(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034355
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】PTP包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 75/34 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
B65D75/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138112
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】511069932
【氏名又は名称】昭北ラミネート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】石原 沙知
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AC04
3E067BA02A
3E067BB14A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB29
3E067EC08
3E067FA01
3E067FB04
3E067FC01
3E067GD10
(57)【要約】
【課題】プレススルー性を向上させたPTP包装体が得られ、且つ包装シートにカヤが発生するのを容易に抑えることができるPTP包装体の製造方法を提供する。
【解決手段】準備工程では、容器シート26と、厚み13.5μm~16.5μmの硬質アルミニウム箔を基材とし、硬質アルミニウム箔の片方の面を覆うようにヒートシール層が設けられた包装シート26とを用意する。熱接着工程では、所定の加熱温度及びプレス圧力の条件下でプレスし、加熱ロール18aの表面に設けた凹凸により硬質アルミニウム箔を容器シート26の表面に食い込ませ、ヒートシール層を介して相互に接着させる。熱接着工程のプレスは、包装シート26にカヤが発生しない加熱温度及びプレス圧力の値に設定する。加熱温度は170~200℃の範囲、プレス圧力は0.225~0.275MPaの範囲とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体の収容部の開口を蓋材で閉鎖したPTP包装体の製造方法において、
前記容器体が一方向に連続した帯状の容器シートと、
前記蓋材が一方向に連続した帯状のシートであって、厚み13.5μm~16.5μmの硬質アルミニウム箔を基材とし、前記硬質アルミニウム箔の片方の面を覆うようにヒートシール層が設けられた包装シートとを用意する準備工程と、
前記包装シート及び前記容器シートを、前記ヒートシール層が前記容器シートに当接するように重ね合わせ、加熱ロールと受けロールとの間に通すことによって所定の加熱温度及びプレス圧力の条件下でプレスし、前記加熱ロールの表面に設けた凹凸により前記硬質アルミニウム箔を前記容器シートの表面に食い込ませ、前記ヒートシール層を介して相互に接着させる熱接着工程と、
相互に接着している前記包装シート及び前記容器シートを前記PTP包装体の大きさ切断する切断工程とを備え、
前記熱接着工程において、前記プレスを行った時、前記包装シートにカヤが発生しないように前記加熱温度及び前記プレス圧力の値を設定するものであって、前記加熱温度は170~200℃の範囲、前記プレス圧力は0.225~0.275MPaの範囲とすることを特徴とするPTP包装体の製造方法。
【請求項2】
前記加熱温度は180~190℃の範囲である請求項1記載のPTP包装体の製造方法。
【請求項3】
前記熱接着工程で使用する加熱ロールの表面の凹凸により、前記硬質アルミニウム箔が前記容器シートの表面に6~13μmの深さに食い込む請求項1記載のPTP包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体の収容部の開口を蓋材で閉鎖したPTP包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PTP(press through package)は、
図3に示すPTP包装体10のように、樹脂製の容器体12に形成された収容部12a内に、薬剤である錠剤やカプセル等の固形物14を入れ、蓋材16を容器体12の平面部12bに貼りつけることによって、収容部12aを閉鎖する包装形態である。
【0003】
PTP包装体10は、開封するとき、収容された固形物14を収容部12aの外側から蓋材16の内面に強く押し当て、蓋材16を突き破って取り出すものであり、蓋材16の基材は、硬質アルミニウム箔が広く使用されている。蓋材16を容器体12に貼り付ける場合、蓋材16の一方の面に設けたヒートシール層を容器体12の平面部12bに当接させ、蓋材16の他方の面に設けた耐熱コート層の側から加熱し、ヒートシール層を平面部12bに溶着させる方法が用いられる。また、蓋材16の、耐熱コート層側の面には、例えば固形物14の名称、メーカ名、使用期限、バーコード等の情報表示が印刷される。
【0004】
PTP包装体10の製造は、
図4に示すように、シール装置18と打ち抜き装置20とを備えたPTP包装体製造装置22を用いて行われる。シール装置18は、帯状の容器シート24と帯状の包装シート26とを重ね合わせて熱接着する装置である。容器シート24は、容器体12が一方向に連続したものであり、包装シート26は、蓋材16が一方向に連続したものである。
【0005】
容器シート24は、図示しない移送装置に引っ張られ、充填装置28によって収容部12aに固形物14が入れられた後、シール装置18に送られる。包装シート26は、ロール状に巻かれてセットされ、図示しない移送装置に引っ張られ、シール装置18に送られる。
【0006】
シール装置18は、加熱ロール18aと受けロール18bを有し、容器シート24及び包装シート26を重ね合わせて加熱ロール18aと受けロール18bとの間に通し、ヒートシール層を介して相互に熱接着させる。このとき、加熱ロール18aは、包装シート26の耐熱コート層側の面を押圧しながら加熱し、受けロール18bは、容器シート24の平面部12b(収容部12aが突出している側の面)に当接し、加熱ロール18aからの押圧力を受け止める。加熱ロール18aは、
図5(a)に示すように、表面に凹凸(例えば、格子状の筋目)が設けられており、これにより、
図5(b)に示すように、包装シート26が容器シート24の表面に食い込み、強固に熱接着させることができる。
【0007】
その後、容器シート24及び包装シート26は、図示しない移送装置に引っ張られ、打ち抜き装置20に送られる。そして、打ち抜き装置20で、互いに熱接着した容器シート24及び包装シート26を規定サイズに切断し、PTP包装体10が形成される。以上が製造方法の概要である。
【0008】
このような製造方法は、従来から複数の特許文献に開示されている。例えば特許文献1には、樹脂製の容器体と、厚さが15~25μm(好ましくは16.3~18.7μm)のアルミニウム箔を基材とし、アルミニウム箔の片方の面を覆うようにヒートシール層が設けられた蓋材とを用意し、容器体と蓋材を、蓋材の表面に網目模様のシール目が賦型されるように、温度260~280℃、圧力0.3~0.5MPaの条件で熱接着することが記載されている。また、使用可能なアルミニウム箔の組成及び破断点伸び率、アルミニウム箔とヒートシール層とで成る積層体の引張強度等の範囲を規定し、熱接着する時、アルミニウム箔にピンホール状の孔が発生するのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プレススルー性(固形物14の取り出しやすさ)を重視したPTP包装体10を製作する場合、蓋材16を破れやすくするため、基材の硬質アルミニウム箔を約15μmまで薄くする方法が考えられる。しかし、一般的には、硬質アルミニウム箔を約20μmより薄くすると、熱接着のプレスを行った時、蓋材16の食い込んだ部分にカヤ(アルミニウム箔の亀裂やピンホール)が発生しやすくなることから、硬質アルミニウム箔を約15μmにすることはほとんど行われていない。したがって、硬質アルミニウム箔の厚みを約15μmにする場合、加熱温度やプレス圧力の設定を見直して最適化することが必要になる。
【0011】
特許文献1には、アルミニウム箔の厚みの範囲、熱接着時のプレス温度及びプレス圧力の範囲が数値で記載されているが、範囲の幅がかなり広く、各数値の最適化の方法については詳しく記載されていない。したがって、プレススルー性を向上させ、且つカヤの発生も抑えることができる製造条件は明らかではない。
【0012】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、プレススルー性を向上させたPTP包装体が得られ、且つ包装シートにカヤが発生するのを確実に抑えることができるPTP包装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、容器体の収容部の開口を蓋材で閉鎖したPTP包装体の製造方法であって、前記容器体が一方向に連続した帯状の容器シートと、前記蓋材が一方向に連続した帯状のシートであって、厚み13.5μm~16.5μmの硬質アルミニウム箔を基材とし、前記硬質アルミニウム箔の片方の面を覆うようにヒートシール層が設けられた包装シートとを用意する準備工程と、前記包装シート及び前記容器シートを、前記ヒートシール層が前記容器シートに当接するように重ね合わせ、加熱ロールと受けロールとの間に通すことによって所定の加熱温度及びプレス圧力の条件下でプレスし、前記加熱ロールの表面に設けた凹凸により前記硬質アルミニウム箔を前記容器シートの表面に食い込ませ、前記ヒートシール層を介して相互に接着させる熱接着工程と、相互に接着している前記包装シート及び前記容器シートを前記PTP包装体の大きさ切断する切断工程とを備え、前記熱接着工程において、前記プレスを行った時、前記包装シートにカヤが発生しないように前記加熱温度及び前記プレス圧力の値を設定するものであって、前記加熱温度は170~200℃の範囲、前記プレス圧力は0.225~0.275MPaの範囲とするPTP包装体の製造方法である。前記熱接着工程において、より好ましくは、前記加熱温度は180~190℃の範囲である。
【0014】
また、前記熱接着工程で使用する加熱ロールの表面の凹凸は、前記硬質アルミニウム箔が前記容器シートの表面に少なくとも6μmの深さ、好ましくは6~13μmの深さに食い込むように形成すると良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明のPTP包装体の製造方法によれば、包装シート(蓋材)の基材である硬質アルミニウム箔の厚さを従来よりも薄い約15μmとし、熱接着工程で容器シートにプレスする時の加熱温度及びプレス圧力を従来よりも低い値で最適化し、蓋材の剥離強度を確保しつつ、熱接着を行った時、包装シートにカヤが発生するのを確実に抑えることができる。さらに、従来よりも低い接着温度で接着しているので、包装した薬剤への接着温度による影響が少なく、設備の保全及びランニングコストの面でも好ましい。また、プレス圧が低いことから、プレス装置の負担を抑え、製造時の省エネルギーにもつながる。そして、蓋材の基材が厚さ約15μmの硬質アルミニウム箔なので、PTP包装体のプレススルー性を従来よりも向上させることができ、しかも、PTP包装体をカバン等に入れて持ち運ぶ時に蓋材が不意に破れてしまう不具合も発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のPTP包装体の製造方法を用いて試作品を製造した時の実測データであって、熱接着工程における加熱温度及びプレス圧力を変化させた時の剥離強度の変化を示すグラフである[硬質アルミニウム箔の厚さ=15μm]。
【
図2】従来のPTP包装体の製造方法を用いて試作品を製造した時の実測したデータであって、熱接着工程における加熱温度及びプレス圧力を変化させた時の剥離強度の変化を示すグラフである[硬質アルミニウム箔の厚さ=20μm]。
【
図3】PTP包装体を容器体側から見た図(a)、蓋材側から見た図(b)、C-C断面図(c)である。
【
図4】一般的なPTP包装体製造装置を示す図である。
【
図5】
図4のシール装置の詳細な構成を示す平面図(a)、PTP包装体の熱接着された部分を拡大した断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のPTP用包装シートの製造方法の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態のPTP包装体の製造方法は、上記PTP包装体10を製造する方法であり、準備工程、熱接着工程及び切断工程を順に行う。熱接着工程及び切断工程については、
図4に示すPTP包装体製造装置22のシール装置18及び打ち抜き装置20により行われる。
【0018】
準備工程では、容器シート24及び包装シート30を用意する。容器シート24は、容器体12が一方向に連続した帯状のシート材では、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等の樹脂である。容器シート24は、約150~350μmの厚みに形成された平坦な樹脂シートの内側をエンボス成形することによって製作される。
【0019】
包装シート30は、蓋材16が一方向に連続した帯状のシートで、厚み15μmの硬質アルミニウム箔を基材とし、硬質アルミニウム箔の片方の面を覆うようにヒートシール層が薄く設けられている。硬質アルミニウム箔は、例えばJIS規格で規定される8021材や8079材等の一般的な材料を選択することができる。また、硬質アルミニウム箔の反対側の面に、表示用の印刷層や硬質アルミニウム箔の表面を保護する耐熱コート層等を設けてもよい。
【0020】
熱接着工程及び切断工程の流れは上述した通りであるが、この実施形態では、熱接着工程における加熱温度及びプレス圧力を、従来よりも低い値で最適化している。具体的には、加熱温度を170~200℃、より好ましくは180~190℃の範囲、プレス圧力を0.225~0.275MPaの範囲に設定している。
【0021】
以下、熱接着工程における加熱温度及びプレス圧力の値を最適化するために行った試作と実験結果について、
図1、
図2に基づいて説明する。
【0022】
発明者は、硬質アルミニウム箔の厚さが20μm(公差±10%)である従来の包装シート26と、硬質アルミニウム箔の厚さを15μm(公差±10%)の包装シート26とを用意し、まず、シール装置18のプレス圧力を従来の一般的な値である0.35MPa(バラツキ±10%)に設定し、加熱温度を変化させて熱接着を行った。そして、熱接着後の蓋材16の剥離強度の変化を測定した。測定結果は、
図1、
図2の中の実線のグラフである。
【0023】
図1、
図2のグラフの縦軸は、いわゆる180度剥離試験を行って実測した剥離強度のデータ(n=5~10の平均値)で、縦軸の数値は、比較しやすいように一定の条件で規格化してある。「□」のプロットは、移送方向に隣接する2つの収容部12aの間に位置する領域Aの剥離強度で、「○」のプロットは、移送方向に対して直角方向に隣接する2つの収容部12aの間に位置する領域Bの剥離強度である。剥離強度は上記縦軸の値で450以上であれば十分と言える。なお、一般的なシール装置18を使用すると、領域Aの剥離強度の方が領域Bの剥離強度よりも弱くなる傾向があるので、領域Aの剥離強度が450以上あれば、全体として良好に熱接着されていると言える。
【0024】
プレス圧力が0.35MPaの場合、剥離強度の特性は、硬質アルミニウム箔の厚みが20μmの時と15μmの時で大きな違いはなかった。熱接着後のカヤの発生状況も、厚みが20μmと15μmで、加熱温度が200℃前後の温度ではカヤの発生はなかった。
【0025】
次に、シール装置18のプレス圧力を0.25MPa(バラツキ±10%)に変更し、加熱温度を変化させて熱接着を行った。そして、上記と同様に、熱接着後の蓋材16の剥離強度の変化を測定した。測定結果は、
図1、
図2の中の破線のグラフで、「■」のプロットは領域Aの剥離強度、「●」のプロットは領域Bの剥離強度である。
【0026】
プレス圧力が0.25MPaの場合、硬質アルミニウム箔の厚みが従来の20μmの時は、加熱温度を190℃以上にしないと必要十分な剥離強度が得られなかったのに対し、厚みを15μmにした時は、加熱温度が170℃~200℃の低温でも必要十分な剥離強度が得られた。即ち、
図1、
図2に示すように、硬質アルミニウム箔の厚みが15μmの場合、プレス圧力を0.25MPaに下げても、剥離強度の低下が小さく、より低温で必要十分な剥離強度が得られる。また、熱接着後のカヤの発生状況を見ると、厚みが15μmで、加熱温度が170℃~200℃の低温でもカヤが発生しなかった。
【0027】
なお、厚さを15μmの硬質アルミニウム箔の場合、必要十分な剥離強度を得るには少なくとも6μmの深さに食い込ませる必要があり、この実施形態では食い込み深さhは、6~13μmの範囲であった。この範囲は、従来好ましいとされる20μm以上の深さではないが、食い込み深さが6~13μmの範囲であれば、剥離強度及びプレス加工性の観点から好ましいことが確認された。これは、比較的薄い15μmの硬質アルミニウム箔の場合、加熱ロール18a表面の凹凸が、硬質アルミニウム箔の包装シート26とともに容器シート24に容易且つ確実に食い込むことによると考えられる。
【0028】
このように、厚み15μm(公差±10%)の硬質アルミニウム箔を基材とする包装シート26を熱接着する時は、加熱温度を170~200℃の範囲、プレス圧力を0.25MPa(バラツキ±10%)の範囲に設定することによって、食い込み深さhが6~13μm程度で、必要十分な剥離強度が得られ、且つ包装シート16にカヤが発生しないことが分かった。
【0029】
以上説明したように、この実施形態のPTP包装体の製造方法によれば、包装シート26(蓋材16)の基材である硬質アルミニウム箔の厚さを従来よりも薄い約15μmとし、熱接着工程で容器シートにプレスする時の加熱温度及びプレス圧力を、従来よりも低い値で最適化しているので、従来と同様の蓋材の剥離強度を確保しつつ、熱接着を行った時、包装シート26にカヤが発生するのを確実に抑えることができる。さらに、従来よりも低い接着温度で接着しているので、包装した薬剤への接着温度による影響が少なく、設備の保全及びランニングコストの面でも好ましい。また、プレス圧が低いことから、プレス装置の負担を抑え、製造時の省エネルギーにもつながる。そして、蓋材16の基材が厚さ約15μmの硬質アルミニウム箔なので、PTP包装体10のプレススルー性を従来よりも向上させることができ、しかも、PTP包装体10をカバン等に入れて持ち運ぶ時に蓋材16が不意に破れてしまう不具合も発生しにくい。
【符号の説明】
【0030】
10 PTP包装体
12 容器体
12a 収容部
12b 平面部
14 固形物
16 蓋材
18 シール装置
18a 加熱ロール
18b 受けロール
20 打ち抜き装置
22 PTP包装体製造装置
24 容器シート
26 包装シート
28 充填装置