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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034335
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220224BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H05K1/02 Q
H05K3/46 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138082
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 大介
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA29
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB03
5E316BB16
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC32
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD32
5E316DD33
5E316EE33
5E316FF03
5E316FF15
5E316GG15
5E316HH17
5E316JJ13
5E316JJ26
5E338AA03
5E338BB05
5E338CC08
5E338CD32
5E338EE02
(57)【要約】
【課題】放熱を効率良く行うことが可能な配線基板の提供。
【解決手段】実施形態の配線基板10は、電子部品ECが搭載される部品搭載領域Aを有する第1面10F及び第1面10Fと反対側の第2面10Sと、第1面10F及び第2面10Sの間で交互に積層される複数の絶縁層11及び導体層12と、第1面10F及び第2面10Sの間に配置されるペルチェ素子100と、を有している。ペルチェ素子100は、第1面10F側に面する吸熱面101、及び、第2面10S側に面する発熱面102を有し、発熱面102と第2面10Sとの距離D2は、吸熱面101と第1面10Fとの距離D1よりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載される部品搭載領域を有する第1面及び前記第1面と反対側の第2面と、前記第1面及び前記第2面の間で交互に積層される複数の絶縁層及び導体層と、前記第1面及び前記第2面の間に配置されるペルチェ素子と、を有する配線基板であって、
前記ペルチェ素子は、前記第1面側に面する吸熱面、及び、前記第2面側に面する発熱面を有し、
前記発熱面と前記第2面との距離は、前記吸熱面と前記第1面との距離よりも小さい。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記ペルチェ素子を内蔵するコア基板をさらに有し、
前記コア基板の、前記ペルチェ素子の前記吸熱面側には、交互に積層される絶縁層及び導体層によって第1ビルドアップ部が形成されており、
前記コア基板の、前記ペルチェ素子の前記発熱面側には、交互に積層される絶縁層及び導体層によって第2ビルドアップ部が形成されており、
前記第2ビルドアップ部が有する導体層の数は、前記第1ビルドアップ部が有する導体層の数よりも小さい。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、コア基板をさらに有し、
前記コア基板の一方の面上には、交互に積層される絶縁層及び導体層によって、前記第1面を有する第1ビルドアップ部が形成されており、
前記コア基板の前記一方の面と反対側の他方の面上には、交互に積層される絶縁層及び導体層によって、前記第2面を有する第2ビルドアップ部が形成されており、
前記ペルチェ素子は、前記第2ビルドアップ部に内蔵されている。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板であって、前記第1ビルドアップ部が有する導体層の数と、前記第2ビルドアップ部が有する導体層の数とは等しい。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記ペルチェ素子は前記部品搭載領域を前記第2面側に垂直投影した領域に配置されている。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1面は前記部品搭載領域に部品実装パッドを備え、前記部品実装パッドは前記ペルチェ素子の前記吸熱面と導体を介して接続されている。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記配線基板は前記第1面が部分的に窪む凹部を有し、前記凹部の底面は前記部品搭載領域を有している。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2面を構成する導体層は、前記ペルチェ素子の前記発熱面と導体を介して接続される放熱用パターンを有している。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、前記ペルチェ素子の前記発熱面が前記第2面の一部を構成している。
【請求項10】
請求項1記載の配線基板であって、前記発熱面から前記第2面までの距離の、前記吸熱面から前記第1面までの距離に対する比率は0.5以下である。
【請求項11】
請求項1記載の配線基板であって、前記発熱面と前記第2面との距離は400μm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放熱基板が開示されている。放熱基板の厚さ方向における中央部分には、コア基板を貫通するキャビティ内に収容されたペルチェ素子モジュールが配置されている。コア基板の両面側には、絶縁層及び導体層が積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-201066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の放熱基板では、ペルチェ素子モジュールは、基板の厚さ方向における中央に配置されている。ペルチェ素子モジュールの発熱面側では熱が滞留しやすいと考えられる。発熱面側での熱の滞留は吸熱面側での吸熱量の低下を引き起こし、吸熱面側での望ましい冷却効果が得られにくいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、電子部品が搭載される部品搭載領域を有する第1面及び前記第1面と反対側の第2面と、前記第1面及び前記第2面の間で交互に積層される複数の絶縁層及び導体層と、前記第1面及び前記第2面の間に配置されるペルチェ素子と、を有している。前記ペルチェ素子は、前記第1面側に面する吸熱面、及び、前記第2面側に面する発熱面を有し、前記発熱面と前記第2面との距離は、前記吸熱面と前記第1面との距離よりも小さい。
【0006】
本発明の実施形態によれば、部品搭載領域に搭載される電子部品などから発生する熱を、効率よく外部へ放熱することが可能な配線基板が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
図3】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
図4】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
図5】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
図6A】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6B】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6C】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6D】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6E】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6F】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6G】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6H】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6I】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6J】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6K】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6L】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図6M】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
つぎに、本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。図1は、実施形態の一例である配線基板10の断面図である。図1に示されるように、本実施形態の配線基板10は、第1面10F及び第1面10Fと反対側の第2面10Sを有している。配線基板10は、複数の交互に積層される絶縁層11及び導体層12を含む。複数の絶縁層11のうち絶縁層11pはその内部にペルチェ素子100を有している。このペルチェ素子100を内蔵する絶縁層11pは素子内蔵層11pとも称される。ペルチェ素子100は、その吸熱面101を第1面10F側に、発熱面102を第2面10S側に向けて、素子内蔵層11pに設けられる収容口11pc内に配置されている。このペルチェ素子100は配線基板10内の、第2面10S寄りの位置に配置されている。
【0009】
複数の導体層12のそれぞれは、所望の導体パターンを有するように適宜パターニングされている。そして、導体層12が接する絶縁層11は、絶縁層11に接する導体層12を接続する接続用の導体を含んでいる。具体的には、素子内蔵層11pは、その両側に接する導体層12p同士を接続するスルーホール導体14pを含み、その他の絶縁層11はビア導体14vを含んでいる。
【0010】
図示の例において、素子内蔵層11p、及び、素子内蔵層11pの両側に接する導体層12pは、配線基板10のコア基板3を構成する。コア基板3の両面側にはビルドアップ層が形成されている。具体的には、コア基板3の一方の面(ペルチェ素子100の吸熱面101)側には、第1面10Fを有する第1ビルドアップ部1が積層され、他方の面(ペルチェ素子100の発熱面102)には、第2面10Sを有する第2ビルドアップ部2が積層されている。第2ビルドアップ部2が有する絶縁層11及び導体層12の層数は、第1ビルドアップ部1が有する絶縁層11及び導体層12の層数よりも小さい。
【0011】
なお、本実施形態の配線基板10の説明では、配線基板10の厚さ方向において、素子内蔵層11pを基準にして第1面10F又は第2面10Sに近い側は「上側」もしくは「外側」、又は単に「上」もしくは「外」とも称され、素子内蔵層11pに近い側は「下側」もしくは「内側」、又は単に「下」もしくは「内」とも称される。
【0012】
図示の例においては、配線基板10は、その第1面10F側及び第2面10S側の最外層の導体層12及び絶縁層11上に被覆層13を備えている。被覆層13には、最外の導体層12が有する導体パッド12cを露出させる開口13aが形成されている。被覆層13はソルダーレジスト層であり得る。
【0013】
配線基板10の第1面10Fは外部の電子部品などが搭載され得る部品搭載領域Aを有しており、部品搭載面として機能し得る。部品搭載領域Aには、例えば、メモリ、マイコン、CPU、等の半導体集積回路装置、又はLED、PD(フォトダイオード)等の光半導体デバイスである電子部品ECが搭載され得る。図示の例では、第1面10Fの部品搭載領域Aに対応する部分は配線基板10の内側に窪む凹部10FRを構成している。図示の例では、凹部10FRの底面は、導体層12が有する導体パターンとして部品実装領域Aの全域に亘って形成される部品実装パッド120により構成されている。凹部10FRの側壁(底面以外の部分)は、絶縁層11及び被覆層13の露出面から構成されている。そして、第1面10Fの凹部10FR以外の部分は、被覆層13及び被覆層13に設けられている開口13aから露出する導体層12(導体パッド12c)によって構成されている。
【0014】
配線基板10の、導体層12及び被覆層13で構成されている第2面10Sは、配線基板10の熱を外部へ放出させる放熱面として機能する。第1面10Fの部品搭載領域Aに搭載され得る電子部品ECから発生する熱は、ペルチェ素子100を介して第2面10Sに伝えられ、配線基板10の外部へと放熱される。図示の例では、第2面10Sは、導体層12の導体パターンの一部として形成される放熱用パターン12ceを有している。第2面10Sには、配線基板10内部の熱を効率よく外部へと放出させるために、例えば高熱伝導性の接着部材などを介してヒートシンク(図示せず)が接続されてもよい。
【0015】
配線基板10に配置されているペルチェ素子100は、一方に第1の面101を有し、第1の面101と反対側に第2の面102を有している。本実施形態においては第1の面101は冷却面(吸熱面)として機能し、第2の面102は加熱面(発熱面)として機能する。ペルチェ素子100は、第1面10Fの部品搭載領域A側に第1の面101を向け、第2面10S側に第2の面102を向けて配置される。ペルチェ素子100は、部品搭載領域Aに配置される電子部品ECから発せられる熱を第1の面101から吸熱し第2の面102から放熱する、ヒートポンプとして機能する。
【0016】
配線基板10の部品搭載領域Aに配置される電子部品ECが発する熱は、配線基板10内に留まると電子部品ECの誤動作等の原因になり得る。また、配線基板10の各構成要素の熱膨張による層間剥離の原因ともなり得る。従って、電子部品ECが発する熱は配線基板10の外部へ放熱される必要がある。ペルチェ素子100は、この電子部品ECが発する熱を、第2面10Sから配線基板10の外側へと効率よく放熱するために設けられている。
【0017】
本実施形態における配線基板10において、ペルチェ素子100は配線基板10の厚さ方向における第2面10S寄りの位置に配置される。具体的には、ペルチェ素子100の発熱面102と第2面10Sとの距離D2が、ペルチェ素子100の吸熱面101と第1面10Fとの距離D1よりも小さくなる位置にペルチェ素子100が配置される。このような構成とすることで、第1面10Fに搭載される電子部品ECなどの熱源から発生する熱を、効率的に第2面10Sから放熱することが可能となる。
【0018】
前述したように、基板の厚さ方向における中央部分にペルチェ素子モジュールが配置される構成では、ペルチェ素子の発熱面から発せられる熱が基板内に滞留しやすく、吸熱面側で効果的な冷却が実現され難いと考えられる。電子部品などの熱源から発生する熱を効果的に基板の外へ放熱し難く、従って、基板に接続される電子部品の過熱に起因する動作不良を引き起こす虞もあると考えられる。これに対し、本実施形態のように、発熱面102から第2面10Sまでの距離D2が吸熱面101から第1面10Fまでの距離D1よりも小であると、配線基板10外への効果的な放熱が実現され得る。吸熱面101において効果的な冷却が実現され、配線基板10に搭載される電子部品の誤動作などの不良が抑制され得る。発熱面102から発せられる熱を効果的に放熱させる観点から、発熱面102から第2面10Sまでの距離D2の、吸熱面101から第1面10Fまでの距離D1に対する比率は0.5以下であることが好ましく、発熱面102から第2面10Sまでの距離D2は、400μm以下であることが好ましい。
【0019】
熱源である電子部品ECが発する熱を、効率的に吸熱面101に伝熱させてペルチェ素子100を介して第2面10Sから放熱させるためには、図示のように、ペルチェ素子100は第1面10Fの部品搭載領域Aを第2面10S側に垂直投影した領域に配置されていることが好ましい。また、ペルチェ素子100の吸熱面101は、配線基板10を構成する導体(ビア導体14v、導体層12)を介して部品実装パッド120と接続されていることが好ましい。そして、ペルチェ素子100の発熱面102は、配線基板10を構成する導体を介して、第2面10Sを構成する導体層12の、導体パターンの一部として形成される放熱用パターン12ceに接続されていることが好ましい。熱源から吸熱面101への熱伝導、及び、発熱面102から放熱面(第2面10S)までの熱伝導が効率よく行われ得る。
【0020】
導体層12、12p、ビア導体14v、及びスルーホール導体14pは、銅やニッケルなど、適切な導電性を有する任意の材料を用いて形成され得る。導体層12、12p、ビア導体14v、及びスルーホール導体14pは、例えば金属箔(好ましくは銅箔)、金属膜層(好ましくは無電解銅めっき膜層)、電解めっき膜層(好ましくは電解銅めっき膜層)によって、又はこれらの組み合わせによって構成される。図1に示される例では、ペルチェ素子100を内蔵する絶縁層11pに接する導体層12pは、金属箔、金属膜層、及び電解めっき膜層を含む3層構造を有している。そして、配線基板10を構成するその他の導体層12、ビア導体14v、及びスルーホール導体14pは、金属膜層及び電解めっき膜層を含む2層構造を有している。しかし、配線基板10を構成する各導体層12の構成は、図1に例示される多層構造に限定されない。例えば、導体層12p以外の導体層12も、金属箔層、金属膜層、及び電解めっき膜層の3層構造で構成されてよい。
【0021】
絶縁層11、11pは、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成され得る。各絶縁層11、11pは、ガラス繊維などの補強材及び/又はシリカなどの無機フィラーを含み得る。図1に示される例では、絶縁層11pはガラス繊維を含む補強材を含んでいる。一方、絶縁層11p以外の絶縁層11は補強材を含んでいないものが図示されている。被覆層13は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成される。
【0022】
配線基板10の第1面10F側に形成されている凹部10FRは、その底面の全域に亘って、電子部品ECが載置されるべき部品実装パッド120を露出している。この部品実装パッド120は、配線基板10を構成する導体層12のうち一つの層の一部が凹部10FRの底面に露出したものである。部品実装パッド120には、エポキシ樹脂などで形成される絶縁性の接着剤、又は、導電性粒子を含む導電性接着剤などの実装用部材を介して電子部品ECが実装され得る。電子部品ECの上側には、例えば電子部品ECを制御するコントローラーなどの電子部品(図示せず)が接続されてよい。
【0023】
絶縁層11pは、内部にペルチェ素子100を収容するための貫通孔(収容口)11pcを有している。収容口11pcはペルチェ素子100の寸法よりも僅かに大きく形成される。収容口11pcの内面とペルチェ素子100との間の隙間は、配線基板10を構成する絶縁層11のうち、絶縁層11pに最も近い絶縁層11を構成する樹脂で埋められている。
【0024】
ペルチェ素子100は、一定の間隔をあけて交互に配置されている複数の直方体形状のP型熱電半導体素子100pとN型熱電半導体素子100nとを有している。ペルチェ素子100は、この複数の交互に配置されているP型及びN型熱電半導体素子100p、100nのうち、隣接するP型及びN型熱電半導体素子100p、100nの端部を、電極板100eで互い違いに接続することで構成されている。複数の交互に配置されているP型及びN型熱電半導体素子100p、100nのうち、末端のP型又はN型熱電半導体素子100p、100nにおける電極板100eと反対側の端部には電極100A、100Bが設けられている。電極板100e及び電極100A、100Bは、例えばCuなどの適切な導電性を有する金属で構成されている。ペルチェ素子100は、この電極板100e及び電極100A、100Bが設けられた複数のP型及びN型熱電半導体素子100p、100nを、2枚の絶縁板(第1絶縁板100c、第2絶縁板100h)で挟むことで形成されている。
【0025】
P型熱電半導体素子100pとN型熱電半導体素子100nとは略同形で同サイズに形成されている。P型熱電半導体素子100pとしては、例えば、ビスマス-テルル化合物にアンチモンを添加したものが用いられ、N型熱電半導体素子100nとしては、ビスマス-テルル化合物にセレンを添加したものが用いられ得る。ペルチェ素子100の各熱電半導体素子100p、100nの間の空間には、絶縁性樹脂などの封止剤が充填されている。封止剤には、例えば、エポキシ系樹脂などの絶縁性の樹脂が使用され得る。
【0026】
ペルチェ素子100の両面を構成する第1及び第2絶縁板100c、100hは、例えば、セラミック板などの高い熱伝導性及び電気絶縁性を有する材料を用いて構成される。第1及び第2絶縁板100c、100hには例えば、アルミナ(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)などが使用され得る。第1絶縁板100cの、P型及びN型熱電半導体素子100p、100nと反対側の表面は、第1の面(吸熱面)101を構成する。第2絶縁板100hの、P型及びN型熱電半導体素子100p、100nと反対側の表面は、第2の面(発熱面)102を構成する。
【0027】
図示される例のペルチェ素子100においては、電極100A及び電極100Bが第1の面101側に設けられ、第1絶縁板100cの電極100A、100Bと重なる部分には、電極100A、100Bの一部が露出する開口が形成されている。しかし、ペルチェ素子100における電極100A、100Bが設けられる位置はこれに限定されない。電極100A、100Bの両方が第2の面102側に設けられてもよく、電極100A、100Bのうち一方が第1の面101側に設けられ、他方が第2の面102側に設けられる構成とされてもよい。ペルチェ素子100の電極100A、100Bは、外部からの電力供給を受けるために、ビア導体14v及び導体層12を介して、配線基板10の表面に形成される導体パッド12cに電気的に接続される。
【0028】
ペルチェ素子100に電力が供給されると、ペルチェ素子100の第1絶縁板100c側では温度が低くなり、反対側の第2絶縁板100h側で温度が高くなる温度勾配が形成される。すなわち、第1絶縁板100c側で吸熱現象、第2絶縁板100h側で発熱現象が発生する。これにより、配線基板10内における、ペルチェ素子100の第1の面101側の熱は、ペルチェ素子100を介して第2の面102側に運搬される。
【0029】
図1の配線基板10は、部品実装パッド120と電子部品ECとは電気的に絶縁されている例として示されている。電子部品ECへの電力は、例えば電子部品ECの上部に設けられる接続パッドを介して電子部品ECの上に接続され得る他の電子部品等から供給され得る。しかし、電子部品ECへの電力供給は、部品搭載領域Aに設けられる部品実装パッド120を介して行われてもよい。図2に示される配線基板10aでは、電子部品ECがフリップチップ実装で部品実装パッド120に電気的に接続されている例が示されている。
【0030】
配線基板10aにおいて、電子部品ECは、例えば、その直下に設けられる被覆層(ソルダーレジスト層)13rの開口から露出する部品実装パッド120に、半田などのバンプを介して接続され得る。図示の例では、ペルチェ素子100の電極100A、100Bに接続されている、ペルチェ素子100への電力供給のための導電経路は、電子部品ECへの導電経路と部分的に重なっている。この実施形態における配線基板10aでも、配線基板10と同様に、部品実装パッド120とペルチェ素子100が導体を介して接続されている。これにより、電子部品ECとペルチェ素子100に共通の導電経路で電力供給をしながらも、電子部品ECで発生した熱を効率よくペルチェ素子100に伝熱し得る。
【0031】
本実施形態の配線基板は、図3に示される配線基板10bのように、第2面10Sにペルチェ素子100の発熱面102が露出する構成を有してもよい。ペルチェ素子100の発熱面102が露出することで、発熱面102から発せられる熱は直接、配線基板10bの外部へ放出されることとなり、放熱効率が向上し得る。この露出する発熱面102には、高熱伝導率を有する接着剤などを介して外部のヒートシンク(図示せず)と結合させることも可能である。
【0032】
また、本実施形態の配線基板は、図4に示される配線基板10cのように、第1面10Fが部品実装領域Aにおいて窪む凹部を有さずともよい。図示される例では、部品実装パッド120は第1面10Fに露出する導体パッド12cと同一の面に形成され、電子部品ECは部品実装パッド120を介して第1面10F上に搭載される。配線基板10cにおいても、ペルチェ素子100の発熱面102から配線基板の表面までの距離D2は、吸熱面101から第1面10Fまでの距離D1よりも小とされており、配線基板10c外への効果的な放熱が実現され得る。
【0033】
図1図4に示された配線基板10、10a、10b、10cでは、コア基板3内にペルチェ素子100が配置され、第2ビルドアップ部2が有する絶縁層11及び導体層12の層数が、第1ビルドアップ部1が有する絶縁層11及び導体層12の層数よりも小さい例が示された。しかしながら、本実施形態の配線基板は、ペルチェ素子100がコア基板3内に配置される構成に限定されない。コア基板3の表面に積層されるビルドアップ層内にペルチェ素子100が配置される構成をも有し得る。図5には、ペルチェ素子100が第2ビルドアップ部2内に配置されている例が、配線基板10dとして示されている。
【0034】
図5に示される配線基板10dは、コア基板3の両面側に積層される第1ビルドアップ部1と第2ビルドアップ部2は対称の層構造を有している。すなわち、第1ビルドアップ部1と第2ビルドアップ部2とは、同じ層数の絶縁層11及び導体層12を有している。ペルチェ素子100は第2ビルドアップ部2を構成する絶縁層11が有する開口内に収容される。配線基板10dにおいても、ペルチェ素子100の発熱面102と第2面10Sとの距離D2が、ペルチェ素子100の吸熱面101と第1面10Fとの距離D1よりも小である構成が実現され、配線基板10dから、第2面10S側への効率的な放熱が実現され得る。
【0035】
以下、図1に示される配線基板10の製造方法が説明される。先ず、図6Aに示されるように、例えば、エポキシ樹脂又はBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂とガラスクロスなどの補強材からなる絶縁層11pの両面に、銅箔12fがラミネートされている両面銅張積層板が用意される。次に、図6Bに示されるように、両面銅張積層板の両面側から例えば炭酸ガスレーザー光が照射されて、絶縁層11pの厚さ方向における中心部付近へ向かって両面側からテーパー状に縮径する貫通孔14phが形成される。
【0036】
次いで、図6Cに示されるように、スルーホール導体14p及び導体層12pが形成される。貫通孔14ph内及び銅箔12f上に無電解めっき処理が行われ、銅箔12f上と貫通孔14phの内面に無電解めっき膜12nが形成される。そして、銅箔12f上の無電解めっき膜12n上に、所定パターンのめっきレジストが形成された後に電解めっき処理が行われ、電解めっき膜12eが貫通孔14ph内に充填されてスルーホール導体14pが形成される。同時に銅箔12f上の無電解めっき膜12nのめっきレジストから露出している部分に電解めっき膜12eが形成される。続いて、めっきレジストが剥離され、さらにめっきレジストの下方の無電解めっき膜12n及び銅箔12fがエッチングにより除去される。残された電解めっき膜12e、無電解めっき膜12n及び銅箔12fにより、絶縁層11pの両面に導体層12pが形成されると共に、導体層12pがスルーホール導体14pによって接続された状態になる。
【0037】
次いで、図6Dに示されるように、絶縁層11pにルーター加工又はレーザー光の照射によって、収容口11pcが形成される。
【0038】
次いで、図6Eに示されるように、収容口11pcの開口の一方を塞ぐように、例えばPETフィルムからなるテープTPが導体層12p上に張り付けられる。そして、ペルチェ素子100がマウンター(図示せず)によって収容口11pcの内部に収められ、ペルチェ素子100の第2絶縁板100hがテープTPに固定される。
【0039】
続いて、図6Fに示されるように、テープTPが貼り付けられている導体層12pと反対側の導体層12p上に樹脂フィルム11fが積層される。樹脂フィルム11fはプレスされることで、導体層12pの導体パターンの間、及び、ペルチェ素子100と収容口11pcの内壁との隙間に入り込む。樹脂フィルム11fは、例えば、芯材を含まず無機フィラーを含有する樹脂フィルムである。
【0040】
次に、図6Gに示されるように、テープTPが導体層12p及びペルチェ素子100から取り外されて除去される。
【0041】
次いで、図6Hに示されるように、導体層12p及びペルチェ素子100の第2の面102の上に、樹脂フィルム11fが積層されてプレスされる。その際、樹脂フィルム11fが、導体層12pの導体パターンの間、及び、収容口11pcの内面とペルチェ素子100との隙間に充填され、隙間は完全に樹脂によって充填される。以上により、両面に導体層12pを有する絶縁層(素子内蔵層)11p内へペルチェ素子100が配置され、コア基板3の形成が完了する。同時に、コア基板3の両面に接する絶縁層11の形成が完了する。
【0042】
続いて、図6Iに示されるように、ペルチェ素子100の第1の面101に接する絶縁層11にビア導体14vが形成されると共に、絶縁層11に接する導体層12が形成される。同時に、ペルチェ素子100の第2の面102に接する絶縁層11にもビア導体14vが形成されると共に、導体層12が形成される。絶縁層11にビア導体14v用の貫通孔がレーザー加工によって形成され、セミアディティブ法を用いて、無電解めっき膜及び電解めっき膜の2層で構成される所望の導体パターンを有する導体層12及びビア導体14vが形成される。ペルチェ素子100の第2の面102側に形成される導体層12は、放熱用パターン12ceを含む導体パターンを有するように形成される。この際、ペルチェ素子100の第1の面101側では、ペルチェ素子100の第1絶縁板100cの開口から露出する電極100A、100B上にビア導体14vが形成され、導体層12と電極100A、100Bとが接続される。
【0043】
なお、ペルチェ素子100に接する絶縁層11には芯材を有しない樹脂フィルムの代わりに、芯材を有するプリプレグが用いられ、プリプレグ上に金属箔が積層されてもよい。この場合、ペルチェ素子100に最も近い絶縁層11に形成されるビア導体14vの形成、及び、絶縁層11に接して形成される導体層12の形成においては、サブトラクティブ法、又は、金属箔を用いるセミアディティブ法が用いられ得る。
【0044】
続いて、ペルチェ素子100の第1の面101の上側に、ビルドアップ工法により、絶縁層11及び導体層12の積層が繰り返される。なお、図6Iに示される状態の形成が完了した後、ペルチェ素子100の第1の面101の上側へさらに絶縁層11及び導体層12が積層される際に、第2の面102側の導体層12の表面は、例えばPETフィルムなどをベースフィルムに用いて適宜保護される。図6Jに示されるように、第1の面101側において部品実装パッド120を含む導体層12までが形成される。次いで、部品実装パッド120の上に剥離層15が形成され、剥離層15の平面形状に基づく開口を有する樹脂フィルムが、部品実装パッド120を有する導体層12上に積層され、剥離層15をその開口内に収容する絶縁層11が形成される。図6Jに示される例において、剥離層15は、粘着層15aと粘着層15aに積層された接合層15bとを有している。粘着層15aは、導体層12(部品実装パッド120)と強固には接着せず、しかし、導体層12と密着し得る材料を用いて形成される。粘着層15aと導体層12とは、比較的弱い力で容易に分離され得る。粘着層15aには、例えばアクリル樹脂が用いられる。一方、接合層15bは、銅などの金属及びエポキシ樹脂などに対して十分な接着性を発現し得る材料で形成される。接合層15bの材料としてはポリイミド樹脂が例示される。
【0045】
次いで、図6Kに示されるように、剥離層15が設けられる層の上側に、さらに絶縁層11及び導体層12が形成される。図示されるように、凹部10FRの形成領域内の、剥離層15より上側に形成される各導体層12には、ダミーパターン12dが設けられ得る。ダミーパターン12dが設けられていることによって、後述の凹部10FRを形成する工程における、絶縁層11及び導体層12の部分的な除去が安定して行われ得る。
【0046】
最外の絶縁層11及び導体層12の上には被覆層13が形成される。被覆層13は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成され、被覆層13には、露光及び現像によって開口13aが形成される。開口13aからは最外の導体層12に含まれる導体パッド12cが露出する。
【0047】
続いて、図6Lに示されるように、剥離層15の縁部に沿って部品実装パッド120に達する溝Gが形成される。溝Gは、例えば、炭酸ガスレーザー又はYAGレーザーなどのレーザー光(図示せず)を、剥離層15の縁部に沿った経路で照射することによって形成される。導体層12が含む部品実装パッド120は、平面視で凹部10FRの底面となる領域全体を含むように形成されている。従って、部品実装パッド120は、溝Gの形成時のレーザー光のストッパとして機能し得る。
【0048】
その後、溝Gに囲まれた部分である除去部分Rが剥離層15と共に除去される。その結果、図6Mに示されるように凹部10FRが形成される。前述したように、剥離層15の粘着層15aは、部品実装パッド120と強固に接着されておらず、その粘着性によって単に付着しているだけである。従って、除去部分Rは、例えば、治工具などに吸着されて引き上げられるなどの任意の方法で容易に除去され得る。凹部10FRの形成に伴って、部品実装パッド120が凹部10FRの底面に露出する。
【0049】
凹部10FRは、例えば、第1面10F側から凹部10FRの形成領域全体に渡ってレーザー光をピッチ送りしながら照射することによって形成されてもよい。凹部10FRを形成する方法は、レーザー光の照射を利用する方法に限定されず、例えば、ドリル加工によって凹部10FRが形成されてもよい。凹部10FRの形成後、凹部10FR内に残存する樹脂残渣(スミア)が、例えば、過マンガン酸塩などを含む薬液を用いた処理によって除去(デスミア処理)され得る。
【0050】
以上の工程を経ることによって、配線基板10が完成する。凹部10FRの形成後、凹部10FRの底面に露出する部品実装パッド120、並びに、被覆層13の開口13a内に露出する導体パッド12cの表面に保護膜(図示せず)が形成されてもよい。例えば、Ni/Au、Ni/Pd/Au、又はSnなどからなる保護膜がめっき法により形成され得る。
【0051】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造や、本明細書において例示された構造及び材料を備えるものに限定されない。例えば、配線基板10は任意の数の導体層12及び絶縁層11を有し得る。スルーホール導体14p及び各ビア導体14vは、必ずしもテーパー形状を有していなくてもよい。凹部10FRは、例えば、電子部品ECの厚さ、及び、配線基板10内の電気回路の構成などに応じて、任意のパターンを有する導体層12及び絶縁層11が底面を構成するように形成され得る。凹部10FRの底面には複数の部品実装領域が設けられてもよい。
【0052】
また、実施形態の配線基板の製造方法に関して説明された条件や順序などは適宜変更されてよく、現に製造される配線基板の構造に応じて、一部の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてもよい。素子内蔵層11pの両面側への絶縁層11及び導体層12の積層においては、必ずしもビルドアップ工法が用いられなくてもよい。例えば、絶縁層11及び導体層12、を事前に積層することによって形成された複数の配線板が一括してプリプレグを介して積層される一括積層法も用いられ得る。また、各導体層の導体パターンの形成では、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、又はフルアディティブ法などが、適宜用いられ得る。
【符号の説明】
【0053】
10 配線基板
1 第1ビルドアップ部
2 第2ビルドアップ部
3 コア基板
10FR 凹部
11 絶縁層
11p 絶縁層(素子内蔵層)
12、12p 導体層
12c 導体パッド
13 被覆層
13a 開口
14v ビア導体
14p スルーホール導体
100 ペルチェ素子
101 第1の面
102 第2の面
100A、100B 電極
100c 第1絶縁板
100h 第2絶縁板
100n N型熱電半導体素子
100p P型熱電半導体素子
120 部品実装パッド
D1、D2 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図6M