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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034336
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220224BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H05K1/02 Q
H05K3/46 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138083
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 大介
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA29
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB03
5E316BB16
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC32
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD32
5E316DD33
5E316EE09
5E316EE33
5E316FF03
5E316FF15
5E316GG15
5E316HH17
5E316JJ13
5E316JJ26
5E338AA03
5E338BB05
5E338CC08
5E338CD32
5E338EE02
(57)【要約】
【課題】放熱を効率良く行うことが可能な配線基板の提供。
【解決手段】実施形態の配線基板10は、電子部品が搭載される部品搭載領域Aを有する第1面10F及び第1面10Fと反対側の第2面10Sと、第1面10F及び第2面10Sの間で交互に積層される複数の絶縁層11及び導体層12と、第1面10F及び第2面10Sの間に配置される複数のペルチェ素子と、を有する。複数のペルチェ素子のそれぞれは、第1面10F側に面する吸熱面101、及び、第2面10S側に面する発熱面102を有し、複数のペルチェ素子は、部品搭載領域Aを第2面10S側に垂直投影した領域に、配線基板10の厚さ方向に重ねられて配置されており、複数のペルチェ素子のうち、第2面10S側に配置されている第1のペルチェ素子の吸発熱能力は、第1のペルチェ素子よりも第1面10F側に配置されている第2のペルチェ素子の吸発熱能力よりも高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載される部品搭載領域を有する第1面及び前記第1面と反対側の第2面と、前記第1面及び前記第2面の間で交互に積層される複数の絶縁層及び導体層と、前記第1面及び前記第2面の間に配置される複数のペルチェ素子と、を有する配線基板であって、
前記複数のペルチェ素子のそれぞれは、前記第1面側に面する吸熱面、及び、前記第2面側に面する発熱面を有し、
前記複数のペルチェ素子は、前記部品搭載領域を前記第2面側に垂直投影した領域に、前記配線基板の厚さ方向に重ねられて配置されており、
前記複数のペルチェ素子のうち、前記第2面側に配置されている第1のペルチェ素子の吸発熱能力は、前記第1のペルチェ素子よりも前記第1面側に配置されている第2のペルチェ素子の吸発熱能力よりも高い。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記複数のペルチェ素子は電気的に並列に接続されている。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記複数のペルチェ素子のそれぞれは電気的に独立している。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記配線基板は前記第1面が部分的に窪む凹部を有し、前記凹部の底面は前記部品搭載領域を有している。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1面は前記部品搭載領域に部品実装パッドを備え、前記部品実装パッドは前記複数のペルチェ素子のうち最も前記第1面の近くに配置されている前記ペルチェ素子の前記吸熱面と導体を介して接続されている。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記複数のペルチェ素子それぞれの前記吸熱面はビア導体と接続している。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2面を構成する導体層は、前記複数のペルチェ素子のうち最も前記第2面の近くに配置されているペルチェ素子の前記発熱面と導体を介して接続されるパターンを有している。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、前記複数のペルチェ素子それぞれの前記発熱面はビア導体と接続している。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、前記複数のペルチェ素子のうち最も前記第2面の近くに配置されているペルチェ素子の前記発熱面が前記第2面の一部を構成している。
【請求項10】
請求項1記載の配線基板であって、前記複数のペルチェ素子のうち最も前記第2面の近くに配置されているペルチェ素子の前記発熱面と前記第2面との距離は400μm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放熱基板が開示されている。放熱基板の厚さ方向における中央部分に位置するコア基板を貫通するキャビティ内に単一のペルチェ素子モジュールが配置されている。コア基板の両面側には、絶縁層及び導体層が積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-201066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の放熱基板内には、単一のペルチェ素子モジュールが配置されている。しかし、放熱基板における吸熱側の表面から放熱側の表面へと充分に熱を伝達することができず、熱源から発生する熱が放熱基板内に留まる場合があると考えられる。熱源に対する望ましい冷却効果が得られ難い場合があると考えられ、また、放熱基板に接続され得る電子部品の誤動作や、熱応力による放熱基板の歪みなどの不良を引き起こす虞があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、電子部品が搭載される部品搭載領域を有する第1面及び前記第1面と反対側の第2面と、前記第1面及び前記第2面の間で交互に積層される複数の絶縁層及び導体層と、前記第1面及び前記第2面の間に配置される複数のペルチェ素子と、を有している。前記複数のペルチェ素子のそれぞれは、前記第1面側に面する吸熱面、及び、前記第2面側に面する発熱面を有し、前記複数のペルチェ素子は、前記部品搭載領域を前記第2面側に垂直投影した領域に、前記配線基板の厚さ方向に重ねられて配置されており、前記複数のペルチェ素子のうち、前記第2面側に配置されている第1のペルチェ素子の吸発熱能力は、前記第1のペルチェ素子よりも前記第1面側に配置されている第2のペルチェ素子の吸発熱能力よりも高い。
【0006】
本発明の実施形態によれば、部品搭載領域に搭載されている電子部品などから発生する熱を、効率よく外部へ放熱することが可能な配線基板が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
図3】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
図4】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
図5A】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5B】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5C】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5D】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5E】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5F】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5G】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5H】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5I】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5J】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5K】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5L】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5M】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5N】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5O】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図5P】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
つぎに、本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。図1は、実施形態の一例である配線基板10の断面図である。図1に示されるように、本実施形態の配線基板10は、第1面10F及び第1面10Fと反対側の第2面10Sを有している。配線基板10は、複数の交互に積層される絶縁層11及び導体層12を含む。複数の絶縁層11のうち絶縁層11pA、11pB、11pCはその内部にペルチェ素子100A、100B、100Cを有している。ペルチェ素子100A、100B、100Cは、それぞれ絶縁層11pA、11pB、11pCに設けられる収容口11pc内に配置されている。これらの複数のペルチェ素子100A、100B、100Cは配線基板10内の厚さ方向において一列に並ぶように重ねられて配置されている。複数のペルチェ素子100A、100B、100Cのそれぞれは、詳しくは後述するように、互いに吸発熱能力が異なる。
【0009】
ペルチェ素子100A、100B、100Cを内部に収容している絶縁層11pA、11pB、11pC、及び、絶縁層11pA、11pB、11pCそれぞれの両面に接して積層されている絶縁層11、及び、絶縁層11pA、11pB、11pCに接する導体層12、及び、絶縁層11pA、11pB、11pCの両面に積層されている絶縁層11に接する導体層12は、素子内蔵層1A、1B、1Cと称される。図示の例において、3つの素子内蔵層1A、1B、1Cは、素子内蔵層1Aと素子内蔵層1Bとの間、及び、素子内蔵層1Bと素子内蔵層1Cとの間にそれぞれ一層の絶縁層11を介して積層されている。
【0010】
配線基板10が有する複数の導体層12のそれぞれは、所望の導体パターンを有するように適宜パターニングされている。そして導体層12が接する絶縁層11は、導体層12と接続する接続用の導体を含んでいる。具体的には、絶縁層11pA、11pB、11pCは、絶縁層11pA、11pB、11pCそれぞれを貫通してその両側に接する導体層12同士を接続する貫通導体14pを含んでいる。その他の絶縁層11のうち任意の絶縁層11はビア導体14vを含んでいる。そして、配線基板10は、素子内蔵層1A、1B、及び1Cを連続して貫通する、スルーホール導体14tを有している。
【0011】
図示の例においては、配線基板10は、その第1面10F側及び第2面10S側に最も近い導体層12及び絶縁層11を被覆する被覆層13を備えている。被覆層13は、最外の導体層12が有する導体パッド12cを露出させる開口13aを備えている。被覆層13はソルダーレジスト層であり得る。
【0012】
配線基板10の第1面10Fは外部の電子部品などが搭載され得る部品搭載領域Aを有しており、部品搭載面として機能し得る。部品搭載領域Aには、例えば、メモリ、マイコン、CPU、等の半導体集積回路装置、又はLED、PD(フォトダイオード)等の光半導体デバイスである電子部品ECが搭載され得る。図示の例では、第1面10Fの部品搭載領域Aに対応する部分は配線基板10の内側に窪む凹部10FRを構成している。図示の例では、凹部10FRの底面は、導体層12が有する導体パターンとして部品実装領域Aの全域に亘って形成される部品実装パッド120により構成されている。凹部10FRの側壁(底面以外の部分)は、絶縁層11及び被覆層13の露出面から構成されている。そして、第1面10Fの凹部10FR以外の部分は、被覆層13及び被覆層13に設けられている開口13aから露出する導体層12(導体パッド12c)によって構成されている。
【0013】
配線基板10の、導体層12及び被覆層13で構成されている第2面10Sは、配線基板10内部の熱を外部へ放出させる放熱面として機能する。第1面10Fの部品搭載領域Aに搭載され得る電子部品ECから発生する熱は、重ねられて配置される複数のペルチェ素子100A、100B、100Cを介して第2面10Sに伝えられ、配線基板10の外部へと放熱される。図示の例では、第2面10Sは、導体層12の導体パターンの一部として形成される放熱用パターン12ceを有している。第2面10Sには、配線基板10内部の熱を効率よく外部へと放出させるために、例えば高熱伝導性の接着部材などを介してヒートシンク(図示せず)が接続されてもよい。
【0014】
配線基板10に配置されている複数のペルチェ素子100A、100B、100Cのそれぞれは、一方に第1の面101を有し、第1の面101と反対側に第2の面102を有している。本実施形態においては第1の面101は冷却面(吸熱面)として機能し、第2の面102は加熱面(発熱面)として機能する。複数のペルチェ素子100A、100B、100Cのそれぞれは、第1面10Fの部品搭載領域A側に第1の面101を向け、第2面10S側に第2の面102を向けて配置される。複数のペルチェ素子100A、100B、100Cのそれぞれは、第1の面101で吸収した熱を、第2の面102から放熱するヒートポンプとして機能する。
【0015】
部品搭載領域Aに配置される電子部品ECから発せられる熱は、複数のペルチェ素子100A、100B、100Cのうちの最も第1面10F寄りに配置されているペルチェ素子100Aの吸熱面101から吸収される。そして、ペルチェ素子100Aの発熱面102から放熱される熱は、ペルチェ素子100Bの吸熱面101から吸収され、ペルチェ素子100Bの発熱面102から放熱される。次いで、ペルチェ素子100Bの発熱面102から放熱される熱は、ペルチェ素子100Cの吸熱面101から吸収され、ペルチェ素子100Cの発熱面102から放熱され、さらに第2面10Sから(特に、放熱用パターン12ceから)配線基板10の外部へと放熱される。すなわち、3つのペルチェ素子100A、100B、100Cからなる集合体は、部品搭載領域Aに配置される電子部品ECから発せられる熱を、第2面10Sから配線基板10の外部へ放熱させるヒートポンプとして機能する。
【0016】
配線基板10の部品搭載領域Aに配置される電子部品ECが発する熱は、配線基板10内に留まると電子部品ECの誤動作等の原因になり得る。また、配線基板10の各構成要素の熱膨張による層間剥離の原因ともなり得る。従って、電子部品ECが発する熱は配線基板10の外部へ放熱される必要がある。ペルチェ素子100A、100B、100Cは、この電子部品ECが発する熱を、第2面10Sから配線基板10の外側へと効率よく放熱するために設けられている。放熱の効率の観点から、ペルチェ素子100A、100B、100Cは、部品搭載領域Aを、第2面10S側に垂直投影した領域に、配線基板10の厚さ方向に重ねられて配置されている。この配置により、電子部品ECからペルチェ素子100A、ペルチェ素子100Aからペルチェ素子100B、及びペルチェ素子100Bからペルチェ素子100Cの熱の伝導は、短い伝熱経路により効率よく実現される。
【0017】
本実施形態における配線基板10において、互いに吸発熱能力の異なる複数のペルチェ素子100A、100B、100Cは、第1面10F側から第2面10S側に向かって、吸発熱能力が高まるように配置される。すなわち、図示の例において、3つのペルチェ素子100A、100B、100Cのうち、第2面10Sに近い側に配置されているペルチェ素子の吸発熱能力は、第1面10Fに近い側に配置されているペルチェ素子の吸発熱能力よりも高い。具体的には、複数のペルチェ素子のうちの任意の2つのペルチェ素子において、第2面10S側に配置される第1のペルチェ素子(例えばペルチェ素子100C)の吸発熱能力は、第1のペルチェ素子よりも第1面10F側に配置される第2のペルチェ素子(例えばペルチェ素子100B)の吸発熱能力よりも高い。すなわち、図示の例においては、ペルチェ素子100Cの吸発熱能力はペルチェ素子100Cよりも第1面10F側に配置されているペルチェ素子100Bの吸発熱能力よりも高く、ペルチェ素子100Bの吸発熱能力は、ペルチェ素子100Aの吸発熱能力よりも高い。
【0018】
なお、本実施形態の説明におけるペルチェ素子の「吸発熱能力が異なる」とは、任意の2つのペルチェ素子における、一方のペルチェ素子の吸熱面から吸収可能な熱量が、他方のペルチェ素子の吸熱面から吸収可能な熱量と異なることを意味する。従って、詳しくは後述されるように、複数のペルチェ素子が電気的に並列接続されて所定の電圧が共通の電力供給源から印加される場合においては、所定の電圧に対する吸熱可能な熱量(吸発熱効率)が異なることを意味している。しかしながら、「吸発熱能力が異なる」とは吸発熱効率が異なることだけを意味せず、吸発熱効率が等しい複数のペルチェ素子に、個別の電力供給源により異なる大きさの電圧を印加して吸収可能な熱量を異ならせる場合も「吸発熱能力が異なる」と表現される。
【0019】
前述したように、単一のペルチェ素子モジュールが内部に配置された放熱基板においては、単一のペルチェ素子モジュールが有する吸発熱能力では熱源からの熱を吸収しきれない場合があると考えられる。この場合、ペルチェ素子に吸収されずに基板内に滞留する熱は、基板に接続されている電子部品の動作不良や、基板の望ましくない熱変形を引き起こす虞がある。これに対し、より多くの熱量を吸収して放熱し得るようにするため、複数のペルチェ素子モジュールを多段式に積み重ねることで吸発熱能力を高める対応が考えられる。本実施形態では、複数の吸発熱能力の異なるペルチェ素子100A、100B、100Cが、熱源側(第1面10F側)から放熱面側(第2面10S側)に向けて、吸発熱能力が低から高となる勾配を有するように列状に重ねられて配置されている。従って、複数のペルチェ素子100A、100B、100C間で熱が漏れる虞がなく、単に同じ吸発熱能力を有する複数のペルチェ素子を列状に重ねられて配置する場合と比較して、熱源からの熱はより確実に放熱面側(第2面10S側)に伝熱し得る。
【0020】
配線基板10内に設けられる複数のペルチェ素子100A、100B、100Cのうち、最も第2面10S側に設けられるペルチェ素子100Cの発熱面102から第2面10Sまでの距離は、より小さいことが好ましい。ペルチェ素子100Cの発熱面102から第2面10Sまでの距離が、最も第1面10F側に設けられるペルチェ素子100Aの吸熱面101から第1面10Fまでの距離よりも小であると、配線基板10外へのより効果的な放熱が実現されることがある。ペルチェ素子100Cの発熱面102から第2面10Sまでの距離は、400μm以下であることが好ましい。
【0021】
電子部品ECから第2面10Sまでの効率的な熱伝導を実現させる観点から、複数のペルチェ素子100A、100B、100Cそれぞれの吸熱面101及び発熱面102には、比較的熱伝導率の高い導体が接続されていることが好ましい。部品実装パッド120とペルチェ素子100Aとの間、ペルチェ素子100Aとペルチェ素子100Bとの間、ペルチェ素子100Bとペルチェ素子100Cとの間、及び、ペルチェ素子100Cと第2面10Sとの間、における熱の漏れが抑制され得る。配線基板10においては、複数のペルチェ素子100A、100B、100Cそれぞれの吸熱面101及び発熱面102には、ビア導体14vが接続され、吸熱面101及び発熱面102はビア導体14vと一体的に形成される導体層12と接続している。
【0022】
熱源となる電子部品ECが発する熱を、効率的に第2面10Sから放熱させるためには、図示のように、最も第1面10F側に近いペルチェ素子100Aの吸熱面101は、配線基板10を構成する導体(ビア導体14v及び/又は導体層12)を介して部品実装パッド120と接続されていることが好ましい。そして、最も第2面10S側に近いペルチェ素子100Cの発熱面102は、配線基板10を構成する導体を介して、第2面10Sを構成する導体層12の、導体パターンの一部として形成される放熱用パターン12ceに接続されていることが好ましい。熱源から放熱面(第2面10S)までの熱伝導が効率よく行われ得る。
【0023】
導体層12、ビア導体14v、貫通導体14p、及びスルーホール導体14tは、銅やニッケルなど、適切な導電性を有する任意の材料を用いて形成され得る。導体層12、ビア導体14v、貫通導体14p、及びスルーホール導体14tは、例えば金属箔(好ましくは銅箔)、金属膜層(好ましくは無電解銅めっき膜層)、もしくは電解めっき膜層(好ましくは電解銅めっき膜層)を用いて、又はこれらの組み合わせを用いて形成される。図1に示される例では、素子内蔵層1A、1B、1Cを構成する導体層12は、金属箔、金属膜層、及び電解めっき膜層を含む構造を有している。具体的には、素子内蔵層1A、1B、1Cを構成する導体層12のうち、スルーホール導体14tの端部を構成する導体層12は、金属箔、金属膜層、電解めっき膜層、金属膜層、及び電解めっき膜層の5層構造を有している。そして、素子内蔵層1A、1B、1Cを構成するその他の導体層12は、金属箔、金属膜層、及び電解めっき膜層の3層構造を有している。
【0024】
素子内蔵層1A、1B、1Cを貫通するスルーホール導体14tは、貫通孔の内壁に形成されている金属膜及び金属膜を給電層として形成される電解めっき膜で構成される導体膜の内側を埋める充填物14tfを含んでいる。充填物14tfは、例えばエポキシ、アクリル、フェノールなどの樹脂を含有する絶縁性材料を用いて形成されている。充填物14tfは、銀粒子などの導電性粒子を含む導電性ペースト又は導電性インクの固化物であってもよい。スルーホール導体14fを構成する金属膜及び電解めっき膜と一体に形成される導体層12の上には、さらに金属膜及び電解めっき膜が形成され、スルーホール導体14tの端部を構成する導体層12は5層構造を有している。スルーホール導体14tの充填物14tfの端面にも金属膜及び電解めっき膜が充填物14tfを覆うように形成されている。配線基板10を構成する導体層12のうち、素子内蔵層1A、1B、1Cを構成する導体層12以外の導体層12、ビア導体14v、及び貫通導体14pは、金属膜層及び電解めっき膜層を含む2層構造を有している。
【0025】
絶縁層11は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成され得る。各絶縁層11は、ガラス繊維などの補強材及び/又はシリカなどの無機フィラーを含み得る。図1に示される例では、素子内蔵層1A、1B、1Cを構成する絶縁層11、11pA、11pB、11pC、及び、素子内蔵層1A、1B、1Cの間に介在する絶縁層11はガラス繊維を含む補強材を含んでいる。そして、その他の絶縁層11は補強材を含んでいないものが図示されている。ソルダーレジスト層であり得る被覆層13は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成される。
【0026】
配線基板10の第1面10F側に形成されている凹部10FRは、その底面の全域に亘って電子部品ECが載置されるべき部品実装パッド120を露出している。部品実装パッド120は、配線基板10を構成する導体層12のうち一つの層の一部が凹部10FRの底面に露出したものである。部品実装パッド120上に実装用部材を介して電子部品ECが実装される。部品実装パッド120には、エポキシ樹脂などで形成される絶縁性の接着剤、又は、導電性粒子を含む導電性接着剤などの実装用部材を介して電子部品ECが実装され得る。電子部品ECの上側には、例えば電子部品ECを制御するコントローラーなどの電子部品(図示せず)が接続されてよい。
【0027】
絶縁層11pA、11pB、11pCのそれぞれは、内部にペルチェ素子100A、100B、100Cを収容するための貫通孔(収容口)11pcを有している。収容口11pcは、その中に収容されるペルチェ素子100A、100B、100Cの寸法よりも僅かに大きく形成される。収容口11pcの内面と、その中に収容されるペルチェ素子100A、100B、100Cとの間の隙間は、素子内蔵層1A、1B、1Cを構成する、絶縁層11pA、11pB、11pCに接する絶縁層11を構成する樹脂で埋められている。
【0028】
ペルチェ素子100A、100B、100Cのそれぞれは、一定の間隔をあけて交互に配置されている複数の直方体形状のP型熱電半導体素子100pとN型熱電半導体素子100nとを有している。ペルチェ素子100A、100B、100Cは、この複数の交互に配置されているP型及びN型熱電半導体素子100p、100nのうち、隣接するP型及びN型熱電半導体素子100p、100nの端部を、電極板100eで互い違いに接続することで構成されている。
【0029】
複数の交互に配置されているP型及びN型熱電半導体素子100p、100nのうち、末端のP型又はN型熱電半導体素子100p、100nにおける電極板100eと反対側の端部には電極100a、100bが設けられている。電極板100e及び電極100a、100bは、例えばCuなどの適切な導電性を有する金属で構成されている。ペルチェ素子100A、100B、100Cは、この電極板100e及び電極100a、100bが設けられた複数のP型及びN型熱電半導体素子100p、100nを、2枚の絶縁板(第1絶縁板100c及び第2絶縁板100h)で挟むことで形成されている。
【0030】
P型熱電半導体素子100pとN型熱電半導体素子100nとは略同形で同サイズに形成されている。P型熱電半導体素子100pとしては、例えば、ビスマス-テルル化合物にアンチモンを添加したものが用いられ、N型熱電半導体素子100nとしては、ビスマス-テルル化合物にセレンを添加したものが用いられ得る。ペルチェ素子100A、100B、100Cの各熱電半導体素子100p、100nの間の空間には、絶縁性樹脂などの封止剤が充填されている。封止剤には、例えば、エポキシ系樹脂などの絶縁性の樹脂が使用され得る。
【0031】
ペルチェ素子100A、100B、100Cの両面を構成する第1及び第2絶縁板100c、100hは、例えば、セラミック板などの高い熱伝導性及び電気絶縁性を有する材料を用いて構成される。第1及び第2絶縁板100c、100hには例えば、アルミナ(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)などが使用され得る。第1絶縁板100cの、P型及びN型熱電半導体素子100p、100nと反対側の表面は、第1の面(吸熱面)101を構成する。第2絶縁板100hの、P型及びN型熱電半導体素子100p、100nと反対側の表面は、第2の面(発熱面)102を構成する。
【0032】
図示される例のペルチェ素子100A、100B、100Cにおいては、電極100a及び電極100bが第1の面101側に設けられ、第1絶縁板100cの電極100a、100bと重なる部分には、電極100a、100bの一部が露出する開口が形成されている。ペルチェ素子100A、100B、100Cにおける電極100a、100bが設けられる位置はこれに限定されない。電極100a、100bの両方が第2の面102側に設けられてもよく、電極100a、100bのうち一方が第1の面101側に設けられ、他方が第2の面102側に設けられる構成とされてもよい。電極100a、100bの位置に応じて、導体層12、ビア導体14v、貫通導体14p、スルーホール導体14tにより、電力供給源から電極100a、100bまでの、適切な導電経路が構成され得る。
【0033】
ペルチェ素子100A、100B、100Cに電力が供給されると、ペルチェ素子100A、100B、100Cの第1絶縁板100c側では温度が低くなり、反対側の第2絶縁板100h側で温度が高くなる温度勾配が形成される。すなわち、第1絶縁板100c側で吸熱現象、第2絶縁板100h側で発熱現象が発生する。
【0034】
図示の例では、3つのペルチェ素子100A、100B、100Cは、電気的に並列に接続されている。3つのペルチェ素子100A、100B、100Cの電極100aは、スルーホール導体14tを介して、共通の導電パッド12caに接続されている。3つのペルチェ素子100A、100B、100Cの電極100bは、スルーホール導体14tを介して、共通の電極パッド12cbに接続されている。電気的に並列に接続されていることによって、3つのペルチェ素子100A、100B、100Cには、共通の電力供給源から等しい値の電圧が印加され得る。上述のように、複数のペルチェ素子100A、100B、100Cにおいて、ペルチェ素子100Cの吸発熱能力はペルチェ素子100Bの吸発熱能力よりも高く、ペルチェ素子100Bの吸発熱能力はペルチェ素子100Aの吸発熱能力よりも高い。すなわち、図示される、ペルチェ素子100A、100B、100Cが電気的に並列接続される例においては、所定の印加電圧における吸収可能な熱量(吸発熱効率)について、第2面10S側の100Cで最も高く、第1面10F側の100Aで最も低い。
【0035】
なお、複数のペルチェ素子100A、100B、100Cの異なる吸発熱能力を実現させるために、ペルチェ素子100A、100B、100Cそれぞれに印加する電圧を異ならせてもよい。具体的には、複数のペルチェ素子100A、100B、100Cに吸発熱効率が同じものを用い、印加電圧を異ならせることで、吸発熱能力を異ならせる構成を実現してもよい。この場合、複数の電気的に並列接続されたペルチェ素子100A、100B、100Cのそれぞれに電圧調整用の抵抗が接続されることで印加電圧が調整され得る。また、複数のペルチェ素子100A、100B、100Cのそれぞれは電気的に独立の構成とされ、それぞれのペルチェ素子100A、100B、100Cの電極100a、100bには個別に、電力供給源が接続されてもよい。
【0036】
図2には、ペルチェ素子100A、100B、100Cのそれぞれに個別の電力供給源が接続される場合の例として、配線基板10aが示されている。配線基板10aにおいては、ペルチェ素子100Aの電極100a、100bは、第1面10Fに露出する導体パッド12cAに接続されている。ペルチェ素子100Bの電極100a、100bは、スルーホール導体14tを介して、第1面10Fに露出する導体パッド12cBに接続されている。ペルチェ素子100Cの電極100a、100bは第2面10Sに露出する導体パッド12cCに接続されている。各ペルチェ素子100A,100B、100Cに個別の電圧源を接続する構成とすることが可能となり、各ペルチェ素子100A、100B、100Cで吸収可能な熱量を印加電圧によって制御することが可能となる。
【0037】
図1及び図2の配線基板10、10aは、部品実装パッド120と電子部品ECとは電気的に絶縁されている例として示されている。電子部品ECへの電力は、例えば電子部品ECの上部に設けられる接続パッドを介して電子部品ECの上に接続され得る他の電子部品等から供給され得る。しかし、電子部品ECへの電力供給は、部品搭載領域Aに設けられる部品実装パッド120を介して行われてもよい。
【0038】
図3に示される配線基板10bでは、電子部品ECがフリップチップ実装で部品実装パッド120に電気的に接続されている例が示されている。電子部品ECは、例えば、その直下に設けられる被覆層(ソルダーレジスト層)13rの開口から露出する部品実装パッド120に、半田などのバンプを介して接続され得る。図示の例では、ペルチェ素子100A、100B、100Cの電極100a、100bに接続されている、ペルチェ素子100A、100B、100Cへの電力供給のための導電経路は、電子部品ECへの導電経路と部分的に重なっている。この実施形態における配線基板10bでも、配線基板10と同様に、部品実装パッド120とペルチェ素子100Aが導体を介して接続されている。これにより、電子部品ECとペルチェ素子100A、100B、100Cに共通の導電経路で電力供給をしながらも、電子部品ECで発生した熱を効率よくペルチェ素子30に伝熱し得ることがある。
【0039】
本実施形態の配線基板は、第2面10Sにペルチェ素子100Cの発熱面102が露出する構成を有してもよい。ペルチェ素子100Cの発熱面102が露出することで、ペルチェ素子100Cの発熱面102から発せられる熱は直接、配線基板10、10a、10bの外部へ放出されることとなり、放熱効率が向上し得る。この露出する発熱面102には、高熱伝導率を有する接着剤などを介して外部のヒートシンク(図示せず)と結合させることも可能である。
【0040】
また、本実施形態の配線基板は、図4に示される配線基板10cのように、第1面10Fは凹部を有さず平坦に形成されてもよい。図示される例では、部品実装パッド120は第1面10Fに露出する導体パッド12cと同一の面に形成され、電子部品ECは部品実装パッド120を介して第1面10F上に搭載される。
【0041】
以下、図5A図5Pを参照して、図1に示される配線基板10の製造方法が説明される。先ず、素子内蔵層1A、1B、1Cが、例えば両面銅張積層板を出発材料として形成される。なお、以下、図5A図5Hに示される工程は、素子内蔵層1A、1B、1Cにおいて共通しているため、素子内蔵層1Aの製造工程のみが説明される。
【0042】
図5Aに示されるように、例えば、エポキシ樹脂又はBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂とガラスクロスなどの補強材からなる絶縁層11pAの両面に、銅箔12fがラミネートされている両面銅張積層板が用意される。次に、図5Bに示されるように、両面銅張積層板の両面側から例えば炭酸ガスレーザー光が照射されて、絶縁層11pAの厚さ方向における中心部付近へ向かって両面側からテーパー状に縮径する貫通孔14phが形成される。
【0043】
次いで、図5Cに示されるように、貫通導体14p及び導体層12が形成される。貫通孔14ph内及び銅箔12f上に無電解めっき処理が行われ、銅箔12f上と貫通孔14phの内面に無電解めっき膜12nが形成される。そして、銅箔12f上の無電解めっき膜12n上に、所定パターンのめっきレジストが形成された後に電解めっき処理が行われ、電解めっき膜12eが貫通孔14ph内に充填されて貫通導体14pが形成されると共に、銅箔12f上の無電解めっき膜12nのめっきレジストから露出している部分に電解めっき膜12eが形成される。続いて、めっきレジストが剥離され、さらにめっきレジストの下方の無電解めっき膜12n及び銅箔12fがエッチングにより除去される。残された電解めっき膜12e、無電解めっき膜12n及び銅箔12fにより、絶縁層11pAの両面に導体層12が形成されると共に、導体層12が貫通導体14pによって接続された状態になる。
【0044】
次いで、図5Dに示されるように、絶縁層11pAにルーター加工又はレーザー光の照射によって、収容口11pcが形成される。
【0045】
続いて、図5Eに示されるように、収容口11pcの開口の一方を塞ぐように、例えばPETフィルムからなるテープTPが導体層12上に張り付けられる。そして、ペルチェ素子100Aがマウンター(図示せず)によって収容口11pcの内部に収められ、第2絶縁板100hがテープTPに固定される。
【0046】
続いて、図5Fに示されるように、プリプレグ11p及び金属箔12fが、テープTPが貼られていない側の導体層12に積層される。プリプレグ11pは、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維などの補強材(芯材)に例えばエポキシ樹脂などの絶縁性の樹脂を含侵させたものである。プリプレグ11pが加圧プレスされることで、導体層12の導体パターンの間、及び、ペルチェ素子100Aと収容口11pcの内壁との隙間に、プリプレグ11pに含まれる樹脂が入り込み充填される。
【0047】
次に、図5Gに示されるように、テープTPが導体層12及びペルチェ素子100Aから取り外されて除去される。
【0048】
次に、図5Hに示されるように、導体層12及びペルチェ素子100Aの第2の面102の上側に、プリプレグ11p及び金属箔12fが積層されてプレスされる。この際、プリプレグ11pに含まれる樹脂が、導体層12の導体パターンの間、及び、収容口11pcの内面とペルチェ素子100Aとの隙間に充填され、隙間は完全に樹脂によって充填される。以上により、絶縁層11pA内へのペルチェ素子100Aの配置が完了する。素子内蔵層1B、1Cの製造においても、素子内蔵層1Aと同様に図5A図5Hに示される工程により、絶縁層11pB、11pC内へのペルチェ素子100B、100Cの配置が行われる。
【0049】
続いて、図5Iに示されるように、ペルチェ素子100Aの第2の面102側、ペルチェ素子100Bの第1の面101側及び第2の面102側、及びペルチェ素子100Cの第1の面101側の絶縁層11にビア導体14vが形成されると共に導体層12が形成される。絶縁層11にビア導体14v用の貫通孔がレーザー加工によって形成され、例えばサブトラクティブ法、又は金属箔を用いるセミアディティブ法を用いて、金属箔、無電解めっき膜、及び電解めっき膜の3層で構成される所望の導体パターンを有する導体層12、及び、無電解めっき膜及び電解めっき膜の2層で構成されるビア導体14vが形成される。
【0050】
以上により、素子内蔵層1Bの形成は完了する。なお、ペルチェ素子100A、100B、100Cに接する絶縁層11には、芯材を有するプリプレグの代わりに芯材を有しない樹脂フィルムが用いられてもよい。この場合、絶縁層11に形成されるビア導体14vの形成、及び、絶縁層11に接して形成される導体層12の形成においてはセミアディティブ法が用いられ得る。
【0051】
続いて、図5Jに示されるように、未硬化のプリプレグ11pが、素子内蔵層1Aと素子内蔵層1Bとの間、及び、素子内蔵層1Bと素子内蔵層1Cとの間に配置される。そして、これらの重ねられた素子内蔵層1A、1B、1C、及びプリプレグ11pが一括プレスされて一体化される。
【0052】
続いて、図5Kに示されるように、素子内蔵層1A、1B、1Cが一体化した積層体の両側の絶縁層11(ペルチェ素子100Aの第1の面101側の絶縁層11、及び、ペルチェ素子100Cの第2面102側の絶縁層11)にビア導体用の貫通孔14vhが形成されると共に、スルーホール14thが形成される。スルーホール14thは、素子内蔵層1B、1Cの電極100a、100bに接続している導体層12を貫通するように、例えばドリル加工によって形成される。
【0053】
次いで、図5Lに示されるように、ビア導体用の貫通孔14vhが導体で充填されることでビア導体14vが形成される。スルーホール14thの内壁面も導体で被覆されると共に充填物14tfが充填されることでスルーホール導体14tが形成される。具体的には、スルーホール14thの内壁面上、ビア導体用の貫通孔14vhの内壁面上、並びに金属箔の上に金属膜層が例えば、無電解めっき又はスパッタリングなどによって形成される。続いて、金属膜層を給電層として用いる電解めっきによって、金属膜層上に電解めっき膜が形成される。スルーホール14thの内壁面上には、スルーホール導体14tの導電性を担う、金属膜及び電解めっき膜の2層構造の導体膜が形成される。同時に、ビア導体用の貫通孔14vhの内壁にも金属膜層及び電解めっき膜が形成され、ビア導体14vが形成される。次いで、スルーホール14thの金属膜及び電解めっき膜の2層構造の導体膜の内側が、例えば、エポキシ、アクリル又はフェノールなどの樹脂である充填物14tfで充填される。
【0054】
さらに、素子内蔵層1A、1Cにおける電解めっき膜及び充填物14tfの上に金属膜及び電解めっき膜が順に形成される。その結果、素子内蔵層1A、1Cの表面に5層構造を有する導体層12が形成される。このように5層に形成される導体層12は、例えば電解めっき膜の形成後に、所望の導体パターンを有するように例えばサブトラクティブ法を用いてパターニングされる。以上により、ペルチェ素子100A、100B、100Cは電気的に並列に接続された状態となる。
【0055】
次いで、素子内蔵層1A側に、ビルドアップ工法により、絶縁層11及び導体層12の積層が繰り返される。なお、図5Lに示される状態の形成が完了した後、素子内蔵層1Aの上側へさらに絶縁層11及び導体層12が積層される際に、素子内蔵層1Cの露出する面は、例えばPETフィルムなどのベースフィルム(図示せず)を用いて適宜保護される。
【0056】
図5Mに示されるように部品実装パッド120を含む導体層12までが形成される。次いで、部品実装パッド120の上に剥離層15が形成され、剥離層15の平面形状に基づく開口を有する樹脂フィルムが、部品実装パッド120を有する導体層12上に積層され、剥離層15をその開口内に収容する絶縁層11が形成される。剥離層15は、粘着層15aと粘着層15aに積層された接合層15bとを有している。粘着層15aは、導体層12(部品実装パッド120)と強固には接着せず、しかし、導体層12と密着し得る材料を用いて形成される。粘着層15aと導体層12とは、比較的弱い力で容易に分離され得る。粘着層15aには、例えばアクリル樹脂が用いられる。一方、接合層15bは、銅などの金属及びエポキシ樹脂などに対して十分な接着性を発現し得る材料で形成される。接合層15bの材料としてはポリイミド樹脂が例示される。
【0057】
次いで、図5Nに示されるように、剥離層15の部品実装パッド120の反対側に、さらに絶縁層11及び導体層12が形成される。図示されるように、剥離層15より上側に形成される導体層12には、ダミーパターン12dが設けられ得る。ダミーパターン12dが設けられていることによって、後述の工程における絶縁層11及び導体層12の部分的な除去が安定して行われ得る。
【0058】
最外の絶縁層11及び導体層12の上には被覆層13が形成される。被覆層13は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成され、被覆層13には、露光及び現像によって開口13aが形成される。開口からは最外の導体層12に含まれる導体パッド12cが露出する。
【0059】
次いで、図5Oに示されるように、剥離層15の縁部に沿って部品実装パッド120に達する溝Gが形成される。溝Gは、例えば、炭酸ガスレーザー又はYAGレーザーなどのレーザー光(図示せず)を、剥離層15の縁部に沿った経路で照射することによって形成される。溝Gの形成において、部品実装パッド120がレーザー光のストッパとして機能し得る。
【0060】
その後、溝Gに囲まれた部分である除去部分Rが剥離層15と共に除去される。その結果、図5Pに示されるように凹部10FRが形成される。前述したように、剥離層15の粘着層15aは、部品実装パッド120と強固に接着されておらず、その粘着性によって単に付着しているだけである。従って、除去部分Rは、例えば、治工具などに吸着されて引き上げられるなどの任意の方法で容易に除去され得る。凹部10FRの形成に伴って、部品実装パッド120が凹部10FRの底面に露出する。
【0061】
凹部10FRは、例えば、第1面10F側から凹部10FRの形成領域全体に渡ってレーザー光をピッチ送りしながら照射することによって形成されてもよい。凹部10FRを形成する方法は、レーザー光の照射を利用する方法に限定されず、例えば、ドリル加工によって凹部10FRが形成されてもよい。凹部10FRの形成後、凹部10FR内に残存する樹脂残渣(スミア)が、例えば、過マンガン酸塩などを含む薬液を用いた処理によって除去(デスミア処理)され得る。
【0062】
以上の工程を経ることによって、配線基板10が完成する。凹部10FRの形成後、凹部10FRの底面に露出する部品実装パッド120、並びに、被覆層13の開口13a内に露出する導体パッド12cの表面に保護膜(図示せず)が形成されてもよい。例えば、Ni/Au、Ni/Pd/Au、又はSnなどからなる保護膜がめっき法により形成され得る。
【0063】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造や、本明細書において例示された構造及び材料を備えるものに限定されない。例えば、配線基板10は任意の数の導体層12及び絶縁層11を有し得る。配線基板内に配置される複数のペルチェ素子の数は3つに限定されず、熱源からの発熱量及び配線基板の寸法などに応じて適宜その数は増減され得る。凹部10FRは、例えば、電子部品ECの厚さ、及び、配線基板10内の電気回路の構成などに応じて、任意のパターンを有する導体層12及び絶縁層11が底面を構成するように形成され得る。凹部10FRの底面には複数の部品実装領域が設けられてもよい。
【0064】
また、実施形態の配線基板の製造方法に関して説明された条件や順序などは適宜変更されてよく、現に製造される配線基板の構造に応じて、一部の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてもよい。また、各導体層の導体パターンの形成では、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、又はフルアディティブ法などが、適宜用いられ得る。
【符号の説明】
【0065】
10 配線基板
1A、1B、1C 素子内蔵層
11、11pA、11pB、11pC 絶縁層
12 導体層
12c 導体パッド
13a 開口
14v ビア導体
14p 貫通導体
14t スルーホール導体
14th スルーホール
14tf 充填物
100A、100B、100C ペルチェ素子
101 第1の面
102 第2の面
100a、100b 電極
100c 第1絶縁板
100h 第2絶縁板
10FR 凹部
120 部品実装パッド
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図5M
図5N
図5O
図5P