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特開2022-34306多層配線基板および多層配線基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034306
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】多層配線基板および多層配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
H05K3/46 E
H05K3/46 N
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138044
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 良馬
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA32
5E316AA43
5E316BB11
5E316CC09
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC35
5E316CC36
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316DD03
5E316DD16
5E316DD17
5E316DD24
5E316EE33
5E316EE38
5E316FF05
5E316FF07
5E316FF09
5E316FF14
5E316GG17
5E316GG18
5E316GG22
5E316HH40
(57)【要約】
【課題】支持基板の上に多層配線層を形成しFC-BGA基板に搭載する方式において、加熱時の反りや内部応力によるトレンチ層の樹脂/ビア層の樹脂界面で層間剥離を低減し、接続信頼性の高い多層配線基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ビアが形成されているビア層18と前記のビア層上にランドと配線で形成されているトレンチ層19を含む配線基板において、トレンチ層とビア層の導体部の側面、底面および、前記トレンチ層の導体であるランドと配線が非導体部より厚みが小さくすることにより形成される凹部側面に、少なくてもシード密着層が存在する状態とする。また、トレンチ層と該トレンチ層に隣接するビア層29との間に化学的密着層を形成する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体部及び第1非導体部を含む第1層と、第2導体部及び第2非導体部を含む第2層とを有する配線層を2層以上有する多層配線基板であって、
前記第2層は、前記第2導体部が配置された領域と前記第2導体部が配置されていない領域で厚さが異なり、上面が凹凸形状を有している
ことを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の多層配線基板において、
前記第1導体部及び前記第2導体部の側面及び/又は底面には、シード密着層が形成されており、
前記第2層は、前記第2導体部が配置されていない領域の厚さが前記第2導体部が配置された領域の厚さより小さい、
ことを特徴とする多層配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の多層配線基板において、
前記第1導体部及び前記第2導体部の側面及び/又は底面には、シード密着層が形成されており、
前記第2層は、前記第2導体部が配置された領域の厚さが前記第2導体部が配置されていない領域の厚さより小さい
ことを特徴とする多層配線基板。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の多層配線基板において、
配線層と配線層との間に化学的密着層が配置されている
ことを特徴とする多層配線基板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多層配線基板において、
前記第1層はビア層であり、前記第1導体部はビアであり、前記第2層はトレンチ層であり、前記第2導体部はランド及び回路配線であり、
前記ランドは、前記ビアと接続している
ことを特徴とする多層配線基板。
【請求項6】
第1導体部及び第1非導体部を含む第1層と、第2導体部及び第2非導体部を含む第2層とを有する配線層を2層以上有する多層配線基板の製造方法であって、
1)前記第1非導体部のパターン及び前記第2非導体部のパターンを形成する工程と、
2)前記第1非導体部のパターン及び前記第2非導体部のパターンの側面及び底面にシード密着層及びシード層を順次設ける工程と、
3)前記シード層上に導電性材料を積層形成して、第1導体部及び第2導体部とする工程と、
4)前記第2導体部の表面に、前記第2導体部が配置された領域と前記第2導体部が配置されていない領域で厚さを異ならせ、前記第2導体部の表面に凹凸形状を形成する工程と、
5)1)から4)の工程を所望の配線層の層数分繰り返す工程と、
を有する多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の多層配線基板の製造方法において、前記第2導体部の表面に凹凸形状を形成する工程は、前記第2導体部が配置された領域の表面を除去する
ことを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板および多層配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年半導体装置の高速化、高集積化が進む中で、半導体素子を搭載するFC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)基板に対しても、半導体素子との接合端子の狭ピッチ化、基板内の配線の微細化が求められている。一方、FC-BGA基板とマザーボードとの接合は、従来とほぼ変わらないピッチの接合端子での接合が要求されている。
このような半導体素子との接合端子の狭ピッチ化、これに伴うFC-BGA基板内の配線の微細化に対応するため、FC-BGA基板と半導体素子との間に、インターポーザ―とも呼ばれる、微細な配線を含む多層配線基板を設ける技術が採用されている。
その一つは、インターポーザを半導体回路の製造技術を用いて、シリコンウェハ上に形成するシリコンインターポーザ技術である。
また、インターポーザをシリコンウェハ上に形成するのではなく、FC-BGA基板上に直接作り込む手法も開発されている。これは、FC-BGA基板の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)等で平坦化し、インターポーザとなる多層配線基板を、FC-BGA基板上に直に形成する方式である。これについては、特許文献1に開示されている。
さらに、インターポーザ(多層配線基板)をガラス基板等の支持体の上に形成し、これをFC-BGA基板に搭載した後、支持体を剥離することで、FC-BGA基板上に狭ピッチな多層配線基板を形成する方式もある。これについては特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-225671号公報
【特許文献2】国際公開第2018/047861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコンインターポーザは、シリコンウェハを利用して、半導体製造における前工程用の設備を用いて製作されることから、微細な配線層を形成することに適している。しかし、シリコンウェハは形状、サイズに制約があり、1枚のウェハから製作できるインターポーザの数が少なく、製造設備も高価であるため、インターポーザも高価となる。また、シリコンウェハが半導体であることから、伝送特性も劣化するという問題がある。
【0005】
また、FC-BGA基板の表面の平坦化を行い、その上にインターポーザとなる多層の配線層を形成する方式においては、シリコンインターポーザに見られる伝送特性の劣化は小さいが、FC-BGA基板自体の製造歩留まりの問題や、FC-BGA基板上に微細配線を形成する難易度が高いため、全体的に製造歩留まりが低いという課題がある。さらにFC-BGA基板の反り、歪みに起因した半導体素子の実装における課題も存在する。
【0006】
さらに、多層配線基板をガラス基板等の支持体の上に形成し、これをFC-BGA基板上に載置した後に支持体を剥離する方式においては、支持体の上に多層配線層を形成する際に、セミアディティブ法が用いられることが多い。しかし、セミアディティブ法で用いられる絶縁樹脂層はフィラーを含有せず、後の工程で用いるフィラーを含有したアンダーフィル層、及び、ソルダーレジスト層と比較して、弾性率が低く、且つ、CTE(coefficient of thermal expansion、熱膨張率)が大きい傾向がある。
【0007】
そのため、いずれの方式を用いた場合であっても、加熱時に絶縁樹脂層のみが大きく変形し、基板の反りが発生することがある。また、配線層内部に応力を発生した場合には、微細な配線層などの内部の導体層の剥離や、剥離した箇所を起点とするクラックの発生、配線層を形成する層間界面での層間剥離(delamination)が生じ、接続信頼性の確保が難しい問題がある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、基板の反りや、配線層内部の応力に対して耐性のある多層配線基板及び多層配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の代表的な多層配線基板の一つは、第1導体部及び第1非導体部を含む第1層と、第2導体部及び第2非導体部を含む第2層とを有する配線層を2層以上有する多層配線基板であって、
前記第2層は、前記第2導体部が配置された領域と前記第2導体部が配置されていない領域で厚さが異なり、上面が凹凸形状を有している
【0010】
また、本発明の代表的な多層配線基板の製造方法の一つは、
1)前記第1非導体部のパターンを形成する工程と、
2)前記第1非導体部のパターンの上方に、前記第2非導体部のパターンを形成する工程と、
3)前記第1非導体部のパターン及び前記第2非導体部のパターンの側面及び底面にシード密着層及びシード層を順次設ける工程と、
4)前記シード層上に導電性材料を積層形成して、第1導体部及び第2導体部とする工程と、
5)前記第2導体部の表面に、前記第2導体部が配置された領域と前記第2導体部が配置されていない領域で厚さを異ならせ、前記第2導体部の表面に凹凸形状を形成する工程と、
6)1)から5)の工程を所望の配線層の層数分繰り返すものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板の反りや、配線層内部の応力に対して耐性のある多層配線基板及びその製造方法を提供することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】多層配線基板とFC-BGA基板を接合し、半導体素子を実装した状態を示す断面図である。
図2】支持体の上方に剥離層、感光性樹脂層のパターン、シード密着層、シード層、導体層を形成した状態を示す断面図である。
図3】表面研磨後に第1層のパターンを形成した状態を示す断面図である。
図4】第1層のパターンの上面に第2層のパターンを形成した状態を示す断面図である。
図5】シード密着層を形成した状態を示す断面図である。
図6】シード密着層の上にシード層を形成した状態を示す断面図である。
図7】シード層の上に導体層を形成した状態を示す断面図である。
図8】CMP(化学機械研磨)加工によって導体層及びシード層を除去した状態を示す断面図である。
図9】第2導体部の表面に凹凸形状を形成した状態を示す断面図である。
図10】化学的密着層を形成した状態を示す断面図である。
図11図3図10を繰り返して多層配線を形成した状態を示す断面図である。
図12】化学的密着層の上面に感光性樹脂層、シード密着層、シード層、レジストパターンを形成し、導体層を形成した状態を示す断面図である。
図13】ソルダーレジスト層を形成した状態を示す断面図である。
図14】表面処理層、はんだ接合部を形成し、支持体上の配線基板が完成した状態を示す断面図である。
図15】本実施形態における囲い部の拡大詳細断面図である。
図16】比較例における囲い部の拡大詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図1図14を用いて、本発明の一実施形態に係る多層配線基板及びその製造工程の一例を説明する。
なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、図面によっては、同一の部分の天地を逆にして記載している部分があることに留意すべきである。
【0014】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を以下に記載されるものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
なお、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方又は下方に示される面を意味する。
また、「側面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層における面や層の厚みの部分を意味する。さらに、面の一部及び側面を合わせて「端部」ということがある。
また、「上方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。さらに、「上方」及びこれと反対の「下方」については、これらを「Z軸方向」ということがあり、水平方向については、「X軸方向」、「Y軸方向」ということがある。
また、「平面形状」、「平面視」とは、上方から面又は層を視認した場合の形状を意味する。さらに、「断面形状」、「断面視」とは、板状部材又は層を特定の方向で切断した場合の水平方向から視認した場合の形状を意味する。
さらに、「中心部」とは、面又は層の周辺部ではない中心部を意味する。そして、「中心方向」とは、面又は層の周辺部から面又は層の平面形状における中心に向かう方向を意味する。
【0016】
本実施形態の多層配線基板30は、第1の面において半導体素子と接続可能であり、第2の面において他の配線基板と接続可能である。まず、図1に示すように、本実施例の多層配線基板30を用いて製造する半導体装置16の全体について説明する。
図1において、多層配線基板30の上面に半導体素子17が接合されており、多層配線基板30の下面にはFC-BGA基板14が接合され、これらが一体となって半導体装置16を構成している。
【0017】
半導体素子17は、多層配線基板30とはんだ接合部25で接合されたのち、封止樹脂26によって封止固定されている。また、多層配線基板30は、FC-BGA基板14とはんだ接合部27で接合されたのち、封止樹脂28によって封止固定されている。
【0018】
後述するように、多層配線基板30は支持体1の上方に剥離層2を介して形成され、支持体1とともにFC-BGA基板14に接合されたのち、支持体1は剥離層によって剥離除去されている。
【0019】
半導体素子17は、多層配線基板30がFC-BGA基板14に接合された後に多層配線基板30に接合されてもよいし、多層配線基板30がFC-BGA基板14に接合される前に多層配線基板30に接合されていてもよい。以下の実施形態の説明では、多層配線基板30がFC-BGA基板14に接合された後に多層配線基板30に半導体素子17が接合される形態について説明する。
次に図2図9を用いて、多層配線基板30の構成とその製造方法について説明する。
図2は、支持体の上方に剥離層2、感光性樹脂層3、シード密着層4、シード層5、導体層6を形成した状態を示す断面図である。
以下、図2の構成を得るための工程を順次説明する。
【0020】
(1)支持体1上面への剥離層2の形成
まず、支持体1の一方の面に剥離層2を形成する。
支持体1は、支持体1を通じて剥離層2に光を照射させる場合もあるため、透光性を有するのが有利であり、例えば矩形のガラスを用いることができる。矩形のガラスは大型化に適しているとともに、ガラスは平坦性に優れており、また、剛性が高いため、支持体上に微細なパターンを形成するのに適している。
また、ガラスはCTEが小さく歪みにくいことから、パターン配置精度及び平坦性の確保に優れている。支持体1としてガラスを用いる場合、ガラスの厚さは、製造プロセスにおける反りの発生を抑制する観点から厚い方が望ましく、例えば0.7mm以上、好ましくは1.1mm以上の厚みである。
【0021】
さらに、ガラスのCTEは3ppm以上15ppm以下が好ましく、FC-BGA基板14、半導体素子17のCTEとの整合性の観点から9ppm程度がより好ましい。
一方、剥離層2に熱によって発泡する樹脂を用いる等、支持体1を剥離する際に支持体1に光の透過性が必要でない場合は、支持体1には、歪みの少ない例えばメタルやセラミックスなどを用いることができる。
以下、本発明の一実施形態では、剥離層2としてUV光を吸収して剥離可能となる樹脂を用い、支持体1にはガラスを用いる例で説明する。
【0022】
剥離層2は、例えば、UV光などの光を吸収して発熱、もしくは、変質によって剥離可能となる樹脂でもよく、熱によって発泡により剥離可能となる樹脂でもよい。
さらに剥離層2は光分解促進剤や光吸収剤、増感剤、フィラー等の添加剤を含有してもよい。
【0023】
さらに、剥離層2は複数層で構成されていてもよく、例えば支持体1上に形成される多層配線層の保護を目的として、剥離層2上にさらに保護層を設けることや、支持体1との密着性を向上させる層を剥離層2の下層に設けてもよい。さらに、剥離層2と多層配線層との間にレーザー光反射層や金属層を設けてもよく、その構成は本実施形態により限定されない。
なお、剥離層2としてUV光などの光、例えばレーザー光によって剥離可能となる樹脂を用いる場合、支持体1が透光性であれば、剥離層2に光を照射する方向は、剥離層2を設けた側とは反対側の面から支持体1に光を照射してもよい。
【0024】
(2)剥離層2上面への感光性樹脂層3の形成
支持体1の上面に剥離層2を形成した後、剥離層2の上面に感光性樹脂層3を形成する。本実施形態では、感光性樹脂層3として例えば、感光性のエポキシ系樹脂を用い、これをスピンコート法により形成する。感光性のエポキシ樹脂は比較的低温で硬化することができ、形成後の硬化による収縮が少ないため、その後の微細パターン形成に優れている。
【0025】
(3)感光性樹脂層3のパターン化
次いで、フォトリソグラフィーにより、感光性樹脂層3に開口部を設ける。開口部に対して、現像時の残渣除去を目的として、プラズマ処理を行ってもよい。感光性樹脂層3の厚みは、開口部に形成する導体層の厚みに応じて設定され、本発明の一実施形態では例えば7μmを形成する。
また平面視の開口部形状は、半導体素子の接合電極のピッチ、形状に応じて設定され、本発明の一実施形態では例えばφ25μmの開口形状とし、ピッチは55μmで形成する。
【0026】
(4)シード密着層4、シード層5の形成
次いで、真空中で、シード密着層4、及び、シード層5を形成する。シード密着層4は感光性樹脂層3へのシード層5の密着性を向上させる層であり、シード層5の剥離を防止する層である。シード層5は配線形成において、電解めっきの給電層として作用する。シード密着層4、及び、シード層5は、例えば、スパッタ法、または蒸着法などにより形成され、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO、IZO、AZO、ZnO、PZT、TiN、Cu、Cu合金や、これらを複数組み合わせたものを適用することができる。
本発明では、電気特性、製造の容易性の観点およびコスト面を考慮して、シード密着層4にチタン層、続いてシード層5に銅層を採用し、順次スパッタリング法で形成する。チタンと銅層の合計の膜厚は、電解めっきの給電層として1μm以下とするのが好ましい。本発明の一実施形態ではTi:50nm、Cu:300nmを形成する。
【0027】
次に、図2に示すように、シード層5の上方に電解めっきにより導体層6を形成する。導体層6は半導体素子17と接合用の電極となる。電解ニッケルめっき、電解銅めっき、電解クロムめっき、電解Pdめっき、電解金めっき、電解ロジウムめっき、電解イリジウムめっき等が挙げられるが、電解銅が簡便で安価で、電気伝導性が良好であることから望ましい。
電解銅めっきの厚みは、この部分が半導体素子17と接合用の電極となり、はんだ接合の観点から1μm以上、且つ、生産性の観点から30μm以下であることが望ましい。本発明の一実施形態では感光性樹脂層3の開口部にはCu:9μmを形成し、感光性樹脂層3の上部にはCu:2μmを形成する。
【0028】
次に、図3の構成を得るために以下の工程を行う。
(6)導体層6の研磨
図2で得られた構成に対して、CMP(化学機械研磨)加工等によって導体層6の銅層を研磨し、導体層6、及び、シード層5を除去する。シード密着層4と導体層6が表面となるように研磨加工を行う。本発明の一実施形態では、感光性樹脂層3の上面に形成された導体層6のCu:2μm、及び、シード層5のCu:300nmを研磨により除去する。
【0029】
(7)シード密着層4、感光性樹脂層3の研磨
次に、CMP加工等の研磨を再度行い、シード密着層4と、感光性樹脂層3の一部を除去する。シード密着層4と、感光性樹脂層3の異種材料の研磨においては、化学的な研磨による効能は少なく、研磨剤による物理的な研磨が支配的である。工程を簡略化するためには、前述の導体層6及びシード層5の研磨と同様の手法を用いてもよいし、研磨の効率化を目的としてシード密着層4及び感光性樹脂層3の材料種に応じて研磨手法を変えてもよい。
そして、研磨を行った後に残った導体層6が、半導体素子17と接合用の電極となる。
【0030】
(8)第1層の形成
次に、図3に示すように、研磨された表面に、第1層18を設ける。第1層18は、第1導体部及び第1非導体部31を有し、第1層の第1非導体部31はパターン化された感光性樹脂で形成することができる。また、第1層の第1導体部は、後の工程で、第1層18の第1開口部(ビア部20に相当)に導体を形成して設けることができる。この第1導体部はビア部として機能するため、第1層をビア層と称することがある。
第1層18の厚みは、第1開口部に形成する第1導体部であるビアの厚みに応じて設定され、本発明の一実施形態では例えば2μmを形成する。
また平面視の第1開口部の形状は、導体層6との接続の観点から設定され、本発明の一実施形態では例えばφ10μmの開口形状を形成する。この第1開口部は多層配線の上下層をつなぐビア部の一部分の形状である。
【0031】
(9)第2層の形成
次に、図4に示すように、第1層18の上面に、第2層19を設ける。第2層19は、第2導体部及び第2非導体部32を有し、第2非導体部32はパターン化された感光性樹脂で形成することができる。この第2非導体部32のパターンは、少なくとも多層配線の回路配線部22を規定するとともに、第1層18の第1開口部に形成されたビア部20の上方において、ビア部と接続されるランド部21を規定するものである。そして、第2層19はトレンチ層と称することがある。
第2層19の厚みは、第2非導体部32の開口部に形成する導体層の厚みに応じて設定され、本発明の一実施形態では例えば2μmとする。
また平面視のランド部のための開口形状は、積層体の接続性の観点から設定され、第1層18の第1開口部の外側を囲って形成される。本発明の一実施形態では例えばφ25μmの開口形状を形成する。
なお、第1非導体部31及び第2非導体部32は、上述のように、第1層の形成工程と第2層の形成工程の2工程で形成してもよいし、1工程で同時に形成してもよい。
1工程で同時に形成する場合には、例えば、第1非導体部と第2非導体部を合算した厚さの非導体層(感光性樹脂等)を形成したのち、第1非導体部31及び第2非導体部32の形状に合わせて、それぞれの領域への露光量を調整し、現像することによって、図4に示すような段差構造を同時に形成することができる。
【0032】
(10)シード密着層4及びシード層5の形成
次いで、図5図6に示すように、真空中で、シード密着層4、及び、シード層5を形成する。本発明の一実施形態ではTi:50nm、Cu:300nmを形成する。
これによって、ビア部20及び回路配線部22の底面(本実施形態においては、半導体素子が実装される側の面)及び側面にシード密着層が形成されることになる。
【0033】
(11)導体層6の形成
次に、図7に示すように、電解めっきにより導体層6を形成する。導体層6はビア部20、ランド部21が一体となったビア/ランド部23、及び、回路配線部22となる。電解ニッケルめっき、電解銅めっき、電解クロムめっき、電解Pdめっき、電解金めっき、電解ロジウムめっき、電解イリジウムめっき等が挙げられるが、電解銅めっきが簡便で安価で、電気伝導性が良好であることから望ましい。
電解銅めっきの厚みは、回路配線部22の電気抵抗の観点から0.5μm以上、生産性の観点から30μm以下であることが望ましい。
本実施形態では、第1非導体部31および第2非導体部32による2重の開口部にはCu:6μmを形成し、第2非導体部32の1重の開口部にはCu:4μmを形成し、第2非導体部32の上部にはCu:2μmを形成する。
【0034】
(12)表面研磨
次に、図8に示すように、CMP(化学機械研磨)加工等によって研磨し、導体層6、及び、シード層5を除去する。
【0035】
(13)シード密着層4、第2非導体部32の除去
続けて、CMP(化学機械研磨)加工等によって研磨を再度行い、シード密着層4と、第2非導体部32を除去する。そして、CMPを行った後に残った導体層6が、ビア/ランド部23、及び、回路配線部22の導体部となる。本発明の一実施形態では、第2非導体部32の上部の導体層6のCu:2μm、及び、シード層5のCu:300nmを研磨により除去する。
【0036】
(14)第2層における凹凸の形成
次に、第9図に示すように、第2導体部(ビア/ランド部23)が配置された領域と第2導体部が配置されていない領域で厚さが異なる、上面が凹凸形状を有する第2層を形成する。
第2層にこのような凹凸形状を形成する一つの手法としては、ビア/ランド部23、および、回路配線部22の導体層6とシード層5をエッチングする方法がある。エッチング量は、0.1~1.5μmの範囲内で行われることが望ましい。この時、シード層5と導体層6をエッチングし、シード密着層4をエッチングしない薬液を使用する。本発明の一実施形態では、硫酸過水系のエッチング液で0.5μmのエッチングを行った。
第2層に凹凸形状を形成するための手法としては、上記のほかに、第2非導体部をエッチングして厚みを削ってもよいし、第2導体部または第2非導体部を嵩上げすることによって第2層表面に凹凸部を形成してもよい。
【0037】
(15)化学密着層の形成
次に図10に示すように、化学的密着層24を形成する。化学的密着層24は、第2層19と第2層19の直上に形成する第1層29(図11)の密着性を向上させる層であり、第2層19の直上に形成する第1層(トレンチ層19の直上に形成するビア層)28の剥離を防止する層である。
化学的密着層24は、例えば導体層6(Cu)と感光性樹脂層3、感光性樹脂層3と感光性樹脂層3、シード密着層4と感光性樹脂層3の密着性を化学的に向上させる膜であり、シランカップリング剤、トリアジンを含む化合物等がある。
なお、化学密着層24は第1層29と第2層19の間の全面に形成してもよいし、部分的に形成してもよい。
これによって、第1層及び第2層からなる1層の配線層が形成される。
【0038】
(16)工程の繰り返しによる多層配線の形成
図11に示すように、図3図10の工程を繰り返すことにより多層配線基板が形成される。本実施形態では、配線層を2層形成する例を示している。
なお、ビア/ランド部23直下の化学的密着層24は、除去しても構わない。本発明の一実施形態では、配線層を2層形成し、ビア/ランド部23直下の化学的密着層24はプラズマで除去した。
【0039】
以下、FC-BGA基板14との接合用電極を形成する工程である図12の構成を得るまでの工程を順次説明する。
(17)感光性樹脂層の形成
図11で形成した化学的密着層24の上面に感光性樹脂層3を形成する。
【0040】
(16)シード密着層4及びシード層5の形成
次いで、真空中で、シード密着層4、及び、シード層5を形成する。なお、シード密着層4の形成前に、ビア部20直下の化学的密着層24はプラズマで除去した。
【0041】
(17)導体層(はんだ接続用)6の形成
次いで、レジストパターン7を形成する。その後、電解めっきにより導体層6を形成する。導体層6はFC-BGA基板14と接合用の電極となる。
電解銅めっきの厚みは、はんだ接合の観点から1μm以上、且つ、生産性の観点から30μm以下であることが望ましい。本実施形態では感光性樹脂層3の開口部にはCu:9μmを形成し、感光性樹脂層3の上部にはCu:7μmを形成する。
こうして図12に示した構成を得ることができる。
【0042】
次に、図14に示す支持体上の配線基板が完成するまでの工程を順次説明する。
(18)レジストパターンの除去
図12の構成を得た後、レジストパターン7を除去する。その後、導体層6をエッチングマスクとして不要なシード密着層4、及び、シード層5をエッチング除去する。この状態で表面に残った導体層6が、FC-BGA基板14との接合用の電極となる
(19)ソルダーレジスト8の形成
次に、図13に示されるように、はんだ接続用導体層の間にソルダーレジスト8を形成する。ソルダーレジスト8は、感光性樹脂層3を覆うように、露光、現像し、導体層6が露出するように開口部を備えるように形成する。
なお、ソルダーレジスト8の材料としては、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。本発明の実施形態では、ソルダーレジスト層8としてフィラーを含有した感光性エポキシ樹脂を使用している。
【0043】
(20)表面処理層9の形成
次に、導体層6の表面の酸化防止とはんだバンプの濡れ性をよくするため、表面処理層9を設ける。
本発明の実施形態では、表面処理層9として無電解Ni/Pd/Auめっきを成膜する。 なお、表面処理層9には、OSP(Organic Soiderability Preservative 水溶性プレフラックスによる表面処理)膜を形成してもよい。
また、無電解スズめっき、無電解Ni/Auめっきなどから適宜用途に応じて選択しても良い。
【0044】
(21)はんだ接合部の形成
次いで、表面処理層9上に、半田材料を搭載した後、一度溶融冷却して固着させることで、はんだ10の接合部を得る。これにより、図14に示すように支持体上の多層配線基板11が完成する。
【0045】
このように完成した支持体上の多層配線基板11は、FC-BGA基板14と接合した後、接合部をアンダーフィル層で封止する。
アンダーフィル層としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、及びマレイミド樹脂の1種又はこれらの樹脂の2種類以上が混合された樹脂に、フィラーとしてのシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は酸化亜鉛等が加えられた材料が用いられる。アンダーフィル層は、液状の樹脂を充填させることで形成される。
【0046】
次いで、剥離層2にレーザー光を照射して支持体1を取り外すことが可能となる。次に、剥離層2とシード密着層4、及び、シード層5を除去する。
【0047】
その後、半導体素子17を実装して、図1に示す半導体装置16が完成する。この際、半導体素子17の実装に先立って、表面に露出した導体層6上に、酸化防止と半田バンプの濡れ性をよくするため、無電解Ni/Pd/Auめっき、OSP、無電解スズめっき、無電解Ni/Auめっきなどの表面処理を施してもよい。以上により半導体装置16が完成する。
【0048】
<効果の検証>
次に、上述したような多層配線基板30の構成とその製造方法を用いた場合の作用効果について、本実施形態の例である図15、及び、比較例である図16を参照にして説明する。
【0049】
本実施形態については、図15を用いて説明する。本実施形態では、支持体上の多層配線基板11の回路配線部22、ビア/ランド部23、および、半導体素子との接合電極パッド部は、CMP(化学機械研磨)加工等の研磨によって、導体層6をパターニング(いわゆるダマシン法)しているため、図15に示すように、回路配線部22、ビア/ランド部23、及び、半導体素子との接合電極パッド部の側面において、導体層6と感光性樹脂層3の間にもシード密着層4を配置することが可能である。
また、支持体上の多層配線基板11は、上下反転させてFC-BGA基板14と接合した後、支持体1を除去して多層配線基板30を得る。そのため、回路配線部22およびビア/ランド部23においては、上面および側面にシード密着層4を配置することができ、半導体素子との接合電極パッド部においては、側面にシード密着層4を配置することが可能である。
【0050】
上記のように、回路配線部22およびビア/ランド部23の導体層6においては、上面および側面にシード密着層4を配置でき、半導体素子との接合電極パッド部の導体層6においては、側面にシード密着層4を配置しているため、感光性樹脂層3との密着性を向上でき、剥離を防止することが可能となる。
【0051】
また、本基板構成においては、ビア/ランド部23、および、回路配線部22の導体層6とシード層5をエッチングし、トレンチ層の導体であるランド部21と回路配線部22が非導体部よりも厚みを小さくすることで、第2層(トレンチ層)19と第1層(ビア層)29の界面が凹凸面になり、側面にも樹脂/樹脂界面が生じることで、加熱時の基板の配線層内部応力を緩和することができる。
【0052】
さらに、第2層(トレンチ層)19の導体上面全体または、一部およびトレンチ層の非導体部および露出したシード密着層4とトレンチ層直下のビア層29との間に化学的密着層24を形成することで、第2層(トレンチ層)19と第1層(ビア層)29の密着性を向上させ、実装時の熱反りや内部応力によるトレンチ層の樹脂/ビア層の樹脂界面での層間剥離を改善することができる。
【0053】
上記の構成において、次の3種類の実施例について検証を行った。
<実施例1>は、(14)第2層における凹凸の形成を行い、(15)化学密着層の形成を行わなかったものである。
また、<実施例2>は、(14)第2層における凹凸の形成を1.0umエッチングで行い、(15)化学密着層の形成を行わなかったものである。
そして<実施例3>は、(14)第2層における凹凸の形成を行い、(15)化学密着層の形成を行わなかったものである。
【0054】
上記の実施例1乃至3において、ビア部20の開口径を10μm、ランド部21の開口径を20μmとし、ビア接続信頼性試験を行った。
【0055】
ビア接続信頼性は、以下の条件に則って実施し、抵抗値変化率±3% 以内,クラックおよび層間剥離がないことを合格の基準とした。
規格: JESD22-A106B(Condition D)
温度:-65℃/5min⇒常温/1min→150℃/5min
サイクル:500サイクル
【0056】
<比較例>
比較例については、図16を用いて説明する。比較例では、ビア/ランド部23、および、回路配線部22の導体層6とシード層5をエッチングは行わず、第2層(トレンチ層)19の導体上面および第2層の非導体部と第2層の直下の第1層(ビア層)29との間に化学的密着層24を形成しなかった。
【0057】
<作用効果の確認>
上記の本発明の実施形態である実施例1~3及び比較例のビア接続信頼性試験の結果を表1に示す。本発明の実施形態に係る第2層(トレンチ層)19と第1層(ビア層)29の界面が凹凸面形状にし、エッチング量を増やすことで、トレンチ層の樹脂/ビア層の樹脂界面への応力の低減および密着性が向上し、十分にビア接続信頼性の確保ができた。
【0058】
また、エッチング量を増やさなくても、第2層(トレンチ層)19の導体上面全体または、一部およびトレンチ層の非導体部および露出したシード密着層4とこれに隣接するビア層との間に化学的密着層24を形成することにより、トレンチ層の樹脂/ビア層の樹脂界面への応力の低減および密着性が向上し、ビア接続信頼性の確保ができることが示された。
【0059】
【表1】
【0060】
上述の実施形態は一例であって、その他、具体的な細部構造などについては適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1 支持体
2 剥離層
3 感光性樹脂層
4 シード密着層
5 シード層
6 導体層
7 レジストパターン
8 ソルダーレジスト層
9 表面処理層
10 はんだ
11 支持体上の多層配線基板
14 FC-BGA基板
16 半導体装置
17 半導体素子
18 第1層
19 第2層
20 ビア部
21 ランド部
22 回路配線部
23 ビア/ランド部
24 化学的密着層
29 第2層19の直上に形成する第1層
30 多層配線基板
31 第1非導体部
32 第2非導体部
33 第1導体部
34 第2導体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16