(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034249
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】メタン発酵消化液の浄化処理方法、及びメタン発酵消化液の浄化処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20220224BHJP
B09B 3/60 20220101ALI20220224BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20220224BHJP
C02F 3/34 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C02F11/04 A
B09B3/00 A ZAB
C02F1/52 E
C02F3/34 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137959
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003171
【氏名又は名称】株式会社戸上電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】石田 稔
【テーマコード(参考)】
4D004
4D015
4D040
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AC04
4D004BA04
4D004CA17
4D004CB02
4D015BB05
4D015CA02
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4D015DA16
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4D015DC07
4D015DC08
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4D040BB05
4D040BB24
4D040BB57
4D040BB93
4D059AA01
4D059BA12
4D059BA34
4D059BE01
4D059BE55
4D059BE57
4D059BE58
4D059BE59
4D059BJ01
4D059BJ09
4D059BK11
4D059CA22
4D059CA24
4D059CC01
4D059EB02
(57)【要約】
【課題】大規模な処理設備や動力源を必要とせず、有機性廃棄物をメタン発酵して生じたメタン発酵消化液を効率的に処理することができるメタン発酵消化液の浄化処理方法、及びメタン発酵消化液の浄化処理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】メタン発酵消化液100重量部に対して、畜産糞尿を10重量部以上、好ましくは30重量部以上混合してBOD/N比率が3以上となる混合液を生成する。混合液は固液分離装置40により濾過液と固体物に分離され、濾過液をさらに活性汚泥処理することにより、無害化された生物処理液を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集した有機性廃棄物の一部をメタン発酵に供して取り出した所定量のメタン発酵消化液に、前記有機性廃棄物のうち前記メタン発酵に供されない所定量の有機性廃棄物を混合して混合液を生成する工程と、
前記混合液を固体物と分離液に分離する工程と、
前記分離液を活性汚泥処理する工程と、
前記活性汚泥処理して得られた処理水を排出する工程と、を備える
メタン発酵消化液の浄化処理方法。
【請求項2】
前記分離する工程は、
前記混合液を固体物と濾過液に固液分離する工程と、
前記濾過液に凝集剤を添加し、前記濾過液を脱水分離液と固体物に脱水分離する工程と、を有する
請求項1に記載のメタン発酵消化液の浄化処理方法。
【請求項3】
前記混合液を生成する工程は、
前記メタン発酵消化液100重量部に対して前記有機性廃棄物を略10~100重量部、より好ましくは30~100重量部だけ混合する工程を含む
請求項1または請求項2に記載のメタン発酵消化液の浄化処理方法。
【請求項4】
前記有機性廃棄物は、畜産糞尿である
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のメタン発酵消化液の浄化処理方法。
【請求項5】
前記活性汚泥処理する工程は、
所定量のメタノールを供給する工程を含む
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のメタン発酵消化液の浄化処理方法。
【請求項6】
有機性廃棄物が貯留された廃棄物貯留槽と、
該廃棄物貯留槽に貯留されている有機性廃棄物の一部が供給され、供給された有機性廃棄物をメタン発酵処理してメタンガス、及びメタン発酵消化液を生成するメタン発酵処理槽と、
前記メタン発酵処理槽で生成された所定量のメタン発酵消化液に対して、前記廃棄物貯留槽に貯留されている所定量の有機性廃棄物が供給されて混合液を生成する混合槽と、
該混合槽で生成された混合液を固体物と分離液に分離する固液分離装置と、
前記分離液を活性汚泥処理して処理水を生成する活性汚泥装置と、を備える
メタン発酵消化液の浄化処理システム。
【請求項7】
前記混合槽は、
前記メタン発酵処理槽から供給されるメタン発酵消化液100重量部に対して、前記廃棄物貯留槽から供給される有機性廃棄物を10~100重量部、より好ましくは30~100重量部とする
請求項6に記載のメタン発酵消化液の浄化処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン発酵消化液の浄化処理方法、及びメタン発酵消化液の浄化処理システムに関する。詳しくは、大規模な処理設備や動力源を必要とせず、有機性廃棄物をメタン発酵して生じたメタン発酵消化液を効率的に処理することができるメタン発酵消化液の浄化処理方法、及びメタン発酵消化液の浄化処理システムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、牛や豚をはじめとする畜産施設等では、家畜の糞尿(以下、「畜産糞尿」という。)を浄化処理した後、河川に放流する方法がとられてきた。しかしながら近年、悪臭等の理由から畜産施設の建設場所が山地に移行してきており、畜産施設からの処理水が河川源流近くに放流されたり、また畜産農家の大規模化による排水量の増大から、畜産施設の浄化処理施設の浄化能力の範囲を超え、最終処理水の水質が悪化するという問題が発生している。
【0003】
一方、畜産糞尿は生物由来の有機物資源であり、これらは植物の生長に必要な窒素、リン、カリウムなどの元素を含有することから、肥料、又は堆肥製造用の副資材として再利用を図ることができる点で注目されている。そして、畜産糞尿から堆肥を製造する方法に関する技術が数多く開示されている(例えば特許文献1、特許文献2)。
【0004】
一般的に畜産糞尿を主原料にして作られる堆肥は、畜産糞尿に副材料を混合して野積みにして、長時間かけて堆肥化される。現在では、法規制、悪臭問題などもあり、畜産糞尿を屋根付き施設の床上に山積みにし、発酵が進み、所定温度に到達したことを目安に、切り返し(反転)を繰り返し、悪臭を除きながら完熟させて作られている。そして、畜産糞尿の中でも、特に牛糞の完熟堆肥を得るには、おおよそ120日~150日間必要とされている。
【0005】
このように、畜産糞尿から堆肥を製造するには多大な手間を要すること、さらには近年の農地面積の縮小から堆肥余りが深刻な状況となっていることから、畜産糞尿については農地還元されず、一部は焼却処理されてしまっており、必ずしも有効活用がされていないのが現状である。
【0006】
ところで、畜産糞尿をメタン発酵処理して得られるメタンガスは、電気や熱を回収するのに優れた燃料であることが知られている。そのため、近年では、畜産糞尿の堆肥以外の処理方法としてのメタン発酵処理が注目されている。しかしながら、メタン発酵処理した後に生ずるメタン発酵消化液もやはり廃棄物となるため、このメタン発酵消化液の浄化処理方法が課題となる。
【0007】
この点、メタン発酵消化液は畜産糞尿を原料とすることから、堆肥と同じく肥料成分(窒素、リン、カリウム)を多く含むため、一部の農地においてはメタン発酵消化液を畑に散布して液肥として農地還元することが行われている。しかしながら、前記した通り、近年の農地面積の縮小により、農地が受け入れ可能なメタン発酵消化液量にも限界があり、地域によってはその地域で発生する畜産糞尿の全量を農地に還元することができない場合がある。そのため余剰となったメタン発酵消化液については焼却処理することも考えられるが、メタン発酵消化液は多くの水分(約90重量%以上)と少量の固形分が混在するスラリー状であるため、全量を焼却処理するには焼却設備や燃料コストが高くなり好ましい手法とはいえない。
【0008】
このようなメタン発酵消化液の排水処理の方法としては、まずメタン発酵消化液に凝集剤を添加したうえで液体分と固体分(残渣)に固液分離される。固液分離により生じた固体分については堆肥として使用され、残る液体分については活性汚泥処理等の生物分解により、液体分に含まれる有機物、及び窒素成分を除去することで河川等に放出される(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-101109号公報
【特許文献2】特開2001-287995号公報
【特許文献3】特開2004-290921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、活性汚泥処理においては、被処理水の生物的酸素要求量(BOD)を総窒素量(T-N)で除した値(以下、「BOD/N比率」という。)として、一般的には3以上でなければ脱窒素が促進されないという側面がある。
【0011】
この点、メタン発酵消化液は、メタン発酵処理により一度生物処理された残渣である等の理由から、被処理水中のBOD/N比率が3未満となる傾向があり、脱窒素が促進されず、活性汚泥処理を適用しようとしても、一般的な有機系排水の処理と比べて所定の基準値以上の窒素成分が残るという問題がある。さらに、メタン発酵消化液は凝集剤への反応性が悪く、活性汚泥処理の前処理である固液分離が促進されないことからも、さらに活性汚泥処理が困難なものとなる。
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、大規模な処理設備や動力源を必要とせず、有機性廃棄物をメタン発酵して生じたメタン発酵消化液を効率的に処理することができるメタン発酵消化液の浄化処理方法、及びメタン発酵消化液の浄化処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明のメタン発酵消化液の浄化処理方法は、収集した有機性廃棄物の一部をメタン発酵に供して取り出した所定量のメタン発酵消化液に、前記有機性廃棄物のうち前記メタン発酵に供されない所定量の有機性廃棄物を混合して混合液を生成する工程と、前記混合液を固体物と分離液に分離する工程と、前記分離液を活性汚泥処理する工程と、前記活性汚泥処理して得られた処理水を排出する工程とを備える。
【0014】
ここで、収集した有機性廃棄物の一部をメタン発酵に供して取り出した所定量のメタン発酵消化液に、前記有機性廃棄物のうち前記メタン発酵に供されない所定量の有機性廃棄物を混合して混合液を生成する工程を備えることにより、メタン発酵消化液のBOD/N比率を高めることができる。従って、メタン発酵処理の後工程において、固液分離が促進されるとともに、活性汚泥処理を促進し、メタン発酵消化液を効率的に分解処理することができる。
【0015】
また、混合液を固体物と分離液に分離する工程を備えることにより、混合液に含まれる懸濁物質を分離することができる。なお、混合液から分離された懸濁物質からなる固体物は、スクリュープレス等の脱水機により脱水して、肥料として使用することができる。
【0016】
また、分離液を活性汚泥処理する工程を備えることにより、分離液に含まれる有機物や窒素を除去して無害化することができる。
【0017】
また、活性汚泥処理して得られた処理水を排出する工程を備えることにより、無害化された処理水を外部に排出することができる。なお、このとき、処理水に含まれる固形物については堆肥として使用することができる。
【0018】
また、分離する工程は、混合液を固体物と濾過液に固液分離する工程と、濾過液に凝集剤を添加し、濾過液を脱水分離液と固体物に脱水分離する工程とを有する場合には、二段階での固液分離により固体物の水分含有率を大幅に低減することができる。このとき、脱水分離する工程において凝集剤を添加することにより、脱水分離液と固体物との分離が容易なものとなる。
【0019】
また、混合液を生成する工程は、メタン発酵消化液100重量部に対して有機性廃棄物を略10~100重量部、より好ましくは30~100重量部だけ混合する工程を含む場合には、混合液のBOD/N比率を高め、後工程における活性汚泥処理を促進することができる。
【0020】
なお、混合する有機性廃棄物の量を、メタン発酵消化液100重量部に対して10重量部未満とすると、BOD/N比率が略3未満の数値となるため、活性汚泥処理が促進されず、分離液に含まれる有機物、及び窒素等の有害物質が除去するために大規模な処理施設が必要となる。
【0021】
さらに、混合する有機性廃棄物の量を、メタン発酵消化液100重量部に対して30重量部未満とすると、やはりBOD/N比率が小さくなる。従って、濾過液が凝集剤と反応し難くなり、固液分離が促進されず、分離液に多くの固体物が含まれることから、やはり活性汚泥処理のために大規模な処理施設を必要とする。
【0022】
以上のことから、固液分離を促進するとともに、活性汚泥処理を促進するという観点においては、混合する有機性廃棄物の量を、メタン発酵消化液100重量部に対して30重量部以上とすることがより好ましい。
【0023】
また、有機性廃棄物は、畜産糞尿である場合には、処理工程において生成された固体物については堆肥として使用し、分離液については無害化して排出することができるため、畜産糞尿の有効活用を図るとともに、畜産糞尿を効率的に無害化することができる。
【0024】
また、活性汚泥処理する工程は、所定量のメタノールを供給する工程を含む場合には、活性汚泥処理おいて不足しがちとなるBOD源を供給し、脱窒処理を促進することができる。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明のメタン発酵消化液の浄化処理システムは、有機性廃棄物が貯留された廃棄物貯留槽と、該廃棄物貯留槽に貯留されている有機性廃棄物の一部が供給され、供給された有機性廃棄物をメタン発酵処理してメタンガス、及びメタン発酵消化液を生成するメタン発酵処理槽と、前記メタン発酵処理槽で生成された所定量のメタン発酵消化液に対して、前記廃棄物貯留槽に貯留されている所定量の有機性廃棄物が供給されて混合液を生成する混合槽と、該混合槽で生成された混合液を固体物と分離液に分離する固液分離装置と、前記分離液を活性汚泥処理して処理水を生成する活性汚泥装置とを備える。
【0026】
ここで、有機性廃棄物が貯留された廃棄物貯留槽を備えることにより、例えば畜産施設等で発生し収集された畜産糞尿を廃棄物貯留槽で貯留することができる。
【0027】
また、廃棄物貯留槽に貯留されている有機性廃棄物の一部が供給され、供給された有機性廃棄物をメタン発酵処理してメタンガス、及びメタン発酵消化液を生成するメタン発酵処理槽を備えることにより、廃棄物貯留槽に貯留された一部の有機性廃棄物をメタンガスとして取り出し、発電等の燃料として有効活用することができる。
【0028】
また、メタン発酵消化液と有機性廃棄物の混合液が貯留される混合槽を備えることにより、係る混合槽において、メタン発酵消化液と有機性廃棄物を混合することができるため、メタン発酵消化液のBOD/N比率を高めることができる。従って、メタン発酵消化液の固液分離が促進されるとともに、活性汚泥処理を促進し、メタン発酵消化液を効率的に分解処理することができる。
【0029】
また、混合液を固体物と分離液に分離する固液分離装置を備えることにより、混合液に含まれる懸濁物質を分離することができる。なお、混合液から分離された懸濁物質からなる固体物は、スクリュープレス等の脱水機により脱水して、肥料として使用され、分離液は活性汚泥処理等の生物処理により無害化することができる。
【0030】
また、分離液を活性汚泥処理して処理水を生成する活性汚泥装置を備えることにより、固液分離された分離液は活性汚泥装置において、分離液に含まれる有機物や窒素成分が除去されて無害化することができる。
【0031】
また、混合槽は、メタン発酵処理槽から供給されるメタン発酵消化液100重量部に対して、廃棄物貯留槽から供給される有機性廃棄物を10~100重量部、より好ましくは30~100重量部とする場合には、混合液のBOD/N比率を高め、活性汚泥装置での活性汚泥処理を促進することができる。
【0032】
なお、混合する有機性廃棄物の量を、メタン発酵消化液100重量部に対して10重量部未満とすると、BOD/N比率が略3未満の数値となるため、活性汚泥処理が促進されず、分離液に含まれる有機物、及び窒素等の有害物質が除去することができない。
【0033】
さらに、混合する有機性廃棄物の量を、メタン発酵消化液100重量部に対して30重量部未満とすると、やはりBOD/N比率が小さくなるため、濾過液が凝集剤と反応し難くなり、固液分離が促進されないため、固体物に含まれる水分含有量が多くなる。
【0034】
以上のことから、固液分離を促進するとともに、活性汚泥処理を促進するという観点においては、混合槽で生成する混合液として、メタン発酵消化液100重量部に対して有機性廃棄物を30重量部以上とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るメタン発酵消化液の浄化処理方法、及びメタン発酵消化液の浄化処理システムは、大規模な処理設備や動力源を必要とせず、有機性廃棄物をメタン発酵して生じたメタン発酵消化液を効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態に係るメタン発酵消化液の浄化処理システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、メタン発酵消化液の浄化処理方法、及びメタン発酵消化液の浄化処理システムに関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0038】
まず、本発明の実施形態に係るメタン発酵消化液の浄化処理システム1について
図1に基づいて説明する。メタン発酵消化液の浄化処理システム1は、廃棄物貯留槽10、メタン発酵処理槽20、混合槽30、固液分離装置40、及び活性汚泥装置50から構成されている。
【0039】
[廃棄物貯留槽]
廃棄物貯留槽10は、畜産施設から発生する有機性廃棄物である畜産糞尿をペースト状に粉砕処理し、スラリー化して貯留しておく装置である。
【0040】
[メタン発酵処理槽]
メタン発酵処理槽20は、畜産糞尿をメタン発酵処理するための装置であり、配管により廃棄物貯留槽10と接続されている。廃棄物貯留槽10に貯留されているスラリー化された畜産糞尿は、例えば供給ポンプを介して一定量がメタン発酵処理槽20に供給されるようになっている。
【0041】
このメタン発酵処理槽20には、メタン菌等の嫌気性微生物が付着・担持された固定化微生物を充填した固定ろ床等が設置されており、ここで畜産糞尿のメタン発酵が行なわれ、嫌気性微生物による畜産糞尿の分解が行われる。メタン発酵における温度としては特に限定されるものではないが、例えば50~70℃程度の温度域で行なうことにより、より活性の高い、高温メタン菌での発酵が行なえるので畜産糞尿の分解速度を更に向上することができる。
【0042】
なお、メタン発酵処理槽20内では、図示しない攪拌羽根等によって、スラリーの攪拌が行なわれる。スラリーの攪拌方法としては、他にポンプによりスラリーを循環させてもよく、また、バイオガスの一部をポンプによりメタン発酵処理槽20の下部に吹き込んでバブリングして攪拌してもよい。
【0043】
メタン発酵処理槽20内のメタン発酵処理により得られたメタン発酵消化液は、メタン発酵処理槽20から排出され、混合槽30へと送られる。このとき、メタン発酵処理槽20から排出されるメタン発酵消化液は、廃棄物貯留槽10からメタン発酵処理槽20に供給される畜産糞尿と略同量が排出されるため、メタン発酵処理槽20内には常に一定量の畜産糞尿で満たされている。なお、メタン発酵処理により生成されたバイオガスは、図示しないガスホルダーに回収され、例えば燃料電池発電装置、ガスエンジン等の発電機やボイラーの燃料として有効利用される。
【0044】
[混合槽]
混合槽30は畜産糞尿とメタン発酵消化液の混合液を貯留するための貯留槽である。混合槽30と廃棄物貯留槽10、及びメタン発酵処理槽20はそれぞれ配管により接続されており、メタン発酵処理槽20から移送されるメタン発酵消化液に対して、所定の割合の畜産糞尿が廃棄物貯留槽10からポンプで吸い上げて混合槽30に移送されるものとなっている。
【0045】
[固液分離装置]
固液分離装置40は、混合槽30から移送された畜産糞尿とメタン発酵消化液の混合液を、濾過液と固体物に分離する装置であり、例えばスクリュープレス、ベルトスクリーン、遠心濃縮脱水機、真空脱水機等の公知の固液分離機から適宜選択することができる。
【0046】
前記したメタン発酵処理槽20におけるメタン発酵は、畜産糞尿に多量に含有されるタンパク質等を、タンパク質分解酵素によりアンモニア性窒素等の無機態窒素に分解することは可能であるが、全てのタンパク質を無機態窒素に分解することは難しい。また、メタン発酵消化液は、複雑な構成をとる窒素化合物を高濃度で含有しており、メタン発酵菌、固形状の有機物、或いは未分解のタンパク質等の溶解性の低い有機態窒素等の懸濁物質も含有する。この固液分離装置40により、メタン発酵消化液中のメタン発酵菌や固形状の有機物や溶解性の低い有機態窒素等の懸濁物質を効果的に除去することができる。
【0047】
なお、固液分離装置40による分離方法としては、例えば固液分離機と脱水機をそれぞれ直列に配置し、まず固液分離機により混合液を濾過液と比較的大きな固体物である残渣に分離し、次に脱水機により濾過液を脱水分離液と固体物である脱水ケーキに分離するようにしてもよい。このように、二段階の固液分離により、混合液に含まれる懸濁物質をより多く分離することができる。
【0048】
また、固液分離に際しては、高分子凝集剤を添加することが好ましい。凝集剤としては、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄などの鉄塩や、ポリ塩化アルミニウムなどといった無機系凝集剤、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアクリルアミド系等の、カチオン系、アニオン系、ノニオン系高分子凝集剤が挙げられ、これらの凝集剤から適宜選択して使用することができる。
【0049】
なお、凝集剤の添加量は、例えば混合液に対して略3~10重量%程度となるように添加することが好ましいが、この点についても使用する凝集剤により適宜変更することができるものとする。
【0050】
固液分離装置40により分離された分離液は、後述する活性汚泥装置50に移送される。一方、固液分離装置40により分離された残渣や脱水ケーキは、さらに乾燥して水分量を減少させたうえで堆肥として使用される。
【0051】
[活性汚泥装置]
固液分離装置40により分離された分離液は、活性汚泥処理される。ここで、分離液中には、イオンとなって溶解している無機態窒素や、溶解性の高い有機態窒素が多く含有されている。メタン発酵消化液中のアンモニア性窒素(NH4-N)であるアンモニウムイオンや溶解性の高い有機態窒素を、亜硝酸菌により亜硝酸イオンに生物分解し、硝化菌により硝酸イオンに生物分解する。最後に、亜硝酸イオンや硝酸イオンを脱窒素菌により窒素ガスに生物分解する。これにより、分離液中におけるアンモニア性窒素等の無機態窒素や溶解性の高い有機態窒素を効果的に除去することができる。
【0052】
活性汚泥装置50は、例えば脱窒槽51、硝化槽52から構成されており、硝化槽52の槽内液を脱窒槽51へ返送しながら分離液を生物処理して脱窒処理する。この生物処理により分離液に含まれた生物易分解性有機物、窒素化合物を分解・除去することができる。
【0053】
なお、活性汚泥装置50としては、汚泥微生物の働きにより有機物を二酸化炭素、水等の無機物に生物分解処理ができる構成であれば特に制限はない。例えば、脱窒槽51と硝化槽52を連続的に構成してもよく、その場合、好気性処理と嫌気性処理とを複数段繰り返すように構成してもよく、処理の対象となる被処理水の汚染成分、汚染度等の汚染状況に応じて適宜設計することができる。
【0054】
また、活性汚泥装置50で使用される微生物は、好気性あるいは嫌気性条件下で被処理水に含有される有機物を栄養源として増殖して汚泥を効率的に分解資化し得る能力を有する微生物であれば、特に限定されるものではない。このような微生物は、被処理水中に生存しており、外部から添加しなくてもよいが、活性汚泥処理を円滑に行うため、必要に応じて、被処理水の汚染成分に対して高い分解活性を有する特定の微生物を適宜選択して添加することもできる。
【0055】
また、分離液中に存在する除去対象となる窒素に対して、有機物が十分に存在しない分離液を処理する場合には、活性汚泥装置50にメタノールを注入し、このメタノールを炭素源として脱窒素反応の進行を促進することもできる。
【0056】
沈殿槽53は、活性汚泥処理により得られた生物分解処理液を重力沈降により固液分離を行うべく構成され、上澄液は最終処理水として系外に放出され、固体成分は底部に沈降し、沈殿汚泥として引き抜かれる。
【0057】
ここで、必ずしも、沈殿槽53を有する必要はない。例えば沈殿槽53に代えて、膜分離装置、ろ過分離装置等により固液分離を行うようにしてもよい。その場合、例えば活性汚泥装置50の内部、或いは外部、さらには、内部と外部の両方にそれぞれ膜分離装置を設けるようにしてもよい。
【0058】
例えば、活性汚泥装置50の内部、外部に膜分離装置を設ける構成としては、内部である硝化槽52に、精密ろ過膜からなる浸漬型膜分離装置を、外部には逆浸透膜、又はNF膜からなる膜処理装置をそれぞれ設置する。
【0059】
このように構成された膜分離装置においては、生物分解処理液は、まず内部である浸漬型膜分離装置で膜分離処理され活性汚泥等の固形物が除去される。浸漬型膜分離装置を透過した透過液は膜処理装置へ供給され、透過液中に残留する色度成分や溶解性の生物難分解性物質を除去する。このとき、例えば逆浸透膜の孔径は1nm~数nm程度と非常に小さいので、溶解性の色度成分や生物難分解性物質を高度に除去することができるとともに、透過液は逆浸透膜もしくはNF膜の負荷となる懸濁物質が完全に除去されているので、逆浸透膜もしくはNF膜による膜分離処理を低圧の運転条件下で実施できる。
【0060】
次に、本発明の実施形態に係るメタン発酵消化液の浄化処理方法について、説明する。
【0061】
[混合液の生成]
メタン発酵処理槽20でメタン発酵されたメタン発酵消化液、及び廃棄物処理槽10に貯留されている畜産糞尿がそれぞれ混合槽30に移送される。混合槽ではこれらメタン発酵消化液と畜産糞尿が混合された混合液が生成される。
【0062】
このとき、廃棄物処理槽10から供給される畜産糞尿は、メタン発酵消化液100重量部に対して10~100重量部の割合となるように、ポンプの供給量が規定されるようになっている。
【0063】
ここで、必ずしも、廃棄物処理槽10から供給される畜産糞尿の量として、メタン発酵消化液100重量部に対して10~100重量部に設定される必要はない。但し、発明者らが検討した結果、メタン発酵消化液100重量部に対して供給される畜産糞尿が10重量部未満となると、BOD/N比率が3未満となり、後工程である活性汚泥処理が活性されず、生物処理水中の懸濁物質が多くなるという問題が生じる。
【0064】
なお、さらに発明者らが検討した結果、メタン発酵消化液100重量部に対して供給される畜産糞尿が、10重量部以上で30重量部未満の範囲である場合には、活性汚泥処理は活性されるものの、固液分離装置40における固液分離において、混合液に添加される高分子凝集剤の反応が弱くなる。そのため、固液分離が促進されず、後工程である活性汚泥処理の負担が大きくなるという問題が生じる。
【0065】
以上のことから、固液分離を促進させ、かつ活性汚泥処理を促進するという観点では、メタン発酵消化液100重量部に対して供給される畜産糞尿が、30重量部~100重量部の範囲であることが好ましい。
【0066】
[固液分離]
混合液が混合槽30から固液分離装置40に供給されると、混合液のうち懸濁物質からなる固体分と濾過液からなる液体分に固液分離される。このとき、前記した通り、混合液の成分として、メタン発酵消化液100重量部に対して畜産糞尿が30重量部以上であると、濾過液中に含まれる懸濁物質の量が少なくなるため、後工程である活性汚泥処理が促進される。
【0067】
[活性汚泥処理]
固液分離装置40により固液分離された液体分である濾過液は、活性汚泥装置50により生物処理される。このとき、前記した通り、混合液の成分として、BOD/N比率が3以上の場合には、生物処理が促進されて脱窒素と活性汚泥処理が実現できる。
【0068】
生物処理により脱窒素された生物処理水は沈殿槽53、或いは膜処理を経て懸濁物質を含有しない水質基準を満たす排水となって河川等へ排水される。
【0069】
以上のように構成されたメタン発酵消化液の浄化処理システム1を用い、畜産糞尿として牛の糞尿を対象として、本発明のメタン発酵消化液の浄化処理方法による連続運転を行った。
【0070】
<実施例1>
まず、実施例1として、混合槽30に供給されるメタン発酵消化液10Lに対して、畜産糞尿4Lを加えて混合液を生成した。このときの混合液の各成分を表1に示す。
【0071】
【0072】
表2に示すように、メタン発酵消化液100重量部に対して畜産糞尿を40重量部だけ混合した混合液の場合、BOD/N比率が4.1となり、活性汚泥処理の目安となるBOD/N比率の3よりも大きくなる。このとき、固液分離の工程において供給される凝集剤に対する反応も良好になるとともに、活性汚泥処理・脱窒素反応が進行し処理水質も良好の結果が得られた。
【0073】
【0074】
<実施例2>
次に、実施例2として、混合槽30に供給されるメタン発酵消化液10Lに対して、畜産糞尿1Lを加えて混合液を生成した。このときの混合液の各成分を表3に示す。
【0075】
【0076】
表3に示すように、メタン発酵消化液100重量部に対して畜産糞尿を10重量部だけ混合した混合液の場合、BOD/N比率が2.5となり、活性汚泥処理の目安となるBOD/N比率の3よりも若干低くなる。このとき、表4のとおり、凝集剤の効果が劣り、分離できないBOD成分が残存し、実施例1に比べると処理水のBOD値は上昇した。またBOD/N比率が3を下回っているのでT-N値は目標値である100mg/Lに達しなかった。不足分のBODであるメタノール添加が必要な結果となった。
【0077】
【0078】
<比較例>
次に、比較例1として、混合槽30に供給されるメタン発酵消化液10Lに対して、畜産糞尿を加えずに前記したメタン発酵消化液の浄化処理方法により処理した。このときのメタン発酵消化液の各成分を表5に示す。
【0079】
【0080】
表5に示すように、メタン発酵消化液に対して畜産糞尿を混合しない場合、窒素成分が多いためBOD/N比率が1.8となり、活性汚泥処理の目安となるBOD/N比率の3よりも大幅に少なくなる。このとき、表6に示すように、固液分離の工程において供給される凝集剤に対する反応速度が悪化するとともに、処理水も実施例1及び2に対して大幅に悪化する結果となる。
【0081】
【0082】
以上の実施例、及び比較例から、メタン発酵消化液に対して所定量の畜産糞尿を加えることで、活性汚泥処理が促進される目安となるBOD/N比率が3以上となり固液分離、及び活性汚泥処理が促進される。なお、BOD/N比率が3以上とするには、メタン発酵消化液100重量部に対して、畜産糞尿を10重量部以上、好ましくは30重量部以上を混合することが好ましい結果となる。
【0083】
以上のように、本発明を適用したメタン発酵消化液の浄化処理方法、及びメタン発酵消化液の浄化処理システムは、大規模な処理設備や動力源を必要とせず、有機性廃棄物をメタン発酵して生じたメタン発酵消化液を効率的に処理することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0084】
1 メタン発酵消化液の浄化処理システム
10 廃棄物貯留槽
20 メタン発酵処理槽
30 混合槽
40 固液分離装置
50 活性汚泥装置
51 脱窒槽
52 硝化槽
53 沈殿槽