、波長多重伝送技術(WDM/Wavelength Division Multiplexer)適用のA側伝送系及びB側伝送系を、両端に光コネクタを持つ1芯の光ファイバで接続し構成された静止系の多ch双方向伝送系に対し、前記回転機構上に前記A側伝送系を移行搭載した後、その入出力形態が変更されて新たに構成された、光コネクタ付帯の一体構造FORJへの前記両端に光コネクタを持つ1芯の光ファイバからの変換によって、前記A側伝送系と前記B側伝送系との間の回転系の多ch双方向伝送系を構成することを特徴としている。
これにより、例えば、静止側のAとBの2地点間で運用されているWDM技術による多ch双方向伝送系を簡易に回転系の多ch双方向伝送系に移行させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明による多ch双方向FORJは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、静止空間内のA地点側電子機器を、死角を生じないように設置された複数基の撮像装置とし、その中から1台の撮像装置を、「筐体回転形態でスリップリング等と一体構造化されたFORJ」を組込んだ回転機構に移行、搭載する状況で考察する。
この場合、1台の撮像装置で360°視野の画像(パノラマ画像)が得られるから、静止側の信号処理装置でパノラマ画像に対し「関心画像を切り出して追跡処理」すれば、顔認証が可能となるから、死角を生じないように静止空間に設置された複数基の撮像装置と同等の顔認証の実施が可能という成果が得られる。
このとき、上記を異なる波長域の撮像装置に適用すれば得られる情報は倍増化する。
逆に、搭載機器を回転機構から卸下し、この筐体回転形態FORJを光コネクタ付き光ファイバでの接続に変更すれば、上記搭載機器は静止環境下で画像取得が可能になる。
これにより、高額な撮像装置の有効活用が可能になり、レンタル撮像器材の有効活用等も含め、器材運営費が低コスト化される。
また、撮像装置の機種変更等に基づく通信グレードの変化が生じた場合には、光トランシーバを通信速度環境に適合するSFP型光トランシーバに変更するのみで対応可能になるから、器材運営範囲が拡大されて総合コストの低減が促進される。
従って、回転軸で電気信号を伝送する電気スリップリングの中空軸内部に、その同芯状にFORJ(光スリップリング)を配置し、電力または電気信号と光信号を伝送する。さらに光信号は多チャンネルの信号を1本の光ファイバで伝送できる電子機器を組合せ、たとえば複数のカメラ構成の装置でも1本の光ファイバで信号を伝送できるシステムを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態によるテーパ部材を自動調心機構化する構造のFORJを示す構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態によるスリップリングの中空シャフト内への通常の取付形態でのFORJの構成図である。
【
図3】通常の実施の形態によるスリップリングへの通常の直列状取付形態のFORJの構成図である。
【
図4】本発明の実施の形態による筐体回転形態でスリップリングと一体構造化されたFORJの構成図である。
【
図5】本発明の実施の形態による筐体回転形態でスリップリング、駆動モータと一体構造化されたFORJの構成図である。
【
図6】本発明の実施の形態による静止系と回転系の多ch双方向FORJの構成図である。
【
図7】本発明の実施の形態による多ch双方向FORJで構成した多ch双方向伝送系である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による多ch双方向光ファイバロータリージョイント(FORJ)を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例0011】
まず、
図1に示す「光ファイバ結合光学系を自動調心する機構を持つFORJ1」について述べる。
図1は断面が台形形状のテーパ部材10の中心線101と突当軸受12の回転軸121とを一致させる自動調心機構である「テーパ部材10を自動調心機構化する構造」を示している。
さて、
図1はFORJ1の回転側光ファイバ結合光学系20が
図6の回転機構7の回転枠回転シャフト71に光ファイバ結合光学系取付具18を用いて接続される適用形態を示している。
このとき、回転枠回転シャフト71が光ファイバ結合光学系取付具18を介して回転側光学スリーブ202を突当軸受12に押し付けるように組み立てることによって、テーパ部材10には、A点とB点の接触位置に右方向に押力が作用する状態になる。
このような構造によれば、テーパの形状作用により回転側光学スリーブ202に発生する、紙面内の上下方向と左右方向の反押力が、回転側光学スリーブ202の中心線をテーパ部材10の中心線101に一致させる調心力になる。
【0012】
次に、テーパ部材10の中心線101と突当軸受12の回転軸121との調心機構を説明する。この調心機構は、上記の調心機構との対応をとると、テーパ部材10の外面がテーパ部材10の内面に、突当軸受12の内輪が回転側光学スリーブ202に対応する(共に円筒形状体)とすれば同様に説明できる。
従って、
図1のFORJ1は、回転側光学スリーブ202の中心線、テーパ部材10の中心線101及び突当軸受12の回転軸121を全て一致させ得る構造と言えるので、「テーパ部材10を自動調心機構化する構造」のFORJ1と言えることになる。
このFORJ1は、その構成部材であるテーパ部材10の形状作用に基づく調心力によって、構成部材の製造誤差や組立誤差を、自ら減殺し静止側光ファイバ172への光結合を容易にさせる自動調心機構のFORJ1と言える。
図1に示したFORJ1の静止側構造は、突当軸受12をカラー(ワッシャ)15に変更したことのみであるが、テーパ部材10を用いて構成部材の各中心線を一致させる構造は同じである。
それゆえ、この静止側構造を回転側と同様に、カラー(ワッシャ)15を突当軸受12に変更して回転側構造と同一構造としてもよいことになる。
最後に、
図1に関する前述よりも細部の説明は特開2019-191253号公報である特許文献1に開示されているので、その内容は公知であるのでここでは省略している。
【0013】
図2は、
図6の回転機構7の回転枠回転シャフト71に、スリップリング6とFORJ1のそれぞれの回転側が接続された状態を表している。
FORJ1はスリップリング6の中空部63に収納された状態で、その回転側光ファイバ結合光学系20が回転枠回転シャフト71に直結される形態を表している。
図2では、スリップリング6とFORJ1の双方の構造を描出するために、
図1のFORJ1の突当軸受12を白丸で、負荷支持軸受13を黒丸で、また筐体11は線分で簡略化し、また、テーパ部材10や光ファイバ結合光学系取付具18は省略し、ここでの説明に関連する構造特性の明確化を図っている。
以上から
図2は、回転機構7の回転枠回転シャフト71にスリップリング6とFORJ1のそれぞれの回転側が、回転機構7の回転軸70を中心とする同心円状でスリップリング6がFORJ1の外側に並列状に接続される構造を示している。
この時、FORJ1の筐体11をスリップリング6の静止側に、静止側との接続部としての取付具64を用いて接続し、FORJ1の回転側光ファイバ結合光学系20を回転枠回転シャフト71に接続し回転する状態にしなくてはならないから、FORJ1はスリップリング6に対して他の支持点が得られ無いことから片持構造になる。
この片持構造では、回転枠回転シャフト71の回転軸70のブレ、傾き等による外乱力により負荷支持軸受13に及ぼす負荷が、特に細径のFORJ1では負荷支持軸受13の耐強度が小さくなるから、通常径の場合より過大になることが懸念される。
一方、スリップリング6がFORJ1の内側に並列接続される構造は、FORJ1の内部の光路が構成できないことから不可能であるので、成立性のある並列接続構造は、片持構造ではあっても、
図2の形態のみとなる。
【0014】
さて、回転枠回転シャフト71にスリップリング6とFORJ1のそれぞれの回転側を接続するとき、上記した並列接続と以下に述べる直列接続の2種類の接続方法がある。
図3に「回転枠回転シャフト71⇒スリップリング6⇒FORJ1」の順に、それぞれの回転側が接続される直列状態を示す。図示しないが、静止側も直接的或いは間接的にそれぞれ接続される。
このとき、スリップリング6の回転シャフトには、FORJ1の回転側光ファイバ171を通過させるだけの細孔が必要であるが、図には細孔を図示せず、中実の回転シャフト601として描いてある。中空シャフト62の場合は、
図2に表している。
実は、直列接続の形態は、この
図3に示された形態しかない。
何故なら、「⇒FORJ1⇒スリップリング6」の順に接続する場合には、FORJ1内部において電気配線がボールレンズを貫通してスリップリング6に至らねば、回転側電子機器72への電力も回転側電子機器72からの出力信号も伝送できない、ことになるからである。
これにより、直列接続は
図3に示された形態のみが成立すると言えることになる。
そのため、光軸方向の外形長が大きい、という課題があっても、信号回線と電力回線の直列接続の一体構造は、基本的に
図3に示された形態となる。
【0015】
図4に、
図2の片持構造を解消する並列接続構造案を示す。
FORJ1の静止側(筐体)がスリップリング6の回転側に向合う構造が片持構造を発生させているから、片持構造を解消するには、FORJ1の筐体11を、スリップリング6の、薄黒色部材で示す中空シャフト62の内壁面に取付固定し、回転側(
図4のFORJ1内部の右側)である回転側光ファイバ結合光学系20を、スリップリング6の静止側61に静止側との接続部である取付具64を介し固定すればよい。
ここで、筐体11は中空シャフト62に接触状態で取付けられる構造として描いてあるが、スリップリング6の回転側60に固定可能な取付構造であれば他の形態でも良い。
要は、スリップリング6の中空シャフト62の中空部63に、FORJ1の回転側60と静止側61を、通常とは逆方向に収納し取付ける形態である。
【0016】
この結果、筐体11はスリップリング6の回転側60と一体化して回転するので、回転枠回転シャフト71起因の外乱は筐体11にはスリップリングの負荷支持軸受69を介して伝わることになるから、その緩衝効果によってFORJ1の負荷支持軸受13への負荷が、
図2のような、回転枠回転シャフト71への直結形態に比べ軽減される。
これは、特に細径のFORJ1に対する適用性を高めることになる、と言える。
また、前記回転機構7の回転部位に設置される信号回線と電力回線を一体化した構造体は、市販のスリップリングのサイズは勿論、その形状も同等仕様で実施されることを期待されるから、信号回線をFORJ1で実施しつつ電力回線をも行う形態は回転部位に整合する構造体でなければならない。
この要求に対し、本実施の形態の「筐体回転形態でスリップリング6と一体構造化されたFORJ90」であれば、回転機構7の回転軸周りの狭小空間での信号回線と電力回線が対処可能になる。
【0017】
次に、
図5に回転枠回転シャフト71を駆動する、中空シャフト621を持つモータと筐体回転形態のFORJ1を一体化した構造のFORJ91を示す。
この一体構造を構成するには、筐体回転形態のFORJ1の筐体11と回転側光ファイバ結合光学系20が取り付けられるモータの部材を明確にすれば良い。
図4との比較で示すと、スリップリング6の場合の中空シャフト62を、駆動モータの中空シャフト621に、そして、スリップリング6の場合の静止側との接続部(取付具)64を、駆動モータのエンドプレート611と看做せば良いことになる。
即ち、
図5は、駆動モータをその駆動源である電機子(アーマチュア)をも図示を省略し、中空シャフト621とエンドプレート611のみで表し単純化していることになる。
次に、
図5では、スリップリング6と駆動モータのエンドプレート611との各静止側は「直結状態」として描いてあるが、「間接的な接続」である場合も考えられることを付言する。
これにより、回転機構7はスリップリング6或いは駆動モータと一体構造化したFORJ90を装着できることになるから、回転枠回転シャフト71と中空シャフト62の接続部周辺が簡素化され、回転機構7の回転側電子機器72の搭載スペースの確保が容易になる。
但し、
図5にはスリップリング6も駆動モータの中空シャフト621に取付けられている状態を示しているから、スリップリング6、FORJ1及び駆動モータの3部材の一体構造と言うことができる。スリップリング6が不要の場合には、
図5の構成からスリップリング6を削除すれば良い)。
また、この構造はモータ側から見れば「信号回線と電力回線機能付きのモータ」とも 言える。
【0018】
さて、「筐体回転形態でスリップリング6或いは駆動モータと一体構造化されたFORJ90」は、「スリップリング6或いは駆動モータの中空シャフトの中空部63にFORJの筐体11を固定する構造が共通である」ことから、以下では「一体構造FORJ90」と短縮化して呼ぶ。
【0019】
静止系内で展開している静止系の多ch双方向伝送系3を、回転系に簡易に移設できれば高速デジタル機器の運用環境を拡大でき機器の有効活用が期待できるであろう。
そこで、上図と下図からなる
図6を基に、上図の静止系の多ch双方向伝送系3から、下図の回転系の多ch双方向伝送系200を構成する手法を説明する。
ここで、「静止系の」多ch双方向伝送系3とは、静止空間内のAとBの異なる2地点間、即ち、「静止側内で構成される」信号伝送系の意であり、「回転系の」とは、回転機構の「回転側と静止側間で構成される」の意である。
また、
図6には上記の静止系も回転系も電力供給系は問題なし、と扱い描いてない。
さて、
図6の上図は、静止空間内のA地点にあるA側伝送系30のP点と、B地点にあるB側伝送系31のQ点との間を、両端に光コネクタを持つ1芯の光ファイバ32で接続し構成した静止系の多ch双方向伝送系3である。
次に、
図6の下図は、回転機構7上にA側伝送系30を搭載した後、A側伝送系30のP点とB側伝送系31のQ点との間を、回転機構7に組込んだ「光コネクタ付帯の一体構造FORJ91」で接続し構成した回転系の多ch双方向伝送系200である。
【0020】
ここで、まず、「光コネクタ33付帯の一体構造FORJ91」の構成の説明を、前出の「一体構造FORJ90」と比較して行う。
・一体構造FORJ90;(
図4と
図5)
筐体回転形態でスリップリング等と一体構造化されたFORJ・・・光コネクタ無し
・光コネクタ付帯の一体構造FORJ91;
一体構造FORJ90の光ファイバ両端に光コネクタを持つ形態・・・光コネクタあり
【0021】
次に、回転側のP点と静止側のQ点は以下の位置を意味する(
図6参照)。
・(静止系の)P点とQ点;A側伝送系30及びB側伝送系31の1芯光ファイバ501、511と「両端に光コネクタを持つ1芯の光ファイバ32」との光コネクタによる接続点
・(回転系の)P点とQ点;図から明らかなように、静止系の「両端に光コネクタを持つ1芯の光ファイバ32」を「光コネクタ付帯の一体構造FORJ91」に変更したのみであるから、回転系のP点とQ点は静止系のそれらと同じ位置になる
逆に、
図6の下図の光コネクタ付帯の一体構造FORJ91の「回転側のP点」と「静止側のQ点」を、光コネクタを両端に持つ1芯の光ファイバ32で接続した後、A側伝送系30を静止側(地上)のA地点に卸下すれば、地上に展開させていた、静止系の多ch双方向伝送系3を構成することができる、ことも意味する。
これは、回転機構上のA側伝送系30の作動環境(回転環境)を「光コネクタ付帯の一体構造FORJ91」によって、静止系のA側伝送系30の作動環境(静止環境)と、光コネクタの接続変更で同等化できることを意味している。
【0022】
回転系の多ch双方向送系200の一例を「360°視野が可能な会場での集会用に、地上展開の、或いはレンタルの監視カメラを回転機構に移行、搭載し運用する」形態として考察する。
この例で
図6の回転機構7への搭載を図るのは、360°のパノラマ画像を基にした追跡方式の顔認証が可能になることで、高額な監視カメラの基数削減が可能になるからである。
さて、上記例の、回転系の多ch双方向伝送系200の構成には以下の3案がある。
第1案がスリップリング適用による電気信号回線、第2案が複数chの1波長での直列化光信号による光信号回線、そして第3案が複数chの多波長での並列化光信号による光信号回線(WDM)、を適用したシステム構成である。
さて、上記例には監視カメラ出力のch数や信号速度は不定、としてシステムを構成する必要がある、という特徴がある。回転側の電力や搭載スペースの確保は当然である。
すると、第1案のスリップリングには高速デジタル伝送に対し[伝送速度の3Gbps制約]が存在するために、また、第2案の1波長の直列化光信号による光信号回線は監視カメラの機種変更の度に直列化光信号の変更対応が必須になるから、最終的には第3案のWDM方式でのシステム構成にせざるを得ない。
【0023】
図7は、前記回転機構7に搭載された2式の監視カメラ721、722の画像データを、信号処理装置731、732で取得し画像制御を行う回転系の2ch双方向伝送系を示している。
図7は、
図6下図を2ch双方向伝送系として詳細化したもの(回転機構7は描いてない)であるが、まず、図中のP点とQ点は以下のようにより具体化される。勿論、P点とQ点は、
図6と同一である。
・P点;回転側合分波器50のA側1芯光ファイバ501と光コネクタ付帯の一体構造FORJ91の回転側光ファイバ171との光コネクタによる接続点
・Q点;光コネクタ付帯の一体構造FORJ91の静止側光ファイバ172と静止側合分波器51のB側1芯光ファイバ511との光コネクタによる接続点
【0024】
さて、多ch双方向FORJ100と回転系の多ch双方向伝送系200の区分を示す。なお、電力回線系は
図4或いは
図5の形態で同一、として記述を省略する。
・多ch双方向FORJ100;
光コネクタ付帯の一体構造FORJ91にSFP型光トランシーバ4と波長合分波器5を加えた光信号伝送器。
・回転系の多ch双方向伝送系200;
多ch双方向FORJ100に回転側電子機器72と静止側電子機器73を加えた光信号伝送系。
因みに、静止系の多ch双方向伝送系3は、
図6の上図に開示されている。
【0025】
ここで、
図6で述べた回転系の多ch双方向伝送系200の構成手法を
図7を基に補足する。正確には静止系から回転系の変換法になる。
まず、P点とQ点を結ぶ、両端に光コネクタを持つ1芯の光ファイバ32から、光コネクタ付帯の一体構造FORJ91への置換を光コネクタの脱着操作によって行う。
この光コネクタ付帯の一体構造FORJ91を組込んだ回転機構7に、P点よりも左方にある構成部材(地上のA地点に展開されている機器)を搭載し、P点で光コネクタ同士で接続した状態が
図7と言える(Q点の右方が地上のB地点の機器と同じ)。
これにより、回転系の多ch双方向伝送系200の構成は、その「実現手段」を回転機構7が具備する、光コネクタ付帯の一体構造FORJ91の信号回線機能と電力回線機能とし、「操作手段」を光コネクタの脱着とすることで可能、と言えることになる。
【0026】
「回転系」の信号回線と電力回線の内、電力回線の構成手法については
図4と
図5で述べたから、以下では回転系の多ch双方向伝送系200の「信号回線の構成手法」について述べる。
図7を基に、第1監視カメラ721の画像出力の回転側(左方)から静止側(右方)への流れを説明する(図には電力供給系は省略し描いてない)。
ここで、図中の実線が電気信号(電線)、破線が光信号(光ファイバ)を表している。
第1監視カメラ721の画像出力TX1A(波長λ1)は、細黒線枠で囲った回転側光トランシーバ・チェンネル1(ch1)401の回転側送受信分離フィルタ(dichroic filter)403で透過された波長λ1の光信号が回転側合分波器50に入力され、第2監視カメラ722の出力TX2A(波長λ3)と合波されてP点に至る。
P点通過後、光コネクタ付帯の一体構造FORJ91に伝送された光信号がQ点に至る。
Q点通過後、静止側合分波器51に入力されて分波され、細黒線枠で囲った静止側光トランシーバ・チェンネル1(ch1)411の静止側送受信分離フィルタ413で反射され静止側光トランシーバ・チェンネル1(ch1)411からの出力RX1A(波長λ1)として第1信号処理装置731に入力される。
【0027】
次に、静止側から回転側に向かう信号の流れを説明する。
第1信号処理装置731の出力TX1B(波長λ2)は、静止側送受信分離フィルタ413で透過された波長λ2の光信号が静止側合分波器51に入力され、第2信号処理装置732の出力TX2B(波長λ4)と合波されてQ点に至る。
Q点を通過後、光コネクタ付帯の一体構造FORJ91によって回転側に伝送された光信号がP点を通過後、回転側合分波器50に入力され分波されて、回転側光トランシーバ・チェンネル1(ch1)401の回転側送受信分離フィルタ403で反射され回転側光トランシーバ・チェンネル1(ch1)401からの出力RX1B(波長λ2)として第1監視カメラ721に入力される。
次に、残りの1ch分の双方向伝送系の説明が必要になるが、それは上記した1ch分の双方向伝送系と全く同じ(各chは独立)であるので省略する。
【0028】
今、静止系の多ch双方向伝送系3の作動環境に対する、回転系の作動環境差を考察すると次のようなものが挙げられる。
・第1:回転側での電力、第2:回転機構の搭載スペース、第3:伝送信号のch数変化への対応、第4:信号毎の伝送速度の変更への対応
すると、静止系の多ch双方向伝送系を回転系に円滑に移行させるには、上記の作動環境差を解消させ、回転環境を静止環境の作動環境と同等化させることが必要になる。
この「回転環境を静止環境と同等化するイコライザ」機能は、アナログ信号や略3Gbps以下の速度のデジタル信号に対しては、スリップリングが果たしているから、それを基準にして上記作動環境差を評価すると、
第1項の「回転側給電」と第2項の「スペース確保」は、
図4と
図5に示した一体構造FORJ90でスリップリング並み、と言えるであろう。
また、構成部材の、SFP型光トランシーバ4は分散設置が可能であること及び波長合分波器5がスリップリングと異なり設置形状の自由度が高いことが「回転機構のペイロードスペースの阻害回避」に資するから、スリップリングの占有容積との大小比較では測れないペイロードスペースの効率化が期待できる、と言えるだろう。
また、第3項の「ch数変化への対応」及び第4項の「伝送速度変更への対応」は、SFP型光トランシーバ4と波長合分波器5には幅広い仕様の市販品が豊富に存在することから十分対応可能と言える。
これらから、光コネクタ付帯の一体構造FORJ91を具備した回転機構7は明らかに信号回線と電力回線機能及び「回転機構の搭載スペース確保」を実現可能とするから、この一体構造FORJ91は「回転環境を静止環境と同等化する器材(イコライザ)」と言える、例えば、「高速デジタル伝送系のスリップリング」と言えるであろう。
【0029】
上記では、回転機構7に移行、搭載される回転側電子機器72は、静止空間内のA側伝送系30の構成部材であるA側電子機器と同じ、と扱ってきたが、移行、搭載時にA側電子機器にレンタル器材等を混用するケースもあり得ることから、A側電子機器の一部が同じ、というケースもあり得る。
その場合、そのレンタル器材等が
図7のシステム構成下で作動すれば混用は問題ないと言うことになる。
また、スリップリング6が電力回線機能、FORJ1が信号回線機能としてきたが、スリップリング6はアナログ及びデジタル信号の信号回線機能も有することは明白である。 これは、一体構造FORJ90は電力回線と信号回線の最適配分が可能になることを意味する。
本発明に係る、静止系の多ch双方向伝送系に対する回転系の作動環境の差異を、信号回線と電力回線の双方の機能を有する一体構造FORJによって解消し実現する多ch双方向FORJは、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、各種の光ファイバ通信、映像伝送機器等の製造に、好適に用いることができる。