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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034395
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】減速装置およびギヤドモータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20220224BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
F16H1/46
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138166
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
【テーマコード(参考)】
3J027
5H607
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FA37
3J027FB40
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC25
3J027GC26
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE07
3J027GE14
5H607AA00
5H607BB01
5H607BB10
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ギヤの強度を確保しつつ小型化を実現できる減速装置およびギヤドモータを提供する。
【解決手段】本発明の一つの態様の減速装置3は、中心軸線中心として軸方向に延びる内歯ギヤ39aと、前記内歯ギヤの内側に配置され中心軸線Jを中心とする第1太陽ギヤ32cと、前記第1太陽ギヤおよび前記内歯ギヤに噛み合う第1遊星ギヤ35bと、前記第1遊星ギヤを軸方向一方側から回転可能に支持する第1キャリア36と、を備える。前記第1キャリアは、前記遊星ギヤと軸方向に対向する第1対向面36baを有する。前記第1対向面には、軸方向から見て前記第1遊星ギヤの歯面の通過軌跡に重なる凹部37が設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として軸方向に延びる内歯ギヤと、
前記内歯ギヤの内側に配置され中心軸線を中心とする第1太陽ギヤと、
前記第1太陽ギヤおよび前記内歯ギヤに噛み合う第1遊星ギヤと、
前記第1遊星ギヤを軸方向一方側から回転可能に支持する第1キャリアと、を備え、
前記第1キャリアは、前記第1遊星ギヤと軸方向に対向する第1対向面を有し、
前記第1対向面には、軸方向から見て前記第1遊星ギヤの歯面の通過軌跡に重なる凹部が設けられる、
減速装置。
【請求項2】
前記第1キャリアは、前記第1対向面から軸方向他方側に延び出て前記第1遊星ギヤを支持するサブシャフトを有し、
前記凹部の軸方向他方側を向く面は、前記中心軸線の径方向に沿って滑らかに湾曲し、前記中心軸線を中心とし前記サブシャフトを通過するピッチ円をピークとして、前記中心軸線の径方向内側および外側に向かうに従い軸方向一方側に傾斜する、
請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記第1キャリアは、前記第1対向面から軸方向他方側に延び出て前記第1遊星ギヤを支持するサブシャフトを有し、
前記凹部の軸方向他方側を向く面は、前記サブシャフトから離れるに従い軸方向一方側に傾斜する、
請求項1に記載の減速装置。
【請求項4】
前記第1遊星ギヤの軸方向他方側に位置し前記第1太陽ギヤに連結される円盤部を有し、
前記円盤部は、前記第1遊星ギヤと軸方向に対向する第2対向面を有し、
前記第2対向面の外縁には、前記中心軸線から離れるに従い軸方向他方側に傾斜するテーパ部が設けられる、
請求項1~3の何れか一項に記載の減速装置。
【請求項5】
前記第1太陽ギヤの軸方向他方側で前記内歯ギヤの内側に配置され前記中心軸線を中心とする第2太陽ギヤと、
前記第2太陽ギヤおよび前記内歯ギヤに噛み合う第2遊星ギヤと、
前記第2遊星ギヤを軸方向一方側から回転可能に支持する第2キャリアと、をさらに備え、
前記第2遊星ギヤの軸方向一方側の端面には、前記第2遊星ギヤの中心に対し円環状に延び上側に突出する凸条部が設けられる、
請求項1~4の何れか一項に記載の減速装置。
【請求項6】
前記第2遊星ギヤの歯幅は、前記第1遊星ギヤの歯幅より、小さい、
請求項5に記載の減速装置。
【請求項7】
前記第2太陽ギヤの軸方向他方側で前記内歯ギヤの内側に配置され前記中心軸線を中心とする第3太陽ギヤと、
前記第3太陽ギヤおよび前記内歯ギヤに噛み合う第3遊星ギヤと、
前記第3遊星ギヤを軸方向一方側から回転可能に支持する第3キャリアと、をさらに備え、
前記第3遊星ギヤの軸方向一方側の端面には、前記第3遊星ギヤの中心に対し円環状に延び上側に突出する凸条部が設けられる、
請求項5又は6に記載の減速装置。
【請求項8】
前記第3遊星ギヤの歯幅は、前記第1遊星ギヤの歯幅より、小さい、
請求項7に記載の減速装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の減速装置と、
モータ本体と、を有し、
前記減速装置は、前記モータ本体に接続される、
ギヤドモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置およびギヤドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の電子機器の精密化に伴い、より小型かつ高機能なギヤドモータの開発が進められている。ギヤドモータとしては、モータに、複数段の遊星歯車減速機構を含むギヤボックス(減速装置)が接続されたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-49325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数段の遊星歯車機構を有する減速機構では、出力側に近づくに従い、伝達するトルクが大きくなり各歯車の強度を確保する必要がある。一方で、小型化を追求する必要性から各ギヤの歯幅を小さくすることが求められる。すなわち、減速機構では、ギヤの強度確保と小型化とを同時に達成することが求められている。
【0005】
本発明の一つの態様は、ギヤの強度を確保しつつ小型化を実現できる減速装置およびギヤドモータの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様の減速装置は、中心軸線を中心として軸方向に延びる内歯ギヤと、前記内歯ギヤの内側に配置され中心軸線を中心とする第1太陽ギヤと、前記第1太陽ギヤおよび前記内歯ギヤに噛み合う第1遊星ギヤと、前記第1遊星ギヤを軸方向一方側から回転可能に支持する第1キャリアと、を備える。前記第1キャリアは、前記遊星ギヤと軸方向に対向する第1対向面を有する。前記第1対向面には、軸方向から見て前記第1遊星ギヤの歯面の通過軌跡に重なる凹部が設けられる。
【0007】
本発明の一つの態様のギヤドモータは、上述の減速装置と、モータ本体と、を有する。前記減速装置は、前記モータ本体に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、ギヤの強度を確保しつつ小型化を実現できる減速装置およびギヤドモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態のギヤドモータの断面図である。
図2図2は、一実施形態のギヤドモータの分解斜視図である。
図3図3は、図1の部分拡大図である。
図4図4は、一実施形態の第1キャリアの斜視図である。
図5図5は、変形例の第1キャリアの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るギヤドモータについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
図面には、中心軸線Jに平行なZ軸を示す。以下の説明において特に断りのない限り、Z軸方向を単に「軸方向」又は「上下方向」と呼び、+Z側を「軸方向一方側」又は「上側」と呼び、-Z側を「軸方向他方側」又は「下側」と呼ぶ。なお、本明細書における上下方向は、説明の便宜のために設定する方向であって、ギヤドモータの使用時の姿勢を限定するものではない。さらに、以下の説明において、中心軸線J周りの周方向を単に「周方向」とよび、中心軸線Jに対する径方向を単に「径方向」と呼ぶ。
【0012】
<ギヤドモータ>
図1は、ギヤドモータ1の断面図である。図2は、ギヤドモータ1の分解斜視図である。ギヤドモータ1は、モータ本体2と、モータ本体2に接続される減速装置3と、を備える。以下、ギヤドモータ1の各部について詳細に説明する。
【0013】
<モータ本体>
モータ本体2は、全体として中心軸線Jを中心とする円柱状である。本実施形態において、モータ本体2は、ステッピングモータである。
【0014】
図1に示すように、モータ本体2は、ロータ21と、ロータ21を径方向外側から囲むステータ26と、を有する。また、モータ本体2は、ロータ21に固定されるモータシャフト22を有する。
【0015】
モータシャフト22は、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる。本実施形態において、モータシャフト22は、モータ本体2において上側に突出する。モータシャフト22は、ロータとともに中心軸線J周りを回転する。モータシャフト22の上端には、第3太陽ギヤ33aが固定される。
【0016】
<減速装置>
減速装置3は、モータ本体2の上側に位置する。減速装置3は、モータ本体2に接続される。減速装置3は、モータ本体2から出力された動力を減速する。減速装置3は、第1遊星歯車機構30Aと、第2遊星歯車機構30Bと、第3遊星歯車機構30Cと、から構成される。モータ本体2から出力された動力は、第3遊星歯車機構30C、第2遊星歯車機構30Bおよび第1遊星歯車機構30Aの順で伝達され、第1遊星歯車機構30Aにおいて出力される。第3遊星歯車機構30C、第2遊星歯車機構30Bおよび第1遊星歯車機構30Aは、下側から上側に向かってこの順で並ぶ。
【0017】
減速装置3は、ギヤハウジング39と、第3太陽ギヤ33aと、3つの第3遊星ギヤ33bと、第3キャリア31と、3つの第2遊星ギヤ34bと、第2キャリア32と、3つの第1遊星ギヤ35bと、第1キャリア36と、を有する。後述するように、ギヤハウジング39は、内歯ギヤ39aを有する。また、第3キャリア31は、第2太陽ギヤ31cを有する。同様に、第2キャリア32は、第1太陽ギヤ32cを有する。
【0018】
第3太陽ギヤ33aと第3遊星ギヤ33bと第3キャリア31と内歯ギヤ39aとは、第3遊星歯車機構30Cを構成する。第2太陽ギヤ31cと第2遊星ギヤ34bと第2キャリア32と内歯ギヤ39aとは、第2遊星歯車機構30Bを構成する。第1太陽ギヤ32cと第1遊星ギヤ35bと第1キャリア36と内歯ギヤ39aとは、第1遊星歯車機構30Aを構成する。
【0019】
ギヤハウジング39は、内歯ギヤ39aと、底部39bと、軸受部39dと、を有する。すなわち、減速装置3は、内歯ギヤ39aを有する。内歯ギヤ39aは、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる筒状である。内歯ギヤ39aは、第3遊星ギヤ33b、第2遊星ギヤ34bおよび第1遊星ギヤ35bに噛み合う。底部39bは、内歯ギヤ39aの上側の端部に位置する。軸方向から見て底部39bの中央には、軸受部39dが設けられる。軸受部39dは、底部39bから上側に向かって筒状に延びる。軸受部39dは、滑り軸受である。軸受部39dは、内周面において、後述する出力部36dを回転可能に支持する。
【0020】
第3太陽ギヤ33aは、第1太陽ギヤ32cおよび第2太陽ギヤ31cの下側(軸方向他方側)で内歯ギヤ39aの内側に配置される。第3太陽ギヤ33aは、中心軸線Jを中心とする。第3太陽ギヤ33aは、モータシャフト22に固定され、モータシャフト22とともに中心軸線Jを中心として回転する。
【0021】
3つの第3遊星ギヤ33bは、中心軸線Jの周方向に等間隔に配置される。3つの第3遊星ギヤ33bは、径方向において、第3太陽ギヤ33aと内歯ギヤ39aの間に配置される。3つの第3遊星ギヤ33bは、第3太陽ギヤ33aおよび内歯ギヤ39aに噛み合う。3つの第3遊星ギヤ33bは、第3太陽ギヤ33aの回転に伴い、中心軸線Jの周りを公転回転する。第3遊星ギヤ33bの中央には、上側に開口する保持孔33baが設けられる。
【0022】
第3キャリア31は、第3円盤部31bと、3本の第3サブシャフト31aと、第2太陽ギヤ31cと、を有する。第3円盤部31bは、中心軸線Jを中心として径方向に延びる。第3円盤部31bは、第2遊星ギヤ34bの下側かつ第3遊星ギヤ33bの上側に位置する。第3円盤部31bは、第2太陽ギヤ31cに連結される。第3円盤部31bは、中心軸線Jと直交する板状である。第3円盤部31bは、第3太陽ギヤ33aおよび第3遊星ギヤ33bの上側に位置する。3本の第3サブシャフト31aは、第3円盤部31bから下側に延びる。第2太陽ギヤ31cは、中心軸線Jを中心として第3円盤部31bから上側に延びる。
【0023】
第3サブシャフト31aは、第3遊星ギヤ33bの保持孔33baに挿入される。3本の第3サブシャフト31aは、それぞれ第3遊星ギヤ33bを回転可能に支持する。すなわち、第3キャリア31は、複数の第3遊星ギヤ33bを上側(軸方向一方側)から回転可能に支持する。第3キャリア31は、3つの第3遊星ギヤ33bの公転回転に伴い、中心軸線Jを中心として回転する。
【0024】
第2太陽ギヤ31cは、第1太陽ギヤ32cの下側(軸方向他方側)で内歯ギヤ39aの内側に配置される。第2太陽ギヤ31cは、中心軸線Jを中心とする。第2太陽ギヤ31cは、第3キャリア31の一部であるため、第3遊星ギヤ33bの公転回転に伴い、中心軸線Jを中心として回転する。
【0025】
3つの第2遊星ギヤ34bは、中心軸線Jの周方向に等間隔に配置される。3つの第2遊星ギヤ34bは、径方向において、第2太陽ギヤ31cと内歯ギヤ39aの間に配置される。3つの第2遊星ギヤ34bは、第2太陽ギヤ31cおよび内歯ギヤ39aに噛み合う。3つの第2遊星ギヤ34bは、第2太陽ギヤ31cの回転に伴い、中心軸線Jの周方向に公転回転する。第2遊星ギヤ34bの中央には、上側に開口する保持孔34baが設けられる。
【0026】
第2キャリア32は、第2円盤部(円盤部)32bと、3本の第2サブシャフト32aと、第1太陽ギヤ32cと、を有する。第2円盤部32bは、中心軸線Jを中心として径方向に延びる。第2円盤部32bは、第1遊星ギヤ35bの下側かつ第2遊星ギヤ34bの上側に位置する。第2円盤部32bは、第1太陽ギヤ32cに連結される。第2円盤部32bは、中心軸線Jと直交する板状である。第2円盤部32bは、第2太陽ギヤ31cおよび第2遊星ギヤ34bの上側に位置する。3本の第2サブシャフト32aは、第2円盤部32bから下側に延びる。第1太陽ギヤ32cは、中心軸線Jを中心として第2円盤部32bから上側に延びる。
【0027】
第2サブシャフト32aは、第2遊星ギヤ34bの保持孔34baに挿入される。3本の第2サブシャフト32aは、それぞれ第2遊星ギヤ34bを回転可能に支持する。すなわち、第2キャリア32は、複数の第2遊星ギヤ34bを中心軸線J周りに公転回転可能に支持する。すなわち、第2キャリア32は、複数の第2遊星ギヤ34bを上側(軸方向一方側)から回転可能に支持する。第2キャリア32は、3つの第2遊星ギヤ34bの公転回転に伴い、中心軸線Jを中心として回転する。
【0028】
第1太陽ギヤ32cは、内歯ギヤ39aの内側に配置される。第1太陽ギヤ32cは、中心軸線Jを中心とする。第1太陽ギヤ32cは、第2キャリア32の一部であるため、第2遊星ギヤ34bの公転回転に伴い、中心軸線Jを中心として回転する。
【0029】
3つの第1遊星ギヤ35bは、中心軸線Jの周方向に等間隔に配置される。3つの第1遊星ギヤ35bは、径方向において、第1太陽ギヤ32cと内歯ギヤ39aの間に配置される。3つの第1遊星ギヤ35bは、第1太陽ギヤ32cおよび内歯ギヤ39aに噛み合う。3つの第1遊星ギヤ35bは、第1太陽ギヤ32cの回転に伴い、中心軸線Jの周方向に公転回転する。第1遊星ギヤ35bの中央には、上側に開口する保持孔35baが設けられる。
【0030】
第1キャリア36は、第1円盤部36bと、3本の第1サブシャフト(サブシャフト)36aと、出力部36dと、を有する。第1円盤部36bは、中心軸線Jを中心として径方向に延びる。第1円盤部36bは、中心軸線Jと直交する板状である。第1円盤部36bは、第1太陽ギヤ32cおよび第1遊星ギヤ35bの上側に位置する。3本の第1サブシャフト36aは、第1円盤部36bから下側に延びる。出力部36dは、中心軸線Jを中心として第1円盤部36bから上側に延びる。
【0031】
第1サブシャフト36aは、第1遊星ギヤ35bの保持孔35baに挿入される。3本の第1サブシャフト36aは、それぞれ第1遊星ギヤ35bを回転可能に支持する。すなわち、第1キャリア36は、複数の第1遊星ギヤ35bを上側(軸方向一方側)から回転可能に支持する。第1キャリア36は、3つの第1遊星ギヤ35bの公転回転に伴い、中心軸線Jを中心として回転する。
【0032】
出力部36dは、第1キャリア36の一部であるため、第1遊星ギヤ35bの公転回転に伴い、中心軸線Jを中心として回転する。出力部36dは、中心軸線Jを中心とする柱状である。出力部36dは、ギヤハウジング39の軸受部39dに回転可能に支持される。出力部36dの上端部は、ギヤハウジング39の上端部から上側に突出する。出力部36dの上端部には、ギヤドモータ1の動力を他の機構に伝達するピニオンギヤ(図示略)などが固定される。
【0033】
第1キャリア36には、中心軸線Jに沿って延びる貫通孔36eが設けられる。貫通孔36eは、出力部36dの上端面、および第1円盤部36bの下端面で開口する。貫通孔36eは、中心軸線Jを中心とする円形である。貫通孔36eには、挿通シャフト50が挿入される。挿通シャフト50の上端部は、貫通孔36eの上端面から突出する。挿通シャフト50の上端部は、軸受部(図示略)によって回転可能に支持される。挿通シャフト50は、出力部36dの中心軸線J周りの回転をガイドする。
【0034】
図3は、図1の部分拡大図である。
図3に示すように、第1遊星ギヤ35bの上端面および下端面は、それぞれ平坦面である。第1遊星ギヤ35bは、第1円盤部36bと第2円盤部32bとの間に配置される。第1円盤部36bは、第1遊星ギヤ35bと軸方向に対向する第1対向面36baを有する。第1対向面36baは、下側を向く面である。第2円盤部32bは、第1遊星ギヤ35bと軸方向に対向する第2対向面32baを有する。第2対向面32baは、上側を向く面である。
【0035】
図4は、第1キャリア36の斜視図である。
図4に示すように、第1対向面36baからは、第1サブシャフト36aが下側(軸方向他方側)に延び出る。第1対向面36baにおいて、第1サブシャフト36aの周囲には、凹部37が設けられる。すなわち、第1対向面36baには、複数(本実施形態では3つ)の凹部37が設けられる。
【0036】
凹部37は、軸方向から見て第1サブシャフト36aを中心とする円形状である。凹部37の直径は、第1サブシャフト36aの直径より大きい。したがって、凹部37は、軸方向から見て、第1サブシャフト36aに装着される第1遊星ギヤ35bを包含する。
【0037】
本実施形態によれば、凹部37は、軸方向から見て第1遊星ギヤ35bの歯面の通過軌跡に重なる。これにより、減速装置3の軸方向寸法が肥大化することを抑制しつつ、第1遊星ギヤ35bの歯幅(歯面の軸方向に沿う寸法)を大きく確保することが可能となる。結果的に、第1遊星ギヤ35bの歯面に生じる面圧を抑制して第1遊星ギヤ35bの強度を高めることができる。
【0038】
凹部37は、下側(軸方向他方側)を向く底面37aを有する。底面37aは、中心軸線Jの径方向に沿って滑らかに湾曲する。ここで、底面37aに、3つの第1サブシャフト36aを通過するピッチ円CVを想定する。ピッチ円CVは、3つの第1サブシャフト36aの中心J2を通過する。ピッチ円CVは、中心軸線Jを中心とする仮想的な円である。底面37aは、ピッチ円CVをピークPとしてピッチ円CVから中心軸線Jの径方向内側および外側に向かうに従い上側(軸方向一方側)に傾斜する。
【0039】
第1遊星ギヤ35bの上面は、第1キャリア36の凹部37の底面37aに接触し得る。本実施形態によれば、底面37aに傾斜が設けられることで、第1遊星ギヤ35bの上端面は、底面37aの傾斜のピークPにおいてのみ底面37aに接触する。
【0040】
軸方向から見て、第1遊星ギヤ35bの一部は、第1円盤部36bの外縁から径方向外側に突出する。また、軸方向から見て、第1遊星ギヤ35bの一部は、貫通孔36eと重なる。このため、底面37aが平面である場合、第1遊星ギヤ35bの回転時に、第1遊星ギヤ35bの歯面が、第1円盤部36bの外縁、又は内縁に引っ掛かる虞がある。
【0041】
本実施形態によれば、底面37aがピッチ円CVより径方向外側および内側で上側に向かうに従い第1遊星ギヤ35bから離間する方向へ傾斜する。このため、第1円盤部36bの外縁および内縁と第1遊星ギヤ35bとの間に上下方向の隙間が設けられ、第1遊星ギヤ35bの歯面が、第1円盤部36bの外縁および内縁に引っ掛かることを抑制できる。これにより、第1遊星ギヤ35bの円滑な回転を実現でき、第1遊星ギヤ35bの回転効率を高めることができる。
【0042】
本実施形態によれば、底面37aは、ピッチ円CVをピークPとして、径方向に沿って滑らかに湾曲する。このため、第1遊星ギヤ35bの上端面と底面37aとの接触が、線接触となり、接触面積が抑えられることによって摺動抵抗を低減できる。また、底面37aが滑らかに湾曲するため、第1遊星ギヤ35bの上端面と底面37aと摺動が円滑となり第1遊星ギヤ35bの回転効率を高めることができる。
【0043】
本実施形態によれば、底面37aは、周方向に沿って湾曲する滑らかな凸状である。第1円盤部36の厚さは、ピッチ円CVにおいて最も大きくなり、中心軸線J1の径方向内側および外側に向かうに従い小さくなる。すなわち、第1キャリア36は、第1サブシャフト36aが並ぶピッチ円CV上において剛性が高められている。本実施形態によれば、減速装置3の軸方向の寸法の小型化を実現しつつ、各部材の十分な強度を確保できる。
【0044】
図3に示すように、第2円盤部32bの第2対向面32baは、上下方向において第1遊星ギヤ35bの下端面と対向する。第2対向面32baの外縁には、中心軸線Jから離れるに従い下側(軸方向他方側)に傾斜するテーパ部32bbが設けられる。
【0045】
軸方向から見て、第1遊星ギヤ35bの一部は、第2円盤部32bの外縁から径方向外側に突出する。本実施形態によれば、第2対向面32baの外縁は、径方向外側に向かうに従い第1遊星ギヤ35bから離間する方向へ傾斜する。このため、第2円盤部32bの外縁と第1遊星ギヤ35bとの間に上下方向の隙間が設けられ、第1遊星ギヤ35bの歯面が、第2円盤部32bの外縁に引っ掛かることを抑制できる。これにより、第1遊星ギヤ35bの円滑な回転を実現でき、第1遊星ギヤ35bの回転効率を高めることができる。
【0046】
第2遊星ギヤ34bは、第2円盤部32bと第3円盤部31bとの間に配置される。第2円盤部32bは、第2遊星ギヤ34bと軸方向に対向する第3対向面32bcを有する。第3対向面32bcは、下側を向く面である。第3円盤部31bは、第2遊星ギヤ34bと軸方向に対向する第4対向面31baを有する。第4対向面31baは、上側を向く面である。
【0047】
第2遊星ギヤ34bの上端面および下端面には、凸条部34bpが設けられる。凸条部34bpは、第2遊星ギヤ34bの中心に対し円環状に延びる。第2遊星ギヤ34bの上端面の凸条部34bpは、上側に突出する。一方で、第2遊星ギヤ34bの下端面の凸条部34bpは、下側に突出する。
【0048】
本実施形態によれば、第2遊星ギヤ34bは、第3対向面32bcおよび第4対向面31baに、凸条部34bpにおいて接触する。このため、第2遊星ギヤ34bの歯面が、第3対向面32bcおよび第4対向面31baに接触することを抑制でき、第2遊星ギヤ34bの回転効率を高めることができる。また、第2遊星ギヤ34bの歯面の接触に伴う摺動音の発生を抑制できる。
【0049】
第3遊星ギヤ33bは、第3円盤部31bとモータ本体2との間に配置される。第3円盤部31bは、第3遊星ギヤ33bと軸方向に対向する第5対向面31bbを有する。第5対向面31bbは、下側を向く面である。モータ本体2は、第3遊星ギヤ33bと軸方向に対向する第6対向面2aを有する。第6対向面2aは、上側を向く面である。
【0050】
第3遊星ギヤ33bの上端面および下端面には、凸条部33bpが設けられる。凸条部33bpは、第3遊星ギヤ33bの中心に対し円環状に延びる。第3遊星ギヤ33bの上端面の凸条部33bpは、上側に突出する。一方で、第3遊星ギヤ33bの下端面の凸条部33bpは、下側に突出する。
【0051】
本実施形態によれば、第3遊星ギヤ33bは、第5対向面31bbおよび第6対向面2aに、凸条部33bpにおいて接触する。このため、第3遊星ギヤ33bの歯面が、第5対向面31bbおよび第6対向面2aに接触することを抑制でき、第3遊星ギヤ33bの回転効率を高めることができる。また、第3遊星ギヤ33bの歯面の接触に伴う摺動音の発生を抑制できる。
【0052】
本実施形態において、第2遊星ギヤ34bおよび第3遊星ギヤ33bの上端面および下端面には、凸条部34bp、33bpが設けられる。一方で、第1遊星ギヤ35bの上端面および下端面は、凸条部が設けられない平坦面である。また、第1遊星ギヤ35b、第2遊星ギヤ34bおよび第3遊星ギヤ33bの軸方向の全長は、略等しい。このため、第2遊星ギヤ34bの歯幅D2および第3遊星ギヤ33bの歯幅D3は、凸条部34bp、33bpの高さ分だけ第1遊星ギヤ35bの歯幅D1より小さい。
【0053】
モータ本体2の動力は、第3遊星歯車機構30C、第2遊星歯車機構30Bおよび第1遊星歯車機構30Aの順で減速される。このため、第1遊星ギヤ35bの歯面に付与される面圧は、第2遊星ギヤ34bおよび第3遊星ギヤ33bの歯面に付与される面圧より大きくなる。本実施形態によれば、第1遊星ギヤ35bの歯幅D1を、第2遊星ギヤ34bおよび第3遊星ギヤ33bの歯幅D2、D3より大きくすることで、第1遊星ギヤ35bの損傷を抑制することができる。
【0054】
一方で、第2遊星ギヤ34bおよび第3遊星ギヤ33bの回転速度は、第1遊星ギヤ35bの回転速度より早い。このため、第2遊星ギヤ34bおよび第3遊星ギヤ33bの回転に起因する摺動音は、第1遊星ギヤ35bの回転に起因する摺動音より大きくなる。本実施形態によれば、第2遊星ギヤ34bおよび第3遊星ギヤ33bの上端面および下端面にそれぞれ凸条部34bp、33bpを設けることで、減速装置3が発する摺動音を抑制できる。
【0055】
(変形例)
図5は、上述の実施形態に採用可能な変形例の第1キャリア136の斜視図である。
本変形例の第1キャリア136は、上述の実施形態と比較して凹部137の底面137aの構成が異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
本変形例の第1キャリア136は、上述の実施形態と同様に、第1円盤部136bと、3本の第1サブシャフト36aと、出力部36dと、を有する。第1サブシャフト36aは、第1遊星ギヤ35bを回転可能に支持する。第1円盤部136bには、下側を向く第1対向面136baを有する。第1対向面136baは、第1遊星ギヤ35bと軸方向に対向する。第1サブシャフト36aは、第1対向面136baから下側に延び出る。第1対向面136baには、軸方向から見て第1遊星ギヤ35bの歯面の通過軌跡に重なる凹部137が設けられる。凹部137は、下側(軸方向他方側)を向く底面137aを有する。底面137aは、軸方向から見て第1サブシャフト36aを中心とする円形である。
【0057】
本変形例において、底面137aは、第1サブシャフト36aから離れるに従い上側に傾斜する。すなわち、底面137aは、第1サブシャフト36aの中心J2を中心とするテーパ状である。本変形例によれば、底面137aは、第1サブシャフト36aの基端近傍において第1遊星ギヤ35bに接触する。したがって、底面137aと第1遊星ギヤ35bの歯面との間に上下方向の隙間が設けられ、第1遊星ギヤ35bの歯面が、第1円盤部136bの外縁および内縁に引っ掛かることを抑制できる。これにより、第1遊星ギヤ35bの円滑な回転を実現でき、第1遊星ギヤ35bの回転効率を高めることができる。
【0058】
本変形例によれば、第1円盤部136bは、第1サブシャフト36aに近づくに従い厚い。このため、第1サブシャフト36aの基端部において、第1円盤部136bの剛性を高めることができる。
【0059】
なお、本変形例の底面137aは、一定の傾斜角を有する円錐面形状であっても、傾斜角が変化し滑らかに湾曲するドーム形状であってもよい。
【0060】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0061】
例えば、上述の実施形態では、第1、第2および第3遊星歯車機構30A、30B、30Cにおいて、内歯ギヤが固定され、太陽ギヤから入力された動力をキャリアから出力する場合について説明した。しかしながら、減速装置に採用される遊星歯車機構は、内歯ギヤ、太陽ギヤおよびキャリアが相対的に回転するもの出れば、何れから入力し何れから出力するものであってよい。例えば、キャリアを固定し、太陽ギヤから入力された動力を内歯ギヤから出力してもよい。また、出力する部分を切り替えて減速比を変化させる変速機構を有するものであってもよい。
【0062】
また、本実施形態において、モータ本体20A、20Bは、ステッピングモータである。しかしながら、モータ本体として、他の構成のモータを採用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…ギヤドモータ、2…モータ本体、3…減速装置、31…第3キャリア、31c…第2太陽ギヤ、32…第2キャリア、32b…第2円盤部(円盤部)、32ba…第2対向面、32bb…テーパ部、32c…第1太陽ギヤ、33a…第3太陽ギヤ、33b…第3遊星ギヤ、33bp,34bp…凸条部、34b…第2遊星ギヤ、35b…第1遊星ギヤ、36,136…第1キャリア、36a…第1サブシャフト(サブシャフト)、36ba,136ba…第1対向面、37,137…凹部、39a…内歯ギヤ、D1,D2,D3…歯幅、J…中心軸線、J2…中心、P…ピーク、CV…ピッチ円
図1
図2
図3
図4
図5