(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034432
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】易溶性ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 25/22 20060101AFI20220224BHJP
C07C 17/12 20060101ALI20220224BHJP
C07C 49/788 20060101ALI20220224BHJP
C07C 15/20 20060101ALI20220224BHJP
C07C 15/56 20060101ALI20220224BHJP
C07C 47/546 20060101ALI20220224BHJP
C07C 69/76 20060101ALI20220224BHJP
C07C 39/12 20060101ALI20220224BHJP
C07C 321/28 20060101ALI20220224BHJP
C07C 309/66 20060101ALI20220224BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20220224BHJP
C07D 295/135 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C07C25/22
C07C17/12
C07C49/788
C07C15/20
C07C15/56
C07C47/546
C07C69/76 A
C07C39/12
C07C321/28
C07C309/66
C07F7/08 C CSP
C07F7/08 Q
C07D295/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138215
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 哲郎
【テーマコード(参考)】
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC30
4H006BB12
4H006BC10
4H006BC19
4H006BE53
4H006BJ50
4H006EA23
4H006FC54
4H006FE13
4H006KC30
4H006TB71
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ02
4H049VQ08
4H049VQ13
4H049VQ49
4H049VR24
4H049VU36
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】有機溶媒に溶けやすく、2位と7位、または、10位と15位の対称的な2つの位置に選択的にハロゲノ基を有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を提供する。
【解決手段】下記化学式
〔化1〕
(式中、R
1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカノイル基、アルケノイル基、アルキノイル基であり、R
2はハロゲノ基である。)
で表されるジベンゾ[g,p]クリセン誘導体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式
【化1】
(式中、R
1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカノイル基、アルケノイル基、アルキノイル基であり、R
2はハロゲノ基である。)
で表されるジベンゾ[g,p]クリセン誘導体。
【請求項2】
R1がアルキル基であり、R2がブロモ基である、請求項1に記載のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体。
【請求項3】
(1)ジベンゾ[g,p]クリセンとアルカノイルハライドをルイス酸の存在下で反応させ、10,15-ジアルカノイルジベンゾクリセンを合成する工程、
(2)10,15-ジアルカノイルジベンゾクリセンを還元し、10,15-ジアルキルジベンゾクリセンを合成する工程、および、
(3)10,15-ジアルキルジベンゾクリセンをハロゲン化する工程
を含む2,7-ジハロゲノ-10,15-ジアルキルジベンゾクリセンの製造方法。
【請求項4】
工程(1)で使用するジベンゾ[g,p]クリセンが、芳香環上に置換基を有していない請求項3に記載の2,7-ジハロゲノ-10,15-ジアルキルジベンゾクリセンの製造方法。
【請求項5】
下記化学式:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
、または、
【化17】
で表されるジベンゾ[g,p]クリセン誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジベンゾ[g,p]クリセンは、機能性材料として有望な材料である。ジベンゾ[g,p]クリセン構造の最大の特徴は、非平面性の高いパイ共役系構造にあり、多くの興味がもたれてきた。ここで、非平面性とは、芳香環がらせん状にねじれていることを意味し、らせん構造が薄膜トランジスターの正孔輸送物質や有機発光ダイオードの発光素子として期待されている。特に光量子物性(量子収率・励起寿命)、電子的特性、耐熱性において潜在的価値が高く、高分子材料へ組み込むことが試みられている。
【0003】
しかしながら、ジベンゾ[g,p]クリセンは、反応性置換基を有しておらず、機能性材料として使用するためには反応性置換基を導入する必要がある。たとえば、ハロゲン、窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を導入し、該ヘテロ原子を他の置換基に変換後、末端に三員環エーテル、メタクリレート基、末端アルケン等の重合可能な置換基を導入して、重合させたり高分子の側鎖や末端に反応させたりして機能性材料を作製する必要がある。特に、ジベンゾ[g,p]クリセンの2位と7位、または、10位と15位の対称的な2つの位置に選択的にハロゲノ基、特にブロモ基を導入すると、様々な置換基に変換しやすいため、機能性材料の中間体として有用な化合物となることが期待できる。しかしながら、多環式芳香族炭化水素は有機溶媒に溶けにくいという問題がある。
【0004】
非特許文献1には、ジベンゾ[g,p]クリセンの2位と10位に水酸基を、6位と14位にn-ヘキシル基を有し、有機溶媒に対する溶解性が改善された化合物が開示されているが、7位と15位に置換基を有する化合物でも、2つのブロモ基を有する化合物は開示されていない。また、非特許文献2には、ジベンゾ[g,p]クリセンの7位と10位にブロモ基を、2位と15位にt-ブチル基を、それぞれ有する化合物が開示されているが、2位と7位、または、10位と15位の両方にブロモ基を有する化合物は開示されていない。また、これらの非特許文献に記載の方法では、2位と7位、または、10位と15位の対称的な2つの位置に選択的にハロゲノ基を有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を合成することはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.2019,58,7385-7389
【非特許文献2】Thin Solid Films,2017,636,8-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機溶媒に溶けやすく、2位と7位、または、10位と15位の対称的な2つの位置に選択的にハロゲノ基を有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、2,7-ジハロゲノ-10,15-ジアルキルジベンゾクリセンの合成方法を見出し、該化合物が有機溶媒に溶けやすいことを確認し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
下記化学式
【化1】
(式中、R
1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカノイル基、アルケノイル基、アルキノイル基であり、R
2はハロゲノ基である。)
で表されるジベンゾ[g,p]クリセン誘導体に関する。
【0009】
上記式において、R1がアルキル基であり、R2がブロモ基であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、
(1)ジベンゾ[g,p]クリセンとアルカノイルハライドをルイス酸の存在下で反応させ、10,15-ジアルカノイルジベンゾクリセンを合成する工程、
(2)10,15-ジアルカノイルジベンゾクリセンを還元し、10,15-ジアルキルジベンゾクリセンを合成する工程、および、
(3)10,15-ジアルキルジベンゾクリセンをハロゲン化する工程
を含む2,7-ジハロゲノ-10,15-ジアルキルジベンゾクリセンの製造方法に関する。
【0011】
工程(1)で使用するジベンゾ[g,p]クリセンが、芳香環上に置換基を有していないことが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、
下記化学式:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
、または、
【化17】
で表されるジベンゾ[g,p]クリセン誘導体に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体は、有機溶媒に対する溶解性が高く、特定の位置にハロゲノ基を有するので、多彩かつ多様な官能基の導入が可能となり、クロスカップリング反応やリチウム-ハロゲン交換反応による精密な置換反応を行うことで、新化合物を生み出すことが可能となる。たとえば、該誘導体から、二つのアルキル基、二つのトリフラート基、二つのクロロ基を、それぞれの位置を定めて導入した6置換型のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を合成でき、トリフラート基とクロロ基は様々な官能基に変換することができ、クロスカップリング反応やリチウム-ハロゲン交換反応による精密な置換反応を行うことで、様々な新化合物を生み出すことが可能となる。このように、本発明のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体、および、その製造方法は、ジベンゾ[g,p]クリセンを基軸とした新しい機能性材料を生み出すきっかけとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)化合物12のORTEP図において、4つの炭素原子(C017、C02Q、C03W、C03D)によって決定されるねじれ角度を示す図である。(b)化合物12のORTEP図の上面図である。(c)ねじれ角度47.13°で記載したブチル基側フィヨルド領域からの側面図(CF
3基は省略)である。(d)ベイエリア領域からの側面図(Tfおよびブチル基のC
3H
7部位は省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の本発明のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体は、
下記化学式
【化18】
(式中、R
1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカノイル基、アルケノイル基、アルキノイル基であり、R
2はハロゲノ基である。)
で表される。
【0016】
ここで、ジベンゾ[g,p]クリセンは、下記化学式
【化19】
で表される化合物である。各炭素の置換位置を図中に示す。
【0017】
R1におけるアルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は1~12が好ましく、3~8がより好ましい。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、n-ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル等が挙げられ、n-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、n-ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルが好ましい。アルケニル基は、前記アルキル基の内部または末端に二重結合を有する基であり、アルキニル基は、前記アルキル基の内部または末端に三重結合を有する基である。
【0018】
R1におけるアルカノイル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状又は分枝状のアルカノイル基が挙げられる。アルカノイル基の炭素数は1~12が好ましく、3~8がより好ましい。例えば、メタノイル、エタノイル、プロパノイル、n-ブタノイル、2―メチルプロパノイル、n-ペンタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、n-ヘキサノイル、n-ヘプタノイル、n-オクタノイル、n-ノナノイル、n-デカノイル、n-ウンデカノイル、n-ドデカノイル等が挙げられ、プロパノイル、n-ブタノイル、2―メチルプロパノイル、n-ペンタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、n-ヘキサノイル、n-ヘプタノイル、n-オクタノイルが好ましい。アルケノイル基は、前記アルカノイル基の内部または末端に二重結合を有する基であり、アルキノイル基は、前記アルカノイル基の内部または末端に三重結合を有する基である。
【0019】
R2におけるハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、ブロモ基が好ましい。
【0020】
上記誘導体の中でも、R1がアルキル基であり、R2がブロモ基である化合物が好ましい。
【0021】
本発明の2,7-ジハロゲノ-10,15-ジアルキルジベンゾクリセンの製造方法は、
(1)ジベンゾ[g,p]クリセンとアルカノイルハライドをルイス酸の存在下で反応させ、10,15-ジアルカノイルジベンゾクリセンを合成する工程、
(2)10,15-ジアルカノイルジベンゾクリセンを還元し、10,15-ジアルキルジベンゾクリセンを合成する工程、および、
(3)10,15-ジアルキルジベンゾクリセンをハロゲン化する工程
を含む。
【0022】
工程(1)
工程(1)で使用するジベンゾ[g,p]クリセンとしては、芳香環上に置換基を有していない化合物や、置換基を有する化合物を使用することができるが、立体障害が最も小さいという点で、芳香環上に置換基を有していない化合物が好ましい。置換基としては特に限定されないが、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルスルフィド基、水酸基などが挙げられる。なかでもアルコキシ基が好ましく、アルコキシ基の中でも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。置換基の置換位置は特に限定されないが、アルキル基、アルカノイル基、ハロゲノ基が導入される2、7、10、15位以外の置換位置が挙げられる。
【0023】
アルカノイルハライドとしては、前述のアルカノイル基に対応する塩化アルカノイルを使用することができ、例えば、プロパノイルクロライド、塩化ブチリルなどが挙げられる。アルカノイルハライドの使用量は、ジベンゾ[g,p]クリセンに対して2~4当量が好ましく、4当量がより好ましい。2当量未満では、アルカノイル基が一つ入った化合物と二つ入った化合物の混合物となり、4当量を超えると、アルカノイル基がジベンゾ[g,p]クリセンに二つ以上置換されることは無く、過剰の塩化アルカノイルが無駄となる傾向がある。
【0024】
ルイス酸としては、たとえば塩化アルミニウムなどが挙げられる。ルイス酸の使用量は、ジベンゾ[g,p]クリセンに対して2~4当量が好ましく、4当量がより好ましい。2当量未満では、アルカノイル基が一つ入った化合物と二つ入った化合物の混合物となり、4当量を超えると、アルカノイル基がジベンゾ[g,p]クリセンに二つ以上置換されることは無く、過剰の塩化アルカノイルが無駄となる傾向がある。
【0025】
上記の条件でアシル化反応を行うことにより、10位と15位(または2位と7位)に位置選択的にアルカノイル基を導入することができる。
【0026】
工程(2)
10,15-ジアルカノイルジベンゾクリセンを還元する方法は特に限定されず、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム等の金属水素化物を用いる還元反応などが挙げられる。反応条件も適宜選択することができる。例えば、水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、塩化アルミニウムを併用して公知の方法で還元すればよい。
【0027】
工程(3)
10,15-ジアルキルジベンゾクリセンをハロゲン化する方法は特に限定されず、例えば、10,15-ジアルキルジベンゾクリセンを臭素と接触させて臭素化する方法、塩素と接触させて塩素化する方法、ヨウ素と接触させてヨウ素化する方法などが挙げられる。反応条件も適宜選択することができる。
【0028】
工程(3)により、式
【化20】
(式中、R
1ははアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカノイル基、アルケノイル基、アルキノイル基であり、R
2はハロゲノ基である。)
で表される2,7-ジハロゲノ-10,15-ジアルキルジベンゾクリセンを得る。
【0029】
2,7-ジハロゲノ-10,15-ジアルキルジベンゾクリセンは、有機溶媒への溶解性に優れるため、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を製造する原料として好適である。2つのブロモ基を同一の置換基に変換して対称性を有する誘導体とすることも、異なる置換基に変換して非対称の誘導体とすることも可能である。
【0030】
第2の本発明のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体は、下記化学式:
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
、または、
【化36】
で表されることを特徴とする。
【0031】
化合物2は、本発明の2,7-ジハロゲノ-10,15-ジアルキルジベンゾクリセンの製造方法の工程(1)において、アルカノイルハライドとして塩化ブチリルを使用することにより得ることができる。化合物3は、上記製造方法の工程(2)において化合物2を還元することにより得ることができる。化合物1は、上記製造方法の工程(3)において化合物3を臭素化することにより得ることができる。化合物4は、例えばパラジウム触媒を用いて化合物1とアセチレンをクロスカップリング反応させることにより得ることができる。化合物5は、例えばパラジウム触媒を用いて化合物1とピロリジンをクロスカップリング反応させることにより得ることができる。化合物6は、化合物1のブロモ基を例えばn-ブチルリチウムを用いてリチオ化した後、例えばジメチルホルムアミドと反応させることにより得ることができる。化合物7は、化合物1のブロモ基をリチオ化し、次いで例えば二酸化炭素を求電子剤として反応させてジカルボン酸とした後、例えばヨードメタンと反応させることにより得ることができる。化合物8は、化合物1のブロモ基をリチオ化し、次いで例えば塩化ジメチルシランと反応させてビスジメチルシラン体とした後、例えばメタノールと反応させてジメトキシシリル体とし、さらに例えば過酸化水素を用いてフレミング-玉尾酸化することにより得ることができる。
【0032】
化合物9bは電子供与性基と電子求引性基を有するいわゆる「プッシュ-プル型」の構造体であり、電子の流れに応答可能な色素材料となりうる。化合物9bの原料となる化合物9aは、化合物1の一方のブロモ基をリチオ化し、次いで例えば二酸化炭素を求電子剤として反応させた後、例えばヨードメタンと反応させることにより得ることができる。なお、一方のブロモ基のみリチオ化するには、n-ブチルリチウムの添加量や反応温度を適宜調節すればよい。化合物9bは、例えばパラジウム触媒を用いて化合物9aをピロリジンとクロスカップリング反応させることにより得ることができる。
【0033】
化合物10aは、化合物1の一方のブロモ基をリチオ化した後、例えば塩化トリメチルシリルと反応させることにより得ることができる。化合物10bは、化合物10aのブロモ基をリチオ化した後、例えばジメチルジスルフィドを求電子剤として反応させることにより得ることができる。化合物10cは、化合物10bと例えば一塩化ヨウ素を反応させることにより得ることができる。化合物10dは、化合物10cに対しシアン化銅を用いたローゼンムント・フォンブラウン反応を行うことにより得ることができる。
【0034】
化合物11は、化合物8と例えば一塩化ヨウ素を反応させることにより得ることができる。化合物12は、例えばトリフルオロメタンスルホン酸無水物(Tf2O)を用いて化合物11の水酸基をトリフラート化することにより得ることができる。化合物12はトリフルオロメチルスルホニル基とクロロ基を持ち合わせていることから、パラジウム触媒クロスカップリング等により、トリフルオロメチルスルホニル基とクロロ基それぞれを選択的にさまざまな置換基に変換しうることが期待できる。
【0035】
本発明のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体は、高分子材料、光機能性材料、電子材料の分野に適用される。具体的には、リソグラフィー用材料、有機EL用材料、接着剤等の樹脂用材料、スーパーエンジニアリングプラスティック用材料等が挙げられる。特に、薄膜トランジスターの正孔輸送物質や有機発光ダイオードの発光素子や、その前駆体の化合物として応用可能である。また、本発明のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体の製造方法によれば、本発明の化合物を異性体の副生成をほとんど起こすこと無く、選択的かつ簡便に作製することができる。
【実施例0036】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0037】
実施例において、禁水反応はアルゴンまたは窒素雰囲気下で行なっており、特に断りのない限り実験は禁水条件で実施した。購入した無水溶媒・試薬は、改めて精製して純度を向上させることなく使用した。薄層クロマトグラフィーとしてMerck silica 60F254を使用し、カラムクロマトグラフィーとしてシリカゲル60N(関東化学(株)製)を用いた。高分解能質量測定(HRMS)として飛行時間型質量分析法(MALDI-TOFまたはLCMS-IT-TOF)または直接質量分析法(DART-MS)のいずれかを用いた。
【0038】
1H-NMR、13C-NMRスペクトルについては、5mmのQNPプローブを用い、それぞれ400MHz、100MHzで測定した。化学シフト値はδ(ppm)で示しており、それぞれの溶媒中での基準値は1H-NMR:CHCl3(7.26),CH2Cl2(5.32)、DMSO(2.50);13C-NMR:CDCl3(77.0)、DMSO(39.5)としている。分裂のパターンは、s:単一線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線、br:幅広線で示す。
【0039】
合成例1(ジベンゾ[g,p]クリセンの合成)
【化37】
【0040】
1Lフラスコに9-フルオレノン(80g,444mmol)と亜リン酸トリエチル(153mL,888mmol)を加え、175℃で撹拌した。24時間後、反応溶液を60℃まで放冷し、水(160mL,8.88mmol)を10分かけて加え、80℃に昇温し、残っている亜リン酸トリエチルを加水分解させた。さらに12時間撹拌後、反応溶液を濾取し、メタノール(500mL)で洗浄した。得られた固体をメタノール(252mL, 6.21mol)中で1時間還流し、再度メタノール(400mL)を用いて濾取操作を行った。得られたサンプルをロータリーエバポレーターで乾燥させ(70℃、30分)、スピロケトン体を49.7g(収率65%)の黄色固体として得た。
【0041】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)8.20(dd,J=7.8,1.2Hz,1H),8.10(dd,J=7.8,1.2Hz,1H),7.99(dd,J=7.8,1.2Hz,1H),7.81-7.77(m,3H),7.45(ddd,J=7.8,7.8,1.2Hz,1H),7.41-7.35(m,3H),7.18(ddd,J=7.6,7.6,1.2Hz,1H),7.18(ddd,J=7.8,7.8,1.2Hz,1H),7.08(ddd,J=7.8,7.8,1.2Hz,1H),7.04(ddd,J=7.8,7.8,1.2Hz,2H),6.61(dd,J=7.8,1.2Hz,1H)ppm
13C-NMR(100MHz,CDCl3)197.6,147.4(two peaks are overlapped),142.0,138.4,135.2,130.9,130.4,129.6,128.9,128.7(two peaks are overlapped),128.6,128.4,128.3(two peaks are overlapped),125.1(two peaks are overlapped),124.5,123.6,120.9(two peaks are overlapped),69.0ppm
MS(DART-TOF)m/z:345[MH]+
IR(neat):3068,1686(C=O),1603,1478,1447,1256,1132,746,718cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C26H17O:345.1279,Found;345.1276
【0042】
得られたスピロケトン体はこれ以上精製することなく、次の反応に供した。500mLフラスコにスピロケトン(30g,87.1mmol)、トルエン(132mL)、メタノール(24mL)を加え、45℃に昇温した。フラスコにゆっくりと水素化ホウ素ナトリウム(1.32g,34.8mmol)を30分かけて加え(189mgずつ7回に分けて5分ごとに加える)、1時間攪拌した。アセトン(0.64mL,8.4mmol)を用いて反応を停止させ、さらに30分撹拌した。水(100mL×3)を用いて有機層を洗浄後、500mLフラスコに移し120℃に昇温し水の共沸除去を行った。そこにメタンスルホン酸(0.06mL,0.87mmol)を加え、1時間撹拌後、二度目の水の共沸除去を反応溶媒であるトルエンを利用して行い、反応溶液を室温まで降温させると結晶が析出した。その結晶がジベンゾ[g,p]クリセンであり、23.5g(収率82%)の黄色結晶として得た。この化合物の物理データは、東京化成工業株式会社の当該商品と完全に一致した。
【0043】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)8.72(dd,J=8.0,1.3Hz,4H)、8.71(dd,J=8.0,1.3Hz,4H),7.69(ddd,J=8.0,8.0,1.3Hz,4H),7.64(ddd,J=8.0,8.0,1.3Hz,4H)ppm
13C-NMR(100MHz,CDCl3)130.8,129.2,128.9,127.4,126.5(two peaks are overlapped),123.6ppm
【0044】
実施例1(2,7-ジハロゲノ-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセンの合成)
【化38】
【0045】
工程(1)
10,15-ジブタノイルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物2)
アルゴン雰囲気下、200mLの二つ口フラスコに塩化アルミニウム(8.53g,64mmol)、塩化メチレン(40mL)とノルマルブチリルクロリド(6.69mL,64mmol)を加えた。その溶液を15分撹拌した後、合成例1で合成したジベンゾ[g,p]クリセン(5.25g,16mmol)を加えた。室温で1時間撹拌後、0℃下で1M塩酸(120mL)をゆっくり加えて(10分)反応を停止させた。水層に対して塩化メチレンで抽出操作(40mL×3)を行い、合わせた有機層を水(100mL×2)と飽和食塩水(100mL×1)でそれぞれ洗浄後、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、8.11gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製(展開溶媒:トルエン/塩化メチレン=2/1)を行い7.16gの黄色固体を得た。再沈殿操作(塩化メチレン/メタノール=1/8,v/v)を行い、6.52g(87%)の黄色固体を得た後、プロピオニトリルで再結晶操作(10.7mL/g)を行い、5.74g(収率77%)の化合物2を白黄色結晶として得た。
【0046】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)9.33(d,J=1.6Hz,2H),8.80(d,J=8.6Hz,2H),8.69(d,J=7.4Hz,2H),8.67(d,J=7.4Hz,2H),8.18(dd,J=8.6,1.6Hz,2H),7.77(dd,J=7.5Hz,2H),7.69(dd,J=7.5Hz,2H),3.19(t,J=7.4Hz,4H),1.91(q,J=7.4Hz,4H),1.11(t,J=7.4Hz,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)200.4,134.9,132.2,131.6,131.5,131.3,129.5,129.4,129.0,127.9,127.53,127.52,125.8,124.3,124.1,41.1,18.3,14.3ppm
MS(DART-TOF)m/z:469[MH]+
IR(neat):2956,2928,1873,1678,1595,1189,735cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C34H29O2:469.2168[MH]+,Found:469.2168
【0047】
工程(2)
10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物3)
アルゴン雰囲気下、300mLのフラスコに、工程(1)で得た化合物2(3.75g,8mmol)、THF(80mL)、塩化アルミニウム(5.76g,43.2mmol)及び水素化ホウ素ナトリウム(2.91g,76.8mmol)を順に加えた。還流条件下12時間反応後、室温まで冷却した。さらに冷却し、0℃下で1M塩酸(100mL)を10分かけて滴下して反応を停止させた。水層に対してトルエンで抽出操作(30mL×3)を行い、合わせた有機層を水(100mL×1)と飽和食塩水(100mL×1)でそれぞれ洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、4.55gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製(展開溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=19/1)を行い、2.74g(収率78%)の化合物3を白色固体として得た。
【0048】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)8.71(d,J=8.4Hz,2H),8.69(d,J=8.4Hz,2H),8.61(d,J=8.4Hz,2H),8.49(s,2H),7.68-7.59(m,4H),7.47(dd,J=8.4,1.4Hz,2H),2.91(t,J=7.4Hz,4H),1.80(tt,J=7.4,7.4Hz,4H),1.48(tq,J=7.4,7.4Hz,4H),1.00(t,J=7.4Hz,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)144.4,131.2,130.9,129.7,129.1,129.0,128.0,127.6,127.5,126.5,126.4,123.8,123.1,36.3,34.1,22.8,14.4ppm
MS(DART-TOF)m/z:441[MH]+
IR(neat):3064,2952,2925,2854,1613,1434,828,764cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C34H33:441.2577[MH]+,Found:441.2600
【0049】
工程(3)
2,7-ジブロモ-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物1)
アルゴン雰囲気下、100mLフラスコに、工程(2)で得た化合物3(2.2g,5.0mmol)と塩化メチレン(20mL)を加えた。-20℃下で15分撹拌後、臭素(0.51mL,10.0mmol,4.2M塩化メチレン溶液)を5分かけて滴下した。室温に戻して30分撹拌後、0℃下で1Mチオ硫酸ナトリウム(20mL)を滴下して反応を停止させた。水層に対して塩化メチレンで抽出操作(20mL×3)を行い、合わせた有機層を飽和食塩水(20mL×1)で洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、2.94gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製(展開溶媒:ヘキサン/トルエン=9/1)を行い、2.84gの黄色固体を得た。再沈殿操作(塩化メチレン/メタノール=1/8,v/v)を行い、2.62gの黄白色固体を得た後、プロピオニトリルで再結晶操作(28.3mL/g)を行い、2.34g(収率78%)の化合物1を白色結晶として得た。
【0050】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)8.79(d,J=1.8Hz,2H),8.56(d,J=8.5Hz,2H),8.38(d,J=8.5,2H),8.37(s,2H),7.66(dd,J=8.5,1.8Hz,2H),7.48(dd,J=8.5,1.8Hz,1H),2.90(t,J=7.4Hz,4H),1.79(tt,J=7.4,7.4,4H),1.48(tq,J=7.4,7.4Hz,4H),1.00(t,J=7.4Hz,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)141.6,131.8,129.7,129.4,129.0,128.6,127.8,127.7,127.2,127.1,126.2,124.7,122.7,120.3,36.1,33.8,22.8,14.2ppm
MS(DART-TOF)m/z:599[MH]+
IR(neat):2952,2920,2853,1413,1085,918,863,812,562cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C34H31Br2:599.0772[MH]+,Found:599.0788
Anal.Calcd for C34H30Br2:C,68.24;H,5.05.Found:C,67.88;H,5.10
【0051】
<溶解度測定>
アルキル基がついていない無置換のジベンゾ[g,p]クリセンを1ミリモル溶解させるのに必要な塩化メチレンは100ミリリットルであった。これに対し、二つのアルキル基をもつ1ミリモルの10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセンを溶解させるのに必要な塩化メチレンは3ミリリットルであった。およそ33倍の溶解度の向上が認められた。
【0052】
実施例2
2,7-ジエチニル-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物4)
【化39】
【0053】
化合物1(240mg,0.4mmol)をトルエン(3.0mL)とトリエチルアミン(3.0mL)に溶解し、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(28mg,0.04mmol)、ヨウ化銅(15.2mg,0.08mmol)、トリフェニルホスフィン(21mg,0.08mmol)及びトリメチルシリルアセチレン(0.33mL,2.4mmol)を加えた。70℃下で14時間撹拌後、セライトとフロリジルを用いて濾過し(展開溶媒:トルエン20mL)、濾液を除媒濃縮した。得られた反応生成物をトルエン(20mL)で希釈し、100mLの分液漏斗を用いて水(20mL×3)と飽和食塩水(20mL×3)で洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、茶色の粗生成物を320mg得た。
【0054】
この粗生成物にTHF(4mL)、メタノール(4mL)及び炭酸カリウム(514mg,3.72mmol)を加え、室温下で1時間撹拌後、薄層クロマトグラフィーで出発原料の消失を確認した。得られた反応生成物をトルエンで希釈し、セライト濾過を行った。飽和塩化アンモニウム水溶液(40mL)で反応を停止させ、200mLの分液漏斗を用いて水(40mL×3)と飽和食塩水(40mL×3)で洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、茶色固体の粗生成物を216mg得た。シリカゲルを用いたカラム精製(展開溶媒:ヘキサン/トルエン=9/1)を行い、143mg(収率73%)の化合物4を橙色固体として得た。
【0055】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)8.82(d,J=1.6Hz,2H),8.55(d,J=8.4Hz,2H),8.50(d,J=8.5Hz,2H),8.43(d,J=1.4Hz,2H),7.67(dd,J=8.5,1.6Hz,2H),7.47(dd,J=8.4,1.4Hz,2H),3.26(s,2H),2.90(t,J=7.5Hz,4H),1.79(tq,J=7.5,7.5Hz,4H),1.49(tq,J=7.5,7.5Hz,4H),1.01(t,J=7.5Hz,2H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)142.2,130.54,130.52,129.7,129.6,129.4,129.2,128.7,128.1,128.0,127.5,125.6,123.2,119.8,84.6,78.2,36.3,34.1,22.9,14.4ppm
MS(DART-TOF)m/z:489
IR(neat):3284,2952,2924,2848,2097,1610,1456,1424,820,590cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C38H33:489.2582[MH]+,Found;489.2583
Anal.Calcd for C38H32:C,93.40;H,6.60.Found:C,93.39;H,6.71
【0056】
実施例3
2,7-ジ(1-ピロリジニル)-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物5)
【化40】
【0057】
シュレンク管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(73mg,0.08mmol)、2,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1-ビナフチル(149mg,0.24mmol)とナトリウムtert-ブトキシド(231mg,2.4mmol)を加えた後に、アルゴンガスを充填した。トルエン(16mL)を加え、15分間撹拌した。その後、化合物1(479mg,0.8mmol)を加えてさらに1分間撹拌し、ピロリジン(0.26mL,3.2mmol)を加えた。90℃までゆっくり昇温し、14時間撹拌後に降温して反応を停止させ、セライトとフロリジルを用いて濾過した。得られた粗生成物を、シリカゲルを用いた濾過カラムで精製し(展開溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=4/1)、382mg(収率83%)の化合物5を橙色がかった黄色固体として得た。
【0058】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)9.39(d,J=1.6Hz,1H),8.68(d,J=8.6Hz,1H),8.58(dd,J=8.4,8.4Hz,2H),8.55(d,J=1.1Hz,1H),8.45(d,J=9.0Hz,1H),8.37(d,J=1.1Hz,1H),8.17(dd,J=8.6,1.6Hz,1H),7.62(d,J=2.3Hz,1H),7.45(dd,J=8.4,1.1Hz,2H),6.99(dd,J=9.0,2.3Hz,1H),4.06(s,3H),3.57(t,J=6.5Hz,4H),2.93-2.89(m,4H),2.14(t,J=6.5Hz,4H),1.83-1.74(m,4H),1.02-0.98(m,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)167.8,146.7,141.5,140.9,132.8,132.6,131.4,130.4,130.2,130.1,129.32,123.28,128.8,128.2,128.0,127.8,127.4,127.0,126.9,126.3,126.2,126.0,123.4,123.2,120.1,113.5,103.7,52.5,48.1,36.4,36.3,34.3,34.2,25.8,22.91,22.90,14.37,14.36ppm
MS(DARTTOF)m/z:579[MH]+
IR(neat):2949,2925,2853,1718,1606,1367,1236,1113,806,763cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C42H47N2:579.3739[MH]+,Found:579.3721
Anal.Calcd for C42H46N2:C,87.15;H,8.01;N,4.84.Found:C,87.13;H,8.16;N,4.79
【0059】
実施例4
2,7-ジホルミル-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物6)
【化41】
【0060】
アルゴン雰囲気下、化合物1(240mg,0.4mmol)の無水テトラヒドロフラン(2mL)溶液にノルマルブチルリチウム(0.6mL,0.96mmol,1.59Mヘキサン溶液)を-78℃下で3分間かけて滴下した。-78℃で30分間撹拌後、N,N-ジメチルホルムアミド(0.6mL,8mmol)を加えた。0℃まで昇温して10分間撹拌後に1M塩酸で反応を停止させた。水層に対してトルエンで抽出操作(20mL×3)を行い、飽和食塩水で洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、淡黄色固体の粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製操作(展開溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=1/4)を行い168mg(収率84%)の化合物6を淡黄色固体として得た。
【0061】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)10.18(s,2H),8.97(d,J=1.5Hz,2H),8.36(d,J=1.5Hz,2H),8.32(d,J=8.5Hz,2H),8.28(d,J=8.5Hz,2H),7.84(dd,J=8.5,1.5Hz,2H),7.35(dd,J=8.5,1.5Hz,2H),2.84(t,J=7.4Hz,4H),1.76(t,J=7.4,7.4Hz,4H),1.48(tq,J=7.4,7.4Hz,4H),1.02(t,J=7.4Hz,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)192.2,143.2,133.8,133.2,132.5,131.2,130.5,129.4,129.1,128.4,127.2,126.8,125.9,124.9,123.1,36.3,34.0,22.9,14.3ppm
MS(DART-TOFMS)m/z:497[MH]+
IR(neat):2952,2924,2853,2718,1689,1595,1191,823cm-1
HRMS(DART-TOFMS)calcd for C36H33O2:497.2475[MH]+,Found:497.2468
【0062】
実施例5
2,7-ジ(メトキシカルボニル)-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物7)
【化42】
【0063】
アルゴン雰囲気下、化合物1(120mg,0.2mmol)の無水テトラヒドロフラン(4mL)溶液にノルマルブチルリチウム(0.30mL,1.59Mのヘキサン溶液)を-78℃下で3分間かけて滴下した。30分間撹拌後、二酸化炭素を5分間、開放系を保って(安全を確保して)、吹き込んだ。室温まで昇温した後、1時間撹拌後、1M塩酸(10mL)で反応を停止させた。得られたサンプルをトルエンで希釈し、水層に対してトルエンで抽出操作(10mL×3)を行った。集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、芒硝及び真空乾燥して、粗生成物を得た。
【0064】
次に、アルゴン雰囲気下、得られた粗生成物(91mg,0.17mmol)のDMF(2.2mL)溶液に炭酸リチウム(126mg,1.7mmol)を室温下で加えた。5分間撹拌後、ヨウ化メチル(0.11mL,1.7mmol)を1分間かけて滴下した。室温で20時間撹拌後、1M塩酸(10mL)で反応停止操作を行った。得られたサンプルをトルエンで希釈し、水層に対してトルエンで抽出操作(10mL×3)を行った。集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、85mgの粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製操作(展開溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=1/1)を行い、74mg(収率78%)の化合物7を黄白色固体として得た。
【0065】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)9.41(d,J=1.5Hz,2H),8.65(d,J=8.6Hz,2H),8.60(d,J=8.5Hz,2H),8.58(d,J=1.3Hz,2H),8.22(dd,J=8.6,1.5Hz,2H),7.52(dd,J=8.5,1.3Hz,2H),4.07(s,6H),2.94(t,J=7.3Hz,4H),1.80(tt,J=7.3,7.3Hz,4H),1.49(tq,J=7.3,7.3Hz,4H),1.01(t,J=7.3Hz,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)167.5,142.6,132.3,131.3,131.2,130.2,129.3,128.6,128.1,127.5,127.2,126.7,125.9,125.0,123.2,52.6,36.3,34.1,22.9,14.3ppm
MS(DART-TOF)m/z:557
IR(neat):2949,2952,2853,1718,1606,1427,1272,1249,1105,763cm-1
HRMS(DART-TOF)calcdforC38H37O4:557.2692[MH]+,Found;557.2681
Anal.Calcd for C38H36O4:C,81.99;H,6.52.Found:C,82.30;H,6.70
【0066】
実施例6
2,7-ジヒドロキシ-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物8)
【化43】
【0067】
アルゴン雰囲気下、化合物1(1.91g,3.2mmol)の無水テトラヒドロフラン(64mL)溶液にノルマルブチルリチウム(4.8mL,1.59Mのヘキサン溶液)を-78℃下4分間かけて滴下した。30分間撹拌後、塩化ジメチルシラン(1.32mL,19.2mmol)を20秒かけて加えた。室温で1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(48mL)を用いて反応を停止させた。得られたサンプルをトルエンで希釈し、水層に対してトルエンで抽出操作(20mL×3)を行った。集めた有機層を飽和食塩水で洗浄(30mL)し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製操作(展開溶媒:ヘキサンのみ)を行い、ビスジメチルシラン体1.5g(収率78%)を白色固体として得た。
【0068】
アルゴン雰囲気下、ビスジメチルシラン体(4.30g,7.72mmol)をトルエン(72mL)とメタノール(72mL)に溶解し、10wt%パラジウム/炭素(821mg,0.77mmol)を室温下で加えた。5分間撹拌後、セライト濾過(溶媒:トルエン)し、除媒濃縮を行った。残渣であるジメトキシシラン体にテトラヒドロフラン(72mL)、メタノール(72mL)、炭酸水素カリウム(1.55g,15.4mmol)及びフッ化カリウム(897mg,15.4mmol)を加えた。30%過酸化水素水(10.5mL,92.7mmol)を室温下で5分間かけて滴下し、室温で4時間撹拌後、1M塩酸(200mL)で反応を停止させ、水層に対してトルエンで抽出操作(50mL×3)を行った。集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、4.87gの茶色固体の粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=4/1)を行い2.6g(収率72%)の化合物8を緑色固体として得た。
【0069】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)8.59(d,J=8.4Hz,2H),8.50(d,J=8.9Hz,2H),8.34(d,J=1.4Hz,2H),8.07(d,J=2.6Hz,2H),7.45(dd,J=8.4,1.4Hz,2H),7.14(dd,J=8.9,2.6Hz,2H),5.04(S,2H),2.88(t,J=7.6Hz,4H),1.78(tt,J=7.6,7.6Hz,4H),1.46(tq,J=7.6,7.6Hz,4H),0.99(t,J=7.6Hz,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)154.1,140.9,132.7,131.0,130.1,128.9,128.0,127.8,126.7,124.9,124.2,123.2,115.8,108.6,36.2,34.1,22.8,14.3ppm
MS(DART-TOF)m/z:473
IR(neat):3296,2920,2853,1614,1437,1260,1172,812cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C34H33O2:473.2481[MH]+,Found;473.2476
Anal.Calcd for C34H32O2:C,86.40;H,6.82.Found:C,86.41;H,6.64
【0070】
【0071】
a)2-ブロモ-7-メトキシカルボニル-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物9a)
アルゴン雰囲気下、化合物1(299mg,0.5mmol)の無水テトラヒドロフラン(2.5mL)溶液にノルマルブチルリチウム(0.35mL,0.55mmol,1.59Mのヘキサン溶液)を-78℃下3分間かけて滴下した。30分間撹拌後、開放系を保ちながら二酸化炭素を5分間吹き込んだ。室温まで昇温後、1時間撹拌し、0℃下1M塩酸(10mL)を用いて反応を停止させた。得られたサンプルをトルエンで希釈し、水層に対してトルエンで抽出操作(10mL×3)を行った。集めた有機層を飽和食塩水で洗浄(10mL)し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、粗生成物を得た。アルゴン雰囲気下、この粗生成物(278mg,0.49mmol)のDMF(3.5mL)溶液に炭酸リチウム(185mg,2.5mmol)を室温下で加えた。5分間撹拌後、ヨウ化メチル(0.15mL,2.5mmol)を1分間かけて滴下した。室温下13時間撹拌後、1M塩酸(10mL)を加えて反応を停止させた。得られたサンプルをトルエンで希釈し、水層に対してトルエンで抽出操作(10mL×3)を行った。集めた有機層を飽和食塩水で洗浄(20mL)し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、265mgの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製操作(展開溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=2/1)を行い、185mg(収率64%)の化合物9aを白黄色固体として得た。
【0072】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)9.40(d,J=1.6Hz,1H),8.80(d,J=1.9Hz,1H),8.60(d,J=8.5Hz,2H),8.59(s,1H),8.46(d,J=8.8Hz,1H),8.39(s,1H),8.21(dd,J=1.6,8.6Hz,1H),7.71(dd,J=1.9,8.8Hz,1H),7.50(d,J=8.5Hz,2H),4.06(s,3H),2.93(m,4H),1.84(tq,J=7.8,7.8Hz,4H),1.55(tq,J=7.8,7.8Hz,4H),1.01(m,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)149.5,129.4,129.3,121.4,121.2,120.3,119.6(three peaks overlapped),119.3,119.2,118.9,118.7,118.3,118.1,118.0,117.8,117.44,117.40(two peaks overlapped),116.8,116.7,116.3,115.6,114.1,114.0,112.1,57.6,44.5,42.8,42.7,33.83,33.79,27.0ppm
MS(DART-TOF)m/z:577[MH]+
IR(neat):2948,2924,2848,1717,1606,1424,1243,816,764cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C36H33Br2O:577.1742[MH]+,Found:577.1746
【0073】
b)2-(1-ピロリジニル)-7-メトキシカルボニル-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物9b)
乾燥させたシュレンク管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(18mg,0.02mmol)、2,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1-ビナフチル(37mg,0.06mmol)及びナトリウムtert-ブトキシド(38mg,0.4mmol)を加え、容器にアルゴンを充填した。トルエン(3mL)を加え、15分間撹拌後、化合物9a(116mg,0.2mmol)を加えてさらに1分間撹拌し、ピロリジン(0.05mL,0.6mmol)を加えた。80℃で2時間撹拌し、セライトとフロリジルを用いて濾過した。得られた粗生成物にシリカゲルを用いた濾過カラム精製(展開溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=2/1)を行い、72mg(収率63%)の化合物9bを黄色固体として得た。
【0074】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)9.39(d,J=1.6Hz,1H),8.68(d,J=8.6Hz,1H),8.58(dd,J=8.4,8.4Hz,2H),8.55(d,J=1.1Hz,1H),8.45(d,J=9.0Hz,1H),8.37(d,J=1.1Hz,1H),8.17(dd,J=8.6,1.6Hz,1H),7.62(d,J=2.3Hz,1H),7.45(dd,J=8.4,1.1Hz,2H),6.99(dd,J=9.0,2.3Hz,1H),4.06(s,3H),3.57(t,J=6.5Hz,4H),2.93-2.89(m,4H),2.14(t,J=6.5Hz,4H),1.83-1.74(m,4H),1.02-0.98(m,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)167.8,146.7,141.5,140.9,132.8,132.6,131.4,130.4,130.2,130.1,129.32,123.28,128.8,128.2,128.0,127.8,127.4,127.0,126.9,126.3,126.2,126.0,123.4,123.2,120.1,113.5,103.7,52.5,48.1,36.4,36.3,34.3,34.2,25.8,22.91,22.90,14.37,14.36ppm
MS(DART-TOF)m/z:568[MH]+
IR(neat):2949,2925,2853,1718,1606,1367,1236,1113,806,763cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C40H42NO2:568.3216[MH]+,Found:568.3224
【0075】
【0076】
a)2-ブロモ-7-トリメチルシリル-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物10a)
アルゴン雰囲気下、化合物1(718mg,1.2mmol)の無水テトラヒドロフラン(8mL)溶液にノルマルブチルリチウム(0.83mL,1.32mmol,1.59Mのヘキサン溶液)を-78℃下5分かけて滴下した。-78℃で30分間撹拌後、塩化トリメチルシリル(0.46mL,3.6mmol)を5分かけて加えた。-78℃下2時間撹拌後、0℃下でメタノールを加えて反応を停止させ、除媒濃縮を行った。得られた残渣をトルエン溶媒で希釈したものを50mL分液漏斗に移し、水(10mL)と飽和食塩水(10mL)で洗浄後、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、緑色がかった黄色の固体として粗生成物を683mg得た。シリカゲルを用いたカラム精製操作(展開溶媒:ヘキサン/トルエン=19/1)を行い、529mg(収率75%)の化合物10aを白色固体として得た。
【0077】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)8.84(s,1H),8.80(d,J=1.9Hz,1H),8.57(d,J=8.5,2H),8.54-8.50(m,3H),8.38(s,1H),7.74(dd,J=8.5,1.9Hz,1H),7.67(dd,J=8.5,1.9Hz,1H),7.49-7.46(m,2H),2.92(tt,J=7.8,7.8Hz,4H),1.82-1.77(m,4H),1.53-1.44(m,4H),1.01(t,J=7.8Hz,6H),0.46(s,9H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)142.2,142.1,138.9,132.8,131.7,131.5,130.9,130.24,130.23,129.9,129.8,129.5,129.4,129.3,128.7,128.6,128.5,128.13,128.08,127.9,127.8,126.8,126.3,123.41,123.35,120.9,36.61,36.55,34.44,34.41,23.1(two peaks are overlapped),14.6(two peaks are overlapped),-0.34ppm
MS(DART-TOFMS)m/z:590
IR(neat):2955,2924,2848,1243,835,816,752cm-1;
HRMS(DART-TOFMS)calcd for C37H40BrSi:590.2004[MH]+,Found:590.2010
Anal.Calcd for C37H39BrSi:C,75.11;H,6.64.Found:C,75.11;H,6.53
【0078】
b)2-メチルチオ-7-トリメチルシリル-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物10b)
アルゴン雰囲気下、化合物10a(592mg,1.0mmol)の無水テトラヒドロフラン(5mL)溶液にノルマルブチルリチウム(0.69mL,1.1mmol,1.59Mのヘキサン溶液)を-78℃下3分かけて滴下した。-78℃下で30分間撹拌後、ジメチルジスルフィド(0.46mL,3.6mmol)を1分間かけて加えた。室温で2時間撹拌後、メタノールを加えて反応停止操作を行った。水層に対してトルエンで抽出操作(20mL×3)を行い、飽和食塩水で洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製操作(展開溶媒:ヘキサン/トルエン=19/1)を行い、360mg(収率64%)の化合物10bを黄白色固体として得た。
【0079】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)8.86(s,1H),8.62-8.58(m,4H),8.55(d,J=2.0Hz,1H),8.51(d,J=1.6Hz,1H),8.43(d,J=1.6Hz,1H),7.75(dd,J=8.1,1.1Hz,1H),7.52(dd,J=8.6,2.0Hz,1H),7.47(dd,J=8.5,1.6Hz,2H),2.93(tt,J=7.4,7.4Hz,4H),2.72(s,3H),1.82-1.80(m,4H),1.54-1.47(m,4H),1.05-1.01(m,6H),0.48(s,9H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)141.7,141.6,138.4,136.6,131.4,131.3,131.2,130.5,130.0,129.9,
129.6,129.3,129.2,129.0,128.1,128.0,127.94,127.90,127.8,127.6,127.4,126.5,125.6,123.2,123.1,121.5,36.38,36.36,34.24,34.21,22.89,22.88,16.7(two peaks are overlapped),14.4,-0.55ppm
MS(DART-TOF)m/z:559
IR(neat):2952,2921,2853,1423,1244,814cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C38H42SSi:559.2855,Found;559.2827[MH]+
【0080】
c)2-メチルチオ-7-ヨード-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物10c)
アルゴン雰囲気下、化合物10b(150mg,0.27mmol)の無水塩化メチレン(2.3mL)溶液に一塩化ヨウ素(0.28mL,1M塩化メチレン溶液)を0℃下3分かけて滴下した。0℃下で30分間、さらに室温下で1時間撹拌後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(10mL)を加えて0℃下で反応を停止させた。水層に対してトルエンで抽出操作(10mL×3)を行い、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、155mg(収率94%)の化合物10cを淡黄色固体として得た。
【0081】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)9.00(d,J=1.8Hz,1H),8.58(dd,J=8.8,1.8Hz,2H),8.52(d,J=1.8Hz,1H),8.46(d,J=8.8Hz,1H),8.41(d,J=1.5Hz,1H),8.37(d,J=1.5Hz,1H),8.30(d,J=8.8Hz,1H),7.85(dd,J=8.8,1.8Hz,1H),7.52-7.46(m,3H),2.90(tt,J=7.4,7.4Hz,4H),2.70(s,3H),1.79(tt,J=7.4,7.4Hz,4H),1.48(tq,J=7.4,7.4Hz,4H),1.02-0.98(m,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)141.9,141.8,136.8,135.1,132.9,132.7,131.3,130.5,130.48,129.6,129.2,129.1,129.0,128.6,128.2,128.0,127.9,127.75,127.72,126.8,125.8,125.4,123.2,123.1,121.4,92.3,36.34,36.33,34.20,34.17,22.92,22.90,16.50,16.49,14.4ppm
MS(DART-TOF)m/z:613
IR(neat):2952,2920,2848,1416,812,582cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C35H34IS:613.1426[MH]+,Found;613.1412
【0082】
d)2-メチルチオ-7-シアノ-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物10d)
アルゴン雰囲気下、化合物10c(132mg,0.22mmol)の無水N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)溶液に室温下でシアン化銅(30mg,0.33mmol)を加えた。135℃に昇温し8時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加えて反応を停止させ、水層に対してトルエンで抽出操作(15mL×3)を行い、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄した。芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、91mg(収率81%)の化合物10dを白黄色固体として得た。
【0083】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)9.00(d,J=1.7Hz,1H),8.65(d,J=8.6Hz,1H),8.58(dd,J=8.6,8.6Hz,2H),8.52(d,J=1.7Hz,1H),8.43-8.41(m,3H),7.77(dd,J=8.6,1.7Hz,1H),7.55-7.48(m,3H),2.92(tt,J=7.3,7.3Hz,4H),2.71(s,3H),1.79(tt,J=7.3,7.3Hz,4H),1.48(tq,J=7.3,7.3Hz,4H),1.03-0.99(m,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)142.7,142.3,137.4,131.8,131.3,130.8,130.4,129.61,129.57,129.4,129.3,129.1,128.83,128.81,128.7,128.1,128.0,127.7,127.3,126.4,125.4,125.2,123.2,123.0,121.1,119.9,109.1,36.3,36.2,34.1,34.0,22.88,22.87,16.3(two peaks are overlapped),14.4ppm
MS(DART-TOF)m/z:512[MH]+
IR(neat):2952,2921,2853,2224,1591,1419,810cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C36H34NS:512.2406[MH]+,Found;512.2406
Anal.Calcd for C36H33NS:C,84.50;H,6.50;N,2.74.Found:C,84.16;H,6.42;N,2.68
【0084】
【0085】
a)1,8-ジクロロ-2,7-ジヒドロキシ-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物11)
アルゴン雰囲気下、化合物8(473mg,1.0mmol)の無水塩化メチレン(10mL)溶液に一塩化ヨウ素(3.6mL,3.6mmol,1M塩化メチレン溶液)を0℃下で10分かけて滴下した。反応溶液を0℃で15分間撹拌後、室温に昇温し、さらに2時間撹拌した。1Mチオ硫酸ナトリウム(20mL)でハロゲン種を分解し、1M塩酸(30mL)で反応停止操作を行った。水層に対して塩化メチレンで抽出操作(15mL×3)を行い、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、粗結晶を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製操作(展開溶媒:クロロホルム/酢酸エチル=19/1)を行い、508mg(収率94%)の化合物11を緑黄色固体として得た。
【0086】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)9.00(d,J=1.3Hz,2H),8.49(d,J=8.4Hz,2H),8.32(d,J=8.9Hz,2H),7.47(dd,J=8.4,1.3Hz,2H),7.32(d,J=8.9Hz,2H),6.22(s,2H),2.86(t,J=7.6Hz,4H),1.76(tt,J=7.6,7.6ppm,4H),1.46(tq,J=7.6,7.6Hz,4H),0.98(t,J=7.6,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)151.1,139.1,129.1,129.0,128.9,128.8,128.5,128.0,127.8,126.9,126.5,125.6,116.8,115.8,36.2,34.0,22.7,14.4ppm
MS(DART-TOF)m/z:539[M-H]-
IR(neat):3506,3331,2952,2920,2853,1595,1179,816cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C34H29Cl2O2:539.1545[M-H]-,Found:539.1553
【0087】
b)1,8-ジクロロ-2,7-ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-10,15-ジブチルジベンゾ[g,p]クリセン(化合物12)
アルゴン雰囲気下、化合物11(541mg,1.0mmol)の無水塩化メチレン(15mL)溶液にトリエチルアミン(0.5mL,3.6mmol)を0℃下で滴下した。反応溶液を0℃で15分間撹拌後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.3mL,1.8mmol)を2分かけて滴下した。0℃で30分間撹拌し、水(15mL)で反応停止操作を行った。水層に対して塩化メチレンで抽出操作(20mL×3)を行い、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄後、芒硝乾燥及び真空乾燥したところ、粗結晶を得た。シリカゲルを用いたカラム精製操作(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=1/4)を行い、608mg(収率75%)の化合物12を白色固体として得た。
【0088】
アセトン溶媒を用いて化合物12の単結晶を作製し、X線結晶構造解析を行った。分子構造を確率レベル50%で表示したORTEP図(見やすさを考慮して水素原子は描画されていない)を
図1(a)~(d)に示す。化合物12のねじれ角度は47.13°であり、非常に大きいことから、非平面性の高いπ共役系化合物であると言える。
【0089】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)9.08(d,J=1.4Hz,2H),8.59(d,J=8.4Hz,2H),8.40(d,J=9.1Hz,2H),7.58(d,J=9.1Hz,2H),7.56(dd,J=8.4,1.4Hz,2H),2.88(t,J=7.6Hz,4H),1.77(tt,J=7.6,7.6Hz,4H),1.46(tq,J=7.6,7.6Hz,4H),0.99(t,J=7.6Hz,6H)ppm
13CNMR(100MHz,CDCl3)145.1,141.2,131.6,130.8,130.3,130.0,129.1,128.53,128.49,128.4,128.1,125.8,124.4,121.0,119.1,36.3,34.0,22.7,14.3ppm
MS(DART-TOF)m/z:806[MH]+
IR(neat):2956,2928,2857,1415,1200,1133,1057,854,603,503cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C36H29F6Cl2O6S2:805.0687[MH]+,Found:805.0676
Anal.Calcd for C36H28F6Cl2O6S2:C,53.67;H,3.50.Found:C,53.67;H,3.39
本発明のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体の製造方法は、薄膜トランジスターの正孔輸送物質や有機発光ダイオードの発光素子として有用なジベンゾ[g,p]クリセン誘導体の製造方法として適用可能である。また、本発明のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体は、薄膜トランジスターの正孔輸送物質や有機発光ダイオードの発光素子に適用可能である。